JP7631107B2 - 定着部材及び熱定着装置 - Google Patents
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Description
該弾性層はシリコーンゴムおよび該シリコーンゴム中に分散されたフィラーを含み、
該弾性層の厚み方向の熱伝導率をλnd、長手方向の熱伝導率をλmd、弾性層の長手方向の全長をLとしたとき、
該弾性層の長手方向の各々の端から該弾性層の長手方向中央に向かって0.12×L以上の中央領域におけるλnd/λmdが1.1以上であり、かつ、
該弾性層は、該弾性層の長手方向の各々の端から該弾性層の長手方向中央に向かって0.12×Lまでの間にλnd/λmdが0.9以下である端部領域を有する、熱定着装置用の定着部材が提供される。
図1は、本開示の一態様に係るエンドレス形状を有する定着部材(以降、「定着ベルト」ともいう)100の熱伝導方向を説明するための概念図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA-A線における断面、すなわち、周方向に直交する方向の断面を示す図である。
定着ベルト100は、エンドレス形状を有する基体3の周面上に弾性層4を有する。ここで、弾性層4の厚み方向(nd)の熱伝導率をλnd、弾性層4の長手方向(md)の熱伝導率をλmdとする。定着ベルト100は図1(a)に示す通り、回転可能であり、回転する方向を定着ベルトの周方向(rd)という。また、弾性層の長手方向(md)とは、定着ベルトの周方向に直交する方向と定義される。
そして、定着ベルト100においては、弾性層における厚み方向と長手方向の熱伝導率の比(λnd/λmd、熱異方性ともいう)を、該長手方向の領域で制御することにより、未定着トナーに対する効率的な熱供給と、非通紙領域の過度の昇温の抑制とを達成している。具体的には、定着ベルト100の弾性層4は、シリコーンゴムおよび該シリコーンゴム中に分散されたフィラーを含む。
ここで、該弾性層の厚み方向の熱伝導率をλnd、該弾性層の長手方向の熱伝導率をλmd、該弾性層の長手方向の全長をLとする。このとき、該弾性層は、その長手方向の各々の端から該弾性層の長手方向中央に向かって0.12×L以上の中央領域においては、λnd/λmdが1.1以上である。また、該弾性層は、該弾性層の長手方向の各々の端から該弾性層の長手方向中央に向かって0.12×Lまでの間に、λnd/λmdが0.9以下である端部領域を有する。
また、本開示の一態様に係る定着ベルトの弾性層は、図2(c)に示すように、弾性層の長手方向の各々の端から弾性層の長手方向中央に向かって0.12×Lまでの領域にλnd/λmdが0.9以下である端部領域4aが存在する。弾性層の長手方向両端から弾性層の長手方向中央に向かて0.12×Lまでの領域は、定着工程において紙が接しないことがある非通紙領域に該当する。中でも、弾性層の長手方向の端から長手方向中央に向かって、0.05×Lまでの領域は、定着工程において特に紙と接しない確率が高い領域である。ここで、「0.05×L」とは、定着部材の長手方向の全長Lを例えば330mmとした場合における紙サイズ幅297mm(非通紙幅両側16.5mm、16.5/330≒0.05)に基づく値である。従って、本開示に係る定着ベルトにおいては、弾性層の長手方向の両端から弾性層の長手方向中央に向かって0.05×Lまでの領域は、端部領域とすることが好ましい。本態様に係る定着ベルトにおいては、中央領域4cが弾性層の長手方向の両端から0.10×L以上の位置に存在する。また、端部領域4aは、弾性層の長手方向の両端から中央に向かって0.05×Lの領域を含み、中央領域4cに隣接して存在している。
中央領域4cではλndがλmdより高く、λnd/λmdが1.1以上であることにより、厚み方向への効率的な熱伝導が達成される。その結果、定着工程において、未定着トナーをより効率的に定着させることができる。また、中央領域4cにおいては、λndが1.3W/(m・K)以上であることが定着性の観点でより好ましい。端部領域4aではλmdがλndより高く、λnd/λmdを0.9以下とすることで、記録媒体が通過しない非通紙領域の昇温を抑制することができる。ここで端部領域4aのλmdが1.3W/(m・K)以上になると非通紙領域の昇温抑制の観点でより好ましい。
本実施形態の定着部材の詳細について図面を用いて説明する。
図5(a)及び(b)は、本実施形態に係る定着部材を示す概略断面模式図である。図5(a)はベルト形態の、図5(b)はローラ形態の定着部材の一例を表す。図5(a)及び(b)において、符号3は基体を示し、符号4は基体3の外周面を被覆しているシリコーンゴムを含む弾性層を示す。なお図5においては、半径方向が弾性層の厚み方向、紙面の手前-奥方向が長手方向(幅方向)となる。
定着部材が図5(a)に示すようなベルト形態である場合、基体3には、電鋳ニッケルスリーブやステンレススリーブなどの金属、ポリイミドなどの耐熱性樹脂を用いることができる。特に熱定着装置が電磁誘導加熱方式の場合には、誘導加熱により加熱可能な基体材料が選択され、発熱効率の観点からニッケルや鉄を主成分とした合金が用いられる。基体3の外面(弾性層側の面)には、弾性層との接着性を向上させる機能を付与するための層を設けることができる。すなわち、弾性層4は、基体3の外周面上に設けられればよく、弾性層4と基体3との間に他の層を設けることができる。また、基体3の内面(上記外面とは反対側の面)には、耐摩耗性や潤滑性などの機能を付与するための層をさらに設けることができる。なお、ベルト形態である場合は、以下の製造工程中、スリーブの内部に中子を挿入して取り扱う。
本実施形態の定着部材におけるシリコーンゴムを含む弾性層4は、定着時に紙などの記録媒体の凹凸に追従するための優れた柔軟性を付与する層として機能する。シリコーンゴムは、非通紙領域で240℃程度の高温になる環境においても柔軟性を保持できる高い耐熱性を有しているため好ましい。また、シリコーンゴムは後述の硬化前に表面を帯電させてフィラーを配向させるため、電気絶縁性もしくは半導電性であることが好ましく、熱伝導性フィラーとしても電気絶縁性もしくは半導電性が求められる。シリコーンゴムは、例えば後述のようにシリコーンポリマーを硬化させたものを用いることができる。
不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサン(以降、a成分と称することがある)は、ビニル基等の不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンであればいずれのものも用いることができる。例えば、下記式1と式2に示すものをa成分として用いることができる。
ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサン(以降、b成分と称することがある)は、白金化合物の触媒作用により、a成分中の不飽和脂肪族基との反応によって架橋構造を形成する架橋剤である。
・ケイ素原子に結合した有機基が、例えば上述したような非置換炭化水素基であるもの(非置換炭化水素基としては、メチル基であることが好ましい。)。
・シロキサン骨格(-Si-O-Si-)は、直鎖状、分岐状および環状のいずれかである。
ヒドロシリル化(付加硬化)触媒としては、例えば、白金化合物を用いることができる。具体的には、白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体等を挙げることができる。以下、これをc成分と称することがある。
ヒドロシリル化(付加硬化)の硬化反応速度を調整するために、硬化遅延剤と呼ばれるものを配合することができる。具体的には、2-メチル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等を挙げることができる。以下、この硬化遅延剤をd成分と称することがある。
以下、一実施形態としてコロナ帯電器200とそれを用いた弾性層への電場付与工程について説明する。コロナ帯電方式にはコロナワイヤーと被帯電体の間にグリッド電極を持つスコロトロン方式と、グリッド電極を持たないコロトロン方式があるが、被帯電体の表面電位の制御性の観点から、スコロトロン方式が好ましい。
熱伝導性フィラーの配列状態は、弾性層の断面画像から得られる二値化像を用いて、二次元フーリエ変換を行うことで確認できる。
配列角度Φがフィラーの配列方向を表し、図7(e)、図7(f)で90°-270°方向が弾性層の厚み方向を示し、0°-180°方向が弾性層の周方向又は軸方向を示す。したがって、配列角度Φが90°に近い程、厚み方向にフィラーが配列していることを示す。
また、配列度fは楕円の扁平率を表し、0以上1未満の値となる。fが0の時に円となり、配列をしていない完全ランダムな状態を表し、fが1に近づくにつれ、楕円の扁平が大きくなり、フィラーの配列度も大きいということになる。
フィラーの、配列角度Φ、配列度fは、弾性層の厚み-周方向の第1断面と、厚み-長手方向の第2断面の各々で5箇所、計10箇所の数値の平均値で算出する。
中間領域では、長手中央領域と端部領域との間の値を取ることから、小粒径フィラーの平均配列角度ΦSが、30°より大きく60°未満、または、120°より大きく150°未満であることが好ましい。
図5に示すように、接着層5は、例えば付加硬化型シリコーンゴム接着剤によって弾性層4と表層(離型層)6を接着せしめることで生じる層である。接着剤としては、自己接着成分が配合された付加硬化型シリコーンゴムを用いることが好ましい。具体的には、ビニル基に代表される不飽和脂肪族基を分子鎖中に複数有するオルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンおよび架橋触媒としての白金化合物を含有する。そして、付加反応により硬化する。このような接着剤としては、既知のものを使用することができる。
・ビニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロキシ基、ヒドロシリル基(SiH基)、エポキシ基、アルコキシシリル基、カルボニル基、およびフェニル基からなる群から選択される少なくとも1種、好ましくは2種以上の官能基を有するシラン、
・ケイ素原子数が2個以上30個以下、好ましくは4個以上20個以下の、環状または直鎖状のシロキサン等の有機ケイ素化合物、
・分子中に酸素原子を含んでもよい、非ケイ素系(即ち、分子中にケイ素原子を含有しない)有機化合物。ただし、1価以上4価以下、好ましくは2価以上4価以下のフェニレン構造等の芳香環を1分子中に1個以上4個以下、好ましくは1個以上2個以下含有する。かつ、ヒドロシリル化付加反応に寄与しうる官能基(例えば、アルケニル基、(メタ)アクリロキシ基)を1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上4個以下含有する。
上記の自己接着成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
・シリカ、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウム、水酸化セリウム、カーボンブラック等。
このような付加硬化型シリコーンゴム接着剤は市販もされており、容易に入手することができる。
表面層6は、フッ素樹脂からなり、成形方法としてはチューブ法やコート法が用いられる。以下に例示する樹脂をチューブ状に成形したものを被覆する、チューブ法について例示する。
・テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等。上記例示列挙した樹脂材料中、成形性やトナー離型性の観点からPFAが好ましい。
フッ素樹脂層(表面層)の厚みは、10μm以上50μm以下とするのが好ましい。積層した際に下層の弾性層の弾性を維持し、定着部材としての表面硬度が高くなりすぎることを抑制しつつ、耐摩耗性を確保できるからである。
フッ素樹脂チューブの内面は、予め、ナトリウム処理やエキシマレーザ処理、アンモニア処理等を施すことで、接着性を向上させることが出来る。
フッ素樹脂チューブの被覆方法は特に限定されないが、付加硬化型シリコーンゴム接着剤を潤滑材として被覆する方法や、フッ素樹脂チューブを外側から拡張し、被覆する方法などを用いることが出来る。
不図示の手段を用いて、弾性層4とフッ素樹脂チューブからなる表面層6との間に残った、余剰の付加硬化型シリコーンゴム接着剤5を、扱き出すことで除去する。扱き出した後の接着層5の厚みは、伝熱性の観点から20μm以下とすることが好ましい。
次に、電気炉などの加熱手段にて所定の時間加熱することで、付加硬化型シリコーンゴム接着剤5を硬化・接着させ、長手方向(幅方向)の両端部を所望の長さに切断することで、定着部材を得ることができる。
本実施形態に係る熱定着装置は、一対の加熱されたローラとローラ、ベルトとローラ、ベルトとベルト、といった回転体が互いに圧接されるように構成されている。熱定着装置の種類は、熱定着装置が搭載される画像形成装置全体としてのプロセス速度、大きさ等の条件を勘案して適宜選択される。
熱定着装置においては、加熱された定着部材と加圧部材を圧接することで定着ニップNを形成し、この定着ニップNに未定着トナーによって画像が形成された、被加熱体となる記録媒体Sを挟持搬送させる。未定着トナーによって形成された画像をトナー像tと称する。これにより、トナー像tを加熱、加圧する。その結果、トナー像tは溶融・混色され、その後、冷却されることによって記録媒体上に画像が定着される。
図9は一対の定着ベルト11と加圧ベルト12といった回転体が圧接されている、いわゆるツインベルト方式の熱定着装置であり、定着部材として定着ベルトを備えた熱定着装置の一例の断面模式図である。
なお、ここで、熱定着装置またはこれを構成している部材について長手方向(幅)とは図9の紙面に垂直の方向である。熱定着装置について正面とは記録媒体Sの導入側の面である。左右とは装置を正面から見て左または右である。ベルトの幅とは装置を正面から見たときの左右方向のベルト寸法である。また記録媒体Sの幅とは搬送方向に直交する方向の記録媒体寸法である。また上流または下流とは記録媒体の搬送方向に関して上流または下流である。
この熱定着装置は、定着部材としての定着ベルト11と、加圧ベルト12とを備えている。定着ベルト11と加圧ベルト12は、図5(a)に示すようなニッケルを主成分とした金属製の可撓性を有する基体を含む定着ベルトを2つのローラに張架したものである。
なお、定着ベルトには非接触の除電ブラシ(不図示)、加圧ベルトには接触の除電ブラシ(不図示)を各々設けている。
図10は加熱体としてセラミックヒータを用いた定着ベルト-加圧ローラ方式の熱定着装置の例を示す模式図である。図10において、11は円筒状もしくはエンドレス状の定着ベルトであり、上述のようなものが用いられる。この定着ベルト11を保持するための耐熱性・断熱性のベルトガイド30がある。また、その定着ベルト11と接触する位置(ベルトガイド30の下面のほぼ中央部)に定着ベルト11を加熱するセラミックヒータ31が、ガイド長手に沿って形成具備させた溝部に嵌入して固定支持させている。そして、定着ベルト11はベルトガイド30にルーズに外嵌されている。また、加圧用剛性ステイ32はベルトガイド30の内側に挿通してある。
そして、セラミックヒータ31の発熱層31bの両端間に通電されることで発熱層31bは発熱し、セラミックヒータ31が急速に昇温する。
まず、a成分として分子鎖両末端にのみ不飽和脂肪族基であるビニル基を有し、その他不飽和脂肪族基を含まない非置換炭化水素基としてメチル基を有するシリコーンポリマーを98.6質量部準備した。このシリコーンポリマー(商品名:DMS-V35、Gelest社製、粘度5000mm2/s)を以降「Vi」と称する。
次いで、このViに熱伝導性フィラーとして、金属ケイ素(商品名:#350、キンセイマテック株式会社製)を170質量部添加し、十分に混合して混合物1を得た。
次いで、d成分として硬化遅延剤である1-エチニル-1-シクロヘキサノール(東京化成工業株式会社製)0.2質量部を同重量のトルエンに溶解したものを、混合物1中に添加して混合物2を得た。
次いで、c成分としてヒドロシリル化触媒(白金触媒:1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、および2-プロパノールの混合物)0.1質量部を、混合物2中に添加して混合物3を得た。
さらに、b成分としてシロキサン骨格が直鎖状で、ケイ素に結合した活性水素基を側鎖にのみ有するシリコーンポリマー(商品名:HMS-301、Gelest社製、粘度30mm2/s、以降「SiH」と称する)を、1.5質量部計量した。これを、混合物3に添加し、十分に混合することで、液状付加硬化型シリコーンゴム組成物を得た。
基体として、内径55mm、幅420mm、厚さ65μmのSUSエンドレスベルトを用意した。尚、一連の製造工程中、エンドレスベルトは、その内部に中子を挿入して取り扱った。
基体の外周面に、プライマー(商品名:DY39-051A/B;東レ・ダウコーニング株式会社製)を乾燥重量が20mgとなるように略均一に塗布し、溶媒を乾燥させた後160℃設定の電気炉で30分間の焼付け処理を行った。
このプライマー処理された基体上に、リングコート法で上記シリコーンゴム組成物を厚さ250μmにて塗布した。これを未硬化エンドレスベルトと称する。
このエンドレスベルトを200℃に設定した電気炉にて1時間加熱することで接着剤を硬化させて当該フッ素樹脂チューブを弾性層上に固定した。得られたエンドレスベルトの両端部を切断し、幅が368mmの定着ベルトを得た。この結果、弾性層の長手方向(幅方向)の両端部から約0.1L以上中央側の領域が、帯電処理された長手中央領域、その両側に端部領域を有する定着ベルトとなった。
(3-1)弾性層の厚み方向の熱伝導率
弾性層の厚み方向の熱伝導率λndは、以下の式から算出した。
λnd=α×Cp×ρ
式中、λndは弾性層の厚み方向の熱伝導率(W/(m・K))、αは厚み方向の熱拡散率(m2/s)、Cpは定圧比熱(J/(kg・K))、ρは密度(kg/m3)である。
ここで、厚み方向の熱拡散率αと定圧比熱Cpと密度ρの値は以下の方法により求めた。
弾性層の厚み方向の熱拡散率αは、周期加熱法熱物性測定装置(商品名:FTC-1、アドバンス理工株式会社製)を用いて、室温(25℃)で測定した。弾性層から面積が8×12mmの試料片にカッターナイフで切り取り、計5個の試料片を作製し、それぞれの試料片の厚みをデジタル測長器(商品名:DIGIMICRO(登録商標) MF-501 フラット測定子φ4mm;ニコン社製)を用いて測定した。次に、それぞれの試料片に対し、計5回測定し、その平均値(m2/s)を求めた。尚、測定は1kgの重りを使用して試料片を加圧しながら行った。
その結果、弾性層の長手中央領域の厚み方向の熱拡散率αは9.31×10-7m2/s、端部領域の熱拡散率は4.97×10-7m2/sであった。
弾性層の定圧比熱は、示差走査熱量測定装置(商品名:DSC823e、メトラー・トレド株式会社製)を用いて測定した。
具体的には、試料用のパン及び参照用のパンとして、アルミニウム製のパンを用いた。まず、ブランク測定として、両方のパンが空の状態で、10分間、15℃の定温に保った後、215℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、さらに10分間、215℃の定温で保つプログラムで測定を実施した。次に、低圧比熱が既知である10mgの合成サファイアを基準物質に用い、同じプログラムで測定を行った。次いで、基準物質の合成サファイアと同量の10mgの測定試料を弾性層から切り出した後、試料パンにセットし、同じプログラムで測定を実施した。これらの測定結果を上記示差走査熱量測定装置に付属の比熱解析ソフトウェアを用いて解析し、5回の測定結果の平均値から、25℃における定圧比熱CPを算出した。
その結果、弾性層の定圧比熱は、1.05J/(g・K)であった。
弾性層の密度は、乾式自動密度計(商品名:アキュピック1330-01、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。具体的には、10cm3の試料セルを用い、セル容積のおおよそ8割程度を満たすように試料片を弾性層から切り出し、この試料片の質量を測定した後、試料セルに入れた。この試料セルを装置内の測定部にセットし、測定用のガスとしてヘリウムを用い、ガス置換の後、容積測定を10回実施した。各回について試料片の質量と測定された容積から、弾性層の密度を算出し、その平均値を求めた。
その結果、弾性層の密度は1.53g/cm3であった。
弾性層の長手方向の熱伝導率λmdは、以下の式から算出した。
λmd=αmd×Cp×ρ
式中、αmdは長手方向の熱拡散率(m2/s)、Cpは定圧比熱(J/(kg・K))、ρは密度(kg/m3)である。
ここで、定圧比熱Cpと密度ρは、上述の方法で求めた値を用い、長手方向の熱拡散率αmdと周方向の熱拡散率αtdは、以下の方法により求めた。
弾性層の長手方向の各領域の大粒径フィラーの配列度、及び小粒径フィラーの配列角度は、製造した定着ベルトの各領域から縦5mm、横5mm、厚みが定着ベルトの全厚みである試料をそれぞれ10個採取し、厚み-周方向の第1断面と、厚み-長手方向の第2断面を5個ずつイオンビームを用いて研磨加工した。弾性層の第1断面及び弾性層の第2断面をレーザー顕微鏡で観察し、150μm×100μm領域の断面画像を取得した(図8(a))。
得られた断面画像を大津法により二値化し、第1弾面から第1の二値化像、第2断面から第2の二値化像を取得した(図8(b))。得られた第1及び第2の二値化像の各フィラーについて円相当径を算出し、円相当径が5μm以上の大粒径フィラー7のみを残した画像(図8(c))と円相当径が5μm未満の小粒径フィラー8のみを残した画像(図8(d))に分割した。この大粒径フィラー画像、小粒径フィラー画像に対して二次元フーリエ変換解析を行うことで、フィラー配列の方向と程度を表す楕円プロット図を得た(図8(e)、図8(f))。得られた楕円プロット図から大粒径配列度、小粒径配列角度をそれぞれ求め、領域ごとに10サンプルの大粒径フィラーの平均配列度fL及び小粒径フィラーの平均配列角度Φsを求めた。
<定着性評価>
こうして得られた定着ベルトを、電子写真方式の複写機(商品名:imagePRESS C850、キヤノン社製)の熱定着装置に組み込んだ。そして、この熱定着装置を、上記複写機に装着した。この複写機を用いて、定着温度を標準の定着温度よりも低く設定して、坪量300g/m2の厚紙(商品名:UPM Finesse gloss 300g/m2、UPM社製)にシアンのベタ画像の形成を行った。
ランクA:定着温度175℃にて、トナーが厚紙に定着した。
ランクB:定着温度180℃にて、トナーが厚紙に定着した。
ランクC:定着温度185℃にて、トナーが厚紙に定着した。
ランクD:定着温度185℃にて、トナーが厚紙に定着しなかった。
非通紙領域昇温の評価は、低温度(15℃程度)かつ低湿度(10%程度)の環境下で、A4サイズ紙(商品名「CS-680」、キヤノン株式会社製)を90枚/分で10分間連続プリントした後に測定した定着ベルト3の非通紙領域の表面温度に基づき行った。具体的には、定着ニップ部Nから記録媒体の搬送方向上流側90°に位置する定着ベルト3の表面温度が195℃を維持するように、誘導加熱部材13による加熱温度を調整しながら300枚連続プリントを行う。そして、300枚連続プリントが終了してから、定着部材11の非通紙領域(A4横サイズ紙が通過しない領域)の表面温度を放射型温度計で測定し、初期温度(通紙1枚目)からの温度変化で以下の判定基準に基づき行った。
ランクA:非通紙領域の初期温度(通紙1枚目)からの温度上昇分が30℃以下
ランクB:非通紙領域の初期温度(通紙1枚目)からの温度上昇分が30℃より大きく40℃以下
ランクC:非通紙領域の初期温度(通紙1枚目)からの温度上昇分が40℃より大きく50℃以下
ランクD:非通紙領域の初期温度(通紙1枚目)からの温度上昇分が50℃より大きい
定着温度を標準の定着温度(195℃)とした状態で、A4サイズの普通紙へのシアンのベタ画像の連続形成を行い、定着ベルトの弾性層の破壊や塑性変形が生じた時点における枚数を記録し、以下の基準で評価した。なお、画像の枚数が74万枚に至ってもなお定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形が生じなかった場合には、74万枚で画像形成を中止した。
ランクA:74万枚の画像形成によっても定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形が認められない。
ランクB:60万枚の画像形成によっても定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形は生じなかったが、74万枚の画像形成によって定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形は生じた。
ランクC:10万枚の画像形成によっても定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形は生じなかったが、60万枚の画像形成によって定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形は生じた。
ランクD:10万枚の画像形成によって定着ベルトの弾性層に破壊や塑性変形が生じた。
フィラーの金属ケイ素の体積比率を38vol%にすること以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
フィラーとして、大粒径アルミナ(商品名:AO-509、アドマテック社製、平均粒径10μm)を44vol%、小粒径アルミナ(商品名:AO-502、アドマテック社製、平均粒径0.7μm)を3vol%で総フィラー量47vol%にすること以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
電場付与時にコロナ帯電器をレシプロ機構により、長手方向に±5mm、3Hzで往復振動させながら電場を付与したこと以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。これにより、実施例1の長手中央領域の両側に5mm幅の中間領域が形成された。
電場付与時にコロナ帯電器をレシプロ機構により、長手方向に±5mm、3Hzで往復振動させながら電場を付与したこと以外は実施例3と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。これにより、実施例3の長手中央領域の両側に5mm幅の中間領域が形成された。
電場付与を行わなかった以外は実施例3と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
フィラーとして、大粒径アルミナ(商品名:AO-509、アドマテック社製、平均粒径10μm)を50vol%、小粒径アルミナ(商品名:AO-502、アドマテック社製、平均粒径0.7μm)を3vol%で総フィラー量53vol%にし、電場付与も行わなかった。それ以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
フィラーの金属ケイ素の体積比率を38vol%にし、電場付与も行わなかった。それ以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
フィラーの金属ケイ素の体積比率を38vol%にし、電場付与を長手全域に渡って行った。それ以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
フィラーの金属ケイ素の体積比率を49vol%にし、電場付与も行わなかった。それ以外は実施例1と同様にして、定着ベルトを作製し、評価した。
4 弾性層
4a 端部領域
4b 中間領域
4c 長手中央領域
401-1 第1断面
401-2 第2断面
7 大粒径フィラー
8 小粒径フィラー
100 定着部材
11 定着ベルト
12 加圧ベルト
13 誘導加熱部材
18 加熱側ローラ
20 加圧側ローラ
31 セラミックヒータ
33 加圧ローラ
Claims (14)
- 基体と、該基体上の弾性層とを有する熱定着装置用の定着部材であって、
該弾性層はシリコーンゴムおよび該シリコーンゴム中に分散されたフィラーを含み、
該弾性層の厚み方向の熱伝導率をλnd、長手方向の熱伝導率をλmd、弾性層の長手方向の全長をLとしたとき、
該弾性層の長手方向の各々の端から該弾性層の長手方向中央に向かって0.12×L以上の中央領域におけるλnd/λmdが1.1以上であり、かつ、
該弾性層は、該弾性層の長手方向の各々の端から該弾性層の長手方向中央に向かって0.12×Lまでの間にλnd/λmdが0.9以下である端部領域を有する、ことを特徴とする定着部材。 - 前記中央領域のλndが1.3W/(m・K)以上であり、前記端部領域のλmdが1.3W/(m・K)以上である、請求項1に記載の定着部材。
- 前記中央領域における厚み-周方向の第1断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第1の二値化像と、厚み-長手方向の第2断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第2の二値化像を取得し、
該二値化像の各々における円相当径が5μm以上の大粒径フィラーの平均配列度fLが、0.00以上、0.15以下であり、
該二値化像の各々における円相当径が5μm未満の小粒径フィラーの平均配列角度ΦSが、60°以上、120°以下である、請求項1又は2に記載の定着部材。 - 前記端部領域における厚み-周方向の第1断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第1の二値化像と、厚み-長手方向の第2断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第2の二値化像を取得し、
該二値化像の各々における円相当径が5μm以上の大粒径フィラーの平均配列度fLが、0.00以上、0.15以下であり、
該二値化像の各々における円相当径が5μm未満の小粒径フィラーの平均配列角度ΦSが、30°以下、または、150°以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の定着部材。 - 前記弾性層が、前記中央領域と前記端部領域との間に、λnd/λmdが0.9より大きく1.1より小さい中間領域を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の定着部材。
- 前記弾性層の前記中間領域における厚み-周方向の第1断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第1の二値化像と、厚み-長手方向の第2断面の任意の5か所における150μm×100μmのサイズの第2の二値化像を取得し、
該二値化像の各々における円相当径が5μm以上の大粒径フィラーの平均配列度fLが、0.00以上、0.15以下であり、
該二値化像の各々における円相当径が5μm未満の小粒径フィラーの平均配列角度ΦSが、30°より大きく60°未満、または、120°より大きく150°未満である、請求項5に記載の定着部材。 - 前記定着部材が、エンドレス状の定着ベルトである請求項1~6のいずれか1項に記載の定着部材。
- 前記定着部材は、前記弾性層の外周上に表面層をさらに有する、請求項7に記載の定着部材。
- 前記基体が、ニッケル、銅、鉄、及び、アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の定着部材。
- 加熱のための定着部材と、該定着部材に対向して配置されている加圧部材とを有する熱定着装置であって、該定着部材が、請求項1~9のいずれか1項に記載の定着部材であることを特徴とする熱定着装置。
- 前記定着部材の基体を加熱する加熱手段を有する請求項10に記載の熱定着装置。
- 前記加熱手段が誘導加熱手段であり、前記定着部材の基体が誘導加熱により加熱可能な基体である請求項11に記載の熱定着装置。
- 前記加熱手段が、前記基体を加熱するヒータである請求項11に記載の熱定着装置。
- 前記ヒータが、該定着部材の内周面に接して配置されている請求項13に記載の熱定着装置。
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