本発明のラテックス組成物の製造方法は、共役ジエン系重合体のラテックスを準備する準備工程と、
前記共役ジエン系重合体のラテックスに、硫黄系加硫剤、キサントゲン化合物、および強酸塩系界面活性剤を添加し、ラテックス組成物を得る調製工程と、を備える。
本発明の製造方法における準備工程は、後述する調製工程で用いるための共役ジエン系重合体のラテックスを準備する工程である。本発明で用いる共役ジエン系重合体のラテックスとしては、共役ジエン系重合体が水中に分散しているラテックスであれば、特に限定されない。
<共役ジエン系重合体のラテックス>
本発明で用いる共役ジエン系重合体のラテックスとしては、特に限定されないが、たとえば、合成ポリイソプレンのラテックス、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)のラテックス、蛋白質を除去した天然ゴム(脱蛋白質天然ゴム)のラテックス、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスなどが挙げられる。これらのなかでも、合成ポリイソプレンのラテックス、SISのラテックス、脱蛋白質天然ゴムのラテックスなどのイソプレン単位を含有する重合体のラテックスが好ましく、合成ポリイソプレンのラテックスが特に好ましい。また、本発明で用いる共役ジエン系重合体のラテックスは、カルボキシル基などの変性基を有するものであってもよいが、製造工程数を減らすことができるという観点より、カルボキシル基を有さない共役ジエン系重合体のラテックスであることが好ましい。なお、カルボキシル基を有さない共役ジエン系重合体としては、カルボキシル基を実質的に有さない共役ジエン系重合体であればよく、たとえば、不純物等に起因する程度の量(たとえば、単量体単位換算で、0.05重量%未満程度の量)であれば、カルボキシル基が含まれるものであってもよい。
共役ジエン系重合体のラテックスとして合成ポリイソプレンのラテックスを用いる場合には、合成ポリイソプレンのラテックスに含まれる合成ポリイソプレンは、イソプレンの単独重合体であってもよいし、イソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを共重合したものであってもよい。合成ポリイソプレン中のイソプレン単位の含有量は、柔軟で、引張強度に優れるディップ成形体などの膜成形体が得られやすいことから、全単量体単位に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは100重量%(イソプレンの単独重合体)である。
イソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、ブタジエン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン等のイソプレン以外の共役ジエン単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロアクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル単量体;スチレン、アルキルスチレン等のビニル芳香族単量体;(メタ)アクリル酸メチル(「アクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸メチル」の意味であり、以下、(メタ)アクリル酸エチルなども同様。)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;などが挙げられる。これらのイソプレンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体は、1種単独でも、複数種を併用してもよい。
合成ポリイソプレンは、従来公知の方法、たとえばトリアルキルアルミニウム-四塩化チタンからなるチーグラー系重合触媒やn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムなどのアルキルリチウム重合触媒を用いて、不活性重合溶媒中で、イソプレンと、必要に応じて用いられる共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを溶液重合して得ることができる。溶液重合により得られた合成ポリイソプレンの重合体溶液は、そのまま、合成ポリイソプレンラテックスの製造に用いてもよいが、該重合体溶液から固形の合成ポリイソプレンを取り出した後、有機溶媒に溶解して、合成ポリイソプレンラテックスの製造に用いることもできる。
上述した方法により合成ポリイソプレンの重合体溶液を得た場合には、重合体溶液中に残った重合触媒の残渣などの不純物を取り除いてもよい。また、重合中または重合後の溶液に、後述する老化防止剤を添加してもよい。また、市販の固形の合成ポリイソプレンを用いることもできる。
合成ポリイソプレン中のイソプレン単位としては、イソプレンの結合状態により、シス結合単位、トランス結合単位、1,2-ビニル結合単位、3,4-ビニル結合単位の4種類が存在する。得られるディップ成形体などの膜成形体の引張強度向上の観点から、合成ポリイソプレンに含まれるイソプレン単位中のシス結合単位の含有割合は、全イソプレン単位に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
合成ポリイソプレンの重量平均分子量は、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算で、好ましくは10,000~5,000,000、より好ましくは500,000~5,000,000、さらに好ましくは800,000~3,000,000である。合成ポリイソプレンの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、ディップ成形体などの膜成形体の引張強度、引張伸び、および引裂強度がより向上するとともに、合成ポリイソプレンラテックスが製造しやすくなる傾向がある。
また、合成ポリイソプレンのポリマー・ムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは50~80、より好ましくは60~80、さらに好ましくは70~80である。
合成ポリイソプレンラテックスを得るための方法としては、たとえば、(1)有機溶媒に溶解または微分散した合成ポリイソプレンの溶液または微細懸濁液を、乳化剤の存在下に、水中で乳化し、必要により有機溶媒を除去して、合成ポリイソプレンラテックスを製造する方法、(2)イソプレン単独または、イソプレンとそれと共重合可能なエチレン性不飽和単量体との混合物を、乳化剤の存在下に、乳化重合もしくは懸濁重合して、直接、合成ポリイソプレンラテックスを製造する方法、が挙げられるが、イソプレン単位中のシス結合単位の割合が高い合成ポリイソプレンを用いることができ、引張強度等の機械的特性に優れるディップ成形体などの膜成形体が得られやすい点から、上記(1)の製造方法が好ましい。
上記(1)の製造方法で用いる有機溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、二塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素溶媒;等を挙げることができる。これらのうち、脂環族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒が好ましく、ペンタン、シクロヘキサン、n-ヘキサンがより好ましく、n-ヘキサンが特に好ましい。
なお、有機溶媒の使用量は、合成ポリイソプレン100重量部に対して、好ましくは2,000重量部以下、より好ましくは20~1,500重量部、さらに好ましくは500~1,500重量部である。
上記(1)の製造方法で用いる乳化剤としては、イオン性乳化剤を用いることが好ましく、中でも、アニオン性乳化剤を用いることがより好ましい。アニオン性乳化剤としては、たとえば、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノレン酸ナトリウム、ロジン酸ナトリウム、ロジン酸カリウム等の脂肪酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム等のモノアルキルリン酸エステル塩;等が挙げられる。
これらアニオン性乳化剤の中でも、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、脂肪酸塩およびアルキルベンゼンスルホン酸塩が特に好ましい。
また、合成ポリイソプレン由来の、微量に残留する重合触媒(特に、アルミニウムとチタニウム)をより効率的に除去でき、ラテックス組成物を製造する際における、凝集物の発生が抑制されることから、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用して用いることができる。ここで、脂肪酸塩としては、ロジン酸ナトリウムおよびロジン酸カリウムが好ましく、また、アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸カリウムが好ましい。また、これらの乳化剤は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
なお、上述したように、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用して用いることにより、得られるラテックスが、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種と、脂肪酸塩とを含有するものとなる。
また、アニオン性乳化剤以外のイオン性乳化剤としては、α,β-不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β-不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性の乳化剤が挙げられる。
さらに、ディップ成形する際に使用する凝固剤による凝固を阻害しない範囲であれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤も併用してもよい。
上記(1)の製造方法で用いる乳化剤の使用量は、合成ポリイソプレン100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部、より好ましくは0.5~30重量部、さらに好ましくは5~15重量部である。なお、2種類以上の乳化剤を用いる場合においては、これらの合計の使用量を上記範囲とすることが好ましい。すなわち、たとえば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用する場合には、これらの使用量の合計を上記範囲とすることが好ましい。乳化剤の使用量を上記範囲とすることにより、乳化時の凝集物の発生をより抑制することができる。
また、アニオン性乳化剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種と、脂肪酸塩とを併用する場合には、これらの使用割合を、「脂肪酸塩」:「アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種の乳化剤の合計」の重量比で、1:1~10:1の範囲とすることが好ましく、1:1~7:1の範囲とすることがより好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の中から選ばれた少なくとも1種の乳化剤の使用割合を上記範囲とすることにより、合成ポリイソプレンの取り扱い時に発生する泡立ちを抑制することができ、これにより、長時間の静置や、消泡剤の添加などの操作が不要になり、作業性の改善およびコストダウンに繋がる。
上記(1)の製造方法で使用する水の量は、合成ポリイソプレンの有機溶媒溶液100重量部に対して、好ましくは10~1,000重量部、より好ましくは30~500重量部、最も好ましくは50~100重量部である。使用する水の種類としては、硬水、軟水、イオン交換水、蒸留水、ゼオライトウォーターなどが挙げられ、軟水、イオン交換水および蒸留水が好ましい。
有機溶媒に溶解または微分散した合成ポリイソプレンの溶液または微細懸濁液を、乳化剤の存在下、水中で乳化する装置は、一般に乳化機または分散機として市販されているものであれば特に限定されず使用できる。合成ポリイソプレンの溶液または微細懸濁液に、乳化剤を添加する方法としては、特に限定されず、予め、水もしくは合成ポリイソプレンの溶液または微細懸濁液のいずれか、あるいは両方に添加してもよいし、乳化操作を行っている最中に、乳化液に添加してもよく、一括添加しても、分割添加してもよい。
乳化装置としては、たとえば、商品名「ホモジナイザー」(IKA社製)、商品名「ポリトロン」(キネマティカ社製)、商品名「TKオートホモミキサー」(特殊機化工業社製)等のバッチ式乳化機;商品名「TKパイプラインホモミキサー」(特殊機化工業社製)、商品名「コロイドミル」(神鋼パンテック社製)、商品名「スラッシャー」(日本コークス工業社製)、商品名「トリゴナル湿式微粉砕機」(三井三池化工機社製)、商品名「キャビトロン」(ユーロテック社製)、商品名「マイルダー」(太平洋機工社製)、商品名「ファインフローミル」(太平洋機工社製)等の連続式乳化機;商品名「マイクロフルイダイザー」(みずほ工業社製)、商品名「ナノマイザー」(ナノマイザー社製)、商品名「APVガウリン」(ガウリン社製)等の高圧乳化機;商品名「膜乳化機」(冷化工業社製)等の膜乳化機;商品名「バイブロミキサー」(冷化工業社製)等の振動式乳化機;商品名「超音波ホモジナイザー」(ブランソン社製)等の超音波乳化機;等が挙げられる。なお、乳化装置による乳化操作の条件は、特に限定されず、所望の分散状態になるように、処理温度、処理時間などを適宜選定すればよい。
上記(1)の製造方法においては、乳化操作を経て得られた乳化物から、有機溶媒を除去することが望ましい。
乳化物から有機溶媒を除去する方法としては、得られる合成ポリイソプレンラテックス中における、有機溶媒(好ましくは脂環族炭化水素溶媒または脂肪族炭化水素溶媒)の含有量を500重量ppm以下とすることのできる方法が好ましく、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができる。
消泡剤を添加しながら、有機溶媒を除去することもできる。消泡剤を添加することにより、合成ポリイソプレンの泡立ちを抑制することができる。
さらに、有機溶媒を除去した後、必要に応じ、合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度を上げるために、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法で濃縮操作を施してもよく、特に、合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度を上げるとともに、合成ポリイソプレンラテックス中の乳化剤の残留量を低減することができるという観点より、遠心分離を行うことが好ましい。
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機を用いて、遠心力を、好ましくは100~10,000G、遠心分離前の合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度を、好ましくは2~15重量%、遠心分離機に送り込む流速を、好ましくは500~1700Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)を、好ましくは0.03~1.6MPaの条件にて実施することが好ましく、遠心分離後の軽液として、合成ポリイソプレンラテックスを得ることができる。そして、これにより、合成ポリイソプレンラテックス中における、乳化剤の残留量を低減することができる。
合成ポリイソプレンラテックスの固形分濃度は、好ましくは30~70重量%、より好ましくは40~70重量%、さらに好ましくは50~70重量%である。固形分濃度を上記範囲の下限以上とすることにより、後述するディップ成形体などの膜成形体が破れにくくなる。また、固形分濃度を上記範囲の上限以下とすることにより、合成ポリイソプレンラテックスの粘度が高くなりすぎることを防止し、配管での移送や調合タンク内での撹拌が容易なものとなる。
合成ポリイソプレンラテックスの体積平均粒子径は、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.5~3μm、さらに好ましくは0.5~2.0μmである。この体積平均粒子径を上記範囲とすることにより、ラテックス粘度が適度なものとなり取り扱いやすくなるとともに、合成ポリイソプレンラテックスを貯蔵した際に、ラテックス表面に皮膜が生成することを抑制できる。
また、合成ポリイソプレンラテックスには、ラテックスの分野で通常配合される、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、架橋剤、キレート剤、酸素捕捉剤、分散剤、老化防止剤等の添加剤を配合してもよい。
pH調整剤としては、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。なお、準備工程における合成ポリイソプレンラテックスのpHは特に限定されないが、後述するように、合成ポリイソプレンラテックス等を用いてラテックス組成物とし、該ラテックス組成物を所定の条件で熟成させる際に、熟成前のラテックス組成物のpHが、10以上となっていることが好ましい。
また、共役ジエン系重合体のラテックスとしては、上述したように、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)のラテックスを用いることもできる。なお、SISにおいては、「S」はスチレンブロック、「I」はイソプレンブロックをそれぞれ表す。
SISのラテックスに含まれるSISは、従来公知の方法、たとえばn-ブチルリチウムなどの活性有機金属を開始剤として、不活性重合溶媒中で、イソプレンとスチレンとをブロック共重合して得ることができる。そして、得られたSISの重合体溶液は、SISラテックスの製造にそのまま用いてもよいが、該重合体溶液から固形のSISを取り出した後、その固形のSISを有機溶媒に溶解して、SISラテックスの製造に用いることもできる。SISラテックスの製造方法としては、特に限定されないが、有機溶媒に溶解または微分散したSISの溶液または微細懸濁液を、乳化剤の存在下に、水中で乳化し、必要により有機溶媒を除去して、SISラテックスを製造する方法が好ましい。
この際、合成した後に重合体溶液中に残った重合触媒の残渣などの不純物を取り除いてもよい。また、重合中または重合後の溶液に、後述する老化防止剤を添加してもよい。また、市販の固形のSISを用いることもできる。
有機溶媒としては、上記合成ポリイソプレンの場合と同様のものを使用することができ、脂肪族炭化水素溶媒が好ましく、n-ヘキサンが特に好ましい。
なお、有機溶媒の使用量は、SIS100重量部に対して、通常50~2,000重量部、好ましくは80~1,000重量部、より好ましくは10~500重量部、さらに好ましくは150~300重量部である。
乳化剤としては、上記合成ポリイソプレンの場合と同様のものを例示することができ、アニオン性乳化剤が好適であり、ロジン酸カリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
乳化剤の使用量は、SIS100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部、より好ましくは0.5~30重量部、さらに好ましくは5~15重量部である。乳化剤の使用量を上記範囲とすることにより、得られるラテックスの安定性を向上させることができる。
上述したSISラテックスの製造方法で使用する水の量は、SISの有機溶媒溶液100重量部に対して、好ましくは10~1,000重量部、より好ましくは30~500重量部、最も好ましくは50~100重量部である。使用する水の種類としては、硬水、軟水、イオン交換水、蒸留水、ゼオライトウォーターなどが挙げられる。また、メタノールなどのアルコールに代表される極性溶媒を水と併用してもよい。
SISの有機溶媒溶液または微細懸濁液を、乳化剤の存在下、水中で乳化する装置は、上記合成ポリイソプレンの場合と同様のものを例示することができる。そして、乳化剤の添加方法は、特に限定されず、予め水もしくはSISの有機溶媒溶液または微細懸濁液のいずれか、あるいは両方に添加してもよいし、乳化操作を行っている最中に、乳化液に添加してもよく、一括添加しても、分割添加してもよい。
上述したSISラテックスの製造方法においては、乳化操作を経て得られた乳化物から、有機溶媒を除去して、SISラテックスを得ることが好ましい。乳化物から有機溶媒を除去する方法は、特に限定されず、減圧蒸留、常圧蒸留、水蒸気蒸留、遠心分離等の方法を採用することができる。
消泡剤を添加しながら、有機溶媒を除去することもできる。消泡剤を添加することにより泡立ちを抑制することができる。
また、有機溶媒を除去した後、必要に応じ、SISラテックスの固形分濃度を上げるために、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法で濃縮操作を施してもよい。
SISラテックスの固形分濃度は、好ましくは30~70重量%、より好ましくは40~70重量%、さらに好ましくは50~70重量%である。固形分濃度を上記範囲の下限以上とすることにより、後述するディップ成形体などの膜成形体が破れにくくなる。また、固形分濃度を上記範囲の上限以下とすることにより、SISラテックスの粘度が高くなりすぎることを防止し、配管での移送や調合タンク内での撹拌が容易なものとなる。
また、SISラテックスには、ラテックスの分野で通常配合される、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、架橋剤、キレート剤、酸素捕捉剤、分散剤、老化防止剤等の添加剤を配合しても良い。pH調整剤としては、上記合成ポリイソプレンの場合と同様のものを例示することができ、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。なお、準備工程におけるSISラテックスのpHは特に限定されないが、後述するように、SISラテックス等を用いてラテックス組成物とし、該ラテックス組成物を所定の条件で熟成させる際に、熟成前のラテックス組成物のpHが、10以上となっていることが好ましい。
このようにして得られるSISラテックスに含まれる、SIS中のスチレンブロックにおけるスチレン単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは70~100重量%、より好ましくは90~100重量%、さらに好ましくは100重量%である。
また、SIS中のイソプレンブロックにおけるイソプレン単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは70~100重量%、より好ましくは90~100重量%、さらに好ましくは100重量%である。
なお、SIS中のスチレン単位とイソプレン単位の含有割合は、「スチレン単位:イソプレン単位」の重量比で、通常1:99~90:10、好ましくは3:97~70:30、より好ましくは5:95~50:50、さらに好ましくは10:90~30:70の範囲である。
SISの重量平均分子量は、ゲル・パーミーエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算で、好ましくは10,000~1,000,000、より好ましくは50,000~500,000、さらに好ましくは100,000~300,000である。SISの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、ディップ成形体などの膜成形体の引張強度と柔軟性のバランスが向上するとともに、SISのラテックスが製造しやすくなる傾向がある。
SISラテックス中のラテックス粒子(SIS粒子)の体積平均粒子径は、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.5~3μm、さらに好ましくは0.5~2.0μmである。ラテックス粒子の体積平均粒子径を上記範囲とすることにより、ラテックス粘度が適度なものとなり取り扱いやすくなるとともに、SISラテックスを貯蔵した際に、ラテックス表面に皮膜が生成することを抑制できる。
また、共役ジエン系重合体のラテックスとしては、上述したように、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスを用いることもできる。
ニトリル基含有共役ジエン系共重合体は、共役ジエン単量体にエチレン性不飽和ニトリル単量体を共重合してなる共重合体であり、これらに加えて、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を共重合してなる共重合体であってもよい。
共役ジエン単量体としては、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよびクロロプレンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3-ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエン単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、共役ジエン単量体により形成される共役ジエン単量体単位の含有割合は、好ましくは56~78重量%であり、より好ましくは56~73重量%、さらに好ましくは56~68重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体を、引張強度を十分なものとしながら、風合いおよび伸びにより優れたものとすることができる。
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリルなどが挙げられる。なかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体により形成されるエチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、好ましくは20~40重量%であり、より好ましくは25~40重量%、さらに好ましくは30~40重量%である。エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体を、引張強度を十分なものとしながら、風合いおよび伸びにより優れたものとすることができる。
共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、スチレン、アルキルスチレン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族単量体;フルオロエチルビニルエーテル等のフルオロアルキルビニルエーテル;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸-2-シアノエチル、(メタ)アクリル酸-1-シアノプロピル、(メタ)アクリル酸-2-エチル-6-シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸-3-シアノプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等の架橋性単量体;などを挙げることができる。これらのエチレン性不飽和単量体は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、その他のエチレン性不飽和単量体により形成されるその他の単量体単位の含有割合は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。
ニトリル基含有共役ジエン系共重合体は、上述した単量体を含有してなる単量体混合物を共重合することにより得られるが、乳化重合により共重合する方法が好ましい。乳化重合方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
上述した単量体を含有してなる単量体混合物を乳化重合する際には、通常用いられる、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等の重合副資材を使用することができる。これら重合副資材の添加方法は特に限定されず、初期一括添加法、分割添加法、連続添加法などいずれの方法でもよい。
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;α,β-不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β-不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤などを挙げることができる。なかでも、アニオン性乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。これらの乳化剤は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部である。
重合開始剤としては、特に限定されないが、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-α-クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.01~2重量部である。
また、過酸化物開始剤は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物100重量部に対して3~1000重量部であることが好ましい。
乳化重合する際に使用する水の量は、使用する全単量体100重量部に対して、80~600重量部が好ましく、100~200重量部が特に好ましい。
単量体の添加方法としては、たとえば、反応容器に使用する単量体を一括して添加する方法、重合の進行に従って連続的または断続的に添加する方法、単量体の一部を添加して特定の転化率まで反応させ、その後、残りの単量体を連続的または断続的に添加して重合する方法等が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。単量体を混合して連続的または断続的に添加する場合、混合物の組成は、一定としても、あるいは変化させてもよい。また、各単量体は、使用する各種単量体を予め混合してから反応容器に添加しても、あるいは別々に反応容器に添加してもよい。
さらに、必要に応じて、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることもでき、これらは種類、使用量とも特に限定されない。
乳化重合を行う際の重合温度は、特に限定されないが、通常、3~95℃、好ましくは5~60℃である。重合時間は5~40時間程度である。
以上のように単量体混合物を乳化重合し、所定の重合転化率に達した時点で、重合系を冷却したり、重合停止剤を添加したりして、重合反応を停止する。重合反応を停止する際の重合転化率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは93重量%以上である。
重合停止剤としては、特に限定されないが、たとえば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのアルコールなどが挙げられる。重合停止剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.05~2重量部である。
重合反応を停止した後、所望により、未反応の単量体を除去し、固形分濃度やpHを調整することで、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスを得ることができる。
また、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスには、必要に応じて、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、分散剤などを適宜添加してもよい。
ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスの数平均粒子径は、好ましくは60~300nm、より好ましくは80~150nmである。粒子径は、乳化剤および重合開始剤の使用量を調節するなどの方法により、所望の値に調整することができる。
また、共役ジエン系重合体のラテックスとして、上述したように、蛋白質を除去した天然ゴム(脱蛋白質天然ゴム)のラテックスを用いることもできる。脱蛋白質天然ゴムのラテックスとしては、天然ゴムラテックス中の蛋白質を、例えば蛋白質分解酵素や界面活性剤などにより分解し、洗浄や遠心分離などにより除去する方法などの、公知の蛋白質除去法により得られる、いわゆる「脱蛋白質天然ゴムラテックス」として知られているものを用いることができる。
本発明で用いる共役ジエン系重合体としては、上述したように、合成ポリイソプレン、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体、脱蛋白質天然ゴムなどを用いることができるが、これらに限定されず、ブタジエン重合体、スチレン-ブタジエン共重合体などを用いてもよい。
ブタジエン重合体は、共役ジエン単量体としての1,3-ブタジエンの単独重合体であってもよいし、共役ジエン単量体としての1,3-ブタジエンと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体とを共重合してなる共重合体であってもよい。
また、スチレン-ブタジエン共重合体は、共役ジエン単量体としての1,3-ブタジエンにスチレンを共重合してなる共重合体であり、これらに加えて、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を共重合してなる共重合体であってもよい。
本発明で用いる共役ジエン系重合体のラテックスには、ラテックスの分野で通常配合される、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、キレート化剤、酸素捕捉剤、分散剤、老化防止剤等の添加剤を配合してもよい。
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。なお、準備工程における共役ジエン系重合体のラテックスのpHは特に限定されないが、本発明の製造方法においては、後述するように、共役ジエン系重合体のラテックスに、キサントゲン化合物および硫黄系加硫剤を配合してラテックス組成物とし、該ラテックス組成物を所定の条件で熟成させる際に、熟成前のラテックス組成物のpHが、10以上となっていることが好ましい。
また、必要に応じ、共役ジエン系重合体のラテックスの固形分濃度を上げるために、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法で濃縮操作を施してもよいが、共役ジエン系重合体のラテックス中の乳化剤の残留量を調整することができるという観点より、遠心分離を行うことが好ましい。
共役ジエン系重合体のラテックスを遠心分離機にかける場合、ラテックスの機械的安定性の向上のため、予めpH調整剤を添加してラテックスのpHを7以上としておくことが好ましく、pHを9以上としておくことがより好ましい。
本発明で用いる共役ジエン系重合体のラテックスの固形分濃度は、好ましくは30~70重量%、より好ましくは40~70重量%、さらに好ましくは50~70重量%である。固形分濃度を上記範囲とすることにより、ラテックス中における凝集物の発生をより有効に抑制することができるとともに、ラテックスを貯蔵した際における重合体粒子の分離をより有効に抑制することができる。
<調製工程>
そして、本発明の製造方法においては、上述した共役ジエン系重合体のラテックスに、硫黄系加硫剤、キサントゲン化合物、および強酸塩系界面活性剤を添加することで、これらを含有するラテックス組成物を調製する(調製工程)。
ここで、共役ジエン系重合体のラテックスに、硫黄系加硫剤とともに、キサントゲン化合物を含有させることで、キサントゲン化合物は、遅延型アレルギー(Type IV)の原因とはならないため、遅延型アレルギー(Type IV)の発生を有効に抑制できるものである。その一方で、本発明者等が検討したところ、このように、キサントゲン化合物を配合したラテックス組成物を、熟成(前架橋)させた後、ディップ成形体などの膜成形体の製造に用いようとした場合に、ラテックス組成物中の凝集物量が多くなり、ディップ成形が困難となるという問題があることがわかった。特に、この問題は、共役ジエン系重合体のラテックスとして、カルボキシル基を含有しない共役ジエン系重合体を用いることで、顕著になる傾向にあった。
これに対し、本発明者等が鋭意検討を行ったところ、共役ジエン系重合体のラテックスに、硫黄系加硫剤、およびキサントゲン化合物を添加する際に、強酸塩系界面活性剤を添加することで、このような問題を有効に解決できることを見出したものである。特に、本発明者等が検討を行ったところ、共役ジエン系重合体のラテックスに、キサントゲン化合物を添加すると、得られるラテックス組成物を熟成(前架橋)させた際に、pHが低下してしまい、これにより、ラテックス組成物の安定性が損なわれてしまい、結果として、ラテックス組成物中の凝集物量が多くなってしまうことがわかった。熟成させた際のpHの低下は、キサントゲン化合物を添加した場合に観察される特有の現象である。特定の理論に拘束されないが、熟成させた際のpHの低下は、キサントゲン化合物の分解が一因となっていると考えられる。これに対し、本発明は、共役ジエン系重合体のラテックスに、硫黄系加硫剤、およびキサントゲン化合物を添加する際に、強酸塩系界面活性剤をさらに添加することで、ラテックス組成物を熟成させた際に、pHが低下した場合においても、ラテックス組成物の安定性を保つことができ、結果として、上記問題を解決できることを見出したものである。
硫黄系加硫剤としては、特に限定されないが、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、カプロラクタムジスルフィド(N,N’-ジチオ-ビス(ヘキサヒドロ-2H-アゼピノン-2))、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用できる。硫黄系加硫剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
硫黄系加硫剤の使用量は、特に限定されないが、ラテックス組成物に含まれる共役ジエン系重合体100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.2~3重量部、さらに好ましくは1~2重量部である。硫黄系加硫剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体において、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生を抑制しながら、引張強度をより高めることができる。
本発明で用いるキサントゲン化合物は、硫黄系加硫剤と組み合わせて用いることで、加硫促進剤として作用する。すなわち、ラテックス組成物に、硫黄系加硫剤を配合し、ラテックス組成物中の共役ジエン系重合体を硫黄系加硫剤により加硫して、ディップ成形体などの膜成形体とする場合に、キサントゲン化合物は、加硫促進剤として作用する。また、キサントゲン化合物は、硫黄系加硫剤が配合されたラテックス組成物中において、加硫促進剤として作用し、加硫が行われた後に、加硫時に加わる熱等により、アルコールおよび二硫化炭素等に分解されるものである。たとえば、キサントゲン化合物は、膜成形体を製造する際に加わる熱(共役ジエン系重合体を加硫させる際における100~130℃程度の熱)によって、アルコールおよび二硫化炭素等に分解され、さらに、分解により生成した成分(アルコールおよび二硫化炭素等)が揮発する。これにより、得られる膜成形体は、キサントゲン化合物の残留量が低減されたものとなる。すなわち、本発明のラテックス組成物の製造方法においては、従来、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生原因となっていた加硫促進剤(たとえば、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤など)を使用することなく、キサントゲン化合物を加硫促進剤として使用するため、これにより、得られるディップ成形体などの膜成形体におけるキサントゲン化合物の残留量を低減させることができるため、得られる膜成形体について、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生を抑制することが可能となる。
本発明で用いるキサントゲン化合物としては、特に限定されないが、たとえば、キサントゲン酸、キサントゲン酸塩、キサントゲン二硫化物(2つのキサントゲン酸が硫黄原子等を介して結合された化合物)、キサントゲン多硫化物(3以上のキサントゲン酸が硫黄原子等を介して結合された化合物)などが挙げられる。
キサントゲン酸塩としては、キサントゲン酸構造を有するものであればよく、特に限定されないが、たとえば、一般式(ROC(=S)S)x-Z(ここで、Rは直鎖状または分岐状の炭化水素、Zは金属原子である。xはZの原子価と一致する数で、通常1~4、好ましくは2~4、特に好ましくは2である。)で表される化合物が挙げられる。
上記一般式(ROC(=S)S)x-Zで表されるキサントゲン酸塩としては、特に限定されないが、たとえば、ジメチルキサントゲン酸亜鉛、ジエチルキサントゲン酸亜鉛、ジプロピルキサントゲン酸亜鉛、ジイソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ジブチルキサントゲン酸亜鉛、ジペンチルキサントゲン酸亜鉛、ジヘキシルキサントゲン酸亜鉛、ジヘプチルキサントゲン酸亜鉛、ジオクチルキサントゲン酸亜鉛、ジ(2-エチルヘキシル)キサントゲン酸亜鉛、ジデシルキサントゲン酸亜鉛、ジドデシルキサントゲン酸亜鉛、ジメチルキサントゲン酸カリウム、エチルキサントゲン酸カリウム、プロピルキサントゲン酸カリウム、イソプロピルキサントゲン酸カリウム、ブチルキサントゲン酸カリウム、ペンチルキサントゲン酸カリウム、ヘキシルキサントゲン酸カリウム、ヘプチルキサントゲン酸カリウム、オクチルキサントゲン酸カリウム、2-エチルヘキシルキサントゲン酸カリウム、デシルキサントゲン酸カリウム、ドデシルキサントゲン酸カリウム、メチルキサントゲン酸ナトリウム、エチルキサントゲン酸ナトリウム、プロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、ブチルキサントゲン酸ナトリウム、ペンチルキサントゲン酸ナトリウム、ヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、ヘプチルキサントゲン酸ナトリウム、オクチルキサントゲン酸ナトリウム、2-エチルヘキシルキサントゲン酸ナトリウム、デシルキサントゲン酸ナトリウム、ドデシルキサントゲン酸ナトリウム等が挙げられる。これらのなかでも、上記一般式(ROC(=S)S)x-Zにおけるxが2以上であるキサントゲン酸塩が好ましく、イソプロピルキサントゲン酸塩類、ブチルキサントゲン酸塩類がより好ましく、ジイソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ジブチルキサントゲン酸亜鉛が特に好ましい。これらのキサントゲン酸塩は、1種単独でも、複数種を併用してもよい。
キサントゲン二硫化物は、2つのキサントゲン酸が硫黄原子等を介して結合された化合物であり、特に限定されないが、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジブチルキサントゲンジスルフィド、ジメチルキサントゲンポリスルフィド、ジエチルキサントゲンポリスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンポリスルフィド、ジブチルキサントゲンポリスルフィドなどが挙げられ、これらのなかでも、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジブチルキサントゲンジスルフィドが好ましい。
キサントゲン多硫化物は、3以上のキサントゲン酸が硫黄原子等を介して結合された化合物であり、3つのキサントゲン酸が硫黄を介して結合されたキサントゲン三硫化物、4つのキサントゲン酸が硫黄を介して結合されたキサントゲン四硫化物、5つのキサントゲン酸が硫黄を介して結合されたキサントゲン五硫化物などが挙げられる。
なお、これらのキサントゲン化合物は、ラテックス組成物に、1種単独で含まれていてもよいが、2種以上が含まれていることが好ましい。たとえば、ラテックス組成物にキサントゲン酸を配合した場合には、配合したキサントゲン酸の一部が、キサントゲン酸塩の形態で存在することで、結果として、ラテックス組成物に2種以上のキサントゲン化合物が含まれることになってもよい。あるいは、ラテックス組成物に配合したキサントゲン酸の一部が、ラテックス組成物中の硫黄系加硫剤の作用により、キサントゲン二硫化物やキサントゲン多硫化物の形態で存在してもよい。同様に、ラテックス組成物にキサントゲン酸塩、キサントゲン二硫化物またはキサントゲン多硫化物を配合した場合においても、これらは、それぞれ、キサントゲン酸、キサントゲン酸塩、キサントゲン二硫化物、キサントゲン多硫化物のいずれかの形態で存在してもよい。
キサントゲン化合物の使用量(複数のキサントゲン化合物が含まれることとなる場合には、その合計の使用量)は、ラテックスに含まれる共役ジエン系重合体100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.1~7重量部、さらに好ましくは0.5~5重量部、よりさらに好ましくは1~3重量部である。キサントゲン化合物の使用量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体について、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生を抑制しながら、引張強度をより向上させることができる。
なお、本発明においては、ラテックス組成物には、キサントゲン化合物以外に、加硫促進剤として従来使用されている化合物、具体的には、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生原因となる硫黄を含有する加硫促進剤(たとえば、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤など)であって、加硫促進剤として作用した後に、得られるディップ成形体などの膜成形体に残留してしまう化合物が、実質的に含まれていないことが好ましい。
本発明で用いる強酸塩系界面活性剤としては、強酸と強塩基とからなる塩に由来の構造を有し、かつ、界面活性作用を有するものであれば、特に限定されないが、たとえば、スルホン酸塩基を有する化合物、硫酸塩基または硫酸エステル塩基を有する化合物、リン酸塩基またはリン酸エステル塩基を有する化合物、硝酸塩基を有する化合物などが挙げられ、これらの中でも、スルホン酸塩基を有する化合物、リン酸塩基またはリン酸エステル塩基を有する化合物が好ましく、スルホン酸塩基を有する化合物またはリン酸塩基を有する化合物がより好ましい。なお、これらの強酸塩系界面活性剤は、1種単独でも、複数種を併用してもよい。
強酸塩系界面活性剤としてのスルホン酸塩基を有する化合物としては、スルホ基が強塩基によって中和された塩構造を有する化合物であれば、特に限定されないが、たとえば、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、1-ヘキサンスルホン酸ナトリウム、ナフタレントリスルホン酸三ナトリウムなどが挙げられる。
強酸塩系界面活性剤としての硫酸塩基または硫酸エステル塩基を有する化合物としては、硫酸基または硫酸エステル基が強塩基によって中和された塩構造を有する化合物であれば、特に限定されないが、たとえば、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
強酸塩系界面活性剤としてのリン酸塩基またはリン酸エステル塩基を有する化合物としては、リン酸基またはリン酸エステル基が強塩基によって中和された塩構造を有する化合物であれば、特に限定されないが、たとえば、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウムなどが挙げられる。
また、本発明で用いる、強酸塩系界面活性剤としては、多環構造を有する化合物であってもよい。多環構造としては、環構造が2つ以上存在する構造であれば、特に限定されないが、たとえば、ベンゼン環が2つ単結合でつながった構造であるビフェニル構造や、2つ以上の単環が縮合(縮環)してなる縮合多環構造等が挙げられる。多環構造を構成する環は、脂環であっても芳香族環であってもよく、また、ヘテロ原子を含んだものであってもよい。また、環数は特に限定されるものではないが、2環以上であるのが好ましく、実用上、その上限としては10環程度である。縮合多環構造としては、たとえば、ジシクロペンタジエン構造、ナフタレン構造、フルオレン構造、アントラセン構造、フェナントレン構造、トリフェニレン構造、ピレン構造、オバレン構造などが挙げられる。
強酸塩系界面活性剤としての、多環構造を有する化合物としては、たとえば、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF)、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム、ナフタレントリスルホン酸三ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられ、これらのなかでも、スルホン酸塩基および多環構造を有する化合物である、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF)が好ましい。
強酸塩系界面活性剤の使用量は、共役ジエン系重合体ラテックスに含まれる共役ジエン系重合体100重量部に対して、好ましくは0.01~5重量部、より好ましくは0.1~4重量部、さらに好ましくは0.1~3重量部、よりさらに好ましくは0.5~3重量部、特に好ましくは0.8~1.5重量部である。強酸塩系界面活性剤の使用量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体について、引張強度、引張伸び、および引裂強度をより向上させることができる。なお、共役ジエン系重合体のラテックスを調製する際に、乳化剤として、強酸塩系界面活性剤を使用した場合には、上記した使用量は、乳化剤として使用した強酸塩系界面活性剤の量を除いた量とする。
すなわち、たとえば、共役ジエン系重合体のラテックスとして、共役ジエン系重合体の溶液または微細懸濁液を、乳化剤の存在下に、水中で乳化し、必要により有機溶媒を除去し、濃縮により、固形分濃度を30~70重量%(より好ましくは40~70重量%、さらに好ましくは50~70重量%)に調整することにより得られた共役ジエン系重合体のラテックスを用いる場合には、有機溶媒を除去し、固形分濃度を30~70重量%(より好ましくは40~70重量%、さらに好ましくは50~70重量%)に調整した後における、強酸塩系界面活性剤の使用量を上記範囲とすることが好ましい。
上述した共役ジエン系重合体のラテックスに、硫黄系加硫剤、キサントゲン化合物、および強酸塩系界面活性剤を添加する方法としては、特に限定されないが、硫黄系加硫剤、キサントゲン化合物、および強酸塩系界面活性剤の順に、これらを添加してもよいし、これらを同時に添加してもよい。あるいは、強酸塩系界面活性剤を予め添加した後、硫黄系加硫剤、およびキサントゲン化合物をこの順に、あるいは、キサントゲン化合物、および硫黄系加硫剤の順に添加してもよい。なかでも、キサントゲン化合物を添加することに起因して、ラテックス組成物のpHが低下した場合でも、より安定性に優れたものとすることができるという観点より、強酸塩系界面活性剤を予め添加した後、硫黄系加硫剤、およびキサントゲン化合物を添加する方法を採用することが好ましい。なお、この際における、硫黄系加硫剤、およびキサントゲン化合物を添加する際における添加順序は、特に限定されず、どちらを先に添加してもよいし、あるいは、これらを同時に添加してもよい。なお、硫黄系加硫剤、キサントゲン化合物、および強酸塩系界面活性剤は、水溶液あるいは水性分散液の状態で添加してもよい。
また、本発明の製造方法においては、上述した共役ジエン系重合体のラテックスに対し、硫黄系加硫剤、キサントゲン化合物、および強酸塩系界面活性剤に加えて、必要に応じて、活性化剤を添加してもよい。
ラテックス組成物に、活性化剤を配合することにより、得られるラテックス組成物を用いて、ラテックス組成物中の共役ジエン系重合体を硫黄系加硫剤により加硫してディップ成形体などの膜成形体とする際に、活性化剤が、上述したキサントゲン化合物とともに加硫促進剤として作用し、これにより、得られるディップ成形体などの膜成形体の引裂強度がより向上する。
活性化剤としては、特に限定されないが、得られるディップ成形体などの膜成形体の引裂強度がより向上するという観点より、金属化合物を用いることが好ましい。金属化合物としては、特に限定されないが、たとえば、金属酸化物、炭素原子を少なくとも1つ含有する金属化合物などが挙げられる。金属化合物を構成する金属としては、特に限定されないが、典型金属(第1族元素、第2族元素、第12族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、第17族元素、および第18族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素)が好ましく、第2族元素、第12族元素、第13族元素、第14族元素がより好ましく、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉛がさらに好ましく、亜鉛、マグネシウム、カルシウムが特に好ましく、亜鉛が最も好ましい。これらの金属化合物は、1種単独でも、複数種を併用してもよい。
金属酸化物としては、特に限定されないが、得られるディップ成形体などの膜成形体の引裂強度がより向上するという観点より、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化カルシウム、鉛酸化物、酸化鉄、酸化銅、酸化錫、酸化ニッケル、酸化クロム、酸化コバルト、および酸化アルミニウムが好ましく、酸化亜鉛がより好ましい。
炭素原子を少なくとも1つ含有する金属化合物としては、得られるディップ成形体などの膜成形体の引裂強度がより向上するという観点より、炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、有機金属化合物が好ましく、炭酸塩、炭酸水素塩、有機金属化合物がより好ましい。これらのなかでも、化合物自体の安定性に優れ、入手容易性にも優れるという観点より、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機塩が特に好ましい。
活性化剤の使用量は、ラテックス組成物に含まれる共役ジエン系重合体100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.1~5重量部、さらに好ましくは1~3重量部である。活性化剤の使用量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体の引裂強度をより向上させることができる。
活性化剤の配合方法は、最終的に共役ジエン系重合体のラテックスと活性化剤とが混合した状態となる方法であればよく、特に限定されない。
また、ラテックス組成物には、得られるディップ成形体などの膜成形体において、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生を抑制可能な範囲であれば、さらに加硫促進剤を添加してもよい。
加硫促進剤としては、ディップ成形において通常用いられるものを使用することができ、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ-2-エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2-メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2-(2,4-ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2-(N,N-ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2-(4’-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4-モルホニリル-2-ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3-ビス(2-ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられる。加硫促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、ラテックス組成物には、さらに、老化防止剤;分散剤;カーボンブラック、シリカ、タルク等の補強剤;炭酸カルシウム、クレー等の充填剤;紫外線吸収剤;可塑剤;等の配合剤を必要に応じて配合することができる。
老化防止剤としては、2,6-ジ-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノール、2,2’-メチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、p-クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、などの硫黄原子を含有しないフェノール系老化防止剤;2,2’-チオビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス-(6-t-ブチル-o-クレゾール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノールなどのチオビスフェノール系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの亜燐酸エステル系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの硫黄エステル系老化防止剤;フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)-ジフェニルアミン、4,4’―(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,5-ジ-(t-アミル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン系老化防止剤;などが挙げられる。これらの老化防止剤は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
老化防止剤の含有量は、共役ジエン系重合体100重量部に対して、好ましくは0.05~10重量部、より好ましくは0.1~5重量部、さらに好ましくは1~3重量部である。
ラテックス組成物に各種配合剤を混合する方法としては、特に限定されないが、たとえば、上述したようにして共役ジエン系重合体のラテックス、硫黄系加硫剤、キサントゲン化合物、および強酸塩系界面活性剤を含有する組成物を得た後、ボールミル、ニーダー、ディスパー等の分散機を用いて、得られた組成物に、必要に応じて配合される各種配合剤を混合する方法や、共役ジエン系重合体のラテックスおよび強酸塩系界面活性剤を含有する組成物を得た後、上記の分散機を用いて、共役ジエン系重合体のラテックスおよび強酸塩系界面活性剤以外の配合成分の水性分散液を調製し、次いで、該水性分散液を、共役ジエン系重合体のラテックスおよび強酸塩系界面活性剤を含有するラテックス組成物に混合する方法などが挙げられる。また、各種配合剤のうち少なくとも一部については、後述する熟成の後に配合してもよい。
なお、本発明のラテックス組成物の固形分濃度は、好ましくは10~60重量%、より好ましくは10~55重量%である。
<熟成工程>
本発明においては、このようにして得られるラテックス組成物に対して、熟成(前架橋)を行うことが好ましい。熟成の条件としては、特に限定されないが、たとえば、温度5~60℃の条件で、12時間~14日間貯蔵することで熟成を行うことができる。本発明においては、熟成前のラテックス組成物のpHを、10以上に調整することが好ましく、11以上に調整することがより好ましく、12以上に調整することがさらに好ましい。熟成前のラテックス組成物のpHを上記範囲とすることにより、熟成後のラテックス組成物の安定性をより高めることすることができる。なお、熟成前のラテックス組成物のpHの上限は、特に限定されないが、14以下とすることが好ましく、13.5以下とすることがより好ましい。
熟成を行う際の温度は、5~60℃が好ましく、10~30℃がより好ましく、10~25℃がさらに好ましい。熟成の温度を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体の機械的強度をより向上させることができる。
熟成する時間は、熟成の温度にも依存するが、12時間~14日間が好ましく、12時間~10日間がより好ましく、12時間~7日間がさらに好ましい。熟成する時間を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体の機械的強度をより向上させることができる。
また、本発明においては、熟成後のラテックス組成物のpHを、9以上とすることが好ましく、9.5以上とすることがより好ましく、10以上とすることがさらに好ましい。熟成後のラテックス組成物のpHが低くなりすぎると、熟成後のラテックス組成物の安定性が低くなってしまい、これにより、ラテックス組成物中における凝集の発生が多くなってしまう場合がある。なお、熟成後のラテックス組成物のpHの上限は、特に限定されないが、14以下とすることが好ましく、13.5以下とすることがより好ましい。
なお、本発明で製造するラテックス組成物は、キサントゲン化合物が含まれていることに起因し、熟成によってラテックス組成物のpHが低下する傾向にあるところ、本発明によれば、キサントゲン化合物に加えて、強酸塩系界面活性剤を添加することで、このようなpHの低下による、ラテックス組成物の安定性の低下を抑制するものである。その一方で、強酸塩系界面活性剤を添加した場合でも、このようなpHの低下による、ラテックス組成物の安定性の低下を有効に緩和することが出来るものの、ラテックス組成物のpHは、低下しないことが好ましい。そのため、熟成によってラテックス組成物のpHが低下した際においては、熟成後あるいは熟成中のラテックス組成物に対してpH調整剤を添加することで、pHを上記範囲に調整してもよい。熟成後あるいは熟成中のラテックス組成物に対して、pH調整剤を添加するタイミングとしては、特に限定されないが、熟成開始から24時間以内に添加することが好ましく、熟成開始から12時間以内に添加することがより好ましい。
熟成後あるいは熟成中のラテックス組成物に添加するpH調整剤としては、特に限定されないが、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物、アンモニアまたは有機アミン化合物が好ましい。これらのpH調整剤は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
本発明のラテックス組成物の製造方法によれば、ラテックス組成物を、共役ジエン系重合体のラテックスと、硫黄系加硫剤と、キサントゲン化合物と、強酸塩系界面活性剤とを含有することにより、ラテックス組成物自体を安定性に優れたものとすることができるとともに、得られるディップ成形体などの膜成形体を、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生を抑制しながら、引張強度、引張伸び、および引裂強度にも優れるものとすることができる。
<ディップ成形体>
本発明のディップ成形体の製造方法においては、上述した本発明の製造方法により得られるラテックス組成物をディップ成形することによりディップ成形体を得ることができる。ディップ成形は、ラテックス組成物に型を浸漬し、型の表面に当該組成物を沈着させ、次に型を当該組成物から引き上げ、その後、型の表面に沈着した当該組成物を乾燥させる方法である。なお、ラテックス組成物に浸漬される前の型は予熱しておいてもよい。また、型をラテックス組成物に浸漬する前、または、型をラテックス組成物から引き上げた後、必要に応じて凝固剤を使用できる。
凝固剤の使用方法の具体例としては、ラテックス組成物に浸漬する前の型を凝固剤の溶液に浸漬して型に凝固剤を付着させる方法(アノード凝着浸漬法)、ラテックス組成物を沈着させた型を凝固剤溶液に浸漬する方法(ティーグ凝着浸漬法)などがあるが、厚みムラの少ないディップ成形体が得られる点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
凝固剤の具体例としては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛など酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;などの水溶性多価金属塩である。なかでも、カルシウム塩が好ましく、硝酸カルシウムがより好ましい。これらの水溶性多価金属塩は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
凝固剤は、通常、水、アルコール、またはそれらの混合物の溶液として使用することができ、好ましくは水溶液の状態で使用する。この水溶液は、さらにメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒やノニオン性界面活性剤を含有していてもよい。凝固剤の濃度は、水溶性多価金属塩の種類によっても異なるが、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~30重量%である。
型をラテックス組成物から引き上げた後、通常、加熱して型上に形成された沈着物を乾燥させる。乾燥条件は適宜選択すればよい。
次いで、加熱して、型上に形成されたディップ成形層を架橋させる。ディップ成形層の架橋は、通常、80~150℃の温度で、好ましくは10~130分の加熱処理を施すことにより行うことができる。加熱の方法としては、赤外線や加熱空気による外部加熱または高周波による内部加熱による方法が採用できる。なかでも、加熱空気による外部加熱が好ましい。なお、加熱処理を施す前に、ディップ成形層を、水、好ましくは30~70℃の温水に、1~60分程度浸漬し、水溶性不純物(たとえば、余剰の乳化剤や凝固剤等)を除去してもよい。水溶性不純物の除去操作は、ディップ成形層を加熱処理した後に行なってもよいが、より効率的に水溶性不純物を除去できる点から、加熱処理前に行なうことが好ましい。
そして、ディップ成形層をディップ成形用型から脱着することによって、ディップ成形体が得られる。脱着方法としては、手で成形用型から剥したり、水圧や圧縮空気の圧力により剥したりする方法を採用することができる。なお、脱着後、更に60~120℃の温度で、10~120分の加熱処理を行なってもよい。
ディップ成形体の膜厚は、好ましくは0.03~0.50mm、より好ましくは0.05~0.40mm、特に好ましくは0.08~0.30mmである。
本発明の製造方法により得られるディップ成形体は、上述したラテックス組成物を用いて得られるものであるため、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生を抑制しながら、引張強度、引張伸び、および引裂強度にも優れるものであり、たとえば、手袋として特に好適に用いることができる。膜成形体が手袋である場合、膜成形体同士の接触面における密着を防止し、着脱の際の滑りをよくするために、タルク、炭酸カルシウムなどの無機微粒子または澱粉粒子などの有機微粒子を手袋表面に散布したり、微粒子を含有するエラストマー層を手袋表面に形成したり、手袋の表面層を塩素化したりしてもよい。
また、本発明の製造方法により得られるディップ成形体は、上記手袋の他にも、哺乳瓶用乳首、スポイト、チューブ、水枕、バルーンサック、カテーテル、コンドームなどの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具;加圧成形用バック、ガス貯蔵用バックなどの工業用品;指サックなどにも用いることができる。
以下、実施例により本発明が詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。なお、各種の物性は以下のように測定した。
<固形分濃度>
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=(X3-X1)×100/X2
<凝集物含有量>
上記した方法に従って、ラテックス組成物の固形分濃度を測定し、そのラテックス組成物約100gを精秤した後、重量既知の200メッシュのSUS製金網でろ過し、金網上の凝集物を数回水洗して、ラテックス組成物を除去した。これを、105℃で60分間、乾燥した後、その乾燥重量を測定し、凝集物の含有量を、ラテックス組成物中に含まれる重合体の成分の量を100重量%とした際の割合として求めた(単位:重量%)。凝集物の含有量が少ないほど、ラテックス組成物の安定性に優れる。
<ディップ成形体の引張強度、引張伸び>
ASTM D412に基づいて、ディップ成形体を、ダンベル(商品名「スーパーダンベル(型式:SDMK-100C)」、ダンベル社製)で打ち抜き、引張強度測定用試験片を作製した。当該試験片をテンシロン万能試験機(商品名「RTG-1210」、オリエンテック社製)で引張速度500mm/minで引っ張り、破断直前の引張強度(単位:MPa)、および破断直前の引張伸び(単位:%)を測定した。
<ディップ成形体の引裂強度>
ASTM D624-00に基づいて、ディップ成形体を、23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室で24時間以上放置した後、ダンベル(商品名「Die C」、ダンベル社製)で打ち抜き、引裂強度測定用の試験片を作製した。当該試験片をテンシロン万能試験機(商品名「RTG-1210」、A&D社製)で引張速度500mm/minで引っ張り、引裂強度(単位:N/mm)を測定した。
<実施例1>
(合成ポリイソプレン(A-1)のラテックスの製造)
乾燥され、窒素置換された撹拌機付きオートクレーブに、n-ヘキサン900部とイソプレン100部とを仕込んだ。オートクレーブ内の温度を60℃にし、撹拌しながら、触媒溶液としての、15重量%のn-ブチルリチウムを含有するn-ヘキサン溶液0.05部を加えて1時間反応させ、反応液を得た。重合反応率は99%であった。得られた反応液に、重合停止剤としてメタノールを添加し、反応を停止させることで重量平均分子量(Mw)が1,840,000の合成ポリイソプレンのn-ヘキサン溶液(a-1)(固形分濃度10重量%)を得た。
一方、ロジン酸カリウムを水に添加し、温度を60℃に昇温して溶解し、濃度1.5重量%の乳化剤水溶液(b-1)を調製した。
次に、上記にて得られた合成ポリイソプレンのn-ヘキサン溶液(a-1)と、乳化剤水溶液(b-1)とを、合成ポリイソプレンのn-ヘキサン溶液(a-1)中の合成ポリイソプレン100部に対して、乳化剤水溶液(b-1)中のロジン酸カリウムが10部となるように、ミキサー(製品名「マルチラインミキサーMS26-MMR-5.5L」、佐竹化学機械工業社製)を用いて混合し、続いて、乳化装置(製品名「マイルダーMDN310」、太平洋機工社製)を用いて、回転数4100rpmで混合および乳化することで、乳化分散液(c-1)を得た。なお、この際、合成ポリイソプレンのn-ヘキサン溶液(a-1)と乳化剤水溶液(b-1)との合計のフィード流速は2,000kg/hr、温度は60℃、背圧(ゲージ圧)は0.5MPaとした。
次いで、得られた乳化分散液(c-1)を、-0.01~-0.09MPa(ゲージ圧)の減圧下で80℃に加温し、n-ヘキサンを留去し、合成ポリイソプレンの水分散液(d-1)を得た。その際、消泡剤(商品名「SM5515」、東レ・ダウコーニング社製)を、乳化分散液(c-1)中の合成ポリイソプレンに対して300重量ppmの量になるよう、噴霧しながら連続添加した。なお、n-ヘキサンを留去する際には、乳化分散液(c-1)がタンクの容積の70体積%以下になるように調整し、かつ、攪拌翼として3段の傾斜パドル翼を用い、60rpmでゆっくり攪拌を実施した。
そして、n-ヘキサンの留去が完了した後、得られた合成ポリイソプレンの水分散液(d-1)を、連続遠心分離機(製品名「SRG510」、アルファラバル社製)を用いて、8,000~9,000Gで遠心分離することで濃縮し、軽液としての固形分濃度60重量%の合成ポリイソプレン(A-1)のラテックスを得た。なお、遠心分離の条件は、遠心分離前の水分散液(d-1)の固形分濃度8重量%、連続遠心分離時の流速は1300kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)は0.1MPaとした。また、得られた合成ポリイソプレン(A-1)のラテックスは、合成ポリイソプレン(A-1)のラテックス中の合成ポリイソプレン(A-1)100部に対して、ロジン酸カリウムが1部残留しているものであった。また、合成ポリイソプレン(A-1)は、カルボキシル基を実質的に含有しないものであった。
(ラテックス組成物の調製)
上記にて得られた合成ポリイソプレン(A-1)のラテックスを撹拌しながら、合成ポリイソプレン(A-1)のラテックス中の合成ポリイソプレン(A-1)100部に対して、固形分換算での配合量が1.0部となるように、強酸塩系界面活性剤としてのβ-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF、製品名「デモールT-45」、花王社製)を添加した。そして、得られた混合物を撹拌しながら、混合物中の合成ポリイソプレン(A-1)100部に対して、それぞれ固形分換算で、キサントゲン化合物としてのジイソプロピルキサントゲン酸亜鉛2.5部、酸化亜鉛1.5部、硫黄1.5部、老化防止剤(製品名「Wingstay L」、グッドイヤー社製)2部となるように、各配合剤の水分散液を添加した後、水酸化カリウム水溶液(濃度5.0重量%)を添加して、pHを12.5に調整したラテックス組成物を得た(熟成前のラテックス組成物のpHを12.5とした。)。
(ラテックス組成物の熟成)
そして、得られたラテックス組成物を、30℃に調整された恒温水槽で48時間熟成した。なお、熟成開始から12時間後のラテックス組成物に、水酸化カリウム水溶液(濃度5.0重量%)を添加して、ラテックス組成物のpHを12.1に調整した。また、熟成開始から12時間後、水酸化カリウム水溶液を添加する前のラテックス組成物のpHは11.6であり、48時間の熟成後のラテックス組成物のpHは11.8であった。
(ディップ成形体の製造)
市販のセラミック製手型(シンコー社製)を洗浄し、70℃のオーブン内で予備加熱した後、18重量%の硝酸カルシウムおよび0.05重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名「エマルゲン109P」、花王社製)を含有する凝固剤水溶液に5秒間浸漬し、凝固剤水溶液から取り出した。次いで、手型を70℃のオーブン内で30分以上乾燥させることで、手型に凝固剤を付着させて、手型を凝固剤により被覆した。
その後、凝固剤で被覆された手型を、オーブンから取り出し、上記にて得られた48時間の熟成後のラテックス組成物に10秒間浸漬した。次いで、この手型を、室温で10分間風乾してから、60℃の温水中に5分間浸漬して水溶性不純物を溶出させて、手型にディップ成形層を形成した。その後、手型に形成したディップ成形層を、オーブンにより温度130℃、30分間の条件で加熱することにより架橋させた後、室温まで冷却し、タルクを散布してから手型から剥離して、ディップ成形体(ゴム手袋)を得た。そして、得られたディップ成形体(ゴム手袋)について、上記方法にしたがって、凝固物含有量、引張強度、引張伸び、および引裂強度の各評価を行った。結果を表1に示す。なお、得られたディップ成形体(ゴム手袋)の外観は良好であり、特に問題がないものであった(後述する各実施例においても同様。)。
<実施例2>
熟成前のラテックス組成物に対するpH調整剤(水酸化カリウム水溶液)の添加量を変更した以外は、実施例1と同様にして、pHを11.1とした熟成前のラテックス組成物を得た。そして、得られた熟成前のラテックス組成物について、実施例1と同様にして、48時間の熟成を行った。なお、実施例2においては、熟成開始から12時間後のラテックス組成物に、水酸化カリウム水溶液(濃度5.0重量%)を添加して、ラテックス組成物のpHを11.0に調整した。また、熟成開始から12時間後、水酸化カリウム水溶液を添加する前のラテックス組成物のpHは10.4であり、48時間の熟成後のラテックス組成物のpHは10.8であった。そして、48時間の熟成後のラテックス組成物を用いて、実施例1と同様にして、ディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例3>
熟成前のラテックス組成物に対するpH調整剤(水酸化カリウム水溶液)の添加量を変更した以外は、実施例1と同様にして、pHを11.1とした熟成前のラテックス組成物を得た。そして、得られた熟成前のラテックス組成物について、実施例1と同様にして、48時間の熟成を行った。なお、実施例3においては、熟成開始から12時間後における、ラテックス組成物への、pH調整剤(水酸化カリウム水溶液)の添加は行わなかった。また、熟成開始から12時間後のラテックス組成物のpHは10.4であり、熟成後のラテックス組成物のpHは10.1であった。そして、48時間の熟成後のラテックス組成物を用いて、実施例1と同様にして、ディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例4>
(合成ポリイソプレン(A-2)のラテックスの製造)
乾燥され、窒素置換された撹拌機付きオートクレーブに、n-ヘキサン900部と、合成ポリイソプレン(日本ゼオン社製、商品名「IR2200L」、Ti-Al系の重合触媒により重合された、カルボキシル基を実質的に含有しない合成ポリイソプレン)100部とを仕込んだ。そして、攪拌しながら温度を60℃に昇温して溶解し、合成ポリイソプレンのn-ヘキサン溶液(a-2)(固形分濃度:10重量%)を得た。n-ヘキサン溶液中の合成ポリイソプレンの重量平均分子量は1,210,000であった。
一方、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を水に添加し、温度を60℃に昇温して溶解し、濃度1.0重量%の乳化剤水溶液(b-2)を調製した。
次に、上記にて得られた合成ポリイソプレンのn-ヘキサン溶液(a-2)と、乳化剤水溶液(b-2)とを、合成ポリイソプレンのn-ヘキサン溶液(a-2)中の合成ポリイソプレン100部に対して、乳化剤水溶液(b-2)中の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が10部となるように、ミキサー(製品名「マルチラインミキサーMS26-MMR-5.5L」、佐竹化学機械工業社製)を用いて混合し、続いて、乳化装置(製品名「マイルダーMDN310」、太平洋機工社製)を用いて、回転数4100rpmで混合および乳化することで、乳化分散液(c-2)を得た。なお、この際、合成ポリイソプレンのn-ヘキサン溶液(a-2)と乳化剤水溶液(b-2)との合計のフィード流速は2,000kg/hr、温度は60℃、背圧(ゲージ圧)は0.5MPaとした。
次いで、得られた乳化分散液(c-2)を、-0.01~-0.09MPa(ゲージ圧)の減圧下で80℃に加温し、n-ヘキサンを留去し、合成ポリイソプレンの水分散液(d-2)を得た。その際、消泡剤(商品名「SM5515」、東レ・ダウコーニング社製)を、乳化分散液(c-2)中の合成ポリイソプレンに対して300重量ppmの量になるよう、噴霧しながら連続添加した。なお、n-ヘキサンを留去する際には、乳化分散液(c-2)がタンクの容積の70体積%以下になるように調整し、かつ、攪拌翼として3段の傾斜パドル翼を用い、60rpmでゆっくり攪拌を実施した。
そして、n-ヘキサンの留去が完了した後、得られた合成ポリイソプレンの水分散液(d-2)を、連続遠心分離機(製品名「SRG510」、アルファラバル社製)を用いて、8,000~9,000Gで遠心分離することで濃縮し、軽液としての固形分濃度60重量%の合成ポリイソプレン(A-2)のラテックスを得た。なお、遠心分離の条件は、遠心分離前の水分散液(s-2)の固形分濃度8重量%、連続遠心分離時の流速は1,300kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)は0.1MPaとした。また、合成ポリイソプレン(A-2)のラテックスは、合成ポリイソプレン(A-2)のラテックス中の合成ポリイソプレン(A-2)100部に対して、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸が1部残留しているものであった。また、合成ポリイソプレン(A-2)は、カルボキシル基を実質的に含有しないものであった。
(ラテックス組成物の調製)
上記にて得られた合成ポリイソプレン(A-2)のラテックスを撹拌しながら、合成ポリイソプレン(A-2)のラテックス中の合成ポリイソプレン(A-2)100部に対して、固形分換算での配合量が1.0部となるように、強酸塩系界面活性剤としてのβ-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF、製品名「デモールT-45」、花王社製)を添加した。そして、得られた混合物を撹拌しながら、混合物中の合成ポリイソプレン(A-2)100部に対して、それぞれ固形分換算で、キサントゲン化合物としてのジイソプロピルキサントゲン酸亜鉛2.5部、酸化亜鉛1.5部、硫黄1.5部、老化防止剤(製品名「Wingstay L」、グッドイヤー社製)2部となるように、各配合剤の水分散液を添加した後、水酸化カリウム水溶液(濃度5.0重量%)を添加して、pHを10.8に調整したラテックス組成物を得た(熟成前のラテックス組成物のpHを10.8とした。)。
(ラテックス組成物の熟成)
そして、得られたラテックス組成物を、30℃に調整された恒温水槽で48時間熟成した。なお、熟成開始から12時間後のラテックス組成物のpHは10.1であり、48時間の熟成後のラテックス組成物のpHは9.8であった。
(ディップ成形体の製造)
そして、合成ポリイソプレン(A-1)を含むラテックス組成物に代えて、合成ポリイソプレン(A-2)を含むラテックス組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、ディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例1>
熟成前のラテックス組成物に、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF)を添加せず、かつ、熟成前のラテックス組成物に対するpH調整剤(水酸化カリウム水溶液)の添加量を変更した以外は、実施例1と同様にして、pHを9.5とした熟成前のラテックス組成物を得た。そして、得られた熟成前のラテックス組成物について、実施例1と同様にして、48時間の熟成を行った。なお、比較例1においては、熟成開始から12時間における、ラテックス組成物への、pH調整剤(水酸化カリウム水溶液)の添加は行わなかった。また、熟成開始から12時間後のラテックス組成物のpHは8.3であり、熟成後のラテックス組成物のpHは8.1であった。なお、比較例1で得られたラテックス組成物は、凝集物の発生が顕著であり(凝集物量:52.5重量%)、ディップ成形体を製造することができなかった。結果を表1に示す。
<比較例2>
合成ポリイソプレンの水分散液(d-2)を、連続遠心分離機(製品名「SRG510」、アルファラバル社製)を用いて遠心分離する際の条件を、7,000~8,000G、連続遠心分離時の流速2,000kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)0.12MPaに変更した以外は、実施例4と同様にして、合成ポリイソプレン(A-2)のラテックスを得た。なお、得られた合成ポリイソプレン(A-2)のラテックスは、合成ポリイソプレン(A-2)のラテックス中の合成ポリイソプレン(A-2)100部に対して、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸が2部残留しているものであった。
次いで、上記にて得られた合成ポリイソプレン(A-2)のラテックスを撹拌しながら、合成ポリイソプレン(A-2)のラテックス中の合成ポリイソプレン(A-2)100部に対して、それぞれ固形分換算で、キサントゲン化合物としてのジイソプロピルキサントゲン酸亜鉛2.5部、酸化亜鉛1.5部、硫黄1.5部、老化防止剤(製品名「Wingstay L」、グッドイヤー社製)2部となるように、各配合剤の水分散液を添加した後、水酸化カリウム水溶液(濃度5.0重量%)を添加して、pHを9.8に調整したラテックス組成物を得た(熟成前のラテックス組成物のpHを9.8とした。)。
そして、得られたラテックス組成物を、30℃に調整された恒温水槽で48時間熟成した。熟成開始から12時間後のラテックス組成物のpHは8.8であり、熟成後のラテックス組成物のpHは8.5であった。また、比較例2で得られたラテックス組成物は、凝集物の発生が顕著であり(凝集物量:27.5重量%)、ディップ成形体を製造することができなかった。結果を表1に示す。
表1に示すように、準備した共役ジエン系重合体ラテックスに、硫黄系加硫剤、キサントゲン化合物、および強酸塩系界面活性剤を添加する製造方法により得られたラテックス組成物は、安定性に優れ、凝集物の発生を抑制できるものであり、さらに、ディップ成形体とした場合に、得られるディップ成形体が、引張強度、引張伸び、および引裂強度に優れるものであった(実施例1~4)。また、得られたラテックス組成物は、遅延型アレルギー(Type IV)の症状を引き起こすような加硫促進剤を配合していないため、ディップ成形体とした場合に、得られるディップ成形体は、遅延型アレルギー(Type IV)の発生を防止できるものであると考えられる。
一方、共役ジエン系重合体ラテックスに、強酸塩系界面活性剤を添加せず、ラテックス組成物を調製した場合は、ラテックス組成物としての安定性に劣り、凝集物が多量に発生し、ディップ成形体を製造することができないものであった(比較例1)。
また、共役ジエン系重合体ラテックスを得る際における、乳化時に、強酸塩系界面活性剤を使用し、共役ジエン系重合体ラテックス中に、強酸塩系界面活性剤が残留していた場合であっても、硫黄系加硫剤、およびキサントゲン化合物を添加する際に、強酸塩系界面活性剤を添加しなかった場合には、ラテックス組成物としての安定性に劣り、凝集物が多量に発生し、ディップ成形体を製造することができないものであった(比較例2)。