JP7664728B2 - トリポード型等速自在継手 - Google Patents

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Description

この発明は、トリポード型等速自在継手に関する。
自動車や各種産業機械の動力伝達系を構成する等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸をトルク伝達可能に連結すると共に、前記二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達することができる。等速自在継手は、角度変位のみを許容する固定式等速自在継手と、角度変位および軸方向変位の両方を許容する摺動式等速自在継手とに大別され、例えば、自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトにおいては、デフ側(インボード側)に摺動式等速自在継手が使用され、駆動車輪側(アウトボード側)には固定式等速自在継手が使用される。
摺動式等速自在継手の一つとしてトリポード型等速自在継手がある。このトリポード型等速自在継手は、トルク伝達部材であるローラがシングルローラタイプと、ダブルローラタイプが知られているが、本発明は、例えば、特許文献1に示されるダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手を対象とする。このダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手(以下、単にトリポード型等速自在継手ともいう)は、外側継手部材と、内側継手部材としてのトリポード部材と、トルク伝達部材としてのローラユニットとで主要部が構成されている。
外側継手部材は、その内周面に軸方向に延びる3本の直線状トラック溝が周方向等間隔に形成され、各トラック溝の両側には、円周方向に対向して配置され、それぞれ軸方向に延びるローラ案内面が形成されている。外側継手部材の内部には、トリポード部材とローラユニットが収容されている。トリポード部材は、半径方向に突出した3本の脚軸を有する。ローラユニットは、ローラと、このローラの内側に配置されて脚軸に外嵌されたインナリングと、ローラとインナリングとの間に介在された複数の針状ころとで主要部が構成されており、外側継手部材のトラック溝に収容されている。インナリングの内周面は、インナリングの軸線を含む縦断面において円弧状凸面をなす。
トリポード部材の各脚軸の外周面は、脚軸の軸線を含んだ縦断面においてストレート形状をなし、脚軸の軸線と直交する横断面において略楕円形状をなし、継手の軸線と直交する方向でインナリングの内周面と接触し、継手の軸線方向でインナリングの内周面との間に隙間が形成されている。このトリポード型等速自在継手では、トリポード部材の脚軸に装着されたローラユニットのローラが、外側継手部材のトラック溝のローラ案内面上を転動する。脚軸の横断面が略楕円形状であるので、トリポード型等速自在継手が作動角を取ったとき、外側継手部材の軸線に対してトリポード部材の軸線は傾斜するが、ローラユニットはトリポード部材の脚軸の軸線に対して傾斜可能である。したがって、ローラがローラ案内面上を正しく転動するので、誘起スラストやスライド抵抗の低減を図ることができ、継手の低振動化を実現することができる。
特開2001-132766号公報
ところで、トリポード型等速自在継手を一端に取り付けたドライブシャフト組立品を車両に組み付ける場合などにおいて、継手にトルクが負荷されていない状態(以下、無負荷時と略称することもある)で、トリポード型等速自在継手の内部部品であるローラが外側継手部材に対して滑らかにスライドすることが望ましい。
特許文献1で提案されたトリポード型等速自在継手は、ローラの外周面をトリポード部材の脚軸の軸線に曲率中心をおいた部分球面とし、ローラ案内面を外側継手部材の軸線と平行な部分円筒面とすることにより、ローラがトラック溝内で傾斜することも可能にしたものである。ローラとローラ案内面とをサーキュラコンタクトとした場合、ローラがローラ案内面に対して一点で接触する形態となるが、ローラ案内面の曲率半径Rとローラ外球面の曲率半径rとの比R/rが大きい場合、上記の無負荷時において、ローラとローラ案内面との接触角が小さくなり、ローラ外球面とローラ案内面との間で生じる摩擦力が大きくなる。この結果、無負荷時のローラの滑らかなスライドを阻害する恐れがあることが判明した。
上記のような問題に鑑み、本発明は、継手にトルクが負荷されていない状態で、ローラがローラ案内面に対して滑らかにスライドすることを可能にするトリポード型等速自在継手を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するため種々検討した結果、ダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手の無負荷時におけるローラの外周面とローラ案内面との接触角を大きく設定するという新たな着想により、本発明に至った。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、円周方向に対向して配置されたローラ案内面を有する3つのトラック溝が形成された外側継手部材と、半径方向に突出した3つの脚軸を備えたトリポード部材と、ローラと該ローラを回転自在に支持するインナリングとを備えたローラユニットとからなり、前記インナリングが前記脚軸に外嵌されると共に前記ローラが前記トラック溝のローラ案内面に沿って移動可能であって、前記インナリングの内周面がインナリングの縦断面において円弧状凸面に形成され、前記脚軸の外周面が、脚軸の軸線を含んだ縦断面においてはストレート形状で、かつ、前記脚軸の軸線と直交する横断面においては略楕円形状であり、前記脚軸の外周面が、継手の軸線と直交する方向で前記インナリングの内周面と当接すると共に、継手の軸線方向で前記インナリングの内周面との間にすきまが形成されており、前記ローラが前記トラック溝内で傾斜可能なトリポード型等速自在継手において、前記ローラの外周面は、前記脚軸の軸線上に曲率中心がある部分球面で形成され、前記ローラ案内面は、前記トラック溝のピッチ円とトラック溝の中心線との交点を通る水平線上に曲率中心がある部分円筒面で形成され、前記ローラ案内面の部分円筒面の曲率中心は、前記トラック溝の中心線からずれた位置にあり、前記ローラ案内面と前記ローラの外周面との間にトラック隙間が設けられ、前記ローラ案内面の部分円筒面の曲率半径Rと、ローラの外周面の部分球面の曲率半径rとの接触率R/rを0.95≦R/r≦1.08の範囲としたことにより、継手にトルクが負荷されてない状態で、前記ローラの外周面の端部が、ローラ直径方向の両側で前記ローラ案内面と当接することを特徴とする。
上記の構成により、無負荷時におけるローラの外周面とローラ案内面との接触角を大きく設定することが可能になり、無負荷時にローラがローラ案内面に対して滑らかにスライドすることを可能にするトリポード型等速自在継手を実現することができる。
具体的には、上記のローラ案内面の部分円筒面の曲率半径Rと、ローラの外周面の部分球面の曲率半径rとの接触率R/rを0.95≦R/r≦1.08の範囲とすることが望ましい。これにより、無負荷時にローラがローラ案内面に対して滑らかにスライドする性能面に加えて製造面でも実用性の高いトリポード型等速自在継手を実現することができる。ここで、本明細書および特許請求の範囲において、接触率とは、ローラ案内面の部分円筒面の曲率半径Rとローラの外周面の部分球面の曲率半径rとの比R/rと定義する。
上記のインナリングとローラとの間に複数の転動体を配置したことにより、インナリングとローラとの相対回転を滑らかにすることができる。
上記の転動体が針状ころであることにより、インナリングとローラとの相対回転を滑らかにすることができ、かつ、内部部品のコンパクト化を図ることができる。
上記のローラの外周面の両端部にローラの外周面の部分球面の曲率半径rより小さな曲率半径をもつ丸み部を形成することができる。これにより、エッジロードを効果的に回避することができ、ローラ案内面の耐久性を向上させることができる。
上記のローラの外周面は、その幅方向中央領域を部分球面とし、前記幅方向中央領域から両端部までの領域に退避部を形成し中高形状にすることができる。これにより、トルク伝達時に接触面圧が軽減し、ローラ案内面の耐久性を向上させることができる。
参考例は、円周方向に対向して配置されたローラ案内面を有する3つのトラック溝 が形成された外側継手部材と、半径方向に突出した3つの脚軸を備えたトリポード部材と 、ローラと該ローラを回転自在に支持するインナリングとを備えたローラユニットとから なり、前記ローラユニットのインナリングが前記脚軸に外嵌され、前記ローラユニットが 前記脚軸に対して傾斜可能であると共に、前記ローラが前記トラック溝のローラ案内面に 沿って移動可能で、かつ、前記ローラが前記トラック溝内で傾斜可能なトリポード型等速 自在継手において、前記ローラの外周面は、前記脚軸の軸線上に曲率中心がある部分球面 で形成され、前記ローラ案内面は、前記トラック溝のピッチ円とトラック溝の中心線との 交点を通る水平線上に曲率中心がある部分円筒面で形成され、前記ローラ案内面の部分円 筒面の曲率半径Rと、前記ローラの外周面の部分球面の曲率半径rとの接触率R/rを0 .95≦R/r≦1.08の範囲としたことにより、トルク負荷時に、前記ローラの外周 面と前記ローラ案内面とが前記ローラの外周面の幅方向の略全域で接触し、 継手の誘起スラストを低減させたことを特徴とする。
本発明によれば、無負荷時におけるローラの外周面とローラ案内面との接触角を大きく設定することが可能になり、無負荷時にもローラがローラ案内面に対して滑らかにスライドすることを可能にするトリポード型等速自在継手を実現することができる。
本発明の第1の実施形態に係るトリポード型等速自在継手の縦断面図である。 図1のA-A線で矢視した横断面図である。 図1のB-B線で矢視したローラユニットおよび脚軸の平面図である。 図3のE-E線におけるローラユニットの縦断面図である。 図1のトリポード型等速自在継手が常用作動角を取った状態を示す縦断面図である。 図1のトリポード型等速自在継手が常用作動角より大きな作動角を取った状態を示す縦断面図である。 図2の上側1/3の部分の横断面図であり、(a)図はローラ案内面の部分円筒面の曲率半径を示す図で、(b)図はローラの外周面の部分球面の曲率半径を示す図である。 図2のD部を拡大した横断面図である。 トルク伝達時におけるローラとローラ案内面の状態を示す模式図である。 無負荷時におけるローラとローラ案内面の状態を示す模式図である。 無負荷時におけるローラとローラ案内面との荷重、接触角および摩擦力の関係を示す模式図である。 くさび効果に関してローラをモデル化した図である。 接触角θと摩擦力fとの関係を示すグラフである。 接触率R/rと接触角θ1の関係を示す模式図である。 接触率R/rと接触角θ2の関係を示す模式図である。 図8において接触率R/rを異ならせた横断面図である。 図16におけるローラの外周面とローラ案内面とを接触させた状態を示す部分的な横断面図である。 図17のローラの外周面とローラ案内面との接触状態において、トラック溝の中心線および脚軸の軸線を加えて図示した横断面図である。 ローラの第1の変形例を示す部分的な横断面図である。 ローラの第2の変形例を示す部分的な横断面図である。 図20におけるローラの外周面とローラ案内面とを接触させた状態を示す部分的な横断面図である。 本発明の第2の実施形態に係るトリポード型等速自在継手を示すもので、トルク負荷時に第1の実施形態の説明に用いた図8におけるローラの外周面とローラ案内面とが当接した状態を示す部分的な横断面図である。 ローラの外周面とローラ案内面とがアンギュラコンタクトする従来例の部分的な横断面図である。 ローラの外周面とローラ案内面とがローラの外周面の幅方向の略全域で接触する第2の実施形態の部分的な横断面図である。 図23のアンギュラコンタクトする従来例のローラの傾斜時の抵抗を説明する図である。 図24の第2の実施形態のローラの傾斜時の抵抗を説明する図である。 従来例と第2の実施形態の誘起スラストの測定結果を示すグラフである。 第2の実施形態において接触率R/rを異ならせたものを示し、(a)図は接触率R/r=1.00で、(b)図は接触率R/r=0.95である。 本発明の第3の実施形態に係るトリポード型等速自在継手の横断面図である。
本発明の第1の実施形態に係るトリポード型等速自在継手を図1~図18に示す。まず、本実施形態のトリポード型等速自在継手の全体的な構成を図1~図6に基づいて説明する。図1は本実施形態に係るトリポード型等速自在継手の縦断面図で、図2は図1のA-A線で矢視した横断面図である。ただし、図2では、トリポード部材3および下側の2つのローラユニット4は断面表示ではなく、シャフト9は図示を省略している。図3は図1のB-B線で矢視したローラユニットおよび脚軸の平面図で、図4は図3のE-E線におけるローラユニットの縦断面図である。図5は図1のトリポード型等速自在継手が常用作動角を取った状態を示す縦断面図で、図6は図1のトリポード型等速自在継手が常用作動角より大きな作動角を取った状態を示す縦断面図である。
図1、図2に示すように、トリポード型等速自在継手1は、外側継手部材2と、内側継手部材としてのトリポード部材3と、トルク伝達部材としてのローラユニット4とで主要部が構成されている。外側継手部材2は、一端が開口したカップ状をなし、内周面に軸方向に延びる3本の直線状トラック溝5が周方向等間隔に形成され、各トラック溝5の両側には、円周方向に対向して配置され、それぞれ軸方向に延びるローラ案内面6が形成されている。外側継手部材2の内部には、トリポード部材3とローラユニット4が収容されている。
トリポード部材3は、半径方向に突出した3本の脚軸7を有する。トリポード部材3の中心孔8にシャフト9がスプライン嵌合し、止め輪10により軸方向に固定されている。ローラユニット4は、ローラ11と、このローラ11の内側に配置されて脚軸7に外嵌されたインナリング12と、ローラ11とインナリング12との間に介在された複数の針状ころ13とで主要部が構成されている。ローラユニット4は、外側継手部材2のトラック溝5に収容され、ローラユニット4(ローラ11)の幅方向の中心は、トラック溝5のピッチ円PC上に位置する。
図4に示すように、針状ころ13は、ローラ11の円筒形内周面11bとインナリング12の円筒形外周面12bとの間に、保持器のない、いわゆる総ころ状態で配置され、ローラ11の円筒形内周面11bを外側軌道面とし、インナリング12の円筒形外周面12bを内側軌道面とする。インナリング12の内周面12aは、インナリング12の軸線を含む縦断面において円弧状凸面をなす。この円弧状凸面は、トリポード型等速自在継手特有の振れ回りに起因するインナリング12に対する脚軸7の2~3°程度の傾きを許容するために、例えば、30mm程度の曲率半径riとされている。
ローラ11の外周面11aは、ローラユニット4の軸線4x上、言い換えると、図3に示す脚軸7の軸線7x上に曲率中心をおく曲率半径rの部分球面で形成されている。ローラユニット4のインナリング12、針状ころ13およびローラ11からなるローラユニット4は、ワッシャ14、15により分離しない構造となっている。ワッシャ14、15は、円周方向の一個所で分断されていて(図3参照)、弾性的に縮径させた状態でローラ11の円筒形内周面11bの環状溝に装着するようになっている。
図1、図2に示すように、トリポード部材3の各脚軸7の外周面7aは、脚軸7の軸線7x(図3参照)を含んだ縦断面においてストレート形状をなす。また、図3に示すように、脚軸7の外周面7aは、脚軸7の軸線7xと直交する横断面において略楕円形状をなし、継手の軸線と直交する方向、すなわち長軸aの方向でインナリング12の内周面12aと接触し、継手の軸線方向、すなわち短軸bの方向でインナリング12の内周面12aとの間に隙間mが形成されている。トリポード型等速自在継手1では、トリポード部材3の脚軸7に装着されたローラユニット4のローラ11が、外側継手部材2のトラック溝5のローラ案内面6上を転動する。
脚軸7の横断面が略楕円形状であるので、常用する比較的小さな作動角では、図5に示すように、外側継手部材2の軸線に対してトリポード部材3の軸線は傾斜するが、ローラユニット4はトリポード部材3の脚軸7の軸線に対して傾斜可能である。したがって、ローラユニット4のローラ11とローラ案内面6とが斜交した状態になることを回避し、正しく転動するので、誘起スラストやスライド抵抗の低減を図ることができ、継手の低振動化を実現することができる。本明細書および特許請求の範囲において、略楕円形状とは、文字どおりの楕円形状に限られず、一般に卵形状、小判形状等と称される形状を含むものとする。
横断面が略楕円形状の脚軸7と円形の内周面12aをもつインナリング12とが接触してトルクが伝達されるので、脚軸7とインナリング12との接触部の面圧の緩和および脚軸7の強度確保のために、脚軸7の略楕円形状の長軸aと短軸bの楕円度b/aおよびインナリング12の内周面12aの曲率半径ri(図4参照)が設定されている。そのため、常用される比較的小さな作動角では、図5で前述したように、ローラユニット4が脚軸7に対して傾斜することができるため、ローラユニット4のローラ11がローラ案内面6と斜交することなく転動することができる。
一方、常用作動角を超えた所定の角度(例えば、15°程度)より大きくなると、図3に示す脚軸7の外周面7aとインナリング12の内周面12aとが干渉し、ローラユニット4(ローラ11)は脚軸7に対してそれ以上傾くことができなくなる。ローラユニット4の脚軸7に対して傾き得る角度が限られているので、前記常用作動角を超えた所定の角度より大きい場合、ローラユニット4がトラック溝5に対して不足する角度分傾く必要があるが、図4に示すように、ローラ11の外周面11aが、脚軸7の軸線7x上に曲率中心をおく曲率半径rの部分球面で形成されているので、図6に示すように、ローラユニット4はトラック溝5内で傾斜可能であり、大きな作動角にも対応可能となる。
本実施形態のトリポード型等速自在継手1の全体的な構成は以上のとおりである。次に特徴的な構成を説明する。特徴的な構成は次の(1)~(3)である。
(1)ローラ11の外周面11aは、脚軸7の軸線7x上に曲率中心をおく部分球面で形成されていること。
(2)ローラ案内面6は、トラック溝5のピッチ円PCとトラック溝5の中心線との交点を通る水平線上に曲率中心をおく部分円筒面で形成されていること。
(3)継手にトルクが負荷されてない状態で、ローラ11の外周面11aの端部がローラ案内面6と当接すること。
特徴的な構成(1)および(2)について、図7(a)、図7(b)、図8に基づいて具体的に説明する。図7(a)は、図2の上側1/3の部分の横断面図であり、ローラ案内面の部分円筒面の曲率半径を示す図で、図7(b)は、図2の上側1/3の部分の横断面図であり、ローラの外周面の部分球面の曲率半径を示す図である。図8は図2のD部を拡大した横断面図である。図7(a)、図7(b)、図8では、断面部分のハッチングを省略している。
図7(a)、図7(b)、図8は、いずれも、トラック溝5の中心線5xと脚軸7の軸線7xとが一致した状態で表示している。図7(b)に示すように、ローラ11の外周面11aは、脚軸7の軸線7x上に曲率中心Or(図8参照)をおく曲率半径rの部分球面で形成されている。図7(a)に示すように、ローラ案内面6は、トラック溝5のピッチ円PCとトラック溝5の中心線5xとの交点Tを通る水平線X-X上に曲率中心をおく曲率半径Rの部分円筒面で形成され、継手の軸線に平行に延びている。本実施形態では、ローラ案内面6の曲率半径Rは、ローラ11の外周面11aの曲率半径rに沿った形状としている。すなわち、ローラ案内面6の部分円筒面の曲率半径Rと、ローラ11の外周面11aの部分球面の曲率半径rとをR=rとし、接触率R/r=1.00としている。
図8を参照して、ローラ11の外周面11aとトラック溝5のローラ案内面6との関係について、さらに詳細に説明する。トラック溝5の中心線5xと脚軸7の軸線7xとを一致させた状態で、曲率半径rで形成された部分球面からなるローラ11の外周面11aと曲率半径Rで形成された部分円筒面からなるローラ案内面6との間に隙間δ/2が設けられている。本実施形態では、曲率半径R=r(接触率R/r=1.00)に設定されているので、ローラ案内面6の曲率半径Rで形成された部分円筒面の曲率中心ORは、水平線X-X上でトラック溝5の中心線5xから隙間δ/2だけずれている。
図8に示されていない左側半分のローラ11の外周面11aをローラ案内面6に押し付けたとき、右側半分のローラ11の外周面11aとローラ案内面6と隙間δ/2は、2倍のδとなり(図9参照)、この隙間δをトラック隙間という。トラック隙間δは、例えば、数十μm~百数十μm程度の僅かな値である。
本実施形態のトリポード型等速自在継手1の特徴的な構成(1)ローラ11の外周面11aは、脚軸7の軸線7x上に曲率中心を置く部分球面で形成されていること、および(2)ローラ案内面6は、トラック溝5のピッチ円PCとトラック溝5の中心線5xとの交点Tを通る水平線X-X上に曲率中心を置く部分円筒面で形成されていることは、以上のとおりである。
次に、本実施形態のトリポード型等速自在継手1の特徴的な構成(3)継手にトルクが負荷されてない状態で、ローラ11の外周面11aの端部がローラ案内面6と当接することについて図9~図13を参照して説明する。図9はトルク伝達時におけるローラとローラ案内面の状態を示す模式図で、図10は無負荷時におけるローラとローラ案内面の状態を示す模式図である。
図9に示すように、トリポード部材3(図2参照)に対して反時計方向にトルクを負荷したとき、図9の左側のローラ案内面6にローラ11の外周面11aが当接して荷重を受けるが、図9の右側のローラ案内面6とローラ11の外周面11aとの間にはトラック隙間δがあるので、ローラ11はローラ案内面6上を滑らかに転動する。トラック隙間δに対応して、ローラ11の軸心11xはトラック溝5の中心線5xと水平線X-X方向に僅かにずれる。図9、図10では、理解しやすくするためにトラック隙間δは誇張して図示している。
一方、図10に示すように、継手にトルクが負荷されてない状態では、ローラ11は、ローラ案内面6に拘束されないので、半径方向の上方、下方のどちらにも移動できる。その結果、ローラ11の外周面11aが直径方向の両側でローラ案内面6に接触することになる。図10は、ローラ11が下方に移動した状態を示し、ローラ11の幅方向中心線11yはトラック溝5の水平線X-Xから下方にずれる。
本実施形態では、ローラ案内面6の部分円筒面の曲率半径Rと、ローラ11の外周面11aの部分球面の曲率半径rとの接触率をR/r=1.00に設定したことにより、ローラ11の外周面11aの端部11eがローラ案内面6と当接する。これにより、ローラ11の外周面11aとローラ案内面6との接触角θが大きくなり、無負荷時にローラ11がローラ案内面6に対して滑らかにスライドすることが可能になる。無負荷時におけるローラ11の外周面11aとローラ案内面6との接触角θとローラ11のローラ案内面6に対するスライド特性との関係や接触率R/rの実用可能な範囲の詳細については後述する。
図10には、ローラ11が水平姿勢で下方にずれた場合でトラック溝5の中心線5xとローラ11の軸心11xが重なったもの示したが、ローラ11が傾いた姿勢の場合もある。また、図10は、ローラ11が下方に移動した場合を示したが、上方に移動した場合も同様である。さらに、図10では、トラック隙間δは誇張して図示した関係から、ローラ11の幅方向中心線11yとトラック溝5の水平線X-Xとのずれ量も大きく図示されている。
本実施形態のトリポード型等速自在継手1の特徴的な構成(3)継手にトルクが負荷されてない状態で、ローラ11の外周面11aの端部11eがローラ案内面6と当接することは、以上のとおりである。
無負荷時におけるローラ11の外周面11aとローラ案内面6との接触角θとローラ11のローラ案内面6に対するスライド特性との関係について図11~図13に基づいて説明する。図11は無負荷時におけるローラとローラ案内面との荷重、接触角および摩擦力の関係を示す模式図で、図12は、くさび効果に関してローラをモデル化した図で、図13は接触角θと摩擦力fとの関係を示すグラフである。
図11に示すように、ローラ11がローラ案内面6に対して下方に移動した場合、ローラ11の外周面11aとローラ案内面6との間には摩擦力fが生じる。摩擦力fは、無負荷時のローラ11の滑らかなスライドを阻害する要因となる。図11は、ローラ11からの荷重をFとし、ローラ案内面6の垂直荷重をPとし、ローラ11の中心Orとローラ案内面6における接触点Cとを結ぶ直線とローラ11の中心Orを通る水平線(ローラ11の幅方向中心線でもある)11yとのなす角度を接触角θとし、ローラ案内面6の摩擦力fとして表記している。この摩擦力fは図示のように図面の紙面上に作用する場合の外に、トリポード型等速自在継手1を一端に取り付けたドライブシャフト組立品を車両に組み付ける場合では、摩擦力fは、ローラ案内面6の軸方向に作用するが、荷重や接触角等との関係を簡素化するために、便宜上、図面の紙面上に表記している。
図11に示したローラ11の外周面11aとローラ案内面6との間に生じる摩擦力fを表現するために、図12に物体MにくさびJを打ち込んだ場合のモデルを例示する。くさびJがローラ11に相当する。ここで、F:荷重、P:垂直荷重、θ:接触角、f:摩擦力、μ:摩擦係数である。くさび角は2×接触角θとなる。力のつり合いより、接触角θと摩擦力fの関係は次式で表される。
Figure 0007664728000001
図13に接触角θと摩擦力fとの関係をグラフで示す。接触角θが大きい程、摩擦力fが小さくなる。したがって、接触角θを大きくし、摩擦力fを小さくすることで、ローラ11の円滑なスライドが可能になることが確認できた。
上記の知見を基に、無負荷時におけるローラ11の良好なスライド特性が得られる接触角θの検証と共に、この接触角θと接触率R/rとの関係について検証した。この検証結果を図14~図18に基づいて説明する。図14は接触率R/rと接触角θ1の関係を示す模式図で、図15は接触率R/rと接触角θ2の関係を示す模式図である。図16は、図8において接触率R/rを異ならせた横断面図である。図17は、図16におけるローラの外周面とローラ案内面とを接触させた状態を示す部分的な横断面図で、図18は、図17のローラの外周面とローラ案内面との接触状態において、トラック溝の中心線および脚軸の軸線を加えて図示した横断面図である。ただし、図18では、ローラとトリポード部材は断面図ではなく側面図である。
図14は、接触率R/r>1.08の場合の一例を示す。接触率R/rが1より大きい程、無負荷時の接触角θ1が小さくなる。図示のように、ローラ11の幅方向中心線11yはトラック溝5の水平線X-Xから下方に大きくずれ、ローラ11の外周面11aとローラ案内面6との接触点Cは、ローラ11の外周面11aの端部11eから外れて、ローラ11の中央寄りの位置となる。試験や設計検討の結果、接触率R/rが1.08を超えると(R/r>1.08)、無負荷時のローラ11の滑らかなスライドが阻害され、実用上、問題が生じる恐れがあることが確認された。したがって、接触率は、R/r≦1.08が望ましい。図14~図16においてもトラック隙間δを若干誇張して表示している。
図15は、接触率R/r=1.00の場合を示す。図示のように、ローラ11の幅方向中心線11yはトラック溝5の水平線X-Xからのずれが小さく、ローラ11の外周面11aとローラ案内面6との接触点Cは、ローラ11の外周面11aの端部11eに位置している。無負荷時の接触角θ2は大きくなり、無負荷時のローラ11の滑らかスライドが可能になる。
図16、図17は、接触率R/r<1.00の場合の一例を示す。図示は省略するが、この場合は図15と同様に、無負荷時にローラ11の外周面11aの端部11eがローラ案内面6と当接する。このため、接触角θは大きく設定でき、無負荷時のローラ11の滑らかなスライドが可能となる。
接触率R/r<1.00の場合は、図17に示すようにローラ11をローラ案内面6に押し付けた時、ローラ11の外周面11aの両端部11eがローラ案内面6と当接する。ローラ11の外周面11aの両端部11eがローラ案内面6と当接した状態では、図18に示すように、トラック溝5の中心5xに対して脚軸7の軸線7xは、トラック隙間δの1/2だけずれる。そして、トルク伝達時には、図17、図18に示すローラ11の中央寄りの隙間γ1のある部分も含めてローラ11の外周面11aの幅Wの全域で接触する状態になり、ローラ11の外周面11aの端部11eで特に接触面圧が大きくなる傾向にある。試験や設計検討の結果、接触率R/r<1.00の範囲においては、ローラ11の外周面11aの端部11eでの極端な接触面圧の上昇を抑制し、ローラ案内面6の耐久性を確保するために接触率R/r≧0.95が望ましい。図16~図18は、接触率R/r=0.95に設定したものを図示している。この場合、図16に示すように、曲率半径Rの減少分が加わって、水平線X-X上で交点Tからの曲率半径Rの曲率中心ORのずれ量が図8より増加している。理解しやすいように、図16、図18では、曲率中心をORとするローラ案内面6の部分円筒面の曲率半径Rに対して、部分円筒面の湾曲状態を強調して図示している。
したがって、本発明の有利な構成として、ローラ案内面6の部分円筒面の曲率半径Rと、ローラ11の外周面11aの部分球面の曲率半径rとの接触率R/rを0.95≦R/r≦1.08の範囲とすることが望ましい。これにより、無負荷時にローラ11がローラ案内面6に対して滑らかにスライドする性能面に加えて製造面でも実用性の高いトリポード型等速自在継手1を実現することができる。
次に、ローラ11の第1の変形例を図19に基づいて説明する。図19は、ローラの第1の変形例を示す部分的な横断面図である。本変形例では、ローラ11の外周面11aの形態が、前述した図16~図18に示す第1の実施形態におけるローラ11と比べて異なる。その他の構成については、第1の実施形態と同様であるので、同じ機能を有する部位には、同一の符号を付して、第1の実施形態で説明した内容を準用する。以下、第1の実施形態におけるローラ11と比べて本変形例の異なるところを説明する。
本変形例は、接触率R/r<1.00における上記のエッジ接触を回避するために、図19に示すように、ローラ11の外周面11aの端部11eに曲率半径raの丸みを設けている。これにより、ローラ11の外周面11aの端部11eの曲率半径raの丸み部Qとローラ案内面6とが接触する形態となるため、エッジロードを効果的に回避することができ、ローラ案内面6の耐久性の向上につながる。
ローラ11の外周面11aの部分球面の曲率半径rと丸み部Qの曲率半径raの関係は、r>raとなる。図19において、ローラ11の外周面11aの幅W1は、曲率半径rの部分球面の領域と曲率半径raの丸み部Qの領域を含む。曲率半径rと曲率半径raとは、滑らかな接線つなぎで接続されていることが望ましい。また、ローラ11の外周面11aの幅W1は、一般に研削加工や焼入鋼切削加工(焼入れ後の切削加工をいう)で仕上げるが、特に研削加工で仕上げる場合は、例えば、曲率半径rと曲率半径raとが一体に転写される総型砥石を用いて、曲率半径rの領域と曲率半径raの領域とを一体で仕上げることが望ましい。本変形例では、接触率R/r<1.00の場合において、ローラ11の外周面11aの端部11eに曲率半径raの丸み部Qを設けることを例示したが、これに限られず、不可避的なエッジロードを回避するために、1.00≦R/r≦1.08の場合においても上記の丸み部Qを設けてもよい。本変形例においても、接触率R/rを0.95≦R/r≦1.08の範囲とすることが望ましい。
さらに、ローラ11の第2の変形例を図20、図21に基づいて説明する。図20はローラの第2の変形例を示す部分的な横断面図であり、図21は、図20におけるローラの外周面とローラ案内面とを接触させた状態を示す部分的な横断面図である。前述した第1の変形例では、ローラ11の外周面11aの端部11eにのみ曲率半径raの丸み部Qを設けたが、本変形例では、ローラ11の外周面11aの幅方向中央領域を曲率半径rの部分球面とし、ローラ11の外周面11aの幅方向中央領域から端部11eまでの領域に曲率半径rbの退避部Kを設けている。この点が第1の変形例のローラ11の外周面11aと比べて異なる。
ローラ11の外周面11aを除く他の構成については、第1の実施形態と同様であるので、同じ機能を有する部位には、同一の符号を付して、第1の実施形態で説明した内容を準用する。以下、第1の実施形態におけるローラ11と比べて本変形例の異なるところを説明する。
図20に示すように、水平線X-Xを含むローラ11の外周面11aの幅方向中央領域Lcは、脚軸7の軸線7x上に曲率中心Orをおく曲率半径rの部分球面で形成され、ローラ11の外周面11aの幅方向中央領域Lcから端部11eまでの領域Leは、曲率中心をOrbとする曲率半径rbの退避部Kが形成されている。退避部Kの退避量は、曲率半径rに対して、端部11eにおいて数十μm程度である。脚軸7の軸線7x上に曲率中心Orをおく部分球面の曲率半径rと曲率中心をOrbとする退避部Kの曲率半径rbとは接線で滑らかに接続されている。
ローラ11の外周面11aは、幅方向中央領域Lcから両端部11eまでの領域Leに曲率半径rbの退避部Kが設けられているので、中高形状となっている。そのため、図21に示すように、ローラ11の外周面11aは、その退避部Kがローラ案内面6に面接触し、ローラ11の中央寄りの隙間γ2は、第1の実施形態の図18に示す隙間γ1よりも小さくなる。その結果、トルク伝達時に接触面圧が軽減し、ローラ案内面6の耐久性を向上させることができる。本変形例では、退避部Kを形成する曲率半径rbが1つのものを例示したが、これに限られず、上記の曲率半径rbの領域を曲率半径の異なる複数の曲線で構成してもよい。本変形例においても、接触率R/rを0.95≦R/r≦1.08の範囲とすることが望ましい。
次に、本発明の第2の実施形態に係るトリポード型等速自在継手を説明する。本実施形態に係るトリポード型等速自在継手は、第1の実施形態のトリポード型等速自在継手の無負荷時におけるローラとローラ案内面との間の滑らかなスライド特性の実用レベルを実験確認する中で、新たな技術的課題を解決する技術的手段として見出したものである。
上記の新たな技術的課題について、まず概要を説明する。例えば、自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトにおいては、デフ側(インボード側)に摺動式等速自在継手が使用され、摺動式等速自在継手の一つとしてのトリポード型等速自在継手が多用される。本実施形態が対象とするダブルローラタイプの摺動式トリポード型等速自在継手では、トリポード部材の脚軸にローラユニットが装着され、ローラユニットは、球状ローラと、このローラの内側に配置されて脚軸に外篏されたインナリングと、ローラとインナリングとの間に複数の針状ころが保持器なしの総ころ状態で介在される。作動角を取った状態でトルクを伝達するとき、内部部品間の相互摩擦によって、回転中には誘起スラストによる反復軸力が発生する。誘起スラストが関与する自動車の代表的なNVH現象として、走行中の車体の横振れがある。
自動車のNVH問題は、継手の誘起スラストの大きさを小さくすることが解決のポイントである。一般に、継手の誘起スラストは作動角の大きさに依存する傾向がある。このため、自動車のドライブシャフトに適用する場合、作動角を大きくできないという設計上の制約につながる。したがって、自動車の足回り設計の自由度を高めるには、誘起スラストの低位安定化が必要である。上述したダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手は、作動角を取ったとき、外側継手部材の軸線に対してトリポード部材の軸線が傾斜してもローラユニットがトリポード部材の脚軸の軸線に対して傾斜可能とし、ローラがローラ案内面上を正しく転動する構造により誘起スラストの低減を図ったものではあるが、さらに誘起スラストの一層の低減および安定化を図ることが重要な技術的課題である。
本発明の第2の実施形態に係るトリポード型等速自在継手を図1、図2、図22~図28に基づいて具体的に説明する。図22は、第2の実施形態に係るトリポード型等速自在継手を示すもので、トルク負荷時に第1の実施形態の説明に用いた図8におけるローラの外周面とローラ案内面とが当接した状態を示す部分的な横断面図である。図23は、ローラの外周面とローラ案内面とがアンギュラコンタクトする従来例の部分的な横断面図で、図24は、ローラの外周面とローラ案内面とがローラの外周面の幅方向の略全域で接触する本実施形態の部分的な横断面図である。
第2の実施形態に係るトリポード型等速自在継手は、誘起スラストの一層の低減および安定化を図ることを新たな技術的課題とするものであるが、第2の実施形態に係るトリポード型等速自在継手の全体構成は、図1および図2に基づく第1の実施形態の説明内容と同じであるので、その説明内容を準用する。以下、要点を説明する。
第2の実施形態に係るトリポード型等速自在継手1のローラ11の外周面11aとローラ案内面6との接触形態について図22に基づいて説明する。ローラ11の外周面11aは、脚軸7の軸線7x上に曲率中心Orをおく曲率半径rの部分球面で形成されている。ローラ案内面6は、トラック溝5のピッチ円PCとトラック溝5の中心線5xとの交点Tを通る水平線X-X上に曲率中心ORをおく曲率半径Rの部分円筒面で形成されている。ローラ案内面6の部分円筒面の曲率半径Rと、ローラ11の外周面11aの部分球面の曲率半径rとをR=rとし、接触率R/r=1.00としている。ローラ案内面6の曲率半径Rで形成された部分円筒面の曲率中心ORは、水平線X-X上でトラック溝5の中心線5xから隙間δ/2だけずれており、トルク負荷時は、ローラ11の外周面11aの曲率半径rで形成された部分球面の脚軸7の軸線7x上に位置する曲率中心Orと一致する。
本実施形態の曲率半径R=r(接触率R/r=1.00)に設定されたものでは、継手のトルク負荷時は、図22に示すように、ローラ11の外周面11aとローラ案内面6とがローラ11の外周面11aの幅方向全域で接触する。
ローラ11の外周面11aとローラ案内面6との接触形態について、第2の実施形態のトリポード型等速自在継手1と従来例としての現行製品とを対比して説明する。従来例では、図23に示すように、ローラ11の外周面11aとローラ案内面6との接触形態は、アンギュラコンタクトとなっている。アンギュラコンタクトは、ある接触角をもった2点の接触領域aを有する。そして、2点の接触領域aの間に頂点隙間VCが形成され、潤滑油溜りにもなり、従来例は実績のある接触形態を踏襲したものである。
これに対して、図24に示す本実施形態では、ローラ11の外周面11aの幅方向に大きな接触領域bを設けることができる。したがって、図23に示す従来例の2点の接触領域aの合計2aに対して、図24に示す本実施形態の接触領域bは、2a<bとなる。図24では、接触率R/rを1.00に近いが1.00を超える値に設定したものを例示した。
次に、従来例と本実施形態におけるローラ11の傾斜時の抵抗の違いについて、図25~図27に基づいて考察する。図25は、図23のアンギュラコンタクトとした従来例におけるローラの傾斜時の抵抗を説明する図で、図26は、図24の本実施形態におけるローラの傾斜時の抵抗を説明する図である。図27は、従来例と本実施形態の誘起スラストの測定結果を示すグラフである。
図25に示すように、ローラ11の外周面11aとローラ案内面6との接触形態をアンギュラコンタクトとした従来例では、ローラ11の傾斜時の抵抗は、ハッチング部Aの面積2Aで表されると考えられる。これに対して、図26に示すように、ローラ11の外周面11aの幅方向に大きな接触領域を設けた本実施形態では、ローラ11の傾斜時の抵抗は、ハッチング部Bの面積2Bで表されると考えられる。その結果、本実施形態のローラ11は、従来例に比べて、トルク負荷時にローラ11がトラック溝5のローラ案内面6の水平方向に保持されやすくなる。すなわち、ローラ11がトラック溝5のローラ案内面6に対して傾斜し難くなり、水平方向移動を促すことにより、誘起スラストを低減できると考えられる。
図27に従来例と本実施形態の継手角度に対する誘起スラスト(3次成分)の測定結果を示す。ローラ11の外周面11aとローラ案内面6との接触形態をアンギュラコンタクトとした従来例に比べて、ローラ11の外周面11aの幅方向に大きな接触領域を設けた本実施形態の方が、継手角度が大きくなっても誘起スラストが低位安定していることが分かる。本実施形態のトリポード型等速自在継手1は、無負荷時にローラ11がローラ案内面6に対して滑らかにスライドすることを可能にする効果も有する。
図28は、本実施形態において接触率R/rを異ならせたものを示し、図28(a)は接触率R/r=1.00で、図28(b)は接触率R/r=0.95である。ただし、本実施形態においても、ローラ案内面6の部分円筒面の曲率半径Rと、ローラ11の外周面11aの部分球面の曲率半径rとの接触率R/rを0.95≦R/r≦1.08の範囲とすることが望ましい。
第2の実施形態に係るトリポード型等速自在継手1における誘起スラストの低減および安定化を図る技術的手段を要約すると、次のとおりである。
(1)ローラユニットのインナリングが脚軸に外嵌され、ローラユニットが脚軸に対して傾斜可能であると共に、ローラがトラック溝のローラ案内面に沿って移動可能で、かつ、ローラがトラック溝内で傾斜可能なトリポード型等速自在継手において、
(2)ローラの外周面は、脚軸の軸線上に曲率中心がある部分球面で形成されていること。
(3)ローラ案内面は、前記トラック溝のピッチ円とトラック溝の中心線との交点を通る水平線上に曲率中心がある部分円筒面で形成されていること。
(4)ローラ案内面の部分円筒面の曲率半径Rと、ローラの外周面の部分球面の曲率半径rとの接触率R/rを0.95≦R/r≦1.08の範囲としたことにより、継手の誘起スラストを低減させたこと。
第2の実施形態に係るトリポード型等速自在継手における誘起スラストの低減および安定化を図る技術的手段は、第3の実施形態に係るトリポード型等速自在継手にも適用可能である。第3の実施形態に係るトリポード型等速自在継手をその横断面図である図29に基づいて説明する。
図29に示すように、本実施形態のトリポード型等速自在継手1’は、トリポード部材3’の脚軸7’の外周面7a’が球面で形成され、ローラユニット4’のインナリング12’が円筒形内周面12a’を有し、インナリング12’の円筒形内周面12a’が、トリポード部材3’の脚軸7’の球面状外周面7a’に摺動可能に外篏されている点が、第2の実施形態と異なる。その他の構成については、第2の実施形態と同様であるので、同様の機能を有する部位には、同一の符号(ダッシュ付き)を付して、要点を説明する。
ローラユニット4’は、ローラ11’と、インナリング12’と、ローラ11’とインナリング12’との間に総ころ状態で組み込まれた複数の針状ころ13’とで主要部が構成されている。ローラユニット4’は、外側継手部材2’のトラック溝5’に収容され、ローラユニット4’(ローラ11’)の幅方向の中心は、トラック溝5’のピッチ円PC上に位置する。ローラ11’の外周面11a’は、脚軸7’の軸線7x’上に曲率中心Or’をおく曲率半径r’の部分球面で形成されている。
トリポード部材3’は、半径方向に突出した3本の脚軸7’を有する。脚軸7’の外周面7a’は、脚軸7’の軸線7x’上に曲率中心をおく球面で形成され、球面状外周面7a’にローラユニット4’のインナリング12’の円筒形内周面12a’が、摺動可能に外篏されている。継手が作動角を取ったとき、ローラユニット4’はトリポード部材3’の脚軸7’の軸線に対して傾斜可能である。したがって、ローラユニット4’のローラ11’とローラ案内面6’とが斜交した状態になることを回避し、正しく転動することができる。
ローラ案内面6’は、トラック溝5’のピッチ円PCとトラック溝5’の中心線5x’との交点を通る水平線上に曲率中心をおく曲率半径R’の部分円筒面で形成され、継手の軸線に平行に延びている。本実施形態においても、ローラ案内面6’の部分円筒面の曲率半径R’と、ローラ11’の外周面11a’の部分球面の曲率半径r’との接触率R’/r’を0.95≦R’/r’≦1.08の範囲とすることが望ましい。本実施形態でも、ローラ11’の外周面11a’の幅方向に大きな接触領域が形成されるので、誘起スラストが低位安定化する。また、無負荷時にローラ11’がローラ案内面6’に対して滑らかにスライドすることを可能にする効果も有する。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 トリポード型等速自在継手
2 外側継手部材
3 トリポード部材
4 ローラユニット
5 トラック溝
5x トラック溝の中心線
6 ローラ案内面
7 脚軸
7x 脚軸の軸線
9 シャフト
11 ローラ
11a 外周面
11e 端部
12 インナリング
12a 内周面
13 針状ころ
C 接触点
K 退避部
Lc 幅方向中央領域
PC トラック溝のピッチ円
Q 丸み部
R、R’ ローラ案内面の部分円筒面の曲率半径
T 交点
X-X 水平線
a 長軸
b 短軸
m 隙間
r、r’ ローラの外周面の部分球面の曲率半径
θ 接触角
δ トラック隙間

Claims (5)

  1. 円周方向に対向して配置されたローラ案内面を有する3つのトラック溝が形成された外側継手部材と、半径方向に突出した3つの脚軸を備えたトリポード部材と、ローラと該ローラを回転自在に支持するインナリングとを備えたローラユニットとからなり、前記インナリングが前記脚軸に外嵌されると共に前記ローラが前記トラック溝のローラ案内面に沿って移動可能であって、前記インナリングの内周面がインナリングの縦断面において円弧状凸面に形成され、前記脚軸の外周面が、脚軸の軸線を含んだ縦断面においてはストレート形状で、かつ、前記脚軸の軸線と直交する横断面においては略楕円形状であり、前記脚軸の外周面が、継手の軸線と直交する方向で前記インナリングの内周面と当接すると共に、継手の軸線方向で前記インナリングの内周面との間にすきまが形成されており、前記ローラが前記トラック溝内で傾斜可能なトリポード型等速自在継手において、
    前記ローラの外周面は、前記脚軸の軸線上に曲率中心がある部分球面で形成され、
    前記ローラ案内面は、前記トラック溝のピッチ円とトラック溝の中心線との交点を通る水平線上に曲率中心がある部分円筒面で形成され、
    前記ローラ案内面の部分円筒面の曲率中心は、前記トラック溝の中心線からずれた位置にあり、
    前記ローラ案内面と前記ローラの外周面との間にトラック隙間が設けられ、
    前記ローラ案内面の部分円筒面の曲率半径Rと、ローラの外周面の部分球面の曲率半径rとの接触率R/rを0.95≦R/r≦1.08の範囲としたことにより、
    継手にトルクが負荷されてない状態で、前記ローラの外周面の端部が、ローラ直径方向の両側で前記ローラ案内面と当接することを特徴とするトリポード型等速自在継手。
  2. 前記インナリングと前記ローラとの間に複数の転動体を配置したことを特徴とする請求項1に記載のトリポード型等速自在継手。
  3. 前記転動体が針状ころであることを特徴とする請求項2にトリポード型等速自在継手。
  4. 前記ローラの外周面の両端部に前記ローラの外周面の部分球面の曲率半径rより小さな曲率半径をもつ丸み部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のトリポード型等速自在継手。
  5. 前記ローラの外周面は、その幅方向中央領域を部分球面とし、前記幅方向中央領域から端部までの領域に退避部を形成し中高形状にしたことを特徴とする請求項1に記載のトリポード型等速自在継手。
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