JP7664918B2 - 異常変調原因特定装置、異常変調原因特定方法及び異常変調原因特定プログラム - Google Patents

異常変調原因特定装置、異常変調原因特定方法及び異常変調原因特定プログラム Download PDF

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Description

本開示は、異常変調原因特定装置、異常変調原因特定方法及び異常変調原因特定プログラムに関する。
従来、プラントから受信する運転データを用いて、異常の原因を推定するための技術が提案されていた。例えば、過去に発生した第一異常事象の発生確率の重み付けを、未発生の第二異常事象の発生確率の重み付けよりも重くして、異常の予兆の原因を推定する技術が提案されている(特許文献1)。また、診断対象プロセスの異常が検出された場合に、診断対象プロセスの状態を示すプロセス変数の寄与の割合を示す寄与率を推定し、寄与率に基づいて、予め定義された登録事象の中から異常の要因である可能性のある事象を推定する技術も提案されている(特許文献2)。
また、プロセスの状態を予測する複数のサブモデルを用いて、プロセスの正常状態からの逸脱指標を算出し、サブモデルごとに算出した逸脱指標からなる逸脱指標パターンセットに基づいて、プロセスで発生した異常状態の原因を推定する技術も提案されている(特許文献3)。また、監視運転データを構成する複数の運転データの各々について監視異常度に対する監視寄与度を算出し、監視寄与度の大きい上位N個の運転データにより構成される診断対象データ群を抽出し、診断対象データ群と、参照運転データに含まれる参照寄与度の大きい上位M個の運転データにより構成される診断参照データ群との合致指標を算出し、合致指標が合致判定閾値以上となる参照運転データに基づいてプラントの異常を予測する技術も提案されている(特許文献4)。
特開2018-109851号公報 特開2018-120343号公報 特開2019-16039号公報 特開2019-57164号公報
一般的に、生産設備においては、異常変調を予防し、安全性、安定性、生産物の品質、コスト等への影響を抑制することが望ましい。本技術は、生産設備における異常変調の原因の特定性能を向上させることを目的とする。
異常変調原因特定装置は、生産設備が備える複数のセンサによって継続的に出力されるプロセスデータを記憶する記憶装置から、プロセスデータを読み出すプロセスデータ取得部と、プロセスデータ取得部が読み出したプロセスデータの変調の程度を表す異常度を算出する異常判定部と、原因と、当該原因から生じる影響として現れる複数のセンサが出力するプロセスデータの変調との因果関係の組合せを、時系列に沿った階層状に定義する因果関係情報を用いて、複数のセンサが出力するプロセスデータについて、異常判定部が算出した異常度が所定の基準を満たすか判断する原因診断部とを備える。
原因から生じる影響として現れる複数のセンサが出力するプロセスデータの変調との因果関係の組合せを、時系列に沿った階層状に定義する因果関係情報を用いるため、複数のセンサが出力するプロセスデータのうち、異常度が所定の基準を満たすプロセスデータが増えることで、何らかの原因に基づく異常を検知できる。換言すれば、複数のセンサが出力するプロセスデータのうち、異常度が所定の基準を満たすプロセスデータが少なくても、何らかの原因に基づく異常の兆候を検知できる。したがって、生産設備における異常変調の原因の特定性能を向上させることができる。
また、異常度判定部は、所定の基準に対する乖離の方向が正又は負のいずれであるかに応じた異常度を算出するようにしてもよい。正又は負のいずれの方向に乖離するかを加味して異常度を算出することで、乖離の大きさのみに基づいて異常度を算出するよりも誤判定を低減させることができるようになる。
また、異常判定部は、プロセスデータの極大値及び極小値の少なくとも一部について、所定の基準に対する乖離の方向が正又は負のいずれであるかに応じた異常度を算出するようにしてもよい。継続的に取得されるプロセスデータのうち、特徴的なポイントでの異常度について基準からの乖離の方向を加味することで、異常の検知精度を効率よく向上させることができる。
また、因果関係情報は、異常度の算出に用いるプロセスデータを、複数のセンサが出力するプロセスデータの各々について、生産設備が行う工程におけるタイミング、期間、又は間隔によって定義し、異常判定部は、プロセスデータ取得部が読み出したプロセスデータのうち、因果関係情報が定義するタイミング、期間、又は間隔に基づいて抽出された値を用いて異常度の算出を行うようにしてもよい。例えば、タイミング、期間、又は間隔は、いわゆる知識ベースに基づいて定義することができる。プロセスデータのうち、異常度の算出に用いる値を詳細に定義できるようにすれば、異常判定の精度を向上させ得ると共に、不要な演算を削減することでシステムの負荷を低減することができる。
また、異常判定部は、予め定められた組合せに含まれる複数のセンサが出力するプロセスデータの値を圧縮及び復元するニューラルネットワークモデルを用いて、当該ニューラルネットワークモデルの入出力の差に応じた異常度を算出するようにしてもよい。いわゆるオートエンコーダにより正常時における複数のセンサの出力値の関係を学習させておくことで、適切に復元できなくなった場合に異常が発生したと判断することができるようになる。
また、プロセスデータ取得部が読み出したプロセスデータについて、所定期間の平均値、最大値、最小値、傾き又は標準偏差を算出する前処理部をさらに備え、異常判定部は、前処理部が算出した値を用いて異常度を算出するようにしてもよい。生産設備から得られるプロセスデータそのものでなく、その特徴を表すこれらの値を用いることで、不要な値を削減したり、異常の傾向が表れやすい統計値を得ることができる。
また、因果関係情報は、原因と変調との因果関係を、HAZOP(Hazard and Operability Study)、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)、FTA(Fault Tree Analysis)、若しくはETA(Event Tree Analysis)、又はこれらのいずれかに基づく分析手法により分析して作成されるものであってもよい。想定される変調の原因を漏れなく抽出して因果関係情報を作成することで、異常検知及び原因特定の精度向上や、最終的な変調が現れる前に変化する値に基づく早期の異常検知及び原因特定が可能になる。
なお、課題を解決するための手段に記載の内容は、本開示の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。また、課題を解決するための手段の内容は、コンピュータ等の装置若しくは複数の装置を含むシステム、コンピュータが実行する方法、又はコンピュータに実行させるプログラムとして提供することができる。なお、プログラムを保持する記録媒体を提供するようにしてもよい。
開示の技術によれば、生産設備における異常変調の原因の特定精度を向上させることができる。
図1は、本実施形態に係るシステムの一例を表す図である。 図2は、プラントが備える機器によって行われるプロセスの一例を示す模式的な図である。 図3は、バッチ工程におけるプロセスデータの一例を説明するための図である。 図4は、予め設定しておく工程ライン定義テーブルの一例を示す図である。 図5は、予め設定しておくタグ定義テーブルの一例を示す図である。 図6は、連続工程におけるプロセスデータの一例を説明するための図である。 図7は、トレーサビリティ情報の一例を示す図である。 図8は、連続工程におけるプロセスデータとバッチ工程における製造番号との対応付けを説明するための図である。 図9は、知識ベースに予め登録される情報の一例を示す図である。 図10は、変調とその原因との関係を表すロジックツリーの一例を示す図である。 図11は、プロセスデータの同期処理を説明するための図である。 図12は、時系列データについて基準からの距離によって異常度を算出する例を説明するための図である。 図13は、時系列データについて正負の方向を考慮した、基準からの距離によって異常度を算出する例を説明するための図である。 図14は、オートエンコーダを用いた異常検知を説明するための図である。 図15は、異常変調原因特定装置の構成の一例を示すブロック図である。 図16は、異常変調原因特定装置が実行する学習処理の一例を示す処理フロー図である。 図17は、アクションテーブルの一例を示す図である。 図18は、異常変調原因特定装置が実行する異常検知処理の一例を示す処理フロー図である。 図19は、入出力装置に出力される画面の一例を示す図である。 図20は、入出力装置に出力される画面の他の例を示す図である。
以下、図面を参照しつつ異常変調原因特定装置の実施形態について説明する。
<実施形態>
図1は、本実施形態に係るシステムの一例を表す図である。システム100は、異常変調原因特定装置1と、制御ステーション2と、プラント3とを含む。システム100は、例えば分散型制御システム(DCS:Distributed Control System)であり、複数の制御ステーション2を含む。すなわち、プラント3の制御系は複数の区画に分割され、各制御区画が制御ステーション2によって分散制御される。制御ステーション2は、DCSにおける既存の設備であり、プラント3が備えるセンサ等から出力される状態信号を受信したり、プラント3に対して制御信号を出力する。そして、制御信号に基づいて、プラント3が備えるバルブ等のアクチュエータやその他の機器が制御される。
異常変調原因特定装置1は、制御ステーション2を介してプラント3の状態信号(プロセスデータ)を取得する。プロセスデータは、原料や中間的な生産物である処理対象の温度、圧力、流量等や、プラント3が備える機器の運転条件を定める設定値等を含む。また、異常変調原因特定装置1は、想定される原因と、例えば異常として現れる影響との対応関係を記憶する知識ベースに基づく異常検知モデルを作成する。例えば、知識ベースに基づいて作成された、プロセスデータの変化について許容範囲からの逸脱を検知する手法に基づいて異常変調やその予兆、その原因を特定するためのモデルが作成される。そして、異常変調原因特定装置1は、モデルとプロセスデータとを用いて、異常変調の発生又はその予兆を検知することができる。また、異常変調原因特定装置1は、異常変調の原因及びそれに対処するためのアクションを記憶するテーブルと、特定された原因とに基づいて、例えば異常変調を抑制するための運転条件の候補を求め、ユーザに提示してもよい。
図2は、プラントが備える機器によって行われるプロセスの一例を示す模式的な図である。本実施形態では、プロセスは、バッチ工程31と連続工程32とを含み得る。バッチ工程31においては、所定の処理単位ごとに処理対象が逐次処理され、例えば各機器への原料の受入れ、保持、排出といった処理が順に行われる。連続工程32においては、継続して導入される処理対象が連続的に処理され、例えば、原料の受入れ、保持、排出といった処理が並行して行われる。また、プロセスは、並列に同一の処理を行う複数の系列33を含み得る。
各処理を行う機器は、例えば反応器、蒸留装置、熱交換器、圧縮機、ポンプ、タンク等を含み、これらが配管を介して接続されている。また、機器や配管の所定の位置には、センサやバルブ等が設けられる。センサは、温度計、流量計、圧力計、レベル計、濃度計等を含み得る。また、センサは、各機器の運転状態を監視し、状態信号を出力する。また、プラント3が備えるセンサは、センサの各々を特定するための識別情報である「タグ」が付されているものとする。すなわち、タグに基づいてプロセスデータの種類を特定することができる。そして、異常変調原因特定装置1及び制御ステーション2は、各機器への入出力信号を、タグに基づいて管理する。
<バッチ工程>
図3は、バッチ工程におけるプロセスデータの一例を説明するための図である。図3の左側の列は、図2に示したバッチ工程31のプロセスの一部を示す。具体的には、プロセスは、シュレッダー301と、サイクロン302と、前処理303と、予冷機304と、反応機305とを含む。また、これらのプロセスは、前処理工程、予冷工程、反応工程に分類されている。図3の右側の列は、各プロセスにおいて取得されるプロセスデータの一例を示す。前処理工程においては、タグが001及び002であるセンサから時系列のデータが取得される。予冷工程においては、タグが003及び004であるセンサから時系列のデータが取得される。反応工程においては、タグが005、006及び007であるセンサから時系列のデータが取得される。また、バッチ工程においては、製造番号(「製番」、「バッチナンバー」、「管理番号」とも呼ぶ)と対応付けられた処理対象を、断続的に処理する。すなわち、製造番号は、バッチ工程においてまとめて処理される処理対象を識別するための識別情報である。図3に示すように、時間の経過と共に、後続の製造番号と対応付けられた処理対象に関する時系列のデータが得られる。本実施形態では、制御ステーション2が、製造番号や、バッチ工程を構成する細分化された工程における処理の段階を示すステップを管理するものとする。なお、ステップを、制御ステーション2と接続されたプラント3内のPLC(Programmable Logic Controller,シーケンサ)によってリセットする場合には、制御ステーション2とプラント3との通信のタイミングに応じて適宜(例えばPLCにおいてステップが切り替わった後、設定時間経過後に)制御ステーション2から出力されるプロセスデータの製造番号を採用するようにしてもよい。また、設定時間は、製造ラインごと、細分化された工程ごとに設定できるようにしてもよい。
図4は、予め設定しておく工程ライン定義テーブルの一例を示す図である。工程ライン定義テーブルは、系列及び工程ごとに、製造番号、各工程における処理の段階を示すステップの定義、各工程において処理される処理対象の品種が登録される。工程ライン定義テーブルは、いわゆるデータベースのテーブルであってもよいし、CSVのような所定の形式のファイルであってもよい。また、工程ライン定義テーブルも、予めユーザによって作成され、異常変調原因特定装置1によって読み出される。
工程ライン定義テーブルは、系列、工程、製番、ステップ、品種の各属性を含む。系列のフィールドには、プロセスの系列を特定するための識別情報が登録される。工程のフィールドには、バッチ工程における細分化された工程を示す識別情報が登録される。製番のフィールドには、バッチ工程においてまとめて処理される処理対象を識別するための識別情報である製造番号が登録される。ステップのフィールドには、当該工程における処理の段階を示す複数のステップのタイミングの定義が登録される。品種のフィールドには、処理対象の種別が登録される。
図5は、予め設定しておくタグ定義テーブルの一例を示す図である。タグ定義テーブルは、各タグに対応するセンサから得られるプロセスデータの取得タイミングを定義する。なお、タグ定義テーブルは、いわゆるデータベースのテーブルであってもよいし、CSV(Comma Separated Values)のような所定の形式のファイルであってもよい。また、タグ定義テーブルは、予めユーザによって作成され、異常変調原因特定装置1によって読み出される。
タグ定義テーブルは、タグ、系列、工程、収集間隔の各属性を含む。タグのフィールドには、センサの識別情報であるタグが登録される。系列のフィールドには、プロセスの系列を特定するための識別情報が登録される。工程のフィールドには、バッチ工程における細分化された工程を示す識別情報が登録される。収集間隔のフィールドには、センサの出力値を取得する間隔を示す情報が登録される。
<連続工程>
図6は、連続工程におけるプロセスデータの一例を説明するための図である。図6の左側の列は、図2に示した連続工程32のプロセスの一部を示す。具体的には、プロセスは、タンク311と、ポンプ312とを含む。図6の右側の列は、各プロセスにおいて取得されるプロセスデータの一例を示す。連続工程32においては、タグと対応付けられ、製造番号とは対応付けられていない時系列のデータが、センサから継続して取得される。連続工程においては、タグが102及び103である各センサから時系列のデータが取得される。連続工程においては、機器が連続的に処理対象を受け入れ、継続して処理を行う。
バッチ工程の後に連続工程を行う場合、バッチ工程における処理対象と連続工程における処理対象とを紐づけるために、本実施形態では予めユーザによって設定されるトレーサビリティ情報を用いる。図7は、トレーサビリティ情報の一例を示す図である。トレーサビリティ情報は、サンプリング間隔及び滞留時間の各属性を含む。サンプリング間隔のフィールドには、連続工程において例えば縮分法による工程検査のためのサンプリングを行う間隔が登録される。滞留時間のフィールドには、バッチ工程の完了から、連続工程に含まれるプロセスに到達するまでに処理対象が滞留する時間が登録される。
図8は、連続工程におけるプロセスデータとバッチ工程における製造番号との対応付けを説明するための図である。プロセスデータの取得は、例えばトレーサビリティ情報に設定された間隔で行われる。また、バッチ工程の後に連続工程を行う場合、所定の期間に完了したバッチ工程による生成物が、連続工程の処理対象としてタンク等に導入される。したがって、連続工程におけるプロセスデータは、バッチ工程の完了からセンサによる測定時までの処理対象の滞留時間を遡り、バッチ工程の完了時刻が所定の期間に含まれる製造番号群と対応付けることができる。このような紐づけにより、バッチ工程と連続工程とが続けて実施される場合において、バッチ工程におけるプロセスデータを利用する異常原因の特定精度を向上させることができる。
以上のように、バッチ処理における製造番号と連続工程における測定タイミングとの対応付けにより、異常原因の特定精度を向上させることができる。
図9は、知識ベースに予め登録される情報の一例を示す図である。知識ベースは、異常変調原因特定装置1の記憶装置に予め記憶されるものとする。図9のテーブルは、センサ(タグ)の各々に対応する「影響」の列と、変調の「想定原因」を示す行とを含む。すなわち、各行に示す「原因1」、「原因2」等の原因によって影響を受けるセンサに対応する列に、値の変動の方向が登録されている。知識ベースにおいては、変動の方向を、センサの出力値の増加(上昇)を表す「上」又は減少(降下)を表す「下」で表示している。なお、図9に示すように、原因と影響の組み合わせは1対1とは限らない。また、各センサに対応付けて、プロセスデータの演算方法、抽出タイミング、異常判定に用いる閾値等が定められている。演算方法の行には、各センサの出力値に対して行う演算を示す情報が登録される。なお、本実施形態においては、例えば、ホテリング法、k近傍法、DTW Barycenter Averaging、Autoencoder、グラフィカルラッソ等の機械学習手法を用いて演算を行うものとする。抽出タイミングの行には、各センサの出力値のうち異常判定に用いる値を抽出するタイミングを示す情報が登録される。タイミングは、例えばバッチ処理においては、各工程における処理の段階を示すステップや特定の期間、時点等で定義してもよい。また、連続処理においては、図7に示したようなサンプリング間隔等によって定義してもよい。閾値の行には、各異常判定手法において異常と判定する基準である閾値が登録される。閾値は、例えば上限及び下限の2つを含むものであってもよい。以上のように、知識ベースは、原因となる事象と、それに起因して生じるプロセスデータの変調である影響との因果関係の組合せを定義する。また、因果関係の組合せは、影響として現れる変調を根とし、その想定原因を葉とし、原因から変調に至る過程で現れる事象を時系列に沿った階層状に接続したツリー形式で表すことができる。
知識ベースは、例えばHAZOP(Hazard and Operability Study)に基づいてユーザが予め作成するものとする。HAZOPは、例えば、プラントを構成する計装機器による監視ポイントでの検知手段、管理範囲(上下限の閾値でありアラームの設定点)、管理範囲からのずれ(異常、変調)、管理範囲からのずれが発生する想定原因の列挙、いずれの想定原因によりずれが発生したかを判断するロジック(検知手段)、ずれが発生したことによる影響、ずれが発生した場合にとる処置、その処置に対するアクションに関し、これらを関連付けて網羅的に列挙するための手法である。なお、HAZOPに限らず、FTA(Fault Tree Analysis)、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)、ETA(Event Tree Analysis)又はこれらを応用した手法や、これらに類する手法、オペレータへのヒアリング結果から抽出された内容、作業標準書や技術標準書から抽出された内容に基づいて知識ベースを作成するようにしてもよい。本実施形態では、知識ベースにおいて因果関係を有するとされているパラメータに基づいて異常検知を行う。
以上のようなテーブルに設定される情報に基づいて、異常変調原因特定装置1は、プラント3から取得したプロセスデータのうち所定のタイミングのデータを抽出し、予め定められた手法によって異常判定を行う。図10は、変調とその原因との関係を表すロジックツリーの一例を示す図である。ロジックツリーは、図9に示した知識ベースに基づいて作成することができる。また、図10のロジックツリーは、生産工程における上流側であって時系列上の早期の事象を左側に配置し、生産工程における下流側であって時系列上の後続の事象を右側に配置し、想定原因から影響として現れる変調に向かって矢印で階層状に接続したものである。また、ロジックツリーは、知識ベーステーブルにおける1つの変調に対して複数の想定原因が存在する場合は分岐させて接続し、想定原因から変調までの過程において共通して現れる事象を束ねて表示している。各分岐の上流側の端部に位置する太い実線の矩形は、知識ベーステーブルの想定原因に相当し、図9及び図10の括弧内の数字が対応している。また、細い実線の矩形は、知識ベーステーブルの影響に相当し、プロセスデータによって観察できる事象を表している。このような影響の各々について、知識ベーステーブルで定められた演算方法に応じた演算が行われる。また、各想定原因について、上記演算を行うための数式を含むモデルが定義され、モデルを用いて異常又はその予兆を検知したり、その原因特定を支援できるようになる。
<演算方法>
上述の演算は、例えば次のような手法を含むものであってもよい。また、異常変調原因特定装置1は、これらの演算結果を表示するようにしてもよい。
・ホテリング法(T法)
例えば1つのセンサから得られる複数のプロセスデータが所定の確率密度関数に従うと仮定し、プロセスデータを用いて算出される標本平均及び標本標準偏差から、母集団の平均及び標準偏差を推定する。所定の確率密度関数は、例えば正規分布である。そして、母集団の平均から検証対象のプロセスデータまでの距離に基づいて異常度を求める。例えばマハラノビス距離の2乗に基づいて異常度が決定される。なお、プロセスデータそのものの瞬時値を用いてもよいし、所定期間におけるプロセスデータの最大値、最小値、積分値、標準偏差、又は微分係数(傾き)等を用いてホテリング理論に基づく異常度を算出するようにしてもよい。ホテリング法によれば、所定の基準からの外れ値を検知することができる。
・k近傍法
例えば1以上のセンサから得られる時系列のプロセスデータをベクトル化又は行列化し、データ同士の距離を算出する。距離は、ユークリッド距離でもよいし、マハラノビス距離やマンハッタン距離であってもよい。そして、検証対象のデータからk番目に近いデータとの距離に応じて異常度を判定する。k近傍法においては他のデータとの関係に基づいて判断する。したがって、例えば正常値が複数のクラスターに分類できるような場合においては、複数のクラスターのいずれからも遠い外れ値を検知することができる。
・DTW(Dynamic Time Wrapping) Barycenter Averaging
異なるバッチ処理におけるプロセスデータのような複数の時系列データに基づいて、平均的な時系列データを算出することができる。例えば、バッチ処理における対応する区間の、異なる製造番号のプロセスデータについて、それぞれ上記平均的な時系列データとの距離を算出することができる。図11は、プロセスデータの同期処理を説明するための図である。製造番号が異なるバッチ処理の時系列データに含まれる要素である個々の値について、異なる時系列データに含まれる値同士の最短距離を総当たり的に求め、最短距離の積算値が最も小さくなるように、時間軸方向に時系列データをスライドさせて位置合わせを行う。すなわち、時系列データの類似度に基づいて、複数の時系列データを同期させる。このようにすれば、プラント3において実施される工程におけるステップが時系列上で対応するように、複数のプロセスデータを重ねて表示できるようになる。そして、同期させた時系列データ同士の距離の積算値に基づき、k近傍法やホテリング理論により異常度を演算する。DTW Barycenter Averagingによれば、時系列データ間の類否の程度に基づいて異常を検知することができる。
平均のような基準からの乖離について、正負の符号を付した異常度を算出するようにしてもよい。図12は、時系列データについて基準からの距離の大きさによって異常度を算出する例を説明するための図である。図13は、同じ時系列データについて正負の方向を考慮した、基準からの距離によって異常度を算出する例を説明するための図である。それぞれ、縦軸は例えば平均からの乖離の程度を表すものとする。破線の矩形で示す部分においては実際のところ変調が発生しているが、図12の例に示す値のみからでは検知が困難である。一方、図13の例においては正負の方向が逆に乖離する傾向が表れているため、変調の検知が容易になっている。
例えば上述のホテリング法においては、距離を2乗せずに、基準からの乖離の程度を正又は負の符号付きの値として求めることで、図13のような異常度が求められる。DTW Barycenter Averaging等においては、時系列データにおける極大値等の特徴的な点について例えば次の式により正又は負の符号を決定すると共に、算出された値を距離の大きさに乗じる。
符号決定式=(μ-x)/|μ-x|
なお、μは、訓練データの平均値(基準値)、xは検証対象のプロセスデータである。このように、符号決定式によれば、時系列データの所定の時点における基準値と、対応する時点における検証対象のプロセスデータとの大小関係に応じて、上記の時点における基準との乖離の方向を表す符号を決定することができる。また、基準からの乖離の程度を示す、符号付きの値を用いることで、図13のような異常度を求めることができ、誤検知を抑えることができる。また、時系列データにおける特徴的な点として、極大値のほか、極小値や、ある時点のプロセスデータと別の時点のプロセスデータとの差等を用いてもよい。
・オートエンコーダ(自己符号化器)
図14は、オートエンコーダを用いた異常検知を説明するための図である。本手法では、複数のセンサからのプロセスデータの関係の特徴に基づいて異常判定を行う。具体的には、ニューラルネットワークを用いて、例えば入力データである連続処理やバッチ処理のプロセスデータそのものを教師値とし、入力データの圧縮(エンコード)及び復元(デコード)を行うことができるモデルを作成する。ニューラルネットワークは、例えば、入力層及び出力層のノード数がセンサの数に対応し、中間層のノード数はセンサの数よりも少ない。入力層に入力された情報は、中間層において圧縮され、出力層において復元される。なお、中間層は複数存在してもよく、層間の接続構造は全結合には限定されない。そして、正常時のプロセスデータを訓練データとして学習処理を行い、入力層の値と出力層の値との差が小さくなるようにパラメータを調整したモデルが作成される。また、異常判定処理においては、検証対象のプロセスデータを入力し、入力層の値と出力層の値との差に応じた異常度を演算する。すなわち、異常のあるプロセスデータが入力された場合、中間層において圧縮された情報を出力層において適切に復元することができず、入力層と出力層の値の差が大きくなるため、この差に基づいて異常検知を行うことができる。オートエンコーダによれば、複数のセンサ間の出力値の関係の特徴に基づいて異常を検知することができる。
・グラフィカルラッソ
例えば連続処理やバッチ処理における複数のセンサからのプロセスデータの共分散行列に基づいて変数間の依存関係を数値化し、基準となる疎なグラフとして表す。正常時においては、変数間の依存関係は、基準から大きく崩れないものと判断できる。そして、異常判定処理においては、検証対象のプロセスデータを用いて、変数間の依存関係を求め、上述した基準との差異の大きさに応じた異常度を演算する。グラフィカルラッソによれば、プロセスデータ間の相関関係を数値化することができ、関係の崩れに基づいて異常度を検知することができる。
その他、一般的な異常検知手法やこれらを応用した手法をさらに用いるようにしてもよい。また、それぞれの手法において異常検知に用いる閾値は、プラント3の運転において実際に得られたプロセスデータを用いて、正常時には誤判定をすることができるだけ少なく、異常時には異常の発生やその予兆を速やかに検知できるような値を探索し、図9に示した知識ベースに登録しておくようにしてもよい。
<装置構成>
図15は、異常変調原因特定装置1の構成の一例を示すブロック図である。異常変調原因特定装置1は、一般的なコンピュータであり、通信インターフェース(I/F)11と、記憶装置12と、入出力装置13と、プロセッサ14とを備えている。通信I/F11は、例えばネットワークカードや通信モジュールであってもよく、所定のプロトコルに基づき、他のコンピュータと通信を行う。記憶装置12は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の主記憶装置、及びHDD(Hard-Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置(二次記憶装置)であってもよい。主記憶装置は、プロセッサ14が読み出すプログラムや他のコンピュータとの間で送受信する情報を一時的に記憶したり、プロセッサ14の作業領域を確保したりする。補助記憶装置は、プロセッサ14が実行するプログラムや他のコンピュータとの間で送受信する情報等を記憶する。入出力装置13は、例えば、キーボード、マウス等の入力装置、モニタ等の出力装置、タッチパネルのような入出力装置等のユーザインターフェースである。プロセッサ14は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置であり、プログラムを実行することにより本実施形態に係る各処理を行う。図15の例では、プロセッサ14内に機能ブロックを示している。すなわち、プロセッサ14は、所定のプログラムを実行することにより、プロセスデータ取得部141、前処理部142、学習処理部143、異常判定部144、原因診断部145及び出力制御部146として機能する。
プロセスデータ取得部141は、例えば通信I/F11及び制御ステーション2を介して、プラント3が備えるセンサからプロセスデータを取得し、記憶装置12に記憶させる。上述したように、プロセスデータは、タグによってセンサと対応付けられている。
前処理部142は、異常検知モデルの作成に際し、プロセスデータを加工する。例えば前処理部142は、プロセスデータと製造番号とを紐付けする。すなわち、予め記憶装置12に保持されている上述したトレーサビリティ情報に基づいて、バッチ処理における所定のタグ、系統及び製造番号に該当するプロセスデータと、連続処理における所定のタグに該当し所定のタイミングで出力されたプロセスデータとを紐づける。また、知識ベース等のテーブルの設定値に基づき異常判定に用いる所定期間のデータを抽出し、各手法に応じた特徴量を演算する。なお、学習処理においては、前処理部142はデータクレンジングを行い、非定常の運転期間におけるデータや、異常発生時のデータ、ノイズ等の外れ値を除外して訓練データを抽出するようにしてもよい。
学習処理部143は、例えば知識ベースに基づいて1以上の演算を含む異常検知モデルを作成し、記憶装置12に記憶させる。このとき、学習処理部143は、訓練データの特徴を学習したパラメータを決定する。なお、複数のセンサの出力値を用いて学習処理を行う場合は、適宜正規化を行うようにしてもよい。
異常判定部144は、プロセスデータと異常検知モデルとを用いて異常度を算出する。すなわち、異常判定部144は、学習処理においては、交差検証を行うためのテストデータと異常検知モデルとを用いて異常度を算出する。また、異常判定処理においては、プラント3から取得されるプロセスデータを用いて異常度を算出する。
原因診断部145は、算出された異常度を用いて、複数の想定原因の各々について成立度(確度)を算出する。成立度は、例えば、異常判定部が算出した異常度を用いて、知識ベースにおいて各想定原因に関連付けられている影響のうち、プロセスデータに現れている影響の割合やその程度に基づいて算出する。また、想定原因の各々に対応付けて、原因に対してとるべき対処を表すアクションを記憶装置12に記憶させておき、ユーザへアクションを提示できるようにしてもよい。
出力制御部146は、例えば入出力装置13を介して、異常を検知した場合にアラームを発報したり、想定原因ごとの成立度を出力したりする。出力制御部146は、ユーザの操作に応じて適宜以上のような構成要素が、バス15を介して接続されている。なお、便宜上、図15に示す1つの装置がプロセスデータ取得部141、前処理部142、学習処理部143、異常判定部144、原因診断部145及び出力制御部146を備えているが、少なくとも一部の機能を異なる装置に分散させて設けるようにしてもよい。
<学習処理>
図16は、異常変調原因特定装置1が実行する学習処理の一例を示す処理フロー図である。異常変調原因特定装置1のプロセッサ14は、所定のプログラムを実行することにより、図16に示すような処理を実行する。学習処理は、プラント3の過去の運転によって得られたプロセスデータを用いて任意のタイミングで実行される。また、学習処理は、主として前処理(図16:S1)、モデル構築処理(S2)、及び検証処理(S3)を含む。すなわち、プロセスデータの一部を訓練データとし、その他をテストデータとし、交差検証を行うようにしてもよい。なお、上述のテーブル等がユーザによって作成され、予め記憶装置12に記憶されているものとする。便宜上、図16に示す1つの処理フローに前処理、学習処理、及び検証処理を記載しているが、例えば前処理や検証処理等、少なくとも一部を異なる装置に分散させて実行するようにしてもよい。
異常変調原因特定装置1のプロセスデータ取得部141は、プロセスデータを取得する(図16:S11)。本ステップでは、図3や図6に示したようなプロセスデータのうち、異常検知モデルに用いられるデータが抽出される。プロセスデータは、OPCデータ、いわゆるデータベースのテーブル、CSV等のような所定の形式のファイルで記憶装置12に記憶されているものとする。また、プロセスデータは、日時、タグ等の属性を含み、特にバッチ処理のプロセスデータにおいては製番、ステップ等の属性をさらに含むようにしてもよい。
また、異常変調原因特定装置1の前処理部142は、連続処理のプロセスデータについて、製造番号との紐づけを行う(図16:S12)。本ステップでは、図8に示したように、連続工程において取得されるプロセスデータと、バッチ処理において取得されるプロセスデータの製造番号群とを対応付け、異常度の算出において使用するプロセスデータを対応付ける。すなわち、図9に示した知識ベースや図11に示したロジックツリーにおいて、ある原因がバッチ処理のプロセスデータにも連続処理のプロセスデータにも影響する場合、本ステップで紐づけられたデータに基づいて異常度や成立度の算出を行う。
そして、前処理部142は、異常判定モデルにおいて使用するデータの抽出及び加工を行う(図16:S13)。本ステップでは、前処理部142は、知識ベース等のテーブルの設定値に基づき異常判定に用いる所定期間のデータを抽出し、各手法に応じた特徴量を演算する。
例えば、ホテリング法による異常度を算出する場合は、前処理部142は、所定のタイミングや期間のプロセスデータを抽出し、プロセスデータそのものである瞬時値や、プロセスデータの最大値、最小値、積分値、若しくは差分、反応速度の積分値、所定の時点の微分係数等を算出し、記憶装置12に格納する。また、k近接法による異常度を算出する場合は、時系列のプロセスデータをベクトル化又は行列化する。また、DTW Barycenter Averagingによる異常度を算出する場合は、複数のプロセスデータについて同期処理を行い、平均的な時系列データを求める。また、オートエンコーダやグラフィカルラッソによる異常度を算出する場合は、複数のプロセスデータについて同期処理を行う。
なお、前処理部142は、プロセスデータについて所定のデータクレンジングを実施してもよい。データクレンジング処理は、外れ値を排除する処理であり、様々な手法を採用することができる。例えば、直近のデータを用いて移動平均値を算出してもよい。また、移動平均値と実測値との差をとり、差分のばらつきを表す標準偏差σを求める。そして、例えば確率分布の平均値-3σから確率分布の平均+3σまでの区間(3σ区間とも呼ぶ)のような所定の信頼区間に入らない値を除外してもよい。同様に、前後の実測値の差について、3σ区間に入らない値を除外してもよい。
その後、異常変調原因特定装置1の学習処理部143は、異常検知モデル構築処理を行う(図16:S2)。本ステップでは、図9に示した知識ベースに基づいて、異常度の演算を含む異常検知モデルを作成する。具体的には、図9の「想定原因」の各々に対応付けられた1以上の「影響」について、それぞれ「演算方法」に登録された手法による異常度を算出し、異常度の組み合わせで表される異常検知モデルを作成する。また、学習処理部143は、異常検知の手法によっては訓練データを用いてモデルのパラメータを調整する。例えば、オートエンコーダによる異常度を算出する場合は、入力されたプロセスデータの情報を圧縮した後に復元できるように、層間の重み係数を調整する。グラフィカルラッソによる異常度を算出する場合は、複数のセンサからのプロセスデータの共分散行列に基づいて変数間の依存関係を数値化する。そして、学習処理部143は作成した異常検知モデルを記憶装置12に記憶させる。
異常変調原因特定装置1の異常判定部144は、作成された異常検知モデルと、テストデータとを用いて、異常度の算出を行う(図16:S31)。本ステップでは、異常判定部144は、異常度算出の手法に応じて異常度を算出する。例えば、ホテリング法による異常度を算出する場合、プロセスデータを用いて母集団の標本平均及び標本標準偏差を推定し、母集団の平均から検証対象のプロセスデータまでの距離に基づいて異常度を求める。k近傍法による異常度を算出する場合は、データ同士の距離を算出し、検証対象のデータからk番目に近いデータとの距離に応じた異常度を算出する。DTW Barycenter Averagingによる異常度を算出する場合は、前処理において同期させた時系列データ同士の距離の積算値に基づき、k近傍法やホテリング理論により異常度を求める。オートエンコーダによる異常度を算出する場合は、検証対象のプロセスデータをオートエンコーダに入力し、入力層の値と出力層の値との差に応じた異常度を求める。グラフィカルラッソによる異常度を算出する場合は、検証対象のプロセスデータを用いて、変数間の依存関係を求め、基準となる依存関係との差異の大きさに応じた異常度を求める。
異常変調原因特定装置1の原因診断部145は、算出された異常度を用いて想定原因の成立度を求める(図16:S32)。本ステップでは、知識ベースの想定原因の各々について、影響として対応付けられた変調が表れた割合に基づいて、成立度を算出する。例えば、図9の原因(2)には、タグ002の水分の上昇、タグ004の温度1の上昇、及びタグ005の温度2の下降という3つの影響が対応付けられている。図16のS31において影響の各々について算出された異常度を用いて、3つの影響のうち異常度が閾値を超えたものの割合を成立度としてもよい。仮に3つの影響のうち2つについて異常度が閾値を超えた場合、例えば成立度は66.7%とすることができる。また、成立度の算出において、影響(タグ)の種類に応じて、又は異常度の大きさに基づいて、さらに重み付けを行ってもよい。例えば、成立度として、各影響について重みを乗じた上で総和を求めるようにしてもよい。
また、出力制御部146は、作成されたモデルをユーザが評価するために、S31で算出された異常度及びS32で算出された成立度を出力する(図16:S33)。本ステップでは、プラント3の過去の運転において収集されたプロセスデータのうち、モデルの構築に用いた訓練データとは異なるテストデータを用いて交差検証を行う。また、本ステップにおいては過去に異常が発生した時点のプロセスデータも用いて適切に異常を検知してアラームやこれに対処するためのアクションが出力されるか検証する。また、学習処理部143は、十分な精度で異常を検知できるか判断する(図16:S4)。精度が十分でないと判断された場合(S4:NO)、適切に異常を検知できるように、知識ベースに登録されている閾値(換言すれば、プロセスデータの正常範囲)を修正し、S31以降の処理を繰り返す。S4において十分な精度で異常を検知できると判断された場合(S4:YES)、S2において作成された異常検知モデルや閾値を用いた運用を行う。なお、S4の判断の少なくとも一部は、ユーザによってなされるようにしてもよい。
なお、アクションについては、例えば想定原因に対応付けて、これに対処するためにプラント3のオペレータが行うべきアクションが予め記憶装置12に記憶されているものとする。図17は、アクションテーブルの一例を示す図である。図17のテーブルは、原因、アクション1、及びアクション2の各属性を含む。原因のフィールドには、知識ベースの想定原因に対応する原因が登録されている。アクション1及びアクション2のフィールドには、対応する原因を解消するためにプラント3のオペレータが行うべき処置を表す情報が登録されている。
<異常検知処理>
図18は、異常変調原因特定装置1が実行する異常検知処理の一例を示す処理フロー図である。異常変調原因特定装置1のプロセッサ14は、所定のプログラムを実行することにより、図18に示すような処理を実行する。異常検知処理は、プラント3の運転によって得られたプロセスデータを用いて、ほぼリアルタイムに実行される。異常検知処理は、主として前処理(図18:S10)、モデル読出処理(S20)、及び異常判定処理(S30)を含む。図18には、図16に示した学習処理と対応する工程に同一の符号を付し、以下では学習処理との相違点を中心に説明する。便宜上、学習処理を行う装置と同一の装置による処理として説明するが、異常検知処理を行う装置は、学習処理を行う装置とは異なるものであってもよい。また、学習処理において作成された異常検知モデルや閾値、知識ベース等のテーブルが、予め記憶装置12に記憶されているものとする。
異常変調原因特定装置1のプロセスデータ取得部141は、プロセスデータを取得する(図18:S11)。プロセスデータは、OPCデータ、いわゆるデータベースのテーブル、CSV等のような所定の形式のファイルで記憶装置12に記憶されているものとする。本ステップは図16のS11とほぼ同様であるが、プラント3において運転中のプロセスに関するデータが取得される。また、異常変調原因特定装置1の前処理部142は、連続処理のプロセスデータについて、製造番号との紐づけを行う(図18:S12)。本ステップは、図16のS12と同様である。そして、前処理部142は、異常判定モデルにおいて使用するデータの抽出及び加工を行う(図18:S13)。本ステップは、図16のS13とほぼ同様であるが、データクレンジングを行う必要はない。
その後、異常変調原因特定装置1の異常判定部144は、学習処理において作成された異常検知モデルを記憶装置12から読み出す(図18:S20)。また、異常判定部144は、作成された異常検知モデルと、プラント3の運転によって得られたプロセスデータとを用いて、異常度の算出を行う(図18:S31)。本ステップは、図16のS31と同様である。また、異常変調原因特定装置1の原因診断部145は、算出された異常度を用いて想定原因の成立度を求める(図18:S32)。本ステップは、図16のS32と同様である。
また、出力制御部146は、S31で算出された異常度及びS32で算出された成立度を出力すると共に、いずれかの異常度が予め定められた閾値を超える場合、アラームを発報する(図18:S303)。本ステップでは、プラント3の運転の状態を示すプロセスデータや異常度、想定原因の成立度が、入出力装置13を介してユーザに提示される。
図19は、入出力装置13に出力される画面の一例を示す図である。図19は、メインの管理図の一例であり、個別のプロセスデータの推移を折れ線グラフで表している。入出力装置13に表示された領域131は、プラント3から取得されるプロセスデータの識別情報と最新の値との組み合わせを複数表示している。領域132の管理図は、特定のプロセスデータについて値の推移を折れ線グラフで表している。なお、縦軸はプロセスデータの値を表し、横軸は時間軸を表す。また、図19の例では実線が真値を表し、破線が推算値を表すものとする。なお、真値は、異常度を算出する対象のプロセスデータそのものであり、推算値は、異常度の算出対象のプロセスデータの回帰分析による推算値であってもよい。細い破線は、正常範囲の上限及び下限(換言すれば異常検知のための閾値)を表すものとする。なお、図19に吹出しで示すように、ユーザがポインティングデバイス等の入出力装置13を操作し、グラフ上にポインタを移動させた場合、ポインタが指示する時点のプロセスデータの数値を表示するようにしてもよい。領域133の要因効果図は、横軸に領域132に表示されたプロセスデータの変調の原因、またはそれを特定できるタグを表示し、縦軸はその原因の成立度を棒グラフで表す。成立度が大きいほど、プロセスデータの変調の原因として可能性が高いことを示している。また、成立度は、原因診断部145が、プロセスデータの変調の想定原因とされる事象について、異常判定部144で算出される異常度に基づいて算出する。ユーザは、成立度の大きさに基づいて、変調の原因の候補とその確度を認識することができ、容易に変調原因を特定できる。また、要因効果図は、領域134の「診断」ボタンが押下された場合に、異常判定部144が指定時刻又は現在時刻における異常度を算出し、出力制御部146によって表示されるものとする。そして、ユーザがポインティングデバイス等の入出力装置13を操作し、要因効果図の棒グラフのいずれかを選択した場合、棒グラフに対応する変調の原因がロジックツリーにおいて強調表示される。
図20は、出力制御部146によって入出力装置13に出力される画面の他の例を示す図である。図20はツリー図の一例であり、図10に示したようなロジックツリーが表示されている。例えば図19においてタグ004の棒グラフが選択された場合、タグ004のプロセスデータに対応する影響がロジックツリー上において強調表示される。強調表示は、例えば色の変更や線種の変更など、表示態様の変更によってなされる。図20においては、対応する矩形にハッチングを施している。また、ロジックツリーの上流側に接続された太線の矩形は、影響の想定原因を表している。図20において吹出しで示すように各原因を表示するようにしてもよいし、原因以外のプロセスデータへの影響を表示するようにしてもよい。なお、図18のS32において算出された各原因の成立度をさらに表示したり、アクションをさらに表示したりしてもよい。また、原因は、各矩形上にユーザがポインタを移動させた場合に表示するようにしてもよい。
なお、図19、図20に示す「トレンド」ボタンを押下した場合、要因効果図に挙げられた各タグのプロセストレンドを表示してもよく、特に変調の原因を特定できるタグのプロセストレンドを表示してもよい。プロセストレンドは、記憶装置12に記憶されたプロセスデータを用いて、例えば、所定時間ごと、所定日数ごと、所定月数ごと、又は季節ごとのような期間毎の値を算出し、グラフ上にプロットしたものである。
また、出力制御部146は、例えば各演算方法により算出される異常度が所定の閾値を超えたタイミングで、異常度のログを出力するようにしてもよい。また、想定原因や成立度のログを出力するようにしてもよい。各ログは、日時、製造番号、演算方法や異常検知モデル等を紐づけて出力することにより、異常変調の解析を容易にすることができる。
<変形例>
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
また、上述した実施形態では化学プラントを例に説明したが、一般的な生産設備における製造プロセスに適用することができる。例えば、実施形態におけるバッチ工程の製造番号に代えてロット番号を処理単位として、実施形態におけるバッチ工程に準じた処理を適用してもよい。
異常変調原因特定装置1の機能の少なくとも一部は、複数の装置に分散して実現するようにしてもよいし、同一の機能を複数の装置が並列に提供するようにしてもよい。また、異常変調原因特定装置1の機能の少なくとも一部は、いわゆるクラウド上に設けるようにしてもよい。
また、本開示は、上述した処理を実行する方法やコンピュータプログラム、当該プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を含む。当該プログラムが記録された記録媒体は、プログラムをコンピュータに実行させることにより、上述の処理が可能となる。
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外し可能なものとしては、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、磁気テープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としては、HDDやSSD(Solid State Drive)、ROM等がある。
1: 異常変調原因特定装置
11: 通信I/F
12: 記憶装置
13: 入出力装置
14: プロセッサ
141: プロセスデータ取得部
142: 前処理部
143: 学習処理部
144: 異常判定部
145: 原因診断部
146: 出力制御部
2: 制御ステーション
3: プラント

Claims (9)

  1. 生産設備が備える複数のセンサによって継続的に出力されるプロセスデータを記憶する記憶装置から、前記プロセスデータを読み出すプロセスデータ取得部と、
    前記プロセスデータ取得部が読み出したプロセスデータの変調の程度を表す異常度を算出する異常判定部と、
    原因と、当該原因から生じる影響として現れる前記複数のセンサが出力するプロセスデータの変調との因果関係の組合せを、時系列に沿った階層状に定義する因果関係情報を用いて、前記複数のセンサが出力するプロセスデータについて、前記異常判定部が算出した異常度が所定の基準を満たすか判断する原因診断部と、
    を備え
    前記因果関係情報は、前記生産設備が行う生産工程のうち上流側の工程における変調から下流側の工程における変調まで階層状に定義され、
    継続的に出力される前記プロセスデータのうち前記異常度の算出に用いるプロセスデータは、前記生産工程におけるタイミング、期間、又は間隔によって定義される
    異常変調原因特定装置。
  2. 前記異常判定部は、所定の基準に対する乖離の方向が正又は負のいずれであるかに応じた異常度を算出する
    請求項1に記載の異常変調原因特定装置。
  3. 前記異常判定部は、前記プロセスデータの極大値及び極小値の少なくとも一部について、所定の基準に対する乖離の方向が正又は負のいずれであるかに応じた異常度を算出する
    請求項2に記載の異常変調原因特定装置。
  4. 前記異常判定部は、前記プロセスデータ取得部が読み出したプロセスデータのうち、前記因果関係情報が定義するタイミング、期間、又は間隔に基づいて抽出された値を用いて異常度の算出を行う
    請求項1から3のいずれか一項に記載の異常変調原因特定装置。
  5. 前記異常判定部は、予め定められた組合せに含まれる複数のセンサが出力するプロセスデータの値を圧縮及び復元するニューラルネットワークモデルを用いて、当該ニューラル
    ネットワークモデルの入出力の差に応じた異常度を算出する
    請求項1から4のいずれか一項に記載の異常変調原因特定装置。
  6. 前記プロセスデータ取得部が読み出したプロセスデータについて、所定期間の平均値、最大値、最小値、傾き又は標準偏差を算出する前処理部をさらに備え、
    前記異常判定部は、前記前処理部が算出した値を用いて前記異常度を算出する
    請求項1から5のいずれか一項に記載の異常変調原因特定装置。
  7. 前記因果関係情報は、前記原因と前記変調との前記因果関係を、HAZOP(Hazard and Operability Study)、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)、FTA(Fault Tree Analysis)、若しくはETA(Event Tree Analysis)、又はこれらのいずれかに基づく分析手法により分析して作成される
    請求項1から6のいずれか一項に記載の異常変調原因特定装置。
  8. 生産設備が備える複数のセンサによって継続的に出力されるプロセスデータを記憶する記憶装置から、前記プロセスデータを読み出し、
    読み出されたプロセスデータの変調の程度を表す異常度を算出し、
    原因と、当該原因から生じる影響として現れる前記複数のセンサが出力するプロセスデータの変調との因果関係の組合せを、時系列に沿った階層状に定義する因果関係情報を用いて、前記複数のセンサが出力するプロセスデータについて、算出された異常度が所定の基準を満たすか判断する
    処理をコンピュータが実行し、
    前記因果関係情報は、前記生産設備が行う生産工程のうち上流側の工程における変調から下流側の工程における変調まで階層状に定義され、
    継続的に出力される前記プロセスデータのうち前記異常度の算出に用いるプロセスデータは、前記生産工程におけるタイミング、期間、又は間隔によって定義される
    異常変調原因特定方法。
  9. 生産設備が備える複数のセンサによって継続的に出力されるプロセスデータを記憶する記憶装置から、前記プロセスデータを読み出し、
    読み出されたプロセスデータの変調の程度を表す異常度を算出し、
    原因と、当該原因から生じる影響として現れる前記複数のセンサが出力するプロセスデータの変調との因果関係の組合せを、時系列に沿った階層状に定義する因果関係情報を用いて、前記複数のセンサが出力するプロセスデータについて、算出された異常度が所定の基準を満たすか判断する
    処理をコンピュータに実行させ
    前記因果関係情報は、前記生産設備が行う生産工程のうち上流側の工程における変調から下流側の工程における変調まで階層状に定義され、
    継続的に出力される前記プロセスデータのうち前記異常度の算出に用いるプロセスデータは、前記生産工程におけるタイミング、期間、又は間隔によって定義される
    異常変調原因特定プログラム。
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