正常な組織における転位因子(TE)の発現は、胚発生の初期に確立されたDNAメチル化によってサイレンシングされる。ヒストン修飾によって、追加の阻害層が提供される。TEは、腫瘍細胞内で再活性化され得る。
発明者らは、TE配列の一部とエキソン配列の一部とを含む融合転写物配列によってコードされる腫瘍ネオアンチゲンペプチドを選択する方法を開発した。
本開示による方法によって同定されたネオアンチゲン腫瘍特異的ペプチドは、免疫原性が高い。実際に、それらは、正常な細胞に存在しない融合転写物(転位因子、TE、およびエキソン配列からなる)に由来するため、本開示のペプチドは、非常に低い免疫寛容を呈することが期待される。
本開示はまた、患者集団間で共有腫瘍ネオエピトープを有するペプチドを選択することを可能にする。このような共有腫瘍ペプチドは、多数の患者の免疫療法に使用され得るため、治療的関心が高い。
定義
本開示によれば、用語「疾患」は、癌疾患、特に本明細書に記載される癌疾患の形態を含む、任意の病理学的状態を指す。
用語「正常」は、健康な状態または健康な対象もしくは組織における状態、すなわち、非病理学的状態を指し、ここで「健康な」は、非癌性を意味することが好ましい。
癌(医学用語:悪性新生物)は、細胞群が制御不能な増殖(正常範囲を超えた分裂)、浸潤(隣接組織への侵入および破壊)、ならびに時には転移(リンパまたは血液を介して体内の他の場所に広がる)を示す疾患の一種である。これら三つの悪性特性の癌は、自己限定的であり、浸潤または転移しない良性腫瘍と区別する。ほとんどの癌は腫瘍を形成するが、白血病のような一部の癌は形成しない。
悪性腫瘍は本質的に癌と同義である。悪性腫瘍(Malignancy)、悪性新生物、および悪性腫瘍(malignant tumor)は、本質的に癌と同義である。
本明細書で使用される場合、用語「腫瘍」または「腫瘍疾患」は、細胞(新生細胞、発癌性細胞、または腫瘍細胞と呼ばれる)が異常増殖し、好ましくは腫れまたは病変を形成することを指す。「腫瘍細胞」とは、急速で制御不能な細胞増殖によって成長し、新しい成長を開始した刺激が止まった後も成長し続ける異常な細胞を意味する。腫瘍は、正常な組織との構造的構成および機能的連携の部分的または完全な欠如を示し、通常、良性、前悪性、または悪性のいずれかであり得る別個の組織の塊を形成する。
良性腫瘍は、癌の悪性特性の三つ全てを欠く腫瘍である。したがって、定義により、良性腫瘍は、無制限に侵襲的に増殖せず、周囲の組織に浸潤せず、隣接していない組織に広がらない(転移)。
新生物は、新生組織形成の結果としての異常な組織の塊である。新生組織形成(ギリシャ語で新たな成長)は、細胞の異常な増殖である。細胞の増殖が上回り、その周囲の正常組織の成長と協調していない。刺激の停止後も、同じように過剰な増殖が持続する。通常はしこりまたは腫瘍の原因となる。新生物は、良性、前悪性または悪性であり得る。
本開示による「腫瘍の成長」または「腫瘍成長」は、腫瘍がその大きさを増加させる傾向、および/または腫瘍細胞が増殖する傾向に関する。
本開示の目的のために、用語「癌」および「癌疾患」は、用語「腫瘍」および「腫瘍疾患」と互換的に使用される。
癌は、腫瘍に似ている細胞の種類、したがって、腫瘍の起源であると推定される組織によって分類される。これらはそれぞれ、組織型および部位である。
本出願によれば、癌は、以下の組織または器官のいずれか一つに影響を及ぼす可能性がある:乳房;肝臓;腎臓;心臓、縦隔、胸膜;口底;口唇;唾液腺;舌;歯茎;口腔;口蓋;扁桃腺;喉頭;気管;気管支、肺;咽頭、下咽頭、中咽頭、上咽頭;食道;胃、肝内胆管、胆道、膵臓、小腸、結腸などの消化器;直腸;膀胱、胆嚢、尿管などの泌尿器;直腸S状結腸移行部; 肛門、肛門管;皮膚;骨;関節、 手足の関節軟骨;眼および付属器;脳;末梢神経、自律神経系;脊髄、脳神経、髄膜;および中枢神経系の様々な部分;結合組織、皮下組織およびその他の軟組織;後腹膜、腹膜; 副腎;甲状腺;内分泌腺および関連構造;卵巣、子宮、子宮頸部などの女性生殖器;子宮体部、膣、外陰部;陰茎、精巣および前立腺などの男性生殖器;造血系および網内系;血液;リンパ節;胸腺。
したがって、本開示による用語「癌」は、白血病、セミノーマ、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽腫、神経膠腫、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、副腎癌、甲状腺癌、血液癌、皮膚癌、脳の癌、子宮頸癌、腸の癌、肝癌、結腸癌、胃癌、腸癌、頭頸部癌、消化器癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、耳鼻喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌および肺癌、ならびにそれらの転移物を含む。その例は、肺癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌、腎細胞癌、子宮頸癌、または上述の癌種もしくは腫瘍の転移である。本開示による癌という用語は、癌転移および癌の再発も含む。
肺癌の主な種類は、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)である。非小細胞肺癌には、扁平上皮細胞肺癌、肺腺癌(LUAD)、および大細胞肺癌の三つの主な亜型がある。腺癌は肺癌の約10%を占める。この癌は通常、肺の末梢に見られ、小細胞肺癌および扁平上皮肺癌がどちらも中心に位置する傾向があるのとは対照的である。
「転移」とは、体の元の部位から別の部位への癌細胞の広がりを意味する。転移の形成は、非常に複雑なプロセスであり、原発腫瘍からの悪性細胞の剥離、細胞外基質の浸潤、内皮基底膜を貫通して体腔および血管への侵入、次いで血液によって輸送された後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位における新しい腫瘍、すなわち二次性腫瘍または転移性腫瘍の成長は、血管新生に依存する。腫瘍転移は、原発腫瘍の除去後も、腫瘍細胞または構成要素が残存し、転移能を発達させる可能性があるため、しばしば発生する。一実施形態では、本開示による用語「転移」は、原発腫瘍および所属リンパ節系から離れた転移に関する「遠隔転移」に関する。
二次性または転移性腫瘍の細胞は、元の腫瘍の細胞と似ている。これは、例えば、卵巣癌が肝臓に転移する場合、二次腫瘍は、異常な肝細胞ではなく、異常な卵巣細胞から構成されることを意味する。次いで、肝臓の腫瘍は、肝臓癌ではなく、転移性卵巣癌と呼ばれる。
再発または再燃は、患者が過去に罹患した状態に再び罹患した時に起こる。例えば、患者が腫瘍疾患に罹患し、当該疾患の治療に成功し、当該疾患を再び発症した場合、当該新たに発症した疾患は、再発または再燃とみなされ得る。しかしながら、本開示によると、腫瘍疾患の再発または再燃は、元の腫瘍疾患の部位で発生する場合があるが、必ずしも発生するとは限らない。したがって、例えば、患者が卵巣腫瘍に罹患し、治療が成功した場合、再発または再燃は、卵巣腫瘍の発生、または卵巣とは異なる部位での腫瘍の発生である可能性がある。腫瘍の再発または再燃はまた、腫瘍が、元の腫瘍の部位だけでなく、元の腫瘍の部位とは異なる部位で発生する状況も含む。好ましくは、患者が治療を受けている元の腫瘍は原発腫瘍であり、元の腫瘍の部位とは異なる部位の腫瘍は二次性または転移性腫瘍である。
「治療」とは、対象の腫瘍のサイズまたは腫瘍の数を減少させること;対象の疾患を停止または遅延させること;対象の新たな疾患の発症を阻害または遅延させること;現在疾患を有するか、または以前に疾患を有していた対象の症状および/または再燃の頻度または重症度を低減させること;および/または延長すること、すなわち、対象の寿命を延ばすことを含む、疾患を予防または除去するために、本明細書に記載される化合物または組成物を対象に投与することを意味する。特に、「疾患の治療」という用語は、疾患またはその症状の治癒、期間の短縮、改善、予防、進行もしくは悪化の遅延もしくは阻害、または発症の予防もしくは遅延を含む。
「リスクがある」とは、一般集団と比較して、疾患、特に癌を発症する可能性が通常よりも高いと識別される対象、すなわち患者を意味する。さらに、疾患、特に癌に罹患したことがある、または現在罹患している対象は、疾患を発症するリスクが高い対象であり、そのような対象は疾患を発症し続ける場合がある。癌に罹患している、または罹患したことがある対象は、癌転移のリスクが高くなる。
本明細書に記載される治療活性剤、ワクチン、および組成物は、注射または注入を含む任意の従来的経路を介して投与され得る。
本明細書に記載される薬剤は、有効量で投与される。「有効量」は、所望の反応または所望の効果を、単独で、またはさらなる用量と共に、またはさらなる治療剤と共に達成する量を指す。特定の疾患または特定の状態の治療の場合、所望の反応は、好ましくは、疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を遅らせること、特に疾患の進行を中断または逆転させることを含む。疾患または状態の治療における所望の反応はまた、該疾患または該状態の発症の遅延または発症の予防であってもよい。
本明細書に記載の薬剤の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、身長および体重、治療期間、付随する療法の種類(存在する場合)、特定の投与経路および類似の因子を含む、患者の個々のパラメータに依存する。したがって、本明細書に記載の薬剤の投与量は、こうした様々なパラメータに依存し得る。患者の反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(または異なる、より局所的な投与経路によって達成される実質的に高い用量)が使用されてもよい。
本明細書に記載される医薬組成物は、好ましくは滅菌され、有効量の治療活性物質を含有して、所望の反応または所望の効果を生成する。
本明細書に記載される医薬組成物は、概して、薬学的に適合性のある量で、かつ薬学的に適合性のある調製物で投与される。用語「薬学的に適合性のある」は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない非毒性物質を指す。この種の調製物は、通常、塩、緩衝物質、保存剤、担体、アジュバントなどの免疫強化物質を補足するもの、例えば、CpGオリゴヌクレオチド、サイトカイン、ケモカイン、サポニン、GM-CSFおよび/またはRNA、ならびに適切な場合には他の治療活性化合物を含有し得る。医薬で使用される場合、塩は薬学的に適合性があるべきである。
本出願では、用語「融合転写物」または「キメラ転写物」は、同義語として無差別に使用される。本開示による「融合またはキメラ」「転写物または配列」は、部分的にエキソン配列と、部分的に転位因子(TE)配列と整列し、正規化された読み取り数が2.10-6より大きい転写物として定義される。正規化された読み取り数は、融合をカバーする読み取り数を試料のライブラリサイズで割ったものとして定義される。
本明細書で使用される場合、具体的に記載または文脈から明白でない限り、用語「約」は、当技術分野の正常な許容範囲内、例えば、平均の2標準偏差以内であると理解されるべきである。約は、記載値の50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内であると理解され得る。文脈から明確でない限り、本明細書に提供されるすべての数値は、約という用語によって修正される。
「転位因子」は、クラスI(LTR、LINE、およびSINEを含有するものを含むレトロトランスポゾン)と、クラスII(DNAトランスポゾン)の両方が、内在的にゲノムの一部である(すなわち、感染によるものではない)と理解されるべきである。これには、両方のクラスの自律要素と非自律要素の両方が含まれる。本開示によると、TE配列は、例えば、内在性レトロウイルス(ERV)、長鎖散在反復配列(LINE)および短鎖散在反復配列(SINE)、および哺乳類末端反復配列トランスポゾン(MaLR)を含むレトロトランスポゾンなどのクラスIのTE、ならびに内在的にゲノムの一部であるDNAトランスポゾンなどのクラスIIのTEから選択され得る。
リーディングフレームは、核酸(DNAまたはRNA)分子内のヌクレオチドの配列を、連続した重複しない三連セットに分割する方法である。
オープンリーディングフレーム(ORF)は、ペプチドに翻訳される能力を有するリーディングフレームの一部である。ORFは、転写開始部位(TSS)の開始コドン(例えば、AUG)と終止コドン(例えば、UAA、UAG、またはUGA)を含有する連続したコドンである。ORF内のATGコドン(必ずしも最初ではない)は、翻訳がどこで始まるかを示し得る。転写終結部位は、ORFの後、翻訳終止コドンを超えて位置する。複数のエキソンを有する真核生物遺伝子では、ORFはイントロン/エキソン領域にまたがり、ORFの転写後に一緒にスプライシングされて、タンパク質翻訳のための最終的なmRNAを産生し得る。
本明細書に意図されるように、「標準ORF」は、例えば、Ensemblゲノム/トランスクリプトーム/プロテオームデータベースコレクション(典型的にはHG19)などのデータベースに記載または注釈されているmRNA配列内の特定のリーディングフレームを有するタンパク質コード配列である。典型的には、標準ORFは、正常で健康な細胞のエキソンの一つと同じである。
本明細書に意図されるように、「非標準ORF」は、例えば、Ensemblゲノム/トランスクリプトーム/プロテオームデータベースなどのゲノムデータベースに記載されていない(すなわち注釈されていない)mRNA配列内の特定のリーディングフレームを有するタンパク質コード配列である。典型的には、非標準ORFは、したがって、正常で健康な細胞におけるエキソンの通常のリーディングフレームと比較して、リーディングフレームがシフトしていることを意味する。しかしながら、いくつかの実施形態では、非標準をゲノムデータベース(例えば、Ensemblデータベース)に記載することができるが、mRNA配列は、正常細胞においてマイナーな種を表す。マイナーな種は、典型的には、正常細胞中5%未満、特に2%未満、または優先的に1%未満の種を意図する。
エキソンは、RNAスプライシングによってイントロンが除去された後、その遺伝子によって産生される最終的な成熟RNAの一部をコードする遺伝子の任意の部分である。エキソンという用語は、遺伝子内のDNA配列と、RNA転写物の対応する配列の両方を指す。RNAスプライシングでは、成熟メッセンジャーRNAを生成する一部分として、イントロンが除去され、エキソンが互いに共有結合される。本出願人によるエキソン配列は、一つまたは複数のエキソンの少なくとも一部を含む。典型的には、エキソン配列は、一つまたは2つのエキソンの少なくとも一部を含む。
したがって、スプライシング後の成熟RNA中に存在する3’末端および5’末端(3’UTRおよび5’UTR)の非翻訳配列は、エキソン配列であるが、これらの配列は、翻訳(5’UTR)の開始コドンの上流または翻訳(3’UTR)を終了する終止コドンの下流に位置するため、非コード配列である。
用語「ペプチドまたはポリペプチド」は、本明細書中の「ネオアンチゲンペプチドまたはポリペプチド」と互換的に使用され、典型的には、隣接するアミノ酸のα-アミノ基とカルボキシル基との間のペプチド結合によって互いに連結された一連の残基、典型的にはL-アミノ酸を示す。ポリペプチドまたはペプチドは、その中性(非荷電)形態、または塩の形態のいずれかで、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化などの修飾を含有しないか、またはこれらの修飾を含有するかのいずれかで、様々な長さであってもよいが、修飾は、本明細書に記載されるポリペプチドの生物学的活性を破壊しないことを条件とする。
「参照ゲノム」、または「代表ゲノム」は、遺伝子の種セットの代表例として科学者によって組み立てられた、デジタル核酸配列データベースである。参照ゲノムは、多数のドナーからのDNAの配列決定から組み立てられることが多いため、任意の単一の個体(動物またはヒト)の遺伝子のセットを正確には表さない。代わりに、参照は、各ドナーからの異なるDNA配列の半数体モザイクを提供する。
腫瘍ネオアンチゲンペプチドを選択する方法
本開示による腫瘍ネオアンチゲンペプチドを選択する方法は、
- 対象の癌細胞試料由来のmRNA配列の中から、転位因子(TE)配列およびエキソン配列を含み、かつオープンリーディングフレーム(ORF)を含む、融合転写物配列を特定する工程と、
- 融合転写物配列の該ORFの一部によってコードされる、少なくとも8アミノ酸の腫瘍ネオアンチゲンペプチドを選択する工程と、を含み、
該ORFが、TEとエキソン配列との間の接合部と重複し、純粋なTEであり、および/または非標準であり、
該腫瘍ネオアンチゲンペプチドが、該対象の少なくとも一つの主要組織適合複合体(MHC)分子に結合する。
典型的には、エキソン配列の非標準ORFの一部から翻訳されたペプチドは、免疫系によって非自己として認識される。
いくつかの実施形態では、エキソン配列は、発癌遺伝子および/または腫瘍抑制遺伝子、ならびにそれらの変異バリアント由来である。
概念上、癌は連続的な体細胞変異の蓄積の結果である。多くの研究は、発癌遺伝子における機能獲得と腫瘍抑制因子遺伝子における機能喪失の両方が、正常細胞からの癌の発生に必要であることを示している。二倍体生物の場合、機能獲得変異は、多くの場合、優性または半優性であるのに対し、機能喪失変異は通常劣性である。発癌の2ヒット仮説は、腫瘍抑制因子遺伝子の両方の対立遺伝子の喪失によって癌の発生が開始することを示唆する。
発癌遺伝子(癌遺伝子とも呼ばれる)は、その作用が細胞増殖または成長を積極的に促進する遺伝子である。正常な非変異型は、癌原遺伝子として知られている。変異型は、過剰にまたは不適切に活性化され、腫瘍成長をもたらす。発癌遺伝子は、癌遺伝子マーカーデータベース(CGMD) (Pradeepkiran,J.,Sainath,S.,Kramthi Kumar,K.et al.CGMD:。Sci Rep 5,12035 (2015) “An integrated database of cancer genes and marker”)で特定できる。発癌遺伝子(ONC)はまた、癌遺伝子ネットワークデータベース(NCG 5.0)(An O、Dall’Olio GM、Mourikis TP、Ciccarelli FD、Nucleic Acids Res.2016 Jan 4; 44(D1):D992-9; “NCG 5.0:updates of a manually culated repository of cancer genes and associated properties from cancer mutationalscreenings ”)からダウンロードできる。発癌遺伝子の非限定的な例には、以下が含まれる:L-MYC、LYL-1、LYT-10、LYT-10/Cα1、MAS、MDM-2、MLL、MOS、MTG8/AML1、MYB、MYH11/CBFB、NEU、N-MYC、OST、PAX-5、PBX1/E2A、PIM-1、PRAD-1、RAF、RAR/PML、RAS-H、RAS-K、RAS-N、REL/NRG、RET、RHOM1、RHOM2、ROS、SKI、SIS、SET/CAN、SRC、TAL1、TAL2、TAN-1、TIAM1、TSC2、およびTRK。
腫瘍抑制遺伝子(抗発癌遺伝子とも呼ばれる)は、細胞増殖制御の反対を表し、通常、細胞増殖および腫瘍発生を阻害するように作用する。したがって、腫瘍抑制遺伝子は、通常、細胞分裂または増殖を抑制する遺伝子である。TSG機能の喪失は、制御不能な細胞分裂および腫瘍成長を促進する。Rbは、転写調節タンパク質をコードする網膜芽細胞腫の遺伝子解析によって識別された腫瘍抑制遺伝子であり、多くの異なるヒトの癌の発生に寄与する追加の腫瘍抑制遺伝子の同定のためのプロトタイプとして機能した。腫瘍抑制遺伝子は、特に、“Cooper GM.The Cell:A Molecular Approach.2nd edition.Sunderland (MA):Sinauer Associates; 2000.Tumor Suppressor Genes”に記載される。腫瘍抑制遺伝子(TSG)は、腫瘍抑制遺伝子データベース(TSGene 2.0)からダウンロードすることもできる(Zhao M、Kim P、Mitra R、Zhao J、Zhao Z; Nucleic Acids Res.2016 Jan 4; 44(D1):D1023-31; “TSGene 2.0:an updated pature-based knowledgebase for tumor suppressor genes ”を参照されたい)。この文脈において、腫瘍抑制遺伝子の非限定的な例としては以下が挙げられる:APC、BRCA1、BRCA2、DPC4、INK4、MADR2、NF1、NF2、p53、PTC、PTEN、Rb、RB1、VHL、WT1、BUB1、BUBR1、TGF-βRII、Axin、DPC4、p300、PPARγ、p16、DPC4、PTEN、およびhSNF5。
発癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、または「二重スパイ」遺伝子(発癌性および腫瘍抑制機能の両方を有する)は、データベース検索およびテキストマイニングを介して体系的に特定することができる。実際に、発癌遺伝子または腫瘍抑制遺伝子に関する情報は、典型的には、Ensemblデータベース中に見出すことができる(しかしまた、Shen L,Shi Q,Wang W.Double agents:genes with both on cogenic and tumor-suppressor functions.Oncogenesis.2018;7(3):25.2018年3月13日公開も参照のこと)。二重スパイ遺伝子は、上述の二つのデータベース間で重複した遺伝子として特定され得る(Shen et al.,Oncogenesis 2018を参照されたい)。
本発明者らは、いかなる理論にも縛られることなく、エキソン配列が発癌遺伝子および/または腫瘍抑制遺伝子に由来する融合の選択が、以下の理由により関連性が高いと考えている。
発癌遺伝子へのTE挿入は、それらの発癌活性を変化させることができる。したがって、発癌遺伝子の活性ドメインへのTE配列の挿入は、ドライバー変異と同様に、発癌遺伝子の構成的な活性をもたらす可能性がある。したがって、キメラ発癌遺伝子を与えるこれらの融合は、発癌性タンパク質の新しいファミリーを表すことができる。この場合、これらの新しい「融合発癌遺伝子」の活性を小分子拮抗薬を用いて標的化することは、これらのキメラ発癌遺伝子が発現する癌に対する潜在的な治療アプローチを表すことができる。
腫瘍抑制因子におけるTE挿入は、その抑制機能を不活化し、典型的には機能喪失(例えば、終止コドンの導入、ORFの変化、または破壊的アミノ酸の伸長を通して)をもたらし、それにより発癌過程に寄与する可能性がある。
癌ドライバー遺伝子に関与する融合は、養子細胞療法、抗体、ADC、T細胞エンゲイジャーなどの優れた標的となるであろう。それらが発癌に関与する場合、融合発癌遺伝子は、癌細胞に対してより特異的であり、したがって、(標的の発癌活性のため)耐性の発生を減少させることが予期される。
一実施形態では、接合部に対して、TE配列は、融合転写物配列の5’末端に位置し(TE配列はドナー配列であるとも言われている)、エキソン配列は、融合転写物配列の3’末端に位置する(エキソン配列は、したがって、アクセプター配列と呼ばれる)。表現「融合転写物配列の5’末端に位置する」は、要素が融合転写物配列の接合部の上流に位置することを意味する。表現「融合転写物配列の3’末端に位置する」は、要素が融合転写物配列の接合部の下流に位置することを意味する。
特定の実施形態では、TE配列は、融合転写物配列の5’末端に位置し、エキソン配列は、融合転写物配列の3’末端に位置し、ネオアンチゲンペプチドをコードする該融合転写物配列のORFの部分は、接合部と重複する。この場合、ORFは、標準または非標準であり得る。ORFは接合部を含んでもよいが、ネオアンチゲンペプチドは接合部を含む必要がないことが理解される。いくつかの実施形態では、ネオアンチゲンペプチドが接合部を含む場合、得られたペプチドは、TE配列およびエキソン配列の両方によってコードされる。
表現「ORFの部分が、TE配列とエキソン配列との間の接合部と重複しているまたは重複する」は、該接合部が、該ネオアンチゲンペプチドをコードする融合転写物配列のORFの部分に含有されていることを意味する。
(i)ネオアンチゲンペプチドをコードするORFの部分が、TE配列とエキソン配列との間の接合部と重複し、かつ(ii)TE配列およびエキソン配列が、融合転写物配列の5’末端および3’末端にそれぞれある実施形態では、ORFの該部分が、典型的には、TE配列から少なくとも1~6アミノ酸、特に2~6アミノ酸、およびエキソン配列から少なくとも1~6アミノ酸、特に2~6アミノ酸を含む、少なくとも8アミノ酸のネオアンチゲンペプチドをコードする。
TE配列が、融合転写物配列の5’末端に位置し、エキソン配列が、融合転写物配列の3’末端に位置する別の実施形態では、該ネオアンチゲンペプチドをコードするORFの部分は、接合部の下流にあり、ORFはしたがって非標準である。
表現「ORFの部分は、接合部の下流にある」は、ネオアンチゲンペプチドをコードするORFの部分が、接合部と重複していないことを意味するが、それは接合部に対して、該融合転写物配列の3’末端部分に含有されている。この実施形態では、接合部に対する3’末端部分がエキソン配列であるため、ネオアンチゲンペプチドをコードするORFの部分は、ゆえにエキソン配列中に含有される。したがって、ORFの部分はエキソン配列にのみに位置するため、得られたペプチドは、非標準ORFのエキソン配列によってコードされる。したがって、エキソン配列が、接合部に対して、融合転写物配列の3’末端に位置し、ネオアンチゲンペプチドをコードするORFの部分が、非標準リーディングフレームを有する接合部の下流にある特定の実施形態では、融合転写物配列のORFの部分は、TE配列からの0アミノ酸、およびエキソン配列からの少なくとも8アミノ酸を含むネオアンチゲンペプチドをコードする。
別の実施形態では、接合部に対して、TE配列は融合転写物配列の3’末端に位置し、エキソン配列は融合転写物配列の5’末端に位置する。
いくつかの実施形態では、TE配列は、融合転写物配列の3’末端に位置し、エキソン配列は、融合転写物配列の5’末端に位置し、ネオアンチゲンペプチドをコードする該融合転写物配列のORFの部分は、TE配列とエキソン配列との間の接合部と重複している。この場合、ORFはまた、標準または非標準であってもよい。得られたペプチドは、TE配列およびエキソン配列の両方によってコードされる。
ネオアンチゲンペプチドをコードするORFの部分が、エキソン配列とTE配列との間の接合部と重複し、かつエキソン配列およびTE配列が、融合転写物配列の5’末端および3’末端にそれぞれある特定の実施形態では、ORFの該部分が、TE配列から少なくとも1~6アミノ酸、特に2~6アミノ酸、およびエキソン配列から少なくとも1~6アミノ酸、特に2~6アミノ酸を含む、少なくとも8アミノ酸のネオアンチゲンペプチドをコードする。
さらに別の実施形態では、TE配列は、融合転写物配列の3’末端に位置し、エキソン配列は、融合転写物配列の5’末端に位置し、ネオアンチゲンペプチドをコードするORFの部分は、エキソン配列とTE配列との間の接合部の下流にある。任意で、純粋なTE配列によってこのようにコードされるペプチド配列は、非標準である。
この実施形態では、接合部に対する3’末端部分がTE配列であるため、ネオアンチゲンペプチドをコードするORFの部分は、ゆえにTE配列によってコードされる。したがって、ORFの部分は、エキソン配列からのアミノ酸を含まず、TE配列からの少なくとも8アミノ酸を含むネオアンチゲンペプチドをコードする。TE配列が、接合部に対して、融合転写物配列の3’末端に位置し、ネオアンチゲンペプチドをコードするORFの部分が、接合部の下流にある特定の実施形態では、融合転写物配列のORFの部分は、エキソン配列からの0アミノ酸、およびTE配列からの少なくとも8アミノ酸を含むネオアンチゲンペプチドをコードする。
腫瘍ネオアンチゲンペプチドは、体細胞の変化(古典的にはDNA配列の変異)から生じ、自己とは異なるものとして認識され、樹状細胞(DC)および腫瘍細胞自体などの抗原提示細胞(APC)によって提示されるペプチドである。APCは、外因性抗原をファゴソームからサイトゾルに移動させ、プロテアソームによる主要組織適合複合体I(MHC I)エピトープへのタンパク質分解切断を行うことができるため、交差提示は重要な役割を果たしている。
本開示では、変化は、転位因子(TE)配列およびエキソン配列を含む融合mRNA配列の転写に対応する。これは、体細胞(すなわち、具体的には、腫瘍クローン内)転位から生じる場合がある。また、デノボ転位からではなく、TEおよび近くの遺伝子が共転写されるような腫瘍特異的な転写脱抑制から生じ得る。
本開示によるネオアンチゲンペプチドは、正常な健康試料(すなわち、正常な健康試料では発現されない)に完全に存在せず、ゆえに腫瘍試料に特異的であり得る。あるいは、正常細胞において低レベルで発現されてもよく、および/または正常(健康な)試料と比較して、腫瘍試料上に偏って発現されてもよい。
また、癌が発生した細胞系統によって選択的に発現され得る。
本開示による癌または腫瘍試料は、以前に定義された組織または器官のいずれかの任意の固形腫瘍または非固形腫瘍、例えば、乳癌、肺癌、および/または黒色腫などから単離され得る。いくつかの実施形態では、癌試料は、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、膀胱尿路上皮癌、乳管癌、乳腺小葉癌、子宮頸癌、胆管癌、結腸直腸腺癌、食道癌、胃腺癌、多形性膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、肝細胞癌、腎臓色素嫌性癌、腎臓明細胞癌、腎臓乳頭細胞癌、低悪性度神経膠腫、肺腺癌、肺扁平上皮癌、中皮腫、卵巣漿液性腺癌、膵管腺癌、傍神経節腫および褐色細胞腫、前立腺腺癌、肉腫、皮膚黒色腫、精巣胚細胞癌、胸腺腫、甲状腺乳頭癌、子宮癌肉腫、子宮体部内膜癌またはブドウ膜黒色腫試料由来である。特定の実施形態では、癌試料は、肺癌試料、特にLUAD試料由来のものである。
典型的には、本開示によると、該融合転写物配列を特定する工程は、参照ゲノムに対して癌試料からのmRNA配列をマッピングし、その後、正常接合部と異常接合部を区別することによって実施される。
本開示によると、正常な接合部は、同じ鎖上にあり、離れすぎていない(例えば、異なる染色体上にない)接合部ドナーおよび受容体に対応する。
本開示によると、異常な接合部は、異なる染色体上の、またはシスではあるが異なる鎖上の(順序および5’-3’のセンスに関係なく)ドナー配列とアクセプター配列との間の接合部に対応する。
一実施形態では、mRNA配列は、例えば、以下のような適応されたソフトウェアで、対応する参照ゲノムに対してマッピングされ得る:Spliced Transcripts Alignment to a Reference (すなわち:STAR - Dobin,Alexander et al.“STAR:ultrafast universal RNA-seq aligner.” Bioinformatics (Oxford,England) vol.29,1 (2013):15-21を参照)、TopHat2 (Kim,Daehwan et al.“TopHat2:accurate alignment of transcriptomes in the presence of insertions,deletions and gene fusions.” Genome biology vol.14,4 R36.25 Apr.2013,doi:10.1186/gb-2013-14-4-r36) または HISAT (Kim,Daehwan et al.“HISAT:a fast spliced aligner with low memory requirements.” Nature methods vol.12,4 (2015):357-60.doi:10.1038/nmeth.3317)。STARは、逐次最大マッピング可能なシード検索、続いてシードクラスタリングおよびステッチングを使用して、RNA-seqリードを整列させるスタンドアロンソフトウェアである。標準接合部、非標準スプライス、および融合/キメラ転写物を検出することができる。
特定の実施形態では、正常および異常な接合部は、例えば、EnsemblおよびRepeatmaskerデータベースなどの専用データベースを使用してインシリコで決定され、TEとエキソン配列との間に接合部を有する融合転写物は、インシリコで抽出される。
本開示によると、mRNA配列は、全てのタイプの癌細胞または腫瘍細胞試料に由来することができる。腫瘍は、固形腫瘍または非固形腫瘍であってもよい。特に、mRNA配列は、以前に定義された癌または腫瘍、例えば、乳癌、肺癌、および/または黒色腫などによって影響を受ける任意の組織または器官に由来する。特定の実施形態では、mRNA配列は、LUAD試料由来である。
典型的には、本開示によると、融合転写物配列は、1%超、特に5%超、10%超、15%超、20%超、またはさらには25%超の癌試料で共有される。言い換えれば、本開示による融合転写物配列は、1%超、特に5%超、10%超、15%超、20%超、またはさらには25%超の癌に罹患している対象の癌試料で共有される。したがって、融合転写物配列は、いくつかの癌間で共有される癌種に特異的であり得る。
本開示によると、融合転写物配列は、正常で健康な細胞と比較して、腫瘍細胞において高いレベルで発現される。いくつかの実施形態では、融合転写物配列は、癌細胞で発現し、健康な細胞では発現せず、特に胸腺の健康な細胞では発現しない。かかる融合転写物は、本開示による腫瘍特異的融合と呼ばれ得る。正常細胞と比較して腫瘍細胞においてより高いレベルで発現する融合転写物、典型的には上記に定義されるように、正常細胞と比較して癌細胞において不均衡に発現する融合転写物は、本開示による腫瘍関連融合転写物(TAF)と呼ばれ得る。腫瘍関連融合転写物は、腫瘍試料の10%超および正常試料の20%未満で存在する場合、本出願に従って選択され得る。
いくつかの実施形態では、方法は、任意選択的にインシリコで、またはインビトロ技術(特に例示の実施例を参照)を使用して、癌に罹患している該対象の少なくとも一つのMHC分子と腫瘍ネオアンチゲンペプチドの結合親和性を決定する工程をさらに含む。
MHCクラスIタンパク質は、身体のほとんどの有核細胞に機能的な受容体を形成する。HLAには3つの主働MHCクラスI遺伝子:HLA-A、HLA-B、HLA-Cと、三つの微働遺伝子HLA-E、HLA-F、およびHLA-Gがある。β2-ミクログロブリンは、主働および微働遺伝子サブユニットと結合して、ヘテロ二量体を産生する。クラスIのMHC分子は、重鎖および軽鎖からなり、約8~11アミノ酸、通常は8または9アミノ酸のペプチドを結合することができ、このペプチドが適切な結合モチーフを有する場合、それを細胞傷害性T-リンパ球に提示することができる。ペプチドの結合は、ペプチド主鎖の原子と、すべてのMHCクラスI分子のペプチド結合溝にある不変部位との間の接触によって、その両端で安定化される。ペプチドのアミノ末端およびカルボキシ末端に結合する溝の両端に不変部位がある。ペプチドの長の変化は、多くの場合、必要とされる柔軟性を可能にするプロリン残基またはグリシン残基でのペプチド骨格のねじれによって調整される。クラスIのMHC分子によって結合されるペプチドは、通常、内因性タンパク質抗原に由来する。一例として、クラスIのMHC分子の重鎖は、ヒトにおいて、典型的には、HLA-A、HLA-B、またはHLA-Cモノマーであり、軽鎖は、 β-2-ミクログロブリンである。
HLAによってコードされる3つの主要MHCクラスIIタンパク質と2つの微量MHCクラスIIタンパク質がある。クラスIIの遺伝子は結合して、典型的には抗原提示細胞の表面に発現するヘテロ二量体(αβ)タンパク質受容体を形成する。クラスIIのMHC分子によって結合されるペプチドは、通常、細胞外または外因性タンパク質抗原に由来する。一例として、α-鎖およびβ-鎖は、ヒトでは、特にHLA-DR、HLA-DQ、およびHLA-DPモノマーである。MHCクラスII分子は、約8~20アミノ酸のペプチド、特に10~25、またはこのペプチドが適切な結合モチーフを有する場合、13~25アミノ酸を結合し、それをT-ヘルパー細胞に提示することができる。これらのペプチドは、(MHCクラスIペプチド結合溝とは異なり)両端が開いているMHC IIペプチド結合溝に沿って拡張された構造にある。ペプチドは、主鎖原子が主にペプチド結合溝に並ぶ保存された残基と接触することにより、定位置に保持される。
本方法がヒト試料で実施されるとき、本方法は、患者のクラスIまたはクラスI主要組織適合複合体(MHC、別名ヒト白血球抗原(HLA)対立遺伝子)を決定する工程を含み得る。実験用マウスのMHC対立遺伝子は一般的に知られているため、この工程が特定の状況において必要ない場合があることに留意されたい。本出願では、「MHC分子」は、少なくとも一つのMHCクラスI分子または少なくとも一つのMHCクラスII分子を指す。
MHC対立遺伝子データベースは、MHC IおよびMHC IIの公知の配列を分析し、各ドメインの対立遺伝子の変異性を決定することによって実施される。これは、典型的には、当該分野で周知の適切なソフトウェアアルゴリズムを使用してインシリコで決定することができる。OptiType、Polysolver、PHLAT、HLAreporter、HLAforest、HLAminer、およびseq2HLA(Kiyotani K et al.,Immunopharmacogenomics to personized cancer waiming targeting neo antigens; Cancer Science 2018;109:542-549を参照)など、ゲノムワイド配列決定データ(全エキソーム、全ゲノム、およびRNA配列決定データ)からHLA対立遺伝子情報を取得するためのいくつかのツールが開発されている。例えば、本明細書に開示されるような本方法を実施するために良好に設計されたseq2hlaツール(Boegel S,Lower M,Schafer M,et al.HLA typing from RNA-Seq sequence reads.Genome Med.2012;4:102を参照)は、pythonおよびRで記述されたインシリコ法であり、fastq形式の標準的なRNA-Seq配列読み取りを入力として受け取り、すべてのHLA対立遺伝子を含むボウタイインデックス(Langmead B,et al.,Ultrafast and memory-efficient alignment of short DNA sequences to the human genome.Genome Biol.2009,10:R25-10.1186/gb-2009-10-3-r25)を使用して、最も可能性の高いHLAクラスIおよびクラスII遺伝子型(4桁の解像度)、各呼び出しのp値、および各クラスの発現を出力する。
典型的には、TEとエキソン配列との間の接合部を有する配列は、インシリコで抽出される。患者(またはマウス)からの各MHC対立遺伝子に対する、各配列によってコードされる全ての可能なペプチドの親和性は、例えば、HLA分子へのペプチド結合親和性を予測するための計算方法を使用してインシリコで決定され得る。実際に、正確な予測アプローチは、予測されたIC50を用いた人工ニューラルネットワークに基づく。例えば、リガンドが報告されていない対立遺伝子に結合するペプチドを予測するためにNetMHCから改変されたNetMHCpanソフトウェアは、本明細書に開示される方法を実施するのに十分適切である(Lundegaard C et al.,NetMHC-3.0:accurate web accessible predictions of human,mouse and monkey MHC class I affinities for peptides of length 8-11; Nucleic Acids Res.2008;36:W509-W512; Nielsen M et al.NetMHCpan,a method for quantitative predictions of peptide binding to any HLA-A and -B locus protein of known sequence.PLoS One.2007;2:e796、しかしKiyotani K et al.,Immunopharmacogenomics towards personalized cancerimmunotherapy targeting neoantigens; Cancer Science 2018; 109:542-549 and Yarchoan M et al.,Nat rev.cancer 2017; 17(4):209-222も参照のこと)。NetMHCpanソフトウェアは、人工ニューラルネットワーク(ANN)を使用して、公知の配列の任意のMHC分子へのペプチドの結合を予測する。本方法は、180,000を超える定量的結合データと、MS由来MHC溶出リガンドの組み合わせに向けられている。結合親和性データは、ヒト(HLA-A、B、C、E)、マウス(H-2)、ウシ(BoLA)、霊長類(Patr、Mamu、GOGO)およびブタ(SLA)からの172のMHC分子を対象としている。MS溶出リガンドデータは、55のHLAおよびマウス対立遺伝子を対象としている。
例示的な実施形態では、上述の融合転写物によってコードされるネオアンチゲンペプチド、およびMHC対立遺伝子に対する予測ペプチドのKd親和性が、10-4、10-5、10-6、10-7M未満、または500nM未満、特に50nM未満のものが、腫瘍ネオアンチゲンペプチドとして選択される。
上述のように、MHC対立遺伝子に対する選択されたペプチドの親和性は、netMHCpanなどの適切なソフトウェアを使用してインシリコで決定することができる。したがって、いくつかの実施形態では、ネオアンチゲンペプチドは、NetMHCpan 4.0によって予測される2%未満のパーセンタイルランクスコアの結合親和性でMHCクラスIに結合する。他の実施形態では、ネオアンチゲンペプチドは、NetMHCpanII 3.2によって予測される10%未満のパーセンタイルランクスコアの結合親和性でMHCクラスIIに結合する。
親和性はまた、(代替的にまたは追加的に)インビトロで、例えば、その中に含まれる結果に記載されているようなMHC四量体形成アッセイを使用して推定することができる(実施例2、ポイント2.1および2.2.2を参照)。例えばImmunAware(登録商標)からの市販のアッセイは、典型的には、当業者によって使用され得る(EasYmers(登録商標)キットは、ImmunAware(登録商標)からのもので、それらのトレーニングガイドに従って特に使用される)。典型的には、結合親和性は、陽性対照への結合の割合として決定される。概して、陽性対照の少なくとも30%、特に少なくとも40%、またはさらに少なくとも50%の結合の割合を示すペプチドが選択される。典型的には、本開示による、および典型的には本方法によって取得可能なネオアンチゲンペプチドは、ペプチドが抗原として細胞の表面上に提示されるのに充分な親和性で少なくとも一つのHLA/MHC分子に結合する。概して、ネオアンチゲンペプチドは、少なくとも一つのHLA/MHC分子、典型的には、癌に罹患している該対象の分子に対して、10-4未満、または10-5未満、または10-6未満、または10-7未満、または500nM未満、少なくとも250nM未満、少なくとも200nM未満、少なくとも150nM未満、少なくとも100nM未満、少なくとも50nM未満(小さい数字ほど大きな結合親和性を示す)のIC50親和性を有する。
したがって、本方法によるさらなる任意の工程は、独立して、
- 健康な細胞上で高レベルまたは高頻度で発現する融合転写物または予測ペプチドを排除する工程であって、健康な細胞のRNAseqデータに対する融合転写物配列のアライメントは、典型的には、健康な細胞中に存在する融合転写物配列の相対量を決定することを可能にし、一実施形態では、健康な細胞上に発現する融合転写物または予測ペプチドは廃棄される、工程と、
- 腫瘍ネオアンチゲンペプチドが対象の健康な細胞で発現されていないことを確認する工程であって、この工程は、典型的には、基本的なローカルアライメント検索ツール(BLAST)を使用して、健康な細胞のプロテオームに対するネオアンチゲンペプチドの配列のアラインメントを実施することができ、好ましくは、(例えば、BLASTを使用して)正常で健康な細胞のプロテオームに対して整列するペプチドは廃棄される工程と、
- 融合転写物または予測ペプチドが、対象の癌細胞で発現されることを確認する工程であって、癌細胞における選択された融合転写物配列の存在は、癌細胞試料から抽出されたmRNA中のRT-PCRによって典型的にはチェックされ得る工程と、を含む。
ネオアンチゲンペプチド、ポリヌクレオチド、およびベクター
本開示はまた、転位因子(TE)配列およびエキソン配列を含むヒトmRNA配列である融合転写物由来のオープンリーディングフレーム(ORF)の一部分によってコードされる、少なくとも8、9、10、11、または12アミノ酸を含む単離された腫瘍ネオアンチゲンペプチドに関する。ペプチドは、8~9、8~10、8~11、12~25、13~25、12~20、または13~20アミノ酸長であってもよい。ORFは、TE配列とエキソン配列との間の接合部と重複するが、腫瘍ネオアンチゲンペプチド自体は接合部を含まない場合があることが理解される。
本開示はまた、より具体的には、癌細胞由来のヒト融合mRNA配列の一部によってコードされる単離された腫瘍ネオアンチゲンペプチドを包含し、該融合mRNAは、TE配列およびエキソン配列を含む。例示的な実施形態では、少なくとも8、9、10、11、または12アミノ酸を含むネオアンチゲンペプチドは、配列番号118~910のいずれか一つの融合転写物配列のいずれかのオープンリーディングフレーム(ORF)の一部によってコードされ、好ましくは、上述のネオアンチゲンペプチド特性のうちの一つまたは複数を有するペプチドである。
ペプチドは、8~9、8~10、8~11、12~25、13~25、12~20、または13~20アミノ酸長であってもよく、上述のネオアンチゲンペプチド特性のうちの一つまたは複数を満たす。少なくとも8アミノ酸のペプチドのN末端は、ヌクレオチド位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、およびそれ以上のいずれかで始まるトリプレットコドンによってコードされてもよい(本開示は、1と8000の間のすべての数を列挙することなく、1と8000の間の整数のいずれかである開始位置を企図することが理解される)。
上述のペプチドは、典型的には、本開示の方法に従って取得可能であり、それゆえ、前述の特徴のうちの一つまたは複数を包含する。特に、本開示によるネオアンチゲンペプチドは、以下のさらなる特徴のうちの一つまたは組み合わせを呈し得る:
- これは、対象のMHCクラスIを結合するか、または特異的に結合し、8~11アミノ酸、特に8、9、10、または11アミノ酸である。典型的には、ネオアンチゲンペプチドは、8または9アミノ酸長であり、対象の少なくとも一つのMHCクラスI分子に結合し、または代替的に、該対象の少なくとも一つのMHCクラスII分子に結合し、12~25アミノ酸を含有し、特に12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸長である。
- これは、抗原として細胞の表面上に提示されるペプチドに充分な親和性を有する癌に罹患している該対象の少なくとも一つのHLA/MHC分子に結合する。典型的には、ネオアンチゲンペプチドは、10-4未満、または10-5未満、または10-6未満、または10-7未満、または500nM未満、少なくとも250nM未満、少なくとも200nM未満、少なくとも150nM未満、少なくとも100nM未満、少なくとも50nM未満(小さい数字ほど大きな結合親和性を示す)のIC50を有する。
- これは、対象に投与されたとき、有意な自己免疫反応を誘発せず、および/または免疫寛容を引き起こすものではない。
- これは、正常で健康な試料と比較して、腫瘍試料において高いレベルで発現される。典型的には、本開示によると、融合転写物は、腫瘍試料の10%超および正常試料の20%未満に存在する場合に選択され得る。いくつかの実施形態では、ネオアンチゲンは、より具体的には、腫瘍特異的抗原(TSA)であり、すなわち、正常な試料では発現されず、癌試料でのみ発現されるか、または正常な試料では比較的低いレベルで発現される(例えば、発現されたmRNA配列は、正常な試料からの正常な細胞において、マイナーな種を表す)。
- これは、TE配列とエキソン配列との間の接合部を含み、言い換えれば、これは、TE配列の一部とエキソン配列の一部によってコードされ、ORFは、標準または非標準のいずれかであり、または
- これは、エキソン配列の非標準ORFによってコードされ、または
- これは、TE配列によってコードされ、任意選択的に非標準ORFでコードされる。
腫瘍ネオアンチゲンペプチドは、最初に、対象からの腫瘍細胞における融合転写物配列のRT転写解析によって検証されてもよい。典型的には、本開示による腫瘍ネオアンチゲンペプチドを用いた免疫化はまた、T細胞応答を誘発する。
特定の実施形態では、本開示は、配列番号1~117のいずれか一つの少なくとも8アミノ酸を含む、NSCLCネオアンチゲンペプチドを包含する。典型的には、配列番号1~117の該ネオアンチゲンペプチドは、抗原として細胞の表面上に提示されるペプチドに充分な親和性を有するHLA-A02に結合する。MHC対立遺伝子に対する親和性は、当該分野の公知の技術、特に上記に例示したように、インシリコまたはインビトロにより決定することができる。
特定の実施形態では、本開示による腫瘍ネオアンチゲンペプチドは、対象の少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、またはそれ以上に存在するMHC分子に結合する。特に、本明細書に開示される腫瘍ネオアンチゲンペプチドは、癌に罹患している対象集団からの対象の少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%で発現される。
より具体的には、本開示の腫瘍ネオアンチゲンペプチドは、癌に罹患している対象集団の対象の少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、または25%に存在する腫瘍に対する免疫応答を誘発することができる。
以前に定義したように、癌は、以下の組織または器官のいずれか一つに影響を及ぼす可能性がある:乳房;肝臓;腎臓;心臓、縦隔、胸膜;口底;口唇;唾液腺;舌;歯茎;口腔;口蓋;扁桃腺;喉頭;気管;気管支、肺;咽頭、下咽頭、中咽頭、上咽頭;食道;胃、肝内胆管、胆道、膵臓、小腸、結腸などの消化器;直腸;膀胱、胆嚢、尿管などの泌尿器;直腸S状結腸移行部; 肛門、肛門管;皮膚;骨;関節、 手足の関節軟骨;眼および付属器;脳;末梢神経、自律神経系;脊髄、脳神経、髄膜;および中枢神経系の様々な部分;結合組織、皮下組織およびその他の軟組織;後腹膜、腹膜; 副腎;甲状腺;内分泌腺および関連構造;卵巣、子宮、子宮頸部などの女性生殖器;子宮体部、膣、外陰部;陰茎、精巣および前立腺などの男性生殖器;造血系および網内系;血液;リンパ節;胸腺。例えば、本出願による腫瘍または癌は、白血病、セミノーマ、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽腫、神経膠腫、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、副腎癌、甲状腺癌、血液癌、皮膚癌、脳の癌、子宮頸癌、腸の癌、肝癌、結腸癌、胃癌、腸癌、頭頸部癌、消化器癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵臓癌、耳鼻喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌および肺癌、ならびにそれらの転移物を含む。その例は、肺癌、乳癌、前立腺癌、結腸癌、腎細胞癌、子宮頸癌、または上述の癌種もしくは腫瘍の転移である。本開示による癌という用語は、癌転移および癌の再発も含む。
典型的には、本開示によるネオアンチゲンペプチドは、対象に投与されたとき、有意な自己免疫応答を誘発せず、および/または免疫寛容を引き起こすものではない。寛容のメカニズムには、高親和性自己反応性T細胞の数の減少を伴う、宿主におけるクローン除去、無知、アネルギー、または抑制が含まれる。
ネオアンチゲンペプチドはまた、化合物のアミノ酸配列を伸長または減少させることによって、例えば、アミノ酸の付加または欠失によって修飾することができる。ペプチドはまた、特定の残基の順序または組成を改変することによっても修飾することができ、生物学的活性に必要不可欠な特定のアミノ酸残基、例えば、重要な接触部位または保存された残基は、生物学的活性に対する悪影響なしには概して改変され得ないことが容易に理解される。重要でないアミノ酸は、L-α-アミノ酸、またはそのD-異性体などのタンパク質に天然に存在するものに限定する必要はなく、β-γ-δ-アミノ酸などの非天然アミノ酸、およびL-α-アミノ酸の多くの誘導体を含む場合がある。
典型的には、単一のアミノ酸置換を有する一連のペプチドを使用して、静電荷、疎水性などの結合に対する影響を決定する。例えば、一連の正荷電(例えば、LysまたはArg)または負荷電(例えば、Glu)を持つアミノ酸置換が、ペプチドの長さに沿って行われ、様々なMHC分子およびT細胞受容体に対する感受性の異なるパターンを明らかにする。さらに、Ala、Gly、Pro、または類似の残基などの小さな比較的中性部分を使用した複数の置換が採用されてもよい。置換は、ホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマーであってもよい。置換または付加される残基の数および種類は、必須接触点間に必要な間隔と、求められる特定の機能的特性(例えば、疎水性対親水性)に依存する。MHC分子またはT細胞受容体に対する結合親和性の増加はまた、親ペプチドの親和性と比較して、このような置換によって達成されてもよい。いずれにしても、こうした置換は、例えば、結合を妨害し得る立体障害および電荷干渉を避けるために選択されたアミノ酸残基または他の分子断片を用いるべきである。
アミノ酸置換は、典型的には単一残基のものである。置換、欠失、挿入、またはそれらの任意の組み合わせを組み合わせて、最終的なペプチドに到達してもよい。置換バリアントは、ペプチドの少なくとも一つの残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入されたものである。こうした置換は、ペプチドの特性を細かく調節することが所望されるとき、概して以下の表1に従って行われる。
機能の実質的な変化(例えば、MHC分子またはT細胞受容体に対する親和性)は、上記表のものよりも保存的でない置換を選択することによって行われる。すなわち、(a)シートまたはらせん状構造などの置換領域のペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖の大部分の維持に対する効果において、より顕著な差異がある残基を選択することによって行われる。一般的に、ペプチド特性に最大の変化をもたらすと予想される置換は、(a)親水性残基、例えば、セリルが、疎水性残基、例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルまたはアラニル(またはそれによって)に置換される;(b)電気陽性側鎖を有する残基、例えば、リジル、アルギニル、またはヒスチジルが、電気陰性残基、例えば、グルタミルまたはアスパルチル(またはそれによって)に置換される; または(c)かさ高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、側鎖を有しないもの、例えば、グリシン(またはそれによって)に置換される。
ペプチドおよびポリペプチドはまた、ネオアンチゲンペプチドまたはポリペペプチド中に二つ以上の残基のアイソスターを含んでもよい。本明細書で定義されるアイソスターは、第一の配列の立体配座が、第二の配列に特異的な結合部位と適合するため、第二の配列に置換され得る二つ以上の残基の配列である。この用語は、具体的には、当業者に周知のペプチド骨格修飾を含む。かかる修飾には、アミド窒素、α-炭素、アミドカルボニルの修飾、アミド結合の完全な置換、伸長、欠失、または骨格の架橋が含まれる。概して、Spatola,Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides and Proteins,Vol.VII(Weinstein ed.,1983)を参照されたい。
さらに、ネオアンチゲンペプチドは、担体タンパク質、リガンド、または抗体にコンジュゲートされてもよい。ペプチドの半減期は、PEG化、グリコシル化、ポリシアル化、HES化、組換えPEG模倣物、Fc融合、アルブミン融合、ナノ粒子付着、ナノ粒子カプセル化、コレステロール融合、鉄融合、またはアシル化によって改善され得る。
様々なアミノ酸模倣物または非天然アミノ酸を用いたペプチドおよびポリペプチドの修飾は、インビボでペプチドおよびポリペプチドの安定性を高めるのに特に有用である。安定性は、いくつかの方法でアッセイすることができる。例えば、ペプチダーゼおよびヒト血漿および血清などの様々な生物学的媒体を使用して、安定性を試験した。例えば、Verhoef et al.,Eur.J.Drug Metab Pharmacokin.11:291-302(1986)を参照のこと。本開示のペプチドの半減期は、25%ヒト血清(v/v)アッセイを使用して簡便に決定される。プロトコルは概して以下の通りである。プールされたヒト血清(AB型、非熱不活性化)は、使用前に遠心分離により脱脂される。次いで、血清をRPMI組織培養培地で25%に希釈し、ペプチド安定性を試験するために使用される。所定の時間間隔で、少量の反応溶液を除去し、6%の水性トリクロロ酢酸またはエタノールのいずれかに添加する。濁った反応試料を15分間冷却し(4℃)、次いで遠心分離して沈殿した血清タンパク質をペレット化する。次いで、ペプチドの存在を、安定性特異的クロマトグラフィー条件を使用して逆相HPLCにより決定する。
ペプチドおよびポリペプチドは、改善された血清半減期以外の所望の属性を提供するように修飾されてもよい。例えば、CTL活性を誘導するペプチドの能力は、Tヘルパー細胞応答を誘導することができる、少なくとも一つのエピトープを含有する配列に連結することによって強化され得る。特に好ましい免疫原性ペプチド/Tヘルパーコンジュゲートは、スペーサー分子によって連結される。スペーサーは、典型的には、生理学的条件下では実質的に帯電していない、アミノ酸またはアミノ酸模倣物などの比較的小さな中性分子から構成される。スペーサーは、典型的には、例えば、Ala、Gly、または非極性アミノ酸または中性極性アミノ酸のその他の中性スペーサーから選択される。任意で存在するスペーサーは、同じ残基からなる必要はないため、ヘテロオリゴマーまたはホモオリゴマーであってもよいことが理解されよう。存在する場合、スペーサーは通常、少なくとも1または2残基、より一般的には3~6残基である。あるいは、ペプチドは、スペーサーなしでTヘルパーペプチドに連結されてもよい。
ネオアンチゲンペプチドは、ペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかで、直接的にまたはスペーサーを介して、Tヘルパーペプチドに連結されてもよい。ネオアンチゲンペプチドまたはTヘルパーペプチドのいずれかのアミノ末端は、アシル化されてもよい。例示的なTヘルパーペプチドとしては、破傷風トキソイド830~843、インフルエンザ307~319、マラリアスポロゾイト周囲382~398および378~389が挙げられる。
本明細書に記載される複数のネオアンチゲンペプチドも、任意選択的にスペーサーによって一緒に連結することができる。
タンパク質またはペプチドは、標準的な分子生物学的技術を通したタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの発現、天然起源からのタンパク質もしくはペプチドの単離、またはタンパク質もしくはペプチドの化学合成を含む、当業者に公知の任意の技術によって作製され得る。様々な遺伝子に対応するヌクレオチドおよびタンパク質、ポリペプチドおよびペプチド配列は、以前に開示されており、当業者に公知のコンピュータ化されたデータベースで見出すことができる。そのようなデータベースの一つは、国立衛生研究所のウェブサイトにある国立バイオテクノロジー情報センターのGenbankおよびGenPeptデータベースである。公知の遺伝子のコード領域は、本明細書に開示の技術を使用して、または当業者に公知であるように、増幅および/または発現され得る。あるいは、タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドの様々な市販の調製物は、当業者に公知である。
さらなる態様では、本開示は、本明細書に開示されるネオアンチゲンペプチドをコードする核酸(例えば、ポリヌクレオチド)を提供する。ポリヌクレオチドは、一本鎖および/または二本鎖のDNA、cDNA、PNA、CNA、RNA、またはネイティブもしくは安定化形態のポリヌクレオチド、例えば、ホスホロチオチエート骨格を有するポリヌクレオチド、またはそれらの組み合わせから選択されてもよく、ペプチドをコードする限り、イントロンを含有してもよく、または含有しなくてもよい。天然に存在するペプチド結合によって結合された天然に存在するアミノ酸残基を含有するペプチドのみが、ポリヌクレオチドによってコード可能である。
本開示のさらにさらなる態様は、本明細書に開示されるネオアンチゲンペプチドを発現することができる発現ベクターを提供する。異なる細胞型に対する発現ベクターは、当技術分野で周知であり、過度の実験をすることなく選択することができる。概して、DNAは、プラスミドなどの発現ベクター内に、発現のための適切な方向および正しいリーディングフレームで挿入される。発現ベクターは、所望の宿主によって認識される適切な異種転写および/または翻訳調節制御ヌクレオチド配列を含む。腫瘍ネオアンチゲンペプチドをコードするポリヌクレオチドは、このような異種調節制御ヌクレオチド配列に連結されていてもよく、またはそのような異種調節制御ヌクレオチド配列に隣接していなくても動作可能に連結されていてもよい。ベクターはその後、標準的な技術を通して宿主に導入される。指針は、例えば、Sambrook et al.(1989) Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.に見出すことができる。
抗原提示細胞(APC)
本開示はまた、前述の方法において予め定義される、および/または取得可能な一つまたは複数のペプチドでパルス化された抗原提示細胞の集団を包含する。抗原提示細胞は、樹状細胞(DC)または人工抗原提示細胞(aAPC)であることが好ましい(Neal,Lillian R et al.“The Basics of Artificial Antigen Presenting Cells in T Cell-Based Cancer Immunotherapies.” Journal of Immunology research and therapy vol.2,1 (2017):68-79)を参照されたい)。樹状細胞(DC)は、ナイーブT細胞を刺激し、病原体に対する一次免疫応答を開始する並外れた能力を有する、専門の抗原提示細胞(APC)である。実際に、成熟したDCの主な役割は、抗原を感知し、他の免疫細胞、特にT細胞を活性化するメディエーターを産生することである。DCは、T細胞上のTCR(シグナル1)および共刺激分子(シグナル2)をトリガするMHC分子を発現するため、リンパ球活性化のための強力な刺激因子である。さらに、DCは、T細胞増殖を支持するサイトカインも分泌する。T細胞は、外来病原体または腫瘍を認識するために、プロセシングされたペプチドの形態で提示された抗原を必要とする。病原体/腫瘍タンパク質に由来するペプチドエピトープの提示は、MHC分子を介して達成される。MHCクラスI(MHC-I)分子およびMHCクラスII(MHC-II)分子は、それぞれ、CD8+T細胞およびCD4+T細胞に対してプロセシングされたペプチドを提示する。重要なことは、DCが、豊富なT細胞集団を含む炎症部位に存在し、免疫応答を促進することである。したがってDCは、適応免疫応答の活性化と密接に関与しているため、任意の免疫療法アプローチの重要な要素となり得る。ワクチンとの関連で、DC療法は、健康なボランティアまたは感染性疾患もしくは癌を有する患者において、所望の標的に対するT細胞免疫応答を強化することができる。一実施形態では、APCSは人工APCであり、これは、所望のT細胞共刺激分子、ヒトHLA対立遺伝子、および/またはサイトカインを発現するように遺伝子改変される。かかる人工抗原提示細胞(aAPC)は、T細胞の適切な関与、共刺激、ならびに制御されたT細胞増殖を可能にするサイトカインの持続放出という要件を提供することができる。これらの細胞は、時間の制約および入手の制限を受けることなく、異なるドナーからのT細胞株を作製する際に使用するために少量ずつ保存できるため、免疫療法用途のための既製の試薬となる。これらのaAPC上の強力な共刺激シグナルの発現は、このシステムに、養子免疫療法の有効性を高めるためのより高い効率をもたらす。さらに、aAPCを操作して、特定のサイトカインの放出を指示する遺伝子を発現させ、例えば、長寿命メモリーT細胞などの養子移植のための望ましいT細胞サブセットの優先的な増殖を促進することができる(Hasan AH et al.,Artificial Antigen Presenting Cells:An Off the Shelf Approach for Generation of Desirable T-Cell Populations for Broad Application of Adoptive Immunotherapy; Adv Genet Eng.2015; 4(3):130, Kim JV,Latouche JB,Riviere I,Sadelain M.The ABCs of artificial antigen presentation.Nat Biotechnol.2004;22:403-410 or Wang C,Sun W,Ye Y,Bomba HN,Gu Z.Bioengineering of Artificial Antigen Presenting Cells and Lymphoid Organs.Theranostics 2017; 7(14):3504-3516を参照されたい)。
典型的には、樹状細胞は、本明細書に開示されるネオアンチゲンペプチドでパルスされる自己樹状細胞である。ペプチドは、適切なT細胞応答を生じさせる任意の適切なペプチドであってもよい。抗原提示細胞(または刺激細胞)は、典型的には、その表面上にMHCクラスIまたはII分子を有し、一実施形態では、選択された抗原をMHCクラスIまたはII分子にロードすることは実質的に不可能である。MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子は、選択された抗原をインビトロで容易にロードすることができる。
代替として、抗原提示細胞は、本明細書に開示される腫瘍ネオアンチゲンペプチドをコードする発現構築物を含んでもよい。ポリヌクレオチドは、以前に定義された任意の適切なポリヌクレオチドであってもよく、樹状細胞を形質導入することができ、それゆえペプチドの提示および免疫の誘導をもたらすことができることが好ましい。
したがって、本開示は、本明細書に開示されるネオアンチゲンペプチドでパルスまたはロードすることができるか、本明細書に開示される少なくとも一つのネオアンチゲンペプチドを発現するように(DNAまたはRNA転移を介して)遺伝子改変されるか、または本開示の腫瘍ネオアンチゲンペプチドをコードする発現構築物を含む、APCの集団を包含する。典型的には、APCの集団は、パルスまたはロードされ、少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、または少なくとも20の異なるネオアンチゲンペプチドまたはそれをコードする発現構築物を発現するように改変されるか、またはそれを含む。
本開示はまた、本明細書に開示されるAPCを含む組成物を包含する。APCは、細胞培養培地、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、細胞培養培地などの任意の公知の生理学的に互換性のある薬学的担体中に懸濁されて、生理学的に許容可能な水性医薬組成物を形成することができる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸リンゲルが含まれる。所望に応じて、抗菌剤など他の物質を加えることができる。本明細書で使用される場合、「担体」は、APCを好適なインビトロまたはインビボの作用部位に送達するためのビヒクルとして好適な任意の物質を指す。したがって、担体は、APCを含有する治療試薬または実験試薬の製剤化のための賦形剤として機能し得る。好ましい担体は、T細胞と相互作用することができる形態のAPCを維持することができる。こうした担体の例としては、水、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、血清含有溶液、ハンク溶液、およびその他の生理学的にバランスのとれた水溶液または細胞培養培地が挙げられるが、これらに限定されない。水性担体はまた、例えば、化学的安定性および等張性の強化など、レシピエントの生理学的条件に近似するために必要な適切な補助物質を含有してもよい。適切な補助物質としては、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、ならびにリン酸緩衝液、トリス緩衝液、および重炭酸塩緩衝液を生成するために使用される他の物質が挙げられる。
ワクチン組成物
本開示は、特異的なT細胞応答を起こすことができるワクチンまたは免疫原性組成物をさらに包含するものであり、
- 本明細書に定義される一つまたは複数のネオアンチゲンペプチドと、
- 本明細書に定義されるネオアンチゲンペプチドをコードする一つまたは複数のポリヌクレオチドと、
- 上述の抗原提示細胞(自己樹状細胞または人工APCなど)の集団と、を含む。
好ましくは、以前に定義された腫瘍特異的融合によりコードされるネオアンチゲンペプチドは、本開示によるワクチン組成物で使用される。該ネオアンチゲンペプチドは、腫瘍特異的ペプチドとも命名され得る。腫瘍特異的ペプチドをコードするポリヌクレオチドも、本開示に従って使用されることが好ましい。
好適なワクチンまたは免疫原性組成物は、1~20のネオアンチゲンペプチド、より好ましくは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25の異なるネオアンチゲンペプチド、さらに好ましくは、6、7、8、9、10、11、12、13、または14の異なるネオアンチゲンペプチド、および最も好ましくは12、13または14の異なるネオアンチゲンペプチドを含有することが好ましい。
ネオアンチゲンペプチドは、担体タンパク質に連結されてもよい。組成物が二つ以上のネオアンチゲンペプチドを含有する場合、二つ以上(例えば、2~25)のペプチドは、上述のスペーサー分子、例えば、2~6の非極性または中性アミノ酸を含むスペーサーによって直線的に連結されてもよい。
本開示の一実施形態では、ポリヌクレオチド、ベクター、またはAPCをコードする異なるネオアンチゲンペプチドは、一つのワクチンまたは免疫原性組成物が、異なるMHCクラスI分子などの異なるMHC分子と会合することができるネオアンチゲンペプチドを含むように選択される。好ましくは、こうしたネオアンチゲンペプチドは、最も頻繁に発生するMHCクラスI分子と会合することができ、例えば、少なくとも2つの好ましい、より好ましくは少なくとも3つの好ましい、さらにより好ましくは少なくとも4つの好ましいMHCクラスI分子と会合することができる異なる断片である。いくつかの実施形態では、組成物は、一つまたは複数のMHCクラスII分子と会合することができるポリヌクレオチド、ベクター、またはAPCをコードするペプチドを含む。MHCは、任意選択で、HLA -A、-B、-C、-DP、-DQ、または-DRである。
ワクチンまたは免疫原性組成物は、特異的な細胞傷害性T細胞応答および/または特異的なヘルパーT細胞応答を起こすことができる。
したがって特定の実施形態では、本開示はまた、上述のネオアンチゲンペプチドに関し、ネオアンチゲンペプチドは腫瘍特異的ネオエピトープを有し、ワクチンまたは免疫原性組成物に含まれる。ワクチン組成物は、疾患の予防および/または治療のための免疫を生成するための組成物を意味すると理解されるべきである。したがって、ワクチンは、抗原を含むか、または抗原を生成する薬剤であり、ワクチン接種によって特定の防御物質および保護物質を生成するために、ヒトまたは動物に使用されることが意図される。「免疫原性組成物」は、抗原を含むか、または抗原を生成し、抗原特異的液性または細胞性免疫応答、例えば、T細胞応答を誘発することができる組成物を意味すると理解されるべきである。
好ましい実施形態では、本開示によるネオアンチゲンペプチドは、8もしくは9残基長、または13~25残基長である。ペプチドが20残基未満である場合、インビボ免疫化により適したペプチドを有するために、該ネオアンチゲンペプチドは、任意選択的に追加のアミノ酸に隣接して、より多くの、通常は20超のアミノ酸の免疫化ペプチドを得る。
本明細書に記載されるペプチドを含む医薬組成物(すなわち、ワクチンまたは免疫原性組成物)は、既に癌に罹患している個体に投与されてもよい。治療用途では、組成物は、腫瘍抗原に対する有効なCTL応答を誘発し、症状および/または合併症を治癒または少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で患者に投与される。これを達成するのに適切な量は、「治療有効用量」として定義される。この使用に有効な量は、例えば、ペプチド組成物、投与方法、治療される疾患の段階および重症度、患者の体重および全般的な健康状態、および処方する医師の判断によるが、一般に、初期免疫(つまり、治療的または予防的投与)の範囲は、体重70kgの患者に対してペプチドを約1.0μg~約50,000μg、その後、患者の血液中の特定のCTL活性の測定により、患者の反応および状態に応じて、数週間から数か月にわたる追加レジメンに従ってペプチドを約1.0μg~約10,000μg追加投与される。本発明のペプチドおよび組成物は、概して重篤な疾患状態、すなわち、生命を脅かす状態、または生命を脅かす可能性のある状態、特に癌が転移した場合、採用され得ることに留意されたい。このような場合、異物の最小化およびペプチドの比較的毒性のない性質を考慮すると、これらのペプチド組成物の実質的な過剰投与は可能であり、治療担当医は望ましいと感じるかもしれない。
治療的使用については、腫瘍の検出または外科的除去から投与を開始すべきである。この後に、少なくとも症状が実質的に軽減するまで、およびその後一定期間、用量を追加する。
治療のためのワクチンまたは免疫原性組成物は、非経口、局所、経鼻、経口、または局所投与を意図する。好ましくは、医薬組成物は、非経口的に、例えば、静脈内、皮下、皮内、または筋肉内投与される。組成物は、腫瘍に対する局所免疫応答を誘発するために外科的切除の部位に投与されてもよい。
ワクチンまたは免疫原性組成物は、薬学的に許容可能なアジュバント、免疫賦活剤、安定剤、担体、希釈剤、賦形剤、および/または当業者に周知の任意の他の材料を追加的に含む医薬組成物であってもよい。かかる材料は、非毒性であるべきであり、活性成分の有効性を妨げるべきではない。担体は水性担体であることが好ましいが、担体または他の材料の正確な性質は投与経路に依存する。様々な水性担体、例えば、水、緩衝水、0.9%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などを使用してもよい。これらの組成物は、従来的な周知の滅菌技術によって滅菌されてもよく、または滅菌濾過されてもよい。得られた水溶液は、そのまま使用するために包装するか、または凍結乾燥してもよいが、凍結乾燥調製物は投与前に滅菌溶液と組み合わされる。組成物は、生理学的条件を近似するために必要な薬学的に許容可能な補助物質、例えば、pH調整剤および緩衝剤、張性調整剤、湿潤剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミンなどをさらに含有してもよい。癌ワクチンについての考察は、例えば、Butterfield,BMJ.2015 22;350を参照のこと。
抗原性化合物に対する宿主の免疫反応を増大または拡大させるアジュバントの例としては、乳化剤、ムラミルジペプチド、アブリジン、水酸化アルミニウムなどの水性アジュバント、キトサン系アジュバント、サポニン、油、アンフィゲン、LPS、細菌細胞壁抽出物、細菌DNA、CpG配列、合成オリゴヌクレオチド、サイトカインおよびそれらの組み合わせが挙げられる。乳化剤としては、例えば、ラウリン酸およびオレイン酸のカリウム塩、ナトリウム塩およびアンモニウム塩、脂肪酸のカルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、臭化セチルトレチルアンモラム(cetyltrhethylammonlum)、グリセリルエステル、ポリオキシエチレングリコールエステルおよびエーテル、およびソルビタン脂肪酸エステルおよびそれらのポリオキシエチレン、アカシア、ゼラチン、レシチンおよび/またはコレステロールが挙げられる。オイル成分を含むアジュバントは、鉱油、植物油、または動物油を含む。他のアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(FCA)または不完全フロイントアジュバント(FIA)が挙げられる。追加の免疫賦活剤として有用なサイトカインとしては、インターフェロンアルファ、インターロイキン-2(IL-2)、および顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
ワクチンまたは免疫原性製剤中の本明細書に記載のペプチドの濃度は、大きく変動する可能性があり、すなわち、下は約0.1重量%未満、通常または少なくとも約2重量%から、上は20重量%~50重量%以上までであり、選択された特定の投与様式に従って、主に流体量、粘度などによって選択される。
本明細書に記載されるペプチドはまた、リンパ球組織などの特定の細胞組織にペプチドを標的化するリポソームを介して投与されてもよい。リポソームはまた、ペプチドの半減期を増加させるのに有用である。リポソームには、エマルション、フォーム、ミセル、不溶性単層、液晶、リン脂質分散体、ラメラ層などが含まれる。これらの調製物において、送達されるペプチドは、リポソームの一部として、単独で、または例えば、CD45抗原に結合するモノクローナル抗体などのリンパ系細胞に広く見られる受容体に結合する分子、または他の治療組成物もしくは免疫原性組成物と共に組み込まれる。したがって、本発明の所望のペプチドで充填されたリポソームは、リンパ系細胞の部位に向けられ、ここでリポソームは次に選択された治療用/免疫原性ペプチド組成物を送達することができる。本発明における使用のためのリポソームは、標準的な小胞形成脂質から形成され、これは概して中性および負に帯電したリン脂質、ならびにコレステロールなどのステロールを含む。脂質の選択は、一般に、例えば、リポソームのサイズ、酸の不安定性、および血流中のリポソームの安定性を考慮することによって導かれる。リポソームの調製に利用可能な様々な方法は、例えば、Szoka et al.,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9;467(1980)、米国米国特許第4,235,871号、4501728号、米国第4,501,728号、第4,837,028号、および第5,019,369号に記載されている。
免疫細胞への標的化のために、リポソームに組み込まれるリガンドは、例えば、所望の免疫系細胞の細胞表面決定基に特異的な抗体またはその断片を含み得る。ペプチドを含有するリポソーム懸濁液は、特に、投与方法、送達されるペプチド、および治療される疾患の段階に応じて変化する用量で、静脈内、局所的(locally)、局所的(topically)などに、投与され得る。
固体組成物については、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む、従来のまたはナノ粒子の非毒性固体担体が使用され得る。経口投与については、薬学的に許容可能な非毒性組成物は、以前に列挙された担体などの通常使用される賦形剤のいずれか、および概して10~95%の活性成分、すなわち本発明の一つまたは複数のペプチド、より好ましくは25%~75%の濃度で組み込むことによって形成される。
エアロゾル投与については、免疫原性ペプチドは、界面活性剤および噴霧剤と共に微細に分割された形態で供給されることが好ましい。ペプチドの典型的な割合は、0.01重量%~20%、好ましくは1%~10%である。界面活性剤は、もちろん、非毒性であり、かつ好ましくは噴霧剤に可溶性でなければならない。そのような薬剤を代表するものとしては、6~22個の炭素原子を含有する脂肪酸、例えばカプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステル酸(olesteric acid)、およびオレイン酸の脂肪族多価アルコールまたはその環状無水物とのエステルまたは部分エステルが挙げられる。混合エステル、例えば混合または天然グリセリドを使用してもよい。界面活性剤は、組成物の0.1%~20重量%、好ましくは0.25~5重量%を構成してもよい。組成物の残りは、通常、噴射剤である。担体は所望により、例えば、経鼻送達ではレシチンも含むことが可能である。
細胞傷害性T細胞(CTL)は、インタクトな外来抗原自体ではなく、MHC分子に結合したペプチドの形態で抗原を認識する。MHC分子自体は、抗原提示細胞の細胞表面に位置する。したがって、CTLの活性化は、ペプチド抗原、MHC分子、および抗原提示細胞(APC)の三量体複合体が存在する場合にのみ可能である。同様に、CTLの活性化にペプチドを使用するだけでなく、それぞれのMHC分子を有するAPCをさらに追加する場合、免疫応答を増強し得る。したがって、いくつかの実施形態では、本開示によるワクチンまたは免疫原性組成物は、代替的にまたは追加的に、少なくとも一つの抗原提示細胞、好ましくはAPCの集団を含有する。
したがって、ワクチンまたは免疫原性組成物は、例えば樹状細胞ワクチンとして、抗原提示細胞などの細胞の形態で送達されてもよい。樹状細胞などの抗原提示細胞は、本明細書に開示されるネオアンチゲンペプチドでパルスまたはロードしてもよく、本明細書に開示されるネオアンチゲンペプチドをコードする発現構築物を含んでもよく、または本明細書に開示されるネオアンチゲンペプチドのうちの一つ、二つ以上、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、または10のネオアンチゲンペプチドを発現するように(DNAまたはRNA転移を介して)遺伝子改変されてもよい。
適切なワクチンまたは免疫原性組成物はまた、本明細書に記載されるネオアンチゲンペプチドに関連するDNAまたはRNAの形態であってもよい。例えば、一つまたは複数のネオアンチゲンペプチドまたはそこから誘導されるタンパク質をコードするDNAまたはRNAを、ワクチンとして、例えば、対象に直接注射することによって使用してもよい。例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25のネオアンチゲンペプチドまたはそれらから誘導されたタンパク質をコードするDNAまたはRNA。
患者に核酸を送達するために、多くの方法が便利に使用されている。例えば、核酸は、「裸のDNA」として直接送達されてもよい。このアプローチは、例えば、Wolff et al.,Science 247:1465-1468 (1990)、および米国米国特許第5,580,859号および第5,589,466号に記載されている。核酸はまた、例えば、米国特許第5,204,253号に記載されるような弾道送達を使用して投与することができる。DNAのみからなる粒子を投与することができる。あるいは、DNAを、金粒子などの粒子に付着させることができる。
核酸はまた、カチオン性脂質などのカチオン性化合物に複合体化されて送達されてもよい。脂質を介した遺伝子送達方法は、例えば、9618372WOAWO 96/18372; 9324640WOAWO 93/24640; Mannino & Gould-Fogerite,BioTechniques 6(7):682-691(1988)、5279833USARose米国特許第5,279,833号、9106309WOAWO 91/06309、およびFelgner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413-7414 (1987 )に記載されている。
送達システムは任意に、細胞透過性ペプチド、ナノ粒子カプセル化、ウイルス様粒子、リポソーム、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。細胞透過性ペプチドには、TATペプチド、単純ヘルペスウイルスVP22、トランスポータン、Antpが含まれる。リポソームは、送達システムとして使用され得る。リステリアワクチンまたはエレクトロポレーションも使用され得る。
一つまたは複数のネオアンチゲンペプチドはまた、一つまたは複数のネオアンチゲンペプチドをコードするDNAまたはRNA配列を含有する細菌またはウイルスベクターを介して送達されてもよい。DNAまたはRNAは、ベクター自体として、または弱毒化された細菌ウイルス、またはワクシニアまたは鶏痘などの弱毒化された生ウイルス内に送達されてもよい。このアプローチは、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現するためのベクターとしてのワクシニアウイルスの使用を伴う。急性または慢性感染宿主または非感染宿主に導入されると、組換えワクシニアウイルスは免疫原性ペプチドを発現し、それによって宿主のCTL応答を誘発する。免疫化プロトコルに有用なワクシニアベクターおよび方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載されている。別のベクターは、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)である。BCGベクターは、Stover et al.(Nature 351:456-460(1991))に記載されている。本発明のペプチドの治療的投与または免疫化に有用な幅広い他のベクター、例えば、チフス菌ベクターなどは、本明細書の記載から当業者には明らかであろう。
本明細書に記載されるペプチドをコードする核酸を投与する適切な手段は、複数のエピトープをコードするミニ遺伝子構築物の使用を伴う。ヒト細胞における発現のために選択されたCTLエピトープ(ミニ遺伝子)をコードするDNA配列を作製するために、エピトープのアミノ酸配列を逆翻訳する。ヒトコドン使用表を使用して、各アミノ酸のコドン選択を誘導する。これらのエピトープをコードするDNA配列は直接隣接し、連続ポリペプチド配列を作製する。発現および/または免疫原性を最適化するために、追加の要素をミニ遺伝子設計に組み込むことができる。逆翻訳され、ミニ遺伝子配列に含まれ得るアミノ酸配列の例としては、ヘルパーTリンパ球、エピトープ、リーダー(シグナル)配列、および小胞体保持シグナルが挙げられる。さらに、CTLエピトープのMHC提示は、CTLエピトープに隣接する合成(例えば、ポリアラニン)または天然に存在する隣接配列を含むことによって改善され得る。
ミニ遺伝子配列は、ミニ遺伝子のプラス鎖とマイナス鎖をコードするオリゴヌクレオチドを組み立てることによってDNAに変換される。重複オリゴヌクレオチド(30~100塩基長)は、周知の技術を使用して適切な条件下で合成、リン酸化、精製、およびアニーリングされる。オリゴヌクレオチドの末端は、T4 DNAリガーゼを使用して結合される。次いでCTLエピトープポリペプチドをコードするこの合成ミニ遺伝子を、所望の発現ベクターにクローニングすることができる。
当業者に周知の標準的な調節配列がベクターに含まれ、標的細胞での発現を確実にする。したがって、ネオアンチゲンペプチドをコードするDNAまたはRNAは、典型的には、以下のうちの一つまたは複数に動作可能に連結されてもよい:
- 核酸分子発現を駆動するために使用することができるプロモーター。AAV ITRはプロモーターとして機能することができ、追加のプロモーター要素の必要性を排除するのに有利である。ユビキタス発現については、以下のプロモーターを使用できる:CMV(特にヒトサイトメガロウイルス前初期プロモーター(hCMV-IE))、CAG、CBh、PGK、SV40、RSV、フェリチン重鎖または軽鎖など。脳発現については、以下のプロモーターを使用できる:すべてのニューロンにはシナプシン、興奮性ニューロンにはCaMKIIalpha、GABA作動性ニューロンにはGAD67またはGAD65またはVGATなど。RNA合成を駆動するために使用されるプロモーターには、以下が含まれ得る:U6またはHIなどのPol IIIプロモーター。Pol IIプロモーターおよびイントロンカセットを使用して、ガイドRNA(gRNA)を発現させることができる。典型的には、プロモーターは、ミニ遺伝子挿入のための下流クローニング部位を含む。適切なプロモーター配列の例については、米国特許第5,580,859号および第5,589,466号を参照のこと。
- 転写活性を高めることができる転写トランス活性因子または他のエンハンサー要素、例えば、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の5’末端反復配列(LTR)からの調節R領域(CMVプロモーターと組み合わせた場合、より高い細胞免疫応答を誘発することが示されている)。
- 翻訳最適化配列、例えば、mRNA内のAUG開始コドン(ACCAUGG)に隣接するコザック配列、およびコドン最適化。
ミニ遺伝子の発現および免疫原性を最適化するために、さらなるベクター改変が望まれ得る。いくつかの事例では、効率的な遺伝子発現にはイントロンが必要であり、一つまたは複数の合成または天然に存在するイントロンをミニ遺伝子の転写領域に組み込むことができる。ミニ遺伝子の発現を増加させるために、mRNA安定化配列を含めることも検討することができる。最近、DNA’ワクチンの免疫原性に免疫賦活配列(ISSまたはCpG)が関与することが提唱されている。これらの配列は、免疫原性を増強することが見出された場合、ミニ遺伝子コード配列の外側でベクターに含まれ得る。
いくつかの実施形態では、ミニ遺伝子にコードされたエピトープおよび免疫原性を増強または減少させるために含まれる第二のタンパク質の産生を可能にするためのバイシストロン性発現ベクターを使用することができる。
本明細書に記載されるDNAワクチンまたは免疫原性組成物は、IL-2、IL-12、IL-18、GM-CSF、およびIFNγなどの細胞媒介免疫応答を促進するサイトカインを共送達することによって強化され得る。IL-8などのCXCケモカイン、およびマクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-1α、MIP-3α、MIP-3β、およびRANTESなどのCCケモカインは、免疫反応の効力を増加させる場合がある。DNAワクチン免疫原性はまた、プラスミドにコードされたサイトカイン誘導分子(例えば、LeIF)、共刺激分子および接着分子、例えば、B7-1(CD80)および/またはB7-2(CD86)を共送達することによっても強化され得る。ヘルパー(HTL)エピトープは、細胞内標的シグナルに結合され、CTLエピトープとは別に発現され得る。これにより、CTLエピトープとは異なる細胞区画へのHTLエピトープの方向付けが可能となる。必要に応じて、これは、MHCクラスII経路へのHTLエピトープのより効率的な進入を促進し、それによってCTL誘導を改善することができる。CTL誘導とは対照的に、免疫抑制分子(例えば、TGF-β)の共発現による免疫反応の特異的低下は、特定の疾患において有益であり得る。
発現ベクターが選択されると、ミニ遺伝子はプロモーターの下流のポリリンカー領域にクローニングされる。このプラスミドは適切な大腸菌株に形質転換され、DNAは標準的な技術を使用して調製される。ミニ遺伝子の配向およびDNA配列、ならびにベクターに含まれる他のすべての要素は、制限酵素マッピングおよびDNA配列解析を使用して確認される。正しいプラスミドを保有する細菌性細胞は、マスターセルバンクおよびワーキングセルバンクとして保存することができる。
精製されたプラスミドDNAは、様々な製剤を使用して注射用に調製することができる。これらの中で最も単純なものは、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の凍結乾燥DNAの再構成である。様々な方法が説明されており、新しい技術が利用可能となり得る。上述のように、核酸は、カチオン性脂質で簡便に製剤化される。さらに、糖脂質、融合性リポソーム、ペプチドおよび防御相互作用非縮合(protective,interactive,non-condensing)(PINC)と総称される化合物を、精製されたプラスミドDNAと複合体化して、安定性、筋肉内分散、または特定の器官もしくは細胞型への輸送などの変数に影響を与えることができる。
ペプチドを含むワクチンまたは免疫原性組成物は、ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むワクチンまたは免疫原性組成物と組み合わせて投与されてもよい。例えば、ペプチドワクチンおよびDNAワクチンの投与は、プライムブーストプロトコルで代替されてもよい。例えば、ペプチド免疫原性組成物を用いてプライミングすること、およびDNA免疫原性組成物を用いてブーストすること、ならびにDNA免疫原性組成物を用いてプライミングすること、およびペプチド免疫原性組成物を用いてブーストすることが企図される。
本開示はまた、
a) 任意で、前述の方法に従って、少なくとも一つのネオアンチゲンペプチドを同定する工程と、
b) 本明細書に記載される該少なくとも一つのネオアンチゲンペプチド、ネオアンチゲンペプチドをコードする少なくとも一つのポリペプチド、または該ポリペプチドを含むベ少なくとも一つのベクターを産生する工程と、
c) 任意で、生理学的に許容可能な緩衝剤、賦形剤、および/またはアジュバントを添加し、該少なくとも一つのネオアンチゲンペプチド、ポリペプチド、またはベクターを用いてワクチンを産生する工程と、を含む、ワクチン組成物を産生する方法を包含する。
本開示の別の態様は、DCワクチンを産生する方法であり、該DCは、本明細書に開示される少なくとも一つのネオアンチゲンペプチドを提示する。
抗体TCR、CARおよびその誘導体
本開示はまた、本明細書に定義されるネオアンチゲンペプチドに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片に関する。
いくつかの実施形態では、ネオアンチゲンペプチドは、MHC分子またはHLA分子と会合している。
典型的には、該抗体またはその抗原結合断片は、単独で、または任意でMHC分子またはHLA分子と関連して、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、または10-11M以下のKd結合親和性で、本明細書に定義されるネオアンチゲンペプチドに結合する。
リンパ球T(LT)による腫瘍細胞の浸潤および認識を促進するために、別の戦略は、複数の抗原標的を同時に、より具体的には二つの抗原標的を同時に認識することができる抗体を使用することからなる。二重特異性抗体には多くのフォーマットがある。BiTE(二重特異性T細胞エンゲイジャー)は、最初に開発されたものである。これらは、結合ペプチドによって連結された二つの抗体からの二つのscFv(重鎖VH可変ドメインおよび軽鎖VL可変ドメイン)からなる融合タンパク質であり、一方はLTマーカー(CD3+)を認識し、他方は腫瘍抗原を認識する。目標は、腫瘍と接触しているLTの動員および活性化を促進し、それゆえ細胞溶解腫瘍をもたらすことである(Patrick A.Baeuerle and Carsten Reinhardt; Bispecific T-Cell Engageing Antibodies for Cancer Therapy; Cancer Res 2009; 69:(12).June 15,2009; and Galaine et al.,Innovations & Therapeutiques en Oncologie,vol.3-n°3-7,mai-aout 2017を参照されたい)。
特定の実施形態では、該抗体は、本明細書に定義される腫瘍ネオアンチゲンペプチドを標的とし、任意選択的にMHC分子またはHLA分子と関連して、さらに少なくとも免疫細胞抗原を標的にする、二重特異性T細胞エンゲイジャーである。典型的には、免疫細胞は、T細胞、NK細胞、または樹状細胞である。この文脈において、標的免疫細胞抗原は、例えば、CD3、CD16、CD30、またはTCRであってもよい。
本明細書の用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含み、インタクトな抗体および機能的(抗原結合)抗体断片を含み、断片抗原結合(Fab)断片、 F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片、組換えIgG(rlgG)断片、抗原に特異的に結合できる可変重鎖(VH)領域、単鎖抗体断片を含み、単鎖可変断片(scFv)、および単一ドメイン抗体(例えば、VHH抗体、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片を含む。この用語は、例えば、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性、例えば、二重特異性、抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムdi-scFv、タンデムtri-scFvなどの免疫グロブリンの遺伝子操作された、および/または別の方法でバリアント修飾された形態を包含する。別段の記載がない限り、用語「抗体」は、機能性抗体およびその断片を包含するものとして理解されるべきである。用語はまた、IgGおよびそのサブクラス、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgE、IgA、およびIgDを含む、任意のクラスまたはサブクラスの抗体を含む、インタクトまたは完全長の抗体を包含する。いくつかの実施形態では、抗体は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとを含み、例えば、scFv形式である。
抗体は、抗体がその特異的結合機能を保持するかまたは実質的に保持することを条件に、天然アミノ酸配列内に一つまたは複数のアミノ酸置換、挿入、または欠失を有するバリアントポリペプチド種を含む。アミノ酸の保存的置換は周知であり、上述されている。
本開示はさらに、約10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、または10-11M以下のKd結合親和性を有する、任意選択的にMHC分子またはHLA分子と会合して、本明細書に定義される腫瘍ネオアンチゲンペプチドに結合する抗体を選択する工程を含む、抗体またはその抗原結合断片を作製する方法を含む。
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体配列のライブラリーから選択される。いくつかの実施形態では、抗体は、任意選択的にMHC分子またはHLA分子と会合したネオアンチゲンペプチドを含むポリペプチドで動物を免疫化し、その後の選択工程によって生成される。
キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体を含む抗体は、上述のようにさらに親和性成熟させ、選択することができる。ヒト化抗体は、げっ歯類配列由来のCDR領域を含有し、典型的には、げっ歯類CDRはヒトフレームワークに移植され、ヒトフレームワーク残基の一部は、親和性を保持するために元のげっ歯類フレームワーク残基に突然変異する場合があり、および/またはCDR残基のうちの一つもしくはいくつかを変異させて、親和性を高める場合がある。完全ヒト抗体は、マウス配列を有しておらず、典型的には、ヒト抗体ライブラリーのファージディスプレイ技術、または天然の免疫グロビン座位がヒト免疫グロブリン座位のセグメントで置換されているトランスジェニックマウスの免疫化によって産生される。
該方法によって産生される抗体、ならびにそのような抗体またはその断片を発現する免疫細胞も、本開示によって包含される。
本開示はまた、本明細書に開示された一つまたは複数の抗体を、単独で、または安定化化合物などの少なくとも一つの他の薬剤と組み合わせて含む医薬組成物を包含し、安定化化合物は、任意の滅菌の生体適合性医薬担体で投与されてもよく、滅菌の薬学的に許容可能な緩衝液、希釈剤、および/または賦形剤を配合して任意に製剤化されてもよい。薬学的に許容可能な担体は、典型的には組成物を増強または安定化し、および/または組成物の調製を容易にするために使用することができる。薬学的に許容可能な担体には、溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれ、これらは生理学的に適合性があり、いくつかの実施形態では薬学的に不活性である。
本明細書に開示される抗体を含む医薬組成物の投与は、経口的にまたは非経口的に達成され得る。非経口送達の方法には、局所、動脈内(腫瘍に直接)、筋肉内、脊椎、皮下、髄内、髄腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、または鼻腔内投与が含まれる。
したがって、活性成分に加えて、これらの医薬組成物は、活性化合物を薬学的に使用することができる調製物にプロセシングすることを容易にする賦形剤および補助剤を含む適切な薬学的に許容可能な担体を含有してもよい。製剤化および投与の技術に関するさらなる詳細は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Ed.Maack Publishing Co,Easton,Pa.)の最新版に見出すことができる。
投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、抗体、二重特異性分子、および多重特異性分子は材料でコーティングして、化合物を不活化し得る酸および他の自然条件の作用から化合物を保護することができる。
組成物は、典型的には滅菌され、好ましくは流体である。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合に必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトールまたはソルビトールなどの多価アルコール、および塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を組成物中に含めることによってもたらされ得る。
経口投与のための医薬組成物は、経口投与に適した用量で、当技術分野で周知の薬学的に許容可能な担体を使用して製剤化することができる。こうした担体は、患者が摂取するために、医薬組成物を錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することを可能にする。
経口使用のための医薬品は、活性化合物と固体賦形剤とを組み合わせ、得られた混合物を任意に粉砕し、所望に応じて適切な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣錠コアを得ることによって得ることができる。好適な賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖などの炭水化物またはタンパク質充填剤;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ、または他の植物由来のデンプン;メチル、セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;ならびにアラビアおよびトラガカントを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質である。所望に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤が添加されてもよい。
糖衣錠コアには、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに好適な有機溶媒または溶媒混合物も含有し得る、濃縮糖溶液などの好適なコーティングが施されている。染料または顔料は、製品識別のために、または活性化合物の量、すなわち用量を特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加されてもよい。
経口的に使用することができる医薬品には、ゼラチンで作られた押し込み型カプセル、ならびにゼラチンで作られ、グリセロールまたはソルビトールなどでコーティングされた軟質の密封カプセルが含まれる。押し込み型カプセルは、ラクトースまたはデンプンなどの充填剤または結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および任意に安定剤と混合された活性成分を含有し得る。ソフトカプセルでは、活性化合物は、安定剤の有無に関わらず、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解または懸濁され得る。
非経口投与のための医薬製剤には、活性化合物の水溶液が含まれる。注射の場合、本発明の医薬組成物は、水溶液、好ましくは、ハンクス液、リンゲル液、または生理的に緩衝された生理食塩水などの生理学的に適合性のある緩衝液中に製剤化され得る。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を高める物質を含有し得る。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製されてもよい。適切な親油性溶媒またはビヒクルは、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。任意選択で、懸濁液はまた、化合物の溶解度を増加させて、高度に濃縮された溶液の調製を可能にする適切な安定剤または薬剤を含有してもよい。
局所投与または鼻腔投与については、浸透させる特定のバリアに適切な浸透剤が製剤に使用される。こうした浸透剤は、当該技術分野で一般的に公知である。
本開示の医薬組成物は、当技術分野で周知で、日常的に実践されている方法に従って調製することができる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20th ed.,2000; and Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照のこと。医薬組成物は、GMP条件下で製造されることが好ましい。
本開示はまた、MHC分子またはHLA分子に関連して本明細書に定義されるネオアンチゲンペプチドを標的とするT細胞受容体(TCR)を包含する。
本開示は、TCRまたはその抗原結合断片を産生する方法をさらに含み、本明細書に定義される腫瘍ネオアンチゲンペプチドに、任意選択的にMHC分子またはHLA分子と会合して、約10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、または10-11Mの以下のKd結合親和性で結合するTCRを選択する工程を含む。
TCRをコードする核酸は、天然に存在するTCR DNA配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、続いて抗体可変領域の発現、続いて上述の選択工程など、様々なソースから取得することができる。いくつかの実施形態では、TCRは、患者から単離されたT細胞、または培養T細胞ハイブリドーマから取得される。いくつかの実施形態では、標的抗原のTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系、またはHLA)で操作されたトランスジェニックマウスにおいて作製されている。例えば、腫瘍抗原(例えば、Parkhurst et al.(2009) Clin Cancer Res.15:169-180 and Cohen et al.(2005) J Immunol.175:5799-5808を参照のこと。いくつかの実施形態では、ファージディスプレイを使用して、標的抗原に対してTCRを単離する(例えば、Varela-Rohena et al.(2008) Nat Med.14:1390-1395 and Li (2005) Nat Biotechnol.23:349-354を参照のこと。
「T細胞受容体」または「TCR」は、可変α鎖およびβ鎖(それぞれTCRaおよびTCRbとしても知られる)、または可変γ鎖およびδ鎖(それぞれTCRgおよびTCRdとしても知られる)を含有し、MHC受容体に結合される抗原ペプチドに特異的に結合する能力を有する分子を指す。いくつかの実施形態では、TCRは、αβ形態である。典型的には、αβおよびγδ形態で存在するTCRは、一般に構造的に類似しているが、それらを発現するT細胞は、異なる解剖学的位置または機能を有し得る。TCRは、細胞の表面上または可溶性形態で見出すことができる。概して、TCRは、T細胞(またはTリンパ球)の表面上に見出され、主要組織適合複合体(MHC)分子に結合された抗原を認識するのに一般的に関与している。いくつかの実施形態では、TCRはまた、定常ドメイン、膜貫通ドメイン、および/または短い細胞質尾部を含有してもよい(例えば、Janeway et ah,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,3 rd Ed.,Current Biology Publications,p.4:33,1997を参照のこと)。例えば、いくつかの態様では、TCRの各鎖は、C末端に、一つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、一つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、および短い細胞質尾部を有し得る。いくつかの実施形態では、TCRは、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体の不変タンパク質と関連している。別段の記載がない限り、用語「TCR」は、その機能的TCR断片を包含するものとして理解されるべきである。この用語はまた、αβ形態またはγδ 形態のTCRを含む、インタクトまたは全長のTCRを包含する。
したがって、本明細書の目的のために、TCRへの言及は、MHC分子に結合した特定の抗原性ペプチド、すなわちMHC-ペプチド複合体に結合するTCRの抗原結合部分などの任意のTCRまたは機能的断片を含む。TCRの「抗原結合部分」または抗原結合断片」は、互換的に使用することができ、TCRの構造ドメインの一部を含有するが、完全なTCRが結合する抗原(例えば、MHC-ペプチド複合体)に結合する分子を指す。いくつかの事例では、抗原結合部分は、TCRの可変a鎖および可変β鎖などの、TCRの可変ドメインを含有し、一般に各鎖が三つの相補性決定領域を含有するなど、特定のMHC-ペプチド複合体に結合する結合部位を形成するのに十分である。
いくつかの実施形態では、TCR鎖の可変ドメインが結合してループ、または免疫グロブリンに類似した相補性決定領域(CDR)を形成し、これはTCR分子の結合部位を形成することによって抗原認識を与え、ペプチドの特異性を決定する。典型的には、免疫グロブリンと同様に、CDRはフレームワーク領域(FR)によって分離される{例えば、Jores et al.,Pwc.Nat’lAcad.Sci.U.S.A.87:9138,1990; Chothia et al.,EMBO J.7:3745,1988; see also Lefranc et al.,Dev.Comp.Immunol.27:55,2003)を参照されたい。いくつかの実施形態では、CDR3は、処理された抗原の認識に関する主要なCDRであるが、アルファ鎖のCDR1は抗原ペプチドのN末端部分と、ベータ鎖のCDR1はペプチドのC末端部分と相互作用することも示されている。CDR2は、MHC分子を認識すると考えられる。いくつかの実施形態では、β鎖の可変領域は、さらなる超可変性(HV4)領域を含有し得る。
いくつかの実施形態では、TCR鎖は定常ドメインを含有する。例えば、免疫グロブリンと同様に、TCR鎖の細胞外部分{例えば、α-鎖、β-鎖)は、二つの免疫グロブリンドメイン、N末端の可変ドメイン{例えば、VaまたはVp;典型的には、カバト番号付けに基づくアミノ酸1~116 Kabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,Public Health Service National Institutes of Health,1991,5th ed.)、および細胞膜に隣接する一つの定常ドメイン{例えば、a鎖定常ドメインまたはCa、典型的には、カバトに基づくアミノ酸117~259、β-鎖定常ドメインまたはCp、典型的には、カバトに基づくアミノ酸117~295)を含むことができる。例えば、いくつかの事例では、二つの鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、二つの膜近位定常ドメインと、CDRを含有する二つの膜遠位可変ドメインを含有する。TCRドメインの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成する短い接続配列を含有し、二つの鎖間のリンクを形成する。いくつかの実施形態では、TCRは、TCRが定常ドメイン中に二つのジスルフィド結合を含有するように、α鎖およびβ鎖のそれぞれに追加のシステイン残基を有してもよい。
いくつかの実施形態では、TCR鎖は膜貫通ドメインを含有してもよい。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、正に荷電される。いくつかの事例では、TCR鎖は細胞質尾部を含有する。いくつかの事例では、この構造は、TCRがCD3などの他の分子と会合することを可能にする。例えば、膜貫通領域を有する定常ドメインを含有するTCRは、タンパク質を細胞膜内に固定し、CD3シグナル伝達装置または複合体の不変サブユニットと会合させることができる。
概して、CD3は、哺乳類の三つの異なる鎖(γ、δ、およびε)と、ζ-鎖を有し得る多タンパク質複合体である。例えば、哺乳動物では、複合体は、CD3y鎖、CD35鎖、二つのCD3s鎖、およびCD3ζ鎖のホモ二量体を含有し得る。CD3y鎖、CD35鎖、およびCD3s鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含有する免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連した細胞表面タンパク質である。CD3y、CD35、およびCD3s鎖の膜貫通領域は負に荷電しており、これは、これらの鎖が正に荷電したT細胞受容体鎖と会合することを可能にする特徴である。CD3y鎖、CD35鎖、およびCD3s鎖の細胞内尾部は各々、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして知られる単一の保存モチーフを含有し、各CD3ζ鎖には三つある。一般的に、ITAMはTCR複合体のシグナル伝達能力に関与する。これらのアクセサリ分子は、負に荷電した膜貫通領域を有し、TCRからの信号を細胞内に伝播させる役割を果たす。CD3鎖およびζ-鎖は、TCRとともに、T細胞受容体複合体として知られるものを形成する。
いくつかの実施形態では、TCRは、二つの鎖αおよびβ(または任意に、γおよびδ)のヘテロ二量体であってもよく、または一本鎖TCR構築物であってもよい。いくつかの実施形態では、TCRは、一つまたは複数のジスルフィド結合などによって連結された二つの異なる鎖(α鎖およびβ鎖またはγ鎖およびδ鎖)を含有するヘテロ二量体である。
T細胞受容体(TCR)は膜貫通型タンパク質であり、可溶性形態で天然に存在するものではないが、抗体は膜結合だけでなく分泌されてもよい。重要な点として、TCRは、MHC分子との関連で提示された場合、原則的に、細胞内および細胞外の両方で、すべての分解された細胞タンパク質から生成されたペプチドを認識できるという抗体に対する利点を有する。したがって、TCRは重要な治療の可能性を有する。
本開示はまた、本明細書に開示される腫瘍ネオアンチゲンペプチドに対して向けられた抗原認識部分を含有する可溶性T細胞受容体(sTCR)に関する(特に、Walseng E,Walchli S,Fallang L-E,Yang W,Vefferstad A,Areffard A,et al.(2015)Soluble T-Cell Receptors Produced in Human Cells for Targeted Delivery.PLoS ONE 10(4):e0119559を参照のこと)。特定の実施形態では、可溶性TCRは、T細胞抗原に向けられた抗体断片に融合されてもよく、任意選択的に、標的抗原はCD3またはCD16である(例えば、Boudousquie,Caroline et al.“Polyfunctional response by ImmTAC (IMCgp100)redirected CD8+ and CD4+ T cells.”Immunology vol.152,3(2017):425-438.doi:10.1111/imm.12779を参照のこと)。
本開示はまた、本明細書に開示される腫瘍ネオアンチゲンペプチドに向けられるキメラ抗原受容体(CAR)を包含する。CARは、TCR複合体のシグナル伝達ドメインに連結された、典型的には抗体に由来する抗原結合ドメインを含む融合タンパク質である。CARは、選択された適切な抗原結合ドメインと共に以前に定義されたように、T細胞またはNK細胞などの免疫細胞を、腫瘍ネオアンチゲンペプチドに対して方向付けるために使用され得る。
CARの抗原結合ドメインは、典型的には、抗体に由来するscFv(単鎖可変断片)に基づく。N末端の細胞外抗体結合ドメインに加えて、CARは、典型的には、それが発現する免疫エフェクター細胞の細胞膜から離れて抗原結合ドメインを伸ばすためのスペーサーとして機能するヒンジドメイン、膜貫通(TM)ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、TCR複合体のCD3分子(CD3ζ)のゼータ鎖からのシグナル伝達ドメイン、または同等のもの)、および任意選択的に、CARを発現する細胞のシグナル伝達または機能性を補助し得る、一つまたは複数の共刺激ドメインを含み得る。CD28、OX-40(CD134)、および4-1BB(CD137)を含む共刺激分子からのシグナル伝達ドメインは、単独で(第二世代)または組み合わせて(第三世代)添加されて、CAR改変T細胞の生存率を高め、増殖を増やすことができる。潜在的な共刺激ドメインとしては、ICOS-1、CD27、GITR、およびDAP10が挙げられる。
したがって、CARは以下を含み得る:
(1) その細胞外部分では、一つまたは複数の抗原結合断片、ドメイン、もしくは抗体の一部などの一つまたは複数の抗原結合分子、または一つまたは複数の抗体可変ドメイン、および/または抗体分子。
(2) その膜貫通部分では、ヒトT細胞受容体-アルファまたは-ベータ鎖、CD3ゼータ鎖、CD28、CD3-エプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154、またはGITR由来の膜貫通ドメイン。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28、CD8、またはCD3-ゼータに由来する。
(3) ヒトCD28、4-1BB(CD137)、ICOS-1、CD27、OX 40(CD137)、DAP10、およびGITR(AITR)に由来する共刺激ドメインなどの一つまたは複数の共刺激ドメイン。いくつかの実施形態では、CARは、CD28および4-1BBの両方の共刺激ドメインを含む。
(4) その細胞内シグナル伝達ドメインでは、一つまたは複数のITAMを含む細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータ、または一つもしくは二つのITAMを欠くそのバリアント(例えば、ITAM3およびITAM2)、または細胞内シグナル伝達ドメインは、FcεRIγに由来する。
CARは、腫瘍ネオアンチゲンペプチドを単独で、またはHLAもしくはMHC分子と会合して認識するように設計され得る。
CARおよび組換えTCRを含む例示的な抗原受容体、ならびに受容体の操作方法および細胞内への導入方法については、例えば、国際特許出願公開番号WO200014257、 WO2013126726、 WO2012/129514、 WO2014031687、 WO2013/166321、 WO2013/071154、WO2013/123061、米国特許出願公開番号US2002131960、 US2013287748、US20130149337、米国特許番号:6,451,995、7,446,190、8,252,592、8,339,645、8,398,282、7,446,179、6,410,319、7,070,995、7,265,209、7,354,762、7,446,191、8,324,353、および8,479,118、欧州特許出願番号EP2537416に記載されているもの、および/またはSadelain et al.Cancer Discov.2013 April; 3(4):388-398; Davila et al.(2013) PLoS ONE 8(4):e61338; Turtle et al.,Curr.Opin.Immunol.,2012 October; 24(5):633-39; Wu et al.,Cancer,2012 March 18(2):160-75に記載されているものを含む。いくつかの態様では、遺伝子操作された抗原受容体は、米国特許第7,446,190号に記載されるCAR、および国際特許出願公開第 WO/2014055668 Al号に記載されるものを含む。
本開示はまた、抗体、その抗原結合断片または誘導体をコードするポリヌクレオチド、前述のTCRおよびCAR、ならびに該ポリヌクレオチドを含むベクターを包含する。
免疫細胞
本開示は、前述の一つまたは複数の腫瘍ネオアンチゲンペプチドを標的とする免疫細胞をさらに包含する。
本明細書で使用される場合、用語「免疫細胞」は、造血起源であり、免疫応答において役割を果たす細胞を含む。免疫細胞には、B細胞およびT細胞などのリンパ球、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、および顆粒球などの骨髄細胞が含まれる。
本明細書で使用される場合、用語「T細胞」は、T細胞受容体(TCR)、特に、本明細書に開示される腫瘍ネオアンチゲンペプチドに対して向けられたTCRを有する細胞を含む。本開示によるT細胞は、炎症性Tリンパ球、細胞障害性Tリンパ球、調節性Tリンパ球、粘膜関連不変T細胞(MAIT)、Υδ T細胞、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)、またはタイプ1および2ヘルパーT細胞の両方ならびにTh17ヘルパーT細胞を含む、ヘルパーTリンパ球からなる群から選択されてもよい。別の実施形態では、該細胞は、CD4+T-リンパ球およびCD8+T-リンパ球からなる群に由来することができる。該免疫細胞は、健康なドナーまたは癌に罹患している対象に由来してもよい。
免疫細胞は、血液から抽出されてもよく、または幹細胞から誘導されてもよい。幹細胞は、成体幹細胞、胚性幹細胞、より具体的には、非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、全能性幹細胞または造血幹細胞であり得る。代表的なヒト細胞は、CD34+細胞である。
T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む、多数の非限定的な供給源から取得することができる。特定の実施形態では、T細胞は、FICOLL(商標)分離などの当業者に公知の任意の数の技術を使用して、対象から採取された血液の単位から取得することができる。一実施形態では、対象の循環血液からの細胞は、アフェレーシスによって取得される。特定の実施形態では、T細胞は、PBMCから単離される。PBMCは、全血の密度勾配遠心分離、例えば、LYMPHOPREP(商標)勾配、PERCOLL(商標)勾配、またはFICOLL(商標)勾配による遠心分離によって得られたバフィーコートから単離され得る。T細胞は、例えばCD14 DYNABEADS(登録商標)を使用して、単球を枯渇させることによってPBMCから単離することができる。いくつかの実施形態では、赤血球は、密度勾配遠心分離の前に溶解されてもよい。
別の実施形態では、該細胞は、健康なドナー、癌と診断された対象に由来することができる。細胞は、自己または同種であり得る。
同種免疫細胞療法では、免疫細胞は患者ではなく健康なドナーから採取される。典型的には、これらは、移植片対宿主病の可能性を減少させるためにHLA一致である。あるいは、HLA一致を必要としない可能性のある一般的な「既製」製品は、TCRαβ受容体の破壊または除去など、移植片対宿主病を減少させるように設計された改変を含む。レビューについては、Graham et al.,Cells.2018 Oct; 7(10):155を参照のこと。ベータ鎖をコードする二つの遺伝子ではなく、単一の遺伝子がアルファ鎖(TRAC)をコードするため、TRAC遺伝子座は、TCRαβ受容体発現を除去または破壊するための典型的な標的である。あるいは、TCRαβシグナル伝達の阻害剤が発現されてもよく、例えば、CD3ζの切断型は、TCR阻害分子として作用し得る。HLAクラスI分子の破壊または除去も採用されている。例えば、Torikai et al.,Blood.2013;122:1341-1349は、ZFNを使用してHLA-A座位をノックアウトし、一方でRen et al.,Clin.Cancer Res.2017;23:2255-2266は、HLAクラスI発現に必要なベータ-2マイクログロブリン(B2M)をノックアウトした。Ren et al.は、TCRαβ、B2M、および免疫チェックポイントPD1を同時にノックアウトした。概して、免疫細胞は養子細胞療法で利用されるように活性化され、増殖される。本明細書に開示される免疫細胞は、インビボまたはエクスビボで増殖され得る。免疫細胞、特にT細胞は、当技術分野で公知の方法を使用して概して活性化および増殖することができる。概して、T細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤、およびT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドが付着した表面と接触することによって増殖する。
本開示の一実施形態では、免疫細胞は、以前に定義される腫瘍ネオアンチゲンペプチドに向けられるように改変され得る。特定の実施形態では、該免疫細胞は、該ネオアンチゲンペプチドに向けられた組換え抗原受容体をその細胞表面に発現してもよい。「組換え」とは、その生来の状態で細胞によってコードされない、すなわち異種で、非内因性である抗原受容体を意味する。したがって、組換え抗原受容体の発現は、免疫細胞に新たな抗原特異性を導入し、細胞に前述のペプチドを認識させ、結合させると見ることができる。抗原受容体は、任意の有用な供給源から単離されてもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、一つまたは複数の抗原受容体をコードする遺伝子工学を介して導入された一つまたは複数の核酸を含み、抗原は、本開示による少なくとも一つの腫瘍ネオアンチゲンペプチドを含む。
本開示による抗原受容体の中には、遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)およびその構成要素、ならびに前述したキメラ抗原受容体(CAR)などの機能的非TCR抗原受容体がある。
免疫細胞が遺伝子改変されて組換え抗原受容体を発現することができる方法は、当技術分野で周知である。抗原受容体をコードする核酸分子は、例えば、ベクター、または任意の他の適切な核酸構築物の形態で細胞内に導入されてもよい。ベクター、およびその必須成分は、当技術分野で周知である。抗原受容体をコードする核酸分子は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば、PCRを使用した分子クローニングを使用して作製することができる。抗原受容体配列は、部位特異的変異誘発など、一般的に使用される方法を用いて改変することができる。
本開示はまた、本明細書に開示される腫瘍ネオアンチゲンペプチドを標的とするT細胞集団を提供する方法に関する。
T細胞集団は、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、またはCD8+およびCD4+ T細胞を含んでもよい。
本開示に従って産生されるT細胞集団は、本開示の腫瘍ネオアンチゲンペプチドに特異的な、すなわち標的であるT細胞で濃縮されてもよい。すなわち、本開示に従って産生されるT細胞集団は、一つまたは複数の腫瘍ネオアンチゲンペプチドを標的とするT細胞の数が増加することになる。例えば、本開示のT細胞集団は、対象から単離された試料中のT細胞と比較して、腫瘍ネオアンチゲンペプチドを標的とするT細胞の数が増加する。すなわち、T細胞集団の組成は、腫瘍ネオアンチゲンペプチドを標的とするT細胞の割合または比率が増加するという点で、「天然」T細胞集団(すなわち、本明細書で論じた識別および増殖工程を経ていない集団)の組成とは異なる。
本開示に従って産生されるT細胞集団は、腫瘍ネオアンチゲンペプチドに特異的な、すなわち標的であるT細胞で濃縮されてもよい。すなわち、本開示に従って産生されるT細胞集団は、本開示の一つまたは複数の腫瘍ネオアンチゲンペプチドを標的とするT細胞の数が増加することになる。例えば、本開示のT細胞集団は、対象から単離された試料中のT細胞と比較して、腫瘍ネオアンチゲンペプチドを標的とするT細胞の数が増加する。すなわち、T細胞集団の組成は、腫瘍ネオアンチゲンペプチドを標的とするT細胞の割合または比率が増加するという点で、「天然」T細胞集団(すなわち、本明細書で論じた識別および増殖工程を経ていない集団)の組成とは異なる。
本開示によるT細胞集団は、本明細書に開示される腫瘍ネオアンチゲンペプチドを標的とする少なくとも約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%のT細胞を有し得る。例えば、T細胞集団は、本開示の腫瘍ネオアンチゲンペプチドを標的とする約0.2%~5%、5%~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~70%、または70~100%のT細胞を有し得る。
腫瘍ネオアンチゲンペプチド-反応性T細胞の増殖集団は、例えば、腫瘍ネオアンチゲンペプチドを使用して、増殖しないT細胞の集団よりも高い活性を有し得る。「活性」への言及は、腫瘍ネオアンチゲンペプチド、例えば、増殖に使用されるペプチドに対応するペプチド、または腫瘍ネオアンチゲンペプチドの混合物による再刺激に対するT細胞集団の応答を表し得る。応答をアッセイするための適切な方法は、当技術分野で公知である。例えば、サイトカイン産生を測定することができる(例えば、IL2またはIFNy産生を測定することができる)。「より高い活性」への言及は、例えば、活性の1~5倍、5~10倍、10~20倍、20~50倍、50~100倍、100~500倍、500~1000倍の増加を含む。一態様では、活性は1000倍超高い場合がある。
好ましい実施形態では、本開示は、複数または集団、すなわち二つ以上のT細胞を提供し、複数のT細胞は、クローン性腫瘍ネオアンチゲンペプチドを認識するT細胞と、異なるクローン性腫瘍ネオアンチゲンペプチドを認識するT細胞とを含む。したがって、本開示は、異なるクローン性腫瘍ネオアンチゲンペプチドを認識する複数のT細胞を提供する。複数のまたは集団中の異なるT細胞は、代替的に、同じ腫瘍ネオアンチゲンペプチドを認識する異なるTCRを有し得る。
好ましい実施形態では、複数のT細胞によって認識されるクローン性腫瘍ネオアンチゲンペプチドの数は、2~1000である。例えば、認識されるクローン性ネオアンチゲンの数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950または1000、好ましくは2~100とすることができる。異なるTCRを有するが、同じクローン性ネオアンチゲンを認識する複数のT細胞が存在する場合がある。
T細胞集団は、すべてもしくは主にCD8+ T細胞で構成されてもよく、またはすべてもしくは主にCD8+ T細胞とCD4+ T細胞の混合物で構成されてもよく、またはすべてもしくは主にCD4+ T細胞で構成されてもよい。
特定の実施形態では、T細胞集団は、腫瘍を有する対象から単離されたT細胞から生成される。例えば、T細胞集団は、腫瘍を有する対象から単離された試料中のT細胞から生成されてもよい。試料は、腫瘍試料、末梢血試料、または対象の他の組織からの試料であってもよい。
特定の実施形態では、T細胞集団は、腫瘍ネオアンチゲンペプチドが同定される腫瘍からの試料から生成される。言い換えれば、T細胞集団は、治療される患者の腫瘍に由来する試料から単離される。かかるT細胞は、本明細書では、「腫瘍浸潤リンパ球」(TIL)と呼ばれる。
T細胞は、当該技術分野で周知の方法を使用して単離されてもよい。例えば、T細胞は、CD3、CD4、またはCD8の発現に基づいて試料から生成された単一細胞懸濁液から精製されてもよい。T細胞は、フィコールパック勾配を通過させることにより、試料から濃縮することができる。
癌治療方法
いずれかの実施形態では、本明細書に記載の癌治療薬は、癌細胞の増殖を阻害するための方法に使用されてもよい。本明細書に記載される癌治療薬はまた、癌に罹患している患者における癌の治療、または癌のリスクを有する患者における癌の予防的治療に使用され得る。
本明細書に記載される療法を使用して治療され得る癌は、以前に定義された任意の固形腫瘍または非固形腫瘍を含む。本開示によれば、特に興味深いのは、乳癌、黒色腫、および肺癌である。本開示の特定の実施形態では、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)である。
癌にはまた、他の化学療法剤を用いた治療に抵抗性のある癌も含まれる。本明細書において使用される場合、用語「難治性」は、別の化学療法剤を用いた治療後に、抗増殖反応を示さないか、または弱い反応のみ(例えば、腫瘍成長の阻害がないか、または弱い阻害のみ)を示す癌(および/またはその転移)を指す。これらは、他の化学療法剤では満足に治療することができない癌である。難治性癌は、(i)一つまたは複数の化学療法剤が患者の治療中にすでに失敗している癌だけでなく、(ii)化学療法剤の存在下で、生検および培養などの他の手段によって難治性であることが示され得る癌も包含する。
本明細書に記載される療法は、以前に治療されていないそれを必要とする患者の治療にも適用可能である。
本開示による対象は、典型的には、癌と診断されたか、または癌を発症するリスクがある、それを必要とする患者である。対象は、典型的には、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、または腫瘍特異的免疫反応が望まれる任意の動物である。
本開示はまた、ネオアンチゲンペプチド、APCの集団、ワクチンまたは免疫原性組成物、対象の癌ワクチン接種療法における使用のために以前に定義されたネオアンチゲンペプチドまたはベクターをコードするポリヌクレオチド、または対象の癌を治療するためのポリヌクレオチドにも関連し、ペプチドは、該対象の少なくとも一つのMHC分子に結合する。
本開示はまた、対象を治療するための治療有効量で該対象に本明細書に記載されるワクチンまたは免疫原性組成物を投与することを含む、対象において癌を治療するための方法を提供する。方法は、癌を有する対象を特定するステップを追加的に含んでもよい。
本開示はまた、本明細書に記載される方法によって抗体またはその抗原結合断片を産生すること、および該抗体またはその抗原結合断片を、癌を有する、または該抗体もしくはその抗原結合断片を発現する免疫細胞有する対象に、該対象を治療するために治療有効量で投与することを含む、癌を治療する方法に関する。
本開示はまた、対象の癌治療における使用のために、任意選択的にMHCまたはHLA分子と関連して、本明細書に記載される腫瘍ネオアンチゲンペプチドに対して向けられる抗体(そのバリアントおよび誘導体を含む)、T細胞受容体(TCR)(そのバリアントおよびその誘導体を含む)、またはCAR(バリアントおよびその誘導体を含む)に関し、腫瘍ネオアンチゲンペプチドは、該対象の少なくとも一つのMHC分子に結合する。
本開示はまた、対象の養子細胞またはCAR-T細胞治療における使用のために、任意選択的にMHCもしくはHLA分子、または以前に定義されたネオアンチゲンペプチドを標的とする免疫細胞と関連して、本明細書に記載される腫瘍ネオアンチゲンペプチドに対して向けられる抗体(そのバリアントおよび誘導体を含む)、T細胞受容体(TCR)(そのバリアントおよびその誘導体を含む)、またはCAR(バリアントおよびその誘導体を含む)に関し、腫瘍ネオアンチゲンペプチドは、該対象の少なくとも一つのMHC分子に結合する。
典型的には、当業者は、癌細胞療法で使用する免疫細胞をリダイレクトするために以前に定義されたような腫瘍ネオアンチゲンペプチドを結合して認識する適切な抗原受容体を選択することができる。特定の実施形態では、本開示の方法で使用するための免疫細胞は、リダイレクトされたT細胞、例えば、リダイレクトされたCD8+および/またはCD4+ T細胞である。
いくつかの実施形態では、上述の癌治療、ワクチン接種療法、および/または養子細胞癌療法は、追加の癌療法と組み合わせて投与される。特に、本開示によるT細胞組成物は、チェックポイント遮断療法、共刺激抗体、化学療法および/または放射線療法、標的療法、またはモノクローナル抗体療法と組み合わせて投与されてもよい。
チェックポイント阻害剤には、限定されるものではないが、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、Lag-3阻害剤、Tim-3阻害剤、TIGIT阻害剤、BTLA阻害剤、T細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)阻害剤およびCTLA-4阻害剤、IDO阻害剤などが含まれる。共刺激抗体は、ICOS、CD137、CD27 OX-40、およびGITRを含むがこれに限定されない免疫調節性受容体を介して陽性シグナルを送達する。好ましい実施形態では、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4阻害剤である。
本明細書で使用される化学療法実体は、細胞に対して破壊的である実体、すなわち細胞の生存率を低下させる実体を指す。化学療法実体は、細胞障害性薬物であってもよい。企図される化学療法剤には、限定されるものではないが、アルキル化剤、アントラサイクリン、エポチロン、ニトロソウレア、エチレンイミン/メチルメラミン、アルキルスルホン酸塩、アルキル化剤、代謝拮抗薬、ピリミジン類似体、エピポドフィロトキシン、L-アスパラギナーゼなどの酵素;生物学的応答修飾物質、例えばIFNa、IL-2、G-CSFおよびGM-CSF;シスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチン、アントラセンジオン、置換尿素、例えばヒドロキシウレア、N-メチルヒドラジン(MIH)およびプロカルバジンを含むメチルヒドラジン誘導体、ミトタンなどの副腎皮質抑制剤(ο,ρ’-DDD)およびアミノグルテチミド;プレドニゾンおよび等価物などの副腎皮質ステロイド拮抗薬を含むホルモンおよび拮抗薬、デキサメタゾンおよびアミノグルテチミド;プロゲスチン、例えばヒドロキシプロゲステロンカプロエート、酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロール;エストロゲン、例えばジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール等価物;抗エストロゲン、例えばタモキシフェン;プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン/等価物を含むアンドロゲン;抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体およびロイプロリド;および非ステロイド性抗アンドロゲン剤、例えばフルタミドなどが挙げられる。
「組み合わせて」は、本開示によるT細胞組成物の投与の前、投与時、または投与後の追加的療法の投与を指す場合がある。
チェックポイント遮断との組み合わせに加えて、またはその代替として、本開示のT細胞組成物は、TALENおよびCrispr/Casを含むがこれらに限定されない遺伝子編集技術を使用して、免疫チェックポイントに対して耐性となるように遺伝子改変されてもよい。かかる方法は当該技術分野で公知であり、例えば、US20140120622を参照のこと。遺伝子編集技術は、限定されるものではないが、PD-1、Lag-3、Tim-3、TIGIT、BTLA CTLA-4、およびこれらの組み合わせを含む、T細胞によって発現される免疫チェックポイントの発現を防止するために使用され得る。本明細書で論じるT細胞は、これらの方法のいずれかによって改変されてもよい。
本開示によるT細胞はまた、腫瘍へのホーミングを増加させる分子を発現するように、および/またはサイトカイン、可溶性免疫調節受容体および/またはリガンドを含むがこれらに限定されない腫瘍微小環境内に炎症性メディエーターを送達するように、遺伝子改変されてもよい。
特定の実施形態では、該腫瘍ネオアンチゲンペプチドは、免疫チェックポイント療法などの別の免疫療法と組み合わせて、より具体的には抗-PD1抗体、抗-PDL1抗体、抗-CTLA-4抗体、抗-TIM-3抗体、抗-LAG3抗体、抗-GITR抗体と組み合わせて、癌ワクチン接種療法で使用される。
1.実施例1:腫瘍ネオアンチゲンペプチドをコードする融合転写物配列の特定
1.1 マウスにおける概念実証
融合転写物配列から発せられた個々の共有腫瘍ネオアンチゲンペプチドを検出するために、バイオインフォマティクスパイプラインが開発されている。このパイプラインは、TE配列の一部およびエキソン配列の一部で構成された腫瘍特異的mRNA配列を特定するよう設計される。このパイプラインは、MHC対立遺伝子を決定することを意味する。各ヒト試料について、クラスIおよびクラスIIのMHC対立遺伝子は、seq2hla(v2.2)ツール(bitbucket.org/sebastian_boegel/seq2hla)を使用して決定することができる。マウスモデルの場合、マウスH-2対立遺伝子は一般に知られている。バイオインフォマティクス法は、参照ゲノムに対するRNA配列決定からの転写物のマッピングを含む。ここで説明した概念実証分析については、マウスにmm10、ヒトにhg19を使用した。組み立てられたゲノムの異なるバージョンを、例えば、hg19、hg38、mm9、またはmm10などに用いることができる。このマッピングは、STAR(v2.5.3a)(github.com/alexdobin/STAR)を用いて以下の設定で実行される:
- 遺伝子座の最大数を設定するパラメータoutFilterMultimapNmaxのマルチヒットマッピングを可能にするために、リードがマッピングできるようにし、1000に設定し、
- 異常な接合部(融合)を検出するために、融合セグメントの最小長さを設定するパラメータchimSegmentMinを10に設定し、融合接合部の最小オーバーハングを設定するパラメータchimJunctionOverhangMinを10に設定する。
正常(SJ.out.tab出力ファイルから)および異常(Chimeric.out.junction出力ファイルから)の接合部は、Ensemblおよびrepeatmaskerデータベースを使用して注釈付けされる。正常な接合部は、マッピングに使用されるパラメータ(最大イントロン長さ<=1,000,000bp(--alignIntronMaxにより設定)、同じ染色体およびウェル配向)に合致する全ての接合部を定義し、異常な接合部は、前の基準の少なくとも一つと合致しない接合部である。これは、TE/エキソン接合部は両方の接合部型であってもよいが、エキソン/エキソン接合部は標準ファイル(SJ.out.tab)でなければならないことを意味する。TE配列とエキソン配列との間の接合部を含む転写物配列は、インシリコで抽出される。転写物配列のうち接合部と重複する領域、またはフレームから外れた場合は接合部の下流(リーディングフレーム非標準)から、ソフトウェアは、全てのリーディングフレームにおいて、8または9merの全ての可能性のあるペプチドを予測する。次いで、一致した試料に対して以前に定義されたMHC対立遺伝子に対するこれら全ての可能性のあるペプチドの結合親和性を、netMHCpan(v3.4)(cbs.dtu.dk/services/NetMHCpan/)で決定した。現在、ペプチドの結合親和性を予測するための十数種類の様々な予測アルゴリズムが存在しており、NetMHCはネオアンチゲン予測パイプラインに最も広く使用され、検証されたアルゴリズムである。
500nM未満またはパーセンタイルランク2%未満のペプチドは、潜在的なネオアンチゲンとみなされる。各スプライス部位(ドナーまたはアクセプター)は、TEまたはエキソンとして一意に注釈付けされる。5’末端の一部は、「ドナー」に認定されており、3’末端の一部は、「アクセプター」に認定されている。
癌と正常組織の間で共有される予測されるHLA結合ペプチドは、さらなる解析から除外される。
この方法は、7つのよく特徴付けられたマウス腫瘍細胞株(B16F10、B16F10-OVA、MCA101、MCA101-OVA、MC38、MC38-GFP、MC38-GFP-OVA)から得られたRNAseqデータに適用されている。伸長-OVAを有する細胞株は、同じモデルに対応するが、オバルブミンをさらに発現する。この研究では、この系統は類似のモデルとみなされ、例えば、B16F10-OVAからの細胞株上で実施されたアッセイは、B16F10からの細胞株上で実施されたアッセイの繰り返しとみなされる。
これらのパラメータ(図1A、1Bおよび1C)を用いて候補ペプチドのリストを取得しており、いくつかは特定の細胞株に特異的であり(図1Aおよび1B)、いくつかは二つの腫瘍細胞株間で共有されていた(図1C)。
検証のために、我々は、B16F10-OVAまたはMCA101-OVAのいずれかで発現され、予測親和性が500nM未満であるペプチドの範囲を選択した。ペプチドは、読み取り数とMHC-Iに対する予測される親和性との間の比を最適化しようと選択された。
四つの予測される腫瘍ネオアンチゲンペプチドを選択し、TEおよびエキソン配列を特定することによって特徴付けた(表3)。
1.2 融合転写物配列のRT-PCRによる検証
第一に、通常のRT-PCRによる検証が、TE配列の一方のプライマーとエキソン配列の他方のプライマーとのプライマー対を使用して実施されてきた。
RNA抽出および逆転写のために、3~5.106の細胞を500μLのトリゾール中で溶解し、遠心分離前に100μLのフェノール-クロロホルムを可溶化液に添加した。水性相を収集し、100%EtOHと1:1の比率で混合し、RNAeasy minikitカラムに移した。その後、製造業者の指示に従ってRNAを回収した(カラムDNAse処理を含む)。RNA溶出後、製造業者の指示に従って、Turbo DNAse(Fisher scientific)で処理することにより、DNA汚染物をさらに除去した)。RNA濃度をナノドロップを使用して測定し、1μgのRNAを逆転写に使用した。製造業者の指示に従って、プライマーとしてoligodT(15)を使用して、Superscript III(Life technologies)で、第一鎖合成を実施した。プライマーをEurogentecから注文した。Taqポリメラーゼを使用してPCR反応を実施した。各反応の最適条件を特定した後、PCR産物をアガロースゲルから抽出し、GATC lightrunを使用して配列決定を行った。配列アライメントをAPEソフトウェアで確認した。
このアプローチを使用して、N25、N26、N90、およびN94の予測サイズに合致するバンドが、表1で識別された細胞株でそれぞれ検出された(N25については図2Aを参照)。興味深いことに、N26は、パイプラインで前述したようにRNAseqによってインシリコでMCAおよびMC38細胞でのみ検出されたが、RT-PCRを使用して、B16F10-OVA細胞中のN26に対応するバンドを検出し(図2B)、この配列が三つの独立した腫瘍細胞株(MCA、MC38およびB16F10)間で共有されていることを示した。RNAseqデータを再分析することによって、N26接合部がB16F10-OVA細胞に存在するが、アルゴリズムの検出閾値未満であることを発見した。さらに、RT-PCR産物の配列決定は、アルゴリズムによって予測される配列と完全一致を示した。
1.3 マウスのインビボ免疫
これらの候補をインビボで検証するために、MHCクラスI配列に結合するネオアンチゲンペプチドに対応する短い(9-mer)ペプチドを合成した。インビボアッセイでは、9merの予測されるMHC結合の短いペプチドの隣接領域を含む長い(27-mer)ペプチドを合成した。これは、この長さがインビボ免疫により適しているためである。B16F10 OVAおよびMCA101-OVAは、RPMI、Glutamax、10%FCS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン中で維持され、TrypLEを使用して継代された。細胞を、最大一か月間培養物中で保持し、各インビボ実験について新しいバイアルを解凍した。C57BL6Jレシピエントマウスを、100μgのロングペプチド(N25LまたはN26L)、SIINFEKLペプチド(ショートOVAペプチド)、OVA(シグマ)またはDMSOで、それぞれ50μgのポリI:Cと共に、脇腹に皮下注射することによって免疫した。一次免疫の7日後、免疫が繰り返された。3日後(一次免疫の10日後)、動物を犠牲にし、鼠径リンパ節中のペプチド特異的IFNg分泌CD8 T細胞の数をELISPOTによって検出した(図3A)。ショートペプチド(N25、N26、またはSIINFEKL)またはDMSOを10μg.mL-1で使用して、T細胞を再刺激した。あるいは、二次免疫の7日後、動物に、PBS中、2.5.105のB16F10-OVAまたは5.105のMCA-OVA細胞を皮下注射した。我々は、N25、およびより少ない程度でN26が免疫反応を誘導できることを発見した(図3B)。
1.4 腫瘍を有するマウスのインビボ治療
これらのペプチドが腫瘍細胞に対して保護的かどうかを検証するために、C57BL6マウスを、100mgのペプチドN25LもしくはN26L、またはOVA(対照ペプチド)、およびPBS中の50μgのポリI:Cで、d0およびd7に免疫し、d14に、OVA、N25L、およびN26Lで免疫されたマウスに2.5.105のB16F10-OVA細胞を注射した。B16F10 OVAおよびMCA101-OVAは、RPMI、Glutamax、10%FCS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン中で維持され、TrypLEを使用して継代された。細胞を、最大一か月間培養物中で保持し、各インビボ実験について新しいバイアルを解凍した。C57BL6Jレシピエントマウスを、100μgのロングペプチド(N25LまたはN26L)、OVA(シグマ)またはDMSOで、それぞれ50μgのポリI:Cと共に、脇腹に皮下注射することによって免疫した。免疫を一次免疫の7日後に繰り返した。
ショートペプチド(N25、N26、またはSIINFEKL)またはDMSOを10μg.mL-1で使用して、T細胞を再刺激した。あるいは、二次免疫の7日後、動物に、PBS中、2.5.105のB16F10-OVAまたは5.105のMCA-OVA細胞を皮下注射した。腫瘍サイズは、手動キャリパーを使用して週に二回測定され、実験期間を通して動物の健康状態をモニターした(図4Aおよび4B)。腫瘍体積が1mm3に達したときに、動物を犠牲にした。驚くべきことに、N25Lは、OVAよりも効率的な方法で、B16OVA腫瘍の形成を有意に遅延させることが観察された。さらに、N26L免疫でも同様の結果を得た。
実施例2:TE要素とエキソン配列から構成される融合転写物に由来するヒト肺腺癌(LUAD)ネオアンチゲンペプチドの特定
2.1 材料および方法
RNA抽出。腫瘍試料および近傍腫瘍試料を、#1mm3の断片に切断し、1%のβ-メルカプトエタノールを補充した700μlのRTL溶解緩衝液(Quiagen)に再懸濁し、Perecellys 24 Tissue Homogenizer(Bertin Technogies)を使用してホモジナイズした。製造業者の指示に従って、RNeasy Micro Kit(Qiagen)を使用して全RNA単離を行った。腫瘍細胞株からの総RNAを、同じ手順を用いて5.106の腫瘍細胞株から抽出した。
PCRおよび配列決定。プライマーは、APEソフトウェアを使用して設計した。各試料について、提供者が指示するように、SuperScript III 逆転写酵素(ThermoFisher)を使用して、1μgのRNAをcDNAに逆転写した。PCR反応を、GoTaq G2 Hot Start Polymarase(Promega)を使用して行った。すべてのプライマーを、0.5μmの濃度で使用した。反応をVeriti(商標)96-ウェルサーマルサイクラー(ThermoFisher)で実施した。PCR産物をLabChip GX(Caliper LifeSciences)にロードし、LabChip GX ソフトウェア(v4.2)により分析した。
予想されるサイズの増幅産物を含むこれらの試料について、PCR反応を繰り返した。次いで、PCR産物を2%アガロースゲルSYBR Free Dye(1/10000)(Invitrogen)で泳動した。特定のバンドを切断し、製造業者の指示に従ってQIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を使用してDNA産物を精製した。最後に、これらの産物をEuroFins Scientificにより配列決定した。得られた配列を、Serial Clonerソフトウェアを使用して予想されたものと比較した。
四量体形成。HLA-A2モノマーをImmunAware(登録商標)から購入し、四量体の形成を、合成ER由来ペプチドを用いて製造業者の指示に従って評価した。簡潔に述べると、合成HLA-A2モノマーを、48時間、18℃で合成ペプチドとインキュベートした。四量体形成は、ビオチン化セファロースでモノマーをさらにインキュベーションすることによって行われた。最後に、四量体形成を、PEコンジュゲート抗-β2ミクログロブリン抗体を使用してフローサイトメトリーにより測定した。陽性対照として、製造業者から提供されたCMV由来のペプチドを使用した。
特定のCD8+T細胞の存在を評価するための実験では、モノマーを蛍光ストレプトアビジンの異なる組み合わせ(PE、APC、PE-Cy5、PE-CF594、BV421、BV711およびFITC)でインキュベートすることによって、四量体化工程を実施した。
ナイーブCTLのプライミング。PBMCは、HLA-A2+健康な血液ドナーからのFicoll勾配分離によって得られた。CD14+、CD4+、およびCD8+細胞を、磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)を使用してポジティブ選択により精製した。CD4+T細胞およびCD8+T細胞を実験日まで凍結保存したが、CD14+画分を、IL-4(50ng/mL)およびGM-CSF(10ng/mL)の存在下で106細胞/mLで5日間培養し、moDCを得た。この期間の後、moDCをLPSで成熟させ、最終濃度1μg/mLで2時間、合成ER由来ペプチドと共にインキュベートした。最後に、IL-2(10U/ml)およびIL-7(100ng/ml)で補充された培養培地中で、自己CD4+およびCD8+T細胞とペプチドをロードしたmoDCを共培養した。特定のCD8+CTL集団のER由来ペプチド刺激を、各ペプチドに二色四量体の組み合わせを使用したフローサイトメトリーによるMHC-I四量体染色により評価した。
四量体染色。細胞をPBS中に再懸濁し、Live/Dead Aqua-405nm(ThermoFisher)で20分間、4℃で染色し、一回洗浄した。その後、細胞をSA共役四量体の混合物を含有するPBS-1%BSAに再懸濁し、暗所で、室温で20分間インキュベートした。さらなる洗浄を行うことなく、表面抗体をPBS-1%BSAに添加し、細胞を暗所で4℃で20分間インキュベートした。表面抗体は、必要に応じて、抗-CD3-BV650+抗-CD8-PECy7と、抗-CCR7-AF700+抗-CD45RA-BUV395との組合せであった。最後に、細胞を二回洗浄し、フローサイトメトリー分析のためにFACS緩衝液中に再懸濁した。
CTL-クローン生成。四量体陽性細胞を、U底96ウェルプレートで単一細胞FACSソーティング(ARIAソーター、BD)した。ソーティングされた細胞を、150.000個のフィーダー細胞を含有する、100μLのRPMI 10%ヒト血清AB(Sigma-Aldrich)に収集した。最後に、IL-2(3000IU/ml)および抗-CD3(100μg/ml、MiltenyiのOKT3クローン)を含有する100μLのAIM培地を添加し、細胞を最大15~20日間培養した。明らかな細胞増殖がウェルで観察された場合、二回目の増殖を新しいフィーダーの細胞を用いて、さらに最長15日間行う。細胞は、この期間中に必要に応じて、同じ培養培地(AIM-RPMI 50/50 + 5%ヒト血清)だがIL-2を500 IU/mlで含有する培地で、供給および分割された。最後に、増殖クローンの特異性についてFAC-四量体染色でチェックし、四量体陽性クローンのうち85%を超えるクローンのみをさらに分析するために使用した。
殺傷アッセイ。殺傷アッセイを実施するために、xCELLigence RTCA S16 Real Time Cell Analyzerを使用した。H1650細胞株を、予めコーティングされた16ウェルプレート中に0,5×106細胞/mlで播種した。一日後、細胞は、異なる濃度の対応する合成ペプチドと共に1時間インキュベートされたか、されなかったかであった。その後、細胞を培地で二回洗浄し、同濃度の抗MHC-I抗体(クローンW6/32、50μg/ウェル)またはアイソタイプ対照と共にさらに30分間インキュベートしたか、しなかったかであった。追加の洗浄なしに、CTL-クローンを、対応する比率で添加した。完全なアッセイを、xCELLigenceシステムに接続した最終容量200の無血清培地で37℃で行った。インピーダンス変動(細胞指数)を、40時間中リアルタイムで測定した。各条件は、重複して実施した。
サイトカイン分泌とジャーカット細胞の活性化。50.000個のH1650細胞を、5%のウシ胎児血清を補充した培地の96ウェルプレートに播種した。翌日、細胞を異なる最終濃度の合成ペプチドで1~2時間培養した。その後、細胞を二回洗浄し、CTLクローンを1:1の比率で添加し、ペプチドをロードした標的細胞と18時間共培養した。培養上清を収集し、製造業者の指示に従ってサイトカインビーズアレイ(CBA、BD Biosciences)によりサイトカイン濃度を分析した。
同じ実験を、CTL-クローンおよび二つの異なるタイプの標的細胞:H1650およびH1395細胞株の代わりに形質導入されたジャーカット細胞を使用して実施した。このアッセイでは、ペプチドをロードした標的細胞と共培養した後、ジャーカット細胞を、レポーターマーカーの発現を分析するフローサイトメトリーによって評価した。PMA/イオノマイシンを陽性対照ルとして使用して、ジャーカット細胞を活性化した。
組織および血液試料。肺腫瘍、近傍腫瘍、およびリンパ節試料を小片に切断し、コラゲナーゼ-I(2mg/ml)、ヒアルロニダーゼ(2mg/ml)、およびDNasa(25μg/ml)の混合物を使用して、最終容積の2mlの培地(CO2独立培地+5)中で、40分間、37℃で消化した。消化後、単一細胞懸濁液を、細胞ストレーナーを介して収集し、洗浄した。腫瘍および近傍腫瘍懸濁液は、フィコール勾配によってリンパ球画分で濃縮された。その後、細胞は、前述したようにFACによる四量体分析のために染色された。
血液試料を、フィコール勾配上に播種し、PBMCを単離した。その後、EasyStepヒトCD8+ T細胞濃縮キット(STEMCELL Technologies)を使用して、PBMCをCD8+ T細胞用に濃縮した。最後に、濃縮細胞を、前述したように四量体分析のために染色した。
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)培養。腫瘍組織を小片に切断した(1~3mm3のサイズ、最大6~12個)。各腫瘍断片を、24ウェルプレートから個々のウェルに移し、2mlのRPMI 10%ヒト血清+IL-2 6000 IU/mlの最終容積で培養した。細胞は、必要に応じて15~20日間にわたって供給/分割され、四量体染色用に凍結保存または分析された。
TCRクローニング。全RNAをCTL-クローンから抽出し、SuperScript III(ThermoFisher)を使用してcDNAに逆転写した。Li et al 2019に記載されるように、TCRαおよびβをPCRにより増幅した。DNA産物を2%アガロースゲルで泳動し、ゲルバンド抽出(Qiagen)後に配列決定した。TCR V領域(αおよびβ)を、マウスTCR定常鎖と連結し、PEW-pEF1A-inactEGFPベクターにクローニングし、形質転換細菌で増幅した。
ジャーカット形質導入。レンチウイルス粒子は、エンベロープ(pVSVG)プラスミドおよびパッケージング(psPAX2)プラスミドと共に、TCR発現プラスミドでトランスフェクトされたHEK-293FT細胞株によって産生された。64時間後、上清を収集し、レンチウイルス粒子を、100kDa遠心フィルター(Sigma-Aldrich)を使用して濃縮した。レンチウイルス懸濁液を、レポーター遺伝子(NFAT-GPF、NF-KB-CFP、およびAP-1-mCherry)を発現するTCR陰性ジャーカット細胞に、スピノキュレーションによって移した。5日後、遺伝子導入効率を、抗マウスTCR-β抗体(クローンH57-597)を使用してFACSによって評価した。このジャーカット細胞は、Rosskopf S.et al.2018に記載されている。
質量分析データ解析。MHC溶出ペプチドに由来する公開免疫ペプチドミクスの生データを、ProteomeDiscoverer 1.4(ThermoFisher)を用いて、以下のパラメータで分析した:酵素なし、ペプチド長8~15aa、前駆体質量公差20ppm、および断片質量公差0.02Da。変数変更としてメチオニンを有効にし、1%の偽発見率(FDR)を適用した。MS/MSスペクトルを、肺TCGAプロジェクトからの全ての融合転写物由来タンパク質のリストと連結されたUniprot/SwissProt(更新06.03.2020)からのヒトプロテオームに対して検索した。最後に、Uniprotデータベースと合致するペプチド、または肺正常試料中に存在する翻訳融合転写物と合致するペプチドを廃棄した。
2.2 結果:ヒト対象における腫瘍ネオアンチゲンペプチドをコードする融合転写物配列の特定
2.2.1 ネオアンチゲンの特徴付け
まず、TCGA公開データベースからの通常の試料において、TE-エキソン融合転写物ランドスケープを特徴付けた。19の異なる組織(胆管、膀胱、脳、乳房、子宮頸部、結腸、頭頸部、腎臓、肝臓、膵臓、PCPG、前立腺、直腸、肉腫、皮膚、胸腺、甲状腺、子宮)からの679の正常試料において、合計8876の固有の融合物が特定された。各組織型への特異的融合は、汎組織融合転写物のごく一部で見出された。これらの結果は、専用の組織特異的調節機構がこれらの融合転写物と関連していることを示唆する。
次いで、TCGAからの514のLUAD試料で特定された融合の数を、TCGAに存在する59の正常な関連肺試料と比較した。健康な肺試料の200と比較して、NSCLC試料では平均で235の融合が同定された(Wilcoxon pvalue=9×10.-10)。合計8269の固有融合がNSCLC腫瘍で同定された。
TSF(腫瘍特異的融合)と呼ばれる第一のカテゴリーは、腫瘍試料の少なくとも1%で見られ、正常試料ではまったく見られない融合として得た。したがって、210の融合をTSFとして定義した。
腫瘍では高頻度、正常細胞では低頻度の融合転写物もまた、ネオアンチゲンの良好な候補であり得る。したがって、TAF(腫瘍関連融合)と呼ばれる第二のカテゴリーは、正常組織の4%未満、特に2%未満、および10%超の腫瘍に存在し、正常な組織試料と比較して腫瘍で過剰発現される融合として、特に定義された。
表3および4(以下を参照)は、エキソンまたはTEのどちらがドナーであるかによる融合を記述する。最初の列は、NSCLCコホートにおける融合の頻度を示す。ドナーとアクセプターの列は、各要素の種類を紹介する。「ドナー」で始まるすべての列(それぞれ「アクセプター」)は、ドナー(それぞれアクセプター)に関する情報である。融合の配列は、以下のように取り出すことができる:
- ドナー配列:鎖「ドナー_鎖_X」の「ドナー_スタート_X」から「ドナー_ブレークポイント_X」の染色体「ドナー_染色体_X」上
- アクセプター配列:鎖「ドナー_鎖_X」の「アクセプター_エンド_X」から「アクセプター_ブレークポイント_X」の染色体「アクセプター_染色体_X」上
融合がマイナス鎖上に存在する場合、配列の逆相補体を取るように注意すべきである。
融合配列:
- 融合ヌクレオチド配列を再構築するために、鎖「ドナー_鎖_X」の「ドナー_スタート_X」から「ドナー_ブレークポイント_X」の染色体「ドナー_染色体_X」上のドナーの配列と、鎖「アクセプター_鎖_X」の「アクセプター_ブレークポイント_X」から「アクセプター_エンド_X」の染色体「アクセプター_染色体_X」上のアクセプター配列とを、Ensembl HG19ヒトアセンブリデータベースから抽出した。Ensembl HG19ヒトデータベースの使用は制限的ではなく、NCBI参照配列データベース(RefSeq)などの他の適合データベースも使用され得ることに留意されたい。
- 融合がマイナス鎖上に存在する場合、配列の逆相補体を取るように注意すべきである。
- 「融合配列」は、ドナー配列に続いてアクセプター配列からなる。
融合転写物のヌクレオチド配列:
エキソンが関与する公知の標準転写物に基づいて、全ての「融合転写物」を再構築した。
ドナーがエキソンの場合(図9Aを参照)
・ それはドナーエキソンへの標準転写物の開始から始まり、完全な標準エキソン配列を融合配列に置換する。この場合、融合転写物は、アクセプターのTE配列の後に停止する。
ドナーがTEの場合(図9B)
・ 配列は転写物中のアクセプターエキソンの標準位置で始まり、上流のすべてのエキソンを忘れる。アクセプターエキソンの標準配列を融合配列で置換し、転写物を最後まで再構成した。
次いで、融合転写物のサイズk(すなわち、24~75ヌクレオチド)の各ヌクレオチド配列(第一のk-merの翻訳は、融合転写物の第一のヌクレオチドで始まり、第二のk-merの翻訳は、融合転写物の第二のヌクレオチドで始まる、など)をペプチド配列に翻訳した。
次いで、得られたペプチドを、MHC結合予測のためにNetMHCpanを用いてさらに分析する。したがって、公知のヒト対立遺伝子の少なくとも一つに結合する親和性が、配列中に存在する各k-merについて予測された(さらなる説明については実施例1も参照されたい)。
表3.ドナーがエキソンである融合配列の座標。列名は以下のとおりである。
1.LUADコホートにおける頻度
2.ドナー染色体エキソン
3.ドナースタートエキソン
4.ドナーブレークポイントエキソン
5.ドナー鎖エキソン
6.ドナー転写物(すなわち、ドナー_tx_ネーム_エキソン)
7.アクセプター染色体TE
8.アクセプターブレークポイントTE
9.アクセプターエンドTE
10.アクセプター鎖TE
11.融合の種類
表3の融合転写物配列は、同一の順序で配列番号118~431に対応する(典型的には、1行目は配列番号118であり、2行目は配列番号119であり、3行目は配列番号120および121に対応する。これは、2つのドナー転写物(第6列目に示されるように、それぞれENST00000296474およびENST00000344206)などのためである)。
表4.ドナーがTEである融合配列の座標。列名は以下のとおりである。
1.LUADコホートにおける頻度
2.ドナー染色体TE
3.ドナースタートTE
4.ドナーブレークポイントTE
5.ドナー鎖TE
6.アクセプター染色体エキソン
7.アクセプターブレークポイントエキソン
8.アクセプターエンドエキソン
9.アクセプター鎖エキソン
10.アクセプター転写物
11.融合の種類
表4の融合転写物配列は、同一の順序で配列番号:432~910(上記表3と同じ理由付けで)に対応する。
次いで、ペプチドを、参照プロテオームに対して、典型的には、ヒト対象の場合はUniprotに存在する全ての配列(ヒトエキソームにコードされる全ての配列を表す)に対して、さらにスクリーニングした。ペプチドは、同じアミノ酸配列を有する場合、または最初もしくは最後の位置でアミノ酸のみが異なる場合、Uniprotのペプチドと同等であるとみなされた。次いで、これらの等しい配列はすべて候補リストから破棄した。したがって、HLA-A2に結合すると予測されるこれら230の融合転写物に由来する117のペプチド配列:01(以下の表5を参照)。
2.2.2 HLA-A2関連ペプチドの検証
HLA-A2対立遺伝子が白人集団のほぼ50%で発現されていることを考えると、異なる技術ツールの存在と共に、検証はHLA-A2-関連ペプチドに焦点を当てた。
以下の段落では、TE-エキソン由来転写物は「融合転写物」と互換的に使用され、「TE由来ペプチド」という用語は「融合転写物由来ペプチド」と互換的に使用される。
肺腺癌試料におけるTE-エキソン由来転写物の発現
予測されるTE-エキソン転写物を実験的に検証するために、LUAD腫瘍試料および腫瘍細胞株におけるPCRによる発現を最初に検証した。したがって、各キメラ融合に対する特定のプライマーを、それらのうちの一方を融合のTE部分に結合させ、他方を融合のエキソン部分に結合させるように設計した。結果を、PCR産物の配列決定によってさらに確認した。
特に、特定のプライマーを、フォワードプライマーが再構成された融合配列の「ドナー」配列で結合し、リバースプライマーが再構成された融合配列の「アクセプター」配列で結合するように設計した。PCR反応を、肺腫瘍試料およびヒト腫瘍細胞株に由来するRNAで実行した。増幅産物をアガロースゲル上に播種し、予想されるサイズで発見されたバンドを切断し、配列決定した。最後に、配列決定されたPCR産物を、再構成された融合配列と比較した。
このアプローチを使用して、LUAD腫瘍試料および腫瘍細胞株の両方において、予測される融合転写物の存在を確認することができた。以下の表6は、HLA-A2対立遺伝子に高親和性で結合すると予測されるペプチドを有するキメラ融合のうち、最も頻度の高いの8つについて得られた結果をまとめたものである。
表6:最も頻度の高い融合転写物の検証。最も頻度の高い融合ペプチドは、15のLUAD腫瘍試料および6のLUAD腫瘍細胞株においてPCRにより検証された。以下の表のステータス「有」または「無」は、予想されるサイズでのPCR産物の有無を示す。PCR産物が配列決定によってさらに検証された場合、「有」と示される。
HLA-A2分子へのER由来ペプチドの結合
キメラ転写物の発現が確認されたら、誘導ペプチドを合成し、HLA-A2へのそれらの結合を確認した。モノマーの安定化および四量体形成は、高親和性結合ペプチドの存在下でのみ可能であるため、HLA-A2四量体の形成は、合成ペプチドの存在下でフローサイトメトリーにより推定された。予測されたすべてのペプチドは、陽性対照と比較して50%を超える蛍光の割合を示し、四量体形成を安定化させることができた。陽性対照として、サイトメガロウイルス(CMV)由来のHLA-A2に対する公知の高親和性結合ペプチドを使用した。この結果は、HLA-A2対立遺伝子への予測される高親和性結合を確認した。図10は、最も頻度の高い融合ペプチドに由来する10個のペプチドの結果を示す。
ER由来ペプチドの免疫原性
HLA-A2対立遺伝子への結合検証後の次の工程は、予測されるペプチドの免疫原性を試験することであった。したがってプライミングアッセイを実施して、特定の細胞傷害性T細胞を増殖させる同定されたペプチドの能力を検証した。HLA-A2+の健康なドナーからのPBMCを使用して、単球由来-DC(moDC)を生成した。合成ペプチドの混合物をmoDCにロードした後、自己共培養をCD4+およびCD8+ T細胞で行った。最後に、特異的なCD8+T細胞の増殖を、二色の四量体染色を使用したフローサイトメトリーにより分析した。特異的増殖の対照として、ペプチドの非存在下で共培養を行った。このアプローチを一人のドナーに使用することで、最も頻度の高いキメラ融合由来ペプチドの6種類を認識する特異的なCD8+ T細胞を同定し、増殖することが可能となった(RLLHLESFL、LLGETKVYV、AILPKANTV、RLADHLSFC、FLIVAEILI、YLWTFFPL)。この結果は、全CD8+T細胞の対照試験と比較して、四量体陽性細胞の割合が少なくとも一桁増加することによって示される。
追加の5人のドナーにおける応答を評価するために、同じ実験を実施した。図11Aは、分析した合計6人のドナーについて得られた結果をまとめたもので、最も頻度の高い融合転写物由来ペプチドのうち21種類に対して特異的なCD8+T増殖が見られた(YLWTTFFPL、FLGTRVTRV、RLADHLSFC、LLGETKVYV、MLVTWELAL、MLMKTVWQA、SLMQSGSPV、AILPKANTV、AMDGKELSL、LLDRFGYHV、GLLNISHTA、ILTASITSI、ILSGYGPCV、RQAPGFHHA、GLPSHVELA、ILHSLVTGV、LLHLESFLV、VLLTNTIWL、LLTSWHLYL)。これらの実験は、これらのペプチドが免疫反応を誘導できることを示し、ER由来ペプチドの免疫原性を確認する。
ER由来ペプチドを認識する細胞傷害性Tリンパ球クローンの生成
免疫原性アッセイからの増殖CD8+四量体陽性T細胞(図11A)を、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)クローンを生成するために単一細胞FACSソーティングした。5種類の異なるER由来ペプチドを認識する10個のクローンを作製した:YLWTTFFPL、LLGETKVYV、MLVTWELAL、MLMKTVWQA、RLADHLSF。これらのペプチドは、それぞれ、ペプチド9、86、53、80および64として表5に列挙される。これらの数字を参照して、生成された各CTL-クローンの特異性を示す。例として、CTL-クローン9は、ER由来ペプチド9を認識する。
生成されたCTL-クローンの細胞傷害能力を評価するために、H1650細胞株を標的細胞として使用して、二つの異なる機能的アッセイを実施した。これは、HLA-A2対立遺伝子を発現するLUAD由来腫瘍細胞株である。
第一に、ER由来ペプチドへの曝露後にサイトカインを分泌するCTL-クローンの能力を測定する。CTL-クローンを特定のER由来ペプチドをロードした標的細胞と18時間共培養した後、培養上清中のINF-γ、TNF、およびグランザイム-B(Gr-B)の分泌を測定した。すべてのCTL-クローンは、特定のER由来ペプチドに曝露された後に活性化され、用量依存的にサイトカインを分泌した(図11B)。
実験の第二のセットでは、CTLクローンの死滅能力を評価した。CTL-クローンは、ER由来ペプチドをロードした、またはロードしていない標的細胞と、異なる条件下で共培養した。xCELLigenceシステムを使用して、標的細胞の単層におけるリアルタイムインピーダンス変動を測定する。これらのアッセイでは、細胞指数の減少は、細胞生存率を反映する単層中の細胞数の減少に関連する。
CTL-クローン9を、ER由来ペプチド9をロードした標的細胞と1:1の比率で共培養した場合、対照細胞(標的細胞のみ)と比較して、経時的に細胞指数の減少が見られた。ブロッキング抗MHC-I抗体(+抗MHC-I)の存在下で共培養を実施すると、細胞指数のこの減少は抑制された。同濃度のアイソタイプ対照(+アイソタイプ)を使用して共培養を行っても、細胞指数の減少は抑制されなかった。さらに、標的細胞に高濃度のペプチド(1uMと比較して1pM)をロードすると、これらの減少は増加する(図11C、左パネル)。この結果は、本明細書に開示される方法、CTLクローン9によって識別されるペプチドを認識する細胞傷害性T細胞が、標的腫瘍細胞を殺傷していることを示す。
ER由来ペプチドが標的細胞によって自然に発現および提示される場合、ペプチドを外部から添加することなくCTL-クローンと共培養することによって、それらを殺すことができるはずであると推論した。この目的のために、CTL-クローン9とH1650標的細胞の共培養を異なる比率で行って、エフェクターが標的細胞を殺すのに十分な比率を見つけた。図11Cの右のパネルでは、CTL-9は、対照細胞(標的細胞のみ)と比較して、エフェクター対標的の比率が4:1で標的細胞を殺すことができることがわかった。さらに、殺傷力は、比率を大きくすると(8:1)高まる。標的細胞の死滅は、これより低い比率(2:1)では認められなかった。
最後に、同様の実験を、CTL-クローン9、CTL-クローン64、およびCTL-クローン80を用いて実施したところ、標的細胞の特異的殺傷が見られたが、抗MCH-I抗体の存在下で共培養を実施すると、これも抑制され得ることがわかった(図11D)。
これらの結果をまとめると、本明細書に開示される方法によって同定されたいくつかの異なるペプチドを認識する細胞傷害性T細胞が、特定の融合転写物由来ペプチドを発現する腫瘍細胞を認識して殺傷することができ、この効果が、MHC-I分子の文脈におけるペプチドの特異的認識によるものであることが確認された。さらに、CTL-クローンが外部ペプチドを添加することなく標的細胞を殺傷することができるという事実は、融合転写物由来ペプチド9、64および80がH1650 LUAD腫瘍細胞株によって自然に発現および提示されることを示す。
融合由来ペプチドを認識する操作されたT細胞の生成
CTL-9 TCR配列をコードするレンチウイルスベクターで形質導入されたジャーカット細胞を、二つの異なる標的細胞、H1650およびH1395と共培養した。両方とも、HLA-A2対立遺伝子を発現するLUAD由来細胞株である。TCRを介するジャーカット細胞の活性化は、レポーター遺伝子(NFAT-GPF、NF-KB-CFP、およびAP-1-mCherry)の蛍光の増加を分析するフローサイトメトリーによって評価した。予備的な結果は、陰性対照(非形質導入ジャーカット細胞)と比較して、両方の標的細胞と共培養した場合、ジャーカット細胞が活性化されることを示している。さらに、この活性化は、特定のペプチドをロードした標的細胞と共培養を実施した場合、用量依存的に増加した。PMA/イオノマイシンを陽性対照として使用した(図12)。これらの結果は、図11CおよびDに示す結果と一致しており、LUAD由来腫瘍細胞がTE由来ペプチドを発現することを示唆している。さらに、操作されたT細胞の発生におけるCTL-クローンTCR配列の潜在的な使用を示した。
LUAD患者における融合由来ペプチドを認識するCD8+細胞の存在
LUAD腫瘍試料中の融合由来ペプチドを認識するCTL細胞の存在を特定することを目的とした。
最初の一連の実験では、TE由来ペプチドとIl-2との混合、またはIl-2のみで増殖した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を、四量体染色によって分析した。図13AおよびBに示されるように、LUAD患者に由来するTILにおいて融合由来ペプチドを認識するCD8+ T細胞が見出された。
次いで、新鮮な腫瘍試料に由来する非増殖CD8+ T細胞において、四量体陽性細胞およびその表現型が検出されるかどうかを分析した。この戦略を使用して、LUAD患者試料に由来する腫瘍、近傍-腫瘍、浸潤リンパ節、および血液に存在するCD8+ T細胞を分析した。表現型は、表面マーカーであるCCR7およびCD45RAの発現を考慮して、ナイーブ(CCR7+CD45+)、セントラルメモリー(CM、CCR7+CD45RA-)、エフェクターメモリー(EM、CCR7-CD45-)、およびターミナルエフェクター(TE、CCR7-CD45+)として決定した。興味深いことに、腫瘍組織に存在する四量体陽性細胞は、メモリー表現型を優先的に共有し、ナイーブ細胞(CCR7+CD45+)は、主にリンパ節に由来する細胞に見られる(図14AおよびB)。患者2と3は図13と図14で同じである。
検査したすべての試料は、HLA-A2+患者に由来する。
腫瘍組織におけるメモリー表現型を有する四量体陽性細胞の存在は、TILにおける四量体陽性細胞の存在と共に、これらの患者においてTE由来ペプチドに対して生じた免疫反応と一致する。さらに、リンパ節におけるナイーブ四量体陽性細胞の存在は、これらの特にTE由来ペプチドに対する免疫反応を生成する能力の可能性を示唆する。
LUAD生検における質量分析によるペプチドの同定。
細胞傷害性T細胞によって認識されるには、ER由来ペプチドには、腫瘍細胞表面上のMHCクラスI分子による提示が必要である。予測されるペプチドがMHCクラスI分子上に発現していることを確認するために、3つのLUAD生検に由来するMHC I免疫ペプチドームからの公開データ(Laumont CM et al.,“Noncoding regions are the main source of targetable tumor-specific antigens” Sci Transl Med.2018 10(470))を使用した。OpenMSソフトウェアを使用して、3つのLUAD腫瘍(PXD009752、PXD009754およびPXD009755)のMHC-I免疫精製からPRIDEデータベースにアップロードされた生データを分析した。プロテオミクスにおけるデータ依存的な取得は、標的データベース(概してヒトプロテオーム全体)に含まれるそれらの配列の同定のみを可能にすることに留意されたい。本出願によるペプチドは、非コード配列に由来するため、以前は同定されていなかった。本明細書に予測されたペプチドの配列を標的データベースに組み込んだMS/MS同定を再分析した。3つの試料生検の中で五つのペプチド(ペプチドID:3304、269、757、1810、3953)が見出された。この分析を実施するために、任意のMHC I対立遺伝子に結合する、TCGA中の少なくとも5つの試料中に存在する、キメラ融合に由来する全ての予測ペプチドを検討した。この結果は、LUAD腫瘍におけるMHCクラスI分子上のキメラ融合由来ペプチドの発現を確認する。
その後、新たな肺免疫ペプチドミクスのデータセットに分析を拡張した(Bulik-Sullivan et al.Nat.Biotec 2018,Chong et al.Nat.Comm.2020 and Javitt et al.Front Immunol 2019)。注目すべきことに、すべてのデータベースは、LUAD腫瘍細胞株を含有するJavitt et al. Front Immunol 2019を除いて、新鮮な肺腫瘍試料で生成された。この第二の分析では、ProteomeDiscoverer 1.4 Softwareを使用してER由来ペプチドを同定した。4つのデータセットを考慮すると、23の固有のER由来ペプチドが、合計19の免疫ペプチドミック試料のうちの少なくとも一つに存在した。図15では、各MHC試料(列)で同定されたER由来ペプチド(行)は、灰色の正方形で示されている。右側には、見つかったペプチド配列が示されている。興味深いことに、それらのいくつかは、複数のMHC試料で観察され、試料間で共有されていることを示す。これらの結果から、融合転写物由来ペプチドが、腫瘍細胞表面上のHLA-I分子によって処理され、提示されることを確認する。
融合の遺伝子部分が腫瘍抑制遺伝子である融合転写物に由来するペプチドRLADHLSFC(融合ID:chr22:29117506:->chr22:29115473:-/関与遺伝子:CHEK2)、および遺伝子部分が発癌遺伝子である融合転写物に由来するペプチドGLPSHVELA(融合ID:chr6:117763597:->chr6:117739669:-/関与遺伝子:ROS1)。興味深いことに、両方のペプチドが免疫原性であることが判明し(図11A)、特にペプチドRLADHLSFCの場合、図11Dに示す結果が、H1650細胞株によって発現され得ることを示す。さらに、ペプチドGLPSHVELAを認識するTILを見出し(図12A)、これは、この融合転写物由来ペプチドがLUAD腫瘍試料中で発現し得ることを示す。
実施例3:様々な癌試料からのTE要素およびエキソン配列から構成される融合転写物に由来するネオアンチゲンペプチドの同定。
32の異なる癌の種類からの9184の試料(急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、膀胱尿路上皮癌、乳管癌、乳腺小葉癌、子宮頸癌、胆管癌、結腸直腸腺癌、食道癌、胃腺癌、多形性膠芽腫、頭頸部扁平上皮癌、肝細胞癌、腎臓色素嫌性癌、腎臓明細胞癌、腎臓乳頭細胞癌、低悪性度神経膠腫、肺腺癌、肺扁平上皮癌、中皮腫、卵巣漿液性腺癌、膵管腺癌、傍神経節腫および褐色細胞腫、前立腺腺癌、肉腫、皮膚黒色腫、精巣胚細胞癌、胸腺腫、甲状腺乳頭癌、子宮癌肉腫、子宮体部内膜癌およびブドウ膜黒色腫)が、前述の方法に従って分析された。
配列番号911-17492の融合転写物が同定された。
以下の表では、列は以下のように参照される:
1.コホートにおける頻度
2.ドナー染色体エキソン/2’ドナー染色体エキソン
3.ドナースタートエキソン/3’ドナースタートTE
4.ドナーブレークポイントエキソン/4’ドナーブレークポイントTE
5.ドナー鎖エキソン/5’ドナー鎖TE
6.ドナー転写物(すなわちドナー_tx_ネーム_Exon)/6’アクセプター染色体エキソン
7.アクセプター染色体TE/7’アクセプターブレークポイントエキソン
8.アクセプターブレークポイントTE/8’アクセプターエンドエキソン
9.アクセプターエンドTE/9’アクセプター鎖エキソン
10.アクセプター鎖TE/10’アクセプター転写物(すなわちアクセプター_tx_ネーム_エキソン)
11.融合の種類/11’融合の種類