JP7717826B2 - 光演算装置及び製造方法 - Google Patents

光演算装置及び製造方法

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Description

本発明は、複数の光回折層を含む光演算装置、及び、そのような光演算装置の製造方法に関する。
屈折率が個別に設定された複数のマイクロセルであって、行列状に設けられた複数のマイクロセルを用いた光回折層が知られている。信号光の光路上にこのような光回折層を重ねて配置し、各光回折層を透過した信号光を相互に干渉させることによって、予め定められた演算を光学的に実行するように設計された光回折層が知られている。光回折層を用いた光学的な演算(すなわち光演算)は、プロセッサを用いた電気的な演算と比べて高速且つ低消費電力である。特許文献1には、入力層、中間層、及び出力層を有する光ニューラルネットワークが開示されている。上述した光回折層は、例えば、このような光ニューラルネットワークの中間層として利用することが可能である。
このような技術を演算処理や、イメージング処理などに応用する場合、マイクロセルのセルサイズが信号光の波長λsの半分から2倍程度になるように光回折層を構成することが好ましい。セルサイズが波長λsの半分から2倍程度であることにより、信号光の制御性を高めることができる。例えば、信号光としてλs=400nmである可視光を用いる場合、好ましいセルサイズは、200nm以上800nm以下と考えられる。したがって、このような光回折層を含む光演算装置を製造する際には、ナノメートルオーダー(サブミクロン)サイズの解像度を実現可能な造形方法を採用することが好ましい。
近年、3Dプリンティングに代表されるような「付加加工(Additive manufacturing)」と呼ばれる造形方法が注目を浴びている。なかでも、光造形の一態様であるマイクロ構造を3次元的に自由に加工できる2光子3Dプリンティングの造形方法が着目を浴びている。しかしながら、2光子3Dプリンティングの造形方法を用いた場合、100nmを下回る解像度を達成することは、困難である。
付加加工を用いて造形された造形物の解像度を高めるための手法として、Implosion Fabrication法という造形方法が提案されている(非特許文献1及び特許文献2)。この造形方法では、溶媒の一例である水を多く含み膨潤した状態のゲル(この場合はハイドロゲル)の状態で光造形を行い、光造形後に脱水収縮を行う。この脱水収縮を行うことにより、光造形を実施されたゲルは、およそ相似形を保ったまま一軸に沿ったサイズがおよそ1/10に収縮することにより乾燥ゲルとなる。このように、Implosion Fabrication法では、脱水収縮を実施することにより、最終的な解像度を光造形時の解像度の10倍程度に高めることができる。したがって、Implosion Fabrication法は、自由度の高い3次元構造において、100nmを下回る解像度を達成することができる。
米国特許第7847225号明細書 米国特許出願公開第2017/0081489号明細書
Daniel Oran et. al.,Science 362, 1281-1285 (2018) 14 December 2018
本発明の発明者らは、光演算装置に含まれる複数の光回折層の各々としてImplosion Fabrication法を用いて製造された乾燥ゲルを用い、各々が乾燥ゲルからなる各光回折層を重ねることによって、100nmを下回る解像度を有する光演算装置を実現できると考えた。上述したように、Implosion Fabrication法において用いられるゲルは、脱水収縮を行うことにより、およそ相似形を保ったまま収縮するためである。しかしながら、複数のゲルを脱水収縮させた場合、各ゲルの収縮率、及び、収縮の均一性が異なることが分かった。
このことは、光演算装置に含まれる複数の光回折層の各々としてImplosion Fabrication法を用いて製造された乾燥ゲルを用い、各光回折層を重ねた場合、各光回折層におけるマイクロセルのセルサイズ及び位置がばらつきやすいことを意味する。セルサイズや位置がばらついた場合、光演算装置の計算誤差が大きくなり、精度の高い計算を行うことが困難になる場合がある。
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、行列状に設けられた複数のマイクロセルを重ねて配置した光演算装置において、脱水収縮に起因して生じるセルサイズ及び位置のばらつきを抑制することにより、誤差が少なく計算精度が高い光演算装置を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光演算装置は、互いに重ねられた複数層の光回折層を備えた光演算装置であって、各光回折層は、屈折率が個別に設定され、且つ、行列状に設けられた複数のマイクロセルを含んでおり、複数層の光回折層は乾燥ゲルにより包含されている。
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る製造方法は、互いに重ねられた複数層の光回折層を備えた光演算装置の製造方法である。本製造方法は、溶媒を含有しているゲル中に色素を分散させる第1の工程と、2光子吸収法を用いて、色素が分散されたゲルを露光することにより前記複数層の光回折層に対応するパターンをパターニングする第2の工程と、パターニング後のゲルから色素を除去する第3の工程と、色素が除去されたゲルから前記溶媒を除去することにより収縮された乾燥ゲルであって、複数層の光回折層を包含する乾燥ゲルを得る第4の工程と、を含んでいる。
本発明の一態様によれば、行列状に設けられた複数のマイクロセルを重ねて配置した光演算装置において、脱水収縮に起因して生じるセルサイズ及び位置がばらつきを抑制することができる。
本発明の第1の実施形態に係る光演算装置の三面図である。 図1に示した光演算装置の第1の変形例の断面図である。 図1に示した光演算装置の第2の変形例の断面図である。 図1に示した光演算装置の第3の変形例の断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る製造方法のフローチャートである。
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係る光演算装置10について、図1を参照して説明する。図1は、光演算装置10の三面図である。図1の正面図は、光演算装置10の一対の主面である上面及び下面のうち上面を平面視したものである。図1の前面図及び左側面図の各々は、それぞれ、光演算装置10の前面及び左側面を平面視したものである。
<光演算装置の構成>
図1に示すように、光演算装置10は、乾燥ゲル11を備えている。乾燥ゲル11は、互いに重ねられたn層(nは2以上の整数、本実施形態においてはn=3とする)の光回折層Li(iは、1≦i≦nの整数)を包含している。本実施形態においては、乾燥ゲル11の下面に近接するように光回折層L1が設けられており、光回折層L1の上に光回折層L2及び光回折層L3がこの順番で積層されている。
各光回折層Liは、m行l列の行列状に設けられた複数のマイクロセルCijkを含んでいる。ここで、m及びlの各々は、2以上の整数であり、本実施形態においてはm=4,l=4とする。また、jは、1≦j≦mの整数であり、kは、1≦k≦lの整数である。このように、光回折層Liに含まれる各マイクロセルCijkは、正方行列状に設けられている。各マイクロセルCijkは、少なくとも屈折率が個別に、且つ、互いに独立に設定されている。また、各マイクロセルCijkは、屈折率に加えて厚みTcが個別に、且つ、互いに独立に設定されていてもよい。均一の厚みの範囲内において実現できないほど、各マイクロセルCijkの屈折率の分布をワイドレンジにしたい場合に、マイクロセルCijkの厚みをより厚くすればよい。この構成によれば、信号光が透過した場合に変化する位相変化量を厚みTcが薄いマイクロセルCijkよりも大きくすることができる。本実施形態において、各マイクロセルCijkは、屈折率のみが個別に、且つ、互いに独立に設定されており、厚みTcは均一である。厚みTcは、適宜定めることができるが、典型的には、信号光の波長λs程度である。
ここで、マイクロセルとは、例えば、セルサイズが10μm未満のセルのことを指す。また、セルサイズとは、セルの面積の平方根のことを指す。例えば、マイクロセルの平面視形状がマイクロセルCijkのように正方形である場合、セルサイズとは、セルの一辺の長さLcである。セルサイズの下限は、特に限定されないが、例えば1nmである。
光演算装置10において、光回折層Liの層数nと、複数のマイクロセルCijkの行数m及び列数lは、上述した例に限定されず適宜さだめることができる。層数nは、例えば、2であってもよいし10であってもよい。また、行数m及び列数lは、例えば、200であってもよし4000であってもよい。層数n、行数m、及び列数lは、光演算装置10を用いて実行したい光演算の内容に応じて適宜定めることができる。
光演算装置10において、信号光は、乾燥ゲル11の一方の主面(例えば下面)に入射し、乾燥ゲル11の他方の主面(例えば上面)から出射する。図1の正面図において、マイクロセルCijkが形成されている領域を光演算装置10における有効領域と呼ぶ。
層間ピッチPL、及び、マイクロセルCijkのセルサイズである長さLcは、信号光の波長λsに関連して定められている。
層間ピッチPLは、信号光の波長λsの整数倍であることが好ましい。本実施形態では、層間ピッチPLとして40λsを採用している。例えば、λs=400nmである信号光を用いる場合、PL=16μmとなる。層間ピッチPLは、互いに隣接する光回折層Li及び光回折層Li+1におけるピッチである。
マイクロセルのセルサイズは、λs/2以上2λs以下の範囲内で定められていることが好ましい。すなわち、マイクロセルCijkにおいて、長さLcは、λs/2以上2λs以下の範囲内で定められていることが好ましい。例えば、λs=400nmである信号光を用いる場合、長さLcは、200nm以上800nm以下の範囲内で定められていることが好ましい。これにより、信号光の制御性を高めることができる。
また、単一の光回折層Li内において互いに隣接するマイクロセル同士(例えばマイクロセルCijk及びマイクロセルCijk+1)におけるピッチであるセル間ピッチPcは、長さLcを上回る範囲内で適宜定めることができる。
(乾燥ゲル)
乾燥ゲル11は、信号光に対して透光性を有する材料により構成されている。乾燥ゲル11を構成するゲルは、Implosion Fabrication法において用いられるゲルの中から適宜選択することができる(例えば、非特許文献1、特許文献2、及び、特願2021-025680号の明細書参照)。
乾燥ゲル11は、ゲルを乾燥することによって得られる。ゲルは、分散質が繋がることによりネットワークを作った固体状のものの総称である。分散質同士が繋がっている点は、架橋点と呼ばれる。ゲルは、ネットワーク中に溶媒を吸収することができ、膨潤したゲルとなることができる。また、ゲルは、含有していた溶媒を乾燥されることによって、溶媒を放出しながら収縮し、乾燥ゲルとなる。また、乾燥ゲルとなる際に、乾燥ゲルの寸法を安定化させるためにさらに架橋などの処理を施して構造をある程度、固定化することもできる。ゲルと乾燥ゲルとを比較した場合の収縮率は、分散質の組成などにより異なるが、後述するImplosion Fabrication法において用いられるゲルの場合、典型的な収縮率は、1/10~1/100程度である。光演算装置10では、単一の乾燥ゲル11中に、複数の光回折層Liであって、各々が複数のマイクロセルCijkを含んでいる光回折層Liが設けられている。単一の乾燥ゲル11の内部に複数の光回折層Liを形成する場合、各光回折層Li間に生じ得る収縮率のばらつきを抑制することができる。したがって、複数の乾燥ゲルを用いて複数層の光回折層を構成する場合に生じ得るセルサイズ及び位置のばらつきを抑制することができる。また、別個に設けられた複数の光回折層を重ねる必要がないので、複数の光回折層におけるアライメント調整を省略することができる。
また、ゲルから乾燥ゲルに収縮するときの精度を求める場合、前記収縮率を1/10程度に抑えるようにゲルを構成することが好ましい。すなわち、乾燥ゲルの体積は、ゲルの体積の1/1000程度が好ましい。収縮の精度は、ゲルにおける収縮の均一性とも言い替えられる。ゲルにおける収縮の均一性を高めることにより、各光回折層Liに生じ得るセルサイズ及び位置のばらつきを更に抑制することができる。
ゲルは、化学ゲルと物理ゲルとに分類することができる。化学ゲルは、分散質同士の結合が共有結合からなる。一方、物理ゲルは、分散質同士が共有結合以外の結合(例えば分子間力など)からなる。また、化学ゲルのうち分散質が高分子化合物であるゲルのことを高分子ゲルと呼ぶ。本実施形態では、溶媒を乾燥させることによって乾燥ゲル11となるゲルとして高分子ゲルを用いる。
また、ゲルは、吸収することができる溶媒の極性に応じて、親水性ゲル、疎水性ゲル、及び中間的なゲルに分類することができる。親水性ゲルは、極性が高い溶媒(例えば水や低級アルコール類など)を吸収する。疎水性ゲルは、極性が低い溶媒(例えばシクロヘキサンやノルマルヘキサンなど)を吸収する。中間的なゲルは、極性が中間的な溶媒(例えばジエチルエーテルや酢酸エチルなど)を吸収する。本実施形態では、溶媒を乾燥させることによって乾燥ゲル11となるゲルとして親水性ゲルを用いる。親水性ゲルは、ハイドロゲルとも呼ばれる。
乾燥ゲル11における溶媒の含有率(ハイドロゲルにおいては含水率)は、30%以下の範囲内で適宜定めることができる。なお、乾燥ゲル11における溶媒の含有率は、乾燥ゲル11の総質量に対する含有している溶媒の質量の比で定義することができる。含有率が低ければ低い程、乾燥ゲル11のサイズが小さくなるので、各光回折層Liにおけるセルサイズを小さくすることができる。
<第1の変形例>
光演算装置10の第1の変形例である光演算装置10Aについて、図2を参照して説明する。図2は、光演算装置10Aの断面図である。なお、図2においては、乾燥ゲル11に包含されている各光回折層Liの図示を省略している。
図2に示すように、光演算装置10Aは、乾燥ゲル11と、透明基板12Aと、樹脂層13Aと、を備えている。光演算装置10Aの乾燥ゲル11は、光演算装置10の乾燥ゲル11と同一である。したがって、本変形例では、乾燥ゲル11の説明を省略する。
透明基板12Aは、信号光に対して透光性を有する基板である。本実施形態においては、石英ガラス製のガラス基板を透明基板12Aとして用いる。ただし、透明基板12Aを構成する材料は、石英ガラスに限定されず、適宜定めることができる。例えば、透明基板12Aを構成する材料として、信号光に対して透光性を有する樹脂を用いることもできる。また、透明基板12Aは、剛直な基板であってもよいし、柔軟な基板であってもよい。なお、透明基板12Aが柔軟な基板である場合には、乾燥ゲル11を取り囲むように枠体が透明基板12Aに取り付けられていることが好ましい。これにより、透明基板12Aは、変形せずに平面性を保つことができる。
透明基板12Aの一方の主面(図2においては上側の主面)には、乾燥ゲル11が載置されている。
透明基板12Aは、乾燥ゲル11を支持するとともに、乾燥ゲル11と空気との接触を防ぐために設けられている。透明基板12Aは、乾燥ゲル11の下側の主面を覆っている。
樹脂層13Aは、信号光に対して透光性を有する樹脂により構成されている。樹脂層13Aは、乾燥ゲル11と空気との接触を防ぐために設けられている。樹脂層13Aは、防湿層の一例である。樹脂層13Aは、透湿度が150g/m/24hr以下になるように構成されていることが好ましく、50g/m/24hr以下であることがより好ましく、10g/m/24hr以下であることが最も好ましい。透湿度を規定するためには、JIS Z 0208で規定されるカップ法試験における試験条件40℃・90%RH下での評価指数を用いることができる。この構成によれば、樹脂層13Aは、乾燥ゲル11が空気中の水分を吸収することを抑制することができるので、乾燥ゲル11のサイズを一定に保つことができる。樹脂層13Aは、透明基板12Aの一方の主面と、乾燥ゲル11の上側の主面及び側面とを覆っている。
樹脂層13Aとしては、表示パネルにおいてパネル表面を保護するために用いられるハードコート層を好適に用いることができる。すなわち、樹脂層13Aを構成する樹脂の好適な例としては、光硬化性のメタアクリル系樹脂が挙げられる。ハードコート層は、所定の硬度を上回るように構成されており、耐擦傷性を有する。所定の硬度は、適宜定めることができる。所定の硬度を規定するためには、JIS K 5600などに規定される鉛筆硬度試験における評価指数を用いてもよいし、表面硬度摩耗試験機などに適切な過重を加えたスチールウール等を用いて測定される耐擦傷性の評価指数を用いてもよい。樹脂層13Aとしてハードコート層を用いることにより、乾燥ゲル11のサイズを一定に保てることに加えて、乾燥ゲル11が外力により変形したり破損したりするのを防ぐこともできる。
このように、透明基板12A及び樹脂層13Aは、乾燥ゲル11を包含するように構成されている。透明基板12A及び樹脂層13Aは、防湿層として機能する。本実施形態において、透明基板12A及び樹脂層13Aの各々は、それぞれの屈折率が、乾燥ゲル11の屈折率よりも低く、空気の屈折率よりも高くなるように構成されている。
<第2の変形例>
光演算装置10の第2の変形例であり、且つ、光演算装置10Aの変形例でもある光演算装置10Bについて、図3を参照して説明する。図3は、光演算装置10Bの断面図である。
光演算装置10Bは、乾燥ゲル11と、透明基板12A(図3には不図示)と、樹脂層13Aと、樹脂層14Bと、を備えている。光演算装置10Bは、光演算装置10Aに対して樹脂層14Bを追加することによって得られる。したがって、本変形例では、樹脂層14Bについて説明し、乾燥ゲル11、透明基板12A、及び樹脂層13Aの説明を省略する。
樹脂層14Bは、一方の防湿層である樹脂層13Aの有効領域(すなわち、乾燥ゲル11の上面を覆っている領域)を覆っている。樹脂層14Bは、信号光に対して透光性を有する樹脂であって、屈折率が樹脂層13Aの屈折率よりも低く、空気の屈折率よりも高くなるように構成されている。樹脂層14Bは、低屈折率層として機能する。
樹脂層14Bを構成する材料は、特に限定されず、既存の材料の中から屈折率に応じて適宜選択することができる。樹脂層14Bは、フッ素を添加したアクリレート樹脂により構成されていてもよいし、内部に微細な空気泡を分散させた樹脂により構成されていてもよい。空気泡を樹脂の内部に分散させる場合、空気泡のサイズは、信号光の波長λs未満であることが好ましい。
なお、光演算装置10Bの一態様は、もう一方の防湿層である透明基板12Aの有効領域(すなわち、乾燥ゲル11の下面を覆っている領域)を覆う樹脂層を更に備えていてもよい。この樹脂層は、樹脂層14Bと同様に構成されていればよい。
<第3の変形例>
光演算装置10の第3の変形例である光演算装置10Cについて、図4を参照して説明する。図4は、光演算装置10Cの断面図である。
光演算装置10Cは、乾燥ゲル11と、一対の透明基板12C1,12C2と、樹脂層13Cと、を備えている。
透明基板12C1は、光演算装置10Aの透明基板12Aと同一に構成されている。すなわち、透明基板12C1は、乾燥ゲル11の下面を覆っている。
透明基板12C2は、透明基板12C1と同様に構成されたガラス基板である。透明基板12C2は、透明基板12C1とともに乾燥ゲル11を挟み込むように、乾燥ゲル11の上面に載置されている。したがって、透明基板12C2は、乾燥ゲル11の上面を覆っている。
樹脂層13Cは、光演算装置10Aの樹脂層13Aを構成する樹脂と同じ樹脂により構成されている。ただし、樹脂層13Cは、透明基板12C1と透明基板12C2との間に充填されており、乾燥ゲル11の側面を覆っている。
透明基板12C1、透明基板12C2、及び樹脂層13Cは、防湿層として機能する。
透明基板12C1及び透明基板12C2は、透明基板12Aと同様に、剛直な基板であってもよいし、柔軟な基板であってもよい。
本実施形態において、透明基板12C1、透明基板12C2、及び樹脂層13Cの各々は、それぞれの屈折率が、乾燥ゲル11の屈折率よりも低く、空気の屈折率よりも高くなるように構成されている。
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係る製造方法M1について、図5を参照して説明する。図5は、製造方法M1のフローチャートである。本実施形態では、光演算装置10Aを製造する場合を例にして、製造方法M1について説明する。ただし、製造方法M1に含まれている第1の工程S11~第4の工程S14は、光演算装置10、光演算装置10B、及び光演算装置10Cの何れを製造する場合にも適用することができる。
<ゲル>
本実施形態では、溶媒を含有したゲルが透明基板12Aの上面に載置されている状態を始状態として製造方法M1について説明する。
この始状態において用いるゲルとしては、Implosion Fabrication法において利用可能なゲルから適宜選択することができる。
始状態において用いるゲルについては、例えば、非特許文献1及び特許文献2に記載されている。また、特願2021-025680号の明細書に記載されている多元ブロックコポリマーを始状態において用いるゲルとして採用してもよい。この多元ブロックコポリマーにおいては、各々が1又は複数のブロックポリマーにより構成された第1セグメント及び第2セグメントが交互に結合されている。ここで、第1セグメントは、疎水性を有し、第2セグメントは、親水性を有する。そのうえで、この多元ブロックコポリマーは、総セグメント数が3以上になるように構成されている。
<製造方法の構成>
図5に示すように、製造方法M1は、第1の工程S11、第2の工程S12、第3の工程S13、第4の工程S14、及び第5の工程S15を含んでいる。
第1の工程S11は、溶媒を含有しているゲル中に色素を分散させる工程である。この色素は、始状態において用いるゲルの組成にあわせて適宜選択することができる(例えば、非特許文献1、特許文献2、及び、特願2021-025680号の明細書参照)。
第2の工程S12は、2光子吸収法を用いて、色素が分散されたゲルを露光することにより複数層の各光回折層Liに対応するパターンをパターニングする工程である。すなわち、第2の工程S12においては、各マイクロセルCijkに対応する領域に対して、個別に、且つ、互いに独立に設定されている強度のレーザ光を照射する。分散質は、レーザ光の2光子を吸収することにより色素と結合する。したがって、各マイクロセルCijkには、レーザ光の強度に応じた量の色素が結合することになる。このレーザ光の強度に応じて導入された色素には、さらに乾燥ゲルと屈折率の異なる微粒子を色素の量に応じて結合させることができ、これにより、各マイクロセルCijkにおける屈折率を個別に、且つ、互いに独立に設定することができる。乾燥ゲルよりも屈折率が高い微粒子としては、酸化チタンのナノ粒子やナノダイアモンドなどが挙げられる。乾燥ゲルよりも屈折率が低い微粒子としてはフッ化物ナノ粒子などが挙げられる。
2光子吸収法を用いたパターニングは、光造形の一態様であり、以下においては2光子3Dプリンティングとも称する。2光子吸収法では、照射するレーザ光(励起光)の焦点の位置を、乾燥ゲル11における主面の面内方向に移動させることができるだけでなく、当該主面の法線方向にも移動させることができる。したがって、2光子3Dプリンティングでは、マイクロ構造を3次元的に自由に加工できる。
第3の工程S13は、第2の工程S12においてパターニングされた後のゲルを洗浄することにより、ゲルから色素を除去する工程である。第3の工程S13を実施することにより、分散質に結合された色素は、ゲル中の各マイクロセルCijkに対応する領域に残存し、分散質に結合されなかった色素は、ゲル中から除去される。
第4の工程S14は、第3の工程S13において色素が除去されたゲルから溶媒を除去する工程である。第4の工程S14を実施することにより、ゲルは、収縮し、乾燥ゲルとなる。乾燥ゲル11における溶媒の含有率は、30%以下の範囲内で適宜定めることができる。含有率が低ければ低い程、乾燥ゲル11のサイズが小さくなるので、各光回折層Liにおけるセルサイズを小さくすることができる。
第5の工程S15は、透明基板12Aの上面、及び、乾燥ゲル11の表面に樹脂層13Aのもととなる液体樹脂を塗布し、この液体樹脂を硬化させる工程である。液体樹脂が硬化することにより、透明基板12Aの上面、及び、乾燥ゲル11の表面に樹脂層13Aが形成され、乾燥ゲル11は、透明基板12Aと樹脂層13Aとにより包含される。透明基板12A及び樹脂層13Aは、防湿層の一例である。
なお、光演算装置10Bを製造する場合には、第5の工程S15のあとに、樹脂層13Aの少なくとも乾燥ゲル11を覆っている領域に、低屈折率層の一例である樹脂層14Bを形成する工程を追加すればよい。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔まとめ〕
本発明の第1の態様に係る光演算装置は、互いに重ねられた複数層の光回折層を備えた光演算装置であって、各光回折層は、屈折率が個別に設定され、且つ、行列状に設けられた複数のマイクロセルを含んでおり、前記複数層の光回折層は乾燥ゲルにより包含されている。
上記の構成によれば、複数層の光回折層が1つの乾燥ゲルに包含されているため、複数の乾燥ゲルを用いることなく光演算装置を製造することができる。したがって、複数の乾燥ゲルを用いて複数層の光回折層を構成する場合に生じ得るセルサイズ及び位置のばらつきを抑制することができる。これを適用して作製したセルサイズ及び位置のばらつきが抑制された光演算装置では、誤差が少なく、より精度の高い演算を行うことが可能である。
また、複数の光回折層を信号光に順に作用させる光演算装置であって、各光回折層が別個の乾燥ゲル中に設けられた光演算装置においては、各光回折層の信号光に対する位置及び方向を予め定められた位置及び方向に調整することが重要である。なぜなら、光回折層の信号光に対する位置及び方向が予め定められた位置及び方向からずれると、所期の作用を信号光に対して及ぼすことが困難になるからである。以下では、この調整のことをアライメント調整と呼ぶ。上記の構成によれば、単一の乾燥ゲル中に複数の光回折層が設けられているので、製造時にアライメント調整を省略することができる。なお、このアライメント調整で調整出来るのは各光回折層間の位置ずれ、すなわち面内の水平移動による誤差のみである。アライメント調整では、たとえば各光回折層の収縮率が異なることに起因する各光回折層のセルサイズのずれを完全に調整することはできないが、単一の乾燥ゲル中に複数の光回折層が設けられている上記の構成によれば、このようなセルサイズのずれも抑制することができる。
また、本発明の第2の態様に係る光演算装置においては、上述した第1の態様に係る光演算装置の構成に加えて、信号光に対して透光性を有する防湿層であって、前記乾燥ゲルを包含する防湿層を更に備えている、構成が採用されている。
上記の構成によれば、乾燥ゲルと空気との接触を遮断することができるため、乾燥ゲルが空気中に含まれる水分を吸収することを抑制することができる。したがって、外部環境にかかわらず乾燥ゲルのサイズを一定に保つことができる。
また、本発明の第3の態様に係る光演算装置においては、上述した第2の態様に係る光演算装置の構成に加えて、前記防湿層の屈折率は、乾燥ゲルの屈折率よりも低く、空気の屈折率よりも高い、構成が採用されている。
上記の構成によれば、防湿層を備えていない場合に生じ得る反射であって、乾燥ゲルと空気との界面における反射を抑制することができる。
また、本発明の第4の態様に係る光演算装置においては、上述した第3の態様に係る光演算装置の構成に加えて、前記防湿層の有効領域を覆う低屈折率層であって、屈折率が前記防湿層の屈折率よりも低く、空気の屈折率よりも高い低屈折率層を更に備えている、構成が採用されている。
上記の構成によれば、低屈折率層を備えていない場合に生じ得る反射であって、防湿層と空気との界面における反射を抑制することができる。
本発明の第5の態様に係る製造方法は、互いに重ねられた複数層の光回折層を備えた光演算装置の製造方法である。本製造方法は、溶媒を含有しているゲル中に色素を分散させる第1の工程と、2光子吸収法を用いて、色素が分散されたゲルを露光することにより前記複数層の光回折層に対応するパターンをパターニングする第2の工程と、パターニング後のゲルから色素を除去する第3の工程と、色素が除去されたゲルから前記溶媒を除去することにより収縮された乾燥ゲルであって、複数層の光回折層を包含する乾燥ゲルを得る第4の工程と、を含んでいる。
上記の構成によれば、第1の態様に係る光演算装置と同様の効果を奏する。
また、本発明の第6の態様に係る製造方法においては、上述した第5の態様に係る製造方法の構成に加えて、信号光に対して透光性を有する防湿層を用いて、前記乾燥ゲルを包含する第5の工程を更に含む、構成が採用されている。
上記の構成によれば、第2の態様に係る光演算装置と同様の効果を奏する。
10,10A,10B,10C 光演算装置
11 乾燥ゲル
Li 光回折層
Cijk マイクロセル
12A,12C1,12C2 透明基板
13A,14B,13C 樹脂層

Claims (6)

  1. 互いに重ねられた複数層の光回折層を備えた光演算装置であって、
    各光回折層は、予め定められた演算を光学的に実行するように屈折率が個別に設定され、且つ、行列状に設けられた複数のマイクロセルを含んでおり、
    前記複数層の光回折層は乾燥ゲルにより包含されている、
    ことを特徴とする光演算装置。
  2. 信号光に対して透光性を有する防湿層であって、前記乾燥ゲルを包含する防湿層を更に備えている、
    ことを特徴とする請求項1に記載の光演算装置。
  3. 前記防湿層の屈折率は、乾燥ゲルの屈折率よりも低く、空気の屈折率よりも高い、
    ことを特徴とする請求項2に記載の光演算装置。
  4. 前記防湿層の有効領域を覆う低屈折率層であって、屈折率が前記防湿層の屈折率よりも低く、空気の屈折率よりも高い低屈折率層を更に備えている、
    ことを特徴とする請求項3に記載の光演算装置。
  5. 予め定められた演算を光学的に実行するように屈折率が個別に設定され、互いに重ねられた複数層の光回折層を備えた光演算装置の製造方法であって、
    溶媒を含有しているゲル中に色素を分散させる第1の工程と、
    2光子吸収法を用いて、色素が分散されたゲルを露光することにより前記複数層の光回折層に対応するパターンをパターニングする第2の工程と、
    パターニング後のゲルから色素を除去する第3の工程と、
    色素が除去されたゲルから前記溶媒を除去することにより収縮された乾燥ゲルであって、複数層の光回折層を包含する乾燥ゲルを得る第4の工程と、を含む、
    ことを特徴とする製造方法。
  6. 信号光に対して透光性を有する防湿層を用いて、前記乾燥ゲルを包含する第5の工程を更に含む、
    ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
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