JP7722839B2 - 摩擦伝動ベルト - Google Patents
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Description
プーリと接触することで生じる摩擦力によって前記プーリに動力を伝達するベルト本体を備える、摩擦伝動ベルトであって、
前記ベルト本体の速度と前記プーリの速度との差である滑り速度と、摩擦係数との関係において、最大摩擦係数を示す滑り速度を第一滑り速度、前記第一滑り速度から第二滑り速度まで前記滑り速度を増加させたときの摩擦係数を参照摩擦係数とし、前記第二滑り速度と前記第一滑り速度との差が500mm/sであるとき、
前記最大摩擦係数をμx、前記参照摩擦係数をμrとして、次の式(1)で示される摩擦係数の低下率Dmが、20%以下である。
Dm=(μx-μr)/μx×100 ・・・・・(1)
Dsm=(μsm-μem)/μsm×100 ・・・・・(2)
この場合、上記ゾーンを構成する全ての区間において、摩擦係数が大幅に低下することが防止される。上記ゾーンにおいて摩擦係数は徐々に低下する。上記摩擦伝動ベルトでは、被水によるスティック・スリップの発生が効果的に抑制される。そのため、被水時において異音が発生しにくい。
(摩擦伝動ベルト)
図1は、本発明の一実施形態に係る摩擦伝動ベルトBの一部を模式的に示す。
この摩擦伝動ベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動ベルト伝動装置等に用いられる、Vリブドベルトである。このVリブドベルトBでは、例えば、ベルト周長が700mm以上3000mm以下、ベルト幅が10mm以上36mm以下、及びベルト厚さが3.5mm以上5.0mm以下である。
このVリブドベルトBでは、ベルト本体10の内周側の表面がプーリと接触することで生じる摩擦力によって、このベルト本体10がプーリに動力を伝達する。
ベルト本体10は、ベルト内周側に位置する圧縮ゴム層11と、中間に位置する接着ゴム層12と、ベルト外周側に位置する背面補強布13とを備える。
ゴム層本体14は、圧縮ゴム層本体とも称される。ゴム層本体14の厚さは、例えば2.0mm以上3.2mm以下である。
ゴム層本体14は、架橋したゴム成分を含むゴム組成物(以下、架橋ゴム組成物)からなる。ゴム組成物は、ゴム成分に架橋剤を含む種々のゴム配合剤が配合され混練された未架橋ゴム組成物(原料組成物)が加熱及び加圧され、ゴム成分が架橋剤によって架橋した架橋物である。
架橋剤以外のゴム配合剤としては、例えば、カーボンブラックなどの補強材、充填剤、老化防止剤、軟化剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、共架橋剤、短繊維等が挙げられる。
このVリブドベルトBでは、繊維部材層15はゴム層本体14の内周側表面全体を被覆する。繊維部材層15が内周側表面の一部を被覆するように内周側表面に積層されてもよい。
このVリブドベルトBでは、繊維部材層15が、短繊維を含む架橋ゴム組成物であってもよい。
(1)VリブドベルトBでは、圧縮ゴム層11のゴム層本体14が架橋ゴム組成物からなるため、繊維部材層15に接着処理が施されていなくても、ゴム層本体14と繊維部材層15とは充分な接着力で接着する。
(2)また、接着処理が施されていない繊維部材層15を備えたVリブドベルトBでは、接着処理が施された繊維部材層15を備えたVリブドベルトBに比べて、被水時における異音の発生が抑制される。これは接着処理が施されていない繊維部材層15は、接着処理が施された繊維部材層15に比べて吸水特性に優れる傾向にあるためと推測される。
本発明において「接着剤に浸漬する接着処理」は、エポキシ樹脂溶液又はイソシアネート樹脂溶液に浸漬して加熱する処理、RFL水溶液に浸漬して加熱する処理、及びゴム糊に浸漬して乾燥させる処理である。
繊維部材層15の形成に用いられる糸を構成する繊維としては、例えば、セルロース系繊維、羊毛、絹などの天然繊維;ポリウレタン繊維、脂肪族ポリアミド繊維(ナイロン66繊維)、芳香族ポリアミド繊維(パラ系、メタ系)、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維などの合成繊維等が挙げられる。補強布は、これらのうちの1種の繊維で形成されてもよく、2種以上の繊維で形成されてもよい。
繊維部材層15を構成する繊維としては、良好な吸水性能を有する観点から、セルロース系繊維が好ましい。
これらのなかでは、繊維材料としての実用性の観点から綿繊維が好ましい。
好ましくは、心線17には、エポキシ樹脂溶液又はイソシアネート樹脂溶液に浸漬して加熱する接着処理、RFL水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理、及びゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理のうちの1種又は2種以上の接着処理が施される。
背面補強布13には、接着ゴム層12に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理、及び/又は、接着ゴム層12の外周面にゴム糊をコーティングして乾燥させる接着処理、が施されていてもよい。背面補強布13がゴム層(図示されず)を介して接着ゴム層12に貼り付けられてもよい。
また、背面ゴム層を設ける場合、この背面ゴム層は、圧縮ゴム層本体14及び接着ゴム層本体16の一方又は両方と同一のゴム組成物で構成されてもよいし、圧縮ゴム層本体14及び接着ゴム層本体16のいずれとも異なるゴム組成物で構成されてもよい。
背面ゴム層が接着ゴム層本体16と異なるゴム組成物で構成される場合は、ベルト背面と平プーリとの接触により粘着が生じるのを抑制する観点から、背面ゴム層は接着ゴム層本体16よりもやや硬めのゴム組成物で構成されるのが好ましい。
各Vリブ18は、例えば、リブ高さが2.0mm以上3.0mm以下、及び基端間の幅が1.0mm以上3.6mm以下である。Vリブ18の個数は、例えば3個以上10個以下である(図1では6個)。
以下に、図1に示された摩擦伝動ベルトBの、滑り速度と摩擦係数との関係が説明されるが、その前に、この関係を得るために使用するベルト走行試験機、そしてこの関係を得るための評価方法が説明される。
図2は、被水時動的摩擦係数の評価用ベルト走行試験機20のプーリレイアウトの一例を示す。このベルト走行試験機20(以下、試験機)は、摩擦伝動ベルトBとして、6個のVリブ18が構成されたVリブドベルトB(ベルト長さ=1080mm)の被水時動的摩擦係数を評価できるように構成されている。この試験機20では、プーリの仕様を変更することで、Vベルトや平ベルトのような他の摩擦伝動ベルトBの評価が可能である。
この試験機20は4つのプーリ21を備える。4つのプーリ21は、
(1)リブプーリである第一駆動プーリ22、
(2)第一駆動プーリ22の右方に位置し、リブプーリである第二駆動プーリ23、
(3)第二駆動プーリ23の上方に位置し、リブプーリである従動プーリ24、及び
(4)従動プーリ24の左下方に位置し、平プーリであるアイドラプーリ25
である。各プーリ21のプーリ径は50mmである。各プーリ21はSUS製である。各プーリ21における、VリブドベルトBとの接触面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は3.2μmである。
この試験機20では、VリブドベルトBのリブ側が第一駆動プーリ22、第二駆動プーリ23及び従動プーリ24に接触する。VリブドベルトBの背面側がアイドラプーリ25に接触する。
第一駆動プーリ22及び第二駆動プーリ23のそれぞれにはモーター及びトルクメータが連結される。この試験機20では、第一駆動プーリ22及び第二駆動プーリ23の回転速度のコントロールと、第一駆動プーリ22及び第二駆動プーリ23に生じたトルクの計測とが可能である。
VリブドベルトBに一定の張力がかかるように、従動プーリ24に錘が連結される。この試験機20では、1個のVリブ18あたり10kgf(98N)の張力が生じるように、死荷重DWが設定される。
下記の表1には、各プーリ21の正確な配置が示される。この表1には、第一駆動プーリ22の中心を、図2におけるXY座標の原点(0,0)としたときの各プーリ21の中心座標が示される。例えば、従動プーリ24の中心座標(200,308.91)は、原点である第一駆動プーリ22の中心に対して右に200mm、上に308.91mmの位置を示している。
摩擦伝動ベルトBとしてのVリブドベルトBにおける、滑り速度と摩擦係数との関係は、次のようにして得られる。この評価方法は、18℃から28℃の雰囲気温度で実施される。
(1)図1に示されたVリブドベルトBが各プーリ21に巻き掛けられる。
(2)従動プーリ24に錘が連結される。このVリブドベルトBは6個のVリブ18を有するので、VリブドベルトBの張力は588N(60kgf)に設定される。
(3)モーターを駆動し第一駆動プーリ22及び第二駆動プーリ23が回転させられる。
(4)VリブドベルトBの第一駆動プーリ22への進入部において、VリブドベルトBのリブ側に毎分40mlの量の水が滴下される。
(5)第一駆動プーリ22及び第二駆動プーリ23のそれぞれの回転速度を1000rpmに設定し、VリブドベルトBが定速で走行させられる。
(6)定速走行を開始してから30秒後、第二駆動プーリ23の回転速度を、30秒間で500rpmまで、一定の加速度で減速し、この減速過程における第二駆動プーリ23のトルクが計測される。
(7)計測したトルクから、第一駆動プーリ22と第二駆動プーリ23との間の張力で表される張り側張力T1(N)と、第二駆動プーリ23と従動プーリ24との間の張力で表される緩み側張力T2(N)とを求め、オイラーの式を用いて動的摩擦係数(以下、摩擦係数)が算出される。これにより、ベルト本体10の速度と第二駆動プーリ23の速度との差である滑り速度と摩擦係数との関係が得られる。
図3Aは、図2に示されたベルト走行試験機40を用いて得られる、図1に示された摩擦伝動ベルトB(VリブドベルトB)の摩擦係数の測定結果を示す。この図3Aには、滑り速度と摩擦係数との関係が示される。この図3Aにおいて、横軸Vは滑り速度(mm/s)である。第二駆動プーリ23の減速開始時における滑り速度Vが0mm/sである。縦軸μは摩擦係数である。
Dm=(μx-μr)/μx×100 ・・・・・(1)
そして、この摩擦伝動ベルトBでは、第二滑り速度V2と第一滑り速度V1との差(V2-V1)が500mm/sであるとき、式(1)で示される摩擦係数μの低下率Dmは、20%以下である。
そこで、評価対象ゾーンをn個(nは2以上の自然数)の区間に等分し、それぞれの区間の開始の滑り速度をスタート速度、このスタート速度における摩擦係数μをスタート摩擦係数とし、この区間の終了の滑り速度をエンド速度、このエンド速度における摩擦係数μをエンド摩擦係数としたとき、
m番目(mは1以上n以下の自然数)の区間Smにおけるスタート摩擦係数をμsm、エンド摩擦係数をμemとして、次の式(2)で示される摩擦係数μの低下率Dsmが、全ての区間において、20/n%以下であるのが好ましい。
Dsm=(μsm-μem)/μsm×100 ・・・・・(2)
評価対象ゾーンの幅が500mm/sであるので、評価対象ゾーンを5個に等分した場合、各区間Smの幅は100mm/sである。
Ds1=(μs1-μe1)/μs1×100 ・・・・・(2a)
Ds2=(μs2-μe2)/μs2×100 ・・・・・(2b)
Ds3=(μs3-μe3)/μs3×100 ・・・・・(2c)
Ds4=(μs4-μe4)/μs4×100 ・・・・・(2d)
Ds5=(μs5-μe5)/μs5×100 ・・・・・(2e)
図5A及び図5Bは、本実施形態に係るVリブドベルトBの製造で用いる架橋装置30を示す図である。図6A、図6B及び図6Cは、本実施形態に係るVリブドベルトBの製造方法を説明するための図である。
ここでは、実施例1~6及び比較例1のVリブドベルトを作製し、評価した。
繊維部材層の形成のために、接着処理を施すことなく、次に示す3種類の編布を用意した。
(編布A)綿繊維及びポリウレタン繊維からなる編糸で編んだ丸編の編布
(編布B)綿繊維、ナイロン繊維及びポリウレタン繊維からなる編糸で編んだ丸編の編布
(編布C)ナイロン繊維及びポリウレタン繊維からなる編糸で編んだ丸編の編布
繊維部材層を構成する繊維に占めるセルロース系繊維(綿繊維)の割合は、編布Aでは84%、編布Bでは47%、そして編布Cでは0%であった。
EPDMと、硫黄とを含むゴム配合剤を配合した未架橋ゴム組成物を混練後、カレンダーロールで圧延し、圧縮ゴム層本体用の未架橋ゴムシートと、接着ゴム層本体用の未架橋ゴムシートを作製した。
心線のための材料として、ポリエステル繊維の撚り糸を準備し、これをRFL水溶液に浸漬し、その後、加熱乾燥する接着処理を行ったものを用意した。
背面補強布として、綿ポリエステル混紡糸を用いた織布をRFL水溶液に浸漬し、その後、加熱乾燥する接着処理を行ったものを用意した。
上記実施形態と同様の構成を有し、繊維部材層として編布Aを使用し、圧縮ゴム層本体材料、接着ゴム層本体材料、心線及び背面補強布として上述したものを使用したVリブドベルトを、図5A~図6Cを参照しながら説明した製造方法で作製し、実施例1のVリブドベルトとした。
この実施例1では、繊維部材層の延伸率は180%、成型圧力は0.7MPaに設定された。圧縮ゴム層の表層部における空隙率は38%であった。
延伸率及び成型圧力を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2~4及び比較例1のVリブドベルトを作製した。
実施例2~4及び比較例1のそれぞれにおける表層部の空隙率は、表2に示される通りであった。
繊維部材層に編布Bを用い、延伸率及び成型圧力を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5のVリブドベルトを作製した。
この実施例4では、表層部の空隙率は22%であった。
繊維部材層に編布Cを用い、延伸率及び成型圧力を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例6のVリブドベルトを作製した。
この実施例6では、表層部の空隙率は20%であった。
図2に示されたベルト走行試験機20を用いて、上述した評価方法にしたがって、実施例1~6及び比較例1について、滑り速度と摩擦係数との関係を得、上述の式(1)で示される摩擦係数の低下率Dmを求めた。さらに第一滑り速度V1から第二滑り速度V2までのゾーンを5個の区間に等分し、それぞれの区間について、上述の式(2)で示される摩擦係数の低下率Dsm、すなわち、低下率Ds1、Ds2、Ds3、Ds4及びDs5を求めた。その結果が下記の表2に示されている。
図7は、被水時異音評価用ベルト走行試験機40のプーリレイアウトを示す。図7中、符号BはVリブドベルトである。
また、圧縮ゴム層の表層部における空隙率が大きいほど、摩擦係数の低下率を小さく抑えることができることも確認されている。
11 圧縮ゴム層
12 接着ゴム層
13 背面補強布
14 ゴム層本体(圧縮ゴム層本体)
14a Vリブ本体
15 繊維部材層
16 接着ゴム層本体
17 心線
18 Vリブ
20、40 走行試験機
30 架橋装置
14’、16’未架橋ゴムシート
B 摩擦伝動ベルト(Vリブドベルト)
K 表層部
Claims (7)
- プーリと接触することで生じる摩擦力によって前記プーリに動力を伝達するベルト本体を備える、摩擦伝動ベルトであって、
前記ベルト本体が、前記プーリと接触する圧縮ゴム層を備え、
前記圧縮ゴム層が、ゴム組成物からなるゴム層本体と、前記ゴム層本体に積層された繊維部材層とで構成され、
前記繊維部材層が織布又は編布であり、
前記繊維部材層が前記プーリと接触し、
被水時における、前記ベルト本体の速度と前記プーリの速度との差である滑り速度と、摩擦係数との関係において、最大摩擦係数を示す滑り速度を第一滑り速度、前記第一滑り速度から第二滑り速度まで前記滑り速度を増加させたときの摩擦係数を参照摩擦係数とし、前記第二滑り速度と前記第一滑り速度との差が500mm/sであるとき、
前記参照摩擦係数が前記最大摩擦係数よりも低く、
前記最大摩擦係数をμx、前記参照摩擦係数をμrとして、次の式(1)で示される摩擦係数の低下率Dmが、20%以下である、
摩擦伝動ベルト。
Dm=(μx-μr)/μx×100 ・・・・・(1) - 前記第一滑り速度から前記第二滑り速度までのゾーンをn個(nは2以上の自然数)の区間に等分し、それぞれの区間の開始の滑り速度をスタート速度、前記スタート速度における摩擦係数をスタート摩擦係数とし、前記区間の終了の滑り速度をエンド速度、前記エンド速度における摩擦係数をエンド摩擦係数としたとき、
m番目(mは1以上n以下の自然数)の区間における前記スタート摩擦係数をμsm、前記エンド摩擦係数をμemとして、次の式(2)で示される摩擦係数の低下率Dsmが、全ての前記区間において、20/n%以下である、
請求項1に記載の摩擦伝動ベルト。
Dsm=(μsm-μem)/μsm×100 ・・・・・(2) - 前記圧縮ゴム層の表層部における空隙率が10%以上である、
請求項1又は2に記載の摩擦伝動ベルト。 - 前記空隙率が20%以上である、
請求項3に記載の摩擦伝動ベルト。 - 前記表層部が、前記圧縮ゴム層の表面から深さ方向に200μmまでの部分である、
請求項3又は4に記載の摩擦伝動ベルト。 - 前記繊維部材層が編布で構成され、
前記編布が、主な繊維として、セルロース系繊維を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の摩擦伝動ベルト。 - 前記圧縮ゴム層に、内周側に垂下する複数のVリブが構成される、
請求項1から6のいずれか一項に記載の摩擦伝動ベルト。
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