以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る密封装置が使用される転がり軸受の一例である自動車用のハブベアリングを示す。但し、本発明の用途はハブベアリングには限定されず、他の転がり軸受にも本発明は適用可能である。また、以下の説明では、ハブベアリングは、玉軸受であるが、本発明の用途は玉軸受には限定されず、他の種類の転動体を有する、ころ軸受、針軸受などの他の転がり軸受にも本発明は適用可能である。また、自動車以外の機械に使用される転がり軸受にも本発明は適用可能である。
このハブベアリング1は、外輪回転型であり、静止した車軸に内輪が固定され、車輪に固定される外輪が車輪とともに回転する。ハブベアリング1は、車軸が挿入される孔2を有する内輪(内側部材)6と、内輪6の外側に配置された外輪(外側部材)8と、内輪6と外輪8の間に1列に配置された複数の玉10と、内輪6と外輪8の間に1列に配置された複数の玉12と、これらの玉を定位置に保持する複数の保持器14,15を有する。
内輪6は静止した車軸に固定されている。外輪8は、車輪に固定されるハブの役割を有する。したがって、外輪8には、ハブフランジ18が形成されおり、ハブフランジ18には、ハブボルト19によって、車輪を取り付けることができる。このように、外輪8は、車輪に固定されて車輪とともに回転する。但し、外輪8とハブフランジ18を別個の部材として形成し、これらを固定してもよい。
車軸およびハブベアリング1の共通の中心軸線Axは、図1の上下方向に延びている。図1においては、中心軸線Axに対する一方の部分のみが示されている。詳細には図示しないが、図1の下側は自動車の車輪が配置される外側(アウトボード側)であり、上側は差動歯車などが配置される内側(インボード側)である。図1に示した外側、内側は、それぞれ径方向の外側、内側を意味する。
外輪8のインボード側の円筒状の端部8Aの付近には、外輪8と内輪6の間の間隙を封止する密封装置20が配置されている。密封装置20は、ハブベアリング1の内部空間からのグリース、すなわち潤滑剤の流出を防止するとともに、外部からハブベアリング1の内部への異物(水(泥水または塩水を含む)およびダストを含む)の流入を防止する。図1において、矢印Fは、外部からの異物の流れの方向の例を示す。
図2に示すように、密封装置20は、ハブベアリング1の外輪8のインボード側の端部8Aと、ハブベアリング1の内輪6との間隙内に配置される。密封装置20は環状であるが、図2においては、その中心軸線に対する一方の部分のみが示されている。図2から明らかなように、密封装置20は、第1のシール部材30と第2のシール部材40を備える複合構造を有する。
第1のシール部材30は、静止した内輪6に固定され、回転しない固定シール部材である。第1のシール部材30は、剛性材料、例えば金属から形成された剛性環31を有する。図示しないが、剛性環31に、弾性材料、例えばエラストマーで形成された弾性環を取り付けてもよい。
剛性環31は、ほぼL字形の断面形状を有する。具体的には、剛性環31は、円筒状のスリーブ31Aと、スリーブ31Aから径方向外側に広がる円環状のフランジ31Bを備える。スリーブ31Aは内輪6に取り付けられる。具体的には、スリーブ31Aには、内輪6の端部が締まり嵌め方式で嵌め入れられる。フランジ31Bは平板であり、スリーブ31Aの軸線に対して垂直な平面内にある。フランジ31Bはスリーブ31Aのインボード側に配置されている。
第2のシール部材40は、回転する外輪8に固定され、回転する回転シール部材である。第2のシール部材40は、弾性環41および剛性環42を有する複合構造である。弾性環41は、弾性材料、例えばエラストマーで形成されている。剛性環42は、剛性材料、例えば金属から形成されており、弾性環41を補強する。剛性環42は、ほぼL字形の断面形状を有する。剛性環42の一部は、弾性環41に埋設されており、弾性環41に密着している。
第2のシール部材40は、管状部44、円板部45、グリースリップ(ラジアルリップ)46、シールリップ(ラジアルリップ)47およびサイドリップ48を有する。
管状部44は外輪8に取り付けられる。具体的には、管状部44は外輪8の端部8Aに締まり嵌め方式で嵌め入れられる。管状部44は、弾性環41と剛性環42から構成されている。
円板部45は、管状部44から径方向内側に広がり、第1のシール部材30の剛性環31のフランジ31Bに対向する。円板部45は管状部44のアウトボード側に配置されている。円板部45も、弾性環41と剛性環42から構成されている。
グリースリップ46とシールリップ47は、円板部45の径方向内側に配置されてスリーブ31Aに摺動可能に接触する。グリースリップ46とシールリップ47は、弾性環41から構成されている。
外輪8と内輪6の間において、円板部45のアウトボード側の空間(ハブベアリング1の内部空間)には、グリースが配置されている。このグリースは、玉10,12、外輪8、内輪6の相互の摩擦を低減させる(図1参照)。
グリースリップ46は、円板部45の径方向内端の弾性部分から径方向内側かつアウトボード側に向けて斜めに延びる、円錐台形状または円錐筒状の形状の薄板である。グリースリップ46の先端はスリーブ31Aの外周面に接触する。グリースリップ46は、ハブベアリング1の内部空間からインボード側へのグリースの流出を阻止する。
シールリップ47は、円板部45の径方向内端の弾性部分からインボード側に向けて延びる円環部49に形成された隆起である。円環部49も弾性環41から構成されている。第1のシール部材30と第2のシール部材40が組み合わせられない初期状態では、この隆起は仮想線で示す三角形の断面を有する。シールリップ47は、スリーブ31Aの外周面に接触し、グリースリップ46をバックアップする。すなわち、アウトボード側からグリースリップ46を通過したグリースのインボード側への流出を阻止する。
円環部49の外周にはガータースプリング50が巻かれている。ガータースプリング50は、シールリップ47に径方向内側への圧縮力を与え、スリーブ31Aに対するシールリップ47の緊縛力を高める。
サイドリップ48は、円板部45の弾性部分からフランジ31Bに向けて延びる薄板である。サイドリップ48は弾性環41から構成されている。サイドリップ48は、円板部45に隣接する厚い基部51と、基部51から径方向外側かつフランジ31Bに向けて斜めに延びて円錐台形状または円錐筒状の形状を有する薄い先端部52を有する。外輪8および第2のシール部材40の低速回転時には、サイドリップ48の先端部52は、フランジ31Bに摺動可能に接触する。
管状部44は、第1のシール部材30のフランジ31Bの外端縁のさらに外側に配置されている。管状部44と第1のシール部材30のフランジ31Bの間には、環状の間隙54が設けられている。ハブベアリング1の外部から間隙54を通じて、第1のシール部材30のフランジ31Bと第2のシール部材40の円板部45の間の空間55に異物が侵入しうる。逆に、異物が空間55から間隙54を通じて外部に排出されうる。
外輪8および第2のシール部材40の低速回転時(回転速度が閾値より小さい場合)には、サイドリップ48は、第1のシール部材30のフランジ31Bに接触し、空間55の内部に侵入した異物がシールリップ47に向けてさらに侵入しないように阻止する役割を有する。低速回転時とは、外輪8および第2のシール部材40の回転が停止している時を含む。上記閾値は、例えば、回転速度(または回転数)であり、閾値は、一定の値であってもよく、変化する値であってもよい。例えば、閾値は、密封装置20の使用時間等に伴って変化(継時変化)することもあり、また、密封装置20の雰囲気温度等の使用態様に応じて変化することもある。フランジ31Bから第2のシール部材40に与えられるトルクを低減するため、サイドリップ48にはグリースがコートされてもよい。このグリースは、典型的には玉10,12、外輪8、内輪6を潤滑するグリースとは別種である。
一方、外輪8および第2のシール部材40の高速回転時(回転速度が閾値より大きい場合)には、図3に示すように、サイドリップ48、特に先端部52は、サイドリップ48自身にかかる遠心力によって、第1のシール部材30のフランジ31Bから離れるよう変形する。したがって、サイドリップ48の先端部52とフランジ31Bの間に、円環状の間隙56が設けられる。外輪回転型のハブベアリング1に使用される密封装置20においては、外輪8に固定される第2のシール部材40に遠心力がかかるからである。このように、サイドリップ48に大きい遠心力がかかると、先端部52がフランジ31Bから離れるように、サイドリップ48の寸法は設計されている。
外輪8および第2のシール部材40の高速回転時には、サイドリップ48がフランジ31Bから離れるが、第2のシール部材40自体が高速で回転しているので、空間55の内部には径方向外側に向かう気流又は遠心力が生じ、空間55の内部に侵入した異物が間隙54を通じて外部に排出される。また、サイドリップ48の径方向内部の空間57からも気流又は遠心力によって異物が間隙56を通じて、空間55に排出され、さらに間隙54を通じて外部に排出される。
以上のように、回転する外輪8に取り付けられた第2のシール部材40のサイドリップ48は、外輪8の回転速度が閾値より小さい場合には、フランジ31Bに摺動可能に接触し、密封装置20の封止性能を確保する。すなわち、サイドリップ48は、空間55に侵入した異物がシールリップ47に向けてさらに侵入しないように阻止する。
一方、外輪8の回転速度が閾値より大きい場合には、第2のシール部材40のサイドリップ48は、サイドリップ48自身にかかる遠心力によって、フランジ31Bから離れるよう変形する。したがって、回転する外輪8にかかるトルクが小さく、サイドリップ48の摩耗、摩擦熱による温度の上昇が抑制される。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る密封装置20の他の使用形態を例示すための図である。密封装置20は、例えば図4に示すようなインホイールモータユニットにも用いることができる。インホイールモータユニットは、ハブベアリングとモータとが一体になって構成する駆動装置であり、車両の車輪に取り付けられ、モータ出力をハブベアリングを介して車輪に供給して車輪に動力を与え、また、車輪の動力をモータジェネレータを介して電力に変換して電気を発生する。
例えば図4に示すように、インホイールモータユニット100は、内輪回転型のハブベアリング3と、ハブベアリング3に取り付けられた外側部材としての外側ケーシング101、内側部材としての内側ケーシング102、およびモータジェネレータ103とを備えている。具体的には、外側ケーシング101は、筒状の部材であり、ハブベアリング3を収容する内側の空間を形成している。外側ケーシング101は、ハブベアリング3の内輪7が備えるハブフランジ18とハブフランジ18に取り付けられるブレーキディスク110との間に挟まれ、ハブボルト19によって内輪7に車輪を固定することにより、ハブフランジ18とブレーキディスク110との間に固定される。
内側ケーシング102は、ハブベアリング3の外輪9を収容する内側の空間を形成している筒状の部材である筒部102aと、筒部102aのインボード側の端部から径方向外側に広がる円板状の部分である円板部102bとを有している。筒部102aは、外輪9が内側の空間に嵌合されて固定されるような形状となっている。
外側ケーシング101および内側ケーシング102は、図4に示すように、外側ケーシング101の径方向内側の面と、内側ケーシング102の筒部102aの径方向外側の面とが互いに対向して、外側ケーシング101と筒部102aとの間に環状の空間が形成される形状となっている。また、外側ケーシング101および内側ケーシング102は、図4に示すように、外側ケーシング101のインボード側の端部(端部101a)が、中心軸線Ax方向において内側ケーシング102の円板部102bに対向する形状となっている。外側ケーシング101の端部101aと円板部102bとの間には環状の隙間が形成されている。
モータジェネレータ103は、中心軸線Axに沿って延びる筒状の部材であり、外側ケーシング101と内側ケーシング102の筒部102aとの間の環状の空間に設けられている。モータジェネレータ103は、具体的には、ロータ104と、ステータ105とを備えており、ロータ104は外側ケーシング101に固定されており、ステータ105は、内側ケーシング102の筒部102aに固定されている。
インホイールモータユニット100において、密封装置20は、外側ケーシング101の端部101aと内側ケーシング102の円板部102bとの間の環状の隙間から、インホイールモータユニット100の内部に、異物が侵入することを防ぐために設けられている。例えば図4に示すように、密封装置20は、外側ケーシング101の端部101aと内側ケーシング102の円板部102bとの間に取り付けられている。具体的には、第1のシール部材30のスリーブ31Aが、内側ケーシング102の円板部102bの取付面102cに締まり嵌め方式で嵌着されて、第1のシール部材30は内側ケーシング102の円板部102bに固定されている。また、具体的には、第2のシール部材40の管状部44が、外側ケーシング101の端部101aの取付面101bに締まり嵌め方式で嵌着されて、第2のシール部材40は外側ケーシング101に固定されている。なお、内側ケーシング102の円板部102bの取付面102cは、中心軸線Axに沿って延びる円筒面状の面であり、外側ケーシング101の端部101aの取付面101bは、中心軸線Axに沿って延びる円筒面状の面である。また、取付面101bと取付面102cとは、径方向において互いに対向している。
密封装置20は、インホイールモータユニット100においても、上述のハブベアリング1に取り付けられた場合と同様に作用する(図3参照)。具体的には、回転する外側ケーシング101に取り付けられた第2のシール部材40のサイドリップ48は、外側ケーシング101および第2のシール部材40の回転速度が閾値より小さい低速回転時には、フランジ31Bに摺動可能に接触し、密封装置20の封止性能を確保する。すなわち、サイドリップ48は、空間55に侵入した異物がシールリップ47に向けてさらに侵入しないように異物の侵入を阻止する。一方、外側ケーシング101および第2のシール部材40の回転速度が閾値より大きい高速回転時には、第2のシール部材40のサイドリップ48は、サイドリップ48自身にかかる遠心力によって、フランジ31Bから離れる方向に変形して、間隙56が形成される。したがって、回転する外側ケーシング101にかかるトルクは小さく、また、サイドリップ48の摩耗、摩擦熱による温度の上昇が抑制される。
また、外側ケーシング101および第2のシール部材40の高速回転時には、サイドリップ48がフランジ31Bから離れるが、第2のシール部材40自体が高速で回転しているので、空間55の内部には径方向外側に向かう気流又は遠心力が生じ、空間55の内部に侵入した異物が間隙54を通じて外部に排出される。また、サイドリップ48の径方向内部の空間57からも気流又は遠心力によって異物が間隙56を通じて、空間55に排出され、さらに間隙54を通じて外部に排出される。
インホイールモータユニットには、高速回転駆動させられるものがあり、このようなインホイールモータユニットにおいては、密封装置に基づくトルクの低減が求められる。本発明の第1の実施形態に係る密封装置20によれば、上述のように、外側ケーシング101の回転速度が閾値より大きい高速回転時に、回転する外側ケーシング101にかかるトルクを小さくすることができる。また、外側ケーシング101の回転速度が閾値より大きい高速回転時に、サイドリップ48の摩耗、摩擦熱による温度の上昇を抑制することができ、密封装置20の性能低下や寿命の低下を抑制することができる。一方、この高速回転時に、径方向外側に向かう気流又は遠心力が生じるため、異物の侵入を抑制することができる。このように、本発明の第1の実施形態に係る密封装置20は、インホイールモータにも好適に用いることができる。
次いで、本発明の第2の実施形態に係る密封装置21について説明する。本発明の第2の実施形態に係る密封装置21は、上述の本発明の第1の実施形態に係る密封装置20に対して、第2のシール部材の構成が異なる。また、本発明の第2の実施形態に係る密封装置21は、内輪回転型の適用対象に用いられ、適用対象において上述の密封装置20と異なる。以下、密封装置21の構成について、密封装置20と同じ構成又は同様の機能を有する構成については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。
図5に示すように、環状の密封装置21は、上述の密封装置20の第1のシール部材30と、密封装置20の第2のシール部材40とは異なる第2のシール部材60とを備えている。第2のシール部材60は、上述の密封装置20の第2のシール部材40の剛性環42を有しており、また、上述の密封装置20の第2のシール部材40の弾性環41とは異なる弾性環61を有している。なお、図5においては、密封装置21の軸線xに対する一方の部分のみが示されている。また、図5において、密封装置21は、後述する使用状態における状態(配置)で示されている。
弾性環61は、密封装置20の第2のシール部材40の弾性環41と同様に、弾性材料、例えばエラストマーで形成されている。弾性環61は、弾性環41と同様に剛性環42に取り付けられており、具体的には、弾性環61は、剛性環42の一部に密着しており、また、剛性環42の一部は、弾性環61に埋設されている。
第2のシール部材60の弾性環61は、図5に示すように、第2のシール部材40の弾性環41と同様に、管状部44の部分、円板部45の部分およびサイドリップ62を有しているが、第2のシール部材40の弾性環41とは異なり、グリースリップ(ラジアルリップ)46およびシールリップ(ラジアルリップ)47を有していない。また、第2のシール部材60は、第2のシール部材40とは異なり、円環部49およびガータースプリング50を有していない。
サイドリップ62は、第2のシール部材40のサイドリップ48と同様の形状を有しており、円板部45の弾性部分からフランジ31Bに向けて延びる薄板状の弾性環61の部分である。サイドリップ62は、円板部45に隣接する環状の厚い基部62aと、基部62aから径方向外側かつフランジ31Bに向けて斜めに延びて円錐台形状又は円錐筒状の形状を有する環状の薄い先端部62bとを有している。
図5に示すように、第1のシール部材30は、第2のシール部材60を径方向外側から覆うように配置される。このため、使用状態において、第2のシール部材60は、第1のシール部材30よりも径方向内側に固定される。また、第1のシール部材30のフランジ31Bは、アウトボード側に面し、第2のシール部材60の円板部45は、インボード側に面する。
後述する密封装置21の使用状態において、密封装置21の適用対象およびサイドリップ62の低速回転時(回転速度が閾値より小さい場合)には、サイドリップ62の先端部62bが、フランジ31Bに摺動可能に接触するように、サイドリップ62は設計されている。一方、密封装置21の適用対象およびサイドリップ62の高速回転時(回転速度が閾値より大きい場合)には、サイドリップ62が変形して、サイドリップ62の先端部62bがフランジ31Bから離れる方向に移動するように、サイドリップ62は設計されている。ただし、密封装置21の適用対象およびサイドリップ62の高速回転時においても、サイドリップ62の先端部62bとフランジ31Bとの接触は維持されるように、サイドリップ62は設計されている。
密封装置21においても、図5に示すように、第2のシール部材60の管状部44と、第1のシール部材30のフランジ31Bの外端縁31Btとの間には、環状の間隙54が設けられている。つまり、使用状態において、管状部44のアウトボード側の端部44aは、フランジ31Bの外端縁31Btに径方向において間隔を空けて対向しており、管状部44の端部44aとフランジ31Bの外端縁31Btとの間には、間隙54が形成されている。間隙54は、ラビリンスシールを形成する。
また、図5に示すように、第2のシール部材60の円板部45と、第1のシール部材30のスリーブ31Aとの間には、環状の間隙63が設けられている。つまり、使用状態において、第2のシール部材60の円板部45の外側の縁である外端縁45aは、第1のシール部材30のスリーブ31Aのインボード側の部分(部分31Ap)に径方向において間隔を空けて対向しており、円板部45の外端縁45aとスリーブ31Aの部分31Apとの間には、間隙63が形成されている。間隙63は、ラビリンスシールを形成する。
次いで、上述の構成を有する密封装置21の作用について説明する。密封装置21は、適用対象に取り付けられて使用状態になる。密封装置21の適用対象は、例えばハブベアリングであり、密封装置21の適用対象のハブベアリングは、内輪回転型のハブベアリングである。図6は、密封装置21が取り付けられた密封装置21の適用対象としてのハブベアリング4の断面図である。
図6に示すように、ハブベアリング4は、内輪120と外輪130とを備え、これらの内輪120と外輪130との間には、1列に配置された複数の玉10と、1列に配置された複数の玉12と、これらの玉を定位置に保持する複数の保持器14,15とが設けられている。内輪120と外輪130とは、転動体である玉10,12が設けられることによって、中心軸線Axで示す同軸上を互いに相対回転自在とされている。具体的には、車両等に取り付けられたハブベアリング4の使用状態において、外輪130は例えば車両の懸架装置に固定され、内輪120は外輪130に対して相対回動可能になる。内輪120は、具体的には、内側輪121とハブ輪122とを有しており、ハブ輪122は、中心軸線Axに沿って延びる筒状の軸部123と、ハブフランジ124とを有している。ハブフランジ124は、軸部123のアウトボード側の一端から径方向外側に向かって円板状に広がる部分であり、図示しない車輪が複数本のハブボルト19によって取り付けられる部分である。内側輪121は、内輪120と外輪130との間の空間内に玉10,12を保持するために、内輪120の軸部123のインボード側の端部に嵌合されている。
外輪130は、中心軸線Ax方向に延びる貫通孔131を有しており、この貫通孔131には、内輪120のハブ輪122の軸部123と内側輪121とが挿入されており、内側輪121および軸部123と貫通孔131との間に中心軸線Axに沿って延びる環状の空間が形成されている。この空間内には、上述のように玉10,12が収容されて保持器14,15によって保持されており、また、潤滑剤が塗布又は注入されている。内側輪121および軸部123と貫通孔131との間の空間がインボード側において開放された開口を形成するハブベアリング4のインボード側開口部126には、密封装置21が取り付けられ、内側輪121および軸部123と貫通孔131との間の空間がアウトボード側において開放された開口を形成するハブベアリング4のアウトボード側開口部127には、他の密封装置140が取り付けられている。密封装置21,140によって、ハブベアリング4の内部空間の密封が図られており、内部空間の潤滑剤が外部に漏れ出ることの防止が図られており、外部から異物が内部空間に侵入することの防止が図られている。密封装置140は、従来公知の密封装置であり、詳細な説明は省略する。なお、密封装置140として、密封装置21を適用することもできる。密封装置21が適用されるハブベアリングの構成は、上述のハブベアリング4の構成に限られない。
具体的には、外輪130のインボード側の円筒状の端部130Aに、密封装置21の第1のシール部材30のスリーブ31Aが取り付けられ、また、内輪120の内側輪121のインボード側の円筒状の端部121Aに、密封装置21の第2のシール部材60の管状部44が取り付けられ、密封装置21はハブベアリング4に取り付けられる(図5参照)。第1のシール部材30のスリーブ31Aは、具体的には、外輪130の端部130Aに締り嵌め方式で嵌め入れられ、第2のシール部材60の管状部44は、具体的には、内側輪121の端部121Aに締り嵌め方式で嵌め入れられる。ハブベアリング4に取り付けられた密封装置21の軸線xは、ハブベアリング4の中心軸線Axに一致又は略一致する。
上述のように、密封装置21はハブベアリング4に固定される。第1のシール部材30は、静止した外輪130に固定され、回転しない固定シール部材である。一方、第2のシール部材60は、回転する内輪120に固定され、回転する回転シール部材である。ハブベアリング4において密封装置21は、内輪120の回転速度に応じて異なった作用をする。
具体的には、内輪120および第2のシール部材60の低速回転時(回転速度が閾値より小さい場合)には、図5に示すように、サイドリップ62は、第1のシール部材30のフランジ31Bに接触し、空間55の内部に侵入した異物がハブベアリング4の内部空間に向けてさらに侵入しないように異物の侵入を阻止する役割を有する。低速回転時とは、内輪120および第2のシール部材60の回転が停止している時を含む。フランジ31Bから第2のシール部材60に与えられるトルクを低減するため、サイドリップ62にはグリースがコートされてもよい。このグリースは、典型的には玉10,12、内輪120、外輪130を潤滑するグリースとは別種である。
一方、内輪120および第2のシール部材60の高速回転時(回転速度が閾値より大きい場合)には、図5に点線で示すように、サイドリップ62、特に先端部62bは、サイドリップ62自身にかかる遠心力によって、第1のシール部材30のフランジ31Bから離れるよう変形する。ただし、サイドリップ62は、この高速回転時に加わる遠心力によって、フランジ31Bから完全に離れることがないように設計されている。このため、密封装置20とは異なり、内輪120および第2のシール部材60の高速回転時に、サイドリップ62の先端部62bとフランジ31Bの間に、円環状の間隙が設けられることはないが、サイドリップ62に加わる遠心力により、先端部62bとフランジ31Bとの間の締め代またはサイドリップ62の反力は低減する。これにより、内輪120の高速回転時に、サイドリップ62とフランジ31Bとの間の摺動抵抗を低減させることができ、回転する内輪120にかかるトルクを小さくすることができる。また、サイドリップ62の摩耗、摩擦熱による温度の上昇を抑制することができる。
また、図5に示すように、第2のシール部材60の管状部44の端部44aと、第1のシール部材30のフランジ31Bの外端縁31Btとの間には、環状の間隙54が設けられており、間隙54はラビリンスシールとして機能する。このため、ハブベアリング4の内部空間に異物が侵入することが抑制されている。
一方、間隙54が形成するラビリンスシールによって、ハブベアリング4の内部空間から潤滑剤が流出することが防止されており、また、サイドリップ62によって、ハブベアリング4の外部に潤滑剤が流出することが防止されている。このように、密封装置21は、内輪120の回転速度に関わらず、間隙54及びサイドリップ62によって、ハブベアリング4の内部空間から潤滑剤が流出することを抑制することができる。
また、図5に示すように、第2のシール部材60の円板部45の外端縁45aと、第1のシール部材30のスリーブ31Aの部分Apとの間には、環状の間隙63が設けられており、間隙63はラビリンスシールとして機能する。このため、ハブベアリング4の外部から密封装置21の内部の空間55に異物が侵入することが防止されている。このように、密封装置21は、間隙63によっても、ハブベアリング4の内部空間に異物が侵入することを抑制することができる。また、間隙63は、ハブベアリング4の外部に潤滑剤が流出することを抑制することができる。
以上のように、回転する内輪120に取り付けられた第2のシール部材60のサイドリップ62は、内輪120の回転速度が閾値より小さい場合には、フランジ31Bに摺動可能に接触し、密封装置21の封止性能を確保する。すなわち、低速回転時において、サイドリップ62は、空間55に侵入した異物がハブベアリング4の内部空間に向けてさらに侵入しないように異物の侵入を阻止する。
一方、内輪120の回転速度が閾値より大きい場合には、第2のシール部材60のサイドリップ62は、サイドリップ62自身にかかる遠心力によって、フランジ31Bとの接触が維持される範囲でフランジ31Bから離れるように変形する。したがって、高速回転時において、密封装置21は、封止性能を確保しつつ、回転する内輪120にかかるトルクを低減し、また、サイドリップ62の摩耗、摩擦熱による温度の上昇を抑制する。
次いで、本発明の第3の実施形態に係る密封装置22について説明する。本発明の第3の実施形態に係る密封装置22は、上述の本発明の第1の実施形態に係る密封装置20に対して、第1のシール部材及び第2のシール部材の構成が異なる。また、本発明の第3の実施形態に係る密封装置22は、上述の本発明の第2の実施形態に係る密封装置21と同様に内輪回転型の適用対象に用いられ、適用対象において上述の密封装置20とは異なる。以下、密封装置22の構成について、密封装置20と同じ構成又は同様の機能を有する構成については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。
図7に示すように、環状の密封装置22は、上述の密封装置20の第1のシール部材30とは異なる第1のシール部材70と、密封装置20の第2のシール部材40とは異なる第2のシール部材65とを備えている。第1のシール部材70は、上述の密封装置20の第2のシール部材30の剛性環42と、弾性環71とを有している。また、第2のシール部材65は、上述の密封装置20の第1のシール部材30の剛性環31と、弾性環66とを有している。なお、図7においては、密封装置22の軸線xに対する一方の部分のみが示されている。また、図7において、密封装置22は、後述する使用状態における状態(配置)で示されている。
図7に示すように、第1のシール部材70は、第2のシール部材65を径方向外側から覆うように配置される。このため、使用状態において、第2のシール部材65は、第1のシール部材70よりも径方向内側に固定される。また、第2のシール部材65のフランジ31Bは、インボード側に面し、第1のシール部材70の円板部45は、アウトボード側に面する。
第1のシール部材70の弾性環71は、弾性材料、例えばエラストマーで形成されている。弾性環71は、剛性環42に取り付けられており、具体的には、弾性環71は、剛性環42の一部に密着しており、また、剛性環42の一部は、弾性環71に埋設されている。弾性環71は、図7に示すように、密封装置20の第2のシール部材40の弾性環41の管状部44の部分と、第2のシール部材40の弾性環41の円板部45の径方向内側端の部分である内側端部72と、グリースリップ46と、シールリップ47とを有している。また、弾性環71は、内側端部72から延びる第2のシール部材40の円環部49を有している。また、第1のシール部材70は、第2のシール部材40と同様に、ガータースプリング50を有している。
グリースリップ46とシールリップ47とは、密封装置20の第2のシール部材40のグリースリップ46とシールリップ47と同様に、円板部45の径方向内側に配置されており、スリーブ31Aに摺動可能に接触するように形成されている。具体的には、グリースリップ46は内側端部72から延びており、シールリップ47は、内側端部72から延びる円環部49に形成されている。
図7に示すように、第1のシール部材70の円板部45において内側端部72よりも径方向外側の部分には、第1のシール部材70の弾性環71は形成されていない。このため、第1のシール部材70の円板部45において、剛性環42の内側端部72よりも径方向外側の部分は、露出されており、剛性環42は、内側端部72よりも径方向外側の円板部45の部分に、インボード側に面する円環状の面である接触面73を有している。
第2のシール部材65の弾性環66は、弾性材料、例えばエラストマーで形成されている。弾性環66は、図7に示すように、剛性環31に取り付けられており、具体的には、弾性環66は、剛性環31の一部に密着しており、また、剛性環31の一部は、弾性環66に埋設されている。
第2のシール部材65の弾性環66は、図7に示すように、剛性環31のフランジ31Bのアウトボード側の面に取り付けられている部分である基部67と、基部67から延びる部分であるサイドリップ68及びラビリンスリップ69とを有している。基部67は、軸線x周りに環状に延びており、径方向外側において、フランジ31Bの径方向外側の端部を覆うように形成されている。
サイドリップ68は、図7に示すように、弾性環66の基部67のアウトボード側に面する面(面67a)から延びており、上述の密封装置20のサイドリップ48と同様の形状を有しており、第1のシール部材70の剛性環42の接触面73に向けて延びている薄板状の弾性環66の部分である。サイドリップ68は、例えば図7に示すように、基部67に隣接する環状の厚い基部68aと、基部68aから径方向外側かつ接触面73に向けて斜めに延びて円錐台形状又は円錐筒状の形状を有する環状の薄い先端部68bとを有している。
後述する密封装置22の使用状態において、密封装置22の適用対象および第2のシール部材65の低速回転時(回転速度が閾値より小さい場合)には、サイドリップ68の先端部68bが、剛性環42の接触面73に摺動可能に接触するように、サイドリップ68は設計されている。一方、密封装置22の適用対象および第2のシール部材65の高速回転時(回転速度が閾値より大きい場合)には、上述の密封装置20のサイドリップ48と同様に、サイドリップ68の先端部68bが、剛性環42の接触面73から離れるように変形するように、サイドリップ68は設計されている。なお、サイドリップ68は、密封装置22の適用対象および第2のシール部材65の高速回転時に、先端部68bが、剛性環42の接触面73から離れない範囲で接触面73から離れる方向に移動するように、設計されていてもよい。
また、図7に示すように、第2のシール部材65のフランジ31Bの径方向外側端部を覆う基部67の部分である外側端部67bは、第1のシール部材70の管状部44のインボード側の端部における弾性環71の部分であるラビリンス受部71aに径方向において間隔を空けて対向するようになっている。このため、基部67の外側端部67bと管状部44のラビリンス受部71aとの間には、間隙74が形成される。
ラビリンスリップ69は、図7に示すように、基部67の外側端部67bからラビリンス受部71aに向かって延びており、ラビリンスリップ69の先端部69aは、ラビリンス受部71aに径方向において間隔を空けて対向するようになっている。このように、間隙74において、ラビリンスリップ69の先端部69aとラビリンス受部71aとの間には、間隙74をさらに狭める環状の間隙74aが形成されている。間隙74及び間隙74aは、ラビリンスシールを形成する。
次いで、上述の構成を有する密封装置22の作用について説明する。密封装置22は、適用対象に取り付けられて使用状態になる。密封装置22の適用対象は、例えばハブベアリングであり、密封装置22の適用対象のハブベアリングは、内輪回転型のハブベアリングである。密封装置22は、例えば上述の密封装置21が取り付けられるハブベアリング4に取り付けられる(図6参照)。なお、密封装置22が取り付けられたハブベアリング4の図示は省略されている。
密封装置22は、密封装置21と同様に、ハブベアリング4のインボード側開口部126に取り付けられる。具体的には、外輪130のインボード側の端部130Aに、密封装置22の第1のシール部材70の管状部44が取り付けられ、また、内輪120の内側輪121のインボード側の端部121Aに、密封装置22の第2のシール部材65のスリーブ31Aが取り付けられ、密封装置22はハブベアリング4に取り付けられる(図6,7参照)。第1のシール部材70の管状部44は、具体的には、外輪130の端部130Aに締り嵌め方式で嵌め入れられ、第2のシール部材65のスリーブ31Aは、具体的には、内側輪121の端部121Aに締り嵌め方式で嵌め入れられる。ハブベアリング4に取り付けられた密封装置22の軸線xは、ハブベアリング4の中心軸線Axに一致又は略一致する。
上述のように、密封装置22はハブベアリング4に固定される。第1のシール部材70は、静止した外輪130に固定され、回転しない固定シール部材である。一方、第2のシール部材65は、回転する内輪120に固定され、回転する回転シール部材である。ハブベアリング4において密封装置22は、内輪120の回転速度に応じて異なった作用をする。
具体的には、内輪120および第2のシール部材65の低速回転時(回転速度が閾値より小さい場合)には、図7に示すように、サイドリップ68は、第1のシール部材70の剛性環42の接触面73に接触し、空間55の内部に侵入した異物がハブベアリング4の内部空間に向けてさらに侵入しないように異物の侵入を阻止する役割を有する。低速回転時とは、内輪120および第2のシール部材65の回転が停止している時を含む。剛性環42の接触面73から第2のシール部材65に与えられるトルクを低減するため、サイドリップ68にはグリースがコートされてもよい。このグリースは、典型的には玉10,12、内輪120、外輪130を潤滑するグリースとは別種である。
一方、内輪120および第2のシール部材65の高速回転時(回転速度が閾値より大きい場合)には、図7に点線で示すように、サイドリップ68、特に先端部68aは、サイドリップ68自身にかかる遠心力によって、第1のシール部材70の剛性環42の接触面73から離れるよう変形する。このため、密封装置20と同様に、内輪120および第2のシール部材65の高速回転時に、サイドリップ68の先端部68aと剛性環42の接触面73の間に、円環状の間隙56が設けられる。これにより、内輪120の高速回転時に、サイドリップ68と剛性環42の接触面73との間の摺動抵抗をなくすことができ、回転する内輪120にかかるトルクを小さくすることができる。また、サイドリップ68の摩耗、摩擦熱による温度の上昇を抑制することができる。
また、図7に示すように、第2のシール部材65のラビリンスリップ69と、第1のシール部材70の管状部44のラビリンス受部71aとの間には、環状の間隙74,74aが設けられており、間隙74,74aはラビリンスシールとして機能する。このため、ハブベアリング4の外部から密封装置22の内部の空間55に異物が侵入することが防止されている。このように、密封装置22は、間隙74,74aによっても、ハブベアリング4の内部空間に異物が侵入することを抑制することができる。また、ハブベアリング4の外部に潤滑剤が流出することを抑制することができる。
また、グリースリップ46およびシールリップ47は、上述の密封装置20のグリースリップ46およびシールリップ47と同様に夫々作用する。つまり、グリースリップ46は、ハブベアリング4の内部空間からインボード側への潤滑剤の流出を阻止する。また、シールリップ47は、グリースリップ46をバックアップし、アウトボード側からグリースリップ46を通過した潤滑剤のインボード側への流出を阻止する。
なお、グリースリップ46は、ハブベアリング4の内輪120の回転時にグリースリップ46がスリーブ31Aから離れないように、十分なグリースリップ46のスリーブ31Aへの締め付力(緊縛力)を発揮できる形状に形成されていることが好ましい。これにより、ハブベアリング4の内輪120の回転時に、特に高速回転時に、グリースリップ46の先端がスリーブ31Aから離れることを防止でき、ハブベアリング4の内部空間からインボード側への潤滑剤の漏れを抑制することができる。
一方、シールリップ47は、ガータースプリング50によってスリーブ31Aへの締め付力(緊縛力)が高められているため、ハブベアリング4の内輪120の回転時に、特に高速回転時に、シールリップ47がスリーブ31Aから離れることが抑制されており、潤滑剤のインボード側への漏れを抑制することができる。
以上のように、回転する内輪120に取り付けられた第2のシール部材65のサイドリップ68は、内輪120の回転速度が閾値より小さい場合には、剛性環42の接触面73に摺動可能に接触し、密封装置22の封止性能を確保する。すなわち、低速回転時において、サイドリップ68は、空間55に侵入した異物がハブベアリング4の内部空間に向けてさらに侵入しないように異物の侵入を阻止する。
一方、内輪120の回転速度が閾値より大きい場合には、第2のシール部材65のサイドリップ68は、サイドリップ68自身にかかる遠心力によって、剛性環42の接触面73から離れるように変形する。したがって、高速回転時において、密封装置22は、回転する内輪120にかかるトルクを低減し、また、サイドリップ68の摩耗、摩擦熱による温度の上昇を抑制する。
なお、内輪120の高速回転時には、サイドリップ68が剛性環42の接触面73から離れるが、第2のシール部材65自体が高速で回転しているので、空間55の内部には径方向外側に向かう気流又は遠心力が生じ、空間55の内部に侵入した異物が間隙74,74aを通じて外部に排出される。ラビリンスリップ69が、図7に示すように、径方向外側かつインボード側に向かって斜めに延びている場合、上述のように侵入した異物が間隙74,74aを通じて外部に排出され易くすることができる。また、サイドリップ68の径方向内部の空間57からも気流又は遠心力によって異物がサイドリップ68と接触面73との間の間隙56を通じて、空間55に排出され、さらに間隙74,74aを通じて外部に排出される。
次いで、本発明の第4の実施形態に係る密封装置23について説明する。本発明の第4の実施形態に係る密封装置23は、上述の本発明の第3の実施形態に係る密封装置22に対して、第1のシール部材及び第2のシール部材の構成が異なる。以下、密封装置23の構成について、密封装置22と同じ構成又は同様の機能を有する構成については同じ符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。
図8に示すように、環状の密封装置23は、上述の密封装置22の第1のシール部材70とは異なる第1のシール部材75と、密封装置22の第2のシール部材65とは異なる第2のシール部材80とを備えている。第1のシール部材75は、上述の密封装置22の第1のシール部材70の剛性環42と、第1のシール部材70の弾性環71とは異なる弾性環76とを有している。また、第2のシール部材80は、上述の密封装置22の第2のシール部材65の剛性環31とは異なる剛性環81と、第2のシール部材65の弾性環66とは異なる弾性環82とを有している。なお、図8においては、密封装置23の軸線xに対する一方の部分のみが示されている。また、図8において、密封装置23は、後述する使用状態における状態(配置)で示されている。
図8に示すように、第1のシール部材75は、第2のシール部材80を径方向外側から覆うように配置される。このため、使用状態において、第2のシール部材80は、第1のシール部材75よりも径方向内側に固定される。また、第2のシール部材80の後述するフランジ81Bは、インボード側に面し、第1のシール部材75の円板部45は、アウトボード側に面する。
第1のシール部材75の弾性環76は、図8に示すように、円板部45の部分である内側端部72と、グリースリップ46と、シールリップ47が形成された円環部49とを有していない点で、密封装置22の第1のシール部材70の弾性環71と異なる。このため、第1のシール部材75は、ガータースプリング50を有していない。
第2のシール部材80の剛性環81は、剛性材料、例えば金属から形成されており、図8に示すように、密封装置22の第2のシール部材65の剛性環31のスリーブ31Aに対応する部分であるスリーブ81Aと、剛性環31のフランジ31Bに対応する部分であるフランジ81Bとを有している。剛性環81は、例えば図8に示すように、剛性環42と同様の形状を有しており、スリーブ81Aは、剛性環42の管状部44の部分と同様の形状を有しており、フランジ81Bは、剛性環42の円板部45の部分と同様の形状を有している。
第2のシール部材80の弾性環82は、弾性材料、例えばエラストマーで形成されている。弾性環82は、図8に示すように、剛性環81に取り付けられており、具体的には、弾性環82は、剛性環81の一部に密着しており、また、剛性環81の一部は、弾性環82に埋設されている。
第2のシール部材80の弾性環82は、図8に示すように、剛性環81のフランジ81Bのアウトボード側の面、および剛性環81のスリーブ81Aの径方向外側の面に取り付けられている部分である基部83と、基部83から延びる部分であるサイドリップ68及びラビリンスリップ69とを有している。また、弾性環82は、図8に示すように、基部83から延びる部分であるシール突起84を有している。
基部83は、軸線x周りに環状に延びており、径方向外側において、フランジ81Bの径方向外側の端部を覆うように形成されており、また、アウトボード側において、スリーブ81Aのアウトボード側の端部を覆うように形成されている。
サイドリップ68は、図8に示すように、弾性環82の基部83のアウトボード側に面する面(面83a)から延びており、上述の密封装置22の第2のシール部材65のサイドリップ68と同様の形状を有しており、第1のシール部材75の剛性環42の接触面73に向けて延びている薄板状の弾性環82の部分である。サイドリップ68は、例えば図8に示すように、基部83に隣接する環状の厚い基部68aと、基部68aから径方向外側かつ接触面73に向けて斜めに延びて円錐台形状又は円錐筒状の形状を有する環状の薄い先端部68bとを有している。
後述する密封装置23の使用状態において、密封装置23の適用対象および第2のシール部材80の低速回転時(回転速度が閾値より小さい場合)には、サイドリップ68の先端部68bが、剛性環42の接触面73に摺動可能に接触するように、サイドリップ68は設計されている。一方、密封装置23の適用対象および第2のシール部材80の高速回転時(回転速度が閾値より大きい場合)には、上述の密封装置22のサイドリップ68と同様に、サイドリップ68の先端部68bが、剛性環42の接触面73から離れるように変形するように、サイドリップ68は設計されている。なお、サイドリップ68は、密封装置23の適用対象および第2のシール部材80の高速回転時に、先端部68bが、剛性環42の接触面73から離れない範囲で接触面73から離れる方向に移動するように、設計されていてもよい。
また、図8に示すように、第2のシール部材80のフランジ81Bの径方向外側端部を覆う基部83の部分である外側端部83bは、第1のシール部材75の管状部44の弾性環76の有するラビリンス受部71aに径方向において間隔を空けて対向するようになっている。このため、基部83の外側端部83bと管状部44のラビリンス受部71aとの間には、間隙74が形成される。
ラビリンスリップ69は、図8に示すように、基部83の外側端部83bからラビリンス受部71aに向かって延びており、ラビリンスリップ69の先端部69aは、ラビリンス受部71aに径方向において間隔を空けて対向するようになっている。このように、間隙74において、ラビリンスリップ69の先端部69aとラビリンス受部71aとの間には、間隙74をさらに狭める環状の間隙74aが形成されている。間隙74及び間隙74aは、ラビリンスシールを形成する。
シール突起84は、軸線x周りに環状の部分であり、図8に示すように、スリーブ81Aのアウトボード側端部を覆う基部83の部分であるアウトボード側端部83cから延びる環状の突起である。シール突起84は、アウトボード側端部83cから、第1のシール部材75の剛性環42の円板部45における径方向内側の端縁である内端縁45bに向かって延びている。図8に示すように、剛性環42の内端縁45bは、基部83のアウトボード側端部83cに対して、例えば径方向外側かつアウトボード側に位置するようになっており、シール突起84は、アウトボード側端部83cから、径方向外側かつアウトボード側に向かって斜めに延びている。また、シール突起84は、シール突起84の先端側の部分(先端部84a)が剛性環42の内端縁45bに接触するような形状に形成されている。
次いで、上述の構成を有する密封装置23の作用について説明する。密封装置23は、適用対象に取り付けられて使用状態になる。密封装置23の適用対象は、例えばハブベアリングであり、密封装置23の適用対象のハブベアリングは、内輪回転型のハブベアリングである。密封装置23は、例えば密封装置22と同様に、上述の密封装置21が取り付けられるハブベアリング4に取り付けられる(図6参照)。なお、密封装置23が取り付けられたハブベアリング4の図示は省略されている。
密封装置23は、密封装置22と同様に、ハブベアリング4のインボード側開口部126に取り付けられる。具体的には、外輪130のインボード側の端部130Aに、密封装置23の第1のシール部材75の管状部44が取り付けられ、また、内輪120の内側輪121のインボード側の端部121Aに、密封装置23の第2のシール部材80のスリーブ81Aが取り付けられ、密封装置23はハブベアリング4に取り付けられる(図6,8参照)。第1のシール部材75の管状部44は、具体的には、外輪130の端部130Aに締り嵌め方式で嵌め入れられ、第2のシール部材80のスリーブ81Aは、具体的には、内側輪121の端部121Aに締り嵌め方式で嵌め入れられる。ハブベアリング4に取り付けられた密封装置23の軸線xは、ハブベアリング4の中心軸線Axに一致又は略一致する。
上述のように、密封装置23はハブベアリング4に固定される。第1のシール部材75は、静止した外輪130に固定され、回転しない固定シール部材である。一方、第2のシール部材80は、回転する内輪120に固定され、回転する回転シール部材である。ハブベアリング4において密封装置23は、内輪120の回転速度に応じて異なった作用をする。
具体的には、内輪120および第2のシール部材80の低速回転時(回転速度が閾値より小さい場合)には、図8に示すように、サイドリップ68は、密封装置22のサイドリップ68と同様に作用し、第1のシール部材75の剛性環42の接触面73に接触し、空間55の内部に侵入した異物がハブベアリング4の内部空間に向けてさらに侵入しないように異物の侵入を阻止する役割を有する。低速回転時とは、内輪120および第2のシール部材80の回転が停止している時を含む。剛性環42の接触面73から第2のシール部材80に与えられるトルクを低減するため、サイドリップ68にはグリースがコートされてもよい。このグリースは、典型的には玉10,12、内輪120、外輪130を潤滑するグリースとは別種である。
一方、内輪120および第2のシール部材80の高速回転時(回転速度が閾値より大きい場合)には、図8に点線で示すように、サイドリップ68、特に先端部68bは、密封装置22のサイドリップ68と同様に作用し、サイドリップ68自身にかかる遠心力によって、第1のシール部材75の剛性環42の接触面73から離れるよう変形する。このため、密封装置22と同様に、内輪120および第2のシール部材80の高速回転時に、サイドリップ68の先端部68bと剛性環42の接触面73との間に、円環状の間隙56が設けられる。これにより、内輪120の高速回転時に、サイドリップ68と接触面73との間の摺動抵抗をなくすことができ、回転する内輪120にかかるトルクを小さくすることができる。また、サイドリップ68の摩耗、摩擦熱による温度の上昇を抑制することができる。
また、図8に示すように、第2のシール部材80のラビリンスリップ69と、第1のシール部材75の管状部44のラビリンス受部71aとの間には、環状の間隙74,74aが設けられており、密封装置22の間隙74,74aと同様に、間隙74,74aはラビリンスシールとして機能する。このため、ハブベアリング4の外部から密封装置23の内部の空間55に異物が侵入することが防止されている。このように、密封装置23は、間隙74,74aによっても、ハブベアリング4の内部空間に異物が侵入することを抑制することができる。また、ハブベアリング4の外部に潤滑剤が流出することを抑制することができる。
また、シール突起84の先端部84aは、第1のシール部材75の剛性環42の内端縁45bに接触しており、シール突起84は、第1のシール部材75の剛性環42の内端縁45bと、第2のシール部材80の弾性環82のアウトボード側端部83cとの間の環状の間隙を塞いでいる。このため、シール突起84は、ハブベアリング4の内部空間からインボード側への潤滑剤の流出を阻止する。また、シール突起84は、ハブベアリング4の内部空間への異物の侵入を阻止する。
シール突起84の先端部84aは、剛性環42の内端縁45bに径方向内側から接触している。このため、ハブベアリング4の内輪120の回転によってシール突起84に遠心力がかかると、この遠心力によって、シール突起84の先端部84aは、剛性環42の内端縁45bにさらに押し付けられる。このため、ハブベアリング4の内輪120の回転時に、特に高速回転時に、シール突起84の先端部84aが剛性環42の内端縁45bから離れることを防止でき、ハブベアリング4の内部空間からインボード側への潤滑剤の漏れをさらに抑制することができる。
以上のように、回転する内輪120に取り付けられた第2のシール部材80のサイドリップ68は、内輪120の回転速度が閾値より小さい場合には、剛性環42の接触面73に摺動可能に接触し、密封装置23の封止性能を確保する。すなわち、低速回転時において、サイドリップ68は、空間55に侵入した異物がハブベアリング4の内部空間に向けてさらに侵入しないように異物の侵入を阻止する。
一方、内輪120の回転速度が閾値より大きい場合には、第2のシール部材80のサイドリップ68は、サイドリップ68自身にかかる遠心力によって、剛性環42の接触面73から離れるように変形する。したがって、高速回転時において、密封装置23は、回転する内輪120にかかるトルクを低減し、また、サイドリップ68の摩耗、摩擦熱による温度の上昇を抑制する。
なお、内輪120の高速回転時には、サイドリップ68が剛性環42の接触面73から離れるが、第2のシール部材80自体が高速で回転しているので、空間55の内部には径方向外側に向かう気流又は遠心力が生じ、空間55の内部に侵入した異物が間隙74,74aを通じて外部に排出される。ラビリンスリップ69が、図8に示すように、径方向外側かつインボード側に向かって斜めに延びている場合、上述のように侵入した異物が間隙74,74aを通じて外部に排出され易くすることができる。また、サイドリップ68の径方向内部の空間57からも気流又は遠心力によって異物がサイドリップ68と接触面73との間の間隙56を通じて、空間55に排出され、さらに間隙74,74aを通じて外部に排出される。
なお、サイドリップ48,62,68が夫々変形するハブベアリング1,3,4の高速回転時の回転速度の閾値は、例えば、サイドリップ48,62,68の基部51,62a,68aや先端部52,62b,68bの形状や、弾性環41,61,66,82の弾性材料の特性等によって調整することができる。この基部51,62a,68aや先端部52,62b,68bの形状には、例えば、基部51,62a,68aや先端部52,62b,68bの厚さや硬さがある。弾性材料の特性には、例えば、弾性材料の弾性率がある。また、サイドリップ48,62,68が夫々変形するハブベアリング1,3,4の高速回転時の回転速度の閾値は、中心軸線Ax方向における第1のシール部材30,70,75と第2のシール部材40,60,65,80との距離(間隔)によっても調整することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
例えば、複数のサイドリップを設けてもよい。
空間55には、サイドリップ48,62,68側への異物の侵入を減少させるための突起を設けてもよい。突起は、第1のシール部材30,70,75に形成してもよいし、第2のシール部材40,60,65,に形成してもよい。