JP7724089B2 - X線焦点形状評価装置およびx線焦点形状評価方法 - Google Patents

X線焦点形状評価装置およびx線焦点形状評価方法

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Description

本発明は、X線源のターゲットにおけるX線焦点形状を評価する装置および方法に関するものである。
日本産業規格JIS Z4704に、医用X線源のターゲットにおけるX線焦点寸法を評価する方法としてスリットカメラ法およびピンホールカメラ法が規定されている。スリットカメラ法では、一方向に長いスリットを有する遮蔽物体を用いて、X線源から出力されたX線のうちスリットを通過したX線の強度プロファイルを取得し、この強度プロファイルに基づいて焦点寸法を求める。ピンホールカメラ法では、ピンホールを有する遮蔽物体を用いて、X線源から出力されたX線のうちピンホールを通過したX線の強度プロファイルを取得し、この強度プロファイルに基づいて焦点寸法を求める。
JIS Z4615には、工業用X線源のターゲットにおけるX線焦点寸法を評価する方法が規定されている。しかし、この規格には、300μm以上の焦点寸法の評価方法が規定されているのみであって、300μm未満の焦点寸法の評価方法は定められていない。
X線源のターゲットにおける焦点寸法を測定する方法としてナイフエッジ法も知られている。ナイフエッジ法では、X線源から出力されたX線のビーム断面のうち一部を遮蔽物体により遮断してエッジ像を取得し、このエッジ像に基づいて焦点寸法を求める。
非特許文献1には、X線の伝搬経路上に配置された円柱状物体のエッジを含む範囲の位相コントラスト画像を取得すると、この位相コントラスト画像におけるエッジに対応する位置の近傍の範囲のX線強度分布のプロファイル形状が焦点寸法に対して相関を有している旨が記載されている。この相関を利用すれば、位相コントラスト画像におけるエッジ対応位置の近傍範囲のX線強度分布のプロファイル形状に基づいて焦点寸法を求めることができると考えられる。以下では、非特許文献1の記載に基づく焦点寸法測定方法を「比較例」とする。
特開2020-57163号公報
Akira Ishisaka, et al., "ANew Method of Analyzing Edge Effect in Phase Contrast Imaging with IncoherentX-rays," Optical Review, Vol.7, No.6, (2000) 566-572.
スリットカメラ法およびピンホールカメラ法は、スリット幅やピンホール径を小さくすることに限界があることから、焦点寸法が小さい場合には利用が困難であり、焦点寸法が大きい場合に有効に用いられ得る。これに対して、ナイフエッジ方法は、焦点寸法が小さい場合にも用いられ得る。
これらのスリットカメラ法、ピンホールカメラ法およびナイフエッジ法では、遮蔽物体がX線を十分に遮蔽し得るだけの十分な厚さを有することが必要であり、また、スリット、ピンホールまたはエッジの断面を高精度に加工することが必要であるが、そのような厚い遮蔽物体のエッジを高精度に加工することは容易でない。これらの方法では、焦点寸法を高精度に測定するには、X線伝搬経路上に遮蔽物体を高精度に配置する必要があるが、その配置も容易でない。遮蔽物体の材料としてはX線吸収が大きいもの(原子番号が大きい金属)が用いられるが、そのような材料は高価である。
非特許文献1の記載に基づく比較例の測定方法は、スリットカメラ法、ピンホールカメラ法またはナイフエッジ法が有する問題を解消し得ると期待される。しかし、本発明者らは、比較例の測定方法により焦点寸法の測定を試みたところ、この測定方法が次のような問題点を有していることを見出した。すなわち、比較例の測定方法は、円柱状物体のX線吸収が大きい場合には利用が困難である。また、比較例の測定方法では、円柱状物体の形状の歪みや表面の曲率の変動が測定精度に大きく影響すると考えられることから、円柱状物体を高精度に加工する必要があるが、そのような加工は容易でない。
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、X線源のターゲットにおけるX線焦点寸法を含む焦点形状を容易に評価することができる装置および方法を提供することを目的とする。
本発明のX線焦点形状評価装置は、X線源のターゲットにおけるX線焦点形状を評価する装置であって、ターゲットで発生したX線の伝搬経路上に配置された物体のエッジを含む範囲の位相コントラスト画像を取得する撮像部と、少なくとも位相コントラスト画像、物体の線減弱係数および物体の屈折率に基づいてX線焦点形状を評価する演算部と、を備える。
撮像部は、平板形状の物体の位相コントラスト画像を取得するのが好適である。また、撮像部は、伝搬経路上に物体が配置されていない状態で背景画像を取得し、演算部は、背景画像に基づいて位相コントラスト画像を補正して、その補正後の位相コントラスト画像に基づいてX線焦点形状を評価するのが好適である。
演算部は、ターゲットにおけるX線発生時のX線強度分布を表す関数を仮定し、この仮定した関数に基づいて得られる位相コントラスト画像におけるエッジに垂直な方向の強度分布で、撮像部により取得された位相コントラスト画像におけるエッジに垂直な方向の強度分布をフィッティングすることで、仮定した関数のパラメータを推定してX線焦点形状を評価するのが好適である。また、 演算部は、撮像部により取得された位相コントラスト画像におけるエッジに垂直な方向の強度分布において最大強度位置と最小強度位置との間の距離を求め、この距離に基づいてX線焦点形状を評価するのも好適である。
撮像部は、物体のエッジが複数の方位それぞれに設定された状態で位相コントラスト画像を取得し、演算部は、複数の方位それぞれの位相コントラスト画像に基づいてX線焦点形状を評価するのが好適である。また、撮像部は、方位が互いに異なる複数のエッジを有する物体の位相コントラスト画像を取得し、演算部は、位相コントラスト画像に基づいて複数のエッジそれぞれについてX線焦点形状を評価するのが好適である。
本発明のX線焦点形状評価方法は、X線源のターゲットにおけるX線焦点形状を評価する方法であって、ターゲットで発生したX線の伝搬経路上に配置された物体のエッジを含む範囲の位相コントラスト画像を撮像部により取得する撮像ステップと、少なくとも位相コントラスト画像、物体の線減弱係数および物体の屈折率に基づいてX線焦点形状を評価する演算ステップと、を備える。
撮像ステップにおいて、平板形状の物体の位相コントラスト画像を取得するのが好適である。また、撮像ステップにおいて、伝搬経路上に物体が配置されていない状態で背景画像を撮像部により取得し、演算ステップにおいて、背景画像に基づいて位相コントラスト画像を補正して、その補正後の位相コントラスト画像に基づいてX線焦点形状を評価するのが好適である。
演算ステップにおいて、ターゲットにおけるX線発生時のX線強度分布を表す関数を仮定し、この仮定した関数に基づいて得られる位相コントラスト画像におけるエッジに垂直な方向の強度分布で、撮像部により取得された位相コントラスト画像におけるエッジに垂直な方向の強度分布をフィッティングすることで、仮定した関数のパラメータを推定してX線焦点形状を評価するのが好適である。また、演算ステップにおいて、撮像部により取得された位相コントラスト画像におけるエッジに垂直な方向の強度分布において最大強度位置と最小強度位置との間の距離を求め、この距離に基づいてX線焦点形状を評価するのも好適である。
撮像ステップにおいて、物体のエッジが複数の方位それぞれに設定された状態で位相コントラスト画像を取得し、演算ステップにおいて、複数の方位それぞれの位相コントラスト画像に基づいてX線焦点形状を評価するのが好適である。また、撮像ステップにおいて、方位が互いに異なる複数のエッジを有する物体の位相コントラスト画像を取得し、演算ステップにおいて、位相コントラスト画像に基づいて複数のエッジそれぞれについてX線焦点形状を評価するのが好適である。
本発明によれば、X線源のターゲットにおけるX線焦点寸法を含む焦点形状を容易に評価することができる。
図1は、X線焦点形状評価装置10の構成を示す図である。 図2は、位相コントラスト画像を模式的に示す図である。 図3は、位相コントラスト画像のエッジ付近における強度分布I(x)を模式的に示す図である。 図4は、撮像部11により取得された位相コントラスト画像の例を示す図である。 図5は、図4に示された位相コントラスト画像においてエッジに垂直な直線L上の強度分布I(x)を示す図である。 図6は、撮像部11により取得された位相コントラスト画像から取得された実測の強度分布I(x)と、波動光学計算により得られた強度分布I(x)と、(5)式の理論式により得られた強度分布I(x)と、を対比して示す図である。 図7は、X線焦点形状評価方法の第1の例を示すフローチャートである。 図8は、X線焦点形状評価方法の第2の例を示すフローチャートである。 図9は、X線焦点形状評価方法の第3の例を示すフローチャートである。 図10は、実施例および比較例それぞれのシミュレーション結果を対比して示す図である。 図11は、実験時の管電圧および管電流を纏めた表である。 図12は、実施例において管電圧20kVおよび管電流40μAとしたときに取得された位相コントラスト画像を示す図である。 図13は、図12の位相コントラスト画像から取得されたI(x)を示すグラフである。 図14は、実施例およびナイフエッジ法それぞれの実験結果を対比して示す図である。 図15(a)~(d)は、物体30のエッジの方位を変化させる場合の位相コントラスト画像を模式的に示す図である。 図16は、方位が互いに異なる複数のエッジを物体30が有する場合の位相コントラスト画像を模式的に示す図である。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
図1は、X線焦点形状評価装置10の構成を示す図である。この図には、X線焦点形状評価装置10の他に、X線源20、物体30および保持部40も示されている。X線焦点形状評価装置10は、X線源20のターゲット22におけるX線焦点寸法を含むX線焦点形状を評価する装置であって、撮像部11および演算部12を備える。
X線源20は、筐体21の内部にターゲット22を備え、そのターゲット22への電子線照射により発生するX線を外部へ放射する為の窓23を筐体21の一部に有する。X線源20と撮像部11との間のX線伝搬経路上に物体30が配置される。物体30は、均一な厚さを有する平板形状のものであるのが好ましく、この場合、物体30の加工が容易である。物体30は、X線の一部を通過させることができる位相物体である。物体30の厚さ及び材料は、任意でよく、X線の一部を透過させることができればよい。物体30は例えば金属箔や樹脂膜である。保持部40は、物体30を保持して物体30の位置や方位を調整する。保持部40は、平板形状の物体30がX線伝搬方向に対して直交し、物体30のエッジがX線ビーム断面内に位置するように、物体30を保持する。
撮像部11は、X線源20のターゲット22で発生したX線の伝搬経路上に配置された物体30のエッジを含む範囲の位相コントラスト画像を取得する。撮像部11は、物体30の位相コントラスト画像を取得する為に必要な距離だけ物体30から離間して配置される。撮像部11は、位相コントラスト画像のデータを演算部12へ出力する。
撮像部11は、2次元のX線画像を取得することができるものであれば任意でよい。撮像部11は、X線に対し感度を有するX線CCDカメラであってよい。また、撮像部11は、X線入射によりシンチレーション光を発生するシンチレータと、このシンチレータにおけるシンチレーション光発生分布を撮像するCCDカメラと、を含む構成を有していてもよい。
演算部12は、撮像部11から出力された位相コントラスト画像のデータを入力する。演算部12は、少なくとも位相コントラスト画像、物体30の線減弱係数および物体30の屈折率に基づいて、ターゲット22におけるX線焦点形状を評価する。演算部12は、上記の評価などの処理を行うCPU、各種パラメータや処理結果を記憶するメモリ(RAM、ROM、ハードディスクドライブ等)、画像や処理結果を表示するディスプレイ、等を含む。演算部12はコンピュータであってよい。
X線焦点形状評価方法は、X線源20のターゲット22におけるX線焦点寸法を含むX線焦点形状を評価する方法であって、撮像ステップおよび演算ステップを備える。撮像ステップでは、X線源20のターゲット22で発生したX線の伝搬経路上に配置された物体30のエッジを含む範囲の位相コントラスト画像を撮像部11により取得する。撮像ステップは撮像部11により実行され得る。演算ステップでは、少なくとも位相コントラスト画像、物体30の線減弱係数および物体30の屈折率に基づいて、ターゲット22におけるX線焦点形状を評価する。演算ステップは演算部12により実行され得る。
撮像ステップにおいて、X線の伝搬経路上に物体30が配置されていない状態で背景画像を撮像部11により取得し、演算ステップにおいて、その背景画像に基づいて位相コントラスト画像を補正して、その補正後の位相コントラスト画像に基づいてX線焦点形状を評価してもよい。撮像ステップにおける位相コントラスト画像および背景画像それぞれの取得の順序は任意である。背景画像において物体30のエッジに対応する位置の近傍の範囲で背景光強度が不均一であるとX線焦点形状の評価の精度が悪くなるので、これを回避するために背景画像で除することで位相コントラスト画像を補正するのが好ましい。一方、背景画像において物体30のエッジに対応する位置の近傍の範囲で背景光強度が均一であるとみなすことができる場合には、このような補正をしなくてもよい。
図1中に示されるとおりxyz直交座標系を説明の便宜のために設定する。ターゲット22から撮像部11へのX線伝搬方向をz方向とし、物体30のエッジがy方向に平行であるとし、物体30のエッジがx方向に垂直であるとする。
物体30の線減弱係数をμとする。物体30の屈折率を1-δとする。一般にX線領域においてδは非常に小さい正の値(例えば10-6程度)である。μおよびδはX線エネルギおよび物体30の材料によって決まる。物体30の厚さをTとする。ターゲット22のX線発生位置と物体30との間の距離をzとする。物体30と撮像部11の撮像面との間の距離をzとする。なお、z≫Tかつz≫Tとすることができる。光学倍率Mは下記(1)式で表される。

ターゲット22におけるX線発生時のX線強度分布が関数F(x,y)で表されるとする。このX線強度分布は、撮像部11からターゲット22を見たときのものである。この関数F(x,y)をy方向に線積分して得られる関数をS(x)とする(下記(2)式)。この関数S(x)はx方向の焦点形状を反映しているので、関数S(x)が分かればx方向の焦点形状を評価することができる。

撮像部11により取得される位相コントラスト画像において、物体30のエッジに対応する位置の近傍における強度分布I(x)は、下記(3)式で表される。xは、位相コントラスト画像において物体30のエッジに対応する位置のx座標値である。

図2は、位相コントラスト画像を模式的に示す図である。この図に示されるように、強度分布I(x)は、位相コントラスト画像においてエッジに垂直な直線L上の各位置でのX線強度を表す。図3は、位相コントラスト画像のエッジ付近における強度分布I(x)を模式的に示す図である。この図に示されるように、位相コントラスト画像において、エッジ位置xに対して一方側でI(x)が最大値となる位置xがあり、他方側でI(x)が最小値となる位置xがある。
S(x)が下記(4)式で表されるガウシアン関数であるとき、I(x)は下記(5)式で表される。σは、ターゲット22におけるX線焦点形状ないしX線焦点寸法を表すパラメータである。(5)式の右辺にあるerfは誤差関数である。(5)式の右辺の二つの項のうち第二項はσの値に対して敏感である。(5)式が最大値となる位置のx座標値xと、(5)式が最小値となる位置のx座標値xと、の差(最大強度位置と最小強度位置との間の距離)をΔxedgeとする。このとき、σは、Δxedgeを用いて下記(6)式で表される。なお、ターゲット22におけるX線焦点寸法(半値全幅)は2.35σで定義されることが多い。

図4は、撮像部11により取得された位相コントラスト画像の例を示す図である。図5は、図4に示された位相コントラスト画像においてエッジに垂直な直線L上の強度分布I(x)を示す図である。この図に示されるように、位相コントラスト画像において、エッジに対して一方側でI(x)が最大値となる位置があり、他方側でI(x)が最小値となる位置がある。
図6は、撮像部11により取得された位相コントラスト画像から取得された実測の強度分布I(x)と、波動光学計算により得られた強度分布I(x)と、(5)式の理論式により得られた強度分布I(x)と、を対比して示す図である。この図に示されるように、(5)式の理論式により得られる強度分布I(x)は、実測の強度分布I(x)および波動光学計算による強度分布I(x)の何れとも、よく一致している。
次に、X線焦点形状評価方法のフローの例について図7~図8を用いて説明する。図7は、X線焦点形状評価方法の第1の例を示すフローチャートである。撮像ステップはステップS1,S2を含む。演算ステップはステップS3,S4,S11,S12を含む。
ステップS1では、X線源20のターゲット22で発生したX線の伝搬経路上に配置された物体30のエッジを含む範囲の位相コントラスト画像を撮像部11により取得する。ステップS2では、X線の伝搬経路上に物体30が配置されていない状態で背景画像を撮像部11により取得する。ステップS1およびステップS2の実行順序は任意である。ステップS3では、ステップS1で取得された背景画像に基づいて、ステップS2で取得された位相コントラスト画像を補正する。ステップS4では、ステップS3で補正された位相コントラスト画像におけるエッジ付近の強度分布I(x)を取得する。
ステップS11では、ターゲット22におけるX線発生時のX線強度分布を表す関数S(x)を仮定する。ここで仮定する関数S(x)は、任意であるが、典型的にはガウシアン関数であり、また、中心位置、ピーク強度またはσが互いに異なる二つ以上のガウシアン関数の和であってもよい。ステップS12では、ステップS4で取得された実測の強度分布I(x)を、ステップS11で仮定した関数に基づいて得られる上記(3)式のI(x)でフィッティングして、ステップS11で仮定した関数のパラメータを推定し、これによりX線焦点形状を評価する。
図8は、X線焦点形状評価方法の第2の例を示すフローチャートである。撮像ステップはステップS1,S2を含む。演算ステップはステップS3,S4,S21,S22を含む。ステップS1~S4は、図7で説明したものと同様である。
ステップS21では、ターゲット22におけるX線発生時のX線強度分布を表す関数S(x)がガウシアン関数であると仮定する。ステップS22では、ステップS4で取得された実測の強度分布I(x)を、関数S(x)が上記(4)式で表されるとした場合に得られる上記(5)式のI(x)でフィッティングして、上記(4)式中のσを推定し、これによりX線焦点形状を評価する。
図9は、X線焦点形状評価方法の第3の例を示すフローチャートである。撮像ステップはステップS1,S2を含む。演算ステップはステップS3,S4,S31,S32を含む。ステップS1~S4は、図7で説明したものと同様である。
ステップS31では、ターゲット22におけるX線発生時のX線強度分布を表す関数S(x)がガウシアン関数であると仮定する。ステップS32では、ステップS4で取得された実測の強度分布I(x)において最大強度位置xと最小強度位置xとの間の距離Δxedgeを求め、このΔxedgeに基づいて上記(6)式により上記(4)式中のσを推定し、これによりX線焦点形状を評価する。
次に、シミュレーション結果について説明する。このシミュレーションでは、X線エネルギを10keVとし、物体30を厚さ10μmのアルミニウム箔とした。z=1.6mとし、M=10とした。ターゲット22におけるX線発生時のX線強度分布を表す関数S(x)がガウシアン関数であるとした。そして、真の2σを1~20μmの範囲内の各値とした場合について、図9のフローチャートに示されたX線焦点形状評価方法(実施例)により得られた2σと、非特許文献1の記載に基づく比較例の測定方法で得られた2σと、を対比した。
図10は、実施例および比較例それぞれのシミュレーション結果を対比して示す図である。この図に示されるように、比較例では、算出された2σは、真の2σが5μm程度以下である範囲では真の2σとよく一致しているが、真の2σが大きくなると真の2σとの差が大きくなっていく。これに対して、実施例では、真の2σが1~20μmの範囲の全体において、算出された2σは真の2σとよく一致した。このような実施例と比較例との間のシミュレーション結果の相違は、比較例では物体30のμおよびδの何れをも考慮していないのに対して、実施例では物体30のμおよびδの双方を考慮していることによると考えられる。
次に、実験結果について説明する。この実験では、物体30を厚さ4μmのポリプロピレン膜(X線透過率99.9%以上)とした。z=170mmとし、z=1640mmとした。撮像部11として、画素サイズが10μmのX線CCDカメラを用いた。ターゲット22におけるX線発生時のX線強度分布を表す関数S(x)がガウシアン関数であるとした。そして、管電圧および管電流を各値とした場合について、図9のフローチャートに示されたX線焦点形状評価方法(実施例)により得られた焦点寸法と、ナイフエッジ法で得られた焦点寸法と、を対比した。
図11は、実験時の管電圧および管電流を纏めた表である。図12は、実施例において管電圧20kVおよび管電流40μAとしたときに取得された位相コントラスト画像を示す図である。図13は、図12の位相コントラスト画像から取得されたI(x)を示すグラフである。図14は、実施例およびナイフエッジ法それぞれの実験結果を対比して示す図である。この図に示されるように、実施例による焦点寸法の実測結果は、ナイフエッジ法による焦点寸法の実測結果とよく一致していた。このことから、本実施形態のX線焦点形状評価方法は、ナイフエッジ法と同等の結果を得ることができ、焦点寸法を評価する方法として妥当であることが分かる。
これまでは、物体30のエッジがy方向に平行であるとして、ターゲット22におけるx方向のX線焦点形状を評価する場合について説明してきた。しかし、以下のようにすることで、ターゲット22における複数方向のX線焦点形状を評価することもできる。
撮像ステップにおいて、保持部40により物体30のエッジが複数の方位それぞれに設定された状態として位相コントラスト画像を撮像部11により取得し、演算ステップにおいて、演算部12により複数の方位それぞれの位相コントラスト画像に基づいてX線焦点形状を評価する。図15は、物体30のエッジの方位を変化させる場合の位相コントラスト画像を模式的に示す図である。
図15(a)の位相コントラスト画像では、物体30のエッジはy方向に平行である。この位相コントラスト画像に基づいてx方向に平行な直線L上の強度分布Iを取得して、この強度分布Iに基づいてx方向の焦点形状を評価する。
図15(b)の位相コントラスト画像では、物体30のエッジはy方向に対して30°傾斜している。この位相コントラスト画像に基づいてx方向に対して30°傾斜した直線L上の強度分布Iを取得して、この強度分布Iに基づいてx方向に対して30°傾斜した方向の焦点形状を評価する。
図15(c)の位相コントラスト画像では、物体30のエッジはy方向に対して60°傾斜している。この位相コントラスト画像に基づいてx方向に対して60°傾斜した直線L上の強度分布Iを取得して、この強度分布Iに基づいてx方向に対して60°傾斜した方向の焦点形状を評価する。
図15(d)の位相コントラスト画像では、物体30のエッジはx方向に平行である。この位相コントラスト画像に基づいてy方向に平行な直線L上の強度分布Iを取得して、この強度分布Iに基づいてy方向の焦点形状を評価する。
このように、物体30のエッジが複数の方位それぞれに設定された状態として位相コントラスト画像を取得し、これら複数の方位それぞれの位相コントラスト画像に基づいてX線焦点形状を評価することで、より詳細にX線焦点形状を評価することができる。
撮像ステップにおいて、方位が互いに異なる複数のエッジを有する物体30の位相コントラスト画像を撮像部11により取得し、演算ステップにおいて、演算部12により位相コントラスト画像に基づいて複数のエッジそれぞれについてX線焦点形状を評価してもよい。図16は、方位が互いに異なる複数のエッジを物体30が有する場合の位相コントラスト画像を模式的に示す図である。物体30は例えば多角形(この図では八角形)の平板形状のものとすることができる。この位相コントラスト画像において、各エッジに垂直な直線L1~L4それぞれに沿った強度分布Iを取得して、直線L1~L4それぞれの方向のX線焦点形状を評価する。このようにすることで、より詳細にX線焦点形状を評価することができる。
図15および図16で説明したX線焦点形状評価方法は、ターゲット22における複数方向のX線焦点形状を評価することができ、したがって、焦点形状が真円に近いのか否か、或いは、焦点形状の楕円率がどの程度であるのか、を評価することができる。さらに特許文献1に記載されたアルゴリズムを用いることにより、ターゲット22におけるX線強度分布の関数F(x,y)を推定することもできる。これは、CT(Computed Tomography)の再構成アルゴリズムを用いて、或る光学系の点像分布関数を、多方位の線像分布関数(点像分布関数の線積分分布)から推定するものである。
以上のとおり、本実施形態では、物体30として任意の材料からなる平板形状のもの(例えば金属箔や樹脂膜)を用いることができ、エッジを有する物体30を容易に用意することができる。また、X線伝搬経路上に物体30を高精度に配置する必要はなく、xy平面に対して平板形状の物体30が傾斜して配置されていても、X線焦点寸法を適正かつ容易に評価することができる。また、本実施形態では、非特許文献1の記載に基づく比較例の測定方法と対比すると、位相コントラスト画像に基づいて焦点形状を評価する点では同じであるが、物体30の線減弱係数および屈折率の双方を考慮して焦点形状を評価する点で相違しており、これにより焦点形状を高精度に評価することができる。このように、ターゲット22におけるX線焦点寸法を含む焦点形状を容易に評価することができる。特に、図9のフローチャートに示されたX線焦点形状評価方法では、実測の強度分布I(x)において最大強度位置xと最小強度位置xとの間の距離Δxedgeを求め、このΔxedgeに基づいてσを推定するので、X線焦点寸法を含む焦点形状を更に容易に評価することができる。
10…X線焦点形状評価装置、11…撮像部、12…演算部、20…X線源、21…筐体、22…ターゲット、23…窓、30…物体、40…保持部。

Claims (14)

  1. X線源のターゲットにおけるX線焦点形状を評価する装置であって、
    前記ターゲットで発生したX線の伝搬経路上に配置された物体のエッジを含む範囲の位相コントラスト画像を取得する撮像部と、
    少なくとも前記位相コントラスト画像、前記物体の線減弱係数および前記物体の屈折率に基づいて前記X線焦点形状を評価する演算部と、
    を備えるX線焦点形状評価装置。
  2. 前記撮像部は、平板形状の物体の前記位相コントラスト画像を取得する、
    請求項1に記載のX線焦点形状評価装置。
  3. 前記撮像部は、前記伝搬経路上に前記物体が配置されていない状態で背景画像を取得し、
    前記演算部は、前記背景画像に基づいて前記位相コントラスト画像を補正して、その補正後の位相コントラスト画像に基づいて前記X線焦点形状を評価する、
    請求項1または2に記載のX線焦点形状評価装置。
  4. 前記演算部は、前記ターゲットにおけるX線発生時のX線強度分布を表す関数を仮定し、この仮定した関数に基づいて得られる位相コントラスト画像における前記エッジに垂直な方向の強度分布で、前記撮像部により取得された位相コントラスト画像における前記エッジに垂直な方向の強度分布をフィッティングすることで、仮定した前記関数のパラメータを推定して前記X線焦点形状を評価する、
    請求項1~3の何れか1項に記載のX線焦点形状評価装置。
  5. 前記演算部は、前記撮像部により取得された位相コントラスト画像における前記エッジに垂直な方向の強度分布において最大強度位置と最小強度位置との間の距離を求め、この距離に基づいて前記X線焦点形状を評価する、
    請求項1~3の何れか1項に記載のX線焦点形状評価装置。
  6. 前記撮像部は、前記物体の前記エッジが複数の方位それぞれに設定された状態で前記位相コントラスト画像を取得し、
    前記演算部は、前記複数の方位それぞれの前記位相コントラスト画像に基づいて前記X線焦点形状を評価する、
    請求項1~5の何れか1項に記載のX線焦点形状評価装置。
  7. 前記撮像部は、方位が互いに異なる複数のエッジを有する物体の前記位相コントラスト画像を取得し、
    前記演算部は、前記位相コントラスト画像に基づいて前記複数のエッジそれぞれについて前記X線焦点形状を評価する、
    請求項1~5の何れか1項に記載のX線焦点形状評価装置。
  8. X線源のターゲットにおけるX線焦点形状を評価する方法であって、
    前記ターゲットで発生したX線の伝搬経路上に配置された物体のエッジを含む範囲の位相コントラスト画像を撮像部により取得する撮像ステップと、
    少なくとも前記位相コントラスト画像、前記物体の線減弱係数および前記物体の屈折率に基づいて前記X線焦点形状を評価する演算ステップと、
    を備えるX線焦点形状評価方法。
  9. 前記撮像ステップにおいて、平板形状の物体の前記位相コントラスト画像を取得する、
    請求項8に記載のX線焦点形状評価方法。
  10. 前記撮像ステップにおいて、前記伝搬経路上に前記物体が配置されていない状態で背景画像を前記撮像部により取得し、
    前記演算ステップにおいて、前記背景画像に基づいて前記位相コントラスト画像を補正して、その補正後の位相コントラスト画像に基づいて前記X線焦点形状を評価する、
    請求項8または9に記載のX線焦点形状評価方法。
  11. 前記演算ステップにおいて、前記ターゲットにおけるX線発生時のX線強度分布を表す関数を仮定し、この仮定した関数に基づいて得られる位相コントラスト画像における前記エッジに垂直な方向の強度分布で、前記撮像部により取得された位相コントラスト画像における前記エッジに垂直な方向の強度分布をフィッティングすることで、仮定した前記関数のパラメータを推定して前記X線焦点形状を評価する、
    請求項8~10の何れか1項に記載のX線焦点形状評価方法。
  12. 前記演算ステップにおいて、前記撮像部により取得された位相コントラスト画像における前記エッジに垂直な方向の強度分布において最大強度位置と最小強度位置との間の距離を求め、この距離に基づいて前記X線焦点形状を評価する、
    請求項8~10の何れか1項に記載のX線焦点形状評価方法。
  13. 前記撮像ステップにおいて、前記物体の前記エッジが複数の方位それぞれに設定された状態で前記位相コントラスト画像を取得し、
    前記演算ステップにおいて、前記複数の方位それぞれの前記位相コントラスト画像に基づいて前記X線焦点形状を評価する、
    請求項8~12の何れか1項に記載のX線焦点形状評価方法。
  14. 前記撮像ステップにおいて、方位が互いに異なる複数のエッジを有する物体の前記位相コントラスト画像を取得し、
    前記演算ステップにおいて、前記位相コントラスト画像に基づいて前記複数のエッジそれぞれについて前記X線焦点形状を評価する、
    請求項8~12の何れか1項に記載のX線焦点形状評価方法。
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