JP7724646B2 - 油性組成物及び該油性組成物を含有する可塑性油脂組成物 - Google Patents
油性組成物及び該油性組成物を含有する可塑性油脂組成物Info
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Description
飽和脂肪酸残基とトランス脂肪酸残基を含む部分水素添加油脂は、水素添加の程度により融点を自由に調節でき、また、高温や常温下における部分的な液状化の低減ができるため、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング等に広く使用されている。
アメリカにおいては、アメリカ食品医薬品局が部分水素添加油脂を、一般に安全と認められる指標であるGRAS(Generally Recognized As Safe)対象から除外することを決定した(2015年6月)。日本では、法的な規制はないものの、健康志向の高まりや海外での規制を受けて、使用の表示の重要性が論じられている。
また、油脂中の飽和脂肪酸残基も、その過剰摂取により冠動脈心疾患のリスクを高めることが指摘されている。
特許文献2には、ベヘン酸残基を1つ以上有するトリグリセリドと、パルミチン酸結合型モノグリセリド脂肪酸エステル及びステアリン酸結合型モノグリセリド脂肪酸エステルの少なくとも一方と、を含むことにより飽和脂肪酸及びトランス脂肪酸を低減した可塑性油脂組成物について開示されている。
特許文献3には、構成脂肪酸としてC20以上の飽和脂肪酸が5%以上である高融点油脂を3~50%配合し、且つ全油脂中の飽和脂肪酸含量が35%以下であり、実質的にトランス脂肪酸を含まない油脂組成物について開示されている。
特許文献4には、少なくとも18の炭素原子を有する、単一不飽和又は多価不飽和脂肪酸構成脂肪酸を3つ含むトリグリセリドと、16-24の炭素原子を有する飽和脂肪酸を3つ含むトリグリセリドを含む健康に良いマーガリン又はスプレッドに適した脂肪組成物が開示されている。
特許文献4においては、5-95%質量UUUと0-8重量%のSSSを含むスプレッド脂肪(Sは16-24の炭素原子を有する飽和脂肪酸であり、Uは少なくとも18の炭素原子を有する、単一不飽和又は多価不飽和脂肪酸構成脂肪酸)の提供方法であるが、組成物のSFC値に5℃でのSFCが6.5%以上となっている。
上記したように、炭素数20以上の一価不飽和脂肪酸結合型トリグリセリドと不飽和脂肪酸結合型モノグリセリドを含むことにより、オイルオフが少なく、5~40℃においてSFC値の低い可塑性油脂組成物とその簡便な製造方法は開示されていなかった。
すなわち、トランス脂肪酸残基、飽和脂肪酸残基が少ない油脂は、融点の低い不飽和脂肪酸残基を多く含む油脂の占める割合が高くなる。このような構成の油脂を原料とする可塑性油脂組成物は、製造時の冷却工程で飽和脂肪酸残基とトランス脂肪酸残基を含む油脂が優先的に結晶化され、トランス脂肪酸残基以外の不飽和脂肪酸残基の多い油脂が、飽和脂肪酸残基とトランス脂肪酸残基を含む油脂に全て抱き込まれた状態で固化する。さらにその後、可塑性油脂組成物の冷却保存中に飽和脂肪酸残基とトランス脂肪酸残基を含む油脂の収斂が生じる。このような可塑性油脂組成物が、トランス脂肪酸残基以外の不飽和脂肪酸残基が多い油脂の融点よりも高い温度の雰囲気下に晒されると、抱き込まれたトランス脂肪酸残基以外の不飽和脂肪酸残基の多い油脂が液状化し、分離することでオイルオフが生じると考えられる。
上記知見に基づいて更なる研究を続けた結果、本発明者等は油性組成物の組成を特定範囲とすることで、オイルオフ低減作用を有する可塑性油脂組成物に含まれる油性組成物が得られることを見出した。すなわち、本発明は以下の内容に関する。
<1>
以下に示す(a)、(b)、(c)のうち少なくとも2つ、を含む油性組成物であって、
(a)炭素数20以上の飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリド
(b)炭素数20以上の一価不飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリド
(c)不飽和脂肪酸結合型モノグリセリド
油性組成物の全質量基準で、前記(a)成分を含む場合の前記(a)成分の含有量が2.5質量%以上、前記(b)成分を含む場合の前記(b)成分の含有量が3.5質量%以上、前記(c)成分を含む場合の前記(c)成分の含有量が0.5質量%以上である、
ことを特徴とする前記油性組成物。
<2>
請求項1に記載の油性組成物を含み、オイルオフ値が2cm以下であり、かつ、ヒートショック耐性が0.5cm以上である可塑性油脂組成物。
<3>
5~40℃までのSFCの値が6.5%以下であることを特徴とする<2>に記載の可塑性油脂組成物。
(オイルオフ低減作用を有する可塑性油脂組成物に含まれる油性組成物)
本発明のオイルオフ低減作用を有する可塑性油脂組成物に含まれる油性組成物は、以下の(a)、(b)、(c)のうち少なくとも2つ、好ましくは3つを含むものであり、
(a)炭素数20以上の飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリド
(b)炭素数20以上の一価不飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリド
(c)不飽和脂肪酸結合型モノグリセリド
それぞれ、油性組成物の全質量基準で、(a)成分を含む場合の(a)成分の含有量が2.5質量%以上30質量%以下、(b)成分を含む場合の(b)成分の含有量が3.5質量%以上50質量%以下、(c)成分を含む場合の(c)成分の含有量が0.5質量%以上10質量%以下である油性組成物である。
(1)油性組成物の全質量基準で(a)成分を2.5質量%以上30質量%以下、(b)成分を3.5質量%以上50質量%以下含む油性組成物
(2)油性組成物の全質量基準で(a)成分を2.5質量%以上30質量%以下、(c)成分を0.5質量%以上10質量%以下含む油性組成物
(3)油性組成物の全質量基準で(b)成分を3.5質量%以上50質量%以下、(c)成分を0.5質量%以上10質量%以下含む油性組成物
(4)油性組成物の全質量基準で(a)成分を2.5質量%以上30質量%以下、(b)成分を3.5質量%以上50質量%以下、(c)成分を0.5質量%以上10質量%以下含む油性組成物
の油性組成物が挙げられる。このうちでも(4)の油性組成物がより好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油性組成物において、(a)又は(b)の炭素数が20以上の飽和あるいは1価の不飽和脂肪酸残基を含むトリグリセリドを上記の範囲で含むことにより、常温時に液状となった油を(a)又は(b)のトリグリセリドが形成する網目構造の中に抱き込ませることができる。また、(c)の不飽和脂肪酸結合型モノグリセリドを含むことで、トリグリセリドが形成する網目構造を強化し、液状の油をよりいっそう強固に抱き込ませることができる。
したがって、(a)、(b)、(c)をすべて上記の範囲のように含むことでいっそう前記作用が効果的に発揮され、当該油性組成物を含む可塑性油脂組成物のオイルオフが低減される。
上記(1)、(3)、(4)の場合の油性組成物における(b)の含量は、油性組成物の全質量基準で3.5質量%以上50質量%以下であり、好ましくは、5.0質量%以上30質量%以下である。
上記(2)、(3)、(4)の場合の油性組成物における(c)の含量は、油性組成物の全質量基準で0.5質量%以上10質量%以下であり、好ましくは、1.0質量%以上5.0質量%以下である。
本発明における可塑性油脂組成物は、上述の油性組成物を含むもので、水相を含有する形態のものである。
本発明の可塑性油脂組成物は、特に限定されないが、例えば、マーガリン類であってもよい。また、水相を含有する乳化形態は、特に限定されないが、例えば、油中水型、水中油型、油中水中油型、水中油中水型等が挙げられる。この場合の油性組成物の含有量は、可塑性油脂組成物の全体の質量に対して、好ましくは20~85質量%であり、より好ましくは30~85質量%であり、更に好ましくは30~70質量%である。また、水相の含有量は、可塑性油脂組成物の全体の質量に対して、好ましくは15~80質量%であり、より好ましくは、15~70質量%であり、更に好ましくは、30~70質量%である。
マーガリン類とは、マーガリン又はファットスプレッドのことを指す。マーガリンは、油脂を80質量%以上含み、ファットスプレッドは、油脂を80質量%未満含むものである。
本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油性組成物の原材料について説明する。
可塑性油脂組成物に含まれる油性組成物に用いる油脂は、得られる可塑性油脂組成物とその可塑性油脂組成物に含まれる油性組成物においてトランス脂肪酸と飽和脂肪酸が低減されるものであればどのようなものでもよい。この場合、トランス脂肪酸ではその含有量が可塑性油脂組成物100g中7g以下となるものが好ましく、3.5g以下となるものがさらに好ましく、さらには、1.0g以下がよりいっそう好ましく、0.3g以下となるものが最も好ましい。飽和脂肪酸では可塑性油脂組成物に含まれる油性組成物の構成脂肪酸残基に占める飽和脂肪酸残基の割合が30質量%以下となるものが好ましく、20質量%以下となるものがさらに好ましく、さらには、15質量%以下となるものがよりいっそう好ましく、10質量%以下となるものが最も好ましい。
トランス脂肪酸含量と構成脂肪酸残基に占める飽和脂肪酸残基の割合の組み合わせとしては、例えば、トランス脂肪酸含量が可塑性油脂組成物100g中1.0g以下で、かつ、可塑性油脂組成物に含まれる油性組成物の構成脂肪酸に占める飽和脂肪酸が、15質量%以下である可塑性油脂組成物が好ましい。さらには、トランス脂肪酸含量が可塑性油脂組成物100g中0.3g以下で、かつ、可塑性油脂組成物に含まれる油性組成物の構成脂肪酸に占める飽和脂肪酸が、10質量%以下である可塑性油脂組成物がより好ましい。
さらに、必要に応じて、トランス脂肪酸含量の増加やオイルオフの発生に関与しないものであれば、可塑性油脂組成物に一般的に使用されている原材料を用いることが出来る。それらは、水、脱脂粉乳、食塩、塩化カリウム、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、グアーガム、カラギーナン、アラビアガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、寒天、デキストリン、澱粉、加工澱粉等の増粘安定剤、甘味料、酸化防止剤、pH調整剤、香料、色素、ビタミン剤等が例示される。
エステル交換油は、当該技術分野において公知のエステル交換により調製することができる。例えば、ランダムエステル交換方法では、ナトリウムメチラート、水酸化ナトリウム等の化学触媒を用いて調製することができる。
次に可塑性油脂組成物の製造方法について一例を説明する。
(イ)原材料の油脂をその融点以上、例えば40℃~85℃に加温し、ここにオイルオフ低減作用を付与する組成物を添加溶解して油相を調製する。必要に応じて、油相にグリセリン脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤や、βカロテン等の色素、油溶性ビタミンを添加することできる。
なお、(イ)、(ロ)工程については経時的制限はなく、どちらの工程を先に行ってもよく、また両工程を同時に行なってもよい。
(オイルオフ評価試験)
試料を直径3cmのガラスリングに詰め、10分間氷冷後、5℃で72時間保存し、この試料に1cm×5cmのろ紙を1cm刺し、23℃で1時間静置した。
オイルオフは1時間静置後に、ろ紙に染み込んだ液状油の高さを計測することで評価した(n=2)。
本発明の可塑性油脂組成物のオイルオフ値は、2cm以下が好ましい。
試料を10℃で2週間静置させた試料を直径2cm、高さ1cmのガラスリングで打ち抜いてシャーレに載せ、これを30℃で1時間保持した時の試料の高さを測定した。
本発明の可塑性油脂組成物のヒートショック耐性は、0.5cm以上が好ましい。
試料をSFC測定用ガラスチューブに高さ1cmになるように入れ、5~40℃でのSFC(%)を測定した(n=3)。
本発明の可塑性油脂組成物の5~40℃までのSFCの値は、10%以下であることが好ましく、さらには6.5%以下であることが好ましい。
表1に示す、油脂原料とオイルオフ抑制作用を有する組成物とを、全質量が100gとなるように混合し、その後50℃で攪拌した後、氷水で冷却することにより、実施例品1から実施例品4の油性組成物を調製した。油脂原料としては、菜種白絞油、大豆油、コーン油、油脂LS、LU、LUSを用いた。油脂LSは、炭素数20以上の飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリドを5.0%以上含むエステル交換油脂、LUは、炭素数20以上の一価不飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリドを5.0%以上含むエステル交換油脂、LUSは、炭素数20以上の飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリドと、炭素数20以上の一価不飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリドをいずれも5.0%以上含むエステル交換油脂である。油脂LS、LU、LUSは、前記本願可塑性油脂組成物の原材料の項の「原料油脂」として列挙された油脂を、目的とする脂肪酸組成となるように組み合わせてエステル交換を行い調製した。調整後、得られたエステル交換油を試料とし、日本油化学協会編、「基準油脂分析試験法」の2.4.2.2-2013に記載の脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)の測定方法に基づいて、試料中の脂肪酸含量の重量%を測定し、目的とする組成であることを確認した。
表1中、各成分の配合量を油性組成物の全質量基準における質量比(%)で示す。同様にして比較例品1から比較例品3を調製した。
表2から表4に示すとおり、全質量が100gとなるように、油相と水相を調製した。
すなわち、油相は、油脂とオイルオフ低減作用を有する組成物とを混合し、50℃で攪拌することにより調製した。オイルオフ抑制作用を付与する組成物としては、(a)炭素数20以上の飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリドと、(b)炭素数20以上の一価不飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリドと、(c)不飽和脂肪酸結合型モノグリセリドを用いた。水相は、水と食塩とゼラチンとを混合し、50℃で攪拌することにより調製した。
140rpmで攪拌した50℃の油相に、20L/分で50℃の水相を添加することで油相と水相を乳化させ、得られた50℃の乳化物を、密閉型連続式掻き取りチューブ式冷却機にて10℃まで急冷捏和し、さらに10℃に保持したままピンマシンで混練した。
混練した乳化物160gをプラスチック容器に充填することで可塑性油脂組成物である実施例品5から実施例品11と比較例品4から比較例品6(表2)、実施例品12から実施例品15と比較例品7から比較例品9(表3)、実施例品16から実施例20と比較例品10から比較例品12(表4)を得た。これらは10℃で保存した。
得られた実施例品に係る可塑性油脂組成物のトランス脂肪酸含量は、0.3gから1.6gでありいずれも3.5g/100g以下であった。また実施例品に係る可塑性油脂組成物の油脂中の構成脂肪酸に占める飽和脂肪酸は、9質量%から15質量%でありいずれも15質量%以下であった。
<オイルオフ評価試験>
実施例品5から実施例品20及び比較例品4から比較例品12(以下、試料ともいう。)を直径3cmのガラスリングに詰め、10分間氷冷後、5℃で静置保存した。
5℃で72時間保存した試料に1cm×5cmのろ紙を1cm刺し、23℃で1時間静置した。
オイルオフは1時間静置後にろ紙に染み込んだ液状油の高さを計測することで評価した(n=2)。各水準のオイルオフが2.0cm以下の場合は「良好:○」、2.1cm以上の場合は「悪化:×」とした。
<ヒートショック耐性試験>
試料を10℃で2週間静置させた。静置後の試料を直径2cm、高さ1cmのガラスリングで打ち抜いてシャーレに載せ、これを30℃で1時間保持した時の試料の高さを測定した。
試料の高さが0.5cm以上の場合はヒートショック耐性が「良好:○」、0.5cm未満の場合は「悪化:×」とした。
<固体脂含有量(SFC)測定試験>
実施例品1から実施例品20及び比較例品1から比較例品12をSFC測定用ガラスチューブに高さ1cmになるように入れ、5℃でのSFC(%)を測定した(n=3)。
表2から表4に示すとおり、実施例品5から実施例品20は、油相と水相の比率にかかわらず、オイルオフ、ヒートショック耐性のいずれも良好であった。表2においては、実施例品5、表3においては実施例品12、表4においては実施例品16が、オイルオフ、ヒートショック耐性とも最もよい成績であった。
これに対して比較例品4から比較例品12はオイルオフ、ヒートショック耐性のいずれも良好でなかった。
Claims (3)
- 以下に示す(a)、(b)及び(c)を含む油性組成物であって、
(a)炭素数20以上の飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリド
(b)炭素数20以上の一価不飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリド
(c)不飽和脂肪酸結合型モノグリセリド
油性組成物の全質量基準で、前記(a)成分を含む場合の前記(a)成分の含有量が2.5質量%以上、前記(b)成分を含む場合の前記(b)成分の含有量が3.5質量%以上、前記(c)成分を含む場合の前記(c)成分の含有量が0.5質量%以上である、ことを特徴とする前記油性組成物、
と水相を含む可塑性油脂組成物。 - 油性組成物の含有量が可塑性油脂組成物の全体の質量に対して20~85質量%であり、水相の含有量は、可塑性油脂組成物の全体の質量に対して15~80質量%である、請求項1に記載の可塑性油脂組成物。
- 5~40℃までのSFCの値が6.5%以下であることを特徴とする請求項2に記載の可塑性油脂組成物。
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Non-Patent Citations (2)
| Title |
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| Engineering,2016年,Vol.2,p.258-262 |
| Food Chemistry,2005年,Vol.93,p.253-263 |
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