以下、本発明の実施形態について説明する。しかしながら、以下説明する形態は、あくまで例示であって、当業者にとって自明な範囲で適宜修正することができる。
<第1実施形態>
(固形乳10Sの構成)
図1は、本実施形態に係る固形乳10Sの斜視図である。図2は図1の固形乳のX1-X2における断面図である。図3は図1の固形乳10SのY1-Y2における断面図である。
固形乳10Sは、粉乳を圧縮成型した固形状の本体10を有する。本体10は、XY平面に平行で平坦な第1面10Aと、XY平面に平行で平坦な第2面10Bとを有する。第1面10Aと第2面10Bとは背中合わせの面である。本体10の形状は、圧縮成型に用いる型(打錠機の臼)の形状によって定まるが、ある程度の寸法(大きさ、厚さ、角度)をもつ形状であれば特に限定されない。本体10の概略形状は、円柱状、楕円柱状、立方体状、直方体状、板状、多角柱状、多角錐台状あるいは多面体状等である。成型の簡便さや運搬の便利さ等の観点から、円柱状、楕円柱状及び直方体状が好ましい。図1~図3に示した固形乳10Sの本体10の概略形状は、寸法がa×b×c(図1参照)である直方体状であり、本体10はXZ平面又はYZ平面に平行な側面10Cを有する。第1面10A及び側面10Cから構成される角部及び第2面10B及び側面10Cから構成される角部は、それぞれ面取りされたテーパー形状であってもよい。面取りされている場合、運搬する際等で固形乳10Sが壊れる事態を抑制することができる。
表面とは、物質の外側を成す面である。表層とは、表面を含む表面近傍の層である。例えば、表層とは、粉乳の圧縮成型により形成され、さらに硬化処理により硬化された層である。本実施形態の表層は、内部より硬い層となっている。ここで、表層が内部より硬い層であるとは、表層だけを分離するのに必要となる力が、内部を分離するのに必要となる力よりも相対的に大きいことを指す。
本実施形態の固形乳10Sは、粉乳を圧縮成型して硬化した固形状の固形乳である。ここで、固形乳10Sの表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、固形乳の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さが、1.1mm以下である。
総結晶化率とは全重量に対する結晶の比率(重量%)である。総結晶化率の増加とは、硬化処理前から存在していた結晶と、硬化処理において受ける加湿の影響の大きさに応じて増加した結晶との和の結晶化率から、硬化処理前から存在していた結晶の結晶化率を差し引いた差分として定義される。硬化処理前から存在していた結晶の結晶化率は、硬化処理で、本実施形態では加湿の影響がないあるいは実質的にない固形乳の内部の結晶の結晶化率に相当する。即ち、総結晶化率の増加は、固形乳の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、固形乳の内部の結晶の比率に対する差分である。上記の結晶としては、例えばα乳糖結晶やβ乳糖結晶があげられる。
上記の固形乳の内部とは、硬化処理の前後において総結晶化率が変動しないあるいは実質的に変動しない領域を指し、例えば固形乳の中心部分あるいは中心近傍部分である。具体的には、固形乳の中心からXYZ方向に±1mmの立方体状の範囲、あるいは、固形乳の中心から半径1mmの球状の範囲である。上記の硬化処理とは、詳細は後述するが、固形乳を製造するときに粉乳圧縮成型物を硬化するために行われる処理である。
固形乳の内部について、上記では、硬化処理の前後において総結晶化率が変動しないあるいは実質的に変動しない領域を指し、例えば固形乳の中心部分あるいは中心近傍部分であると説明しているが、硬化処理の前後において総結晶化率が変動の有無を問わず、単に固形乳の中心部分あるいは中心近傍部分であってもよい。
上記の総結晶化率の増加がゼロまたは極小となる深さから固形乳の表面までは、内部に対して総結晶化率が増加した部分、即ち結晶化して硬化した部分であり、結晶硬化層と称する。総結晶化率の増加がゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さは、結晶硬化層の厚さに相当する。
本実施形態の固形乳10Sは、総結晶化率の増加がゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さが、好ましくは0.87mm以下、さらに好ましくは、0.72mm以下、またさらに好ましくは、0.59mm以下である。
総結晶化率の増加は、例えばXRD(X線回折)法により、試料の測定面のXRD測定毎に表面から0.1mmの厚さの分ずつ切削して面全体の総結晶化率として求めることができる。また、2次元のマッピングを行えるXRD測定装置では、試料の深さ方向に例えば0.05mm~0.1mm程度の精度で総結晶化率の増加を測定することができる。
本体10には、第1面10Aから第2面10Bに達して本体10を貫通する孔が1つ又は2つ以上設けられていてもよい。孔の形状は、例えばXY平面に平行な断面において、長円形、角丸長方形、楕円形、円形、長方形、正方形、あるいはその他の多角形である。孔の位置は、第1面10Aの中央の位置から見たときに大きな偏りがない位置であることが好ましく、例えば第1面10Aの中央の位置に対して点対称となる配置、あるいは第1面10Aの中央を通るX軸と平行な線又はY軸と平行な線に対して線対称となる配置である。孔が1つの場合は、例えば第1面10Aの中央に設けられる。孔が設けられている場合、孔の縁はテーパー状の斜面となっていてよい。なお、孔が設けられた場合、孔の内壁面は第1面10Aと同様の内部より硬い表面である。
固形乳10Sの成分は、基本的には原料となる粉乳の成分と同様である。固形乳10Sの成分は、例えば、脂肪、たん白質、糖質、ミネラル、ビタミン及び水分等である。
粉乳は、乳成分(例えば牛乳の成分)を含む液体状の乳類(液状乳)から製造されたものである。乳成分は、例えば、生乳(全脂乳)、脱脂乳及びクリーム等である。液状乳の水分含有率は、例えば40重量%~95重量%である。粉乳の水分含有率は、例えば1重量%~5重量%である。粉乳は、後述の栄養成分が添加されていてよい。粉乳は、固形乳10Sを製造するために適したものであれば、全粉乳、脱脂粉乳、又はクリーミーパウダーであってもよい。粉乳の脂肪含有率は、例えば5重量%~70重量%であることが好ましい。
上記の粉乳の原料となる乳成分は、例えば生乳由来のものである。具体的には、牛(ホルスタイン、ジャージー種その他)、山羊、羊及び水牛等の生乳由来のものである。上記の生乳には脂肪分が含まれているが、脂肪分の一部又は全部が遠心分離等により取り除かれた脂肪含有率が調節された乳であってもよい。
さらに、上記の粉乳の原料となる乳成分は、例えば植物由来の植物性乳である。具体的には、豆乳、ライスミルク、ココナッツミルク、アーモンドミルク、ヘンプミルク、ピーナッツミルク等の植物由来のものである。上記の植物性乳には脂肪分が含まれているが、脂肪分の一部又は全部が遠心分離等により取り除かれた脂肪含有率が調節された乳であってもよい。
上記粉乳の原料となる栄養成分は、例えば、脂肪、たん白質、糖質、ミネラル及びビタミン等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
上記の粉乳の原料となり得るたん白質は、例えば、乳たん白質及び乳たん白質分画物、動物性たん白質、植物性たん白質、それらのたん白質を酵素等により種々の鎖長に分解したペプチド及びアミノ酸等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。乳たん白質は、例えば、カゼイン、乳清たん白質(α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン等)、乳清たん白質濃縮物(WPC)及び乳清たん白質分離物(WPI)等である。動物性たん白質は、例えば、卵たん白質である。植物性たん白質は、例えば、大豆たん白質及び小麦たん白質である。アミノ酸は、例えば、タウリン、シスチン、システイン、アルギニン及びグルタミン等である。
上記の粉乳の原料となり得る脂肪(油脂)は、動物性油脂、植物性油脂、それらの分別油、水素添加油及びエステル交換油である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。動物性油脂は、例えば、乳脂肪、ラード、牛脂及び魚油等である。植物性油脂は、例えば、大豆油、ナタネ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、綿実油、アマニ油及びMCT(Medium Chain Triglyceride, 中鎖脂肪酸トリグリセリド)油等である。
上記の粉乳の原料となり得る糖質は、例えば、オリゴ糖、単糖類、多糖類及び人工甘味料等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。オリゴ糖は、例えば、乳糖、ショ糖、麦芽糖、ガラクトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ラクチュロース等である。単糖類は、例えば、ブドウ糖、果糖及びガラクトース等である。多糖類は、例えば、デンプン、可溶性多糖類及びデキストリン等である。なお、糖質の人工甘味料に替えて、あるいは加えて、非糖質の人工甘味料を用いてもよい。
上記の粉乳の原料となり得るミネラル類は、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、及び亜鉛等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。なお、ミネラル類のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、及び亜鉛に替えて、あるいは加えて、リン及び塩素の一方又は両方を用いてもよい。
固形乳10Sには、固形乳10Sの原料である粉乳を圧縮成型した時に生じた空隙(例えば細孔)が多数存在している。これら複数の空隙は、固形乳10Sの深さ方向の充填率プロファイルに対応して分散(分布)している。空隙が大きい(広い)ほど、水等の溶媒の侵入が容易となるため、固形乳10Sを速く溶解させることができる。一方、空隙が大きすぎると、固形乳10Sの硬度が弱くなるか、固形乳10Sの表面が粗くなることがある。各空隙の寸法(大きさ)は、例えば10μm~500μmである。
固形乳10Sは、水等の溶媒に対してある程度の溶解性を持っている必要がある。溶解性は、例えば溶質としての固形乳10Sと、溶媒としての水とを所定の濃度となるように用意したときに、固形乳10Sが完全に溶けるまでの時間や所定時間における溶け残り量で評価することができる。
固形乳10Sは所定範囲の硬度を有することが好ましい。硬度は、公知の方法で測定できる。本明細書においては、ロードセル式錠剤硬度計を用いて硬度を測定する。ロードセル式錠剤硬度計に直方体状をなす固形乳10Sの第2面10Bを底面として載置し、側面10CのXZ平面に平行な1面およびYZ平面に平行な1面を用いて固定して、側面10Cの固定していないもう一方のXZ平面に平行な面側から硬度計の破断端子で第1面10Aの短軸方向(図1のY軸方向)にYZ平面が破断面となる向きに一定速度で押し、固形乳10Sが破断した時の荷重[N]をもって固形乳10Sの硬度(錠剤硬度)[N]とする。測定点は固形乳10Sの場合、側面10Cの一対のYZ平面から等距離となるYZ平面に平行な面が、側面10CのXZ平面と交差した線分上で第1面10Aと第2面10Bから等距離となる点から選択する。例えば、岡田精工(株)製のロードセル式錠剤硬度計(ポータブルチェッカーPC-30)を用いる。硬度計に組み込まれた破断端子は、固形乳10Sに接触する接触面を有する。破断端子の有する接触面は、1mm×24mmの長方形であり、この長方形の長軸がZ軸に平行となる向きに配置される。この破断端子の有する接触面は、少なくとも一部で固形乳10Sの測定点を押すように構成されている。破断端子が固形乳10Sを押す速度を0.5mm/sとする。上記の硬度の測定は、固形乳10Sに限らず、後述の粉乳圧縮成型物(未硬化の固形乳10S)の硬度を測定する場合にも適用できる。上記のように測定される硬度に関して、固形乳10Sを運搬する際等に固形乳10Sが壊れる事態を極力避けるため、固形乳10Sの硬度は20N以上であることが好ましく、より好ましくは40N以上である。一方、固形乳10Sの硬度が高すぎると固形乳10Sの溶解性が悪くなることから、固形乳10Sの硬度は100N以下であることが好ましく、より好ましくは70N以下である。
ここで使用する硬度は、[N(ニュートン)]の単位を持つ力の物理量である。硬度は固形乳試料の破断面積が大きいほど大きくなる。ここで、「破断」とは固形乳10S等の試料に静的に垂直荷重をかけたときに破損することを指し、この破損した際にできた断面積を「破断面積」と称する。つまり、硬度[N]は固形乳試料の寸法に依存する物理量である。固形乳試料の寸法に依存しない物理量として破断応力[N/m2]がある。破断応力は破断時に単位破断面積あたりにかかる力であり、固形乳試料の寸法に依存せず、寸法の異なる固形乳試料間でも固形乳試料にかかる力学的な作用を比較できる指標である。破断応力=硬度/破断面積となる。本明細書では簡易的に硬度[N]を用いて説明をしている場合があるが、これらは硬度を破断面積で除した破断応力[N/m2]として表してもよい。破断応力を算出する際には、破断面を想定し、想定した破断面での最小の破断面積を用いて算出する。例えば固形乳10Sの場合、理想的な破断面積は、固形乳の中心を通り、Z軸と平行な線を含む面での破断面積となる寸法b×cで表される。例えば、固形乳10Sの概略形状の寸法が、31mm(a)×24mm(b)×12.5mm(c)の直方体状である場合、理想的な破断面積は300mm2(24mm(b)×12.5mm(c))である。固形乳10Sの20N以上100N以下という好ましい硬度範囲は、硬度を破断面積(300mm2)で除して、0.067N/mm2以上0.33N/mm2以下という好ましい破断応力範囲に対応する。例えば、固形乳10Sの好ましい破断応力の範囲は、破断面積の範囲を考慮すると、0.067N/mm2以上0.739N/mm2以下である。
(固形乳10Sの製造方法)
続いて固形乳10Sの製造方法について説明する。まず、固形乳10Sの原料となる粉乳を製造する。粉乳の製造工程では、例えば液状乳調製工程、液状乳清澄化工程、殺菌工程、均質化工程、濃縮工程、気体分散工程及び噴霧乾燥工程により、粉乳を製造する。
液状乳調製工程は、上記の成分の液状乳を調製する工程である。
清澄化工程は、液状乳に含まれる微細な異物を除去するための工程である。この異物を除去するためには、例えば遠心分離機やフィルター等を用いればよい。
殺菌工程は、液状乳の水や乳成分等に含まれている細菌等の微生物を死滅させるための工程である。液状乳の種類によって、実際に含まれていると考えられる微生物が変わるため、殺菌条件(殺菌温度や保持時間)は、微生物に応じて適宜設定される。
均質化工程は、液状乳を均質化するための工程である。具体的には、液状乳に含まれている脂肪球等の固形成分の粒子径を小さくして、それらを液状乳に一様に分散させる。液状乳の固形成分の粒子径を小さくするためには、例えば液状乳を加圧しながら狭い間隙を通過させればよい。
濃縮工程は、後述の噴霧乾燥工程に先立って、液状乳を濃縮するための工程である。液状乳の濃縮には、たとえば真空蒸発缶やエバポレーターを用いればよい。濃縮条件は、液状乳の成分が過剰に変質しない範囲内で適宜設定される。これにより、液状乳から濃縮乳を得ることができる。続いて、本発明では、濃縮された液状乳(濃縮乳)に気体を分散させ、噴霧乾燥することが好ましい。このとき、濃縮乳の水分含有率として、例えば、35重量%~60重量%があげられ、好ましくは、40重量%~60重量%であり、より好ましくは40重量%~55重量%である。このような濃縮乳を用いて、気体を分散させた際に、濃縮乳の密度を低下させて嵩高くし、そのように嵩高くした状態の濃縮乳を噴霧乾燥することで、固形乳を製造する際に、好ましい特質を有する粉乳を得ることができる。なお、液状乳の水分が少ない場合や噴霧乾燥工程の対象となる液状乳の処理量が少ない場合には、本工程を省略してもよい。
気体分散工程は、液状乳に、所定の気体を分散させるための工程である。このとき、所定の気体としては、たとえば液状乳の体積の1×10-2倍以上7倍以下の体積で分散させることがあげられ、好ましくは、液状乳の体積の1×10-2倍以上5倍以下の体積であり、より好ましくは、液状乳の体積の1×10-2倍以上4倍以下であり、最も好ましくは、1×10-2倍以上3倍以下である。
所定の気体を液状乳に分散させるために、所定の気体を加圧することが好ましい。所定の気体を加圧する圧力は、当該気体を液状乳へ効果的に分散させることができる範囲内であれば特に限定されないが、所定の気体の気圧として、例えば1.5気圧以上10気圧以下があげられ、好ましくは2気圧以上5気圧以下である。液状乳は以下の噴霧乾燥工程において噴霧されるため、所定の流路に沿って流れており、この気体分散工程では、この流路に加圧した所定の気体を流し込むことで、当該気体を液状乳に分散(混合)させる。このようにすることで、所定の気体を液状乳に容易にかつ確実に分散させることができる。
このように、気体分散工程を経ることにより、液状乳の密度は低くなり、見かけの体積(嵩)は大きくなる。なお、液状乳の密度は、液状乳の重さを、液体状態と泡状態の液状乳全体の体積で除したものとして求めてもよい。また、JIS法に準拠したカサ密度測定(顔料:JISK5101準拠)方法により、密度を測定する装置を用いて測定してもよい。
したがって、上記の流路には、所定の気体が分散状態にある液状乳が流れることになる。ここで、当該流路において、液状乳の体積流量は、一定となるように制御されていることが好ましい。
本実施形態では、所定の気体として二酸化炭素(炭酸ガス)を用いることができる。当該流路において、液状乳の体積流量に対する二酸化炭素の体積流量の比率(以下、その百分率を「CO2混合比率[%]」ともいう)として、例えば1%以上700%以下があげられ、2%以上300%以下が好ましく、3%以上100%以下がより好ましく、最も好ましくは、5%以上45%以下である。このように、二酸化炭素の体積流量が液状乳の体積流量に対して一定となるように制御することで、そこから製造される粉乳の均一性を高めることができる。但し、CO2混合比率が大きすぎると、液状乳が流路を流れる割合が低くなって、粉乳の製造効率が悪化する。したがって、CO2混合比率の上限は700%であることが好ましい。また、二酸化炭素を加圧する圧力は、二酸化炭素を液状乳へ効果的に分散させることができる範囲内であれば特に限定されないが、二酸化炭素の気圧として、たとえば1.5気圧以上10気圧以下があげられ、好ましくは2気圧以上5気圧以下である。なお、二酸化炭素と液状乳を密閉系で連続的に(インラインで)混合することにより、細菌等の混入を確実に防止して、粉乳の衛生状態を高めること(又は高い清浄度を維持すること)ができる。
本実施形態では、気体分散工程において用いる所定の気体は、二酸化炭素(炭酸ガス)とした。二酸化炭素に代えて、又は二酸化炭素とともに、空気、窒素(N2)、及び酸素(O2)からなる群から選択された1又は2以上の気体を用いてもよいし、希ガス(例えばアルゴン(Ar)、ヘリウム(He))を用いてもよい。このように、さまざまな気体を選択肢とすることができるので、容易に入手できる気体を用いることで、気体分散工程を容易に行うことができる。気体分散工程において、窒素や希ガス等の不活性ガスを用いると、液状乳の栄養成分等と反応するおそれがないため、空気や酸素を用いるよりも、液状乳を劣化させる可能性が少なく好ましい。このとき、液状乳の体積流量に対する当該気体の体積流量の比率として、例えば1%以上700%以下があげられ、1%以上500%以下が好ましく、1%以上400%以下がより好ましく、最も好ましくは、1%以上300%以下である。例えば、ベルら(R. W. BELL, F. P. HANRAHAN, B. H. WEBB: “FOAM SPRAY DRYING METHODS OF MAKING READILY DISPERSIBLE NONFAT DRY MILK”, J. Dairy Sci, 46 (12) 1963. pp1352-1356)は、脱脂粉乳を得るために無脂肪乳の約18.7倍の体積の空気を吹き込んだとされている。本発明では、上記の範囲で気体を分散させることにより、固形乳を製造するために好ましい特性を有する粉乳を得ることができる。但し、気体分散工程において液状乳に所定の気体を分散させた結果として液状乳の密度を確実に低くするためには、所定の気体として、液状乳に分散しやすい気体や、液状乳に溶解しやすい気体を用いることが好ましい。このため、水への溶解度(水溶性)が高い気体を用いることが好ましく、20℃、1気圧下において、水1cm3への溶解度が0.1cm3以上である気体が好ましい。なお、二酸化炭素は、気体に限られることはなく、ドライアイスであってもよいし、ドライアイスと気体の混合物であってもよい。即ち、気体分散工程では、液状乳へ所定の気体を分散させることができるのであれば、固体を用いてもよい。気体分散工程において、ドライアイスを用いることで、冷却状態の液状乳に急速に二酸化炭素を分散させることができ、この結果、固形乳を製造するために好ましい特性を有する粉乳を得ることができる。
噴霧乾燥工程は、液状乳中の水分を蒸発させて粉乳(食品粉体)を得るための工程である。この噴霧乾燥工程で得られる粉乳は、気体分散工程及び噴霧乾燥工程を経て得られた粉乳である。この粉乳は、気体分散工程を経ずに得られた粉乳に比べて、嵩高くなる。前者は、後者の1.01倍以上10倍以下の体積となることが好ましく、1.02倍以上10倍以下でもよく、1.03倍以上9倍以下でもよい。
噴霧乾燥工程では、気体分散工程において液状乳に所定の気体が分散され、液状乳の密度が小さくなった状態のまま、液状乳を噴霧乾燥する。具体的には、気体を分散する前の液状乳に比べて、気体を分散した後の液状乳の体積が1.05倍以上3倍以下、好ましくは1.1倍以上2倍以下の状態で、噴霧乾燥することが好ましい。つまり、噴霧乾燥工程は、気体分散工程が終了した後に噴霧乾燥を行う。但し、気体分散工程が終了した直後は、液状乳が均一な状態ではない。このため、気体分散工程が終了した後0.1秒以上5秒以下、好ましくは0.5秒以上3秒以下で噴霧乾燥工程を行う。つまり、気体分散工程と噴霧乾燥工程が連続的であればよい。このようにすることで、液状乳が連続的に気体分散装置に投入されて気体が分散され、気体が分散された液状乳が連続的に噴霧乾燥装置に供給され、噴霧乾燥され続けることができる。
水分を蒸発させるためには、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を用いればよい。ここで、スプレードライヤーは、液状乳を流すための流路と、液状乳を流路に沿って流すために液状乳を加圧する加圧ポンプと、流路の開口部につながる流路よりも広い乾燥室と、流路の開口部に設けられた噴霧装置(ノズル、アトマイザー等)とを有するものである。そして、スプレードライヤーは、加圧ポンプで液状乳を上述した体積流量となるように流路に沿って乾燥室に向かって送り、流路の開口部の近傍において、噴霧装置で濃縮乳を乾燥室内に拡散させ、液滴(微粒化)状態にある液状乳を乾燥室内の高温(例えば熱風)で乾燥させる。つまり、乾燥室で液状乳を乾燥することで、水分が取り除かれ、その結果、濃縮乳は粉末状の固体、即ち粉乳となる。なお、乾燥室における乾燥条件を適宜設定することで、粉乳の水分量等を調整して、粉乳を凝集しにくくする。また、噴霧装置を用いることで、液滴の単位体積当たりの表面積を増加させて、乾燥効率を向上させるのと同時に、粉乳の粒径等を調整する。
上述したような工程を経ることにより、固形乳を製造するのに適した粉乳を製造することができる。
上記のようにして得られた粉乳を圧縮成型して、粉乳圧縮成型物を形成する。次に、得られた粉乳圧縮成型物に対して、例えば加湿処理及び乾燥処理を含む硬化処理を行う。以上により、固形乳10Sを製造することができる。
粉乳を圧縮成型する工程では、圧縮手段が用いられる。圧縮手段は、例えば、打錠機、圧縮試験装置等の加圧成型機である。打錠機は、粉乳を入れる型となる臼と、臼に向かって打ち付け可能な杵とを備えた装置である。以下では、打錠機による圧縮成型工程について説明する。
図4は、打錠機のスライドプレート、上杵及び下杵の位置を説明する説明図である。打錠機の成型ゾーンにおいて、スライドプレート30の臼30Aの下方にアクチュエータで上下動可能に下杵31が配されている。また、スライドプレート30の臼30Aの上方に上杵32がアクチュエータで上下動可能に配されている。図4は、スライドプレート30の臼30Aに下杵31及び上杵32が挿入され、下杵31及び上杵32が互いに最も近づいた位置を示す。この位置で、下杵31及び上杵32の間の距離は最終杵間隔Lである。スライドプレート30の臼30Aの内壁面、下杵31の上端面及び上杵32下端面が圧縮成型の型となる。例えばスライドプレート30の臼30Aの内壁面及び下杵31の上面で構成された凹部に粉乳を供給し、臼30Aの上方から上杵32を打ち付けることにより、粉乳に圧縮圧力が加わり、スライドプレート30の臼30Aの内壁面、下杵31の上端面及び上杵32下端面で囲まれた空間SPで粉乳が圧縮成型され、粉乳圧縮成型物を得ることができる。
下杵31及び上杵32を上下に駆動するアクチュエータは、例えばサーボモータで構成されている。本実施形態では、アクチュエータとしてのサーボモータの速度を変化させることで、詳細を後述するように、圧縮成型する際の圧縮速度即ち下杵31及び上杵32の移動速度を変化できるように構成されている。アクチュエータとしては、サーボモータに限定されず、また下杵31及び上杵32の移動速度を変化させる手法もこれに限定されるものではない。例えば、油圧シリンダー等を用いてもよい。また、圧縮成型の際には、下杵31及び上杵32が互いに近づく方向に移動させてもよく、一方を固定し他方だけを移動させてもよい。
圧縮成型する際の圧縮速度即ち下杵31及び上杵32の移動速度を変化させて圧縮成型する工程について説明する。この圧縮成型の際には、下杵31の上端面と上杵32の下端面とが近づく圧縮速度を変化させる(切り替える)。即ち、まず第1圧縮速度V1で第1圧縮を行い、この第1圧縮から続けて第2圧縮速度V2で第2圧縮を行う。本実施形態では、第1圧縮速度V1よりも第2圧縮速度V2が遅く設定されている。
第1圧縮及び第2圧縮の圧縮距離は、この例においては、図4に示すように、第2圧縮の終了時即ち全圧縮工程の終了時における状態を基準にしている。下杵31と上杵32とによる圧縮は、下杵31の上端面と上杵32の下端面との間の杵間隔が最終杵間隔Lとなるまで行われる。最終杵間隔Lは、全圧縮工程で圧縮された状態の粉乳圧縮成型物の最終の厚みである。この最終杵間隔Lは、圧縮を解除したときに粉乳圧縮成型物が膨張することを考慮して決められており、粉乳圧縮成型物の目標厚みよりも小さい、もしくは目標厚みと同じ値を持つ。
実施形態の打錠機は、第1圧縮と第2圧縮の切り替え中に、下杵31および上杵32の両面と圧縮物とを密着させ、圧縮物にかかる圧力を緩和させないように制御を行う。一方、従来知られている打錠機(例えば特開2008-290145号公報に記載の打錠機)は、圧縮物に含まれるエアを抜くなどを目的として予圧を加えた後に、いったん圧力を緩和させ、その後に圧縮物を成形する本圧をかける制御を行っている。実施形態の打錠機は、従来の打錠機とは異なり、第1圧縮と第2圧縮の間に圧力を緩和させずに、また下杵31および上杵32の両面と圧縮物とを密着させて、圧縮物を圧縮するので、圧縮物に対して十分な硬度を付与することが可能となる。
図5は第1圧縮開始時の下杵31及び上杵32の位置を示す。図6は第1圧縮終了後かつ第2圧縮開始時の下杵31及び上杵32の位置を示す。図5に示される杵間隔(L+L1+L2)の状態から、図6に示される杵間隔(L+L2)の状態になるまでの圧縮が第1圧縮である。また、図6に示される杵間隔(L+L2)の状態から、図4に示される最終杵間隔Lの状態になるまでの圧縮が第2圧縮である。
第1圧縮の第1圧縮距離L1は、第1圧縮において杵間隔の減少する距離となる。第2圧縮の第2圧縮距離L2は、第2圧縮において杵間隔の減少する距離となる。圧縮を解除することなく第1圧縮から続けて第2圧縮を行うので、この第2圧縮距離L2は、第1圧縮で圧縮された杵間隔(L+L2)から最終杵間隔(L)までの圧縮距離である。
また、第1圧縮における杵間隔の変化速度が第1圧縮速度V1であり、第2圧縮における杵間隔の変化速度が第2圧縮速度V2である。なお、第1圧縮の間、第2圧縮の間に杵間隔の変化速度が変動するような場合では、平均速度を第1圧縮速度V1、第2圧縮速度V2とする。
第1圧縮の後に第1圧縮速度V1よりも遅い第2圧縮速度V2で第2圧縮を行うことで、その第1圧縮速度V1と同じ圧縮速度及び同じ圧縮距離(L1+L2)で圧縮を行った場合よりも、粉乳圧縮成型物の硬度を高めて破壊耐性を確保することができる。しかも、第2圧縮を第1圧縮に続けて行い、また第2圧縮距離L2を短くすることができるので、第2圧縮速度V2のみで製造する場合と同程度の高い強度を持たせつつ、より生産効率を向上して製造することが可能である。
本実施形態では、粉乳圧縮成型物の硬度を効率的に高めるために、第1圧縮で圧縮された状態から粉乳圧縮成型物を圧縮した際に、圧縮距離に対する粉乳圧縮成型物の硬度の変化率が低下した状態にまで圧縮するという第2圧縮条件を満たすように、第2圧縮の態様即ち第2圧縮速度V2及び第2圧縮距離L2の組み合わせを決めている。
上記のように第1圧縮速度V1による第1圧縮及び第1圧縮速度V1より小さい第2圧縮速度V2による第2圧縮を組み合わせて圧縮成型工程を行うことで、圧縮時間の増加を抑えながら、効率的に粉乳圧縮成型物の硬度を大きく向上させることができる。
上記では第1圧縮及び第2圧縮を組み合わせて圧縮成型工程を行うように説明したが、圧縮成型工程のすべてを第1圧縮速度V1のみで行ってもよい。また、第2圧縮速度V2のみで行ってもよい。
本発明者らは、第1圧縮速度V1、第1圧縮距離L1、第2圧縮速度V2、第2圧縮距離L2の種々の組み合わせから得られた各粉乳圧縮成型物を調べた結果から、第1圧縮速度V1よりも第2圧縮速度V2を小さくしたときに、第2圧縮距離L2の変化に対する粉乳圧縮成型物の硬度の変化率(増加率)が低下する特異的な点(以下、硬度特異点と称する)が存在することを見出した。また、発明者らは、その硬度特異点に対応する第2圧縮距離L2は、第1圧縮速度V1によって変化し、第2圧縮速度V2の影響も受けることも見出した。
硬度特異点が存在するのは、粉乳圧縮成型物の内部の粉乳の粒子の再配列が支配的な圧縮状態から、粉乳圧縮成型物の内部で塑性変形が支配的な圧縮状態に変化するためであると推察される。また、第1圧縮速度V1が大きいほど、粉乳圧縮成型物の内部の塑性変形に必要なエネルギーが大きくなるため、第1圧縮速度V1に応じて硬度特異点に対応する第2圧縮距離L2が変化し、またその第2圧縮距離L2が第2圧縮速度V2の影響を受けるものと推察される。
上記の知見に基づき、上記第2圧縮条件を満たすように第2圧縮を行うことで、圧縮時間の増加を抑えながら、効率的に粉乳圧縮成型物の硬度を大きく向上させている。
また、第1圧縮速度V1の第2圧縮速度V2に対する比率である圧縮速度比(=V1/V2)を5以上とすることも好ましい。圧縮速度比を5以上とすることにより、粉乳圧縮成型物の硬度を大きく増大させることができる。圧縮速度比は5以上であれば良いが、例えば、10以上、20以上、25以上、50以上、100以上、250以上、500以上である。
好ましくは、第1圧縮速度V1は1.0mm/S以上100.0mm/S以下の範囲に設定され、第1圧縮距離L1は5.0mm以上10.0mm以下の範囲に設定され、第2圧縮速度V2は0.25mm/S以上50.0mm/S以下の範囲に設定され、第2圧縮距離L2は0.2mm以上1.6mm以下の範囲に設定される。
上記打錠機の構成は、一例であり、第1圧縮と第2圧縮とで圧縮速度を変化させて圧縮できるものであれば、その構成は限定されない。また、この例では、第2圧縮において、最終厚みまで圧縮を行っているが、第2圧縮に続けて、第2圧縮速度から速度を変化させた圧縮をさらに行ってもよい。この場合、第2圧縮よりも後の圧縮で最終の厚みまで粉乳圧縮成型物を圧縮する。
上記以外の打錠機の構成は、例えば特許文献3に記載の打錠機と同様である。例えば、圧縮成型が行われたスライドプレートの臼30Aは取り出しゾーンに移動する。打錠機の取り出しゾーンにおいて、スライドプレート30の臼30Aから下杵31及び上杵32が取り外され、押出部によって粉乳圧縮成型物が押し出される。押し出された粉乳圧縮成型物は、回収トレーで回収される。上記の打錠機で、スライドプレート30の臼30Aへの粉乳供給部は、例えば底部開口から臼30Aに粉乳を供給する漏斗を含む装置により実現されている。
粉乳を圧縮成型する工程において、環境の温度は特に限定されず、例えば室温でも良い。具体的には、環境の温度は、例えば5℃~35℃である。環境の湿度は、例えば0%RH~60%RHの相対湿度である。圧縮圧力は、例えば1MPa~30MPa、好ましくは1MPa~20MPaである。特に粉乳を固形化させる際に、圧縮圧力を1MPa~30MPaの範囲内で調整して、粉乳圧縮成型物の硬度が4N以上20N未満の範囲内となるように制御することが好ましい。これにより、利便性(扱いやすさ)のある実用性の高い固形乳10Sを製造することができる。なお、粉乳圧縮成型物は、少なくとも後続の加湿工程や乾燥工程で型崩れしないような硬度(例えば4N以上)を有する。例えば、粉乳圧縮成型物の好ましい破断応力の範囲は、破断面積の範囲を考慮すると、0.014N/mm2以上0.067N/mm2未満である。
加湿処理は、圧縮成型する工程で得られた粉乳圧縮成型物を加湿処理する工程である。粉乳圧縮成型物を加湿すると、粉乳圧縮成型物の表面には、タック(べとつき)が生じる。その結果、粉乳圧縮成型物の表面近傍の粉体粒子の一部が液状やゲル状となり、相互に架橋することとなる。そして、この状態で乾燥すると、粉乳圧縮成型物の表面近傍の強度を内部の強度よりも高めることができる。高湿度の環境下に置く時間(加湿時間)を調整することで、架橋の程度(拡がり具合)を調整し、これにより、加湿工程前の粉乳圧縮成型物(未硬化の固形乳10S)の硬度(例えば4N以上20N未満)を、固形乳10Sとして必要な目的の硬度(例えば40N)にまで高めることができる。但し、加湿時間の調整によって高めることができる硬度の範囲(幅)は限られている。即ち、圧縮成型後の粉乳圧縮成型物を加湿するため、ベルトコンベアー等で運搬する際に、粉乳圧縮成型物の硬度が十分でないと、固形乳10Sの形状を保てなくなる。また、圧縮成型時に粉乳圧縮成型物の硬度が高すぎると、空隙率が小さく、溶解性に乏しい固形乳10Sしか得られなくなる。このため、加湿工程前の粉乳圧縮成型物(未硬化の固形乳10S)の硬度が十分に高くなり、かつ固形乳10Sの溶解性を十分に保てるように、圧縮成型されることが好ましい。
加湿処理において、粉乳圧縮成型物の加湿方法は特に限定されず、例えば粉乳圧縮成型物を高湿度の環境下に置く方法、粉乳圧縮成型物に対して水等を直接噴霧する方法、及び、粉乳圧縮成型物に対して蒸気を吹き付ける方法等がある。粉乳圧縮成型物を加湿するためには、加湿手段を用いるが、そのような加湿手段としては、例えば、高湿度室、スプレー及びスチーム等がある。
粉乳圧縮成型物を高湿度の環境下に置く場合、100%RH以下の相対湿度及び100℃を超える温度の環境下に置く。粉乳圧縮成型物を高湿度の環境下に置く場合の温度は、好ましくは330℃以下であり、好ましくは110℃以上280℃以下、より好ましくは120℃以上240℃以下、さらに好ましくは130℃以上210℃以下である。粉乳圧縮成型物を高湿度の環境下に置く場合の相対湿度は、好ましくは0.1%RH以上20%RH以下、より好ましくは1%RH以上15%RH以下、さらに好ましくは1.5%RH以上12%RH以下、最も好ましくは2%RH以上10%RH以下である。粉乳圧縮成型物を高湿度の環境下に置く場合の処理時間は任意であるが、例えば0.1秒以上30秒以下であり、好ましくは4.4秒以上20秒以下、より好ましくは4.4秒以上12秒以下、さらに好ましくは5秒以上10秒以下である。処理時間は、後述の乾燥処理後に得られる固形乳の硬度が所定の範囲となるように、適宜設定することができる。加湿条件には、温度・湿度・時間があり、温度が高く、湿度が高く、時間が長くなるほど、加湿効果が高まり、温度が低く、湿度が低く、時間が短いほど、加湿効果が弱まる。
加湿条件の好適な例としては、以下の組み合わせがあげられる。温度は100℃超330℃以下であり、相対湿度は0.1%RH以上20%RH以下であり、処理時間は0.1秒以上30秒以下である。好ましくは、温度は110℃超280℃以下であり、相対湿度は1%RH以上18%RH以下であり、処理時間は1秒以上20秒以下である。より好ましくは、温度は120℃超240℃以下であり、相対湿度は1.5%RH以上17%RH以下であり、処理時間は2秒以上18秒以下である。より好ましくは、温度は120℃超240℃以下であり、相対湿度は1.5%RH以上16%RH以下であり、処理時間は3秒以上16秒以下である。さらに好ましくは、温度は125℃超230℃以下であり、相対湿度は2%RH以上16%RH以下であり、処理時間は4秒以上14秒以下である。さらにより好ましくは、温度は130℃超210℃以下であり、相対湿度は2%RH以上10%RH以下であり、処理時間は5秒以上10秒以下である。この組み合わせの条件により、例えば効率的な加湿が短時間で可能となる。
なお、相対湿度は、市販の湿度計で測定することができる。例えば、180℃まではヴァイサラ社の湿度計HMT330、350℃まではヴァイサラ社の露点計DMT345で測定できる。また、絶対湿度(容積絶対湿度(単位はg/m3)、又は、重量絶対湿度(単位はkg/kg(DA)、但しDAは乾燥空気)を測定し、その温度での飽和水蒸気圧に対する水蒸気分圧の比率(%)を算出することで、相対湿度を換算しても良い。
加湿処理において粉乳圧縮成型物に加えられる水分量(以下、「加湿量」ともいう)は、適宜調整可能である。加湿量は、圧縮成型工程後の粉乳圧縮成型物の質量の0.5重量%~3重量%が好ましい。加湿量を0.5重量%よりも少なくすると、固形乳10Sに十分な硬度(錠剤硬度)を与えることができず、好ましくない。また、加湿量が3重量%を超えると、粉乳圧縮成型物が過剰に液状やゲル状となって溶解し、圧縮成型した形状から変形したり、運搬中にベルトコンベアー等の装置へ付着したりすることとなるので、好ましくない。
乾燥処理は、加湿処理で加湿された粉乳圧縮成型物を乾燥させるための工程である。これにより、粉乳圧縮成型物の表面タック(べとつき)がなくなり、固形乳10Sを扱いやすくなる。つまり、加湿処理と乾燥処理は、圧縮成型後の粉乳圧縮成型物の硬度を高めて、固形乳10Sとして望まれる特性や品質を付与する工程に相当する。
乾燥処理において、粉乳圧縮成型物の乾燥方法は特に限定されず、加湿処理を経た粉乳圧縮成型物を乾燥させることができる公知の方法を採用できる。例えば、低湿度・高温度環境下に置く方法、乾燥空気・高温乾燥空気を接触させる方法等がある。
粉乳圧縮成型物を低湿度・高温度の環境下に置く場合、0%RH以上30%RH以下の相対湿度及び80℃以上330℃以下の温度の環境下に置く。低湿度・高温度の環境下に置く場合の温度は、例えば330℃である。粉乳圧縮成型物を低湿度・高温度の環境下に置く場合の処理時間は任意であるが、例えば0.1秒以上100秒以下である。
尚、上記の加湿処理と乾燥処理とは、上記のように温度や湿度が互いに異なる条件で別の工程として行うことが可能であり、その場合には連続的に行うことが可能である。また、加湿処理と乾燥処理とを同じ温度及び湿度で行うことも可能であり、この場合には加湿処理と乾燥処理とを同時に行うことができる。例えば、加湿と乾燥が同時に起こるような第1の温度湿度環境下に粉乳圧縮成型物を置き、続いて乾燥のみが起きるような第2の温度湿度環境下に粉乳圧縮成型物を置く。第1の温度湿度から第2の温度湿度に移行する間は、粉乳圧縮成型物の加湿と乾燥が同時に起こる状態から、粉乳圧縮成型物の乾燥のみが起こる状態へと移行する期間である。
ところで、固形乳10Sに含まれる水分が多いと、保存性が悪くなり、風味の劣化や外観の変色が進行しやすくなる。したがって、乾燥工程において、乾燥温度や乾燥時間等の条件を制御することによって、固形乳10Sの水分含有率を、原料として用いる粉乳の水分含有率の前後1%以内に制御(調整)することが好ましい。
このようにして製造された固形乳10Sは、一般的に、温水に溶かして飲用に供される。具体的には、蓋のできる容器等へ温水を注いだ後に、固形乳10Sを必要な個数で投入するか、固形乳10Sを投入した後に温水を注ぐ。そして、好ましくは容器を軽く振ることにより、固形乳10Sを速く溶解させ、適温の状態で飲用する。また、好ましくは1個~数個の固形乳10S(より好ましくは1個の固形乳10S)を温水に溶かして、1回の飲用に必要な分量の液状乳となるように、固形乳10Sの体積として、例えば1cm3~50cm3となるように調製してもよい。なお、圧縮成型工程で用いる粉乳の分量を変更することで、固形乳10Sの体積を調整できる。
上記のように、例えば100℃超330℃以下の温度での加湿処理を含む硬化処理を行うことにより、固形乳の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、固形乳の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さが、1.1mm以下である構成である固形乳を製造できる。
(固形乳10Sの作用・効果)
本実施形態の固形乳10Sは、粉乳を圧縮成型して硬化した固形状の固形乳であり、固形乳の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、固形乳の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さが、1.1mm以下である。即ち、結晶硬化層の厚さが1.1mm以下である。
粉乳を圧縮成型して得られた粉乳圧縮成型物を例えば100℃以下の温度で加湿する加湿処理を含む硬化処理を行って製造された固形乳10Srの結晶硬化層の厚さは、後述のように1.27mmであり、本実施形態の固形乳10Sの結晶硬化層の厚さはそれよりも小さい。即ち、本実施形態の固形乳10Sでは、加湿処理(硬化処理)の影響が固形乳の内側へ及ぶ範囲が小さい。
このような固形乳10Sは、結晶硬化層の厚さが小さいことにより好適な溶解性を実現でき、また、固形乳の内部への影響が小さい硬化処理であっても十分に扱いやすい強度を確保できる。
上記の固形乳10Sは、総結晶化率の増加がゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さが、0.87mm以下である場合、さらに結晶硬化層が薄い構成となり、さらに好適な溶解性を実現できる。
硬化の加湿処理の条件を100℃超としたことによって、溶解性が向上するのは、加湿処理の条件を100℃超とした硬化処理を行ったときに、加湿により粉体粒子の一部が液状やゲル状となることによって生成する架橋構造が、100℃以下で加湿処理を行う従来法によって生成する架橋構造に比べて、いっそう溶解性の高い構造になったことによると考えられる。さらに詳細には、粉乳圧縮成型物の表面近傍の粉体粒子の一部が100℃超の加湿によって軟化して糖質が非結晶のラバー状態となり、隣り合う粒子の接触点を基点に相互に架橋し、その後、乾燥されることによりガラス化(非結晶状態で固化)すること等により、いっそう溶解性が高まる構造になったことによると考えられる。
<第2実施形態>
固形乳は、固形食品の一例である。上記の第1実施形態は、粉乳を圧縮成型した粉乳圧縮成型物と、それを硬化した固形乳であるが、本発明はこれらに限定されない。本実施形態は、食品粉体を圧縮成型した食品粉体圧縮成型物と、それを硬化した固形食品に適用したものである。
上記の食品粉体は、粉乳のほかには、例えば、ホエイプロテイン、大豆プロテイン及びコラーゲンペプチド等のタンパク質粉体、アミノ酸粉体、及びMCT油等の油脂含有粉体を用いることができる。食品粉体には、乳糖あるいはその他の糖質が適宜添加されていてもよい。食品粉体には、乳糖あるいはその他の糖質の他に、脂肪、たん白質、ミネラル及びビタミン等の栄養成分や食品添加物が添加されていてもよい。
食品粉体を用いて所望の形状に圧縮成型して食品粉体圧縮成型物を形成できる。得られた食品粉体圧縮成型物を硬化することで、固形食品を形成できる。上記の食品粉体を原料として用いることを除いて、第1実施形態と同様の加湿処理を含む硬化処理を行うことで製造可能である。即ち、加湿処理工程では、食品粉体圧縮成型物を例えば100℃超330℃以下の温度で加湿処理を行う。
食品粉体を圧縮成型した食品粉体圧縮成型物と、それを硬化した固形食品とは、第1実施形態に記載した硬度計を用いて硬度を測定可能である。食品粉体圧縮成型物の好ましい硬度は4N以上20N未満であり、固形食品の好ましい硬度は20N以上100N以下である。また、食品粉体圧縮成型物の好ましい破断応力は0.014N/mm2以上0.067N/mm2未満であり、固形食品の好ましい破断応力は0.067N/mm2以上0.739N/mm2以下である。
本実施形態の固形食品は、固形食品の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、固形食品の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる固形食品の表面からの深さが、1.1mm以下である。このような固形食品は、食品粉体を圧縮成型して得られた食品粉体圧縮成型物を例えば100℃超330℃以下の温度での加湿処理を含む硬化処理を行うことにより製造可能であり、扱いやすい強度を確保して、好適な溶解性を実現できる。
本実施形態の固形食品は、好ましくは、総結晶化率の増加がゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さが、0.87mm以下である。
さらに、上記の食品粉体のタンパク質粉体は、ミルクカゼイン、ミートパウダー、フィッシュパウダー、エッグパウダー、小麦タンパク質、小麦タンパク質分解物等であっても良い。これらのタンパク質粉体は単独で用いてもよいし、二種以上で用いてもよい。
さらに、上記の食品粉体のホエイプロテイン(ホエイタンパク質)とは、乳中で、カゼインを除くタンパク質の総称である。乳清タンパク質として分類されるものであってもよい。ホエイタンパク質は、ラクトグロブリン、ラクトアルブミン、ラクトフェリン等の複数の成分から構成されている。牛乳などの乳原料を酸性に調整した際に、沈殿するタンパク質がカゼイン、沈殿しないタンパク質がホエイタンパク質となる。ホエイプロテインを含む粉末原料として、例えば、WPC(ホエイタンパク濃縮物、タンパク質含有量が75~85質量%)、WPI(ホエイタンパク分離物、タンパク質含有量が85質量%以上)があげられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上で用いてもよい。
さらに、上記の食品粉体の大豆プロテイン(大豆タンパク質)は、大豆に含まれるタンパク質であればよく、大豆から抽出されたものでもよい。また、原料大豆から精製したものを用いることもできる。精製方法としては特に限定されず、従来公知の方法を使用できる。このような大豆プロテインとしては、飲食品用素材、医療用素材、サプリメント食品として市販されている粉体を使用することができる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上で用いてもよい。
さらに、上記の食品粉体のアミノ酸粉体に含まれるアミノ酸としては、特に限定されないが、例えばアルギニン、リジン、オルニチン、フェニルアラニン、チロシン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、ヒスチジン、プロリン、システイン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン、シトルリン、クレアチン、メチルリジン、アセチルリジン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、グリシン、アラニン、スレオニン、シスチンなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上で用いてもよい。
また、上記の食品粉体のアミノ酸粉体に含まれるアミノ酸は、天然物および合成体のいずれでもよく、単体のアミノ酸もしくは複数のアミノ酸の混合物を用いることができる。また、アミノ酸として、遊離アミノ酸のみならず、ナトリウム塩、塩酸塩および酢酸塩等の塩ならびにカルニチンおよびオルニチン等の誘導体を用いることができる。
本明細書において「アミノ酸」には、α-アミノ酸、β-アミノ酸およびγ-アミノ酸が含まれる。また、アミノ酸は、L-体およびD-体のいずれであってもよい。
さらに、上記の食品粉体の油脂含有粉体に含まれる油脂は、上述のMCT油の他、動物性油脂、植物性油脂、それらの分別油、水素添加油及びエステル交換油である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。動物性油脂は、例えば、乳脂肪、ラード、牛脂及び魚油等である。植物性油脂は、例えば、大豆油、ナタネ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、綿実油、アマニ油及びMCT油等である。
さらに、上記の食品粉体の糖質は、上述の乳糖の他、例えば、オリゴ糖、単糖類、多糖類及び人工甘味料等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。オリゴ糖は、例えば、乳糖、ショ糖、麦芽糖、ガラクトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ラクチュロース等である。単糖類は、例えば、ブドウ糖、果糖及びガラクトース等である。多糖類は、例えば、デンプン、可溶性多糖類及びデキストリン等である。
さらに、上記の食品粉体の食品添加物の一例としては甘味料が例示できる。この甘味料としては、食品および医薬品に通常使用される任意の甘味料を用いることができ、天然の甘味料および合成甘味料のいずれであってもよい。甘味料は、特に限定されないが、例えばブドウ糖、果糖、麦芽糖、ショ糖、オリゴ糖、砂糖、グラニュー糖、メープルシロップ、蜂蜜、糖蜜、トレハロース、パラチノース、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、グリセリン、アスパルテーム、アドバンテーム、ネオテーム、スクラロース、アセスルファムカリウムおよびサッカリンなどを含む。
さらに、上記の食品粉体の食品添加物の一例としては酸味料が例示できる。酸味料は、特に限定されないが、例えば、酢酸、クエン酸、無水クエン酸、アジピン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、グルコン酸、酒石酸およびこれらの塩などを含む。酸味料は、アミノ酸の種類によって生じる苦みを抑制(マスキング)することができる。
さらに、上記の食品粉体の栄養成分としては、脂肪、タンパク質、ミネラル及びビタミン等いかなる成分を含んでも良い。
脂肪としては、例えば、動物性油脂、植物性油脂、それらの分別油、水素添加油及びエステル交換油等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。動物性油脂は、例えば、乳脂肪、ラード、牛脂及び魚油等である。植物性油脂は、例えば、大豆油、ナタネ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、綿実油、アマニ油及びMCT油等である。
タンパク質としては、例えば、乳タンパク質及び乳タンパク質分画物、動物性タンパク質、植物性タンパク質、それらのタンパク質を酵素等により種々の鎖長に分解したペプチド及びアミノ酸等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。乳タンパク質は、例えば、カゼイン、乳清タンパク質(α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン等)、乳清タンパク質濃縮物(WPC)及び乳清タンパク質分離物(WPI)等である。動物性タンパク質は、例えば、卵タンパク質(エッグパウダー)、ミートパウダー、フィッシュパウダー等である。植物性タンパク質は、例えば、大豆タンパク質及び小麦タンパク質等である。ペプチドは、例えば、コラーゲンペプチド等である。アミノ酸は、例えば、タウリン、シスチン、システイン、アルギニン及びグルタミン等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
ミネラルとしては、鉄、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、亜鉛、鉄、銅およびセレン等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ナイアシン、葉酸、パントテン酸およびビオチン等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
また、その他の食品素材としては、例えば、ココアパウダー、カカオパウダー、チョコレートパウダー、乳酸菌・ビフィズス菌等の有用微生物を含む微生物粉体、乳に微生物を加えて発酵させた培養物を粉体とした乳発酵成分粉体、チーズを粉体としたチーズ粉体、機能性食品を粉体とした機能性食品粉体、総合栄養食を粉体とした総合栄養食粉体等である。これらのうちの一種又は二種以上が添加されていてよい。
本発明に係る固形食品は、日常摂取する食品、健康食品、健康補助食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、サプリメント、機能性表示食品などの形態であることができる。
水に溶解する特性を有する固形食品は、固形溶解食品とも称せられる。
食品粉体が水溶性原料や吸湿性のある原料を含む場合、食品粉体を圧縮成型してなる食品粉体圧縮成型物を加湿した際に、食品粉体圧縮成型物の表面にタック(べとつき)が生じ得る。このような食品粉体としては、例えば糖、デキストリン、天然糖質(トレハロース等)、多糖類等を含む食品粉体があげられる。その他、食品粉体圧縮成型物を加湿した際に、食品粉体圧縮成型物の表面にタック(べとつき)が生じ得る食品粉体であれば好ましく適用できる。
(固形食品の作用・効果)
本実施形態の固形食品は、食品粉体を圧縮成型して硬化した固形状の固形食品であり、固形食品の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、固形食品の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる固形食品の表面からの深さが、1.1mm以下である。即ち、結晶硬化層の厚さが1.1mm以下である。
本実施形態の固形食品の結晶硬化層は、100℃以下の温度で加湿する加湿処理を含む硬化処理を行った場合の結晶硬化層よりも小さい。即ち、本実施形態の固形食品では、加湿処理(硬化処理)の影響が固形食品の内側へ及ぶ範囲が小さい。
このような固形食品は、結晶硬化層の厚さが小さいことにより好適な溶解性を実現でき、また、固形食品の内部への影響が小さい硬化処理であっても十分に扱いやすい強度を確保できる。
上記の固形食品は、総結晶化率の増加がゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さが、0.87mm以下である場合、さらに結晶硬化層が薄い構成となり、さらに好適な溶解性を実現できる。
<第1実施例>
(実施例1、実施例2及び実施例3の作成)
X軸方向の辺aが31mm、Y軸方向の辺bが24mm、Z軸方向の辺cが12.5mmである直方体状の固形乳試料を実施例として作成した。このような大きさとなる打錠機の臼杵の大きさを調整し、粉乳5.4gを圧縮成型して粉乳圧縮成型物を形成した。圧縮成型においては、第1圧縮距離L1を12.6mm、第1圧縮速度V1を120mm/sとした第1圧縮を行った後、第2圧縮距離L2を0.6mm、第2圧縮速度V2を1.2mm/sとした第2圧縮を行った。上記で得られた粉乳圧縮成型物に、加湿温度(加湿時間)が101℃(9.2秒)での加湿処理を施し、さらに乾燥温度80℃の乾燥処理を施し、硬化処理が施された実施例1に係る固形乳試料とした。乾燥時間については加湿時の重量増加分が乾燥しきれるように時間を調整した。同様に、加湿温度(加湿時間)を200℃(7.6秒)として実施例2に係る固形乳試料とした。また、加湿温度(加湿時間)を300℃(5.6秒)として実施例3に係る固形乳試料とした。
(比較例の作成)
実施例に対して、硬化処理の加湿処理を、75℃(45秒)としたことのみ異なる固形乳試料を形成し、比較例とした。
(各試料の硬度)
上記のロードセル式錠剤硬度計を用いて、実施例1~3及び比較例に係る固形乳の各試料の硬度評価を行った。各試料の硬度はいずれも約50N(破断応力は0.167N/mm2程度)であり、十分確保され、いずれも扱いやすい硬度を有していた。
(各試料の総結晶化率の測定)
上記の実施例1~3及び比較例に係る固形乳の各試料に対して、XRD(X線回折)法により、表面からの深さX方向の総結晶化率の増加Yのプロファイルを求めた。総結晶化率は、粉乳由来の結晶と非結晶に対する結晶の比率(重量%)であり、固形乳の内部の結晶化率を差し引いて得られる内部に対する増加分として算出した値である。ここでは、単位重量当たりのα乳糖結晶及びβ乳糖結晶の重量(重量%)として求めた。
各試料の総結晶化率の増加の測定は、粉末X線回折装置(XRD、SmartLab、リガク社)を用いて、固形乳の表面から0.1mmの厚さの分ずつ切削して露出させた面において、回折強度により測定した。測定方法は汎用(集中法)、スリット条件はスキャン軸(2θ/θ)、モード(ステップ)、範囲指定(絶対)、開始(9.0000deg)、終了(13.5000deg)、ステップ(0.0200deg)、スピード計数時間(2.4)、IS(1.000deg)、RSI(1.000deg)、RS2(0.300mm)、アッテネータ(open)、管電圧(40kv)、管電流(30mA)とした。
解析方法は、解析ソフトウェア「SmartLab StudioII」を用いて、加重平均(平滑化7点)BG除去(sonneveld-Visser法)処理した後、積分強度計算(α乳糖結晶の固有ピーク:12.5、β乳糖結晶の固有ピーク:10.5)を行った。総結晶化率の増加は、固形乳の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の固形乳の内部の結晶の比率に対する差分である。ここでは、結晶として単位重量当たりのα乳糖結晶及びβ乳糖結晶の重量(重量%)として求めた。
図7は、実施例に係る固形乳の表面からの深さX(mm)に対する総結晶化率の増加Y(中心に対する増加分)を示すグラフである。比較例の総結晶化率の増加は記号「●」で示され、それを最小二乗法により近似したグラフが直線a1(Y=-5.24X+6.65)で示される。実施例1の総結晶化率の増加は記号「+」で示され、それを最小二乗法により近似したグラフが曲線b1(Y=6.34X2-11.15X+5.05)で示される。実施例2の総結晶化率の増加は記号「■」で示され、それを最小二乗法により近似したグラフが曲線c1(Y=4.89X2-8.39X+3.51)で示される。実施例3の総結晶化率の増加は記号「黒塗り△」で示され、それを最小二乗法により近似したグラフが曲線d1(Y=6.40X2-7.59X+2.28)で示される。
図7から、各固形乳試料の総結晶化率の増加がゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さ、即ち、結晶硬化層の厚さを読み取り、図8にまとめた。各固形乳試料の総結晶化率の増加がゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さは、比較例が1.27mm、実施例1が0.87mm、実施例2が0.72mm、実施例3が0.59mmであった。総結晶化率の増加がゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さが1.1mm以下の場合、総結晶化率の増加が少ないことにより好適な溶解性を実現でき、また、固形乳の内部への影響が小さい硬化処理であっても十分に扱いやすい強度を確保できる。特に、総結晶化率の増加がゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さが0.87mm以下の場合、さらに総結晶化率の増加が少ない構成となり、さらに好適な溶解性を実現できる。
(各試料の溶解性試験)
硬化条件による溶解性の評価を行うために、上記のように作成した実施例1~3及び比較例の固形乳試料について溶解性試験を行った。まず、攪拌バスケットに固形乳試料を1つ入れた。攪拌バスケットは、内径30mm、高さ36mmである有底筒状のふた付き容器であり、側部、底部、ふた部を有する。側部、底部、ふた部は、18メッシュ(目開き1.01mm)のステンレス製の網で形成されている。攪拌バスケットの側部の内面に4つの羽根が均等に設けられている。4つの羽は、それぞれ、厚さ1.5mm、幅4mm、長さが34mmの板であり、長手方向を攪拌バスケットの中心軸に平行となるように配置し、側部の内面から中心に向かって突出するように設けられている。300mlビーカー内に収容した200mlの温水(50±1℃)に攪拌バスケットを浸漬し固形乳試料を完全に水没させた状態で、当該攪拌バスケットを回転速度0.5m/s(周速度)で回転させた。攪拌バスケットは、ビーカー底部内面から5mmの高さに保持した。固形乳試料が溶け始めてから溶け切るまでの溶出過程を導電率によって一定時間毎に測定した。
各実施例及び比較例について3個ずつ上記試験を行い、3個の平均値から、それぞれ20%溶出時間(t20)、63%溶出時間(t63)、95%溶出時間(t95)を得た。比較例の20%溶出時間、63%溶出時間、95%溶出時間をそれぞれ参照値(t20ref、t63ref、及びt95ref)とし、下記式(A)に基づき溶解性指数(Id)を算出した。比較例の20%溶出時間(t20ref)は14(秒)、63%溶出時間(t63ref)は32(秒)、95%溶出時間(t95ref)は93(秒)であった。
Id=(t20/t20ref+t63/t63ref+t95/t95ref)/3・・・(A)
一般的な錠剤(薬)の溶出試験は、85%濃度に到達するまでの時間や、60%、85%濃度に到達する時間を指標として比較することで行われるが、固形乳は、品種や製造条件の違いにより、初期に溶解が停滞する場合や、溶解終了までに時間がかかる場合がある。従って、固形乳では、一般的な錠剤のように1点、もしくは2点の指標で溶解性を評価することは妥当ではない。特に初期の溶解時間の延長は、使用者の官能評価において「溶けにくい」と感じるファクターとなり、固形乳の品質を評価するうえで重要である。
上記の溶解性指数(Id)を表す式では、溶解初期の溶解性の評価として20%の溶出時間を用い、溶解中期の溶解性の評価として63%の溶出時間を用い、また、溶解後期の溶解性の評価として95%の溶出時間を用いた。溶解中期の溶解性を示す63%の溶出時間は、一般的な過渡応答における時定数τに相当し、様々なセンサーの応答特性の評価指標において応答の特徴を示す値として広く知られている。溶解終期の溶解性を示す95%の溶出時間は、理論的には時定数τに対して3τにおける応答特性を示す評価指数に相当する。上記の溶解性指数(Id)表す式では、溶解初期、溶解中期、及び溶解終期の溶解時間の算術平均をとることで、包括的な溶解特性を示す指標として溶解性指数(Id)を定義したものである。
得られた溶解性指数(Id)は、実施例1~3のいずれも1より小さく、加湿処理の温度条件を100℃超として処理時間を短くしたことに起因して、実施例1~3で溶解性が向上したものと考えられる。
(遊離脂肪測定試験)
硬化条件による遊離脂肪の含有率の評価を行うために、上記のように作成した実施例及び比較例の固形乳試料について、遊離脂肪の含有率を測定した。まず、固形乳をすり潰さないように留意しながらカッターで細かくし粉砕した。その後、32メッシュ篩に粉砕された固形乳を通過させた。篩工程を経たものを試料とし、‘Determination of Free Fat on the Surface of Milk Powder Particles‘,Analytical Method for Dry Milk Products,A/S NIRO ATOMIZER(1978)に記載された方法にしたがって遊離脂肪の含有率を測定した。ただし、固形乳の溶解方法(Niro Atomizer, 1978)では、抽出用の溶媒を四塩化炭素からn-ヘキサンに変更し、この溶媒の変更に伴い、抽出操作を変更した。なお、これらを変更しても、遊離脂肪の測定結果が変化しないことは、「粉乳の遊離脂肪測定法の検討」、柴田満穂、浜初美、今井眞美、豊田活、Nihon Shokuhin Kagaku Kougaku Kaishi Vol. 53, No. 10, 551~554 (2006)で確認済みである。実施例1~3のいずれの試料も、遊離脂肪の含有率が比較例より低いことが確認された。これは硬化処理の条件の差異、具体的には加湿処理の温度条件を100℃超として処理時間を短くしたことに起因して、実施例1~3で遊離脂肪の含有率が低下したものと考えられる。
本実施例の固形乳では、同一の硬度領域において遊離脂肪の含有率が比較例より低く抑えられる。これは硬化処理の条件の差異、具体的には加湿条件(温度・湿度・時間)の調整によって結晶の発生が、比較例に比べて少なくなっているからである。さらに詳細には、本実施例の固形乳では、糖質が加湿により非結晶のラバー状態となり、隣り合う粒子の接触点を基点に相互に架橋し、その後、乾燥されることによりガラス化(非結晶状態で固化)すること等により、結晶の発生が少なくなっている。
非結晶状態から結晶となる場合、それまで比較的自由に動けていた非結晶状態から結晶となるため、結晶表面近傍に存在する油脂は結晶化(固体が突然出現)することで過度のせん断を受け、その際に遊離脂肪が発生する。
本実施例の固形乳では、結晶が発生し難いため、脂肪にせん断力がかかり難く、その結果、遊離脂肪の含有率が低く抑えられる。
<第2実施例>
第1実施例と同様にして、実施例に係る固形乳を作成した。加湿処理の温度は125℃~230℃、相対湿度は2%(2%RH)~16%(16%RH)、処理時間は3秒~20秒とした。乾燥処理の温度は100℃超~330℃、処理時間は5秒~50秒とした。得られた固形乳の表面からの深さX(mm)における全重量に対する結晶の比率の、固形乳の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加Y(重量%)を測定すると、総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さが、1.1mm以下であった。さらに一部の固形乳は、総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる固形乳の表面からの深さが、0.87mm以下であった。
作成された実施例の固形乳の硬度は49N~52N(50Nの場合の破断応力は0.167N/mm2)であり、いずれも扱いやすい硬度を有していた。得られた固形乳に対して第1実施例と同様に第1実施例に記載の比較例に対して溶解性試験を行ったところ、溶解性指数(Id)が1.00より小さく、比較例より低いことが確認された。また、得られた固形乳に対して第1実施例と同様に遊離脂肪測定試験を行ったところ、いずれの実施例も、遊離脂肪の含有率が比較例より低いことが確認された。
<第3実施例>
第1実施例と同様にして、実施例に係る固形乳を作成した。加湿処理の温度は100℃超125℃未満とし、それ以外の条件(加湿処理の相対湿度及び処理時間、乾燥処理の温度及び処理時間等)は第2実施例と同様に実施した。作成された実施例の固形乳はいずれも扱いやすい硬度を有していた。溶解性試験及び遊離脂肪測定試験を行ったところ、第3実施例の固形乳は第2実施例と同様に比較例より低かった。第2実施例の固形乳と第3実施例の固形乳とを比較すると、溶解性及び遊離脂肪の観点で第2実施例の固形乳が第3実施例の固形乳より優れていた。
<実施形態の一例>
尚、本開示は以下のような構成であってもよい。以下の構成を有するならば、好適な溶解性と扱いやすい強度とを有することができる。
(1)食品粉体を圧縮成型した固形状の固形食品であって、前記固形食品の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、前記固形食品の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる前記固形食品の表面からの深さが、1.1mm以下である固形食品。
(2)前記総結晶化率の増加がゼロまたは極小となる前記固形食品の表面からの深さが、0.87mm以下である、前記(1)に記載の固形食品。
(3)粉乳を圧縮成型した固形状の固形乳であって、前記固形乳の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、前記固形乳の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる前記固形乳の表面からの深さが、1.1mm以下である固形乳。
(4)前記総結晶化率の増加がゼロまたは極小となる前記固形乳の表面からの深さが、0.87mm以下である、前記(3)に記載の固形乳。
(5)食品粉体を圧縮成型した固形状の固形食品であって、前記固形食品の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、前記固形食品の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる前記固形食品の表面からの深さが、1.1mm以下である構成となるように、食品粉体を圧縮成型し、得られた食品粉体圧縮成形物に硬化処理を行うことによって形成された固形食品。
(6)粉乳を圧縮成型した固形状の固形乳であって、前記固形乳の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、前記固形乳の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる前記固形乳の表面からの深さが、1.1mm以下である構成となるように、粉乳を圧縮成型し、得られた粉乳圧縮成形物に硬化処理を行うことによって形成された固形乳。
(7)食品粉体を圧縮成型した固形状の固形食品であって、前記固形食品の破断応力は0.067N/mm2以上0.739N/mm2以下であり、前記固形食品の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、前記固形食品の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる前記固形食品の表面からの深さが、1.1mm以下である固形食品。
(8)粉乳を圧縮成型した固形状の固形乳であって、前記固形乳の破断応力は0.067N/mm2以上0.739N/mm2以下であり、前記固形乳の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、前記固形乳の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる前記固形乳の表面からの深さが、1.1mm以下である固形乳。
(9)食品粉体を圧縮成型した固形状の固形溶解食品であって、前記固形溶解食品の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、前記固形溶解食品の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる前記固形溶解食品の表面からの深さが、1.1mm以下である固形溶解食品。
(10)食品粉体を圧縮成型した固形状の固形食品であって、前記固形食品の表面からの各深さにおける全重量に対する結晶の比率の、前記固形食品の内部の結晶の比率に対する差分である総結晶化率の増加が、ゼロまたは極小となる前記固形食品の表面からの深さが、1.1mm以下である、硬化処理によってタックが生じ得る固形食品。