JP7730502B2 - エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物

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Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物に関する。
エポキシ樹脂は、硬化剤との架橋反応により高架橋度のネットワークポリマーを形成し、硬化物(エポキシ樹脂硬化物)となる。エポキシ樹脂硬化物は耐熱性、機械的強度、接着性や電気絶縁性などに優れており、電気・電子材料、接着剤、塗料、建築・土木材料など様々な分野で活用されている。
一方で、エポキシ樹脂硬化物が有する普遍的な課題として長期信頼性の低さが挙げられる。また、エポキシ樹脂硬化物のネットワーク構造は共有結合により形成されているため、不溶・不融であり、加熱や溶剤処理による再成形が困難であり、リサイクル、リユース性に乏しく、廃棄物の削減や環境への負荷の面で課題があるといえる。また、エポキシ樹脂硬化物内に生じる微小なクラックを修復できれば、熱硬化性樹脂硬化物の欠点である脆さを改善できると期待されるが、ネットワーク構造の不融性のため、加熱による修復が困難である。
このような問題に対し、フランとマレイミドがディールスアルダー(Diels-Alder)反応により結合した部位を有するジアミンを硬化剤として作製したエポキシ樹脂硬化物が知られている(非特許文献1)。当該エポキシ樹脂硬化物は、加熱した際に架橋構造がレトロディールスアルダー(retro-Diels-Alder)反応により解架橋し、温度を下げることでディールスアルダー反応により再架橋する。この可逆的な解架橋-再架橋によりネットワーク構造に熱可逆性が付与され、加熱による再成形や修復が可能となる。
特開2006-306837号公報
X.Kuang, G.Liu, X.Dong, X.Liu, J.Xu, D.Wang, J.Polym.Sci., Part A: Polym.Chem,. 53, 2094(2015).
しかしながら、フランとマレイミドのディールスアルダー反応物は、120℃付近でレトロディールスアルダー反応が生じるため、エポキシ樹脂硬化物が120℃以上で解架橋してしまう。従って、フランとマレイミドのディールスアルダー反応によって作製されたエポキシ樹脂硬化物は、120℃以上の用途には適さない。また、この他にもエポキシ樹脂硬化物の修復性・再成形性の付与には、動的共有結合や超分子結合等の可逆結合を利用した研究が盛んに行われているが、一般に熱分解性等の課題が残っている。
また、特許文献1には、フェノール性水酸基を有する共役ジエン構造およびフェノール性水酸基を有する親ジエン構造からディールスアルダー反応によって形成される付加反応部を分子内に1個有し、付加反応部が共役ジエン構造より構成される構造および親ジエン構造より構成される構造の両方に少なくとも1個のフェノール性水酸基を有する化合物が開示されており、具体的にはこのような化合物をエポキシ樹脂組成物の一部として使用することによって、耐熱性と熱時低弾性を有する硬化物を得ることができると記載されている。しかしながら、耐熱性及び修復性のいずれも良好となるエポキシ樹脂硬化物については、更なる開発の余地がある。
本発明は、上記問題に鑑み、耐熱性、修復性及び再成形性がいずれも良好なエポキシ樹脂硬化物を製造することが可能なエポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、上記課題は、所定の構造を有する硬化剤を所定の濃度で含むエポキシ樹脂組成物、または当該エポキシ樹脂組成物を用いたエポキシ樹脂硬化物を提供することによって解決できることを見出した。
本発明は一側面において、アントラセン構造及びマレイミド構造からなるディールスアルダー反応ユニットを分子内に1つ有し、前記ディールスアルダー反応ユニットが少なくとも2つのフェノール性水酸基を有する硬化剤と、エポキシ樹脂とを含み、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計質量に対する前記硬化剤の濃度が0.10mmol/g以上であるエポキシ樹脂組成物である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は一実施形態において、前記硬化剤が、下記式(1)で表される。
(式(1)中、R1~R11は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基であり、R1~R11の少なくとも1つはフェノール性水酸基を含む官能基であるか、フェノール性水酸基を置換基として有している基である。)
本発明のエポキシ樹脂組成物は別の一実施形態において、前記硬化剤が、下記式(2)で表される。
本発明のエポキシ樹脂組成物は別の一実施形態において、前記硬化剤が、下記式(3)で表される。
本発明のエポキシ樹脂組成物は更に別の一実施形態において、前記エポキシ樹脂が、下記式(4)で表され、且つ、エポキシ当量が500~10000g/eqである。
(式(4)中、Arはそれぞれ独立して、無置換または置換基を有する芳香環を有する構造であり、
Xは下記式(4-1)で表される構造単位であり、Yは下記式(4-2)で表される構造単位であり、
[式(4-1)、(4-2)中、Arはそれぞれ独立して、無置換または置換基を有する芳香環を有する構造であり、
1、R2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基またはエチル基であり、
R’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、
3、R4、R7、R8はそれぞれ独立して水酸基、グリシジルエーテル基または2-メチルグリシジルエーテル基であり、
5、R6、R9、R10はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、
1は4~16の整数であり、n2は繰り返し単位の平均値で2~30である。]
11、R12はそれぞれ独立して、グリシジルエーテル基または2-メチルグリシジルエーテル基であり、
13、R14はそれぞれ独立して水酸基、グリシジルエーテル基または2-メチルグリシジルエーテル基であり、
15、R16は水素原子又はメチル基であり、
1、m2、p1、p2、qは繰り返しの平均値であり、
1、m2は、それぞれ独立して0~25であり、且つ、m1+m2≧1であり、
1、p2はそれぞれ独立して0~5であり、
qは0.5~5である。
ただし、前記式(4-1)で表される構造単位Xと前記式(4-2)で表される構造単位Yとの結合は、ランダムであってもブロックであってもよく、1分子中に存在する各構造単位X、Yの数の総数がそれぞれm1、m2であることを示す。)
本発明のエポキシ樹脂組成物は更に別の一実施形態において、前記エポキシ樹脂が、下記式(5)で表される。
(式(5)中、p1、p2、q、 2 及び 2 は繰り返しの平均値であり、それぞれ独立して、p1は0~5、p2は0~5、qは0.5~5、 2 ~25、 2 は2~30である。)
本発明は別の一側面において、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物である。
本発明によれば、耐熱性、修復性及び再成形性がいずれも良好なエポキシ樹脂硬化物を提供することができる。
次に本発明を実施するための形態を詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
(エポキシ樹脂組成物)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、アントラセン構造及びマレイミド構造からなるディールスアルダー反応ユニットを分子内に1つ有し、ディールスアルダー反応ユニットが少なくとも2つのフェノール性水酸基を有する硬化剤(以下、当該硬化剤を「D-A硬化剤」とも呼ぶ)と、エポキシ樹脂とを含む。
<D-A硬化剤>
ディールスアルダー反応は、共役ジエンと親ジエンとが付加反応して6員環を形成する。ディールスアルダー反応は平衡反応であるため、所定の温度でレトロディールスアルダー反応が生じて解離(解架橋)する。このとき、レトロディールスアルダー反応が生じる温度(解離温度)が低い場合、高温の温度領域で解架橋してしまい、硬化物の架橋密度が低下してしまい、機械的強度が低下する。これに対し、D-A硬化剤は、熱安定性の高いアントラセン構造及びマレイミド構造からなるディールスアルダー反応ユニットを分子内に1つ有しているため、解離温度が250℃以上と高く、少なくとも200℃程度では解離せず架橋構造を維持しており、熱安定性に優れる。このため、D-A硬化剤をエポキシ樹脂の硬化剤として用いることで、当該硬化剤とエポキシ樹脂との反応で硬化させた硬化物(エポキシ樹脂硬化物)の架橋密度の低下を抑制することができ、良好な機械的強度を維持することができる。また、D-A硬化剤によって作製されたエポキシ樹脂硬化物に傷や外力などの機械エネルギーを与えることにより、ディールスアルダー反応ユニットのC-C結合が切断され、切断表面にアントラセンとマレイミドが生成すると考えられる。ディールスアルダー反応ユニットのC-C結合は、通常の共有結合に比べて結合エネルギーが低く切断されやすい。アントラセンとマレイミドのディールスアルダー反応は、200℃以下では結合方向に平衡が移動するため、再び付加体(ディールスアルダー反応ユニット)を形成し、傷の修復や再成形が可能になると考えられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物中のD-A硬化剤は、ディールスアルダー反応ユニットが少なくとも2つのフェノール性水酸基を有する。ディールスアルダー反応ユニットが少なくとも2つのフェノール性水酸基を有すると、少なくとも2個のエポキシ基と反応可能であるため、硬化物の架橋密度が向上し、靭性や接着性に優れた硬化物を作製することができる。その結果、エポキシ樹脂硬化物の弾性率やガラス転移温度が向上する。
本発明のエポキシ樹脂組成物中のD-A硬化剤は、下記式(1)で表されてもよい。
(式(1)中、R1~R11は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基であり、R1~R11の少なくとも1つはフェノール性水酸基を含む官能基であるか、フェノール性水酸基を置換基として有している基である。)
式(1)のR1~R11について、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基及びアリール基は、それらが有する炭素原子にさらに種々の置換基が結合したものも含む。例えば、式(1)のR1~R11について、アリール基は、その炭素原子にさらにアミノ基が結合したアミノアリール基を含んでいる。また、例えば、式(1)のR1~R11の少なくとも1つが「フェノール性水酸基を置換基として有している基」である場合、当該基の例としてヒドロキシアリール基(フェノール性水酸基を置換基として有しているアリール基)が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物中のD-A硬化剤は、下記式(2)で表されてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物中のD-A硬化剤は、下記式(3)で表されてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物中のD-A硬化剤が上記式(2)または(3)で表される硬化剤を有する場合、ディールスアルダー反応ユニットが3つのフェノール性水酸基を有する。このため、それぞれ3個のエポキシ基と反応可能であるため、硬化物の架橋密度がより向上し、靭性や接着性に優れた硬化物を作製することができる。その結果、エポキシ樹脂硬化物の弾性率やガラス転移温度がより向上する。
(本発明で用いるD-A硬化剤の製造方法)
本発明で用いるD-A硬化剤は、アントラセン構造及びマレイミド構造からディールスアルダー反応によって形成される付加反応部であるディールスアルダー反応ユニットを分子内に1つ有し、ディールスアルダー反応ユニットが少なくとも2つのフェノール性水酸基を有する化合物である。
アントラセン構造などの共役ジエンと、マレイミド構造などの親ジエンが付加反応して6員環を形成するいわゆるディールスアルダー反応は平衡反応であり、付加反応が進行する温度よりも、さらに高温では、付加反応部が解離して、元の共役ジエンと親ジエンに戻る逆反応である、レトロディールスアルダー反応が進行することは広く知られている。
本発明で用いるD-A硬化剤は、フェノール性水酸基を少なくとも1つ有するアントラセン構造と、フェノール性水酸基を少なくとも1つ有するマレイミド構造とを有し、これらのディールスアルダー反応後も、それぞれの構造由来のフェノール性水酸基を2つ以上ディールスアルダー反応ユニットに残存する硬化剤である。
それぞれの構造部にエポキシ樹脂と反応するフェノール性水酸基を有さない場合、得られる硬化物の架橋密度が低下し、耐熱性や機械特性、接着力が悪化するばかりでなく、レトロディールスアルダー反応によって解離した構造部が遊離することになり、解離後にディールスアルダー反応ユニットが再結合することが困難になる。一方、それぞれの構造部にエポキシ基と反応するフェノール性水酸基を有する場合は、硬化物中にそれぞれの構造部がある程度固定されることから、それぞれの構造部が近接して存在するため容易に再結合することができる。この化合物を、エポキシ樹脂組成物に用いることで、硬化物に修復性や再成形性を付与できる。
本発明で用いるD-A硬化剤の製造方法で用いるアントラセン構造を有する化合物としては、下記式(10)に列挙される化合物のいずれかを挙げることができる。これらの中でも、アントラセン構造1モルに対してフェノール性水酸基1~2モルを有する化合物が、エポキシ基との反応性において好ましく、アントラセン構造1モルに対してフェノール性水酸基1モルを有する化合物が反応性と硬化物物性、及び修復性や再成形性のバランスのうえで特に好ましい。
なお、上記式(10)に列挙される化合物の構造は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミド基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を置換基として有しているものを含む。また、上記式(10)に列挙される化合物の構造において、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基及びアリール基は、それらが有する炭素原子にさらに種々の置換基が結合したものも含む。例えば、前記アリール基は、その炭素原子にさらにフェノール性水酸基が結合したヒドロキシアリール基を含んでいる。
本発明で用いるD-A硬化剤の製造方法で用いるマレイミド構造を有する化合物としては、下記式(11)に列挙される化合物のいずれかを挙げることができる。これらの中でも、モノヒドロキシフェニルマレイミドが反応性と硬化物物性、及び修復性や再成形性のバランスのうえで特に好ましい。モノアミノフェニルマレイミドの中では、耐熱性の観点からパラヒドロキシフェニルマレイミドが特に好ましい。
これらの中でも、マレイミド構造1モルに対してフェノール性水酸基1~2モルを有する化合物が、エポキシ基との反応性において好ましく、アントラセン構造1モルに対してフェノール性水酸基1モルを有する化合物が反応性と硬化物物性、及び修復性や再成形性のバランスのうえで特に好ましい。
なお、上記式(11)に列挙される化合物の構造は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミド基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基を置換基として有しているものを含む。また、上記式(11)に列挙される化合物の構造において、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基及びアリール基は、それらが有する炭素原子にさらに種々の置換基が結合したものも含む。例えば、前記アリール基は、その炭素原子にさらにフェノール性水酸基が結合したヒドロキシアリール基を含んでいる。
本発明で用いるD-A硬化剤は、上記アントラセン構造を有する化合物と、上記マレイミド構造を有する化合物とを、ディールスアルダー反応させることにより、前記共役ジエン構造と親ジエン構造とを付加反応させることで合成することができる。当該ディールスアルダー反応は既知の方法を用いればよい。例えば、共役ジエン化合物と親ジエン化合物を等モル、場合によっては一方の成分を過剰に混合し、加熱溶融または溶媒に溶解して、室温~200℃の温度で1~24時間撹拌し、そのまま精製することなく濾別や溶媒留去で得ることもできるし、再結晶、再沈殿及びクロマトグラフィーなどの、通常用いられる単離精製方法によって得ることもできる。
<エポキシ樹脂>
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂としては、一般に公知なエポキシ樹脂を用いることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂としては、何ら制限されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、単独でも、2種以上を併用してもよく、目的とする用途や硬化物の物性等に応じて種々選択して用いることが好ましい。これらのうち、一般的な工業的入手容易性の観点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等を用いることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂として、下記式(4)で表され、且つ、エポキシ当量が500~10000g/eqであるエポキシ樹脂を用いてもよい。
(式(4)中、Arはそれぞれ独立して、無置換または置換基を有する芳香環を有する構造であり、
Xは下記式(4-1)で表される構造単位であり、Yは下記式(4-2)で表される構造単位であり、
[式(4-1)、(4-2)中、Arはそれぞれ独立して、無置換または置換基を有する芳香環を有する構造であり、
1、R2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基またはエチル基であり、
R’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、
3、R4、R7、R8はそれぞれ独立して水酸基、グリシジルエーテル基または2-メチルグリシジルエーテル基であり、
5、R6、R9、R10はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、
1は4~16の整数であり、n2は繰り返し単位の平均値で2~30である。]
11、R12はそれぞれ独立して、グリシジルエーテル基または2-メチルグリシジルエーテル基であり、
13、R14はそれぞれ独立して水酸基、グリシジルエーテル基または2-メチルグリシジルエーテル基であり、
15、R16は水素原子又はメチル基であり、
1、m2、p1、p2、qは繰り返しの平均値であり、
1、m2は、それぞれ独立して0~25であり、且つ、m1+m2≧1であり、
1、p2はそれぞれ独立して0~5であり、
qは0.5~5である。
ただし、前記式(4-1)で表される構造単位Xと前記式(4-2)で表される構造単位Yとの結合は、ランダムであってもブロックであってもよく、1分子中に存在する各構造単位X、Yの数の総数がそれぞれm1、m2であることを示す。)
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂として、下記式(5)で表されるエポキシ樹脂を用いてもよい。このようなエポキシ樹脂を用いることで、エポキシ樹脂硬化物の修復性や再成形性の効果が向上し、柔軟性と強靭性とのバランスが良好となる。
(式(5)中、p1、p2、q、 2 及び 2 は繰り返しの平均値であり、それぞれ独立して、p1は0~5、p2は0~5、qは0.5~5、 2 ~25、 2 は2~30である。)
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂として、下記式(6)で表されるエポキシ樹脂(DGEBA)を用いてもよい。
(式(6)中、nは繰り返しの平均値であり、0~100である。これらの中でも組成物の流動性が良好になる点から、nは繰り返しの平均値として0~1が好ましい。)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、D-A硬化剤をエポキシ樹脂の硬化剤として含むが、更に別の硬化剤(併用可能な硬化剤)を含んでもよい。当該併用可能な硬化剤は、エポキシ樹脂と反応して硬化物を作製するものであれば特に限定は無いが、例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物等が挙げられる。
上記アミン系化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリプロピレングリコールジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミン類や、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類や、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環族ポリアミン類等や、ジシアンジアミド等が挙げられる。
上記酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸ポリプロピレングリコール、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
上記フェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂やこれらの変性物等が挙げられる。また潜在性触媒として、イミダゾール、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体等も挙げられる。
上記アミド系化合物としては、例えば、ポリカルボン酸とポリアミンより合成される脂肪族ポリアミド、またはこれに芳香族環を導入した芳香族ポリアミド、ポリアミドにエポキシ化合物を付加してなる脂肪族ポリアミドアダクト、芳香族ポリアミドアダクト等が挙げられる。
上記カルボン酸系化合物としては、例えば、カルボン酸末端ポリエステル、ポリアクリル酸、マレイン酸変性ポリプロピレングリコール等のカルボン酸ポリマー等や、活性エステル樹脂が挙げられる。
上記併用可能な硬化剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を混合してもよい。なお、アンダーフィル材等の用途や一般塗料用途においては、前記アミン系化合物、カルボン酸系化合物、及び/または、酸無水物系化合物を用いることが好ましい。また、接着剤やフレキシブル配線基板用途においてはアミン系化合物、特にジシアンジアミドが作業性、硬化性、長期安定性の点から好ましい。また、半導体封止材料用途においては硬化物の耐熱性の点から固形タイプのフェノール系化合物が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物中におけるD-A硬化剤の濃度は、エポキシ樹脂とD-A硬化剤の合計質量に対して0.10mmol/g以上に制御されている。このような構成によれば、エポキシ樹脂組成物に加熱処理を施して得られたエポキシ樹脂硬化物の修復性及び再成形性がいずれも良好となる。一方、エポキシ樹脂組成物中におけるD-A硬化剤の濃度が0.10mmol/g未満では、上述のような修復性及び再成形性がいずれも良好となるエポキシ樹脂硬化物が得られないおそれがある。本発明のエポキシ樹脂組成物中における前述のD-A硬化剤の濃度は、0.10~3.00mmol/gであるのがより好ましく、0.15~2.00mmol/gであるのが更により好ましい。また、本発明のエポキシ樹脂組成物が上記併用可能な硬化剤を含む場合は、本発明のエポキシ樹脂組成物中におけるD-A硬化剤の濃度は、エポキシ樹脂とD-A硬化剤と当該併用可能な硬化剤とを合計した質量に対して0.10mmol/g以上であるのが好ましく、0.10~3.00mmol/gであるのがより好ましく、0.15~2.00mmol/gであるのが更により好ましい。なお、本発明のD-A硬化剤の濃度は、目的とするエポキシ樹脂組成物から得られる硬化物の動的粘弾性測定器(DMA)のtanδピークトップで定義されるガラス転移温度等により適宜選定することができる。例えば、ガラス転移温度を目安とする場合、硬化物のガラス転移温度が室温付近のものであれば、好ましい範囲の低濃度側でも、十分な修復性及び再成形性機能が発現されやすくなる。一方、目的とする硬化物のガラス転移温度が目安として100℃を超えるものであれば、好ましい範囲の高濃度側で機能が発現されやすくなる。ただし、DMAより測定されたガラス転移温度を超える温度領域では、一般的に分子運動性が高く、D-A硬化剤の濃度が低くとも十分な修復性及び再成形性機能が発現されやすくなることから、例えば、修復のためのエージング温度や、再成形のための加熱温度を適時調整することでも、修復性及び再成形性機能の発現効果は調整可能である。このように、硬化物のガラス転移温度と本発明のD-A硬化剤の濃度の関係は、これらに限定されるものではない。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、更に、フィラー、繊維質基質、分散媒、前述の各種化合物以外の樹脂などを含んでもよい。以下、各含有物について、具体的に詳述する。
<フィラー>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、更にフィラーを含有してもよい。フィラーとしては、無機フィラーと有機フィラーが挙げられる。無機フィラーとしては、例えば無機微粒子が挙げられる。
無機微粒子としては、耐熱性に優れるものとして、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、シリカ(石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水珪酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等)等が挙げられる。また、熱伝導に優れるものとして、窒化ホウ素、窒化アルミ、酸化アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化珪素、ダイヤモンド等が挙げられる。また、導電性に優れるものとして、金属単体又は合金(例えば、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、白金、亜鉛、マンガン、ステンレス等)を用いた金属フィラー及び/又は金属被覆フィラー等が挙げられる。また、バリア性に優れるものとして、マイカ、クレイ、カオリン、タルク、ゼオライト、ウォラストナイト、スメクタイト等の鉱物等やチタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム等が挙げられる。また、屈折率が高いものとして、チタン酸バリウム、酸化ジルコニア、酸化チタン等が挙げられる。また、光触媒性を示すものとして、チタン、セリウム、亜鉛、銅、アルミニウム、錫、インジウム、リン、炭素、イオウ、テリウム、ニッケル、鉄、コバルト、銀、モリブデン、ストロンチウム、クロム、バリウム、鉛等の光触媒金属、前記金属の複合物、それらの酸化物等が挙げられる。また、耐摩耗性に優れるものとして、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム等の金属、及びそれらの複合物及び酸化物等が挙げられる。また、導電性に優れるものとして、銀、銅などの金属、酸化錫、酸化インジウム等が挙げられる。また、絶縁性に優れるものとして、シリカ等が挙げられる。また、紫外線遮蔽に優れるものとして、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
これらの無機微粒子は、用途によって適時選択すればよく、単独で使用しても、複数種組み合わせて使用してもかまわない。また、上記無機微粒子は、例に挙げた特性以外にも様々な特性を有することから、適時用途に合わせて選択すればよい。
例えば無機微粒子としてシリカを用いる場合、特に限定はなく粉末状のシリカやコロイダルシリカなど公知のシリカ微粒子を使用することができる。市販の粉末状のシリカ微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジル50、200、旭硝子(株)製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製E220A、E220、富士シリシア(株)製SYLYSIA470、日本板硝子(株)製SGフレーク等を挙げることができる。また、市販のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製メタノールシリカゾル、IPA-ST、MEK-ST、NBA-ST、XBA-ST、DMAC-ST、ST-UP、ST-OUP、ST-20、ST-40、ST-C、ST-N、ST-O、ST-50、ST-OL等を挙げることができる。
表面修飾をしたシリカ微粒子を用いてもよく、例えば、前記シリカ微粒子を、疎水性基を有する反応性シランカップリング剤で表面処理したものや、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾したものが挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販の粉末状のシリカとしては、日本アエロジル(株)製アエロジルRM50、R711等、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販のコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製MIBK-SD等が挙げられる。
前記シリカ微粒子の形状は特に限定はなく、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、または不定形状のものを用いることができる。また一次粒子径は、5~200nmの範囲が好ましい。5nm以上であると、分散体中の無機微粒子の分散が十分となり、200nm以下の径では、硬化物の十分な強度が保持しやすくなる。
酸化チタン微粒子としては、体質顔料のみならず紫外光応答型光触媒が使用でき、例えばアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンなどが使用できる。更に、酸化チタンの結晶構造中に異種元素をドーピングさせて可視光に応答させるように設計された粒子についても用いることができる。酸化チタンにドーピングさせる元素としては、窒素、硫黄、炭素、フッ素、リン等のアニオン元素や、クロム、鉄、コバルト、マンガン等のカチオン元素が好適に用いられる。また、形態としては、粉末、有機溶媒中もしくは水中に分散させたゾルもしくはスラリーを用いることができる。市販の粉末状の酸化チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジルP-25、テイカ(株)製ATM-100等を挙げることができる。また、市販のスラリー状の酸化チタン微粒子としては、例えば、テイカ(株)製TKD-701等が挙げられる。
<繊維質基質>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、更に繊維質基質を含有してもよい。繊維質基質は、特に限定はないが、繊維強化樹脂に用いられるものが好ましく、無機繊維や有機繊維が挙げられる。
無機繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維等の無機繊維のほか、炭素繊維、活性炭繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、タングステンカーバイド繊維、シリコンカーバイド繊維(炭化ケイ素繊維)、セラミックス繊維、アルミナ繊維、天然繊維、玄武岩などの鉱物繊維、ボロン繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ホウ素繊維、及び金属繊維等を挙げることができる。上記金属繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維を挙げることができる。
有機繊維としては、ポリベンザゾール、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート等の樹脂材料からなる合成繊維や、セルロース、パルプ、綿、羊毛、絹といった天然繊維、タンパク質、ポリペプチド、アルギン酸等の再生繊維等を挙げる事ができる。
中でも、カーボン繊維とガラス繊維は、産業上利用範囲が広いため、好ましい。これらのうち、1種のみ用いてもよく、複数種を同時に用いてもよい。
繊維質基質は、繊維の集合体であってもよく、繊維が連続していても、不連続状でもかまわず、織布状であっても、不織布状であってもかまわない。また、繊維を一方方向に整列した繊維束でもよく、繊維束を並べたシート状であってもよい。また、繊維の集合体に厚みを持たせた立体形状であってもかまわない。
<分散媒>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、組成物の固形分質量や粘度を調整する目的として、分散媒を使用してもよい。分散媒としては、本発明の効果を損ねることのない液状媒体であればよく、各種有機溶剤、液状有機ポリマー等が挙げられる。
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等の環状エーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類が挙げられ、これらを単独又は併用して使用可能であるが、中でもアセトン、メチルエチルケトンがエポキシ樹脂や硬化剤等の構成材料の溶解性、塗工時の揮発性や溶媒回収の面から好ましい。
前記液状有機ポリマーとは、硬化反応に直接寄与しない液状有機ポリマーであり、例えば、アクリルポリマー(フローレンWK-20:共栄社)、特殊変性燐酸エステルのアミン塩(HIPLAAD ED-251:楠本化成)、変性アクリル系ブロック共重合物(DISPERBYK2000:ビックケミー)などが挙げられる。
<樹脂>
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の前述した各種化合物以外の樹脂を有していてもよい。樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば公知慣用の樹脂を配合すればよく、例えば熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。
熱硬化性樹脂とは、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、アニリン樹脂、シアネートエステル樹脂、スチレン・無水マレイン酸(SMA)樹脂、マレイミド樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
熱可塑性樹脂とは、加熱により溶融成形可能な樹脂を言う。その具体例としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、酢酸セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
(エポキシ樹脂組成物の製造方法)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前述のD-A硬化剤及びエポキシ樹脂、更に必要に応じて前述の併用可能な硬化剤、フィラー、繊維質基質、分散媒、前述の各種化合物以外の樹脂を、前述の有機溶剤等の分散媒に溶解する。溶解後は溶媒を留去し、真空オーブン等により減圧乾燥することでエポキシ樹脂組成物を得ることができる。また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、前述の構成材料を均一混合した状態のものであってもよい。このとき、混合器等で均一に混合することが好ましい。各構成材料の配合割合は、所望するエポキシ樹脂硬化物の機械的強度、耐熱性、修復性及び再成形性等の特性に応じて適宜調製することができる。また、エポキシ樹脂組成物の作製において、具体的な構成材料の混合順として、まずエポキシ樹脂にアセトン、メチルエチルケトン等の有機溶媒を加えて撹拌した後、D-A硬化剤を硬化剤として加え、再度撹拌して均一にし、濃縮及び減圧乾燥することで、構成材料をより均一に混合したエポキシ樹脂組成物が得られる。
(エポキシ樹脂硬化物)
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、アントラセン構造及びマレイミド構造からなるディールスアルダー反応ユニットを分子内に1つ有し、ディールスアルダー反応ユニットが少なくとも2つのフェノール性水酸基を有するD-A硬化剤によって、エポキシ樹脂を硬化してなる。また、当該エポキシ樹脂としては、本発明のエポキシ樹脂組成物が含有するエポキシ樹脂として述べたような、一般に公知なエポキシ樹脂を用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、上述のように熱安定性に優れるD-A硬化剤によって硬化されているため、高温環境下でも架橋密度の低下を抑制することができ、良好な機械的強度を維持することができる。また、本発明のエポキシ樹脂硬化物に傷や外力などの機械エネルギーを与えることにより、ディールスアルダー反応ユニットのC-C結合が切断され、切断表面にアントラセンとマレイミドが生成すると考えられるが、アントラセンとマレイミドのディールスアルダー反応は、200℃以下では結合方向に平衡が移動するため、再び付加体(ディールスアルダー反応ユニット)を形成し、傷の修復や再成形が可能になると考えられる。
下記式(7)に、D-A硬化剤によってエポキシ樹脂を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物について、ディールスアルダー反応(D-A反応:架橋反応)とレトロディールスアルダー反応(r-D-A反応:可逆的架橋/解架橋反応)を表す模式図を示す。式(7)では具体的に、D-A硬化剤として、上記式(2)で表される硬化剤によって、上記式(6)で表されるエポキシ樹脂(DGEBA)を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物について示す。式(7)の例では、式(2)で表される硬化剤及びエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物を加熱処理すると、エポキシ樹脂のエポキシ基と、式(2)で表される硬化剤のディールスアルダー反応ユニットにおけるアントラセン構造及びマレイミド構造のそれぞれが有するフェノール性水酸基とが結合することで、三次元網目構造を生成する。また、傷や外力などの機械エネルギーを与えることにより、ディールスアルダー反応ユニットのC-C結合が切断され、アントラセン構造とマレイミド構造とが切り離されて解架橋する。解架橋したものであっても、所定の温度で加熱することで、再びディールスアルダー反応が起こり、三次元網目構造が復活し、傷の修復や再成形が可能となる。また、相分離を活用し、硬化物中の可逆結合を低弾性率相に配置することで可逆的架橋/解架橋反応性を促進させることが好ましい。
(エポキシ樹脂硬化物の製造方法)
次に、本発明のエポキシ樹脂硬化物の製造方法について詳述する。本発明のエポキシ樹脂硬化物は、本発明のエポキシ樹脂組成物を加熱して、エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂をD-A硬化剤で硬化させることで製造することができる。具体的には、本発明のエポキシ樹脂組成物に対し、シリコーン注型板等に注型し、必要であれば脱気した後、加熱硬化を行うことにより当該エポキシ樹脂を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物が得られる。前述のシリコーン注型板等に注型する工程は、例えば、当該エポキシ樹脂組成物を、シリコンチューブをスペーサーとしてアルミニウム鏡面板等で挟み込むことで行うことができる。
本発明のエポキシ樹脂硬化物の製造方法において、公知の硬化促進剤を用いることができる。当該硬化促進剤は、特に限定されないが、例えば、ウレア化合物、リン系化合物、3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩、4級アンモニウム塩類、錫カルボン酸塩、有機過酸化物等が挙げられる。また、接着剤用途として使用する場合には、作業性、低温硬化性に優れる点から、ウレア化合物、特に3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(DCMU)等が好ましい。半導体封止材料用途やプリント回路基板、ビルドアップ基板などの電子材料として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、3級アミンではジメチルアミノピリジンやイミダゾール類、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)、ベンジルジメチルアミン等が好ましい。
得られたエポキシ樹脂硬化物の構造は、フーリエ変換型赤外分光(FT-IR)等を用いた赤外線吸収(IR)スペクトル法、元素分析法、X線散乱法等により確認することができる。
(エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物の用途)
本発明のエポキシ樹脂組成物及び当該エポキシ樹脂組成物によって作製されるエポキシ樹脂硬化物(以下、本発明のエポキシ樹脂硬化物とも呼ぶ)は、耐熱性及び修復性の両方に優れ、且つ再成形性を有しており、以下の用途に有用である。
<積層体>
本発明のエポキシ樹脂硬化物は基材と積層することで積層体とすることができる。積層体の基材としては、金属やガラス等の無機材料や、プラスチックや木材といった有機材料等、用途によって適時使用すればよく、積層体の形状であってもよく、平板、シート状、あるいは三次元構造を有していてもよく、立体状であってもよい。全面にまたは一部に曲率を有するもの等、目的に応じた任意の形状であってもよい。また、基材の硬度、厚み等にも制限はない。また、第一の基材、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物からなる層、第二の基材の順に積層されてなる多層積層体としてもよい。本実施形態のエポキシ樹脂組成物は接着性に優れるため、第一の基材と第二の基材とを接着させる接着剤として好適に使用可能である。また、本発明のエポキシ樹脂硬化物を基材とし、更に本発明のエポキシ樹脂硬化物を積層してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、金属及びまたは金属酸化物に対する接着性が特に高いため、金属用のプライマーとして特に良好に使用可能である。金属としては銅、アルミ、金、銀、鉄、プラチナ、クロム、ニッケル、錫、チタン、亜鉛、各種合金、及びこれらを複合した材料が挙げられ、金属酸化物としてはこれら金属の単独酸化物及び/または複合酸化物が挙げられる。特に鉄、銅、アルミに対しての接着力に優れる為、鉄、銅、アルミ用の接着剤として良好に使用可能である。
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、応力を緩和することができることから、特に異種素材の接着に好適に利用可能である。例えば、基材が金属及び/または金属酸化物であって、第2基材がプラスチック層のような異種素材での積層体であっても、本発明のエポキシ樹脂硬化物の応力緩和能力から接着力が維持される。
本発明のエポキシ樹脂硬化物と基材とを積層してなる積層体において、硬化物を含む層は、基材に対し直接塗工や成形により形成してもよく、すでに成形したものを積層させてもかまわない。直接塗工する場合、塗工方法としては特に限定は無く、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。直接成形する場合は、インモールド成形、インサート成形、真空成形、押出ラミネート成形、プレス成形等が挙げられる。成形された組成物を積層する場合、未硬化または半硬化された組成物層を積層してから硬化させてもよいし、組成物を完全硬化した硬化物を含む層を基材に対し積層してもよい。また、本発明のエポキシ樹脂硬化物に対して、基材となり得る前駆体を塗工して硬化させることで積層させてもよく、基材となり得る前駆体または本発明のエポキシ樹脂組成物が未硬化あるいは半硬化の状態で接着させた後に硬化させてもよい。基材となり得る前駆体としては特に限定はなく、各種硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
<接着剤>
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、自動車、電車、土木建築、エレクトロニクス、航空機、宇宙産業分野の構造部材の接着剤として好適に用いることができる。当該接着剤は、例えば、金属-非金属間のような異素材の接着に用いた場合にも、温度環境の変化に影響されず高い接着性を維持することができ、剥がれ等が生じ難い。また、当該接着剤は、構造部材用途の他、一般事務用、医療用、炭素繊維、蓄電池のセルやモジュールやケース用などの接着剤としても使用でき、光学部品接合用接着剤、光ディスク貼り合わせ用接着剤、プリント配線板実装用接着剤、ダイボンディング接着剤、アンダーフィルなどの半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム、異方性導電性ペーストなどの実装用接着剤として使用することができる。
<繊維強化樹脂>
本発明のエポキシ樹脂組成物が繊維質基質を有し、当該繊維質基質が強化繊維の場合、繊維質基質を含有するエポキシ樹脂組成物は、繊維強化樹脂として用いることができる。組成物に対し繊維質基質を含有させる方法は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、繊維質基質と組成物とを、混練、塗布、含浸、注入、圧着等の方法で複合化する方法が挙げられ、繊維の形態及び繊維強化樹脂の用途によって適時選択することができる。
繊維強化樹脂を成形する方法については、特に限定されない。板状の製品を製造するのであれば、押し出し成形法が一般的であるが、平面プレスによっても可能である。この他、押し出し成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、真空成形法、射出成形法等を用いることが可能である。またフィルム状の製品を製造するのであれば、溶融押出法の他、溶液キャスト法を用いることができ、溶融成形方法を用いる場合、インフレーションフィルム成形、キャスト成形、押出ラミネーション成形、カレンダー成形、シート成形、繊維成形、ブロー成形、射出成形、回転成形、被覆成形等が挙げられる。また、活性エネルギー線で硬化する樹脂の場合、活性エネルギー線を用いた各種硬化方法を用いて硬化物を製造することができる。特に、熱硬化性樹脂をマトリクス樹脂の主成分とする場合には、成形材料をプリプレグ化してプレスやオートクレーブにより加圧加熱する成形法が挙げられ、この他にもRTM(Resin Transfer Molding)成形、VaRTM(Vacuum assist Resin Transfer Molding)成形、積層成形、ハンドレイアップ成形等が挙げられる。
<その他の成形材料>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、それを用いたエポキシ樹脂硬化物が、耐熱性及び修復性のいずれも良好であり、且つ再成形性を有しているので、大型ケースやモーターハウジング、ケース内部の注型材、ギアやプーリー等の成形材料に使用することができる。これらは樹脂単独の硬化物でもよく、ガラスチップなどの繊維強化された硬化物でもよい。
<プリプレグ>
繊維強化樹脂は、未硬化あるいは半硬化のプリプレグと呼ばれる状態を形成することができる。プリプレグの状態で製品を流通させた後、最終硬化をおこなって硬化物を形成してもよい。積層体を形成する場合は、プリプレグを形成した後、その他の層を積層してから最終硬化を行うことで、各層が密着した積層体を形成できるため、好ましい。このとき用いる組成物と繊維質基質の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
<耐熱材料及び電子材料>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、それを用いたエポキシ樹脂硬化物が、耐熱性及び修復性のいずれも良好であり、且つ再成形性を有しており、耐熱材料及び電子材料として使用可能である。特に、半導体封止材、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等や、接着剤やレジスト材料に好適に使用可能である。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用可能であり、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
以下、代表的な製品について例を挙げて説明する。
1.半導体封止材料
本発明のエポキシ樹脂組成物から半導体封止材料を得る方法としては、前記組成物、及び硬化促進剤、及び無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素などの高充填化、または溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化珪素などを用いるとよい。その充填率はエポキシ樹脂組成物100質量部当たり、無機充填剤を30~95質量%の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
2.半導体装置
本発明のエポキシ樹脂組成物から半導体装置を得る半導体パッケージ成形としては、上記半導体封止材料を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50~250℃で2~10時間の間、加熱する方法が挙げられる。
3.プリント配線基板
本発明のエポキシ樹脂組成物からプリント配線基板を得る方法としては、上記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着させる方法が挙げられる。
4.ビルドアップ基板
本発明のエポキシ樹脂組成物からビルドアップ基板を得る方法は、例えば以下の工程が挙げられる。まず、ゴム、フィラーなどを適宜配合した上記組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる工程(工程1)。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する工程(工程2)。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成する工程(工程3)。なお、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、本発明のビルドアップ基板は、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~300℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
5.ビルドアップフィルム
本発明のエポキシ樹脂組成物からビルドアップフィルムを得る方法としては、基材である支持フィルムの表面に、上記エポキシ樹脂組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させてエポキシ樹脂組成物の層を形成させることにより製造することができる。
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
形成されるエポキシ樹脂組成物の層の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。なお、エポキシ樹脂組成物の層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
前記した支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。ビルドアップフィルムを構成する硬化性樹脂組成物層が加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
前記のようにして得られたビルドアップフィルムを用いて多層プリント回路基板を製造することができる。例えば、エポキシ樹脂組成物の層が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、エポキシ樹脂組成物の層を回路基板に直接接するように回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。また必要により、ラミネートを行う前にビルドアップフィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を70~140℃とすることが好ましく、圧着圧力を1~11kgf/cm2(9.8×104~107.9×104N/m2)とすることが好ましく、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
6.導電性ペースト
本発明のエポキシ樹脂組成物から導電性ペーストを得る方法としては、例えば、導電性粒子を該組成物中に分散させる方法が挙げられる。上記導電性ペーストは、用いる導電性粒子の種類によって、回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とすることができる。
以下に、本発明を実施例でさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[合成例1]
-ヒドロキシ化合物の合成-
温度計及び撹拌機を取り付けたフラスコにポリテトラメチレングリコールのジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製「デナコールEX-991L」:エポキシ当量445g/eq)445g(0.5モル)と、ビスフェノールA(水酸基当量114g/eq)228g(1.0モル)とを加え、140℃まで30分間要して昇温した後、4%水酸化ナトリウム水溶液3.4gを加えた。その後、30分間要して150℃まで昇温し、さらに150℃で16時間反応させた。その後、中和量のリン酸ソーダを添加し、下記式(8)で表されるヒドロキシ化合物を673g得た。当該ヒドロキシ化合物は、マススペクトルで下記式(8)中のm1=1、n1=11の理論構造に相当するM+=1380のピークが得られたことから、目的物であるPTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)型(BPA:ビスフェノールA)のヒドロキシ化合物を含有することが確認された。このヒドロキシ化合物のGPCより算出した水酸基当量は526g/eqであり、n1の平均値は10.6、m1の平均値は0.73であった。
[合成例2]
-エポキシ樹脂の合成-
温度計、滴下ロート、冷却管及び撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、上記合成によって得られた式(8)で表されるヒドロキシ化合物を200g、エピクロルヒドリン437g(4.72モル)、n-ブタノール118gを加え、溶解させた。65℃に昇温した後、共沸する圧力まで減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液6.66g(0.08モル)を5時間かけて滴下した。
次に、同条件で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸によって留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離し、水層を除去し、油層を反応系内に戻しながら、反応を行った。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留によって留去させた。得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン150gとn-ブタノール150gとを加え、溶解した。
更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液10gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水50gで水洗を3回繰り返した。
次に、共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、上記式(5)で表されるエポキシ樹脂を190g得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は722g/eqであった。当該エポキシ樹脂は、マススペクトルで上記式(5)中の 2 =1、 2 =11、q=1、p1=0、p2=0の理論構造に相当するM+=1492のピークが得られたことから、目的物である上記式(5)で表されるエポキシ樹脂を含有することが確認された。

[合成例3]
-D-A硬化剤の合成-
温度計、撹拌機及び冷却管を取り付けたフラスコに9-(4-ヒドロキシベンジル)-10-(4-ヒドロキシフェニル)アントラセン(旭有機材株式会社製:製品名BIP-ANT:水酸基当量188g/eq)376g(1モル)、4-ヒドロキシフェニルマレイミド226g(1.2モル)、トルエン1880g及びメチルイソブチルケトン1880gを仕込み、80℃で12時間反応させた。その後、室温まで冷却し、沈殿物を吸引ろ過により回収し、減圧下で乾燥させ、ディールスアルダー反応付加体(上記式(3)で表されるD-A硬化剤)を得た。収量は429gであり、収率は76%であった。
[合成例4]
-D-A硬化剤の合成-
温度計、撹拌機、冷却管を取り付けたフラスコに2,6-ジヒドロキシアントラセン210g(1モル)と4-ヒドロキシフェニルマレイミド226g(1.2モル)、トルエン1050g及びメチルイソブチルケトン1050gを仕込み、80℃で12時間反応させた。その後、室温まで冷却し、沈殿物を吸引ろ過により回収し、減圧下で乾燥させ、ディールスアルダー反応付加体(上記式(2)で表されるD-A硬化剤)を得た。収量は379gであり、収率は95%であった。
[合成例5]
-硬化剤の合成-
温度計、撹拌機及び冷却管を取り付けたフラスコに2,6-キシレノール244g(2モル)と、5.4%水酸化ナトリウムメタノール溶液129gを仕込み、撹拌、溶解後、加熱して還流状態をしたところへ、フルフラール96g(1モル)を1時間かけて滴下した。その後、還流温度で13時間反応させた後、20%リン酸二水素ナトリウム水溶液140gで中和し、水を500g加えた。次に、析出した結晶を吸引ろ過により回収し、メタノール:水=1:1の溶液で洗浄後、減圧下で乾燥させた。この結晶322g(1モル)と4-ヒドロキシフェニルマレイミド189g(1モル)とテトラヒドロフラン1020gを仕込み、室温で24時間反応させた。その後、沈殿物を吸引ろ過により回収し、減圧下で乾燥させ、ディールスアルダー反応付加体(下記式(9)で表される硬化剤)を得た。収量は369gであり、収率は72%であった。
<実施例1~3、比較例1、2>
-エポキシ樹脂硬化物の作製及び評価-
表1に従った配合で、エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を、混合機(株式会社シンキー製「あわとり練太郎ARV-200」)にて均一混合して、エポキシ樹脂組成物を得た。表1に、得られたエポキシ樹脂組成物の各硬化剤の濃度を示す。
表1のエポキシ樹脂は、上記式(5)で表されるエポキシ樹脂またはEPICLON 850S(DIC株式会社製ビスフェノール型液状エポキシ樹脂 エポキシ当量188g/eq)を示す。
表1の硬化剤は、上記式(3)で表される硬化剤、上記式(2)で表される硬化剤、上記式(9)で表される硬化剤、DICY(ジシアンジアミド、三菱ケミカル株式会社製DICY7)またはXLC-LL(三井化学株式会社製フェノールアラルキル樹脂 水酸基当量:176g/eq)を示す。
表1の硬化促進剤は、TPP(東京化成工業株式会社製トリフェニルホスフィン(試薬))、または、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア、DIC株式会社製B-605-IM)を示す。
次に、得られたエポキシ樹脂組成物を、シリコンチューブをスペーサーとしてアルミニウム鏡面板(株式会社エンジニアリングテストサービス製「JIS H 4000 A1050P」)にて挟み込み、所定の加熱条件にて加熱硬化を行い、厚さ0.7mmのエポキシ樹脂硬化物を得た。実施例1、3及び比較例1では褐色透明な硬化物が得られ、実施例2では白濁相分離した硬化物が得られた。なお、式(9)で表される硬化剤を用いた比較例2については、加熱硬化中に発泡し、エポキシ樹脂硬化物が得られなかった。
以下に、上述の実施例1~3、比較例1、2で実施した加熱硬化に係る加熱条件(加熱温度及び加熱時間)を示す。
実施例1、3、比較例1、2:100℃で0.5時間+130℃で1.5時間+160℃で2時間+180℃で2時間
実施例2:170℃で0.5時間
-自己修復性試験-
実施例1~3、比較例1でそれぞれ作製したエポキシ樹脂硬化物を剃刀で切断し、生じた破断面を接触させて、乾燥機内にて190℃24時間エージングした。乾燥機から取り出した後、エポキシ樹脂硬化物の断面同士の接合の有無を目視にて確認した。接合したものを「A」と評価し、接合していなかったものを「B」と評価した。
評価結果を表1に示す。
表1によれば、実施例1~3に係るエポキシ樹脂硬化物は、エポキシ樹脂組成物中の硬化剤の濃度がいずれも0.10mmol/g以上であり、自己修復性が良好であった。
これに対し、比較例1に係るエポキシ樹脂硬化物は、エポキシ樹脂組成物中の硬化剤の濃度が0.10mmol/g未満であったため、自己修復性が不良であった。
また、実施例1~3に係るエポキシ樹脂硬化物は、いずれも170℃以上の温度で加熱硬化を行ったものであるが、比較例2のように解架橋せず、耐熱性が良好であった。
<実施例1、2、比較例1>
-再成形試験-
実施例1、2及び比較例1でそれぞれ作製したエポキシ樹脂硬化物0.1gをハサミで細かく裁断した。アルミ板上に5mm×40mmの大きさの窓を空けた1.08mm厚のテフロン(登録商標)板を載せ、その中に裁断した硬化物を入れた。さらにその上にアルミ板と1kgの重りを載せ、150℃で24時間の連続加熱を行った。得られた硬化物の形状を目視で観察した。評価結果は以下の通りであった。実施例1、2、比較例1で作製したエポキシ樹脂硬化物の当該評価結果を順に下記の実施例4、5、比較例3に示す。
実施例4、5:継ぎ目が消失し、硬化物が一体化した。
比較例3:硬化物の破片は互いに粘着していたが、軽く触れるとバラバラになった。

Claims (6)

  1. アントラセン構造及びマレイミド構造からなるディールスアルダー反応ユニットを分子内に1つ有し、前記ディールスアルダー反応ユニットが少なくとも2つのフェノール性水酸基を有する硬化剤と、
    エポキシ樹脂と、
    を含み、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計質量に対する前記硬化剤の濃度が0.10mmol/g以上であり、
    前記硬化剤が、下記式(1)で表され、フェノール性水酸基を少なくとも1つ有するアントラセン構造と、フェノール性水酸基を少なくとも1つ有するマレイミド構造とを有する、エポキシ樹脂組成物。
    (式(1)中、R 1 ~R 11 は、それぞれ、互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基またはアリール基であり、R 1 ~R 11 の少なくとも1つはフェノール性水酸基を含む官能基であるか、フェノール性水酸基を置換基として有している基である。)
  2. 前記硬化剤が、下記式(2)で表される請求項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 前記硬化剤が、下記式(3)で表される請求項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記エポキシ樹脂が、下記式(4)で表され、且つ、エポキシ当量が500~10000g/eqである請求項1~のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
    (式(4)中、Arはそれぞれ独立して、無置換または置換基を有する芳香環を有する構造であり、
    Xは下記式(4-1)で表される構造単位であり、Yは下記式(4-2)で表される構造単位であり、
    [式(4-1)、(4-2)中、Arはそれぞれ独立して、無置換または置換基を有する芳香環を有する構造であり、
    1、R2はそれぞれ独立して水素原子、メチル基またはエチル基であり、
    R’は炭素原子数2~12の2価の炭化水素基であり、
    3、R4、R7、R8はそれぞれ独立して水酸基、グリシジルエーテル基または2-メチルグリシジルエーテル基であり、
    5、R6、R9、R10はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり、
    1は4~16の整数であり、n2は繰り返し単位の平均値で2~30である。]
    11、R12はそれぞれ独立して、グリシジルエーテル基または2-メチルグリシジルエーテル基であり、
    13、R14はそれぞれ独立して水酸基、グリシジルエーテル基または2-メチルグリシジルエーテル基であり、
    15、R16は水素原子又はメチル基であり、
    1、m2、p1、p2、qは繰り返しの平均値であり、
    1、m2は、それぞれ独立して0~25であり、且つ、m1+m2≧1であり、
    1、p2はそれぞれ独立して0~5であり、
    qは0.5~5である。
    ただし、前記式(4-1)で表される構造単位Xと前記式(4-2)で表される構造単位Yとの結合は、ランダムであってもブロックであってもよく、1分子中に存在する各構造単位X、Yの数の総数がそれぞれm1、m2であることを示す。)
  5. 前記エポキシ樹脂が、下記式(5)で表される請求項に記載のエポキシ樹脂組成物。
    (式(5)中、p1、p2、q、 2 及び 2 は繰り返しの平均値であり、それぞれ独立して、p1は0~5、p2は0~5、qは0.5~5、 2 ~25、 2 は2~30である。)
  6. 請求項1~のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物。
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