JP7740890B2 - リチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト及び絶縁層 - Google Patents

リチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト及び絶縁層

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の正極及び/又は負極の集電体上に塗工する絶縁ペースト、及び該ペーストを塗工して得られた絶縁層に関する。
リチウムイオン二次電池は、正極及び負極を積層または捲回したものがあり、この正極及び負極は金属箔(集電体)の両面に合剤層を塗布し、乾燥、プレスすることにより製造される。多くの正極及び負極では電流の経路として金属箔端部に露出部を設けている。この露出部を短絡防止(絶縁)する技術が開示されている。
例えば、特許文献1には、絶縁層を含むリチウムイオン二次電池が開示されている。この絶縁層によって正極板と負極板との短絡が防止されているが、貯蔵安定性や塗工作業性が悪く十分な仕上がり性が得られない場合があった。また、物理的な負荷が作用すると、絶縁層が脱落するおそれがあった。
特に、プレスなどの製造工程において、高い負荷(折り曲げ、切削、加圧、引っ掻きなど)がかかる場合は、絶縁層の集電体からの剥離や脱落などにより本来の性能が得られなくなる。したがって、集電体と絶縁層の付着性は電池性能や安全性に重大な影響を及ぼすため非常に重要である。
特開2013-232425号公報
本発明が解決しようとする課題は、貯蔵性(顔料沈降性、粘度)と塗工作業性が良好な絶縁ペーストであって、塗工後の仕上がり性と特に集電体への密着性が良好な絶縁層を提供することである。
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、無機フィラー(A)、バインダー(B)、分散剤(C)、及び溶媒(D)を含有するリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペーストであって、集電体上に絶縁ペーストを塗工して得られる絶縁層の付着力が2.5N/m以上である絶縁ペーストによって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の絶縁ペースト及び絶縁層を提供するものである。
項1.無機フィラー(A)、バインダー(B)、分散剤(C)、及び溶媒(D)を含有するリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペーストであって、集電体上に絶縁ペーストを塗工して得られる絶縁層の付着力が2.5N/m以上であることを特徴とするリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
項2.無機フィラー(A)の体積平均粒径(D50)が0.5~7μmであり、かつ粒径分布標準偏差が1.4μm以下であることを特徴とする前記項1に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
項3.分散剤(C)が、極性基含有アクリル樹脂を含有することを特徴とする前記項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
項4.極性基含有アクリル樹脂の極性基が、リン酸基であることを特徴とする前記項3に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
項5.極性基含有アクリル樹脂が、炭素数4以上の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(c2)を含む原料モノマーの重合体であることを特徴とする前記項3又は4に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
項6.極性基含有アクリル樹脂の重量平均分子量が、1,000~100,000の範囲内であることを特徴とする前記項3~5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
項7.前記項1~6のいずれか1項に記載の絶縁層が非孔質であることを特徴とするリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
項8.無機フィラー(A)が、アルミナ、シリカ、TiO、BaTiO、ZrO、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト及びカオリンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記項1~7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
項9.バインダー(B)が、変性又は未変性のポリフッ化ビニリデンであることを特徴とする前記項1~8のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
項10.溶媒(D)が、N-メチル-2-ピロリドンであることを特徴とする前記項1~9のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
項11.前記項1~10のいずれか1項に記載の絶縁ペーストが実質的に電極用活物質を含まないことを特徴とするリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
項12.集電体上の一部又は全部に、前記項1~11のいずれか1項に記載の絶縁ペーストを塗工し、次いで加熱乾燥することで絶縁層を形成するリチウムイオン二次電池集電体用絶縁層の製造方法。
項13.集電体上の一部又は全部に、前記項1~11のいずれか1項に記載の絶縁ペーストを塗工し、次いで加熱乾燥することで絶縁層を形成するリチウムイオン二次電池集電体用絶縁層の製造方法であって、該絶縁層のナトリウム含有量が15ppm以上である製造方法。
項14.集電体が、アルミニウム又はその複合金属であることを特徴とする前記項12又は13に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁層の製造方法。
本発明の絶縁ペーストは、貯蔵性(顔料沈降性、粘度)と塗工作業性が良好な絶縁ペーストであって、得られた絶縁層は、良好な仕上がり性と密着性を有する。
以下、本発明について詳細に説明する。
尚、本明細書において、「樹脂の原料がモノマーXを含有する」とは、相反する内容を別途明記しない限り、上記樹脂が、上記モノマーXを含む原料モノマーの(共)重合体であることを意味する。また、本明細書において、(共)重合体とは重合体又は共重合体を意味する。
尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドを意味する。
また、明細書中で「絶縁層」を「絶縁膜」、「塗工膜」、又は「膜」と言い換えることもある。
絶縁ペースト
本発明のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペーストは、無機フィラー(A)、バインダー(B)、分散剤(C)、及び溶媒(D)を含有する絶縁ペーストである。
そして、集電体上に絶縁ペーストを塗工して得られる絶縁層の付着力が、通常2.5N/m以上であり、好ましくは4.5N/m以上であり、より好ましくは6.5N/m以上であり、さらに好ましくは10N/m以上である。付着力が2.5N/m以上であれば、プレス、折り曲げ、衝撃などの負荷があったとしても良好な状態を保つことができる。
尚、集電体に対する絶縁層の付着力は下記試験方法により測定することができる。
<絶縁層の付着力測定方法>
アルミ素材の集電体上に、絶縁ペーストをアプリケーターで塗工した後、120℃で30分間乾燥し、塗工膜(乾燥膜厚15μm)を形成する。次いで、集電体と塗工膜との積層体からなる試験板の塗工膜上に両面テープで厚さ300μmの補強のためのPETフィルムを張り付け、得られた積層体をPETから塗工膜までの厚さでカッターで長さ10cm、巾1.5cmの短冊状にカットする。さらに、水平に置かれた試料の集電体の面側に両面テープを貼り、試料をブリキ板上に接着固定し、「Ez-Test」(商品名、島津製作所社製)を用いて、引張速度10cm/分の条件で180度の剥離試験を行う。
上記絶縁ペースト中のナトリウム含有量は、通常450ppm以下、好ましくは10~350ppm、より好ましくは20~300ppm、さらに好ましくは30~200ppmに調整することが貯蔵性(貯蔵時の絶縁ペーストの粘度の減少(以下、貯蔵減粘 と称する)の抑制)と付着力の観点から好適である。ナトリウム含有量が450ppmを超えると高温での貯蔵で減粘が起こり、その結果、顔料沈降性や仕上がり性(タレ性含む)が低下する場合がある。また、ナトリウム含有量が10ppm(特に5ppm)を下回ると集電体に対する絶縁層の付着力が落ちる場合がある。
なお、絶縁ペーストは各種原料(特に後述する無機フィラー)からの持ち込みや製造工程での混入によってナトリウムイオンを含有する。
上記貯蔵減粘の原因は詳しくは分かっていないが、例えば、通常は無機フィラー(A)、バインダー(B)、及び分散樹脂(C)の各成分が水素結合による相互作用でペーストの粘度が維持されているが、一定量以上のナトリウムイオンを含有するとそれが徐々に断ち切られて絶縁ペーストが減粘するという理由が考えられる。
上記付着力とナトリウム含有量の関係は詳しくは分かっていないが、例えば、絶縁層に一定量以上の極性成分が含まれていると集電体との付着力が上がると考えられる。
絶縁ペースト中のナトリウム含有量は、例えば、ICP発光分光分析装置によって測定することができ、具体的には、試料(絶縁ペースト)を硝酸/硫酸混合液(混合比:1/1)で溶解し、ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、「ICPS-8100」)を用いて測定することができる。
無機フィラー(A)
本発明の絶縁ペーストで使用できる無機フィラー(A)は、非導電性の無機フィラーであれば制限なく使用することができ、例えば、アルミナ、シリカ、TiO、BaTiO、ZrO、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト及びカオリンが挙げられ、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、アルミナ及び/又はベーマイトが好ましい。アルミナはAl23で表される酸化アルミニウムであり、ベーマイトはγ-AlO(OH)の組成で表されるアルミナ1水和物である。
本発明の絶縁ペースト中における無機フィラー(A)の体積平均粒径(D50)としては、0.5~7μmが好ましく、0.8~5.5μmがより好ましく、1.2~3.5μmがさらに好ましい。
粒子径が小さい場合は粒子の表面積が大きくなることからペースト粘度が上がって塗工作業性や仕上がり性が悪化し、粒子径が大きい場合は絶縁層の表面の仕上がり性が悪化することになる。また、詳しいことは分かっていないが、無機フィラーがある程度以上の粒子径であることで集電体に対する絶縁層の凝集力が向上し付着力が向上すると考えられる。
また、粒度分布としてはできるだけ狭い分布が好ましく、粒径分布標準偏差が、1.4μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。
なお、本発明において、絶縁ペースト中に存在する無機フィラーの体積平均粒径(D50)及び粒径分布標準偏差の測定は、絶縁ペーストを粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、製品名:マイクロトラックMT3000)で測定することにより行った。
また、無機フィラー(A)自体の一次粒子径である体積平均粒径(D50)は、0.01~6μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましく、0.7~3.0μmがさらに好ましい。
形状としては、球状、楕円状、板状、キューブ状、鱗片状、針状、棒状などが挙げられ、いずれも好適に用いることができ、アスペクト比1.1以上のものが好ましい。
尚、上記無機フィラー(A)としてベーマイトを使用する場合は、前述の絶縁ペースト中のナトリウム含有量に特に注意する必要がある。ベーマイトの原料となる水酸化アルミニウムの製造工程では水酸化ナトリウムが使用されるため、ベーマイトにおいても一定量以上のナトリウムイオンを含有することになる。ナトリウムイオンを洗浄等によって含有量を調整する事が可能である。
具体的には、ベーマイトのナトリウム含有量は、ベーマイトの固形分を基準として、通常40~2000ppm以下、好ましくは40~1500ppm、より好ましくは100~1200ppmであることが好適である。
バインダー(B)
本発明の絶縁ペーストで用いることができるバインダー(B)としては、下記式(1)で表わされる重合性不飽和基含有モノマーを構成成分とする共重合体であり、該重合性不飽和基含有モノマーを含むモノマーを共重合して合成することができる。
(R-)(R-)C=C(-R)(-R) ・・・(1)
〔式中、R~Rは、水素、フッ素、塩素から選ばれる原子、若しくは、鎖状、分岐状、及び/又は環状の有機基である。)
上記重合性不飽和基含有モノマーとしては、上記式(1)の構造であれば特に制限なく用いることができ、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、脂肪酸ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、スチレン、(メタ)アクリロイル基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド基含有モノマーなどが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
上記重合性不飽和基含有モノマーの重合方法としては、それ自体既知の重合方法、例えば、上記重合性不飽和基含有モノマーを含むモノマーを有機溶媒中で溶液重合することができるが、これに限られるものではなく、例えば、バルク重合や乳化重合や懸濁重合等でもよい。溶液重合を行う場合には、連続重合でもよいしバッチ重合でもよく、モノマーは一括して仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよく、あるいは連続的又は断続的に添加してもよい。
また、重合をした後に各種変性をすることもできる。(例えば、重合後に加水分解をする。アセタール化を行う。他の樹脂と反応してグラフト化する。など)
上記重合において使用する重合開始剤としては、特に限定するものではなく、過酸化物系開始剤、アゾ系開始剤、レドックス系開始剤、有機ハロゲン化物開始剤など公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。
上記重合において使用する溶媒としては、公知のものを特に制限なく使用することができ、後述の分散樹脂(C)で挙げる有機溶媒などを好適に使用することができる。
重合反応温度は、特に限定するものではないが、通常30~200℃程度の範囲で設定することができる。
上記バインダー(B)としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドンなどが挙げられ、これらは各種官能基で変性していても良く、該官能基としては酸基や塩基などの極性官能基を好適に用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができ、なかでも、絶縁性と塗膜強度(すなわち凝集力)の観点から変性又は無変性のポリフッ化ビニリデンが好ましい。
上記バインダー(B)の重量平均分子量としては、100,000より大きいことが好ましく、110,000~5,000,000の範囲内であることがより好ましく、200,000~2,000,000の範囲内であることがさらに好ましい。
分散樹脂(C)
本発明で用いることができる分散樹脂(C)は、アクリル樹脂を含有することが好ましく、特に、少なくとも1種の極性基を有する重合性不飽和モノマーを含む原料モノマーの共重合体である極性基含有アクリル樹脂(c)を含有することが好ましい。
分散樹脂(C)中に酸基などの極性基があると、基材との密着性や顔料の分散性が良くなるが、多いと極性が上がりすぎるので、仕上がり性は悪くなる。炭素数4以上の低極性モノマーがあると低極性のフッ素樹脂との相溶性を上げるので仕上がりが良くなる。分散性も少し良くなる。
このため、上記極性基含有アクリル樹脂が、極性官能基を有する重合性不飽和モノマー(c1)及び炭素数4以上の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(c2)を含む原料モノマーの共重合体であり、かつ該共重合体の重量平均分子量が1,000~100,000である極性基含有アクリル樹脂(c)であることがより好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)は極性が高いので、このような極性基含有アクリル樹脂(c)より仕上がり性は悪い。
<極性基含有アクリル樹脂(c)>
極性基含有アクリル樹脂(c)としては、極性官能基を有する重合性不飽和モノマー(c1)及び炭素数4以上の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(c2)を含むことで、無機フィラー(A)の分散性とバインダー(B)との相溶性と集電体との密着性を両立することができる。
<極性基を有する重合性不飽和モノマー(c1)>
上記極性基を有する重合性不飽和モノマー(c1)としては、極性基を有する重合性不飽和モノマーであれば特に制限なく用いることができ、該極性基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、アミノ基、4級塩基、水酸基及びポリアルキレングリコール基等が挙げられ、重合性不飽和モノマー内に複数の極性基を有していてもよい。
上記極性基を有する重合性不飽和モノマー(c1)の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマー;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等、これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基含有重合性不飽和モノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等のアミノ基含有重合性不飽和モノマー;2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級塩基含有重合性不飽和モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物、(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、分子末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール基含有重合性不飽和モノマーなどが挙げることができ、なかでも、酸基を有する重合性不飽和モノマーが好ましく、リン酸基を有する重合性不飽和モノマーがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
上記原料モノマーにおいて、極性基を有する重合性不飽和モノマー(c1)は、1~80質量%含有することが好ましく、5~70質量%含有することがより好ましく、20~60質量%含有することがさらに好ましい。
原料モノマー中の極性基を有する重合性不飽和モノマー(c1)の含有量が前記範囲であると、バインダーとの相溶性、顔料分散性、及び密着性が良好になる。
また、極性基含有アクリル樹脂(c)中に酸基を有する場合は、酸価としては、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは5~150mgKOH/gの範囲内であり、アミノ基を有する場合はアミン価が好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは5~150mgKOH/gの範囲内であり、水酸基を有する場合は水酸基価が好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは5~150mgKOH/gの範囲内である。
極性基含有アクリル樹脂(c)の酸価は、JISK-5601-2-1(1999)により測定することができる。また、極性基含有アクリル樹脂(a)のアミン価は、JISK7237(1995)により測定することができる。
<炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c2)>
極性基含有アクリル樹脂(c)の原料モノマーは、バインダー(B)との相溶性の観点から、炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c2)を含むことが好ましい。特にバインダー(B)が比較的低極性のポリフッ化ビニリデンの場合は炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c2)を好適に用いることができる。
上記炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c2)としては、炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーであれば、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基等を特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、スチレン、ナフチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c2)としては、炭素数が4以上24以下のものが好ましく、8以上20以下のものがより好ましく、10以上17以下のものが特に好ましい。また、構造としては、直鎖状又は分岐状のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーが好ましい。
上記原料モノマーにおいて、炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c2)は、1~95質量%含有することが好ましく、10~80質量%含有することがより好ましく、20~60質量%含有することがより好ましい。
原料モノマー中の炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c2)の含有量が前記範囲であると、分散性及び貯蔵性が良好になる。
(その他の重合性不飽和モノマー)
極性基含有アクリル樹脂(c)を得るための原料モノマーとしては、上記極性基を有する重合性不飽和モノマー(c1)及び炭素数が4以上のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー以外(c2)のその他の重合性不飽和モノマーも好適に用いることができる。その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数が3以下のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー;重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーなどが挙げられる。
上記極性基含有アクリル樹脂(c)の重合方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、重合性不飽和モノマー(原料モノマー)を有機溶媒中で溶液重合することにより製造することができるが、これに限られるものではなく、例えば、バルク重合や乳化重合や懸濁重合等でもよい。溶液重合を行う場合には、連続重合でもよいしバッチ重合でもよく、重合性不飽和モノマーは一括して仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよく、あるいは連続的又は断続的に添加してもよい。
重合に用いられるラジカル重合開始剤としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の過酸化物系重合開始剤;2,2´-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、アゾクメン、2,2´-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2´-アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4´-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2-(t-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2´-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2´-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤を挙げることができ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
上記の重合又は希釈に使用される溶媒としては、特に制限はなく、水や有機溶剤、或いはその混合物等を挙げることができる。有機溶剤としては、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン等の炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n-ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酪酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、イソブタノール等の等のアルコール系溶剤;エクアミド(商品名、出光興産株式会社製)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロピオアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤等、従来公知の溶剤を挙げることができ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。ただし、極性基含有アクリル樹脂(c)の重合及び/又は希釈に使用された溶媒は、脱溶剤工程により除去しなかった場合、本発明の絶縁ペースト中に持ち込まれることになるため、後述する溶媒(D)で規定した溶解性パラメータの範囲内になるように用いることが好ましい。
有機溶剤中での溶液重合において、重合開始剤、重合性不飽和モノマー成分、及び溶媒を混合し、攪拌しながら加熱する方法、反応熱による系の温度上昇を抑えるために溶媒を反応槽に仕込み、60℃~200℃の温度で攪拌しながら必要に応じて窒素やアルゴン等の不活性ガスを吹き込みながら、重合性不飽和モノマー成分と重合開始剤を所定の時間かけて混合滴下又は分離滴下する方法等が用いられる。
重合は、一般に1~10時間程度行うことができる。各段階の重合の後に必要に応じて重合開始剤を滴下しながら反応槽を加熱する追加触媒工程を設けてもよい。
上記の通り得られる極性基含有アクリル樹脂(c)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~100,000であり、より好ましくは2,000~100,000、さらに好ましくは3,000~100,000、特に好ましくは5,000~80,000の範囲内であることが好適である。
極性基含有アクリル樹脂(c)の重量平均分子量が前記範囲であると、分散性及び貯蔵性が良好になる。
尚、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」及び「TSKgel G-2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
<その他の樹脂>
本発明において、分散樹脂(C)は、上記アクリル樹脂と共に必要に応じてそれ自体既知のものを特に制限なく用いることができ、具体的には、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリブタジエンゴム、及びこれらの変性樹脂や複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせてアクリル樹脂と共に含有することができる。
溶媒(D)
本発明の絶縁ペーストで用いることができる溶媒(D)としては、従来公知のものを特に制限なく使用することができる。具体的には、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン等の炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n-ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;エクアミド(商品名:出光興産社製、アミド系溶剤)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロピオアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
なかでも、本発明の絶縁ペーストで用いることができる溶媒(D)は、分散樹脂(C)の溶解性及び絶縁ペーストの分散安定性の観点から、非炭化水素系溶剤が好ましい。例えば、溶媒は、エステル結合、エーテル結合、ケトン基、アミド結合、ラクタム結合及びヒドロキシ基をもつ溶剤を含むことが好ましく、特にN-メチルピロリドンが好ましい。
また、絶縁ペーストの分散性や樹脂を変質又は加水分解させない観点から、実質的に水を含まないことが好ましい。ここで「実質的に水を含まない」とは、絶縁ペーストの全量を基準として、水の含有量が、通常1質量%以下であることをいう。
本発明において、絶縁ペーストの水分含有量は、カールフィッシャー電量滴定法にて測定することができる。具体的には、カールフィッシャー水分率計(京都電子工業株式会社製、製品名:MKC-610)を用い、該装置に備えられた水分気化装置(京都電子社製、製品名:ADP-611)の設定温度は130℃として測定することができる。
絶縁ペーストの製造
本発明の絶縁ペーストは、上記の無機フィラー(A)、バインダー(B)、分散樹脂(C)、及び溶媒(D)の他に、必要に応じて、顔料、樹脂、添加剤などのその他の成分を含有することができる。なお、本発明の絶縁ペーストは実質的に電極用活物質を含まないことが好ましい。
添加剤としては、中和剤、顔料分散剤、結着剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、帯電防止剤などを挙げることができる。
絶縁ペースト固形分中の無機フィラー(A)固形分の含有量は、通常50~99質量%、好ましく70~80質量%であることが、絶縁性、塗装作業性、顔料沈降性、分散性などの面から好適である。
なお、本明細書において固形分とは、揮発成分を除いた残存物を意味するものであり、残存物としては常温で固形状であっても液状であっても差し支えない。固形分質量は、乾燥前質量に対する乾燥させた後の残存物質量の割合を固形分率とし、固形分率を乾燥前の試料質量に乗じることで算出することができる。固形分を求める際の、乾燥条件としては、例えば、105℃3時間とすることができる。
絶縁ペースト中のバインダー(B)固形分の含有量は、通常2~10質量%、好ましくは4~7質量%であることが、塗装作業性、密着性などの面から好適である。
絶縁ペースト固形分中のバインダー(B)固形分の含有量は、通常5~40質量%、好ましくは10~28質量%であることが、絶縁性、塗装作業性、密着性、分散性などの面から好適である。
絶縁ペースト中の分散樹脂(C)固形分の含有量は、通常0.1~5質量%、好ましくは0.2~2質量%であることが、分散性、塗装作業性、密着性などの面から好適である。
絶縁ペースト固形分中の分散樹脂(C)固形分の含有量は、通常0.05~4質量%、好ましくは0.1~3.0質量%であることが、分散性、塗装作業性、密着性などの面から好適である。
絶縁ペースト中の無機フィラー(A)固形分に対する分散樹脂(C)固形分の比率は、
無機フィラー(A)/分散樹脂(C)の質量比率として、通常100/0.5~100/15、好ましくは100/1.0~100/6であることが、分散性、塗装作業性、密着性などの面から好適である。
絶縁ペーストは、以上に述べた各成分を、例えば、ディスパー、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ペブルミル、LMZミル、DCPパールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、二軸混練機、薄膜旋回型高速ミキサーなどの従来公知の分散機を用いて均一に混合、分散させることにより調製することができる。
絶縁層
前述の絶縁ペーストを集電体に塗布(塗工)することで絶縁層(絶縁膜、塗工膜)が形成される。なお、本発明における絶縁とは、体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上であることをいう。
本発明において、絶縁層(絶縁膜、塗工膜)とは、液状の絶縁ペーストを被塗物(充電体)に塗布して加熱乾燥した固形状の膜のことであり、被塗物から絶縁層(絶縁膜、塗工膜)を剥がして絶縁フィルムを得ることや、板状被塗物(集電体)の両面に塗工して絶縁層(絶縁膜、塗工膜)を得ることもできる。また、本発明の絶縁層(絶縁膜、塗工膜)は非孔質であることが好ましい。
被塗物の集電体は金属であれば特に限定されるものではないが、アルミニウム又はその複合金属であることが好ましく、脱脂や表面処理がされていても良い。
絶縁ペーストの塗布方法としては、一定の膜厚範囲内で塗布できるものであれば特に限定されず、例えば、ローラー塗装、刷毛塗装、霧化塗装、ディッピング塗装、アプリケーター塗装、シャワーコート塗装、ロールコーター塗装、ダイコーター塗装等が挙げられる。
塗布された膜の膜厚としては、乾燥膜厚で1~50μmが好ましく、2~20μmがより好ましい。塗布された膜の乾燥温度としては、60~300℃の温度が好ましく、80~200℃の温度がより好ましい。
加熱乾燥することにより、絶縁ペーストに含まれる溶媒が90%以上消失することが好ましく、95%以上消失することがより好ましく、99%以上消失することが特に好ましい。
また、絶縁層中のナトリウム含有量は、通常15ppm以上、好ましくは35~1600ppm、より好ましくは35~1300ppm、さらに好ましくは70~1000ppm、特に好ましくは100~700ppmに調整することが絶縁ペーストの貯蔵性と絶縁層の付着力の観点から好適である。
なお、絶縁層中のナトリウム含有量は、絶縁ペーストのナトリウム含有量と固形分から算出する事ができる。
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに説明する。
各種樹脂の合成方法、絶縁ペースト、絶縁層及び二次電池の製造方法、評価試験方法などは当該技術分野で従来公知の方法を用いている。
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能である。
また、各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
<アクリル樹脂の製造>
製造例1
攪拌加熱装置と冷却管を備えた反応容器に、N-メチル-2-ピロリドン40部を仕込み、窒素置換後、115℃に保った。この中に、以下に示すモノマー混合物を4時間かけて滴下した。
<モノマー混合物>
スチレン 30部
n-ブチルアクリレート 20部
ラウリルメタクリレート 15部
メチルメタクリレート 35部
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤) 3部
滴下終了後から1時間経過後、この中に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.5部をN-メチル-2-ピロリドン10部に溶かした溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、これをさらに1時間115℃に保持した。次いで固形分50%となるようにN-メチル-2-ピロリドンを加え、固形分50%のアクリル樹脂(C-1)溶液を得た。アクリル樹脂(C-1)は、重量平均分子量(Mw)18,000であった。
製造例2~17
モノマー組成を下記表1のとおりとする以外は、製造例1と同様にしてアクリル樹脂(C-2)~(C-17)溶液を製造した。
尚、下記表1に各樹脂の重量平均分子量(Mw)を記載する。
<絶縁ペーストの製造>
実施例1
容器にベーマイト(A-1)80部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(重量平均分子量90万、変性なし)20部、アクリル樹脂(C-1)溶液4.8部(樹脂固形分2.4)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)250部を入れ、プラネタリーミキサーで十分に分散して、絶縁ペースト(X-1)を得た。なお、この工程は室温20℃程度で行った。
実施例2~27及び比較例1~2
原料組成を下記表2のとおりとする以外は、実施例1と同様にして絶縁ペースト(X-2)~(X-29)を製造した。
尚、下記表2に、得られた絶縁ペーストで測定した、付着力(N/m)、体積平均粒径(μm)、及び粒径分布標準偏差(μm)の値を記載する。付着力(N/m)、体積平均粒径(μm)、及び粒径分布標準偏差(μm)の測定は、本願明細書に記載の方法で行った。
また、後述する分散性、顔料沈降性、仕上がり性、及び折り曲げ性の評価結果を記載する。1つでも不合格の「×」があった場合、その絶縁ペーストは不合格である。
なお、表中のフィラーとバインダーと分散樹脂の配合量は固形分の値である。
(注1)実施例18は、ポリビニルアルコール(ケン化度99%、重量平均分子量20000、固形分100%)を分散樹脂として用いた。
表中のフィラーは下記のとおりである。ベーマイトのナトリウム含有量はベーマイトの固形分を基準として計算した。
ベーマイト(A-1):体積平均粒径(D50)1.3μm、ナトリウム含有量500ppm
ベーマイト(A-2):体積平均粒径(D50)0.5μm、ナトリウム含有量500ppm
ベーマイト(A-3):体積平均粒径(D50)0.8μm、ナトリウム含有量500ppm
ベーマイト(A-4):体積平均粒径(D50)1.9μm、ナトリウム含有量500ppm
アルミナ(A-5):体積平均粒径(D50)1.2μm、ナトリウム含有量200ppm
上記実施例及び比較例で作製した絶縁ペーストの水分含有量はいずれも0.8質量%未満であった。
実施例28~37
原料組成を下記表3のとおりとする以外は、実施例1と同様にして絶縁ペースト(X-30)~(X-39)を製造した。下記表3には実施例4の絶縁ペースト(X-4)もあわせて記載する。
なお、下記表3に、絶縁ペースト中のナトリウム含有量(ppm)と後述の貯蔵性(粘度減少率)の評価結果を記載する。
また、絶縁ペーストのナトリウム含有量を表中に記載する。ナトリウム含有量の測定は本願明細書に記載の方法で行った。絶縁層中のナトリウム含有量は絶縁ペーストのナトリウム含有量と固形分から計算することができる。
また、後述する方法で評価した貯蔵性(粘度減少率)の評価結果を記載する。
なお、表中の無機フィラーとバインダーと分散樹脂の配合量は固形分の値である。
絶縁ペ-スト(X-30)~(X-32)は水酸化ナトリウムをペースト中に添加することでナトリウム含有量を調整した。
表中の無機フィラーは下記のとおりである。ベーマイトのナトリウム含有量はベーマイトの固形分を基準として計算した。
ベーマイト(A-1):体積
平均粒径(D50)1.3μm、ナトリウム含有量500ppm
ベーマイト(A-5):体積平均粒径(D50)1.3μm、ナトリウム含有量1000ppm
ベーマイト(A-6):体積平均粒径(D50)1.3μm、ナトリウム含有量2000ppm
ベーマイト(A-7):体積平均粒径(D50)1.3μm、ナトリウム含有量200ppm
ベーマイト(A-8):体積平均粒径(D50)1.3μm、ナトリウム含有量100ppm
ベーマイト(A-9):体積平均粒径(D50)1.3μm、ナトリウム含有量50ppm
ベーマイト(A-10):体積平均粒径(D50)1.3μm、ナトリウム含有量25ppm
<評価試験>
<分散性>
分散性(分散度)をJIS K5600-2-5に従って粒ゲージ法により評価した。具体的には、粒ゲージ台上にペーストを滴下し、スクレーパーにてゲージ溝に薄く引き延ばし、ゲージ上に観察された最も大きい粒の粒径を測定した。測定を3回行い、平均値を測定値とした。
得られた絶縁ペーストの分散性を下記基準により評価した。
◎:顔料が15μm未満で分散されている。分散性は非常に良好である。
〇:顔料が15μm以上、かつ20μm未満で分散されている。分散性は良好である。
〇△:顔料が20μm以上、かつ25μm未満で分散されているが、目視で凝集物は確認できない。分散性は標準である。
△:顔料が25μm以上で分散されているが、目視で凝集物は確認できない。分散性はやや劣る。
×:50μmの凝集物が確認される。分散性は非常に劣る。
<顔料沈降性>
得られた絶縁ペーストを40℃で60日間貯蔵し、顔料沈降性を確認した。60日間貯蔵した後の状態を下記基準により評価した。
◎:変化なし。
〇:極めて僅かに無機フィラーの沈降が認められるが、ペーストを手攪拌すると直ぐに貯蔵前の状態に戻り、問題なし。
〇△:僅かに無機フィラーの沈降が認められるが、ペーストを強く手動で攪拌していると貯蔵前の状態に戻る。
△:無機フィラーの沈降が認められ、ペーストを手攪拌しても貯蔵前の状態に戻らないが、ペーストをディスパー攪拌すると貯蔵前の状態に戻る。
×:無機フィラーの沈降が著しく認められ、ペーストをディスパー攪拌しても貯蔵前の状態に戻らない。
<仕上がり性>
アルミ素材の集電体上に得られた絶縁ペーストをアプリケーターで塗工した後、80℃で60分間乾燥し、塗工膜(乾燥膜厚15μm)を形成した。各試験板の塗工膜の光沢(ツヤ)、ムラ、平滑性を目視観察した。
◎:若干のツヤ引けがあるが、非常に良好な仕上がり肌である。
〇:ツヤ引けがあるが、ムラや平滑性は良好で実用上問題ないレベルである。
〇△:ツヤ引けが認められるが、ムラや平滑性は良好で実用上問題ないレベルである。
△:ツヤ引けやムラが認められるが、平滑性があるため実用上問題ないレベルである。
×:ツヤ引けやムラが認められ、さらに平滑性が悪く、明らかに問題がある。
<折り曲げ性>
厚さ1mmのアルミ素材の集電体上に得られた絶縁ペーストをアプリケーターで塗工した後、80℃で60分間乾燥し、塗工膜(乾燥膜厚20μm)を形成した。次いで、上記塗板を(塗工膜を外側にして)180度折り曲げ、折り曲げた塗工膜の状態を目視で観察した。下記基準により評価した。
◎:塗工膜の状態に異常はなく、非常に良好である。
○:塗工膜に2mm未満の亀裂があるが、素地は露出していない。
〇△:塗工膜に2mm以上、かつ10mm未満の亀裂があるが、素地は露出していない。
△:塗工膜に10mm以上の亀裂があり、素地がわずかに露出している。
×:亀裂とともに塗工膜が剥がれ、素地が露出している。
<貯蔵性(粘度減少率)>
得られた絶縁ペーストを40℃で30日間貯蔵した。貯蔵前後の粘度を確認し、下記基準により貯蔵性(粘度減少率)を評価した。A~Cが合格、Dが不合格である。
粘度はコーン&プレート型粘度計「Mars2」(商品名、HAAKE社製)で測定したせん断速度1s-1の値である。
粘度減少率(%)=100-(貯蔵後の粘度)/(貯蔵前の粘度)×100
A:粘度減少率は、7%未満である。(貯蔵後の粘度が貯蔵前の粘度以上である場合を含む)
B:貯蔵後の粘度減少率は、7%以上、かつ30%未満である。
C:貯蔵後の粘度減少率は、30%以上、かつ50%未満である。
D:貯蔵後の粘度減少率は、50%以上である。

Claims (16)

  1. 無機フィラー(A)、バインダー(B)、分散樹脂(C)、及び溶媒(D)を含有するリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペーストであって、
    前記分散樹脂(C)が、リン酸基含有アクリル樹脂を含有することを特徴とし、
    アルミ素材の集電体上に前記絶縁ペーストを塗工して得られる乾燥膜厚15μmの絶縁層を、引張速度10cm/分の180度剥離試験により測定した場合に、前記絶縁層の付着力が2.5N/m以上であることを特徴とする
    リチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
  2. 無機フィラー(A)、バインダー(B)、分散樹脂(C)、及び溶媒(D)を含有するリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペーストであって、
    アルミ素材の集電体上に前記絶縁ペーストを塗工して得られる乾燥膜厚15μmの絶縁層を、引張速度10cm/分の180度剥離試験により測定した場合に、前記絶縁層の付着力が2.5N/m以上であることを特徴とし、かつ、
    前記絶縁層が非孔質であることを特徴とする、
    リチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
  3. 無機フィラー(A)、バインダー(B)、分散樹脂(C)、及び溶媒(D)を含有するリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペーストであって、
    アルミ素材の集電体上に前記絶縁ペーストを塗工して得られる乾燥膜厚15μmの絶縁層を、引張速度10cm/分の180度剥離試験により測定した場合に、前記絶縁層の付着力が2.5N/m以上であることを特徴とし、かつ、
    前記絶縁層のナトリウム含有量が15ppm以上である、
    リチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
  4. 無機フィラー(A)の体積平均粒径(D50)が0.5~7μmであり、かつ粒径分布標準偏差が1.4μm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
  5. 分散樹脂(C)が、極性基含有アクリル樹脂を含有することを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
  6. 極性基含有アクリル樹脂の極性基が、リン酸基であることを特徴とする請求項に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
  7. 極性基含有アクリル樹脂が、炭素数4以上の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(c2)を含む原料モノマーの重合体であることを特徴とする請求項5又は6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
  8. 極性基含有アクリル樹脂の重量平均分子量が、1,000~100,000の範囲内であることを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
  9. 請求項1、3~8のいずれか1項に記載の絶縁層が非孔質であることを特徴とするリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
  10. 無機フィラー(A)が、アルミナ、シリカ、TiO、BaTiO、ZrO、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト及びカオリンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
  11. バインダー(B)が、変性又は未変性のポリフッ化ビニリデンであることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
  12. 溶媒(D)が、N-メチル-2-ピロリドンであることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載の絶縁ペーストが実質的に電極用活物質を含まないことを特徴とするリチウムイオン二次電池集電体用絶縁ペースト。
  14. 集電体上の一部又は全部に、請求項1~13のいずれか1項に記載の絶縁ペーストを塗工し、次いで加熱乾燥することで絶縁層を形成するリチウムイオン二次電池集電体用絶縁層の製造方法。
  15. 集電体上の一部又は全部に、請求項1~13のいずれか1項に記載の絶縁ペーストを塗工し、次いで加熱乾燥することで絶縁層を形成するリチウムイオン二次電池集電体用絶縁層の製造方法であって、該絶縁層のナトリウム含有量が15ppm以上である製造方法。
  16. 集電体が、アルミニウム又はその複合金属であることを特徴とする請求項14又は15に記載のリチウムイオン二次電池集電体用絶縁層の製造方法。
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