JP7740902B2 - リング部材 - Google Patents

リング部材

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Description

この発明はリング部材,特に繊維強化樹脂製のリング部材に関する。
自動車用タイヤの内周部分には,自動車用タイヤをホイールのリムに固定するとともに,自動車用タイヤの内層に設けられるカーカスに生ずる張力を支持するために,リング状(輪状,環状)のビードが設けられている。多くのビードは複数本の鋼線を撚り合わせた鋼線製撚り線によって構成されている。
特許文献1は,スチールやアルミニウム等の金属材料またはナイロン等の非金属材料から構成される環状の芯体と,芯体の周りに螺旋状に巻き付けられた複数本の複合コードを備えるビードコアを開示する。複数本の複合コードのそれぞれは,炭素繊維の芯線と芯線の周囲に配置されたガラス繊維からなる複数本の側線とから構成されている。
特許文献1のビードコアを製造する場合,環状の芯体および複数本の複合コードを用意し,芯体の周りに複数本の複合コードのそれぞれを螺旋状に巻き付けることになる。直線状にのびる芯体の周りに複合コードを螺旋状に巻き付けるのに比べて,環状の芯体の周りに複合コードを螺旋状に巻き付けるのにはかなりの手間と時間がかかる。
特許第6369588号公報
この発明は,製造が簡単なリング部材を提供することを目的とする。
この発明はまた,軽量なリング部材を提供することを目的とする。
この発明によるリング部材は,複数回にわたって環状に巻き回された1本の繊維強化樹脂製ケーブルから構成され,上記繊維強化樹脂製ケーブルが,樹脂が含浸(複合化)された複数本の合成繊維の束を撚り合わせた撚り線を備え,複数本の上記撚り線をさらに撚り合わせたものである。
リング部材は環状の形状を有するもので,同様に環状の形態を持つ構造体の一部として用いられる。リング部材が用いられる環状の構造体には,たとえば自動車用タイヤ,エスカレータの手すり(ハンドレール),ベルトコンベア等が含まれる。
リング部材を構成する繊維強化樹脂製ケーブルは,複数本の上記撚り線のすべてを撚り合わせた複撚り構造を備えてもよいし,中心に配置された心線としての撚り線と,上記心線の周囲に撚り合わされた複数本の側線としての撚り線とを含んでもよい。含浸される樹脂は熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂にはエポキシ,ポリエステル,フェノール,熱硬化性ポリイミド等が含まれる。熱可塑性樹脂にはポリアミド,ポリプロピレン,ポリフェニレンサルファイド,熱可塑性ポリウレタンなどが含まれる。
上記撚り線を構成する複数本の合成繊維(木綿や絹などの天然繊維ではなく,化学的に合成された高分子からつくられる繊維)は,炭素繊維,アラミド繊維,ポリエチレン繊維,PBO(polyp-phenylenebenzobisoxazole)繊維,その他の合成繊維を含む。これらの合成繊維は非常に細く,多数本の合成繊維を束ねることで樹脂を含浸させることができる。
この発明によると,リング部材が撚り線構造を備える1本の繊維強化樹脂製ケーブルを複数回にわたって環状に巻き回すことで構成されている(すなわち繊維強化樹脂製ケーブルが撚り線構造であるのに対し,リング部材は撚り線構造ではなく平行線構造である)ので,リング部材の製造が簡単である。典型的には,外周面に環状に溝が形成された円柱状または円筒状部材を用いて,溝内に繊維強化樹脂製ケーブルを複数回にわたって巻き回すことで,1本の繊維強化樹脂製ケーブルからリング部材を製造することができる。繊維強化樹脂製ケーブルを溝内に巻き回す回数に応じてリング部材の直径(太さ)を調整することができ,それが容易であるのも言うまでもない。好ましくは繊維強化樹脂製ケーブルの樹脂が未硬化状態であるときに,繊維強化樹脂製ケーブルは上記円柱状または円筒状部材に巻き回され,巻き回しを終えた後,円柱状または円筒状部材を加熱することで繊維強化樹脂製ケーブルの樹脂を硬化させる。1本の繊維強化樹脂製ケーブルを複数回にわたって巻き回した束がリング状に型付けられ,これがリング部材を構成する。
リング部材と異なり,リング部材を構成する1本の繊維強化樹脂製ケーブルは,撚り線構造を持つので,リング部材に加わる応力が局所的に集中しにくく,分散されやすい。すなわち,局所的な疲労が生じにくく,このため長寿命化が期待される。また,繊維強化樹脂製ケーブルは同径の鋼製のケーブルよりも軽量であり,弾性係数が小さく,疲労強度がある。すわなち,繊維強化樹脂製ケーブルは軽量であり,曲げやすく,繰返しの引張りおよび曲げに対して疲労しにくい。このような繊維強化樹脂製ケーブルから構成されるリング部材も,軽量であり,柔軟性および耐久性にすぐれたものになる。
一実施態様では上記撚り線のそれぞれに合成繊維糸が周方向に巻き回されている。撚り線を構成する複数本の合成繊維をばらけさせることなくひとまとまりに束ねた状態を維持することができる。外的損傷や摩耗からも保護される。
自動車用タイヤの構造を示す断面図である。 ビードの断面を示す。 ビードの斜視図である。 炭素繊維強化樹脂ケーブルの一部破断斜視図である。 ビードの製造工程を概略的に示す。 ビードの製造工程を概略的に示す。
図1は自動車用タイヤ1の構造を示す断面図である。
自動車用タイヤ1は,自動車用タイヤ1の骨格となるカーカス21,カーカス21の両端に位置するビード10,自動車用タイヤ1の最外層に位置するトレッド部27を備える。カーカス21の両端はビード10を包囲するように自動車用タイヤ1の内側から外側に向けて折り返されており,折り返されることで形成される空間に上述したビード10とゴム組成物であるビードフィラー22とが位置する。カーカス21とトレッド部27の間には3つのベルト層24,25,26が設けられている。ベルト層24,25,26によってカーカス21が締め付けられ,これにより自動車用タイヤ1の剛性が高められる。また,ベルト層24,25,26は路面から自動車用タイヤ1に加わる衝撃を緩和し,外傷がカーカス21に直接に達することも防ぐ。
図2を参照して,図2はビード10の断面を,ビード10の周囲のビードフィラー22およびカーカス21の断面とともに示す断面図である。図3はビード10の斜視図である。
ビード10は,自動車用タイヤ1をホイール(図示略)にしっかりと固定する役割を果たすもので,自動車用タイヤ1の外側および内側の2ヵ所の内周端に沿ってその全長(全周)にわたって設けられる。すなわち自動車用タイヤ1は2つ(一対)のビード10を備え,2つのビード10はいずれも,典型的には同一の直径の環状外形を持つ。
ビード10は,1本の炭素繊維強化樹脂製ケーブル11を環状に複数回巻き回すことによって形成される。図5および図6を参照して,断面が半円形の溝33が外周面に環状に形成されたロール31を用意し,ボビン等から繰り出された炭素繊維強化樹脂製ケーブル11を溝33内に供給する。回転軸32を中心にしてロール31を回転させることによって,溝33内に1本の連続する炭素繊維強化樹脂製ケーブル11が複数回にわたって巻き回される。所定回数の巻き回しを終えた後,炭素繊維強化樹脂製ケーブル11は切断される。後述するように炭素繊維強化樹脂製ケーブル11は熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含み,複数回の炭素繊維強化樹脂製ケーブル11の巻き回しを終えたロール31を加熱することによって,ロール31に巻き回された炭素繊維強化樹脂製ケーブル11が熱セットされることでビード10となる。より詳細には,熱硬化性樹脂を用いる場合にはキュアリングが行われ,キュアリングにより形状が固定される。熱可塑性樹脂を用いる場合には熱セット効果により形状が固定される。図2には7回巻き回された炭素繊維強化樹脂製ケーブル11によって構成されるビード10を例示するが,巻き数は任意に調整することができる。巻き数に応じてビード10の断面直径(太さ)を調整することができる。図5には炭素繊維強化樹脂製ケーブル11が7回巻き回されることによって構成されるビード10(4本)を製造する様子が,図6には炭素繊維強化樹脂製ケーブル11が3回巻き回されることによって構成されるビード10A(4本)を製造する様子が,それぞれ示されている。ビード10,10Aの断面は典型的には概略円形に形成されるが,多角形の断面を持つように形成することも可能である。
炭素繊維強化樹脂製ケーブル11はロール31の溝33内において下層(内層)から上層(外層)にかけて順番に巻き回される。隣り合う炭素繊維強化樹脂製ケーブル11同士は互いに接するようにして巻き回され,かつ上層(2段目,3段目)の炭素繊維強化樹脂製ケーブル11は,下層(1段目,2段目)にすでに巻き回されている複数の炭素繊維強化樹脂製ケーブル11の間の窪み(境界)に入るように巻き回されるように,炭素繊維強化樹脂製ケーブル11の繰り出しの位置が調整される。また,炭素繊維強化樹脂製ケーブル11を溝33内に巻き回しているときに炭素繊維強化樹脂製ケーブル11には張力が加えられ,これによって炭素繊維強化樹脂製ケーブル11は緊密にかつ緩みなく巻き回される。
このようにビード10,10Aは一本の炭素繊維強化樹脂製ケーブル11を溝33内に複数回にわたって巻き回し,ビード10,10Aの下層(内層)から上層(外層)に向けて炭素繊維強化樹脂製ケーブル11が積み上げられることで形成されるので,ビード10,10Aを構成する炭素繊維強化樹脂製ケーブル11は撚り合わされることなく互いに平行にかつ環状にのびるものとなる。
図4を参照して,図4はビード10,10Aを構成する炭素繊維強化樹脂製ケーブル11の一部破断拡大斜視図である。
炭素繊維強化樹脂製ケーブル11は,炭素繊維および熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂(以下,熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を区別せずに単に「樹脂」と言う)の複合材を材料とする,断面が円形の複数本の撚り線13をさらに撚り合わせることで構成されている。撚り線13は多数本の連続する(長尺の)炭素繊維の束を撚り合わせ,多数本の炭素繊維に樹脂を含侵させて断面円形に形成したものである。図4および図2には,1×7構造(1本の撚り線13を中心にして(心線),その周囲に6本の撚り線13(側線)を撚り合わせた構造)を持つ炭素繊維強化樹脂製ケーブル11が示されている。撚り線13を構成する多数本の炭素繊維の撚り方向と,炭素繊維強化樹脂製ケーブル11を構成する撚り線13(側線)の撚り方向は,同じであっても異なっていてもよい。炭素繊維強化樹脂製ケーブル11の構造および直径は任意に設計することができる。ビード10,10Aが1本の連続する炭素繊維強化樹脂製ケーブル11から構成されているのに対し,炭素繊維強化樹脂製ケーブル11は複数本,ここでは7本の撚り線13から構成されている。
炭素繊維強化樹脂製ケーブル11を構成する撚り線13の外周面にはポリエステル繊維などの細い合成繊維糸14が周方向に巻き付けられており,合成繊維糸14によって撚り線13は外的損傷や摩耗から保護される。
炭素繊維強化樹脂製ケーブル11は同径の鋼製ケーブルに比べて軽量である。たとえば,上述した1×7構造の直径2.5mmの炭素繊維強化樹脂製ケーブル11は,1mあたりの重量が5.62g程度であり,7.38kN程度の引張強力を発揮する。同一構造,同一直径および同一長の鋼製ケーブルは,引張強力は同程度,その重量は4倍以上になる。炭素繊維強化樹脂製ケーブル11から構成されるビード10,10Aを用いることによって,従来と同等の性能を維持しつつ,重量の軽い自動車用タイヤ1を提供することができる。
また,ビード10,10Aを構成する炭素繊維強化樹脂製ケーブル11が撚り線構造を持つので,ビード10に加わる応力が局所的に集中しにくく,分散されやすい。すなわち,局所的な疲労が生じにくく,このため長寿命化が期待される。また,炭素繊維強化樹脂製ケーブル11は同径の鋼製のケーブルよりも軽量であり,弾性係数が小さく,疲労強度がある。すわなち,炭素繊維強化樹脂製ケーブル11は軽量であり,曲げやすく,繰返しの引張りおよび曲げに対して疲労しにくい。このような炭素繊維強化樹脂製ケーブル11から構成されるビード10,10Aも,軽量であり,柔軟性および耐久性にすぐれたものになる。これは自動車用タイヤ1の長寿命化につながる。金属のように錆が生じることもない。
複数本の炭素繊維強化樹脂製ケーブル11を用意し,複数本の炭素繊維強化樹脂製ケーブル11を撚り合わせることによってビードを作成することも可能である。しかしながら,典型的には,環状に形成した1本の炭素繊維強化樹脂製ケーブル11の周囲に複数本の炭素繊維強化樹脂製ケーブル11をそれぞれ撚り合わせなければならず(巻き付けなければならず),その作成には時間を要する。上述した実施例のビード10,10Aはロールに巻き回すことだけで製造することができ,格段に製造しやすい。
上述した実施例では,自動車用タイヤ1を構成するビード10,10Aを説明したが,ビード10,10Aと同様のリング部材はエスカレータの手すり(ハンドレール),ベルトコンベア,その他の環状の構造体の補強部材等として用いることもできる。
上述した実施例では,炭素繊維強化樹脂製ケーブル11は,中心に配置される心線としての撚り線13と,その周囲に撚り合わされた複数本(6本)の側線としての撚り線13から構成されているが(図4),心線を持たずに,複数本の撚り線13のすべてを撚り合わせた複撚り構造によって炭素繊維強化樹脂製ケーブルを構成してもよい。
1 自動車用タイヤ
10,10A ビード
11 炭素繊維強化樹脂製ケーブル
13 撚り線
14 合成繊維糸
21 カーカス
22 ビードフィラー
31 ロール
33 溝

Claims (2)

  1. 複数回にわたって環状に巻き回された1本の繊維強化樹脂製ケーブルから構成され,
    上記繊維強化樹脂製ケーブルが,樹脂が含浸された複数本の合成繊維の束を撚り合わせた撚り線を備え,複数本の上記撚り線をさらに撚り合わせたものであ
    上記繊維強化樹脂製ケーブルを構成する複数本の上記撚り線が,中心に配置された心線としての撚り線と,上記心線の周囲に撚り合わされた複数本の側線としての撚り線とを含む,
    リング部材。
  2. 上記複数本の撚り線のそれぞれに合成繊維糸が周方向に巻き回されている,
    請求項1に記載のリング部材。
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