JP7743010B2 - ハロカルボニル化合物の製造方法 - Google Patents

ハロカルボニル化合物の製造方法

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Description

本発明は、ハロカルボニル化合物の製造方法に関する。
ハロカルボニル化合物は幅広い分野で種々の用途で利用されており、例えばハロケトン化合物は、様々な医薬品及び医薬品候補化合物等のビルディングブロックとして用いられている。
近年、このハロカルボニル化合物を製造するための方法の検討が広く行われており、その中の一つにC(sp)-C(sp)結合を有するシクロアルカノール等のヒドロキシ基含有環状化合物の位置選択的酸化開裂反応を利用した製造方法がある。この位置選択的酸化開裂反応は、分子構造の多様な変換を可能とすることから、有機合成化学において非常に重要な反応である。
従来のヒドロキシ基含有環状化合物の位置選択的酸化開裂反応では、分子状臭素や可視光を用いる方法が利用されてきた。例えば、非特許文献1には、マンガン触媒を用いてヒドロキシ基含有環状化合物を電気化学的分解塩素化する技術が開示されており、非特許文献2には、ヒドロキシ基含有環状化合物とN-SCF結合を有する化合物とを反応させることでヒドロキシ基含有環状化合物の開裂反応を行う技術が開示されている。
Benjamin D. W. Allen, et al., Organic Letters, 2019, 21, 92141-9246 Tengfei Ji, et al., Organic Letters, 2020, 22, 2579-2583
上述の非特許文献1及び2におけるヒドロキシ基含有環状化合物の開環反応では、大過剰量のハロゲンカチオン源や、高価な酸化剤、残留が懸念される金属塩を必要とするという問題があり、改善の余地があった。
そこで、本発明は、ハロゲンカチオン源の使用量を抑制しつつ、高価な酸化剤や残留が懸念される金属塩を必要とせずにハロカルボニル化合物を収率よく製造する方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、特定の物質を用いることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 下記式(1)で表される環状化合物を、ハロゲン化塩及びアンモニウム塩を含む溶液中で電解反応させて下記式(1’)で表されるハロカルボニル化合物を得る反応工程を有する、ハロカルボニル化合物の製造方法。
(上記式(1)で表される環状化合物は、ヒドロキシ基及びRを有する炭素と、該炭素と結合する、置換基を有していてもよい炭素数2~12の2価の炭化水素基とから構成され、かつ、該炭化水素基を構成する炭素が窒素、酸素、又は硫黄で置換されていてもよく、Rと前記置換基を有していてもよい炭素数2~12の2価の炭化水素基とで結合して環を形成してもよい環Aを有する化合物であり;上記式(1)及び(1’)において、Rは、水素、又は1価の有機基を表し;Rは、置換基を有していてもよい炭素数2~12の2価の炭化水素基を表し、かつ、該炭化水素基を構成する炭素が窒素、酸素、又は硫黄で置換されていてもよく;Zは、ハロゲン基を表す。)
[2] 前記溶液が、さらに塩基性化合物を含む、[1]に記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
[3] 前記式(1)で表される環状化合物が、下記式(2)~(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物であり、該環状化合物を電解反応させて得られるハロカルボニル化合物が、下記式(2)~(5)で表される化合物に対してそれぞれ、下記式(2’)~(5’)で表される化合物である、[1]または[2]に記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
(上記式(2)~(5)及び(2’)~(5’)において、Rは、前記式(1)におけるRと同義であり;R~Rは、独立して、水素、ハロゲン基、又は1価の有機基を表し;Xは、単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1~9の2価の炭化水素基
を表し、該炭化水素基を構成する炭素が窒素、酸素、又は硫黄で置換されていてもよく;Wは、置換基を有していてもよい炭素数1~9の3価の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成する炭素が窒素、酸素、又は硫黄で置換されていてもよく;Yは、置換基を有していてもよい炭素数2~9の4価の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成する炭素が窒素、酸素、又は硫黄に置換されていてもよく、Zは、前記式(1’)におけるZと同義であり;各式において、R~R、X、及びYは、互いに結合して環を形成してもよく;式(2)~(5)及び(2’)~(5’)で表されるいずれの化合物も、隣接する不飽和結合を有さない。)
[4] 前記式(2)~(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物が、下記式(A-1)~(A-9)で表される構造を有し、かつ、該構造における環を構成する炭素又は窒素が水素又は1価の有機基を置換基に有する化合物である、[3]に記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
(上記式(A-1)~(A-9)において、Rは、独立して、前記式(1)におけるRと同義である。)
[5] 前記式(A-1)~(A-9)で表される構造を有する化合物において、環を構成する炭素又は窒素が置換基として有し得る1価の有機基が炭素数1~12のアルキル基である、[4]に記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
[6] 前記溶液が、少なくとも有機溶媒又は水を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
[7] 前記溶液が、有機溶媒及び水を含む、[6]に記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
[8] 前記ハロゲン化塩が、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、又はヨウ化マグネシウムである、[1]~[7]のいずれかに記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
[9] 前記塩基性物質が、水酸化物又は炭酸塩である、[1]~[8]のいずれかに記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
[10] 前記反応工程において、光を照射して電解反応を行う、[1]~[9]のいずれかに記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
本発明によれば、ハロゲンカチオン源の使用量を抑制しつつ、高価な酸化剤や残留が懸念される金属塩を必要とせずに、ハロカルボニル化合物を収率よく製造する方法を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これらの説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
また、本明細書において、「複数」とは、「2以上」を意味する。
また、本明細書において、2つ以上の対象を併せて説明する際に用いる「独立して」とは、それらの2つ以上の対象が同じであっても異なっていてもよいという意味で使用される。
本発明の一実施形態であるハロカルボニル化合物の製造方法(以下、単に「ハロカルボニル化合物の製造方法」とも称する。)は、下記式(1)で表される環状化合物(以下、「基質」とも称する。)を、ハロゲン化塩及びアンモニウム塩を含む溶液中で電解反応させて下記式(1’)で表されるハロカルボニル化合物を得る反応工程を有する、ハロカルボニル化合物の製造方法である。
上記式(1)で表される環状化合物は、ヒドロキシ基及びRを有する炭素と、該炭素と結合する、置換基を有していてもよい炭素数2~12の2価の炭化水素基とから構成され、かつ、該炭化水素基を構成する炭素が窒素、酸素、又は硫黄で置換されていてもよく、Rと前記置換基を有していてもよい炭素数2~12の2価の炭化水素基とで結合して環を形成してもよい環Aを有する化合物であり;上記式(1)及び(1’)において、Rは、水素、又は1価の有機基を表し;Rは、置換基を有していてもよい炭素数2~12の2価の炭化水素基を表し、かつ、該炭化水素基を構成する炭素が窒素、酸素、又は硫黄で置換されていてもよく;Zは、ハロゲン基を表す。ここでの2価の炭化水素基は、直鎖であってもよく、分岐鎖を有していてもよく、環状構造を有していてもよい。
本明細書において、1価の有機基とは、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素1~20のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、-C≡N、-NR、-C(=O)OH、-C(=O)OR’、-C(=O)R’、-SH、-SiR、-BH、-SeH、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素環基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基等であり、R’、R、R、Rは、独立して、水素、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。
また、本明細書において、「置換基を有していてもよい」の表現における置換基とは、ハロゲン基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素1~20のアルキニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、-C≡N、-NH、-C(=O)OH、-C(=O)OR’、-C(=O)R’、-SH、-SiR、-BH、-SeH、1価の脂肪族炭化水素環基、1価の芳香族炭化水素環基、1価の芳香族複素
環基等であり、R’、R、R、Rは、独立して、水素、又は炭素数1~20のアルキル基を表す。
<環状化合物及びハロカルボニル化合物>
上記式(1)で表される環状化合物は上記の構造で表されていれば特段制限されず、該環状化合物をハロゲン化塩及びアンモニウム塩の存在下で電解反応させることで、以下の反応に示すように、位置選択的酸化開裂反応が生じ上記式(1’)で表されるハロカルボニル化合物が生成される。
式(1)で表される環状化合物は、ヒドロキシ基及びRを有する炭素と、該炭素と結合する、置換基を有していてもよい炭素数2~12の2価の炭化水素基とから構成され、かつ、該炭化水素基を構成する炭素が窒素、酸素、又は硫黄で置換されていてもよく、Rと前記置換基を有していてもよい炭素数2~12の2価の炭化水素基とで結合して環を形成してもよい環Aを有する化合物である。なお、Rと前記置換基を有していてもよい炭素数2~12の2価の炭化水素基とが結合した場合における環Aを有する化合物として、例えば、1-アダマンタノール等が挙げられる。
式(1)及び(1’)におけるRは、水素、又は1価の有機基を表し、具体的には、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基等のアルキル基等であってよく、Rへの意図しない臭素化による副反応を防ぐ観点から、好ましくは、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基等の直鎖アルキル基であってよい。
式(1’)におけるRは、置換基を有していてもよい炭素数2~12の2価の炭化水素基を表し、かつ、該炭化水素基を構成する炭素が窒素、酸素、又は硫黄で置換されていてもよい。
式(1’)におけるZは、ハロゲン化塩の種類に応じて決定され、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、又はヨウ素(I)のいずれであってもよいが、後述するハロゲン化塩の好ましい態様から、Cl、Br、Iであることが好ましく、Brであることが特に好ましい。
上記式(1)で表される環状化合物は、その入手の容易さや工業的な有用性から、下記式(2)~(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物であり、該環状化合物を電解反応させて得られるハロカルボニル化合物が、下記式(2)~(5)で表される化合物に対してそれぞれ、下記式(2’)~(5’)で表される化合物であることが好ましい。具体的には、下記式(2)~(5)で表される化合物をハロゲン化塩及びアンモニウム塩の存在下で電解反応させることで、位置選択的酸化開裂反応が生じ、それぞれ下記式(2’)~(5’)で表されるハロカルボニル化合物が生成される。
上記式(2)~(5)及び(2’)~(5’)において、Rは、好適な条件も含め、前記式(1)におけるRと同義である。
上記式(2)~(5)及び(2’)~(5’)において、R~Rは、独立して、水素、又は1価の有機基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基等のアルキル基、炭素数3~12の環状アルキル基、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基、カルボニル基、ニトロ基、スルホ基、またはホスホニウム基等であってよく、R~Rへの意図しない臭素化による副反応を防ぐ観点から、好ましくは、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、またはn-ブチル基等の直鎖アルキルであってよい。
上記式(2)及び(2’)において、Xは、単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1~9の2価の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成する炭素が窒素、酸素、又は硫黄で置換されていてもよい。
上記式(2)~(3)及び(2’)~(3’)において、Wは、置換基を有していてもよい炭素数1~9の3価の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成する炭素が窒素、酸素、又は硫黄で置換されていてもよく;
上記式(5)及び(5’)において、Yは、置換基を有していてもよい炭素数2~9の4価の炭化水素基を表し、該炭化水素基を構成する炭素が窒素、酸素、又は硫黄で置換されていてもよい。
(2’)~(5’)において、Zは、好適な条件も含め、前記式(1’)におけるZと同義である。
また、各式において、R~R、X、及びYは、互いに結合して環を形成してもよい。
また、式(2)~(5)及び(2’)~(5’)で表されるいずれの化合物も、隣接する不飽和結合を有さない。
また、X、Y、及びZにおける炭化水素基は、直鎖であってもよく、分岐鎖を有していてもよく、環状構造を有していてもよい。
上記式(2)~(5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物は、下記式(A-1)~(A-9)で表される構造を有し、かつ、該構造における環(式中で表される環)を構成する炭素又は窒素が水素又は1価の有機基を置換基に有する化合物であることが好ましい。
上記式(A-1)~(A-9)において、Rは、好適な条件も含め、上記式(1)におけるRと同義である。
また、上記式(A-1)~(A-7)で表される構造を有する化合物において、式中で表される環を構成する炭素又は窒素が置換基として有し得る1価の有機基は、該有機基への副反応による純度の低下を防ぐ観点から、炭素数1~12のアルキル基であることが好ましい。
上記式(A-1)~(A-9)で表される構造を有する化合物の群は、その入手の容易さ、工業的な有用性の観点から、(A-1)、(A-2)、(A-6)、又は(A-7)で表される化合物の群であることが好ましく、具体的には、下記式(B-1)~(B-5)で表される化合物群であることが好ましい。
上記式(B-1)~(B-5)において、式中で表される環を構成する炭素は炭素数1~12のアルキル基で置換されていてもよく、Rは、炭素数1から12のアルキル基、フェニル基、トリハロゲノメチル基、シアノ基から選ばれる基である。ただし、上記Rにおけるフェニル基のベンゼン環の2位から5位の水素原子は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、又は2-ナフチル基で置換されていてもよい。より具体的には、例えば、Rがフェニル基であり、フェニル基のベンゼン環の2位から5位の水素原子のうちの1つが、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基で置換されていてもよい化合物とすることができる。
上記式(1)で表される環状化合物の製造方法は、特段制限されず、公知の方法を利用して製造することができ、また市販品を用いることもできる。具体的な製造方法としては、例えば、シクロアルカノンをテトラヒドロフラン等の溶媒に溶解させた後、ハロゲン化アリール金属化合物を加え、さらに塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を取り出して精製することにより得る方法が挙げられる。
<反応工程>
本実施形態に係るハロカルボニル化合物の製造方法は、上述の式(1)で表される環状化合物を、ハロゲン化塩及びアンモニウム塩を含む溶液中で電解反応(以下、単に「反応」とも称する。)させて上述の式(1’)で表されるハロカルボニル化合物を得る反応工程を有する。
反応工程における反応の態様は特段制限されないが、以下の条件で行うことができる。
電解反応を行う方法は、特段制限されず、公知の方法を適用することができ、例えば、反応容器として無隔膜セルを用い、上述の式(1)で表される環状化合物、ハロゲン化塩、及びアンモニウム塩を含む溶液を該無隔膜セルに入れ、さらに、一対の電極を溶液中に浸し、該電極間に電流を流すことにより行うことができる。
反応容器のサイズは特段制限されず、例えば容積で、0.1cm以上、10,000cm以下としてもよく、また、0.5cm以上、1,000cm以下としてもよく、また、その材料も特段制限されず公知の材料を適用できる。
電極の種類は特段制限されず、例えば、陽極(カソード)は、金、白金、又はグラファ
イト等を用いることができ、陰極(アノード)は、金、白金、亜鉛、鉄、ニッケル、モリブデン、又は銅等を用いることができ、具体的な組み合わせとしては、[カソード:アノード]で、[亜鉛:白金]、[金:白金]、[鉄:白金]、[ニッケル:白金]、[銅:白金]、[白金:白金]、[グラファイト:白金]、[白金:グラファイト]、又は[グラファイト:グラファイト]等が挙げられ、特に、収率向上の観点から、[亜鉛:白金]、[白金:白金]、又は[グラファイト:白金]の組み合わせが好ましく、[亜鉛:白金]又は[白金:白金]の組み合わせがより好ましく、[亜鉛:白金]の組み合わせがさらに好ましい。
電極の面積は特段制限されず、用いる反応容器、反応させる溶媒の体積に応じて適宜選択すればよい。例を示せば0.1cm以上、5,000cm以下であり、また1cm以上、1,000cm以下としてもよく、さらに、1cm以上200cm以下としてもよい。
一対の電極間に流す電流は特に制限されず、例えば単位面積当たりの電流密度で示せば、0.1mA/cm以上、1,000mA/cm以下としてもよく、1mA/cm以上、500mA/cm以下としてもよい。
電解反応における総電荷量は、特段制限されず、例えば本実施形態の環状化合物1モルに対し、96,500クーロン以上、500,000クーロン以下としてもよく、110,000クーロン以上、400,000クーロン以下としてもよく、193,000クーロン以上、400,000クーロン以下としてもよい。
反応の温度は特段制限されないが、基質の溶媒への溶解性が維持され、かつ溶媒の揮発が抑制されるという観点から、通常-20℃以上であり、-10℃以上であることが好ましく、-5℃以上であることがより好ましく、-1℃以上であることがさらに好ましく、0℃以上であることが特に好ましく、また、通常100℃以下であり、80℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることがさらに好ましく、20℃以下であることが特に好ましい。
反応の時間は特段制限されないが、反応溶液の量に応じて適宜設定することができるが、通常5分以上であり、10分以上であることが好ましく、20分以上であることがより好ましく、40分以上であることがさらに好ましく、60分以上であることが特に好ましく、また、通常1,000分以下であり、600分以下であることが好ましく、300分以下であることがより好ましく、180分以下であることがさらに好ましく、120分以下であることが特に好ましい。
反応は、目的物質の収率向上の観点から、光を照射して行うことが好ましく、光の種類や強度は特段制限されず、光の種類としては、例えばマイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線等を用いることができるが、反応効率の向上の観点から、可視光線または紫外線を用いることが好ましく、また、光の強度(放射強度、単位:Jm-2-1)としては、例えば0.1Jm-2-1以上、500Jm-2-1W以下としてもよく、1Jm-2-1W以上、100Jm-2-1W以下としてもよい。ここで参考のための値を示せば、蛍光灯照明の部屋の放射強度は、2.2Jm-2-1、真昼の直射日光下では440Jm-2-1である。
溶液は、上述の式(1)で表される環状化合物、ハロゲン化塩、及びアンモニウム塩を少なくとも含み、さらに溶媒を含んでいれば特段制限されず、これら以外の成分、特に反応促進の観点から塩基性化合物を含んでいてもよい。
溶液中の上述の式(1)で表される環状化合物の含有量は、特段制限されないが、電極表面での反応を効率よく反応を進める観点から、通常0.1mol/L重量%以上であり、1mol/L以上であることが好ましく、3mol/L以上であることがより好ましく、5mol/L以上であることがさらに好ましく、10mol/L以上であることが特に好ましく、また、通常10mol/L以下であり、8mol/L以下であることが好ましく、6mol/L以下であることがより好ましく、5mol/L以下であることがさらに
好ましく、3mol/L以下であることが特に好ましい。
溶液に含まれる上述の式(1)で表される環状化合物は、1種類に限定されず、2種類以上を含んでいてもよい。
溶液に含まれるハロゲン化塩は、ハロゲンを有する塩であれば特段制限されず、無機塩であってよく、また、有機塩であってもよいが、反応効率を向上させる観点から、無機塩であることが好ましい。
ハロゲン化塩に用いられるハロゲンの種類は特段制限されず、F、Cl、Br、又はIのいずれであってもよいが、反応効率を向上させる観点から、Cl、Br、Iであることが好ましく、Brであることが特に好ましい。
無機塩として、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又は亜鉛等のハロゲン化塩が挙げられ、反応効率の向上の観点から、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムのハロゲン化塩が好ましく、特にマグネシウム塩が好ましく、具体的には臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、又はヨウ化マグネシウムが好ましい。コスト低下や安全性の観点から、該カチオンとなる金属元素として、重金属は含まないことが好ましい。重金属としては、Fe、Pb、Au、Pt、Ag、Cu、Cr、Cd、Hg、Zn、As、Mn、Co、Ni、Mo、W、Sn、Bi、U、Pu等が挙げられ、溶液中の重金属の含有量は、1×10-3mol/L以下であることが好ましく、1×10-6mol/L以下であることがより好ましく、1×10-7mol/L以下であることがさらに好ましく、実質的に0mol/L(検出限界以下)であることが好ましい。
有機塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のアルキルの炭素数が1~10のテトラアルキルアンモニウムと、F、Cl、Br、又はIとの塩が挙げられる。具体的な例を示せば、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム等を挙げることができる。
溶液中のハロゲン化塩の含有量は、特段制限されないが、効率よく反応を進める観点から、通常0.001mol/L以上であり、0.01mol/L以上であることが好ましく、0.1mol/L以上であることがより好ましく、0.4mol/L以上であることがさらに好ましく、0.8mol/L以上であることが特に好ましく、また、通常10mol/L以下であり、6mol/L以下であることが好ましく、4mol/L以下であることがより好ましく、3mol/L以下であることがさらに好ましく、2mol/L以下であることが特に好ましい。
溶液において、上述の式(1)で表される環状化合物に対するハロゲン化塩のモル比率は、特段制限されないが、反応効率の向上の観点から、通常0.2以上であり、0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましく、また、通常0.8以上であり、0.9以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。
溶液に含まれるハロゲン化塩は、1種類に限定されず、2種類以上を含んでいてもよい。
溶液は、さらに相関移動触媒としてアンモニウム塩を含む。相関移動触媒とは、水に不溶の有機化合物と有機溶媒に不溶の試薬を反応させるために使用される物質である。本明細書において、アンモニウム塩は、上記のハロゲン化塩を含まない。
アンモニウム塩の種類は、特段制限されないが、反応効率の向上の観点から、テトラアルキルアンモニウムと疎水性陰イオンの塩を用いることが好ましい。該疎水性陰イオンとしては、酢酸イオン、乳酸イオンなどの有機酸イオン、テトラフルオロホウ酸、テトラフェニルホウ酸などのホウ酸イオン等があるが、アンモニウムと塩を形成したときの相関異
動触媒としての性能の観点から、有機酸イオン、ホウ酸イオンが用いられるのが一般的である。アンモニウム塩は、具体的には、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラブチルアンモニウム、等が挙げられるが、反応効率の向上の観点から、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウムであることが好ましい。
相関移動触媒に用いられるアンモニウム塩としては、テトラアルキルアンモニウムと疎水性陰イオンの塩が一般的である。疎水性ンイオンとしては、水酸化物イオン、酢酸イオン、乳酸イオンなどの有機酸イオン、テトラフルオロホウ酸、テトラフェニルホウ酸などのホウ酸イオン等があるが、アンモニウムと塩を形成したときの相関異動触媒としての性能の観点から、有機酸イオン、ホウ酸イオンが用いられるのが一般的である。アンモニウム塩は、具体的には、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラメチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラブチルアンモニウム、等が挙げられるが、反応効率の向上の観点から、テトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウムであることが好ましい。
また、溶液は、上記のアンモニウム塩以外の相関移動触媒を含んでいてもよく、例えば、ホスホニウム塩等が挙げられる。
溶液中の相関移動触媒(特にアンモニウム塩)の含有量は、特段制限されないが、効率よく反応を進める観点から、通常0.01重量%以上であり、0.05重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましく、0.2重量%以上であることがさらに好ましく、0.5重量%以上であることが特に好ましく、また、通常20重量%以下であり、15重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、7重量%以下であることがさらに好ましく、5重量%以下であることが特に好ましい。
溶液に含まれる相関移動触媒は、1種類に限定されず、2種類以上を含んでいてもよい。
溶液は、塩基性化合物を含んでいてもよく、その種類は特段制限されず、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩等が挙げられるが、反応効率の向上の観点から、水酸化物又は炭酸塩であることが好ましい。塩基性化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが好ましい。なお、本明細書における塩基性化合物は、上記のハロゲン化塩及びアンモニウム塩を含まない。
溶液中の塩基性化合物の含有量は、特段制限されないが、効率よく反応を進める観点から、通常0.01mol/L以上であり、0.05mol/L以上であることが好ましく、0.1mol/L以上であることがより好ましく、0.15mol/L以上であることがさらに好ましく、0.2mol/L以上であることが特に好ましく、また、通常3.5mol/L以下であり、3mol/L以下であることが好ましく、2.5mol/L以下であることがより好ましく、2mol/L以下であることがさらに好ましく、1.5mol/L以下であることが特に好ましい。
溶液において、上述の式(1)で表される環状化合物に対する塩基性化合物のモル比率は、特段制限されないが、反応効率の向上の観点から、通常0.01以上であり、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.2以上であることがさらに好ましく、また、通常0.5以上であり、0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。
溶液に含まれる塩基性化合物は、1種類に限定されず、2種類以上を含んでいてもよい。
溶液に含まれる溶媒の種類は、特段制限されず、有機溶媒であっても、無機溶媒であってもよく、また、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒、ニトリル系溶媒、又は塩素系溶媒等が挙げられるが、反応効率の向上の観点から、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、特にエステル系溶媒であることが好ましい。有機溶媒の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等が挙げられ、反応効率の観点から、酢酸メチル、酢酸エチルが好ましい。
無機溶媒としては、例えば、水、硝酸、アンモニア、イミダゾリウムカチオンとPFアニオンとの塩等のイオン液体、過酸化水素、二硫化炭素、又は四塩化炭素等が挙げられるが、溶液中での化合物の安定性や反応効率の向上の観点から、水、アンモニウム塩が好ましく、特に水が好ましい。
溶媒を2種以上で組み合わせて用いる場合、反応効率の向上の観点から、溶媒は、有機溶媒及び水を含むことが好ましい。
溶液中の溶媒の含有量は、特段制限されないが、溶液に導電性を与えて効率よく反応を進める観点から、通常5重量%以上であり、10重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、40重量%以上であることがさらに好ましく、50重量%以上であることが特に好ましく、また、通常99.9重量%以下であり、99.5重量%以下であることが好ましく、99.0重量%以下であることがより好ましく、98.5重量%以下であることがさらに好ましく、98重量%以下であることが特に好ましい。
また、溶液中の有機溶媒の含有量は、特段制限されないが、効率よく反応を進める観点から、通常1体積%以上であり、4体積%以上であることが好ましく、6体積%以上であることがより好ましく、8体積%以上であることがさらに好ましく、10体積%以上であることが特に好ましく、また、通常99重量%以下であり、95体積%以下であることが好ましく、90体積%以下であることがより好ましく、85体積%以下であることがさらに好ましく、80体積%以下であることが特に好ましい。
また、溶液中の水の含有量は、特段制限されないが、効率よく反応を進める観点から、通常1体積%以上であり、5体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましく、15体積%以上であることがさらに好ましく、20体積%以上であることが特に好ましく、また、通常99体積%以下であり、97体積%以下であることが好ましく、95体積%以下であることがより好ましく、92体積%以下であることがさらに好ましく、90体積%以下であることが特に好ましい。
溶液は、上記の各成分以外の成分(その他の成分)を有していてもよく、例えば、pH調整剤が挙げられ、これらは使用する原料の種類や反応条件に応じて適宜使用することができる。
pH調整剤としては、例えば、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、乳酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミン等が挙げられる。なお、ここでいうpH調整剤は、上述したハロゲン化塩、アンモニウム塩、及び塩基性化合物を除く。前記の例の中では、反応によりハロゲン化されることのない、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム等が用いられるのが一般的である。
溶液に含まれる成分は、例えばH-NMRにより構造解析することができ、さらには、同様の方法により反応の目的物質の収率も評価することができる。
25℃における溶液のpHは、特段制限されないが、反応効率の向上の観点からは、通常6以上であり、7以上であることが好ましく、7.5以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましく、pHの上限は特段の設定を要しないが、通常14以下である。pHは、ハロゲン化塩やアンモニウム塩、塩基性化合物、pH調整剤等の種類や量によって調整することができる。
25℃における溶液のpHは、ガラス電極を用いた一般的なpH測定器で測定することができる。
<その他の工程>
本実施形態に係るハロカルボニル化合物の製造方法は、上述の反応工程以外の工程を有していてもよく、以下に一例を示す。
(環状化合物合成工程)
本実施形態に係るハロカルボニル化合物の製造方法は、上述の反応工程の前に、環状化合物の合成工程を設けてもよい。環状化合物を合成する方法は特段制限されず、公知の方法により行うことができ、例えば上述した環状化合物の製造方法に示す方法により行うことができる。
(溶液作製工程)
本実施形態に係るハロカルボニル化合物の製造方法は、上述の反応工程の前に、溶液を作製する溶液作製工程を有していてもよい。溶液を作製する方法は特段制限されず、例えば、上述した用いられ得る溶媒以外の原料を秤量し、それらを溶媒に入れて攪拌しながら溶解させ、溶液を得る方法が挙げられる。
また、上記の反応工程により得られたハロカルボニル化合物は、それを誘導体として用いる場合には、さらに別の反応に供してもよい。
<ハロカルボニル化合物の利用>
上述の製造方法により得られるハロカルボニル化合物は、様々な分野で利用することができ、その用途は限定されず、該化合物自体で利用されてもよく、誘導体として他の化合物の生成に利用されてもよい。例えば、ハロカルボニル化合物がハロケトン化合物として生成される場合には、様々な医薬品及び医薬品候補化合物等のビルディングブロックとして利用することができる。
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<原料>
本実施例では、下記表1に記載した原料を使用した。
<収率>
下記の実施例2、3、6~9、比較例1では、以下の方法に従い、生成物の収率を計測した。
生成物を減圧乾燥させて得られた粗生成物に対し、N,N-ジメチルアセトアミド(超
脱水、和光純薬)を30~40mg添加し、これをクロロホルム-dで完全に溶解させ、
NMR(Gemini Trust Company製のVARIAN Gemini-300 spectrometer)を用いて、H-NMRを緩和時間10秒、積算回数16回で測定した。得られたスペクトルの2.94ppm(N,N-ジメチルアセトアミド、N-CH、singlet)のNMRピークと、生成物に特徴的なNMRピーク(例えば目的物が、その部分構造にBr-CH-CH-を含む場合には3.43ppm(triplet)の面積の積分比から収率を決定した。
下記の実施例1、4、5、10~12では、実際に化合物を単離した単離収率として収率を決定した。
<実験1:基質の種類>
[基質:1-フェニルシクロヘキサノール]
(実施例1)
下記の反応により、1-フェニルシクロヘキサノールから6-ブロモ-1-フェニルヘキサン-1-オンを合成した。
反応容器として、半径1cm、高さ10cm、側管付きの円柱型無隔膜セルを用いた。また、電極として、アノードには白金製のリード線が付いた幅1.0cm、高さ2.0cmの白金電極を、カソードには幅1.0cm、高さ5.0cmの亜鉛電極を用いた。
反応容器に1-フェニルシクロヘキサノール(1.0mmol、176.3mg)、ハ
ロゲン化物塩として臭化マグネシウム6水和物(1.0mmol、292.2mg)を量り取り、酢酸メチル(1.0mL)および水(5.0mL)を加えて溶解させた。室温かつ空気雰囲気下にて、アンモニウム塩として25%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(0.5mmol、180μL)を加えた後、電極を浸し、反応容器ゴム栓をした。マグネチックスターラーを用いて、氷浴中にて激しく攪拌しながら、定電流50mAで、3F/molに相当する電荷量である289.5クーロンを通電した。通電には、直流電源
発生装置(株式会社高砂製作所製のGP050-2)を用い、通電量はクーロンアンペアメーター(北斗電工株式会社製のHF-201)にて計測した。通電に要した時間は96分である。通電後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(3.0mL)を加え、酢酸エチル10mLで3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、6-ブロモ-1-フェニルヘキサン-1-オン(236.5mg、0.93mmol)を得た。6-ブロモ-1-フェニルヘキサン-1-オンの収率は、93%であった。H-NMRを用いて構造解析を行った結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CHLOROFORM-D)δ7.97-7.95(m,2H),7.58-7.54(m,1H),7.48-7.44(m,2H),3.43(t,J=6.7Hz,2H),3.00(t,J=7.3Hz,2H),1.96-1
.89(m,2H),1.82-1.74(m,2H),1.58-1.50(m,2H)
従来技術が示された非特許文献1においては、ハロゲンカチオン源である塩化マグネシウムを、ヒドロキシ基含有環状化合物に対して5倍モル用いて反応を進行させているのに対して、本発明の製造方法によれば、ハロゲンカチオン源である臭化マグネシウムを等モル用いて、高い収率を達成することができた。また、酸化剤あるいは、人体、環境への影響が懸念される重金属等を使用することなく反応を進行させ得ることが示された。
(実施例2)
臭化マグネシウム6水和物を臭化テトラメチルアンモニウム(1.0mmol、154mg)に変更したこと以外は、実施例1と同様の実験条件、および操作にて実験を実施し、6-ブロモ-1-フェニルヘキサン-1-オン(171mg、0.67mmol)を得た。6-ブロモ-1-フェニルヘキサン-1-オンの収率は、67%であった。
(実施例3)
実施例1と同じ電極反応容器を用いて、以下の操作を行った。反応容器に1-フェニルシクロヘキサノール(1.0mmol、176.3mg)、およびハロゲン化塩として臭
化テトラメチルアンモニウム(1.0mmol、154mg)を量り取り、酢酸メチル(1.0mL)および水(5.0mL)を加えて溶解させた。室温かつ空気雰囲気下にて、塩基性物質として水酸化マグネシウム(0.25mmol、15mg)、およびアンモニウム塩としてテトラフルオロホウ酸テトラメチルアンモニウム(0.2mmol、40mg)を加えた後、電極を浸し、反応容器ゴム栓をした。マグネチックスターラーを用いて、氷浴中にて激しく攪拌しながら、定電流50mAで、3F/molに相当する電荷量で
ある289.5クーロンを通電した。通電には、直流電源発生装置(株式会社高砂製作所製のGP050-2)を用い、通電量はクーロンアンペアメーター(北斗電工株式会社製のHF-201)にて計測した。通電に要した時間は96分である。通電は25W蛍光灯の光の照射下で行った。通電後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(3.0mL)を加え、酢酸エチル10mLで3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、6-ブロモ-1-フェニルヘキサン-1-オン(219.3mg、0.86mmol)を得た。6-ブロモ-1-フェニルヘキサン-1-オンの収率は、86%であった。
[基質:1-フェニルシクロペンタノール]
(実施例4)
まず、基質である1-フェニルシクロペンタノールを以下のようにして合成した。
フレームドライした100mLなすフラスコ中にて、シクロペンタノン(5mmol、420.6mg)をテトラヒドロフラン20mLに溶解した。-78℃、アルゴン気流下にて、1.0mol/L臭化フェニルマグネシウムのテトラヒドロフラン溶液(1.5等量、7.5mL)を滴下した。室温下にて10時間撹拌後、氷浴中にて飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(20mL)で3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、1-フェニルシクロペンタノール(686.2mg、4.23mmol)を得た。
次いで、下記の反応により、1-フェニルシクロペンタノールから5-ブロモ-1-フェニルペンタン-1-オンを合成した。
気質として1-フェニルシクロペンタノール(162.2mg、1.0mmol)を用い、反応終了まで約192分間通電(6F/molに相当する579クーロン)したことを除き、実施例1と同様の実験条件、および操作にて実験を実施し、5-ブロモ-1-フェニルペンタン-1-オン(198.5mg、0.82mmol)を得た。5-ブロモ-
1-フェニルペンタン-1-オンの収率は、82%であった。H-NMRを用いて構造解析を行った結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CHLOROFORM-D)δ7.97-7.95(m
,2H),7.59-7.55(m,1H),7.49-7.45(m,2H),3.46(t,J=6.5Hz,2H),3.02(t,J=6.9Hz,2H),2.01-1.87(m,4H)
[基質:1-(4-t-ブチルフェニル)シクロヘキサノール]
(実施例5)
まず、基質である1-(4-t-ブチルフェニル)シクロヘキサノールを以下のようにして合成した。
フレームドライした100mL二頸なすフラスコに、マグネシウム(364.6mg、15mmol)とヨウ素(1000mg)を取り、ジエチルエーテル(10mL)を加えて室温、アルゴン雰囲気下にて30分間攪拌した。次に、ここに調製した1-ブロモ-4-t-ブチルベンゼン(3196.8mg、15mmol)のジエチルエーテル(10mL)溶液を滴下し、35℃にて2時間攪拌した。その後、氷浴中にて冷却しながら調製したシクロヘキサノン(490.7mg、5.0mmol)のジエチルエーテル(10mL)溶液を滴下し、室温にて10時間攪拌した。氷浴中にて飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(20mL)で3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、1-(4-t-ブチルフェニル)シクロヘキサノール(1092.1mg、4.7mmol、収率94%)を得た。
次いで、下記の反応により、1-(4-t-ブチルフェニル)シクロヘキサノールから6-ブロモ-1-(4-t-ブチルフェニル)ヘキサン-1-オンを合成した。
基質として1-(4-t-ブチルフェニル)シクロヘキサノール(232.3mg、1mmol)を用い、酢酸メチルの量を1.0mLから2.0mLに変更したことを除き、実施例1と同様の実験条件、および操作にて実験を実施し、6-ブロモ-1-(4-t-ブチルフェニル)ヘキサン-1-オン(280.1mg、0.90mmol)を得た。6
-ブロモ-1-(4-t-ブチルフェニル)ヘキサン-1-オンの収率は、90%であった。H-NMRを用いて構造解析を行った結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CHLOROFORM-D)δ7.89(dt,J=8
.6,1.9Hz,2H),7.46(dt,J=8.8,2.0Hz,2H),3.42(t,J=6.7Hz,2H),2.96(t, J=7.3Hz,2H),1.94-1.87(m,2H),1.56-1.48(m,2H),1.33(s,9H)
<実験2:電極の種類>
(実施例6、7)
アノード電極、およびカソード電極として表2に示す組み合わせにて用いることを除いて、実施例1と同様の実験条件、操作にて実験を実施した。得られた6-ブロモ-1-フェニルヘキサン-1-オンの収率を表2に併せて示した。
<実験3:溶媒の種類>
(実施例8,9)
有機溶媒として、酢酸メチルに代えて表3に示す有機溶媒を用い、実施例1と同様の実験条件、および操作にて実験を実施した。得られた6-ブロモ-1-フェニルヘキサン-1-オンの収率を表3に併せて示した。
<実験4:基質の種類、通電量、溶媒量>
(実施例10)
まず、基質である1-(4-t-ブチルフェニル)シクロヘキサノールを以下のようにして合成した。
フレームドライした100mLなすフラスコ中にて、4-t-ブチルシクロヘキサノン(5mmol、771.3mg)をテトラヒドロフラン20mLに溶解した。-78℃、アルゴン気流下にて、1.0mol/L臭化フェニルマグネシウムのテトラヒドロフラン溶液(1.5等量、7.5mL)を滴下した。室温下にて10時間撹拌後、氷浴中にて飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(20mL)で3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、4-t-ブチル-1-フェニルシクロヘキサノール (260.9mg、1.1mmol、収率22%)を得た。
次いで、下記の反応により、4-t-ブチル-1-フェニルシクロヘキサノールから4-(2-ブロモエチル)-5,5-ジメチル-1-フェニルヘキサン-1-オンを合成した。
基質として4-t-ブチル-1-フェニルシクロヘキサノール232.4mg、1.0mmol)を用い、反応終了まで約192分間通電(6F/molに相当する579クーロン)し、溶媒である酢酸メチルを3.0mL使用したことを除き、実施例1と同様の実験条件、および操作にて実験を実施し、4-(2-ブロモエチル)-5,5-ジメチル-1-フェニルヘキサン-1-オン(280.1mg、0.90mmol)を得た。4-(
2-ブロモエチル)-5,5-ジメチル-1-フェニルヘキサン-1-オンの収率は、90%であった。H-NMRを用いて構造解析を行った結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CHLOROFORM-D)δ7.96-7.94(m
,2H),7.58-7.54(m,1H),7.48-7.44(m,2H),3.52-3.41(m,2H),3.13-2.96(m,2H),2.13-2.05(m,1H),2.01-1.93(m,1H),1.67(td,J=14.5,6.5Hz,1H),1.50-1.41(m,1H),1.22-1.16(m,1H),0.91(s,9H)
<実験5:基質の種類、通電量>
(実施例11)
基質である1-(4-クロロフェニル)シクロヘキサノールを以下のようにして得た。フレームドライした100mL二頸なすフラスコに、マグネシウム(972.2mg、4
0mmol)とヨウ素(1粒)を取り、ジエチルエーテル(10mL)を加えて室温、ア
ルゴン雰囲気下にて30分間攪拌した。次にここに、調製した1-クロロ-4-ヨードベンゼン(4769.0mg、20mmol)のジエチルエーテル(10mL)溶液を滴下し、50℃にて2時間攪拌した。その後、氷浴中にて冷却しながら、調製したシクロヘキサノン(490.7mg、5.0mmol) のジエチルエーテル(10mL)溶液を滴下
し、室温にて1時間攪拌した後、55℃で2時間攪拌した。室温に戻してさらに10時間攪拌した。氷浴中にて飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(20mL)で3回抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、1-(4-クロロフェニル)シクロヘキサノール(806.2mg、3.8mmol、収率77%)を得た。
次いで、1-(4-クロロフェニル)シクロヘキサノール(210.7mg、1mmol)を用い、反応終了まで約128分間通電(4F/molに相当する386クーロン)したことを除き、実施例1と同様の操作を行い、6-ブロモ-1-(4-クロロフェニル)ヘキサン-1-オン(229.1mg、0.79mmol、収率79%)を得た。
-NMRを用いて構造解析を行った結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CHLOROFORM-D)δ7.89-7.86(m
,2H),7.43-7.40(m,2H),3.41(t,J=6.7Hz,2H),2.95(t,J=7.2Hz,2H),1.93-1.86(m,2H),1.78-1.71(m,2H),1.55-1.47(m,2H),
(実施例12)
下記の反応により、1-メチルシクロヘキサノールから6-ブロモ-1-メチルヘキサン-1-オンを合成した。
基質として1-メチルシクロヘキサノール(114.19mg、1.0mmol)を用い、反応終了まで約128分間通電(4F/molに相当する386クーロン)したことを除き、実施例1と同様の操作を行い、7-ブロモヘプタン-2-オン(136.5mg、0.71mmol、収率71%)を得た。H-NMRを用いて構造解析を行った結果
を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CHLOROFORM-D)δ3.41(t,J=6.
7Hz,2H),2.15(s、3H),1.92-1.82(m,2H),1.65-1.55(m,2H),1.49-1.38(m,2H),
(比較例1)
アンモニウム塩(25%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)を用いないことを除いて、実施例2と同じ実験条件、および操作にて実験を実施し、6-ブロモ-1-フェニルヘキサン-1-オン(89.3mg、0.35mmol)を得た。6-ブロモ-1-フェニルヘキサン-1-オンの収率は、35%であった。
上記の実施例2との比較から、アンモニウム塩を用いない場合には、収率が著しく低下
することが分かった。
以上より、本発明によれば、ハロゲンカチオン源の使用量を抑制しつつ、高価な酸化剤や残留が懸念される金属塩を必要とせずにハロカルボニル化合物を収率よく製造する方法を提供することができる。

Claims (7)

  1. 下記式(A-1)又は(A-8)で表される構造を有する環状化合物を、ハロゲン化塩及びアンモニウム塩を含む溶液中で電解反応させて下記式(1’)で表されるハロカルボニル化合物を得る反応工程を有し、
    前記溶液が塩基性化合物を含み、
    前記溶液中の重金属の含有量が、1×10-6mol/L以下である、ハロカルボニル化合物の製造方法。

    (前記環状化合物は、環を構成する炭素が水素又は1価の置換基を有する化合物(但し、Rと環の2価の炭化水素基とは結合しない)であり;Rは、水素、又は1価の有機基を表し;前記1価の有機基は、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素1~20のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、-C≡N、-NR 、-C(=O)OH、-C(=O)OR’、-C(=O)R’、-SH、-SiR 、-BH 、-SeH、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素環基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基であり、R’、R 、R 、R は、独立して、水素、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基を表し;Rは、
    置換基を有していてもよい炭素数4~5のアルキレン基を表し、かつ、前記式(1’)で表されるハロカルボニル化合物は、前記環状化合物に対応する生成物であり;Zは、ハロゲン基を表す。)
  2. 前記環状化合物において、環を構成する炭素が置換基として有し得る1価の有機基が炭素数1~12のアルキル基である、請求項1に記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
  3. 前記溶液が、少なくとも有機溶媒又は水を含む、請求項1又は2に記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
  4. 前記溶液が、有機溶媒及び水を含む、請求項3に記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
  5. 前記ハロゲン化塩が、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、又はヨウ化マグネシウムである、請求項1~4のいずれか1項に記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
  6. 前記塩基性化合物が、水酸化物又は炭酸塩である、請求項1~5のいずれか1項に記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
  7. 前記反応工程において、光を照射して電解反応を行う、請求項1~6のいずれか1項に記載のハロカルボニル化合物の製造方法。
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