JP7744568B2 - 渦電流式減速装置用ロータ - Google Patents
渦電流式減速装置用ロータInfo
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Description
0.060≦(51/93)Nb+V≦0.100 (1)
0.50<Nb/V (2)
ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
円筒部を備え、
前記円筒部の化学組成が、質量%で、
C:0.05~0.15%、
Si:0.10~0.40%、
Mn:0.50~1.00%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Cr:0.10%超~0.40%、
Mo:0.20~1.00%、
Nb:0.020~0.060%、
V:0.040~0.080%、
sol.Al:0.030~0.100%、
B:0.0005~0.0050%、
N:0.003~0.010%、
Cu:0~0.20%、
Ni:0~0.20%、及び、
残部:Fe及び不純物、からなる。
渦電流式減速装置用ロータであって、
円筒部を備え、
前記円筒部の化学組成が、質量%で、
C:0.05~0.15%、
Si:0.10~0.40%、
Mn:0.50~1.00%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Cr:0.10%超~0.40%、
Mo:0.20~1.00%、
Nb:0.020~0.060%、
V:0.040~0.080%、
sol.Al:0.030~0.100%、
B:0.0005~0.0050%、
N:0.003~0.010%、
Cu:0~0.20%、
Ni:0~0.20%、及び、
残部:Fe及び不純物、からなる、
渦電流式減速装置用ロータ。
[1]に記載の渦電流式減速装置用ロータであって、
前記化学組成は、
Cu:0.01~0.20%、及び、
Ni:0.01~0.20%、からなる群から選択される1元素以上を含有する、
渦電流式減速装置用ロータ。
図2は、本実施形態の渦電流式減速装置用ロータが適用される、渦電流式減速装置の正面図である。図2を参照して、渦電流式減速装置1は、渦電流式減速装置用ロータ10(以下、単にロータ10ともいう)と、ステータ20とを備える。
図4を参照して、非制動時において、渦電流式減速装置1の径方向に見た場合、各永久磁石22又は23は、互いに隣り合う2つのポールピース24と重複している。この場合、磁束Bは図4に示すとおり、ステータ20内に流れ、具体的には、永久磁石22及び23と、ポールピース24と、磁石保持リング21との間を流れる。この場合、ロータ10と永久磁石22及び23との間には磁気回路が形成されておらず、ロータ10にローレンツ力が発生しない。そのため、制動力が作動しない。
[化学組成]
本実施形態の渦電流式減速装置用ロータ10の円筒部11の化学組成は、次の元素を含有する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
炭素(C)は、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Cはさらに、Nb炭化物、V炭化物等の析出強化型の微細な炭化物を生成し、鋼材の高温強度を高める。C含有量が0.05%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上述の効果が十分に得られない。一方、C含有量が0.15%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、C含有量は0.05~0.15%である。C含有量の好ましい下限は0.06%であり、さらに好ましくは0.07%である。C含有量の好ましい上限は0.14%であり、さらに好ましくは0.13%であり、さらに好ましくは0.12%である。
シリコン(Si)は、製鋼工程において、鋼を脱酸する。Siはさらに、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Si含有量が0.10%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Si含有量が0.40%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、Si含有量は0.10~0.40%である。Si含有量の好ましい下限は0.12%であり、さらに好ましくは0.15%である。Si含有量の好ましい上限は0.38%であり、さらに好ましくは0.36%である。
マンガン(Mn)は、製鋼工程において、鋼を脱酸する。Mnはさらに、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Mn含有量が0.50%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Mn含有量が1.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、Mn含有量は0.50~1.00%である。Mn含有量の好ましい下限は0.58%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.62%である。Mn含有量の好ましい上限は0.94%であり、さらに好ましくは0.90%であり、さらに好ましくは0.88%である。
燐(P)は不可避に含有される不純物である。つまり、P含有量は0%超である。Pは、鋼材の熱間加工性及び靱性を低下する。Pはさらに、鋼材の電気抵抗を高め、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量を減少させる。P含有量が0.030%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性及び靱性が顕著に低下し、さらに、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、P含有量は0.030%以下である。P含有量の好ましい上限は0.028%であり、さらに好ましくは0.026%であり、さらに好ましくは0.025%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、P含有量の過剰な低減は、製造コストを引き上げる。したがって、通常の工業生産を考慮した場合、P含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.003%である。
硫黄(S)は不可避に含有される不純物である。つまり、S含有量は0%超である。Sは、鋼材の熱間加工性及び靱性を低下させる。S含有量が0.030%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性及び靱性が顕著に低下する。したがって、S含有量は0.030%以下である。S含有量の好ましい上限は0.025%であり、さらに好ましくは0.022%であり、さらに好ましくは0.020%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、S含有量の過剰な低減は、製造コストを引き上げる。したがって、通常の工業生産を考慮した場合、S含有量の好ましい下限は0.001%である。
クロム(Cr)は、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の高温強度を高める。さらに、Crは、鋼材の耐高温酸化性を高め、酸化膜の形成を抑制する。Crが0.10%以下であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、耐高温酸化性が十分に得られない。しかしながら、Cr含有量が0.40%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、ロータ10の円筒部11とポールピース間の隙間を小さくしても、渦電流式減速装置1の制動時において、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少するため、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、Cr含有量は0.10%超~0.40%である。Cr含有量の好ましい下限は0.11%であり、さらに好ましくは0.12%である。Cr含有量の好ましい上限は0.38%であり、さらに好ましくは0.35%である。
モリブデン(Mo)は、鋼材の焼入れ性を高め、固溶強化及びMo炭化物(Mo2C)による析出強化(分散強化)により、高温強度を高める。Moはさらに、鋼材の靱性を高める。Mo含有量が0.20%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Mo含有量が1.00%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、Mo含有量は0.20~1.00%である。Mo含有量の好ましい下限は0.25%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.35%であり、さらに好ましくは0.40%である。Mo含有量の好ましい上限は0.90%であり、さらに好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.70%であり、さらに好ましくは0.60%である。
ニオブ(Nb)は、炭素と結合してNb炭化物を生成し、析出強化により、鋼材の高温強度を高める。Nbはさらに、結晶粒の粗大化を抑制する。Nb含有量が0.020%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Nb含有量が0.060%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。Nb含有量が0.060%を超えればさらに、鋼材の靱性が低下する。したがって、Nb含有量は0.020~0.060%である。Nb含有量の好ましい下限は0.025%であり、さらに好ましくは0.030%であり、さらに好ましくは0.032%であり、さらに好ましくは0.034%である。Nb含有量の好ましい上限は0.058%であり、さらに好ましくは0.056%であり、さらに好ましくは0.054%である。
バナジウム(V)は、炭素と結合してV炭化物を生成し、析出強化により、鋼材の高温強度を高める。Vはさらに、結晶粒の粗大化を抑制する。V含有量が0.040%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、V含有量が0.080%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。V含有量が0.080%を超えればさらに、鋼材の靱性が低下する。したがって、V含有量は0.040~0.080%である。V含有量の好ましい下限は0.044%であり、さらに好ましくは0.048%であり、さらに好ましくは0.050%である。V含有量の好ましい上限は0.075%であり、さらに好ましくは0.070%である。
アルミニウム(Al)は、製鋼工程において、鋼を脱酸する。Alはさらに、Nと結合してAlNを生成して、鋼材の結晶粒を微細化する。sol.Al含有量が0.030%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、sol.Al含有量が0.100%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、sol.Al含有量は0.030~0.100%である。sol.Al含有量の好ましい下限は0.040%であり、さらに好ましくは0.050%である。sol.Al含有量の好ましい上限は0.090%である。
ボロン(B)は鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の高温強度を高める。B含有量が0.0005%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、B含有量が0.0050%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の靱性が低下する。したがって、B含有量は0.0005~0.0050%である。B含有量の好ましい下限は0.0010%であり、さらに好ましくは0.0012%であり、さらに好ましくは0.0014%である。B含有量の好ましい上限は0.0045%であり、さらに好ましくは0.0040%であり、さらに好ましくは0.0035%であり、さらに好ましくは0.0030%である。
窒素(N)は、Alと結合してAlNを形成して、鋼材の結晶粒を微細化する。N含有量が0.003%未満であれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、N含有量が0.010%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、ロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、N含有量は0.003~0.010%である。N含有量の好ましい下限は0.004%である。N含有量の好ましい上限は0.009%であり、さらに好ましくは0.008%であり、さらに好ましくは0.007%である。
本実施形態の渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Cu及びNiから選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼材の焼入れ性を高める。
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Cu含有量は0%であってもよい。含有される場合、Cuは、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の高温強度を高める。Cuが少しでも含有されれば、上記効果はある程度得られる。しかしながら、Cu含有量が0.20%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、Cu含有量は0~0.20%である。Cu含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Cu含有量の好ましい上限は0.15%であり、さらに好ましくは0.12%であり、さらに好ましくは0.10%である。
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ni含有量は0%であってもよい。含有される場合、Niは、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の高温強度を高める。Niが少しでも含有されれば、上記効果はある程度得られる。しかしながら、Ni含有量が0.20%を超えれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の電気抵抗が過剰に高まり、渦電流式減速装置1の制動時において、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11を流れる渦電流量が減少する。この場合、渦電流式減速装置1の制動力が低下する。したがって、Ni含有量は0~0.20%である。Ni含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。Ni含有量の好ましい上限は0.15%であり、さらに好ましくは0.12%であり、さらに好ましくは0.10%である。
本実施形態の渦電流式減速装置用ロータ10の円筒部11のミクロ組織は、主としてマルテンサイト及び/又はベイナイトからなる組織である。例えば、マルテンサイト及びベイナイトの総面積率が95%以上である。マルテンサイト及びベイナイト以外の残部はフェライトである。なお、ミクロ組織観察において、マルテンサイトとベイナイトとを区別することは極めて困難であるため、フェライト以外の領域を、「マルテンサイト及びベイナイト」と認定する。
本実施形態において、ミクロ組織中のマルテンサイト及びベイナイトの総面積率は、次の方法で測定できる。ロータ10の円筒部11の肉厚中央位置からサンプルを採取する。サンプルは、後述の観察視野(200μm×100μm)が確保できれば、サイズは特に限定されない。サンプルの表面のうち、上記観察視野を含む観察面を鏡面研磨する。鏡面研磨後のサンプルを、ナイタル液に10秒程度浸漬してエッチングを実施し、観察面に組織を現出させる。エッチングにより組織が現出された観察面内の任意の1視野(観察視野)を、500倍の光学顕微鏡により観察する。観察視野の視野面積は20000μm2(200μm×100μm)とする。観察視野中において、フェライトと、マルテンサイト及びベイナイトとは、コントラストに基づいて容易に区別できる。そこで、観察視野中のフェライトを特定して、特定されたフェライトの面積を求める。フェライトの面積を、観察視野の総面積で除して、フェライトの面積率(%)を求める。マルテンサイト及びベイナイトの総面積率(%)を、次の式で求める。
マルテンサイト及びベイナイトの総面積率=100-フェライトの面積率
本実施形態の渦電流式減速装置用ロータ10の製造方法の一例を説明する。以降に説明する製造方法は、本実施形態の渦電流式減速装置用ロータ10を製造するための一例である。したがって、上述の構成を有する渦電流式減速装置用ロータ10は、以降に説明する製造方法以外の他の製造方法により製造されてもよい。しかしながら、以降に説明する製造方法は、本実施形態の渦電流式減速装置用ロータ10の製造方法の好ましい一例である。
(工程1)素材準備工程
(工程2)熱間加工工程
(工程3)調質処理工程
(工程4)機械加工工程
(工程5)ロータ形成工程
以下、各工程について説明する。
素材準備工程では、各元素含有量が本実施形態の範囲内である素材を準備する。素材は第三者から供給されたものであってもよい。素材を製造してもよい。製造する場合、たとえば、次の方法で製造する。
素材準備工程にて準備された素材に対して熱間加工(熱間鍛造及び/又は熱間圧延)を実施して、円筒部11に相当する中間品を製造する。始めに、素材を1000~1300℃に加熱する。加熱後の素材に対して、熱間鍛造を実施して所定の寸法に成型する。熱間鍛造後さらに、熱間圧延を実施して、円筒状の中間品を製造する。加熱後の素材に対して、熱間鍛造又は熱間圧延を実施して、円筒状の中間品を製造してもよい。
熱間加工工程により製造された中間品に対して、調質処理工程を実施する。調質処理工程は、次の工程を含む。各工程には、主要な製造条件も記載する。
(工程31)焼入れ処理工程
好ましい焼入れ温度:870~930℃
好ましい保持時間 :0.5~3.0時間
(工程32)焼戻し処理工程
好ましい焼き戻し温度:660~710℃
好ましい保持時間 :0.5~3.0時間
始めに、中間品に対して、焼入れ処理を実施する。焼入れ温度は870~930℃である。焼入れ温度で保持する時間は、特に限定されないが、たとえば0.5~3.0時間である。焼入れ温度が870℃未満であれば、中間品のミクロ組織がオーステナイト単相にならないため、焼入れ後の組織において、マルテンサイト及び/又はベイナイトだけでなく、フェライトが残存してしまい、十分な高温強度が得られない。一方、焼入れ温度が930℃超であれば、オーステナイト結晶粒が粗大化し、ロータ10の靭性や耐高温酸化性が低下する。したがって、焼入れ温度は870~900℃である。焼入れ処理での急冷方法は、周知の方法で足りる。焼入れ処理での急冷方法はたとえば、水冷や油冷である。
焼入れ処理後の中間品に対して、焼戻し処理を実施する。焼戻し温度は660~710℃である。焼戻し温度で保持する時間は、特に限定されないが、たとえば0.5~3.0時間である。焼戻し温度が660℃未満であれば、十分な強度が得られない。一方、焼戻し温度が710℃を超えれば、焼戻しによる軟化が大きくなり、この場合も十分な強度が得られない。したがって、焼戻し温度は660℃~710℃とする。
焼戻し処理後の中間品の内周面及び外周面を機械加工する。このとき、外周面には冷却フィン11Fを形成する。機械加工は周知の方法で実施すれば足りる。以上の工程により、円筒部11が製造される。
製造された円筒部11に、ホイール部13に取り付けられたアーム部12を取り付けて、渦電流式減速装置用ロータ10を製造する。取り付け方法は溶接であってもよいし、他の方法であってもよい。
製造した各試験番号の擬似ロータの700℃での降伏強度(MPa)を、JIS G 0567(2012)に準拠した測定方法により求めた。具体的には、各試験番号の擬似ロータから、引張試験片を採取した。引張試験片の平行部の長さは40mm、標点間の長さは30mm、平行部の直径は6mmであった。加熱炉を用いて引張試験片を加熱して、試験片の温度を700℃にした。700℃の引張試験片に対して、大気中にて引張試験を実施して、応力-ひずみ曲線を得た。得られた応力-ひずみ曲線から、オフセット法に基づく0.2%耐力を、降伏強度(MPa)と定義した。得られた700℃での降伏強度(MPa)を、表2に示す。
製造した試験番号1~4、14及び15のロータに対して、熱負荷耐久試験を実施した。熱負荷耐久試験では、ロータを3000rpmで回転させた状態で、制動状態と非制動状態を繰り返し、ロータに熱サイクルを与えた。具体的には、制動状態にし、ロータの温度が700℃に到達した時点で非制動状態に切り替え、ロータの温度が100℃まで冷却された時点で制動状態に切り替えるという操作を繰り返し、最低温度100℃、最高温度700℃の熱サイクルを2万回与えた。2万回の熱サイクルを与えた後に、ロータの円筒部を軸方向長さの中央部で切断し、その切断面を観察することで、ロータの円筒部の内周面に形成された酸化膜の厚さを計測した。計測した酸化膜の厚さを表3に示す。
表2及び表3を参照して、試験番号1~4の擬似ロータは、700℃での降伏強度が140MPa以上であり、700℃において高い強度を有した。試験番号1~4のロータは、熱サイクル後に形成された酸化膜の厚さが500μm以下であった。すなわち、試験番号1~4のロータは、渦電流式減速装置を構成した際にロータの円筒部とポールピースとの隙間Gを小さくできることが分かった。
10 ロータ
11 円筒部
12 アーム部
13 ホイール部
20 ステータ
Claims (2)
- 渦電流式減速装置用ロータであって、
円筒部を備え、
前記円筒部の化学組成が、質量%で、
C:0.05~0.15%、
Si:0.10~0.40%、
Mn:0.50~1.00%、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Cr:0.10%超~0.40%、
Mo:0.20~1.00%、
Nb:0.020~0.060%、
V:0.040~0.080%、
sol.Al:0.030~0.100%、
B:0.0005~0.0050%、
N:0.003~0.010%、
Cu:0~0.20%、
Ni:0~0.20%、及び、
残部:Fe及び不純物、からなり、
前記円筒部のミクロ組織において、マルテンサイト及びベイナイトの総面積率が95%以上である、
渦電流式減速装置用ロータ。 - 請求項1に記載の渦電流式減速装置用ロータであって、
前記化学組成は、
Cu:0.01~0.20%、及び、
Ni:0.01~0.20%、からなる群から選択される1元素以上を含有する、
渦電流式減速装置用ロータ。
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2021
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