JP7746262B2 - 熱処理小麦粉の製造方法 - Google Patents

熱処理小麦粉の製造方法

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Description

本発明は、パン類や菓子類等のベーカリー食品や麺の製造に用いられる熱処理小麦粉の製造方法に関する。
従来、ベーカリー製品等に用いる熱処理小麦粉の製法は、小麦粉を加水及び加熱することで行うことが知られている(例えば特許文献1)。
パン類、菓子類などのベーカリー類は、嗜好性の多様化により様々な風味、食感を特徴とする製品が市販されている。その中で、近年は、しっとり及びもっちりした食感(以下、「しっとりもっちり」ともいう。)への要望が高まっている。
従来、パン類、菓子類等のベーカリー食品にしっとり又はもっちりとした食感を付与する方法が種々提案されている。
例えば、特許文献2には、しっとり及び/又はもっちりとした食感を有し、経時的劣化が起こり難いベーカリー食品を製造可能な粉砕熱処理小麦粉として、小麦粉100質量部に対し、70℃以上の水及び/又は水蒸気を20質量部以上55質量部以下を合わせて混合物を得、該混合物を80℃以上120℃以下の雰囲気温度で3秒間以上60秒間以下加熱し、当該混合物の温度を80℃以上100℃以下とした後、粉砕する工程を有する粉砕熱処理小麦粉の製造方法が記載されている。
特開2003-061600号公報 WO2021/095827A1
しかしながら特許文献1及び2を含め従来技術では、しっとりもっちりした食感を得ながら、ベーカリー食品の種類によっては長期冷凍に伴う食感低下が起こる点や麺の冷蔵に伴い食感低下が起こる点について、十分に検討されていなかった。
本発明の課題は、パン等においてしっとり且つもっちり(以下単に「しっとりもっちり」とも記載する。)した食感を呈しつつ、ホットケーキ等比較的脆いベーカリー食品を長期冷凍保存した場合にも食感を維持しやすいベーカリー食品を効率よく製造し得、また麺の製造にも好適に用いることができる熱処理小麦粉を提供することに関する。
本発明は、アミロース含量25%以下の小麦粉100質量部と、70℃以上の水を30質量部以上45質量部以下と合わせて混合物を得、100℃以上120℃未満の雰囲気温度で3秒間以上60秒間以下加熱して、糊化度50%以上95%以下の熱処理小麦粉を得る、熱処理小麦粉の製造方法である。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本明細書において熱処理小麦粉とは、熱処理が施された小麦粉を指す。
まず、本発明の熱処理小麦粉の製造方法について説明する。本発明の熱処理小麦粉の製造方法は、アミロース含量25%以下の小麦粉100質量部と、70℃以上の水を30質量部以上45質量部以下とを合わせて混合物を得、100℃以上120℃未満の雰囲気温度で3秒間以上60秒間以下加熱して、糊化度50%以上95%以下の熱処理小麦粉を得る。
本発明の熱処理小麦粉の製造方法の一つの特徴として、アミロース含量が25%以下の小麦粉を原料として使用する点がある。本発明者が鋭意検討したところ、アミロース含量が25%以下の小麦粉を使用し、且つ所定温度以上の水を所定量用いて所定時間で熱処理を行って糊化度を所定の範囲内とする場合、ホットケーキ等の脆くなりやすいベーカリー食品においても、長期冷凍に起因した食感低下の問題が抑制され、また冷蔵した麺の食感を改善しうることが判明した。また本発明では得られるパンのしっとりもっちりした食感が特に優れたものとなる。例えば比較例6と実施例1との比較のとおり、本製法によれば、同様の糊化度でもアミロース含量が所定値以下の小麦粉を用いる事で優れた効果を発揮する。
本発明で用いる小麦粉は、アミロースが少ない澱粉が有するしっとりもっちりと、熱処理により糊化しやすい性状の観点から、アミロース含量が25%以下である。なお、アミロース含量とは、小麦粉の澱粉中のアミロース含量を指す。
アミロース含量が25%以下の小麦粉としては、「つるぴかり」、「チクゴイズミ」、「ネバリゴシ」、「ニシホナミ」、「あやひかり」、「イワイノダイチ」、「ユメセイキ」、「きぬあずま」、「関東107号」等の低アミロース小麦を製粉した小麦粉をあげることができる。これらの低アミロース小麦の小麦粉としては、例えば、アミロース合成遺伝子Wx-A1、Wx-B1、Wx-D1のうち、いずれか2個の発現を欠いた小麦に由来した小麦粉が挙げられる。アミロース含量が25%以下の小麦粉としては、これらの低アミロース小麦由来の小麦粉の1種または2種以上を適宜混合して用いることができる。
アミロース含量が25%以下の小麦粉としては、ほかにモチ性小麦粉がある。このモチ性小麦粉に用いられる小麦は、例えば特開平6-125669号公報に記載の方法に従って、Wx-A1遺伝子とWx-B1遺伝子の発現を欠きWx-D1遺伝子の発現能力を維持する6倍体とWx-D1遺伝子の発現のみを欠いた6倍体を交配して雑種第一代個体を得、これを自家受精させて雑種第二代個体とし、この中から前記3種の遺伝子の発現を欠いたものを選択することによって作出されるものであり、このものはアミロース含量は0である。さらにこれを常法に従って、ウルチ性小麦と交配後、選抜することによりアミロース含量が10%以下のモチ性小麦が得られる。本発明では、アミロース含量が25%以下の小麦粉として、アミロース含量が10%以下のモチ性小麦由来の小麦粉を用いてもよい。
本発明で用いる小麦粉のアミロース含量は、もっちりしっとりした食感、冷凍耐性、冷蔵耐性等の点から、0~25%であることが好ましく、とりわけ0~20%であることがより好ましい。
本発明において熱処理小麦粉の原料となる小麦粉中、アミロース含量が25%以の小麦品種の小麦粉の割合は、上述した食感の向上の点から、50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。
本発明では、所定温度以上に加熱した水と、上記特定のアミロース含量の小麦粉とを合わせて混合物を得、該混合物に加熱処理を行う。以下、水と、小麦粉とを合わせて混合物を得る処理を混合処理ともいう。例えば特許文献1では、水と小麦粉の混合物を加熱処理することは記載されているものの、小麦粉と混合する水を予め加熱処理することは記載されていない。一方、本発明では、所定温度以上に加熱した水を小麦粉と混合した混合物を加熱処理することで、加温していない水と混合する場合と比較して短時間で小麦粉中の澱粉のα化が顕著に促進され、それを特定のアミロース含量の小麦粉の加熱に所定条件で適用するために、パンでのしっとり且つもっちりした食感とホットケーキ等での冷凍耐性、麺の冷蔵耐性を全て得るという効果に優れたものとなる。具体的には、小麦粉に添加する水は70℃以上、好ましくは75℃以上、更に好ましくは80℃以上に加熱する。小麦粉に混合する水の水温を70℃以上とすることで、ベーカリー食品のしっとりもっちりした食感が優れ、且つホットケーキ等の冷凍耐性や麺の冷耐性も得やすくなる。本明細書でいう水温とは常圧下での水温であり、上限は通常100℃である。
混合処理において、小麦粉と所定温度以上の水との混合物は均質な混合物であることを要さず、混在状態であればよい。また、本明細書において、小麦粉と所定温度以上の水との混合物を得るための小麦粉と当該水とを合わせる処理も、撹拌等の均質化のための操作を必須としない。しかし、小麦粉と前記の水との混合物を得る際における撹拌等の均質化処理は、本発明から除外されるものではなく、求められる熱処理小麦粉の用途や品質等に応じて適宜行うことができる。小麦粉と水との混合物は、小麦粉に前記の水を添加して得てもよく、前記の水に対して小麦粉を添加しても得てもよいが、小麦粉に前記の水を添加することが、混合・撹拌の均一性や簡便さの点で有利である。
本発明の熱処理小麦粉の製造方法では、前記の混合処理において、小麦粉と混合する前記の水の量が所定量である。小麦粉と混合する70℃以上の水の量は小麦粉100質量部に対して30質量部以上45質量部以下であることを要する。加水量を30質量部以上にすることで小麦粉中の澱粉のα化が十分に行われ、しっとりもっちりした良好な食感が得られる。一方、45質量部以下とすることで、小麦粉が生地状になることによる生産性の低下を防ぐと共に、小麦粉中の澱粉の過剰な糊化による製パン時のべたつきの発生を抑制でき、作業性に優れる利点がある。小麦粉と混合する水の量は小麦粉100質量部に対して30質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、32質量部以上38質量部以下であることが更に好ましい。
なお、本発明において小麦粉の熱処理時に乳化剤、脂肪酸、油脂等を用いる必要はなく、添加させる場合には、乳化剤、脂肪酸、油脂はそれぞれ小麦粉に対して0.05質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満、更に好ましくは0.005質量%未満とごく微量の使用量とすることが好ましい。
混合物中、小麦粉及び水分以外の成分は合計で、小麦粉に対し、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。
前記のように所定温度の水と小麦粉とを合わせてなる混合物を、100℃以上120℃以下の雰囲気温度で、3秒間以上60秒間以下加熱する(以下、本処理を単に「加熱処理」ともいう。)。ここでいう「雰囲気温度」は、被加熱物である混合物(小麦粉)の周囲の空間の気温であり、被加熱物自体の温度(混合物の温度)ではない。雰囲気温度が100℃以上及び加熱時間が3秒間以上であることで小麦粉中の澱粉のα化が十分に行われやすい。また雰囲気温度が120℃未満及び加熱時間が60秒間以下であることで、澱粉の過剰な糊化とタンパク質の変性を抑える利点がある。この観点から、好ましくは、加熱時間は4秒間以上30秒間以下であり、4秒間以上15秒間以下である。また好ましくは、雰囲気温度は100℃以上110℃以下である。なお、本発明において、小麦粉と水分との混合と、加熱とは同時に行ってもよいし、混合後に加熱を行ってもよい。例えば、予め内部雰囲気を加熱しておいた容器内に、小麦粉と水分をそれぞれ投入することで、加熱と同時に、小麦粉と水分との混合を行うことができる。その場合、加熱時間の開始は、容器内への小麦粉と水分の投入時点となる。
本発明の熱処理小麦粉の製造方法は、加熱処理において、混合物の温度を100℃超110℃以下とすることが好ましく、101℃以上110℃以下とすることがより好ましい。加熱処理において、混合物の温度を100℃超110℃以下とすることで、後述する糊化度の小麦粉を首尾よく得ることができるほか、しっとりもっちりした食感、ホットケーキ等の冷凍耐性、及び麺の冷蔵耐性に特に優れたものとなる。特許文献2には段落〔0018〕に「混合物の温度が100℃以下であることで、しっとりもっちりした良好な食感が得られるほか、作業性、外観(ボリューム)、内相の点でも優れたベーカリー製品が得られる。」と記載されている。しかしながら、本発明者が検討したところ、特定のアミロース含量の小麦について、混合物の温度を100℃超110℃以下となるように加熱して所定の糊化度とした場合に、特に優れた食感改善効果が得られることが判った。
本発明の熱処理小麦粉の製造方法において、混合物の温度は、加熱処理中に一度でも100℃超110℃以下に達していればよい。例えば混合物の温度は加熱処理完了時に測定することができるが、上述した通り、加熱処理中に一度でも100℃超110℃以下となっていれば、加熱処理完了の混合物の温度が100℃超110℃以下の範囲外であってもよい。混合物の温度を前記範囲内とするためには、前記混合処理で小麦粉と合わせる水分の温度や量を前記の範囲内とするとともに、小麦粉と水分とが混合した時点から加熱処理開始時点までの時間を調整し、更に加熱処理における雰囲気温度及び加熱時間を前記範囲内とするほか、加熱処理において容器内部に流通させる加熱した水蒸気の流量の調整等を行えばよい。
小麦粉と所定温度の水分との混合と加熱処理とは連続的に行うことが加熱完了時の混合物の温度を後述する範囲内とするために好ましい。連続的とは、例えば、小麦粉と所定温度の水分との混合と加熱開始までを数秒内で行うことを指し、上述した、予め内部雰囲気を加熱しておいた容器内に小麦粉と水分をそれぞれ投入する場合を含む。なお、加熱処理装置において上述した混合物の温度を測定する場合、例えば、加熱処理に内部のエクストルーダーにより内容物を容器中で入口から出口まで移送させながら加熱する装置を用いる場合は、混合物の温度は出口における混合物の温度とすることができる。
本発明に係る加熱処理は特に限定されず公知の加熱装置を用いて実施できるが、好ましくは、小麦粉中の澱粉を糊化させるために水を添加して加熱処理をする装置を用いることができる。加熱処理は、例えば、オートクレーブ、スチームオーブン等の公知の加熱装置を用いて実施できる。本発明に係る加熱処理の一例として、小麦粉と上記所定温度以上の水とをアルミパウチ等、或いはヒートジャケット等で加熱可能な密閉容器に封入密閉し、加圧下で加熱する処理が挙げられる。小麦粉と水の導入前に、密閉容器の内部雰囲気を予め望ましい温度に加熱していてもよい。また密閉容器内部に適宜撹拌を行う機構を設けてもよい。また加圧は密閉容器中の加熱された水蒸気によりなされるものであってよい。また、本発明に係る加熱処理の他の一例として、小麦粉及び水を密閉容器内に導入し、必要に応じて該混合物を攪拌しつつ、当該導入と同時又は当該導入より前若しくは後に(好ましくは該導入と同時又は該導入より前に)、該容器内に飽和水蒸気を導入して加圧下で加熱する処理が挙げられる(この場合の飽和水蒸気の量は小麦粉に添加する70℃以上の水の量には含めないものとする)。これらの処理は、例えば一軸又は二軸型エクストルーダーを用いて実施できる。
なお、容器内に水蒸気を導入して加圧下で加熱する処理を行う場合は水蒸気の流量は40~130kg/hの範囲内で通常調節され、70~100kg/hの範囲内であることが好ましい。ここでいう「加圧下」は、主として容器内に充満する蒸気によって加圧状態となった場合を意味し、押出具(エクストルーダーが備えるスクリューに相当する部材)のような物体を原料小麦に接触させることによって該原料小麦を加圧状態とした場合を指すわけではない。
本発明の熱処理小麦粉の製造方法においては、小麦粉及び加温した水を含む混合物を前記のように加熱処理した後、得られた熱処理小麦粉を粉砕することが好ましい。本発明では、加熱処理の後、加熱した混合物を、粒状化工程を経ることなく粉砕することが好ましい。粒状化工程とは、加熱した混合物を粒子状にして生地粒子とする工程を指す。粒状化工程の例としては、押出し造粒機、混合造粒機などを用いた造粒工程が挙げられる。また加熱した混合物を2つのロールにて延伸した後、延伸された生地を切断して粒状化したり、前述した加熱処理に混練機を用いた場合に該混練機から押し出されてくる混合物を小さく切断して粒状化する工程が挙げられる。生地粒子の粒子径としては、1mm~50mmが挙げられ、好ましくは5mm~20mmである。本発明では、加熱した混合物について、粒状化工程を経ることなく粉砕することで、製造時間の短縮化や製造設備の省スペース化の利点がある。
加熱処理により得られた熱処理小麦粉を粉砕する際、粉砕処理の方法は特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、ロール式粉砕、衝撃式粉砕、気流式粉砕、ピンミル式粉砕等が挙げられるが、このうち、ピンミル式粉砕又は気流式粉砕を好適に使用できる。
なお、本発明においては、熱処理小麦粉の粉砕に先立ち、該熱処理小麦粉に乾燥処理を施してもよい。前述の通り熱処理小麦粉は通常湿潤状態であるため、粉砕前に乾燥することによって粉砕処理をより適切に行うことができる。乾燥処理としては、棚乾燥、熱風乾燥、流動層乾燥等の公知の方法によって実施できる。また、粉砕と同時に乾燥を行ってもよい。また、粉砕の前に熱処理小麦粉の乾燥を行わない場合は、粉砕後に乾燥して、保存性を高めることが好ましい。乾燥時の乾燥温度は、該熱処理小麦粉の澱粉糊化とタンパク質変性を抑制する観点から低温乾燥の30℃以上70℃以下では6時間以上24時間以下の処理が好ましく、高温乾燥の100℃以上180℃以下では5秒以上120秒以下が好ましく、低温乾燥では40℃以上60℃以下がより好ましく、高温乾燥では120℃以上160℃以下がより好ましい。
本発明で得られる熱処理小麦粉は糊化度が50%以上95%以下である。熱処理小麦粉は糊化度が50%以上であることで、パン類にしっとりもっちりした食感が得られ、またホットケーキなどの生地物類において冷凍保管時の食感劣化を防ぐ利点があるほか、麺の老化耐性を防止できる。熱処理小麦粉は糊化度が95%以下であることで、澱粉の過剰な糊化がもたらすベタつきを防ぐことで生産性と製パン作業性の低下を防ぐ利点がある。この観点から、熱処理小麦粉は糊化度が50%以上95%以下が好ましく、65%以上90%以下がより好ましい。糊化度はβ-アミラーゼ・プルラナーゼ法により測定したものであり、具体的には以下の方法で測定される。
<糊化度の測定法>
(A)試薬
使用する試薬は、以下の通りである。
1.0.8M酢酸-酢酸Na緩衝液
2.10N水酸化ナトリウム溶液
3.2N酢酸溶液
4.酵素溶液:β-アミラーゼ(ナガセ生化学工業(株)#1500)0.017gおよびプルラナーゼ(林原生物化学研究所、・31001)0.17gを上記0.8M酢酸-酢酸Na緩衝液に溶かして100mlとしたもの。
5.失活酵素溶液:上記酵素溶液を10分間煮沸させて調製。
6.ソモギー試薬およびネルソン試薬(還元糖量の測定用試薬)
(B)測定方法
1.小麦粉をホモジナイザーで粉砕し、100メッシュ以下とする。この粉砕した小麦粉0.08~0.10gをガラスホモジナイザーにとる。
2.これに脱塩水8.0mlを加え、ガラスホモジナイザーを10~20回上下させて分散を行う。
3.2本の25ml容目盛り付き試験管に上記2,の分散液を2mlずつとり、1本は0.8M酢酸-酢酸Na緩衝液で定容し、試験区とする。
4.他の1本には、10N水酸化ナトリウム溶液0.2mlを添加し、50℃で3~5分間反応させ、完全に糊化させる。その後、2N酢酸溶液1.0mlを添加し、pHを6.0付近に調整した後、0.8M酢酸-酢酸Na緩衝液で定容し、糊化区とする。
5.上記3.および4.で調製した試験区および糊化区の試験液をそれぞれ0.4mlとり、それぞれに酵素溶液0.1mlを加えて、40℃で30分間酵素反応させる。同時に、ブランクとして、酵素溶液の代わりに失活酵素溶液0.1mlを加えたものも調製する。酵素反応は途中で反応液を時々攪拌させながら行う。
6.上記反応済液0.5mlにソモギー試薬0.5mlを添加し、沸騰浴中で15分間煮沸する。煮沸後、流水中で5分間冷却した後、ネルソン試薬1.0mlを添加・攪拌し、15分間放置する。
7.その後、脱塩水8.00mlを加えた後、攪拌し、500nmの吸光度を測定する。
(C)糊化度の算出
下式により糊化度を算出する。
糊化度(%)=(試験溶液の分解率)/(完全糊化試験溶液の分解率)×100
=(A-a)/(A'-a')×100
式中、A、A'、aおよびa'は下記の通りである。
A=試験区の吸光度
A'=糊化区の吸光度
a=試験区のブランクの吸光度
a'=糊化区のブランクの吸光度
本発明の熱処理小麦粉は、二次加工して種々の食品用途に用いることができ、代表的な用途としてベーカリー食品が挙げられる。本発明でいうベーカリー食品は、穀粉を主原料とし、これに必要に応じてイーストや膨張剤、水、食塩、砂糖等の副材料を加えて得られた発酵又は非発酵生地を、焼成、蒸し、フライ等の加熱処理に供して得られる食品をいう。本発明が適用可能なベーカリー食品の例としては、パン類、菓子類が挙げられる。パン類としては、食パン、フランスパン、ロールパン、コッペパン、クロワッサン、ピザ等が挙げられる。菓子類としては、ドーナツ、どら焼き、スポンジケーキ、バターケーキ、ホットケーキ、パンケーキ、マフィン、クッキー等が挙げられる。なお、冷凍時に脆くなりやすいベーカリー食品の例としては、パン類の内、食パン、フランスパン、ロールパン、コッペパン、ピザ等や、菓子類の内、ホットケーキ、どら焼き、スポンジケーキ、バターケーキ、ホットケーキ、パンケーキ、マフィンなどが挙げられる。
また麺類としては、うどん、中華麺、パスタ等が挙げられる。
本発明で得られる熱処理小麦粉は、ベーカリー食品用又は麺用として用いる事が好ましく、例えばベーカリー食品用ミックス又は麺用ミックスの原料として用いることができる。
本発明で得られるベーカリー食品用ミックス及び麺用ミックスは、本発明の熱処理小麦粉の製造方法で得られた熱処理小麦粉を含有するものである。本発明者は、本発明の熱処理小麦粉の製造方法で得られた熱処理小麦粉を用いることで、パン類においてしっとりもっちりした食感を有し、ホットケーキ等で冷凍耐性の高いベーカリー食品が得られることを見出したものである。また、本発明の熱処理小麦粉の製造方法で得られた熱処理小麦粉を用いることで、冷蔵耐性に優れた麺が得られる。
本発明で得られるベーカリー食品用ミックス及び麺用ミックスは、本発明の熱処理小麦粉の製造方法で得られた熱処理小麦粉に加えて、非熱処理小麦粉を含有することが、作業性、食感、外観、内相を良好なものにしやすい点で好ましい。非熱処理小麦粉としては、熱処理されていない未処理の小麦粉を用いることができ、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。非熱処理小麦粉は、外国産及び国内産小麦の何れを原料とする小麦粉も使用できる。特に熱処理小麦粉の原料に国内産麦小麦粉を用いる場合に、非熱処理小麦粉として、外国産小麦を原料とする小麦粉を用いることが、入手容易性の点で好ましい。
本発明で得られるベーカリー食品用ミックス及び麺用ミックスが非熱処理小麦粉を含む場合、本発明で得られる熱処理小麦粉の配合量は、該熱処理小麦粉と非熱処理小麦粉の合計100質量部中、1質量部以上40質量部以下であることが好ましい。本発明で得られる熱処理小麦粉の配合量を1質量部以上とすることで、ベーカリー食品及び麺類において食感の改善効果が一層得やすくなる。該熱処理小麦粉の配合量を40質量部以下とすることで、製菓・製パン性・製麺性が良好となる。これらの観点から、ベーカリー食品用ミックス及び麺用ミックス中の、本発明で得られる熱処理小麦粉の配合量は、該熱処理小麦粉と非熱処理小麦粉の合計100質量部中、該熱処理小麦粉の配合量が、5質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上40質量部以下であることが更に好ましい。
本発明のベーカリー食品用ミックス及び麺用ミックスにおいて本発明で得られる熱処理小麦粉と非熱処理小麦粉の合計100質量部中、非熱処理小麦粉の配合量は作業性、食感、外観、内相を良好なものとする効果が高い点から、60質量部以上99質量部以下であることが好ましく、65質量部以上95質量部以下であることがより好ましく、70質量部以上90質量部以下であることが更に好ましい。
更に、ベーカリー食品用ミックス及び麺用ミックスにおける本発明で得られる熱処理小麦粉と非熱処理小麦粉の合計量の割合は50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。特に上記の量は、作業性、食感、外観、内相を良好なものとする効果が高い点から、一般的なパン用途、ホットケーキ等の菓子用途、麺用途において好ましい。
ベーカリー食品用ミックス及び麺用ミックスには、本発明で得られる熱処理小麦粉及び非熱処理小麦粉以外の他の成分を含有させることもできる。例えば、ライ麦粉、大麦粉、そば粉、米粉、豆粉、コーンフラワー等の小麦粉以外の穀粉;馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシースターチ、小麦澱粉、及びこれらにα化、エーテル化、エステル化、架橋、酸化等の処理を施した加工澱粉;炭酸水素ナトリウム、ベーキングパウダー、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム等の膨張剤或いはイースト;サラダ油等の油脂類;砂糖等の糖類;全卵、卵白、卵黄等の卵類;牛乳、脱脂粉乳、バター等の乳製品;食塩等の塩類;乳化剤、増粘剤、酸味料、香料、香辛料、着色料、果汁、果実、ビタミン類、かん水等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの他の成分は、本発明で得られる熱処理小麦粉と非熱処理小麦粉との混合時に一緒に混合してもよいし、前記熱処理小麦粉と非熱処理小麦粉の一方に予め混合しておいてもよいし、前記熱処理小麦粉と非熱処理小麦粉の混合後に更に混合させてもよい。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、上記又は下記の実施例に記載の好ましい構成を上記又は下記に記載の別の任意の好ましい構成と組み合わせることが可能である。なお、ここでいう好ましい構成とは更に好ましい、特に好ましい等の段階を一切問わず何れの段階のものを何れの段階のものとも組み合わせ可能とする。
本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。なお、各実施例・比較例において容器内の水蒸気温度は90~130℃の範囲内、容器内の圧力はゲージ圧10~100kPaの範囲内とし、水蒸気流量を上記範囲内とした。
(比較例1~3)
表1に示す銘柄の小麦の粉砕物をそのまま比較例の小麦粉とした。なお、「1CW」は「No.1 Canada Western」、「WW」は「Western White」、「ASW」は「Australian Standard White」の略である。
(実施例1~4、6、比較例4~7)
ヒートジャケットと1軸エクストルーダーを備えた密閉容器を、予め表1に記載した雰囲気温度に達温させた。具体的には、蒸気を熱源としたヒートジャケットにより、密閉容器をその外部から加温し、容器内の雰囲気温度を表1に記載の温度に達温させた。
その後、表1に記載した品種・銘柄の小麦を製粉した小麦粉を用意した。小麦粉のアミロース含量は表1に示す通りであった。
80℃に加熱した水を小麦粉に対し表1に記載の量、用意した。前記密閉容器に小麦粉と、前記の加熱した水とを入れて混合し、前記所定の雰囲気温度に設定された該密閉容器内にて5秒間加熱した後、密閉容器から排出した。加熱完了時の混合物の温度(密閉容器出口における混合物の温度)は表1に示す温度であった。加熱処理後の混合物を、粒状化工程を経ることなく棚乾燥によって水分含量が10質量%以上14質量%以下となるように50℃にて12-24時間乾燥した後、ピンミルで熱処理小麦粉を粉砕し、混合物粒子を粉砕熱処理小麦粉として回収した。得られた粉砕熱処理小麦粉の糊化度を前記方法により測定した。なお熱処理時に容器内に飽和水蒸気を導入して加圧下で混合物を加熱したが、加熱完了時の混合物の温度を表1の温度とするために、容器内における該水蒸気の流量を調整した。
(実施例5)
実施例1において、容器内の水蒸気流量を調整することで加熱完了時の混合物の温度(密閉容器出口における混合物の温度)の温度を100℃以下(95℃)に変更した以外は実施例1と同様とした。得られた粉砕熱処理小麦粉の糊化度を前記方法により測定した。
(試験例1)
実施例1~6、比較例4~7の粉砕熱処理小麦粉又は比較例1の小麦粉を用いて、下記方法によりベーカリー食品の一種である食パンを製造した。
市販の製パン用ミキサー(株式会社ダルトン製、万能混合機 型式5DM-03-r)におけるミキシングボウルに、非熱処理の強力粉であるミリオン(日清製粉(株))320gと、評価対象の熱処理小麦粉80g又は比較例1の小麦粉80gと、食塩8gと、砂糖32gと、生イースト(オリエンタル酵母工業製「オリエンタルイースト」)9.2gと、イーストフード(オリエンタル酵母工業製「Cイーストフード」)0.4gと、適正量の水とを投入し、ミキシング工程を実施してパン生地を調製した。
具体的には低速で4分間ミキシングを行った後、高速で2分間ミキシングを行い、さらに、16gの油脂を添加して低速で4分間ミキシングを行った後、高速で1分間混捏した(捏上温度27℃)。こうして得られたパン生地を、温度27℃、相対湿度75%の条件下で1時間発酵させた後、450gに分割して丸め、ベンチタイムを30分間とった後、パン生地を棒状にして食パン型に詰めた。そして、ホイロ(温度38℃、相対湿度85%の雰囲気下)を60分間行った後、温度200℃で30分間焼成して食パンを得た。
得られた食パンを4℃で1日間静置した後、得られた食パンの食感を10名の専門パネラーに下記評価基準に基づいて評価してもらった。パネラーの評価点の平均を表1に示す。
(食パンの食感の評価基準)
5点:全体が充分にしっとりもっちりした食感を有し、食味・食感は良好。
4点:部分的にしっとり感やソフト感に欠ける場合があるものの、全体としてはしっとりもっちりした食感を有し、食味・食感は問題ない。
3点:しっとり感やもっちり感が少し感じられる。
2点:全体にしっとり感やもっちり感が少なく、ややパサつく。
1点:全体に硬過ぎるか又はパサついた食感であり、食味・食感は不良。
(試験例2)
実施例1~6、比較例4~7の粉砕熱処理小麦粉又は比較例2の小麦粉を用いて、下記方法によりベーカリー食品の一種であるホットケーキを製造した。
粉体原料として、非熱処理の薄力粉であるフラワー(日清製粉(株))40g、評価対象の熱処理小麦粉10g又は比較例2の小麦粉10g、上白糖12.5g、ベーキングパウダー2.5gを混合後、ボウル内で、液体原料として、サラダ油5g、全卵液15g、牛乳40g、水30gを加え、ホイッパーを用い、ハンドミキシングにて1分120rpmで撹拌後、180℃表3分裏2分で焼成した。焼成物を27℃30分放冷後、包装し、30日間、-5℃にて保管し、食感の評価に用いた。
冷凍したホットケーキを27℃の環境下に2時間放置して解凍した。次いで、ホットケーキの脆い食感を10名の専門パネラーに下記評価基準に基づいて評価してもらった。パネラーの評価点の平均を表1に示す。
(ホットケーキの食感の評価基準)
5点:非常にしっとりもっちりし、非常に良好な食感
4点:しっとりもっちりし、良好な食感
3点:ややしっとりもっちりし、やや良好な食感
2点:やや脆くパサつき、やや好ましくない食感
1点:非常に脆くパサつき、非常に好ましくない食感
(試験例3)
実施例1~6、比較例4~7の粉砕熱処理小麦粉又は比較例3の小麦粉を用いて、下記方法により麺を製造した。
試験対象の小麦粉20質量部と、非熱処理の中力粉である麺八州(日清製粉(株))80質量部とを混合し、これに塩1質量部と水40質量部を加え、ミキサー(ホバート製)にて低速5分で混合し、得たそぼろ状の麺生地を製麺ロールにてまとめ、複合、圧延、製麺し、厚さ3mm幅4mmの麺線を作成した。その麺線を11分間茹で、冷水にて冷却後、密封容器にて4℃2日間保管後に、麺の老化耐性を評価した。
(麺の食感の評価基準)
5点:非常にもっちりし、非常になめらかで、非常に良好な食感
4点:もっちりし、なめらかで、良好な食感
3点:ややもっちり、ややなめらかで、やや良好な食感
2点:やや脆く、若干なめらかで、やや好ましくない食感
1点:非常に脆く、なめらかさがなく、非常に好ましくない食感
表1に示す通り、所定のアミロース含量の小麦粉に所定量で所定温度の水による加水による所定時間の熱処理行い特定の糊化度とした各実施例において、食パンのしっとりもっちりした食感、及びホットケーキの長期冷凍後の脆くなり難さ、冷蔵後の麺のもっちりしたなめらかな食感がいずれも得られていた。特に、混合物温度を100℃超とした場合、優れた食感改善効果が得られていた。
一方、アミロース含量が比較的高い比較例4~6の小麦粉では、特に加水が十分でない場合に、パンの食感に劣り、長期冷凍保存したホットケーキの食感も脆く・パサつく食感であり、麺も脆い食感となっていた。また比較例7のようにアミロース含量が25%以下のチクゴイズミを用いた場合も、実施例に比して、加水が十分でない場合、パン食感に劣り、また、長期冷凍保存したホットケーキの食感もやや脆く・パサつく食感であり、麺も脆く、なめらかさが低下していた。

Claims (2)

  1. アミロース含量25%以下の小麦粉100質量部と、70℃以上の水を30質量部以上45質量部以下と合わせて混合物を得、100℃以上120℃未満の雰囲気温度で3秒間以上60秒間以下加熱する加熱処理により、糊化度50%以上95%以下の熱処理小麦粉を得る、熱処理小麦粉の製造方法であって、
    前記加熱処理により、前記小麦粉と前記水との混合物の加熱処理完了時点における温度を100℃超110℃以下とする、熱処理小麦粉の製造方法
  2. 熱処理小麦粉として、ベーカリー食品用又は麺用熱処理小麦粉を製造する、請求項1に記載の熱処理小麦粉の製造方法。
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