以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、別に断らない限り、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」、「メタクリル」及びこれらの組み合わせを包含する用語である。例えば、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」はアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、又はこれらの混合物を包含する。
以下の説明において「溶媒」の文言は、便宜上広義に解し、溶液の媒体のみならず、分散媒の媒体をも包含する。また、かかる媒体中に溶解した物質及び分散した物質の両方を含んだ媒体をも包含する。
[1.複合ガラスシートの製造方法の概要]
本発明の一実施形態に係る複合ガラスシートの製造方法は、ガラス基材を切断する工程と、ガラス基材の片方の面に第一保護フィルムを貼り合わせる工程と、ガラス基材のもう片方の面に第二保護フィルムを貼り合わせる工程と、を含む。ガラス基材及び第一保護フィルムを貼り合わせる工程と、ガラス基材及び第二保護フィルムを貼り合わせる工程とは、いずれか一方の工程を先に行ってもよく、両工程を同時に行ってもよい。
この製造方法において、第一保護フィルム及び第二保護フィルムの少なくとも一方として、接着層と支持層とを備える複合保護フィルムを用いる。よって、この製造方法によれば、ガラス基材及び接着層を備える複合ガラスシートを製造できる。通常、前記の製造方法によれば、ガラス基材、接着層及び支持層をこの順に備える複合ガラスシートが得られるが、製造方法が支持層を剥離する工程を含む場合に、ガラス基材及び接着層を備えるが支持層を備えない複合ガラスシートが得られうる。
通常、複合ガラスシートの使用時には、複合ガラスシートから支持層は剥離される。例えば、画像表示装置の画面の保護部材として複合ガラスシートを用いる場合、支持層は剥離される。しかし、接着層は、通常、複合ガラスシートの使用時にも、ガラス基材の表面にあり続ける。よって、ガラス基材及び接着層を備えるシートが保護部材として使用されうる
本実施形態において、接着層は、ケイ素原子を含有する基を有する重合体を含む熱可塑性樹脂、又は、有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂、からなる。以下の説明において、「ケイ素原子を含有する基」を、適宜「Si含有基」ということがある。また、ケイ素原子を含有する基を有する重合体を、適宜「Si重合体」ということがある。
Si重合体を含む熱可塑性樹脂又は有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂からなる接着層は、ガラス基板に対して高い接着力を有することができる。また、この接着層は、ガラス基板に組み合わせることにより、屈曲に対するガラス基材の耐性を向上させることができる。したがって、本実施形態においては、接着層は、切断されたガラス基材の表面を保護するカバーフィルムとして機能でき、且つ、ガラス基材の屈曲による破損を抑制する保護フィルムとしても機能できる。よって、カバーガラスと保護フィルムとを別々に用意する必要が無いので、本実施形態に係る製造方法によれば、カバーフィルムの貼り合わせ及び剥離を省略して複合ガラスシートを製造できる。
前記の複合保護フィルムは、接着層と支持層との間に、接着層よりも小さい貯蔵弾性率を有する柔軟層を有することが好ましい。この柔軟層は、通常、複合ガラスシートの使用時にも、剥離されない。よって、柔軟層が設けられている場合、ガラス基材、接着層及び柔軟層を厚み方向においてこの順に備える複合保護フィルムを得ることができる。
[2.複合保護フィルム]
図1は、本発明の一実施形態に係る複合保護フィルム100を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る複合保護フィルム100は、支持層110及び接着層120を備える。また、複合保護フィルム100は、支持層110と接着層120との間に、柔軟層130を備えることが好ましい。
[2.1.接着層]
接着層は、Si含有基を有するSi重合体を含む熱可塑性樹脂、又は、有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂からなる。よって、接着層は、Si重合体を含む熱可塑性樹脂、又は、有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂を含む。また、接着層は、Si重合体を含む熱可塑性樹脂、又は、有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂のみを含むことが好ましい。接着層に含まれる熱可塑性樹脂は、Si重合体と有機ケイ素化合物とを組み合わせて含んでいてもよい。接着層は、ガラス基材に高い接着強度で接着できる。この接着層によれば、ガラス基材の表面を保護することができ、また、ガラス基材の屈曲による破損を抑制できる。
(2.1.1.Si含有基を有するSi重合体を含む熱可塑性樹脂の組成)
Si重合体が有するSi含有基は、ケイ素原子を含有する基を表す。このSi含有基は、通常、極性を有する極性基でありうる。よって、Si含有基が有する極性により、Si重合体とガラスとは、高い親和性を有することができる。したがって、Si重合体を含む接着層は、ガラス基材と高い接着強度で貼り合わせられることができる。
Si含有基としては、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基は、ガラス基材の表面に一般に存在する水酸基と反応して結合を生じることができる。したがって、前記の結合によってガラス基材と接着層との接着強度を効果的に高めることができる。
アルコキシシリル基としては、例えば、トリアルコキシシリル基、アルキルジアルコキシシリル基、アリールジアルコキシシリル基などが挙げられる。
トリアルコキシシリル基の炭素原子数は、3~9が好ましい。トリアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。
アルキルジアルコキシシリル基の炭素原子数は、3~20が好ましい。アルキルジアルコキシシリル基としては、例えば、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、プロピルジメトキシシリル基、プロピルジエトキシシリル基等が挙げられる。
アリールジアルコキシシリル基の炭素原子数は、8~16が好ましい。アリールジアルコキシシリル基としては、例えば、フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基等が挙げられる。
中でも、ガラス基材と接着層との接着強度を効果的に高める観点から、トリメトキシシリル基が好ましい。Si含有基は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
Si重合体は、Si含有基を導入される前の重合体に、Si含有基が導入された構造を有しうる。Si含有基が導入される前の重合体は、通常、Si含有基を含まない。以下の説明では、Si含有基を導入される前の重合体を、Si重合体と区別するため、「反応前重合体」ということがある。例えば、Si含有基としてアルコキシシリル基を有するSi重合体は、反応前重合体に、アルコキシシリル基が導入された構造を有しうる。
Si重合体は、Si含有基を有するグラフト重合体であってもよい。Si含有基を有するグラフト重合体の例としては、Si含有基を含む構造単位を含むグラフト重合体が挙げられる。Si含有基を含む構造単位とは、Si含有基を有する単量体を重合して得られる構造を有する単位を表す。Si含有基を含む構造単位を含むグラフト重合体は、ある反応前重合体と、Si含有基を有する単量体とのグラフト重合により得られる構造を有する重合体でありうる。ただし、前記のグラフト重合体は、その製造方法によっては限定されない。
反応前重合体としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体などのエチレン-α-オレフィン共重合体;エチレン-α-オレフィン-ポリエン共重合体;エチレン-メチルメタクリレート、エチレン-ブチルアクリレートなどのエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;エチレン-酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸アルキルエステルの重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ブタジエン-イソプレン共重合体、ブタジエン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ブタジエン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル-アクリロニトリル共重合体、ブタジエン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル-アクリロニトリル-スチレン共重合体などのジエン系共重合体;ブチレン-イソプレン共重合体;スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-イソプレンランダム共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体などの芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体;水素化スチレン-ブタジエンランダム共重合体、水素化スチレン-イソプレンランダム共重合体、水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体などの、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体;並びに低結晶性ポリブタジエン、スチレングラフトエチレン-プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、及びエチレン系アイオノマーを挙げることができる。反応前重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、反応前重合体としては、芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体、及びこれらの組み合わせから選ばれる重合体が好ましい。よって、Si重合体は、芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体、及びこれらの組み合わせから選ばれる重合体に、Si含有基が導入された構造を有することが好ましい。
芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体としては、芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体が好ましい。芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体は、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、及びこれらの混合物から選ばれるものであることが好ましい。
水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体は、芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体の水素化物を表す。即ち、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体は、芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体の主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合、芳香環の炭素-炭素結合、又はこれらの両方の、一部又は全部を水素化して得られる構造を有するものである。ただし、共重合体及び水素化物は、その製造方法によっては限定されない。
水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体の水素化率は、通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、樹脂の耐熱性及び耐光性を良好にできる。ここで、水素化物の水素化率は、1H-NMRによる測定により求めることができる。
水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体の主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体の主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、樹脂の耐光性及び耐酸化性を更に高くできる。
また、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体の芳香環の炭素-炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上である。芳香環の炭素-炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、水素化物のガラス転移温度が高くなるので、樹脂の耐熱性を効果的に高めることができる。さらに、樹脂の光弾性係数を下げて、接着層のレターデーションの発現を低減することができる。
水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体としては、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体が好ましい。水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体は、水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、及びこれらの混合物から選ばれるものであることが好ましい。これらのより具体的な例としては、特開平2-133406号公報、特開平2-305814号公報、特開平3-72512号公報、特開平3-74409号公報、及び国際公開第2015/099079号などの技術文献に記載されているものが挙げられる。
水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体としては、共役ジエンの不飽和結合及び芳香環の両方を水素化してなる構造を有するものが好ましい。
水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体の特に好ましいブロックの形態は、共役ジエン重合体水素化物のブロック[B]の両端に芳香族ビニル重合体水素化物のブロック[A]が結合したトリブロック共重合体;重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体である。特に、[A]-[B]-[A]のトリブロック共重合体であることが、製造が容易であり且つ当該ブロック共重合体の物性を好ましい範囲にできるため、特に好ましい。
水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体において、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率wAと、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率wBとの比(wA/wB)は、通常20/80以上、好ましくは30/70以上であり、通常60/40以下、好ましくは55/45以下である。前記の比wA/wBが前記範囲の下限値以上である場合、樹脂の耐熱性を向上させることができる。また、上限値以下である場合、樹脂の柔軟性を高めることができる。さらに、比wA/wBが前記範囲にある場合、ガラス基材の屈曲による破損を特に効果的に抑制できる。
前記の反応前重合体とSi含有基を有する化合物とを反応させることにより、反応前重合体にSi含有基を導入して、Si重合体を得ることができる。具体例を挙げると、反応前重合体と、Si含有基を有する単量体とを反応させることにより、Si含有基を有するグラフト重合体を得ることができる。単量体として用いうるSi含有基を有する化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び2-ノルボルネン-5-イルトリメトキシシランなどの、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和シラン化合物が挙げられる。Si含有基を有する化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
アルコキシシリル基を導入する場合、アルコキシシリル基の導入量は、反応前重合体100重量部に対し、通常0.1重量部以上、好ましくは0.2重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上であり、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。アルコキシシリル基の導入量が前記範囲にある場合、水分によって分解されたアルコキシシリル基同士の架橋度が過剰に高くなることを抑制できるので、接着性を高く維持することができる。アルコキシシリル基の導入方法の例としては、国際公開第2015/099079号に記載されているものが挙げられる。また、Si含有基の量は、1H-NMRスペクトルにて計測しうる。Si含有基の量の計測の際、Si含有基の量が少ない場合は、積算回数を増やして計測しうる。
上述したように反応前重合体にアルコキシシリル基を導入することは、シラン変性と呼ばれる。シラン変性に際しては、反応前重合体にアルコキシシリル基を直接結合させてもよく、例えばアルキレン基などの2価の有機基を介して結合させてもよい。以下、反応前重合体のシラン変性により得られた重合体を「シラン変性重合体」ともいうことがある。シラン変性重合体としては、水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体のシラン変性物、水素化スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体のシラン変性物、水素化スチレン-イソプレンブロック共重合体のシラン変性物、及び水素化スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体のシラン変性物から選ばれる一種以上の重合体が好ましい。
Si重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20000以上、より好ましくは30000以上、特に好ましくは35000以上であり、好ましくは200000以下、より好ましくは100000以下、特に好ましくは70000以下である。また、Si重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、特に好ましくは2以下であり、好ましくは1以上である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。Si重合体の重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnが前記の範囲にある場合、樹脂の機械強度及び耐熱性を向上させることができる。重合体の重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算の値で測定しうる。
Si重合体のガラス転移温度Tgは、特段の制限は無いが、好ましくは40℃以上、より好ましくは70℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは160℃以下である。ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置を用いて測定される損失正接tanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)のピークから測定できる。
熱可塑性樹脂に含まれるSi重合体の量は、熱可塑性樹脂100重量%に対して、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは65重量%以上であり、通常100重量%以下、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下である。
Si重合体を含む熱可塑性樹脂は、Si重合体に組み合わせて、任意の成分を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂は、例えば、任意の成分として軟化剤を含んでいてもよい。軟化剤により、熱可塑性樹脂の貯蔵弾性率が低下させることができる。
軟化剤としては、それ自体が常温常圧の環境下で液体である化合物を用いてもよい。また、軟化剤としては、Si重合体と相溶可能な化合物がこの好ましい。軟化剤の好適な例としては、炭化水素系モノマーおよびオリゴマー;一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステルなどの有機酸エステル系軟化剤;有機リン酸エステル系、有機亜リン酸エステル系などのリン酸エステル系軟化剤;が挙げられる。また、軟化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、炭化水素系モノマーおよびオリゴマーが好ましい。
炭化水素系モノマーおよびオリゴマーの具体例としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン、流動パラフィン、ポリ-1-オクテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、ポリイソプレン、脂環族炭化水素、その他の脂肪族系炭化水素、芳香族ビニル化合物-共役ジエン共重合体、前記の化合物の水素化物、及びインデン・スチレン共重合体水素化物が挙げられる。これらの中でも、ポリイソブチレン、ポリブテン、水素化ポリイソブチレン、及び水素化ポリブテンが好ましい。これらの炭化水素系モノマー及びオリゴマーの多くは、Si重合体と良好に相溶できる。
炭化水素系モノマーおよびオリゴマーは、炭化水素化合物の重合体であって特定の範囲の分子量を有するものが、耐熱性を大きく損なうことがなく、接着層を構成する成分中によく分散するので、好ましい。炭化水素系オリゴマーの数平均分子量は、好ましくは200~5,000、より好ましくは300~3,000、さらにより好ましくは500~2,000である。例えば、上記範囲の数平均分子量のポリブテンは、アルコキシシリル基を有する重合体と、任意の割合で均一に混合しうる。
軟化剤の量は、Si重合体100重量部に対して、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、特に好ましくは15重量部以上であり、好ましくは70重量部以下、より好ましくは60重量部以下、特に好ましくは50重量部以下である。
Si重合体を含む熱可塑性樹脂は、例えば、任意の成分として酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、例えば、リン系酸化防止剤、フェノ-ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、着色がより少ないリン系酸化防止剤が好ましい。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(フェニル-ジ-アルキル(C12~C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物;6-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラキス-t-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン、6-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラキス-t-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピンなどの化合物を挙げることができる。また、酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
酸化防止剤の量は、Si重合体100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、特に好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下、特に好ましくは0.3重量部以下である。
他の任意の成分としては、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、無機フィラー、及び、後述する有機ケイ素化合物などが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
(2.1.2.有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂の組成)
有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂は、通常、重合体と有機ケイ素化合物とを組み合わせて含む。重合体としては、例えば、アクリル系重合体、ウレタン系重合体、ポリエステル系重合体、ゴム系重合体、エポキシ系重合体が挙げられる。また、重合体としては、例えば、上述したSi重合体を用いてもよく、その反応前重合体を用いてもよい。重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂が含む重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に制限は無いが、Si重合体の重量平均分子量(Mw)の範囲と同じ範囲にあることが好ましい。また、有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂が含む重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、Si重合体の分子量分布(Mw/Mn)の範囲と同じ範囲にあることが好ましい。さらに、有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂が含む重合体のガラス転移温度は、Si重合体のガラス転移温度の範囲と同じ範囲にあることが好ましい。
有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂に含まれる重合体の量は、Si重合体を含む熱可塑性樹脂に含まれるSi重合体の量の範囲と同じ範囲にあることが好ましい。
有機ケイ素化合物は、有機基とケイ素原子とを組み合わせて含む。熱可塑性樹脂が含む重合体等の有機成分に対して、有機ケイ素化合物の有機基は、高い親和性を発揮できる。また、ガラス基材に対して、有機ケイ素化合物が有するケイ素原子は、高い親和性を発揮できる。したがって、有機ケイ素化合物を含む接着層は、ガラス基材と高い接着強度で貼り合わせられることができる。
有機ケイ素化合物としては、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤によれば、ガラス基材と接着層との接着強度を特に効果的に高めることができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、及び3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
有機ケイ素化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
有機ケイ素化合物の量は、重合体100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.03重量部以上、特に好ましくは0.05重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、特に好ましくは3重量部以下である。
有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂は、重合体及び有機ケイ素化合物に組み合わせて、任意の成分を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂は、例えば、任意の成分として軟化剤を含んでいてもよい。軟化剤により、熱可塑性樹脂の貯蔵弾性率が低下させることができる。軟化剤としては、例えば、Si重合体を含む熱可塑性樹脂の説明において挙げたものを用いうる。また、有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂における重合体100重量部に対する軟化剤の量は、Si重合体を含む熱可塑性樹脂におけるSi重合体100重量部に対する軟化剤の量の範囲と同じでありうる。
有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂は、例えば、任意の成分として酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、例えば、Si重合体を含む熱可塑性樹脂の説明において挙げたものを用いうる。また、有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂における重合体100重量部に対する酸化防止剤の量は、Si重合体を含む熱可塑性樹脂におけるSi重合体100重量部に対する酸化防止剤の量の範囲と同じでありうる。
他の任意の成分としては、例えば、Si重合体を含む熱可塑性樹脂の任意の成分と同じものが挙げられる。
(2.1.3.熱可塑性樹脂の物性)
接着層に含まれる熱可塑性樹脂は、熱可塑性エラストマーであってもよい。熱可塑性エラストマーは、常温ではゴムの特性を示し、高温では可塑化されて成形加工が可能となる材料をいう。このような熱可塑性エラストマーは、小さい力の負荷では伸びも破断も生じにくい。具体的には、熱可塑性エラストマーは、23℃において、ヤング率0.001GPa~1GPa、及び引張伸び(破断伸度)100%~1000%の値を示しうる。熱可塑性エラストマーはまた、40℃以上200℃以下の高い温度範囲において、貯蔵弾性率が急激に低下して損失正接tanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)がピークを持つか、1を超える値を示し、軟化できる。ヤング率及び引張伸びは、JIS K7113に則り測定しうる。また、損失正接tanδは、市販の動的粘弾性測定装置により測定しうる。
(2.1.4.接着層の特性)
接着層は、特定の範囲の貯蔵弾性率を有することが好ましい。接着層の具体的な貯蔵弾性率は、好ましくは10MPa以上、より好ましくは50MPa以上、特に好ましくは100MPa以上であり、好ましくは5000MPa以下、より好ましくは3000MPa以下、特に好ましくは1000MPa以下である。接着層が前記範囲の貯蔵弾性率を有する場合、ガラス基材の屈曲による破損を効果的に抑制できる。
接着層の貯蔵弾性率は、測定温度25℃において、動的粘弾性測定装置を用いて、周波数1Hzの条件で測定しうる。
接着層の貯蔵弾性率は、例えば、熱可塑性樹脂に含まれる成分の種類及びその割合を調整することにより、調整できる。特に、熱可塑性樹脂に含まれる軟化剤の割合を調整することにより、貯蔵弾性率を容易に調整できる。
接着層の厚みは、ガラス基材の表面を効果的に保護する観点からは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは2μm以上である。また、接着層の厚みは、ガラス基材の屈曲による破損を効果的に抑制する観点からは、好ましくは10μm未満、より好ましくは8μm未満、特に好ましくは6μm未満である。
(2.1.5.接着層の形成方法)
接着層の形成方法に、特段の制限は無い。例えば、接着層は、熱可塑性樹脂及び溶剤を含む樹脂液を用意する工程と、この樹脂液を適切な支持面に塗布して樹脂液の膜を形成する工程と、その膜を乾燥させる工程と、を含む方法によって形成できる。
溶媒としては、有機溶媒を用いうる。有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられ、炭化水素溶媒が好ましい。炭化水素溶媒としては、例えば、ヘキサン、n-オクタン、n-デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロドデカン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエン、ベンゼン、キシレン、デカヒドロナフタレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;などが挙げられる。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂液における熱可塑性樹脂の濃度は、特段の制限は無いが、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下、特に好ましくは30重量%以下である。
樹脂液を塗布する支持面としては、例えば、支持層の表面を用いてもよい。また、適切なフィルム、シート、基板等の部材の表面を、支持面として採用してもよい。通常は、樹脂液に含まれる溶媒に溶解しない部材の平滑な平面を、支持面として用いうる。
樹脂液の塗布方法に、特段の制限は無い。塗布方法としては、例えば、ドクターブレード法、シルクスクリーン法、スプレーコート法などが挙げられる。また、乾燥方法は、特段の制限は無い。乾燥方法としては、例えば、加熱乾燥法、風乾法などが挙げられる。
接着層の別の形成方法としては、例えば、熱可塑性樹脂が含むべき重合体の単量体及び溶媒を含む樹脂液を用意する工程と、この樹脂液を適切な支持面に塗布して樹脂液の膜を形成する工程と、その膜を乾燥させる工程と、単量体を重合させて重合体を得る工程と、を含む方法によって形成できる。この樹脂液は、有機ケイ素化合物を含んでいてもよく、任意の成分を含んでいてもよい。樹脂液の膜を形成した後で、その膜に含まれる単量体を、加熱処理及び露光処理等の重合処理によって重合させることにより、重合体を含む熱可塑性樹脂によって接着層を形成できる。
[2.2.支持層]
複合保護フィルムは、接着層に組み合わせて支持層を備える。支持層によれば、接着層への塵等の異物の付着を抑制できる。また、支持層によれば、通常、複合保護フィルムに安定した自己支持性を与え、複合保護フィルムのハンドリング性を向上させることができる。
支持層としては、通常、樹脂フィルムを用いる。樹脂フィルムは、重合体を含む樹脂によって形成されうる。重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体等の、脂環式構造を含有する重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;セルロースエステル重合体、ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリールスルホン;ポリ塩化ビニル、などが挙げられる。樹脂フィルムが含む重合体は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
通常、複合ガラスシートの使用時には、複合ガラスシートから支持層は剥離される。よって、支持層の剥離を円滑に行う観点から、支持層としては、離型フィルムが好ましい。離型フィルムとしては、例えば、表面を離型剤によって処理されたフィルムを用いうる。離型剤としては、ポリジメチルシロキサン等のシリコン系離型剤、フッ化アルキル等のフッ素系離型剤、長鎖アルキル系離型剤等が挙げられる。中でも、離型性及び加工性の観点から、シリコン系離型剤が好ましい。また、離型剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
支持層の厚みは、特段の制限は無いが、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、特に好ましくは50μm以下である。
[2.3.柔軟層]
複合保護フィルムは、接着層と支持層との間に、柔軟層を備えることが好ましい。柔軟層は、接着層よりも小さい貯蔵弾性率を有する。柔軟層を備える複合保護フィルムを用いて製造される複合ガラスシートは、その柔軟層を備えることができる。その複合ガラスシートは、画像表示装置等の対象物品に貼り合わせられる場合に、対象物品と柔軟層との間に空気が残留することを抑制できるので、気泡の形成を抑制できる。また、柔軟層によれば、通常は、複合保護フィルムの耐衝撃性を高めることができる。さらに、柔軟層によれば、複合保護フィルムを対象物品の面に設けた場合に、その面の耐衝撃性を高めることができる。
接着層の貯蔵弾性率と柔軟層の貯蔵弾性率との差は、通常0MPaより大きく、好ましくは10MPa以上、より好ましくは50MPa以上、特に好ましくは100MPa以上である。上限は、特段の制限は無いが、接着層自体の脆性を抑制する観点では、好ましくは5000MPa以下、より好ましくは3000MPa以下、特に好ましくは1000MPa以下である。
柔軟層の貯蔵弾性率は、複合ガラスシートと対象物品との密着性、複合保護フィルムの耐衝撃性、ガラス基材の屈曲耐性の観点から、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上であり、好ましくは100MPa以下、より好ましくは50MPa以下、特に好ましくは10MPa以下である。
柔軟層の貯蔵弾性率は、測定温度25℃において、動的粘弾性測定装置を用いて、周波数1Hzの条件で測定しうる。また、接着層の貯蔵弾性率と柔軟層の貯蔵弾性率との差は、測定温度25℃において評価できる。
柔軟層の貯蔵弾性率は、例えば、柔軟層に含まれる成分の種類及びその割合を調整することにより、調整できる。特に、軟化剤の割合を調整することにより、貯蔵弾性率を容易に調整できる。
柔軟層は、重合体を含む樹脂によって形成しうる。よって、柔軟層は、通常は樹脂を含み、好ましくは樹脂のみを含む。前記の樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。
柔軟層を形成する樹脂が含む重合体としては、例えば、接着層を形成する熱可塑性樹脂が含む重合体と同じものが挙げられる。また、重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、柔軟層を形成する樹脂は、Si重合体を含むことが好ましい。Si重合体を用いる場合、ガラス等の無機材料で形成された対象物品と柔軟層との接着強度を高めることができ、よって、複合ガラスシートを対象物品に特に強力に貼り合わせることが可能である。
柔軟層を形成する樹脂に含まれる重合体の量は、樹脂100重量%に対して、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは55重量%以上であり、通常100重量%以下、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。
柔軟層を形成する樹脂は、重合体に組み合わせて、軟化剤を含むことが好ましい。軟化剤により、柔軟層の貯蔵弾性率が低下させることができる。軟化剤としては、例えば、接着層において用いうる軟化剤と同じものが挙げられる。また、軟化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
軟化剤の量は、柔軟層の貯蔵弾性率を所望の範囲に収められるように調整することが好ましい。柔軟層を形成する樹脂に含まれる軟化剤の具体的な量は、その樹脂に含まれる重合体100重量部に対して、好ましくは20重量部以上、より好ましくは30重量部以上、特に好ましくは40重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは85重量部以下、特に好ましくは70重量部以下である。
柔軟層を形成する樹脂は、重合体及び軟化剤に組み合わせて更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、接着層に含まれうる成分と同じものが挙げられる。また、任意の成分の量は、接着層を形成する熱可塑性樹脂における量と同じでありうる。
柔軟層の厚みは、複合ガラスシートと対象物品との密着性、及び、複合保護フィルムの耐衝撃性の観点からは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上である。また、柔軟層の厚みは、ガラス基材の屈曲耐性の観点からは、好ましくは100μm以下、より好ましくは85μm以下、特に好ましくは75μm以下である。
柔軟層の形成方法に、特段の制限は無い。例えば、柔軟層は、樹脂及び溶剤を含む樹脂液を用意する工程と、この樹脂液を適切な支持面に塗布して樹脂液の膜を形成する工程と、その膜を乾燥させる工程と、を含む方法によって形成できる。この柔軟層の形成方法において、溶媒としては、例えば、接着層を形成するための樹脂液の溶媒と同じものを用いうる。また、柔軟層を形成するための樹脂液における樹脂の濃度は、特段の制限は無いが、接着層を形成するための樹脂液の濃度と同じであってもよい。さらに、支持面、樹脂液の塗布方法、及び乾燥方法は、例えば、接着層の形成方法と同じものを採用しうる。
また、柔軟層は、例えば、接着剤の形成方法と同じく、重合体の単量体を含む樹脂液を用いて形成してもよい。
[2.4.任意の層]
複合保護フィルムは、上述した接着層、支持層及び柔軟層に組み合わせて、更に任意の層を備えていてもよい。ただし、複合保護フィルムを薄くしてガラス基材の屈曲による破損を効果的に抑制する観点では、複合保護フィルムは、任意の層を備えないことが好ましい。よって、複合保護フィルムは、接着層及び支持層のみを備えるか、接着層、支持層及び柔軟層のみを備えることが好ましい。
[2.5.複合保護フィルムの製造方法]
複合保護フィルムの製造方法は、特段の制限は無い。複合保護フィルムは、例えば、接着層、柔軟層及び支持層といった複合保護フィルムの各層を別々に用意し、それらの層を貼り合わせることを含む方法によって製造してもよい。また、複合保護フィルムは、例えば、支持層上に他の層を順に形成することを含む方法によって製造してもよい。
ただし、複合保護フィルムの接着層が露出していると、接着層に塵等の異物が付着することがありうる。よって、複合保護フィルムを製造直後にガラス基材に貼り合わせず、保存及び運搬を行う場合には、接着層には離型フィルムが貼り合わせられていることが好ましい。よって、複合保護フィルムは、複合保護フィルムの接着層側の面に離型フィルムを備える複合保護フィルム積層体を用意する工程と、その複合保護フィルム積層体から離型フィルムを剥離する工程と、を含む方法によって製造してもよい。
図2は、本発明の一実施形態に係る複合保護フィルム積層体200を模式的に示す断面図である。図2に示すように、本発明の一実施形態に係る複合保護フィルム積層体200は、離型フィルム210、接着層110及び支持層120を、厚み方向においてこの順に備える。また、柔軟層130を備える複合保護フィルム100(図1参照)の製造に用いる複合保護フィルム積層体200は、離型フィルム210、接着層110、柔軟層130、及び支持層120、を、厚み方向においてこの順に備える。離型フィルム210としては、例えば、支持層の項で説明したものと同じものを用いうる。
複合保護フィルム積層体は、例えば、接着層、柔軟層、支持層及び離型フィルムといった複合保護フィルム積層体の各層を別々に用意し、それらの層を貼り合わせることを含む方法によって製造してもよい。また、複合保護フィルムは、例えば、支持層又は離型フィルム上に他の層を順に形成することを含む方法によって製造してもよい。具体例を挙げると、複合保護フィルム積層体は、離型フィルム上に接着層を形成して第一積層フィルムを得る工程と、支持層上に柔軟層を形成して第二積層フィルムを得る工程と、第一積層フィルムの接着層と第二積層フィルムの柔軟層とを貼り合わせて複合保護フィルム積層体を得る工程と、を含む方法によって製造できる。
通常は、この複合保護フィルム積層体が保存及び運搬され、ガラス基材と貼り合わせられる直前に複合保護フィルム積層体から離型フィルムが剥離されて複合保護フィルムが製造される。したがって、複合保護フィルムが市場に流通する場合には、複合保護フィルム積層体の形態で流通することが一般的である。
[3.ガラス基材を切断する工程]
図3は、本発明の一実施形態に係る複合ガラスシートの製造方法において、ガラス基材を切断する様子を模式的に示す側面図である。図3に示すように、本発明の一実施形態に係る複合ガラスシートの製造方法は、ガラス基材300を切断する工程を含む。
ガラス基材300としては、屈曲性に優れる複合ガラスシートを得る観点から、薄いシート状のものが好ましい。ガラス基材300の厚みは、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下である。下限は、特段の制限は無いが、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、特に好ましくは30μm以上である。
ガラス基材300の切断方法は、特に制限は無い。例えば、レーザー光を用いたレーザーカット法、ダイアモンドカッター等の切断装置を用いた物理的切断法、などを用いうる。また、ガラス基材300の切断には、ガラス基材300を切削して形状加工することが含まれうる。図3では、レーザー加工機310から照射されるレーザー光320によってガラス基材300を切断する例を示す。ガラス基材300の切断後の寸法は、製造される複合ガラスシートの寸法に応じて適切に設定することが好ましい。
[4.ガラス基材の片方の面に第一保護フィルムを貼り合わせる工程]
図4は、本発明の一実施形態に係る複合ガラスシートの製造方法において、ガラス基材300に第一保護フィルム400及び第二保護フィルム500を貼り合わせる様子を模式的に示す側面図である。図4に示すように、本発明の一実施形態に係る複合ガラスシートの製造方法は、切断後のガラス基材300の片方の面300Uに第一保護フィルム400を貼り合わせる工程を含む。
第一保護フィルム400としては、上述した複合保護フィルムを用いることが好ましい。図4では、第一保護フィルム400として、接着層110、柔軟層130及び支持層120をこの順に備える複合保護フィルム100を用いた例を示す。複合保護フィルム100をガラス基材300に貼り合わせる場合、図4に示すように、通常は、接着層110がガラス基材300の面300Uに接するように貼り合わせる。
第二保護フィルム500として複合保護フィルムを用いる場合には、第一保護フィルム400として、複合保護フィルム以外の保護フィルムを採用してもよい。複合保護フィルム以外の保護フィルムとしては、例えば樹脂フィルムを用いうる。樹脂フィルムとしては、例えば、支持層に用いる樹脂フィルムと同じ例が挙げられる。また、その保護フィルムは、ガラス基材300との貼り合わせを容易に行う観点から、粘着層を備えていてもよい。
ガラス基材300と第一保護フィルム400との貼り合わせ法は、特段の制限は無く、例えば、圧着法によって行いうる。ガラス基材300と第一保護フィルム400との貼り合わせの際に加える圧力は、ガラス基材300が破損しない範囲で適切に設定することが好ましい。また、必要に応じて、ガラス基材300と第一保護フィルム400との貼り合わせ時には加熱及び冷却等の温度調整を行ってもよい。
[5.ガラス基材のもう片方の面に第二保護フィルムを貼り合わせる工程]
本発明の一実施形態に係る複合ガラスシートの製造方法は、図4に示すように、切断後のガラス基材300のもう片方の面300Dに第二保護フィルム500を貼り合わせる工程を含む。
第二保護フィルム500としては、上述した複合保護フィルムを用いることが好ましい。第二保護フィルム500として複合保護フィルムをガラス基材300に貼り合わせる場合、通常は、接着層がガラス基材300の面300Dに接するように貼り合わせる。
第一保護フィルム400として複合保護フィルム100を用いる場合には、第二保護フィルム500として、複合保護フィルム以外の保護フィルムを採用してもよい。保護フィルムとしては、例えば、第一保護フィルム400として使用できる保護フィルムとして説明したものを用いうる。
ガラス基材300と第二保護フィルム500との貼り合わせ法は、特段の制限は無く、例えば、ガラス基材300と第一保護フィルム400との貼り合わせ法と同じ方法によって行いうる。
[6.ガラス基材の切断工程と複合保護フィルムの貼合工程との間の期間]
ガラス基材と複合保護フィルムとの貼り合わせは、ガラス基材の切断の後、速やかに行うことが好ましい。ガラス基材の切断の後、速やかに複合保護フィルムと貼り合わせる場合、ガラス基材が露出している期間を短くできるので、ガラス基材の表面に塵等の異物が付着したりガラス基材の表面が傷ついたりすることを抑制できる。
ガラス基材の切断の後に速やかに複合保護フィルムと貼り合わせる場合、通常は、ガラス基材を切断する工程と、ガラス基材の面及び複合保護フィルムを貼り合わせる工程との間には、ガラス基材の面に固体が接触しない。よって、前記の期間には、ガラス基材の表面(複合保護フィルムと貼り合わせられる面)には、従来のカバーフィルム等のフィルムは貼り合わせられない。前記のように速やかに貼り合わせを行うために、ガラス基材を切断した工場において、ガラス基材及び複合保護フィルムを貼り合わせが行われることが好ましい。
上述した製造方法では、接着層がガラス基材を保護するカバーフィルムとして機能できるので、接着層とは別にカバーガラスを用意する必要が無い。よって、カバーフィルムの貼り合わせ及び剥離を省略できるので、複合ガラスシートの製造工程数を減らすことができる。
[7.任意の工程]
複合フィルムの製造方法は、上述した工程に加えて、更に任意の工程を行ってもよい。複合フィルムの製造方法は、任意の工程として、例えば、ガラス基材及び複合保護フィルムを貼り合わせる工程の後に、特定の保管環境にガラス基材及び複合保護フィルムを保管する工程を含むことが好ましい。具体例を挙げると、複合フィルムの製造方法は、ガラス基材に第一保護フィルム及び第二保護フィルムの両方を貼り合わせた後で、得られた複合保護フィルムを特定の保管環境に保管することが好ましい。このような保管を、適宜「焼成」ということがある。
前記の保管環境の温度は、通常60℃以上、好ましくは65℃以上、より好ましくは70℃以上であり、好ましくは130℃以下、より好ましくは100℃以下、特に好ましくは90℃以下である。また、保管環境の湿度は、通常60%RH以上、好ましくは65%RH以上、より好ましくは70%RH以上であり、好ましくは95%RH以下、より好ましくは93%RH以下、特に好ましくは90%RH以下である。保管時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上、特に好ましくは30分以上であり、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下、特に好ましくは12時間以下である。
前記の保管環境に保管されることにより、ガラス基材と特定保護フィルムの接着層との接着強度を向上させることができる。特に、アルコキシシリル基を含むSi重合体又はシランカップリング剤を接着層を含む場合には、接着強度を効果的に高めることができる。アルコキシシリル基は、前記の保管環境において加水分解されてヒドロキシシリル基を生じうる。ヒドロキシシリル基は、ガラス基材の表面にあるヒドロキシ基と反応して、結合しうる。したがって、前記の保管環境に保管されると、物理吸着力だけでなく、化学的な結合によってもガラス基材と接着層とを結着させることができるので、ガラス基材と特定保護フィルムの接着層との接着強度を効果的に向上させることができる。
また、複合フィルムの製造方法は、例えば、第一保護フィルム及び第二保護フィルムと貼り合わせられる前のガラス基材に対して、洗浄処理、表面処理、ガラス基材を薬液に浸漬する化学強化処理などの処理を施す工程を含んでいてもよい。
[8.複合ガラスシート]
図5は、本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造される複合ガラスシートを模式的に示す断面図である。図5に示すように、上述した製造方法によれば、ガラス基材300と、ガラス基材300の片方の面300Uに設けられた第一保護フィルム400と、ガラス基材300のもう片方の面300Dに設けられた第二保護フィルム500と、を備える複合ガラスシート600を製造できる。
上述した製造方法では、第一保護フィルム400及び第二保護フィルム500の少なくとも一方として、複合保護フィルム100を用いている。したがって、製造される複合ガラスシート600は、少なくともガラス基材300及び接着層110を備え、好ましくはガラス基材300、接着層110及び柔軟層130を厚み方向においてこの順に備える。また、支持層120を剥離される前においては、複合ガラスシート600は、少なくともガラス基材300、接着層110及び支持層120を厚み方向においてこの順に備え、好ましくはガラス基材300、接着層110、支持層120及び柔軟層130を厚み方向においてこの順に備える。
接着層110が、Si重合体を含む熱可塑性樹脂、又は、有機ケイ素化合物を含む熱可塑性樹脂からなるので、その接着層110は、ガラス基材300に高い接着強度で接着できる。また、この接着層110によれば、ガラス基材300の表面を異物の付着及び傷付きから保護できる。さらに、支持層120によれば、ガラス基材300及び接着層110を異物の付着及び傷付きから保護できる。したがって、ガラス基材300の搬送及び保管時の保護のためにカバーフィルム(図示せず)を用意する必要が無い。また、柔軟層130が設けられている場合、搬送及び保管時の衝撃によるガラス基材300の破損を抑制することが可能である。
第一保護フィルム400及び第二保護フィルム500の一方は、複合保護フィルム以外のフィルムであってもよい。その場合でも、当該フィルムによってガラス基材300の搬送及び保管時にガラス基材300を保護することは可能である。
図6は、本発明の一実施形態に係る使用時の複合ガラスシート610を模式的に示す断面図である。通常、複合ガラスシート600の使用時には、支持層120は剥離される。また、第一保護フィルム400及び第二保護フィルム500のうち、複合保護フィルムでない保護フィルムも、複合ガラスシート600の使用時には剥離されうる。以下の説明では、支持層120を剥離した後の複合ガラスシートを、符号「610」で示すことがある。この複合ガラスシート610は、少なくともガラス基材300及び接着層110を備え、好ましくはガラス基材300、接着層110及び柔軟層130を厚み方向においてこの順に備える。
図7は、本発明の一実施形態に係る使用時の複合ガラスシート610を模式的に示す断面図である。複合ガラスシート610は、図7に示すように屈曲した場合でも、ガラス基材300の破損を抑制することができる。具体的には、ガラス基材300よりも接着層110の方を外側(即ち、屈曲によってより大きな引張張力が与えられる側)にして複合ガラスシート610を屈曲させた場合に、ガラス基材300の破損を抑制することが可能である。特に、このようにガラス基材300の破損を抑制できる効果は、柔軟層130が設けられている場合に特に顕著に発揮される。
前記のようにガラス基材300の破損を抑制できる効果は、破壊応力によって表すことができる。破壊応力は、リング曲げ試験によって測定できる。このリング曲げ試験では、複合ガラスシートを、大径のリングと小径のリングとの間に設置する。この際、厚み方向から見て、大径のリングの中心と小径のリングの中心とは、位置を一致させる。そして、小径のリングを大径のリングに向けて厚み方向に押込んで複合ガラスシートを屈曲させ、ガラス基材が破損した時点での荷重から破壊応力を求める。このとき破壊応力は次式(X)で与えられる。
式(X)において、Pは荷重を表し、tはガラス基材の厚みを表し、νはガラス基材のポアソン比を表し、RSは大径のリングの半径を表し、RLは小径のリングの半径を表し、Rはガラス基材の半径を表す。例えば、辺長Lの正方形のガラス基材の半径Rは、下記式(Y)で表される。
リング曲げ試験の具体的な方法は、実施例で説明する方法を採用できる。一例においては、複合ガラスシート610の破壊応力は、好ましくは900MPa以上、より好ましくは950MPa以上、特に好ましくは1000MPa以上にできる。
前記の複合ガラスシート610は、対象物品の面(例えば、画像表示装置の画面。図示せず。)に貼り合わせて、当該面を保護するための保護部材として使用されうる。複合ガラスシート610は、どちらの面で対象物品に貼り合わせられてもよい。例えば、対象物品側から接着層110及びガラス基材300の順に並ぶように貼り合わせられた場合、接着層110又は柔軟層130によって複合ガラスシート610を対象物品の面に高い接着強度で貼り合わせることができる。また、例えば、対象物品側からガラス基材300及び接着層110の順に並ぶように貼り合わせられた場合、ガラス基材300を異物の付着及び傷付きから保護できる。特に接着層を形成する側のガラス表面に引張応力が加わる場合、屈曲によるガラス基材の破損を抑制することが可能である。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧(23℃1気圧)大気中の条件において行った。
以下の説明において、「離型PETフィルム」は、別に断らない限り、表面に離型処理を施された厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「MRV38」)を表す。
[評価方法]
(重合体の分子量の測定方法)
重合体の重量平均分子量及び分子量分布は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算の値で測定した。
(水素化物の水素化率の測定方法)
水素化物の水素化率は、1H-NMRによる測定により求めた。
(貯蔵弾性率の測定方法)
接着層及び柔軟層の貯蔵弾性率は、測定温度25℃において、動的粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製「DMA7100」)を用いて、周波数1Hzの条件で測定した。
(破壊応力の測定方法)
複合ガラスシートの破壊応力は、下記のリング曲げ試験によって測定した。
精密万能試験機(島津製作所製「オートグラフAGS-X」)を用い、同心円曲げ用治具として直径6mmのリング状の上側圧子と直径12.5mmのリング状の下側圧子を取り付けた。上側圧子と下側圧子とは、それらの中心位置が一致するように取り付けた。また、実施例及び比較例で製造した複合ガラスシートのシートサンプルを、その複合ガラスシートの中心が下側圧子の中心にくるように設置した。この際、複合ガラスシートは、ガラス基材を上側圧子側になるように静置した。上側圧子を押し込み速度0.5mm/分にて、複合ガラスシートのガラス基材が破壊するまで押し込み、破壊応力を測定した。この破壊応力が大きいほど、複合ガラスシートが屈曲によるガラス基材の破損を抑制する能力に優れることを表す。
[製造例1.ケイ素原子を含有する極性基を有する重合体の製造]
(水素化ブロック共重合体の製造)
芳香族ビニル化合物としてスチレンを用い、鎖状共役ジエン化合物としてイソプレンを用いて、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック構造を有する、ブロック共重合体の水素化物(水素化ブロック共重合体)を、以下の手順により製造した。
内部が充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン256部、脱水スチレン25.0部、及びn-ジブチルエーテル0.615部を入れ、60℃で攪拌しながらn-ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)1.35部を加えて重合を開始させ、さらに、攪拌しながら60℃で60分反応させた。この時点での重合転化率は99.5%であった(重合転化率は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。以下にて同じ。)。
次に、脱水イソプレン50.0部を加え、同温度で30分攪拌を続けた。この時点での重合転化率は99%であった。
その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、同温度で60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。
次いで、反応液にイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させて、ブロック共重合体を含む溶液(i)を得た。
得られた溶液(i)中のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は44,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった。
次に、溶液(i)を攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、溶液(i)に水素化触媒としてシリカ-アルミナ担持型ニッケル触媒(E22U、ニッケル担持量60%;日揮化学工業社製)4.0部及び脱水シクロヘキサン350部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行なうことによりブロック共重合体を水素化して、ブロック共重合体の水素化物(ii)を含む溶液(iii)を得た。溶液(iii)中の水素化物(ii)の重量平均分子量(Mw)は45,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
水素化反応の終了後、溶液(iii)をろ過して水素化触媒を除去した。その後、ろ過された溶液(iii)に、リン系酸化防止剤である6-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラキス-t-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン(住友化学社製「スミライザー(登録商標)GP」。以下、「酸化防止剤A」という。)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させ、溶液(iv)を得た。
次いで、溶液(iv)を、ゼータプラス(登録商標)フィルター30H(キュノー社製、孔径0.5μm~1μm)にて濾過し、更に別の金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて順次濾過して微小な固形分を除去した。ろ過された溶液(iv)から、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。そして、前記の濃縮乾燥器に直結したダイから、固形分を溶融状態でストランド状に押出し、冷却し、ペレタイザーでカットして、ブロック共重合体の水素化物及び酸化防止剤Aを含有する、ペレット(v)85部を得た。得られたペレット(v)中のブロック共重合体の水素化物(水素化ブロック共重合体)の重量平均分子量(Mw)は45,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。また、水素化率は99.9%であった。
(水素化ブロック共重合体のシラン変性物の製造)
ペレット(v)100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部及びジ-t-ブチルパーオキサイド0.2部を添加し、混合物を得た。この混合物を、二軸押出し機を用いて、バレル温度210℃、滞留時間80秒~90秒で混練した。混練された混合物を押し出し、ペレタイザーでカットして、水素化ブロック共重合体のシラン変性物のペレット(vi)を得た。このペレット(vi)からフィルム状の試験片を作製し、ガラス転移温度Tgを動的粘弾性測定装置のtanδピークで評価したところ、124℃であった。
[実施例1]
(1-1.複合保護フィルムの製造)
製造例1で製造した水素化ブロック共重合体のシラン変性物のペレット(vi)を20部、軟化剤としてのポリブテン5部、溶媒としてのエチルシクロヘキサン75部を混合し、接着層溶液を作製した。この接着剤溶液を離型PETフィルム1に塗布し、乾燥して、接着層(厚み5μm)/離型PETフィルム1の層構成を有する積層フィルム1を得た。接着層の貯蔵弾性率は、180MPaであった。
また、製造例1で製造した水素化ブロック共重合体のシラン変性物のペレット(vi)を24部、軟化剤としてのポリブテン16部、溶媒としてのエチルシクロヘキサン60部を混合し、柔軟層溶液を作製した。この柔軟剤溶液を離型PETフィルム2に塗布し、乾燥して、柔軟層(厚み45μm)/離型PETフィルム2の層構成を有する積層フィルム2を得た。柔軟層の貯蔵弾性率は、5MPaであった。
積層フィルム1の接着層と積層フィルム2の柔軟層とを貼り合わせて、離型PETフィルム2/柔軟層/接着層/離型PETフィルム1の層構成を有する複合保護フィルム積層体を得た。その後、離型PETフィルム1を剥離して、離型PETフィルム2/柔軟層/接着層の層構成を有する複合保護フィルム1を得た。
(1-2.ガラス基材の切断)
サイズ20cm角、厚さ50μmのシート状のガラス基材を、5cm角にレーザーカットした。カットには、炭酸イオンレーザーを用いた。得られた5cm角のガラス基材は、その両方の主表面に触れること無く、次の保護フィルムとの貼り合わせに供した。
(1-3.保護フィルムの貼り合わせ)
この5cm角のガラス基材の片方の面に、第二保護フィルムとして、粘着層を備える樹脂フィルム(日東電工社製「SPV-363」)を貼り合わせた。さらに、ガラス基材のもう片方の面に、第一保護フィルムとして複合保護フィルム1を貼り合わせて、第二保護フィルム/ガラス基材/接着層/柔軟層/離型PETフィルム2の層構成を有する複合ガラスシートを得た。その後、この複合ガラスシートを、温度85℃、湿度85%RHの条件で、30分焼成した。
得られた複合ガラスシートから、第二保護フィルムと離型PETフィルム2を剥離して、ガラス基材/接着層/柔軟層の層構成を有するシートサンプルを得た。
[実施例2]
(2-1.複合保護フィルムの製造)
実施例1の工程(1-1)と同じ方法により、複合保護フィルム1を製造した。
(2-2.ガラス基材の切断)
サイズ15cm角、厚さ0.4mm、ポアソン比0.22のシート状のガラス基材を、5cm角にレーザーカットした。カットには、炭酸イオンレーザーを用いた。得られた5cm角のガラス基材は、その両方の主表面に触れること無く、次の保護フィルムとの貼り合わせに供した。
(2-3.保護フィルムの貼り合わせ)
この5cm角のガラス基材の片方の面に、第二保護フィルムとして、粘着層を備える樹脂フィルム(日東電工社製「SPV-363」)を貼り合わせた。さらに、ガラス基材のもう片方の面に、第一保護フィルムとして複合保護フィルム1を貼り合わせて、第二保護フィルム/ガラス基材/接着層/柔軟層/離型PETフィルム2の層構成を有する複合ガラスシートを得た。その後、この複合ガラスシートを、温度85℃、湿度85%RHの条件で30分焼成した。
得られた複合ガラスシートから、第二保護フィルムと離型PETフィルム2を剥離して、ガラス基材/接着層/柔軟層の層構成を有するシートサンプルを得た。このシートサンプルについて、リング曲げ試験により破壊応力を測定したところ、1100Mpaであった。
[実施例3]
(3-1.複合保護フィルムの製造)
製造例1で製造した水素化ブロック共重合体のシラン変性物のペレット(vi)を20部、軟化剤としてのポリブテン5部、溶媒としてのエチルシクロヘキサン75部を混合し、接着層溶液を作製した。この接着剤溶液を離型PETフィルム1に塗布し、乾燥して、接着層(厚み5μm)/離型PETフィルム1の層構成を有する積層フィルム1を得た。接着層の貯蔵弾性率は、180MPaであった。
積層フィルム1の接着層側の面に、柔軟層として透明な粘着性樹脂フィルム(厚み25μm、日東電工社製「CS9861US」)を貼り合わせた。柔軟層の貯蔵弾性率は、0.3MPaであった。さらに、柔軟層の表面に離型PETフィルム2を貼り合わせて、離型PETフィルム2/柔軟層/接着層/離形PETフィルム1の層構成を有する複合保護フィルム積層体を得た。その後、離型PETフィルム1を剥離して、離型PETフィルム2/柔軟層/接着層の層構成を有する複合保護フィルム2を得た。
(3-2.ガラス基材の切断)
サイズ15cm角、厚さ0.4mm、ポアソン比0.22のシート状のガラス基材を、5cm角にレーザーカットした。カットには、炭酸イオンレーザーを用いた。得られた5cm角のガラス基材は、その両方の主表面に触れること無く、次の保護フィルムとの貼り合わせに供した。
(3-3.保護フィルムの貼り合わせ)
この5cm角のガラス基材の片方の面に、第二保護フィルムとして、粘着層を備える樹脂フィルム(日東電工社製「SPV-363」)を貼り合わせた。さらに、ガラス基材のもう片方の面に、第一保護フィルムとして複合保護フィルム2を貼り合わせて、第二保護フィルム/ガラス基材/接着層/柔軟層/離型PETフィルム2の層構成を有する複合ガラスシートを得た。その後、この複合ガラスシートを、温度85℃、湿度85%RHの条件で30分焼成した。
得られた複合ガラスシートから、第二保護フィルムと離形PETフィルム2を剥離して、ガラス基材/接着層/柔軟層の層構成を有するシートサンプルを得た。このシートサンプルについて、リング曲げ試験により破壊応力を測定したところ、1080MPaであった。
[比較例1]
(C1-1.積層フィルムの製造)
製造例1で製造したブロック共重合体の水素化物を含むペレット(v)を24部、軟化剤としてのポリブテン16部、溶媒としてのエチルシクロヘキサン60部を混合し、柔軟層溶液を作製した。この柔軟剤溶液を離型PETフィルム2に塗布し、乾燥して、柔軟層(厚み50μm)/離型PETフィルム2の層構成を有する積層フィルムC1を得た。柔軟層の貯蔵弾性率は、5MPaであった。
(C1-2.ガラス基材の切断)
サイズ15cm角、厚さ0.4mm、ポアソン比0.22のシート状のガラス基材を、5cm角にレーザーカットした。カットには、炭酸イオンレーザーを用いた。得られた5cm角のガラス基材は、その両方の主表面に触れること無く、次の保護フィルムとの貼り合わせに供した。
(C1-3.保護フィルムの貼り合わせ)
この5cm角のガラス基材の片方の面に、第二保護フィルムとして、粘着層を備える樹脂フィルム(日東電工社製「SPV-363」)を貼り合わせた。さらに、ガラス基材のもう片方の面に、第一保護フィルムとして積層フィルムC1を貼り合わせて、第二保護フィルム/ガラス基材/柔軟層/離型PETフィルム1の層構成を有する複合ガラスシートを得た。その後、この複合ガラスシートを、温度85℃、湿度85%RHの条件で30分焼成した。
得られた複合ガラスシートから、第二保護フィルムと離形PETフィルム1を剥離して、ガラス基材/柔軟層の層構成を有するシートサンプルを得た。このシートサンプルについて、リング曲げ試験により破壊応力を測定したところ、830MPaであった。
[比較例2]
(C2-1.積層フィルムの製造)
製造例1で製造したブロック共重合体の水素化物を含むペレット(v)を20部、軟化剤としてのポリブテン5部、溶媒としてのエチルシクロヘキサン75部を混合し、接着層溶液を作製した。この接着剤溶液を離型PETフィルム1に塗布し、乾燥して、接着層(厚み5μm)/離型PETフィルム1の層構成を有する積層フィルムC2を得た。この接着層の貯蔵弾性率は、185MPaであった。
積層フィルムC2の接着層側の面に、柔軟層として透明な粘着性樹脂フィルム(厚み25μm、日東電工社製「CS9861US」)を貼り合わせて、柔軟層/接着層/離型PETフィルム1の層構成を有する積層フィルムC3を得た。柔軟層の貯蔵弾性率は、0.3MPaであった。
(C2-2.ガラス基材の切断)
サイズ15cm角、厚さ0.4mm、ポアソン比0.22のシート状のガラス基材を、5cm角にレーザーカットした。カットには、炭酸イオンレーザーを用いた。得られた5cm角のガラス基材は、その両方の主表面に触れること無く、次の保護フィルムとの貼り合わせに供した。
(C2-3.保護フィルムの貼り合わせ)
この5cm角のガラス基材の片方の面に、第二保護フィルムとして、粘着層を備える樹脂フィルム(日東電工社製「SPV-363」)を貼り合わせた。さらに、ガラス基材のもう片方の面に、第一保護フィルムとして複層フィルムC3を貼り合わせて、第二保護フィルム/ガラス基材/接着層/柔軟層/離型PETフィルム1の層構成を有する複合ガラスシートを得た。その後、この複合ガラスシートを、温度85℃、湿度85%RHの条件で30分焼成した。
得られた複合ガラスシートから、第二保護フィルムと離型PETフィルム1を剥離して、ガラス基材/接着層/柔軟層の層構成を有するシートサンプルを得た。このシートサンプルについて、リング曲げ試験により破壊応力を測定したところ、830MPaであった。
[比較例3]
サイズ5cm角、厚さ0.4mm、ポアソン比0.22のシート状のガラス基材について、リング曲げ試験により破壊応力を測定したところ、820MPaであった。
[結果]
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。
[実施例4~6]
複合ガラスシートを温度85℃湿度85%RHの条件で30分焼成する工程を行わなかったこと以外は実施例1~3と同じ方法で、実施例4~6の複合ガラスシートを製造した。人の手によって複合ガラスシートのガラス基材から接着層を剥がしたところ、実施例1~3の複合ガラスシートの方が、実施例4~6の複合ガラスシートよりも、接着層を剥がすために明らかに大きな力を要した。この結果から、焼成により、ガラス基材と接着層との接着強度が向上していたことが確認された。