以下、適宜図面を参照しながら、ここに開示される技術の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない蓄電モジュールや蓄電デバイスの一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握されうる。ここに開示される蓄電モジュールは、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。また、本明細書において「等しい」という表記は、必ずしも完全一致のみを指すものではなく、例えば、±5%程度の変動(製造誤差等)を許容しうるものとする。
[蓄電モジュール]
図1は、蓄電モジュール500を模式的に示す斜視図である。蓄電モジュール500は、ここでは、複数の蓄電デバイス100と、複数のスペーサ200と、拘束機構300と、を備えている。ただし、複数のスペーサ200および拘束機構300は必須でなく、他の実施形態において省略することもできる。
なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、蓄電デバイス100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。短辺方向Xは、蓄電デバイス100の配列方向でもある。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、蓄電モジュール500の設置形態を何ら限定するものではない。
拘束機構300は、複数の蓄電デバイス100を拘束する部材である。拘束機構300は、ここでは1つである。拘束機構300は、ここでは、全ての蓄電デバイス100とスペーサ200とに対して、配列方向Xから等しい拘束圧を印加するように構成されている。拘束機構300は、一対のエンドプレート310と、一対のサイドプレート320と、複数のビス330と、を備えている。一対のエンドプレート310および一対のサイドプレート320は、複数の蓄電デバイス100を収容する筐体としても把握されうる。一対のエンドプレート310および一対のサイドプレート320は、金属製であることが好ましい。
一対のエンドプレート310は、配列方向Xにおいて蓄電モジュール500の両端に配置されている。一対のエンドプレート310は、複数の蓄電デバイス100と複数のスペーサ200とを配列方向Xに挟み込んでいる。一対のサイドプレート320は、一対のエンドプレート310を架橋している。一対のサイドプレート320は、例えば、拘束荷重が10~15kN程度となるように、複数のビス330によってエンドプレート310に固定されている。これにより、複数の蓄電デバイス100に対して配列方向Xから均一な拘束荷重が印加され、複数の蓄電デバイス100が一体的に保持されている。ただし、拘束機構の構成はこれに限定されるものではない。拘束機構300は、例えばサイドプレート320にかえて、複数の拘束バンドやバインドバー等を備えていてもよい。
スペーサ200は、ここでは配列方向Xにおいて複数の蓄電デバイス100の間にそれぞれ配置されている。すなわち、配列方向Xでは、蓄電デバイス100とスペーサ200とが交互に並んでいる。ただし、蓄電モジュール500がスペーサ200を含まない場合には、配列方向Xに隣り合う蓄電デバイス100同士が当接(直接接触)していてもよい。スペーサ200は、流体(典型的には、空気等の気体)が通過可能な多孔質構造の部分を含むことが好ましい。
蓄電デバイス100は、繰り返し充放電が可能なデバイスである。なお、本明細書において「蓄電デバイス」とは、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の二次電池と、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタと、を包含する概念である。複数の蓄電デバイス100は、ここでは、一対のエンドプレート310の間に、配列方向X(言い換えれば蓄電デバイス100の厚み方向X)に沿って配置されている。複数の蓄電デバイス100は、拘束機構300で拘束されていることが好ましい。なお、複数の蓄電デバイス100の形状、サイズ、個数等は図1に開示される態様に限定されることなく、適宜変更することができる。
ここでは図示を省略しているが、蓄電モジュール500の使用時には、複数の蓄電デバイス100がバスバー等の導電部材によって相互に電気的に接続される。接続方法は特に制限されず、例えば、直列、並列、あるいは多直列多並列等であってもよい。好適な一態様では、複数の蓄電デバイス100が直列に接続される。これにより、例えば車両等の移動体への使用に適したレベルまで、好適に出力特性を向上できる。また、直列接続の場合、一部の蓄電デバイス100の性能悪化が蓄電モジュール500全体の性能悪化につながりやすい。そのため、ここに開示される技術を適用することが殊に効果的である。
図2は、蓄電デバイス100の斜視図である。図1、図2からわかるように、複数の蓄電デバイス100は、いずれも扁平な角型であり、ここでは同一形状である。複数の蓄電デバイス100は、後述する長側壁12b同士が平行になるように配置されている。複数の蓄電デバイス100は、ここではスペーサ200を介して長側壁12b同士が相互に対向するように、配列方向Xに並んでいる。
図3は、図2のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。図3に示すように、蓄電デバイス100は、ここでは、電池ケース10と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40と、を備えている。図示は省略するが、蓄電デバイス100は、ここではさらに非水電解液を備えている。蓄電デバイス100は、正極端子30と負極端子40とが取り付けられた電池ケース10に、電極体20と非水電解液とが収容されて構成されている。蓄電デバイス100は、典型的には非水電解液二次電池であり、ここではリチウムイオン二次電池である。蓄電デバイス100が非水電解液二次電池(特にはリチウムイオン二次電池)である場合、ここに開示される技術を適用することが殊に効果的である。
電池ケース10は、電極体20および非水電解液を収容する容器である。図2に示すように、電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなっている。電池ケース10は、図3に示すように、開口12hを有する外装体12と、開口12hを封口する封口板(蓋体)14と、を備えている。外装体12は、図2に示すように、長辺および短辺を有する略矩形状の底壁12aと、底壁12aの長辺から延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aの短辺から延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。長側壁12bは平坦である。
封口板14は、板状部材である。封口板14は、略矩形状である。封口板14は、図3に示すように、外装体12の開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(好ましくは溶接接合)されることによって、一体化されている。電池ケース10は、気密に封止(密閉)されている。封口板14には、注液孔15と、2つの端子引出孔18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後、非水電解液を注液するためのものである。注液孔15は、封止部材16により封止されている。端子引出孔18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。
正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一端部(図2、図3の左端部)に配置され、負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他端部(図2、図3の右端部)に配置されている。図3に示すように、正極端子30および負極端子40は、それぞれ、端子引出孔18、19を挿通して封口板14の内部から外部へと延びている。正極端子30および負極端子40は、ここでは、かしめ加工により、封口板14の端子引出孔18、19を囲む周縁部分に、かしめられている。正極端子30および負極端子40の外装体12の側の端部(図3の下端部)には、かしめ部30c、40cが形成されている。これにより、正極端子30および負極端子40は、封口板14に固定されている。
図3に示すように、正極端子30は、外装体12の内部で正極集電部50を介して電極体20の正極タブ群23と電気的に接続されている。正極端子30は、内部絶縁部材80およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。負極端子40は、外装体12の内部で、負極集電部60を介して電極体20の負極タブ群25と電気的に接続されている。負極端子40は、内部絶縁部材80およびガスケット90によって封口板14と絶縁されている。
図2、図3に示すように、封口板14の外側の面には、板状の正極外部導電部材32および負極外部導電部材42が取り付けられている。正極外部導電部材32は、正極端子30と電気的に接続されている。負極外部導電部材42は、負極端子40と電気的に接続されている。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、複数の蓄電デバイス100を相互に電気的に接続するバスバー等の導電部材が付設される部材である。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、外部絶縁部材92によって封口板14と絶縁されている。蓄電モジュール500は、例えば、配列方向Xにおいて隣り合う蓄電デバイス100のうち、一方の蓄電デバイス100の正極外部導電部材32と、他方の蓄電デバイス100の負極外部導電部材42とがバスバー等で電気的に接続されることにより、直列に接続される。
図4は、電極体20の構成を示す模式図である。図4に示すように、電極体20は、正極22と、負極24と、セパレータ26と、を有する。電極体20は、ここでは、帯状の正極22と、帯状の負極24とが、帯状のセパレータ26を介して積層され、捲回軸WLを中心として捲回されてなる捲回電極体である。電極体20は、外形が扁平形状である。電極体20は、ここでは捲回軸WLが長辺方向Yと略平行になる向きで外装体12の内部に配置されている。ただし、他の実施形態において、電極体20は、捲回軸WLが上下方向Zと略平行になる向きで外装体12の内部に配置されていてもよい。また、電極体20は、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の正極と、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の負極とが、絶縁された状態で積み重ねられてなる積層型電極体であってもよい。
正極22の構成は従来と同様であってよい。正極22は、ここでは、正極集電体22cと、正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極集電体22cは、帯状である。正極集電体22cは、金属製であることが好ましく、金属箔からなることがより好ましい。正極集電体22cは、ここではアルミニウム箔である。
正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(図4の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、長辺方向Yの一方側(図4の左側)に向かって突出している。複数の正極タブ22tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。正極タブ22tは、ここでは正極集電体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。複数の正極タブ22tは長辺方向Yの一方の端部(図4の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成している。正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続されている。
正極活物質層22aは、正極集電体22cの片面または両面(ここでは両面)に、正極集電体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質を含んでいる。正極活物質としては、例えばリチウム遷移金属複合酸化物やリチウム遷移金属リン酸化合物が挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属元素として、Ni、Co、Mnのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。リチウム遷移金属複合酸化物の具体例としては、例えば、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。なかでも、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物が好ましい。正極活物質は、1種単独で用いてよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書において「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、Li、Ni、Co、Mn、Oを構成元素とする酸化物の他に、それら以外の1種または2種以上の添加的な元素を含んだ酸化物をも包含する用語である。添加的な元素の例としては、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等の遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、B、C、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。このことは、上記したリチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等についても同様である。
特に限定されるものではないが、正極活物質層22a中の正極活物質の割合は、80質量%以上が好ましく、例えば90~99質量%がより好ましい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、導電材、等の各種添加成分を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等が挙げられる。導電材としては、例えばカーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。特に限定されるものではないが、例えば車両等の移動体に搭載されるような蓄電モジュール500において、正極活物質層22aの厚み(正極集電体22cの片面当たりの平均厚み)は、例えば10~300μmであり、好ましくは20~200μmである。
特に限定されるものではないが、例えばハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)等の移動体に搭載されるような蓄電モジュール500において、正極活物質層22aの捲回軸WL方向の幅(平均値、正極タブ22tに形成された部分は除く)、言い換えれば幅方向Yの長さLpは、5cm以上が好ましく、9cm以上がより好ましく、例えば10cm以上、15cm以上、20cm以上、25cm以上がさらに好ましい。長さLpは、例えば100cm以下、50cm以下、30cm以下であってもよい。
正極保護層22pは、長辺方向Yにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分、等を含んでいてもよい。
負極24の構成は従来と同様であってよい。負極24は、ここでは、負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極集電体24cは、帯状である。負極集電体24cは、金属製であることが好ましく、金属箔からなることがより好ましい。負極集電体24cは、ここでは銅箔である。
負極集電体24cの長辺方向Yの一方の端部(図4の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、長辺方向Yの一方側(図4の右側)に向かって突出している。複数の負極タブ24tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。負極タブ24tは、ここでは負極集電体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。複数の負極タブ24tは長辺方向Yの一方の端部(図4の右端部)で積層され、負極タブ群25を構成している。負極タブ群25は、長辺方向Yにおいて正極タブ群23と対称的な位置に設けられている。負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。
負極活物質層24aは、負極集電体24cの片面または両面(ここでは両面)に、負極集電体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質を含んでいる。負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料や、シリコンを含む化合物(Si含有材料)等が挙げられる。黒鉛は、天然黒鉛であっても人造黒鉛であってもよく、黒鉛が非晶質な炭素材料で被覆された形態の非晶質炭素被覆黒鉛であってもよい。
特に限定されるものではないが、負極活物質層24a中の負極活物質の割合は、90質量%以上が好ましく、例えば95~99質量%がより好ましい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、増粘剤、分散剤、等の各種添加成分を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等が挙げられる。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。特に限定されるものではないが、負極活物質層24aの厚み(負極集電体24cの片面当たりの平均厚み)は、例えば車両等の移動体に搭載されるような蓄電モジュール500において、例えば10~400μmであり、好ましくは20~300μmである。
負極活物質層24aの捲回軸WL方向の幅(平均値、負極タブ24tに形成された部分は除く)、言い換えれば幅方向Yの長さLnは、図4に示すように、正極活物質層22aの長さLpと同じかそれよりも長いことが好ましい。長さLnは、高容量化と高出力化とをバランスする観点等から、5cm以上が好ましく、9cm以上がより好ましく、例えば10cm以上、15cm以上、20cm以上、25cm以上がさらに好ましい。長さLnは、例えば100cm以下、50cm以下、30cm以下であってもよい。
セパレータ26は、正極22と負極24との間に配置されている。セパレータ26は、正極22と負極24とを絶縁する部材である。セパレータ26の構成は従来と同様であってよい。セパレータ26の長辺方向Yの長さLsは、負極活物質層24aの長辺方向Yの長さLnと同じかそれよりも長いことが好ましい。セパレータ26としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シート(微多孔膜)が好適である。セパレータ26は、樹脂製の多孔性シートの表面に、機能層(例えば、接着層や耐熱層(Heat Resistance Layer:HRL)等)を備えていてもよい。
非水電解液の構成は従来と同様であってよい。非水電解液は、典型的には、非水溶媒と支持塩(電解質塩)とを含んでいる。非水溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類である。支持塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のフッ素含有リチウム塩や、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)である。非水電解液は、必要に応じてさらに添加剤を含んでもよい。非水電解液は、典型的には液状であるが、ゲル状であってもよい。また、他の実施形態において、蓄電デバイス100は、非水電解液にかえて固体電解質を備えていてもよい。その場合、セパレータ26は省略することができる。
図5は、蓄電モジュール500および冷却装置400を模式的に示す平面図である。なお、図5では、スペーサ200および蓄電デバイス100の上面の詳しい図示は省略している。図5に示すように、冷却装置400は、ここでは、吸気口IPと、排気口OPと、空冷ファン410と、温度センサ420と、制御装置430と、を備えている。冷却装置400は、ここでは冷媒として空気を使用する空冷型の冷却装置である。ただし、他の実施形態において、冷却装置400、液冷媒を用いる液冷型の冷却装置であってもよい。
本実施形態において、吸気口IPは、蓄電モジュール500の配列方向Xの一方側(前方F側)に設けられている。排気口OPは、配列方向Xの他方側(後方Rr側)に設けられている。空冷ファン410は、吸気口IPに取付けられている。空冷ファン410は、吸気口IPに風(空気)を送るように構成されている。空冷ファン410の構成は限定されないが、例えば電動モータ(図示省略)を備えている。温度センサ420は、ここでは蓄電モジュール500のXY平面における中心部に配置されている。温度センサ420は、例えば、熱電対やサーミスタ等である。
制御装置430は、温度センサ420および空冷ファン410の電動モータと電気的に接続されている。制御装置430は、例えば温度センサ420によって蓄電モジュール500内の温度が所定の第1温度以上になったことが検知されると、空冷ファン410を動作させる。これにより、蓄電モジュール500外の低温の空気が吸気口IPから蓄電モジュール500内に供給され、蓄電モジュール500内に空気流れAFが生じる。供給された空気は、蓄電デバイス100を冷却しながら蓄電モジュール500内を通過して、排気口OPから排出される。制御装置430は、例えば温度センサ420によって蓄電モジュール500内の温度が所定の第2温度以下になったことが検知されると、空冷ファン410を停止させる。このような空冷型の冷却装置400によれば、低コストで蓄電デバイス100を冷却できる。
ところで、本発明者らの検討によれば、例えば冷却装置400のような冷却機構を備えた蓄電モジュール500の内部には、複数の蓄電デバイス100の充放電時に温度分布が生じ、相対的に温度が低くなる低温領域A1と、相対的に温度が高くなる高温領域A2と、が生じうる。具体的には、蓄電デバイス100が充放電に伴って発熱すると、隣接した蓄電デバイス100同士が相互に加熱し合う。これにより、配列方向Xの中央部では、蓄電デバイス100同士の連鎖的な発熱が生じ、相対的に温度が高くなりやすい。一方、配列方向Xの両端部(図5の前方F部および後方Rr部)は、中央部に比べて放熱性が高いため、連鎖的な発熱が生じにくい。よって、配列方向Xの両端部では、相対的に温度が低くなりやすい。
とりわけ本実施形態では、配列方向Xの前方F側に、冷媒(空気)が供給される吸気口IPおよび空冷ファン410が配置され、配列方向Xの後方Rr側に、排気口OPが配置されている。このため、配列方向Xの両端部が低温になりやすい。ゆえに、配列方向Xの中央部が、相対的に温度が高い高温領域A2となり、配列方向Xの両端部(図5の前方F部および後方Rr部)が、相対的に温度が低い低温領域A1となりやすい。特には、吸気口IPおよび空冷ファン410が配置されている配列方向Xの前方F部が最も低温になりやすい。すなわち、本実施形態では、配列方向Xの少なくとも前方F側が、相対的に温度が低い低温領域A1となりやすい。
例えば特許文献1等にも記載されている通り、このように蓄電モジュール500内に温度分布が生じていると、蓄電デバイス100のハイレート耐性にバラつきが生じうる。詳しくは、低温領域A1で蓄電デバイス100のハイレート耐性が低くなりうる。この場合、低温領域A1の蓄電デバイス100のハイレート耐性を基準にして蓄電モジュール500全体の充放電を制御すると、高温領域A2の蓄電デバイス100が有する高いハイレート耐性を十分に活用することができない。一方、高温領域A2の蓄電デバイス100のハイレート耐性を基準にすると、低温領域A1の蓄電デバイス100に高い電圧が掛かって、ハイレート劣化が加速しやすい。このように、蓄電モジュール500内に温度分布が生じていると、低温領域A1の蓄電デバイス100のハイレート耐性に引っ張られ、蓄電モジュール500全体のハイレート耐性が低下する虞がある。さらに、蓄電モジュールを車両等の移動体に搭載する場合は、燃費が悪化する虞もある。
そこで、ここに開示される技術では、複数の蓄電デバイス100として、正極22と負極24との対向容量比が相互に異なる第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とを用いている。第1蓄電デバイス110は、第2蓄電デバイス120よりも対向容量比が高くなっている。詳しくは後述するが、本発明者らの検討の結果、対向容量比が高い蓄電デバイス100ほどハイレート耐性が高くなることが確認されている。そのため、本実施形態では、相対的に温度が低い低温領域A1、ここでは配列方向Xの両端部(図5の前方F部および後方Rr部)に、相対的に対向容量比が高い(ハイレート耐性の高い)第1蓄電デバイス110を配置している。また、相対的に温度が高い高温領域A2、ここでは配列方向Xの中央部に、相対的に対向容量比が低い(ハイレート耐性が低い)第2蓄電デバイス120を配置している。
このような構成によれば、複数の蓄電デバイス100のハイレート耐性を高いレベルで平準化できる。ひいては、劣化の加速を抑制して、蓄電モジュール500全体のハイレート耐性を向上できる。また、特許文献1の技術とは異なり「セル群」という枠組みにとらわれる必要がないため、蓄電モジュール500内の温度分布に応じて複数の蓄電デバイス100のハイレート耐性を柔軟に調節できる。ゆえに、特許文献1の技術に比べて高精度に複数の蓄電デバイス100のハイレート耐性を平準化できる場合もある。さらに、特許文献1の技術に比べて拘束機構300の数を削減できるため、体積エネルギー密度や燃費をも向上できる。加えて、部品点数を削減して、製造コストを低減できる。
なお、対向容量比は、正極22の単位面積当たりの理論容量(mAh/cm2)に対する、負極24の単位面積当たりの理論容量(mAh/cm2)の比(負極理論容量/正極理論容量)であり、典型的には、正極活物質層22aと負極活物質層24aとが対向する対向部(ここでは、正極活物質層22aの幅Lpの領域)について、次の式:対向容量比={負極24の単位面積当たりの負極活物質の質量(g/cm2)×負極活物質の理論電気容量(mAh/g)}/{正極22の単位面積当たりの正極活物質の質量(g/cm2)×正極活物質の理論電気容量(mAh/g)};で求められる値である。なお、正極活物質および負極活物質の理論電気容量(ないしその算出方法)は公知であり、例えば、黒鉛の理論電気容量は、372mAh/gである。また、単位面積当たりの正極活物質の質量および負極活物質の質量は、それぞれ、正極22と負極24とが対向する領域における平均値であることが好ましい。
上記式からも明らかなように、対向容量比は、例えば正極22および/または負極24の製造時に、正極集電体22cの単位面積当たりの正極活物質層22aの質量(正極活物質層22aの目付量)、および/または、負極集電体24cの単位面積当たりの負極活物質層24aの質量(負極活物質層24aの目付量)を変化させることによって調整することができる。本実施形態のように第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とがそれぞれ複数である場合は、複数の第1蓄電デバイス110のいずれもが、複数の第2蓄電デバイス120よりも相対的に対向容量比が高いことが好ましい。
特に限定されるものではないが、例えば車両等の移動体に搭載されるような蓄電モジュール500において、エネルギー密度とハイレート耐性とを高いレベルでバランスする観点等から、第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とは、いずれも、対向容量比が、典型的には、1.0以上であり、概ね1.0~2.0の範囲にあることが好ましい。特に、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)に搭載されるような高出力タイプの蓄電モジュール500では、対向容量比が、1.2~1.9の範囲にあることがより好ましく、例えば1.3~1.8の範囲にあるとよい。ただし、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)に搭載されるような高容量タイプの蓄電モジュール500では、エネルギー密度が優先のため、対向容量比を1.0~1.2程度とする場合もある。対向容量比を所定値以上とすることで、蓄電モジュール500のハイレート充電特性を向上できる。
蓄電モジュール500内の温度分布にもよるが、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)に搭載されるような高出力タイプの蓄電モジュール500において、第1蓄電デバイス110は、対向容量比が、概ね1.0~2.0、例えば1.6~1.9の範囲にあることが好ましく、1.7~1.8の範囲にあることがより好ましい。第2蓄電デバイス120は、対向容量比が、概ね1.0~1.8、例えば1.4~1.7の範囲にあることが好ましく、1.5~1.6の範囲にあることがより好ましい。対向容量比を所定値以上とすることで、蓄電モジュール500のハイレート充電特性を向上できる。
第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120との対向容量比の差は、例えば蓄電モジュール500内の温度分布等によって適宜調整される設計事項である。このため、特に限定されるものではないが、第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とで温度分布が大きく異なる場合等には、第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とで、対向容量比の差が、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、例えば20%以上、30%以上であってもよい。対向容量比の差を所定値以上とすることで、ここに開示される技術の効果がより顕著に発揮されうる。対向容量比の差は、例えば100%以下、50%以下であってもよい。これにより、第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とのハイレート充電特性が精度よく平準化されうる。なお、第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とが複数である場合、対向容量比の差は、複数の第1蓄電デバイス110の対向容量比の平均と複数の第2蓄電デバイス120の対向容量比の平均との差でありうる。
一実施形態において、第1蓄電デバイス110は、第2蓄電デバイス120よりも負極活物質層24aの目付量が大きいことが好ましい。すなわち、第1蓄電デバイス110の負極活物質層24aは、例えば対向容量比を増加させる分、相対的に単位面積当たりの塗布量が多く(ゆえに、典型的には負極活物質層24aの厚みが相対的に厚く)なっており、相対的に負極理論容量が高くなるように構成されていることが好ましい。第2蓄電デバイス120の負極活物質層24aは、例えば対向容量比を減少させる分、相対的に単位面積当たりの塗布量が少なく(ゆえに、典型的には負極活物質層24aの厚みが相対的に薄く)なっており、相対的に負極理論容量が低くなるように構成されていることが好ましい。また、第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とは、正極活物質層22aの目付量が同じであり、正極理論容量が等しくなるように構成されていることが好ましい(例えば、±5%程度の変動(製造誤差等)は許容されうる)。これにより、第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とのエネルギー密度を平準化し、蓄電モジュール500全体として高エネルギー密度化を実現できる。
正極活物質層22aおよび負極活物質層24aの目付量の具体的な値は、例えば蓄電モジュール500の用途等によって適宜調整される設計事項である。このため、特に限定されるものではないが、例えば車両等の移動体に搭載されるような蓄電モジュール500において、第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とは、いずれも、正極活物質層22aの目付量が、概ね3~35mg/cm2の範囲にあることが好ましく、4~30mg/cm2の範囲にあることがより好ましく、例えば5~25mg/cm2の範囲であるとよい。また、負極活物質層24aの目付量が、概ね3~25mg/cm2の範囲にあることが好ましく、3.5~20mg/cm2の範囲にあることがより好ましく、例えば4~15mg/cm2の範囲であるとよい。また、負極活物質層24aの目付量は、正極活物質層22aの目付量よりも小さいことが好ましい。なお、上記目付量の値は、集電体の両面に活物質層が形成されている場合には、片面分の活物質層の塗布量である。
[蓄電モジュールの製造方法]
次に、複数の蓄電デバイス100を備えた蓄電モジュール500の製造方法について説明する。蓄電モジュール500は、例えば、(工程A)第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とを用意する、用意工程と、(工程B)蓄電モジュール500内の温度分布を予測する、温度分布予測工程と、(工程C)第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とを組み合わせて蓄電モジュール500を構築する、構築工程と、を含む製造方法によって製造することができる。なお、(工程A)用意工程と(工程B)温度分布予測工程の順序は特に限定されず、例えば(工程A)用意工程の後に(工程B)温度分布予測工程を行ってもよいし、(工程B)温度分布予測工程の後に(工程A)用意工程を行ってもよいし、両工程を同時進行で行ってもよい。また、ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。
(工程A)用意工程では、複数の蓄電デバイス100として、対向容量比が相対的に高い第1蓄電デバイス110と、対向容量比が相対的に低い第2蓄電デバイス120と、を用意する。本実施形態において、(工程A)用意工程は、(A-1)負極24を作製する負極作製工程と、(A-2)負極24を用いて電極体20を作製する電極体作製工程と、(A-3)電池ケース10に電極体20と非水電解液とを収容する収容工程と、(A-4)コンディショニング工程とを、この順に含んでいる。
(A-1)負極作製工程では、負極活物質層24aの目付量が異なる、少なくとも2種類の負極24を作製する。詳しくは、第1蓄電デバイス110用の、相対的に目付量が多い第1負極と、第2蓄電デバイス120用の、相対的に目付量が少ない第2負極と、を作製する。具体的には、例えばまず、上述したような固形分材料(例えば、負極活物質、バインダ、増粘剤等)を所定の溶媒(例えば、水やN-メチル-2-ピロリドン等)に分散させることによって、少なくとも負極活物質を含む負極合材ペーストを調製する。次に、調製した負極合材用ペーストを、従来公知の塗工装置を用いて負極集電体24cの表面に付与し、乾燥させる。このとき、単位面積当たりの負極合材ペーストの塗布量を変化させることで、負極活物質層24aの目付量を調整できる。その後、必要に応じてプレス処理や乾燥処理等を行ってもよい。以上のようにして、目付量が異なる負極活物質層24aが形成された第1負極と第2負極とを作製することができる。
(A-2)電極体作製工程では、負極作製工程で作製した第1負極と第2負極とを、それぞれ、上述したようなセパレータ26を介して、別途用意した正極22と対向させ、捲回する。これにより、第1蓄電デバイス110用の電極体20と、第2蓄電デバイス120用の電極体20とを作製する。
(A-3)収容工程では、電極体作製工程で作製した電極体20と、上述したような非水電解液とを、電池ケース10に収容する。好適な一実施形態では、まず、電極体20の正極タブ群23を正極集電部50に接合し、電極体20の負極タブ群25を負極集電部60に接合する。これにより、封口板14と電極体20とを一体化する。次に、外装体12の開口12hに封口板14を被せ、外装体12の内部に電極体20を配置する。次に、外装体12の開口12hの周縁に封口板14を溶接して、外装体12と封口板14とを一体化する。次に、上述したような非水電解液を調製し、封口板14の注液孔15から電池ケース10の内部に注液する。これにより、第1蓄電デバイス110用の電池組立体と、第2蓄電デバイス120用の電池組立体とを作製する。
(A-4)コンディショニング工程では、作製した電池組立体を少なくとも1回、充電する。好ましくは、作製した電池組立体を少なくとも1回、充放電する。電池組立体の充放電は、従来と同様に行うことができる。典型的には、正極端子30と負極端子40との間に外部電源を接続し、端子間が所定の充電状態(SOC;State of Charge)となるまで充電ないし放電を行う。そして、電池ケース10を気密に封止(密閉)する。以上のようにして、対向容量比が異なる第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とを用意することができる。
(工程B)温度分布予測工程では、複数の蓄電デバイス100を充放電させたときの、蓄電モジュール500内の温度分布を予測する。すなわち、例えば図5のような態様では、配列方向Xの両端部(特には配列方向Xの前方F部)が低温領域A1となりやすい。しかし蓄電モジュール500内の温度分布は、冷却装置400の構成(例えば、吸気口IP、排気口OP、空冷ファン410の設置位置や個数)や放熱経路によっても変化しうる。また、例えば低温領域A1の範囲(配列方向Xの長さ)も、例えば蓄電デバイス100の個数や充放電条件等によって変化しうる。そのため、予備実験ないし、市販の解析ソフトを用いたシミュレーション等により、充放電時の蓄電モジュール500内の温度分布を予測することが好ましい。特には、蓄電モジュール500を模した予備試験用の蓄電モジュールを構築して温度分布を実測し、実測に基づいて蓄電モジュール500内の温度分布を予測することが好ましい。
好適な一実施形態では、まず、用意工程で作製した第1蓄電デバイス110および第2蓄電デバイス120とは異なる予備試験用の複数の蓄電デバイスを用意し、それぞれに温度センサを取り付ける。次に、予備試験用の複数の蓄電デバイスを用いて、蓄電モジュール500を模した予備試験用の蓄電モジュールを組み立てる。次に、予備試験用の複数の蓄電デバイスを実際に充放電(好ましくはハイレート充放電)させ、このときの温度分布を取得する。充放電条件は、実際に使用する態様を想定した条件が好ましい。そして、取得した温度分布に基づいて、蓄電モジュール500内の温度分布を予測し、例えば低温領域A1と高温領域A2とに区分け(例えば2分割)する。
(工程C)構築工程では、温度分布予測工程で予測された温度分布に基づき、第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とを配置して、蓄電モジュール500を構築する。具体的には、低温領域A1と区分けされた領域に、対向容量比が相対的に高い第1蓄電デバイス110を配置し、高温領域A2と区分けされた領域に、対向容量比が相対的に低い第2蓄電デバイス120を配置する。そして、例えば複数のスペーサ200と共に、拘束機構300によって第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とを拘束し、一体的に保持する。以上のようにして、蓄電モジュール500を構築できる。
[蓄電モジュールの用途]
蓄電モジュール500は各種用途に利用可能であるが、ハイレート耐性に優れることから、高出力が必要とされる用途、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。車両等の移動体に蓄電モジュール500を搭載することで、移動体の燃費(電費)を向上できる。
以下、本発明に関するいくつかの試験例を説明するが、本発明をかかる試験例に限定することを意図したものではない。
本試験例では、対向容量比が異なる蓄電デバイスを構築し、ハイレート耐性を確認した。具体的には、まず、表1に示す対向容量比の電極体を作製し、当該電極体を用いて蓄電デバイス(リチウムイオン二次電池、例1~例4)を作製した。なお、対向容量比は、負極活物質層の目付量を変更することで調整した。また、負極活物質層の目付量以外の構成は、全ての蓄電デバイスで共通とした。次に、25℃の温度環境下で、蓄電デバイスをSOC50%の状態に調整し、150Aで10秒間の定電流放電を行い、放電抵抗を測定した。次に、10秒間で降下した電池電圧ΔVを読み取り、その電池電圧ΔVと放電電流値(150A)とに基づき、IV抵抗(初期抵抗)を算出した。
次に、25℃の温度環境下で、蓄電デバイスをSOC50%の状態に調整し、150Aの充電レートで10秒間、定電流充電をした後、5秒間休止し、次いで10Aの放電レートで150秒間、定電流放電をした後、5秒間休止する充放電を1サイクルとして、これを1000サイクル繰り返し、ハイレート耐久試験を行った。そして、ハイレート耐久試験後、初期抵抗と同様にIV抵抗を測定して、初期抵抗に対する耐久試験後のIV抵抗の比(耐久試験後のIV抵抗/初期抵抗)から、抵抗増加率を算出した。結果を表1に示す。なお、表1には、例1の対向容量比および抵抗増加率を、それぞれ1.00(基準)としたときの相対値を表している。
表1に示すように、対向容量比が高い蓄電デバイスほど、ハイレート耐久試験後の抵抗の増加が小さく抑えられており、すなわちハイレート耐性が高かった。特に限定解釈されることを意図したものではないが、この理由としては、対向容量比が高い(ここでは、相対的に負極理論容量が多い)ほど、ハイレート充放電時に負極のSOCが上昇しにくくなり、負極の膨張収縮が抑えられたことが考えられる。以上のことから、対向容量比が高い蓄電デバイスは、対向容量比が低い蓄電デバイスに比べて、相対的にハイレート耐性に優れることが実験結果からも裏付けられた。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形例に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形例を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
(1)例えば、上記した実施形態では、(工程A)用意工程において、意図的に対向容量比を異ならせた蓄電デバイス100を製造するようにしていた。しかしこれには限定されない。例えば、対向容量比がバラついている多数の蓄電デバイスのなかから、予め定められた良品の範囲内で第1蓄電デバイス110と第2蓄電デバイス120とを選別して、用意することもできる。
具体例として、使用済みの蓄電デバイス(蓄電モジュールの状態でありうる)を市場から回収し、再利用する場合、すなわち蓄電デバイス100がリユース品である場合が挙げられる。近年、例えばリチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスには、トレーサビリティの観点等から、識別情報が付されていることがある。一例では、蓄電モジュールの表面(例えば封口板14)に、読み取り装置で読み取り可能な光学シンボルが付されている。あるいは、蓄電デバイスの内部等に識別情報を含む小型基板が搭載されている。識別情報には、例えば型番、メーカー名、製造国名、製造工場名、製造年月日等のID情報に加えて、正極活物質や負極活物質の種類、対向容量比等の組成情報が含まれうる。
この場合、(工程A)用意工程は、(1-a)回収された多数の蓄電デバイスに付されている識別情報をそれぞれ読み出して、対向容量比の情報を取得する取得工程と、(1-b)取得した対向容量比の情報に基づいて、対向容量比が相対的に高い第1蓄電デバイス110と、負極活物質層24aの対向容量比が相対的に低い第2蓄電デバイス120と、を選別する選別工程と、を含んでいてもよい。かかる蓄電モジュールの製造方法は、蓄電デバイスの再利用方法(リユース方法)としても把握されうる。なお、本明細書において「光学シンボル」とは、光学的反射率の高い部分と低い部分との組み合わせによって情報を記憶する情報媒体の総称であり、QRコード(登録商標)やデータマトリックス、データタグ等の2次元シンボル(2次元コード、2次元バーコード等ともいう。)を包含する概念である。
(2)例えば、上記した図5の実施形態では、配列方向Xの両端部(図5の前方F部および後方Rr部)が、相対的に温度が低い低温領域A1であり、配列方向Xの中央部が、相対的に温度が高い高温領域A2であった。しかしこれには限定されない。上述の通り、蓄電モジュール500内の温度分布は、冷却装置400の構成(例えば、吸気口IP、排気口OP、空冷ファン410の設置位置や個数)や、蓄電デバイス100の個数、充放電条件等によって変化しうる。また、上記した図5の実施形態では、蓄電モジュール500内が低温領域A1と高温領域A2との2つの温度領域に区分けされ、さらに、温度分布が配列方向Xに対称になっていた。しかしこれには限定されない。例えば蓄電モジュール500内は、3つ以上の温度領域に区分けすることもできる。その場合、図5の実施形態では、配列方向Xの後方Rr側の低温領域A1を、低温領域A1よりも温度が高くかつ高温領域A2よりも温度が低い中温領域A3としてもよい。また、冷却経路や放熱経路が複雑な場合、温度分布は、例えば低温領域A1と高温領域A2とが交互に出現する等、ランダムになっていてもよい。以下、いくつかの具体的な変形例について、図6~図9を参照しつつ説明する。なお、図6~図9では、冷却装置の図示を省略している。
(第1変形例)図6は、第1変形例に係る蓄電モジュール500aの平面図である。上述の通り、配列方向Xの中央部では、蓄電デバイス100同士の連鎖的な発熱が生じやすいことが知られている。そのため、図6では図示を省略しているが、配列方向Xの中央部には、冷媒(空気)が供給される吸気口IPおよび/または空冷ファン410が追加で設置され、中央部が強く冷却されることがある。すると、図6に示すように、蓄電モジュール500aの温度分布は、図5とは逆に、配列方向Xの中央部が、相対的に温度が低い低温領域A1となり、配列方向Xの両端部(図6の前方F部および後方Rr部)が、相対的に温度が高い高温領域A2となりうる。
このような場合等には、図6に示すように、低温領域A1である配列方向Xの中央部に、相対的に対向容量比が高い(ハイレート耐性の高い)第1蓄電デバイス110を配置し、高温領域A2である配列方向Xの両端部に、相対的に対向容量比が低い(ハイレート耐性が低い)第2蓄電デバイス120を配置するとよい。
(第2、第3変形例)図7は、第2変形例に係る蓄電モジュール500bの平面図である。図8は、第3変形例に係る蓄電モジュール500cの平面図である。例えば、図5の配列方向Xの前方F側に設置された空冷ファン410が強力で冷却能力が高い場合、図7、図8にそれぞれ示すように、蓄電モジュール500b、500c内の温度分布は、配列方向Xの前方F部が、相対的に温度が低い低温領域A1となり、配列方向Xの後方Rr部が相対的に温度が高い高温領域A2となりうる。
このような場合等には、図7、図8に示すように、低温領域A1である配列方向Xの前方F部に、相対的に対向容量比が高い(ハイレート耐性の高い)第1蓄電デバイス110を配置し、高温領域A2である配列方向Xの後方Rr部に、相対的に対向容量比が低い(ハイレート耐性が低い)第2蓄電デバイス120を配置するとよい。
また、低温領域A1と高温領域A2との配分は、例えば蓄電デバイス100の個数、充放電条件等によっても異なりうる。このため、低温領域A1と高温領域A2とは、図7に示すように、配列方向Xに均一に設けられていてもよく、図8に示すように、配列方向Xに不均一に設けられていてもよい。言い換えれば、蓄電モジュール500に含まれる第1蓄電デバイス110の個数と第2蓄電デバイス120の個数とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(第4変形例)図9は、第4変形例に係る蓄電モジュール500dの平面図である。図9に示すように、蓄電モジュール500dの温度分布は、ここでは図5よりも詳細に区分けされている。すなわち、配列方向Xの両端部(図6の前方F部および後方Rr部)が、相対的に温度が低い低温領域A1であり、配列方向Xの中央部が、相対的に温度が高い高温領域A2であり、低温領域A1と高温領域A2との間が、低温領域A1よりも温度が高くかつ高温領域A2よりも温度が低い中温領域A3である。
このような場合等には、図9に示すように、低温領域A1である配列方向Xの両端部に、相対的に対向容量比が高い(ハイレート耐性の高い)第1蓄電デバイス110を配置し、高温領域A2である配列方向Xの中央部に、相対的に対向容量比が低い(ハイレート耐性が低い)第2蓄電デバイス120を配置し、低温領域A1と高温領域A2との中間である中温領域A3に、第2蓄電デバイス120よりも対向容量比が高く、かつ第1蓄電デバイス110よりも対向容量比が低い、第3蓄電デバイス130を配置するとよい。言い換えれば、高温領域A2、中温領域A3、低温領域A1の順、ここでは、配列方向Xの中央部から両端部に向かって、対向容量比が段階的に高くなるように、複数の蓄電デバイス100を配置するとよい。
なお、図9では蓄電モジュール500内を3つの温度領域に区分けしているが、4つ以上の温度領域に区分けすることも勿論可能である。このように温度分布に応じて蓄電モジュール500内を細かく区分けすることで、ここに開示される技術の効果が高いレベルで発揮され、蓄電モジュール500全体のハイレート耐性をより良く向上できる。
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:複数の蓄電デバイスを備えた蓄電モジュールであって、複数の上記蓄電デバイスは、それぞれ、正極と負極とを有し、上記蓄電モジュール内には、複数の上記蓄電デバイスの充放電時に、相対的に温度が低くなる低温領域と、相対的に温度が高くなる高温領域と、があり、ここで、上記正極の単位面積当たりの理論容量に対する、上記負極の単位面積当たりの理論容量の比(負極理論容量/正極理論容量)を、対向容量比とすると、複数の上記蓄電デバイスのうち、上記低温領域に配置されている第1蓄電デバイスは、上記高温領域に配置されている第2蓄電デバイスよりも上記対向容量比が高い、蓄電モジュール。
項2:上記蓄電モジュール内には、上記低温領域と上記高温領域との間に、上記低温領域よりも温度が高くかつ上記高温領域よりも温度が低い中温領域があり、複数の上記蓄電デバイスは、上記高温領域、上記中温領域、上記低温領域の順で、上記対向容量比が、段階的に高くなるように配置されている、項1に記載の蓄電モジュール。
項3:上記第1蓄電デバイスと上記第2蓄電デバイスとは、上記対向容量比の差が、10%以上である、項1または項2に記載の蓄電モジュール。
項4:上記第1蓄電デバイスと上記第2蓄電デバイスとは、いずれも、上記対向容量比が、1.0以上2.0以下の範囲にある、項1~項3のいずれか一つに記載の蓄電モジュール。
項5:上記記負極は、負極活物質層を有し、上記第1蓄電デバイスは、上記第2蓄電デバイスよりも上記負極活物質層の目付量が大きい、項1~項4のいずれか一つに記載の蓄電モジュール。
項6:上記第1蓄電デバイスと上記第2蓄電デバイスとは、いずれも、リチウムイオン二次電池である、項1~項5のいずれか一つに記載の蓄電モジュール。
項7:複数の蓄電デバイスを備え、複数の上記蓄電デバイスは、それぞれ、正極と負極とを有する、蓄電モジュールの製造方法であって、ここで、上記正極の単位面積当たりの理論容量に対する、上記負極の単位面積当たりの理論容量の比(負極理論容量/正極理論容量)を、対向容量比とすると、複数の上記蓄電デバイスとして、上記対向容量比が相対的に高い第1蓄電デバイスと、上記対向容量比が相対的に低い第2蓄電デバイスと、を用意する用意工程と、複数の上記蓄電デバイスを充放電させたときの上記蓄電モジュール内の温度分布を予測する温度分布予測工程と、上記温度分布に基づき、相対的に温度が低い低温領域に上記第1蓄電デバイスを配置し、相対的に温度が高い高温領域に上記第2蓄電デバイスを配置して、上記蓄電モジュールを構築する構築工程と、を含む、蓄電モジュールの製造方法。