JP7765741B2 - 撥水撥油剤用重合体、撥水撥油剤組成物および撥水撥油剤処理物 - Google Patents

撥水撥油剤用重合体、撥水撥油剤組成物および撥水撥油剤処理物

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Description

本発明は、撥水撥油剤用重合体、撥水撥油剤組成物および撥水撥油剤処理物に関する。
フッ素樹脂は、様々な被処理物に対して撥水性、撥油性、防汚性、剥離性等を付与することが可能である。例えば、パーフルオロアルキル基を有する含フッ素共重合体を利用することによって、繊維、皮革、紙等に撥水撥油性を付与することができる。
特許文献1では、パーフルオロアルキル基を有する含フッ素単量体由来の構成単位と長鎖アルキル基およびアミド基、ウレタン基、またはウレア基を有する非フッ素単量体由来の構成単位を含有する含フッ素共重合体を開示している。
特開2020-59800号公報
しかしながら、特許文献1の含フッ素共重合体は、天然繊維や天然皮革等の親水性の基材に対する造膜性が乏しく、十分な撥水撥油性を付与し難い。
以上のような事情に鑑み、本発明の課題は、被処理物に対して優れた撥水撥油性を付与可能な、撥水撥油剤用重合体、撥水撥油剤組成物、および撥水撥油剤処理物を提供することにある。
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される含フッ素単量体(a)由来の構成単位および下記式(2)で表される非フッ素単量体(b1)由来の構成単位を含む含フッ素共重合体であって、全単量体由来の構成単位の合計量を100質量部としたとき、前記単量体(a)由来の構成単位の質量が10~90質量部であり、前記単量体(b1)由来の構成単位の質量が10~90質量部である撥水撥油剤用重合体に関する。
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、lは0~4の整数であり、mは0~5の整数である。)
(式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、ハロゲノ基を示し、Rは、炭素数12~24のアルキル基を示し、Aは、炭素数1~10のアルキレン基を示し、Xは0または1を示し、Yは、下記式(3)、式(4)、式(5)および式(6)からなる群より選ばれるヒドロキシウレタン構造である。)
また、本発明は、前記撥水撥油剤用重合体と液状媒体とを含む撥水撥油剤組成物に関する。
さらに、本発明は、前記撥水撥油剤用重合体が付着してなる撥水撥油剤処理物に関する。
本発明によれば、合成繊維、天然繊維、天然皮革等の基材に対して優れた撥水撥油性を付与可能な、撥水撥油剤用重合体、撥水撥油剤組成物、および優れた撥水撥油性を有する撥水撥油剤処理物を提供することができる。
<含フッ素単量体(a)>
含フッ素単量体(a)は、下記式(1)で表される単量体である。
(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、lは0~4の整数であり、mは0~5の整数である。)また、式(1)中、lは1~2の整数であることが好ましく、mは3~5の整数であることが好ましい。
含フッ素単量体(a)で表される化合物の具体例としては、例えば、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロヘキシル)ブチル(メタ)アクリレート、2,2,2トリフルオロエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。好ましくは、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレートであるが、撥水撥油性に優れる点から2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートがより好ましい。なお、含フッ素単量体(a)は、単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
<非フッ素単量体(b1)>
非フッ素単量体(b1)は、下記式(2)で表される単量体であり、ヒドロキシウレタン構造を有することで、被処理物への重合体の造膜性を高めることができ、優れた撥水性を付与することができる。非フッ素単量体(b1)は、単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
(式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、ハロゲノ基を示し、Rは、炭素数12~24のアルキル基を示し、Aは、炭素数1~10のアルキレン基を示し、Xは0または1を示し、Yは、下記式(3)、式(4)、式(5)および式(6)からなる群より選ばれるヒドロキシウレタン構造である。)
式(2)中、Rは、重合反応が進行しやすい点から、水素原子またはメチル基が好ましい。
式(2)中、Rは、炭素数12~24のアルキル基を示す。炭素数12~24のアルキル基を有することで、側鎖の結晶化が誘起され、被処理物の表面でアルキル基が整列した密な膜を形成でき、優れた撥水性を発現することができる。炭素数12~24のアルキル基としては、炭素数12~24の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられるが、撥水性に優れる点と工業的な製造の容易さから、Rの炭素数は12~22が好ましく、18~22が更に好ましい。また、Rは直鎖状アルキル基であることが更に好ましい。
式(2)中、Aは、炭素数1~10のアルキレン基を示し、Xは0または1を示す。Aの炭素数は1以上が好ましく、また、4以下が好ましい。
式(2)中、Yは上記の式(3)、式(4)、式(5)、および式(6)からなる群より選ばれるヒドロキシウレタン構造である。撥水性がより優れる点から、Yとしては式(3)または式(4)の構造が特に好ましい。
非フッ素単量体(b1)は、分子量が355~800の範囲の化合物を用いることが特に好ましい。
非フッ素単量体(b1)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができるが、例えば、(メタ)アクリロイル基と環状カーボネート基の両方を有する化合物と、炭素数12~24のアルキル基を有するアミン化合物との付加反応により得ることができる。
<ビニル単量体(b2)>
ビニル単量体(b2)は、含フッ素単量体(a)と非フッ素単量体(b1)と共重合可能なビニル基含有単量体である。ビニル単量体(b2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物や、(メタ)アクリルアミド化合物、芳香族アルケニル化合物、ハロゲン化ビニル化合物、シアン化ビニル化合物などが挙げられる。これらの中でも、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル化合物または(メタ)アクリルアミド化合物を共重合させることが好ましい。ビニル単量体(b2)は、単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル化合物または(メタ)アクリルアミド化合物としては、ビニル基を少なくとも1つ有する化合物であり、下記式(7)で表される化合物を用いることが好ましい。
(式(7)中、Rは、水素原子、メチル基、ハロゲノ基を示し、Zは、酸素原子または窒素原子を示し、Rは、水素原子、または置換されていてもよい炭素数1~22の炭化水素基を示し、nは、Zが酸素原子の場合は1を示し、Zが窒素原子の場合は2を示す。)
式(7)中、Rの炭化水素基は置換基を有してもよい。ビニル単量体(b2)として用いる式(7)で示される化合物は、Rが置換基を有する炭化水素基である化合物と、Rが置換基を有しない炭化水素基である化合物をそれぞれ1つ以上含むことが好ましい。
が水素原子である化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
における置換基を有しない炭化水素基としては、例えば、炭素数1~22の直鎖状または分岐状、環状のアルキル基が挙げられる。
炭素数1~22の直鎖状または分岐状のアルキル基を有する具体的な化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ドコシル、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、撥水撥油性が良好な点と非フッ素単量体(b1)と共重合しやすい点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリルが好ましい。さらに好ましくは、(メタ)アクリル酸ステアリルである。
における置換基を有しない環状の炭化水素基としては、例えば炭素数3~22の単環式または多環式のアルキル基が挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル等が挙げられるが、撥水撥油性の耐久性が向上できる点から、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましい。さらに好ましくは(メタ)アクリル酸シクロヘキシルである。
における炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、水酸基、エーテル基、エポキシ基、カルボニル基、エステル基、アミド基、イソシアネート基、ウレタン基、ウレア基、ビニル基、アミノ基、オニウム塩基、複素環式基、アリール基、オルガノシロキシ基、ポリジメチルシロキサン基からなる群から選択される少なくとも1種以上から構成される置換基が挙げられる。これらの置換基の中でも、Rはアリール基、ポリジメチルシロキサン基、水酸基、エーテル基を有する炭化水素基であることが好ましい。ポリジメチルシロキサン基を有する炭化水素基含有単量体の分子量としては、1,000~30,000であることが好ましい。
炭化水素基が置換基を有する具体的な化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、モノ(メタ)アクリル酸グリセロール、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル、(メタ)アクリル酸2-イソシアナトエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシフェニル、「プラクセルFMシリーズ」((株)ダイセル製、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルのε-力プロラクトン付加体、商品名)、(メタ)アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、「サイラプレーンFM-0721(JNC(株)製、ポリジメチルシロキサン基含有マクロモノマー(分子量5,000)、商品名)」、「サイラプレーンFM-0725(JNC(株)製、ポリジメチルシロキサン基含有マクロモノマー(分子量10,000)、商品名)」、「サイラプレーンFM-7721(JNC(株)製、ポリジメチルシロキサン基含有二官能マクロモノマー(分子量5,000)、商品名)」、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。撥水撥油性が良好な点と非フッ素単量体(b1)と共重合しやすい点から、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ベンジル、「サイラプレーンFM-0721(JNC(株)製、ポリジメチルシロキサン基含有マクロモノマー(分子量5,000)、商品名)」、「サイラプレーンFM-0725(JNC(株)製、ポリジメチルシロキサン基含有マクロモノマー(分子量10,000)、商品名)」、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドが好ましい。
ビニル単量体(b2)として用いる芳香族アルケニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレンなどが挙げられる。
ビニル単量体(b2)として用いるハロゲン化ビニル化合物としては、例えば、フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル等が挙げられる。
ビニル単量体(b2)として用いるシアン化ビニル化合物としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
<撥水撥油剤用重合体の組成比率>
撥水撥油剤用重合体は、含フッ素単量体(a)由来の構成単位と非フッ素単量体(b1)由来の構成単位を含む含フッ素共重合体、または含フッ素単量体(a)由来の構成単位と非フッ素単量体(b1)由来の構成単位、ビニル単量体(b2)由来の構成単位を含む含フッ素共重合体を含むことが好ましい。
含フッ素共重合体において、全単量体由来の構成単位の合計量を100質量部としたとき、単量体(a)由来の構成単位の質量が10~90質量部であり、単量体(b1)由来の構成単位の質量が10~90質量部である。含フッ素共重合体において、撥水撥油性、溶解性の観点から、全単量体由来の構成単位の合計量を100質量部としたとき、単量体(a)由来の構成単位の質量が、30~80質量部であることが好ましく、40~80質量部であることがより好ましく、また、単量体(b1)由来の構成単位の質量が、10~70質量部であることが好ましく、20~60質量部であることがより好ましい。単量体(a)由来の構成単位の質量が、10質量部より小さい場合は、撥水撥油性が低下する傾向にあり、
90質量部より大きい場合は、含フッ素共重合体が炭化水素溶剤への溶解性が著しく低下する傾向にある。
また、含フッ素共重合体において、ビニル単量体(b2)由来の構成単位を含む場合、撥水撥油性、溶解性の観点から、全単量体由来の構成単位の合計量を100質量部としたとき、単量体(b2)由来の構成単位の質量が、80質量部以下であることが好ましく、1~50質量部であることがより好ましく、5~30質量部であることがさらに好ましい。
<撥水撥油剤用重合体の製造方法>
撥水撥油剤用重合体は、少なくとも、含フッ素単量体(a)と非フッ素単量体(b1)を含む単量体混合物をラジカル重合させることにより、得ることができる。重合方法は特に限定されず、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の公知の重合方法を用いることができる。
重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩等を用いることができる。重合開始剤の具体例としては、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ヘキシルパーオキシネオデカネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件などに応じて適宜設定することができる。
溶液重合による重合方法では、重合開始剤存在下、各種単量体を任意の溶媒に溶解させ、窒素置換後、加熱攪拌することで重合することができる。
乳化重合による重合方法では、重合開始剤および界面活性剤の存在下、各種単量体を水、または有機溶媒と水の混合物中に乳化させ、窒素置換後、加熱攪拌することで重合することができる。
撥水撥油剤用重合体における各単量体の構成単位の配列は、特に制限されず、ランダム、ブロック、グラフトなどのいずれでもよい。
<重量平均分子量>
撥水撥油剤用重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5,000~2,000,000の範囲とする重合体である、撥水撥油性が良好な点から、10,000~1,900,000の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、30,000~1,800,000の範囲である。重量平均分子量がこの範囲から内であれば、重合体からなる被膜の均一性が向上し、撥水撥油性が良好になる。
撥水撥油剤用重合体は、分子量を調整する目的として、重合時に連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、ラウリルメルカプタン、tert-ブチルアルコール等が挙げられる。連鎖移動剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件などに応じて適宜設定することができる。
<撥水撥油剤組成物>
撥水撥油剤組成物は、撥水撥油剤用重合体と液状媒体を混合させることで製造することができる。撥水撥油組成物とすることにより、被処理物に対して撥水撥油剤用重合体の付着を容易にすることができる。
液状媒体としては、重合体が溶解、または分散するものであれば特に制限はないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、水、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィン系溶剤等が挙げられる。これらの液状媒体の中でも、被処理物の風合いや劣化を防げる点から、脂肪族炭化水素溶剤であることが好ましい。好ましくは、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンが挙げられるが、特にn-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサンが好ましい。これらの液状媒体は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
撥水撥油剤用重合体と液状媒体の合計量を100質量部とした場合、撥水撥油剤用重合体の含有量を、0.1~10質量部とすることが好ましく、より好ましくは、1~10質量部とする。
撥水撥油剤組成物は、本発明の効果を損ねない範囲において、添加剤を更に含有してもよい。たとえば、重合体と液状媒体の合計量を100質量部とした場合、添加剤の含有量は、10質量部以下が好ましく、5質量部以下とすることが更に好ましい。
添加剤としては、撥水撥油剤用重合体以外の撥水撥油性を付与可能な重合体、架橋剤、抗菌防臭剤、難燃剤、帯電防止剤、柔軟剤、防皺剤等が挙げられる。特に布地、衣料等を処理する場合、洗濯による撥水撥油性の低下を防ぐ場合には、架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤としては、メチロールメラミン、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基を少なくとも1種以上有する化合物が挙げられる。架橋剤を被処理物に付着させて、加熱処理することにより、洗濯後も撥水撥油性を維持することができる。
<撥水撥油剤処理物>
撥水撥油剤用重合体は、被処理物に対して撥水撥油性を付与して撥水撥油剤処理物とすることができる。適用可能な被処理物としては、例えば、綿、麻、絹などの天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール等の合成繊維、天然皮革、合成皮革、毛皮、紙、木、これらの混合繊維及びこれらによる布地、衣料、靴、その他、ガラス繊維、ガラス、レンガ、セメント、金属、プラスチック等が挙げられる。その中でも、合成繊維、天然繊維、天然皮革に対して特に高い効果が発現する。
撥水撥油剤処理物を用いた処理方法としては、スプレーコート、バーコート、ディップコート等の一般的な方法により塗布することができる。また、撥水撥油剤処理物を被処理物に塗布させた後、適宜室温、熱処理等で液状媒体を揮発させ、被処理物を乾燥することが好ましい。乾燥時の温度条件は特に制限はないが、被処理物の熱による劣化を考慮し、20℃~200℃、好ましくは50~150℃であることが好ましい。
(実施例1)
はじめに、温度計、撹拌機及び還流冷却管を備えた500mLの4つ口フラスコに、シクロヘキサン120gを仕込み、フラスコ内を窒素置換した。次に2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート〈FMAC6〉(単量体(a))30g、表1に記載の「HUMA-2」(単量体(b1))70gとシクロヘキサン94.7gからなる単量体溶液とtert-ヘキシルパーオキシネオデカネート3.3gとシクロヘキサン15gからなる重合開始剤溶液をそれぞれ調製した。反応容器内を55℃まで昇温し、単量体溶液および重合開始剤溶液を同時にそれぞれ2時間かけて滴下した。滴下終了後、55℃で5時間反応させた後、70℃に昇温し、さらに2時間反応させることで、重合体を含む溶液を得た。
表2には実施例1の各成分の配合を示す。表2に示されるように、実施例1で得られた重合体中の含フッ素単量体(a)由来の構成単位、非フッ素単量体(b1)由来の構成単位、およびビニル単量体(b2)由来の構成単位の質量比((a)/(b1)/(b2))は30/70/0であった。
(実施例2~19)
実施例2~19では、単量体を表2~5に記載の種類および量に変更した。各単量体(b1)は表1に示した通りである。これ以外は実施例1と同様の方法で、各実施例の撥水剤用重合体を製造した。
(実施例20)
はじめに、1Lのポリ容器に、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート〈FMAC6〉60g、表1に記載の「HUMA-2」25g、メタクリル酸ステアリル〈SMA〉7.0g、メタクリル酸シクロヘキシル〈CHMA〉7.0g、N―メチロールアクリルアミド〈N-MAM〉1.0g、トリプロピレングリコール31.7g、水258gからなる混合物と、ポリオキシエチレンラウリルエーテル2.8g、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル2.8g、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド3.5gからなる乳化剤混合物を仕込み、60℃に加熱し、ホモミキサーで1分間、2,000rpmで混合攪拌後、超音波照射により乳化分散させた。次に乳化分散液を温度計、撹拌機及び還流冷却管を備えた500mLの4つ口フラスコに移し、窒素置換後、ラウリルメルカプタン0.2gと2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩1.0gを分散液に添加し、60℃で6時間反応させることで、重合体を含む水系分散溶液を得た。
(比較例1~4)
比較例1~4では、単量体を表6に記載の種類および量に変更した以外は実施例1と同様の方法で、各比較例の重合体を製造した。
実施例1~20、比較例1~4で得られた重合体の重量平均分子量を測定した。具体的には、GPCシステムとしてTOSOH HLC-8320GPCを用い、カラムとしてTOSOH TSKgel Super Multipore HZ-Mを2本と、TOSOH TSKgel Super H-RCを1本連続装着し、カラム温度を40℃とし、基準物質をポリスチレンとし、展開溶剤をテトラヒドロフランとし、展開溶剤は、1ml/分の流速で流し、サンプル濃度0.1質量%のサンプル溶液0.1mlを注入し、EcoSEC-Work Station GPC計算プログラムを用いて測定した
(試験片作製)
評価基材として、ポリエステル布、綿布および、牛革を用いた。
上記の各実施例1~19及び各比較例1~4に係る重合体を、液状媒体としてシクロヘキサンで希釈して濃度2.0質量%の溶液(撥水撥油剤組成物)を製造した。ポリエステルタフタ布および綿布については、各溶液に浸漬させることで塗布し、150℃で3分間、加熱乾燥させることで試験片(撥水撥油剤処理物)を作製した。牛革については、スプレーガンを用いて、各溶液を噴霧することで塗布し、その後、室温で乾燥させることで試験片(撥水撥油剤処理物)を作製した。
上記の各実施例20に係る重合体を、液状媒体として水で希釈して濃度2.0質量%の分散液(撥水撥油剤組成物)を製造した。ポリエステルタフタ布および綿布については、各分散液に浸漬させることで塗布し、150℃で3分間、加熱乾燥させることで試験片(撥水撥油剤処理物)を作製した。牛革については、スプレーガンを用いて、各分散液を噴霧することで塗布し、その後、室温で乾燥させることで試験片(撥水撥油剤処理物)を作製した。
(撥水性試験)
各試験片の撥水性は、JIS L 1092に基づいて、評価した。試験機にはスプレー・テスター AW-5(インテック株式会社製)を用いた。試験片を試験機に取り付け、250mLの水を散布した。散布後の試験片の湿潤状態を表7に示す基準により評価した。数値が高いほど、撥水性が良好であることを示す。なお、撥水性の目標値は、ポリエステル布は90以上、撥水性の付与が困難な綿布および牛革は80以上とした。
(撥油性試験)
AATCC Test Method 118-1997に基づいて、撥油性試験を行った。試験片表面に炭化水素溶剤(表8)50μLを静かに滴下し、30秒後の液滴の状態を評価した。基材に浸透しなかった最も小さい表面張力の炭化水素溶剤の等級を評価点とした。数値が高いほど撥油性が良好であることを示す。なお、撥油性の目標値は、ポリエステル布は5以上、撥油性の付与が困難な綿布および牛革は3以上とした。
[評価結果]
表2~5は実施例1~20の評価結果を示し、表6は比較例1~4の評価結果を示している。
ただし、表1の単量体(b2)で用いた式(8)の置換基は以下のとおりである。
表2~表6に示す略語は以下のとおりである。
FMAC6: 2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート
FAC6: 2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート
SMA: メタクリル酸ステアリル
CHMA: メタクリル酸シクロヘキシル
BzMA: メタクリル酸ベンジル
FM0721:JNC製サイラプレーンFM0721 (ポリジメチルシロキサン基含有マクロモノマー 分子量5,000)
FM0725:JNC製サイラプレーンFM0721 (ポリジメチルシロキサン基含有マクロモノマー 分子量10,000)
HEMA: メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
PME400:メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(エチレンオキサイドの平均付加モル数9)
DAAM: ジアセトンアクリルアミド
N-MAM: N-メチロールアクリルアミド
表2~5の結果から明らかなように、実施例1~20は、種々の基材に対して、優れた撥水撥油性を示した。
一方、表6から明らかなように、比較例1~4では、撥水性または撥油性が不十分であった。
具体的には、比較例1では、含フッ素共重合体が含フッ素単量体(a)由来の構成単位を有していないため、撥油性が劣っていた。比較例2では、含フッ素共重合体の含フッ素単量体(a)由来の構成単位の比率が過大であるため、含フッ素共重合体が炭化水素溶剤に不溶であった。比較例3~4では、含フッ素共重合体が非フッ素単量体(b1)由来の構成単位を有していないため、天然繊維と天然皮革に対する撥水撥油性が劣っていった。

Claims (4)

  1. 下記式(1)で表される含フッ素単量体(a)由来の構成単位および下記式(2)で表される非フッ素単量体(b1)由来の構成単位を含む含フッ素共重合体であって、
    全単量体由来の構成単位の合計量を100質量部としたとき、前記単量体(a)由来の構成単位の質量が10~90質量部であり、前記単量体(b1)由来の構成単位の質量が10~90質量部であることを特徴とする撥水撥油剤用重合体。
    (式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、lは0~4の整数であり、mは0~5の整数である。)
    (式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、ハロゲノ基を示し、Rは、炭素数12~24のアルキル基を示し、Aは、炭素数1~10のアルキレン基を示し、Xは0または1を示し、Yは、下記式(3)、式(4)、式(5)および式(6)からなる群より選ばれるヒドロキシウレタン構造である。)
  2. 下記式(7)で表されるビニル単量体(b2)由来の構成単位を含み、
    全単量体由来の構成単位の合計量を100質量部としたとき、前記単量体(b2)由来の構成単位の質量が80質量部以下であることを特徴とする請求項1記載の撥水撥油剤用重合体。
    (式(7)中、Rは、水素原子、メチル基、ハロゲノ基を示し、Zは、酸素原子または窒素原子を示し、Rは、水素原子、または置換されていてもよい炭素数1~22の炭化水素基を示し、nは、Zが酸素原子の場合は1を示し、Zが窒素原子の場合は2を示す。)
  3. 請求項1または2記載の撥水撥油剤用重合体と液状媒体とを含むことを特徴とする撥水撥油剤組成物。
  4. 請求項1または2記載の撥水撥油剤用重合体が付着してなることを特徴とする撥水撥油剤処理物。
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