JP7772251B2 - 圧延機の板厚制御装置 - Google Patents

圧延機の板厚制御装置

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Description

本開示は、圧延機の板厚制御装置に関し、特に、金属等を冷間圧延する圧延機に好適に適用されるものに関する。
例えば、圧延プロセスにおいて、圧延機の上下ワークロール間のギャップ(以下「ロールギャップ」という)を圧下装置により適切に操作することで、被圧延材の板厚を板厚目標値(製品板厚や設定板厚ともいう)に制御している。
圧延機の入側および出側の少なくとも一方には圧延材を巻き付けるリールが配置されるのが一般的である。このようなリールでは、通常、圧延材を巻き取る部分(マンドレル)の隙間に先端を挿入する形で巻き付けている。この場合、圧延材の先端部が盛り上がることに起因して、図8に示すようなリールの偏芯が生じる。その結果、リールが回転するごとに圧延機とリールの間で圧延材の張力変動を引き起こす。張力変動は圧延機出側の板厚に影響し、製品品質の低下を招く。
上記張力変動を抑える方法が、例えば、特許文献1および2で提案されている。特許文献1では、張力偏差をリールの回転角に応じてシフトレジスタに格納し、また回転角に対応する値をシフトレジスタから取り出し、これに基づいてリールのモータトルクを操作することにより、リール偏芯に伴う張力変動を抑制している。特許文献2では、リール回転位置と関連付けてリール径変動量を保存し、このリール径変動量に基づいてリールの回転速度の補正値を生成し、リールの回転速度を制御することにより張力変動を抑えている。いずれの方法においてもリール偏芯による張力変動を低減することで、製品品質の指標となる板厚精度の向上を図っている。
日本特開平11-285730公報 日本特開2015-36150号公報
しかしながら、特許文献1では、電流制御系や張力発生系、張力検出器の応答の遅れを考慮して位相進み要素を挿入しているが、張力発生系は物理現象であるため、理論式で推定した遅れとずれることもあり、張力変動を十分に抑制するのは容易ではない。特許文献2では、リール径変動量に基づいて回転速度を補正し、圧延機との速度差が発生しないようにしているが、速度制御系の応答は一般にさほど速くはないため、リール偏芯による張力変動を十分に低減できない恐れがある。
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、リールへの圧延材の巻き付けに起因するリール偏芯によって圧延材の張力変動が生じたとしても、リール偏芯の圧延機出側の板厚への影響を低減することが可能な圧延機の板厚制御装置を提供することを目的とする。
第1の観点は、圧延機の板厚制御装置に関連する。圧延機の出側に板厚計が設置され、圧延機の入側と出側の少なくとも一方に張力計が設置され、張力計により計測された張力が張力目標値となるようにリールの電動機が制御される。板厚制御装置は、移動距離演算部と、リール回転角演算部と、板厚偏差演算部と、板厚偏差入力決定部と、板厚偏差記憶部と、板厚偏差出力決定部と、操作量演算部と、を備える。移動距離演算部は、圧延機により圧延された圧延材が圧延機から移動した距離を演算する。リール回転角演算部は、圧延機の入側と出側の少なくとも一方に設置されたリールの回転角を演算する。板厚偏差演算部は、板厚計により計測された圧延材の板厚計測値に基づいて板厚偏差を演算する。板厚偏差入力決定部は、移動距離演算部で演算された圧延材の移動距離とリール回転角演算部で演算されたリールの回転角とに基づいて、板厚偏差の入力タイミングを決定する。板厚偏差記憶部は、板厚偏差入力決定部で決定された入力タイミングに基づいて、板厚偏差演算部で演算された板厚偏差を加算し記憶する。板厚偏差出力決定部は、リール回転角演算部で演算されたリールの回転角に基づいて、板厚偏差の出力タイミングを決定する。操作量演算部は、板厚偏差出力決定部で決定された出力タイミングに基づいて、板厚偏差記憶部で記憶している板厚偏差の積算値を読み出し、この積算値に基づいて圧延機の圧下装置の操作量を演算する。操作量演算部で演算された圧下装置の操作量に基づいて、圧下装置が操作される。操作量演算部は、圧下装置の操作量に基づいて、張力目標値の補正量を演算するように構成される。
第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。圧延機の出側に板速計を備える。移動距離演算部は、板速計により計測された圧延材の速度に基づいて前記圧延機により圧延された圧延材の移動距離を演算する。
第3の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。板厚偏差入力決定部および板厚偏差出力決定部は、板厚計による計測の遅れと信号伝送や演算による遅れと圧延機の圧下装置の応答遅れのうちの少なくとも1つを補償して入力タイミングおよび出力タイミングを夫々決定するように構成される。
第4の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。板厚偏差記憶部は、板厚偏差記憶部に記憶済みの板厚偏差に対して1より小さい忘却係数を乗算し、板厚偏差演算部で演算された板厚偏差を加算するように構成される。
第5の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。操作量演算部は、圧下装置の操作量を演算する際、リールに巻き付いている圧延材のコイル直径に対応する調整係数を取得し、取得した調整係数を使用して操作量を調整するように構成される。
第1の観点によれば、板厚偏差をリールの回転角と対応付けることで、リール偏芯による周期的な板厚変動を抽出することができる。リールの回転角に応じて抽出した板厚変動から圧下装置の操作量を演算し、従来例の速度制御系よりも応答が速い圧下装置が操作される。従って、リールへの圧延材の巻き付けに起因するリール偏芯によって圧延材の張力変動が生じたとしても、リール偏芯の圧延機出側の板厚への影響を低減することができる。
第2の観点によれば、板速計により計測された圧延材の速度を用いることで、圧延機により圧延された圧延材の移動距離を精度よく演算することができる。
第3の観点によれば、各種の遅れを補償することで、入力タイミングおよび出力タイミングを精度よく決定することができる。
第4の観点によれば、記憶済みの板厚偏差に忘却係数λを乗算することで、板厚偏差を加算する際に、記憶済みの板厚偏差の重みを低くすることができる。第4の観点は、リールの回転角と板厚偏差計測箇所との対応関係が経時的にずれていくような場合に好適に適用することができる。
第5の観点によれば、コイル直径に応じた調整係数を使用して圧下装置の操作量を調整することができる。
ところで、リール偏芯による板厚変動を低減するために圧下装置を操作すると、圧延機の入側と出側の張力が変化し、張力計により計測された張力と張力目標値との間の偏差が大きくなる場合がある。この場合、計測された張力が張力目標値となるように張力制御を行うと、圧延機の出側の板厚に却って悪影響を及ぼす(板厚制御の精度が悪化する)虞がある。そこで、第6の観点の如く、張力目標値の補正量を演算し、張力目標値を補正することで、圧延機の出側の板厚に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
実施の形態による圧延機の板厚制御装置の構成を模式的に示す概略図である。 実施の形態による圧延機の板厚制御装置であるプロセス制御計算機の構成を模式的に示す概略図である。 リールを等しい回転角で分割し、分割した部分に付与される分割番号を説明するための図である。 板厚偏差入力決定部が記憶する第1テーブルを示す図である。 板厚偏差記憶部が記憶する第2テーブルを示す図である。 調整係数の設定例を説明するための図である。 板厚制御装置を実施するプロセス制御計算機のハードウェア構成の一例を示す図である。 リールの偏芯を説明するための図である。
以下、図面を参照して、冷間圧延プラントRPに設置された圧延機に適用する場合を例に、本開示の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図1は、実施の形態による圧延機の板厚制御装置が適用される冷間圧延プラントの構成を模式的に示す概略図である。圧延機1は、鉄鋼又はその他の金属材を圧延材Mとし、圧延材Mを所定の目標製品板厚に圧延するものである。
圧延機1は、1基の圧延スタンド11を備える。圧延スタンド11は、上下一対のワークロール111と、上下一対のバックアップロール112と、ロール回転用の電動機113を備える。バックアップロール112には圧下装置114が設けられ、圧下装置114の圧下開度ひいては上下のワークロール111間のロールギャップが圧下開度制御装置115により制御される。
圧延機1の入側には入側リール2が配置され、圧延機1の出側には出側リール3が配置されている。入側リール2に巻き付けられた圧延材Mを矢印で示す一方向(左から右に向か方向)に搬送しながら圧延機1で圧延し、出側リール3で巻き取られる。なお、圧延機1が可逆式である場合、両リール2,3の間を複数回往復して目標板厚になるまで圧延材Mを圧延する。
入側リール2および出側リール3には、リール回転用の電動機21,31が設けられ、電動機21,31はトルク制御装置22,32により制御される。入側リール2および出側リール3には、各リール2,3の回転角を検出するための回転角検出器4,5が夫々設けられている。回転角検出器4,5としては、例えば、パルスジェネレータやカウンタ等から構成される公知のものを用いることができるため、これ以上の説明は省略する。また、入側リール2と圧延機1の間、および、出側リール3と圧延機1の間には、圧延材Mの張力を計測する張力計6,7が夫々設けられている。トルク制御装置22,32は、トルク(又は電流)は、張力計6,7により計測された圧延機1の入側および出側での圧延材Mの張力が、与えられた張力目標値となるように制御する張力制御の補正量に基づいて、電動機21,31のトルク(又は電流)を決定する。
圧延機1の出側には、圧延材Mの速度を計測する板速計8と、圧延材Mの実績板厚を計測する板厚計9が設置されている。なお、図示省略するが、圧延機1が可逆式である場合には、圧延機1の入側にも同様に板速計および板厚計が設置される。
冷間圧延プラントRPは、計算機を用いた制御システムにより運転(操業)されている。計算機は、ネットワークを介して互いに接続された上位計算機40とプロセス制御計算機41とを含む。プロセス制御計算機41には、ネットワークを介して、オペレータによる操作画面であるインターフェース画面42が接続されている。オペレータは、インターフェース画面42上で制御条件の入力操作などを行い得る。
プロセス制御計算機41は、一連の圧延プロセスにおける、制御対象の設定計算・制御を実行する。また、プロセス制御計算機41は、圧下装置114の圧下開度を制御する機能を更に有する。プロセス制御計算機41には、上位計算機40から、圧延材Mの板厚目標値(製品板厚)hREF[mm]が入力される。
プロセス制御計算機41は、板厚目標値hREF[mm]や、インターフェース画面42から与えられる制御条件等に基づき、各設備を適切に制御する。プロセス制御計算機41は、板厚目標値hREFを達成し得る各設備の設定を計算し、それらの設定値に基づき、各設備のアクチュエータを操作する。各設備が稼働する間、各種計測器から得られる値に応じ、アクチュエータの動作を修正する。プロセス制御計算機41は、圧延材Mの板厚計測値(実績板厚)hが板厚目標値となるように(すなわち、板厚偏差を打ち消すように)、圧延機1の圧延スタンド11の圧下装置114を操作し、ロールギャップを調整する。
本実施の形態では、リール偏芯による張力変動が生じた場合に、電動機21,31を制御して張力を一定にするのでは応答性が低いため、このような張力一定制御に代えて、応答性が高い圧下装置114を操作する点に特徴を有する。以下、このような特徴を有する板厚制御装置について詳細に説明する。
図2は、実施の形態による圧延機の板厚制御装置であるプロセス制御計算機41の構成を模式的に示す概略図である。図3は、リール2,3を等しい回転角で分割し、分割した部分に付与される分割番号を説明するための図である。図4は、板厚偏差入力決定部が記憶する第1テーブルTb1を示す図である。図5は、板厚偏差記憶部が記憶する第2テーブルTb2を示す図である。
プロセス制御計算機41は、移動距離演算部411と、リール回転角演算部412(412a,412b)と、板厚偏差演算部413と、板厚偏差入力決定部414(414a,414b)と、板厚偏差記憶部415(415a,415b)と、板厚偏差出力決定部416(416a,416b)と、操作量演算部417(417a,417b)とを備える。
なお、本実施の形態では、説明を簡略化するために、第1リール回転角演算部412aと第2リール回転角演算部412bを個別に説明するのではなく、リール回転角演算部412として説明する。板厚偏差入力決定部414、板厚偏差記憶部415、板厚偏差出力決定部416および操作量演算部417も同様である。
移動距離演算部411は、板速計8により計測された圧延材Mの速度v[m/s]から、演算周期Δt[sec]の間に圧延材Mが進んだ距離ΔLを下式(1)により演算する。演算周期Δtは、圧延材Mの速度v[m/s]に応じて設定することができ、例えば、20msecに設定することができる。
ΔL=v×1000×Δt・・・(1)
なお、圧延機1の出側に板速計8が設置されていない場合、あるいは、板速計8が故障等で使用できない場合には、圧延機1のワークロールの周速(以下「ロール周速」という)V[m/s]と、先進率fから、圧延材Mの移動距離ΔLを下式(2)により演算してもよい。
ΔL=V×(1+f)×Δt・・・(2)
リール回転角演算部412は、回転角検出器4により検出された回転角値を入側リール2の回転角とすると共に、回転角検出器5により検出された回転角値を出側リール3の回転角とする。回転角検出器4,5が各リール2,3の回転に応じたパルスを発信する場合は、リール回転角演算部412は、回転角検出器4,5が発信したパルスをカウントし、各リール2,3の回転角を夫々演算することができる。
板厚偏差演算部413は、板厚計9により計測された板厚計測値hMEAS[mm]に基づいて、板厚偏差Δh[mm]を下式(3)により演算する。
Δh=hMEAS-hREF・・・(3)
上式(3)中、hREFは、板厚目標値[mm]である。なお、板厚計9から板厚偏差演算部413に板厚偏差Δh[mm]が伝送される場合には、そのまま使用すればよい。
板厚偏差入力決定部414は、板厚偏差演算部413で演算された板厚偏差Δhを、板厚偏差記憶部415に入力するタイミングを決定する。図3に示すように、入側リール2および出側リール3の夫々1回転を等しい回転角でN分割し、0からN-1まで分割番号を予め付与しておく。板厚偏差入力決定部414は、図4に示すように、入側リール2および出側リール3夫々の分割数N(即ち、分割番号n)に対応させてN個の要素を記憶できる第1テーブルTb1を有する。第1テーブルTb1には、圧延材Mが圧延機1により圧延されたときの入側リール2および出側リール3の回転角、すなわち分割番号n(n=0~N-1)と対応付けて、圧延機1で圧延された箇所が圧延機1から移動した距離L~LN-1を記憶している。
板厚偏差入力決定部414は、演算タイミング(制御周期k)になると、移動距離演算部411で演算された移動距離ΔLを第1テーブルTb1下段の各要素に加算する(下式(4)参照)。例えば、演算周期Δt毎に圧延材Mが50mmずつ移動する場合、夫々の演算タイミングにて50mmが各要素離L~LN-1に加算される。制御周期kは、演算周期Δtと同一でもよいし、演算周期Δtと異なっていてもよい。
Ln[k]=Ln[k-1]+ΔL[k]・・・(4)
上式(4)中、Ln[k]は、制御周期kにおける分割番号nのときに圧延した圧延材Mの箇所の圧延機1からの移動距離[mm]であり、ΔL[k]は、移動距離演算部411で演算された制御周期kにおける移動距離[mm]である。
次に、板厚偏差入力決定部414は、入力タイミングを判断する。ここで、板厚偏差記憶部415の分割番号n-1に板厚偏差の入力が終わった時点を考える。このとき、板厚偏差入力決定部414は分割番号nが入力タイミングに達しているか否かを確認する。すなわち、下式(5)を満たしたとき、板厚偏差入力決定部414は分割番号nの入力タイミングであると決定する。
Ln[k]≧L・・・(5)
上式(5)中、Lは、圧延機1と圧延機1出側に設置された板厚計9との間の距離である。上式(5)を満たしていないとき、次の演算タイミングにおいて再度、分割番号nについて入力タイミングに達しているか否かを確認する。これを分割番号0からN-1まで順次、繰り返し、分割番号N-1まで到達したら、分割番号0に戻る。
さらに、板厚偏差入力決定部414は、リール回転角演算部412a,412bで演算された入側リール2および出側リール3の回転角が分割番号nに対応する回転角に達したら、分割番号nに対応する圧延機1からの距離Lnをゼロにクリアする。
上記一連の動作により、板厚計9が計測した板厚が入側リール2および出側リール3の夫々のどの分割番号に対応する回転角で圧延されたかが分かる。
ところで、上述した板厚偏差入力決定部414の動作では板厚計9の計測の遅れを考慮していない。そのため、この遅れの程度によっては板厚制御が振動的になってしまう。そこで、板厚計9の計測の遅れを1次遅れとして補償することが好ましい。また、信号伝送や演算による遅れが発生するが、これらの遅れも含めて補償することが好ましい。補償方法としては、上式(5)の代わりに、入側リール2については下式(6)および(7)を用いて、出側リール3については下式(8)および(9)を用いて、入力タイミングを決定する。
n_ENT-(1/2)×DENT×φENT×H/h≧L・・・(6)
φENT=tan-1(ωENT×T)+ωENT×T・・・(7)
n_DEL-(1/2)×DDEL×φDEL≧L・・・(8)
φDEL=tan-1(ωDEL×T)+ωDEL×T・・・(9)
上式(6)~(9)中、Ln_ENT,Ln_DELは、入側リール2の分割番号nのときに圧延した箇所の圧延機1からの移動距離[mm],出側リール3の分割番号nのときに圧延した箇所の圧延機1からの移動距離[mm]である。DENT,DDELは、入側リール2,出側リール3に巻き付いている圧延材Mのコイル直径[mm]であり、Hは、入側板厚[mm]であり、hは、出側板厚[mm]である。Tは、板厚計時定数[s]であり、ωENT,ωDELは、入側リール2,出側リール3の回転角速度[rad/s]である。
ここで、入側リール2,出側リール3の回転角速度ωENT,ωDEL[rad/s]は、例えば、リール回転角演算部412で演算した回転角の差分をとることにより求めることができる。上記のように板厚計9の計測の遅れを補償することにより、板厚制御の精度の向上が図れる。
板厚偏差記憶部415は、板厚偏差入力決定部414と同様の構造を有する。板厚偏差記憶部415は、図5に示すように、入側リール2および出側リール3夫々の分割数N(即ち、分割番号n)に対応させてN個の要素を記憶できる第2テーブルTb2を有する。第2テーブルTb2には、圧延材Mが圧延機1により圧延されたときの入側リール2および出側リール3の回転角、すなわち分割番号n(n=0~N-1)と対応付けて、板厚偏差入力決定部414で決定した入力タイミングに基づいて板厚偏差演算部413で演算した板厚偏差が加算された板厚偏差の積算値を記憶している。板厚偏差記憶部415は、例えば、分割番号nの入力タイミングであったとき、下式(10)の演算を行い、その演算結果を新たに分割番号nにおける板厚偏差の積算値として第2テーブルTb2の下段に記憶する。
Δh[k]=λ×Δh[k-1]+Δh[k]・・・(10)
上式(10)中、Δh[k]は、制御周期kにおける分割番号nに対する板厚偏差の積算値[mm]であり、λは、0~1の値をとる忘却係数であり、Δh[k]は、板厚偏差演算部413で演算された制御周期kにおける板厚偏差[mm]である。
ここで、忘却係数λが1に設定されると、制御周期kにおける板厚偏差と、制御周期kよりも前(k-1,k-2,…)に記憶された(記憶済みの)板厚偏差とが等しい重みで記憶される。一方、制御周期kよりも前に記憶された板厚偏差に忘却係数λを乗じることで、制御周期kの前に記憶された板厚偏差の重みを低くすることができる。例えば、分割番号(回転角)と板厚偏差計測箇所との対応関係が経時的にずれていくような場合に、忘却係数λを1より小さく設定することで、過去に計測された板厚偏差の重みを減らすことができ、その結果として、板厚制御の精度の向上を図ることができ有利である。
板厚偏差出力決定部416は、板厚偏差記憶部415から板厚偏差の積算値を出力するタイミングを決定する。即ち、板厚偏差出力決定部416は、リール回転角演算部412で演算される入側リール2および出側リール3の夫々の回転角が分割番号に対応する回転角になったとき、分割番号に対応する板厚偏差の積算値の出力タイミングと決定する。
このとき、板厚偏差出力決定部416は、板厚偏差入力決定部414と同様に、圧下装置114の応答遅れを1次遅れとして、圧下装置114の応答遅れを補償することが好ましい。例えば、分割番号nに対する出力タイミングは、入側リール2については下式(11)および(12)を用いて、出側リール3については下式(13)および(14)を用いて、夫々決定される。
θENT+φENT≧θ・・・(11)
φENT≧tan-1(ωENT×T)・・・(12)
θDEL+φDEL≧θ・・・(13)
φDEL≧tan-1(ωDEL×T)・・・(14)
上式(11)~(14)中、θENT,θDELは、入側リール回転角[rad],出側リール回転角[rad]であり、θは、分割番号nに対応する回転角[rad]である。Tは、圧下装置114の時定数[s]であり、ωENT,ωDELは、入側リール2,出側リール3の回転角速度[rad/s]である。
操作量演算部417は、板厚偏差出力決定部418で決定した出力タイミングに基づいて圧下開度制御装置115の補正量を演算する。例えば、分割番号nの出力タイミングであったとき、操作量演算部417は、下式(15)の演算を行い、演算結果ΔSを圧下開度制御装置115に出力する。
ΔS={K×M/(M+Q)×Δh}・・・(15)
上式(15)中、ΔSは、圧下装置114の圧下開度操作量(以下「操作量」ともいう)[mm]であり、Kは、調整係数であり、Mは、圧延機1のミル定数[kN/mm]であり、Qは、圧延材Mの塑性係数[kN/mm]であり、Δhは、分割番号nの板厚偏差の積算値[mm]である。
ここで、リール2,3の偏芯の影響は、リール2,3に巻き付けられた圧延材Mのコイル直径(コイル径ともいう)が小さいときに大きく、コイル直径が大きくなるにつれて徐々に小さくなる。そのため、図6に示すように、調整係数Kをコイル直径の変化にあわせて予め設定しておき、圧下開度操作量ΔSを演算する際にコイル直径に応じた調整係数Kを取得し、取得した調整係数Kを使用(乗算)して操作量ΔSを調整するように構成することが好ましい。これによれば、コイル直径が小さいときには、操作量ΔSによる板厚制御効果を高めることができ、コイル直径が大きいときには、圧下開度操作量ΔSを抑えて板厚制御に対する外乱とならないようにすることができる。
さらに操作量演算部417は、上式(15)で求められた圧下開度制御装置115の操作量(補正量)ΔSに、下式(16)のように上下限値を設け、この範囲を超えた場合、操作量ΔSを上下限値に設定するように構成してもよい。
ΔSLL≦ΔS≦ΔSUL・・・(16)
上式(17)中、ΔSLLは、下限値であり、ΔSULは、上限値である。演算された操作量ΔSが下限値ΔSLLを下回ると、操作量ΔSが下限値ΔSLLに置き換えられ、上限値ΔSULを上回ると、操作量ΔSが上限値ΔSULに置き換えられる。これによれば、操作量ΔSが制限されて板厚偏差は残るものの、圧下開度の制御のバタツキを防ぐことで、圧延機1による安定した圧延を実現することができる。
ところで、圧下装置114を操作すると、圧延機1の入側と出側の張力が変化してしまう。これにより、張力計6,7により計測された張力と張力目標値との間の偏差が大きくなり、計測された張力が張力目標値となるように張力制御を行うと(つまり、偏差がなくなるように過度な張力制御を行うと)、圧延機1の出側の板厚に悪影響を及ぼす(板厚制御の精度が悪化する)虞がある。これを抑えるために、操作量演算部417は、圧下開度の操作量ΔSに応じて張力目標値の補正量を演算し、張力目標値を補正する。これにより、補正後の張力目標値と張力目標値との間の偏差が、補正前よりも小さくなり、過度の張力制御が行われないため、圧延機1の出側の板厚に悪影響を及ぼすことを防止することができる。このとき、圧下装置114の圧下開度の操作量ΔSと同様、張力目標値の補正量に上下限値を設け、その範囲内で補正するようにしてもよい。ここで、圧下開度の操作量ΔSと張力の変化との関係は、実験により圧下装置114の圧下開度を変更し、そのときの張力の変化を計測する、あるいは、シミュレーションにより圧下開度変更量(ΔS)と張力の変化量との相関関係を求める、などして事前に設定しておくことができる。
プロセス制御計算機41の具体的構造に限定はないが、一例として次のようなものであってもよい。図7は、プロセス制御計算機41のハードウェア構成の一例を示す図である。プロセス制御計算機41の機能は、図7に示す処理回路により実現することができる。この処理回路は、専用ハードウェア41aであってもよい。この処理回路は、プロセッサ41b及びメモリ41cを備えていてもよい。この処理回路は、一部が専用ハードウェア41aとして形成され、更にプロセッサ41b及びメモリ41cを備えていてもよい。図7の例は、処理回路の一部が専用ハードウェア41aとして形成されるとともに、処理回路がプロセッサ41b及びメモリ41cをも備えている。
処理回路の少なくとも一部が、少なくとも1つの専用ハードウェア41aであってもよい。この場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。
処理回路が、少なくとも1つのプロセッサ41b及び少なくとも1つのメモリ41cを備えてもよい。この場合、プロセス制御計算機41の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ41cに格納される。プロセッサ41bは、メモリ41cに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、板厚制御装置41の各部の機能を実現する。
プロセッサ41bは、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPとも呼ばれる。メモリ41cは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリ等が該当する。
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、プロセス制御計算機41の各機能を実現することができる。
以上説明したように、本開示によれば、圧延機1の出側の板厚を板厚計9により計測し、計測した板厚と板厚目標値との板厚偏差をリール2,3の回転角と対応付けることで、リール偏芯による周期的な板厚変動(圧延機1出側板厚への影響)を抽出することができる。リール2,3の回転角に応じて抽出した板厚変動から圧下開度制御装置115の補正量を演算し、従来例の速度制御系よりも応答が速い圧下装置114を操作する。これにより、リール2,3の巻き付けに起因するリール偏芯によって圧延材Mの張力が変動したとしても、リール偏芯の圧延機1出側の圧延材Mの板厚への影響を低減することができ、その結果として、圧延機1出側の板厚精度を良好に保つことができる。
以上、本開示の実施の形態について説明したが、本開示は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、上述した実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
上記実施の形態では、板厚偏差入力決定部414で板厚計9の計測の遅れと信号伝送や演算による遅れを補償し、板厚偏差出力決定部416で圧下装置114の応答遅れを補償したが、これに限定されない。板厚偏差入力決定部414で板厚計9の計測の遅れを補償し、板厚偏差出力決定部416で圧下装置114の応答遅れと信号伝送や演算による遅れを補償してもよく、この場合も上記実施の形態と同様の効果が得られる。さらに、板厚偏差入力決定部414で板厚計9の計測の遅れと圧下装置114の応答遅れと信号伝送や演算による遅れを一括して補償してもよく、この場合は上記実施の形態と同様の効果が得られることに加えて、ソフト設計上容易なものとすることができる。また、板厚偏差出力決定部116で板厚計9の計測の遅れと圧下装置114の応答遅れと信号伝送や演算による遅れを一括して補償することも可能である。なお、板厚計9による計測の遅れと信号伝送や演算による遅れと圧延機1の圧下装置114の応答遅れのうちの少なくとも1つを補償することが可能である。
上記実施の形態では、圧延材Mの移動方向を図1中に矢印で示す左から右に向かう方向として説明したが、これに限定されるものではなく、移動方向が逆向き(右から左に向かう方向)である場合にも本開示を適用可能である。
また、上記実施の形態では、リール2,3の電動機21,31をトルク制御する場合を例に説明したが、速度制御する場合にも本開示を適用可能である。
また、上記実施の形態では、4段の圧延機(4つのロール111,112を有する圧延機)1を用いる場合を例に説明したが、圧延機1はこれに限定されるものではない。上記実施の形態では、圧延機1が1基の圧延スタンド11を備える場合を例に説明したが、2基以上の圧延スタンドを備えていてもよい。この場合、上記実施の形態と同様に、各圧延スタンドの圧下装置の圧下開度の操作量ΔSを演算すればよい。
1…圧延機、114…圧下装置、2…入側リール、3…出側リール、4,5…回転角検出器、6,7…張力計、8…板速計、9…板厚計、41…板厚制御装置,プロセス制御計算機、411…移動距離演算部、412…リール回転角演算部、413…板厚偏差演算部、414…板厚偏差入力決定部、415…板厚偏差記憶部、416…板厚偏差出力決定部、417…操作量演算部、M…圧延材

Claims (5)

  1. 圧延機の板厚制御装置であって、
    前記圧延機の出側に板厚計が設置され、前記圧延機の入側と出側の少なくとも一方に張力計が設置され、前記張力計により計測された張力が張力目標値となるようにリールの電動機を制御するものにおいて、
    前記圧延機により圧延された圧延材が前記圧延機から移動した距離を演算する移動距離演算部と、
    前記圧延機の入側と出側の少なくとも一方に設置された前記リールの回転角を演算するリール回転角演算部と、
    前記板厚計により計測された圧延材の板厚計測値に基づいて板厚偏差を演算する板厚偏差演算部と、
    前記移動距離演算部で演算された圧延材の移動距離と前記リール回転角演算部で演算された前記リールの回転角とに基づいて、板厚偏差の入力タイミングを決定する板厚偏差入力決定部と、
    前記板厚偏差入力決定部で決定された入力タイミングに基づいて、前記板厚偏差演算部で演算された板厚偏差を加算し記憶する板厚偏差記憶部と、
    前記リール回転角演算部で演算された前記リールの回転角に基づいて、板厚偏差の出力タイミングを決定する板厚偏差出力決定部と、
    前記板厚偏差出力決定部で決定された出力タイミングに基づいて、前記板厚偏差記憶部で記憶している板厚偏差の積算値を読み出し、この積算値に基づいて前記圧延機の圧下装置の操作量を演算する操作量演算部と、
    を備え、前記操作量演算部で演算された前記圧下装置の操作量に基づいて、前記圧下装置を操作するように構成され、
    前記操作量演算部は、前記圧下装置の操作量に基づいて、前記張力目標値の補正量を演算するように構成された圧延機の板厚制御装置。
  2. 請求項1に記載の圧延機の板厚制御装置であって、前記圧延機の出側に板速計を備えるものにおいて、
    前記移動距離演算部は、前記板速計により計測された圧延材の速度に基づいて前記圧延機により圧延された圧延材の移動距離を演算する圧延機の板厚制御装置。
  3. 前記板厚偏差入力決定部および前記板厚偏差出力決定部は、前記板厚計による計測の遅れと信号伝送や演算による遅れと前記圧延機の圧下装置の応答遅れのうちの少なくとも1つを補償して前記入力タイミングおよび前記出力タイミングを夫々決定するように構成される請求項1に記載の圧延機の板厚制御装置。
  4. 前記板厚偏差記憶部は、前記板厚偏差記憶部に記憶済みの板厚偏差に対して1より小さい忘却係数を乗算し、前記板厚偏差演算部で演算された板厚偏差を加算するように構成される請求項1に記載の圧延機の板厚制御装置。
  5. 前記操作量演算部は、前記圧下装置の操作量を演算する際、前記リールに巻き付いている圧延材のコイル直径に対応する調整係数を取得し、取得した調整係数を使用して操作量を調整するように構成される請求項1に記載の圧延機の板厚制御装置。
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