JP7784802B2 - 水電解用複極式電解槽 - Google Patents
水電解用複極式電解槽Info
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Description
また、特許文献2には、500℃以上の高温においてもシールの耐漏洩性が十分である高温蒸気電解槽又は高温燃料電池を得るため、平均熱膨張係数が異なる2つの構成部材間に配置されて構成部材間をシールするアセンブリにおいて、初期クランプによって達成される各構成部材に対して直交する直交方向の圧縮と、シールを熱膨張差により摺動させることによって達成される半径方向の圧縮との組合せによりアセンブリが封止されるように設計したことが報告されている。
(1)セル温度が上昇すると、電解セルを構成する電極エレメント間をシールしているガスケットの弾性率が低下するため、ガスケットと各エレメントとの間の面圧(シール面圧)が低下する。加えて、セルからの熱伝導によりタイロッドも昇温し、セル及びタイロッドが膨張して、電解槽全体としてセルのスタック方向の長さが伸びる。タイロッドのスタック方向の熱膨張量(伸び量)がスタックされたセルの熱膨張量(伸び量)よりも大きいと、タイロッドによる締め付け力が弱くなり、シール面圧は更に低下する。
(2)上記(1)のようにしてシール面圧が低下した場合、電解液及び発生ガスの漏れを防ぐために、タイロッドの増し締めによりシール面圧を確保する(面圧を上げて元の値に調節する)ことが必要となる。タイロッドを増し締めすると、ガスケットはスタック方向に更に圧縮され、締め付け面の外へとガスケットが逃げる(はみ出す)ようになる。
(3)電解が終了し、セル温度が電解前の温度に戻ると、ガスケットの弾性率は回復するが、増し締めされた状態であるため、ガスケットは過圧縮状態となる。このとき、増し締めした分だけタイロッドを緩めても、ガスケットに永久ひずみが残っているため、シール面圧は電解前の元の値には戻らない。
(4)上記(3)のように、ガスケット及びシール面圧が電解前の状態に戻らないため、再び電解を行い、セル温度が高温となった際には、更なる増し締めが必要となる。
(5)(1)~(4)のようにして増し締めを繰り返し行うと、初期と比べて電解槽のスタック方向の長さは次第に短くなり、ガスケットの圧縮ひずみは次第に増大する。こうして過圧縮状態となったガスケットはやがて破損し、電解液及び発生ガスの漏れが生じる。
[1]
陽極を備える陽極ターミナルエレメントと、
陰極を備える陰極ターミナルエレメントと、
前記陽極ターミナルエレメントと前記陰極ターミナルエレメントとの間に位置し、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極とを隔離する隔壁と、前記隔壁を縁取る外枠とを備える複数の複極式エレメントと、
隣接する前記各エレメントの間に配置される隔膜とが
ガスケットを介してスタックされたセルスタック(a)と;
前記セルスタック(a)の両端に配置され、前記ガスケットと前記隔膜との間、及び前記ガスケットと前記各エレメントとの間に面圧を与えるプレス板(b)と;
前記セルスタック(a)と前記プレス板(b)とを締結するタイロッド(c)とを備える水電解用複極式電解槽であり、
前記プレス板(b)と前記セルスタック(a)との間に断熱部材(d)を備え、
前記セルスタック(a)、前記プレス板(b)、及び前記断熱部材(d)の電解温度におけるスタック方向の平均熱膨張率αが、前記タイロッド(c)の電解温度における前記スタック方向の平均熱膨張率βよりも大きく、かつ、前記セルスタック(a)、前記プレス板(b)、及び前記断熱部材(d)をスタックしたもの全体の電解温度における熱膨張量(前記スタック方向の長さの伸び)が、前記タイロッド(c)の電解温度における熱膨張量(前記スタック方向の長さの伸び)よりも大きい
ことを特徴とする、水電解用複極式電解槽。
[2]
前記断熱部材(d)の電解温度における熱伝導率Aが、前記プレス板(b)の電解温度における熱伝導率Bよりも小さい、[1]に記載の水電解用複極式電解槽。
[3]
前記断熱部材(d)の100℃における熱伝導率Aが1W/m・K以下である、[1]又は[2]に記載の水電解用複極式電解槽。
[4]
前記断熱部材(d)の電解温度における体積抵抗率が1kΩ・cm以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の水電解用複極式電解槽。
[5]
前記ガスケットの厚さが前記複極式エレメントの厚さの5~20%である、[1]~[4]のいずれかに記載の水電解用複極式電解槽。
[6]
前記タイロッド(c)の軸の外周に配置され、前記セルスタック(a)のスタック方向に弾性変形可能なばね部材(e)を更に備え、
前記セルスタック(a)の電解温度におけるスタック方向の膨張長さΔLが、前記ばね部材(e)の前記スタック方向の全たわみTの75%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の水電解用複極式電解槽。
[7]
前記タイロッド(c)の本数をnとして、前記n本のタイロッド(c)に配置される前記ばね部材(e)のばね定数が5/n~20/n kN/mmである、[6]に記載の水電解用複極式電解槽。
[8]
電解時の前記ガスケットと前記各エレメントとの間の面圧が、前記電解槽の最大内圧の2倍以上であり、前記セルスタック(a)のスタック方向における前記ガスケットの圧縮率が10~25%である、[1]~[7]のいずれかに記載の水電解用複極式電解槽。
本実施形態の水電解用複極式電解槽は、セルスタック(a)と、セルスタック(a)の両端に位置するプレス板(b)と、セルスタック(a)とプレス板(b)とを締結するタイロッド(c)とを備える電解槽であり、更に、セルスタック(a)とプレス板(b)との間に断熱部材(d)を備えることを特徴とする。
セルスタック(a)は、陽極を備える陽極ターミナルエレメントと、陰極を備える陰極ターミナルエレメントと、陽極ターミナルエレメントと陰極ターミナルエレメントとの間に位置し、陽極と、陰極と、陽極と陰極とを隔離する隔壁と、隔壁を縁取る外枠とを備える複数の複極式エレメントと、隣接する各エレメントの間に配置される隔膜とがガスケットを介してスタック(積層)されてなる。なお、本開示において、セルスタック(a)のスタック(積層)方向を単に「スタック方向」とも称する。
プレス板(b)は、タイロッド(c)によりセルスタック(a)に締結され、ガスケットと隔膜との間、及びガスケットと各エレメントとの間に面圧(シール面圧)を与える。
本実施形態の水電解用複極式電解槽は、セルスタック(a)とプレス板(b)との間に断熱部材(d)を備えることにより、電解中にセルスタック(a)が高温になった際に、セルスタック(a)からタイロッド(c)への熱伝導を低減することができる。これにより、タイロッド(c)が膨張してスタック方向の長さが伸びること、それによりシール面圧が低下することを防ぐことができるため、タイロッド(c)の増し締めの回数を減らすことができ、長寿命の水電解用複極式電解槽を実現できる。
以下、本実施形態の水電解用複極式電解槽の一例の構成について、図を参照しながら説明する。
図2に、本実施形態の水電解用複極式電解槽の一例のゼロギャップ構造の側面図を、図1に示す破線四角枠の部分について示す。
本実施形態の水電解用複極式電解槽50は、図1及び図2に示す一例では、一端からプレス板(b)、断熱部材(d)、陽極ターミナルエレメント51aが順番に並べられ、更に、陽極側ガスケット7、隔膜4、陰極側ガスケット7、複極式エレメント60が、この順番で並べて配置される。このとき、複極式エレメント60は陽極ターミナルエレメント51a側に陰極2cを向けるよう配置する。陽極側ガスケット7から複極式エレメント60までは、設計生産量に必要な数だけ繰り返し配置される。陽極側ガスケット7から複極式エレメント60までを必要数だけ繰り返し配置した後、再度、陽極側ガスケット7、隔膜4、陰極側ガスケット7を並べて配置し、最後に陰極ターミナルエレメント51c、断熱部材(d)、プレス板(b)をこの順番で配置する。水電解用複極式電解槽50は、全体をタイロッド(c)で締め付けることによりー体化され、複極式電解槽50となる。陽極ターミナルエレメント51aから陰極ターミナルエレメント51cまでをセルスタック(a)と称する。
水電解用複極式電解槽50を構成する配置は、陽極2a側からでも陰極2c側からでも任意に選択でき、上述の順序に限定されるものではない。
また、本実施形態の水電解用複極式電解槽50では、特に限定されないが、図2に示すように、隔膜4が陽極2a及び陰極2cと接触したゼロギャップ構造Zが形成されていることが好ましい。
水電解用複極式電解槽50は、電源の電流を小さくできるという特徴を持ち、電解により化合物や所定の物質等を短時間で大量に製造することができる。電源設備は、出力が同じであれば、定電流、高電圧の方が安価でコンパクトになるため、工業的には単極式よりも複極式の方が好ましい。
本実施形態の水電解用複極式電解槽50に含まれるセルスタック(a)は、図1に示すように、陽極ターミナルエレメント51aと陰極ターミナルエレメント51cとの間に、複極式エレメント60を必要数スタックすることで構成されている。
セルスタック(a)において、隔膜4は、陽極ターミナルエレメント51aと複極式エレメント60との間、隣接して並ぶ複極式エレメント60同士の間、及び複極式エレメント60と陰極ターミナルエレメント51cとの間に配置されている。
図1に示すように、隣接する各エレメント51a、60、51c同士、及び、各エレメント51a、60、51cと隔膜4とは、ガスケット7を介してスタックされる。
なお、本実施形態では、複極式エレメント60は、通常、隔壁1に沿う所与の方向D1が、鉛直方向となるように使用してよく、具体的には、図2に示すように隔壁1の平面視形状が長方形である場合、隔壁1に沿う所与の方向D1が、向かい合う2組の辺のうちの1組の辺の方向と同じ方向となるように、使用してよい。そして、本明細書では、上記鉛直方向を電解液通過方向とも称する。
本実施形態では、特に、水電解用複極式電解槽50における、隣接する2つの複極式エレメント60間の互いの隔壁1間における部分、及び、隣接する複極式エレメント60とターミナルエレメントとの間の互いの隔壁1間における部分を電解セル65と称する。電解セル65は、一方のエレメントの隔壁1、陽極室5a、陽極2a、及び、隔膜4、及び、他方のエレメントの陰極2c、陰極室5c、隔壁1を含む。
なお、図1及び図2に示す例では、隔壁1、陽極2a、陰極2cがいずれも所定の厚みを有する板状の形状であるが、本発明はこれに限定されることなく、断面において全部又は一部がジグザグ状、波状となる形状であってもよく、端部が丸みを帯びている形状であってもよい。
なお、水電解用複極式電解槽50に取り付けられるヘッダーの配設態様として、代表的には、内部ヘッダー型と外部ヘッダー型とがあるが、本発明では、いずれの型を採用してもよく、特に限定されない。
後述するように、複極式エレメント60の外枠や隔壁等の材質は、ステンレス鋼(SUS)、鉄鋼、ニッケル等であり、ガスケット7の材質はゴム等であるため、複極式エレメント60の熱膨張率よりもガスケット7の熱膨張率の方が高く、ガスケット7の厚さが大きい(スタック方向の長さが長い)ほど、セルスタック(a)全体の平均熱膨張率は高くなる。そのため、ガスケット7の厚さを上記範囲にすることで、セルスタック(a)の平均熱膨張率を低減することができ、シール面圧の低下を防ぐことができる。
ガスケット7の具体的な厚さは、水電解用複極式電解槽50の大きさや形状に応じて定まるが、例えば、0.5~10mmであることが好ましく、より好ましくは2~7mmであり、更に好ましくは3~6mmである。
シール面圧は、より好ましくは、水電解用複極式電解槽50の最大内圧の5倍以上であり、更に好ましくは10倍以上である。
なお、上記水電解用複極式電解槽50の最大内圧は、発生ガスの出口流路に設けた圧力計により測定することができる。また、シール面圧は、プレス板(b)と断熱部材(d)の間にロードセルを挿入してスタック方向荷重を測定することにより求めることができる。
また、スタック方向におけるガスケット7の圧縮率は、より好ましくは13~25%であり、更に好ましくは15~20%である。
なお、ガスケット7の圧縮率とは、電解の前後で比較したガスケット7のスタック方向の長さの収縮率を指す。
本実施形態の水電解用複極式電解槽50において、プレス板(b)は、セルスタック(a)の両端に配置される。プレス板(b)は、タイロッド(c)によりセルスタック(a)に締結され、タイロッド(c)の締結荷重によりガスケット7と隔膜4との間、及びガスケット7と各エレメント51a、60、51cとの間に面圧(シール面圧)を与える。プレス板(b)により面圧を掛けられたガスケット7が各複極式エレメントと隔膜4との間、及び隣接する各複極式エレメント間を電解液と発生ガスに対してシールすることにより、電解液や発生ガスが水電解用複極式電解槽50の外へ漏れることや両極室間において発生ガスが混合することを防ぐ。
本実施形態の水電解用複極式電解槽50において、タイロッド(c)は、プレス板(b)に取り付けられ、セルスタック(a)とプレス板(b)とを締結することにより、水電解用複極式電解槽50を一体化させる。
なお、本開示において、電解温度とは、電解中の電解液の温度であり、80±30℃としてよい。
本実施形態の水電解用複極式電解槽50において、断熱部材(d)板は、セルスタック(a)とプレス板(b)との間に配置されて、電解中のセルスタック(a)からプレス板(b)への熱伝導を低減する。これにより、プレス板(b)に接触しているタイロッド(c)が膨張してスタック方向の長さが伸びること、それによりシール面圧が低下することを防ぐことができ、タイロッド(c)の増し締めの回数を減らすことができるため、長寿命の水電解用複極式電解槽を実現できる。
また、本実施形態の水電解用複極式電解槽50の好適例では、断熱部材(d)の電解温度における熱伝導率Aは、上記プレス板(b)の電解温度における熱伝導率Bよりも小さい。熱伝導率Aが熱伝導率Bよりも小さいことにより、プレス板(b)に接触しているタイロッド(c)への熱伝導が低減し、タイロッド(c)の温度上昇を低減することができるため、タイロッド(c)の熱膨張の低減し、シール面圧の低下を防ぐことができる。
なお、上記熱伝導率は、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の水電解用複極式電解槽50は、タイロッド(c)の軸の外周に、セルスタック(a)のスタック方向に弾性変形可能なばね部材(e)を更に備えていてもよい。ばね部材(e)を備えると、セルスタック(a)が熱膨張した(スタック方向の長さが伸びた)際に、ばね部材(e)が圧縮することによりセルスタック(a)の熱膨張量をばね部材(e)が吸収するため、シール面圧の低下を防ぐことができる。
なお、全たわみTとは、ばねの自由長さから密着時のばねの長さを引いた値を指す。
なお、上記平均熱膨張率αは、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
また、以下では、本発明の効果を高めるための好適形態についても詳述する。
本実施形態における隔壁1の形状は、所定の厚みを有する板状の形状としてよいが、特に限定されない。
隔壁1の平面視形状としては、特に限定されることなく、矩形(正方形、長方形等)、円形(円、楕円等)としてよく、ここで、矩形は角が丸みを帯びていてもよい。
一実施形態において、隔壁1と外枠3とを溶接その他の方法で接合することで一体化してもよく、例えば、隔壁1に、隔壁1の平面に対して垂直な方向に張り出したフランジ部(陽極2a側に張り出した陽極フランジ部、陰極2c側に張り出した陰極フランジ部)を設け、フランジ部を外枠3の一部としてもよい。
本実施形態の水電解による水素製造において、エネルギー消費量の削減、具体的には電解電圧の低減は、大きな課題である。この電解電圧は電極2に大きく依存するため、両電極2の性能は重要である。
本実施形態における外枠3の形状は、隔壁1を縁取ることができる限り特に限定されないが、隔壁1の平面に対して垂直な方向に沿う内面を隔壁1の外延に亘って備える形状としてよい。
外枠3の形状としては、特に限定されることなく、隔壁1の平面視形状に合わせて適宜定められてよい。
本実施形態の水電解用複極式電解槽50において用いられる隔膜4としては、イオンを導通しつつ、発生する水素ガスと酸素ガスを隔離するために、イオン透過性の隔膜4が使用される。このイオン透過性の隔膜4は、イオン交換能を有するイオン交換膜と、電解液を浸透することができる多孔膜が使用できる。このイオン透過性の隔膜4は、ガス透過性が低く、イオン伝導率が高く、電子電導度が小さく、強度が強いものが好ましい。
多孔膜は、複数の微細な貫通孔を有し、隔膜4を電解液が透過できる構造を有する。電解液が多孔膜中に浸透することにより、イオン伝導を発現するため、孔径や気孔率、親水性といった多孔構造の制御が非常に重要となる。一方、電解液だけでなく、発生ガスを通過させないこと、すなわちガスの遮断性を有することが求められる。この観点でも多孔構造の制御が重要となる。
高分子多孔膜の製法例としては、相転換法(ミクロ相分離法)、抽出法、延伸法、湿式ゲル延伸法等が挙げられる。
高分子材料としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリビニリデンフロライド、ポリカーボネート、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロスルホン酸、パーフルオロカルボン酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。これらの中でも、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、であることが好ましく、ポリスルホンであることがより好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
多孔膜の平均孔径が大きいほど、単位面積あたりの多孔膜透過量は大きくなり、特に、電解においては多孔膜のイオン透過性が良好となり、電圧損失を低減しやすくなる傾向にある。また、多孔膜の平均孔径が大きいほど、アルカリ水との接触表面積が小さくなるので、ポリマーの劣化が抑制される傾向にある。
一方、多孔膜の平均孔径が小さいほど、多孔膜の分離精度が高くなり、電解においては多孔膜のガス遮断性が良好となる傾向にある。更に、後述する粒径の小さな親水性無機粒子を多孔膜に担持した場合、欠落せずしっかりと保持することができる。これにより、親水性無機粒子が持つ高い保持能力を付与でき、長期に亘ってその効果を維持することができる。
多孔膜の平均孔径とは、完全性試験機(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社製、「Sartocheck Junior BP-Plus」)を使用して以下の方法で測定した平均透水孔径をいう。まず、多孔膜を芯材も含めて所定の大きさに切り出して、これをサンプルとする。このサンプルを任意の耐圧容器にセットして、容器内を純水で満たす。次に、耐圧容器を所定温度に設定した恒温槽内で保持し、耐圧容器内部が所定温度になってから測定を開始する。測定が始まると、サンプルの上面側が窒素で加圧されていき、サンプルの下面側から純水が透過してくる際の圧力及び透過流量の数値を記録する。平均透水孔径は、圧力が10kPaから30kPaの間の圧力と透水流量との勾配を使い、以下のハーゲンポアズイユの式から求めることができる。
平均透水孔径(m)={32ηLμ0/(εP)}0.5
ここで、ηは水の粘度(Pa・s)、Lは多孔膜の厚み(m)、μ0は見かけの流速であり、μ0(m/s)=流量(m3/s)/流路面積(m2)である。また、εは空隙率、Pは圧力(Pa)である。
ガス遮断性や低電圧損失等を高いレベルで両立させるといった観点から、多孔膜の気孔率の下限は30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましい。また、気孔率の上限は70%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましく、55%以下であることが更に好ましい。多孔膜の気孔率が上記上限値以下であれば、膜内をイオンが透過しやすく、膜の電圧損失を抑制できる。
気孔率P(%)=ρ/(1+ρ)×100
ここで、ρ=(W3-W1)/(W3-W2)であり、W1は多孔膜の乾燥質量(g)、W2は多孔膜の水中質量(g)、W3は多孔膜の飽水質量(g)である。
多孔膜の厚みが、上記下限値以上であると、突刺し等で破れにくく、電極間がショートしにくい。また、ガス遮断性が良好となる。また、上記上限値以下であると、電圧損失が増大しにくい。また、多孔膜の厚みのばらつきによる影響が少なくなる。
また、隔膜の厚みが、100μm以上であると、突刺し等で破れにくく、電極間がショートしにくい。また、ガス遮断性が良好となる。600μm以下であると、電圧損失が増大しにくい。また、多孔膜の厚みのばらつきによる影響が少なくなる。
多孔膜の厚みが、250μm以上であれば、一層優れたガス遮断性が得られ、また、衝撃に対する多孔膜の強度が一層向上する。この観点より、多孔膜の厚みの下限は、300μm以上であることがより好ましく、350μm以上であることが更に好ましく400μm以上でることがより一層好ましい。一方で、多孔膜の厚みが、700μm以下であれば、運転時に孔内に含まれる電解液の抵抗によりイオンの透過性を阻害されにくく、一層優れたイオン透過性を維持すことができる。かかる観点から、多孔膜の厚みの上限は、600μm以下であることがより好ましく、550μm以下であることが更に好ましく、500μm以下であることがより一層好ましい。
多孔膜は、高いイオン透過性及び高いガス遮断性を発現するために親水性無機粒子を含有していることが好ましい。親水性無機粒子は多孔膜の表面に付着していても良いし、一部が多孔膜を構成する高分子材料に埋没していても良い。また親水性無機粒子が多孔膜の空隙部に内包されると、多孔膜から脱離しにくくなり、多孔膜の性能を長時間維持できる。
隔膜4として多孔膜を用いる場合、多孔膜は多孔性支持体と共に用いてよい。好ましくは、多孔膜が多孔性支持体を内在した構造であり、より好ましくは、多孔性支持体の両面に多孔膜を積層した構造である。また、多孔性支持体の両面に対称に多孔膜を積層した構造であってもよい。
イオン交換膜としては、カチオンを選択的に透過させるカチオン交換膜とアニオンを選択的に透過させるアニオン交換膜があり、いずれの交換膜でも使用することができる。
イオン交換膜の材質としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、含フッ素系樹脂やポリスチレン・ジビニルベンゼン共重合体の変性樹脂が好適に使用できる。特に耐熱性及び耐薬品性等に優れる点で、含フッ素系イオン交換膜が好ましい。
この当量質量EWは、イオン交換膜を塩置換し、その溶液をアルカリ又は酸溶液で逆滴定することにより測定することができる。当量質量EWは、原料であるモノマーの共重合比、モノマー種の選定等により調整することができる。
イオン交換膜の当量質量EWは、親水性、膜の耐水性の観点から300以上であることが好ましく、親水性、イオン交換能の観点から1300以下であることが好ましい。
ゼロギャップ型セルにおける複極式エレメント60では、極間距離を小さくする手段として、電極2と隔壁1との間に弾性体であるバネを配置し、このバネで電極2を支持する形態をとることが好ましい。例えば、第1の例では、隔壁1に導電性の材料で製作されたバネを取り付け、このバネに電極2を取り付けてよい。また、第2の例では、隔壁1に取り付けた電極リブにバネを取り付け、そのバネに電極2を取り付けてよい。なお、このような弾性体を用いた形態を採用する場合には、電極2が隔膜4に接する圧力が不均一にならないように、バネの強度、バネの数、形状等必要に応じて適宜調節する必要がある。
本実施形態における水電解用複極式電解槽50では、図2に示すとおり、隔壁1と外枠3と隔膜4とにより、電解液が通過する電極室5が画成されている。
本実施形態の水電解用複極式電解槽50では、隔壁1に整流板6(陽極整流板、陰極整流板)が取り付けられ、整流板6が電極2と物理的に接続されていることが好ましい。かかる構成によれば、整流板6が電極2の支持体となり、ゼロギャップ構造Zを維持しやすい。
ここで、整流板6に、電極2が設けられていてもよく、整流板6に、集電体2r、導電性弾性体2e、電極2がこの順に設けられていてもよい。
前述の一例の水電解用複極式電解槽50では、陰極室5cにおいて、整流板6-集電体2r-導電性弾性体2e-電極2の順に重ね合わせられた構造が採用され、陽極室5aにおいて、整流板6-電極2の順に重ね合わせられた構造が採用されている。
整流板6の高さは、隔壁1から各フランジ部までの距離、ガスケット7の厚さ、電極2(陽極2a、陰極2c)の厚さ、陽極2aと陰極2cとの間の距離等に応じて、適宜に定められてよい。
また、整流板6の厚みは、コストや製作性、強度等も考慮して、0.5~5mmとしてよく、1~2mmのものが用いやすいが、特に限定されない。
本実施形態の水電解用複極式電解槽50では、隔壁1を縁取る外枠3同士の間に隔膜4を有するガスケット7が挟持されることが好ましい。
ガスケット7は、複極式エレメント60と隔膜4の間、複極式エレメント60間を電解液と発生ガスに対してシールするために使用され、電解液や発生ガスの電解槽外への漏れや両極室間におけるガス混合を防ぐことができる。
ゴム材料や樹脂材料としては、具体的には、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム(SR)、エチレン-プロピレンゴム(EPT)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR)、ウレタンゴム(UR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等のフッ素樹脂材料や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアセタール等の樹脂材料を用いることができる。これらの中でも、弾性率や耐アルカリ性の観点でエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)が特に好適である。
このような補強材は公知の金属材料、樹脂材料及び炭素材料等が使用でき、具体的には、ニッケル、ステンレス等の金属、ナイロン、ポリプロピレン、PVDF、PTFE、PPS等の樹脂、カーボン粒子や炭素繊維等の炭素材料が挙げられる。
この場合、ガスケット7がスリット部を備える場合、スリット部のサイズはスリットの内寸が膜のサイズより縦横で0.5~5mm大きくなるようにするのがよい。
また、ガスケット7がスリット部を備える場合、スリット部の開口幅としては、膜の厚みの0.5~1.0倍としてよい。
なお、引張応力は、JIS K6251に準拠して、測定することができる。例えば、島津製作所社製のオートグラフAGを用いてよい。
水電解用複極式電解槽50は、電解セル65毎に、陰極室5c、陽極室5aを有する。水電解用複極式電解槽50で、電気分解反応を連続的に行うためには、各電解セル65の陰極室5cと陽極室5aとに電気分解によって消費される原料を十分に含んだ電解液を供給し続ける必要がある。
内部ヘッダー型とは、水電解用複極式電解槽50とヘッダー(電解液を配液又は集液する管)とが一体化されている形式をいう。
外部ヘッダー型とは、水電解用複極式電解槽50とヘッダー(電解液を配液又は集液する管)とが独立している形式をいう。
外部ヘッダー型の例では、隔壁1の端縁にある外枠3のうちの下方に位置する部分に設けられたヘッダー用貫通孔に、管腔状部材が設置され、管腔状部材が、陽極入口ヘッダー及び陰極入口ヘッダーに接続されており、また、同様に、隔壁1の端縁にある外枠3のうちの上方に位置する部分に設けられたヘッダー用貫通孔に、管腔状部材(例えば、ホースやチューブ等)が設置され、かかる管腔状部材が、陽極出口ヘッダー及び陰極出口ヘッダーに接続されている。
図3に、本実施形態の水電解用複極式電解槽50を用いた水電解用電解装置70の概要を示す。
本実施形態の水電解用電解装置70は、本実施形態の水電解用複極式電解槽50と、電解液を循環させるための送液ポンプ71と、電解液と水素及び/又は酸素とを分離する気液分離タンク72と、電解により消費した水を補給するための水補給器73とを有する。
すなわち、本実施形態によれば、変動電源や運転停止の頻度が高い条件で使用される場合でも長寿命である水電解用複極式電解装置を得ることができる。
本実施形態において用いられる送液ポンプ71としては、特に限定されず、適宜定められてよい。
本実施形態において用いられる気液分離タンク72は、陰極室5cで発生した水素ガスと電解液とを分離する水素分離タンク72hと、陽極室5aで発生した酸素ガスと電解液とを分離する酸素分離タンク72oとを含む。
水素分離タンク72hは陰極室5cに接続され、酸素分離タンク72oは陽極室5aに接続されて用いられる。
循環停止時の電解槽中の液面の低下を防ぐ目的で、気液分離タンク72内の電解液面を電解槽上面よりも高いことが好ましいが、これに限定されるものではない。
電解セル65と気液分離タンク72との間に遮断弁を付けることが好ましいが、これに限定されるものではない。
また、タンク高さも同様に、高さが低い場合は、上記変動の影響を受けやすいため、高くすることが好ましい。
本実施形態において用いられる水補給器73としては、特に限定されず、適宜定められてよい。
水としては、一般上水を使用してもよいが、長期間に渡る運転を考慮した場合、イオン交換水、RO水、超純水等を使用することが好ましい。
本実施形態の水電解用電解装置70は、水電解用複極式電解槽50、送液ポンプ71、気液分離タンク72、水補給器73以外にも、整流器74、酸素濃度計75、水素濃度計76、流量計77、圧力計78、熱交換器79、圧力制御弁80を備えてよい。
図3に示す構成の水電解用複極式電解装置を用いた。具体的には、水電解用複極式電解槽には、セルスタック(a)として、陽極ターミナルエレメント1個、複極式エレメント4個、陰極ターミナルエレメント1個、及び隔膜5枚が、ゴム製ガスケット(電解前の圧縮率:20%)5個を介して図1に示すようにスタックされたセルスタック(5個の電解セル)を用いた。いずれのエレメントも、隔壁及び外枠等の電解液に接液する部材の材料は全てニッケルとした。陽極にはニッケル(触媒層はコバルト)を用い、陰極にはニッケル(触媒層は白金及びパラジウム)を用いた。その他の構成部材としては、SUS製プレス板(b)2枚、チタン製タイロッド(c)6本(プレス板(b)1枚に対して各3本)、PTFE製断熱部材(d)2枚、SUS製ばね部材(e)(皿ばね)6個(タイロッド(c)1本に対して各1個)を用いた。また、電解液には、水酸化カリウム水溶液を用いた。
電流密度6000A/m2にて7時間運転した。雰囲気温度は10℃、電解中の電解槽の温度は100℃であり、電解中の電解槽の内圧は0.01MPaに調整した。
水電解用複極式電解槽の構成及び各測定結果を表1に示す。
なお、セルスタック(a)、プレス板(b)、及び断熱部材(d)の平均熱膨張率αは、下記式により求めた。
α=(t(a)α(a)+t(b)α(b)+t(d)α(d))/(t(a)+t(b)+t(d))
(式中、t(a)、t(b)、及びt(d)は、それぞれセルスタック(a)、プレス板(b)、及び断熱部材(d)のスタック方向の長さ(厚み)を表し、α(a、)α(b)、α(d)は、それぞれセルスタック(a)、プレス板(b)、及び断熱部材(d)の熱膨張率を表す。)
また、電解槽の内圧及びシール面圧は、それぞれ、電解槽の出口ヘッダーに設けた圧力計、及びプレス板(b)と断熱部材(d)との間に設置したロードセルにより測定した。
タイロッド(c)の材質をSUSとした以外は、実施例1と同様にして実施した。
水電解用複極式電解槽の構成及び各測定結果を表1に示す。
断熱部材(d)の代わりにSUS製の部材(d’)を用い、タイロッド(c)の材質をSUSとした以外は、実施例1と同様にして実施した。
水電解用複極式電解槽の構成及び各測定結果を表1に示す。
(b) プレス板
(c) タイロッド
(d) 断熱部材
(e) ばね部材
1 隔壁
2 電極
2a 陽極
2c 陰極
2e 導電性弾性体
2r 集電体
3 外枠
4 隔膜
5 電極室
5a 陽極室
5c 陰極室
6 整流板
7 ガスケット
50 水電解用複極式電解槽
51a 陽極ターミナルエレメント
51c 陰極ターミナルエレメント
60 複極式エレメント
65 電解セル
70 電解装置
71 送液ポンプ
72 気液分離タンク
72h 水素分離タンク
72o 酸素分離タンク
73 水補給器
74 整流器
75 酸素濃度計
76 水素濃度計
77 流量計
78 圧力計
79 熱交換器
80 圧力制御弁
D1 隔壁に沿う所与の方向(電解液通過方向)
Z ゼロギャップ構造
Claims (8)
- 陽極を備える陽極ターミナルエレメントと、
陰極を備える陰極ターミナルエレメントと、
前記陽極ターミナルエレメントと前記陰極ターミナルエレメントとの間に位置し、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極とを隔離する隔壁と、前記隔壁を縁取る外枠とを備える複数の複極式エレメントと、
隣接する前記各エレメントの間に配置される隔膜とが
ガスケットを介してスタックされたセルスタック(a)と;
前記セルスタック(a)の両端に配置され、前記ガスケットと前記隔膜との間、及び前記ガスケットと前記各エレメントとの間に面圧を与えるプレス板(b)と;
前記セルスタック(a)と前記プレス板(b)とを締結するタイロッド(c)とを備える水電解用複極式電解槽であり、
前記プレス板(b)と前記セルスタック(a)との間に断熱部材(d)を備え、
前記セルスタック(a)、前記プレス板(b)、及び前記断熱部材(d)の電解温度におけるスタック方向の平均熱膨張率αが、前記タイロッド(c)の電解温度における前記スタック方向の平均熱膨張率βよりも大きく、かつ、前記セルスタック(a)、前記プレス板(b)、及び前記断熱部材(d)をスタックしたもの全体の電解温度における熱膨張量(前記スタック方向の長さの伸び)が、前記タイロッド(c)の電解温度における熱膨張量(前記スタック方向の長さの伸び)よりも大きい
ことを特徴とする、水電解用複極式電解槽。 - 前記断熱部材(d)の電解温度における熱伝導率Aが、前記プレス板(b)の電解温度における熱伝導率Bよりも小さい、請求項1に記載の水電解用複極式電解槽。
- 前記断熱部材(d)の100℃における熱伝導率Aが1W/m・K以下である、請求項1又は2に記載の水電解用複極式電解槽。
- 前記断熱部材(d)の電解温度における体積抵抗率が1kΩ・cm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水電解用複極式電解槽。
- 前記ガスケットの厚さが前記複極式エレメントの厚さの5~20%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水電解用複極式電解槽。
- 前記タイロッド(c)の軸の外周に配置され、前記セルスタック(a)のスタック方向に弾性変形可能なばね部材(e)を更に備え、
前記セルスタック(a)の電解温度におけるスタック方向の膨張長さΔLが、前記ばね部材(e)の前記スタック方向の全たわみTの75%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の水電解用複極式電解槽。 - 前記タイロッド(c)の本数をnとして、前記n本のタイロッド(c)に配置される前記ばね部材(e)のばね定数が5/n~20/n kN/mmである、請求項6に記載の水電解用複極式電解槽。
- 電解時の前記ガスケットと前記各エレメントとの間の面圧が、前記電解槽の最大内圧の2倍以上であり、前記セルスタック(a)のスタック方向における前記ガスケットの圧縮率が10~25%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の水電解用複極式電解槽。
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