以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
二次電池は例えば正極および負極を有する。正極を構成する材料として、正極活物質がある。正極活物質は例えば、充放電の容量に寄与する反応を行う物質である。なお、正極活物質は、その一部に、充放電の容量に寄与しない物質を含んでもよい。
本明細書等において、本発明の一態様の正極活物質は、正極材料、あるいは二次電池用正極材、複合酸化物、等と表現される場合がある。また本明細書等において、本発明の一態様の正極活物質は、化合物を有することが好ましい。また本明細書等において、本発明の一態様の正極活物質は、組成物を有することが好ましい。また本明細書等において、本発明の一態様の正極活物質は、複合体を有することが好ましい。
本明細書等において、偏在とは、複数の元素(例えばA,B,C)からなる固体において、ある元素(例えばB)が空間的に不均一に分布する現象をいう。
本明細書等において、活物質等の粒子の表層部とは例えば、表面から内部に向かって50nm以内、より好ましくは35nm以内、さらに好ましくは20nm以内、最も好ましくは10nm以内の領域である。ひびやクラックにより生じた面も表面といってよい。また表層部より深い領域を、内部という。また、本明細書等において粒界とは、たとえば粒子同士が固着している部分、粒子内部(中央部を含む)で結晶方位が変わる部分、欠陥を多く含む部分、結晶構造が乱れている部分等をいう。粒界は、面欠陥の一つといえる。また粒界の近傍とは、粒界から10nm以内の領域をいうこととする。また、本明細書等において粒子とは球形(断面形状が円)のみを指すことに限定されず、個々の粒子の断面形状が楕円形、長方形、台形、錐形、角が丸まった四角形、非対称の形状などが挙げられ、さらに個々の粒子は不定形であってもよい。
また本明細書等において結晶面および方向の表記にはミラー指数を用いる。結晶面を示す個別面は( )で表す。結晶面、方向および空間群の表記は、結晶学上、数字に上付きのバーを付すが、本明細書等では出願表記の制約上、数字の上にバーを付す代わりに、数字の前に-(マイナス符号)を付して表現する場合がある。
本明細書等において、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する層状岩塩型の結晶構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列する岩塩型のイオン配列を有し、遷移金属とリチウムが規則配列して二次元平面を形成するため、リチウムの二次元的拡散が可能である結晶構造をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損等の欠陥があってもよい。また、層状岩塩型結晶構造は、厳密に言えば、岩塩型結晶の格子が歪んだ構造となっている場合がある。
また本明細書等において、岩塩型の結晶構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列している構造をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損があってもよい。
コバルト酸リチウム(LiCoO2)などの層状岩塩型の結晶構造を有する材料は、放電容量が高く、二次電池の正極活物質として優れることが知られている。層状岩塩型の結晶構造を有する材料として例えば、LiMO2で表される複合酸化物が挙げられる。正極活物質中に挿入脱離可能なリチウムがどの程度残っているかを、組成式中のx、たとえばLixCoO2中のx、またはLixMO2中のxで示す。本明細書中のLixCoO2は適宜LixMO2に読み替えることができる。二次電池中の正極活物質の場合、x=充電容量/理論容量とすることができる。たとえばLiCoO2を正極活物質に用いた二次電池を219.2mAh/g充電した場合、Li0.8CoO2またはx=0.8ということができる。LixCoO2中のxが小さいとは、たとえば0.1<x≦0.24をいう。
遷移金属化合物におけるヤーン・テラー効果は、遷移金属のd軌道の電子の数により、その効果の強さが異なることが知られている。
ニッケルを有する化合物においては、ヤーン・テラー効果により歪みが生じやすい場合がある。よって、LixNiO2においてxが小さくなるような充放電を行った場合、歪みに起因する結晶構造の崩れが生じる懸念がある。LiCoO2においてはヤーン・テラー効果の影響が小さいことが示唆され、LixCoO2中のxが小さいときの耐性がより優れる場合があり好ましい。
図8乃至図10を用いて、正極活物質について説明する。図8乃至図10では、正極活物質が有する遷移金属としてコバルトを用いる場合について述べる。
<従来の正極活物質>
コバルト酸リチウム(LiCoO2)は、リチウムサイトのLiの占有率xによって異なる結晶構造をとり得る。従来の正極活物質の結晶構造の変化を図10に示す。図10に示す従来の正極活物質は、特に添加元素Aを有さないコバルト酸リチウム(LiCoO2)である。特に添加元素Aを有さないコバルト酸リチウムの結晶構造の変化は非特許文献1乃至非特許文献3等に述べられている。
図10にR-3m O3を付してLixCoO2中のx=1のコバルト酸リチウムが有する結晶構造を示す。この結晶構造はリチウムが8面体(Octahedral)サイトを占有し、ユニットセル中にCoO2層が3層存在する。そのため、この結晶構造を、O3型結晶構造と呼ぶ場合がある。なお、CoO2層とはコバルトに酸素が6配位した8面体構造が、稜共有の状態で平面に連続した構造をいうこととする。これをコバルトと酸素の8面体からなる層、という場合もある。
また従来のコバルト酸リチウムは、x=0.5程度のときリチウムの対称性が高まり、単斜晶系の空間群P2/mに帰属する結晶構造を有することが知られている。この構造はユニットセル中にCoO2層が1層存在する。そのためO1型、または単斜晶O1型と呼ぶ場合がある。またx=0のときの正極活物質は、空間群P-3m1の結晶構造を有し、ユニットセル中にCoO2層が1層存在する。そのためこの結晶構造を、O1型結晶構造と呼ぶ場合がある。
またx=0.24程度のときの従来のコバルト酸リチウムは、空間群R-3mの結晶構造を有する。この構造は、P-3m1(O1)のようなCoO2の構造と、R-3m(O3)のようなLiCoO2の構造と、が交互に積層された構造ともいえる。そのためこの結晶構造を、H1-3型結晶構造と呼ぶ場合がある。なお、実際にはH1-3型結晶構造は、ユニットセルあたりのコバルト原子の数が他の構造の2倍となっている。しかし図10をはじめ本明細書では、他の構造と比較しやすくするためH1-3型結晶構造のc軸をユニットセルの1/2にした図で示すこととする。
H1-3型結晶構造は一例として、非特許文献3に記載があるように、ユニットセルにおけるコバルトと酸素の座標を、Co(0、0、0.42150±0.00016)、O1(0、0、0.27671±0.00045)、O2(0、0、0.11535±0.00045)と表すことができる。O1及びO2はそれぞれ酸素原子である。このようにH1-3型結晶構造は、1つのコバルト及び2つの酸素を用いたユニットセルにより表される。一方、後述するように、本発明の一態様のO3’型結晶構造は好ましくは、1つのコバルト及び1つの酸素を用いたユニットセルにより表される。これは、O3’型結晶構造の場合とH1-3型構造の場合では、コバルトと酸素との対称性が異なり、O3’型結晶構造の方が、H1-3型構造に比べてO3の構造からの変化が小さいことを示す。正極活物質が有する結晶構造をいずれのユニットセルを用いて表すべきかは、例えばXRDのリートベルト解析により判断することができる。この場合はGOF(goodness of fit)の値が小さくなるユニットセルを採用すればよい。
LixCoO2中のxが0.24以下になるような充電と、放電とを繰り返すと、コバルト酸リチウムはH1-3型結晶構造と、放電状態のR-3m(O3)の構造と、の間で結晶構造の変化(つまり、非平衡な相変化)を繰り返すことになる。
しかしながら、これらの2つの結晶構造は、CoO2層のずれが大きい。図10に点線及び矢印で示すように、H1-3型結晶構造では、CoO2層がR-3m(O3)から大きくずれている。このようなダイナミックな構造変化は、結晶構造の安定性に悪影響を与えうる。
さらに体積の差も大きい。同数のコバルト原子あたりで比較した場合、H1-3型結晶構造と放電状態のO3型結晶構造の体積の差は3.0%以上である。
加えて、H1-3型結晶構造が有する、P-3m1(O1)のようなCoO2層が連続した構造は不安定である可能性が高い。
そのため、xが0.24以下になるような充放電を繰り返すとコバルト酸リチウムの結晶構造は崩れていく。結晶構造の崩れが、サイクル特性の悪化を引き起こす。これは、結晶構造が崩れることで、リチウムが安定して存在できるサイトが減少し、またリチウムの挿入脱離が難しくなるためである。
層状岩塩型結晶、および岩塩型結晶の陰イオンは立方最密充填構造(面心立方格子構造)をとる。O3’型結晶構造も、陰イオンは立方最密充填構造をとると推定される。これらが接するとき、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃う結晶面が存在する。ただし、層状岩塩型結晶およびO3’型結晶の空間群はR-3mであり、岩塩型結晶の空間群Fm-3m(一般的な岩塩型結晶の空間群)およびFd-3m(最も単純な対称性を有する岩塩型結晶の空間群)とは異なるため、上記の条件を満たす結晶面のミラー指数は層状岩塩型結晶およびO3’型結晶と、岩塩型結晶では異なる。本明細書では、層状岩塩型結晶、O3’型結晶、および岩塩型結晶において、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃うとき、結晶の配向が概略一致する、と言う場合がある。
二つの領域の結晶の配向が概略一致することは、TEM(透過電子顕微鏡)像、STEM(走査透過電子顕微鏡)像、HAADF-STEM(高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡)像、ABF-STEM(環状明視野走査透過電子顕微鏡)像等から判断することができる。X線回折(XRD)、電子線回折、中性子線回折等も判断の材料にすることができる。TEM像等では、陽イオンと陰イオンの配列が、明線と暗線の繰り返しとして観察できる。層状岩塩型結晶と岩塩型結晶において立方最密充填構造の向きが揃うと、結晶間で、明線と暗線の繰り返しのなす角度が5度以下、より好ましくは2.5度以下である様子が観察できる。なお、TEM像等では酸素、フッ素をはじめとする軽元素は明確に観察できない場合があるが、その場合は金属元素の配列で配向の一致を判断することができる。
また本明細書等において、正極活物質の理論容量とは、正極活物質が有する挿入脱離可能なリチウムが全て脱離した場合の電気量をいう。例えばLiCoO2の理論容量は274mAh/g、LiNiO2の理論容量は274mAh/g、LiMn2O4の理論容量は148mAh/gである。
正極に用いる前の、適切に合成したコバルト酸リチウムが化学量論比をおよそ満たす場合、LiCoO2でありx=1である。また放電が終了した二次電池も、LiCoO2またはx=1といってよい。ここでいう放電が終了したとは、たとえば100mAh/g以下の電流で、電圧が3.0Vまたは2.5V以下となった状態をいう。LixCoO2中のxの算出に用いる充電容量および/または放電容量は、短絡および/または電解質の分解の影響がないか、少ない条件で計測することが好ましい。たとえば短絡とみられる急激な容量の変化が生じた二次電池のデータはxの算出に使用してはならない。
放電レートとは、電池容量に対する放電時の電流の相対的な比率であり、単位Cで表される。定格容量X(Ah)の電池において、1C相当の電流は、X(A)である。2X(A)の電流で放電させた場合は、2Cで放電させたといい、X/5(A)の電流で放電させた場合は、0.2Cで放電させたという。また、充電レートも同様であり、2X(A)の電流で充電させた場合は、2Cで充電させたといい、X/5(A)の電流で充電させた場合は、0.2Cで充電させたという。
定電流充電とは例えば、充電レートを一定として充電を行う方法を指す。定電圧充電とは例えば、充電が上限電圧に達したら、電圧を一定とし、充電を行う方法を指す。定電流放電とは例えば、放電レートを一定として放電を行う方法を指す。
また本明細書等において、ある数値Aの近傍の値とは、0.9A以上1.1A以下の値をいうこととする。
また本明細書等において、本発明の一態様の正極および正極活物質用いた二次電池として、対極にリチウム金属を用いる例を示す場合があるが、本発明の一態様の二次電池はこれに限らない。負極に他の材料、例えば黒鉛、チタン酸リチウム等を用いてもよい。本発明の一態様の正極および正極活物質の、充放電を繰り返しても結晶構造が崩れにくく、良好なサイクル特性を得られる等の性質は、負極の材料に影響されない。また本発明の一態様の二次電池について、対極リチウムで充電電圧4.7V程度の一般的な充電電圧よりも高い電圧で充放電する例を示す場合があるが、より低い電圧で充放電をしてもよい。より低い電圧で充放電する場合は本明細書等で示すよりもさらにサイクル特性がよくなることが見込まれる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、図1乃至図3を用いて本発明の一態様の正極活物質について説明する。
正極活物質の信頼性を向上させるため、正極活物質表面が電解液と反応して還元することを防ぐ構造とする。ゾルゲル法により、正極活物質表面の一部に凸部を設けることで正極活物質と電解液との反応面積を減少し、電解液の分解又は正極活物質の還元を抑制し、サイクル特性を向上させる。
図1は、本実施の形態で示すゾルゲル法を用いて作製した正極活物質の一つの粒子のTEM写真である。
一つの粒子である正極活物質100には、複数の凸部を有しており、形状が様々ではあるが、凸部101、102、103を有している正極活物質100の一つの粒子の模式図を図1Bに示している。
また、凸部103の周辺のSTEM写真を図2Aに示す。図2Aは、日立ハイテクノロジーズ社製のHD-2700を用いて、加速電圧200kVで測定したSTEM写真である。また、図2A中の凸部103の領域(Area1)近傍におけるZrのマッピング像を図2Bに示す。また、凸部103の領域(Area1)近傍における酸素のマッピング像を図2Cに示す。また、凸部103の領域(Area1)近傍におけるアルミニウムのマッピング像を図2Dに示す。また、凸部103の領域(Area1)近傍におけるコバルトのマッピング像を図2Eに示す。これらのマッピング像から、Area1とArea2の間に粒界を有している場合があるとも言える。
また、比較のためにArea1と図2A中の正極活物質粒子内部の領域Area2の領域で検出された各元素(炭素、窒素、酸素、フッ素、Zr、Al、Si、Ti、Co、Ni、Cu、Ga)における定量値を以下の表1に示す。なお、炭素、酸素、シリコンはコロジオン膜由来を含んでいる。また、Cuはメッシュ等の散乱を含む。
凸部103は、これらの結果から酸化ジルコニウムを有している。また、凸部103は、コバルトも含んでいる。凸部103に含まれるフッ素、シリコン、Cuは、正極活物質粒子内部の領域Area2に比べて多く含まれている。正極活物質粒子内部の領域Area2は、コバルト、アルミニウムがArea1よりも多く検出されている。また、図2Dからも読み取れるように、凸部103は、アルミニウムも含んでいる。また、Area1とArea2において、窒素、チタン、ニッケル、ガリウムは、ほぼ同程度の濃度である。
また、日立ハイテクノロジーズ社製のHD-2700を用いて、電子線回折を行い、領域Area1の結果を図3Aに示す。また、領域Area2の結果を図3Bに示す。図3Aにおいて、複数の結晶面が観察されることから凸部103は、多結晶を含む。また、単斜晶系である。なお、酸化ジルコニウムは室温で単斜晶系が最も安定して存在する。正極活物質表面の一部に凸部(酸化ジルコニウムなど)を設けることで正極活物質と電解液との反応面積を減少し、電解液の分解又は正極活物質の還元を抑制し、サイクル特性を向上させることができる。
また、得られた正極活物質のXPSの分析結果を図33A、図33B、図34A、及び図34Bに示す。なお、これらのXPSの分析結果においては、帯電の影響により実際より低い位置にそれぞれのピークが現れている可能性がある。
図33Aの結果から、ジルコニウムは、正極活物質表面の凸部においてZrO2として存在していることが示されている。
X線光電子分光(XPS)では、表面から2nm以上8nm以下(通常5nm程度)の深さまでの領域の分析が可能であるため、表層部の約半分の領域について、各元素の濃度を定量的に分析することができる。また、ナロースキャン分析をすれば元素の結合状態を分析することができる。なおXPSの定量精度は多くの場合±1原子%程度、検出下限は元素にもよるが約1原子%である。
XPS分析を行う場合には例えば、X線源として単色化アルミニウムを用いることができる。出力はたとえば1486.6eVとすることができる。また、取出角は例えば45°とすればよい。このような測定条件であると上述のように表面から2nm以上8nm以下(通常5nm程度)の深さまでの領域の分析が可能である。なお、XPS分析はPHI社製のQuantera2を用いた。
また、本発明の一態様の正極活物質についてXPS分析したとき、図33Bに示したようにフッ素と他の元素の結合エネルギー(Binding Energy)を示すピークは682eV以上685eV未満であることが好ましく、684.3eV程度であることがさらに好ましい。これは、フッ化リチウムの結合エネルギーである685eV、およびフッ化マグネシウムの結合エネルギーである686eVのいずれとも異なる値である。つまり、本発明の一態様の正極活物質がフッ素を有する場合、フッ化リチウムおよびフッ化マグネシウム以外の結合であることが好ましい。
さらに、本発明の一態様の正極活物質についてXPS分析したとき、図34Aに示したように、マグネシウムと他の元素の結合エネルギーを示すピークは、1302eV以上1304eV未満であることが好ましく、1303eV程度であることがさらに好ましい。これは、フッ化マグネシウムの結合エネルギーである1305eVと異なる値であり、酸化マグネシウムの結合エネルギーに近い値である。つまり、本発明の一態様の正極活物質がマグネシウムを有する場合、フッ化マグネシウム以外の結合であることが好ましい。
また、本発明の一態様の正極活物質についてXPS分析したとき、アルミニウムに関してのデータは図34Bに示している。
表層部に多く存在することが好ましい添加元素、たとえばマグネシウム、アルミニウムおよびチタン等は、XPS等で測定される濃度が、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)、あるいはGD-MS(グロー放電質量分析法)等で測定される濃度よりも高いことが好ましい。
マグネシウム、アルミニウムおよびチタン等は、加工によりその断面を露出させ、断面をTEM-EDXを用いて分析する場合に、表層部の濃度が、内部の濃度に比べて高いことが好ましい。たとえば、TEM-EDX分析において、マグネシウムの濃度はピークトップから深さ1nmの点でピークの60%以下に減衰することが好ましい。またピークトップから深さ2nmの点でピークの30%以下に減衰することが好ましい。加工は例えばFIB(収束イオンビーム)装置により行うことができる。
XPS(X線光電子分光)の分析において、マグネシウムの原子数はコバルトの原子数の0.4倍以上1.5倍以下であることが好ましい。一方、ICP-MSの分析によるマグネシウムの原子数の比Mg/Coは0.001以上0.06以下であることが好ましい。
一方、ニッケルは表層部に偏在せず、正極活物質全体に分布していることが好ましい。
正極活物質100は、O3’型結晶構造を有する。
図8に示す本発明の一態様の正極活物質100では、LixCoO2中のxが1の放電状態と、xが0.24以下の状態における結晶構造の変化が従来の正極活物質よりも少ない。より具体的には、xが1の状態と、xが0.24以下の状態におけるCoO2層のずれを小さくすることができる。また、コバルト原子あたりで比較した場合の体積の変化を小さくすることができる。よって、本発明の一態様の正極活物質100は、xが0.24以下になるような充放電を繰り返しても結晶構造が崩れにくく、優れたサイクル特性を実現することができる。また、本発明の一態様の正極活物質100は、LixCoO2中のxが0.24以下の状態において従来の正極活物質よりも安定な結晶構造を取り得る。よって、本発明の一態様の正極活物質100は、LixCoO2中のxが0.24以下の状態を保持した場合において、ショートが生じづらい。これにより、安全性がより向上するため、好ましい。
本発明の一態様の正極活物質では、十分に放電された状態と、高電圧で充電された状態における、結晶構造の変化及び同数の遷移金属原子あたりで比較した場合の体積の差が小さい。
LixCoO2中のxが1および0.2程度のときに正極活物質100の有する結晶構造を、図8に示す。正極活物質100はリチウムと、遷移金属としてコバルトと、酸素と、を有する複合酸化物である。上記に加えて添加元素としてマグネシウムを有することが好ましい。また添加元素としてフッ素、塩素等のハロゲンを有することが好ましい。
図8において正極活物質100はx=1のとき、従来のコバルト酸リチウムの図10と同じR-3m O3の結晶構造を有する。しかし、正極活物質100は、従来のコバルト酸リチウムがH1-3型結晶構造となるようなxが0.24以下、たとえば0.2程度および0.15程度のとき、これと異なる構造の結晶を有する。x=0.2程度のときの本発明の一態様の正極活物質100は、三方晶系の空間群R-3mに帰属される結晶構造を有する。これはCoO2層の対称性がO3型と同じである。よって、本構造を本明細書等では、O3’型結晶構造(または擬スピネル型の結晶構造)と呼称する。図8にR-3m O3’を付してこの結晶構造を示す。
なおO3’型結晶構造では、コバルト、ニッケル、マグネシウム等のイオンが酸素6配位位置を占める。なお、リチウムなどの軽元素は酸素4配位位置を占める場合がありうる。
[0129]
また図8のO3’型結晶構造ではリチウムが全てのリチウムサイトに等しい確率で存在するように示したが、これに限らない。一部のリチウムサイトに偏って存在していてもよいし、例えば単斜晶O1(Li0.5CoO2)のような対称性を有していてもよい。リチウムの分布は、たとえば中性子回折により分析することができる。
また、O3’型結晶構造は、層間にランダムにLiを有するもののCdCl2型の結晶構造に類似する結晶構造であるということもできる。このCdCl2型に類似した結晶構造は、ニッケル酸リチウムをLi0.06NiO2まで充電したときの結晶構造と近いが、純粋なコバルト酸リチウム、またはコバルトを多く含む層状岩塩型の正極活物質では通常CdCl2型の結晶構造を取らないことが知られている。
本発明の一態様の正極活物質100では、LixCoO2中のxが0.24以下の状態において、多くのリチウムが離脱したときの、結晶構造の変化が、従来の正極活物質よりも抑制されている。例えば、図8中に点線で示すように、放電状態のR-3m(O3)と、O3’型結晶構造ではCoO2層のずれがほとんどない。また放電状態のR-3m(O3)と、O3’型結晶構造の同数のコバルト原子あたりの体積の差は2.5%以下、より詳細には2.2%以下、代表的には1.8%である。
このように、本発明の一態様の正極活物質100は、LixCoO2中のxが小さいとき、つまり多くのリチウムが離脱したときの結晶構造の変化が、従来の正極活物質よりも抑制されている。また同数のコバルト原子あたりで比較した場合の体積の変化も抑制されている。そのため正極活物質100は、xが0.24以下になるような充放電を繰り返しても結晶構造が崩れにくい。そのため、正極活物質100は充放電サイクルにおける充放電容量の低下が抑制される。また従来の正極活物質よりも多くのリチウムを安定して利用できるため、正極活物質100は重量あたりおよび体積あたりの放電容量が大きい。そのため正極活物質100を用いることで、重量あたりおよび体積あたりの放電容量の高い二次電池を作製できる。なお正極活物質100は、LixCoO2中のxが0.15以上0.24以下のときO3’型の結晶構造を有する場合があることが確認され、xが0.24を超えて0.27以下でもO3’型の結晶構造を有すると推定されている。しかし結晶構造はLixCoO2中のxだけでなく充放電サイクル数、充放電電流、温度、電解質等の影響を受けるため、必ずしも上記のxの範囲に限定されない。そのため正極活物質100はLixCoO2中のxが0.1を超えて0.24以下のとき、正極活物質100の内部100bのすべてがO3’型の結晶構造でなくてもよい。他の結晶構造を含んでいてもよいし、一部が非晶質であってもよい。またLixCoO2中のxが小さい状態にするには、一般的には高い充電電圧で充電する必要がある。そのためLixCoO2中のxが小さい状態を、高い充電電圧で充電した状態と言い換えることができる。たとえばリチウム金属の電位を基準として4.6V以上の電圧で、25℃の環境でCC/CV充電すると、従来の正極活物質ではH1-3型結晶構造が現れる。そのためリチウム金属の電位を基準として4.6V以上の充電電圧は高い充電電圧ということができる。また本明細書等において、特に言及しない場合、充電電圧はリチウム金属の電位を基準として表すとする。そのため本発明の一態様の正極活物質100は、高い充電電圧、たとえば25℃において4.6V以上の電圧で充電しても、R-3m O3の対称性を有する結晶構造を保持できるため好ましい、と言い換えることができる。またより高い充電電圧、例えば25℃において4.65V以上4.7V以下の電圧で充電したときO3’型の結晶構造を取り得るため好ましい、と言い換えることができる。
正極活物質100でもさらに充電電圧を高めるとようやく、H1-3型結晶が観測される場合がある。また上述したように結晶構造は充放電サイクル数、充放電電流、電解質等の影響を受けるため、充電電圧がより低い場合、たとえば充電電圧が25℃において4.5V以上4.6V未満でも、本発明の一態様の正極活物質100はO3’型結晶構造を取り得る場合が有る。
なお、二次電池において例えば負極活物質として黒鉛を用いる場合には、上記よりも黒鉛の電位の分だけ二次電池の電圧が低下する。黒鉛の電位は電位リチウム金属の電位を基準として0.05V乃至0.2V程度である。そのため負極活物質として黒鉛を用いた二次電池の場合は、上記の電圧から黒鉛の電位を差し引いた電圧のとき同様の結晶構造を有する。
また正極活物質100では、放電状態のO3型結晶構造と、O3’型結晶構造の同数のコバルト原子あたりの体積の差は2.5%以下、より詳細には2.2%以下、代表的には1.8%である。
また、図7に示すように、O3’型結晶構造は、ユニットセルにおけるコバルトと酸素の座標を、Co(0,0,0.5)、O(0,0,x)、0.20≦x≦0.25の範囲内で示すことができる。またユニットセルの格子定数は、a軸は2.797≦a≦2.837(Å)が好ましく、2.807≦a≦2.827(Å)がより好ましく、代表的にはa=2.817(Å)である。c軸は13.681≦c≦13.881(Å)が好ましく、13.751≦c≦13.811がより好ましく、代表的にはc=13.781(Å)である。
CoO2層間、つまりリチウムサイトにランダムかつ希薄に存在する添加物、例えばマグネシウムは、CoO2層のずれを抑制する効果がある。そのためCoO2層間にマグネシウムが存在すると、O3’型結晶構造になりやすい。
しかしながら、加熱処理の温度が高すぎると、カチオンミキシングが生じて添加物、例えばマグネシウムがコバルトサイトに入る可能性が高まる。コバルトサイトに存在するマグネシウムは、LixCoO2中のxが0.24以下の状態において、R-3mの構造を保つ効果がない。さらに、加熱処理の温度が高すぎると、コバルトが還元されて2価になってしまう、リチウムが蒸散するなどの悪影響も懸念される。
そこで、マグネシウムを表層部に分布させるための加熱処理よりも前に、コバルト酸リチウムにフッ素化合物等のハロゲン化合物を加えておくことが好ましい。ハロゲン化合物を加えることでコバルト酸リチウムの融点降下が起こる。融点降下させることで、カチオンミキシングが生じにくい温度で、マグネシウムを表層部に分布させることが容易となる。さらにフッ素化合物が存在すれば、電解液が分解して生じたフッ酸に対する耐食性が向上することが期待できる。
なお、マグネシウム濃度を所望の値以上に高くすると、結晶構造の安定化への効果が小さくなってしまう場合がある。マグネシウムが、リチウムサイトに加えて、コバルトサイトにも入るようになるためと考えられる。本発明の一態様の正極活物質が有するマグネシウムの原子数は、遷移金属の原子数の0.001倍以上0.1倍以下が好ましく、0.01より大きく0.04未満がより好ましく、0.02程度がさらに好ましい。ここで示すマグネシウムの濃度は例えば、ICP-MS等を用いて正極活物質の粒子全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
コバルト酸リチウムにコバルト以外の金属(以下、金属Z)として、例えばニッケル、アルミニウム、マンガン、チタン、バナジウム及びクロムから選ばれる一以上の金属を添加してもよく、特にニッケル及びアルミニウムの一以上を添加することが好ましい。マンガン、チタン、バナジウム及びクロムは安定に4価を取りやすい場合があり、構造安定性への寄与が高い場合がある。金属Zを添加することにより本発明の一態様の正極活物質では例えば、LixCoO2中のxが0.24以下の状態において結晶構造がより安定になる場合がある。ここで、本発明の一態様の正極活物質において、金属Zは、コバルト酸リチウムの結晶性を大きく変えることのない濃度で添加されることが好ましい。例えば、前述のヤーン・テラー効果等を発現しない程度の量であることが好ましい。
図8中の凡例に示すように、ニッケル、マンガンをはじめとする遷移金属及びアルミニウムはコバルトサイトに存在することが好ましいが、一部がリチウムサイトに存在していてもよい。またマグネシウムはリチウムサイトに存在することが好ましい。酸素は、一部がフッ素と置換されていてもよい。
なお図8において酸素原子から明らかなように、O3型結晶構造とO3’型結晶構造では酸素原子の対称性がわずかに異なる。具体的にはO3型結晶構造では酸素原子が点線で示す(-102)面に沿って整列しているのに対して、O3’型結晶構造の酸素原子は(-102)面に厳密には整列しない。これはO3’型結晶構造ではリチウムの減少に伴い4価のコバルトが増加し、ヤーン・テラーひずみが大きくなりCoO6の8面体構造がゆがんだことによる。またリチウムの減少に伴いCoO2層の酸素同士の反発が強くなったことも影響する。
≪XRD≫
XRD測定の装置および条件は特に限定されない。たとえば測定装置にはBruker社製のD8 ADVANCEを用いることができる。測定条件はたとえばCuKαX線源、粉末セッティングとし、グリースを塗ったシリコン無反射板にサンプルを振りかけ、測定面は装置の要求する測定面に合わせて測定することができる。
O3’型結晶構造と、H1-3型結晶構造のモデルから計算される、CuKα1線による理想的な粉末XRDパターンを図9及び図11に示す。また比較のためLixCoO2中のx=1のLiCoO2(O3)と、H1-3型、およびx=0のCoO2(O1)の結晶構造から計算される理想的なXRDパターンも示す。なお、LiCoO2(O3)及びCoO2(O1)のパターンはICSD(Inorganic Crystal Structure Database)(非特許文献6参照)より入手した結晶構造情報からMaterials Studio(BIOVIA)のモジュールの一つである、Reflex Powder Diffractionを用いて作成した。2θの範囲は15°から75°とし、Step size=0.01、波長λ1=1.540562×10-10m、λ2は設定なし、Monochromatorはsingleとした。H1-3型結晶構造のパターンは非特許文献4に記載の結晶構造情報から同様に作成した。O3’型結晶構造の結晶構造のパターンは本発明の一態様の正極活物質のXRDパターンから結晶構造を推定し、TOPAS ver.3(Bruker社製結晶構造解析ソフトウェア)を用いてフィッティングし、他と同様にXRDパターンを作成した。
図9に示すように、O3’型結晶構造では、2θ=19.30±0.20°(19.10°以上19.50°以下)、及び2θ=45.55±0.10°(45.45°以上45.65°以下)に回折ピークが出現する。より詳しく述べれば、2θ=19.30±0.10°(19.20°以上19.40°以下)、及び2θ=45.55±0.05°(45.50°以上45.60°以下)に鋭い回折ピークが出現する。しかし図11に示すようにH1-3型結晶構造及びCoO2(P-3m1、O1)ではこれらの位置にピークは出現しない。そのため、高電圧で充電された状態で2θ=19.30±0.20°、及び2θ=45.55±0.10°のピークが出現することは、本発明の一態様の正極活物質100の特徴であるといえる。
これは、x=1と、x≦0.24の結晶構造で、XRDの回折ピークが出現する位置が近いということもできる。より具体的には、x=1と、x≦0.24の主な回折ピークのうち2つ以上、より好ましくは3つ以上において、ピークが出現する位置の差が、2θ=0.7以下、より好ましくは2θ=0.5以下であるということができる。
なお、本発明の一態様の正極活物質100は高電圧で充電したときO3’型結晶構造を有するが、粒子内のすべてがO3’型結晶構造でなくてもよい。他の結晶構造を含んでいてもよいし、一部が非晶質であってもよい。ただし、XRDパターンについてリートベルト解析を行ったとき、O3’型結晶構造が50wt%以上であることが好ましく、60wt%以上であることがより好ましく、66wt%以上であることがさらに好ましい。O3’型結晶構造が50wt%以上、より好ましくは60wt%以上、さらに好ましくは66wt%以上あれば、十分にサイクル特性に優れた正極活物質とすることができる。
また、測定開始から100サイクル以上の充放電を経ても、リートベルト解析を行ったときO3’型結晶構造が35wt%以上であることが好ましく、40wt%以上であることがより好ましく、43wt%以上であることがさらに好ましい。
また、正極活物質の粒子が有するO3’型結晶構造の結晶子サイズは、放電状態のLiCoO2(O3)の1/20程度までしか低下しない。そのため、充放電前の正極と同じXRDの測定条件であっても、LixCoO2中のxが小さいときに明瞭なO3’型結晶構造のピークが確認できる。一方単純なLiCoO2では、一部がO3’型結晶構造に似た構造を取りえたとしても、結晶子サイズが小さくなり、ピークはブロードで小さくなる。結晶子サイズは、XRDピークの半値幅から求めることができる。
本発明の一態様の正極活物質においては、前述の通り、ヤーン・テラー効果の影響が小さいことが好ましい。本発明の一態様の正極活物質は、層状岩塩型の結晶構造を有し、遷移金属としてコバルトを主として有することが好ましい。また、本発明の一態様の正極活物質において、ヤーン・テラー効果の影響が小さい範囲であれば、コバルトの他に、先に述べた金属Zを有してもよい。
(実施の形態2)
本実施の形態では、図4乃至図7を用いて本発明の一態様の正極活物質の作製方法の例について説明する。
<ステップS11>
図4のステップS11として、まずリチウム、遷移金属Mおよび酸素を有する複合酸化物(LiMO2)の材料として、リチウム源および遷移金属M源を用意する。
リチウム源としては、例えば炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、フッ化リチウム等を用いることができる。
遷移金属Mとしてはリチウムとともに空間群R-3mに属する層状岩塩型の複合酸化物を形成しうる金属を用いことが好ましい。たとえばマンガン、コバルト、ニッケルのうち少なくとも一を用いることができる。つまり遷移金属M源としてコバルトのみを用いてもよいし、ニッケルのみを用いてもよいし、コバルトとマンガンの2種、またはコバルトとニッケルの2種を用いてもよいし、コバルト、マンガン、ニッケルの3種を用いてもよい。
層状岩塩型の複合酸化物を形成しうる金属を用いる場合、層状岩塩型の結晶構造をとりうる範囲のコバルト、マンガン、ニッケルの混合比とすることが好ましい。また、層状岩塩型の結晶構造をとりうる範囲で、これらの遷移金属にアルミニウムを加えてもよい。
遷移金属M源としては、遷移金属Mとして例示した上記金属の酸化物、水酸化物等を用いることができる。コバルト源としては、例えば酸化コバルト、水酸化コバルト等を用いることができる。マンガン源としては、酸化マンガン、水酸化マンガン等を用いることができる。ニッケル源としては、酸化ニッケル、水酸化ニッケル等を用いることができる。アルミニウム源としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、等を用いることができる。
<ステップS12>
次にステップS12として、上記のリチウム源および遷移金属M源を混合する。混合は乾式または湿式で行うことができる。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えば粉砕メディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。
<ステップS13>
次にステップS13として、上記で混合した材料を加熱する。本工程は、後の加熱工程との区別のために、焼成または第1の加熱という場合がある。加熱は800℃以上1100℃未満で行うことが好ましく、900℃以上1000℃以下で行うことがより好ましく、950℃程度がさらに好ましい。または800℃以上1000℃以下が好ましい。または900℃以上1100℃以下が好ましい。温度が低すぎると、リチウム源および遷移金属M源の分解および溶融が不十分となるおそれがある。一方温度が高すぎると、遷移金属Mとして用いる、酸化還元反応を担う金属が過剰に還元される、リチウムが蒸散するなどの原因で欠陥が生じるおそれがある。例えば遷移金属Mとしてコバルトを用いた場合、コバルトが2価となる欠陥が生じうる。
加熱時間はたとえば1時間以上100時間以下行うことができ、2時間以上20時間以下とすることが好ましい。または1時間以上20時間以下が好ましい。または2時間以上100時間以下が好ましい。焼成は、乾燥空気等の水が少ない雰囲気(例えば露点-50℃以下、より好ましくは-100℃以下)で行うことが好ましい。例えば1000℃で10時間加熱することとし、昇温は200℃/h、乾燥雰囲気の流量は10L/minとすることが好ましい。その後加熱した材料を室温(25℃)まで冷却することができる。例えば規定温度から室温までの降温時間を10時間以上50時間以下とすることが好ましい。
ただし、ステップS13における室温までの冷却は必須ではない。その後のステップS41乃至ステップS43の工程を行うのに問題がなければ、冷却は室温より高い温度までとしてもよい。
<ステップS14>
次にステップS14として、上記で焼成した材料を回収し、リチウム、遷移金属Mおよび酸素を有する複合酸化物(LiMO2)を得る。具体的には、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルトの一部がマンガンで置換されたコバルト酸リチウム、コバルトの一部がニッケルで置換されたコバルト酸リチウム、またはニッケル-マンガン-コバルト酸リチウムなどを得る。
また、ステップS14としてあらかじめ合成されたリチウム、遷移金属Mおよび酸素を有する複合酸化物を用いてもよい。この場合、ステップS11乃至ステップS13を省略することができる。
例えば、あらかじめ合成された複合酸化物として、日本化学工業株式会社製のコバルト酸リチウム粒子(商品名:セルシードC-10N)を用いることができる。これは平均粒子径(D50)が約12μmであり、グロー放電質量分析法(GD-MS)による不純物分析において、マグネシウム濃度およびフッ素濃度が50ppm wt以下、カルシウム濃度、アルミニウム濃度およびシリコン濃度が100ppm wt以下、ニッケル濃度が150ppm wt以下、硫黄濃度が500ppm wt以下、ヒ素濃度が1100ppm wt以下、その他のリチウム、コバルトおよび酸素以外の元素濃度が150ppm wt以下である、コバルト酸リチウムである。
または、日本化学工業株式会社製のコバルト酸リチウム粒子(商品名:セルシードC-5H)を用いることもできる。これは平均粒子径(D50)が約6.5μmであり、GD-MSによる不純物分析において、リチウム、コバルトおよび酸素以外の元素濃度がC-10Nと同程度かそれ以下である、コバルト酸リチウムである。
本実施の形態では、金属Mとしてコバルトを用い、あらかじめ合成されたコバルト酸リチウム粒子(日本化学工業株式会社製セルシードC-10N)を用いることとする。
<ステップS21>
次にステップS21として、混合物902の材料として、フッ素源また塩素源等のハロゲン源およびマグネシウム源を用意する。またリチウム源も用意することが好ましい。
フッ素源としては、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化チタン(TiF4、TiF3)、フッ化コバルト(CoF2、CoF3)、フッ化ニッケル(NiF2)、フッ化ジルコニウム(ZrF4)、フッ化バナジウム(VF5)、フッ化マンガン(MnF2、MnF3)、フッ化鉄(FeF2、FeF3)、フッ化クロム(CrF2、CrF3)、フッ化ニオブ(NbF5)、フッ化亜鉛(ZnF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化セリウム(CeF2)、フッ化ランタン(LaF3)、六フッ化アルミニウムナトリウム(Na3AlF6)等を用いることができる。また複数のフッ素源を混合して用いてもよい。なかでも、フッ化リチウムは融点が848℃と比較的低く、後述するアニール工程で溶融しやすいため好ましい。
塩素源としては、例えば塩化リチウム、塩化マグネシウム等を用いることができる。
マグネシウム源としては、例えばフッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等を用いることができる。
リチウム源としては、例えばフッ化リチウム、炭酸リチウムを用いることができる。つまり、フッ化リチウムはリチウム源としてもフッ素源としても用いることができる。またフッ化マグネシウムはフッ素源としてもマグネシウム源としても用いることができる。
本実施の形態では、フッ素源としてフッ化リチウムLiFを用意し、フッ素源およびマグネシウム源としてフッ化マグネシウム(MgF2)を用意することとする。フッ化リチウムLiFとフッ化マグネシウム(MgF2)は、LiF:MgF2=65:35(モル比)程度で混合すると融点を下げる効果が最も高くなる。一方、フッ化リチウムが多くなると、リチウムが過剰になりすぎサイクル特性が悪化する懸念がある。そのため、フッ化リチウムLiFとフッ化マグネシウム(MgF2)のモル比は、LiF:MgF2=x:1(0≦x≦1.9)であることが好ましく、LiF:MgF2=x:1(0.1≦x≦0.5)がより好ましく、LiF:MgF2=x:1(x=0.33近傍)がさらに好ましい。なお本明細書等において近傍とは、その値の0.9倍より大きく1.1倍より小さい値とする。
また、次の混合および粉砕工程を湿式で行う場合は、溶媒を用意する。溶媒としてはアセトン等のケトン、エタノールおよびイソプロパノール等のアルコール、ジエチルエーテル等のエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等を用いることができる。リチウムと反応が起こりにくい、非プロトン性溶媒を用いることがより好ましい。本実施の形態では、アセトンを用いることとする。
<ステップS22>
次に、ステップS22において、上記の混合物902の材料を粉砕および混合する。混合は乾式または湿式で行うことができるが、湿式はより小さく粉砕することができるため好ましい。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えば粉砕メディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。この混合および粉砕工程を十分に行い、混合物902を微粉化することが好ましい。
<ステップS23>
次に、ステップS23において、上記で混合、および粉砕した材料を回収し、混合物902を得る。
混合物902は、例えばD50(メディアン径)が600nm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。または600nm以上10μm以下が好ましい。または1μm以上20μm以下が好ましい。このように微粉化された混合物902ならば、後の工程でリチウム、遷移金属Mおよび酸素を有する複合酸化物と混合したときに、複合酸化物の粒子の表面に混合物902を均一に存在させやすい。
<ステップS41>
次にステップS41において、ステップS14で得られるLiMO2と、混合物902と、を混合する。リチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物中の遷移金属の原子数Mと、混合物902が有するマグネシウムの原子数Mgとの比は、M:Mg=100:y(0.1≦y≦6)であることが好ましく、M:Mg=100:y(0.3≦y≦3)であることがより好ましい。
ステップS41の混合は、複合酸化物の粒子を破壊しないためにステップS12の混合よりも穏やかな条件とすることが好ましい。例えば、ステップS12の混合よりも回転数が少ない、または時間が短い条件とすることが好ましい。また湿式よりも乾式のほうが粒子を破壊しにくい条件であると言える。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えば粉砕メディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。
<ステップS42>
次にステップS42において、上記で混合した材料を回収し、混合物903を得る。
なお、本実施の形態ではフッ化リチウムおよびフッ化マグネシウムの混合物を、不純物の少ないコバルト酸リチウムに添加する方法について説明しているが、本発明の一態様はこれに限らない。ステップS42の混合物903の代わりに、コバルト酸リチウムの出発材料にマグネシウム源およびフッ素源等を添加して焼成したものを用いてもよい。この場合は、ステップS11乃至ステップS14の工程と、ステップS21乃至ステップS23の工程を分ける必要がないため簡便で生産性が高い。
または、あらかじめマグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト酸リチウムを用いてもよい。マグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト酸リチウムを用いれば、ステップS42までの工程を省略することができ、より簡便である。
またあらかじめマグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト酸リチウムに、さらにマグネシウム源およびフッ素源を添加してもよい。
<ステップS43>
次にステップS43において、混合物903を、酸素を含む雰囲気中で加熱する。本工程は他の加熱工程との区別のために第1のアニール(第1の温度条件)という場合がある。該加熱は、混合物903の粒子同士が固着しないよう、固着抑制効果のある加熱とするとより好ましい。
固着抑制効果のある加熱としては、たとえば混合物903を攪拌しながらの加熱、混合物903の入った容器を振動させながらの加熱等をあげることができる。
ステップS43における加熱温度はLiMO2と混合物902の反応が進む温度以上である必要がある。ここでいう反応が進む温度とは、LiMO2と混合物902の有する元素の相互拡散が起こる温度であればよい。そのためこれらの材料の溶融温度より低くてもよい。例えば、塩類および酸化物では溶融温度Tmの0.757倍(タンマン温度Td)から固相拡散が起こる。
ただし混合物903の少なくとも一部が溶融する温度以上であるとより反応が進みやすく好ましい。そのためアニール温度は混合物902の共融点以上であることが好ましい。混合物902がLiF及びMgF2を有する場合、ステップS43の温度を共融点である742℃以上とすると好ましい。
また、LiCoO2:LiF:MgF2=100:0.33:1(モル比)となるように混合した混合物903は、示差走査熱量測定(DSC測定)において830℃付近に吸熱ピークが観測される。よって、アニール温度としては830℃以上がより好ましい。混合物903は、少なくともフッ素、リチウム、コバルト、及びマグネシウムを有する。また、混合物903は、O3’型の結晶構造を有する。
アニール温度は高い方が反応が進みやすく、アニール時間が短く済み、生産性が高くなるため好ましい。
ただしアニールする温度はLiMO2の分解温度(LiCoO2の場合は1130℃)以下である必要がある。また分解温度の近傍の温度では、微量ではあるがLiMO2の分解が懸念される。そのため、アニール温度としては、1130℃以下であることが好ましく、1000℃以下であるとより好ましく、950℃以下であるとさらに好ましく、900℃以下であるとさらに好ましい。
よって、アニール温度としては、500℃以上1130℃以下が好ましく、500℃以上1000℃以下がより好ましく、500℃以上950℃以下がさらに好ましく、500℃以上900℃以下がさらに好ましい。また、742℃以上1130℃以下が好ましく、742℃以上1000℃以下がより好ましく、742℃以上950℃以下がさらに好ましく、742℃以上900℃以下がさらに好ましい。また、830℃以上1130℃以下が好ましく、830℃以上1000℃以下がより好ましく、830℃以上950℃以下がさらに好ましく、830℃以上900℃以下がさらに好ましい。
さらに混合物903を加熱する際、雰囲気中のフッ素またはフッ化物の分圧を適切な範囲に制御することが好ましい。
本実施の形態で説明する作製方法では、一部の材料、例えばフッ素源であるLiFが融剤として機能する。この機能によりアニール温度をLiMO2の分解温度以下、たとえば742℃以上950℃以下にまで低温化でき、中心部に比べて表層部にマグネシウムをはじめとする添加物を高く分布させ、良好な特性の正極活物質を作製できる。
しかしLiFは酸素分子よりも軽いため、加熱によりLiFが揮発、散逸しうる。その場合、混合物903中のLiFが減少し融剤としての機能が弱くなってしまう。よって、LiFの揮発を抑制しつつ、加熱する必要がある。なおフッ素源等としてLiFを用いなかったとしても、LiMO2表面のLiとFが反応して、LiFが生じ、揮発する可能性もある。そのため、LiFより融点が高いフッ化物を用いたとしても、同じように揮発の抑制が必要である。
そこで、LiFを含む雰囲気で混合物903を加熱すること、すなわち、加熱炉内のLiFの分圧が高い状態で混合物903を加熱することが好ましい。このような加熱により混合物903中のLiFの揮発を抑制することができる。
アニールは、適切な時間で行うことが好ましい。適切なアニール時間は、アニール温度、ステップS14のLiMO2の粒子の大きさおよび組成等の条件により変化する。粒子が小さい場合は、大きい場合よりも低い温度または短い時間がより好ましい場合がある。
例えばステップS14の粒子の平均粒子径(D50)が12μm程度の場合、アニール温度は例えば600℃以上950℃以下が好ましい。アニール時間は例えば3時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましく、60時間以上がさらに好ましい。
一方、ステップS24の粒子の平均粒子径(D50)が5μm程度の場合、アニール温度は例えば600℃以上950℃以下が好ましい。アニール時間は例えば1時間以上10時間以下が好ましく、2時間程度がより好ましい。
アニール後の降温時間は、例えば10時間以上50時間以下とすることが好ましい。
<ステップS31>
次にステップS31として添加物源を用意する。添加物源が有する元素としては、例えば、ジルコニウム、アルミニウム、ニッケル、マンガン、チタン、バナジウム、鉄、クロム、ニオブ、コバルト、ヒ素、亜鉛、ケイ素、硫黄、リン、ホウ素より選ばれる一以上を用いることができる。図4では、添加物源としてジルコニウム源を用いる例について説明する。
各添加物源は酸化物、水酸化物、フッ化物、アルコキシド等であることが好ましい。
<ステップS61>
次にステップS61としてアニール後の混合物903と、添加物源とを混合する。アニール後の混合物903の表面に、添加物を含有させるといってもよい。
混合方法としては、たとえば固相法、ゾルゲル法、スパッタリング法、メカノケミカル法、CVD法等を用いることができる。固相法およびゾルゲル法は、大気圧かつ常温で簡便に、アニール後の混合物903の表面に、添加物を含有させることができ好ましい。
なお本明細書等においてゾルゲル法とは、金属の有機化合物溶液を出発原料として、溶液中の化合物の加水分解・重合によって溶液を金属の酸化物、あるいは水酸化物の微粒子が溶解したゾルとし、さらに反応を進ませてゲル化してできた非晶質である多孔質ゲルを加熱して膜または結晶体をつくる方法をいう。
ゾルゲル法を用いる場合は、まずアルコールに溶解させた添加物源のアルコキシドと、アニール後の混合物903と、を混合する。
たとえば添加物源としてジルコニウムを用いる場合、ジルコニウム(IV)テトラプロポキシドを用いることができる。またアルコールとしては、たとえばイソプロパノール(2-プロパノール)を用いることができる。
次に、ジルコニウム(IV)テトラプロポキシドのイソプロパノール溶液とアニール後の混合物903との混合液を撹拌する。撹拌はたとえばマグネチックスターラーで行うことができる。撹拌時間は、雰囲気中の水とジルコニウム(IV)テトラプロポキシドが加水分解および重縮合反応を起こすのに十分な時間であればよく、例えば60時間、室温の条件下で行うことができる。
上記の処理を終えた混合液から、沈殿物を回収する。回収方法としては、ろ過、遠心分離、蒸発乾固等を適用することができる。本実施の形態では蒸発乾固により回収することとする。本実施の形態では、95℃で通風乾燥することとする。
<ステップS62>
次にステップS62において、上記で乾燥した材料を回収し、混合物904を得る。
<ステップS63>
次に、ステップS62で合成した、混合物904を加熱する。(S43を第1のアニールという場合、S63の加熱を第2のアニール(第2の温度条件)といってもよい)。加熱時間は、規定温度での保持時間を50時間以下で行うことが好ましく、2時間以上10時間以下で行うことがより好ましく、1時間以上3時間以下で行うことがさらに好ましい。
規定温度の温度範囲としては500℃以上1200℃以下が好ましく、800℃以上1000℃以下がより好ましい。
また、酸素を含む雰囲気で加熱することが好ましい。
本実施の形態では、規定温度を800℃として2時間保持することとし、昇温は200℃/h、乾燥雰囲気の流量は10L/minとする。
<ステップS64>
ステップS64としては解砕を行い、必要であれば混合を行う。
<ステップS66>
次にステップS66において上記で解砕した材料を回収し、正極活物質100を作製することができる。このとき、回収された粒子をさらに、ふるいにかけることが好ましい。ふるいにかけることで、正極活物質粒子同士が固着していた場合、これを解消することができる。
次に、図5乃至図7を用いて図4と異なる作製方法について説明する。なお、図4と共通する部分が多いため、異なる部分について主に説明する。共通する部分については図4についての説明を参酌することができる。なお、図4、図5、図6、及び図7の作製フローで最終的に正極活物質100が得られると表示しているが、同一の構造、同一の成分となることを指示しているのではなく、作製工程が異なれば少なくとも一部が異なり、例えば粒径、凸部、濃度分布、粒子外観などが異なるものとなる。
図4ではステップS61においてアニール後の混合物903と、添加物源としてジルコニウム源とを混合する作製方法について説明したが、本発明の一態様はこれに限らない。図5乃至図7のステップS32、ステップS33に示すように、さらに他の添加物を混合してもよい。図5乃至図7のステップS32、ステップS33の混合をする前に解砕をおこなってもよい。
添加物としては、例えば、ニッケル、アルミニウム、マンガン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、鉄、クロム、ニオブ、コバルト、ヒ素、亜鉛、ケイ素、硫黄、リン、ホウ素より選ばれる一以上を用いることができる。図5乃至図7ではステップS32としてアルミニウム源、ステップS33としてニッケル源、の2種を添加物としてさらに用いる例を示す。
これらの添加物の混合方法としては、たとえば固相法、ゾルゲル法、スパッタリング法、メカノケミカル法、CVD法等を用いることができる。また複数の方法を組み合わせて用いてもよい。
図5に示すように、ステップS61-1でニッケル源を混合してから、ステップS61-2でジルコニウム源およびアルミニウム源を混合することができる。混合は乾式または湿式で行うことができる。このとき、たとえばステップS61-1は固相法、ステップS61-2はゾルゲル法で行うことができる。ゾルゲル法を用いる場合、アルミニウム源としては、アルミニウムアルコキシドを用い、ジルコニウム源としてはジルコニウムアルコキシドを用いる。以降のステップS62、S63、S64は同じ手順とすれば正極活物質100が得られる。
図6に示すように、ステップS41で混合物902とともに各種添加物源を混合してもよい。またステップS53およびステップS55としてアニールを複数回行い、その間に固着抑制操作ステップS54を行ってもよい。ステップS53およびステップS55のアニール条件は、ステップS43の記載を参酌することができる。固着抑制操作としては、乳棒で解砕する、ボールミルを用いて混合する、自転公転式ミキサーを用いて混合する、ふるいにかける、複合酸化物の入った容器を振動させる、等があげられる。以降のステップS55のアニール後にはステップS55-2として解砕を行い、回収することで正極活物質100が得られる。
また図7に示すように、ステップS41でLiMO2と混合物902を混合し、アニールしてから、各種添加物源をステップS61で混合してもよい。混合は乾式または湿式で行うことができる。アニール条件はステップS43の記載を参酌することができる。以降のステップS62、S63、S64は同じ手順とすれば正極活物質100が得られる。
このように、遷移金属Mと添加物を導入する工程を分けることにより、それぞれの元素の深さ方向のプロファイルを変えることができる場合がある。例えば、粒子の中央部に比べて表層部で添加物の濃度を高めることができる。また、遷移金属Mの原子数を基準とし、該基準に対する添加物元素の原子数の比を、中央部よりも表層部において、より高くすることができる。特に凸部で添加物元素を高濃度とする。
本実施の形態は、他の実施の形態と組み合わせて用いることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の正極活物質を含むリチウムイオン二次電池について説明する。二次電池は、外装体、集電体、活物質(正極活物質、或いは負極活物質)、導電助剤、及びバインダを少なくとも有している。また、リチウム塩などを溶解させた電解液を有している。電解液を用いる二次電池の場合、正極と、負極と、正極と負極の間にセパレータとを設ける。
[正極]
正極は、正極活物質層および正極集電体を有する。正極活物質層は実施の形態1で示した正極活物質を有することが好ましく、さらにバインダ、導電助剤等を有していてもよい。
図12Aは正極の断面の模式図の一例を示している。
集電体550は金属箔であり、金属箔上にスラリーを塗布して乾燥させることによって正極を形成する。乾燥後、さらにプレスを加える場合もある。正極は、集電体550上に活物質層を形成したものである。
スラリーとは、集電体550上に活物質層を形成するために用いる材料液であり、少なくとも活物質とバインダと溶媒を少なくとも含有し、好ましくはさらに導電助剤を混合させたものを指している。スラリーは電極用スラリーや活物質スラリーと呼ばれることもあり、正極活物質層を形成する場合には正極用スラリーを用い、負極活物質層を形成する場合には負極用スラリーと呼ばれることもある。
導電助剤は、導電付与剤、導電材とも呼ばれ、炭素材料が用いられる。複数の活物質の間に導電助剤を付着させることで複数の活物質同士が電気的に接続され、導電性が高まる。なお、「付着」とは、活物質と導電助剤が物理的に密着していることのみを指しているのではなく、共有結合が生じる場合、ファンデルワールス力により結合する場合、活物質の表面の一部を導電助剤が覆う場合、活物質の表面凹凸に導電助剤がはまりこむ場合、互いに接していなくとも電気的に接続される場合などを含む概念とする。
導電助剤として用いられる炭素材料として代表的なものにカーボンブラック(ファーネスブラック、アセチレンブラック、黒鉛など)がある。
図12Aでは、導電助剤としてアセチレンブラック553を図示している。また、図12Aでは、実施の形態1で示した正極活物質100よりも粒径の小さい第2の活物質562を混合している例を示している。大きさの異なる粒子を混合することで高密度の正極活物質層とすることができ、二次電池の充放電容量を大きくすることができる。なお、実施の形態1で示した正極活物質100は、図12Aの活物質561に相当する。
二次電池の正極として、金属箔などの集電体550と、活物質と、を固着させるために、バインダ(樹脂)を混合している。バインダは結着剤とも呼ばれる。バインダは高分子材料であり、バインダを多く含ませると正極における活物質の割合が低下して、二次電池の放電容量が小さくなる。そこでバインダの量は最小限に混合させている。図12Aにおいて、活物質561、第2の活物質562、アセチレンブラック553で埋まっていない領域は、空隙またはバインダを指している。
なお、図12Aでは活物質561を球形として図示した例を示しているが、特に限定されず、色々な形状であってもよい。活物質561の断面形状は楕円形、長方形、台形、錐形、角が丸まった四角形、非対称の形状であってもよい。
図12Bでは、活物質561が様々な形状として図示している例を示している。図12Bは、図12Aと異なる例を示している。
また、図12Bの正極では、導電助剤として用いられる炭素材料として、グラフェン554を用いている。
グラフェンは電気的、機械的または化学的に驚異的な特性を有することから、グラフェンを利用した電界効果トランジスタや太陽電池等様々な分野の応用が期待される炭素材料である。
図12Bは集電体550上に活物質561、グラフェン554、アセチレンブラック553を有する正極活物質層を形成している。
なお、グラフェン554、アセチレンブラック553を混合し、電極スラリーを得る工程において、混合するカーボンブラックの重量はグラフェンの1.5倍以上20倍以下、好ましくは2倍以上9.5倍以下の重量とすることが好ましい。
また、グラフェン554とアセチレンブラック553の混合を上記範囲とすると、スラリー調製時に、アセチレンブラック553の分散安定性に優れ、凝集部が生じにくい。また、グラフェン554とアセチレンブラック553の混合を上記範囲とすると、アセチレンブラック553のみを導電助剤に用いる正極よりも高い電極密度とすることができる。電極密度を高くすることで、重量単位当たりの容量を大きくすることができる。具体的には、重量測定による正極活物質層の密度は、3.5g/ccより高くすることができる。また、実施の形態1で示した正極活物質100を正極に用い、且つ、グラフェン554とアセチレンブラック553の混合を上記範囲とすると、二次電池がより高容量となることについて相乗効果が期待でき好ましい。
また、グラフェンのみを導電助剤に用いる正極に比べると電極密度は低いが、第1の炭素材料(グラフェン)と第2の炭素材料(アセチレンブラック)の混合を上記範囲とすることで、急速充電に対応することができる。また、実施の形態1で示した正極活物質100を正極に用い、且つ、グラフェン554とアセチレンブラック553の混合を上記範囲とすると、二次電池がより安定性を増し、さらなる急速充電に対応できることについて相乗効果が期待でき好ましい。
これらのことは、車載用の二次電池として有効である。
二次電池の数を増やして車両の重量が増加すると、移動させるエネルギーが増加するため、航続距離も短くなる。高密度の二次電池を用いることで同じ重量の二次電池を搭載する車両の総重量をほとんど変えることなく航続距離を維持できる。
また、車両の二次電池が高容量になると充電する電力が必要とされるため、短時間で充電を終了させることが望ましい。また、車両のブレーキをかけた時に一時的に発電させて、それを充電する、いわゆる回生充電において高レート充電条件での充電が行われるため、良好なレート特性が車両用二次電池に求められている。
実施の形態1で示した正極活物質100を正極に用い、且つ、アセチレンブラックとグラフェンの混合比を最適範囲とすることで、電極の高密度化とイオン電導に必要な適切な隙間を作り出すことの両立が可能となり、高エネルギー密度かつ良好な出力特性をもつ車載用の二次電池を得ることができる。
また、携帯情報端末においても本構成は有効であり、実施の形態1で示した正極活物質100を正極に用い、且つ、アセチレンブラックとグラフェンの混合比を最適範囲とすることで二次電池を小型化し、高容量とすることもできる。また、アセチレンブラックとグラフェンの混合比を最適範囲とすることで携帯情報端末の急速充電も可能である。
なお、図12Bにおいて、活物質561、グラフェン554、アセチレンブラック553で埋まっていない領域は、空隙またはバインダを指している。空隙は電解液の浸み込みに必要であるが、多すぎると電極密度が低下し、少なすぎると電解液が浸み込まず、二次電池とした後も空隙として残ってしまうとエネルギー密度が低下してしまう。
実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用い、且つ、アセチレンブラックとグラフェンの混合比を最適範囲とすることで電極の高密度化とイオン電導に必要な適切な隙間を作り出すことの両立が可能となり、高エネルギー密度かつ良好な出力特性をもつ二次電池を得ることができる。
図12Cでは、グラフェンに代えてカーボンナノチューブ555を用いる正極の例を図示している。図12Cは、図12Bと異なる例を示している。カーボンナノチューブ555を用いるとアセチレンブラック553などのカーボンブラックの凝集を防ぎ、分散性を高めることができる。
なお、図12Cにおいて、活物質561、カーボンナノチューブ555、アセチレンブラック553で埋まっていない領域は、空隙またはバインダを指している。
また、他の正極の例として、図12Dを図示している。図12Cでは、グラフェン554に加えてカーボンナノチューブ555を用いる例を示している。グラフェン554及びカーボンナノチューブ555の両方を用いると、アセチレンブラック553などのカーボンブラックの凝集を防ぎ、分散性をより高めることができる。
なお、図12Dにおいて、活物質561、カーボンナノチューブ555、グラフェン554、アセチレンブラック553で埋まっていない領域は、空隙またはバインダを指している。
図12A乃至図12Dのいずれか一の正極を用い、正極上にセパレータを重ね、セパレータ上に負極を重ねた積層体を収容する容器(外装体、金属缶など)などに入れ、容器に電解液を充填させることで二次電池を作製することができる。
また、上記構成は、電解液を用いる二次電池の例を示したが特に限定されない。
例えば、実施の形態1で示した正極活物質100を用いて半固体電池や全固体電池を作製することもできる。
本明細書等において半固体電池とは、電解質層、正極、負極の少なくとも一に、半固体材料を有する電池をいう。ここでいう半固体とは、固体材料の比が50%であることは意味しない。半固体とは、体積変化が小さいといった固体の性質を有しつつも、柔軟性を有する等の液体に近い性質も一部持ち合わせることを意味する。これらの性質を満たせば、単一の材料でも、複数の材料であってもよい。たとえば液体の材料を、多孔質の固体材料に浸潤させた物であってもよい。
また本明細書等において、ポリマー電解質二次電池とは、正極と負極の間の電解質層にポリマーを有する二次電池をいう。ポリマー電解質二次電池は、ドライ(または真性)ポリマー電解質電池、およびポリマーゲル電解質電池を含む。またポリマー電解質二次電池を半固体電池と呼んでもよい。
実施の形態1で示した正極活物質100を用いて半固体電池を作製した場合、半固体電池は、充放電容量の大きい二次電池となる。また、充放電電圧の高い半固体電池とすることができる。または、安全性または信頼性の高い半固体電池を実現することができる。
また実施の形態1で説明した正極活物質と、他の正極活物質を混合して用いてもよい。
他の正極活物質としてはたとえばオリビン型の結晶構造、層状岩塩型の結晶構造、またはスピネル型の結晶構造を有する複合酸化物等がある。例えば、LiFePO4、LiFeO2、LiNiO2、LiMn2O4、V2O5、Cr2O5、MnO2等の化合物があげられる。
また、他の正極活物質としてLiMn2O4等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料に、ニッケル酸リチウム(LiNiO2やLiNi1-xMxO2(0<x<1)(M=Co、Al等))を混合すると好ましい。該構成とすることによって、二次電池の特性を向上させることができる。
また、他の正極活物質として、組成式LiaMnbMcOdで表すことができるリチウムマンガン複合酸化物を用いることができる。ここで、元素Mは、リチウム、マンガン以外から選ばれた金属元素、またはシリコン、リンを用いることが好ましく、ニッケルであることがさらに好ましい。また、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体を測定する場合、放電時に0<a/(b+c)<2、かつc>0、かつ0.26≦(b+c)/d<0.5を満たすことが好ましい。なお、リチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の金属、シリコン、リン等の組成は、例えばICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて測定することができる。またリチウムマンガン複合酸化物の粒子全体の酸素の組成は、例えばEDX(エネルギー分散型X線分析法)を用いて測定することが可能である。また、ICPMS分析と併用して、融解ガス分析、XAFS(X線吸収微細構造)分析の価数評価を用いることで求めることができる。なお、リチウムマンガン複合酸化物とは、少なくともリチウムとマンガンとを含む酸化物をいい、クロム、コバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、マグネシウム、モリブデン、亜鉛、インジウム、ガリウム、銅、チタン、ニオブ、シリコン、およびリンなどからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。
<バインダ>
バインダとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。またバインダとして、フッ素ゴムを用いることができる。
また、バインダとしては、例えば水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉などを用いることができる。また、これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用して用いると、さらに好ましい。
または、バインダとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート、PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好ましい。
バインダは上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
例えば粘度調整効果の特に優れた材料と、他の材料とを組み合わせて使用してもよい。例えばゴム材料等は接着力や弾性力に優れる反面、溶媒に混合した場合に粘度調整が難しい場合がある。このような場合には例えば、粘度調整効果の特に優れた材料と混合することが好ましい。粘度調整効果の特に優れた材料としては、例えば水溶性高分子を用いるとよい。また、粘度調整効果に特に優れた水溶性高分子としては、前述の多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉を用いることができる。
なお、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩などの塩とすることにより溶解度が上がり、粘度調整剤としての効果を発揮しやすくなる。溶解度が高くなることにより電極のスラリーを作製する際に活物質や他の構成要素との分散性を高めることもできる。本明細書においては、電極のバインダとして使用するセルロースおよびセルロース誘導体としては、それらの塩も含むものとする。
水溶性高分子は水に溶解することにより粘度を安定化させ、また活物質や、バインダとして組み合わせる他の材料、例えばスチレンブタジエンゴムなどを、水溶液中に安定して分散させることができる。また、官能基を有するために活物質表面に安定に吸着しやすいことが期待される。また、例えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えば水酸基やカルボキシル基などの官能基を有する材料が多く、官能基を有するために高分子同士が相互作用し、活物質表面を広く覆って存在することが期待される。
活物質表面を覆う、または表面に接するバインダが膜を形成する場合には、不動態膜としての役割を果たして電解液の分解を抑える効果も期待される。ここで、不動態膜とは、電気の伝導性のない膜、または電気伝導性の極めて低い膜であり、例えば活物質の表面に不動態膜が形成された場合には、電池反応電位において、電解液の分解を抑制することができる。また、不動態膜は、電気の伝導性を抑えるとともに、リチウムイオンは伝導できるとさらに望ましい。
<正極集電体>
集電体としては、ステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性が高い材料をもちいることができる。また正極集電体に用いる材料は、正極の電位で溶出しないことが好ましい。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。集電体は、箔状、板状、シート状、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
[負極]
負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。また、負極活物質層は負極活物質を有し、さらに導電助剤およびバインダを有していてもよい。
<負極活物質>
負極活物質としては、例えば合金系材料や炭素系材料等を用いることができる。
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。また、これらの元素を有する化合物を用いてもよい。例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。ここで、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素、および該元素を有する化合物等を合金系材料と呼ぶ場合がある。
本明細書等において、SiOは例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、SiOxと表すこともできる。ここでxは1または1近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下が好ましい。
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等を用いればよい。
黒鉛としては、人造黒鉛や、天然黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等が挙げられる。ここで人造黒鉛として、球状の形状を有する球状黒鉛を用いることができる。例えば、MCMBは球状の形状を有する場合があり、好ましい。また、MCMBはその表面積を小さくすることが比較的容易であり、好ましい場合がある。天然黒鉛としては例えば、鱗片状黒鉛、球状化天然黒鉛等が挙げられる。
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム-黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に低い電位を示す(0.05V以上0.3V以下 vs.Li/Li+)。これにより、黒鉛を用いたリチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が比較的小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム-黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつLi3-xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示し好ましい。
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムとの合金を作らない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物でも起こる。
負極活物質層が有することのできる導電助剤およびバインダとしては、正極活物質層が有することのできる導電助剤およびバインダと同様の材料を用いることができる。
<負極集電体>
負極集電体には、正極集電体と同様の材料に加え、銅なども用いることができる。なお負極集電体は、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることが好ましい。
[セパレータ]
正極と負極の間にセパレータを配置する。セパレータとしては、例えば、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。セパレータは袋状に加工し、正極または負極のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。
セパレータは多層構造であってもよい。例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の有機材料フィルムに、セラミック系材料、フッ素系材料、ポリアミド系材料、またはこれらを混合したもの等をコートすることができる。セラミック系材料としては、例えば酸化アルミニウム粒子、酸化シリコン粒子等を用いることができる。フッ素系材料としては、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。ポリアミド系材料としては、例えばナイロン、アラミド(メタ系アラミド、パラ系アラミド)等を用いることができる。
セラミック系材料をコートすると耐酸化性が向上するため、高電圧充放電の際のセパレータの劣化を抑制し、二次電池の信頼性を向上させることができる。またフッ素系材料をコートするとセパレータと電極が密着しやすくなり、出力特性を向上させることができる。ポリアミド系材料、特にアラミドをコートすると、耐熱性が向上するため、二次電池の安全性を向上させることができる。
例えばポリプロピレンのフィルムの両面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートしてもよい。また、ポリプロピレンのフィルムの、正極と接する面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートし、負極と接する面にフッ素系材料をコートしてもよい。
多層構造のセパレータを用いると、セパレータ全体の厚さが薄くても二次電池の安全性を保つことができるため、二次電池の体積あたりの容量を大きくすることができる。
[電解液]
電解液は、溶媒と電解質を有する。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
また、電解液の溶媒として、難燃性および難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ又は複数用いることで、蓄電装置の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電装置の破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオンおよびピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、またはパーフルオロアルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、例えばLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)、LiN(C2F5SO2)2、リチウムビス(オキサレート)ボレート(Li(C2O4)2、LiBOB)等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いることができる。
蓄電装置に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。
また、電解液にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert-ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、またスクシノニトリル、アジポニトリル等のジニトリル化合物などの添加剤を添加してもよい。添加剤の濃度は、例えば溶媒に対して0.1wt%以上5wt%以下とすればよい。
また、ポリマーを電解液で膨潤させたポリマーゲル電解質を用いてもよい。
ポリマーゲル電解質を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、二次電池の薄型化および軽量化が可能である。
ゲル化されるポリマーとして、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマーのゲル等を用いることができる。例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマーや、PVDF、およびポリアクリロニトリル等、およびそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF-HFPを用いることができる。また、形成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
よって、実施の形態1で得られる正極活物質100は全固体電池にも応用が可能である。全固体電池に該正極スラリーまたは電極を応用することによって、安全性が高く、特性が良好な全固体電池を得ることができる。
[外装体]
二次電池が有する外装体としては、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。また、フィルム状の外装体を用いることもできる。フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態を組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した作製方法によって作製された正極または負極を有する二次電池の複数種類の形状の例について説明する。
[コイン型二次電池]
コイン型の二次電池の一例について説明する。図13Aはコイン型(単層偏平型)の二次電池の分解斜視図であり、図13Bは、外観図であり、図13Cは、その断面図である。コイン型の二次電池は主に小型の電子機器に用いられる。
図13Aでは、わかりやすくするために部材の重なり(上下関係、及び位置関係)がわかるように模式図としている。従って図13Aと図13Bは完全に一致する対応図とはしていない。
図13Aでは、正極304、セパレータ310、負極307、スペーサ322、ワッシャー312を重ねている。これらを負極缶302と正極缶301で封止している。なお、図16Aにおいて、封止のためのガスケットは図示していない。スペーサ322、ワッシャー312は、正極缶301と負極缶302を圧着する際に、内部を保護または缶内の位置を固定するために用いられている。スペーサ322、ワッシャー312はステンレスまたは絶縁材料を用いる。
正極集電体305上に正極活物質層306が形成された積層構造を正極304としている。
正極と負極の短絡を防ぐため、セパレータ310と、リング状絶縁体313を正極304の側面及び上面を覆うようにそれぞれ配置する。セパレータ310は、正極304よりも広い平面面積を有している。
図13Bは、完成したコイン型の二次電池の斜視図である。
コイン型の二次電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。また、負極307は、積層構造に限定されず、リチウム金属箔またはリチウムとアルミニウムの合金箔を用いてもよい。
なお、コイン型の二次電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液などによる腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解液に浸し、図13Cに示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の二次電池300を製造する。
二次電池とすることで、高容量、且つ、充放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れたコイン型の二次電池300とすることができる。なお、負極307、正極304の間に二次電池とする場合にはセパレータ310を不要とすることもできる。
[円筒型二次電池]
円筒型の二次電池の例について図14Aを参照して説明する。円筒型の二次電池616は、図14Aに示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップ601と電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
図14Bは、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。図14Bに示す円筒型の二次電池は、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子は中心軸を中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を電池缶602に被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の二次電池と同様のものを用いることができる。
円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。
実施の形態1で得られる正極活物質100を正極604に用いることで、高容量、且つ、充放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れた円筒型の二次電池616とすることができる。
正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構613に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構613は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構613は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
図14Cは蓄電システム615の一例を示す。蓄電システム615は複数の二次電池616を有する。それぞれの二次電池の正極は、絶縁体625で分離された導電体624に接触し、電気的に接続されている。導電体624は配線623を介して、制御回路620に電気的に接続されている。また、それぞれの二次電池の負極は、配線626を介して制御回路620に電気的に接続されている。制御回路620として、充放電などを行う充放電制御回路や過充電または過放電を防止する保護回路を適用することができる。
図14Dは、蓄電システム615の一例を示す。蓄電システム615は複数の二次電池616を有し、複数の二次電池616は、導電板628及び導電板614の間に挟まれている。複数の二次電池616は、配線627により導電板628及び導電板614と電気的に接続される。複数の二次電池616は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池616を有する蓄電システム615を構成することで、大きな電力を取り出すことができる。
複数の二次電池616が、並列に接続された後、さらに直列に接続されてもよい。
複数の二次電池616の間に温度制御装置を有していてもよい。二次電池616が過熱されたときは、温度制御装置により冷却し、二次電池616が冷えすぎているときは温度制御装置により加熱することができる。そのため蓄電システム615の性能が外気温に影響されにくくなる。
また、図14Dにおいて、蓄電システム615は制御回路620に配線621及び配線622を介して電気的に接続されている。配線621は導電板628を介して複数の二次電池600の正極に、配線622は導電板614を介して複数の二次電池600の負極に、それぞれ電気的に接続される。
[二次電池の他の構造例]
二次電池の構造例について図15及び図16を用いて説明する。
図15Aに示す二次電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液中に浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、図15Aでは、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
なお、図15Bに示すように、図15Aに示す筐体930を複数の材料によって形成してもよい。例えば、図15Bに示す二次電池913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、二次電池913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930aの内部にアンテナを設けてもよい。筐体930bとしては、例えば金属材料を用いることができる。
さらに、捲回体950の構造について図15Cに示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
また、図16に示すような捲回体950aを有する二次電池913としてもよい。図16Aに示す捲回体950aは、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。負極931は負極活物質層931aを有する。正極932は正極活物質層932aを有する。
実施の形態1で得られる正極活物質100を正極932に用いることで、高容量、且つ、充放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れた二次電池913とすることができる。
セパレータ933は、負極活物質層931aおよび正極活物質層932aよりも広い幅を有し、負極活物質層931aおよび正極活物質層932aと重畳するように捲回されている。また正極活物質層932aよりも負極活物質層931aの幅が広いことが安全性の点で好ましい。またこのような形状の捲回体950aは安全性および生産性がよく好ましい。
図16Bに示すように、負極931は端子951と超音波接合または溶接または圧着により電気的に接続される。端子951は端子911aと電気的に接続される。また正極932は端子952と超音波接合または溶接または圧着により電気的に接続される。端子952は端子911bと電気的に接続される。
図16Cに示すように、筐体930により捲回体950aおよび電解液が覆われ、二次電池913となる。筐体930には安全弁、過電流保護素子等を設けることが好ましい。安全弁は、電池破裂を防止するため、筐体930の内部が所定の内圧で開放する弁である。
図16Bに示すように二次電池913は複数の捲回体950aを有していてもよい。複数の捲回体950aを用いることで、より充放電容量の大きい二次電池913とすることができる。図16Aおよび図16Bに示す二次電池913の他の要素は、図15A乃至図15Cに示す二次電池913の記載を参酌することができる。
<ラミネート型二次電池>
次に、ラミネート型の二次電池の例について、外観図の一例を図17A及び図17Bに示す。図17A及び図17Bは、正極503、負極506、セパレータ507、外装体509、正極リード電極510及び負極リード電極511を有する。
図18Aは正極503及び負極506の外観図を示す。正極503は正極集電体501を有し、正極活物質層502は正極集電体501の表面に形成されている。また、正極503は正極集電体501が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負極506は負極集電体504を有し、負極活物質層505は負極集電体504の表面に形成されている。また、負極506は負極集電体504が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。正極及び負極が有するタブ領域の面積や形状は、図18Aに示す例に限られない。
<ラミネート型二次電池の作製方法>
ここで、図17Aに外観図を示すラミネート型二次電池の作製方法の一例について、図18B及び図18Cを用いて説明する。
まず、負極506、セパレータ507及び正極503を積層する。図18Bに積層された負極506、セパレータ507及び正極503を示す。ここでは負極を5枚、正極を4枚使用する例を示す。負極とセパレータと正極からなる積層体とも呼べる。次に、正極503のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いればよい。同様に、負極506のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極リード電極511の接合を行う。
次に外装体509上に、負極506、セパレータ507及び正極503を配置する。
次に、図18Cに示すように、外装体509を破線で示した部分で折り曲げる。その後、外装体509の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着等を用いればよい。この時、後に電解液508を入れることができるように、外装体509の一部(または一辺)に接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
次に、外装体509に設けられた導入口から、電解液508(図示しない。)を外装体509の内側へ導入する。電解液508の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性雰囲気下で行うことが好ましい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、ラミネート型の二次電池500を作製することができる。
実施の形態1で得られる正極活物質100を正極503に用いることで、高容量、且つ、充放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れた二次電池500とすることができる。
[電池パックの例]
アンテナを用いて無線充電が可能な本発明の一態様の二次電池パックの例について、図19を用いて説明する。
図19Aは、二次電池パック531の外観を示す図であり、厚さの薄い直方体形状(厚さのある平板形状とも呼べる)である。図19Bは二次電池パック531の構成を説明する図である。二次電池パック531は、回路基板540と、二次電池513と、を有する。二次電池513には、ラベル529が貼られている。回路基板540は、シール515により固定されている。また、二次電池パック531は、アンテナ517を有する。
二次電池513の内部は、捲回体を有する構造にしてもよいし、積層体を有する構造にしてもよい。
二次電池パック531において例えば、図19Bに示すように、回路基板540上に、制御回路590を有する。また、回路基板540は、端子514と電気的に接続されている。また回路基板540は、アンテナ517、二次電池513の正極リード及び負極リードの一方551、正極リード及び負極リードの他方552と電気的に接続される。
あるいは、図19Cに示すように、回路基板540上に設けられる回路システム590aと、端子514を介して回路基板540に電気的に接続される回路システム590bと、を有してもよい。
なお、アンテナ517はコイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ517は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ517を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
二次電池パック531は、アンテナ517と、二次電池513との間に層519を有する。層519は、例えば二次電池513による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層519としては、例えば磁性体を用いることができる。
本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1で得られる正極活物質100を用いて全固体電池を作製する例を示す。
図20Aに示すように、本発明の一態様の二次電池400は、正極410、固体電解質層420および負極430を有する。
正極410は正極集電体413および正極活物質層414を有する。正極活物質層414は正極活物質411および固体電解質421を有する。正極活物質411には、実施の形態1で得られる正極活物質100を用いている。また正極活物質層414は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。
固体電解質層420は固体電解質421を有する。固体電解質層420は、正極410と負極430の間に位置し、正極活物質411および負極活物質431のいずれも有さない領域である。
負極430は負極集電体433および負極活物質層434を有する。負極活物質層434は負極活物質431および固体電解質421を有する。また負極活物質層434は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。なお、負極430に金属リチウムを用いる場合は、図20Bのように、固体電解質421を有さない負極430とすることができる。負極430に金属リチウムを用いると、二次電池400のエネルギー密度を向上させることができ好ましい。
固体電解質層420が有する固体電解質421としては、例えば硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質等を用いることができる。
硫化物系固体電解質には、チオシリコン系(Li10GeP2S12、Li3.25Ge0.25P0.75S4等)、硫化物ガラス(70Li2S・30P2S5、30Li2S・26B2S3・44LiI、63Li2S・38SiS2・1Li3PO4、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4、50Li2S・50GeS2等)、硫化物結晶化ガラス(Li7P3S11、Li3.25P0.95S4等)が含まれる。硫化物系固体電解質は、高い伝導度を有する材料がある、低い温度で合成可能、また比較的やわらかいため充放電を経ても導電経路が保たれやすい等の利点がある。
酸化物系固体電解質には、ペロブスカイト型結晶構造を有する材料(La2/3-xLi3xTiO3等)、NASICON型結晶構造を有する材料(Li1-YAlYTi2-Y(PO4)3等)、ガーネット型結晶構造を有する材料(Li7La3Zr2O12等)、LISICON型結晶構造を有する材料(Li14ZnGe4O16等)、LLZO(Li7La3Zr2O12)、酸化物ガラス(Li3PO4-Li4SiO4、50Li4SiO4・50Li3BO3等)、酸化物結晶化ガラス(Li1.07Al0.69Ti1.46(PO4)3、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3等)が含まれる。酸化物系固体電解質は、大気中で安定であるといった利点がある。
ハロゲン化物系固体電解質には、LiAlCl4、Li3InBr6、LiF、LiCl、LiBr、LiI等が含まれる。また、これらハロゲン化物系固体電解質を、ポーラス酸化アルミニウムやポーラスシリカの細孔に充填したコンポジット材料も固体電解質として用いることができる。
また、異なる固体電解質を混合して用いてもよい。
中でも、NASICON型結晶構造を有するLi1+xAlxTi2-x(PO4)3(0〔x〔1)(以下、LATP)は、アルミニウムとチタンという、本発明の一態様の二次電池400に用いる正極活物質が有してもよい元素を含むため、サイクル特性の向上について相乗効果が期待でき好ましい。また、工程の削減による生産性の向上も期待できる。なお本明細書等において、NASICON型結晶構造とは、M2(XO4)3(M:遷移金属、X:S、P、As、Mo、W等)で表される化合物であり、MO6八面体とXO4四面体が頂点を共有して3次元的に配列した構造を有するものをいう。
〔外装体と二次電池の形状〕
本発明の一態様の二次電池400の外装体には、様々な材料および形状のものを用いることができるが、正極、固体電解質層および負極を加圧する機能を有することが好ましい。
例えば図21は、全固体電池の材料を評価するセルの一例である。
図21Aは評価セルの断面模式図であり、評価セルは、下部部材761と、上部部材762と、それらを固定する固定ねじや蝶ナット764を有し、押さえ込みねじ763を回転させることで電極用プレート753を押して評価材料を固定している。ステンレス材料で構成された下部部材761と、上部部材762との間には絶縁体766が設けられている。また上部部材762と、押さえ込みねじ763の間には密閉するためのOリング765が設けられている。
評価材料は、電極用プレート751に載せられ、周りを絶縁管752で囲み、上方から電極用プレート753で押されている状態となっている。この評価材料周辺を拡大した斜視図が図21Bである。
評価材料としては、正極750a、固体電解質層750b、負極750cの積層の例を示しており、断面図を図21Cに示す。なお、図21A乃至図21Cにおいて同じ箇所には同じ符号を用いる。
正極750aと電気的に接続される電極用プレート751および下部部材761は、正極端子に相当するということができる。負極750cと電気的に接続される電極用プレート753および上部部材762は、負極端子に相当するということができる。電極用プレート751および電極用プレート753を介して評価材料に押圧をかけながら電気抵抗などを測定することができる。
また、本発明の一態様の二次電池の外装体には、気密性に優れたパッケージを使用することが好ましい。例えばセラミックパッケージや樹脂パッケージを用いることができる。また、外装体を封止する際には、外気を遮断し、密閉した雰囲気下、例えばグローブボックス内で行うことが好ましい。
図22Aに、図21と異なる外装体および形状を有する本発明の一態様の二次電池の斜視図を示す。図22Aの二次電池は、外部電極771、772を有し、複数のパッケージ部材を有する外装体で封止されている。
図22A中の一点破線で切断した断面の一例を図22Bに示す。正極750a、固体電解質層750bおよび負極750cを有する積層体は、平板に電極層773aが設けられたパッケージ部材770aと、枠状のパッケージ部材770bと、平板に電極層773bが設けられたパッケージ部材770cと、で囲まれて封止された構造となっている。パッケージ部材770a、770b、770cには、絶縁材料、例えば樹脂材料やセラミックを用いることができる。
外部電極771は、電極層773aを介して電気的に正極750aと電気的に接続され、正極端子として機能する。また、外部電極772は、電極層773bを介して電気的に負極750cと電気的に接続され、負極端子として機能する。
実施の形態1で得られる正極活物質100を用いることで、高エネルギー密度かつ良好な出力特性をもつ全固体二次電池を実現することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、円筒型の二次電池である図14Dとは異なる例である。図23Cを用いて電気自動車(EV)に適用する例を示す。
電気自動車には、メインの駆動用の二次電池として第1のバッテリ1301a、1301bと、モータ1304を始動させるインバータ1312に電力を供給する第2のバッテリ1311が設置されている。第2のバッテリ1311はクランキングバッテリー(スターターバッテリーとも呼ばれる)とも呼ばれる。第2のバッテリ1311は高出力できればよく、大容量はそれほど必要とされず、第2のバッテリ1311の容量は第1のバッテリ1301a、1301bと比較して小さい。
第1のバッテリ1301aの内部構造は、図15Aまたは図16Cに示した巻回型であってもよいし、図17Aまたは図17Bに示した積層型であってもよい。また、第1のバッテリ1301aは、実施の形態5の全固体電池を用いてもよい。第1のバッテリ1301aに実施の形態5の全固体電池を用いることで高容量とすることができ、安全性が向上し、小型化、軽量化することができる。
本実施の形態では、第1のバッテリ1301a、1301bを2つ並列に接続させている例を示しているが3つ以上並列に接続させてもよい。また、第1のバッテリ1301aで十分な電力を貯蔵できるのであれば、第1のバッテリ1301bはなくてもよい。複数の二次電池を有する電池パックを構成することで、大きな電力を取り出すことができる。複数の二次電池は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後、さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池を組電池とも呼ぶ。
また、車載用の二次電池において、複数の二次電池からの電力を遮断するため、工具を使わずに高電圧を遮断できるサービスプラグまたはサーキットブレーカを有しており、第1のバッテリ1301aに設けられる。
また、第1のバッテリ1301a、1301bの電力は、主にモータ1304を回転させることに使用されるが、DCDC回路1306を介して42V系の車載部品(電動パワステ1307、ヒーター1308、デフォッガ1309など)に電力を供給する。後輪にリアモータ1317を有している場合にも、第1のバッテリ1301aがリアモータ1317を回転させることに使用される。
また、第2のバッテリ1311は、DCDC回路1310を介して14V系の車載部品(オーディオ1313、パワーウィンドウ1314、ランプ類1315など)に電力を供給する。
また、第1のバッテリ1301aについて、図23Aを用いて説明する。
図23Aでは9個の角型二次電池1300を一つの電池パック1415としている例を示している。また、9個の角型二次電池1300を直列接続し、一方の電極を絶縁体からなる固定部1413で固定し、もう一方の電極を絶縁体からなる固定部1414で固定している。本実施の形態では固定部1413、1414で固定する例を示しているが電池収容ボックス(筐体とも呼ぶ)に収納させる構成としてもよい。車両は外部(路面など)から振動または揺れが加えられることを想定されているため、固定部1413、1414や。電池収容ボックスなどで複数の二次電池を固定することが好ましい。また、一方の電極は配線1421によって制御回路部1320に電気的に接続されている。またもう一方の電極は配線1422によって制御回路部1320に電気的に接続されている。
また、制御回路部1320は、酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を用いてもよい。酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を有する充電制御回路、又は電池制御システムを、BTOS(Battery operating system、又はBattery oxide semiconductor)と呼称する場合がある。
酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウム等から選ばれた一種、又は複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、酸化物530として適用できるIn-M-Zn酸化物は、CAAC-OS(C-Axls Aligned Crystal Oxide Semiconductor)、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)であることが好ましい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。CAAC-OSは、複数の結晶領域を有し、当該複数の結晶領域はc軸が特定の方向に配向している酸化物半導体である。なお、特定の方向とは、CAAC-OS膜の厚さ方向、CAAC-OS膜の被形成面の法線方向、またはCAAC-OS膜の表面の法線方向である。また、結晶領域とは、原子配列に周期性を有する領域である。なお、原子配列を格子配列とみなすと、結晶領域とは、格子配列の揃った領域でもある。さらに、CAAC-OSは、a-b面方向において複数の結晶領域が連結する領域を有し、当該領域は歪みを有する場合がある。なお、歪みとは、複数の結晶領域が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。つまり、CAAC-OSは、c軸配向し、a-b面方向には明らかな配向をしていない酸化物半導体である。また、CAC-OSとは、例えば、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つまたは複数の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
さらに、CAC-OSとは、第1の領域と、第2の領域と、に材料が分離することでモザイク状となり、当該第1の領域が、膜中に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。つまり、CAC-OSは、当該第1の領域と、当該第2の領域とが、混合している構成を有する複合金属酸化物である。
ここで、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSを構成する金属元素に対するIn、Ga、およびZnの原子数比のそれぞれを、[In]、[Ga]、および[Zn]と表記する。例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSにおいて、第1の領域は、[In]が、CAC-OS膜の組成における[In]よりも大きい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、CAC-OS膜の組成における[Ga]よりも大きい領域である。または、例えば、第1の領域は、[In]が、第2の領域における[In]よりも大きく、且つ、[Ga]が、第2の領域における[Ga]よりも小さい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、第1の領域における[Ga]よりも大きく、且つ、[In]が、第1の領域における[In]よりも小さい領域である。
具体的には、上記第1の領域は、インジウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物などが主成分である領域である。また、上記第2の領域は、ガリウム酸化物、ガリウム亜鉛酸化物などが主成分である領域である。つまり、上記第1の領域を、Inを主成分とする領域と言い換えることができる。また、上記第2の領域を、Gaを主成分とする領域と言い換えることができる。
なお、上記第1の領域と、上記第2の領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、Inを主成分とする領域(第1の領域)と、Gaを主成分とする領域(第2の領域)とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
CAC-OSをトランジスタに用いる場合、第1の領域に起因する導電性と、第2の領域に起因する絶縁性とが、相補的に作用することにより、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSに付与することができる。つまり、CAC-OSとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。導電性の機能と絶縁性の機能とを分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。よって、CAC-OSをトランジスタに用いることで、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および良好なスイッチング動作を実現することができる。
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、CAC-OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
また、高温環境下で使用可能であるため、制御回路部1320は酸化物半導体を用いるトランジスタを用いることが好ましい。プロセスを簡略なものとするため、制御回路部1320は単極性のトランジスタを用いて形成してもよい。半導体層に酸化物半導体を用いるトランジスタは、動作周囲温度が単結晶Siよりも広く-40℃以上150℃以下であり、二次電池が加熱しても特性変化が単結晶に比べて小さい。酸化物半導体を用いるトランジスタのオフ電流は、150℃であっても温度によらず測定下限以下であるが、単結晶Siトランジスタのオフ電流特性は、温度依存性が大きい。例えば、150℃では、単結晶Siトランジスタはオフ電流が上昇し、電流オン/オフ比が十分に大きくならない。制御回路部1320は、安全性を向上することができる。また、実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池と組み合わせることで安全性についての相乗効果が得られる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池及び制御回路部1320は、二次電池による火災等の事故撲滅に大きく寄与することができる。
酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を用いた制御回路部1320は、マイクロショート等の10項目の不安定性の原因に対し、二次電池の自動制御装置として機能させることもできる。10項目の不安定性の原因を解消する機能としては、過充電の防止、過電流の防止、充電時過熱制御、組電池でのセルバランス、過放電の防止、残量計、温度に応じた充電電圧及び電流量自動制御、劣化度に応じた充電電流量制御、マイクロショート異常挙動検知、マイクロショートに関する異常予測などが挙げられ、そのうちの少なくとも一つの機能を制御回路部1320が有する。また、二次電池の自動制御装置の超小型化が可能である。
また、マイクロショートとは、二次電池の内部の微小な短絡のことを指しており、二次電池の正極と負極が短絡して充放電不可能の状態になるというほどではなく、微小な短絡部でわずかに短絡電流が流れてしまう現象を指している。比較的短時間、且つ、わずかな箇所であっても大きな電圧変化が生じるため、その異常な電圧値がその後の推定に影響を与える恐れがある。
マイクロショートの原因の一つは、充放電が複数回行われることによって、正極活物質の不均一な分布により、正極の一部と負極の一部で局所的な電流の集中が生じ、セパレータの一部が機能しなくなる箇所が発生、または副反応による副反応物の発生によりミクロな短絡が生じていると言われている。
また、マイクロショートの検知だけでなく、制御回路部1320は、二次電池の端子電圧を検知し、二次電池の充放電状態を管理するとも言える。例えば、過充電を防ぐために充電回路の出力トランジスタと遮断用スイッチの両方をほぼ同時にオフ状態とすることができる。
また、図23Aに示す電池パック1415のブロック図の一例を図23Bに示す。
制御回路部1320は、少なくとも過充電を防止するスイッチと、過放電を防止するスイッチを含むスイッチ部1324と、スイッチ部1324を制御する制御回路1322と、第1のバッテリ1301aの電圧測定部と、を有する。制御回路部1320は、使用する二次電池の上限電圧と下限電圧が設定されており、外部からの電流上限や、外部への出力電流の上限などを制限している。二次電池の下限電圧以上上限電圧以下の範囲内は、使用が推奨されている電圧範囲内であり、その範囲外となるとスイッチ部1324が作動し、保護回路として機能する。また、制御回路部1320は、スイッチ部1324を制御して過放電や過充電を防止するため、保護回路とも呼べる。例えば、過充電となりそうな電圧を制御回路1322で検知した場合にスイッチ部1324のスイッチをオフ状態とすることで電流を遮断する。さらに充放電経路中にPTC素子を設けて温度の上昇に応じて電流を遮断する機能を設けてもよい。また、制御回路部1320は、外部端子1325(+IN)と、外部端子1326(-IN)とを有している。
スイッチ部1324は、nチャネル型のトランジスタやpチャネル型のトランジスタを組み合わせて構成することができる。スイッチ部1324は、単結晶シリコンを用いるSiトランジスタを有するスイッチに限定されず、例えば、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)、InP(リン化インジウム)、SiC(シリコンカーバイド)、ZnSe(セレン化亜鉛)、GaN(窒化ガリウム)、GaOx(酸化ガリウム;xは0より大きい実数)などを有するパワートランジスタでスイッチ部1324を形成してもよい。また、OSトランジスタを用いた記憶素子は、Siトランジスタを用いた回路上などに積層することで自由に配置可能であるため、集積化を容易に行うことができる。またOSトランジスタは、Siトランジスタと同様の製造装置を用いて作製することが可能であるため、低コストで作製可能である。即ち、スイッチ部1324上にOSトランジスタを用いた制御回路部1320を積層し、集積化することで1チップとすることもできる。制御回路部1320の占有体積を小さくすることができるため、小型化が可能となる。
第1のバッテリ1301a、1301bは、主に42V系(高電圧系)の車載機器に電力を供給し、第2のバッテリ1311は14V系(低電圧系)の車載機器に電力を供給する。第2のバッテリ1311は鉛蓄電池がコスト上有利のため採用されることが多い。鉛蓄電池はリチウムイオン二次電池と比べて自己放電が大きく、サルフェーションとよばれる現象により劣化しやすい欠点がある。第2のバッテリ1311をリチウムイオン二次電池とすることでメンテナンスフリーとするメリットがあるが、長期間の使用、例えば3年以上となると、製造時には判別できない異常発生が生じる恐れがある。特にインバータを起動する第2のバッテリ1311が動作不能となると、第1のバッテリ1301a、1301bに残容量があってもモータを起動させることができなくなることを防ぐため、第2のバッテリ1311が鉛蓄電池の場合は、第1のバッテリから第2のバッテリに電力を供給し、常に満充電状態を維持するように充電されている。
本実施の形態では、第1のバッテリ1301aと第2のバッテリ1311の両方にリチウムイオン二次電池を用いる一例を示す。第2のバッテリ1311は鉛蓄電池や全固体電池や電気二重層キャパシタを用いてもよい。例えば、実施の形態5の全固体電池を用いてもよい。第2のバッテリ1311に実施の形態5の全固体電池を用いることで高容量とすることができ、小型化、軽量化することができる。
また、タイヤ1316の回転による回生エネルギーは、ギア1305を介してモータ1304に送られ、モータコントローラ1303やバッテリーコントローラ1302から制御回路部1321を介して第2のバッテリ1311に充電される。またはバッテリーコントローラ1302から制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301aに充電される。またはバッテリーコントローラ1302から制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301bに充電される。回生エネルギーを効率よく充電するためには、第1のバッテリ1301a、1301bが急速充電可能であることが望ましい。
バッテリーコントローラ1302は第1のバッテリ1301a、1301bの充電電圧及び充電電流などを設定することができる。バッテリーコントローラ1302は、用いる二次電池の充電特性に合わせて充電条件を設定し、急速充電することができる。
また、図示していないが、外部の充電器と接続させる場合、充電器のコンセントまたは充電器の接続ケーブルは、バッテリーコントローラ1302に電気的に接続される。外部の充電器から供給された電力はバッテリーコントローラ1302を介して第1のバッテリ1301a、1301bに充電する。また、充電器によっては、制御回路が設けられており、バッテリーコントローラ1302の機能を用いない場合もあるが、過充電を防ぐため制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301a、1301bを充電することが好ましい。また、接続ケーブルまたは充電器の接続ケーブルに制御回路を備えている場合もある。制御回路部1320は、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれることもある。ECUは、電動車両に設けられたCAN(Controller Area Network)に接続される。CANは、車内LANとして用いられるシリアル通信規格の一つである。また、ECUは、マイクロコンピュータを含む。また、ECUは、CPUやGPUを用いる。
充電スタンドなどに設置されている外部の充電器は、100Vコンセントや、200Vコンセントや、3相200V且つ50kWなどがある。また、非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することもできる。
急速充電を行う場合、短時間での充電を行うためには、高電圧での充電に耐えうる二次電池が望まれている。
また、上述した本実施の形態の二次電池は、実施の形態1で得られる正極活物質100を用いることで高密度な正極を有している。さらに、導電助剤としてグラフェンを用い、電極層を厚くして担持量を高くしても容量低下を抑え、高容量を維持することが相乗効果として大幅に電気特性が向上された二次電池を実現できる。特に車両に用いる二次電池に有効であり、車両全重量に対する二次電池の重量の割合を増加させることなく、航続距離が長い、具体的には一充電走行距離が500km以上の車両を提供することができる。
特に上述した本実施の形態の二次電池は、実施の形態1で説明した正極活物質100を用いることで二次電池の動作電圧を高くすることができ、充電電圧の増加に伴い、使用できる容量を増加させることができる。また、実施の形態1で説明した正極活物質100を正極に用いることでサイクル特性に優れた車両用の二次電池を提供することができる。
次に、本発明の一態様である二次電池を車両、代表的には輸送用車両に実装する例について説明する。
また、図14D、図16C、図23Aのいずれか一に示した二次電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。また、農業機械、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、電動カート、小型又は大型船舶、潜水艦、固定翼機や回転翼機等の航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船などの輸送用車両に二次電池を搭載することもできる。本発明の一態様の二次電池は高容量の二次電池とすることができる。そのため本発明の一態様の二次電池は、小型化、軽量化に適しており、輸送用車両に好適に用いることができる。
図24A乃至図24Dにおいて、本発明の一態様を用いた輸送用車両を例示する。図24Aに示す自動車2001は、走行のための動力源として電気モータを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モータとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。二次電池を車両に搭載する場合、実施の形態4で示した二次電池の一例を一箇所または複数個所に設置する。図24Aに示す自動車2001は、電池パック2200を有し、電池パックは、複数の二次電池を接続させた二次電池モジュールを有する。さらに二次電池モジュールに電気的に接続する充電制御装置を有すると好ましい。
また、自動車2001は、自動車2001が有する二次電池にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。充電に際しては、充電方法やコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。二次電池は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車2001に搭載された蓄電装置を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、2台の車両どうしで電力の送受電を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
図24Bは、輸送用車両の一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車2002を示している。輸送車2002の二次電池モジュールは、例えば公称電圧3.0V以上5.0V以下の二次電池を4個セルユニットとし、48セルを直列に接続した170Vの最大電圧とする。電池パック2201の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが違う以外は、図24Aと同様な機能を備えているので説明は省略する。
図24Cは、一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車両2003を示している。輸送車両2003の二次電池モジュールは、例えば公称電圧3.0V以上5.0V以下の二次電池を百個以上直列に接続した600Vの最大電圧とする。従って、特性バラツキの小さい二次電池が求められる。実施の形態1で説明した正極活物質100を正極に用いた二次電池を用いることで、安定した電池特性を有する二次電池を製造することができ、歩留まりの観点から低コストで大量生産が可能である。また、電池パック2202の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが違う以外は、図24Aと同様な機能を備えているので説明は省略する。
図24Dは、一例として燃料を燃焼するエンジンを有した航空機2004を示している。図24Dに示す航空機2004は、離着陸用の車輪を有しているため、輸送車両の一部とも言え、複数の二次電池を接続させて二次電池モジュールを構成し、二次電池モジュールと充電制御装置とを含む電池パック2203を有している。
航空機2004の二次電池モジュールは、例えば4Vの二次電池を8個直列に接続した32Vの最大電圧とする。電池パック2203の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが違う以外は、図24Aと同様な機能を備えているので説明は省略する。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を建築物に実装する例について図25Aおよび図25Bを用いて説明する。
図25Aに示す住宅は、本発明の一態様である二次電池を有する蓄電装置2612と、ソーラーパネル2610を有する。蓄電装置2612は、ソーラーパネル2610と配線2611等を介して電気的に接続されている。また蓄電装置2612と地上設置型の充電装置2604が電気的に接続されていてもよい。ソーラーパネル2610で得た電力は、蓄電装置2612に充電することができる。また蓄電装置2612に蓄えられた電力は、充電装置2604を介して車両2603が有する二次電池に充電することができる。蓄電装置2612は、床下空間部に設置されることが好ましい。床下空間部に設置することにより、床上の空間を有効的に利用することができる。あるいは、蓄電装置2612は床上に設置されてもよい。
蓄電装置2612に蓄えられた電力は、住宅内の他の電子機器にも電力を供給することができる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置2612を無停電電源として用いることで、電子機器の利用が可能となる。
図25Bに、本発明の一態様に係る蓄電装置700の一例を示す。図25Bに示すように、建物799の床下空間部796には、本発明の一態様に係る蓄電装置791が設置されている。また、蓄電装置791に実施の形態6に説明した制御回路を設けてもよく、実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池を蓄電装置791に用いることで安全性についての相乗効果が得られる。実施の形態6に説明した制御回路及び実施の形態1で説明した正極活物質100を正極に用いた二次電池は、二次電池を有する蓄電装置791による火災等の事故撲滅に大きく寄与することができる。
蓄電装置791には、制御装置790が設置されており、制御装置790は、配線によって、分電盤703と、蓄電コントローラ705(制御装置ともいう)と、表示器706と、ルータ709と、に電気的に接続されている。
商業用電源701から、引込線取付部710を介して、電力が分電盤703に送られる。また、分電盤703には、蓄電装置791と、商業用電源701と、から電力が送られ、分電盤703は、送られた電力を、コンセント(図示せず)を介して、一般負荷707及び蓄電系負荷708に供給する。
一般負荷707は、例えば、テレビやパーソナルコンピュータなどの電気機器であり、蓄電系負荷708は、例えば、電子レンジ、冷蔵庫、空調機などの電気機器である。
蓄電コントローラ705は、計測部711と、予測部712と、計画部713と、を有する。計測部711は、一日(例えば、0時から24時)の間に、一般負荷707、蓄電系負荷708で消費された電力量を計測する機能を有する。また、計測部711は、蓄電装置791の電力量と、商業用電源701から供給された電力量と、を計測する機能を有していてもよい。また、予測部712は、一日の間に一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費された電力量に基づいて、次の一日の間に一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費される需要電力量を予測する機能を有する。また、計画部713は、予測部712が予測した需要電力量に基づいて、蓄電装置791の充放電の計画を立てる機能を有する。
計測部711によって計測された一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費された電力量は、表示器706によって確認することができる。また、ルータ709を介して、テレビやパーソナルコンピュータなどの電気機器において、確認することもできる。さらに、ルータ709を介して、スマートフォンやタブレットなどの携帯電子端末によっても確認することができる。また、表示器706、電気機器、携帯電子端末によって、予測部712が予測した時間帯ごと(または一時間ごと)の需要電力量なども確認することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、二輪車、自転車に本発明の一態様である蓄電装置を搭載する例を示す。
また、図26Aは、本発明の一態様の蓄電装置を用いた電動自転車の一例である。図26Aに示す電動自転車8700に、本発明の一態様の蓄電装置を適用することができる。本発明の一態様の蓄電装置は例えば、複数の蓄電池と、保護回路と、を有する。
電動自転車8700は、蓄電装置8702を備える。蓄電装置8702は、運転者をアシストするモータに電気を供給することができる。また、蓄電装置8702は、持ち運びができ、図26Bに自転車から取り外した状態を示している。また、蓄電装置8702は、本発明の一態様の蓄電装置が有する蓄電池8701が複数内蔵されており、そのバッテリ残量などを表示部8703で表示できるようにしている。また蓄電装置8702は、実施の形態6に一例を示した二次電池の充電制御または異常検知が可能な制御回路8704を有する。制御回路8704は、蓄電池8701の正極及び負極と電気的に接続されている。また、制御回路8704に図22A及び図22Bで示した小型の固体二次電池を設けてもよい。図22A及び図22Bで示した小型の固体二次電池を制御回路8704に設けることで制御回路8704の有するメモリ回路のデータを長時間保持することに電力を供給することもできる。また、実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池と組み合わせることで安全性についての相乗効果が得られる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池及び制御回路8704は、二次電池による火災等の事故撲滅に大きく寄与することができる。
また、図26Cは、本発明の一態様の蓄電装置を用いた二輪車の一例である。図26Cに示すスクータ8600は、蓄電装置8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。蓄電装置8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。また、実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池を複数収納された蓄電装置8602は高容量とすることができ、小型化に寄与することができる。
また、図26Cに示すスクータ8600は、座席下収納8604に、蓄電装置8602を収納することができる。蓄電装置8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を電子機器に実装する例について説明する。二次電池を実装する電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。携帯情報端末としてはノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型端末、電子書籍端末、携帯電話機などがある。
図27Aは、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機2100は、筐体2101に組み込まれた表示部2102の他、操作ボタン2103、外部接続ポート2104、スピーカ2105、マイク2106などを備えている。なお、携帯電話機2100は、二次電池2107を有している。実施の形態1で説明した正極活物質100を正極に用いた二次電池2107を備えることで高容量とすることができ、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
携帯電話機2100は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
操作ボタン2103は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯電話機2100に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン2103の機能を自由に設定することもできる。
また、携帯電話機2100は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
また、携帯電話機2100は外部接続ポート2104を備え、他の情報端末とコネクタを介して直接データのやりとりを行うことができる。また外部接続ポート2104を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は外部接続ポート2104を介さずに無線給電により行ってもよい。
携帯電話機2100はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサや、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
図27Bは複数のローター2302を有する無人航空機2300である。無人航空機2300はドローンと呼ばれることもある。無人航空機2300は、本発明の一態様である二次電池2301と、カメラ2303と、アンテナ(図示しない)を有する。無人航空機2300はアンテナを介して遠隔操作することができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、無人航空機2300に搭載する二次電池として好適である。
図27Cは、ロボットの一例を示している。図27Cに示すロボット6400は、二次電池6409、照度センサ6401、マイクロフォン6402、上部カメラ6403、スピーカ6404、表示部6405、下部カメラ6406および障害物センサ6407、移動機構6408、演算装置等を備える。
マイクロフォン6402は、使用者の話し声及び環境音等を検知する機能を有する。また、スピーカ6404は、音声を発する機能を有する。ロボット6400は、マイクロフォン6402およびスピーカ6404を用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
表示部6405は、種々の情報の表示を行う機能を有する。ロボット6400は、使用者の望みの情報を表示部6405に表示することが可能である。表示部6405は、タッチパネルを搭載していてもよい。また、表示部6405は取り外しのできる情報端末であっても良く、ロボット6400の定位置に設置することで、充電およびデータの受け渡しを可能とする。
上部カメラ6403および下部カメラ6406は、ロボット6400の周囲を撮像する機能を有する。また、障害物センサ6407は、移動機構6408を用いてロボット6400が前進する際の進行方向における障害物の有無を察知することができる。ロボット6400は、上部カメラ6403、下部カメラ6406および障害物センサ6407を用いて、周囲の環境を認識し、安全に移動することが可能である。
ロボット6400は、その内部領域に本発明の一態様に係る二次電池6409と、半導体装置または電子部品を備える。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、ロボット6400に搭載する二次電池6409として好適である。
図27Dは、掃除ロボットの一例を示している。掃除ロボット6300は、筐体6301上面に配置された表示部6302、側面に配置された複数のカメラ6303、ブラシ6304、操作ボタン6305、二次電池6306、各種センサなどを有する。図示されていないが、掃除ロボット6300には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット6300は自走し、ゴミ6310を検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
例えば、掃除ロボット6300は、カメラ6303が撮影した画像を解析し、壁、家具または段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシ6304に絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシ6304の回転を止めることができる。掃除ロボット6300は、その内部領域に本発明の一態様に係る二次電池6306と、半導体装置または電子部品を備える。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、掃除ロボット6300に搭載する二次電池6306として好適である。
図28Aは、ウェアラブルデバイスの例を示している。ウェアラブルデバイスは、電源として二次電池を用いる。また、使用者が生活使用または屋外使用において水による耐水性を高めるため、接続するコネクタ部分が露出している有線による充電だけでなく、無線充電も行えるウェアラブルデバイスが望まれている。
例えば、図28Aに示すような眼鏡型デバイス4000に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。眼鏡型デバイス4000は、フレーム4000aと、表示部4000bを有する。湾曲を有するフレーム4000aのテンプル部に二次電池を搭載することで、軽量であり、且つ、重量バランスがよく継続使用時間の長い眼鏡型デバイス4000とすることができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、ヘッドセット型デバイス4001に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。ヘッドセット型デバイス4001は、少なくともマイク部4001aと、フレキシブルパイプ4001bと、イヤフォン部4001cを有する。フレキシブルパイプ4001b内やイヤフォン部4001c内に二次電池を設けることができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、身体に直接取り付け可能なデバイス4002に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。デバイス4002の薄型の筐体4002aの中に、二次電池4002bを設けることができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、衣服に取り付け可能なデバイス4003に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。デバイス4003の薄型の筐体4003aの中に、二次電池4003bを設けることができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、ベルト型デバイス4006に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。ベルト型デバイス4006は、ベルト部4006aおよびワイヤレス給電受電部4006bを有し、ベルト部4006aの内部領域に、二次電池を搭載することができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、腕時計型デバイス4005に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。腕時計型デバイス4005は表示部4005aおよびベルト部4005bを有し、表示部4005aまたはベルト部4005bに、二次電池を設けることができる。実施の形態1で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
表示部4005aには、時刻だけでなく、メールや電話の着信等、様々な情報を表示することができる。
また、腕時計型デバイス4005は、腕に直接巻きつけるタイプのウェアラブルデバイスであるため、使用者の脈拍、血圧等を測定するセンサを搭載してもよい。使用者の運動量および健康に関するデータを蓄積し、健康を管理することができる。
図28Bに腕から取り外した腕時計型デバイス4005の斜視図を示す。
また、側面図を図28Cに示す。図28Cには、内部領域に二次電池913を内蔵している様子を示している。二次電池913は実施の形態4に示した二次電池である。二次電池913は表示部4005aと重なる位置に設けられており、高密度、且つ、高容量とすることができ、小型、且つ、軽量である。
腕時計型デバイス4005においては、小型、且つ、軽量であることが求められるため、実施の形態1で得られる正極活物質100を二次電池913の正極に用いることで、高エネルギー密度、且つ、小型の二次電池913とすることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施例1)本実施例では本発明の一態様の正極活物質を作製した後、コイン型の電池セルを複数作製し、それらのサイクル特性を評価した。
本実施例で作製したサンプルについて説明する。サンプルは、ゾルゲル法での溶媒(2-プロパノールの量)以外は同じ条件及び手順で作製し、4個作製した。2-プロパノールの量は、0ml、1ml、5ml、10mlとして作製した。
それぞれのサンプルの正極活物質としては、実施の形態1に示す方法で得られる正極活物質を用いた。図5のフローに従って正極活物質100を得た。
図5に示す作製方法を参照しながら本実施例で作製したサンプルについて説明する。
ステップS14のLiMO2として、遷移金属Mとしてコバルトを有し、添加物を特に有さない市販のコバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、セルシードC-10N)を用意した。これにステップS21乃至ステップS23、ステップS41およびステップS42と同様に、固相法でフッ化リチウムおよびフッ化マグネシウムを混合した。コバルトの原子数を100としたとき、フッ化リチウムの分子数が0.33、フッ化マグネシウムの分子数が1となるように添加した。これを混合物903とした。
次にステップS43と同様にアニールした。角型のアルミナの容器に混合物903を30g入れ、蓋を配してマッフル炉にて加熱した。炉内をパージして酸素ガスを導入し、加熱中はフローしなかった。アニール温度は900℃、20時間とした。
加熱後の複合酸化物に、ステップS61-1として水酸化ニッケルを添加して乾式混合した。コバルトの原子数を100としたとき、ニッケルの原子数が0.5となるように添加した。
次にステップS61-2としてゾルゲル法での混合を行った。ゾルゲル法を適用する場合には、ゾルゲル法に用いる溶媒を準備する。溶媒としてはアセトン等のケトン、エタノールおよびイソプロパノール等のアルコール、エーテル、ジオキサン、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等を用いることができる。リチウムと反応が起こりにくい、非プロトン性溶媒を用いることがより好ましい。本実施例では、金属アルコキシドとしてアルミニウムアルコキシドを用い、アルミニウムの場合は例えば、コバルトの原子数を100としたとき、アルミニウムの原子数が0.5となるように添加した。ジルコニウムを用いる場合、ジルコニウムイソプロポキシドをはじめとするジルコニウムアルコキシド等を用いることができる。ジルコニウムの場合は例えば、コバルトの原子数を100としたとき、ジルコニウムの原子数がそれぞれのサンプル(0.1at%、0.25at%、0.5at%、1at%)となるように添加した。ゾルゲル法を行った後の熱処理であるステップS63は850℃、2時間とした。以上の工程で得られた正極活物質100をサンプルに用いた。
導電助剤としてはアセチレンブラックを用い、混合してスラリーを作製し、該スラリーをアルミニウムの集電体に塗工した。
集電体にスラリーを塗工した後、溶媒を揮発させた。その後、210kN/mで加圧を行った後、さらに1467kN/mで加圧を行った。以上の工程により、正極を得た。正極の担持量はおよそ7mg/cm2とした。
作製した正極を用いて、CR2032タイプ(直径20mm高さ3.2mm)のコイン型の電池セルを作製した。
対極にはリチウム金属を用いた。
サンプルの電解質としては、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を用いエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)をEC:DEC=3:7(体積比)、で混合した。また、添加剤として加えるビニレンカーボネート(VC)を溶媒に対して2wt%とした。
セパレータには厚さ25μmのポリプロピレンを用いた。
正極缶及び負極缶には、ステンレス(SUS)で形成されているものを用いた。
サイクル特性の評価において、充電電圧は4.7Vとした。測定温度は25℃とした。充電はCC/CV(0.5C,0.05Ccut)、放電はCC(0.5C,2.5Vcut)とし、次の充電の前に10分休止時間を設けた。なお本実施例等において1Cは200mA/gとした。
図29A及び図29Bにそれぞれのサイクル特性を示す。図29Aは縦軸を放電容量の維持率としており、図29Bは縦軸を放電容量としている。
このように本発明の一態様の正極活物質は、2-プロパノールの量が5mlのサンプルと、10mlのサンプルで4.7Vといった高電圧の充放電を繰り返しても充放電容量の低下が抑制された正極活物質であることが示された。
また、2-プロパノールの量を40mlとしたサンプルも作製したが良好なサイクル特性が得られなかった。
なお、図29A及び図29B中、比較例は、2-プロパノールの量が0mlのサンプルである。
また、コバルトに対するジルコニウムの原子数の割合(0.1at%、0.25at%、0.5at%、1at%)を変えて同様のサイクル特性を行った結果が図30A及び図30Bである。図30Aは縦軸を放電容量の維持率としており、図30Bは縦軸を放電容量としている。図30でのゾルゲル法を行って乾固させた後のアニールは850℃、2時間とした。アニールを850℃とした条件下ではジルコニウムの有無で比較した場合、ジルコニウム有の条件全てでジルコニウム無しの条件(比較例)よりも良好なサイクル特性が得られた。
特に、これらのサンプルの中では、ジルコニウムの量を0.1at%のサンプルと、0.25at%のサンプルで4.7Vといった高電圧の充放電を繰り返しても充放電容量の低下が抑制された正極活物質であることが示された。
また、上述したサンプルと同じ作製方法で作製し、コバルトに対するジルコニウムの原子数の割合(0.25at%、2at%)を変えて粉体抵抗測定を行った結果を図31に示す。
<粉体抵抗測定>
粉体抵抗測定装置(三菱化学アナリテック社製 MCP-PD51)を使用して、得られた正極活物質粒子の粉体抵抗測定を行った。測定セルに正極活物質を入れて、上部から圧縮ロッドを用いて圧力をかけて粉体を圧縮していく。このとき、圧力と体積を測定しながら、粉体に電流を流し、4探針法を用いてロレスタGPにて抵抗値を測定する。なお、粉体抵抗は密度によって異なる。
(実施例2)本実施例では図5に示したフローに従って得られた本発明の一態様の正極活物質を作製した後、セパレータ、電解液、及び負極を有するラミネート型の電池セルを作製し、そのサイクル特性を評価した。
図5に示す作製方法を参照しながら本実施例で作製したサンプル1について説明する。
ステップS14のLiMO2として、遷移金属Mとしてコバルトを有し、添加物を特に有さない市販のコバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、セルシードC-10N)を用意した。これにステップS21乃至ステップS23、ステップS41およびステップS42と同様に、固相法でフッ化リチウムおよびフッ化マグネシウムを混合した。コバルトの原子数を100としたとき、フッ化リチウムの分子数が0.33、フッ化マグネシウムの分子数が1となるように添加した。これを混合物903とした。
次にステップS43と同様にアニールした。角型のアルミナの容器に混合物903を30g入れ、蓋を配してマッフル炉にて加熱した。炉内をパージして酸素ガスを導入し、加熱中もフローした。アニール温度は850℃、60時間とした。
加熱後の複合酸化物に、ステップS61-1として水酸化ニッケルを添加して乾式混合した。コバルトの原子数を100としたとき、ニッケルの原子数が0.5となるように添加した。
次にステップS61-2としてゾルゲル法での混合を行った。ゾルゲル法を適用する場合には、ゾルゲル法に用いる溶媒を準備する。溶媒としてはアセトン等のケトン、エタノールおよびイソプロパノール等のアルコール、エーテル、ジオキサン、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等を用いることができる。リチウムと反応が起こりにくい、非プロトン性溶媒を用いることがより好ましい。本実施例で用いる溶媒として、2-プロパノールの量を10mlとした。
本実施例では、金属アルコキシドとしてアルミニウムアルコキシドを用い、アルミニウムの場合は例えば、コバルトの原子数を100としたとき、アルミニウムの原子数が0.5となるように添加した。ジルコニウムを用いる場合、ジルコニウムイソプロポキシドをはじめとするジルコニウムアルコキシド等を用いることができる。ジルコニウムの場合は例えば、コバルトの原子数を100としたとき、ジルコニウムの原子数が0.25となるように添加した。ゾルゲル法を行った後のステップS63の熱処理は850℃、2時間とした。その後、ステップS64として解砕し、回収して得られた正極活物質100をサンプルに用いた。
Zrを含む凸部を表面に複数有する正極活物質粒子、AB(アセチレンブラック)およびPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を正極活物質:AB:PVDF=95:3:2(重量比)で混合したスラリーを集電体(アルミニウム箔)に塗工したものを用いた。スラリーの溶媒としてNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を用いた。
集電体にスラリーを塗工した後、溶媒を揮発させた。その後、210kN/mで加圧を行った後、さらに1467kN/mで加圧を行った。以上の工程により、正極を得た。正極の担持量はおよそ20mg/cm2とした。
電解液が有する電解質には、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を用い、電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)がEC:DEC=3:7(体積比)、で混合されたものを用いた。なお、サイクル特性の評価を行った二次電池については、電解液にビニレンカーボネート(VC)を2wt%添加した。
セパレータには厚さ25μmのポリプロピレンを用いた。
負極には黒鉛を用い、黒鉛:カーボンナノチューブ(VGCF(登録商標)):CMC(カルボキシメチルセルロース)増粘剤:SBR(スチレン-ブタジエンゴム)が96:1:1:2となるように混合したスラリーを集電体(銅箔)に塗工した。
なお、用いた気相成長炭素繊維(VGCF(登録商標):Vapor-Grown Carbon Fiber)の代表値は、繊維径150nm、繊維長10μm以上20μm以下、真密度2.1g/cm3、比表面積13m2/gである。なお、繊維径とは、SEMで観察して、二次元的に撮影された画像から繊維軸に対して垂直方向の断面を切断面とし、この切断面に外接する真円の径のことを指す。また、真密度とは、物質自身が占める体積だけを密度算定用の体積とする密度のことを指す。また、比表面積とは、対象物について単位質量あたりの表面積または単位体積あたりの表面積のことである。
このようにして二次電池を作製したサンプル1のサイクル試験の結果を図32に示す。
測定温度は25℃とした。充電は4.5V(CCCV,0.2C、カットオフ電流0.1C)、放電は3V(CC,0.2C)で、233サイクル充放電を行った。サイクル試験の休止時間は1分とした。なお、ここでの1Cは、正極活物質重量あたりの電流値で200mA/gとした。
サンプル1の233サイクル直後において、容量維持率が95.6%となった。サンプル1の容量最大値は192.4mAh/gであった。なお、サンプル1の233サイクルまでしか測定していないため、図32に示すデータのみとなっているが、233サイクルまでの時点で良好なサイクル特性を示していることがわかる。
なお、比較例としては、Zrを添加していない正極活物質を用いている以外はサンプル1と同じである。比較例の容量最大値は188mAh/gであり、233サイクル直後において、容量維持率が91.5%であった。
(実施例3)
本実施例では、実施例1の作製条件と同じ条件で得られた正極活物質のSEM写真を図35Aに示し、その模式図を図35Bに示した。正極活物質作製時のジルコニウムは、コバルトの原子数を100としたとき、ジルコニウムの原子数が0.25となるように添加した。また、実施例1とのプロセスの違いとしては、ステップS43での加熱を850℃、60時間とした。図35Bと図1Bは同じ部分には共通の符号を用いている。
この同じサンプルを用いてハーフセルを作製し、サンプル2として、実施例1と同じサイクル試験(充電電圧4.7V、25℃のサイクル試験)を行い、得られたサイクル特性を図34に示す。サンプル2は容量最大値が223mAh/gとなった。
また、図36において、サンプル3はジルコニウムを添加しない場合のサイクル特性を示している。サンプル3は、ニッケルとアルミニウムを固相法で加えたサンプルである。サンプル3は容量最大値が230mAh/gとなった。
また、図36において、サンプル4は作製フローを図37に示す手順に従って作製したものである。図37は図4と共通するプロセスが多いが、ゾルゲル法を用いずに固相法でジルコニウムを添加している。サンプル4の容量最大値は231mAh/gとなっており、3つのサンプルの中で一番高い値を示した。サンプル4はサンプル2と比べて容量維持率が低い結果となったが、容量最大値は高かった。
本実施例では、作製フローの異なるサンプルの実験結果を示したが、結果に差はあるものの信頼性の高い結果を得ることができた。