JP7809259B2 - 水栓 - Google Patents
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Description
基材と、当該基材上にある表面層とを含んでなり、
前記表面層を備えた部分の表面は、JIS B 0681-2(2018)で定められる
二乗平均平方根高さ(Sq)が0.04μm以上1μm以下であり、
輪郭曲面のわい度(Ssk)が-1以上5以下であり、かつ
自己相関長さ(Sal)が10μm以上50μm以下である
ことを特徴とする凹凸構造を有し、
前記表面層は、撥水性であり、かつ、XPS深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、ある測定点における炭素原子濃度と、その1点前の測定点における炭素原子濃度との差の絶対値が1.0at%以下となった点を表面層の終点とし、スパッタの開始から前記終点までのスパッタ時間が5分以内である、ことを特徴とする。
本発明による水栓1は、図1に示すように、基材10と、基材10上にある表面層40とを備えてなる。部材1は、基材10と表面層40との間に、中間層30および/または着色層20をさらに含んでいてもよい。
水栓1の表面、代表的には表面層40の表面は、JIS B 0681-2(2018)で定められる、
二乗平均平方根高さ(Sq)が0.04μm以上1μm以下であり、
輪郭曲面のわい度(Ssk)が-1以上5以下であり、かつ
自己相関長さ(Sal)が10μm以上50μm以下である
ことを特徴とする凹凸構造を有する。
前記凹凸構造は、好ましくは、以下のとおりである:
二乗平均平方根高さ(Sq)が0.10μm以上1μm以下であり、
輪郭曲面のわい度(Ssk)が-1以上0以下であり、かつ
自己相関長さ(Sal)が20μm以上50μm以下である。
なお、表面層40の材料や性質(撥水性)については後述する。
部材の表面から水垢が除去される作用機序について、部材の性質、表面形状の違いに基づいて説明する。ただし、以下の説明は仮説であり、この説明により本発明は何らの制限されるものではない。
撥水材表面の水垢は濡れ広がらないため、小さく厚みのある水垢を形成する。拭き取りによる除去時には、この水垢は撥水材表面と化学結合していない場合は撥水表面と界面の剥離が発生し、摩耗により除去される親水材表面の水垢よりも容易に除去することが出来る。そのため撥水材の方が親水材よりも水垢が取れやすい。
また、親水材においては、形成される水垢は一個であっても濡れ広がった形状を取り撥水材に形成した水垢と比べて硬く、基材と強固に結合する。そのため、基材が平滑でもうねっていても拭き取り時には摩耗により除去される。
撥水材に水垢を複数回堆積させていったとき、撥水材表面で水垢は厚みを大きく増す。この時、撥水表面が平滑であった場合には、水垢の拭き取り時に剥離が発生しなくなり、摩耗により除去されるため拭き取りの負荷が大きくなる。
一方で、撥水材表面が適切なうねりを持っている場合には拭き取りにかかる負荷は大きく減少する。これは、うねり表面ではCassie-Baxterモードにより水滴の接触角が向上するとともにピン止め効果も弱まり、堆積された水垢は平滑材よりも面積が小さくなるために、基材との結合強度が小さく剥離によって容易に除去できるからである。
ただし、撥水材表面が平滑でない場合でもSskおよびSalが低い値のときには堆積した水垢が除去しにくい。そのような表面では谷部が多くかつ急峻であるため、水垢が谷の内部に形成されアンカー効果が生じることで水垢が基材と強固に結合する。
部材の表面形状の測定は、例えば以下のように行われる。
測定前に、アルカリ性洗剤を用いて部材をウレタンスポンジで軽く擦り洗いをした後、超純水にて十分にすすぎ洗いを行った。部材の表面粗さをレーザー顕微鏡OLS4500(オリンパス製)により求める。測定領域は645μm角とし、測定時には、試料表面に焦点を合わせ、高精度モードで高さ情報を取得する。測定高さの範囲は、焦点が合わなくなり画面が暗転するまでの高さを上限および下限と設定する。
表面形状の測定に使用可能なレーザー顕微鏡の構成は例えば以下のとおりである。
装置:OLS4500
製品バージョン:1.1.8
アプリケーションバージョン:1.1.8.3
光源:405nm半導体レーザー
検出系:フォトマルチプライヤー
対物レンズ:OLYMPUS MPlan APO N 20X/0.60 LEXT
測定範囲:645μm×645μm
表面形状パラメータの算出
測定した画像を、傾き補正した後にフィルタ処理を行う。傾き補正には、解析ソフトウェアの曲面補正(自動)を用いる。フィルタ処理は、表面から小さな横方向の成分を除去し、一次表面をもたらすS-フィルタを使用する。S-フィルタのカットオフ値は5μmを用いる。
表面形状パラメータの算出に使用可能な解析ソフトウェアの詳細は以下のとおりである。
OLS4500アプリケーション(バージョン:1.1.8.3)
画像処理:ソフトウェア上で画像補正、表面補正、曲面補正(自動)を行い、基材の大きな形状に由来する傾きなどを除く(プロファイル断面積:0、処理方向:XY方向)。その後、ガウシアンフィルタ(S-フィルタ:カットオフ値5μm)を用いる。
部材の表面(3次元)性状を、JIS B 0681-2(2018)で定められる二乗平均平方根高さ:Sq、輪郭曲面のわい(歪)度:Ssk、自己相関長さ:Salを指標として求める。
本発明における表面層40は、有機分子を含む撥水性の層であり、表面層40より下の基材の色味を損なわない程度に透明かつ薄い。表面層が撥水層であることで、ケイ素、カルシウム(水垢の原因物質)を含む水道水に接する水栓において、水垢の付着が抑制され、また付着した水垢を容易に除去することができる。
本発明において、表面層40は、高分子層、低分子層または単分子層であってよい。
本発明において、表面層40は、疎水基Rおよび金属元素に対し配位性を有する官能基Xを含む層であり、表面層40が単層で形成された単分子層であることが好ましく、R-Xからなる自己組織化単分子層(self assembled monolayers、SAM)であることがより好ましい。自己組織化単分子層は、分子が緻密に集合した層となるため、撥水性に優れる。
SAMの厚さは、構成分子1分子の長さと同程度となる。ここで、「厚さ」とは、SAMのZ方向に沿う長さを指す。ここで、図1において、基材10から表面層40に向かう方向をZ方向とする。SAMの厚さは10nm以下、好ましくは5nm以下、より好ましくは3nm以下である。また、SAMの厚さは、0.5nm以上、好ましくは1nm以上である。SAMの厚さがこのような範囲になるような構成分子を用いることで、基材を効率的に被覆することができ、水垢等の汚染物質の易除去性に優れた水栓を得ることができる。
本発明の好ましい態様において、表面層40は非高分子の有機配位子R-Xを用いて形成される層である。疎水基Rは、CとHとからなる炭化水素基であることが好ましい。Rの炭化水素基の骨格内に1ないし2個所で炭素以外の原子が置換されていても良い。置換される原子は、酸素、窒素、硫黄が挙げられる。好ましくは、Rの片末端(Xとの結合端ではない側の端部)はメチル基である。これによって、水栓の表面が撥水性となり、汚れの易除去性を高めることができる。
本発明において、疎水基RはCとHとからなる炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基は、飽和炭化水素基でもよいし、不飽和炭化水素基でもよい。また、鎖式炭化水素でもよいし、芳香環などの環式炭化水素を含んでもよい。Rは、好ましくは鎖式飽和炭化水素基であり、より好ましくは直鎖式の飽和炭化水素基である。鎖式飽和炭化水素基は、柔軟な分子鎖であるため、中間層を隙間なく覆うことができ、耐水性を高めることができる。Rが鎖式炭化水素基の場合は、好ましくは炭素数が6以上25以下のアルキル基である。Rは、より好ましくは炭素数が10以上18以下のアルキル基である。炭素数が多い場合には、分子同士の相互作用が大きく、SAMの分子間隔を狭くすることができ、耐水性をさらに高めることができる。
本発明において、疎水基Rはハロゲン原子、例えばフッ素原子を含有してよい。フッ素含有化合物を用いることで、高い撥水性の表面が得られる。ただし、高い水垢除去性を得るためにはハロゲン原子を含まない表面層のほうが好ましい。
本発明において、官能基Xは、ホスホン酸基、リン酸基、ホスフィン酸基、カルボキシル基、シラノール基(あるいは、アルコキシシリル基などのシラノールの前駆体)、βジオール基、アミノ基、水酸基、ヒドロキシアミド基、αまたはβ-ヒドロキシカルボン酸基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
一般式R‐Xで表される有機ホスホン酸化合物は、好ましくはオクタデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、デシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸であり、より好ましくはオクタデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、デシルホスホン酸である。さらに、より好ましくは、オクタデシルホスホン酸である。
本発明の好ましい態様によれば、表面層40と基材10との間に、または表面層40と着色層20との間に、中間層30を設けてもよい。中間層30は表面層40および基材10と良好な密着性を得ることができる。中間層30の好ましい例としては、金属原子と酸素原子とを含む層が挙げられる。中間層30において、前記金属原子は酸素原子と結合している。つまり、中間層30には、酸化状態の前記金属元素が含まれる。本発明においては、Cr、Zr、Siからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、中間層30は、下地の色味を損なわないため、表面層40と同じ程度のまたはそれ未満の厚みが好ましい。
本発明において、着色層は、着色層を有しない部材表面を対照として、着色層を有する部材表面のΔL*、Δa*およびΔb*の少なくとも1つの絶対値が0を超える色を呈する層である。本発明において、着色層は、ZrまたはCを含んでなる層であることが好ましい。本発明において、着色層は、ZrまたはCを含んでなる無機質の層であることが、部材の耐久性に優れる点で、より好ましい。
本発明において、基材の材質は特に制限されず、例えば水栓の基材として一般的に使用されているもの使用することができる。
基材10は、支持材10aを含む。支持材10aの材質は、金属でもよいし、樹脂やセラミック、陶器、ガラスであってもよい。
また、基材10には領域10bが設けられていてもよい。領域10bは、例えば、金属めっきや物理蒸着法(PVD)にて形成された、金属を含む層または炭素を主として含む無機化合物からなる層である。領域10bは、金属元素のみから構成されていてもよいし、金属窒化物(例えば、TiN、TiAlNなど)、金属炭化物(例えば、CrCなど)、金属炭窒化物(例えば、TiCN、CrCN、ZrCN、ZrGaCNなど)等の形態で含まれていてもよい。領域10bは支持材10aの上に直接形成されていてもよいし、領域10bと支持材10aの間に異なる層を含んでいてもよい。領域10bが設けられる基材10としては、例えば、黄銅や樹脂で形成された支持材10aに金属めっき処理により領域10bを設けた金属めっき製品が挙げられる。一方、領域10bが設けられない基材10としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)のような金属成型品が挙げられる。基材10の表面性状は、特に限定されるものではないが、立体形状であることが好ましい。
本発明における部材構成の特定については、先ず、表面層40を構成する元素をXPS測定により特定し、疎水基Rおよび官能基Xが存在することは質量分析により確認する。また、表面層40および中間層30の厚みはXPS測定で元素の存在比を測定しながらスパッタリングすることで確認する。次に、着色層20および基材10の特定については、断面をSEM観察することでその存在および境界を識別する。上記の測定の前には表面に付着した汚れを除去するために前処理を行う。
本発明において、測定前に水栓の表面を洗浄し、表面に付着した汚れを十分に除去する。例えば、エタノールによる拭取り洗浄、および中性洗剤によるスポンジ摺動洗浄の後、超純水にて十分にすすぎ洗いを行う。また、表面にヘアライン加工やショットブラスト加工などが施された、表面粗さが大きな水栓の場合は、測定する部位には、できるだけ平滑性の高い平面の部分を選んで測定する。平滑性の高い部分とは、粗い部分に比べて光を拡散するため、色差測定した場合に正反射成分を含まないSCE方式によるL*が5未満の点のことを指す。
表面層のRおよびXの認定
飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF-SIMS)装置には、例えば、TOF-SIMS5(ION-TOF社製)を用いる。測定条件は、照射する1次イオン:209Bi3++、1次イオン加速電圧25kV、パルス幅10.5or7.8ns、バンチングあり、帯電中和なし、後段加速9.5kV、測定範囲(面積):約500×500μm2、検出する2次イオン:Positive、Negative、Cycle Time:110μs、スキャン数16とする。測定結果として、RおよびXに由来する2次イオンマススペクトル(m/z)を得る。2次イオンマススペクトルは、横軸は質量電荷比(m/z)、縦軸は検出されたイオンの強度(カウント)として表される。
高分解能質量分析装置として飛行時間型タンデム質量分析装置(Q-TOF-MS)、例えば、Triple TOF 4600(SCIEX社製)を用いる。測定には、例えば、切り出した基材をエタノールに浸漬させ、表面層を形成するために用いた成分(RおよびX)を抽出し、不要成分をフィルターろ過後、バイアル瓶(1mL程度)に移した後に測定する。測定条件は、例えば、イオン原:ESI/Duo Spray Ion Source、イオンモード(Positive/Negative)、IS電圧(-4500V)、ソース温度(600℃)、DP(100V)、CE(40V)でのMS/MS測定を行う。測定結果として、MS/MSスペクトルを得る。MS/MSスペクトルは、横軸は質量電荷比(m/z)、縦軸は検出されたイオンの強度(カウント)として表される。
各試料の表面層の組成は、X線光電子分光法(XPS)により求める。測定前に、中性洗剤でスポンジ摺動後、超純水にて十分にすすぎ洗いを行う。XPS装置には、PHI QanteraII(アルバック・ファイ製)を用いることが好ましい。各元素を、下記の「XPSによる元素分率の測定条件」および「XPSスパッタ分析時の条件1」で測定することによりスペクトルを得る。
検出された原子の濃度は、得られたスペクトルから、データ解析ソフトウェアPHI MultiPuk(アルバック・ファイ製)を用いて算出する。得られたスペクトルは、測定された各原子の電子軌道に基づくピークに対してShirely法でバックグラウンドを除去した後にピーク面積強度を算出し、データ解析ソフトウェアに予め設定されている装置固有の感度係数で除算することで補正処理を行う。測定した元素種全ての補正後のピーク面積強度の合計に対する、ある元素の補正後のピーク面積の割合を対象の原子濃度と定義し、at.%単位で算出する。
X線条件:単色化AlKα線、25W、15kV
分析領域:100μmφ
中和銃条件:1.0V、10μA
光電子取り出し角:45°
Time Per Step:50ms
Sweep:5回
Pass energy:112eV
分析元素(エネルギー範囲):Zr3d(177-187eV)、C1s(281-296eV)、N1s(394-406eV)、O1s(524-540eV)、Cr2p3(572-582eV)、Ti2p(452-463eV)、Si2p(98―108eV)
不活性ガス種:Ar
スパッタ電圧:500V
スパッタ範囲:2mm×2mm
スパッタ間隔:10秒
なお、スパッタ電圧とはArイオン銃に印加する電圧、スパッタ範囲とはスパッタリングにより削る表面の範囲を指す。また、スパッタサイクルとは深さ方向の一測定ごとにArガスを連続して照射した時間を指し、スパッタサイクルの総和をスパッタ時間とする。
前記表面層は、スパッタ条件1のXPS測定において、ある測定点における炭素原子濃度と、その1点前の測定点における炭素原子濃度との差の絶対値が1.0at%以下となった点を表面層の終点とし、スパッタの開始から終点までのスパッタ時間が5分以内、好適には3分以内であることを特徴とする。この時間が表面層の厚さの指標となる。
本発明において、表面層40の炭素原子濃度は、好ましくは35at%以上であり、より好ましくは40at%以上であり、さらに好ましくは43at%以上であり、最も好ましくは45at%以上である。また、炭素原子濃度は、好ましくは70at%未満であり、より好ましくは65at%以下であり、さらに好ましくは60at%以下である。炭素原子濃度の好適な範囲はこれらの上限値と下限値とを適宜組み合わせることができる。炭素原子濃度をこのような範囲とすることにより、水垢易除去性を高めることができる。
本発明において、表面層40のリン原子濃度は、好ましくは1.0at%以上10at%未満である。リン原子濃度をこの範囲とすることで、表面層40は緻密であることを示している。これによって、十分な耐水性を有し、水垢易除去性に優れた水栓を得ることができる。より好ましくは、リン原子濃度は1.5at%以上10at%未満である。これによって、さらに耐水性、および水垢易除去性を高めることができる。
本発明において、中間層の存在は、XPS深さ方向分析により認定できる。先ず(スパッタ条件1)で10分間XPS測定を行い、炭素原子の検出が1点前の測定点との差が1.0at%以下となった点において、10at%以上検出される金属元素を確認する。当該元素の濃度が10分スパッタ時に3.0at%以下になった場合、当該元素の存在範囲を中間層と認定できる。当該元素の濃度が5分スパッタ時に3.0at%以下に下がらなかった場合、部材が中間層を設けていないとする。
着色層を含んでも良い基材を断面方向に切断し、イオンミリング装置を用いて断面ミリングを行い、平滑な断面を得る。この断面に対して、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDX)を用いて観察を行うことで、着色層および基材の識別ができる。観察領域は、着色層と基材が収まるようにSEM画像を取得する。そのSEM画像に対して、EDXによるマッピング分析を行うことで、着色層および基材の元素分布を視覚的に確認することができる。この元素分布の異なる境界面を、着色層および基材の境界面と識別する。
本発明の水栓は以下の工程:
(a)その表面に、JIS B 0681-2(2018)で定められる
二乗平均平方根高さ(Sq)が0.04μm以上1μm以下であり、
輪郭曲面のわい度(Ssk)が-1以上5以下であり、かつ
自己相関長さ(Sal)が10μm以上50μm以下である
ことを特徴とする凹凸構造を有する基材、または当該凹凸構造を有する着色層を備えた基材を用意する工程と、
(b)前記凹凸構造を有する基材または前記凹凸構造を有する着色層の表面に、表面層を形成する工程と
を含んでなる方法により製造されることが好ましい。
基材表面の上記凹凸構造はマイクロメートルのオーダーであり、表面層の厚みはナノメートルのオーダーであるため、上記のような製法であることが、撥水性を損ねずに表面層を形成できる。
(a1)支持材を用意する工程と、
(a2)前記支持材の表面に、JIS B 0681-2(2018)で定められる
二乗平均平方根高さ(Sq)が0.04μm以上1μm以下であり、
輪郭曲面のわい度(Ssk)が-1以上5以下であり、かつ
自己相関長さ(Sal)が10μm以上である
ことを特徴とする凹凸構造を形成し、前記基材を作製する工程と
を含む。
本発明の水栓は、その表面に、水(例えば、生活用水または工業用水)がかかる環境で用いられるものである。
(実施例1)
黄銅板にニッケルめっきを施した後に、ドライブラスト装置(製品名:ニューマブラスターSGF-4(B)、不二製作所製)を用いて表面に凹凸形状を形成し、その後クロムめっきして、基材を作製した。
ブラストの条件は次のとおりとした。すなわち、ブラストガンは直径12mmの丸ガンを使用し、エア圧を0.20MPa、投射距離を200mm、加工時間を1s/cm2とし、研磨剤はFZB120(不二製作所製)を使用した。
次いで、炭化水素基を備えてなる表面層を以下の手順により形成した。
先ず、基材の表面に存在する汚れを除去するために、アルカリ性洗剤入りの水溶液で超音波洗浄し、その後、基材表面を流水に当てて洗剤を除去した。さらに、イオン交換水に浸漬し、超音波洗浄によるすすぎ洗いをした後、エアーダスターで水分を除去した。
次に、基材を2.5M水酸化ナトリウム水溶液に50℃・5分間浸漬したのち、イオン交換水にて十分にすすぎ洗いを行った。
表面層を形成するための処理剤として、オクタデシルホスホン酸(ODPA)(製品コード:O0371、東京化成工業製)をエタノール(富士フイルム和光純薬製、和光一級)に溶解させた溶液を用いた。基材を処理剤の中に1分以上浸漬し、エタノールにて掛け洗い洗浄した。その後、乾燥機にて120℃で10分間乾燥させ、基材表面に有機層を形成させた。こうして、実施例1の部材を作製した。
黄銅板をサンドペーパー(製品名:FRCC-SDS180番、日本研紙製)により一方向のみに20回程度こすり、表面に筋状の凹凸形状を形成し、その後にニッケルクロムメッキして、基材を作製した。
次いで、この基材の表面に実施例1と同様の手順で有機層を形成させた。こうして、実施例2の部材を作製した。
サンドペーパーを別のもの(製品名:FRCC-SDS600番、日本研紙製)に変えた以外は実施例2と同様にして比較例7の部材を作製した。
黄銅板をサンドペーパー(製品名:FRCC-SDS180番、日本研紙製)により一方向のみに20回程度こすり、表面に筋状の凹凸形状を形成し、その後にニッケルクロムメッキして、基材を作製した。
次いで、フッ化炭素基を備えてなる表面層を以下の手順により形成した。
先ず、基材の表面に存在する汚れを除去するために、アルカリ性洗剤入りの水溶液で超音波洗浄し、その後、基材表面を流水に当てて洗剤を除去した。さらに、イオン交換水に浸漬し、超音波洗浄によるすすぎ洗いをした後、エアーダスターで水分を除去した。
次に、基材へ紫外光(波長:254nm、照射強度:15mW/cm2程度)を10分間照射した。
その後、シリコーン系プライマー(製品名:KBM403、信越化学製)をイソプロピルアルコール(富士フイルム和光純薬製)に溶解させた溶液を、不織布(製品名:ベンコットM3-II、旭化成製)に浸み込ませ、基材全体に塗り広げたのち、10分間自然乾燥させて中間層を形成した。
表面層を形成するための処理剤として、フッ化アルキル基を含有するコーティング剤(製品名:SURECO2101S、AGC製)を用いた。この処理剤を不織布(製品名:ベンコットM3-II、旭化成製)に浸み込ませ、基材全体に塗り広げたのち、乾燥機にて120℃で30分間乾燥させた。
こうして、実施例4の部材を作製した。
サンドペーパーを別のもの(製品名:FRCC-SDS600番、日本研紙製)に変えた以外は実施例4と同様の手順で比較例8の部材を作製した。
図2の壁付シングルレバー水栓(品番:TKS05315J、TOTO製)の下面に実施例2と同様の手順で表面凹凸および有機層を形成し、実施例6の部材を作製した。
黄銅板にニッケルクロムメッキを施した後に、自動研磨機(ビューラー製)により表面をバフ研摩し、基材を作製した。研摩粒子には、平均粒径が0.05μmのアルミナ粒を用いた。
次いで、この基材の表面に実施例1と同様の手順で表面層を形成し、比較例1の部材を作製した。
比較例1に用いた基材を使用し、この基材の表面に実施例4と同様の手順で表面層を形成し、比較例2の部材を作製した。
黄銅板にニッケルめっきを施した後に、表面をヘアライン加工し、その後クロムめっきして、基材を作製した。
次いで、この基材の表面に実施例1と同様の手順で表面層を形成し、比較例3の部材を作製した。
比較例1に用いた基材を使用し、この基材の表面に実施例4と同様の手順で表面層を形成し、比較例4の部材を作製した。
ドライブラスト装置のエア圧を0.25MPaにした以外は実施例1と同じ処理を施し、比較例5の部材を作成した。
ドライブラスト装置のエア圧を0.30MPaにした以外は実施例1と同じ処理を施し、比較例6の部材を作成した。
上記のとおり作製した各部材を試料に供して、以下の試験を行った。
乾燥炉中で50℃に加熱した各試料の表面に、水道水を200μl滴下し、液体が乾燥するまで放置した。この操作を1サイクルとした。同一の操作を再び行い、すなわち1サイクル後に形成された水垢の上にさらに水道水を滴下し、乾燥させ、2サイクル分の水垢を形成した。さらに同一の操作を繰り返し行い3サイクル、5サイクル分の水垢を作製した。水垢が形成された試料を以下の手順で評価した。
(ii)水垢の除去を確認出来れば試験を終了する。水垢の残りが存在する場合は(i)を繰り返した。
水垢除去の可否は、試料の表面を流水で洗い流し、エアーダスターで水分を除去した後、試料の表面に水垢が残存しているかを目視で判断した。
5回で除去できたとき 3点
10回で除去できたとき 2点
15回で除去できたとき 1点
15回で除去できなかったとき 0点
評価結果を表1に記載した。
上記のとおり作製した各部材を試料に供して、以下の測定を行った。
測定前に、アルカリ性洗剤を用いて各試料をウレタンスポンジで軽く擦り洗いをした後、超純水にて十分にすすぎ洗いを行った。各試料の表面粗さをレーザー顕微鏡OLS4500(オリンパス製)により求めた。測定領域は645μm角とした。測定時には、試料表面に焦点を合わせ、高精度モードで高さ情報を取得した。測定高さの範囲は、焦点が合わなくなり画面が暗転するまでの高さを上限および下限と設定した。
なお、使用したレーザー顕微鏡の構成は以下のとおりである。
装置:OLS4500
製品バージョン:1.1.8
アプリケーションバージョン:1.1.8.3
光源:405nm半導体レーザー
検出系:フォトマルチプライヤー
対物レンズ:OLYMPUS MPlan APO N 20X/0.60 LEXT
測定範囲:645μm×645μm
測定した画像は、傾き補正した後にフィルタ処理を行った。傾き補正には、解析ソフトウェアの曲面補正(自動)を用いた。フィルタ処理は、表面から小さな横方向の成分を除去し、一次表面をもたらすS-フィルタを使用した。S-フィルタのカットオフ値は5μmを用いた。
なお、使用した解析ソフトウェアの詳細は以下のとおりである。
OLS4500アプリケーション(バージョン:1.1.8.3)
画像処理:ソフトウェア上で画像補正、表面補正、曲面補正(自動)を行い、基材の大きな形状に由来する傾きなどを除いた(プロファイル断面積:0、処理方向:XY方向)。その後、ガウシアンフィルタ(S-フィルタ:カットオフ値5μm)を用いた。
各試料の表面(3次元)性状を、JIS B 0681-2(2018)で定められる二乗平均平方根高さ:Sq、輪郭曲面のわい(歪)度:Ssk、自己相関長さ:Salを指標として求めた。Sq、Ssk、Salの測定値を表1に記載した。
前記(スパッタ条件1)でのXPS測定において、炭素原子の検出が1点前の測定点との差が1.0at%以下となった点を表面層の終点とし、その1点前までのスパッタ時間を表1に記載した。
Claims (4)
- 基材と、当該基材上にある表面層とを含んでなる水栓であって、
前記基材は金属を含み、
前記水栓の、前記表面層を備えた部分の表面は、JIS B 0681-2(2018)で定められる
二乗平均平方根高さ(Sq)が0.10μm以上1μm以下であり、
輪郭曲面のわい度(Ssk)が-1以上0以下であり、かつ
自己相関長さ(Sal)が20μm以上50μm以下である
ことを特徴とする凹凸構造を有し、
前記表面層は、撥水性の、高分子層、低分子層または単分子層であり、かつ、下記「XPSによる元素分率の測定条件」および「スパッタ条件1」の各条件で測定されたXPS深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、ある測定点における炭素原子濃度と、その1点前の測定点における炭素原子濃度との差の絶対値が1.0at%以下となった点を表面層の終点とし、スパッタの開始から前記終点までのスパッタ時間が5分以内である、水栓。
XPSによる元素分率の測定条件
X線条件:単色化AlKα線、25W、15kV
分析領域:100μmφ
中和銃条件:1.0V、10μA
光電子取り出し角:45°
Time Per Step:50ms
Sweep:5回
Pass energy:112eV
分析元素(エネルギー範囲):Zr3d(177-187eV)、C1s(281-296eV)、N1s(394-406eV)、O1s(524-540eV)、Cr2p3(572-582eV)、Ti2p(452-463eV)、Si2p(98―108eV)
スパッタ条件1
不活性ガス種:Ar
スパッタ電圧:500V
スパッタ範囲:2mm×2mm
スパッタ間隔:10秒
- 前記表面層の、前記XPS深さ方向分析で得られるプロファイルにおいて、ある測定点における炭素原子濃度と、その1点前の測定点における炭素原子濃度との差の絶対値が1.0at%以下となった点を表面層の終点とし、スパッタの開始から前記終点までのスパッタ時間が3分以内である、請求項1に記載の水栓。
- 前記表面層と前記基材との間に中間層を備えてなる、請求項1または2に記載の水栓。
- 水栓の下面または背面として、その表面が適用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の水栓。
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