JP2019137594A - 水まわり部材 - Google Patents

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Saori Ukigai
沙織 浮貝
和宏 石川
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和宏 石川
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Hironori Hatono
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直生子 鳥羽
Naoko Toba
直生子 鳥羽
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Ryojiro Hijikata
亮二郎 土方
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Abstract

【課題】基材の意匠を維持し、かつ水垢易除去性に優れた水まわり部材を提供すること。
【解決手段】珪素原子(Si)を含有する無機基材と、
前記無機基材上に設けられた機能部と
を含む水まわり部材であって、
前記機能部の厚みは10nm以下であり、
前記機能部は、炭素原子を含み、
X線光電子分光法(XPS)によって測定される表面の炭素原子濃度が25at%以上70at%未満である、水まわり部材。
【選択図】なし

Description

本発明は、水まわり部材に関する。
水まわりで用いられる部材(以下、水まわり部材とも言う。)は、水が存在する環境下で用いられる。よって、水まわり部材の表面には水が付着しやすい。この表面に付着した水が乾燥することで、水まわり部材の表面に、水道水に含まれる成分であるシリカやカルシウムを含んだ水垢が形成されてしまうという問題が知られている。また、水まわり部材の表面に、タンパク質や皮脂、カビ、微生物、石鹸などの汚れが付着してしまうという問題も知られている。
水まわり部材の表面にこれらの汚れを付着させないことは困難であるため、清掃によって表面の汚れを落とし原状を回復させることが通例行われている。具体的には、洗剤や水道水を利用して布やスポンジなどで水まわり部材の表面をこするなどの作業によりこれらの汚れを落とす。水まわり部材に対して、汚れの取れやすさ、つまり易除去性が求められている。
また、水まわり部材は、高い意匠性も求められる。特に、ガラス、衛生陶器などの無機基材は、美しい外観のために水まわり部材の表面に好ましく使用される。従って、基材の意匠を損なうことなく、易除去性を付与することが求められる。
これに関して、撥水性防汚層を用いた水垢除去技術が知られている。特開2000−265526号公報には、陶器表面の水酸基をシールドする防汚層を設けることで、珪酸スケール汚れの固着を抑制することが記載されている。この防汚層は、陶器表面の水酸基とアルキル基含有有機珪素化合物、加水分解性基含有メチルポリシロキサン化合物、およびオルガノポリシロキサン化合物を混合したものを塗布・乾燥した防汚層を開示している。しかしながら、上記化合物は、(i)分子サイズが大きく、分子自体の立体障害で分子が緻密に並ぶことができない、(ii)分子同士の相互作用が弱いため、自己集積による緻密層を形成しにくいなどの理由から基材表面の水酸基を完全にシールドすることが出来ないため、特開2000−265526号公報に開示された技術では、十分な水垢付着抑制性能、および水垢易除去性能を得ることができなかった。
近年、基材形状や光学特性を損なわず、表面の濡れ性、潤滑性、接着性などの物性をコントロールすることが可能な自己組織化単分子層(SAM)も開発されている(国際公開第2004/091810号パンフレット)。また、光学部材本来の光学特性を損なうことがない厚さのフッ化炭素基を含む化学吸着単分子層からなり、部材と化学結合され、構成する分子が配向した状態で形成される薄膜が開発されている(特許第2500152号)。しかしながら、これらの文献には、水垢付着抑制および水垢易除去については何ら記載も示唆もされていない。
特開2000−265526号公報 国際公開第2004/091810号パンフレット 特許第2500152号
本発明は、基材の意匠を維持し、かつ水垢易除去性に優れた水まわり部材を提供することを目的とする。
本発明者らは、珪素原子(Si)を含有する、水まわり部材の無機基材上に設けられる機能部において、炭素原子濃度を所定値以上に高め、機能部を緻密に形成することで、基材表面の水酸基の大部分をシールドして、基材表面の水垢付着を抑制し、基材表面に付着した水垢を容易に除去することができることを見出した。本発明者らは、この知見に基づいて本発明を完成させた。すなわち、本発明は、
珪素原子(Si)を含有する無機基材と、
前記無機基材上に設けられた機能部と
を含む水まわり部材であって、
前記機能部の厚みは10nm以下であり、
前記機能部は、炭素原子を含み、
X線光電子分光法(XPS)によって測定される表面の炭素原子濃度が25at%以上70at%未満である、水まわり部材を提供する。
本発明によれば、基材の意匠を損なうことなく、水垢易除去性に優れた水まわり部材を提供することができる。
基材上に機能部を形成した本発明の水まわり部材の構成を表す概略図である。 本発明の水まわり部材において基材上に形成した機能部を分子レベルで表した概略図である。 従来技術の水まわり部材において基材上に形成した機能部を分子レベルで表した概略図である。 試料15のXPS分析により得られた炭素(C1s)スペクトルを示す。 試料15のXPS分析により得られた炭素原子濃度のデプスプロファイルを示す。 試料13および14の赤外反射吸収スペクトルを示す。
本発明の水まわり部材は、図1に示すように、珪素原子(Si)を含有する無機基材70と、無機基材上に設けられた機能部10とを含む、水まわり部材100である。無機基材70から機能部10に向かう方向をZ方向とする。無機基材70および機能部10は、Z方向にこの順に配置される。
本発明の水まわり部材の機能部は、炭素原子を含む。好ましくは機能部は、炭化水素を含み、C−C結合およびC−H結合を有している。機能部がC−C結合およびC−H結合を有することは、例えばXPSにより確認することができる(後述の図4参照)。また、X線光電子分光法(XPS)によって測定される水まわり部材表面の炭素原子濃度が25at%以上70at%未満である。
このような炭素原子濃度を有するように形成された機能部は、緻密であり、十分な水垢易除去性を有する。
炭素原子濃度は、好ましくは28at%以上である。また、炭素原子濃度は、好ましくは60at%以下であり、より好ましくは40at%以下である。炭素原子濃度をこのような範囲とすることにより、水垢易除去性を高めることができる。
炭素原子濃度が特定の範囲である場合に水垢易除去性が向上するメカニズムとしては、次のようなことが推察される。すなわち、図2(a)に示すように、水まわり部材100の表面の炭素原子濃度が25at%以上である場合には、機能部10を構成する炭化水素鎖間の間隔dが狭くなり、水垢が基材70の水酸基と結合するのを抑制するために、水垢易除去性が向上したものと推察される。炭素原子濃度が28at%以上である場合には、機能部10を構成する炭化水素鎖間の間隔dが狭くなり、さらに水まわり部材100の表面が撥水性を有することにより、水垢易除去性が向上したものと推察される。ここで「間隔d」とは、炭化水素鎖間の間隔の平均値である。
一方、特開2000−265526号公報に開示された技術において、十分な水垢付着抑制性能、および水垢易除去性を得ることができなかった理由としては、次のようなことが推察される。すなわち、図3に示すように、部材200においては、機能部10を構成する炭化水素鎖間の間隔dが広いために、水垢Sが基材70の水酸基と結合し、除去されにくくなるためと推察される。
本発明の水まわり部材の表面の炭素原子濃度は、X線光電子分光法(XPS)によって、次のようにして求めることができる。例えばX線条件(100μm、25W、15kv)、中和銃条件(emission:20μA)、イオン銃条件(beam:1.000kV、TargetEmission:7.00mA)とし、X線源(Mgkα、Alkα)の傾斜角を5°、ステップ(20ms)の条件で全元素を15.5〜1100eVの範囲でサーベイ測定することによりスペクトルを得る。スペクトルは、機能部から検出される炭素原子(C1s)など、および基材から検出される原子、例えば、ガラス基材であれば珪素原子(Si2p)、酸素原子(O1s)、錫原子(Sn3d5)などのそれぞれを含む形で測定される。得られたスペクトルから、例えばデータ解析ソフト(MultiPuk)を用いて、C1sピークを284.5eVとしてチャージ補正した後に、測定された各原子の光電子ピークから感度係数を考慮して算出した炭素原子濃度(at%)を本発明の機能部に含まれる炭素原子の緻密性を表す表面濃度として算出することができる。
測定前に、水まわり部材の表面を洗浄し、表面に付着した汚れを十分に除去する。
本発明の水まわり部材の機能部は、厚さが10nm以下であり、好ましくは5nm以下であり、さらに好ましくは3nm以下である。機能部の厚さをこのような範囲とすることで、基材の意匠を損なうことなく水垢易除去性を付与することができる。ここで、機能部の「厚さ」とは、機能部のZ方向に沿う長さを指す。
機能部の厚さを測定する方法として、X線光電子分光法(XPS)、X線反射率法(XRR)、エリプソメトリー法、および表面増強ラマン分光法のいずれかを用いることができる。例えば、XPSを用いる場合、機能部の厚さは、XPS測定とアルゴンイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により測定できる(後述の図5参照)。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、縦軸を炭素原子の原子比(単位:at%)とし、横軸をスパッタ時間として作成することができる。横軸をスパッタ時間とする分布曲線においては、スパッタ時間は深さ方向における表面からの距離に概ね相関する。Z方向における水まわり部材(機能部)表面からの距離として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したスパッタ速度と、スパッタ時間との関係から、水まわり部材(機能部)表面からの距離を算出することができる。スパッタ時間0分の測定点を、表面(0nm)とし、表面から深さ20nmの距離になるまで測定を行う。表面から深さ20nm付近の炭素濃度を基材中の炭素原子濃度とする。表面から深さ方向に炭素原子濃度を測定し、基材の炭素原子濃度よりも1at%以上高い炭素原子濃度となる最大深さを、機能部の厚さとして評価する。
本発明の水まわり部材において、機能部は珪素原子(Si)をさらに含み、好ましくはSi−O結合を介して無機基材に含まれる珪素原子(Si)に結合して、基材に固定される。これにより、水垢易除去性を長期にわたって発現させることができる。機能部が無機基材とSi−O結合を介して結合されていることは、例えば、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)や表面増強ラマン分光法により確認することができる。
本発明の水まわり部材において、機能部は、好ましくは単分子層である。機能部を単分子層とすることで、基材の意匠性を損なわずに、炭素原子濃度を高めて、緻密性を向上させることができ、十分な水垢易除去性を付与することができる。ここで、単分子層とは、有機分子で構成されており、厚さが構成分子1分子の長さと同程度の層をいう。単分子層としては、例えば自己組織化単分子層(SAM)などが挙げられる。ここで、自己組織化単分子層(SAM)とは、有機分子が固体表面に吸着する過程で基材表面上に形成される分子集合体であり、吸着分子同士の相互作用によって集合体構成分子が密に集合しているものをいう。本発明においては、単分子層を構成する有機分子は、珪素原子(Si)をさらに含み、Si−O結合を介して、無機基材に含まれる珪素原子(Si)との結合を形成して、基材に固定されているのが好ましい。
単分子層を構成する分子の炭化水素鎖は、規則的に配列され、炭化水素鎖が同じ方向に配向した構造となっていてもよいし、配向していない構造であってもよい。本発明において、機能部の炭化水素鎖は、配向していない構造であることが好ましい。配向した構造では、炭化水素鎖は直線的な形状となると考えられる。一方、配向していない構造では、炭化水素鎖は、折れ曲がった構造をとり、基材に横たわるような状態になると考えられる。したがって、配向していない構造の方が、基材上の水酸基を効率的に被覆できると考えられ、炭素原子濃度が比較的少ない場合でも、水垢汚れと基材上の水酸基の結合を阻害できると考えられる。
炭化水素鎖の配向構造については、赤外反射吸収(Infrared Reflection Absorption Spectroscopy:IRRAS)法によって、評価することができる。規則的に配列したCH2基に由来する2917cm-1および2847cm-1付近のピークが検出されるものを配向した構造、これらのピークが検出されないものを配向していない構造と判定する(後述の図6参照)。
本発明の水まわり部材は、好ましくは水まわり部材表面における水との接触角が90°以上であり、より好ましくは100°以上である。水まわり部材の表面の水との接触角をこのような範囲とすることで、水垢易除去性をさらに高めることができる。接触角は、例えば接触角計(型番:SDMs−401、協和界面科学株式会社製)を用いて求めることができる。
本発明の水まわり部材の機能部は、好ましくはフッ素原子をさらに含む。これにより水垢易除去性をさらに高めることができる。X線光電子分光法(XPS)によって測定されるフッ素原子濃度は、好ましくは20at%以下である。フッ素原子濃度をこのような範囲とすることで、分子の立体障害による炭素原子濃度の低下を抑制することができる。
本発明の水まわり部材の表面のフッ素原子濃度は、X線光電子分光法(XPS)によって、次のようにして求めることができる。例えばX線条件(100μm、25W、15kv)、中和銃条件(emission:20μA)、イオン銃条件(beam:1.000kV、TargetEmission:7.00mA)とし、X線源(Mgkα、Alkα)の傾斜角を5°、ステップ(20ms)の条件で全元素を15.5〜1100eVの範囲でサーベイ測定することによりスペクトルを得る。スペクトルは、機能部から検出されるフッ素原子(F)、炭素原子(C1s)など、および基材から検出される原子、例えば、ガラス基材であれば珪素原子(Si2p)、酸素原子(O1s)、錫原子(Sn3d5)などのそれぞれを含む形で測定される。得られたスペクトルから、例えばデータ解析ソフト(MultiPuk)を用いて、C1sピークを284.5eVとしてチャージ補正した後に、測定された各原子の光電子ピークから感度係数を考慮して算出したフッ素原子濃度(at%)を算出することができる。
本発明の水まわり部材の無機基材を構成する材料としては、ガラス、陶器、ホーロー、セラミックスなどが挙げられ、ガラスまたはセラミックスを含むことが好ましい。本発明において、無機基材は珪素原子(Si)を含む。無機基材は、1つの材料のみで構成されていてもよいし、2つ以上の材料で構成されていてもよい。無機基材の表面性状は、特に限定されるものではなく、光沢を有する鏡面、および梨地、ヘアラインなどの艶消し面に適用することができる。基材は、衛生陶器であるのが好ましい。あるいは基材は鏡であるのが好ましい。
本発明の水まわり部材が用いられる水まわりとしては、水を用いる場所であれば良く、住宅や、公園、デパートなどの公共施設などが挙げられ、浴室、洗面所、台所、便所などで用いられる。具体的には、鏡、浴室用鏡、洗面所用鏡、壁、床、扉、浴室扉、窓、浴槽、洗面器、手洗器、シャワーブースの壁、キッチンカウンター、キッチンシンク、排水口、大便器、小便器、温水洗浄便座、温水洗浄便座の便蓋、温水洗浄便座のノズルなどとして用いられることが好ましい。本発明の水まわり用部材は、浴室用鏡、洗面所用鏡、シャワーブースの壁、扉、浴室扉、浴槽、洗面器、手洗器、大便器、小便器として用いられることがさらに好ましい。
本発明の水まわり部材を製造する方法の具体例を以下に示す。
本発明においては、無機基材を洗浄した後、後述の一般式(1)で表される有機シラン化合物を含む溶液を無機基材に接触させることによって機能部を形成する。溶液を無機基材に接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、無機基材を溶液に浸漬する浸漬法、スプレーやワイピングによる塗布法、無機基材を溶液のミストへ接触させるミスト法などの方法が挙げられる。好ましくは、無機基材を溶液に浸漬する浸漬法により機能部を形成する。無機基材を溶液に浸漬する際の温度及び浸漬時間は、無機基材や有機シラン化合物の種類によって異なるが、一般的には0℃以上60℃以下、1分以上48時間以下である。無機基材に機能部を形成させた後に、無機基材を加熱することが好ましい。これによって、機能部と無機基材の結合が促進され、機能部の耐摩耗性が向上する。
また、本発明においては、基材を洗浄した後、一般式(1)で表される有機シラン化合物の蒸気を前記無機基材に接触させることによって機能部を形成してもよい。蒸気を無機基材に接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、有機シラン化合物を飽和させた加熱炉中に無機基材を設置する。蒸気に無機基材を接触させる際の温度及び時間は、無機基材や有機シラン化合物の種類によって異なるが、一般的には80℃以上250℃以下、1分以上48時間以下である。
本発明において、機能部を形成するための有機分子として、一般式(1)で表される有機シラン化合物を使用することができる。
Y−R−SiX3 (1)
ここで、Xは、互いに独立にCl、OCH3及びOC25からなる群より選ばれる。Xは、好ましくはOCH3である。Rは炭化水素基である。Rは、好ましくは炭素数が3以上25以下の炭化水素基である。R1は、より好ましくは炭素数が5以上20以下の炭化水素基である。Rは、さらにより好ましくは炭素数が9以上18以下の炭化水素基である。Yは、Cl、SO3、COOH、PO3H、NH2、CH3及びCF3からなる群より選ばれる。Yは、好ましくはCH3又はCF3である。Yは、より好ましくはCH3である。YがCH3基である場合には、より緻密な機能部を得ることができ、炭素原子濃度を高めることができる。炭素数が大きい有機シラン化合物である場合には、炭化水素基同士の相互作用が大きく、より緻密な機能部を得ることができる。一方、炭素数が大きすぎる場合には、機能部の形成速度が遅く、生産効率が悪くなる。一般式(1)で表される有機シラン化合物は、好ましくはオクタデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシランであり、より好ましくはオクタデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランである。さらに、より好ましくは、オクタデシルトリメトキシシランである。
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.サンプル作製
1−1.基材
基材として、水まわり用部材として用いられるソーダライムガラス板(試料1〜12、17、18、21および22)、シリコンウェハ(試料13および14)、および衛生陶器(試料15、16、19および20)を使用した。基材表面の汚れを除去する為に、中性洗剤入りの水溶液で超音波洗浄し、洗浄後流水で十分に基材を洗い流した。さらに、基材の中性洗剤を除去する為、イオン交換水で超音波洗浄し、その後、エアーダスターで水分を除去した。
1−2.機能部の形成
(試料1〜5、13、15および17〜19)
機能部を形成するための処理剤として、オクタデシルトリメトキシシラン及びその加水分解物を含む溶液を用いた。この溶液は、オクタデシルトリメトキシシラン及びその加水分解物、芳香族炭化水素類を含んでいる。
まず、基材を光表面処理装置(PL21−200(S)、センエンジニアリング株式会社製)の中に導入し、所定の時間UVオゾンを照射した。次に、UVオゾンを照射した基材を処理剤の中に所定時間浸漬し、炭化水素系洗浄剤にて掛け洗い洗浄した。その後、乾燥機にて所定の温度で所定時間乾燥させ、基材表面に機能部を形成した。
(試料6〜12、14、16、20および21)
機能部を形成するための原料として、オクタデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、又はデシルトリメトキシシランを用いた。
まず、基材を光表面処理装置(PL21−200(S)、センエンジニアリング株式会社製)の中に導入し、所定の時間UVオゾンを照射した。次に、UVオゾンを照射した基材を、原料を飽和させた加熱炉中で所定時間加熱して、基材表面に機能部を形成した。
(試料22)
ガラス基材上に、機能部が形成された市販品を用いた。機能部には、フッ素原子が含有されていた。
2.分析・評価方法
上記にて作成した各サンプルについて、以下の分析・評価を実施した。
2−1.水滴接触角測定
各サンプルの水滴接触角測定には、接触角計(型番:SDMs−401、協和界面科学株式会社製)を用いた。測定結果を表1に示す。
2−2.汚れの易除去性
試料1〜22で得られた各サンプルの表面に、水道水を20μl滴下し、24時間放置することにより、サンプル表面に水垢を形成した。水垢を形成したサンプルを以下の手順で評価した。
(i)サンプルの表面に水道水を適量塗布し、スポンジのウレタンフォーム面を用いて、サンプル表面に対して軽い荷重を掛けながら、10回往復摺動させた。
(ii)(i)で水垢が完全には除去できなかった場合、浴室清掃用の中性洗剤をサンプルの表面に適量塗布し、スポンジのウレタンフォーム面を用いて、サンプル表面に対して、軽い荷重を掛けながら10回往復摺動させた。
(i)の工程で除去できたものを『3』とし、(ii)の工程で除去できたものを『2』とし、(ii)の工程でも除去できなかったものを『1』として、表1にまとめた。
なお、水垢除去の可否は、サンプル表面を流水で洗い流し、エアーダスターで水分を除去した後、サンプル表面に水垢が残存しているかを目視で判断した。
2−3.機能部の緻密性評価
機能部の緻密性は、X線光電子分光法(XPS)により得られる炭素原子濃度を用いて評価した。評価前に、試料1〜22の各サンプルを、アセトンを含浸させたキムワイプ(日本製紙クレシア)にて拭取り洗浄した後、中性洗剤入りの水溶液で超音波洗浄し、洗浄後流水で十分に基材を洗い流した。さらに、基材の中性洗剤を除去する為、イオン交換水で2回超音波洗浄し、その後、エアーダスターで水分を除去することにより、表面の汚れを十分に除去した。測定装置として、PHI5000VersaProbe(アルバック・ファイ製)を使用した。測定条件は、X線条件(100μm、25W、15kv)、中和銃条件(emission:20μA)、イオン銃条件(beam:1.000kV、TargetEmission:7.00mA)とし、水まわり部材表面の測定を行うためにX線源(Mgkα、Alkα)の傾斜角を5°、ステップ(20ms)の条件で全元素を15.5〜1100eVの範囲でサーベイ測定した。
スペクトルは、機能部から検出される炭素原子(C1s)など、および基材から検出される原子、例えばガラス基材であれば、珪素原子(Si2p)、酸素原子(O1s)、錫原子(Sn3d5)のそれぞれを含む形で測定される。得られたスペクトルは、データ解析ソフト(MultiPuk)を用いて、C1sピークを284.5eVとしてチャージ補正した後に、測定された各原子の光電子ピークから感度係数を考慮して炭素原子濃度(at%)を算出した。結果を表1に示す。測定例として、試料15の炭素(C1s)スペクトルを図4に示す。
2−4.フッ素原子濃度の測定
炭素原子濃度の測定と同様の方法でフッ素原子濃度を測定した。いずれのサンプルも、フッ素原子濃度は1%以下であった。
2−5.機能部の厚さ評価
機能部の厚さは、XPSデプスプロファイル測定により評価した。XPS測定は、炭素原子濃度の測定と同様の条件で行った。アルゴンイオンスパッタ条件は、スパッタ速度を1nm/minとなる条件とした。このスパッタ速度を用いて、スパッタ時間を、Z方向の水まわり部材表面からの距離に換算した。スパッタ時間0分の測定点を、表面(0nm)とし、表面から深さ20nmの距離になるまで測定した。表面から深さ20nm付近の炭素濃度を基材中の炭素原子濃度とした。水まわり部材表面から深さ方向に炭素原子濃度を測定し、基材の炭素原子濃度よりも1at%以上高い炭素原子濃度となる最大深さを、機能部の厚さとして評価した。いずれのサンプルも、機能部の厚さは3nm以下であった。測定例として、試料15のXPSデプスプロファイルを図5に示す。
2−6.機能部構成分子の配向性評価
配向した構造については、赤外反射吸収(Infrared Reflection Absorption Spectroscopy:IRRAS)法によって、評価した。測定装置はVarian660−IR(バリアン)を用い、高感度角度可変反射IRアタッチメント(HARRICK SCIENTIFIC)を装置に装着して分析を行った。測定条件は、入射角:85°、測定器:透過MCT、積算回数:1024回、波数分解能:4cm-1、スキャンスピード:25kHzとした。測定例として、試料13および14のスペクトルを図6に示す。試料13は、2917 cm-1および2847cm-1付近にピークが検出されたことから、配向していると判定した。一方、試料14は、これらのピークが検出されなかったことから配向していないと判定した。
Figure 2019137594

Claims (17)

  1. 珪素原子(Si)を含有する無機基材と、
    前記無機基材上に設けられた機能部と
    を含む水まわり部材であって、
    前記機能部の厚みは10nm以下であり、
    前記機能部は、炭素原子を含み、
    X線光電子分光法(XPS)によって測定される表面の炭素原子濃度が25at%以上70at%未満である、水まわり部材。
  2. 前記機能部は、珪素原子(Si)をさらに含み、Si−O結合を介して、前記無機基材に含まれる珪素原子(Si)と結合される、請求項1に記載の水まわり部材。
  3. 前記機能部の厚さは5nm以下である、請求項1または2に記載の水まわり部材。
  4. 前記機能部の厚さは3nm以下である、請求項3に記載の水まわり部材。
  5. 前記機能部は炭化水素を含み、C−C結合およびC−H結合を有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水まわり部材。
  6. 水との接触角が90°以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水まわり部材。
  7. 前記機能部は、フッ素原子をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水まわり部材。
  8. X線光電子分光法(XPS)によって測定される表面のフッ素原子濃度は20at%以下である、請求項7に記載の水まわり部材。
  9. 前記無機基材は、ガラスおよびセラミックスの少なくともいずれかを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水まわり部材。
  10. 前記無機基材は衛生陶器である、請求項9に記載の水まわり部材。
  11. 前記無機基材は鏡である、請求項9に記載の水まわり部材。
  12. XPSによって測定される前記炭素原子濃度が28at%以上である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の水まわり部材。
  13. XPSによって測定される前記炭素原子濃度が60at%以下である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の水まわり部材。
  14. 水との接触角が100°以上である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の水まわり部材。
  15. 前記機能部は、単分子層である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の水まわり部材。
  16. 前記機能部において、前記単分子層を構成する分子の炭化水素鎖が配向していない、請求項15に記載の水まわり部材。
  17. XPSによって測定される前記炭素原子濃度が40at%以下である、請求項15または16に記載の水まわり部材。
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