【発明の詳細な説明】
抗侵襲剤の治療への応用
発明の背景
本発明は悪性腫瘍細胞の増殖、侵襲および転位の抑制に効用を持つ、下記の一般
式Iで表わされる一連の化合物に関する。
一般式I
?
〔式中、R3は
(ただし、PはO〜2を;mは0〜4を;およびnは0〜5をそれぞれ表わす;
Xはo、5Sso、SO□、CO,(HCN、 CHtまたはC=NRbを表わ
す(ただし、P、は水素原子、低級アルキル基、ヒドロキシ基、低級アルコキシ
基、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基またはシアノ基
を表す)かつR4およびR2はそれぞれハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロ
メチル基、低級アルカノイル基、ニトロ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基
、カルボキシ基、低級カルバルコキシ(carbalkoxy)基、トリフルオ
ロメトキシ基、アセトアミド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニ
ル基、低級アルキルスルホニル基、トリフルオロメチルチオ基、トリフルオロメ
チルスルフィニル基またはトリフルオロメチルスルホニル基を表す) ;
R2はアミノ基、モノまたはジ低級アルキル基、アミノ基、アセトアミド基、ア
セトイミド基、ウレイド基、ホルムアミド基、ホルムイミド基またはグアニジノ
基を表す;
R5はカルバモイル基、シアノ基、カルボジイル基、アミジノ基またはN−ヒド
ロキシカルバモイル基を表す; (ただし、前記低級アルキル基、低級アルキル
基を含有する前記低級アルコキシ基および前記低級アルカノイル基は1〜3個の
炭素原子を持つ。)〕癌が悪性である由縁は、侵襲と転位によって致死作用が起
きることにある。その生長力から見ても分かる通り癌細胞は侵襲と転位とを特性
としている。したがって悪性細胞のこれら機能を選択的に阻止する薬剤によって
転位を防いだり、遅(することができるはずである、化合物L651582(メ
ルク研究所、米国特許第4.590.201号)は元来コクシジウム抑制剤とし
て設計されたものであるが、これまでに正常細胞の細胞由来の増殖を抑制するこ
とが分かっていた。
L 651582は試験管内において、5−ホスホリボシルビロリン酸(PRP
P)合成を抑制し、かつギ酸エステル、ヒポキサンチン、アデニンの取り込みを
低下させたりするが、ヌクレオシド合成の新生経路、サルベージ経路によるPR
PPシンテターゼその他の酵素を直接的に抑制しなかった。
これまでの資料によると、L 651582は細胞のシグナル加工に必要な生化
学経路に働きかけて増殖や炎症を抑制する。つまり、生長を誘発するのに必要な
第二のメツセンジャーを生産するエフェクター酵素を間接的に阻害するとされて
いる。これら膜結合酵素はグアニンヌクレオチド結合タンパク(Gタンパク質)
に結び付くことによって活性化される。ホスファチジルイノシトールの加水分解
が始まる際、血小板由来生長因子(PDGF)、T細胞生長因子(TGFα)な
どの生長因子の作用を介在するGタンパク質経路を阻止する結果として、抗増殖
効果が生まれると考えられる(Berridge、 AnnRev Bioch
em、 1987; A11ende、 FASEB J、 1988; Ne
er& Clapham、 Nature、 1988)。加水分解産物である
イノシトールトリホスフェートとダイアシルグリセロールは細胞内カルシウムと
細胞内pHをそれぞれ変化させて生長を促進する。
本発明者はこの点の研究を行い、腫瘍細胞の運動能、さらに運動能によって指示
される移動と侵襲とには、同様のGタンパク質の経路が必要であるとの所見を得
た。 Fe51582の作用機序についての資料を総合すると、L 65158
2はGタンパク質の受容体活性化を防いだり、かつ/または癌の増殖、侵襲、転
位の細胞由来経路に必要なエフェクター酵素が、一連のGタンパク質によって刺
激されるのを抑制すると考えられる。
図面の説明
図2は、Fe51582(以下L651ともいう)の構造を示す図である。
図2は、オートリリン運動因子(AMF)によって刺激された化学走性に対する
Fe51の投与量依存抑止作用を示すグラフである。
AMFは5Rラス(5Rras )をトランスインフェクシッンされたラットの
胚線維芽細胞および^2058ヒト黒色腫細胞の任意、指示運動を刺激するiR
5系はヌードマウスの腫瘍を形成し、また転位する。Gタンパク質機能のモジュ
レータ−として知られている百日咳毒素(PT)で細胞を処理すると(PT、
0.5μg/s+1 2時間)、この運動能は顕著に抑制される。Fe51 (
0,03−10μg/ml)は投与量に依存する形でAMFによって刺激された
運動能を抑制した。8時間以内のブレインキュベーションによっても運動能は僅
かに抑制されたが、至適抑制を得るためにはFe51で一部中インキユベートし
なければならなかった(Oば5Rの24時間を示し;■は24時間を示し1口は
A 2058の48時間を示す) 、 Fe51は、運動能分析期間中、分析系
に保持した。トリパンブルー排除試験による細胞生存率は、95%以上であった
。この表では無処理の細胞の運動能が刺激を受けた場合に対する百分比を示して
いる。 Fe51 (1μs/ml)とPT (0,1μs/wl )とを併用
して細胞処理を行った場合の運動能抑制作用は、それぞれ単独使用の場合よりも
大きくはなかった(資料省略)。
図3は、組織培養プラスチック容器中の腫瘍細胞の付着力に対するFe51の投
与量依存抑制効果を示すグラフである。
付着力分析に先立って、細胞にFe51 (0,03−10μg/ml)を加え
て2〜48時間ブレインキュベーションしたのち、この細胞についてL651存
在下で90分間付着力分析を行った。事前処理のインキュベーションを2〜4時
間続けた後、組織培養プラスチック容器中の付着力に僅かながら投与量依存性の
抑制がみられたが、運動能の場合と同様に、薬剤を5R(グラフ中0で示す)と
A2058(グラフ中−で示す)とに−晩中暴露した後でなければ最大の付着力
抑制は認められなかった。
Fe51はまた、マトリックス成分のラミニン(lawinin )およびフィ
ブロネクチン(f 1ronectin)に対゛する細胞の付着力を低下させた
(資料省略)、細胞の拡散は顕著には低下しなかった。
表1.腫瘍細胞の付着力および運動能
に対するL651効果の可逆性の評価
運動能および付着力実験(図1.2)は、運動能と付着力に対するL651抑制
効果の可逆性を測定することを目的として、常時L651の存在下で実施した。
A2058黒色腫細胞を標準培地(DMEM/牛脂児血清(Fe2) 10χ
)で24時間培養し、生理食塩水で2回洗った後、DMEM/FC5IO%にF
e51を添加しく+)または添加しないで(=)再び24時間培養した。この後
、細胞を洗い、交換の度に標準培地のみを加えた。Fe51の「洗い出し」効果
を評価するため、処理細胞(−/+)、「洗い出し」細胞(+/−)およびコン
トロール細胞について、AMFに対する運動反応と組織培養プラスチック容器中
の付着能力を検討した(図1.2の通り)0表中のデータは、Fe51の2濃度
におけるコントロール細胞の運動能と付着力に対する百分比で表されている。画
濃度によるFe51の効果は、L651不存在下で24時間培養することにより
可逆性とすることができた。
図4は、AMF刺激世代の総イノシトールホスフェートに対するし651の効果
を示すグラフである。
A 2058細胞をL651(1Rg/■l)で24時間処理し、燐酸緩衝生理
食塩水(PBS)で洗った後、L651を添加しない3H−イノシトール含有培
地で一部中インキュベートした。採集後、塩化リチウム(LiCI 10mM)
で30分処理し、処理細胞およびコントロール細胞を15分間と120分間AM
Fに暴露した0反応が停止した後、リビッドを抽出し、Dowexアニオン交換
カラムにより総イノシトールホスフェートを単離した。120分間AMFに暴露
された後でも、L651で前処理した細胞では、イノシトールホスフェートの形
成が抑制されていた。
図5は、3H−チミジン(’H−thymidine)取り込みに対するL65
1の投与量依存性の抑制効果を示すグラフである。
A2058 (■で示す)、5R(Oで示す) 、MDA−231ヒト乳癌(ム
で示す)および0VCAR3ヒト卵巣癌(◆で示す)それぞれの細胞を、血清無
添加条件下で96ウエルのプレートによって培養し、サブコンフルエンスさせた
後、L651 (0〜10μg/+l)を添加した血清含有培地によって一部中
処理した 3H−チミジンによるパルス標識法を2時間実施した後、細胞を固定
し、チミジン取り込みを測定した。表のデータは、無処理のコントロール細胞が
取り込んだ標識チミジンに対する百分比で表している。
図6は、腫瘍細胞の増殖に対するL651の投与量依存性の抑制効果を示すグラ
フである。
A2058 (■で示す)、5R(Oで示す)、門0A−231(ムで示す)お
よび0VCAR3(◆で示す)それぞれの細胞を、L651(0〜10μg/s
l)を添加した血清含有培地中で、24ウエルのプレートにより培養した。細胞
をメタノールテ[1lli 定し、クリスタルバイオレット核染色法により染色
を行った。溶出した染色液の吸光度を測定し、細胞の種類毎の増殖を無処理のコ
ントロール細胞の増殖に対する百分比で表に示しである。
図7は、ヒト卵巣転位癌を持つヌードマウスが、L651582 50B/kg
/dで治療後生存日数が増加したことを示している。
ヌ−)’?ウスニl:: ト卵巣癌細胞(OVCAR3) 3.4x 107を
腹腔内に移植して腹膜癌腫症を作った。3週間後重篤な腫瘍のため全てのマウス
の腹部が腫張したので、治療群とコントロール群の2群に分けた。治療群には毎
日、腹腔内注射(IP)によりジメチルスルホキシド(D門SO) 60χを賦
形剤とするL65150mg/kg/dを投与し、コントロール群には、毎日I
Pにより賦形剤のみを与えた。治療開始後の生存日数を基準とする評価結果では
、総合生存日数は治療開始後7.25+/−4,4日から16.0+/−2,5
日までに延長していた。
発明の説明
癌細胞に対するL 651582の効果の研究結果は、L 651582が腫瘍
細胞の移動、侵襲、増殖に優れた効果を持ち、運動能刺激因子に優れた反応を呈
することを示している。侵襲こそ悪性疾患の特性であり、前述したように、11
11G細胞は化学誘引物質であるオートクリン運動因子に対して分泌反応を示す
(Liotta et al。
Proc Natl Acad Sci USA、 1986) 、その反面、
百日咳毒素はGタンパク質複合体に感受性を持ち、AMFに対する運動反応に介
在して、刺激を受けた運動能を抑制する効果に優れている(Stracke e
t al、 Biochem Bio−phys Res Co1.1987)
。また、A?lFはイノシトールトリホスフェートの世代を刺激して反応させる
が、百日咳毒素がこの反応を抑制する事が知られており、これからホスファチジ
ルイノシトールビスホスフェート−特異的ホスホリパーゼの活性化が示唆されて
いる(Kohn at al、 Proc Amer As5oc Caner
Res、 1988)。
この所見によって生化学経路と腫瘍の移動との結び付きが初めて証明され、現在
では、ホスホリパーゼCの活性化に介在するタンパク質と運動能との連係が転位
カスケード(転移メカニズム)の一部を構成するとみなされている。生長と運動
能の両者に介在するこの重要な経路を阻止する事ができる薬剤は新しい貴重な癌
療法であり、本発明の一般式Iで表わされる一連の化合物はGタンパク質の介在
によって転位シグナルが導入されるのを直接的に抑制する初めての新抗侵襲剤、
抗増殖剤である。
癌生物学分野では、これまでに腫瘍細胞の付着力と運動能が侵襲と転位に必要な
重要機能であることが立証されている。本発明の一般式■で表わされる化合物は
これらの機能を特異的に抑制するう一般式■の化合物の一つであるL 6515
82はヌクレオシド合成の新生サルベージの両経路を抑制するばかりでなく、さ
らにバナジウム酸塩で刺激されたイノシトールトリホスフェートがMDBK細胞
から放出され、f?lLPによる刺激を受けた多形核好中球(PMNs)内でア
ラキドン酸代謝のためシクロオキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ経路の代謝産物
が減少するのを抑制すると共に、標識を付けたカルシウムが正常細胞から放出さ
れるのも防ぐことができる。しかしながら、L 651582はこれらの経路に
関連する酵素に直接影響を与えるものではない。また、上記の効果は高モル濃度
領域で顕著である。さらに、L651582の抑制作用発現部位は、Gタンパク
質が何れかの受容体エフエフ−ター酵素と相互作用を行う部位あるいはその近傍
と考えられ、したがって、腫瘍細胞の重要機能を効果的に抑制することができる
。運動能、侵襲、付着、生長のような受容体が介在する機能は、シグナル導入段
階で本発明の化合物により阻止することも可能である。
これまでに、本発明一般式Iで表わされる化合物が悪性疾患、特に卵巣癌のよう
な固形癌の腹膜癌腫症の治療に効用があることが分かっている。 L65158
2は濃度1〜10IIMで、ヒトおよびラット由来の数系統の腫瘍についてAM
F刺激を受けた運動能を抑制すると共に、組織培養プラスチック容器に対するこ
れら腫瘍の付着力を低下させ、しかもこれらの効果は可逆性であった。
また、この系の化合物はホスホイノシチドに対するA?lFの刺激効果を減少さ
せる。実験中に行ったクローン発生分析(clonogenic assay)
では、L 651582はヒト黒色腫、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、ヒ)
T細胞リンパ腫、ネズミ白血病およびラスをトランスインフェクシゴンしたラッ
ト胚腺維芽細胞の生長を抑制したとの所見を得た。上記の抗増殖効果に加え、L
651582は腫瘍の侵襲と転位の必要条件である付着力、生長および刺激され
た運動能の抑制に優れいることが認められている。ヒト卵巣癌の腹膜癌腫症の動
物モデルでは、L 651582は一時的ではあるが悪性腹水の規模を縮少し、
これが遠因となって総合生存率が220χに上昇した。
ヒト卵巣癌は、ltI膜腔内で潜伏しながら拡大して、複数の腹腔臓器に侵襲す
る傾向があり、このため腹膜癌腫症による死亡率は高率となっているが、本発明
一般式Iの化合物による付着力、侵襲、増殖の抑止効果は卵巣癌治療に特に有用
である。L 651582の実験は、ヒト卵巣癌の病理に綿密に近づけた動物モ
デルによって実施した。このモデルでは、ヒト卵巣癌細胞をヌードマウスの腹腔
内に注入したが、ヒト腫瘍細胞はヒト患者と同一の様態で急速に腹腔内を移動浸
潤して、全てのマウスに急速に腹腔回転位が発生した。腹膜癌腫症マウスをL
651582で治療した結果、有意性の高い生存期間の延長が認められ、この使
用分野に於ける本発明の化合物の効用が立証された。
本発明の研究では、L 651582が付着力、運動能、生長の効果的な阻止剤
であることを示しているが、同時に卵巣癌腫症に対するこの薬剤の効果も非常に
特徴的な分析によって立証された。
本発明一般式Iの化合物の投与方法はリンパ腫、白血病および全ての固形腫を治
療する場合、例えば静注、経口投与、局所投与、腹腔内投与を行うことができる
し、また膜包埋剤として投与することもできる。また、癌の局所療法の場合には
、適当な賦形剤に添加することも可能で、局所投与の適応例としては基底細胞癌
、カポージ肉腫の様な腫瘍を響げるごとができる。腫瘍の再発防止には、癌細胞
が増殖している特定部位に薬剤が到達できるような組成で投与することが有利で
あり、例えば腹膜癌腫症の原因となることで知られている腫瘍の治療には、腹腔
内投与が好ましい手段である。
移行上皮癌の層内治療、歯状息肉腫の局所治療なども、部位指向タイプ療法の例
である。全身投与方法としては、持続注入法、ポーラスの非経口投与、あるいは
スローリリーズのデボ−を移植してこれから薬剤をリリーズさせことが泰げられ
る。本発明の薬剤は、細胞毒性剤および生物反応モデファイヤーを含む従来の癌
治療方法の補助療法として用いることもできるのは明白で、悪性疾患が現在の部
位から浸潤癌に移行することを防止する治療手段として用いてもよい。
本発明の組成の使用は悪性疾患の治療にみに限定されるものではなく、子宮内膜
症のような疾患において異常細胞が局所的に拡散することから生ずる症状の治療
薬として使用しても良い。
実施例1
材料
メルク研究所から結晶状のL 651582粉末の提供を受け、デメチルスルホ
キシド(DMSO)により20 mg/mlの原液を作り、アリコートを一70
℃で貯蔵した。使用の場合、その日毎に培地中(DMEM)で10 tt g/
la1溶液を調製し、必要に応じて連続希釈液を調製した。 使用した濃度領域
は0.03〜10.Otl g/mlであり、−力木発明の実験では、賦形剤の
DMSOに活性を持たせないため、すくなくとも千倍に希釈した(資料省略)。
3H−イノシトール(比活性 105 mci/mg)、’H−チミジン(比活
性 102 mci/wg)はアマージャム社(Amersham、 Arli
Arlln Heights、 IL)から、また、ドーヴエンクス(Dowe
、x)アニオン交換レジン1−x8ギ酸塩型はビオラッド社(BioRad、
Rockville Center、 NY)から購入した。運動能チェンバー
およびヌクレオポアー (nuc Ieopore)フィルター(8μ、ポリビ
ニールピロリドン不 添加)はニュウロブローブ社(Neuro Probe。
Inc、(Cabin JohL MD)から購入した。また、タイプIVコラ
ーゲンはコラボラチイブ研究所(CollaborativeRese−arc
h、 Bedford、 MA)から、さらに小量のイノシトールを含有するフ
ェノールレッド不添加IMEM [2,7HM]はナショナルインスチチュトオ
プヘルス(NIH)の培地係から入手した。
他の試薬は試薬グレードであった。
細胞、培養およびオートタリン運動因子の調製A2058ヒト黒色腫細胞系は、
ウシ胎児血清(FCS) 10χを含有するダルベツコ(Dulbeco’ s
)のモデファイドエッセンシャル培地(DMEM)を用いてサブコンフルエン
ト培養基中に保持した。AMPは簡単に説明すると、上記のA 2058細胞を
ウシ血清アルブミン(BSA) 0.01%を含有する血清無添加DMEM中で
48時間培養した後、アミコン濾過装置(Amicon filtration
system)を用いこの培地から分子量30KD以上の化合物を取り除いた
ものを濃縮して調製した(Stracke et al、 Biochem B
iophys ResCows、 1987)。本発明の分析全てにこのAMF
を使用した。
H−ラスを活性化し、これによってラッテ胚線維芽細胞を形質転換(2倍体)さ
せた系、即ち5Rを同一条件下で培養した。この系については、予め腫瘍化、転
位化表現型であることが確かめられていた。MDA−MB−231ヒト乳癌系は
ATCG (Rockville、 MD)から購入して、上記と同様に保持し
た。 0VCARa!H胞はロバートオゾルス博士(Fox Chase Ca
ncer Center、 Ph1ladetphia、 PA)から提供を受
け、FCSIOχを含有するRP旧により培養した。
細胞の運動能および付着力
細胞運動能分析についての公知の方法(Stracke etal。
Bioches Biophys Res Comm+ 1987)により、ト
リプシン−エチレンジアミン四酢酸(EDTA)でサブコンフルエント細胞を採
集し、室温で一時間放置して回復させた。
5Rの採集は、2価のカチオンを持たないPBSにEDTA 2mMを加えたも
ので行った。BSA O,1χを含有させた血清無添加培地中に細胞を再懸濁し
たが、−カニ〇〇MEM (培地)/BSA O,1χをその後の全ての分析の
コントロールとして使用した。48ウエル化学走性チエンバーに、8μヌクレオ
ポアー(nuc 1eopore)タイプIVフィルターにコラーゲンを塗布し
たものを装着し、この装置を用いて分析を三回繰り返した。チェンバーを4時間
培養した後、フィルターを取り除いて染色を行った。細胞移動の定量については
、移動する細胞数と直線的に相関することを確かめであるレーザーデンシトメー
ターを使用した。 A2058および5R細胞にL651582 [0,03〜
5゜0Mg/ml ]を添加して48時間ブレインキュベートした後、AMFに
対する運動反応を分析して両者の運動能についてのL 651582の効果を検
討した。また、トリバンプルー排除試験によって細胞の生存率を測定したところ
、平均96%以上であった。 AMFに対する反応試験は、細胞をL 6515
82各樗濃度に暴露して行い、コン1−ロールと比較した。運動能と付着力の分
析はL 651582の存在下で実施した。刺激された運動能(デンシトメータ
ーによる)の百分比は、次の弐により計算した。
付着力分析には、組織培養プラスチックペトリ皿を基質として使用した。ペトリ
皿に三枚のプレー1−をのセ、それぞれに同様に処理した細胞のアリコートを置
き、90分37°Cでインキュベートした後、付着不良の細胞をPBSでゆっく
りと洗い流し、付着細胞には染色を行った。レーザーデンシトメーターを用いて
付着力の定量を行い、結果をコントロールの付着力に対する百分比として計算し
た。
ホスファチジルイノシトール(PI)代謝の分析AMFによって刺激されたPI
代謝に対するL 651582の効果を検討した。 A2058細胞にL651
5821.0Mg/mlを添加して24時間インキュベートした後、標識法を一
部中実施した。この際、無処理のコントロールフラスコも並行して保持した。ブ
レインキュベーション後小量イノシトールI?lEM (Ll−IME?I)で
ある血清無添加の3Hイノシトールによりコントロール細胞と処理細胞について
一部中標識法を行ったが、この標識期間中、さらにはその後の代謝回転分析期間
中はL 651582の再添加を行わなかった。さらに、細胞を採集し、LiC
110mMを含有するLI −IMEM中に懸濁して30分間インキュベートし
た。代謝分析の開始時、AMFまたは血清無添加培地コントロールを細胞100
,000から成るアリコートに添加し、このアリコートを37°Cで15分間お
よび120分間インキュベートした。インキュベーション終了後、細胞を水冷P
BSで温度洗い、クロロホルムとメタノールの混液(1:2)で抽出した。ドー
ヴエックス(Dowex )アニオン交換カラムクロマトグラフから1.0Mギ
酸アンモニウム10.1Mギ酸緩衝液を溶出させて総イノシトールホスフェート
を取り除き、総イノシトールホスフェートおよび取り込まれていない細胞内の総
3H−イノシトールの定量をリガンドシンチレーション計数管によって行った。
総イノシトールホスフェートと取り込まれていない総3H−イノシトールとの比
によってデータを作成し、またこの比の標準偏差値も計算した。
生長
3H−チミジン標識法およびクリスタルバイオレット核染色法の異なる二つの方
法により、またA2058.5R1OVCAR3とMDA−231それぞれの細
胞を対象として、生長抑制の定量を行った。チミジンの取り込み分析にっては、
96ウエルのプレートに細胞15,000のアリコートを置き、血清無添加の細
胞にL 651582を増量して添加した血清含有培地を加えた。さらに24時
間後細胞にJ−チミジンによるパルス標識法を2時間行い、トリクロロ酢酸(T
CA )で沈澱する細胞をEtOH/エーテルで抽出し、続いて0.2M Na
OHにより可溶化を行った。このようにして、生長抑制の百分比を測定した。ク
ローン発生分析では、標準組織培養条件により、また増量したL 651582
の存在下でウェル(24ウェルのプレート)1個当り50,000の細胞を培養
した。培養後PBSでゆっくりと細胞を洗い、固定し、MeOH20χにクリス
タルバイオレット0.5%加えたもので染色した。過剰の染色液は水道水で除き
、結び付いた染色は0.INクエン酸ナトリウム(pH4,2)と100χEt
O1(の1:1 (v/v)混液で溶出させた。溶出液のアリコートの吸光度を
540 nsで測定し、コントロール吸光度に対する百分比で表した。
動物生存期間の検討
生後6週間の無胸腺マウスの腹腔内に、ヒト卵巣癌細胞0VCAR33,4X1
0’を移植し、3週間後全てのマウスの腹部が0VCAR3腹水のため大きく張
れているのが認められた。腹水の相対重篤度によりマウスを2群(N・4)に分
けて治療を開始し、一方にはDNSO60χ(200u 1 アリコート)中に
L65158250■g/kg/dを添加したものを、他方には賦形側のみを、
何れも毎日−同腹腔内投与した。治療開始後の総合生存期間を基準とし、治療群
の平均生存期間をコントロール群の平均生存期間で除して、相対生存改善率を計
算した。
結果
腫瘍細胞の運動能と付着力
L651582 [0,03〜5.0 μg/腫l]と細胞とを共にブレインキ
ュベーションすることの効果の検討は、A2058またはR5細胞を対象とし、
ボイデン(Boyden)チェンバー運動能装置改良型を使用して行った。L
651582に暴露開始後2〜4時間でAMFで刺激された運動能が僅かに低下
したが(資料省略)、−晩中プレインキユベーシゴンすると図2に示すように刺
激された運動能に、再現性良く55%までの投与量依存性の低下が認められた。
暴露時間をさらに延長しても(48時間以下)、AMFにより刺激された運動能
が上記以上に抑制されることはなかった。5KBRおよびMDA−231の二つ
のヒト乳癌細胞系についても、L 651582に一部中暴露した後ではAMF
に対する運動反応が抑制されるのが認められた(資料省略)。また、腫瘍細胞が
組織培養容器に付着することに対するL651582 [0,03〜5.0 μ
g/+il ]の効果を検討したところ、図3に示す通りA2058および51
1胞の付着力に投与量依存性の低下が認められた。僅か4時間のブレインキュベ
ーションで付着力が抑制されるのが認められたが、その程度はインキュベーショ
ンを一部中続けた後より低かった。さらに、検討を行った中で最大の投与量であ
る5μg/mlでは抑制の大きさも最大で、コントロールの50〜60%に達し
ていた。また、インキュベーション培地からL 651582を除くことにより
、この薬剤の運動能と付着力に与える影響が可逆であるか、不可逆であるかの点
の検討も行った(表1)。
この検討では、細胞にそれぞれL 651582またはコントロール何れかを加
えて24時間インキュベートした後、PBSで二面洗い、それぞれコントロール
またはL 651582のどちらかを添加してさらに24時間インキュベートし
た。細胞を採集して運動能と付着力の双方を検討したところ、培養培地からL
651582を取り除きさえすれば、腫瘍細胞の運動能と付着力の抑制は可逆性
であることが分かった。
ホスホイノシチドの代謝
好中球をはじめとする正常細胞を用いる研究によって、L 651582がホス
ファチジルイノシトール(PI)加水分解を阻害することが認められている(D
、Hupe+ MerckResearch Labora、tories、未
公開)、さらに、A−FがA 2058細胞のPI代謝を刺激することおよびP
!代謝と運動能が並行する投与量依存反応を示すことがかねてから分かっていた
が、今回AMPに対するこの生化学反応にL 651582が効果があることが
立証された。この検討では、細胞をL651582 [1,Ot1g/ml]と
共に24時間インキュベートし、続いて一部中8H−イノシトールによる標識法
を実施、この標識の期間中さらには代謝分析中はL 651582を再投与しな
かった。図4はL 651582がAMFで刺激されたPI加水分解を顕著に抑
制したことを示している。抑制の大きさは、同一投与量による運動能の抑制と同
様である(45χ)。また、L 651582は分析に先立つ24時間の標識期
間中あるいはその後の分析の間中存在していなっかったのであるから、この薬剤
がP1回転に与える生化学効果は、運動能と付着力に対する効果とは対照的に可
逆性が容易ではなかったことが示唆されている。この薬剤は処理されてはいるが
、刺激されていない細胞には認められるような効果を示さなかった。AMFで刺
激されたホスホイノシチド代謝がL 6515B2によって部分的に抑制された
こと、さらにはかねてから知られているようにこれが百日咳毒素によっても部分
的に抑制されることから、L 651582の作用発現部位はホスホリパーゼC
と結びついているGタンパク質の部位、あるいはその近傍であることが示唆され
ている。
生長
L 651582は間接的にヌクレオシド合成の新生経路、サルベージ経路の双
方を抑制する。L 651582の生長に対する効果は次の四つの異なる腫瘍細
胞系を対象として検討した。 A2058黒色腫、MDA−231乳癌、0VC
AR3卵巣癌および5Rで形質転換したラット胚線維芽細胞。細胞増殖の評価に
は、二つの異なる手法を用いた;3H−チミジンの取り込みおよびクリスタルバ
イオレット核染色を用いるクローン発生分析。クローン発生法を用いたのは、ピ
リミジン(特に、チミジン)代謝に対するL 651582の効果が不明であっ
たからである。図5はL 651582に24時間暴露後、全ての細胞系に新生
DNA合成のマーカーである3H−チミジンの取り込み抑制が認められたことを
示している。クローン発生分析では、L 651582に暴露する時間の長さを
、各細胞系の倍加時間に合わせて調整した。図6ではクローン発生性腫瘍細胞の
増殖に認められた投与量依存抑制を、無処理のコントロールに対する百分比に換
算して示している。
抑制の程度は細胞の種類により異なったが、A 2058を96時間培養した際
に最大の抑制(24% )が認められた。
L 651582は上記した正常細胞に対する効果の他に、HD501〜10μ
阿で腫瘍細胞に対して顕著な抗増殖特性を示した。
動物生存の検討
腹膜癌腫症を合併する卵巣癌第三期の臨床症状に正確に近づけた0VCAR3ヒ
ト卵巣癌の動物モデルを作った。
0VCAR3腹水は治療しないとヌードマウスにとり致命的である。0VCAR
3ヌードマウスをL65158250 s+g/kg/dで治療したところ、生
存期間に顕著な改善が認められた。
重篤なマウスを、L 651582で治療する群と賦形剤のみを与える群の2群
に分けた。総合生存期間は7.24±4.4日から16.0±2.5日にまで延
長し、コントロール(治療していない標準の場合に比べ)の220χに達した。
〔(邸ITi A、。
FIGtJRE 2
投与量、ug/m1
FIGURE 3
1鱒量、u glm 1
FIGURE’?
時間、静中佑
FIGUREff
投与量、 pg/m1
FIGURE6;
股1も〃3/ゆ1
FIGURE ′:F
f1口役51− 、 mg/kg/d
FIgcll?E 8
国際調査報告