JPH05201819A - フェロモン製剤を用いた交信撹乱方法 - Google Patents

フェロモン製剤を用いた交信撹乱方法

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JPH05201819A JP4285293A JP28529392A JPH05201819A JP H05201819 A JPH05201819 A JP H05201819A JP 4285293 A JP4285293 A JP 4285293A JP 28529392 A JP28529392 A JP 28529392A JP H05201819 A JPH05201819 A JP H05201819A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】本発明は夏場のフェロモンの多量化、酸化・開
裂等のフェロモンの劣化を防止すると共に春先の低温の
時期も充分な放出量を確保できるフェロモン製剤を用い
た交信撹乱方法を提供する。 【構成】この交信撹乱方法は均質な膜からなるポリオレ
フィンフィルム製容器に、液状の性フェロモン物質を春
先の低温の時期に封入し、35℃以上の場所に一定期間放
置して容器の重量の2重量%以上の性フェロモン物質を
器壁に吸収させ、これを徐放性フェロモン製剤として年
間を通じて使用するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は害虫の性フェロモン物質
(以下、単にフェロモンとする)を大気中に漂わせて害
虫の交尾行動を阻害する、交信撹乱による害虫の防除方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】害虫の防除方法の一つに、合成フェロモ
ンを大量に大気中に漂わせ、害虫の雌が放出するフェロ
モンを雄が識別できないようにして害虫の交尾行動を阻
害する、いわゆる交信撹乱方法がある。この交信撹乱方
法は害虫の総合防除の概念が一般的になっている現在、
殺虫剤の使用節減につながるものとして注目され、その
将来が期待されている。害虫は一般に春から秋にかけて
繰り返し発生するので、フェロモンによる防除は第1世
代の成虫が発生する時期にフェロモン製剤を圃場に設置
し、夏から秋を通してフェロモンを放散させる方法がと
られている。このように害虫の発生期間が長いため、害
虫の防除にはフェロモンを徐々に放散する徐放性フェロ
モン製剤が用いられている。この徐放性フェロモン製剤
には古くから様々な工夫がなされ、いくつかのタイプの
製剤が実用に供されてきた。
【0003】第1のタイプとして、一端を開放した毛細
管中にフェロモンを収納し、この開放端よりフェロモン
を放出させるようにしたものがある(米国特許第 40170
30号明細書)。これは製剤1本当たりのフェロモン担持
量が極めて少ないため寿命が短い。第2のタイプには、
フェロモンを混合したポリマー担持層に、制御層として
別のポリマー層をラミネートした積層体(米国特許第 4
160335号明細書)や、フェロモンをしみ込ませた多孔質
担体を、ポリエチレンなどの制御膜で被覆し、フェロモ
ンの外部への透過を制御したもの(特開昭59-13701号、
-59734号各公報および米国特許第4445641 号明細書)が
ある。これらの製剤はいずれも放出されずに残留するフ
ェロモンロスが大きいという点で共通している。第3の
タイプはフェロモンをマイクロカプセル化したもの(米
国特許第 2800457号、第 2800458号、第 3577515号各明
細書など)で、これはマイクロカプセル化のコストが高
いこと、その際、フェロモンの損失が少なくないこと、
表面積が大きいため放出速度が過大で寿命が短いなどの
理由により、あまり利用されていない。
【0004】第4のタイプは均質で単一の膜からなる高
分子フィルム製の細管やアンプルなどの容器にフェロモ
ンを充填したものである。このタイプにはフェロモンに
対し特定の平衡膨潤率を持つフィルム材料を用いるもの
(特開昭62−195303号公報ほか)も含まれる。この容器
は一般にポリオレフィン製の肉厚のフィルムからなるも
のが使用され、徐放性があり寿命が長い反面、器壁を膨
潤・透過して器外に発散するフェロモンの放出量が温度
に依存することから、次の問題をもたらした。すなわ
ち、フェロモン製剤を年間を通じて使用する場合、害虫
の第一世代の発生は気温の低い春先が殆どのため、この
時期での放出量を確保するために、例えば膜厚を小さく
したり、ポリオレフィンの結晶性を下げるなどしてフェ
ロモンに対するバリアー性の低いものを使用すると、夏
場の高温時での放出量が多くなり過ぎるだけでなく、製
剤外壁に浸出し滞留するフェロモン量も増加させる。こ
のため、放出量を高温の時期に合わせて調整すると、低
温時の、とくに初期の放出量が少な過ぎて能力の不足を
もたらした。また、前述したフェロモンの製剤外壁への
浸出は、これらリン翅目害虫のフェロモンが一般に炭素
数10〜22の不飽和脂肪族のアルデヒド、アセテート、ケ
トン、炭水化物およびアルコールからなっているため、
多量化、酸化・開裂などの反応を受けて変質し、これを
避けるためにバリアー性を上げると、上記と同様春先の
低温時での放出量が十分に確保されなくなった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は夏場のフェロモンの多量化、酸化・開裂等のフェ
ロモンの劣化を防止すると共に、春先の低温の時期でも
充分な放出量を確保できるフェロモン製剤を用いた交信
撹乱方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、まずポリオレフ
ィン製の中空容器にフェロモンが充填されたフェロモン
製剤では、1)器壁へのフェロモン吸収量は、フェロモ
ン製剤を放置する温度、期間によって任意に調節でき
る;2)予め器壁にフェロモンを吸収させておいた場合
には、全くフェロモンを吸収させていない場合と比べ
て、放出初期により多くの放出量が確保できる;3)フ
ェロモンを器壁に吸収させておくと、膜中のフェロモン
分子の拡散そのものも大きくなる;4)フェロモンの器
壁への吸収、とりわけ実使用温度(一般的気象条件)よ
りも高い温度で吸収させると、放出初期は過剰に吸収さ
せられた器壁中のフェロモンの影響で放出量も大きく、
また器壁中へのフェロモンの溶解性や膜中のフェロモン
分子の拡散も大きくなるために、特に低温時の放出挙動
が大きく異なる;5)高分子壁中へのフェロモン分子の
溶解により、高分子鎖は弛緩すると考えられ、その弛緩
の度合いは温度によって異なり、弛緩した高分子鎖の隙
間にフェロモン分子が入り、膨潤率が決まるわけである
が、一旦弛緩した高分子鎖が定常の状態に戻る速度は、
緊張状態から弛緩状態になる速度と比較して極端に遅
い;6)同じ膨潤率であっても、温度が高い方がフェロ
モン分子および高分子鎖の分子の揺らぎが大きいため、
高分子鎖はより弛緩した状態である;などの知見を得
た。そこで本発明者らはさらに、ポリオレフィン製のフ
ェロモン製剤の使用前に、とくに実使用温度より高温で
吸収処理を行い、容器の重量の2重量%以上のフェロモ
ンを器壁に吸収させておいたところ、フェロモン製剤が
より効果的に作用することを見出し、本発明を完成し
た。
【0007】すなわち、本発明は均質な膜からなるポリ
オレフィンフィルム製容器に、液状の性フェロモン物質
を春先の低温の時期に封入し、35℃以上の場所に一定期
間放置して容器の重量の2重量%以上の性フェロモン物
質を器壁に吸収させ、これを徐放性フェロモン製剤とし
て年間を通じて使用することを特徴とする交信撹乱方法
に関するものである。
【0008】本発明に用いられるポリオレフィン製容器
は、通常のブロー成形、二段絞り成形、押出し成形、熱
成形などによって製造される、均質な膜からなる細管、
アンプル、中空球などで、その膜厚は放出速度への影響
が大きく、 0.2〜2mmが好ましい。これが 0.2mmよりも
小さいと、高温時における膜中の透過速度が大き過ぎて
容器外壁からのフェロモンの蒸発とのバランスが崩れ、
容器外壁にフェロモンの液膜が生じてフェロモンが浸出
した状態となる。また2mmを超えると透過速度が小さ過
ぎ、特に低温時には放出量が過小になる。このポリオレ
フィン製容器の材料には、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリペンテン、およびこれらの共重合体などが例示
されるが、フェロモンの持つ分子量、分子の極性を考慮
して、ポリエチレンまたはエチレン−酢酸ビニル共重合
体などのエチレンの共重合体が好ましい。
【0009】フェロモンの上記容器器壁への吸収処理に
ついて説明すると、製剤に用いられるポリオレフィンは
一般にフェロモンに不溶であるがフェロモンを数〜数十
%吸収させることができる。従来、フェロモン製剤の材
質としては20℃の平衡膨潤率で2〜6%のものが好まし
いとされていたが、実際の膨潤量はフェロモンの種類、
ポリオレフィンの性質、温度に影響されることが明らか
になった。例えば、ポリオレフィンの結晶度が低くなる
と膨潤量は大きくなり、また同じ膨潤率でも異なる温度
条件下では製剤壁中の高分子鎖の弛緩の度合いが異な
り、温度の高い方がフェロモン分子および高分子鎖のブ
ラウン運動のためにより弛緩した状態にあると考えられ
る。したがって、同じ膨潤率であっても高温で吸収させ
た場合の方が使用温度においての高分子鎖状態になる速
度が遅く、放出初期の過剰放出が長く続くと考えられ、
その結果として低温の春先からフェロモン製剤を使用す
る場合には実使用温度より高温で吸収した方が好ましく
なる。このように、本発明においてフェロモンをポリオ
レフィン容器に吸収させるには、ポリオレフィンの性質
を考慮して、一定の温度で、ある時間吸収処理すればよ
く、それによって容器への吸収量を任意に調整すること
ができる。
【0010】さらに具体例として、エチレン−酢酸ビニ
ル共重合体製容器を用いたアルコール系フェロモンの徐
放性製剤について述べると、アルコール系フェロモンの
放出には酢酸ビニル含有率が1〜5重量%のものが好ま
しい。これが5重量%を超えると膨潤率が増大するほ
か、フェロモンと共重合体との親和性が良すぎるために
高温時にフェロモンを器壁に浸出させて劣化させること
になる。また1重量%未満のものは放出量が少なく器壁
にフェロモンを吸収させた後、放出させるにしても量的
な限界がある。なお、この酢酸ビニル含有率はフェロモ
ンの放出量自体にも影響し、これが多くなると放出量も
多くなり、低温でもある程度の放出量を確保できるが、
高温時にはフェロモンが器壁に浸出して劣化を起こし易
くなる。一方、酢酸ビニル含有率を低くすると、高温時
のフェロモンの浸出による劣化は防げるが、低温時の放
出量を確保するには多量のフェロモンを器壁に吸収させ
る必要がある。
【0011】したがって、フェロモンの望ましい吸収
量、つまりエチレン−酢酸ビニル共重合体製容器に対す
る吸収フェロモンの重量百分率(S%)は、共重合体の
酢酸ビニル含有率(C%)によっても異なり、S×Cが
3〜50(%2 )の範囲にあるのが好ましい。これは、酢
酸ビニル含有率が比較的高いときは放出速度もある程度
大きいため、低温時の放出量を大きくする必要はなく、
予め器壁に吸収させるフェロモンの量も比較的少なくて
よく、逆に酢酸ビニル含有率が低いときは高温時での必
要以上の放出を防止し、フェロモンの器壁への浸出によ
るフェロモンの劣化を完全に防ぐことはできるが、低温
時の放出量の確保が必要となるため、予め器壁に吸収さ
れるフェロモンの量を多くする必要があることを示して
いる。
【0012】既に述べたように容器に起因するパラメー
タの中でフェロモンの放出速度に大きく影響する因子は
容器の平均壁厚(mm)と酢酸ビニル含有率(重量%)が
挙げられるが、両者の関係については壁厚T(mm)と酢
酸ビニル含有率C(重量%)の積T×Cとして1〜5
(mm・%)の範囲にあるのが好ましい。これは、フェロ
モン防除を効果的に行うのに適度な吸収量を器壁に吸収
させるには、酢酸ビニル含有量が多くなれば器壁の膨潤
量も多くなるので、器壁の体積(重量)は少なくてよ
く、逆に酢酸ビニル含有量が少なくなると膨潤量が少な
くなるので、器壁の体積(重量)を増やす必要のあるこ
とを示している。
【0013】
【実施例】以下本発明を実施例および比較例によって説
明する。 実施例1 内径1.17mm、肉厚0.55mm、長さ 200mm、重量 570mgの高
密度ポリエチレン製の細管内に、ナシヒメシンクイガの
フェロモンであるZ−8−ドデセニルアセテートを 175
mg充填した後、細管の両端を閉じたフェロモン製剤を用
意した。充填時の充填長は 195mmであった。これをアル
ミ袋に包装し、40℃で14日間吸収処理をしたところ、フ
ェロモンの充填長は 155mmに減少したが製剤の重量には
全く変化はなかった。したがって、減少充填長から36mg
分のフェロモンが管壁に吸収されたことになり、これは
細管に対し 6.3重量%の吸収量となる。この製剤を1990
年3月初旬にリンゴ畑に設置し、製剤の重量を測定する
ことによって放出量を求めた結果を表1に示した。これ
より、春先の3〜4月においても放出量は充分あり、通
期にわたり均一な放出が行われたことがわかった。
【0014】比較例1 実施例1と全く同じフェロモン製剤を準備し、管壁への
フェロモンの吸収処理を行わずに、同様に1990年3月初
旬にリンゴ畑に設置し、製剤の重量を測定することによ
って放出量を求め、その結果を表1に示した。これよ
り、放出量は気温の影響を著しく受け、春先の低温時の
放出量が不足していることがわかった。
【0015】
【表1】
【0016】実施例2 内径1.22mm、肉厚0.55mm、長さ 200mm、重量 580mgの酢
酸ビニル含有率4%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の
細管内に、コドリンガのフェロモンであるE−8,E−
10−ドデカジエノールを 175mg充填した後、細管の両端
を閉じたフェロモン製剤を用意した。充填時の充填長は
195mmであった。これをアルミ袋に包装し、40℃で3日
間吸収処理をしたところ、フェロモンの充填長は 150mm
に減少したが製剤の重量には全く変化はなかった。した
がって、減少充填長から40.4mg分のフェロモンが管壁に
吸収されたことになり、これは細管に対し7重量%の吸
収量となる。この製剤を1990年10月1日にオーストラリ
アのナシ畑に設置し、製剤の重量を測定することによっ
て放出量を求めた結果を表2に示した。これより、春先
10月の低温時においても放出量は充分あり、夏場の1月
〜2月も過剰放出がなく、製剤外壁へのフェロモンの浸
出によるベタつきも全くなく、通期にわたり均一な放出
の行われたことがわかった。
【0017】比較例2 実施例2と全く同じフェロモン製剤を準備し、この管壁
へのフェロモンの吸収処理を行わずに、同様に1990年10
月1日にオーストラリアのナシ畑に設置し、重量を測定
することによって放出量を求め、その結果を表2に示し
た。これより、放出量は気温に著しく依存しており、春
先の低温時の放出量が不足していることがわかった。
【0018】比較例3 実施例2で用いたフェロモン製剤において、酢酸ビニル
含有率が12%であるほかは全く同じものを準備し、管壁
へのフェロモンの吸収処理を行わずに、同様に1990年10
月1日にオーストラリアのナシ畑に設置し、重量測定を
行うことによって放出量を求め、その結果を表2に示し
た。この製剤は春先低温時の放出量は充分であるが、12
月以降気温の上昇と共に放出量が過大になっていてフェ
ロモンが無駄に放出されている。そればかりでなく製剤
の外壁にフェロモンが浸出してベタベタし、ゴミ、ホコ
リの付着も激しく、そのためか1月〜2月においては放
出速度が落ち込む結果となった。
【0019】
【表2】
【0020】実施例3 内容積5ml、平均肉厚 0.8mm、重量 1.7gの酢酸ビニル
含有率3%のエチレン−酢酸ビニル共重合体製アンプル
に、Variegated Leaf Roller(VLR)の性フェロモン
であるE−11−テトラデセノールを 300mg充填したフェ
ロモン製剤を1000個用意した。それぞれをアルミ袋に包
装し40℃で1週間吸収処理をした。処理前と処理後の製
剤の重量変化はなかった。このうち3個を取り出して、
充填したフェロモンを抜き出し、アンプルの内壁を5ml
のエーテルで3回洗浄した後、アンプルの重量を測定し
たところ、充填前の空アンプルの重量よりも3個の平均
で50mgほど増加していた。したがって、アンプルに対し
2.9重量%のフェロモンが器壁に吸収されたことにな
る。この製剤を1990年4月12日に米国のりんご畑に 300
個/ha の割合で約3ha設置しVLRの防除を行った。そ
の結果、性フェロモン誘引トラップによる誘引阻害率は
4月から3ヶ月にわたり95%以上、被害果率もフェロモ
ン製剤無処理区2%に対しフェロモン製剤処理区は 0.3
%というように、非常に高い防除効果が認められた。
【0021】
【発明の効果】このように本発明の交信撹乱方法によれ
ば、夏場の高温時のフェロモンの劣化、特にフェロモン
の製剤外表面浸出による劣化を防ぐことができ、また春
先の低温時の放出に対しては製剤壁に一定量以上のフェ
ロモンを吸収させることにより充分な放出量を確保でき
る。したがって、本発明によれば年間を通じて交信撹乱
に優れた防除効果が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 昭 新潟県中頸城郡頸城村大字西福島28番地の 1 信越化学工業株式会社合成技術研究所 内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】均質な膜からなるポリオレフィンフィルム
    製の容器に液状の性フェロモン物質を春先の低温の時期
    に封入し、35℃以上の場所に一定期間放置して容器の重
    量の2重量%以上の性フェロモン物質を器壁に吸収さ
    せ、これを徐放性フェロモン製剤として年間を通じて使
    用することを特徴とする交信撹乱方法。
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