JPH05279812A - 耐応力腐食割れ特性に優れた高強度ばね用ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

耐応力腐食割れ特性に優れた高強度ばね用ステンレス鋼およびその製造方法

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JPH05279812A
JPH05279812A JP4103696A JP10369692A JPH05279812A JP H05279812 A JPH05279812 A JP H05279812A JP 4103696 A JP4103696 A JP 4103696A JP 10369692 A JP10369692 A JP 10369692A JP H05279812 A JPH05279812 A JP H05279812A
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JP
Japan
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less
stress corrosion
corrosion cracking
steel
stainless steel
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JP4103696A
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English (en)
Inventor
Shigeto Hayashi
茂人 林
Yoshihiro Uematsu
美博 植松
Sadao Hirotsu
貞雄 廣津
Hideki Tanaka
秀記 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高強度を保持したまま耐応力腐食割れ特性に
優れたステンレス鋼材料を得る。 【構成】 重量%において,C:0.03%以下, Si:1.0
%超え〜3.0%, Mn:2.5%以下, Ni:4.0〜10.0%,
Cr:13.0〜20.0%,N:0.06〜0.30%以下,S:0.007
%以下, O:0.007%以下, さらに場合によっては 1.0
〜3.0%のMoまたは0.5〜3.0%Cuを1種又は2種, さ
らにはTi,Nb,Vを0.1%〜1.0%の範囲で1種又は2種
以上含み,且つ本文記載の(1) 式に従うM値が30以上と
なるように各成分が調整され,残部がFeおよび不可避
的不純物からなるステンレス鋼である。このステンレス
鋼は, 通常の熱間圧延工程および冷間圧延工程を経たう
え焼鈍後に25%以上の圧下率で冷間圧延を施して鋼板と
し,成形前または後に 100℃以上300℃未満の温度範囲
で10分間以上の時効処理を施すことによって製造され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は, 高強度を必要とし耐応
力腐食割れ特性が要求される部材に適合するステンレス
鋼およびその製造方法に係り,本発明に係るステンレス
鋼は,応力腐食割れ環境で使用されるステンレスばね
材,例えば石油ボイラー型給湯機や電気温水機等に使用
される支えばね, 海洋レジャー用のオートファスナー,
自動車やオートバイ等のエンジンを構成する金属ガスケ
ット部分, すなわちエンジン用ガスケット材などに好適
な材料である。
【0002】
【従来の技術】従来, 高強度ばね用素材として,準安定
オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS301系鋼が主に
用いられている。SUS301系鋼は冷間加工を40%以上施す
と簡単に強度が得られ, 更に400℃以上で時効処理する
ことで高強度が得られることから各種のばね用材料とし
て用いられてきた。
【0003】SUS301系ステンレス鋼をこれらの用途に適
用する場合には, 板厚0.1〜1.0mm程度の薄板から板ばね
形状のものを作ったり, 或いは成形加工を施すのが通常
である。一般に, この種の高強度材料は応力腐食割れの
発生するような環境では割れが発生するので,このよう
な場合には,強度の低いものが適用されてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】応力腐食割れ環境で使
用されるばね材の分野には, 例えば石油ボイラー型給湯
機, 電気温水機等に使用される支えばね, 海洋レジャー
用のオートファスナー,自動車やオートバイ等のエンジ
ンを構成する金属ガスケット部分 (エンジン用ガスケッ
ト材) などがある。特にオートファスナーは海水中で使
用されることがあり,またエンジン周辺の金属ガスケッ
トでは燃焼排気ガス中の結露水や冷却水中に存在するC
l-などに接触することにより,塩溶液中での応力腐食割
れが問題となる。
【0005】SUS301やSUS301Lのステンレス鋼では,前
述のように高強度にするには強度の冷間加工を施す必要
があり,高強度にすると時効処理後において著しく耐応
力腐食割れ特性が劣るようになる。したがって, 耐応力
腐食割れ特性が要求される分野では高強度の状態では使
用できない。このために目標とするばね特性, 強度が得
られず,板厚を厚くしたり複雑な形状に成形加工したり
することが余儀なくされ, ばね部材の設計に大きな負担
を強いる結果となっていた。
【0006】本発明はこのような問題を解決し,応力腐
食環境で使用されるばね部品において, 高強度で且つ耐
応力腐食割れ特性に優れた材料を得ることを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば,重量%
において,C:0.03%以下, Si:1.0%超え〜3.0%,
Mn:2.5%以下, Ni:4.0〜10.0%,N:0.06〜0.30
%,Cr:13.0〜20.0%,S:0.007%以下,O:0.007
%以下を含み,場合によっては1.0〜3.0%のMoまたは
0.5〜3.0%のCuの1種又は2種を含み,さらに場合に
よってはTi,Nb,Vの1種または2種以上を0.1%〜1.0
%の範囲で含み,且つ M=330−(480×C%)−(2×Si%)−(10×Mn%)−(1
4×Ni%)−(5.7×Cr%)−(320×N%) の式に従うM値が30以上となるようにC,Si,Mn,Ni,
Cr,N量が調整されており, 残部がFeおよび不可避的
に混入してくる不純物からなる耐応力腐食割れ特性に優
れた高強度ばね用ステンレス鋼を提供する。
【0008】本発明に従う耐応力腐食割れ特性に優れた
高強度ばね用ステンレス鋼は,通常の熱間圧延工程およ
び冷間圧延工程を経たうえ,最終焼鈍後に25%以上の調
質圧延を施こし,成形加工前または後において,100℃
以上300℃未満の温度範囲で10分間以上の時効処理を施
すことによって有利に製造できる。
【0009】
【作用】発明者らは前記の目的を達成すべく種々の試験
研究を重ねてきた。その結果,SUS301と同等のばね特性
やステンレス用素材として必要な他の特性を維持しなが
らも, より高強度でかつ耐応力腐食割れ特性を具備させ
ることができることを見い出した。特に,応力腐食割れ
特性は強度よりも時効処理温度の影響が大きいことを知
見し, さらに, 高強度でかつ従来材よりも優れた応力腐
食割れ特性とするためには,SUS301よりも低Cとし,且
つ適量のSiを含有させることが望ましいことがわかっ
た。
【0010】より具体的には,SUS301に比べ低Cとし,
これによって生ずる加工硬化の低下分をNで補い且つN
添加による時効硬化度の上昇を有効に活用するのであ
る。加えて,適量のSiを添加すると冷間加工によって
生じるマルテンサイト相を緻密かつ微細に分布させるこ
とができ,これによって鋼を強化でき,時効処理による
強度上昇を大きくすることができる。このため軽度の冷
間加工でも,より高強度が実現される。このようなこと
から,低温の時効でも高強度が発現できるとともに, 10
0℃以上300℃未満の温度で時効処理することにより,高
強度で耐応力腐食割れ特性に優れた材料が得られる。
【0011】またTi,Nb,Vを適量添加することによっ
て時効による強度上昇が発現され,Mo,Cuの添加によ
って耐応力腐食割れ特性が一層改善される。
【0012】さらにM値による適度なγ安定度に調整す
ることにより,適量のSi,Nの添加とあいまって,100
℃以上300℃未満の低い温度での時効処理でも従来鋼よ
りも優れた時効硬化作用をもたらす。
【0013】本発明に従うばね用ステンレス鋼における
各成分の作用と各成分の含有量範囲の限定理由を個別に
説明すると次のとおりである。
【0014】〔各成分の作用と含有量範囲の限定理由〕
【0015】Cはオーステナイト生成元素で,高温で生
成するδフエライトの抑制, 冷間加工(実質的にオース
テナイト相を呈する焼鈍状態からの調質圧延,特別のこ
とがないかぎり冷間加工とは以後これを指す)で誘発さ
れたマルテンサイト相の強化に極めて有効である。しか
し, あまりC量を高くすると, 調質前の焼鈍あるいは時
効処理の条件によっては炭化物の析出を伴うおよれがあ
る。このためCは0.03%以下とする。
【0016】Siは,脱酸剤として有効であるが,さら
に冷間加工によるマルテンサイト相の誘発および強化す
る上で重要な元素であるとともに,低温での時効処理に
よる硬化の上でも重要な元素である。また優れた耐応力
腐食割れ特性を付与するためにも重要な元素である。そ
の効果を発揮するためには少なくとも1.0%超える量を
必要とする。しかしあまり高くするとδフエライト相の
生成を助長するとともに, 後述の図1に見られるよう
に,Si添加による耐応力腐食割れ特性の改善効果は3.0
%付近で飽和する傾向が見られるので,その上限量を
3.0%とする。
【0017】Mnは脱酸剤としても有効に働くがオース
テナイト相の安定度を支配する元素で,その活用は他の
元素とのバランスのもとに考慮される。本発明鋼では2.
5%までのMn量での活用が図られる。
【0018】Crは,ばね部品の耐食性を確保するうえ
で必須の成分である。意図する耐食性を付与するのに
は,少なくとも13.0%以上のCrを必要とする。しかし,
Crはフエライト生成元素でもあるので,高くしすぎる
と高温でδフエライトが多量に生成してしまう。そこ
で, δフエライト相抑制のためにオーステナイト生成元
素 (C,N,Ni,Mn,Cuなど)をそれに見合った量で添
加しなければならなくなるが,オーステナイト生成元素
を多く添加すると今度は室温でのオーステナイト相が安
定し,冷間加工後あるいは時効処理しても高強度が得ら
れなくなる。このようなことからCrの上限は20%とし
た。
【0019】Niは高温および室温でオーステナイト相
を得るために必須の成分であるが,本発明の場合, 室温
で準安定オーステナイト相にしてより良好な成形性を得
るため,低い冷間加工で適度なマルテンサイト相を誘発
させ, 高強度が得られるようにしなければならない。本
発明鋼ではNiを4.0%より低くすると,オーステナイト
相中に,高温でδフェライト相が,また室温で焼入れマ
ルテンサイト相がかなり生成する場合があり,この場合
には,加工誘起マルテンサイトの元となるオーステナイ
ト相の割合が不足するので好ましくない。またNiが10
%を越えるとオーステナイト相が安定になりすぎて冷間
加工でマルテンサイト相が誘発されにくくなる。このた
めNi量は4.0〜10.0%とした。より好ましくは5.0〜8.0
%である。
【0020】Moは,鋼のベース硬さを上昇させるとと
もに時効処理後の硬さを上昇させ高強度を得る上で有効
に作用し耐応力腐食割れ特性向上にも有効である。しか
しフエライトフォーマーであるために多量に添加すると
δフエライト相を晶出させ,かえって強度低下の要因と
なるので上限を3.0%とした。
【0021】Cuは, 時効処理の際にSiとの相互作用に
より鋼を硬化させるとともに, 著しく耐応力腐食割れ特
性を改善するが,少なすぎるとその効果は小さく多すぎ
ると熱間加工性を阻害し, 割れの要因となる。このため
0.5〜3.0%とした。
【0022】Ti,Nb,Vは, 時効処理後の硬さを上昇さ
せる上で有効に作用する。この作用を発現させるために
は0.1%以上の添加を必要とする。しかし, 必要以上に
添加すると,多量の非金属介在物を生成し疲労強度の低
下, 表面清浄の悪化につながるのでそれぞれの上限を1.
0%以下とする。
【0023】Nは,Cと同様にオーステナイト生成元素
であると共にオーステナイト相およびマルテンサイト相
を硬化するのに有効な元素である。またCに比べ析出物
を形成しにくいため, 耐久性の面からも有効である。こ
のためCに変えて少なくとも0.06%を添加する。しかし
多量に添加するとブローホールの原因となるので0.30%
以下とした。より好ましくは0.06〜0.20%とした。
【0024】Sは, Mnとの共存のもとにMnSを生成
し,延性および曲げなどの加工性の低下をもたらすので
0.007%以下とする。なお薄板で成形加工の厳しい領域
ではさらにMnおよびSは低い方が好ましく, Mn量は0.
5%未満, S量は0.004%以下が好ましい。
【0025】Oは, 疲労破壊の起点となる非金属介在物
を形成しやすい元素であり, 特に,Al,TiなどのOと親
和力の元素を含むときは顕著となる。このためOは低い
程好ましいが,0.007%以下であれば目的は達成できる
ので0.007%以下とした。
【0026】M値:30以上について,C,Si,Mn,Ni,C
r,Mo,CuおよびNについて, それぞれ上記の範囲で含
有させるが,下記(1)式に従うM値が30以上となるよう
に各成分を調整する。 M=330−(480×C%)−(2×Si%)−(10×Mn%)−(14×Ni%)− −(5.7×Cr%)−(5×Mo%)−(14×Cu%)−(320×N%) ・・(1) (1) 式における各成分の定数は,本発明鋼の開発中に実
験室的に確定されたものである。このM値はオーステナ
イト安定度の指標となるもので, 30より低い値では冷間
圧延後あるいは時効処理後に高強度を得るためには,室
温で60%以上の強圧下率を施す必要があり, この場合に
は延性が低下する。したがって, 成形加工性を確保する
にはM値を30以上にする必要がある。
【0027】本発明鋼は,以上の範囲に化学成分は調整
されるが,本発明には前述の成分以外に脱酸材として添
加されるAl, 脱硫剤として添加されるCaやREM, 熱間
加工性改善効果のあるB (0.01%以下) などの他, 不可
避的に混入する不純物を含有することができる。ただ
し, Alは高強度でかつ疲労強度の高いものが要求され
る場合は使用しないか,あるいは鋼中に非金属介在物を
形成しない程度の量とすることが望ましい。
【0028】上述の各成分含有量の範囲に調整された本
発明に従う鋼は,その組織状態は溶体化処理状態で実質
的にはオーステナイト組織を呈する。この状態で冷間圧
延を施すことにより, より高強度で目的とする優れた成
形加工性と耐応力腐食割れ特性を備えたばね部品として
の適材を得ることができる。
【0029】〔本発明鋼の製造条件〕冷間圧延は,目標
の強度レベルを得るために少なくとも25%以上の圧延率
が必要である。圧延率の上限については特に限定されな
いが,本発明鋼の場合には,従来鋼よりも低い圧延率で
も目標強度が達成されること,また,できるだけ良好な
成形加工性を確保する意味から,圧延率の上限は60%前
後が適当である。
【0030】冷間圧延された鋼帯は,さらにばね部品と
しての強度特性を一層発現するために,鋼帯のままある
いは所望のばね部品に成形加工後に時効処理を施す。本
発明における時効処理の温度は100℃以上300℃未満であ
る。
【0031】時効処理温度の範囲を100℃以上300℃未満
とするのは,本発明鋼ではSi,Nの添加, 場合によって
はさらにMo,Cuの添加により, 従来鋼に比べてより低
温の時効でも優れた時効硬化能を有し, したがってより
高強度が得られること,および, より優れた耐応力腐食
割れ特性を得るためには, より低温時効が好ましいから
である。時効温度が300℃以上では,後述の図2の結果
に見られるように優れた耐応力腐食割れ特性が得られな
い。しかし,100℃より低い時効温度では目的とする高
強度が得られない。
【0032】この温度範囲の時効処理を10分以上行う。
これ以下の短時間では時効処理の効果が十分には得られ
ない。なお時効処理時間の上限は特には限定されない
が,製造コスト面から考えると1時間前後が好ましい。
【0033】このようにして得られた鋼は,冷間圧延状
態(調質圧延状態)での延性が高くかつその時効処理材
は優れた耐応力腐食割れ特性が得られるため,高強度で
かつ耐応力腐食割れ特性を必要とする例えば海水中で使
用されるオートファスナー,自動車やオートバイ等のエ
ンジン周辺の金属ガスケットに適用された場合,加工部
の割れを防止するとともに,応力腐食割れを防止し長期
間の使用に耐え得ることができる。
【0034】〔作用の要約〕このように適度な冷延圧延
率と時効処理によって高強度と耐応力腐食割れ特性を付
与したところに本発明の特徴がある。その作用をより具
体的に述べると,冷間加工によって誘発されたマルテン
サイト相の微細化および強化に寄与するSiを1.0%を超
え3.0%以下と高くしたから,冷間加工状態で強度, 延
性に富んだ材料が得られる。
【0035】さらに,M値による適度なγ安定度の調整
とSi添加により軽圧延でより緻密なマルテンサイト相
が生成する。またNの添加によるSiとNの作用で低温
時効処理でも時効による強度が上昇する。加えてCuの
添加により時効処理による強度上昇が大きくなる。これ
によって,冷間圧延率を低く保つことが可能となり,成
形加工性が改善された。
【0036】また,耐応力腐食割れ特性に対してはSi
量と時効処理温度が作用するが,適量のSi添加と時効
処理温度を300℃未満とすることで優れた耐応力腐食割
れ特性が付与される。さらにMo,Cuの添加により, 一
層の耐応力腐食割れ性の向上が図れる。
【0037】以下に実施例によって本発明の効果を具体
的に示す。
【0038】
【実施例】表1に示す成分の本発明鋼(N1〜9) ,従
来鋼 (A) ,比較鋼(a,b)を通常の大気溶解炉で溶
製し,熱間圧延を施した後, 冷延, 焼鈍, 酸洗あるいは
光輝焼鈍を行い,最終板厚が0.25mmとなるように表2に
示す各圧延率で最終調質圧延し,板厚0.25mmtのサンプ
ルを採取した。
【0039】得られた冷延鋼板サンプルの機械的性質を
調べ, その結果を表2に示した。また,各鋼板に 250℃
×30分の時効処理を施した後,それらのサンプルについ
て機械的性質並びに耐応力腐食割れ特性も調べた。これ
らの結果も表2に併記した。
【0040】表2中のΔTsは時効処理前後の引張強さ
の差を表す。耐応力腐食割れ特性の測定は,時効処理材
から0.25mmt×10mm幅×80mm長さの短冊板を切り出し,
表面応力140kg/mm2の曲げ応力を付与した状態で, Cl-1
00ppmの試験液中に試験温度200℃で浸漬し,割れ発生ま
での時間で評価した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】表2の結果から次のことが明らかである。
なお,ばね材としては高強度であることが望ましく,時
効処理後の引張強さで少なくとも150kg/mm2以上の強度
を目標とした。
【0044】従来鋼A(SUS301)では高強度のものは伸び
が低い。これは,時効処理後に高強度を得るためには,
時効硬化度 (ここではΔTsに対応する)が小さいの
で,時効処理前の調質圧延率を高く取る必要があるため
である。比較鋼aは本発明の成分範囲内ではあるが,本
発明で規定するM値が30以下の鋼である。このため,充
分な強度を得るには調質圧延率を高く取る必要がある。
この結果低い伸びとなっている。したがって,これらは
いずれも高い強度を得る場合には伸びが犠牲になり,成
形加工性が劣るようになる。
【0045】これに対し,本発明に従う実施例N1〜9
の鋼においては,焼鈍後に表2に表示の調質圧延率のも
とで調質圧延した材料では,時効前で高い伸びを示し,
時効処理後に高強度を示す。また時効処理後でも従来鋼
に比べて良好な伸びを示している。
【0046】時効処理による引張強さの上昇量ΔTs
は,本発明の鋼ではいずれも15kg/mm2以上を示してい
る。これは, M値を適度なγ安定度の調整並びにSiお
よびNの添加によってもたらされている。すなわち, 本
発明で規定するM値を30以上とし且つSiとN量を本発
明で規定する下限値以上に含有させることによって,低
い時効処理温度でも充分な時効硬化能を発現させること
ができた。
【0047】このことは,時効処理前の強度は従来鋼よ
り低くても, 時効後は同等以上の強度が得られることを
意味している。このため時効処理前の調質圧延率は低く
することができる。例えば時効処理後の強度レベルが,
引張強さで155kg/mm2 近辺のN2-2 と従来鋼A-2や比較
鋼b-1と対比すると,N2-2 では著しく高い高い伸びを
示している。このN2-2 は, A-2やb-1に比べ調質圧延
率は低いし,冷延ままでも著しい伸びを示す。したがっ
て,時効処理前または後でも成形加工性が良好である。
【0048】一方, 耐応力腐食割れ特性について見ると
250℃×1hrの時効後における耐応力腐食割れ特性は,
本発明鋼は従来鋼や比較鋼に比べて, その絶対値におい
て格段のものがある。とくに,従来鋼では強度が高くな
るにつれて耐応力腐食割れ特性は低下する傾向を示すの
に対し, 本発明鋼のSi添加鋼では, 例えばN1-2に見ら
れにように,高い強度でも著しい耐応力腐食割れ特性を
示す。なおSiが1%以下の比較鋼bにおいても高強度
化に従って耐応力腐食割れ特性が低下する傾向を示して
いる。
【0049】またMo添加鋼,Cu添加鋼さらにはMo,C
u複合添加鋼,並びにTi,Nb,V添加鋼でも優れた耐応
力腐食割れ特性および強度を示しており,これらの元素
の添加効果が認められる。
【0050】図1は,表2に示した各鋼の耐応力腐食割
れ特性を鋼中Si量との関係で整理したものである。表
2に見られるように,時効処理後の耐応力腐食割れ特性
は,鋼中のSi量が高くなるほど向上しており,Si量が
1.0%超える本発明鋼では格段に破断寿命が長くなって
いる。
【0051】図2は,表2の調質圧延率を採用したN1
-1とN2-2の調質圧延材, 並びに比較鋼bと従来鋼A1
の圧延材を, 処理温度を変えて時効処理した場合の, 耐
応力腐食割れ特性の変化を調べた結果を示したものであ
る。
【0052】図2の結果によれば,時効処理後の引張強
度が150kg/mm2以上の状態では,従来鋼Aではいずれの
時効処理温度を採用しても24時間以内に応力腐食割れを
起こす。比較鋼の LOWSi材では時効処理温度が300℃未
満において従来鋼より割れ破断時間は長くなる。本発明
鋼N1とN2は,350℃以上の時効温度では従来鋼Aと
割れ発生時間は同程度であるが,300℃未満の時効処理
温度では割れ発生までの時間が著しく長くなり,Siの
高いN2は一段と長寿命を示す。
【0053】すなわち従来から時効処理前に調質圧延が
施されるばね用材料では,強度,ばね特性の改善の面か
ら,400℃前後での時効処理が施されていた。このため,
高強度でかつ耐応力腐食割れ特性に優れた材料を提供
することができなかった。しかし本発明による鋼では30
0℃未満の温度で時効処理することにより, 高強度でか
つ応力腐食割れ特性に優れた材料を提供することができ
る。
【0054】
【発明の効果】以上詳述したごとく,本発明に従うステ
ンレス鋼は,従来のばね用ステンレス鋼SUS301やSUS301
L等に比べ時効による強度上昇が大きく, このため時効
処理前の調質圧延率を低くすることができ, したがっ
て, より優れた成形加工性を有するとともに,時効処理
後は高強度を得ることができる。また,低い温度で時効
処理することにより従来鋼に比べ高強度でかつ優れた応
力腐食割れ特性を付与することができる。
【0055】したがって,高強度と耐応力腐食割れ特性
の両特性を兼備したばね用ステンレス鋼が提供でき,例
えば, 海水中で使用されるオートファスナー, 給湯機の
抑えばね, 自動車やオートバイ等のエンジン周辺の金属
ガスケットなどのばね部品に適用した場合に,応力腐食
割れが防止され著しく耐用寿命を改善できる。
【0056】そして本発明鋼は固溶状態で準安定オース
テナイト相を呈するように成分調整されているから, 焼
鈍材を冷間圧延し,時効処理するという工程で高強度と
耐応力腐食割れ特性を付与でき, 製造が容易である。加
えて, 時効処理温度も低くてよいから製造性の面でも有
利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明鋼N1〜N9 (○印), 従来鋼A-1(□
印),比較鋼a,b(◇印)のSi量と時効処理材(250
℃×1時間)の応力腐食割れ発生時間の関係を示す図で
ある。
【図2】本発明鋼N1-1,N2-1, 従来鋼A-1, 比較鋼
bの時効処理温度と応力腐食割れ発生時間の関係を示す
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 秀記 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社鉄鋼研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%において, C:0.03%以下, Si:1.0%超え〜3.0%, Mn:2.5%以下, Ni:4.0〜10.0%, N:0.06〜0.30%, Cr:13.0〜20.0%, S:0.007%以下, O:0.007%以下 を含み,且つ M=330−(480×C%)−(2×Si%)−(10×Mn%)−(1
    4×Ni%)−(5.7×Cr%)−(320×N%) の式に従うM値が30以上となるようにC,Si,Mn,Ni,
    Cr,N量が調整されており, 残部がFeおよび不可避的
    に混入してくる不純物からなる耐応力腐食割れ特性に優
    れた高強度ばね用ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】 重量%において, C:0.03%以下, Si:1.0%超え〜3.0%, Mn:2.5%以下, Ni:4.0〜10.0%, N:0.06〜0.30%, Cr:13.0〜20.0%, S:0.007%以下, O:0.007%以下, 1.0〜3.0%のMoまたは0.5〜3.0%のCuの1種又は2種
    を含み,且つ M=330−(480×C%)−(2×Si%)−(10×Mn%)−(1
    4×Ni%)−(5.7×Cr%)−(5×Mo%)−(14×Cu%)
    −(320×N%) の式に従うM値が30以上となるようにC,Si,Mn,Ni,
    Cr,Mo,Cu,N量が調整されており, 残部がFeおよび
    不可避的に混入してくる不純物からなる耐応力腐食割れ
    特性に優れた高強度ばね用ステンレス鋼。
  3. 【請求項3】 該鋼は,さらにTi,Nb,Vの1種または
    2種以上を0.1%〜1.0%の範囲で含む請求項1または2
    に記載の高強度ばね用ステンレス鋼。
  4. 【請求項4】 重量%において, C:0.03%以下, Si:1.0%超え〜3.0%, Mn:2.5%以下, Ni:4.0〜10.0%, N:0.06〜0.30%, Cr:13.0〜20.0%, S:0.007%以下, O:0.007%以下 を含み,且つ M=330−(480×C%)−(2×Si%)−(10×Mn%)−(1
    4×Ni%)−(5.7×Cr%)−(5×Mo%)−(14×Cu%)
    −(320×N%) の式に従うM値が30以上となるようにC,Si,Mn,Ni,
    Cr,Mo,Cu,N量が調整されており, 残部がFeおよび
    不可避的に混入してくる不純物からなるステンレス鋼
    を,通常の熱間圧延工程および冷間圧延工程を経たう
    え,最終焼鈍後に25%以上の調質圧延を施こし,成形加
    工前または後において,100℃以上300℃未満の温度範囲
    で10分間以上の時効処理を施すことからなる耐応力腐食
    割れ特性に優れれたばね用ステンレス鋼の製造方法。
  5. 【請求項5】 ステンレス鋼は,1.0〜3.0%のMoまた
    は0.5〜3.0%のCuの1種又は2種を含む請求項4に記
    載の製造方法。
  6. 【請求項6】 ステンレス鋼は,Ti,Nb,Vの1種また
    は2種以上を0.1%〜1.0%の範囲で含む請求項4または
    5に記載の製造方法。
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