JPH06309711A - 光磁気記録媒体、および、その製造方法 - Google Patents

光磁気記録媒体、および、その製造方法

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JPH06309711A
JPH06309711A JP10132393A JP10132393A JPH06309711A JP H06309711 A JPH06309711 A JP H06309711A JP 10132393 A JP10132393 A JP 10132393A JP 10132393 A JP10132393 A JP 10132393A JP H06309711 A JPH06309711 A JP H06309711A
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recording
layer
auxiliary layer
magneto
magnetic field
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JP10132393A
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Takeo Kawase
健夫 川瀬
Masaya Ishida
方哉 石田
Satoshi Nehashi
聡 根橋
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Seiko Epson Corp
Original Assignee
Seiko Epson Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 磁界変調記録において小さな磁界で良好な記
録を可能とする光磁気記録媒体、また、その製造方法を
提供すること。磁界感度特性の経時変化の少ない光磁気
記録媒体、また、その製造方法を提供すること。 【構成】 キュリー温度がTc1の記録層13と記録補助層1
4が積層されていて、記録補助層14のキュリー温度Tc2が
Tc1よりも高温で、記録補助層14の膜厚が70オングスト
ローム以下であり、記録層13の膜厚が80オングストロー
ム以上であるようにした。また、最適な記録補助層14の
スパッタガス圧を決めた。また、製造方法として、成膜
後に熱処理を行なう、または、記録層13の平坦化をおこ
なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光によって光磁気記録媒
体、および、その製造方法に関する。特に記録方法とし
て磁界変調法を用いる光磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】光磁気記録媒体の記録方法には、大別し
て、光変調法と磁界変調法とがある。磁界変調法は特開
昭51-107121や特公昭60-48806に示されているように、
加熱用の光強度を一定に保って、データに基づいて磁界
を変調する記録方法である。磁界変調法は、オーバーラ
イトが容易で、マーク長記録に適しているため高密度化
が容易である。しかし、磁界変調法には磁気ヘッドが必
要で、高速に磁界をスイッチングするためには、ヘッド
のインダクタンスを小さくして、大きな電流をスイッチ
ングする必要がある。また、磁気ヘッドを記録媒体の記
録層に極力接近させて、記録層に作用する磁界をできる
だけ大きくするために、特開昭63-217548号に記載され
ているように、浮上型磁気ヘッドを用いる事が実用上有
利である。
【0003】しかし、いずれにせよ、記録層に作用する
磁界ができるだけ小さくてすむように、磁界変調法用の
光磁気記録媒体は低磁界で記録できることが望ましい。
そのために、特開平1-116944にあるように、Nd等の第4
元素を添加して低磁界での特性向上を図ったり、特開昭
62-128040号に述べられているように、組成の異なる磁
性層を交換結合させて、浮遊磁界を小さくして外部磁界
への応答性を良くしたり、あるいは、特開昭61-71437号
に見られるように、垂直磁化膜と面内磁化膜とを積層さ
せて、垂直磁化膜に効率的に磁束を集めて、変調用磁界
を小さくする等の工夫がなされていた。あるいは、特開
平4-281239号に示されるようにTbFeCoと垂直磁化異方性
がTbFeCoやDyFeCoに比べて小さいGdFeCoとを積層させて
微小磁区の安定性を制限して磁界感度の向上を目指す方
法があった。また、メカニズムは不明であるが、遷移金
属−希土類金属非晶質合金中の酸素の含有量を多くした
り、非晶質合金膜を成膜後、酸素を含む雰囲気中に保持
することによって磁界感度を向上させる方法が特開平3-
156754や特開平3-276440に述べられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、実際に
は、これら従来技術では、変調磁界を±100 Oe以下にす
ることは困難であり、また、第4元素の添加や面内磁化
膜との積層、あるいは磁性膜の酸化が再生信号特性を劣
化させることがあった。磁性膜を酸化させる方法などで
は、記録特性が変動しやすく常に高磁界感度の光磁気記
録媒体を製造することが困難であった。
【0005】従って、本発明の目的は、従来よりも小さ
な変調磁界で十分な記録が行なえる磁界変調用の光磁気
記録媒体を、さらに、これを安定して製造する製造方法
を提供することにある。また、磁界感度特性の経時変化
が少ない光磁気記録媒体、または、製造方法を提供する
ことである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の光磁気記録媒体
はキュリー温度がTc1の記録層を有する光磁気記録媒体
において記録層に接して記録補助層が積層されていて、
記録補助層のキュリー温度Tc2がTc1よりも高温で、記録
補助層の膜厚が70オングストローム以下であり、記録層
の膜厚が80オングストローム以上であることを特徴とす
る。そして、この光磁気記録媒体の製造方法は記録補助
層をスパッタリング法で形成する際、スパッタガス圧を
10mTorr以下で行なうことを特徴とする。また、記録
層、記録補助層をスパッタリング法で形成した後、50℃
以上の温度で加熱処理を行なうことを特徴とする。ある
いは、記録層、記録補助層の順に形成するとき、記録層
の表面を平坦化した後に記録補助層を形成することを特
徴とする。
【0007】
【実施例】以下、図を用いて本発明の実施例について説
明する。
【0008】(実施例1)図1は、本発明の磁界変調に
より記録が行なえる光磁気記録媒体の断面構造を示す。
透明基板11の表面に、第1誘電体層12、記録層13、記録
補助層14、第2誘電体層15及び反射層16が順に積層され
ている。ここで、各層の材料の一例を示せば、透明基板
11はポリカーボネート(PC)基板であり、第1誘電体層1
2、第2誘電体層15はAlSiN層であり、記録層13はNdDyTb
FeCo層であり、記録補助層14はDyFeCo層であり、反射層
15はAlTi層である。また、これ以外の材料のバリエーシ
ョンも多く知られている。例えば記録層13、記録補助層
14に関しては、TbFeCo、DyFeCo、GdFeCo、GdTbFeCo、Gd
DyFeCo、TbDyFeCo、GdDyTbFeCo、NdTbFeCo、PrTbFeCo、
NdDyFeCo、PrDyFeCoなど種々の希土類−遷移金属非晶質
合金が知られている。これらの組成に耐腐食性を向上さ
せる目的で、Cr、Ti、Al、Ptなどの元素を添加すること
が実用上重要である。記録補助層14はキュリー温度を記
録層13より高くするために希土類−遷移金属合金中の遷
移金属の含有量、特にCoの含有量を多くしたり、希土類
金属としてGdの含有量を多くしたり、Nd,Prの含有量を
少なくするとよい。このような組成の調整によって記録
層13に対して記録補助層14のキュリー温度を高くするこ
とは容易に行なうことができる。
【0009】ここでは記録層13としてNd5.4at% Dy15.7a
t% Tb5.1at% Fe58.5at% Co15.3at%の組成を有する希土
類−遷移金属合金を用いた。鋳造合金ターゲットを用い
てマグネトロンDCスパッタリングによってアルゴンガス
圧1.8mTorr、パワー300Wの条件で薄膜形成した。キュリ
ー温度は180℃である。記録層13は単独ではその組成か
らも明らかなように室温において遷移金属副格子優勢の
磁気特性を示す。また、記録補助層14としてDy29.8at%
Fe35.0at% Co35.2at%の組成を有する希土類−遷移金属
合金を用いた。鋳造合金ターゲットを用いてマグネトロ
ンDCスパッタリングによってアルゴンガス圧0.4mTorr、
パワー100Wの条件で薄膜形成した。キュリー温度は280
℃である。記録補助層は単独ではその組成からも明らか
なように室温において希土類金属副格子優勢の磁気特性
を示す。
【0010】図1の構成の光磁気記録媒体を作製するに
は、透明基板11上に、第1誘電体層12、記録層13、記録
補助層14、第2誘電体層15及び反射層16を順に積層させ
ていく。このときの第1誘電体層12の材料としては例え
ば、AlSiNで、スパッタリング法の条件は、例えば、ス
パッタガスがAr60%+N2 40%で圧力が1.7mTorr、投入パワ
ーがRF2500Wである。ターゲットとしてはAlSiの合金タ
ーゲットを用いる。この実施例では第1誘電体層12の平
坦化をおこなわなかった。つまり、第1誘電体層12を形
成後、なんの処理も行なわずに記録層13の形成をおこな
った。本来ならば、以前本発明人が出願しているよう
に、第1誘電体層12の平坦化を行なわない光磁気記録媒
体では磁界感度が劣る。±50エルステッド程度の低磁界
ではノイズは小さいものの信号成分(キャリアレベル)
が著しく小さく実用的なCN比を得ることは困難だった。
これは、記録磁区中に微小磁区が発生して正味の信号成
分が低下することが原因であることを本発明人らは偏光
顕微鏡による磁区観察で確認している。
【0011】以上のような条件で第1誘電体層12、記録
層13、第2誘電体層15及び反射層16の膜厚をそれぞれ75
0Å、200Å、200Å、600Åとして、記録補助層14を形成
しない比較例、記録補助層14の膜厚を25Å、35Åの厚さ
で形成した本発明の光磁気記録媒体の変調磁界に対する
感度を調べた。なお、記録補助層14の膜厚は実測した値
ではなくて、記録補助層14の形成速度を予め測定してお
いて、それぞれの膜厚に必要なスパッタリング時間を計
算して決めたものである。記録は線速1.4m/s、記録周波
数720kHz、記録パワー6.0mWで、変調磁界の大きさを変
化させて行なった。変調磁界の大きさとCN比との関係を
図2(A)、キャリアレベルとの関係を図2(B)に示す。記録
補助層14を形成しなかった比較例ではCN比が飽和するの
に約200エルステッドの変調磁界を要していて、100エル
ステッド以下では十分なCN比が得られていない。これ
は、主にキャリアレベルの変化に依存していてキャリア
レベルは飽和するのに大きな磁界を要する。一方、記録
層13を形成した後、記録補助層14を25Å形成した試料で
は、約50エルステッドでCN比が飽和している。図2(B)の
キャリアレベルのデータとも比較して分かるように、記
録補助層14を形成したことによってキャリアレベルが小
さい変調磁界でも飽和するようになったことが高磁界感
度化に寄与している。さらに記録補助層14を厚く形成す
るとCN比の変調磁界に対する感度は劣化する。キャリア
レベルは25Åの実施例以上に小さい磁界で飽和している
が、この領域でのノイズレベルが上昇してしまうことに
よりCN比が25Åに対して劣化してしまう。
【0012】また、第1誘電体層12、記録層13、第2誘
電体層15及び反射層16の膜厚をそれぞれ750Å、200Å、
200Å、600Åとして、記録補助層14の膜厚を0Åから80
Åまで5Å刻みに変化させて作製した本発明の光磁気記
録媒体の変調磁界に対する感度を調べた。なお、記録補
助層14の膜厚は実測した値ではなくて、記録補助層14の
形成速度を予め測定しておいて、それぞれの膜厚に必要
なスパッタリング時間を計算して決めたものである。記
録は線速1.4m/s、記録周波数720kHz、記録パワー6.0m
W、変調磁界±50エルステッドで行なった。記録補助層1
4の膜厚とCN比との関係を図3(A)、キャリアレベルとの
関係を図3(B)に示す。5Åという極めて薄い記録補助層1
4を形成するだけで効果が現われていることがわかる。
変調磁界±50エルステッドで記録したときのCN比は記録
補助層14の厚さに強く依存している。5Åから70Åで効
果が認められ、特に20Åから35Åの付近で著しく大きな
CN比が得られた。膜厚に伴うCN比の変化はキャリアレベ
ル、ノイズレベルの両方が変化している。ノイズレベル
は5Åから30Åにかけて緩やかに減少していった後、35
Å以上で急な上昇に転じている。これに対して、キャリ
アレベルは5Åから25Åまで膜厚の増大にともなって急
激に増大している。25Å以上ではキャリアレベルは飽和
する。特に20Åから35Åの付近で著しく大きなCN比が得
られたのは、ノイズレベルが十分低く、かつ、キャリア
レベルが飽和している条件をみたしているためである。
【0013】このように、記録補助層14をある一定の極
めて薄い厚さで形成することによって、磁界感度が著し
く向上するのは次の理由によるものだと考えられる。
【0014】図4に示すようにレーザー光を収束したビ
ームスポット41を光磁気記録媒体上に照射すると局所的
に加熱される結果、大きく3つに分類できる領域が生ず
る。それは、キュリー温度以上に加熱されている領域4
2、キュリー温度以下で磁壁が固定化する温度以上で変
調磁界に対して変化が起こる領域43(以下、磁区形成帯
43と称す)、磁壁が固定化する温度以下で変調磁界が印
加されても変化がない領域(図4では磁区形成帯43の外
側の領域)の3つである。磁区形成帯43の幅は1μm程
度、温度差にして10℃から15℃程度と見積られている。
熱磁気記録では磁区形成帯43における磁性膜と印加磁界
との相互作用で磁区が記録されていく。希土類金属−遷
移金属非晶質合金膜を記録膜とする光磁気記録媒体にお
いて高いCN比が得られ実用的な組成はTbFeCoあるいはDy
FeCoを基本にしていて、キュリー温度が150℃から220℃
程度で、室温で補償組成に近い組成である。この領域の
組成では磁区形成帯43に対応する温度では、特にキュリ
ー温度直下では図5に示すように角型性が劣化して、カ
ー回転角が飽和する磁界が大きいカーヒステリシスルー
プが得られる。図5に示されるようなカーヒステリシス
ループに対応する温度で磁区観察を行うと、印加磁界が
ゼロの下では非常に微細な磁区幅のメイズ磁区が観察さ
れる。30エルステッド程度の小さい磁界を印加しても、
メイズ磁区は消滅せず、一方向には磁化されない。この
ような組成の希土類金属−遷移金属非晶質合金膜を記録
膜とする光磁気記録媒体を用いて磁界変調記録を行う
と、図2の比較例に示したように200エルステッド以下の
変調磁界ではキャリアレベルが不足して、十分なC/Nが
得られない。記録された磁区を観察すると記録磁区内に
非常に微細で不定形な磁区(以下、マイクロドメインと
称す)が認められる。このマイクロドメインは再生に用
いる光磁気ヘッドの分解能よりも微細なので、ノイズレ
ベルを悪化させるよりもむしろ、記録磁区のコントラス
トが低下しているように再生される結果、キャリアレベ
ルが不十分な再生信号が得られる。このようなマイクロ
ドメインが記録磁区中に発生する現象は先ほど説明した
キュリー温度直下の温度ではメイズ磁区が発生しやすい
ことに原因がある。記録過程について図4を用いて説明
すると次のようになる。
【0015】(1) 磁区形成帯の高温部43a(つまりキュ
リー温度直下)で微細なメイズ磁区が発生する。
【0016】(2) 磁区形成帯の低温部43bでは、高温部
に較べて磁化、垂直異方性エネルギー、交換スティフネ
ス定数が大きいので印加磁界と自発磁化との間の静磁エ
ネルギー、あるいは、磁壁エネルギーも大きい。そのた
め、メイズ磁区は印加磁界の向きに磁化した単一な磁区
へと近づいていく。しかし、いったん生じたメイズ磁区
を単一の磁区にするためには磁壁の移動を必要とするが
低温部では磁壁の移動を妨げる摩擦力も大きいので、単
一の磁区にするためには大きな磁界を必要とする。
【0017】(3) 温度が低下して、磁区形成帯43の外
にでると摩擦力が大きくなって磁壁の移動はとまり、磁
区は変化しなくなる。変調磁界が小さいとき、メイズ磁
区を完全に消滅させることができないまま、磁区が固定
化されるため、メイズ磁区は記録磁区中のマイクロドメ
インとして凍結される。
【0018】このようにマイクロドメインとメイズ磁区
の発生とは関係が深い。一方、希土類金属−遷移金属非
晶質合金膜の組成を選ぶことによって、磁区形成帯の温
度で微細なメイズ磁区が発生しない、または、メイズ磁
区が発生してもその磁区幅を記録磁区の大きさ以上に大
きくすることが可能である。メイズ磁区の磁区幅は磁壁
エネルギーσWの1/2乗に比例して、自発磁化Msに反比例
することが知られている。つまり、磁区形成帯43に対応
する温度で磁壁エネルギーσWが大きく、自発磁化Msが
小さい組成を選ぶことによってメイズ磁区の磁区幅を大
きくすることが可能である。室温で希土類金属副格子優
勢の磁気特性を示す組成では磁化の大きさがゼロになる
補償温度が室温以上にあるので磁区形成帯43での磁化の
大きさを小さくすることが可能である。また、GdFeCoを
基本にした組成もメイズ磁区の磁区幅を大きくすること
ができる。GdFeCo系は垂直異方性エネルギーKuがTbFeCo
系、DyFeCo系に比べて小さい組成だと言われる。磁壁エ
ネルギーσWは垂直異方性エネルギーKuの1/2乗に比例す
るので、GdFeCo系はむしろ磁壁エネルギーσWが小さく
なって、メイズ磁区の幅も小さくなるはずだが、実際メ
イズ磁区を観察した結果では逆にメイズ磁区の幅が大き
くなる結果が得られた。これは、垂直異方性エネルギー
Kuの変動が小さいためだと考えられる。TbFeCo系、DyFe
Co系はおおきな保磁力を有する組成だが、その起源は垂
直異方性エネルギーKuに大きさ、角度の微視的な変動が
あって、これが磁壁の移動を妨げているためだと説明さ
れている。磁壁は垂直異方性エネルギーKuの大きさの極
小点に近い場所に安定的に固定されるので、正味の磁壁
エネルギーは平均的な垂直異方性エネルギーKuの大きさ
から推定される平均的な磁壁エネルギーよりもはるかに
小さい値になってしまう。これに対して、GdFeCo系は保
磁力が小さいが、これは、垂直異方性エネルギーKuの微
視的な変動が小さいことを意味している。このとき、正
味の磁壁エネルギーは平均的な垂直異方性エネルギーKu
の大きさから推定される平均的な磁壁エネルギーに近い
値が得られるはずである。つまり、GdFeCo系はTbFeCo
系、DyFeCo系に比べて平均的な磁壁エネルギーは小さい
が、正味の磁壁エネルギーが大きくなる結果、メイズ磁
区の幅を決めるのは正味の磁壁エネルギーであるから幅
が大きくなると考えられる。
【0019】さて、このような磁区形成帯に対応する温
度でメイズ磁区の幅が大きなるような組成を用いて、光
磁気記録媒体を作製したら、マイクロドメインは形成さ
れにくいわけだから磁界感度の高い媒体が実現できるは
ずである。実際にこのような媒体について磁界変調方式
による記録をおこなうと磁界感度の高い媒体が高いどこ
ろか、大きな磁界を印加しても実用的なCN比を得られな
い。例えば、実施例1において記録補助層14に用いたDyF
eCoを200Åの厚さの単層膜について最適な条件で記録し
ても46dB程度のC/Nしか得られていない。実施例1におい
て記録層13に用いた組成では53dBが得られるのと比べる
と実用的でないことが分かる。また、室温では補償組成
に近く保磁力が15キロエルステッド以上のGdFeCoでは最
適な条件で記録してもノイズレベルが高くわずかに28dB
程度のC/Nしか得られていない。その原因は記録した記
録磁区を偏光顕微鏡で観察してみると明らかになる。図
6にその観察結果の模式図を示す。図6(a)は高いCN比が
得られる媒体の記録磁区で矢羽型と呼ばれる形状で、記
録ビームに加熱された際の温度分布を忠実に反映した形
状である。矢羽型磁区の後端部61がシャープに記録され
ている。これに対して図6(b)は磁区形成帯43に対応する
温度でのメイズ磁区幅が大きい媒体の記録磁区で、記録
磁区内にマイクロドメインは認められないが、磁区の形
状が不規則にゆらいでいる。特に矢羽型磁区の後端部61
は丸みを帯びた形状に変形している。記録磁区形成が温
度分布に正確に従えば矢羽根型磁区になるはずだが、矢
羽型磁区の後端部61は磁壁エネルギーの観点からは不安
定な形状である。まるく楕円形になるほうが安定であ
る。つまり、磁壁エネルギーが大きく、さらに、磁壁の
移動が容易であれば記録磁区の磁壁エネルギーを減らし
てエネルギーを最小にするような力が磁壁に働いて磁区
の形を変えてしまう。すると温度分布にしたがった矢羽
型磁区を記録することが困難になって、矢羽型磁区を不
均一に変形させた図6(b)のような磁区が記録される結
果、ノイズが上昇することになる。
【0020】本発明の光磁気記録媒体はこれら2種類の
磁界変調では不十分な特性しか得られない磁性膜を積層
させることによってこれまでにない磁界感度に優れた特
性を得ようとするものである。記録層13には磁区形成帯
43に対応する温度で微細なメイズ磁区を生じる組成を、
記録補助層14には記録層13よりもキュリー温度が高く、
メイズ磁区の磁区幅がより大きい組成を積層させる。し
かも、記録補助層14を70オングストローム以下の非常に
薄い厚さで形成されなければならない。このような構成
によって磁界感度が向上するメカニズムを図4を用いて
説明する。
【0021】(1) 磁区形成帯の高温部43a(つまり記録
層13のキュリー温度近傍)では、記録層13の自発磁化が
非常に小さいのでキュリー温度の高い記録補助層14が磁
区形成に影響的である。記録補助層14の有するメイズ磁
区の磁区幅が大きい特性が支配的なため小さい印加磁界
でも微細なメイズ磁区の発生を抑圧することができる。
つまり、小さい印加磁界のもとでも磁化の向きを一方向
に揃えた単磁区構造をつくることができる。
【0022】(2) 磁区形成帯の低温部43bまで温度が低
下してくると、記録層13の自発磁化が蘇ってくる。記録
層13の膜厚は記録補助層14の10倍程度なので記録層13の
自発磁化が蘇ってくると、磁区形成において記録層13の
影響力が増大してくる。つまり、メイズ磁区は発生しや
すいが磁壁の移動を妨げる摩擦力が大きい特性が支配的
になってくる。この温度で長時間保持されればメイズ磁
区が発生することになるが、実際の記録過程、つまり急
冷される場合には磁区形成帯の高温部43aでメイズ磁区
が抑圧され記録磁区の内部は単磁区になっているので磁
区形成帯の低温部43bでメイズ磁区が発生することはな
い。むしろ、磁壁の移動を妨げる摩擦力が磁区形成帯の
高温部43aで得られた単磁区構造を保持し、温度分布に
忠実にしたがった矢羽型磁区を固定化させることにな
る。その結果、矢羽型磁区の後端部61もシャープに記録
される。
【0023】このように磁区形成帯43のなかで磁区形成
の初期段階にあたる高温部は記録補助層14が、記録磁区
の形状を決定する低温部は記録層13が支配的になること
によって、メイズ磁区の抑圧と矢羽型磁区のシャープで
安定な記録とを両立させることができたと考えられる。
磁性層を2層化した効果はまさにそれぞれの層によって2
つの記録フェーズを磁区形成帯43において実現すること
に結びついている。記録補助層14の膜厚が最適な膜厚よ
り薄い側は磁区形成帯43において記録層13が支配的な温
度領域が広く、記録補助層14の膜厚が最適な膜厚より厚
い側は磁区形成帯43において記録補助層14が支配的な温
度領域が広くなる。たとえば、記録補助層14が厚すぎる
と磁区形成帯43内の大部分の領域で記録補助層14が支配
的になる結果、記録補助層14の特性が記録に過大な影響
を与え、磁区形状が図6(B)のように不揃いになる結果ノ
イズレベルの上昇を招いたと説明できる。磁区形成帯43
は温度範囲にして10℃から15℃という狭い領域である。
この狭い領域に記録補助層14が支配的になる領域と、記
録層13が支配的になる領域とがうまく混在する条件で磁
界感度が向上することになる。このため磁界感度が記録
補助層14の膜厚に対して非常に敏感に変化する現象が起
こるわけである。
【0024】従来の光磁気記録媒体でも性質の異なる磁
性膜を積層させて磁界感度を向上させようとする試みは
存在していた。例えば、特開昭62-128040では遷移金属
副格子優勢の組成とキュリー温度まで希土類金属副格子
優勢を保つ組成とを積層させて浮遊磁界の大きさを小さ
くすることによって印加磁界が有効に作用するようにし
た構成が開示されている。この例ではそれぞれの磁性膜
の浮遊磁界の向きが逆でこれらが相殺するように構成さ
れるのでそれぞれの磁性膜は十分な厚さを有することが
必要である。本発明の構成のように、例えば、それぞれ
の膜厚比が10対1では浮遊磁界を相殺する目的から大
きくはずれてしまう。もっとも、本発明の光磁気録媒体
はキュリー温度付近まで希土類金属副格子優勢の特性を
有する組成を必要としないので特開昭62-128040の開示
している多層磁性膜構造とはまったく異なる構成の媒体
である。また、 特開昭4-281239にはGdFeCoとTbFeCoと
を積層させた構成が開示されている。このなかではGdFe
Co層のキュリー温度をTbFeCo層より高く設定してGdFeCo
層、TbFeCo層の膜厚を60オングストロームと190オング
ストローム、100オングストロームと150オングストロー
ム、150オングストロームと100オングスロームの組み合
わせが実施例中に示されている。ここでは2番目の組み
合わせがもっとも優れた特性を示すことが記載されてい
る。このように本発明の記録補助層14に比べてGdFeCo層
が厚いのは本発明の2層構造とは記録メカニズムが本質
的に異なる為である。従来のキュリー温度の異なる2つ
の層を積層させた構造は「キュリー温度の高い層が先に
記録されるプロセス」、続いて「キュリー温度の低い層
に記録磁区が転写されるプロセス」を経て記録される方
式(以下、転写方式と称する)に分類できるものであ
る。しかし、この転写方式は磁界感度を向上させること
に本質的に成功していない。つまりキュリー温度の高い
層が先に記録されるプロセスで記録磁区の形状、マイク
ロドメインの状態が決定され、後はこれが単純にキュリ
ー温度の低い層に転写されるだけなので、キュリー温度
の高い層を構成する磁性膜の有する磁界感度によって転
写方式の2層構造の磁界感度が決定されるからである。
それゆえ転写方式の2層構造では、2層構造にしたことに
よって、キュリー温度の低い層を構成する磁性膜単層の
磁界感度より優れた特性が得られる可能性はあるが、キ
ュリー温度の高い層を構成する磁性膜単層の磁界感度よ
りも優れた特性を得ることはできない。一方、本発明の
光磁気記録媒体は極薄膜との2層構造によって、それぞ
れの層が単独で形成された構成よりも磁界感度を向上さ
れることができた。これはキュリー温度の高いほうの層
を70Å以下の極薄膜にすることによって始めて、先に述
べたような磁区形成帯43中での記録補助層14が支配的に
なる領域と、記録層13が支配的になる領域との混在が起
こり、磁界感度が向上したわけである。キュリー温度の
高いほうの層、つまり、記録補助層14を70Å以下にしな
ければならない理由は、70Åを超える記録補助層14を形
成すると先に述べた転写方式で記録が行われるためであ
る。70Åを超える記録補助層14は記録層13のキュリー温
度を超えた温度でも単独で自発磁化を有し、さらに、保
磁力、垂直異方性エネルギーも大きいので記録補助層14
のみの特性によって記録磁区形成が進行してしまう。こ
れに対して、70Å以下の記録補助層14では記録層13のキ
ュリー温度を超えた温度では、温度上昇に伴って急速に
自発磁化、保磁力、垂直異方性エネルギーが低下する。
これは70Å以下の極めて薄い磁性薄膜ではバルクに比べ
て自発磁化の大きさの減少、キュリー温度の低温化が起
こるためである。記録層13のキュリー温度未満の温度で
は記録補助層14は記録層13との交換結合によって十分厚
い薄膜のように自発磁化を保ち続けることができるが、
記録層13のキュリー温度以上の温度では記録層13は自発
磁化を失った常磁性金属に過ぎないので、記録補助層14
には極薄膜磁性膜の特性が強くあらわれる結果、急速に
自発磁化、保磁力、垂直異方性エネルギーが低下してし
まう訳である。そのため転写方式の記録プロセスが起こ
らない。このように記録補助層14が極薄膜であることは
本発明の2層構造にとって必須の要件ということにな
る。
【0025】(実施例2)ここでは記録層13の厚さを変
化させた実施例について示す。図1に示すように、透明
基板11上に、第1誘電体層12、記録層13、記録補助層1
4、第2誘電体層15、反射層16を積層させた光磁気記録媒
体を作製した。記録層13としてNd5at% Dy16at% Tb5at%
Fe59at% Co15at%の組成を有する希土類−遷移金属非晶
質合金を用いた。鋳造合金ターゲットを用いてマグネト
ロンDCスパッタリングによってアルゴンガス圧1.2mTorr
で薄膜形成した。キュリー温度は180℃である。記録層1
3は単独ではその組成からも明らかなように室温におい
て遷移金属副格子優勢の磁気特性を示す。また、記録補
助層14としてDy30at% Fe35at% Co35at%の組成を有する
希土類−遷移金属合金を用いた。鋳造合金ターゲットを
用いてマグネトロンDCスパッタリングによってアルゴン
ガス圧0.4mTorrで薄膜形成した。キュリー温度は280℃
である。記録補助層は単独ではその組成からも明らかな
ように室温において希土類金属副格子優勢の磁気特性を
示す。補償温度は130℃でこれより高い温度では遷移金
属副格子優勢の磁気特性を示す。第1誘電体層12、第2誘
電体層15にはSi3N4を用いてそれぞれ750Å、200Åの膜
厚で作製した。反射層16にはAlTi合金を用いて600Åの
膜厚で作製した。また、透明基板11にはポリカーボネー
ト基板を用いた。
【0026】記録層13の厚さを120Å、200Å、320Åと
した。さらに、それぞれの記録層13の膜厚で記録補助層
14の膜厚を0Åから80Åまで5Å刻みに変化させて作製し
た本発明の光磁気記録媒体の変調磁界に対する感度を調
べた。なお、記録補助層14の膜厚は実測した値ではなく
て、記録補助層14の形成速度を予め測定しておいて、そ
れぞれの膜厚に必要なスパッタリング時間を計算して決
めたものである。記録は線速1.4m/s、記録周波数720kH
z、記録パワー6.0mW、変調磁界±50エルステッドで行な
った。記録補助層14の膜厚とCN比との関係を図7に示
す。記録層13の膜厚が120Å、200Å、320Åと変化して
も、記録補助層14の膜厚が20Åから30Åで特に高いCN比
が得られる変化を示すことがわかる。この範囲の記録層
13の膜厚は図1に示したような反射層16を有する構造と
してはもっとも実用的な膜厚である。この範囲で記録層
13の膜厚が変化しても記録補助層14に必要な膜厚に大き
な変化は生じないことがわかる。さらに、記録層13を40
0Åから2000Åまで100Å刻みに変化させた実験では、記
録補助層14の膜厚が70Å以下で十分な効果が得られ、さ
らに50Å以下の膜厚でより望ましい効果が得られた。こ
のように、本発明の2層構造では、記録層13の膜厚に大
きな影響を受けることなく、70Å以下の記録補助層を形
成することによって磁界感度を向上させることができ
る。しかしながら、記録層13の膜厚が80Å未満では磁界
感度の傾向は認められるものの、最適の記録補助層14の
膜厚においても実用的に十分なCN比が得られなかった。
そのため、本発明の光磁気記録媒体の記録層13の膜厚は
80Å以上であることが望ましい。
【0027】(実施例3)実施例1、2では記録補助層14
にDyFeCoを用いたが、この実施例では記録補助層14にGd
FeCo、TbFeCoを用いた場合について説明する。
【0028】図1に示すように、透明基板11上に、第1誘
電体層12、記録層13、記録補助層14、第2誘電体層15、
反射層16を積層させた光磁気記録媒体を作製した。記録
層13としてNd6at% Dy15at% Tb6at% Fe56at% Co17at%の
組成を有する希土類−遷移金属非晶質合金を用いた。鋳
造合金ターゲットを用いてマグネトロンDCスパッタリン
グによってアルゴンガス圧1.9mTorrで薄膜形成した。キ
ュリー温度は180℃である。記録層13は単独ではその組
成からも明らかなように室温において遷移金属副格子優
勢の磁気特性を示す。また、記録補助層14としてGd25at
% Fe70at% Co5at%の組成を有する希土類−遷移金属合金
を用いた。鋳造合金ターゲットを用いてマグネトロンDC
スパッタリングによってアルゴンガス圧1.2mTorrで薄膜
形成した。キュリー温度は230℃である。記録補助層14
は単独では室温において補償組成近傍の磁気特性を示
す。このGdFeCo単層のキュリー温度付近でのカーヒステ
リシスループを図8に示す。保磁力は小さいもののキュ
リー温度直下まで角形比が1に保たれた特性が得られる
磁性膜であることが分かる。また、別の実施例として記
録補助層14にTb30at% Fe32at% Co38at%の組成を有する
希土類−遷移金属合金を用いた。鋳造合金ターゲットを
用いてマグネトロンDCスパッタリングによってアルゴン
ガス圧1.2mTorrで薄膜形成した。キュリー温度は300℃
以上で360℃程度である。記録補助層は単独ではその組
成からも明らかなように室温において希土類金属副格子
優勢の磁気特性を示す。補償温度は150℃でこれより高
い温度では遷移金属副格子優勢の磁気特性を示す。第1
誘電体層12、第2誘電体層15にはSi3N4を用いてそれぞれ
750Å、200Åの膜厚で作製した。反射層16にはAlTi合金
を用いて600Åの膜厚で作製した。また、透明基板11に
はポリカーボネート基板を用いた。
【0029】記録補助層14の膜厚を0Åから50Åまで10
Å刻みに変化させて作製した本発明の光磁気記録媒体の
変調磁界に対する感度を調べた。なお、記録補助層14の
膜厚は実測した値ではなくて、記録補助層14の形成速度
を予め測定しておいて、それぞれの膜厚に必要なスパッ
タリング時間を計算して決めたものである。記録は線速
1.4m/s、記録周波数720kHz、記録パワー6.0mW、変調磁
界±50エルステッドで行なった。記録補助層14の膜厚と
CN比との関係を図9に示す。キュリー温度が230℃のGdFe
Coを記録補助層14に用いたときは膜厚が40Åで、キュリ
ー温度360℃程度のTbFeCoを記録補助層14に用いたとき
は膜厚が20Åで磁界感度の向上が認められた。これらの
組成でもDyFeCo同様、非常に薄い領域で磁界感度を向上
させる膜厚が存在することが分かる。しかし、GdFeCo、
TbFeCoでは最適の膜厚を越えると急激にCN比が低下して
いる。GdFeCoを記録補助層14とした場合はノイズレベル
が著しく大きくなることがCN比低下の主因で、キャリア
レベルは変化していない。これに対して、TbFeCoを記録
補助層14とした場合はキャリアレベルも大きく低下して
いる。これはここで用いたTbFeCoのキュリー温度が360
℃程度と非常に高温なため、記録補助層14の膜厚が厚く
なると最適な記録パワーが大きくなっている。ここでは
記録パワーを6mWで固定して実験したので最適な記録パ
ワーとの差が大きくなったことが図9の結果に影響して
いる。一方、記録補助層14にGdFeCoを50Å厚用いたとき
のCN比の低下は、記録パワーによらずノイズが高い点が
特徴的である。このGdFeCoを50Å厚の構成の2層構造に
おける記録磁区を観察すると、記録磁区中にマイクロド
メインは認められないが、磁区の形状が理想的な矢羽型
からは大きく外れた不定形を見ることができた。このよ
うに、GdFeCoを記録補助層14として用いると最適な膜厚
を越えたときの著しいノイズ上昇を引き起こすのでDyFe
CoやTbFeCoを主成分とする組成を記録補助層14として用
いることがより望ましい。
【0030】(実施例4)つぎに、実施例1、2、3で説明
した光磁気記録媒体の製造方法について説明する。この
実施例では記録補助層14を形成する際のスパッタガス圧
の影響について説明する。
【0031】スパッタガスとしては不活性ガスのArガス
を用いるのが一般的である。ターゲットから飛び出した
スパッタ粒子は基板に到達するまでにスパッタガスと衝
突して散乱される。スパッタガス圧が高いほどスパッタ
粒子の平均自由工程は短くなって衝突回数が増えること
になる。そのため、スパッタガスの圧力はスパッタ粒子
の基板への入射角度分布、スパッタ粒子のエネルギー分
布を左右する重要な因子の一つである。例えば、スパッ
タ粒子の基板への入射角度分布において垂直よりも斜め
から入射する割合が増えると、自己射影効果が顕著にな
って、柱状組織が発達した薄膜が出来上がる。記録補助
層14を形成する工程においてもスパッタガスの圧力を変
化させることによって磁界感度特性が大きく変化する可
能性がある。
【0032】図1に示すように、透明基板11上に、第1誘
電体層12、記録層13、記録補助層14、第2誘電体層15、
反射層16を積層させた光磁気記録媒体を作製した。記録
層13としてNd5at% Dy16at% Tb5at% Fe59at% Co15at%の
組成を有する希土類−遷移金属非晶質合金を用いた。鋳
造合金ターゲットを用いてマグネトロンDCスパッタリン
グによってアルゴンガス圧1.2mTorrで薄膜形成した。キ
ュリー温度は180℃である。記録層13は単独ではその組
成からも明らかなように室温において遷移金属副格子優
勢の磁気特性を示す。また、記録補助層14として室温で
希土類金属副格子優勢の磁気特性を示すDyFeCoを用い
た。Dy36at% Fe34at% Co30at%の組成を有する鋳造合金
ターゲットを用いてマグネトロンDCスパッタリングによ
って薄膜形成した。その際、アルゴンガス圧を0.42mTor
r、1.5mTorr、3.5mTorr、5.5mTorr、7.5mTorr、9.5mTor
rと変えた試料を作製した。アルゴンガス圧はB-A型電離
真空計によって測定したが、この真空計を用いる場合10
から20%の測定誤差が生じることがある。アルゴンガス
圧によって組成が若干変化するのが、キュリー温度は25
0℃から280℃である。第1誘電体層12、第2誘電体層15に
はSi3N4を用いてそれぞれ750Å、200Åの膜厚で作製し
た。反射層16にはAlTi合金を用いて600Åの膜厚で作製
した。また、透明基板11にはポリカーボネート基板を用
いた。
【0033】記録補助層14の膜厚を0Åから70Åまで5Å
刻み、または、10Å刻みに変化させて作製した本発明の
光磁気記録媒体の変調磁界に対する感度を調べた。な
お、記録補助層14の膜厚は実測した値ではなくて、記録
補助層14の形成速度を予め測定しておいて、それぞれの
膜厚に必要なスパッタリング時間を計算して決めたもの
である。記録は線速1.4m/s、記録周波数720kHz、記録パ
ワー6.0mW、変調磁界±50エルステッドで行なった。記
録補助層14の膜厚とCN比との関係を図10に示す。0.42mT
orrと1.5mTorrのアルゴンガス圧で記録補助層14を形成
した場合では記録補助層14の厚さが10Åから70Åの間で
高いCN比が得られている。3.5mTorrから9.5mTorrのアル
ゴンガス圧で記録補助層14を形成した場合でも若干のCN
比向上が認められるがアルゴンガス圧が高くなるにつ
れ、CN比の向上率は小さくなってしまう。また、アルゴ
ンガス圧が10mTorrを越える圧力で同様な光磁気記録媒
体を作製して磁界感度向上を調べたところ、CN比の向上
は1dB以下で顕著な効果は認められなかった。
【0034】以上のように、記録補助層14を形成する工
程におけるスパッタガスの圧力は10mTorr以下で行うこ
とが望ましい。また、3.5mTorr以下で行うことがより望
ましい。更に望ましいスパッタガスの圧力は1.5mTorr以
下である。記録補助層14を形成する際のスパッタガス圧
は低圧にするほど、最適の膜厚で得られる磁界感度特性
は優れている。しかし、優れた特性の得られる膜厚の範
囲が狭くなる。
【0035】(実施例6)この実施例では記録層13、記
録補助層14を形成した後に熱処理を行なう製造方法につ
いて説明する。
【0036】本発明の極薄膜の2層構造による光磁気記
録媒体を製造する場合、製造後の経時変化が起こらない
ことが重要である。しかしながら、希土類−遷移金属非
晶質合金を記録層13、記録補助層14に用いる場合、構造
緩和による磁気特性の変化は避けて通れない問題であ
る。構造緩和というのは非晶質金属のおいて室温程度の
低い温度でも短距離秩序におけるわずかな原子位置の変
化が生じる現象を言う。図11に示したのは非晶質金属の
構造変化の活性化エネルギースペクトルを模式的に示す
もので、製造直後のスペクトル111は広いエネルギー分
布をもっている。そのため、室温から100℃程度の低い
温度に対応する熱エネルギーでも構造が変化することに
なる。しかし、一旦活性化されると、そのエネルギーに
対応する構造緩和の頻度は次第に減ってきて、ついに活
性化エネルギースペクトルは112のように変化して低エ
ネルギー領域は空の状態113になってしまう。その結
果、室温から100℃程度の低い温度での構造緩和はそれ
以上進行しなくなる。
【0037】希土類−遷移金属非晶質合金に構造緩和が
おこると、どのような磁気特性の変化が生じるかを説明
する。巨視的に観察される性質では、保磁力の減少、垂
直異方性定数の減少が起こる。これらの性質を決めるの
が原子の短距離的秩序だからである。また、保磁力の減
少に関連して、先にも述べたように正味の磁壁エネルギ
ーが大きくなる結果メイズ磁区の幅が広がると考えられ
る。その結果、磁界変調で記録した際の記録層13におけ
るマイクロドメインの発生傾向に変化が起こり、キャリ
アレベルに影響をあたえている極めて微細な微小磁区が
発生しにくくなる。また、記録補助層14の機能面からい
うと、マイクロドメインの発生を抑圧してキャリアレベ
ルを向上させる効果が一層高まるといえる。
【0038】実施例1で作製した光磁気記録媒体と同じ
組成、構成、製造方法で作製した本発明の光磁気記録媒
体を、空気中で熱処理をおこなった。熱処理の条件は10
0℃で1時間と2時間でおこなった。線速1.4m/s、記録周
波数720kHz、記録パワー6.0mW、変調磁界±50エルステ
ッドで記録したときの記録補助層14の膜厚とCN比との関
係を図12に示す。熱処理前の記録補助層14の最適な膜厚
の範囲は20Åから30Åだったのが、100℃で熱処理した
後では10から20Åへと変化している。熱処理前では記録
補助層14の効果が不十分だった5Åから15Åの膜厚にお
いて、著しい磁界感度向上が得られた。しかし、熱処理
時間を1時間から2時間に長くしても時間による差はほと
んど認められなかった。本発明の光磁気記録媒体におけ
る極薄膜との2層構造ではこのような比較的低温での熱
処理が重要な変化をもたらすことがわかる。従来の光磁
気記録媒体は図12中の記録補助層14を形成しない構成
(つまり、記録補助層14の膜厚0Å)の結果からもわか
るように、熱処理を行なっても磁界感度特性に大きな変
化は認められない。
【0039】以上のような条件で熱処理を行なった本発
明の光磁気記録媒体と、熱処理を行なわない本発明の光
磁気記録媒体とを85℃で相対湿度95%で100時間、200時
間、500時間、1000時間の加速試験をおこなった。熱処
理を行なわない光磁気記録媒体では100時間で磁界感度
特性に変化を生じた。この変化は100℃で熱処理を行な
ったときと全く同様の変化であった。つまり、加速試験
前の記録補助層14の最適な膜厚は20Åから30Åだったの
が、加速試験100時間後では10から20Åへと変化して、
さらに、加速試験前では記録補助層14の効果が不十分だ
った5Åから15Åの膜厚において、著しい磁界感度向上
が得られた。しかし、加速試験時間をさらに200時間、5
00時間、1000時間と長くしても100時間の磁界感度特性
から大きな変化は認められなかった。一方、熱処理を行
なった本発明の光磁気記録媒体では加速試験を行なって
も磁界感度特性の変化は認められなかった。熱処理時間
を1時間、2時間と変えた実施例の加速試験結果を比較し
てもほとんど差が認められなかった。このように、熱処
理を行なうことによって磁界感度特性の経時変化を抑圧
することが可能である。つまり、熱処理を行なわないと
きもっとも優れた磁界感度特性の得られる記録補助層14
の厚さをDmaxとしたとき、記録補助層14をDmax未満の膜
厚で形成した後、熱処理を行なうことによって磁界感度
特性に優れ、かつ、磁界感度特性の経時変化のない光磁
気記録媒体を製造することが可能である。製造条件や記
録層13や記録補助層14の組成を変化させることによって
Dmaxは0Åから70Åの範囲で変化する。熱処理を行なう
場合はDmaxの8分の1から3分の2の膜厚で記録補助層14を
形成すると優れた磁界感度特性を得ることが可能であっ
た。
【0040】また、熱処理の温度については50℃程度か
ら効果が認められたが、50℃では長時間の処理時間を要
したり、熱処理が不十分で経時変化を起こしたりした。
高温で処理する程、処理時間は短時間で済んだ。例えば
処理温度80℃では処理時間50時間を必要としたのに、
100℃では40分で十分だった。製造上は、できるだけ
短時間の熱処理で済むことが望ましいので、できるだけ
高温で熱処理を行なうことが望ましい。ただし、光磁気
記録媒体の透明基板11にポリカーボネートを使用したと
きは120℃を越えるとポリカーボネートが軟化し始めた
ため120℃が処理温度の上限であった。このときは、120
℃で5分以下の処理時間で十分な効果が得られた。
【0041】このように本発明の光磁気記録媒体を比較
的低い温度での熱処理を行なうことによって磁界感度の
経時変化を抑圧できたのは、経時変化によって起こる非
晶質金属の構造緩和をあらかじめ熱処理によって起こし
ておいたためである。つまり先にも述べた通り、非晶質
金属の構造変化の活性化エネルギースペクトル111は広
いエネルギー分布を有するため、十分低い熱エネルギー
でも構造が変化して熱処理後の活性化エネルギースペク
トル113の低エネルギー領域は空の状態113になってしま
う。その結果、室温から100℃程度の低い温度での構造
緩和はそれ以上進行しなくなるため経時変化が抑圧され
ることになる。
【0042】(実施例7)図11に示した非晶質金属の構
造変化の活性化エネルギースペクトル111の低エネルギ
ー部がないほど、経時変化を抑圧することができる。活
性化エネルギースペクトル111は製造条件や組成によっ
て変化する。この実施例ではそうした製造条件の一つと
して、第一誘電体12表面や記録層13表面を平坦化する製
造方法について説明する記録層13に先立って形成される
第1誘電体層12にはSi3N4、AlNやAlSiNを基本とする組
成を用いることが一般である。スパッタリング法によっ
てこの組成の誘電体層を数百Åの厚さに形成すると、そ
の表面には数十Åの微細な凹凸を生じることが知られて
いる。この微細な凹凸を有する誘電体上に希土類−遷移
金属非晶質合金を形成すると、微細な凹凸によって磁気
特性が影響を受ける。数十Å程度の凹凸を有する誘電体
上に希土類−遷移金属非晶質合金を形成すると比較的大
きな保磁力を得ることができる。また、不活性ガスのプ
ラズマで微小な凹凸を有する誘電体をドライエッチング
すると凹凸の高低が小さくなる、つまり平坦化される。
このように平坦化された誘電体上に希土類−遷移金属非
晶質合金を形成すると、平坦化しない場合と比較して保
磁力の低下が認められる。誘電体表面の平坦化に伴う変
化は、保磁力の低下だけでなくキュリー温度付近で発生
するメイズ磁区の幅が拡がることを本発明人らは見いだ
している。そのためこのようにして作製された光磁気記
録媒体の磁界感度特性にも影響を与えることになる。
【0043】図1に示すように、透明基板11上に、第1誘
電体層12、記録層13、記録補助層14、第2誘電体層15、
反射層16を積層させた光磁気記録媒体を作製した。記録
層13としてNd5at% Dy16at% Tb5at% Fe59at% Co15at%の
組成を有する希土類−遷移金属非晶質合金を用いた。鋳
造合金ターゲットを用いてマグネトロンDCスパッタリン
グによってアルゴンガス圧1.2mTorrで薄膜形成した。キ
ュリー温度は180℃である。記録層13は単独ではその組
成からも明らかなように室温において遷移金属副格子優
勢の磁気特性を示す。また、記録補助層14としてDy30t%
Fe35at% Co35at%の組成を有する希土類−遷移金属合金
を用いた。鋳造合金ターゲットを用いてマグネトロンDC
スパッタリングによってアルゴンガス圧0.4mTorr、パワ
ー100Wの条件で薄膜形成した。キュリー温度は280℃で
ある。記録補助層は単独ではその組成からも明らかなよ
うに室温において希土類金属副格子優勢の磁気特性を示
す。このときの第1誘電体層12の材料としては例えば、
AlSiNで、スパッタリング法の条件は、例えば、スパッ
タガスがAr60%+N2 40%で圧力が1.7mTorr、投入パワーが
RF2500Wである。ターゲットとしてはAlSiの合金ターゲ
ットを用いる。この表面上の微細な凹凸を平坦化するた
めに、先にも述べたように、RFプラズマによるドライエ
ッチング法を用いて第1誘電体12の表面を再スパッタす
る方法を用いた。このときのRFプラズマエッチングの条
件は、例えば、エッチングガスがAr、圧力が1.8mTorr、
投入パワーがRF50Wである。透明基板11上に第1誘電体
層12を770Å形成後RFプラズマエッチングを20分間おこ
なって平坦化を行なった。その後、記録層13を200Å、
記録補助層14、第2誘電体層15を200Å、反射層16を600
Å積層させた。記録補助層14は0から50Åまで5Å刻みの
厚さで形成した。そして、線速1.4m/s、記録周波数720k
Hz、記録パワー6.0mW、変調磁界±50エルステッドで記
録したときの記録補助層14の膜厚とCN比との関係を図13
に示す。なお図中には第1誘電体層を750Å形成後RFプ
ラズマエッチングを行なわなかった光磁気記録媒体の磁
界感度特性の結果も示した。RFプラズマエッチングによ
って下地の平坦化を行なった結果、平坦化を行なわない
ものに比べてより薄い記録補助層14で同様の効果が得ら
れることがわかる。つまり、平坦化を行なわない光磁気
記録媒体では記録補助層14の厚さが20Åから30Åの付近
で特に著しく大きなCN比が得られたのに対して、平坦化
を行なった光磁気記録媒体では15Åから25Åの付近で特
に著しく大きなCN比が得られた。
【0044】このようにして作製された光磁気記録媒体
を温度が85℃で相対湿度95%の環境下で100時間、200時
間、500時間、1000時間の加速試験をおこなった。第1
誘電体層12の平坦化を行なわなかった光磁気記録媒体で
は加速試験前の記録補助層14の最適な膜厚の範囲は20Å
から30Åだったのが、加速試験100時間後では10から20
Åへと変化して、特に、加速試験前では記録補助層14の
効果が不十分だった5Åから15Åの膜厚において、著し
い磁界感度向上が得られた。一方、平坦化を行なった光
磁気記録媒体では加速試験前の記録補助層14の最適な膜
厚は15Åから25Åだったのが、加速試験100時間後では1
0から20Åへと若干変化したのに留まった。また、平坦
化の有無にかかわらず200時間以降の結果は100時間の結
果とほとんど変化がなかった。このように、平坦化を行
なった場合、記録補助層14を15Åから20Åの厚さとする
ことによって磁界感度特性の経時変化を少なくすること
ができる。
【0045】次に、記録層13を形成した後にその表面を
平坦化してから記録補助層14を形成する製造方法につい
て説明する。誘電体表面の微細な凹凸は、これを平坦化
しないまま記録層13を形成した場合、形成された記録層
13の表面にも微細な凹凸が生ずる。この記録層13上の凹
凸を平坦化した後に記録補助層14を形成すれば記録補助
層14のみの磁気特性を変化させることが可能になる。
【0046】透明基板11上に第1誘電体層12を750Å形
成した後、平坦化の処理を行なわないで記録層13を210
Å形成した。そして、記録層13の表面に対してRFプラズ
マエッチング処理を行なった。このときのRFプラズマエ
ッチングの条件は、例えば、エッチングガスがAr、圧力
が1.8mTorr、投入パワーがRF50Wである。RFプラズマエ
ッチング処理時間は5分である。そして続いて記録補助
層14を0Åから70Å、5Å刻みで形成した。さらに、第2
誘電体層15を200Å、反射層16を600Å形成した。このよ
うにして作製された光磁気記録媒体について線速1.4m/
s、記録周波数720kHz、記録パワー6.0mW、変調磁界±50
エルステッドで記録したときの記録補助層14の膜厚とCN
比との関係を図14に示す。また、図中には同じ光磁気記
録媒体を温度が85℃で相対湿度95%の環境下で200時間の
加速試験をおこなった後の磁界感度特性も示した。最適
の記録補助層14の厚さは15Åから40Åで加速試験前後で
変化していない。このように記録層13の表面を平坦化し
た後に記録補助層14を形成したときには、磁界感度特性
が加速試験前後でほとんど変化しないことがわかる。
【0047】(実施例8)これまでの実施例では図1に示
す記録層13を形成した後に記録補助層14を形成するよう
な構造(以下、後付け構造と称する)について説明して
きた。この実施例では図15に示したように記録層13と記
録補助層14との配置を変化させた構成の光磁気記録媒体
について説明する。図15(A)は記録補助層14を記録層13
よりも先に形成した光磁気記録媒体(以下、先付け構造
と称する)、図15(B)は記録補助層14を記録層13中にサ
ンドイッチして形成した光磁気記録媒体(以下、中付け
構造と称する)、図15(C)は記録補助層14を記録層13の
両側に形成した光磁気記録媒体(以下、両付け構造と称
する)を示している。この実施例では第1誘電体層12、
第2誘電体層15、反射層16を有する反射構造を用いた
が、本発明の主旨はこの構造に限定されるものではな
い。
【0048】ここでは記録層13としてNd5at% Dy16at% T
b5at% Fe59at% Co15at%の組成を有する希土類−遷移金
属合金を用いた。鋳造合金ターゲットを用いてマグネト
ロンDCスパッタリングによってアルゴンガス圧1.8mTor
r、パワー300Wの条件で薄膜形成した。キュリー温度は1
80℃である。記録層13は単独ではその組成からも明らか
なように室温において遷移金属副格子優勢の磁気特性を
示す。また、記録補助層14としてDy30t% Fe35at% Co35a
t%の組成を有する希土類−遷移金属合金を用いた。鋳造
合金ターゲットを用いてマグネトロンDCスパッタリング
によってアルゴンガス圧0.4mTorr、パワー100Wの条件で
薄膜形成した。キュリー温度は280℃である。記録補助
層は単独ではその組成からも明らかなように室温におい
て希土類金属副格子優勢の磁気特性を示す。
【0049】図15の構成の光磁気記録媒体を作製するに
は、透明基板11上にまず第1誘電体層12を形成する。こ
のときの第1誘電体層12の材料としては例えば、AlSiN
で、スパッタリング法の条件は、例えば、スパッタガス
がAr60%+N2 40%で圧力が1.7mTorr、投入パワーがRF2500
Wである。ターゲットとしてはAlSiの合金ターゲットを
用いる。この実施例では第1誘電体層12の平坦化処理を
おこなわなかった。この実施例では第1誘電体層12の厚
さを750Åとした。続いて、磁性層を形成する。先付け
構造の場合、記録補助層14を形成した後に記録層15を形
成する。この実施例では記録層13の膜厚を200Åとし
て、記録補助層14の膜厚を0Åから80Åで変化させた。
中付け構造の場合、記録層の前半部13aを形成した後、
記録補助層14を形成して、さらに記録層の後半部13bを
形成した。この実施例では記録層の前半部13a、記録層
の後半部13bの膜厚をいずれも100Åとして、これらを合
わせた記録層13の厚さが200Åになるようにした。ま
た、記録補助層14の膜厚は0Åから100Åで変化させた。
両付け構造では記録補助層の前半部14aを形成した後、
記録層13を形成して、さらに記録補助層の後半部14bを
形成した。この実施例では記録補助層の前半部14aの膜
厚を15Å、記録層13の膜厚を200Åとして、記録補助層
の後半部14bの膜厚を0Åから65Åで変化させた。なお、
記録補助層14の膜厚は実測した値ではなくて、記録補助
層14の形成速度を予め測定しておいて、それぞれの膜厚
に必要なスパッタリング時間を計算して決めたものであ
る。以上のように磁性層を形成した後、第2誘電体層1
5、反射層16を形成した。この実施例では第2誘電体層1
5としてAlSiNを200Å、反射層16としてAlTiを600Å形成
した。
【0050】このように作製された光磁気記録媒体の磁
界感度特性を調べた。線速1.4m/s、記録周波数720kHz、
記録パワー6.0mW、変調磁界±50エルステッドで記録し
たときの記録補助層14の膜厚とCN比との関係を図16に示
す。図中には図1に示す後付け構造の光磁気記録媒体に
ついての結果も示した。また、両付け構造のデータは記
録補助層の後半部14bの膜厚を横軸にしてプロットして
ある。この結果からもわかるように、記録層13と記録補
助層14との積層順序を変えたいずれの構成でも磁界感度
特性の向上の効果がある。ただし、磁界感度特性の記録
補助層膜厚依存性はそれぞれの構成で異なっている。後
付け構造と先付け構造とを比較すると、よく似た傾向を
示している。いずれも、記録補助層14の膜厚が15Åから
45Åのとき優れた磁界感度特性を示している。20Åから
35Åで特に優れた特性を示している。また、中付け構造
は後付け構造と比較すると、膜厚に対するCN比の変化が
緩やかである。中付け構造では記録補助層14の膜厚が15
Åから80Åの広い範囲で優れた磁界感度特性を示す。ま
た、30Åから70Åの範囲で特に優れた特性を示す。この
実施例では記録補助層14の膜厚が50Åのとき最も優れた
特性を示す。後付け構造と先付け構造と比較するとキャ
リアレベルの上昇の傾きが緩やかなため最適な膜厚が約
2倍の値を示していて、その時得られるCN比の値は若干
小さい。つまり、中付け構造はもっとも優れた磁界感度
特性を得る点では後付け構造や先付け構造に劣るが、優
れた磁界感度特性を得られる膜厚の範囲が広いので製造
時のマージンが広い。また、両付け構造は後付け構造や
先付け構造に似た傾向を示している。ただし、この実施
例では記録補助層の前半部14aの膜厚を15Åに固定して
おこなっているため、図16中で例えば横軸の膜厚が10Å
の時には記録補助層14全体としては25Åの膜厚になる。
しかし、その膜厚の時は記録補助層の後半部14bを形成
しない場合と大差ない特性しか示さない。むしろ記録補
助層の後半部14bの膜厚が20Åから45Åの範囲で優れた
磁界感度特性が得られていて、記録補助層の前半部14a
の膜厚15Åを加えると35Åから60Åで優れた特性を示す
ことになる。記録補助層の後半部14bの膜厚が20Åから4
5Åの範囲で優れた磁界感度特性を示すことは、後付け
構造や先付け構造において優れた特性を示す膜厚の範囲
にほぼ一致している。この実施例で用いた記録層13、記
録補助層14の組成の組み合わせではこの範囲の膜厚の記
録補助層14を単独で形成することが重要であることを示
している。
【0051】本発明の光磁気記録媒体に特徴的なことは
70Å以下の極めて薄い膜厚で記録補助層14を形成するこ
とである。しかしながら、このように極めて薄い膜厚で
面内が連続につながった連続膜を作製するためには単結
晶基板や限定された元素の組み合わせを用いて十分制御
された理想的な環境で薄膜が形成される必要がある。し
かしながら、本発明のような光磁気記録媒体の製造にお
いてはそのような限定された条件で薄膜を形成するわけ
には行かない。先にも述べたとおり磁性層に先だって形
成される誘電体層表面には数十Åの起伏の凹凸が存在す
る。このような表面上に70Å以下の極めて薄い膜厚で記
録補助層14を形成しても連続膜を作製できる可能性は低
い。むしろ、図17に示すように凹凸上に島状構造が形成
されていると考えられる。それぞれの記録補助層の島17
1は構造的にはそれぞれ分離している。しかし磁気的に
は、これに接して形成されている記録層13との交換結合
を仲立ちとして記録補助層の島171どうしが交換結合す
ることになる。つまり、磁気的には記録補助層の仮想的
連続膜172が形成されたといってよい。この記録補助層
の仮想的連続膜172の特性によって記録時の磁界感度特
性が決められることになるが、その特性に影響的な記録
補助層の仮想的連続膜172の「組成」は記録層13の組成
と記録補助層14の組成との間の組成をとることになる。
その間のどの組成かは、記録補助層14の膜厚、製造条
件、記録層13との配置によって異なることになる。例え
ば、中付け構造では記録補助層の島171の上下には記録
層13が接しているので、片側しか接していない後付け構
造や先付け構造に比べて、記録補助層の仮想的連続膜17
2の「組成」は記録層13寄りの組成をとることになる。
そのため、記録補助層の仮想的連続膜172の特性は先付
け構造や後付け構造の場合に比べてキュリー温度が低下
して、メイズ磁区を抑圧する効果も減少する結果、キャ
リアレベルの上昇の勾配が緩やかになったのだと考えら
れる。つまり、記録補助層14を重希土類金属、Coの比率
をより大きくした組成とすることによって中付け構造に
おいてもキャリアレベルの変化が著しい光磁気記録媒体
を作製することが可能である。また、両付け構造におい
て優れた磁界感度特性を示す記録補助層の後半部14bの
膜厚範囲が後付け構造や先付け構造において優れた特性
を示す膜厚の範囲にほぼ一致する現象もこのような記録
補助層の仮想的連続膜172の「組成」の観点から考える
と自然なことだといえる。
【0052】つぎに、記録層13と記録補助層14との積層
構造を変えた構成の光磁気記録媒体の加速試験をおこな
って磁界感度特性の経時変化を調べた。加速試験の条件
は温度が85℃で相対湿度95%、試験時間を100時間、200
時間、500時間、1000時間とした。その結果先付け構造
は磁界感度特性の経時変化が非常に小さいことがわかっ
た。また中付け構造も磁界感度特性の経時変化が非常に
小さい。これらの構造はこの点で後付け構造よりも優れ
ている。
【0053】
【発明の効果】本発明の光磁気記録媒体はキュリー温度
がTc1の記録層を有する光磁気記録媒体において記録層
に接して記録補助層が積層されていて、記録補助層のキ
ュリー温度Tc2がTc1よりも高温で、記録補助層の膜厚が
70オングストローム以下であり、記録層の膜厚が80オン
グストローム以上であることを特徴として、そして、そ
の光磁気記録媒体の製造方法は記録補助層をスパッタリ
ング法で形成する際、スパッタガス圧を10mTorr以下で
行なうことを特徴として、また、記録層、記録補助層を
スパッタリング法で形成した後、50℃以上の温度で加熱
処理を行なうことを特徴として、あるいは、記録層、記
録補助層の順に形成するとき、記録層の表面を平坦化し
た後に記録補助層を形成することを特徴としたので、磁
界感度が著しく向上して、弱い磁界で記録が可能になっ
た。そのため、磁気ヘッドが小型化できたり、磁気ヘッ
ドの消費電力を格段に小さくできたり、磁気ヘッドの駆
動回路が安価になったりする効果がある。さらに、磁気
ヘッドと光磁気記録媒体との距離が変動しても安定して
記録が行なえる光磁気記録媒体を提供できる。また、磁
界感度特性の経時変化の少ない光磁気記録媒体を提供で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光磁気記録媒体の実施例の断面図。
【図2】 本発明の光磁気記録媒体の実施例の変調磁界
とCN比、キャリアレベルとの関係を示す特性図。
【図3】 本発明の光磁気記録媒体の実施例の記録補助
層14の膜厚とCN比、キャリアレベルとの関係を示す特性
図。
【図4】 光磁気記録媒体上にビームスポットが照射さ
れた状態を示す説明図。
【図5】 本発明の記録層14に用いる磁性膜のカーヒス
テリシス曲線の温度特性図。
【図6】 矢羽型磁区の形状を示す模式図。
【図7】 本発明の光磁気記録媒体の実施例の記録補助
層14の膜厚とCN比との関係を示す特性図。
【図8】 本発明の記録補助層14に用いる磁性膜のカー
ヒステリシス曲線の温度特性図。
【図9】 本発明の光磁気記録媒体の実施例の記録補助
層14の膜厚とCN比との関係を示す特性図。
【図10】 本発明の光磁気記録媒体の製造方法で作製
した実施例の記録補助層14の膜厚とCN比との関係を示す
特性図。
【図11】 非晶質金属の構造緩和の活性化エネルギー
スペクトルを示す模式図。
【図12】 本発明の光磁気記録媒体の製造方法で作製
した実施例の記録補助層14の膜厚とCN比との関係を示す
特性図。
【図13】 本発明の光磁気記録媒体の製造方法で作製
した実施例の記録補助層14の膜厚とCN比との関係を示す
特性図。
【図14】 本発明の光磁気記録媒体の製造方法で作製
した実施例の記録補助層14の膜厚とCN比との関係を示す
特性図。
【図15】 本発明の光磁気記録媒体の実施例の断面
図。
【図16】 本発明の光磁気記録媒体の実施例の記録補
助層14の膜厚とCN比との関係を示す特性図。
【図17】 極薄膜の記録補助層14が記録層13に積層さ
れた様子を示す模式図。
【符号の説明】
11 透明基板 12 第1誘電体層 13 記録層 13a 記録層の前半部 13b 記録層の後半部 14 記録補助層 14a 記録補助層の前半部 14b 記録補助層の後半部 15 第2誘電体層 16 反射層 41 ビームスポット 42 キュリー温度以上に加熱されている領域 43 磁区形成帯 43a 磁区形成帯の高温部 43b 磁区形成帯の低温部 61 矢羽型磁区の後端部 111 製造直後の活性化エネルギースペクトル 112 熱処理後の活性化エネルギースペクトル 113 空の状態 171 記録補助層の島 172 記録補助層の仮想的連続膜

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 キュリー温度がTc1の記録層を有する光
    磁気記録媒体において前記記録層に接して記録補助層が
    積層されていて、前記記録補助層のキュリー温度Tc2がT
    c1よりも高温で、前記記録補助層の膜厚が70オングスト
    ローム以下であり、前記記録層の膜厚が80オングストロ
    ーム以上であることを特徴とする光磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の光磁気記録媒体の製造方
    法において、基板上にスパッタリング法によって前記記
    録補助層を形成するときのスパッタガス圧を10mTorr以
    下で行なうことを特徴とする光磁気記録媒体の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の光磁気記録媒体の製造方
    法において、基板上にスパッタリング法によって前記記
    録層、および、前記記録補助層を形成した後、50℃以上
    の温度で加熱処理を行なうことを特徴とする光磁気記録
    媒体の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3において、前記基板が変形、ま
    たは、変質する温度よりも低い温度で加熱処理を行なう
    ことを特徴とする光磁気記録媒体の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の光磁気記録媒体の製造方
    法において、スパッタリング法によって前記記録層を形
    成する工程、形成された前記記録層表面を平坦化する工
    程、表面が平坦化された前記記録層上に前記記録補助層
    をスパッタリング法で形成する工程から構成されること
    を特徴とする光磁気記録媒体の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項5において、前記記録層表面を平
    坦化する工程として不活性ガスのプラズマを用いたドラ
    イエッチングにより行なうことを特徴とする光磁気記録
    媒体。
  7. 【請求項7】 請求項1記載の光磁気記録媒体におい
    て、基板側に前記記録層が、基板から遠い側に前記記録
    補助層が積層されたことを特徴とする光磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】 請求項1記載の光磁気記録媒体におい
    て、基板側に前記記録補助層が、基板から遠い側に前記
    記録層が積層されたことを特徴とする光磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】 請求項1記載の光磁気記録媒体におい
    て、基板側から前記記録層、前記記録補助層、前記記録
    層の順で積層されたことを特徴とする光磁気記録媒体。
  10. 【請求項10】 請求項1記載の光磁気記録媒体におい
    て、基板側から前記記録補助層、前記記録層、前記記録
    補助層、の順で積層されたことを特徴とする光磁気記録
    媒体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005062301A1 (ja) * 2003-12-19 2005-07-07 Fujitsu Limited 光磁気記録媒体およびその製造方法、光磁気記録媒体用基板、並びに、母型スタンパおよびその製造方法
KR100745948B1 (ko) * 2006-06-09 2007-08-02 후지쯔 가부시끼가이샤 광자기 기록 매체 및 그 제조 방법, 광자기 기록 매체용기판, 및 모형 스탬퍼 및 그 제조 방법

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