JPH07113901A - 光学膜とその形成方法、反射防止膜とその形成方法、反射膜とその形成方法および光学膜を備えた光素子 - Google Patents

光学膜とその形成方法、反射防止膜とその形成方法、反射膜とその形成方法および光学膜を備えた光素子

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JPH07113901A
JPH07113901A JP5320458A JP32045893A JPH07113901A JP H07113901 A JPH07113901 A JP H07113901A JP 5320458 A JP5320458 A JP 5320458A JP 32045893 A JP32045893 A JP 32045893A JP H07113901 A JPH07113901 A JP H07113901A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】半導体光素子の光入射端、光出射端などに形成
される多層構造の光学膜に関し、多層構造を構成する高
屈折率層の屈折率を広く制御すること。 【構成】高屈折率層と低屈折率層からなる多層構造に形
成され、該高屈折率層は酸化窒化チタン膜から形成され
ていることを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光学膜とその形成方
法、反射防止膜とその形成方法、反射膜とその形成方法
および光学膜を備えた光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、長距離化、大容量化、高速化され
た光ファイバを用いた光通信、及び、光を用いた集積回
路間の信号伝送のように、光を利用した情報伝送技術の
発展が目覚ましい。光を利用した技術をさらに進展させ
るためには、高精度、高出力で安定な光源や、光を高精
度に制御する手段や、より低損失の伝送路や、光交換器
などを開発することが要求される。光を高精度に制御す
るための手段としては、光伝送路や光交換器等に種々の
光学膜を用いることや、半導体レーザの共振器を構成す
るために反射防止膜、反射膜などを使用することが含ま
れる。
【0003】次に、半導体光素子に用いられる反射防止
膜について説明する。例えば半導体レーザの光出力端に
形成される反射防止膜は、その反射率を0.01%以下
に抑えることが要求されている。レンズコーティングの
技術分野ではそのような反射防止膜を実現するために、
15層からなる多層誘電体膜構造が採用されている。
【0004】半導体レーザにおいても、そのような多層
誘電体膜構造を用いることが考えられるが、膜の構成材
料や膜の形成方法は光素子の寿命を支配する決定的な要
因の1つとなるため、レンズコーティングの技術分野で
使用される光学膜をそのまま用いることはできない。半
導体レーザにおいては、反射防止膜の材料や形成方法に
制限があり、実験的な事実に基づいて選択する以外に方
法はなく、また、反射防止膜と半導体レーザとの熱膨張
係数の違いも考慮して層数も可能な限り少なくすること
が望ましい。
【0005】反射防止膜の目的とする反射率を得るため
の最も少ない層数は「2」であるため、例えば1.55
μmの半導体レーザの光伝播定数の計算から導きだせる
反射防止膜として、例えば、高屈折率光学膜と低屈折率
光学膜からなる二層構造を採用し、高屈折率光学膜の屈
折率を2.44、その膜厚を1450Åとし、低屈折率
光学膜の屈折率を1.37、その膜厚を2750Åとし
たものがある。その反射率は0.01%に抑えられる。
【0006】屈折率1.37の光学膜はLiF やMgF2など
の光学材料を用いて一般的な真空蒸着によって形成する
ことができるが、屈折率2.44の光学膜を構成する光
学材料は知られていない。2.44に近い屈折率を有す
る材料として屈折率2.46のZnSeが用いられるが、こ
の材料は屈折率を大きく変えることができない。次に、
光素子に用いられる反射膜について説明する。
【0007】例えば半導体レーザの共振器を構成するた
めの反射膜は、低損失であり、素子の特性に合わせた比
較的高い反射率が要求されている。レンズコーティング
などの可視の波長領域を主体とした技術分野では、ZnS
、ZnSe、 CeO2 のように屈折率が2.0〜2.4を示
す高屈折率な光学膜と、SiO2やMgF2、LiF のように屈折
率が1.35〜1.47を示す低屈折率な光学膜を組み
合わせることにより、低損失で高い反射率が得られるこ
とが知られている。
【0008】しかし、半導体レーザの技術分野では使用
している波長領域が近赤外線領域であることから、上記
した屈折率よりも高いこと、高出力を図るために光の吸
収がないこと、の2つの条件を満たすことが要求され
る。屈折率が高いという条件を満たすものとしてSiやGe
などが知られ、例えばSiとSiO2のペアをそれぞれ波長の
1/4の厚さに形成した多層構造の高反射膜がある。こ
の組み合わせの反射膜は半導体レーザに用いられている
が、SiやGeは近赤外領域に光吸収を持つため、上記した
2つの条件を完全に満たすものではない。
【0009】Siの光の吸収を改善する方法として、成長
方法の改善が挙げられているが、いずれも良い結果が得
られていない。例えば、蒸着によりSiを成長する方法に
よれば、低温下で膜が形成されるので半導体への熱的ダ
メージは少なく、膜厚計をチャンバ内に取り込むことに
より高精度な膜厚制御が可能であるという利点がある反
面、その結晶が多結晶であるために光吸収が大きい。
【0010】また、CVDによるSiの成長方法では、所
望の膜質を安定に形成できるが、高温プロセスであるた
めに、半導体へのダメージがある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ところで、多層構造の
反射防止膜を構成する高屈折率層として所望の屈折率が
得られない場合には、半導体レーザの性能が設計通りに
ならないので、最適な屈折率を有する光学膜の材料或い
はそのような膜の形成方法が望まれる。一方、多層構造
の反射膜を構成する高屈折率層としてSiを使用する場合
に、低温度プロセス下で結晶性が改善する方法があった
としても、Siはガラスなどの誘電体と比較して電気伝導
性が高いので、半導体レーザのpn接合に接触させると
レーザ発振に支障をきたす。
【0012】また、半導体光素子用の反射防止膜や反射
膜を形成するために用いる光学膜の最適な屈折率は一点
ではなく、例えば、半導体レーザの光導波路の構造など
によって屈折率を変えることが必要がある。このため、
反射防止膜や反射膜の屈折率も任意に調整できる技術が
望まれている。本発明はこのような問題に鑑みてなされ
たものであって、成長条件によって屈折率を広く変える
ことができる高屈折率層を有する光学膜とその形成方
法、反射防止膜とその形成方法、反射膜とその形成方法
および光学膜を備えた光素子を提供することを目的とす
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記した課題は、低屈折
率層と酸化窒化チタンよりなる高屈折率層とからなる多
層構造を有することを特徴とする光学膜によって達成す
る。または、低屈折率層に接して、イオンアシスト蒸着
法によって酸化窒化チタンよりなる高屈折率層を形成す
る工程を含むことを特徴とする光学膜の形成方法により
達成する。
【0014】前記光学膜の形成方法において、前記イオ
ンアシスト蒸着法は、電子ガンによって高屈折率層を形
成する原料物質に電子を照射して蒸発させるとともに、
イオンガンと蒸着室内に異なるガスを導入してイオン化
して蒸発した原料物質と結合させることである。前記光
学膜の形成方法において、前記異なるガスは酸素と窒素
である。
【0015】または、高屈折率層と低屈折率層からなる
多層構造を有し、該高屈折率層は屈折率2.2〜2.9
の酸化窒化チタン膜から形成されていることを特徴とす
る反射防止膜によって課題を解決する。または、イオン
アシスト蒸着法により光素子の光入出力端の上に酸化窒
化チタンよりなる高屈折率層を形成する工程と、前記高
屈折率層の上に低屈折率層を形成する工程とを有するこ
とを特徴とする反射防止膜の形成方法により課題を解決
する。
【0016】前記反射防止膜の形成方法において、前記
イオンアシスト蒸着法は、電子ガンによって高屈折率層
を形成する原料物質に電子を照射して蒸発させるととも
に、イオンガンと蒸着室内に異なるガスを導入してイオ
ン化して蒸発した原料物質と結合させることである。前
記異なるガスは、酸素と窒素である。前記反射防止膜の
形成方法において、前記高屈折率層の屈折率は、前記イ
オンアシスト蒸着法による蒸着速度を変えることによっ
て調整することである。
【0017】前記反射防止膜の形成方法において、前記
高屈折率層は、電子ガンから電子を照射して蒸発させた
原料物質を前記光入出力端に照射することにより形成さ
れるとともに、該電子ガンへの印加電圧と供給電流を調
整することによって前記高屈折率層の屈折率が制御され
ることを特徴とする。この場合、前記電子ガンへの前記
供給電流を変えることにより前記高屈折率層の蒸着速度
を変えて前記高屈折率層の屈折率を調整することを特徴
とする。また、前記電子ガンへの前記印加電圧を調整す
ることにより前記高屈折率層の屈折率を調整することを
特徴とする。また、前記イオンガンによってイオン化さ
れた酸素を前記原料物質とともに前記光入出力端に照射
し、該酸素イオンによってイオン化された窒素を前記光
入出力端に照射することを特徴とする。
【0018】または、低屈折率層に接して、イオンアシ
スト蒸着法によって酸化窒化アルミニウム或いは酸化窒
化シリコンよりなる高屈折率層を形成する工程を含み、
前記イオンアシスト蒸着法は、電子ガンによって高屈折
率層を形成する原料物質に電子を照射して蒸発させると
ともに、イオンガンと蒸着室内に異なるガスを導入して
イオン化して蒸発した原料物質と結合させることを特徴
とする光学膜の形成方法により課題を解決する。この場
合、前記異なるガスは、酸素と窒素であることを特徴と
する。
【0019】または、高屈折率層と低屈折率層からなる
多層構造を有し、該高屈折率層は屈折率2.8〜4.0
の酸化窒化チタン膜から形成されていることを特徴とす
る反射膜によって課題を解決する。または、光素子の光
入出力端の上に低屈折率層を形成する工程と、イオンア
シスト蒸着により前記低屈折率層の上に酸化窒化チタン
よりなる高屈折率層を形成する工程とを有することを特
徴とする反射膜の形成方法により課題を解決する。
【0020】その反射膜の形成方法において、前記高屈
折率層の屈折率は、前記イオンアシスト蒸着の際の蒸着
速度を変えることによって調整することを特徴とする。
この場合、前記高屈折率層は、電子ガンから電子を照射
して蒸発させた原料物質を前記低屈折率層の上に照射す
るにより形成されるとともに、該電子ガンへの印加電圧
と供給電流を調整することによって屈折率が制御される
ことを特徴とする。
【0021】前記反射膜の形成方法において、蒸発した
前記原料物質とイオン化された窒素だけを前記低屈折率
層に照射することを特徴とする。全ての前記低屈折率層
は、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、酸化シリコ
ンのいずれかから構成されていることを特徴とする光学
膜によって課題を解決する。
【0022】または、共振器の一端に前記した反射膜が
形成されていることを特徴とする光学膜を備えた光素子
によって課題を解決する。
【0023】
【作 用】本発明によれば、多層構造の光学膜、即ち多
層構造の反射防止膜又は反射膜を構成する高屈折率層を
酸化窒化チタンなどによって形成している。酸化窒化チ
タンは、イオンアシスト蒸着法の条件を適宜選択するこ
とによって屈折率を2.2〜4.0の範囲に制御するこ
とができる。
【0024】したがって、各種半導体光素子に最適な屈
折率を有する光学膜を形成することができ、半導体光素
子の発光、受光などが高精度に制御される。
【0025】
【実施例】本発明者らは、多層構造の反射膜や多層構造
の反射防止膜を構成する高屈折率の光学膜材料として、
ZnS 、CeO2、ZnSe、Si或いはGeなどを使用せずに、誘電
体である酸化窒化チタン(TiON)、その他の酸素窒素化合
物を用いることを考えた。そして、酸化窒化物を形成す
る方法として、TiONが付着する下地の加熱温度が低く、
TiONと下地の密着性が良く、TiONの屈折率を操作できる
イオンアシスト蒸着法を用いた。
【0026】イオンアシスト蒸着法を光学膜の形成に用
いる場合、(1) 光学膜を構成する元素を光学膜にイオン
照射することによって光学膜の充填率をあげてその屈折
率を操作すること、および(2) 複数の元素をイオン照射
することにより形成される光学膜の組成を、その元素の
量を変えることにより調整してその屈折率を操作するこ
と、の2つの屈折率の操作法が考えられる。なお、充填
率は、蒸着により形成される光学膜の中に原子単位で存
在する空孔の少なさを示し、充填率が大きいほど空孔が
少ないことになる。
【0027】前者(1) の方法によれば、屈折率の調整範
囲が狭くなる傾向にあり、後者(2)の方法によれば屈折
率の可変範囲が広くなる。本発明者らは、TiON膜その他
の酸素窒素化合物膜を備えた光学膜をイオンアシスト蒸
着法によって形成し、これを受光素子、発光素子、光変
調器等の光素子、又は、光ファイバ、レンズ等の光学部
品に使用することを見いだしたのでその詳細を以下に述
べる。
【0028】本発明に係る光学膜を説明するに先立っ
て、その光学膜の形成に用いるイオンアシスト蒸着装置
の構成を説明する。図1は、本発明の光学膜を形成する
際に用いるイオンアシスト蒸着装置の概要を示す構成図
である。蒸着室1の上側には、基板16を装着する回転
ドーム2が回転部2aにより回転するように取り付けら
れ、また、蒸着室1の下側の一方の隅には、原料物質収
納用のカートリッジ式ハース3が回転ドーム2の基板装
着面に対向して取付けられている。また、カートリッジ
式ハース3の上には開閉自在なシャッタ5が配置され、
さらに、カートリッジ式ハース3の隣には、カートリッ
ジ式ハース3内の原料に電子を照射するための電子ガン
4が設けられている。
【0029】さらに、蒸着室1の下側の別な隅には、カ
ウフマン型のイオンガン6(直径80mm、ドーム中心ま
で1100mm)が回転ドーム2の基板装着面に対向して
取付けられており、このイオンガン6は、イオン化ガス
導入口7からガスを導入し、そのガスを内部にあるフィ
ラメント(不図示)から放出される熱電子によりイオン
化し、イオン加速電極8の印加電圧によって回転ドーム
2に向けて放出するように構成されている。
【0030】また、蒸着室1の側壁のうちイオンガン6
と回転ドーム2の間の領域には、ガス導入口9が設けら
れ、このガス導入口9から導入されるガスは、自動圧力
調整器10により流量が調整されるように構成されてい
る。蒸着室1のうちガス導入口9と反対側の側壁には排
気口11が形成され、その近傍には水晶振動子式蒸着速
度モニター12が取り付けられている。
【0031】回転ドーム2の中央の上には、反射光によ
って膜厚をモニタする第一の光電式膜厚モニタ13が設
けられ、回転ドーム2の中央にあるモニタ用ガラス基板
14の表面に形成された膜の膜厚をモニタするようにな
っている。また、第一の光電式膜厚モニタ13に対向し
かつイオンガン6と電子ガン4の間の位置には、第二の
光電式膜厚モニタ15が取付けられ、モニタ用ガラス基
板14表面の膜の膜厚を透過光によって測定するように
構成されている。なお、反射光の波長は0.65μmで
あり、透過光の波長は1.55μmである。
【0032】符号17は、回転ドーム2の下面に基板1
6を支持するためのホルダーを示している。以下に、実
施例を説明するが、第1〜第3実施例は、反射防止膜を
構成する高屈折率層の形成方法に関するものであり、そ
れ以降の実施例は反射膜を構成する高屈折率層の形成方
法に関するものである。
【0033】(第1実施例)以下に、上記したイオンア
シスト蒸着装置を用いて第1実施例の光学膜を形成する
方法を説明する。この実施例では、光波長1.55μm
の半導体レーザに用いる二層構造の反射防止膜を構成す
る高屈折率光学膜をTiON膜を用いて形成する場合を例に
挙げて説明する。反射防止膜として機能するためには、
高屈折率光学膜の屈折率を2.50から2.60の範囲
に制御することが望まれる。
【0034】まず、モニタ用ガラス基板14の周囲の回
転ドーム2の下面に、光学膜を形成したようとする基板
16を装着し、また、原料物質であるTi3O5 を充填した
カートリッジ式ハース3を蒸着室1内に装着する。つぎ
に、排気口11から蒸着室1内のガスを排気する。さら
に、イオン化ガス導入口7を通してイオンガン6内に酸
素(O2)ガスを供給し、イオン加速電極8に1kVの電
圧を印加してイオンガン6内に20mAのイオン電流を流
し、これにより酸素をイオン化して蒸着室1内に放出す
る。
【0035】また、ガス導入口9を通して窒素(N2)ガ
スを蒸着室1内に導入する。このとき、ガス導入口9か
ら導入されるガスの流量が自動圧力調整器10により調
整されることによって、蒸着室1内の圧力が4.5×1
-3Paに保持される。また、電子ガン4から放出される
電子ビームの軌跡を磁界によって180度変えてこれを
カートリッジ式ハース3内のTi3O5 に照射する。これに
よりTi3O5 を蒸気化した後に、シャッタ5を開いて回転
ドーム2の下面に向けて蒸気を放出する。
【0036】この場合、電子ガン4内の電極に、例えば
6.0kVの電圧を印加する。このように蒸気化された
酸化チタンとイオン化された酸素及び窒素を、回転ドー
ム2の下の基板16とその側方のモニタ用ガラス基板1
4のそれぞれに供給して、それらの下面にTiON膜を 0.3
〜 1.0Å/sの蒸着速度で蒸着する。その蒸着速度は、
電子ガン4に流す電流量によって調整される。
【0037】このTiONの成長は回転ドーム2側の光電式
膜厚モニタ13により検出される。その光電式膜厚モニ
タ13は光源と光検出器を有し、光源から照射された光
は、そのモニタ用ガラス基板14又はその表面に堆積し
たTiON膜で反射される。また、その反射量は光検出器に
よって検出され、その反射量に基づいて膜厚が求められ
る。
【0038】また、その膜厚は、光電式膜厚モニタ15
によっても検出される。さらに、カートリッジ式ハース
3から蒸気化された物質の一部は、水晶振動式蒸着速度
モニター12内の水晶板の上に堆積し、その堆積量の増
加によって生じる水晶板の振動数の変動によって蒸着速
度が測定される。この場合、蒸着速度と屈折率の関係を
示す曲線を実験結果によって求めると、図1における曲
線aのようになるため、光学膜に必要な屈折率を2.5
5とし、有効範囲を±0.05とすると、蒸着速度を
0.44〜0.51Å/sの比較的狭い範囲で制御する
ことが必要である。
【0039】次に、電子ガン4に印加する電圧をパラメ
ータにして、蒸着速度と屈折率の関係を図1に基づいて
説明する。図1は、イオンアシスト蒸着法によるTiO 膜
の蒸着速度と屈折率との関係を示す図であり、横軸はTi
ONからなる光学膜の蒸着速度を示し、縦軸は屈折率を示
している。
【0040】図1の曲線aは、既に述べたように、原料
物質に電子を照射する電子ガン4の電圧を6.0kVに
固定し、電子ガン4の電流を変えることによってTiON膜
の蒸着速度を変え、そのときの屈折率を測定した結果を
示している。これによれば、TiON膜の屈折率が大幅に変
わる蒸着速度範囲が存在する。図1の曲線bは、電子ガ
ン4の電圧を7.0kVに固定し、電子ガン4の電流を
変えて蒸着速度を変化した場合の屈折率の変化を示して
いる。曲線aに比べて屈折率の蒸着速度依存性が緩和さ
れ、TiON膜の屈折率のバラツキが抑制されることがわか
る。この結果、屈折率を2.55、有効範囲を±0.0
5とする際に、蒸着速度の制御範囲が0.30〜0.6
0Å/sと広くなり、蒸着速度の屈折率のバラツキに与
える影響が少なくなるため、屈折率の制御が容易になっ
ていることがわかる。
【0041】図1の曲線cと曲線dは、電子ガン4の電
圧の調整限界を示している。この曲線cは、電子ガン4
の電圧を5.0kVに固定し、電子ガンの電流を変えて
蒸着速度を変化させた場合の屈折率の変動を示している
が、屈折率2.55とその有効範囲±0.05の範囲で
は、蒸着速度に対応する屈折率が急激に変化するので、
屈折率の制御が困難であることを示している。
【0042】このような電圧を電子ガン4に印加し、屈
折率が急激に変化する蒸着速度範囲でTiON膜を成長する
と、光学膜の屈折率の再現性が悪く、同一光学膜内の屈
折率にバラツキを生じることになる。この好ましくない
事実は、印加電圧が6.0kVより低い場合にも生じ
る。また、曲線dは、電子ガンの電圧を9.0kVに固
定して電子ガンの電流を変えて蒸着速度を操作した場合
の屈折率の変動を示している。これによれば、曲線bに
比べて緩やかな変化を有することがわかるが、蒸着速度
を1.0Å/sとしても屈折率2.50が得られない。
【0043】このように電子ガン4への印加電圧が高く
なるほど屈折率の蒸着速度依存性が小さくなる傾向にあ
る。しかし、電子ガン4への印加電圧が高過ぎると、光
学膜の屈折率の調整範囲が狭くなり、光学膜の屈折率を
調整の有効性が低くなる。このように電子ガン4に流す
電流によって蒸着速度を調整する場合、電子ガン4の印
加電圧値に最適範囲が存在することがわかる。
【0044】本実施例によれば、電子ガン4の印加電圧
と電子ガンの供給電流と蒸着速度と屈折率の関係を利用
して、電子ガン4の電圧を6.0kVから8.0kVの
範囲で最適化され、光学膜の屈折率の制御性が向上し、
任意の屈折率を有する光学膜の形成が容易になる。な
お、上記した条件は、アルミニウム酸素窒素化合物、シ
リコン酸素窒素化合物、その他の酸素窒素化合物の屈折
率を調整する場合にも適用できる。
【0045】この実施例は、イオンアシスト蒸着法によ
ってTiONからなる光学膜を形成する場合に、電子ガンの
電圧を屈折率の蒸着速度依存性が小さい範囲に設定し、
電子ガンの電流を変えて蒸着速度を変えることによって
TiON膜の屈折率を調整する光学膜の形成方法を提供する
ものである。この場合、原料物質に加えて、酸素と窒素
のイオンをその割合を変えて基板上に形成することによ
っ光学材料自体の屈折率を調整することもできる。
【0046】(第2実施例)第1実施例では、光波長
1.55μmの半導体レーザの反射防止膜の高屈折率層
を形成する際に、イオンガン6から導入するガスを酸素
だけにしたが、これは屈折率の制御性を高めるためであ
る。次に、その詳細を説明する。従来、イオンアシスト
蒸着法により成膜する目的は、基板を加熱せずに膜の密
着性を向上させるためであり、この性質は、半導体装置
を構成する膜を形成する場合に特に魅力的であった。
【0047】また、前記のように光学膜を構成する元素
を基板にイオン照射し、これにより成長した膜の屈折率
が大きくなるという効果があるために、その光学膜の屈
折率を操作ができる。図3は、TiO2からなる光学膜をイ
オンアシスト蒸着法により形成する場合に、イオン電流
と光学膜の屈折率の関係を示す図で、縦軸はイオン電流
を示し、横軸は成長した光学膜の屈折率を示している。
【0048】図3の曲線aによると、カートリッジ式ハ
ース3内のTi3O5 に加えて酸素イオンを照射すると、Ti
3O5 が酸素を取り込んでTiO2に変換されて、イオン電流
の増加にともなって形成された光学膜の屈折率が僅かで
あるが大きくなることがわかる。ところが、この光学膜
の形成方法を半導体レーザの光学膜製造に応用し、イオ
ン電流を増加する目的でイオン照射強度を上げると、半
導体レーザに損傷を与えるために、十分なエネルギーを
与えることができず、必要な屈折率のある光学膜が得ら
れないことがある。
【0049】これを補う方法として、カートリッジ式ハ
ース3内の原料物質に含まれないイオンを意図的に照射
して原料物質とは異なる化合物を形成する方法が考えら
れ、これによれば、イオンの量を変化することによって
屈折率を大きく変化できる。例えば、Ti3O5 に窒素イオ
ンを照射してTiON膜を形成すると、図3の曲線bのよう
にTiON膜の屈折率が大きく変化する。
【0050】即ち、原料物質Ti3O5 に加えて、原料物質
とは異なる元素のイオン種、即ち窒素を注入することに
より屈折率を大きく変えることができる。しかし、曲線
bに見られるように、イオン電流が20mAとなる前後の
領域でイオン電流の増加に伴って屈折率が急激に増大
し、例えば2.45〜2.90の制御性良くなくいこと
がわかる。
【0051】次に、Ti3O5 をカートリッジ式ハース3か
ら蒸発させることに加えて、窒素と酸素を同時にイオン
ガン6に導入してイオンアシストすると、原料物質Ti3O
5 に酸素が導入され難くなって、光学膜の屈折率を大幅
に変化できないことが分かった。これは、酸素より窒素
のイオン化が強いためであると考えられる。そこで、窒
素と酸素の混合ガスのうち酸素の割合を変化させてTiON
を形成する実験を行ったところ、図4に示すように、混
合ガスを1としてそこに酸素の占める割合を0.9以上
としたところで、屈折率に大幅な変化が見られた。な
お、図4において、横軸は窒素と酸素の混合ガスに占め
る酸素の割合を示し、縦軸は、光学膜の屈折率を示して
いる。
【0052】そこで、窒素のように比較的イオン化が強
い元素をイオンガン6から離れたガス導入口9のみから
導入し、酸素のように比較的イオン化が弱い元素をイオ
ンガン6に直接導入して光学膜中の窒素と酸素のイオン
の結合状態の制御したところ、図5のような実験結果が
得られた。図5の縦軸は屈折率を示し、横軸は蒸着速度
を示し、その蒸着速度は、電子ガン4の電流を変えるこ
とにより制御される。
【0053】この図の曲線から形成された光学膜の屈折
率が広範囲にわたって一様に変化していることが確認で
きる。これによれば、イオンガン6内にあるフィラメン
トから放出される熱電子によって酸素がイオン化され、
その酸素イオンはイオン加速電極8に印加される電圧に
よって加速されて引き出され、引き出された酸素イオン
は、蒸着室ガス導入口9から導入された窒素をイオン化
して基板16の上にTiONを成長させる。この場合、TiON
膜に導入された窒素と酸素のイオンの結合状態によって
屈折率が決定され、この結合状態は蒸着速度を変化する
ことによって調整される。
【0054】このような方法によると、成長した光学膜
の屈折率がイオン電流の変化に依存しないことがわか
り、低いイオン照射で形成することができ、半導体レー
ザへの損傷を軽減することができる。次に、以上の技術
を導入して、発振波長1.55μmの半導体レーザに適
用される二層構造反射防止膜を構成する高屈折率層の形
成工程を説明する。その反射防止膜は、屈折率が1.3
7の低屈折率光学膜と、屈折率が2.44の高屈折率光
学膜から構成される。
【0055】まず、カートリッジ式ハース3内に原料物
質であるTi3O5 を充填して蒸着室1内に装着する。次
に、基板装着用回転ドーム2の下面の中央に蒸着膜の膜
厚を測定するためのモニタ用ガラス基板14を下向きに
セットし、その周囲に複数の基板16を蒸着される面を
下向きにしてセットする。基板装着用回転ドーム2は、
面内の堆積流の分布のムラが無視できる程度の速度で回
転する。なお、基板16は、具体的には半導体レーザで
あり、その端面に反射防止膜が形成される。
【0056】次いで、排気口11を通して、蒸着室1内
をロータリポンプ、メカニカルブースタポンプによって
中真空(1×10-2〜1×10-3Pa)まで背圧し、クラ
イオポンプによって高真空域1.5×10-4Paまで背圧
する。続いて、蒸着室1の真空度が目標値に達した時点
でイオン化ガス導入口7から酸素を10sccmの流量で導
入し、蒸着室1内を2.6×10-3Paの圧力とする。
【0057】その後に、自動圧力調整器10により流量
を調整しながら蒸着室ガス導入口9から窒素ガスを蒸着
室1内に導入し、その内部圧力を4.5×10-3Paにす
る。さらに上記した蒸着準備が完了した後に、熱陰極を
有する電子ガン4により放出される熱電子の軌跡を磁場
によって180度変更してカートリッジ式ハース3内の
原料物質Ti3O5 に照射する。
【0058】このとき、電子ガン4への印加電圧の大き
さを制御し、さらに電子ガン4の電流を変えることによ
って蒸着速度を制御する。その詳細については、第1実
施例で説明したので省略する。次に、目標とする蒸着速
度に達した段階で、イオンガン6のイオン加速電極8に
1.0kVの電圧を印加し、内部にイオン電流20mAを
流す。イオンガン6は熱陰極型であって活性ガス(酸
素)に電子を衝突させてイオン化する。イオン化し易い
窒素は、イオンガン6から放出される電子によってイオ
ン化される。
【0059】続いて、イオンガン6により酸素イオンを
発生させ、これを窒素に照射して窒素イオンを生じさせ
る。このイオン化処理を2秒間程度行った後に、カート
リッジ式ハース3の上のシャッタ5を開いて、基板16
の上にTiON膜の蒸着を開始する。基板16にTiON膜を蒸
着する過程では、モニタ用ガラス板14上に堆積される
TiON膜の厚さを光電式膜厚モニタ13、15によりモニ
タする。これと同時に、TiON膜の蒸着速度を水晶振動子
式蒸着速度モニタ12によってモニタする。
【0060】この場合、2.44の光学膜を得るために
は、図5から、TiON膜の蒸着速度が0.5Å/sとする
必要がある。なお、図5に示す屈折率は、波長0.63
μmの可視光によって測定したので、蒸着速度が0.5
Å/sでは屈折率が2.55となっているが、波長1.
55μmの半導体レーザの発振周波数に合わせると2.
44となることが実験的に確かめられている。
【0061】なお、成長したTiON膜をFT─IR(フー
リエ変換赤外吸収分析)によって分析した結果、TiON膜
の分子内にO−Nの結合が存在し、化合物を形成してい
ることが確認された。この実施例の光学膜の形成方法に
よって成長したTiON膜の組成は、その分析結果から、ス
ペクトルのピークはTiO2とTiN を示す490cm-1、43
6cm-1、395cm-1に現れる。これにより、TiONが、Ti
O2とTiN の中間的な組成を有することと、また、ピーク
が3つであることから、Ti−O−NやTi−O−O−Nな
どが結合した組成であることが確認できた。
【0062】第1、第2実施例から、TiON膜の屈折率を
2.2〜2.9の範囲で容易に調整できることがわか
る。 (第3実施例)この実施例は、TiON膜を用いた半導体レ
ーザの反射防止膜の形成方法に関するものである。
【0063】半導体レーザの機能を十分発揮するために
は、極めて高度な光反射率の制御が必要で、反射防止膜
の反射率を0.01%以下にする必要がある。半導体レ
ーザなどに使用される反射防止膜は、反射を防止する光
の波長の1/4の厚さを有する複数の誘電体膜を積層し
た多層誘電体膜によって構成されている。
【0064】誘電体よりなる多層構造の反射防止膜は、
従来、ガラス基板又はプラスチック基板の上に複数の誘
電体膜を積層して形成されていたが、このような反射防
止膜を半導体レーザのような半導体素子、特に、化合物
半導体光素子に適用する場合に、それらの素子を構成す
る半導体層との密着性、内部応力、半導体基板の接触面
の界面準位などの電気的特性、総合的な素子寿命などに
限界があることが知られている。
【0065】この実施例は、成長する光学膜の数が少な
く、基板との密着性が良く、接触面の電気的特性が優
れ、寿命が長く、いわゆる半導体基板に優しい反射防止
膜を実現することを目的とする。その目的に沿う0.0
1%以下の反射率を既成技術により制御できる最も少な
い光学膜の層数は2であり、従来から知られている二層
膜は、ZnSe膜とMgF2の組み合わせである。
【0066】そして、反射防止膜を形成するための条件
は、波長が1.55μmの半導体レーザでは、屈折率が
2.44の光学膜を1層目とし、屈折率が1.37の光
学膜を二層目とした構造であり、その場合、0.01%
の反射率の反射防止膜を実現することができる。しか
し、前述したようにZnSeには2つの問題がある。
【0067】第1に、ZnSeの屈折率が2.46であっ
て、半導体レーザの構造の違いによって要求される最適
な屈折率が2.42や2.44である場合に対応するこ
とができないことである。第2に、半導体レーザを構成
する結晶、例えばInP やInGaAsP との物理的な密着性、
応力、耐久性や、接触面での電気的特性などの点で対応
できる材料であるか否かが問題である。
【0068】例えば、ZnSe膜の上にMgF2膜を堆積すると
内部応力が発生して剥離が生じ易くなるなど、半導体レ
ーザに適用したときの問題が大きい。そこで、第1、第
2実施例で説明した屈折率の制御性が良い光学膜を反射
防止膜の一部に用い、これを半導体レーザに取り付けた
例を次に説明する。半導体レーザ21は、2つのクラッ
ド層22,24によって活性層23を挟んだ構造を有
し、その一端には、高屈折率光学膜26と低屈折率光学
膜27からなる反射防止膜25が形成され、その他端に
は、高屈折率光学膜29と低屈折率光学膜30からなる
反射膜28が形成されている。なお、符号18は、下側
クラッド層22が形成される半導体基板、19は、半導
体基板の下面に形成される電極、20は、上側のクラッ
ド層22の上に形成される電極を示している。
【0069】反射防止膜25を構成する高屈折率光学膜
26の屈折率は2.44、低屈折率光学膜27の屈折率
は1.37であり、それらの厚さは反射を防止しようと
する光の波長の1/4の厚さであり、高屈折率光学膜2
6が半導体レーザ21の端面側にある。この屈折率の値
が反射防止膜にとって最適であることは、入射光と反射
光の位相が逆になる条件を求める一般的な光学計算によ
って求められる。
【0070】この実施例では、反射防止膜25の高屈折
率光学膜26として屈折率を2.44に制御したTiON膜
を用い、低屈折率光学膜27としてMgF2膜或いはLiF 膜
を用いている。その高屈折率光学膜26となるTiONの形
成方法は既に第1、第2実施例で説明した。また、反射
膜28を構成する高屈折率光学膜29の屈折率は2.4
4、低屈折率光学膜30の屈折率は1.37であり、そ
れらの厚さは反射させようとする光の波長の1/4の厚
さであり、低屈折率光学膜29を半導体レーザ21の端
面側に位置させる。そして、高屈折率光学膜29として
屈折率を2.44に制御したTiON膜を用い、低屈折率光
学膜30としてMgF2膜或いはLiF 膜を用いることができ
る。そのTiON膜を形成する方法は後の実施例で説明す
る。
【0071】図7は、第3実施例の半導体レーザの湿度
試験における温度変化に対する特性劣化累積度数分布図
である。横軸は温度(℃)を示し、縦軸は、半導体レー
ザの特性劣化累積度数(%)を示している。この図は、
湿度を65%にし、温度を変化した場合の反射膜の剥離
に伴う半導体レーザの特性劣化個数の累積度数分布を示
している。
【0072】図7の、曲線aは、この実施例のTiON−Mg
F2の特性劣化累積度数を示し、また曲線bは、従来のZn
Se−MgF2の特性劣化累積度数を示している 。これらの
曲線a、bから明らかなように、この実施例のTiON−Mg
F2の反射防止膜25の温度に対する特性劣化累積度数
は、従来のZnSe−MgF2の特性劣化累積度数より著しく改
善されている。
【0073】また、図示していないが、反射防止膜を顕
微鏡によって観察すると、従来のZnSe−MgF2では膜が剥
離しているのに対して、この実施例のTiON−MgF2では剥
離せずに変色している。この事実からも、ZnSeの半導体
層に対する接着力が、TiONの半導体層に対する接着力に
比較して弱いことを示している。この場合、TiON膜の組
成をTiO2とTiN の組成の間の組成をもたせることによっ
て、屈折率をそれらの間の値にすることができる。その
内容については、既に述べたので省略する。
【0074】図8は、既に述べたと同じ反射防止膜を有
する光変調器とDFBレーザを集積した半導体光素子の
構成図である。DFBレーザ31と光変調器32は、M
OVPEによってInP 結晶基板とその上に成長されたIn
GaAsP 層によって構成され、DFBレーザ31と光変調
器32はInP 高抵抗層により分離さている。そして、D
FBレーザ31と光変調器32は、Ti、Pt及びAuの三層
構造からなる上部電極33、34を有するとともに、Au
Ge、Auの二層からなる共通の下部電極37を有してい
る。また、光変調器32の光出力端35は、TiONとMgFN
2 の二層膜からなる反射防止膜38で覆われ、さらに、
その反射防止膜38と反対側にあるDFBレーザ31の
端面は反射膜36によって覆われている。
【0075】DFBレーザ31は、活性層に沿って回折
格子を有し、その出力端から放出されたシングルモード
のレーザ光は、光変調器32側に導かれ、その導波路内
で変調を受ける。この光変調器32は、上部電極34と
下部電極37の間の印加電圧により生じる高電界によっ
てバンドギャップが縮小し、これにより導波路内の光を
吸収するというフランツ・ケルディッシュ効果を利用す
る構造を有し、光変調器32に加えるオン・オフ電圧に
よってレーザ光が変調される。
【0076】ところで、光変調器32の端面に形成され
た反射防止膜38の性能の優劣は、レーザ光のシングル
モード性に影響する。ZnSeのように、反射率0.01%
の条件を充足しても、屈折率が設計値か僅かにずれた光
学膜を用いた場合と、屈折率を制御して厳密に設計値に
一致させたTiON膜を用いた場合とでは、変調時のモード
の変化(チャーピング)及び一次モードの制御率が異な
ってくる。
【0077】このことは、実際の光通信ではエラービッ
ト率の増大として現れてくる。二層膜からなる反射防止
膜38を構成するTiON膜は、前述したように、Ti3O5
電子ビームを蒸着させてこれを蒸気化して半導体基板に
照射するとともに、窒素と酸素のイオンを半導体基板に
照射することによって形成される。この場合、導入され
た窒素と酸素のイオンの結合状態によってTiON膜の屈折
率が決定されるから、蒸着速度を調整してその結合状態
を変化させて、TiON膜の屈折率を2.2〜2.9の範囲
で調整する。これにより、この実施例の目的とする屈折
率2.44の高屈折率光学膜を得ることができる。この
ときの膜厚は1450Åである。
【0078】また、同じ蒸着装置内で、原料物質として
MgF2を用いる通常の電子ビーム蒸着によってTiON膜の上
に膜厚2750ÅのMgF2を形成する。このようにして作
られた反射防止膜38の反射率は0.01%であり、半
導体レーザの変調特性も良好であった。なお、反射防止
膜は、半導体レーザの他に受光素子の受光面、或いはそ
の他の半導体光素子に取付けてもよい。
【0079】(第4実施例)上記した実施例において、
反射防止膜を構成する高屈折率光学膜として2.2〜
2.9のTiONを使用することについて述べた。しかし、
多層構造の反射膜を構成する高屈折率層としてTiONを用
いる場合には、光学的理論から3.0又はそれ以上の屈
折率を必要とするため、上記したようなTiONの成長方法
はそのまま採用できない。
【0080】TiONは、誘電体膜であって半導体レーザの
発振に支障とならず、しかも、結晶による光吸収が少な
く、低温形成が可能なので、3.0以上の屈折率が得ら
れれば反射膜への適用が可能になる。本発明者らは、イ
オンアシスト蒸着法によってTiON膜を形成する場合に、
イオンガン6とガス導入口9から蒸着室1内に導入する
ガスを窒素のみとし、カートリッジ式ハース3からの蒸
着粒子に窒素イオンを結合させることによって、屈折率
が3.0以上になることを見いだした。これにより、近
赤外領域において屈折率がSiやGeに匹敵し、光吸収の極
めて少ない光学膜の形成が達成された。
【0081】そこで、以下にその詳細を説明する。図9
は、イオン照射を窒素のみとした本実施例の効果を示し
たものであり、横軸にイオンガン6に印加される電流値
を示し、縦軸にTiON膜の屈折率を示す。図9に示す曲線
aは、酸素と窒素のイオン照射を同時に行う条件の下
で、イオンガン6に印加される電流の大きさを変えて膜
の成長速度を変え、これにより屈折率の変化を測定した
結果である。
【0082】イオンガン6の電流が20mAでピークに達
し、それ以上電流値を上げても変化しないことがわか
る。これは、酸素及び窒素をイオン化させるイオン化エ
ネルギーがイオン照射エネルギーによって与えられ、活
性ガスの種類によって決まるピークエネルギーを越える
と、飽和状態となって一定な値を示すからである。曲線
bは、イオン照射を窒素のみとすることで、TiO と結合
するイオンを窒素だけに限定でき、窒素の含有率を増や
すことによって屈折率の上昇が得られたものである。こ
こで、イオンガン6の電流が20mAより大きくなっても
屈折率が上昇しているのは、一種類の元素(窒素)だけ
のイオンを照射しているので、窒素イオン照射による膜
への打ち込み作用が強くなり、TiON膜内の充填率が増す
るからである。
【0083】また、本発明者らは、TiON膜を成長する場
合に、カートリッジ式ハース3から蒸発する出発物質粒
子の飛散速度を調整すると、屈折率の調整範囲を広げら
れることを見いだした。なお、イオンガン6に流す電流
を50mAとし、電子ガン4の電流を変えて成長速度を大
きくしたところ、屈折率4.0が得られた。
【0084】本実施例における反射膜の形成において
は、イオン照射を窒素のみにしてイオンアシスト蒸着法
により形成した高屈折率のTiON膜と低屈折率の他の光学
膜とを組み合わせることにより得られる。このようなTi
ON膜は、図1に示すイオンアシスト蒸着装置を用いて形
成される。この装置を使用してTiON膜を形成する場合に
は、イオンガン6とガス導入口9から蒸着室1内に導入
するガスを窒素のみとし、イオンガン6から放出された
窒素イオンとカートリッジ式ハース3から蒸着した粒子
とを結合させる。
【0085】TiONよりなる高屈折率の光学膜は、光波長
が1.3μmから1.55μmのレーザ光に用いられる
ものであるが、屈折率の測定にあたっては、光波長が
0.63μmのレーザ光にて行った。上述したように波
長0.63μmにおいて屈折率2.55μmは、1.5
5μmのレーザ光では屈折率2.44となる。多層構造
の反射膜として機能するには、その高屈折率光学膜の屈
折率を3.4〜3.8の範囲に制御することが望まれ
る。
【0086】次に、その屈折率を有するTiON膜の形成工
程を説明する。まず、基板装着用回転ドーム2の下面に
基板16を装着し、原料物質であるTi 2O5 を充填したカ
ートリッジ式ハース3を蒸着室1内に収納する。その後
に、排気口11から蒸着室1内のガスを図示しないロー
タリーポンプ、メカニカルブースタポンプによって排気
することにより、その内部の圧力が中真空となるまで背
圧し、ついで図示しないクライオポンプによって高真空
域、即ち1.5×10-4Paまで背圧する。
【0087】蒸着室1の真空度が目標値に達した時点
で、窒素ガスをイオン化ガス導入口7から蒸着室1内に
導入し、自動圧力調整器10によって蒸着室1内が4.
5×10-3Paになるようにその窒素ガス流量を調整す
る。以上の蒸着準備が完了した後に、熱陰極を有する電
子ガン4により放出される熱電子の軌跡を磁場によって
180度曲げてカートリッジ式ハース3内の原料物質Ti
3O5 に照射する。この場合、電子ガン4の電流を変える
ことにより、基板16の表面におけるTiON膜の成長速度
を制御する。
【0088】目標とする堆積速度に達した時点で、カウ
フマン型イオンガン6のイオン加速電極8に1.0kV
の電圧を印加して、イオン電流50mAを流す。そして、
そのイオンガン6から窒素イオンビームの引出しを開始
した2秒後に、カートリッジ式ハース3の上のシャッタ
5を開いて基板16へのTiONの堆積を開始する。基板1
6の上にTiON膜が堆積する過程において、モニタ用ガラ
ス14上に堆積されるTiON膜の厚さを光学式膜厚モニタ
13、15を用いてモニタし、またTiON膜の堆積速度を
水晶式蒸着速度モニタ12を用いてモニタする。
【0089】この場合、堆積速度を0.5Å/sに保つ
ことにより、屈折率3.6のTiON膜が形成された。な
お、この方法により形成されたTiON膜の近赤外領域の光
吸収は、Si膜のそれよりも少ない。このように、イオン
ガン6から窒素イオンのみを基板16に向けて放出する
ことにより、屈折率が2.8〜4.0の範囲のTiON膜が
形成されることが実験により確認された。
【0090】(第5実施例)この実施例は、TiON膜を用
いた半導体レーザの反射膜又は反射防止膜の形成方法に
関するものである。図10は、本実施例の半導体レーザ
を示す側面図で、その半導体レーザ41は2つのクラッ
ド層42,44によって活性層43を挟んだ構造を有
し、光出力端となるその一端には、劈開面45が形成さ
れ、その他端には多層構造の反射膜46が形成され、劈
開面45と反射膜46とその間の半導体層とによって共
振器が構成される。
【0091】その反射膜46の高屈折率光学膜47とし
て屈折率を3.6に制御したTiON膜を用い、その低屈折
率光学膜48としてSiO2膜を用い、それらの膜厚は反射
させようとする光の波長の1/4であり、高屈折率光学
膜47の方が外側になるように配置される。このTiON
は、SiやGeを用いた反射膜と光学的に同じであるが、Si
やGeよりも光吸収がないことから、多層構造の反射膜4
5を構成する高屈折率光学膜47として優れている。
【0092】なお、低屈折率光学膜48としてMgF2、Li
F 等の誘電体を使用してもよい。
【0093】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、多層
構造の反射防止膜又は反射膜のような多層構造の光学膜
を構成する高屈折率層を酸化窒化物により形成している
ので、この酸化窒化物の屈折率をイオンアシスト蒸着法
の条件により2.2〜4.0の範囲で制御してこの高屈
折率層を半導体レーザに適用することによりその特性を
高精度に制御できる。
【0094】また、そのような光学膜を受光素子、発光
素子、フィルタ素子その他の光学部品の光入出力端に形
成すれば、光入出力の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の光学膜の形成に用いられるイ
オンアシスト蒸着装置の一例を示す構成図である。
【図2】図2は、イオンアシスト蒸着法によって形成さ
れる本発明のTiON膜の蒸着速度と屈折率の関係を示す特
性図である。
【図3】図3は、本発明の光学膜を構成する元素をアシ
ストするイオンアシスト蒸着法のイオン電流と光学膜の
屈折率の関係を示す特性図である。
【図4】図4は、本発明の光学膜をイオンアシスト蒸着
法により形成する場合の窒素に対する酸素の割合と屈折
率との関係を示す特性図である。
【図5】図5は、窒素と酸素を別々な領域から導入する
イオンアシスト蒸着法によって形成される本発明の光学
膜の蒸着速度と屈折率の関係を示す特性図である。
【図6】図6は、本発明の実施例に係る半導体レーザの
断面図である。
【図7】図7は、本発明の光学膜を適用した場合と従来
の光学膜を適用した場合の半導体レーザの湿度試験にお
ける温度変化に対する特性劣化累積度数分布図である。
【図8】図8は、本発明の別な実施例に係る半導体光学
素子を示す外観図である。
【図9】図9は、本発明の光学膜を形成する際に使用す
るイオンアシスト蒸着法において、窒素だけをイオン化
して基板の照射した場合と、窒素及び酸素をイオン化し
て基板に照射した場合のそれぞれにおける、イオン化電
流と光学膜屈折率の関係を示す特性図である。
【図10】図10は、さらに別な実施例に係る半導体光
素子を示す断面図である。
【符号の説明】
1 蒸着室 2 回転ドーム 3 カートリッジ式ハース 4 電子ガン 5 シャッタ 6 イオンガン 7 イオン化ガス導入口 8 イオン化電極 9 ガス導入口 10 自動圧力調整器 11 排気口 12 水晶振動子式蒸着速度モニタ 13、15 光電式膜厚モニタ 14 モニタ用ガラス基板 16 基板 21 半導体レーザ 25 反射防止膜 26 高屈折率光学膜 27 低屈折率光学膜 28 反射膜 29 高屈折率光学膜 30 低屈折率光学膜 31 DFBレーザ 32 光変調器 36 反射膜 38 反射防止膜

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】低屈折率層と酸化窒化チタンよりなる高屈
    折率層とからなる多層構造を有することを特徴とする光
    学膜。
  2. 【請求項2】低屈折率層に接して、イオンアシスト蒸着
    法によって酸化窒化チタンよりなる高屈折率層を形成す
    る工程を含むことを特徴とする光学膜の形成方法。
  3. 【請求項3】前記イオンアシスト蒸着法は、電子ガンに
    よって高屈折率層を形成する原料物質に電子を照射して
    蒸発させるとともに、イオンガンと蒸着室内に異なるガ
    スを導入してイオン化して蒸発した原料物質と結合させ
    ることを特徴とする請求項2記載の光学膜の形成方法。
  4. 【請求項4】前記異なるガスは、酸素と窒素であること
    を特徴とする請求項3記載の光学膜の形成方法。
  5. 【請求項5】高屈折率層と低屈折率層からなる多層構造
    を有し、該高屈折率層は屈折率2.2〜2.9の酸化窒
    化チタン膜から形成されていることを特徴とする反射防
    止膜。
  6. 【請求項6】イオンアシスト蒸着法により光素子の光入
    出力端の上に酸化窒化チタンよりなる高屈折率層を形成
    する工程と、 前記高屈折率層の上に低屈折率層を形成する工程とを有
    することを特徴とする反射防止膜の形成方法。
  7. 【請求項7】前記イオンアシスト蒸着法は、電子ガンに
    よって高屈折率層を形成する原料物質に電子を照射して
    蒸発させるとともに、イオンガンと蒸着室内に異なるガ
    スを導入してイオン化して蒸発した原料物質と結合させ
    ることを特徴とする請求項6記載の反射防止膜の形成方
    法。
  8. 【請求項8】前記異なるガスは、酸素と窒素であること
    を特徴とする請求項7記載の反射防止膜の形成方法。
  9. 【請求項9】前記高屈折率層の屈折率は、前記イオンア
    シスト蒸着法による蒸着速度を変えることによって調整
    することを特徴とする請求項6記載の反射防止膜の形成
    方法。
  10. 【請求項10】前記高屈折率層は、電子ガンから電子を
    照射して蒸発させた原料物質を前記光入出力端に照射す
    ることにより形成されるとともに、該電子ガンへの印加
    電圧と供給電流を調整することによって前記高屈折率層
    の屈折率が制御されることを特徴とする請求項6記載の
    反射防止膜の形成方法。
  11. 【請求項11】前記電子ガンへの前記供給電流を変える
    ことにより前記高屈折率層の蒸着速度を変えて前記高屈
    折率層の屈折率を調整することを特徴とする請求項10
    記載の反射防止膜の形成方法。
  12. 【請求項12】前記電子ガンへの前記印加電圧を調整す
    ることにより前記高屈折率層の屈折率を調整することを
    特徴とする請求項10記載の反射防止膜の形成方法。
  13. 【請求項13】前記イオンガンによってイオン化された
    酸素を前記原料物質とともに前記光入出力端に照射し、
    該酸素イオンによってイオン化された窒素を前記光入出
    力端に照射することを特徴とする請求項10記載の反射
    防止膜の形成方法。
  14. 【請求項14】低屈折率層に接して、イオンアシスト蒸
    着法によって酸化窒化アルミニウム或いは酸化窒化シリ
    コンよりなる高屈折率層を形成する工程を含み、 前記イオンアシスト蒸着法は、電子ガンによって高屈折
    率層を形成する原料物質に電子を照射して蒸発させると
    ともに、イオンガンと蒸着室内に異なるガスを導入して
    イオン化して蒸発した原料物質と結合させることを特徴
    とする光学膜の形成方法。
  15. 【請求項15】前記異なるガスは、酸素と窒素であるこ
    とを特徴とする請求項14記載の光学膜の形成方法。
  16. 【請求項16】高屈折率層と低屈折率層からなる多層構
    造を有し、該高屈折率層は屈折率2.8〜4.0の酸化
    窒化チタン膜から形成されていることを特徴とする反射
    膜。
  17. 【請求項17】光素子の光入出力端の上に低屈折率層を
    形成する工程と、 イオンアシスト蒸着により前記低屈折率層の上に酸化窒
    化チタンよりなる高屈折率層を形成する工程とを有する
    ことを特徴とする反射膜の形成方法。
  18. 【請求項18】前記高屈折率層の屈折率は、前記イオン
    アシスト蒸着の際の蒸着速度を変えることによって調整
    することを特徴とする請求項17記載の反射膜の形成方
    法。
  19. 【請求項19】前記高屈折率層は、電子ガンから電子を
    照射して蒸発させた原料物質を前記低屈折率層の上に照
    射するにより形成されるとともに、該電子ガンへの印加
    電圧と供給電流を調整することによって屈折率が制御さ
    れることを特徴とする請求項18記載の反射膜の形成方
    法。
  20. 【請求項20】蒸発した前記原料物質とイオン化された
    窒素だけを前記低屈折率層に照射することを特徴とする
    請求項17記載の反射膜の形成方法。
  21. 【請求項21】請求項1、2、3、4、14、16又は
    17記載の前記低屈折率層は、フッ化マグネシウム、フ
    ッ化リチウム、酸化シリコンのいずれかから構成されて
    いることを特徴とする光学膜。
  22. 【請求項22】共振器の一端に請求項16記載の反射膜
    が形成されていることを特徴とする光学膜を備えた光素
    子。
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