JPH07138093A - ダイヤモンド膜状体,その製造方法およびダイヤモンド被覆体の製造方法 - Google Patents

ダイヤモンド膜状体,その製造方法およびダイヤモンド被覆体の製造方法

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JPH07138093A
JPH07138093A JP6101869A JP10186994A JPH07138093A JP H07138093 A JPH07138093 A JP H07138093A JP 6101869 A JP6101869 A JP 6101869A JP 10186994 A JP10186994 A JP 10186994A JP H07138093 A JPH07138093 A JP H07138093A
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film
diamond
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brazing
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Application number
JP6101869A
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English (en)
Inventor
Kiyoshi Uchida
清 内田
Masaharu Noda
正治 野田
Kazuo Higuchi
和夫 樋口
Masao Kanzaki
昌郎 神崎
Akio Ito
明生 伊藤
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Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 所望形状への切出し加工,変形が容易である
と共に,ハンドリング性にも優れ,かつ三次元曲面等へ
の接着性,更には靱性,耐摩耗性にも優れたダイヤモン
ド膜状体,その製造方法,及びこれを用いたダイヤモン
ド被覆体の製造方法を提供すること。 【構成】 多結晶のダイヤモンド膜1と,チタン等の活
性金属を含有するろう材層2とよりなるダイヤモンド膜
状体。その製造方法は,上記ダイヤモンド膜状体を,そ
のダイヤモンド膜が外側に位置するように湾曲させる工
程と,ダイヤモンド膜を微細粒子に破壊する工程とを有
する。また,ダイヤモンド被覆体を製造する際には,ろ
う材層側を工具等の基材表面に対向させて積層し,加熱
する。これにより,ろう付けと同時に微細粒子間にろう
材を浸入させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,加工治工具や摺動部品
等に接着して利用することができる,ダイヤモンド膜状
体,その製造方法,及びそれを用いたダイヤモンド被覆
体の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】ダイヤモンドは優れた固さと耐摩耗性並び
に低摩擦性を有し,切削工具,研削工具などの加工治工
具や,無潤滑下での摺動部品等への応用が計られてい
る。特にCVD法等によりダイヤモンドが,膜として製
造できるようになって以来,これらの分野への応用の期
待がますます高まってきている。このために(1)超硬
合金のバイトの刃先にダイヤモンド膜を直接CVD法に
より析出させる,(2)同じく超硬合金へ予めある大き
さに成形加工したダイヤモンド膜をろう付けにより接着
するなどの手法が取られている。
【0003】ところで,ダイヤモンドは共有性結合から
なる代表的な材料であり,そのために上述した硬さ,耐
摩耗性などの優れた性質を有する反面,低熱膨張率,高
弾性率という性質を持つ。この性質のために,ダイヤモ
ンドをCVD法などにより直接基材に析出させた場合に
は,基材との密着力が不足し,剥離しやすいという大き
な問題を抱えている。
【0004】このため,基材表面を予め粗くしておく方
法(例えば特開平5−117090号公報,特開平4−
97974号公報)が提案されている。一方,従来から
単結晶のダイヤモンドを切削バイトの刃先に付ける場合
に用いられてきたろう付け法なども,CVD多結晶膜の
接合法として提案されている(例えば,特開平4−20
9768号公報)。
【0005】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記前者の直
接析出の場合には,密着力が必ずしも十分ではなく,ま
た一番用途の多い鉄,ニッケルおよびコバルトなどを含
む鋼材系の材料には不向きな手法である。その理由は,
鉄,ニッケルおよびコバルトが炭素を吸収してしまいダ
イヤモンドとして析出しにくいためである。また,超硬
合金の場合にも,焼結材として数〜数十%のコバルトを
含有しているために,ダイヤモンド膜を高密着力で析出
させることが困難なためである。
【0006】このため,コバルトを焼結材として用いて
いる超硬合金の場合,ダイヤモンド膜を析出させる析出
面のコバルトを,予め酸処理で選択エッチング(特開平
1−201475号公報),気相でエッチング(特開平
2−88782号公報)することなどが提案されてい
る。即ち,表面近傍のコバルトを除去した後にダイヤモ
ンド膜を析出させねばならない。
【0007】また,後者のろう付け法の場合には,ダイ
ヤモンド膜を形成したい部分の形状に,予め成形された
シリコン等の基板とその表面に形成したダイヤモンド膜
との複合体を用い,これを切削バイトの刃先等にダイヤ
モンド膜側をろう付けしていた。しかし,この場合に
は,ろう付け後,基板を機械的あるいは化学的に除去す
る必要があった。
【0008】特に,特殊な三次元の曲率を持つ面にろう
付けする場合には,予め逆形状の曲率を持った高精度に
加工を施した基板を用意し,その上にダイヤモンド膜を
析出させた後,ろう付けし,その後に該高精度に加工し
た三次元形状の基板を除去する手法をとる必要がある。
そのため,特に三次元形状の基板を,刃先等に接着され
たダイヤモンド膜から除去する方法が困難であった。そ
のため,このろう付け法はコスト高となってしまう。
【0009】また,コスト低減のために,CVD法で形
成したダイヤモンドを基板から剥離し,そのダイヤモン
ド膜の自立膜を用いてろう付けする方法もある。しか
し,多結晶のダイヤモンド膜は,その膜構造からくる極
端に低い強度のため,ダイヤモンド膜を所望形状に切り
出すことが困難であり,またろう付けの時のハンドリン
グ性が困難であった。
【0010】また,以上の問題点は,切削バイトの刃先
など非常に小さい部分にダイヤモンド膜を利用する場合
もさることながら,摺動部品などの大きな形状物にダイ
ヤモンド膜を利用する場合において,より重要な問題と
なる。上記のごとく,多結晶のダイヤモンド膜は優れた
硬さと耐摩耗性,低摩擦性を有しているにも拘らず,上
記問題のために,その利用が充分に普及していない。本
発明は,かかる従来の問題点に鑑み,所望形状への切出
し加工,変形が容易であると共にハンドリング性にも優
れ,かつ三次元曲面等への接着性,更にはダイヤモンド
膜の靱性,耐摩耗性にも優れたダイヤモンド膜状体及び
その製造方法を提供しようとするものである。
【0011】
【課題の解決手段】本発明は,多結晶のダイヤモンド膜
と,該ダイヤモンド膜の一方の面に対して接合したチタ
ン等の活性金属を含有するろう材層とよりなることを特
徴とするダイヤモンド膜状体にある。
【0012】本発明において最も注目すべきことは,ダ
イヤモンド膜状体が多結晶のダイヤモンド膜とこれに一
体的に接合したろう材層とよりなり,かつろう材層はろ
う材と活性金属とよりなることである。該活性金属は,
ダイヤモンドとの接触面において炭化物を形成する金属
である。かかる活性金属としては,チタン,クロム,タ
ンタル,ニオブ,バナジウムおよびジルコニウムのグル
ープの中から1種以上を用いる。
【0013】これらの活性金属は母材のろう材の種類に
より選択される。上記活性金属は,少なくとも上記ダイ
ヤモンド膜との接合面に存在していることが好ましい。
これにより,ろう材層とダイヤモンド膜とを強固に結合
することができる。また,上記活性金属は,ろう材と合
金状態において存在していても良い(実施例1参照)。
【0014】また,上記ろう材層におけるろう材は,
金,銀,銅,すずなどをそれぞれ主成分とするろう材の
グループの中から1種以上を用いる。上記ダイヤモンド
膜状体は,平面状の場合の外,鋭角状,直角状,鈍角
状,波状等の二次元方向への曲げ面,更には皿状,半球
面状等の三次元方向への曲げ面を有していることも可能
である。特に,本発明のダイヤモンド膜状体は,後述の
ごとく,可撓性を有するので,二次元,三次元方向への
曲げ面を可能にする。
【0015】次に,上記ダイヤモンド膜状体の製造方法
としては,多結晶のダイヤモンド膜を析出形成する膜形
成工程と,上記ダイヤモンド膜の一方の面に対して,チ
タン等の活性金属を含有するろう材を積層する積層工程
と,これら積層物に,真空中又は不活性ガス中において
加熱して,ダイヤモンド膜とろう材層とを接合する接合
工程とよりなることを特徴とするダイヤモンド膜状体の
製造方法がある(第1製造法)。
【0016】上記積層工程において,ダイヤモンド膜に
積層するろう材層としては,上記ろう材と上記活性金属
との合金よりなる箔状体を用いてもよい。また,上記箔
状体は,半溶融の状態でダイヤモンド膜に積層接合する
こともできる。この場合には,両者の接合が容易であ
り,かつ接合がより強固となる。また,上記積層工程
は,上記ダイヤモンド膜の析出成長面に対して上記活性
金属を形成し,更にその片面に活性金属を含まないろう
材を形成することにより行う方法がある。この場合に
は,積層工程時の温度を下げることができるという効果
が得られる。
【0017】また,上記積層工程は,予めろう材の片面
に蒸着法等の手段により上記活性金属層を形成したろう
材層の膜を作製しておき,このろう材層の膜における上
記活性金属層をダイヤモンド膜の析出成長面に向けて積
層する方法がある。この場合にも同様の効果が得られ
る。また,上記ろう材層の膜は,例えばろう材の片面に
インジューム等の低融点化物質の薄層を設け,更に該低
融点化物質の上に活性金属層を設けることにより作製す
る。この場合には,さらに,積層時の温度を低下させる
ことができ,前記活性金属層が形成されていない側に他
の物体が接合することを防止することができる。
【0018】また,多結晶のダイヤモンド膜の形成は,
シリコン等の基板に析出形成し,接合工程の後に上記基
板をダイヤモンド膜から除去する方法がある。この場合
には基板の表面は,鏡面研磨されていることが好まし
い。表面が鏡面であれば,前記ダイヤモンド膜状体を剥
離し易く,また,最終製品にダイヤモンド膜を形成する
時に平滑な表面が得られ,研磨工程の削減などの効果が
得られる。
【0019】また,多結晶のダイヤモンド膜の形成は,
膜形成板の表面に上記ダイヤモンド膜を形成し,次いで
該ダイヤモンド膜を剥離して自立膜となし,その後該自
立膜を上記積層工程に用いる方法がある。この場合に
は,ダイヤモンド膜の上下どちらの面にもろう材層をつ
けることが可能になる。また,特にヒートシンクなどに
用いる場合には,結晶性が良く,熱伝導性のよい成長面
を表面側に向けることが可能になる。
【0020】気相法による多結晶ダイヤモンド膜の形成
方法としては,高周波プラズマCVD法,フィラメント
熱CVD法,EA−CVD法,誘磁場高周波プラズマC
VD法,RF−熱プラズマCVD法,DC−プラズマC
VD法,DC−プラズマジェットCVD法,燃焼法等が
ある。
【0021】次に,ダイヤモンド膜状体の他の製造方法
としては,多結晶のダイヤモンド膜とその一方の面に対
して接合したチタン等の活性金属を含有するろう材層と
からなるダイヤモンド膜状体を準備し,該ダイヤモンド
膜状体をそのダイヤモンド膜が外側に湾曲するように加
工し,上記ダイヤモンド膜を微細粒子に破壊する膜破壊
工程とからなることを特徴とするダイヤモンド膜状体の
製造方法がある(第2製造法)。
【0022】以下に,上記の第2製造法につき詳説す
る。即ち,まず,上記の加工用のダイヤモンド膜状体
は,例えば,前記した積層工程,接合工程を用いた第1
製造法により,作製したものを用いる。次に,ダイヤモ
ンド膜状体をダイヤモンド膜が外側に湾曲するようにロ
ール等によって加工する。この加工により,ダイヤモン
ド膜の組織を微細粒子に破壊する。
【0023】この微細粒子の大きさは,用いるダイヤモ
ンド膜の膜厚と,該膜を構成する結品粒子の大きさによ
って決定される。通常,この微細粒子の大きさは,数μ
m〜100μmとすることが好ましい。100μm以上
では本方法の効果が少なく,一方数μm以下に微細化す
ると粒子の欠けによる脱落のおそれがある。上記ロール
かけ等の操作は該ダイヤモンド膜状体の1方向だけでな
く,最初にかけた方向に直角な方向に再度かけておくこ
とが望ましい。
【0024】ここで得られるダイヤモンド膜状体は,非
常に可撓性に富んだ膜である。ダイヤモンド膜状体を作
成の際に,ダイヤモンド膜の成長面側にろう材の箔を接
合しておくと,大きく成長した成長面の凹凸のため個々
の粒子がろう材箔と強固に接合されているために,ダイ
ヤモンド膜を破壊しても個々の粒子は殆ど剥脱すること
はない。
【0025】その他は,前記第1製造法と同様である。
上記の第2製造法により得られたダイヤモンド膜状体
は,そのダイヤモンド膜が微細粒子に破壊されている。
【0026】次に,該ダイヤモンド膜状体を工具等に被
覆した,ダイヤモンド被覆体の製造方法について説明す
る。この方法としては,多結晶のダイヤモンド膜とその
一方の面に対して接合したチタン等の活性金属を含有す
るろう材層とからなるダイヤモンド膜状体を準備し,該
ダイヤモンド膜状体をそのダイヤモンド膜が外側に湾曲
するように加工し,上記ダイヤモンド膜を微細粒子に破
壊する膜破壊工程と,上記ダイヤモンド膜状体を,その
ろう材層側が基材表面に対向するように,基材上に積層
する工程と,これらを真空中又は不活性雰囲気中で加熱
して,上記ろう材層の一部を前記微細粒子間に浸入させ
ると共に前記ダイヤモンド膜状体を基材にろう付けする
ろう付け工程とからなることを特徴とするダイヤモンド
被覆体の製造方法がある。
【0027】即ち,膜破壊を行ったダイヤモンド膜状体
をろう材面を工具の面に押しつけて真空中ないしは不活
性雰囲気中で加熱しろう付けを行なう。このろう付けの
際には,表面を平滑にした荷重物により,個々の粒子の
配列が壊されないように,押しつけながらろう付けを行
なう。
【0028】鏡面加工した基板上に析出させたダイヤモ
ンド膜の成長面側をろう付けすると,表面に出る側は基
板の表面形状を転写した平滑な面であり,しかもダイヤ
モンド析出初期の微細なダイヤモンド粒子からなる面
(ダイヤモンド膜)が表面側になり工具として好ましい
性質が得られる。
【0029】上記ろう付け時においては,まず活性金属
が,破壊された微細粒子間のクラックに拡散浸透し,引
き続いてろう材が浸透する。従って,各微細粒子間は,
例えば活性金属としてチタンを用いた場合にはダイヤモ
ンド粒子の表面にチタンカーバイドの強固な結晶層を作
り,これとろう材とが反応して個々の独立した微細粒子
を強固に結合した被覆層を作る。
【0030】このようにして得られた工具上のダイヤモ
ンド膜状体は通常のレーザー加工,或いは研磨加工によ
って所望する形状の工具に仕上げられる。工具の基材は
超硬合金,工具鋼およびセラミックスなど特に材質を問
わない。上記の工程によって得られるダイヤモンド膜状
体は,個々のダイヤモンド粒子がろう材により基材に結
合されることと,ダイヤモンド粒子の微細粒子の間にも
ろう材が浸入している。そのため,粒子間の結合力も強
固なものとなり,ダイヤモンド膜状体の靱性が改善され
る。
【0031】また,微細粒子の間にろう材が浸入した複
合体構造を持つため,膜にかかる残留圧縮応力が低減さ
れ,刃先が損壊することが低減される。以上の効果によ
り,気相合成ダイヤモンド膜を用いた加工工具として理
想的なものが得られる。上記方法により,従来,気相合
成法により得られたダイヤモンド膜を加工工具へ応用す
ることについての諸問題を解決することが出来る。
【0032】また,上記ダイヤモンド膜状体の用途に関
して,これを利用する相手材としては,切削工具の刃先
への接着がある。工具の基材としては,超硬合金,工具
鋼,セラミックスなどがある。上記切削工具としては,
例えば軽合金の切削,プラスチック,グラファイト等の
切削加工に用いるスロアーウェイチップ,ドリル,エン
ドミル,ルーターなどがある。また,電子部品にリード
ワイヤーを高速接合するためのボンディングツール,プ
リンタヘッド,ダイス,ガイドローラ,精密回転機器の
軸受もある。
【0033】また,オーディオ機器のスピーカー等の振
動板,電子部品,砥石などもある。また,エンジンのロ
ッカーアーム,バルブシフターシムなどの耐摩耗性を必
要とする動弁系自動車部品もある。これらの利用先に
は,上記ダイヤモンド膜状体を所望形状に切出し加工し
て,上記ろう材層を介して相手材に接着する。接着に当
たっては,ろう材層を加熱溶融させる。
【0034】
【作用及び効果】本発明のダイヤモンド膜は棒状粒子が
縦方向に並んだ構造を持ち,その多結晶を構成するダイ
ヤモンド粒子の粒間は,その接合強度が小さい。そのた
め,比較的小さい曲げ力によっても粒子間の接合は破壊
される。しかし,本発明のダイヤモンド膜状体において
は,ダイヤモンド膜の一方の面に上記活性金属を含むろ
う材層を接合しているため,各粒子はそれぞれろう材層
の表面に化学的に強固に接合されている。
【0035】特にろう材層が多結晶ダイヤモンド膜の析
出成長面に対して接合されている場合には,上記析出成
長面は,多結晶ダイヤモンド膜を上記析出方法において
形成した最表面である。そのため,析出成長面は微細な
凹凸表面を有している。それ故,ろう材層とダイヤモン
ド膜とは,物理的に強固に接合されている。
【0036】また,本発明においては,ダイヤモンドの
粒子間の接合が破壊されても,ダイヤモンド膜自体はそ
のまま残存している。換言すれば,本発明のダイヤモン
ド膜状体は可撓性を有している。そのため,ダイヤモン
ド膜状体の切出し加工,曲げ加工を施すことができる。
上記の切出し加工は,ろう材層側から,カッターナイフ
等により,容易に切断することができる。このとき,ダ
イヤモンド膜側の切断面はダイヤモンド粒子の単位で破
断されるため,切断面の寸法精度は,析出した多結晶の
粒子の大きさと膜破壊時の曲げ応力とによって決まる。
【0037】このように,本発明のダイヤモンド膜状体
は,ダイヤモンド膜を強固に結合し,かつ可撓性を有す
るため,ハンドリング性にも優れている。また,切り出
したダイヤモンド膜状体は,上記可撓性を有するため,
平面状の他,二次元曲面,三次元曲面など任意の形状
に,軽いプレス成形等により,容易に成形できる。ま
た,そのため,種々の表面形状の任意の相手材に容易に
接着することができる。
【0038】例えば,L字状等の屈折相手材の内側面
に,CVD法により,直接にダイヤモンド膜を形成する
ことは,CVD法実施時のガス流れ,相手材の冷却等に
問題が多いが,本発明の場合には,上記内側面へのダイ
ヤモンド膜の形成は容易である。また,上記可撓性を有
するため,ダイヤモンド膜の析出形成,更には,該ダイ
ヤモンド膜へのろう材層の接合は,最も効率の良い平面
状態で行うことができる。そのため,その製造コストも
安価である。
【0039】また,ダイヤモンド膜が,上記のごとく粒
子間で破壊されても,相手材にろう付けする際に,ろう
材層が粒子間のクラックに浸透し,粒子間を強固に接合
する。そのため,相手材に取付けた後も,ダイヤモンド
膜の多結晶粒は,脱落しない。また,前記従来例に示し
たごとく,鋼材へのダイヤモンド膜の形成は,困難であ
ったが,本発明によれば,容易に形成することができ
る。また,上記第1および第2製造法によれば,上記の
ごとき優れた性質を有する,ダイヤモンド膜状体を製造
することができる。
【0040】次に,上記ダイヤモンド被覆体の製造法の
作用効果につき説明する。この場合には,ろう付け工程
を行なうことにより,個々のダイヤモンド膜状体の微細
粒子が強固に結合された結果,従来問題であった組織破
壊あるいは柱状粒子の座屈による破壊が極端に改善さ
れ,耐摩耗性が更に向上する。そのため,例えば,アル
ミニウム系合金の切削加工時における,高速送りに対す
る,刃先の破壊が大幅に改善できる。
【0041】また,ろう材が微細粒子の間に浸入するこ
とにより,ダイヤモンド膜は複合体組織となりその結果
ダイヤモンド膜自体の平均熱膨張率がやや大きくなり,
またヤング率も小さくなり,熱応力が緩和される。さら
に,靱性も向上する。このために密着力も大きく改善さ
れる。
【0042】更に,チタンなどの活性金属を含むろう材
を用いると,チタンが先に微細粒子の粒界に浸入し,自
動的にダイヤモンド粒子の表面をメタライズするのと同
じ効果を示す。従ってダイヤモンド砥石などを作成する
際に行なう事前の,ダイヤモンド粒子表面のメタライズ
処理は不要となる。また,このダイヤモンド被覆方法に
よれば,上記のごとき優れた性質を有するダイヤモンド
被覆体を得ることができる。
【0043】以上のごとく,本発明によれば,所望形状
への切出し加工,変形が容易であると共に,ハンドリン
グ性にも優れ,かつ三次元曲面等への接着性,更にはダ
イヤモンド膜の靱性,耐摩耗性にも優れた,ダイヤモン
ド膜状体,その製造方法およびダイヤモンド被覆体の製
造方法を提供することができる。
【0044】
【実施例】
実施例1 本発明の実施例にかかるダイヤモンド膜状体及びその製
造方法(第1製造法)につき,図1〜図3を用いて説明
する。まず,図2(A),(B)に示すごとく,本例の
ダイヤモンド膜状体10は,多結晶のダイヤモンド膜1
と,該ダイヤモンド膜1の析出成長面11に対して接合
したろう材層2とよりなり,かつろう材層2はろう材と
チタン等の活性金属とよりなる。
【0045】また,上記ダイヤモンド膜状体10を製造
するに当たっては,まず図1(A)に示すごとく,シリ
コン等の基板3の上に高周波プラズマCVD法等により
ダイヤモンド膜1を析出形成して,中間体31を作る
(膜形成工程)。次に,図1(B)に示すごとく,上記
中間体31におけるダイヤモンド膜1の析出成長面11
の上に上記ろう材層2を積層して積層物32を作製する
(積層工程)。
【0046】次に,図1(C)に示すごとく,積層物3
2を加熱炉に入れると共に積層物32の上に鋼材等の荷
重物4を載置する。そして,加熱炉内を真空状態にし
て,加熱する。この加熱温度及び時間は,ろう材層2が
ダイヤモンド膜1の析出成長面11に接合される条件で
行う。次に,図2(A)に示すごとく,基板3とダイヤ
モンド膜1とろう材層2とが接合された接合体を加熱炉
より取り出し,ダイヤモンド膜1より基板3を除去す
る。これにより,同図に示すごとく,上記ダイヤモンド
膜状体10が得られる。
【0047】次に,このダイヤモンド膜状体10を切削
バイト等の相手材5(図3)に接着するに当たり,まず
図2(B)に示すごとく,ろう材層2の側より,ナイフ
により,必要な大きさ,形状にダイヤモンド膜状体10
を切断する。その後,図2(C)に示すごとく,相手材
5の表面形状に沿って,円弧状にプレスにより成形す
る。次いで,図3に示すごとく,相手材5の表面にろう
材層2が対面するようにダイヤモンド膜状体10を載置
し,更にその上に,相手材の表面に沿った押圧面61を
有する荷重体6を載置する。その後,これらを真空中又
は不活性ガス中で加熱する。そして,上記ろう材層2が
相手材5に溶着される。
【0048】これにより,図3(B)に示すごとく,相
手材5の表面形状に沿って,ダイヤモンド膜状体10を
接着することができる。本例によれば,ダイヤモンド膜
状体10は可撓性を有し,かつダイヤモンド膜1はろう
材層によって強固に接合されているので,所望形状への
切出し加工,変形が容易であると共に,ハンドリング性
にも優れている。また,そのため,三次元曲面等への接
着性にも優れている。
【0049】実施例2 シリコン基板に,多結晶のダイヤモンド膜を析出形成
し,該ダイヤモンド膜の析出成長面側に箔状のろう材層
を積層し,真空中で加熱して,ダイヤモンド膜状体を作
製した。以下,その具体例を示す。
【0050】50×50×1mmの鏡面加工した単結晶
のシリコン基板に,ダイヤモンド粉により傷付け処理を
施した後,高周波誘導熱プラズマ装置により30μm厚
の多結晶ダイヤモンド膜を析出させた。この際の析出条
件は,高周波出力が25kW,シースガスがAr;85
SLMとH2 ;20SLMとCH4 ;1SLM,プラズ
マガスがAr;2SLM,チャンバー内圧力が150T
orr,基板温度が950℃であった。
【0051】上記シリコン基板上に析出させたダイヤモ
ンド膜の析出成長面側に,50×50mmのWESGO
社製の箔状ろう材層(Ag;59%−In;12.5%
−Cu;27.25%−Ti;1.25%,膜厚20μ
m)を積層した。次に,ろう材層の上に,実施例1の図
1(C)に示したごとく,平滑に研磨仕上げした耐熱鋼
片(φ75×15t)を載せ,真空炉の中にセットし
た。
【0052】次に,真空炉内を,1×10-5Torrの
真空に引き,最高680℃,10分の加熱を行った。冷
却後,これを取り出したところ,ろう材層はダイヤモン
ド膜側とは強固に接合されていたが,耐熱鋼側には非常
に弱い接合をしているのみであった。また,これらを約
400℃に再加熱したあと,水中に投入して急冷した。
その結果,上記耐熱鋼板はダイヤモンド膜から容易に剥
離した。
【0053】一方,上記シリコン基板は,大部分を研磨
除去し,残りをフッ酸で溶解除去した。これにより,上
記ダイヤモンド膜の析出成長面上にろう材層を一体形成
したダイヤモンド膜状体を得た。該ダイヤモンド膜状体
は可撓性に富み,ろう材層側からカッターナイフなどで
目的形状に傷をつけた。その後,ダイヤモンド膜状体を
引張ると容易に切出しが可能であった。
【0054】また,該ダイヤモンド膜状体は可撓性に富
み,曲げることも可能であった。これは,多結晶ダイヤ
モンド膜を構成する粒子が縦方向に配列した柱状の構造
を持つために,ダイヤモンド粒子間で容易に破壊が起こ
るためである。しかし,このように破壊が起こっても,
一個一個の粒子は一端をろう材層に強固に化学的に接合
されているために剥離脱落することは無かった。
【0055】実施例3 本例においては,予めモリブデン基板に多結晶ダイヤモ
ンド膜を析出形成し,このダイヤモンド膜を剥離して自
立膜を作製した。そして,この自立膜の析出成長面に,
活性金属としてのチタンを析出させ,更にその上に活性
金属を含まないろう材を積層した。そして,真空炉中で
加熱し,実施例1の図2(A)で示したごとき,ダイヤ
モンド膜状体を作製した。以下,これを詳説する。
【0056】即ち,まず30mmφ×5mmtのモリブ
テン基板の1面を鏡面研磨しておき,ダイヤモンド砥粒
で傷つけ処理を施した後,この上に実施例1と同様に高
周波誘導熱プラズマ法により多結晶のダイヤモンド膜を
30μmの厚さに析出させた。この基板に析出させたダ
イヤモンド膜は容易に剥離し,多結晶ダイヤモンド膜の
自立膜として得られた。次に,該ダイヤモンド自立膜の
析出成長面側にチタンをマグネトロンスパッタリング装
置により0.1μmの厚さに析出させた。
【0057】次に,上記チタン層の上に活性金属を含ま
ない通常の銀ろう(Cu;72%−Ag;28%)のろ
う材箔(厚さ20μm)を積層した。次いで,2枚の4
0mmφ厚さ15mmの荷重用の耐熱鋼の間に,上記積
層物を挟み,真空炉の中へセットし1×10-5Torr
の真空中で780℃で10分間加熱した。
【0058】冷却後,これを取り出したところ,ろう材
の箔はダイヤモンド自立膜に強固に付着しており,一方
ろう材箔の上面の耐熱鋼側には付着していなかった。こ
れにより,多結晶のダイヤモンド膜とその析出成長面側
にチタンを介して接合されたろう材とよりなる。ダイヤ
モンド膜状体が得られた。このダイヤモンド膜状体はダ
イヤモンドの面を外側にして,球面状に反り返り易いも
のであった。
【0059】なお,比較のため,耐熱鋼の上に予めチタ
ン膜を蒸着したダイヤモンド膜を置き,その上に銀ろう
箔をおき,その上に置く耐熱鋼の荷重を掛けずに,上記
と同様の加熱を行った。その結果,銀ろうはダイヤモン
ド膜に強固に付着しているが,ダイヤモンド膜を外側に
して巻紙状にまるまってしまい,余り好ましいものは得
られない。
【0060】しかし,巻紙状に巻いた結果,新たに重な
りあったダイヤモンド膜とろう材層の接触部分は接合さ
れていなかった。このことは,ダイヤモンド膜に銀ろう
が密着した後,冷却時において固化したろう材層とダイ
ヤモンド膜とが,その熱膨張の差によって,巻かれたも
のと考えられる。
【0061】実施例4 上記実施例3で作製したダイヤモンド膜状体を用い,こ
れを,自動車のエンジンのロッカーアームのパッド面に
接着した(図2〜図3参照)。上記ロッカーアームは,
鋳鋼性であり,鋳鋼は炭素の含有量が多いため,ろう付
けが困難である。したがってダイヤモンド膜状体の接着
に先立って,ロッカーアームを大気中,600℃で2時
間加熱し,脱炭素処理を施した。その後,上記パッド面
の接着面を再研磨したものを被覆基材とした。
【0062】一方,実施例3で得られた厚さ17μmの
ダイヤモンド膜からなるダイヤモンド膜状体から12×
15mm角のダイヤモンド膜状体を切出した。そして,
ダイヤモンド膜状体のろう材層側をロッカーアームのバ
ッド面に向けて重ね,さらにその上から該バッド面と逆
形状の曲率を持ち,アルミナを蒸着した耐熱鋼を重ね,
さらにその上から耐熱鋼の荷重を重ね,これらを真空炉
内にセットした。
【0063】次いで,1×10-5の真空に引きながら,
810℃で10分間加熱し,ろう付けを行った。これに
より,三次元曲面のパッド面に,ダイヤモンド膜状体を
容易に接着することができた。また,上記ダイヤモンド
膜状体は,表面に凹凸を有する析出成長面側をろう付け
面にしており,ロッカーアームの表面に出ているダイヤ
モンド膜側は鏡面研磨された析出基板の表面形状を有し
ており,非常に平滑である。
【0064】CVD法によるダイヤモンド膜の構成粒子
の大きさは最大5〜10μm程度であり,基板に接触し
ていた側はさらに微細な粒子よりなる。本実施例におい
ては,ダイヤモンド膜を凸状の外にしてろう付けしてい
るため,パッド面の曲率に応じてダイヤモンド膜の粒間
にクラックが入り,上記曲率に対応する面が形成され
る。このため,ろう付け時に印加する荷重は,多結晶の
ダイヤモンド膜を上記曲率に応じて,破壊するのに充分
な荷重をかける必要がある。
【0065】ろう付け後のダイヤモンド膜側は,曲げら
れた方向に沿って多数のクラックが発生するが,このク
ラックにはチタンを非常に多く含有する銀ろうが拡散し
て粒子の間隙をうめている。そのため,ダイヤモンド粒
子はろう材層に,強固に接合しており,1個1個の粒子
が剥離脱落することは無かった。また,上記のごとく,
ダイヤモンド膜状体を接着したロッカーアームは,ダイ
ヤモンド砥石で仕上げ加工し,これをエンジンに取付け
てテストしたところ,充分な耐久性を示した。
【0066】実施例5 上記実施例3において作製したダイヤモンド膜状体を用
い,これを加工用バイトの刃先に接合した(図2,図3
参照)。即ち,まず切削加工時における切削粉の逃げ面
を考慮した凹面形状を持つ加工用バイトを準備した。次
に,この加工用バイトの刃先へダイヤモンド膜状体を接
着することを想定して,10×10×5mmの超硬合金
ブロックに対して,その10×5mmの面に,半径3m
m,深さ2mmの溝を,5mmの辺方向に沿って設け
た。
【0067】そして,この溝の内面に,実施例3におい
て作製した,合計厚み20μmのダイヤモンド膜を接着
した。上記接着に当たっては,ダイヤモンド膜状体は,
複合膜被覆面より大きい目に切出し,ろう材面を溝面に
添うように当てた。また,背後のダイヤモンド膜側か
ら,結晶アルミナの丸棒を押し当て,ダイヤモンド膜状
体を溝形状に合うように変形させた。
【0068】この際,ピチピチと言う破壊音がしたが,
ダイヤモンド膜状体は剥離すること無く変形した。この
場合,ダイヤモンド膜に圧縮応力が働き,ろう材層に引
張り応力が働く。従ってこの際の変形はろう材層が塑性
変形して伸び,ダイヤモンド膜においてろう材層に接す
る部分のダイヤモンドの粒間が開くと考えられる。
【0069】次に,上記溝形状に変形させた状態におい
て,このまま超硬合金を下部に置き,ダイヤモンド膜状
体を押しつけたアルミナ棒を載せたまま,アルミナ棒の
上に約300gの荷重をかけた状態で,これらを真空炉
内にセットした。そして,実施例4と同様に1×10-5
Torrの真空中で810℃,10分間加熱してろう付
けした。
【0070】その後,これらを冷却し,真空炉より取り
出した。得られた加工用バイトのダイヤモンド膜状体の
表面は,上記アルミナ棒の形状に合ったきれいな面を有
していた。また,ここにダイヤモンドのヌープ圧子を押
しつけてもその部分が凹むだけで,ダイヤモンド膜が剥
離することはなかった。この結果からチタンを多く含む
銀ろうが,接着面側におけるダイヤモンド膜の粒間に入
ったクラックの間隙を埋め,強固な接合膜を形成してい
るものと考えられる。
【0071】また,ダイヤモンド膜は,横方向,即ち,
成長方向に直角な面方向における強度は期待できない。
従って,相手材に接着する場合には,多くのクラックを
発生する。しかし,そのクラックには,ダイヤモンド膜
に強固に化学結合しているチタンを多く含むろう材層が
浸入するため,より強固な接合ができる。本例によれ
ば,切削粉の逃げ面を設けた加工用のバイトの刃先に,
同じ曲面を持つダイヤモンド膜の形成が可能であること
が確認された。
【0072】実施例6 第2製造法を用いたダイヤモンド膜状体の製造,及び該
ダイヤモンド膜状体を装着した工具につき,図4〜図8
を用いて説明する。本例の製造法においては,図4に示
すごとく,多結晶のダイヤモンド膜71とその一方の面
に対して接合したチタン等の活性金属を含有するろう材
層72とからなるダイヤモンド膜状体70を準備する。
次いで,図5に示すごとく,上記ダイヤモンド膜状体7
0をそのダイヤモンド膜71が外側に湾曲するように加
工し,ダイヤモンド膜71を微細粒子に破壊する膜破壊
工程を行なう。
【0073】その後,図7,図8に示すごとく,上記ダ
イヤモンド膜状体70から適当な大きさに切り出し,こ
れを装着しようとする工具の基材55の上に載せ,これ
らを真空中又は不活性雰囲気中で加熱し,上記ろう材層
72を溶融し,ろう付けする。この際溶融したろう材は
同時にダイヤモンド膜71の微細粒子の間に浸入する。
【0074】以下,これらにつき詳細に説明する。本例
に用いるダイヤモンド膜は自立膜を用いる方が好まし
い。従ってこの目的にかなうものとして,我々が開発し
た,平面火炎法で合成した膜を用いた。成膜条件はφ3
mmのメインノズルから,C2 2 (アセチレン)/H
2 (水素)/O2 (酸素)の流量比を1.03/0.5
0/1.00の割合に混合したガスを,47.8m/s
ecの速度で吹きだし,一方外周ノズルから4.0リッ
トル/minの水素を流しながら,これらを燃焼させて
いる前方淀み流平面火炎の中に,片側を水冷したφ15
mmのモリブデン丸棒を設置した。
【0075】この丸棒の一端は鏡面に研磨した後,ダイ
ヤモンド砥粒で傷付け処理を施してある。この面にダイ
ヤモンドを析出させた。この析出面の温度は放射温度計
で計測しながら900℃に保持し,120分間析出させ
た。この方法では成膜後基板を火炎から外すと,ダイヤ
モンド膜が自立膜として剥離して得られる。
【0076】得られたダイヤモンド膜は,φ15mm,
厚さ約80μmで,ややグレーがかった半透明膜であ
る。また,このダイヤモンド膜は,走査型電子顕微鏡
(SEM)で成長面を観察したところ,(111)面が
発達した結晶性の良好な5〜7μmの粒子からなる。以
降の実施例および比較例の試作は,全て上記と同じ条件
で合成したダイヤモンド膜を用いた。
【0077】次に,ダイヤモンド膜状体を作製するた
め,図4に示すごとく,厚さ5mmの焼結アルミナ板8
11の上に,ろう材層72の板を載置し,更にその上に
上記自立膜のダイヤモンド膜71をその成長面側がろう
材層72に当接するように配置した。上記ろう材層72
は,GTE WESGO社製の活性ろう材INCUSI
L−ABA(59%Ag,12.5%In,27.25
%Cu,1.25%Ti)の20μmの板を,φ15m
mの円形に切り出したものである。
【0078】さらに,上記ダイヤモンド膜71の上に焼
結アルミナ板812(厚さ:1mm)を介在させ,その
上に,φ20mm,厚さ30mmのSUS304製の耐
熱鋼荷重片82を載せた。そして,このようにセットし
たものを,真空炉の中に入れた(図4)。
【0079】次に,真空炉内を1×10-5Torrの真
空に引きながら,加熱し,最高670℃で10分間の加
熱を行なった。冷却後,これを取り出したところ,ろう
材層72が強固にダイヤモンド膜71と接合した2層構
造のダイヤモンド膜状体を70が得られた。該ダイヤモ
ンド膜状体70は取り出した時点で,熱膨張率の差によ
り巻紙状に巻き込もうとする傾向がある。しかし可撓性
に富み,強く曲げると,ダイヤモンド膜71には亀裂が
入るが,自由に曲げられる。多結晶のダイヤモンド膜7
1の個々の粒子の成長面側では,ろう材層72中のチタ
ンとチタンカーバイドを生成して強固に結合しているた
め,膜が剥脱することはない。
【0080】次に,このダイヤモンド膜状体70に膜破
壊工程を施すため,図5に模式的に示すような3本ロー
ル86にかけ,多結晶ダイヤモンド膜71を破壊した。
このロール86は,芯出ししたφ6mm×40mmLの
鋼材で出来ている。下側の一本のロール861だけが,
軸受けをネジで上下に移動可能なように構成してある。
そのため,この下側のロール861を上側のロール86
3の方へ上下動することで,ロール861とロール86
3との間のクリアランスが可変となる。また,この下側
のロール861にはハンドル862が装着されており,
これを手で回転させることでダイヤモンド膜状体70
が,ロール861と863の間へ巻き込まれるようにな
っている。
【0081】また,ダイヤモンド膜状体70が小さい場
合には,同図に示すごとく,2枚の,厚さ0.3mmの
銅板84,84の間にダイヤモンド膜状体70を挟み込
み,銅板84を送り込むことによってダイヤモンド膜状
体70を湾曲させる。ダイヤモンド膜状体70は,ダイ
ヤモンド膜71側に引っ張り応力が働くように,即ち曲
げられる外側にダイヤモンド膜71が来るように挿入す
る。
【0082】ダイヤモンド膜71が厚い場合には,やや
大きめのクリアランスで一度通し,再度クリアランスを
狭めてロール掛けすると比較的ダイヤモンド粒子の欠損
が無く微細組織に分割できる。この走査は,ダイヤモン
ド膜状体70の縦方向と横方向に最低2回は行ない,出
来るだけ微細粒子に分割する。本実施例では縦方向,横
方向それぞれ3回ずつロール掛けを行なった。
【0083】次に,ロール掛けしたダイヤモンド膜状体
70を,後述の図6に示すごとく,工具の基材55に装
着するため,該ダイヤモンド膜状体70のろう材側を,
一辺3mmの正3角形に,カッターナイフで切り出し,
工具用のダイヤモンド膜状体700とした(図6,図7
参照)。
【0084】一方,一辺の長さが15mmの正三角形
で,厚さ3mmのK種超硬合金(90%WC,10%C
o)を,図6,図7に示すごとく,スローアウェータイ
プ工具の基材55とした。この基材55の3つの隅部に
は,一辺3mmにわたって深さ80μmに削り込んだ,
切欠き部551を設けてある。この切欠部551に,一
辺3mmに切り出した上記ダイヤモンド膜状体700を
ろう付けした(図6,図7)。
【0085】ろう付けの条件を以下に記す。即ち,図8
に示すごとく,厚さ5mmのMo(モリブデン)板(図
示略)上に両面を平行に研磨加工した厚さ7mmの焼結
アルミナ板810を置き,その上に工具基材55を置い
た。さらに,該工具基材55の3つの隅の切欠部551
の上に,上記ダイヤモンド膜状体700を,ろう材層7
2を付けた側が該工具基材55側に向くようにそれぞれ
設置した。
【0086】更に,この3枚のダイヤモンド膜状体70
0のそれぞれの上に,厚さ1mmの焼結アルミナ板81
5を乗せ,更にその上にφ30mm,厚さ20mmのS
US304製の荷重片82を乗せた。以上のセット物
を,真空炉内に水平に設置し,10-5Torr以上の真
空に保ちながら加熱した。最高720℃に10分間保持
した後,炉冷した。
【0087】以上のろう付け処理を施したものは,ダイ
ヤモンド膜71と超硬合金である工具基材55との接着
部外周部に,約0.3mmにわたってろう材層72が溶
出しており,ダイヤモンド膜71の構造が乱れること無
く強固にろう付けされていた。また,特に異なる点は,
ダイヤモンド膜71の表面が極端に黒変していることで
ある。この黒変物は,EPMAで分析したところ,チタ
ンカーバイド(TiC)であることが判明した。
【0088】またある部分にはAg,Cuおよび,僅か
なInも観察され,ろう材自体も浸み出して来ている。
これは,ダイヤモンド膜71に多数の微細なクラックを
導入したため,このクラックからろう材中に含有してい
るTiが拡散浸出し,ダイヤモンド粒子の表面でTiC
を生成し,さらにその表面にろう材自体が浸み出してき
ているものと推察される。
【0089】表面のTiCの層はその後の研磨加工時に
除去され,ダイヤモンド粒子が表面に出てくることから
僅かな表面層だけが反応していることが分かる。このよ
うに,本例におけるダイヤモンド膜のろう付けでは,微
細に破壊した個々の微細粒子が,それぞれろう材層の一
部で固められて強固に接合されていることに特徴があ
る。
【0090】また,ラマン分光のピーク位置が,残留圧
縮応力のために,自立膜の1332cm-1から1335
cm-1にシフトしている。この値は,後述の比較例で示
す析出膜そのものをろう付けした場合に,1338cm
-1へシフトするのに対してかなり小さくなっており,個
々の微細粒子の間隙にろう材が浸透してきた構造を取っ
ているため,応力が緩和されているものと考えられる。
【0091】次に,上記ダイヤモンド膜状体700をろ
う付けした工具に関して,ダイヤモンド膜状体700に
つき横逃げ面,前逃げ面ともに5°,刃先を0.4mm
Rになるように♯600番および♯1000番のダイヤ
モンド砥石で粗加工した。その後すくい面まで含めて,
♯3000番の砥石で仕上げ加工した。これにより,バ
イト用工具を作製した。
【0092】
【実験例】上記実施例6により製造した工具を用いて,
アルミニウム合金の切削試験を行なった。また,比較の
ために,比較用工具を作製した。比較用工具は,上記実
施例6と同様に析出させたダイヤモンド自立膜を,実施
例6と同じ形状の超硬合金の基材55の3隅に,ろう材
を用いてダイヤモンド膜71の成長面側を超硬合金側に
ろう付けした(ダイヤモンド多結晶膜は成膜したまま
で,クラックを導入する工程は踏んでいない)。
【0093】すなわち,前記図6〜図8に示したよう
に,アルミナ板810上に載置した超硬合金の基材55
の3隅に一辺の長さが3mmの正3角形に切り出したろ
う材箔を置き,さらその上にダイヤモンド自立膜片を成
長面がろう材側を向くように設置した。
【0094】ろう付け時の条件は,実施例6と全く同様
に行なった。ろう付けを行なったダイヤモンド膜71は
接着面においてチタンカーバイドを生成しているため
に,見かけ上黒色をしているが,表面にまでTiが拡散
していない。そのため,表面は黒色に見えるが良く光を
反射するダイヤモンドが表面に出ている。また,ダイヤ
モンド膜71の加工も実施例6と同様に行ない最終的に
♯3000番の砥石で仕上げ加工を行なった。
【0095】次に,切削試験につき示す。まず,φ70
mm,長さ200mmのアルミニウム合金〔AC4C−
T6(AI−7.0 SI−0.35Mg)〕の丸棒を
旋盤に取付け,実施例試料および比較試料を用いた超仕
上げ切削試験を行なった。即ち,スローアウェイタイプ
に仕上げた両切削工具を,クランプでセッティング角度
0.4°に取り付けた。実験条件は切削速度300m/
min,切り込み0.1mm,送り0.05mm/re
v.加工液なしの条件で60分間連続切削試験を行なっ
た。
【0096】試験後の仕上げ面精度および刃先の損傷
(逃げ面摩耗幅)を表1に示す。表1より知られるよう
に,本発明の性能上の効果は明らかである。次に,切削
試験後の刃先を50℃に保った30%の可性ソーダ水溶
液中に30分間放置し,刃先の付着物を溶解除去して,
SEMによって詳細に調べた。その結果,比較例のバイ
ト刃先のダイヤモンド膜は柱状の粒子が一部剥がれ,座
屈して途中で折れた状態になっていた。
【0097】一方,本例の実施例品では,柱状の粒子の
座屈部分が皆無ではないが,非常に少なかった。これ
は,ある大きさの単位で破壊されたダイヤモンド膜の微
細粒子の間に,Tiおよびろう材が浸透し,個々の粒子
を包むような構造で強固な接合が行なわれているため,
(1)膜自体の靱性が改良されたこと,および(2)膜
にかかる圧縮応力が緩和されていることが原因している
と考えられる。
【0098】また,本実施例において,ロール掛けした
後のダイヤモンド膜は,平均90μm程度の大きさの微
細粒子に破壊されていることが,超硬合金の基材55に
ろう付けした後のダイヤモンド膜の表面に浸出したTi
の様子から伺えた。なお,ロール掛けの時点での膜の破
壊される大きさは,ロール径,ロール間隔,ダイヤモン
ド膜の膜厚および膜質によって影響される。また,ロー
ル掛け時点におけるダイヤモンド膜の破損による粒子欠
損も,上述の条件によって影響される。
【0099】次に,第2製造法により得られた上記の工
具が,上記のごとき優れた性能を有する理由につき,以
下に考察する。即ち,加工用工具の刃先部分は被切削体
との接触による応力発生,あるいは切削時の熱応力の発
生など,非常に大きな且つ複雑な応力が働いている。さ
らに,ダイヤモンド膜自体に大きな圧縮応力が働いてい
るにも係わらず,刃先部などの大きな曲率で削られてい
る部位は応力のかかり方が非対称であり,刃先に存在す
る結晶子には外に向かって押し出されるような力が働い
ている。
【0100】このような部分に存在する結晶子に,上記
加工時の応力が作用すると結晶子は劈開や粒間破壊によ
って剥脱を起こし易い。その対策としては,上記第2製
造法で実現したように,ダイヤモンド膜に働く応力を低
減するか,ダイヤモンド粒子間の接合力を高める必要が
ある。この第2製造法には,ダイヤモンド多結晶膜にろ
う材で裏打ちしたダイヤモンド膜状体が重要な要素を握
る。このろう材がダイヤモンド多結晶膜を構成する個々
の結晶子と強固な結合をしているために,膜構造を破損
することなく,その中に微細なクラックを多数導入する
ことが出来る。
【0101】また,Tiなどの活性金属を含むろう材は
最終的に基材にろう付けする時点において,上記のダイ
ヤモンド膜中のクラック中に良く拡散浸透する。浸透し
たTiは,ダイヤモンド粒子の表面でTiCを生成し,
Ag,Cuを主成分とするろう材との濡れ性を改善す
る。
【0102】その結果,ろう材も微細粒子間のクラック
中に浸透する。微細粒子間に浸透したろう材は,ダイヤ
モンド膜状体中のダイヤモンド粒子を強固に接合し,同
時に膜の靱性を改善すると共に耐摩耗性を一層向上させ
る。また,それと同時にダイヤモンド膜状体の平均的な
熱膨張率を高め,ろう付け後の冷却時に発生する残留圧
縮応力を低減させる。
【0103】上記の実施例では,K種超硬合金を基材に
取り上げ,また本発明の効果の確認実験に,AC4C−
T6のアルミニウム合金を被削材として用いた。ここで
得られた効果は,上述したような多結晶ダイヤモンド膜
に,意識的に導入したクラック中にろう材が浸透させた
結果得られたものである。また,このことからも分かる
ように,工具の基材はK種超硬合金に限定されず,P種
超硬合金,種々の工具鋼やセラミックスなどを用いて
も,上記の優れた効果が発揮されるものである。
【0104】また,切削試験もAl−Si−Mg系のA
C4Cを被削体として用いたが,これもSiの含有量が
20%近辺のAl−Si系,あるいはAl−Cu系アル
ミニウム合金,銅,真鍮などの銅合金さらには炭素の含
有量が約1%以上の鋼材あるいは鋳鉄であれば,被削材
の種類をとわず,その効果が発揮される。
【0105】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における,ダイヤモンド膜状体作製の
膜形成工程ないし接合工程を示す説明図。
【図2】図1に続く,基板除去,ダイヤモンド膜状体の
切出し及び成形工程を示す説明図。
【図3】図2に続く,ダイヤモンド膜状体の相手材への
接着工程を示す説明図。
【図4】実施例6におけるダイヤモンド膜状体の製造法
を示す説明図。
【図5】実施例6における,ダイヤモンド膜状体を湾曲
加工する工程を示す説明図。
【図6】実施例6における,ダイヤモンド膜状体をろう
付け接合した工具の平面図。
【図7】図6のA−A線矢視断面図。
【図8】実施例6における,工具へのダイヤモンド膜状
体のろう付け工程の説明図。
【符号の説明】
1,71...ダイヤモンド膜, 10,70...ダイヤモンド膜状体, 11...析出成長面, 2...ろう材層, 3...基板, 31...中間体, 32...積層物, 5...相手材, 55...工具用の基材, 72...ろう材, 84...銅板, 861,863...ロール,
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 樋口 和夫 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 神崎 昌郎 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 伊藤 明生 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多結晶のダイヤモンド膜と,該ダイヤモ
    ンド膜の一方の面に対して接合したチタン等の活性金属
    を含有するろう材層とよりなることを特徴とするダイヤ
    モンド膜状体。
  2. 【請求項2】 請求項1において,上記ダイヤモンド膜
    は微細粒子に破壊されていることを特徴とするダイヤモ
    ンド膜状体。
  3. 【請求項3】 多結晶のダイヤモンド膜を析出形成する
    膜形成工程と,上記ダイヤモンド膜の一方の面に対し
    て,チタン等の活性金属を含有するろう材を積層する積
    層工程と,これら積層物を,真空中又は不活性ガス中に
    おいて加熱して,ダイヤモンド膜とろう材層とを接合す
    る接合工程とよりなることを特徴とするダイヤモンド膜
    状体の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3において,上記ろう材層は,ろ
    う材の片面にインジューム等の低融点化物質の薄層を設
    け,更に該低融点化物質の上に活性金属層を設けてなる
    ことを特徴とするダイヤモンド膜状体の製造方法。
  5. 【請求項5】 多結晶のダイヤモンド膜とその一方の面
    に対して接合したチタン等の活性金属を含有するろう材
    層とからなるダイヤモンド膜状体を準備し,該ダイヤモ
    ンド膜状体をそのダイヤモンド膜が外側に湾曲するよう
    に加工し,上記ダイヤモンド膜を微細粒子に破壊する膜
    破壊工程とからなることを特徴とするダイヤモンド膜状
    体の製造方法。
  6. 【請求項6】 多結晶のダイヤモンド膜とその一方の面
    に対して接合したチタン等の活性金属を含有するろう材
    層とからなるダイヤモンド膜状体を準備し,該ダイヤモ
    ンド膜状体をそのダイヤモンド膜が外側に湾曲するよう
    に加工し,上記ダイヤモンド膜を微細粒子に破壊する膜
    破壊工程と,上記ダイヤモンド膜状体を,そのろう材層
    側が基材表面に対向するように,基材上に積層する工程
    と,これらを真空中又は不活性雰囲気中で加熱して,上
    記ろう材層の一部を前記微細粒子間に浸入させると共に
    前記ダイヤモンド膜状体を基材にろう付けするろう付け
    工程とからなることを特徴とするダイヤモンド被覆体の
    製造方法。
JP6101869A 1993-09-23 1994-04-15 ダイヤモンド膜状体,その製造方法およびダイヤモンド被覆体の製造方法 Pending JPH07138093A (ja)

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