JPH07250609A - 焼成品の製造方法 - Google Patents

焼成品の製造方法

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JPH07250609A
JPH07250609A JP6040232A JP4023294A JPH07250609A JP H07250609 A JPH07250609 A JP H07250609A JP 6040232 A JP6040232 A JP 6040232A JP 4023294 A JP4023294 A JP 4023294A JP H07250609 A JPH07250609 A JP H07250609A
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智穂 石井
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 本発明は小麦粉生地に対してトランスグルタ
ミナーゼを添加、作用させた後に加熱処理を行うことを
特徴とする多層化叉は多孔化構造を有する焼成品の製造
方法である。 【効果】 最終製品に好ましい食感を付与すると共に、
製造工程での生地のダレを防止できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は油脂を含んで多層化又は
多孔化した小麦粉を主体とした焼成品の製造法、より詳
しくは、トランスグルタミナーゼ(以下TGaseと略
記する。)を小麦粉生地部分に作用させたパイ、タル
ト、デニッシュ・ペストリーなどの焼成品の製造法に関
する。本発明により、生地のだれを防止でき、作業性が
向上し、出来上り製品が「かりっ」あるいは「さくっ」
としたいわゆるクリスピーな食感に富み、又そのクリス
ピー感をより長時間維持でき、更に多層化した製品につ
いては層の浮き上がりを向上することができるという効
果を付与できる。
【0002】
【従来の技術とその課題】油脂を含んで多層化あるいは
多孔化した小麦粉を主体とする焼成品としては、いわゆ
るパイ類が代表的である。固形油脂を豊富に含んだ生地
を焼成したものであり、一般に、小麦粉、水、塩、固形
油脂及び必要に応じて卵、牛乳、砂糖、その他の添加剤
から作られる。さて、パイ類は主として(1)小麦粉か
らなる生地層と油脂のきわめて薄い層が積層状態になっ
た折りパイタイプ、(2)生地の中に油脂が粒状に存在
する練り込みパイタイプ、に大別される。いずれも、焼
き上がりの香ばしさと、「さくさく」したクリスピーな
口当たりが特長で、万人に好まれる代表的なベーカリー
製品の一つである。
【0003】また、油脂を含んで多層化あるいは多孔化
した小麦粉を主体とする焼成品としては、上記したパイ
類と同様な構造を有しているが、小麦粉生地にイースト
を加えて発酵生地とした、クロワッサン及びデニッシュ
・ペストリー類がある。これらはパンとして分類もでき
るが、油脂を多く含み、積層した層間の浮き上がりとク
リスピーな口当たりが特徴である点で、上記したパイ類
と同様の要求特性を有している。
【0004】上記したパイ類、クロワッサン、デニッシ
ュ・ペストリー類は生地そのものを楽しむ場合以外に、
果物やジャム、ソースといったフィリングを該生地で作
った器の中に詰めたり、スポンジケーキやバターケーキ
といった他のベーカリー生地と組み合わせて製品とした
ものも、広く受け入れられている。いずれの場合も、油
脂を含んで多層化または多孔化した穀類粉末焼成品に最
も要求される特長は、「さくさく」としたクリスピーな
食感である。
【0005】パイ類、クロワッサン、デニッシュ・ペス
トリー類は、小麦粉に対する油脂配合量が一般に30%
以上、多くの製品では50%以上、と他のベーカリー製
品の生地より多い。油脂が融解しない為に、作業中の温
度管理に配慮する必要があり、油脂が融解して小麦粉か
らなる生地の間に油脂層(あるいは粒状の油脂)が適当
に挿入されなかった場合には、製品に要求される多層性
あるいは多孔性が失われ、クリスピーな食感も損なわれ
て、製品の価値が著しく低下してしまうという欠点があ
る。
【0006】とりわけ、小麦粉層と油脂層が多層化した
生地では、油脂の使用量が多く、小麦粉生地を延ばした
ものの間にほとんど油脂のみの層を包み込み、延展と折
りたたみを繰り返すため、油脂の扱いは一層難しい。油
脂が融解して小麦粉生地層の間からはみ出したり、油脂
層が不均一にしか形成されていなければ、製品の浮き上
がりは不十分となり、見た目にも不連続な層形成となっ
てしまう。このことは、製品にとって、致命的な欠点と
なる。
【0007】この他に、パイ類、デニッシュ・ペストリ
ー類製品にとって、従来から解決が望まれていた問題点
として、水分移行によるクリスピー感の損失がある。
肉、果物といった具材やジャム、クリームなどのフィリ
ングなどと組み合わせることが多いこれらの製品にとっ
て、水分移行により、「かりっ」あるいは「さくっ」と
した食感が失われ、製品の価値が低下してしまうことが
しばしばあり、問題となっている。
【0008】こうした油脂を含んで多層化又は多孔化し
た小麦粉を主体とした焼成品のクリスピー感に関する改
良の手段として、例えばピザ生地からなる上部クラスト
層にパイ生地からなる下部クラスト層を与えて、水分が
上部ピザ層に浸透しても下部パイ層は歯ざわりの良さを
保持できるとする発明が提案されている(特開昭61−
260830)。しかし、この発明は水分の移行を根本
的に解決したものではなく、上部ピザ層が湿り気のある
食感を呈することに変わりはない。また、クラストの表
面に食用油を塗布し被膜を形成する方法(特開平2−1
50231)や、パフペイストリー層とフィリング層の
間にアセト脂肪からなる防水性保護層を施す方法(特開
平5−103581)も提案されているが、「さくっ」
とした食感を維持するためには相当量の油脂を使用する
必要があり、過剰の油脂が食感を損なう可能性もあると
いう新たな問題がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上述のよう
な課題を解決すべく鋭意研究の結果、トランスグルタミ
ナーゼ(以下TGaseと省略)がタンパク質またはペ
プチド鎖内のグルタミン残基のγ−カルボキシアミド基
と一級アミンとのアシル転移反応を触媒し、一級アミン
がタンパク質のリジン残基である場合は、ε−(γ−G
lu)−Lys架橋結合を形成させる作用があることに
着目した。その結果、小麦粉を主体とした生地にTGa
seを添加、該酵素を作用させてタンパク質間に架橋を
形成させることで、「かりっ」とした好ましいクリスピ
ーな食感を長時間維持し、具材やフィリングと組み合わ
せた際にも、その水分により製品本来の食感を損なうこ
とがないような製造方法を見いだし、本発明を完成させ
た。
【0010】更に、小麦粉層と油脂層が多層化した製品
の場合は、TGaseの作用により小麦粉生地の強度が
増すため、折りたたみを繰り返しても生地が破れたりす
ることがなく、間の油脂層がはみ出さずに薄く均一に形
成された。これにより、より多層化し、層と層との間の
浮き上がりが大きく、見た目に美しく、かつ口溶けのよ
いクリスピーな製品が作成された。
【0011】即ち、本発明は(1)主として小麦粉から
なる生地層と、主として油脂類からなる分離層が積層し
た構成体において、小麦粉生地に対してトランスグルタ
ミナーゼを添加、作用させた後に加熱処理を行うことを
特徴とする多層化構造を有する焼成品の製造方法、及び
(2)主として小麦粉からなる生地中に油脂類を粒状に
練り込んだ構成体において、小麦粉生地に対してトラン
スグルタミナーゼを添加、作用させた後に加熱処理を行
うことを特徴とする多孔化構造を有する焼成品の製造方
法である。以下、本発明を詳述する。
【0012】まず、本発明でいう主として小麦粉からな
る生地とは、一般に小麦粉、水(牛乳を使用する場合も
ある)、塩、及び必要に応じて油脂類、卵、砂糖、添加
剤からなる。また、主として小麦粉からなる生地にはイ
ーストを含んだものも含まれる。本発明において使用さ
れる小麦粉としては特に制限はなく、例えば市販されて
いる強力粉、中力粉、薄力粉を単独又は2種類以上を適
当に組み合わせて用いればよい。また、小麦粉以外の他
の穀類粉末も必要により添加してもよい。卵としては、
全卵、卵黄、卵白のいずれかを単独又は組み合わせて用
いればよい。更に添加材についても一般に食品に添加す
ることが認められるものならば特に限定はされない。例
えば、バニラエッセンス、洋酒類、イーストフード、着
色料、乳化剤、保存料、等である。
【0013】また、本発明において使用される油脂につ
いても特に制限はないが、通常はバター、ロールインマ
ーガリン、ショートニング、その他の固形油脂を用い
る。
【0014】本発明の方法により製造される油脂を含ん
で多層化あるいは多孔化した小麦粉焼成品には、いわゆ
る折りパイ(多層化構造パイ)と練り込みパイ(多孔化
構造パイ)の2つのタイプのパイ類はもちろんの事、イ
ーストを含む小麦粉生地を使用して折りパイと同様に製
造されるクロワッサン、デニッシュ・ペストリーなどの
ベーカリー類も含む。
【0015】さて、上述の発明(1)はいわゆる折りパ
イに代表される焼成品の製造法で、小麦粉を主体とした
生地と油脂層を合わせて延展、折りたたみを繰り返し、
小麦粉と油脂の薄い層が積層状態としたものである。成
形し焼成すると、層と層の間に空隙ができ、浮き上がっ
た独特の外観を示す。いわゆるアップルパイなど大きく
ふくらみ多層化した製品がこのタイプの代表として挙げ
られる。
【0016】次に上述の発明(2)は、いわゆる練り込
みパイに代表される焼成品の製造法で、油脂を粒状に小
麦粉生地中に存在せしめ、焼成により油脂が融解し小麦
粉生地の中に空隙をつくり(多孔化構造)、「さくさ
く」としたもろい食感の製品となる。いわゆるタルトが
代表的な最終製品として挙げられる。
【0017】尚、イーストを含む小麦粉生地を使用した
場合は、クロワッサン、デニッシュ・ペストリーなどを
作ることができる。これらは一般に多層化構造焼成品で
ある。また、イーストを含む小麦粉生地を使用した多孔
化構造焼成品としては、いわゆる菓子パン類に含まれる
様々な製品が挙げられる。
【0018】また、本発明による多層化あるいは多孔化
した小麦粉焼成品にその他の生地、たとえばスポンジケ
ーキ生地、バターケーキ生地などを組み合わせて構成し
たり、ソースやジャム、その他の具材を本発明による生
地の中に包み込んだり、上にのせて製品とすることも可
能である。
【0019】さて、本発明で使用するTGaseは、T
Gase活性を有する限り、その起源を特に問わず、例
えばストレプトベルチシリウム属(Streptove
rticillium属)などに属する微生物由来のも
の(BTGaseと略記する。特開昭64−27471
参照)、モルモットなどの哺乳動物由来のもの(MTa
seと略記する。特公平1ー50382号参照)、タラ
などの魚類由来のもの(関信夫ら、昭和63年度日本水
産学会秋期大会講演要旨集167頁参照)、バイオテク
ノロジーを利用して遺伝子組換法によって得られるもの
(特開平1ー300889号参照)などを用いることが
できる。この内、カルシウムが無くても作用する事及び
大量に入手できる事等の理由からBTGaseを用いる
のが好ましい。
【0020】TGaseを添加する濃度は通常生地中の
小麦粉タンパク質1g当たり0.01U〜20U、好ま
しくは0.02U〜5Uの範囲で用いるのが好ましい。
0.01Uより低い濃度では期待されるTGase使用
の効果が得られず、逆に20Uより高い濃度では硬くな
りすぎて口当たりが重くなったり、歯切れの悪い食感と
なったり、イーストを用いた生地では膨張が充分でなく
なったりしてしまう。尚、上記範囲は一応の目安であ
り、上記範囲に拘るものではない。
【0021】なお、本発明でいうTGaseの活性単位
は、次のように測定され、かつ、定義される。すなわ
ち、温度37℃、pH6.0のトリス緩衝液中、ベンジ
ルオキシカルボニル−L−グルタミルグリシン及びヒド
ロキシルアミンを基質とする反応系で、TGaseを作
用せしめ、生成したヒドロキサム酸をトリクロロ酢酸存
在下で鉄錯体を形成させた後、525nmにおける吸光
度を測定し、ヒドロキサム酸量を検量線により求め、1
分間に1μモルのヒドロキサム酸を生成せしめた酵素を
TGaseの活性単位、1ユニット(1U)とする(特
開昭64−27471号明細書記載参照)。
【0022】本発明におけるTGaseを生地に添加す
る方法を以下に詳述する。小麦粉生地と油脂層が積層し
た生地を製造する場合(多層化構造の生地を製造する場
合)には、小麦粉を主体とした練り生地に油脂を包みこ
んで延展、折たたみを繰り返す方法(油脂に生地を包み
込む場合もある)が一般的だが、他に小さく切った油脂
と小麦粉を軽く混合してから水などを加えて生地をまと
めさらに数回折りたたむ方法もある。どのような方法を
とるにしても、本発明に従って多層化した生地を製造す
る際には、TGaseは油脂層ではなく、小麦粉を主体
とした生地中にほぼ均一に存在さればよい。例えば、生
地に加える水または牛乳にTGaseを溶かし溶液とし
て小麦粉生地に練り込む方法、TGaseの酵素製剤粉
末を小麦粉とよく混合しておいてからその他の材料と混
合して小麦粉生地とする方法などがある。もちろん、T
Gaseを加える手段については特に限定されない。
【0023】小麦粉生地の中に油脂層が粒状に存在した
生地を製造する場合(多孔化構造の生地を製造する場
合)には、小麦粉の中に油脂を細かく刻みこんでから他
の材料と合わせて生地とする方法、あらかじめ細かく刻
んだ油脂を砂糖あるいは小麦粉の一部と合わせて混合し
てから残りの小麦粉、水や牛乳と混合して生地にまとめ
る方法等がある。どのような方法をとるにしても、本発
明に従って練り込みパイを製造する際には、TGase
が生地中にほぼ均一に存在すればよく、TGaseを水
または牛乳に溶解して溶液として生地に練り込む方法、
TGaseの酵素製剤粉末を小麦粉とよく混合しておい
てからその他の材料と混合する方法等があるが、TGa
seを加える手段については特に限定されない。
【0024】また、本発明の方法によりTGaseを生
地に作用させる際に、該酵素が期待される効果をより良
く発揮できるよう、添加剤を併用することも可能であ
る。
【0025】本発明の方法によりTGaseを生地に作
用させるには、TGaseを添加した後でその生地がT
Gaseの作用条件下におかれる工程を全工程中に含め
ばよい。TGaseの作用条件としては、0〜70℃、
好ましくは10〜50℃にて10分乃至48時間、好ま
しくは30分乃至2時間保持することが適当である。
【0026】本発明においては、上述したようにTGa
seを添加した後で該酵素を作用せしめる工程を置くこ
とを除いては、原材料を含めて従来の方法、工程を変更
することなく製造を行うことができる。該酵素を作用せ
しめる工程は、従来の製造工程に新たに付け加えて行う
こともできるし、一般に小麦粉を主体とした生地の製造
工程に行われるいわゆる「ねかせ」の間に、TGase
を作用せしめる工程を兼ねさせることもできる。
【0027】また、本発明による多層化あるいは多孔化
した小麦粉焼成品にその他の生地、たとえばスポンジケ
ーキ生地、バターケーキ生地などを組み合わせて構成し
たり、ソースやジャム、その他の具材を本発明による生
地の中に包み込んだり、上にのせて製品とすることも可
能である。
【0028】なお、本発明による小麦粉焼成品は、生地
製造後ただちに成形、焼成(加熱工程のこと、尚製菓・
製パン業界では焼成と言われることが多い)して製品と
する以外に、製品に成形する前の生地あるいは成形し焼
成前の製品を、冷蔵または冷凍状態で保存・流通するこ
とが可能である。これらの冷蔵または冷凍生地において
も本発明の効果が充分発揮されることはもちろんであ
る。尚、加熱処理(焼成)条件は特に拘らず、通常75
−300℃で5−100分間、好ましくは160−21
0℃で、15−50分間処理すればよい。
【0029】このように、本発明によれば、従来その製
品を製造するのに使用されてきた原材料、添加物、工程
を変更することなく、TGaseを添加し該酵素を作用
させる簡単な工程を加えるだけで、より「さくさく」と
した食感に富み、クリスピーな歯ごたえをもつ製品を得
ることができるのである。
【0030】また、一般にパイ類及びデニッシュ・ペス
トリーなどの油脂を多量に含む生地においては、最終製
品に成形するまでの過程で油脂の融点以上の温度に放置
すると、溶け出した油脂が小麦粉生地の層からはみ出し
て層の形成あるいは粒状油脂の存在がはっきりしなくな
り、焼成して最終製品にした時に、浮きむらが出来てふ
くらみが悪くなったり、「さくさく」した食感も失われ
てしまう。また、油脂が溶けて生地全体が柔らかくなっ
てしまい(いわゆる「だれ」という現象)、成形する上
でも作業性が悪くなる。しかし、本発明により、TGa
seを添加して該酵素を作用させた生地においては、酵
素の作用により小麦粉生地の強度が向上しているのでし
っかりと油脂層または粒状油脂を包み込み、ある程度ま
では油脂が柔らかくなってもはみ出したりはしない。ま
た、小麦粉生地の強度によって生地全体がだれることが
防止され、作業性も向上する。
【0031】特に、小麦粉生地層と油脂層が多層化した
製品に対して、本発明によりTGaseを添加し該酵素
を作用させた場合には、TGaseを添加しない場合と
比較して小麦粉生地層と油脂層の分離がはっきりとし
て、層と層の間の空隙も広くなり、全体として層の浮き
上がりが大きく、軽い食感の製品が得られるという利点
がある。
【0032】以下、実施例により本発明を詳しく説明す
る。
【0033】実施例1 アップルパイ(折りパイ:多層
化構造を有する焼成品) 生地の配合を下記第1表に示す。
【0034】
【表1】 第1表 : 生地の配合 ───────────── 強力小麦粉 500g 薄力小麦粉 500g 食塩 20g バター 930g 全卵 65g 水 320g ─────────────
【0035】上記原料の小麦粉と、原料小麦粉タンパク
質1g当たり0.1UのTGase(酵素製剤粉末)
を、合わせてふるい、これに原料バターの内100gを
加え切り混ぜた。ここに、食塩、水、卵をいれ良く混ぜ
合わせながら練り、ひとまとめの生地にして、10℃前
後で30分ねかせた。残りのバターを厚さ1cmの正方
形に延ばし、ねかした生地をバターの倍くらいの大きさ
に延ばしてバターを包み生地の合わせ目をきちんと閉じ
た。これをパイシーターを用いて厚さ5mmの長方形に
延ばし3つ折りにし、10℃前後で約1時間ねかせた後
に、再度厚さ5mmの長方形に延ばし4つ折りにした。
この操作をもう一度繰り返し、最終的に3×4×3×4
=144層の多層構造の折りパイ生地を作った。対照と
しては、TGaseを加えないで同様に生地を調製し
た。
【0036】折りパイ生地を厚さ約3mmに延ばし、パ
イ皿に敷き込み、中にリンゴの甘煮を詰めて、上部にも
延ばしたパイ生地を飾って、200℃にしたオーブンで
40分間焼成した。
【0037】得られたアップルパイの粗熱がとれてか
ら、適当な大きさに切りわけ、10名のパネラー(男女
各5名)により官能評価を行った。パイクラストの硬
さ、クリスピー感、食感の好ましさ、風味の好ましさ、
外観の好ましさを絶対評価し、各人の評点の平均値を求
めた。下記第2表に結果を示す。
【0038】
【表2】 第2表 : 官能評価結果 ──────────────────────────────────── サ ン プ ル 評価項目 ────────────────────────── TGase 対照品1 添加品 (TGase無添加) ──────────────────────────────────── クラストの硬さ 1.4 0.5 ──────────────────────────────────── クラストのクリスピー感 (かりっとしているか) 1.5 −0.5 ──────────────────────────────────── 食感全体の好ましさ 1.7 0 ──────────────────────────────────── 風味の好ましさ 1.5 1.0 ──────────────────────────────────── 外観の好ましさ 1.2 0.5 ──────────────────────────────────── 評価の基準; 2:強いまたは好ましい、 1:やや強
いまたはやや好ましい、0:普通、 −1:やや弱いま
たはやや好ましくない、−2:弱いまたは好ましくない
【0039】このように、TGaseを添加したパイの
方がクリスピー感に優れ、好ましいと判断された。特
に、リンゴの甘煮から移行した水分で対照品は湿った食
感を帯びていたが、TGase添加品は「かりっ」とし
た食感を保っていた。外観についても、パイ層がはっき
りとして浮きが大きく好ましく受け入れられた。
【0040】実施例2 折りパイ:多層化構造を有する
焼成品 実施例1におけるのと同様にして、144層の多層構造
をもつ折りパイ生地を調製した。TGase添加量は小
麦粉タンパク質1g当たり0.1U、対照としてはTG
ase無添加で生地を調製した。
【0041】生地を厚さ3mmに延ばして3×6cmの
長方形に切り、これを200℃で12分間焼成した。粗
熱がとれてから、パイの浮きの高さを測り比較した。ま
たパイの食感を実施例1におけるのと同様の方法で官能
評価を行った。結果を下記第3表に示す。
【0042】
【表3】 評価の基準; 2:強いまたは好ましい、 1:やや強
いまたはやや好ましい、0:普通、 −1:やや弱いま
たはやや好ましくない、−2:弱いまたは好ましくない
【0043】このように、TGaseを添加したパイの
方が明らかに浮き上がりが大きく、外観上優れていた。
また、この場合は湿った具材を組み合わせていないの
で、具材の水分移行によりクリスピー感が失われること
はないが、焼成後のパイをビニール袋に入れて室温で1
週間保存した後で食べてみると、TGase添加品の方
が「かりっ」とした歯ごたえが強く、対照品は若干湿気
を帯びて歯切れが悪くなってしまっていた。
【0044】実施例3 タルト(練り込みパイ:多孔化
構造を有する焼成品) 生地の配合を下記第4表に示す。
【0045】
【表4】 第4表 : 生地の配合 ───────────── 薄力小麦粉 500g グラニュー糖 97g バター(有塩) 190g 全卵 160g ─────────────
【0046】上記原料の小麦粉と、原料小麦粉タンパク
質1g当たり5UのTGase(酵素製剤粉末)を、合
わせてふるった。バターを2cm角に切ってグラニュー
糖、卵と合わせよく混合した。ここに小麦粉をふるいな
がら加え軽く練り混ぜまとめた。台の上で生地をすりの
ばすようにして軽く練り、まとめ、これを2回繰り返し
た。調製した生地を10℃前後で1時間ねかせた。ねか
した生地をパイシーターで厚さ3mmに延ばして、直径
7cmのタルト型に敷き詰め、型から生地が浮き上がら
ないように重石をいれて、180℃のオーブンで20分
空焼きした。焼き上がったら型からはずして冷やした。
対照としては、TGaseを加えないで同様に生地を調
製した。
【0047】焼成の翌日、タルト型にカスタードクリー
ムを詰め、6時間放置した後で、実施例1におけるのと
同様の方法でタルト皮の官能評価を行った。結果を下記
第5表に示す。
【0048】
【表5】 評価の基準; 2:強いまたは好ましい、 1:やや強
いまたはやや好ましい、0:普通、 −1:やや弱いま
たはやや好ましくない、−2:弱いまたは好ましくない
【0049】このように、TGaseを添加したタルト
はかりっとした歯ごたえに富んでおり、時間をおいても
クリスピー性を保持していた。対照品はクリームに接し
た部分が湿った食感となり全体としてクリスピー感が損
なわれてしまった。TGaseを添加することにより、
タルトの食感が好ましく受け入れられることは明かであ
った。
【0050】実施例4 デニッシュ・ペストリー(多
層化構造を有する焼成品) 生地の配合を下記第6表に示す。
【0051】
【表6】 第4表 : 生地の配合 ────────────────── 中力小麦粉 1000部 砂糖 80部 塩 12部 脱脂粉乳 20部 バター(無塩) 80部 全卵 250部 生イースト 60部 水 400部 ロールイン用マーガリン1000部 その他カスタードクリーム、缶詰の果物等 ──────────────────
【0052】上記原料の小麦粉と、原料小麦粉タンパク
質1g中り0.5UのTGase(酵素製剤粉末)を、
合わせてふるった。ロールイン用マーガリン以外の全て
の材料をドウミキサーに入れ、低速2分、中速3分でミ
キシングし、捏ね上がった生地を丸めて5℃、12〜1
8時間冷蔵発酵させた。発酵終了後の生地、ロールイン
用マーガリンを延ばして、生地でバターを包み込んだ。
これを厚さ約5mmの長方形に延ばして3つ折りにし、
−20℃の冷凍庫で約30分ねかせた。この操作をあと
2回繰り返し、3×3×3=27層の生地とした。冷蔵
庫で30分ねかせた生地を厚さ3mmに延ばして好みの
デニッシュ・ペストリーの形に成形してから、30℃の
ホイロで約30分最終発酵させ、カスタードクリーム、
果物等をのせた後、210℃、約15分焼成した。対照
としては、TGaseを加えないで同様に生地を調製
し、製品とした。
【0053】出来上がったデニッシュ・ペストリーの外
観はTGase添加品の方が対照品よりも層の浮きが大
きく、デニッシュ・ペストリーとして優れた外観を持っ
ていた。また、食感も、TGase添加品の方が対照品
よりも、「パリパリ」とした歯ごたえに富んでおり、好
ましいものであった。
【0054】また、デニッシュ・ペストリー生地の製造
工程において、生地の折りたたみを繰り返す際に、TG
ase添加品の方が対照よりも生地がだれにくく、生地
が破れてロールイン用マーガリンがはみだしたりするこ
ともなく、取扱い易い生地であった。折りたたみの間に
ねかせる時間も短縮される傾向にあった。
【0055】
【発明の効果】本発明では、以上示したように、油脂を
含んで多層化または多孔化した小麦粉を主体とした焼成
品の製造において、TGaseを小麦粉を主体とした生
地中に加え該酵素を作用させる、という極めて簡単な工
程を置くことにより、クリスピーな好ましい歯ごたえに
富み、クリームや果物等水分を含む具材を載せた時も柔
らかくなりにくく、また製造途中に生地がだれることが
防止され作業上も好都合な、製造が可能となった。特
に、多層化した焼成品においては層の浮き上がりが向上
し、外観上優れた製品を得ることができた。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主として小麦粉からなる生地層と、主と
    して油脂類からなる分離層が積層した構成体において、
    小麦粉生地に対してトランスグルタミナーゼを添加、作
    用させた後に加熱処理を行うことを特徴とする多層化構
    造を有する焼成品の製造方法。
  2. 【請求項2】 主として小麦粉からなる生地中に油脂類
    を粒状に練り込んだ構成体において、小麦粉生地に対し
    てトランスグルタミナーゼを添加、作用させた後に加熱
    処理を行うことを特徴とする多孔化構造を有する焼成品
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 主として小麦粉からなる生地がイースト
    を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の焼成品の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 焼成品がパイ類である請求項1、2又は
    3記載の製造方法。
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