JPH0737444A - 酸化物超電導導体およびその製造方法 - Google Patents

酸化物超電導導体およびその製造方法

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JPH0737444A
JPH0737444A JP6100421A JP10042194A JPH0737444A JP H0737444 A JPH0737444 A JP H0737444A JP 6100421 A JP6100421 A JP 6100421A JP 10042194 A JP10042194 A JP 10042194A JP H0737444 A JPH0737444 A JP H0737444A
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典之 葭田
Kozo Fujino
剛三 藤野
Shigeru Okuda
繁 奥田
Norikata Hayashi
憲器 林
Chikushi Hara
築志 原
Hideo Ishii
英雄 石井
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    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

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  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高い臨界電流値を有し、安定した電流輸送を
行なうことができる、酸化物超電導導体およびその製造
方法を提供する。 【構成】 フレキシブルなテープ基板1とテープ基板1
上に形成された中間層2と、中間層2上に形成された酸
化物超電導膜3と、酸化物超電導膜3上に形成された、
厚さが0.5μm以上の金または銀からなる膜4とを備
える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酸化物超電導導体およ
びその製造方法に関するものであり、特に、ケーブル、
マグネット、シールド、限流器、高周波およびその中間
製品分野で使用する高い臨界電流値を有する酸化物超電
導導体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】酸化物超電導線材の製造方法として、た
とえば、フレキシブルなテープ基板上に、酸化物超電導
材料を膜状に形成する方法が考えられ、レーザアブレー
ション法、CVD法等の気相法を用いた製造方法の開発
が、進められている。中でも、エキシマレーザを用いた
レーザアブーション法は、他の気相法に比べて最も速い
速度で臨界電流密度の高い膜を形成することができるた
め、実用化に対して有望である。
【0003】このような酸化物超電導線材の製造におい
て、基板が金属である場合、酸化物超電導膜が金属基板
上に直接形成されることはほとんどない。超電導膜の形
成時の加熱によって、基板と超電導膜との相互拡散が生
じ、性能が劣化してしまうからである。そのため、金属
基板上に超電導膜を形成する際には、基板と超電導膜と
の間に、イットリア安定化ジルコニア、酸化マグネシウ
ム等の絶縁材料からなる中間層が設けられる。したがっ
て、このようにして得られる酸化物超電導線材において
は、超電導膜は、一方の面が絶縁体に接しており、他方
の面は最外層となって空気中に露出した構造をなしてい
る。
【0004】このような構造を有する酸化物超電導線材
に、電流を流すための電流リードを接続する際には、最
外層の超電導膜の上に銀ペースト等で接続するか、もし
くは、インジウム、ハンダ等で直接溶接する方法がとら
れている。
【0005】一方、この超電導膜と電流リードの接続部
分は、できるだけ接触抵抗を低くすることが望ましい。
そのため、たとえば、文献(“High Tc sup
erconductor/noble−metal c
ontacts withsurface resis
tivities in the 10-10 Ωcm 2
range”J.W.Ekin et al;App
l.Phys.Lett.52 P1819−P182
1,(1988))によれば、超電導薄膜とリード線の
接触部分において、銀または金コートを行なった後に熱
処理を施すことにより、接触抵抗が低減できることが開
示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、テープ
基板上に酸化物超電導膜が形成された構造を有する酸化
物超電導線材は、最外層に超電導膜が露出し、露出した
側の表面は何ら安定化処理が施されていない。そのた
め、このような酸化物超電導線材に比較的大きな電流を
流した場合に、局所的な熱発生のため、超電導膜が局所
的に超電導状態から常電導状態へ転移し、電流輸送が不
安定になるという問題があった。
【0007】特に、テープ基板上に酸化物超電導膜を形
成する際には、超電導特性の分布が避けられないため、
局所的に臨界電流密度の低い部分ができてしまう。この
ように臨界電流密度の低い部分は、線材全体に電流を流
したとき、より低い電流で超電導に転移し、抵抗が発生
してしまう。これにより、ジュール熱が発生し、局所的
な温度上昇によって臨界電流値がよりいっそう低下する
という問題があった。
【0008】また、上述のように、最も高い臨界電流密
度が得られる気相法、たとえばレーザアブーション法を
用いることにより、酸化物超電導薄膜を長尺の基板上に
作製し、酸化物超電導導体が得られる。この導体は、膜
の性能としては、実用化に対して十分な特性が得られて
いる。
【0009】しかしながら、酸化物超電導膜を導体化
し、機器またはデバイスとして使用する場合には、長期
にわたって安定に動作することが必要となる。具体的に
は、たとえば、環境中に長時間放置した場合の安定性、
液体窒素と室温間のヒートサイクルに対する安定性、お
よび液体窒素温度から室温に移行する場合の結露に対す
る安定性等を確立する必要がある。また、超電導導体の
製造工程においては、超電導膜の形成後の後工程におけ
る膜の傷の発生を防止することも必要である。
【0010】この点で、従来の超電導膜が露出した構造
の導体は、十分な安定性が得られないという問題点を有
していた。特に、発明者らは、長さを問わず保護層を有
しない酸化物超電導膜を大気中(平均20℃,45RH
%)に保管したところ、1カ月程度の長期間経過後に
は、臨界電流が10%以上低下することを確認した。
【0011】一方、リード線との接触部分については、
従来のPb−Sn半田を用いる接続方法では、接触抵抗
の低い接合を作ることは困難な場合が多かった。
【0012】この発明の目的は、上述の問題点を解決
し、高い臨界電流値を有し、安定した電流輸送を行なう
ことができる、酸化物超電導導体およびその製造方法を
提供することにある。
【0013】また、この発明のさらなる目的は、長期間
の保存によってもその安定性が低下しない、酸化物超電
導導体およびその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明による酸
化物超電導導体は、フレキシブルなテープ基板と、テー
プ基板上に形成された中間層と、中間層上に形成された
酸化物超電導膜と、酸化物超電導膜上に形成された、熱
膨張係数が1×10-5/K〜5×10-5/Kの値を有
し、かつ耐酸化性の金属からなる、厚さが0.5μm以
上の保護層とを備えている。
【0015】請求項2の発明による酸化物超電導導体
は、請求項1の発明において、金属が金または銀であ
る。
【0016】請求項3の発明による酸化物超電導導体
は、請求項1または2の発明において、保護層の厚さ
が、酸化物超電導導体の両端の電流リードとの接続部分
において、1μm以上であることを特徴としている。
【0017】請求項4の発明による酸化物超電導導体
は、請求項1または2の発明において、保護層の厚さが
5μm以上である。
【0018】請求項5の発明による酸化物超電導導体
は、フレキシブルなテープ基板と、テープ基板上に形成
された中間層と、中間層上に形成された酸化物超電導膜
と、酸化物超電導膜上に形成された、熱膨張係数が1×
10-5/K〜5×10-5/Kの値を有し、かつ耐酸化性
の金属からなる第1の保護層と、第1の保護層上に形成
された、熱膨張係数が1×10-5/K〜5×10-5/K
の値を有するセラミックスまたはポリマーからなる第2
の保護層とを備えている。
【0019】請求項6の発明による酸化物超電導導体
は、請求項5の発明において、金属が金または銀であ
る。
【0020】請求項7の発明による酸化物超電導導体の
製造方法は、フレキシブルなテープ基板上に中間層を形
成するステップと、中間層上に酸化物超電導膜を形成す
るステップと、酸化物超電導膜上に金または銀からなる
膜を形成してコーティングするステップと、金または銀
からなる膜によってコーティングされた酸化物超電導膜
を500℃〜750℃の温度で熱処理するステップとを
備えている。
【0021】請求項8の発明による酸化物超電導導体の
製造方法は、請求項7の発明において、金または銀から
なる膜を形成するステップが、気相法によって行なわれ
る。
【0022】請求項9の発明による酸化物超電導導体の
製造方法は、請求項7の発明において、金または銀から
なる膜を形成するステップが、レーザアブーション法に
よって行なわれる。
【0023】請求項10の発明による酸化物超電導導体
の製造方法は、請求項7の発明において、金または銀か
らなる膜を形成するステップは2段階からなるものであ
り、第1ステップとして気相法によって1μm以上コー
ティングし、第2ステップとして湿式法によって計5μ
m以上コーティングするステップを備えている。
【0024】請求項11の発明による酸化物超電導導体
の製造方法は、請求項7の発明において、金または銀か
らなる膜を形成するステップは2段階からなるものであ
り、第1ステップとしてレーザアブレーション法によっ
て1μm以上コーティングし、第2ステップとして無電
解メッキ法によって計5μm以上コーティングするステ
ップを備えている。
【0025】請求項12の発明による酸化物超電導導体
の製造方法は、フレキシブルなテープ基板上に中間層を
形成するステップと、中間層上に酸化物超電導膜を形成
するステップと、酸化物超電導膜上にレーザアブーショ
ン法によって金または銀を1μm以上の厚さになるよう
にコーティングし、750℃以下の温度範囲で熱処理す
ることにより第1の保護層を形成するステップと、第1
の保護層上に熱膨張係数が1×10-5/K〜5×10-5
/Kの値を有するセラミックスまたはポリマーからなる
第2の保護層を形成するステップとを備えている。
【0026】請求項13の発明による酸化物超電導導体
の製造方法は、請求項12の発明において、第2の保護
層を形成するステップは、液状ポリマーを塗布して40
0℃以下で硬化することにより行なう。
【0027】請求項14の発明による酸化物超電導導体
の製造方法は、請求項12の発明において、第2の保護
層を形成するステップは、液状ポリマーを塗布して紫外
線で硬化することにより行なう。
【0028】請求項15の発明による酸化物超電導導体
の製造方法は、請求項12の発明において、第2の保護
層を形成するステップは、セラミックスまたはポリマー
をレーザアブーション法を用いて形成することにより行
なう。
【0029】なお、この明細書において「超電導導体」
には「超電導線材」が含まれる。
【0030】
【作用】酸化物超電導導体は、水分(湿気)と反応して
分解することが知られている。したがって、発明者ら
は、前述の問題点を解決するためには、大気中に存在す
る湿気との反応を防止するための保護層を超電導膜の露
出面に設ける必要があることに着目した。そして、この
反応防止層の構造を次のように検討した。
【0031】まず、反応防止層に用いられる材料として
は、以下の4点が要求される。 水蒸気の透過係数が小さいこと。
【0032】 保護膜形成時に、酸化物超電導膜と反
応しないこと。 熱膨張係数が酸化物超電導体の値に近いこと、また
は、ずれる場合は酸化物超電導体の値より大きい方向に
ずれること。これは、酸化物超電導体は引張り歪みに対
しては臨界温度および臨界電流密度が減少するが、圧縮
歪みに対しては臨界温度および臨界電流密度が増加する
ことが知られているためである。
【0033】 耐候性があること。 ここで、請求項1の発明によれば、保護層として、熱膨
張係数が1×10-5/K〜5×10-5/Kの金属が用い
られる。酸化物超電導体の熱膨張係数は、1.5×10
-5/Kであり、このような金属は前述の要件をすべて満
たしている。
【0034】また、酸化物超電導膜の上に金属からなる
膜がコーティングされた構造の超電導導体においては、
超電導導体に電流を流した際に生じる局所的な発熱は、
瞬時に金属からなる保護層に拡散する。そのため、超電
導膜部分での温度上昇による常電導への転移を防止する
ことができ、安定した電流輸送を行なうことができる。
そのうえ、金属は、一般にガスの透過係数が小さいため
有利である。
【0035】さらに、請求項1の発明によれば、金属か
らなる保護層の厚さは、0.5μm以上である。以下の
実施例で示すとおり、0.5μm以上の厚さがあれば、
局所的な発熱の抑制に効果がある。
【0036】請求項2の発明によれば、金属が金または
銀である。金属材料のうち、酸化物超電導体と熱膨張係
数が近いかまたは大きい値を有する元素である、銀(熱
膨張係数は1.9×10-5/K)と金(熱膨張係数は
1.4×10-5/K)とは、反応性が少ないため特に有
利である。また、特に銀は安価であり、経済的な面から
も有利に利用できる。
【0037】請求項3の発明によれば、酸化物超電導導
体両端の電流リードとの接続部分では、金属からなる保
護層の厚さは、1μm以上である。保護層の厚さが1μ
mより薄いと、電流リードをハンダ等でボンディングす
る際、ハンダと保護層との反応により、低い接触抵抗に
抑えられた超電導膜と保護層との界面が破壊される場合
がある。そのため、以下の実施例で示すとおり、電流リ
ードとの接触部分においては、保護層の厚さを1μm以
上とすることにより、局所的な発熱の抑制に効果があ
る。
【0038】請求項4の発明によれば、金属からなる保
護層の厚さは、5μm以上である。以下の実施例で示す
とおり、5μm以上の厚さがあれば、長期間の保存によ
っても、超電導導体の安定性が低下しない。
【0039】請求項5の発明によれば、保護層は2層構
造を有している。金属からなる第1の保護層上に、セラ
ミックスまたはポリマーからなる第2の保護層を設ける
ことにより、機械的強度を向上させることができる。
【0040】セラミックス材料としては、酸化ジルコニ
ウム(安定化のためにY、Mg、Ca等を添加したもの
を含み、Yを添加したYSZの熱膨張係数は1.6×1
-5/Kである。)、酸化マグネシウム(熱膨張係数は
1.38×10-5/Kである。)、チタン酸バリウム
(熱膨張係数は、c軸配向のとき1.57×10-5/K
であり、多結晶セラミックス状態では1.9×10-5
Kである。)がある。
【0041】ポリマー材料としては、ポリイミド(熱膨
張係数は1〜4×10-5/Kである。)、エポキシ樹脂
(熱膨張係数は4×10-5/K以下である。)、ポリシ
ラザン(熱膨張係数は〜3×10-5/K以下である。)
を用いることができる。ポリマー材料は、無機材料を混
合分散させることにより、熱膨張係数をある程度変更さ
せることができる利点もある。
【0042】請求項7の発明によれば、金または銀から
なる膜をコーティングした後に、500℃〜750℃の
温度で熱処理を施している。このような熱処理を施すこ
とにより、超電導膜と金または銀からなるコーティング
との接触抵抗を、大きく低減することができる。そのた
め、局所的に超電導が破れて抵抗が発生した部分では、
電流はバイパスとして金または銀からなる保護層に流れ
るようになるため、発熱が抑えられる。このようにし
て、温度が低下すれば、再び超電導状態に回復すること
ができ、安定した電流輸送を行なうことができる。
【0043】また、いかなる方法で金属膜を作製して
も、表面上の欠陥の生成を避けることは困難である。し
たがって、形成後に熱処理を行なうことにより、欠陥が
減少し、酸化物超電導膜との密着性を向上させることが
できる。
【0044】請求項8の発明によれば、金または銀から
なる膜は、気相法により形成される。
【0045】また、請求項9の発明によれば、金または
銀からなる膜は、レーザアブーション法により形成され
る。
【0046】金または銀膜は、レーザアブーション法に
よって非常に速い成膜速度で形成することが可能であ
る。特に、酸化物超電導膜を形成する装置と金または銀
を形成する装置とを連続して運転できるようにすること
によって、高い生産性が達成される。
【0047】請求項11の発明によれば、金または銀層
はレーザアブレーション法によって酸化物超電導膜と同
程度の成膜速度で必要量を形成させることができる。す
なわち、連続して酸化物超電導膜と金または銀膜を形成
することが可能となる。なお所望の金または銀は湿式法
の無電解メッキ法によって形成することができる。
【0048】また、形成した金または銀膜は、電気炉等
で750℃以下の範囲で熱処理することが必要である。
ただし、低温では効果を発揮させるために長時間の熱処
理時間を必要とするため、ある程度高い温度にすること
が実用的である。このとき、熱処理温度が400℃を超
える場合は、高温超電導膜から酸素が放出され特性が低
下するため、酸素中で熱処理を行なう必要がある。
【0049】請求項12の発明によれば、金または銀か
らなる第1の保護層を形成した後、セラミックスまたは
ポリマーからなる第1の保護層を形成する。そのため、
機械的強度を向上させることができる。
【0050】なお、酸化物超電導膜の表面粗さを調査し
たところ、最高0.8μmの凸部があった。したがっ
て、第1の保護層としては少なくとも0.8μmより厚
い膜を形成することが好ましい。
【0051】請求項13および請求項14の発明によれ
ば、液状原料のポリマーを塗布して被膜を形成した後、
加熱または光照射により硬化させている。そのため、安
価に形成することができ、コスト的に有利である。
【0052】請求項15の発明によれば、セラミックス
またはポリマーからなる第2の保護層を、レーザアブー
ション法により形成している。そのため、超電導膜の形
成および第1の保護層の形成と同一ラインで連続的に処
理することが可能となる。
【0053】
【実施例】
<実施例1>図1は、本発明による一例の酸化物超電導
線材の構造を示す斜視図である。
【0054】図1を参照して、この酸化物超電導線材
は、基板としてのハステロイテープ1の上に、中間層と
してイットリア安定化ジルコニア層2が設けられ、この
上にY−Ba−Cu−O系酸化物超電導膜3が形成さ
れ、さらにこの上に金または銀からなるコーティング膜
4が形成されている。
【0055】このような構造の酸化物超電導線材につい
て、以下のように、本発明の効果を調べる実験を行なっ
た。
【0056】(実験1)まず、1mのハステロイテープ
基板上に、中間層としてイットリア安定化ジルコニア層
を形成し、さらにこの上に、Y−Ba−Cu−O系酸化
物超電導膜を形成した。この酸化物超電導線材につい
て、線材全長の臨界電流値を測定したところ、12A±
1Aの分布であった。
【0057】次に、この線材の前半分0.5mの部分
に、0.8μmの厚さの銀をコーティングした後、70
0℃の酸素ガス雰囲気中で1時間のアニーリング処理を
行なった。
【0058】このようにして得られた酸化物超電導線材
について、臨界電流値の測定を行なった。その結果を図
2に示す。図2において、横軸は線材の先頭からの位置
(cm)を示し、縦軸は臨界電流値(A)を示してい
る。
【0059】図2を参照して、この酸化物超電導線材
は、銀をコーティングした前半分0.5mの部分は19
〜20Aの臨界電流値を示し、銀をコーティングしてい
ない部分は予め測定した11〜13Aの臨界電流値のま
まであった。
【0060】(実験2)金または銀のコーティングにつ
いて、その膜厚依存性を調べるため、以下の実験を行な
った。
【0061】まず、実験1と同様に、1mのハステロイ
テープ基板上に、中間層としてイットリア安定化ジルコ
ニア層を形成し、さらにこの上に、Y−Ba−Cu−O
系酸化物超電導膜を形成した。
【0062】次に、この線材の前半分0.5mの部分
に、厚さがそれぞれ0.2、0.4、0.5、0.6、
0.8および1μmとなるように銀をコーティングした
後、700℃の酸素ガス雰囲気中で1時間のアニーリン
グ処理を行なった。
【0063】このようにして得られた6種の酸化物超電
導線材について、臨界電流値の測定を行ない、コーティ
ングした部分の臨界電流値とコーティングしていない部
分の臨界電流値の比を評価した。その結果を図3に示
す。図3において、横軸は銀の膜厚(μm)を示し、縦
軸はコーティングした部分の臨界電流値とコーティング
していない部分の臨界電流値の比(コーティング部Ic
/コーティングなし部Ic)を示している。
【0064】図3より明らかなように、銀の膜厚が0.
5μm以上のとき、臨界電流値が向上することがわか
る。
【0065】また、金のコーティングについても、同様
の実験を行なった。その結果を図4に示す。図4におい
て、横軸は金の膜厚(μm)を示し、縦軸はコーティン
グした部分の臨界電流値とコーティングしていない部分
の臨界電流値の比(コーティング部Ic/コーティング
なし部Ic)を示している。
【0066】図4より明らかなように、金の膜厚が0.
5μm以上のとき、臨界電流値が向上することがわか
る。
【0067】(実験3)銀のコーティングをした後の熱
処理温度と、得られる超電導線材の臨界電流値との関係
について調べるため、以下の実験を行なった。
【0068】まず、実施例1と同様に、1mのハステロ
イテープ基板上に、中間層としてイットリア安定化ジル
コニア層を形成し、さらにこの上に、Y−Ba−Cu−
O系酸化物超電導膜を形成した。
【0069】次に、この線材の前半分0.5mの部分
に、0.8μmの厚さの銀をコーティングした後、40
0、500、600、700、750、800および9
00℃で、酸素ガス雰囲気中1時間のアニーリング処理
を行なった。
【0070】このようにして得られた7種の酸化物超電
導線材について、臨界電流値の測定を行ない、コーティ
ングした部分の臨界電流値とコーティングしていない部
分の臨界電流値の比を評価した。その結果を図5に示
す。図5において、横軸は熱処理温度(℃)を示し、縦
軸はコーティングした部分の臨界電流値とコーティング
していない部分の臨界電流値の比(コーティング部Ic
/コーティングなし部Ic)を示している。
【0071】図5より明らかなように、熱処理温度が5
00℃〜750℃の範囲のとき、臨界電流値が向上する
ことがわかる。
【0072】(実験4)電流リードとの接続部分におけ
る金または銀のコーティングについて、その膜厚依存性
を調べるため、以下の実験を行なった。
【0073】まず、ハステロイテープ基板上に中間層と
してイットリア安定化ジルコニア層を形成し、さらにこ
の上にY−Ba−Cu−O系酸化物超電導膜を形成し
た。次に、厚さがそれぞれ0.5、1、1.5および2
μmとなるように、銀をコーティングした。
【0074】このようにして得られた銀がコーティング
された4種の酸化物超電導線材と、コーティングをして
いない酸化物超電導線材に、それぞれ電流リードを接続
し、電流を流した。電流量を徐々に上げていき、発熱に
よって電流リードとの接触部の超電導膜が損焼し、電流
が流れなくなるときの電流値(以下「電流リード部損焼
電流」という)を測定した。その結果を図6に示す。図
6において、横軸は銀コート膜厚(μm)を示し、縦軸
は電流リード部損焼電流(A)を示している。
【0075】図6より明らかなように、電流リードとの
接続部分においては、銀コート膜の膜厚が1μm以上の
とき、高い臨界電流値が得られることがわかる。
【0076】また、金のコーティングについても、同様
の実験を行なった。その結果を図7に示す。図7におい
て、横軸は金コート膜厚(μm)を示し、縦軸は電流リ
ード部損焼電流(A)を示している。
【0077】図7より明らかなように、電流リード部と
の接続部分においては、金コート膜の膜厚が1μm以上
のとき、高い臨界電流値が得られることがわかる。
【0078】以上の実施例1で説明したように、本発明
によれば、高い臨界電流値を有し、安定した電流輸送を
行なうことができる酸化物超電導導体が得られる。
【0079】<実施例2>しかしながら、酸化物超電導
膜に0.5μmの銀を保護層として形成した酸化物超電
導導体でも、大気中に保管すると、1カ月程度の長期的
には臨界電流が低下することが確認された。いかなる方
法で銀膜を作製しても、表面上の欠陥の生成を避けるこ
とは困難であり、僅かな数の欠陥が生じていれば、酸化
物超電導膜と水蒸気が反応する可能性があるからであ
る。そのため、実際に0.5μm程度の銀の反応防止層
を形成しても、大気中に放置すると臨界電流の低下が認
められた。
【0080】そこで、発明者らは、長期間の安定性を必
要とする機器またはデバイスに対しても適用可能な酸化
物超電導導体を得るための実験を行なった。
【0081】ここで、発明者らは、長期間の安定性を評
価する方法として、次の方法を考えた。
【0082】従来、大気中に保管して影響を調査する
と、結果が判明し得るまで長い時間を必要としていた。
そこで、大気環境で保管する時間を加速する模擬試験と
して、恒温恒湿槽にサンプルを一定期間保管して、液体
窒素中で臨界電流値を測定することを繰返すことによっ
て、環境中に長時間放置した場合の安定性および液体窒
素温度から室温に移行する場合の結露に対する安定性を
評価することが可能となった。また、液体窒素中と大気
中にそれぞれ1分間放置(それぞれの状態の温度になっ
てからの時間)するサイクルを多数回実施することによ
り、液体窒素と室温間のヒートサイクルに対する安定性
を評価することが可能となった。
【0083】(実験5)まず、基板として、ニッケル系
の耐熱合金ハステロイC−276(熱膨張係数1.53
×10-5/K、基板としての大きさ:幅10mm、長さ
550mm)を用いた。この基板の上に、基板との反応
を抑制するための中間層として、酸化ジルコニウム層
(Yを添加したYSZ)を、ハステロイテープ上に形成
できるように搬送機構を備えたマグネトロンスパッタ装
置を用いて形成した。次に、この基板を搬送できる機構
を備えたエキシマレーザを用いて、中間層を設置した基
板上に、YBaCuO系超電導膜の形成を行なった。こ
のときの作製条件を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】このようにして得られたサンプルについ
て、X線回折装置で反応防止層の結晶性を調査したとこ
ろ、基板に起因するピーク、中間層に起因するピークの
他に、YBaCuO系超電導膜が基板に対して垂直に配
向していることが確認できた。
【0086】また、4端子法を用いて液体窒素中におけ
るサンプルの臨界電流を測定した結果を、表2に示す。
【0087】
【表2】
【0088】測定後、臨界電流の測定に使用した電極部
分を切取り、500mmの長さのサンプルとした。な
お、別途作製した550mm長のサンプルで長さ方向の
臨界電流を5cm間隔で調査したところ、全長の臨界電
流に対しての各部分の値は3%のずれしか生じていなか
った。
【0089】上記で作製した酸化物超電導膜サンプル
に、銀をスパッタ法(DCスパッタ装置)によって上記
サンプルを搬送させながら5μm〜20μm形成した。
膜形成後、酸素雰囲気中で500℃、650℃、750
℃で熱処理を行ない、臨界電流を測定した結果を、表2
に併せて示す。
【0090】上記のサンプルを常温大気中(約25℃,
約40RH%)に30日放置した後、臨界電流値を測定
したが、表2に示す値と同じであった。
【0091】また、より厳しい環境として、80℃−8
5RH%の恒温恒湿槽に全サンプルを500時間保管し
た後、臨界電流を測定したが、結果は表2に示した値と
同じであった。
【0092】さらに、液体窒素中と実験室(約25℃、
約40RH%)環境にサンプルを各10分間ずつ保管す
るヒートサイクル試験を100回繰返した。なお、液体
窒素中からサンプルを取出した際は、そのまま自然乾燥
とした。このヒートサイクル試験後の臨界電流を測定し
た結果を、表2に併せて示す。表2より明らかなよう
に、臨界電流の低下がないことを確認した。
【0093】(実験6)実験5と同じ工程で、長さ15
0mmのY系酸化物超電導サンプルを作製した。銀層は
実験5と異なり、Y系酸化物超電導膜を作製している装
置に直結させたレーザアブーション装置で、チャンバを
隔てて連続した状態で形成した。形成条件は、表1にお
いてターゲットを銀に、基材温度を無し(外部加熱装置
なし)に、ガスをアルゴンに変えて実施した。この工程
により、実験5に比べ銀を別途コーティングする時間を
短縮できた。すなわち、5μmの厚み、1m長で換算し
た場合、サンプルセット時間を除いて3時間の短縮がで
きた。
【0094】実験5と同様に液体窒素中で臨界電流を測
定し、大気中に30日間放置して測定した結果と、80
℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に500時間保管し
た後再び臨界電流値を測定した結果を、表3に示す。
【0095】
【表3】
【0096】さらに、液体窒素中と実験室(約25℃、
約40RH%)環境にサンプルを各10分間ずつ保管す
るヒートサイクル試験を100回繰返した。なお、液体
窒素中からサンプルを取出した際は、そのまま自然乾燥
とした。このヒートサイクル試験後の臨界電流を測定し
た結果を、表3に併せて示す。表3より明らかなよう
に、臨界電流の低下がないことが確認された。
【0097】(実験7)実験5において銀層の厚みを1
〜4μmにしたことを除いて、他は同じ条件でサンプル
を作製した。
【0098】実験5と同様に液体窒素中で臨界電流を測
定し、大気中に30日間放置して測定した結果と、80
℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に500時間保管し
た後再び臨界電流値を測定した結果を、表4に示す。
【0099】
【表4】
【0100】表4より明らかなように、銀層の厚みが薄
いと、恒温恒湿槽に入れた後の臨界電流値は低下してい
た。
【0101】なお、比較のため、80℃−85RH%の
恒温恒湿槽の環境中に、銀の保護膜を形成していないサ
ンプルを1時間保管したところ、臨界電流が0に低下し
た。
【0102】次に、上記表4に示したサンプル1、2、
3と同じ条件でサンプルa、b、cを作製し、臨界電流
値を測定し(初期値)、恒温恒湿槽中に1時間保管して
臨界電流を測定することを繰返し、初期値の95%にな
るまで行なった。結果を表5に示す。
【0103】
【表5】
【0104】表4のサンプル1、2、3と表5のサンプ
ルa、b、cの結果より、臨界電流の低下に関して、恒
温恒湿槽中の環境12時間が、大気環境の30日に相当
することが判明した。よって、恒温恒湿槽500時間は
大気環境の1250日(3.4年)に相当し、この段階
でも臨界電流の低下は0であることが予想できる。
【0105】(実験8)実験5において、銀層の処理温
度を800℃、850℃にしたことを除いて、他は同じ
条件でサンプルを作製した。
【0106】実験5と同様に液体窒素中で臨界電流を測
定した。その結果を表6に示す。
【0107】
【表6】
【0108】表6より明らかなように、実験5に比べて
小さい臨界電流値しか得られなかった。
【0109】そこで、さらに実験5の条件で、20cm
長のY系酸化物超電導サンプルを4本(A、B、C、
D)作製し、5μmの銀を形成した。サンプルAは熱処
理なし、サンプルBは750℃で、サンプルCは800
℃で、サンプルDは850℃で熱処理した。結果を表7
に示す。
【0110】
【表7】
【0111】表7より明らかなように、熱処理温度を7
50℃より高くすることだけで、サンプルの臨界電流が
低下することが判明した。
【0112】以上の実施例で説明したように、この発明
によれば、酸化物超電導導体の外部に、熱処理を施した
厚み5〜20μmの金属からなる保護層があるため、大
気中に放置しても酸化物超電導膜の臨界電流が低下する
ことがなく、80℃−85RH%の環境中500時間保
管しても臨界電流は低下することがなく、さらに、液体
窒素中と室温間のヒートサイクル試験を100回繰返し
ても臨界電流は低下することがないことがわかった。
【0113】<実施例3>しかしながら、上記のように
金属層形成後に熱処理をしても、または金属層を厚くし
ても、作製時、輸送中、後工程時における加工中におい
て表面への傷を防ぐことは困難である。そこで、発明者
らは、次に、第1層の金属と異なるセラミックスまたは
ポリマー材料をコーティングし、第2層とした。以下、
このような2層構造を有する保護層を備える酸化物超電
導導体について行なった実験について説明する。
【0114】(実験9)まず、基板として、ニッケル系
の耐熱合金ハステロイC−276(熱膨張係数1.53
×10-5/K、基板としての大きさ:幅10mm、長さ
550mm)を用いた。この基板の上に、基板との反応
を抑制するための中間層として、酸化ジルコニウム層
(Yを添加したYSZ)を、ハステロイテープ上に形成
できるように搬送機構を備えたマグネトロンスパッタ装
置を用いて形成した。次に、この基板を搬送できる機構
を備えたエキシマレーザを用いて、中間層を設置した基
板上に、YBaCuO系超電導膜の形成を行なった。こ
のときの作製条件を表8に示す。
【0115】
【表8】
【0116】このようにして得られたサンプルを、X線
回折装置で反応防止層の結晶性を調査したところ、基板
に起因するピーク、中間層に起因するピークの他に、Y
BaCuO系超電導膜が基板に対して垂直に配向してい
ることが確認できた。
【0117】また、4端子法を用いて液体窒素中におけ
るサンプルの臨界電流を測定した結果を、表9に示す。
【0118】
【表9】
【0119】測定後、臨界電流の測定に使用した電極部
分を切取り、500mmの長さのサンプルとした。な
お、別途作製した550mm長のサンプルで長さ方向の
臨界電流を5cm間隔で調査したところ、全長の臨界電
流に対しての各部分の値は3%のずれしか生じていなか
った。
【0120】上記のように作製した酸化物超電導膜サン
プルに、銀および金をレーザアブーション法によって1
μm形成した。成膜条件は表8においてターゲットを銀
または金にしたこと、ガスをアルゴンにしたことを除い
て同じ条件で行なった。
【0121】膜形成後、酸素雰囲気中で800℃、75
0℃、500℃で熱処理を行ない、臨界電流を測定した
結果を、表10に示す。
【0122】
【表10】
【0123】表10より明らかなように、800℃で熱
処理すると、サンプルの臨界電流値は減少し、750℃
以下では増加していることがわかる。
【0124】測定後、臨界電流の測定に使用した電極部
分を切取り、3分割して長さ150mmのサンプルを3
本分用意した。
【0125】別途長さ200mmのYBCO膜サンプル
を作製し、銀または金を3μm、5μmコーティング
し、酸素雰囲気中で500℃、750℃で熱処理したも
のをそれぞれ3本分ずつ用意し、臨界電流を測定した。
その結果を表11および表12に示す。
【0126】
【表11】
【0127】
【表12】
【0128】測定後、臨界電流の測定に使用した電極部
分を切取り、長さ150mmのサンプルとした。
【0129】上記で銀または金をそれぞれ1、3、5μ
mコーティングし、500℃または750℃で熱処理し
た長さ150mmのサンプル上に、ポリイミド(硬化
300℃×1時間)、ポリシラザン(硬化250℃×
30分)、エポキシ樹脂(硬化150℃×1時間)
を、それぞれ8μmコーティングし、第2層目の保護層
を形成した。ただし、臨界電流測定を行なうため、電極
の形成に必要な両端25mm分は、ポリマーでコーティ
ングしなかった。
【0130】ポリマーをコーティングしたサンプルの臨
界電流を測定したところ、表11、表12に示すとお
り、コーティングによる臨界電流値の変化は生じなかっ
た。
【0131】上記のサンプルを常温大気中に30日放置
した後、臨界電流値を測定したが、表11および表12
に示す値と同じであった。
【0132】より厳しい環境として、80℃−85RH
%の恒温恒湿槽に全サンプルを100時間保管した後、
臨界電流を測定した結果を、表11および表12に示
す。
【0133】(実験10)まず、実験9と同じ工程で、
長さ150mmのY系酸化物超電導サンプルを作製し
た。次に、第1層として、実験9で銀と金の種類、50
0℃と750℃の熱処理温度による特性の大きな違いが
なかったこと、第1層の厚さは1μm、3μmおよび5
μmで差がなかったことから、厚み1μmの銀を形成
し、500℃で熱処理した。続いて、第2層として、液
状で感光性のポリイミド原料(アクリロイル基を内蔵す
る芳香族ジアミンとビフェニルテトラカルボン酸無水
物)を、臨界電流測定を行なうため電極の形成に必要な
端25mm分(両端)を除き塗布し、紫外線を3分間照
射した。膜厚は5μmであった。
【0134】このようにして得られたサンプルについ
て、実験9と同様に液体窒素中で臨界電流を測定し、8
0℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に100時間保管
した後、再び臨界電流値を測定した。結果を表13に示
す。
【0135】
【表13】
【0136】(実験11)まず、実験9と同じ工程で、
長さ150mmのY系酸化物超電導サンプルを作製し
た。次に、第1層として、実験9で銀と金の種類、50
0℃と750℃の熱処理温度による特性の大きな違いが
なかったこと、第1層の厚みは1μm、3μmおよび5
μmで差がなかったことから、厚さ1μmの銀を形成
し、500℃で熱処理した。続いて、第2層として、固
型ポリイミドとYSZ、MgO、TiBaO3 を、レー
ザアブーション法により、臨界電流測定を行なうため電
極の形成に必要な端25mm分(両端)を除きコーティ
ングした。レーザアブーション法でのコーティング条件
は、表8と比べガスをアルゴンにしたこと、エネルギー
密度をポリイミドの場合には0.1J/cm2 としたこ
とを除き、同じ条件で行なった。膜厚は5μmであっ
た。
【0137】実験10と同様に液体窒素中で臨界電流を
測定し、80℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に10
0時間保管した後、再び臨界電流値を測定した。結果を
表14に示す。
【0138】
【表14】
【0139】(実験12)実験9において第1層の厚み
を0.1〜0.8μmにし、その後の熱処理を500℃
で行ない、第2層のエポキシ樹脂でコーティングしたサ
ンプルを比較のために作製した。なお、作製条件は実験
9と同じである。
【0140】このようにして得られたサンプルについ
て、実験9と同様に液体窒素中で臨界電流を測定し、8
0℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に100時間保管
した後、再び臨界電流値を測定した。結果を表15に示
す。
【0141】
【表15】
【0142】表15から明らかなように、第1層に用い
た銀、金ともに厚みが0.1〜0.8μmでは、恒温恒
湿槽に入れた後の臨界電流値は低下していた。
【0143】(実験13)実験9において第1層を形成
することなく、第2層を実験9、実験10、実験11に
示した方法で形成した。
【0144】実験9と同様に液体窒素中で臨界電流を測
定し、80℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に100
時間保管した後、再び臨界電流値を測定した。結果を表
16に示す。
【0145】
【表16】
【0146】表16より明らかなように、第1層がない
場合では、恒温恒湿槽に入れた後の臨界電流値は低下し
ていた。
【0147】(実験14)実験9において第1層として
銅(熱膨張係数1.4×10-5/K)、アルミニウム
(熱膨張係数2.3×10-5/K)の厚さを1〜5μm
にし、その後の熱処理を500℃で行なったものと行な
わないものを用意し、次に第2層のポリイミド樹脂でコ
ーティングしたサンプルを比較のために作製した。な
お、作製条件は実験9と同じである。
【0148】得られたサンプルについて、実験9と同様
に液体窒素中で臨界電流を測定し、80℃−85RH%
に保った恒温恒湿槽に100時間保管した後、再び臨界
電流値を測定した。結果を表17に示す。
【0149】
【表17】
【0150】表17より明らかなように、耐酸化性のな
い金属を用いた場合は、上記のように、臨界電流の低下
は大きかった。
【0151】(実験15)実験9において第1層の厚み
をそれぞれ1μm、3μmおよび5μmとし、その後の
熱処理を実施しない点を除き、実験9と同じ条件で作製
し、第2層のポリイミドも実験9と同じ条件でコーティ
ングしたサンプルを比較のために作製した。
【0152】このようにして得られたサンプルについ
て、実験9と同様に液体窒素中で臨界電流を測定し、8
0℃−85RH%に保った恒温恒湿槽に100時間保管
した後、再び臨界電流値を測定した。結果を表18に示
す。
【0153】
【表18】
【0154】表18より明らかなように、第1層に対し
て熱処理を行なわないと、上記のように臨界電流の低下
が認められた。
【0155】以上の実施例3で説明したように、この発
明によれば、酸化物超電導導体の外部に2層構造からな
る保護層があるため、大気中に放置しても、酸化物超電
導膜は劣化することがない。
【0156】なお、ポリイミド、ポリシラザン、エポキ
シを保護層としてコーティングしたサンプルを鉛筆硬度
試験をJIS DO20に従い行なったところ、すべて
8H以上であった。
【0157】また、YSZ、MgO、TiBaO3 を保
護層としてコーティングしたサンプルでは1H以上であ
った。
【0158】<実施例4>上記のようにAgまたはAu
を第1層として厚く形成することによって第2層がなく
ても長期間の保存安定することが判明した。
【0159】そこで発明者らは、次に第1層の金属と同
じ金属材料を別の形成方法でコーティングする手法を行
なった。
【0160】第1層はレーザアブレーション法が望まし
いが、レーザアブレーション法は中間層、酸化物の超電
導層を形成する有望な方法であるため第1層を厚く形成
するために装置使用時間を多く専有するのは効率的では
なかった。
【0161】以下、第2層を湿式法で形成した酸化物超
電導体について行なった実験について説明する。
【0162】(実験16)まず、基板として、ニッケル
系の耐熱合金ハステロイC−276(熱膨張係数1.5
3×10-5/K、基板としての大きさ:幅10mm、長
さ550mm)を用いた。この基板の上に、基板との反
応を抑制するための中間層として、酸化ジルコニウム層
(Yを添加したYSZ)を、ハステロイテープ上に形成
できるように搬送機構を備えたマグネトロンスパッタ装
置を用いて形成した。次に、この基板を搬送できる機構
を備えたエキシマレーザを用いて、中間層を設置した基
板上に、YBaCuO系超電導膜の形成を行なった。こ
のときの作製条件は表8に示すものと同様であった。
【0163】このようにして得られたサンプルを、X線
回折装置で反応防止層の結晶性を調査したところ、基板
に起因するピーク、中間層に起因するピークの他に、Y
BaCuO系超電導膜が基板に対して垂直に配向してい
ることが確認できた。
【0164】また、4端子法を用いて液体窒素中におけ
るサンプルの臨界電流を測定した結果2.92Aであっ
た。
【0165】測定後、臨界電流の測定に使用した電極部
分を切取り、500mmの長さのサンプルとした。な
お、別途作製した550mm長のサンプルで長さ方向の
臨界電流を5cm間隔で調査したところ、全長の臨界電
流に対しての各部分の値は3%のずれしか生じていなか
った。
【0166】上記のように作製した酸化物超電導膜サン
プルに、銀をレーザアブーション法によって1μm形成
した。成膜条件は表8においてターゲットを銀にしたこ
と、ガスをアルゴンにしたことを除いて同じ条件で行な
った。
【0167】次にAgが形成されていない面を樹脂でコ
ーティングし乾燥した後、塩化第一スズ溶液に浸漬し前
処理を行なった。
【0168】酒石酸カリウムナトリウムを還元剤として
銀液に混合させた溶液にサンプルを1時間浸漬させた。
【0169】洗浄後Agがコーティングされていない側
の樹脂をアセトンで溶解させAgメッキの厚みを測定し
たところ約8μmであった。
【0170】Agメッキ8μmをした上記500mmサ
ンプルを3分割し長さ約150mmとした。この3つの
サンプルに対し、熱処理をしない500℃で熱処理
75℃で熱処理を行なって液体窒素中でサンプルの臨
界電流を測定した。表19に示すとおり、熱処理を行な
うことにより、臨界電流は向上した。
【0171】
【表19】
【0172】上記のサンプルを常温大気中(約25℃,
約40RH%)に30日放置した後、臨界電流値を測定
したが、表19に示す値と同じであった。
【0173】また、より厳しい環境として、80℃−8
5RH%の恒温恒湿槽に全サンプルを500時間保管し
た後、臨界電流を測定したが、結果は表19に示した値
と同じであった。
【0174】さらに、液体窒素中と実験室(約25℃、
約40RH%)環境にサンプルを各10分間ずつ保管す
るヒートサイクル試験を100回繰返した。なお、液体
窒素中からサンプルを取出した際は、そのまま自然乾燥
とした。このヒートサイクル試験後の臨界電流を測定し
た結果を、表19に併せて示す。表19より明らかなよ
うに、臨界電流の低下がないことを確認した。
【0175】(実験17)(実験16の比較例) 実験16において、酸化物超電導膜サンプル上に銀をレ
ーザアブレーション法によって1μmの膜形成を実施し
ない点を除き、実験16と同じ条件で酸化物超電導膜を
作製し、第2層の無電解メッキ法による銀層も実験16
と同じ条件でコーティングしたサンプルを比較のために
作製した。
【0176】このようにして得られたサンプルについ
て、実験16と同様に液体窒素中で臨界電流を測定した
ところ、サンプル500mm全長にわたって臨界電流は
ゼロであった。
【0177】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
高い臨界電流値を有し、安定した電流輸送を行なうこと
ができる酸化物超電導導体が得られる。また、この発明
によれば、長期間の保存によってもその安定性が低下し
ない酸化物超電導導体が得られる。
【0178】したがって、電流輸送容量が飛躍的に増大
するため、超電導マグネットケーブル等の電力機器用導
体として利用すると効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による一例の酸化物超電導線材の構造を
示す斜視図である。
【図2】線材の先頭からの位置と臨界電流値との関係を
示す図である。
【図3】銀の膜厚とコーティング部Ic/コーティング
なし部Icとの関係を示す図である。
【図4】金の膜厚とコーティング部Ic/コーティング
なし部Icとの関係を示す図である。
【図5】熱処理温度とコーティング部Ic/コーティン
グなし部Icとの関係を示す図である。
【図6】銀コート膜厚と電流リード部損焼電流との関係
を示す図である。
【図7】金コート膜厚と電流リード部損焼電流との関係
を示す図である。
【符号の説明】
1 ハステロイテープ 2 イットリア安定化ジルコニア層 3 Y−Ba−Cu−O系酸化物超電導膜 4 金または銀からなるコーティング膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 奥田 繁 大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電 気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 林 憲器 大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友電 気工業株式会社大阪製作所内 (72)発明者 原 築志 東京都調布市西つつじケ丘二丁目4番1号 東京電力株式会社技術研究所内 (72)発明者 石井 英雄 東京都調布市西つつじケ丘二丁目4番1号 東京電力株式会社技術研究所内

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フレキシブルなテープ基板と、 前記テープ基板上に形成された中間層と、 前記中間層上に形成された酸化物超電導膜と、 前記酸化物超電導膜上に形成された、熱膨張係数が1×
    10-5/K〜5×10 -5/Kの値を有し、かつ耐酸化性
    の金属からなる、厚さが0.5μm以上の保護層とを備
    える、酸化物超電導導体。
  2. 【請求項2】 前記金属は、金または銀である、請求項
    1記載の酸化物超電導導体。
  3. 【請求項3】 前記保護層の厚さが、前記酸化物超電導
    導体の両端の電流リードとの接続部分において、1μm
    以上であることを特徴とする、請求項1または請求項2
    記載の酸化物超電導導体。
  4. 【請求項4】 前記保護層の厚さが、5μm以上であ
    る、請求項1または請求項2記載の酸化物超電導導体。
  5. 【請求項5】 フレキシブルなテープ基板と、 前記テープ基板上に形成された中間層と、 前記中間層上に形成された酸化物超電導膜と、 前記酸化物超電導膜上に形成された、熱膨張係数が1×
    10-5/K〜5×10 -5/Kの値を有し、かつ耐酸化性
    の金属からなる第1の保護層と、 前記第1の保護層上に形成された、熱膨張係数が1×1
    -5/K〜5×10-5/Kの値を有するセラミックスま
    たはポリマーからなる第2の保護層とを備える、酸化物
    超電導導体。
  6. 【請求項6】 前記金属は、金または銀である、請求項
    5記載の酸化物超電導導体。
  7. 【請求項7】 フレキシブルなテープ基板上に、中間層
    を形成するステップと、 前記中間層上に、酸化物超電導膜を形成するステップ
    と、 前記酸化物超電導膜上に、金または銀からなる膜を形成
    してコーティングするステップと、 前記金または銀からなる膜によってコーティングされた
    酸化物超電導膜を、500℃〜750℃の温度で熱処理
    するステップとを備える、酸化物超電導導体の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 前記金または銀からなる膜を形成するス
    テップは、気相法によって行なわれる、請求項7記載の
    酸化物超電導導体の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記金または銀からなる膜を形成するス
    テップは、レーザアブーション法によって行なわれる、
    請求項7記載の酸化物超電導導体の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記金または銀からなる膜を形成する
    ステップは2段階からなるものであり、 第1ステップとして気相法によって1μm以上コーティ
    ングし、 第2ステップとして湿式法によって計5μm以上コーテ
    ィングするステップを備えた請求項7記載の酸化物超電
    導導体の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記金または銀からなる膜を形成する
    ステップは2段階からなるものであり、 第1ステップとしてレーザアブレーション法によって1
    μm以上コーティングし、 第2ステップとして無電解メッキ法によって計5μm以
    上コーティングするステップを備えた請求項7記載の酸
    化物超電導導体の製造方法。
  12. 【請求項12】 フレキシブルなテープ基板上に、中間
    層を形成するステップと、 前記中間層上に、酸化物超電導膜を形成するステップ
    と、 前記酸化物超電導膜上に、レーザアブーション法によっ
    て金または銀を1μm以上の厚さになるようにコーティ
    ングし、750℃以下の温度範囲で熱処理することによ
    り第1の保護層を形成するステップと、 前記第1の保護層上に、熱膨張係数が1×10-5/K〜
    5×10-5/Kの値を有するセラミックスまたはポリマ
    ーからなる第2の保護層を形成するステップとを備え
    る、酸化物超電導導体の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記第2の保護層を形成するステップ
    は、液状ポリマーを塗布して400℃以下で硬化するこ
    とにより行なう、請求項12記載の酸化物超電導導体の
    製造方法。
  14. 【請求項14】 前記第2の保護層を形成するステップ
    は、液状ポリマーを塗布して紫外線で硬化することによ
    り行なう、請求項12記載の酸化物超電導導体の製造方
    法。
  15. 【請求項15】 前記第2の保護層を形成するステップ
    は、セラミックスまたはポリマーをレーザアブーション
    法を用いて形成することにより行なう、請求項12記載
    の酸化物超電導導体の製造方法。
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