JPH08117879A - プレス加工方法 - Google Patents

プレス加工方法

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JPH08117879A
JPH08117879A JP7115497A JP11549795A JPH08117879A JP H08117879 A JPH08117879 A JP H08117879A JP 7115497 A JP7115497 A JP 7115497A JP 11549795 A JP11549795 A JP 11549795A JP H08117879 A JPH08117879 A JP H08117879A
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plate
press working
panel
press
strengthening treatment
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JP7115497A
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English (en)
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Akihito Sato
章仁 佐藤
Shinichiro Nakamura
真一郎 中村
Takashi Hosoe
隆史 細江
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Publication date
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    • B—PERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B21—MECHANICAL METAL-WORKING WITHOUT ESSENTIALLY REMOVING MATERIAL; PUNCHING METAL
    • B21D—WORKING OR PROCESSING OF SHEET METAL OR METAL TUBES, RODS OR PROFILES WITHOUT ESSENTIALLY REMOVING MATERIAL; PUNCHING METAL
    • B21D22/00—Shaping without cutting, by stamping, spinning, or deep-drawing
    • B21D22/20—Deep-drawing
    • B21D22/201—Work-pieces; preparation of the work-pieces, e.g. lubricating, coating

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  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Shaping Metal By Deep-Drawing, Or The Like (AREA)
  • Bending Of Plates, Rods, And Pipes (AREA)
  • Forging (AREA)
  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 プレス素材としての板状パネルの所定部位に
機械的強度を高める強化処理を施し、プレス加工時の成
形性を向上させる。 【構成】 円筒絞りのポンチ肩部や側壁部、角筒絞りの
コーナー部など、プレス加工時に伸び変形させられると
ともに応力集中が生じて割れが発生し易い応力集中部位
に、プレス加工に先立って、高エネルギーを加えて加熱
するとともに急冷させることにより高強度のベイナイト
組織やマルテンサイト組織とする組織変態強化処理を施
し、線状の強化部12a〜12eを設けて割れ14a〜
14eの発生を抑制する。圧印加工で圧縮変形させて加
工硬化或いは歪時効等により強化するなど、他の強化処
理方法を用いることもできるし、張出成形部位や曲げ成
形部位、平面歪変形を生じる部位に同様な強化処理を施
して成形性を向上させることもできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は板状パネルを塑性変形さ
せるプレス加工方法に係り、特に、プレス加工の内容に
応じて板状パネルの所定部位に機械的強度を向上させる
強化処理を施すことにより、その板状パネルの成形性を
向上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】板状パネルを所定形状に塑性変形させる
曲げや絞り等のプレス加工が、例えば自動車各部のパネ
ルを成形する分野などで広く行われている。そして、こ
のようにプレス加工されたプレス成形品の機械的強度を
向上させるため、そのプレス成形品の所定部位にレーザ
などの高エネルギー密度ビームを照射し、加熱するとと
もに急冷させて高強度のベイナイト組織やマルテンサイ
ト組織とする組織変態強化処理を施すことが、例えば特
開平4−72010号公報に記載されている。また、特
開平1−259118号公報には、プレス加工後の成形
品における張り剛性や耐デント性を向上させるため、プ
レス加工を行う前の板状パネルの段階で所定部位に高エ
ネルギー密度ビームを照射して部分的に強化することが
提案されている。プレス加工前の板状パネルに高エネル
ギー密度ビームを照射して強化処理を行うものとしては
更に、絞り加工を行う際のしわ押え部、すなわち板状パ
ネルの流入を拘束する部分に強化処理を施し、その変形
抵抗を調整することにより流入量を制御して皺の発生を
防止することが、特開平4−105721号公報に記載
されている。機械的強度を高めるための強化処理として
は、上記組織変態による強化以外にも、例えば圧印加工
で板状パネルを圧縮変形させることにより加工硬化或い
は歪時効等によって強化する方法が、特公昭62−13
092号公報に記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これ等
の強化処理は、プレス加工後の成形品の強度や耐デント
性を向上させたり、絞り加工時に板状パネルに生じる張
力を調整したりするためのもので、板状パネルの成形性
を向上させるものではなく、成形性の低い安価な低グレ
ード材の採用を可能として材料コストを低減したり、成
形不能であった成形品のプレス加工を可能としたり、或
いはスプリングバックを抑制して成形品の寸法精度を向
上させたりする技術ではない。プレス加工に使用する板
状パネルの成形性、すなわちプレス加工時における割れ
などの成形不良の生じ難さは、一般に伸びや引張強度,
n値,r(ランクフォード)値など材質の機械的特性値
によって定まり、成形品の形状に応じて所定の成形性を
有することが要求されるが、成形不良が生じ難い成形性
の良い材料程一般に高価となり、材料コスト低減のため
には少しでも安価な低グレード材を使用できるようにす
ることが望まれる。また、成形不良が生じる場合には、
より成形性の良い高級材を使用するか、成形品の形状を
変更することになる。スプリングバックも板状パネルの
成形性の一要素であり、高い寸法精度を得る上でスプリ
ングバックは少しでも小さいことが望まれる。
【0004】本発明は以上の事情を背景として為された
もので、その目的とするところは、板状パネルの所定部
位に強化処理を施して成形性を向上させ、割れを生じ難
くしたりスプリングバックを抑制したりすることにあ
る。
【0005】
【課題を解決するための第1の手段】かかる目的を達成
するために、第1発明は、板状パネルの縁部を拘束しつ
つ中央部分にポンチを押圧し、そのポンチの形状に倣っ
てその板状パネルを塑性変形させるプレス加工方法であ
って、プレス加工に先立って、前記板状パネルのうちプ
レス加工初期に伸び変形させられるとともにプレス加工
の進行に伴い応力集中が生じて割れが発生し易い応力集
中部位に、機械的強度を向上させる強化処理を施すこと
を特徴とする。
【0006】
【作用および第1発明の効果】すなわち、この第1発明
は伸び変形させながら所定形状に塑性変形させる絞りや
曲げなどのプレス加工に関するもので、プレス加工時に
割れが発生し易い応力集中部位、具体的にはポンチの肩
近傍やポンチ先端部に接触させられる部位などに強化処
理を施して引張強度等の機械的強度を高め、耐破断強度
を向上させて割れを生じ難くするのである。板状パネル
として全体的に高強度の高強度鋼板などを使用すれば耐
破断強度が向上するが、プレス加工に必要な成形荷重も
高くなるため、割れ防止にはそれ程大きな効果は期待で
きないのであり、本発明のように応力集中部位だけを強
化すれば、プレス加工に必要な成形荷重は殆ど変化しな
いため、応力集中部位の割れが良好に抑制される。これ
により、従来よりも低グレード材を使用して材料コスト
を低減したり、成形不能であった成形品をプレス加工し
たりすることが可能となる。
【0007】ここで、機械的強度を向上させる強化処理
としては、高エネルギーを加えて加熱するとともに急冷
させることにより高強度のベイナイト組織やマルテンサ
イト組織に変態させる組織変態強化処理や、圧印加工で
板状パネルを圧縮変形させて加工硬化或いは歪時効等に
よって強化する圧印強化処理が好適に用いられるが、板
状パネルの機械的強度を部分的に高めることができる他
の強化手法を採用することもできる。すなわち、本発明
は板状パネルのどの部分に強化処理を施すかに特徴が有
るのであり、どのような強化処理手法を用いても構わな
いのである。以下の第2発明〜第4発明についても同様
である。
【0008】また、前記高エネルギー密度ビームを照射
して組織変態強化処理を施したり、圧印加工で強化した
りする場合など、線状の強化部を設けることができる強
化処理を採用すれば、引張強度に異方性を持たせること
が可能で、例えば応力集中で生じる割れと略直角に交差
する伸び変形方向、言い換えれば引張力が作用する方向
と略平行に1または複数の線状強化部を設ければ、その
伸び変形方向の変形抵抗が主として増大させられるた
め、他方向の変形を損なうことなく割れの発生を防止で
きる。板状パネルの材質やプレス成形品の形状によって
も異なるが、上記線状強化部の長さは40mm程度あれ
ば十分であり、間隔は20mm程度以下であることが望
ましい。
【0009】
【課題を解決するための第2の手段】第2発明は、板状
パネルにポンチを押圧し、そのポンチの形状に倣ってそ
の板状パネルを塑性変形させるプレス加工方法であっ
て、プレス加工に先立って、前記板状パネルのうちプレ
ス加工時に周囲から材料が流入し難い張出成形部位に、
機械的強度を向上させる強化処理を施すことを特徴とす
る。
【0010】
【作用および第2発明の効果】この第2発明は、プレス
加工時に周囲から材料が流入し難い張出成形部位に強化
処理を施して引張強度等の機械的強度を高め、耐破断強
度を向上させて割れを生じ難くするとともに、強化処理
の程度に応じて周囲からの材料の流入量を増大させるよ
うにしたのである。これにより、例えば絞り加工される
部分の中央に張出部を有する場合など、しわ押え荷重で
は材料の流入量を制御することが困難で且つ材料が流入
し難い部位にも、周囲から材料が流入させられるように
なって割れなどの成形不良が防止され、従来よりも低グ
レード材を使用して材料コストを低減したり、成形不能
であった成形品をプレス加工したりすることが可能とな
る。
【0011】なお、線状の強化部を設けることができる
場合に、張出成形部位に生じる引張力と略平行になるよ
うに線状強化部を設ければ、その引張力の方向の変形抵
抗が主として増大させられるため、他方向の変形を損な
うことなく引張力に従って周囲から材料を良好に引き込
むことができる。
【0012】
【課題を解決するための第3の手段】第3発明は、板状
パネルの縁部を拘束しつつ中央部分にポンチを押圧し、
そのポンチの形状に倣ってその板状パネルを塑性変形さ
せるプレス加工方法であって、プレス加工に先立って、
プレス加工時の前記板状パネルの変形形態を変化させて
その板状パネルの成形限界における歪量を増大させるよ
うに、その板状パネルの所定部位に機械的強度を向上さ
せる強化処理を施すことを特徴とする。
【0013】
【作用および第3発明の効果】この第3発明は、伸び変
形させながら所定形状に塑性変形させる絞りや曲げなど
のプレス加工に関するもので、板状パネルの所定部位に
強化処理を施すことにより、プレス加工時の変形形態を
変化させて板状パネルの成形限界における歪量を増大さ
せるようにしたのであり、このように成形限界における
歪量が増大させられることにより割れが発生し難くな
り、従来よりも低グレード材を使用して材料コストを低
減したり、成形不能であった成形品をプレス加工したり
することが可能となる。
【0014】ここで、上記プレス加工時の変形形態は、
板状パネルと平行な二次元座標におけるx軸方向すなわ
ち引張力が作用する方向の歪εx と、y軸方向すなわち
引張力と直角な方向の歪εy との関係で、板状パネルの
材質によっても異なるが、一般的には図13に示されて
いるように、引張力と直角なy軸方向歪εy が略0の平
面歪変形の場合の成形限界における歪量=√(εx2+ε
y2)が最も小さく、y軸方向歪εy が正の2軸変形また
はy軸方向歪εy が負の1軸変形では、平面歪変形に比
較して成形限界における歪量が大きくなる。一方、所定
の形態で強化処理を施すと、特定の方向の引張強度だけ
を高めることができるため、その特定方向の伸びが小さ
くなって全体の変形形態が変化し、例えば平面歪変形を
2軸変形や1軸変形に変化させるなど、変形形態を変化
させて成形限界における歪量を大きくすることが可能な
のである。
【0015】なお、線状の強化部を設ける場合には、主
としてその線方向の引張強度が高められるが、強度上昇
に伴って伸びが低下するため、例えば引張力が作用する
方向の引張強度を高めて変形形態を変化させる場合に
は、引張力の方向にもある程度の伸びを許容するよう
に、引張力と直角な方向の線状強化部を引張力の方向に
所定の間隔で多数並べて設けることが望ましい。この場
合の線状強化部の長さは数mm〜数十mm程度のごく短
いもので良い。
【0016】
【課題を解決するための第4の手段】第4発明は、板状
パネルを所定形状に塑性変形させるプレス加工方法であ
って、プレス加工に先立って、前記板状パネルのうちプ
レス加工によって曲げられる曲げ成形部位の近傍に、機
械的強度を向上させる強化処理を曲げの外側となる面側
から施すことを特徴とする。
【0017】
【作用および第4発明の効果】この第4発明は、曲げ変
形を含むプレス加工に関するもので、曲げの外側となる
面側から例えば高エネルギーを加えて組織変態させた
り、圧印加工によって圧縮変形させたりして機械的強度
を向上させる強化処理を施すのである。高エネルギーを
加えて加熱するとともに急冷させてマルテンサイト組織
やベイナイト組織とする組織変態強化処理では、その変
態に伴って体積が膨張するとともに、その変態領域はエ
ネルギーが加えられた面側の方が大きいため、そのエネ
ルギーが加えられた面側、すなわち曲げの外側となる面
側に大きな圧縮応力が生じる。また、圧印加工によって
曲げの外側となる面側を圧縮変形させれば、その変形部
分すなわち曲げの外側となる面側に大きな圧縮応力が生
じる。一方、曲げ変形では曲げの外側に引張応力が生じ
るとともに曲げの内側に圧縮応力が生じ、これ等の応力
に起因してスプリングバックが生じるが、その曲げの外
側には上記強化処理による圧縮残留応力が存在するた
め、曲げ変形に伴って生じる引張応力が圧縮残留応力に
よって相殺され、これによりスプリングバックが抑制さ
れて成形品の寸法精度が向上する。本発明は、スプリン
グバックを見込んだ曲げ加工が困難な場合など、寸法精
度を確保し難い部位に適用することにより優れた効果が
得られる。
【0018】なお、高エネルギーを加えることによる組
織変態強化処理の場合、その強化処理は必ずしも板状パ
ネルを板厚方向に貫通して施される必要はなく、曲げの
外側となる面側だけが部分的に溶融する不完全溶融の場
合は、反対側まで溶融させる完全溶融に比較して両面間
の圧縮残留応力の差が大きく、スプリングバックをより
効果的に抑制できる。
【0019】
【課題を解決するための第5の手段】第5発明は、上記
第1発明〜第4発明のプレス加工方法において、前記強
化処理が、高エネルギーを加えて加熱するとともに急冷
させることにより前記板状パネルを組織変態させて機械
的強度を向上させるものであることを特徴とする。
【0020】
【作用および第5発明の効果】すなわち、この第5発明
は、前記第1発明〜第4発明における強化処理として、
高エネルギーを加えて加熱するとともに急冷させること
により板状パネルを組織変態させて機械的強度を向上さ
せる組織変態強化処理を用いるのであり、第1発明〜第
4発明の一実施態様に相当するもので、それ等の発明を
好適に実施できる。
【0021】かかる組織変態強化処理は、高エネルギー
を加えて加熱するとともに急冷させることにより、例え
ば引張強度が450MPa程度以上の高強度のマルテン
サイト組織やベイナイト組織とするもので、高エネルギ
ーを加えて加熱する手段としては、レーザビーム,プラ
ズマビーム,電子ビーム,イオンビーム等の高エネルギ
ー密度ビームを照射する高エネルギー密度ビーム照射手
段が好適に用いられ、極めて狭い領域を局部加熱するこ
とが可能であるが、高周波やマイクロ波などで熱エネル
ギーを加えるものなど他の加熱手段を採用することもで
きる。加熱温度は、マルテンサイト変態が生じる温度よ
り高い温度であれば良く、炭素鋼の場合は727℃程度
以上であるが、所定領域を確実に組織変態強化する上で
溶融温度以上まで加熱することが望ましい。また、加熱
領域が狭い場合、加熱を停止すれば周囲に熱が伝播する
自己冷却によって急冷されるが、必要に応じて冷却処理
を行うことも可能である。
【0022】板状パネルの材質は、所定温度から急冷さ
れることによりマルテンサイト変態やベイナイト変態を
生じるもので、所定量の炭素を含んだ炭素鋼が好適に用
いられる。炭素鋼板に溶融亜鉛メッキを施した合金化溶
融亜鉛メッキ鋼板の場合、表面のZn−Fe層によって
防錆作用が得られるが、上記高エネルギーの付加によっ
てZn−Fe層が蒸発すると防錆性能が損なわれるた
め、その場合にはZn−Fe層の蒸発温度以下で加熱,
冷却するか、高エネルギー密度ビームの照射によりZn
−Fe層の蒸発範囲をできるだけ小さくすることが望ま
しい。溶融亜鉛メッキ以外の防錆被覆や他の被覆が設け
られている場合にも、その被覆を考慮して組織変態強化
処理の処理条件を定めることが望ましく、必要に応じて
被覆の蒸発温度や溶融温度以下で加熱処理を行うことも
可能である。
【0023】
【課題を解決するための第6の手段】第6発明は、前記
第1発明〜第4発明のプレス加工方法において、前記強
化処理が、圧印加工で前記板状パネルを圧縮変形させて
機械的強度を向上させるものであることを特徴とする。
【0024】
【作用および第5発明の効果】すなわち、この第6発明
は、前記第1発明〜第4発明における強化処理として、
圧印加工で前記板状パネルを圧縮変形させることにより
機械的強度を向上させる圧印強化処理を用いるのであ
り、第1発明〜第4発明の一実施態様に相当するもの
で、それ等の発明を好適に実施できる。
【0025】上記圧印強化処理は、加工硬化或いは歪時
効等によるもので、強化量は前記高エネルギー密度ビー
ムの照射による組織変態強化処理の場合より一般に小さ
いが、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板など表面に被覆を有す
る板状パネルに対しても好適に適用できるとともに、加
工硬化や歪時効等によって機械的強度が高くなる種々の
材質の板状パネルに適用できる。また、圧印強化部は他
の部分に比較して板厚が薄くなるため、その圧印強化部
をしわ押えする場合にはしわ押え面圧が低くなり、これ
を利用して破断を一層効果的に回避することもできる。
更に、プレスなどで圧印加工を施せば良いため、金型な
どの設備に要するイニシャルコストや、メンテナンスな
どに要するランニングコストが比較的少ない。
【0026】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細
に説明する。図1は、板状パネルの外周縁部を拘束しつ
つ中央部分にポンチを押圧し、そのポンチの形状に倣っ
てその板状パネルを塑性変形させたもの、具体的には円
筒絞りや角筒絞りを施したプレス成形品の一例で、何れ
のプレス成形品10a〜10eにも、プレス加工初期に
伸び変形させられるとともにプレス加工の進行に伴い応
力集中が生じて割れが発生し易い応力集中部位に、組織
変態強化処理による線状強化部12a〜12eが設けら
れている。組織変態強化処理は、高エネルギーを加えて
加熱するとともに急冷させてマルテンサイト組織やベイ
ナイト組織とすることにより引張強度などの機械的強度
を向上させる強化処理で、レーザビーム,プラズマビー
ム,電子ビーム,イオンビーム等の高エネルギー密度ビ
ームを照射し、局部加熱して溶融させながら照射位置を
線状に所定速度で移動させることにより、溶融および自
己冷却による焼入れが線状に進行して線状強化部12a
〜12eが設けられる。板状パネルの材質は、マルテン
サイト変態やベイナイト変態を生じるもので所定量の炭
素を含んだ炭素鋼などであり、表面に溶融亜鉛メッキを
施した溶融亜鉛メッキ鋼板の場合、組織変態強化処理の
加熱でZn−Fe層が蒸発してしまうが、本実施例では
高エネルギー密度ビームで線状に加熱するため蒸発範囲
が小さく、パネル全体としての防錆性能には殆ど影響し
ない。
【0027】上記線状強化部12a〜12eは、プレス
加工に先立って板状パネルに設けられたもので、このよ
うな線状強化部12a〜12eが設けられることによ
り、耐破断強度が向上してプレス加工時の割れ14a〜
14eの発生が抑制される。個々のプレス成形品10a
〜10eについて具体的に説明すると、先ず、プレス成
形品10aの割れ14aはポンチ肩破断と称するもの
で、ポンチの肩部に接触させられる部位に肩部と略平行
に生じる亀裂であり、その部分に発生する引張力と略平
行に、すなわちポンチ肩部と略直角に交差するように所
定の間隔を隔てて多数の線状強化部12aが設けられて
いる。プレス成形品10bの割れ14bは側壁割れと称
するもので、円筒の筒状部に周方向に生じる亀裂であ
り、その部分に発生する引張力と略平行に、すなわち筒
状部の軸心と略平行となるように所定の間隔を隔てて多
数の線状強化部12bが設けられている。プレス成形品
10cの割れ14cはウォールブレークと称するもの
で、角筒の側壁コーナー部に周方向に生じる亀裂であ
り、その部分に発生する引張力と略平行に、すなわち角
筒の軸心と略平行となるように各コーナー部にそれぞれ
2本ずつの線状強化部12cが設けられている。プレス
成形品10dは、中央に円穴が設けられた板状パネルに
角筒絞りを施した場合で、割れ14dは伸びフランジ
(外縁)割れと称するもので、円穴から角筒のコーナー
部に向かって生じる亀裂であり、その部分に発生する引
張力と略平行に、すなわち円穴と略同心の円弧を描くよ
うに4つのコーナー部に対応して線状強化部12dが設
けられている。プレス成形品10eは、中央に円穴が設
けられた板状パネルに角筒絞りを施した場合で、割れ1
4eは伸びフランジ(内縁)割れと称するもので、円穴
の周縁部分であって角筒のコーナー部の近傍に生じる亀
裂であり、その部分に発生する引張力と略平行に、すな
わち円穴と略同心の円弧を描くように4つのコーナー部
の近傍に線状強化部12eが設けられている。
【0028】なお、線状強化部12a〜12eの各々の
本数や長さ、間隔などは適宜定められる。また、図17
に示されているようなハット形状の曲げプレス加工を行
う場合など、他の種々のプレス加工にも適用可能で、図
17の場合には、例えば上側の曲げ成形部やそれに連な
る側壁部に引張力と略平行になるように複数の線状強化
部を設ければ良い。
【0029】このように、本実施例ではプレス加工時に
割れ14a〜14eが発生し易い応力集中部位に組織変
態強化処理による線状強化部12a〜12eが設けられ
ているため、耐破断強度が向上して割れ14a〜14e
が生じ難くなり、従来よりも低グレード材を使用して材
料コストを低減したり、成形不能であった成形品をプレ
ス加工したりすることが可能となる。特に、本実施例で
は引張力と平行となるように、言い換えれば応力集中で
生じる割れ14a〜14eと略直角に交差する方向に線
状強化部12a〜12eが設けられているため、その引
張方向の変形抵抗が主として増大させられ、他方向の変
形を損なうことなく割れ14a〜14eの発生が良好に
防止される。
【0030】ここで、板状パネルとしてより高強度の鋼
板を使用すれば耐破断強度が向上するが、プレス加工に
必要な成形荷重も高くなるため、割れ防止にはそれ程大
きな効果は期待できず、本実施例のように応力集中部位
だけを強化すれば、プレス加工に必要な成形荷重は殆ど
変化しないため、応力集中部位の割れ14a〜14eが
良好に抑制される。例えば、図2に示すようにダイス2
0およびしわ押え22によって板状パネル24の周縁部
を拘束しながらポンチ26を相対的に上方へ移動させて
円筒絞りを行う場合、成形荷重Fはベルトの式に従って
次式(1)で表される。かかる(1)式において、P0
はフランジ部の半径方向絞りに必要な力(縮み力)、Δ
PH はしわ押え力によりフランジ部に加わる摩擦力、Δ
Pb1,ΔPb2は曲げ,曲げ戻し力、μはしわ押え部分の
摩擦係数、φはダイス20の角部のまきつき角である。
そして、板状パネルを単純に高強度とした場合、割れが
生じ易い側壁部28の耐破断強度が向上するが、(1)
式のP0 やΔPb1,ΔPb2も増大して成形荷重Fが大き
くなるため、割れ防止効果を期待できないばかりでなく
寧ろ悪化する場合があるのに対し、本実施例のように側
壁部28などの応力集中部位だけに強化処理を施す場合
には、成形荷重Fを殆ど変化させることなく割れが生じ
易い側壁部28等の耐破断強度を向上させることがで
き、割れの発生を抑制して成形性を向上させることがで
きるのである。なお、耐破断強度は、引張強度TS、n
値,r値をパラメータとする関数f(n,r)を用いて
次式(2)のPcrで表され、強化処理によって引張強度
TSが上昇すると耐破断強度Pcrも大きくなる。 F= exp(μ・φ)・(P0 +ΔPH +ΔPb1)+ΔPb2 ・・・(1) Pcr=TS・f(n,r) ・・・(2)
【0031】次に、表1に示す4種類の炭素鋼板を用い
て円筒深絞り試験を行い、成形性について調べた結果を
説明する。表1において、TSは引張強度(MPa)、
YPは降伏強度(MPa)、Elは破断までの伸び
(%)、n値は加工硬化指数、r値はランクフォード値
であり、軟鋼板SGACF,SGACDの板厚は0.7
mm、高強度鋼板SGAC340HR,SGAC340
の板厚は0.8mmである。また、4種類の炭素鋼板は
何れも自動車各部のプレス成形品に使用されるプレス素
材、すなわち板状パネルがあるが、軟鋼板のSGAC
F,高強度鋼板のSGAC340HRは比較的割れが生
じ難い高級材で、軟鋼板のSGACD,高強度鋼板のS
GAC340は割れが生じ易い低グレード材である。深
絞り条件は、ポンチ径が100mmで、ブランク径(板
状パネルの外径)が200mmである。組織変態強化処
理はレーザビームを照射して行い、照射位置の移動速度
は3m/min、焦点位置は板表面から−1mmすなわ
ちレーザ照射側の表面から1mm入り込んだ位置で、板
厚が0.7または0.8mmであるから板の裏側へ0.
3または0.2mm突き出した位置であり、出力は3k
Wである。照射パターン、すなわち線状強化部のパター
ンは図3に示す4種類で、(I)は線状強化部無し、す
なわち直径200mmの板状パネル30にそのまま深絞
り加工を行う場合で、(II)は線状強化部32が4本、
(III) は線状強化部32が8本、(IV)は線状強化部3
2が16本の場合である。各線状強化部32は何れも等
角度間隔で設けられるとともに、その長さ寸法は40m
mで、点線で示す直径100mmの円、言い換えればポ
ンチの肩によって曲げられる部位を挟んで内外周側へ2
0mmずつの長さを有して放射状に設けられる。
【表1】
【0032】図4の(a)および(b)は、何れも上記
深絞り加工の試験結果を説明する図で、この図4の
(I)〜(IV)はそれぞれ図3の照射パターン(I)〜
(IV)を表している。図4の(a)は軟鋼板の試験結果
で、しわ押え荷重条件である1.8tonは、強化処理
を施していない高級材SGACF(I)について完全に
絞り抜くことができる最大の荷重値であり、低グレード
材SGACDの場合、強化処理無しのパターン(I)、
線状強化部32が8本のパターン(III) では何れも成形
高さH(図2参照)が40mmに達しない段階でポンチ
肩破断を生じているが、線状強化部32が16本のパタ
ーン(IV)によれば割れを生じることなく絞り抜くこと
が可能で、高級材SGACFと同程度の成形性が得られ
る。線状強化部32を16本設けたパターン(IV)の場
合、線状強化部32相互の間隔は約20mmである。図
4の(b)は高強度鋼板の試験結果で、この場合には、
低グレード材SGAC340でも線状強化部32が4本
のパターン(II)で高級材SGAC340HRと同程度
の成形性が得られるようになる。なお、図2においてダ
イス20としわ押え22との間で挟圧されるフランジ部
が無くなり、板状パネル24が外周縁まで円筒形状に絞
り加工された状態が絞り抜けである。
【0033】次に、本発明の他の実施例を説明する。図
5のプレス成形品40a,40bは複数段の絞り加工
部、この実施例では第1絞り加工部42a,42bおよ
び第2絞り加工部44a,44bを有するもので、第1
絞り加工部42a,42bに設けられる第2絞り加工部
44a,44bは、フランジ部(しわ押え部)46a,
46bのしわ押え荷重制御では材料の流入量を制御する
ことが困難であるとともに材料が流入し難く、ポンチ肩
部の近傍に割れ48a,48bが発生し易い。すなわ
ち、第2絞り加工部44a,44bは張出成形部位に相
当し、本実施例ではその第2絞り加工部44a,44b
に、前記実施例と同様な組織変態強化処理による線状強
化部50a,50bがプレス加工に先立って設けられて
いる。線状強化部50a,50bは、第2絞り加工部4
4a,44bに生じる引張力と略平行になるように設け
られており、段付き角筒絞りのプレス成形品40aにつ
いては、第1絞り加工部42a側の2つのコーナー部に
角筒の軸心と略平行となるように2本ずつ設けられてい
る一方、2段円筒絞りのプレス成形品40bについて
は、円筒の軸心と略平行となるように等角度間隔で4本
設けられている。
【0034】このように、プレス加工時に周囲から材料
が流入し難い張出成形部位、具体的には第2絞り加工部
44a,44bに組織変態強化処理を施して強度を高め
ると、耐破断強度が向上して割れが生じ難くなるととも
に、強化処理の程度に応じて周囲からの材料の流入量が
増大し、成形性が向上する。これにより、従来よりも低
グレード材を使用して材料コストを低減したり、成形不
能であった成形品をプレス加工したりすることが可能と
なる。また、本実施例では引張力と略平行となるように
線状強化部50a,50bが設けられているため、その
引張方向の変形抵抗が主として増大させられ、他方向の
変形を損なうことなく引張力に従って周囲から材料を良
好に引き込むことができる。
【0035】図6は、ダイス52およびしわ押え54に
よって板状パネル56の周縁部を拘束しながら、球状頭
部を備えたポンチ58を相対的に上方へ移動させて張出
成形する場合で、ダイス52およびしわ押え54には凹
所60および突起62が設けられ、材料の流入を阻止す
るようになっている。このような張出成形は材料の伸び
で成形高さHが決定されるが、材料を積極的に流入させ
た方が成形高さHは高くなり、図6のプレス装置におい
てはしわ押え荷重を低くしたり突起62を小さくしたり
して流入量Sを増大させることにより、成形高さHを高
くすることができる。しかし、前記プレス成形品40
a,40bのように複数段の絞り加工部を有する場合に
は、上記のようなしわ押え荷重や突起によるフランジ部
46a,46bの流入制御で第2絞り加工部44a,4
4bの成形高さを変えることは困難で、そのような場合
に前記線状強化部50a,50bによる材料の流入制御
が効果的である。但し、図6の場合にも、組織変態強化
処理で材料の流入制御を行うことが可能である。
【0036】一方、前記線状強化部50a,50bを設
けたことによる引張強度TSの向上効果を説明すると、
図7に示すように引張方向(図面の表裏方向)と直角な
幅寸法がW1で板厚がt1、引張強度がTS1の板状パ
ネル64に、幅寸法がW2で引張強度がTS2の3本の
線状強化部66を設けた場合、全体の引張強度TSTは
次式(3)で表され、例えばTS1=28kgf/mm
2 、TS2=120kgf/mm2 、W1=25mm、
W2=2mmとするとTST ≒50kgf/mm2 とな
り、この引張強度の上昇に対応して材料の流入量が増大
する。なお、1kgf/mm2 ≒9.8MPaである。 TST ={TS1・(W1−3W2)+3・TS2・W2}/W1 ・・・(3)
【0037】また、前記表1の軟鋼板SGACFを用い
て図6のような球頭張出プレス加工を行い、その流入量
Sおよび成形高さHについて調べた結果を説明する。ポ
ンチ球頭の直径は100mmで、ブランク径(板状パネ
ルの外径)は200mmである。線状強化部を設けるた
めのレーザ照射の移動速度は3m/min、焦点位置は
板表面から−1mm、出力は3kWである。照射パター
ンは図8に示す2種類で、(I)は線状強化部無し、す
なわち直径200mmの板状パネル68にそのまま張出
プレス加工を行う場合で、(II)は等角度間隔で4本の
線状強化部70を設けた場合である。図9の(a)およ
び(b)は、割れが生じるまでの流入量Sおよび成形高
さHの測定結果で、強化処理を施すことによって流入量
Sおよび成形高さHが共に増大することが判る。なお、
板状パネル68の周縁部が完全にロックされ、流入量S
が零の場合を張出成形と定義すれば、上記のように周縁
部が流入する場合は厳密には張出成形ではないが、前記
図5のプレス成形品40a,40bの第2絞り加工部4
4a,44bに強化処理を施せば、上記と同様に耐破断
強度が向上して流入量が多くなり、張出成形から絞り成
形にプレス形態が変化して割れが生じ難くなることが理
解できる。
【0038】図10のプレス成形品74aは外周縁部を
拘束しつつ中央部分に断面が円形のポンチを押圧して円
筒絞りを行ったもので、プレス成形品74bは外周縁部
を拘束しつつ中央部分に断面が四角形のポンチを押圧し
て角筒絞りを行ったもので、プレス成形品74cは四角
形の板状パネルの一対の端部を拘束しつつ中央部分に断
面が四角形のポンチを押圧してハット形状の曲げプレス
加工を行ったものであり、何れも側壁部76a〜76c
の一部に前記第1実施例と同様な組織変態強化処理によ
る線状強化部78a〜78cがプレス加工に先立って設
けられている。側壁部76a〜76cは、プレス加工時
に伸び変形させられる部位であるが、線状強化部78a
〜78cが設けられた部分は引張強度が高く、他の部分
に比較して伸び変形量が少ないとともに外側からの流入
量が多くなる。例えばプレス成形品74aは、図11の
(a)に示す円形の板状パネルに円筒絞りを施したもの
であるが、線状強化部78aが設けられた部分は伸び変
形量が小さくて外側からの流入量が多いため、(b)の
平面図から明らかなようにフランジ部80aが楕円形に
なる。但し、このような流入量の相違を考慮してフラン
ジ部80aが円形となるように元の板状パネルの形状を
設定しても良いことは勿論である。
【0039】上記のように線状強化部78a〜78cが
設けられた側壁部76a〜76cは、部分的に伸び変形
量が異なるため全体としてゆがみながら絞られることに
なり、線状強化部78a〜78cを設けない場合に比較
してプレス加工時の変形形態が変化する。プレス加工時
の変形形態は、板状パネルと平行な二次元座標における
x軸方向すなわち引張力が作用する方向の歪εx と、y
軸方向すなわち引張力と直角な方向の歪εy との関係
で、図12に示すようにy軸方向歪εy がx軸方向歪ε
x と略等しい等2軸変形、y軸方向歪εy が略0の平面
歪変形、およびy軸方向歪εy が負の1軸変形がある
が、割れが生じる成形限界における歪量は一般に図13
に示すようになり、y軸方向歪εy が略0の平面歪変形
の場合の歪量=√(εx2+εy2)が最も小さい。したが
って、上記線状強化部78a〜78cを所定の態様で設
けて特定の方向の引張強度を高め、例えば平面歪変形が
2軸変形や1軸変形となるように変形形態を変化させる
など、成形限界における歪量が大きくなるようにすれ
ば、割れが発生し難くなる。これにより、従来よりも低
グレード材を使用して材料コストを低減したり、成形不
能であった成形品をプレス加工したりすることが可能と
なる。
【0040】また、本実施例の線状強化部78a〜78
cは数mm〜数十mm程度の短いもので、プレス加工時
に発生する引張力と略直角な方向へ設けられているとと
もに、その引張力の方向に所定の間隔で多数並べて設け
られている。このため、その引張力の方向にもある程度
の伸びが許容され、引張力と平行に線状強化部を設ける
場合に比較して伸びの低下が少なく、割れが抑制され
る。
【0041】前記表1の軟鋼板SGACFを用いて引張
試験を行い、スクライブドサークルテストによって変形
形態の変化を調べた結果を説明する。試験片の大きさは
250mm×250mmであり、線状強化部を設けるた
めのレーザ照射の移動速度は3m/min、焦点位置は
板表面から−1mm、出力は3kWである。照射パター
ンは図14に示す3種類で、(I)は線状強化部無し、
すなわち1辺が250mmの正四角形の試験片82をそ
のまま引張試験する場合で、(II)は4つのコーナーに
対応して4本の線状強化部84を設けた場合で、(III)
は試験片82の中央部分に斜めに3本の線状強化部84
を設けた場合である。そして、図15に示すように幅広
の一対のチャック86で試験片82の上辺および下辺を
把持し、一定の引張応力で上下に引っ張って塑性変形さ
せ、各試験片82の中央部におけるx軸方向歪εx およ
びy軸方向歪εy を測定した。結果は、図13に(I)
(II)(III)で示す通りで、強化処理を施すことによっ
て変形形態が変化することが判る。
【0042】図16のプレス成形品90aは四角形の板
状パネルをハット形状に曲げプレス加工したもので、プ
レス成形品90bは円筒絞りの一部が解放されているも
のであり、その上面92a,92bおよび側壁部94
a,94bには、略90°曲げられた曲げ成形部位96
a,96bと略平行に線状強化部98a,98bが設け
られている。プレス成形品90aは、例えば図17に示
すように一対のダイス100およびしわ押え102によ
ってプレス素材としての板状パネルの両端部を拘束しな
がらポンチ104を相対的に上方へ移動させて曲げ加工
することによって得られる。上記線状強化部98a,9
8bは、前記第1実施例と同様な組織変態強化処理によ
りプレス加工に先立って設けられたもので、曲げの外側
となる面側からレーザビーム等の高エネルギー密度ビー
ムを照射したものである。このように曲げ成形部位96
a,96bに沿って組織変態強化処理が施されると、そ
の変態に伴う体積膨張に起因して高エネルギー密度ビー
ムの照射側、すなわち曲げの外側となる面側に圧縮応力
が生じる。図18の(a)〜(c)は、上記線状強化部
98a,98bの拡大断面図で、何れも上方から高エネ
ルギー密度ビームが照射された場合であり、(a)およ
び(b)は溶融部が裏面まで貫通した完全焼入れ(完全
溶融)、(c)は溶融部が裏面に達していない不完全焼
入れ(不完全溶融)の場合であるが、何れの場合も高エ
ネルギー密度ビームが照射された上面側の変態領域が大
きく、体積膨張に起因して上面側すなわち曲げの外側と
なる面側に大きな圧縮応力が生じるのである。一方、曲
げ変形では曲げの外側に引張応力が生じるとともに曲げ
の内側に圧縮応力が生じ、これ等の応力に起因してスプ
リングバックが生じるが、その曲げの近傍に上記のよう
な組織変態強化処理による圧縮残留応力が存在すると、
曲げ変形に伴って生じる引張応力が圧縮残留応力によっ
て相殺され、スプリングバックが抑制されて成形品の寸
法精度が向上する。図19は、プレス加工後の曲げ成形
部位96a,96b付近の拡大断面図で、線状強化部9
8a,98bは、曲げ成形部位96a,96bのRの終
了部分に位置するように設けられる。なお、上記プレス
成形品90a,90bは、引張力を付与した状態で曲げ
を含むプレス加工が行われたものであるが、単純な曲げ
加工を行う場合にも同様な効果が得られる。
【0043】次に、炭素鋼板SGAC440(引張強度
TS=462MPa、降伏強度YP=311MPa、伸
びEl=32.0%)を用いて、前記図17のような曲
げプレス加工を行い、スプリングバックを調べた結果を
説明する。試験片の大きさは300mm×300mm
で、板厚は1.4mm、ポンチ肩Rは5mm、ダイス肩
Rは8mm、プレス加工後の形状は図20に示すような
形状で、高さH=70mm、幅W=80mmである。幅
Wは開口部(下端部)の幅寸法であるが、スプリングバ
ックが無くて一対の側壁部が平行な場合の値である。そ
して、曲げ成形部位106のRの終了部分に位置すると
ともにその曲げ成形部位106と平行となるように、各
曲げ成形部位106の両側にレーザビーム照射による線
状強化部108を設けた4種類の試験片(II)〜(V)
と、そのような線状強化部108を設けていない試験片
(I)との、計5種類の試験片を用いて曲げプレス加工
を行った。線状強化部108を設けた4種類の試験片
(II)〜(V)は、表2に示すように完全焼入れか不完
全焼入れか、曲げの外側となる面側からのレーザ照射か
曲げの内側となる面側からのレーザ照射かが異なるもの
であり、完全焼入れの場合のレーザビームの焦点位置は
板表面から−1mmで、不完全焼入れの場合のレーザビ
ームの焦点位置は板表面から+4mmである。レーザ照
射の移動速度は3m/min、出力は3kWである。図
21は、各試験片(I)〜(V)にプレス加工を行った
後、幅Wの寸法を測定した結果で、曲げの外側となる面
側からレーザを照射した試験片(II)および(IV)でス
プリングバックが小さくなっており、特に不完全焼入れ
の試験片(IV)で優れた効果が得られることが判る。
【表2】
【0044】以上、組織変態強化処理による幾つかの実
施例を詳細に説明したが、本発明は他の強化処理を用い
て実施することも可能で、前記各実施例における高エネ
ルギー密度ビームの照射による強化処理に替えて、圧印
加工による強化処理を用いることができる。すなわち、
図22に示すように例えば上型110および下型112
にそれぞれ凸条110a,112aを設けて板状パネル
114の所定部位に圧印加工を施し、両面114a,1
14bを圧縮変形させて一点鎖線で示すように圧痕11
6a,116bを設けることにより、加工硬化で引張強
度などの機械的強度を向上させるのであり、例えば板状
パネル114を所定形状に打ち抜くブランキング工程な
どで同時に行うこともできる。図22では上下の金型1
10,112にそれぞれ凸条110a,112aが設け
られ、板状パネル114の両面114a,114bにそ
れぞれ圧痕116a,116bが形成されるようになっ
ているが、何れか一方の凸条110aまたは112aを
省略し、一方の面114bまたは114a側に圧痕11
6bまたは116aを形成するだけでも良い。また、図
16の実施例など、スプリングバックを抑制する第4発
明の実施に際しては、曲げの外側となる面側だけに圧痕
が形成されるようにする必要がある。
【0045】ここで、耐破断強度は硬さや単位断面積当
たりの引張強度(応力)に比例するが断面積に反比例す
るため、圧印加工で硬さや引張強度(応力)が上昇して
も、そのまま全体の引張強度TSが上昇するわけではな
い。この点について、前記表1の軟鋼板SGACDを用
いて検討する。圧印荷重を変更しながら軟鋼板SGAC
Dの両面に図22のようにして幅4mm×長さ40mm
の圧痕を形成し、板厚減少率(%)および硬さ(Hv)
を測定した結果が図23および図24である。板厚減少
率は、元の板厚(この場合は約0.7mm)をt、圧印
加工による板厚の減少量をΔtとした場合、(t−Δ
t)/tで表され、圧印荷重が大きくなるに従って小さ
くなる一方、引張強度(応力)に対応する硬さ(Hv)
は圧印荷重が大きくなるに従って大きくなる。そして、
それ等の硬さ(Hv)と板厚減少率とを掛算したものが
図25であり、これが実質的な引張強度TS、更には耐
破断強度に対応する。この硬さ(Hv)×板厚減少率の
グラフは上に凸となり、その極大値が得られる付近の圧
印荷重で圧印加工を行えば、耐破断強度の向上効果が好
適に得られる。
【0046】次に、表1の軟鋼板SGACFおよびSG
ACDを用いて、前記図3,図4の場合と同様にして円
筒深絞り試験を行い、成形性について調べた結果を説明
する。深絞り条件は、ポンチ径が100mmで、ブラン
ク径(板状パネルの外径)が200mmである。圧印加
工による強化部のパターンは図26に示す3種類で、
(I)は強化部無し、すなわち直径200mmの板状パ
ネル120にそのまま深絞り加工を行う場合で、(II)
は斜線で示すようにポンチの肩が押圧される付近に幅4
0mmのリング状強化部122を設けた場合で、(III)
は同じくポンチの肩が押圧される付近に幅4mm×長さ
40mmの線状強化部124を16本設けた場合であ
る。リング状強化部122および線状強化部124は、
何れも約50kgf/mm2 の圧力で圧印加工を行って
板状パネル120の両面に圧痕を設けたもので、線状強
化部124は等角度間隔で放射状に設けられている。ま
た、(II)および(III) の点線は直径100mmの円、
言い換えればポンチの肩によって曲げられる部位を表し
ており、上記リング状強化部122および線状強化部1
24は、何れもその直径100mmの円を挟んで内外周
側へ20mmずつの範囲に設けられている。
【0047】図27は上記深絞り加工の試験結果を説明
する図で、この図27の(I)〜(III)はそれぞれ図2
6の圧印強化部のパターン(I)〜(III)を表してい
る。しわ押え荷重条件である1.8tonは、強化処理
を施していない高級材SGACF(I)について完全に
絞り抜くことができる最大の荷重値であり、低グレード
材SGACDの場合、強化処理無しのパターン(I)で
は成形高さH(図2参照)が30mm程度、リング状強
化部122を設けたパターン(II)では成形高さHが60
mm程度で、それぞれポンチ肩破断を生じているが、線
状強化部124を16本設けたパターン(III)によれば
割れを生じることなく絞り抜くことが可能で、高級材S
GACFと同程度の成形性が得られる。
【0048】また、図28の板状パネル130は、プレ
ス加工によって曲げられる曲げ成形部位の近傍に、前記
図16の場合と同様に曲げ成形部位と平行に線状の圧痕
132が設けられた場合で、圧痕132は曲げの外側と
なる面130aに圧印加工によって設けられる。図28
は圧痕132の長手方向と略直角な断面で、その両側面
134は開口側程幅が広くなるように傾斜させられてお
り、網目で示す領域が圧縮変形領域である。この圧縮変
形領域は、圧痕132が設けられた面130a側の方が
広いとともに、圧縮変形領域には圧縮応力が残るため、
この圧縮残留応力によって曲げ加工時のスプリングバッ
クが抑制される。
【0049】このように、圧印加工による強化処理で
も、前記組織変態強化処理の場合と同様の効果が得られ
る。加えて、圧印強化部は他の部分に比較して板厚が薄
くなるため、しわ押え面圧が低くなり、これを利用して
破断を効果的に回避することもできる。例えば、前記図
1の(c)に示す角筒絞りによるプレス成形品10cの
場合、角筒の側壁コーナー部分に割れ14cを生じ易い
が、図29に示すように、板状パネル140のうち点線
で示すポンチプロファイルの4箇所のコーナー部分14
2に、しわ押え部分を含めて圧印加工を施すようにすれ
ば、機械的強度の向上およびしわ押え面圧の低下により
割れの発生が一層効果的に防止される。
【0050】また、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板など表面
に被覆を有する板状パネルについては、高エネルギー密
度ビームの照射のように被覆を蒸発させる恐れがないた
め、そのような被覆を有する板状パネルにも好適に適用
できるし、加工硬化や歪時効等によって機械的強度が高
くなる種々の材質の板状パネルに適用できる。また、プ
レスなどで圧印加工を施せば良いため、金型などの設備
に要するイニシャルコストや、メンテナンスなどに要す
るランニングコストが比較的少ない。
【0051】以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳
細に説明したが、これ等はあくまでも一具体例であり、
本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加
えた態様で実施することができる。なお、各プレス成形
品にはレーザ照射による溶融凝固痕や圧痕が残るため、
例えば自動車部品に関してはドアインナやリヤフロア、
ホイールハウスインナなどの内板部品のプレス加工に好
適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプレス加工方法に従って製造されたプ
レス成形品の一例を示す斜視図である。
【図2】円筒絞りを説明する断面図である。
【図3】組織変態強化処理による成形性向上効果を調べ
るために板状パネルに設けた線状強化部のパターンを示
す図である。
【図4】図3の板状パネルを用いて絞り加工を行い、成
形高さHを調べた結果を示す図である。
【図5】本発明のプレス加工方法に従って製造されたプ
レス成形品の一例を示す斜視図である。
【図6】張出成形を説明する断面図である。
【図7】組織変態強化処理による引張強度の向上効果を
説明する図である。
【図8】組織変態強化処理による成形性向上効果を調べ
るために板状パネルに設けた線状強化部のパターンを示
す図である。
【図9】図8の板状パネルを用いて張出成形を行い、流
入量Sおよび成形高さHを調べた結果を示す図である。
【図10】本発明のプレス加工方法に従って製造された
プレス成形品の一例を示す斜視図である。
【図11】図10の(a)に示すプレス成形品のプレス
加工前後の平面視形状を示す図である。
【図12】変形形態と変形前後の形状を説明する図であ
る。
【図13】変形形態と成形限界までの歪量との関係を示
す図である。
【図14】組織変態強化処理による成形性向上効果を調
べるために板状パネルに設けた線状強化部のパターンを
示す図である。
【図15】図14の板状パネルを引張試験する際のチャ
ック部分を示す図である。
【図16】本発明のプレス加工方法に従って製造された
プレス成形品の一例を示す斜視図である。
【図17】図16の(a)に示すプレス成形品をプレス
加工する装置を説明する図である。
【図18】図16のプレス成形品に予め設けられた高エ
ネルギー密度ビームの照射による線状強化部の断面図で
ある。
【図19】図16のプレス成形品における曲げ成形部位
と線状強化部との位置関係を説明する図である。
【図20】組織変態強化処理による成形性向上効果を調
べる際のプレス成形品の形状を説明する図である。
【図21】組織変態強化処理の態様が異なる複数種類の
試験片を用いて図20に示すプレス加工を行い、幅Wを
測定した結果を示す図である。
【図22】圧印加工によって強化処理を行う場合の一例
を示す断面図である。
【図23】圧印荷重と板厚減少率との関係の一例を示す
図である。
【図24】圧印荷重と硬さとの関係の一例を示す図であ
る。
【図25】耐破断強度に対応する(硬さ×板厚減少率)
と圧印荷重との関係の一例を示す図である。
【図26】圧印加工での強化処理による成形性向上効果
を調べるために板状パネルに設けた強化部のパターンを
示す図である。
【図27】図26の板状パネルを用いて絞り加工を行
い、成形高さHを調べた結果を示す図である。
【図28】スプリングバックを抑制するために曲げ成形
部位の近傍に圧印加工によって設けられた圧痕の断面図
である。
【図29】角筒絞りが行われる板状パネルに施される圧
印加工部の一例を示す図である。
【符号の説明】
12a〜12e、32、50a、50b、66、70、
78a〜78c、84、98a、98b、108、12
4:線状強化部 30、56、64、68、114、120、130、1
40:板状パネル 44a、44b:第2絞り加工部(張出成形部位) 96a、96b、106:曲げ成形部位 116a、116b、132:圧痕 122:リング状強化部
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C21D 9/00 A 9352−4K

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 板状パネルの縁部を拘束しつつ中央部分
    にポンチを押圧し、該ポンチの形状に倣って該板状パネ
    ルを塑性変形させるプレス加工方法であって、 プレス加工に先立って、前記板状パネルのうちプレス加
    工初期に伸び変形させられるとともにプレス加工の進行
    に伴い応力集中が生じて割れが発生し易い応力集中部位
    に、機械的強度を向上させる強化処理を施すことを特徴
    とするプレス加工方法。
  2. 【請求項2】 板状パネルにポンチを押圧し、該ポンチ
    の形状に倣って該板状パネルを塑性変形させるプレス加
    工方法であって、 プレス加工に先立って、前記板状パネルのうちプレス加
    工時に周囲から材料が流入し難い張出成形部位に、機械
    的強度を向上させる強化処理を施すことを特徴とするプ
    レス加工方法。
  3. 【請求項3】 板状パネルの縁部を拘束しつつ中央部分
    にポンチを押圧し、該ポンチの形状に倣って該板状パネ
    ルを塑性変形させるプレス加工方法であって、 プレス加工に先立って、プレス加工時の前記板状パネル
    の変形形態を変化させて該板状パネルの成形限界におけ
    る歪量を増大させるように、該パネルの所定部位に機械
    的強度を向上させる強化処理を施すことを特徴とするプ
    レス加工方法。
  4. 【請求項4】 板状パネルを所定形状に塑性変形させる
    プレス加工方法であって、 プレス加工に先立って、前記板状パネルのうちプレス加
    工によって曲げられる曲げ成形部位の近傍に、機械的強
    度を向上させる強化処理を曲げの外側となる面側から施
    すことを特徴とするプレス加工方法。
  5. 【請求項5】 前記強化処理は、高エネルギーを加えて
    加熱するとともに急冷させることにより前記板状パネル
    を組織変態させて機械的強度を向上させるものである請
    求項1乃至4の何れか1項に記載のプレス加工方法。
  6. 【請求項6】 前記強化処理は、圧印加工で前記板状パ
    ネルを圧縮変形させて機械的強度を向上させるものであ
    る請求項1乃至4の何れか1項に記載のプレス加工方
    法。
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