JPH08131533A - インプラント表面へのリン酸カルシウム被膜形成方法 - Google Patents

インプラント表面へのリン酸カルシウム被膜形成方法

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JPH08131533A
JPH08131533A JP6273853A JP27385394A JPH08131533A JP H08131533 A JPH08131533 A JP H08131533A JP 6273853 A JP6273853 A JP 6273853A JP 27385394 A JP27385394 A JP 27385394A JP H08131533 A JPH08131533 A JP H08131533A
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tcp
calcium phosphate
powder
slurry
phosphate coating
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JP6273853A
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Hiroshi Shioda
宏 塩田
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Olympus Optical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】CaO−Na2 O−P25 −Al23 系バ
インダーガラス粉末とβ−TCP粉末とを重量比1:1
〜1.3で混合してスラリーを調製し、このスラリーを
インプラント基材に塗布して700〜780℃で加熱処
理することにより焼付ける。別の方法では、β−TCP
粉末を1000〜1180℃で予備焼成した後バインダ
ーガラスと混合してスラリーを調製し、このスラリーを
インプラント基材に塗布して焼付ける。 【効果】リン酸カルシウム被膜を1工程で、簡単かつ安
価に基材表面に形成することができる。また、基材がチ
タンもしくはチタン合金製であっても、酸化による表面
の脱落を起こすことなく十分な焼付け強度を得ることが
できる。さらに、形成されたリン酸カルシウム被膜中の
β−TCP結晶の割合を高めることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、医科や歯科分野で用
いられるインプラントの表面へのリン酸カルシウム被膜
形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミナ単結晶、ジルコニア等の高強度
セラミックス及びチタン、チタン合金は、高強度を有す
るうえに生体に対して毒性がないことから、人工骨・人
工歯根などの生体インプラントの材料として広く用いら
れている。しかしこれらの材料は、生体組織に対して不
活性(バイオイナーティブ(生体不活性))であるため
に新生骨との結合能がなく、また被包化(異物膜の形
成)が生じ易いので長期間にわたって生体内に維持固定
することが容易でない。
【0003】一方、ハイドロキシアパタイトCa10(P
46 (OH)2 (以下、HAPと称する)やリン酸
三カルシウムCa3 (PO42 (以下、TCPと称す
る)等のリン酸カルシウム系セラミックスは、生体組織
に対して活性(バイオアクティブ)で骨との結合性等の
生体親和性に優れており、かつ生体に対して無毒性な材
料として知られている。さらに、β−TCPは新生骨と
置換することも知られている。しかし、これらリン酸カ
ルシウム系セラミックス焼結体は、単独では十分な強度
を得ることができなかった。
【0004】そこで、両者の長所を生かすために、チタ
ン,ジルコニア等の高強度基材の表面にHAP、TCP
等のリン酸カルシウム系セラミックスからなる生体活性
層を設けるという試みが数多く行なわれている。
【0005】例えば、コーティングにより生体活性層を
形成する方法として、プラズマ溶射による被覆法(特公
昭58−39533号公報)、スパッタリングによる被
覆法(特開昭58−109049号公報)、PVD及び
CVDによる被覆法(特開昭59−111753号公
報)、電気泳動による被覆法(特開昭53−12819
0号公報)、塗布被覆法(特開昭53−118411号
公報、特開昭63−134672号公報)、焼結法(特
開昭59−45976号公報)、並びに被膜を接着する
方法が提案されている。
【0006】このうち、特開昭63−134672号公
報に開示される方法は、基材表面にCaO−Na2 O−
25 −Al23 ガラス層を設けた後、メカノケミ
カル法により合成したβ−TCP粉末を塗布して焼き付
けることにより基材表面をβ−TCPで被覆する。すな
わち、この方法は、CaO−Na2 O−P25 −Al
23 ガラスをバインダー層とし、基材とβ−TCP被
膜との密着性を高めて均一な被膜を形成しようとするも
のである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、プラズ
マ溶射、スパッタリング等による被覆法の場合、コーテ
ィング材料を高温にする必要が有り、その熱によってコ
ーティング材料の結晶性が劣化することがある。特にβ
−TCPの場合にはその熱によって結晶構造が変化する
ことが知られている。また装置も高価なものを必要とす
る。
【0008】また、電気泳動被覆法の場合、基材が非導
電性のものには被覆できないという問題を有している。
さらに、被膜を接着する方法の場合、接着剤がチタンや
セラミックスなどに比べて生体親和性や耐久性に劣るた
め、接着層が表面に露出した場合、良好な骨結合を得る
ことができない。
【0009】スラリー等を塗布後焼き付ける方法は、特
別な設備を必要とせず、簡単で安価にリン酸カルシウム
被膜を形成できる方法である。しかしながら、例えば特
開昭63−134672号公報には、基材表面にCaO
−Na2 O−P25 −Al23 バインダー層を設け
た後、メカノケミカル法により合成したβ−TCP粉末
を焼き付ける方法が開示されているが、この方法によれ
ば800℃以上の焼成温度でβ−TCPを焼成しないと
十分な焼付き強度が得ることができない。このため、チ
タンもしくはチタン合金に応用しようとした場合、大気
中で焼成を行なうとチタンもしくはチタン合金基材が酸
化し、表面が剥がれ落ちてリン酸カルシウム被膜を形成
することができない。チタン基材の酸化を少なくするた
めには焼成温度を800℃以下まで低下させねばなら
ず、この場合被膜の焼成が不十分となり基材から容易に
脱落してしまう。したがって、従来の方法を用いて、表
面の酸化を抑えつつチタンもしくはチタン合金基材にβ
−TCPを被覆するためには、高真空中もしくは不活性
ガス中で熱処理する必要があり、装置が大がかりになる
という欠点がある。
【0010】また、通常バインダーガラスを用いる塗布
被覆法では、スラリー焼成時にリン酸カルシウム結晶と
バインダーガラスが反応し易く、その結果リン酸カルシ
ウムの一部がピロリン酸カルシウムに転移してリン酸カ
ルシウム結晶の構造が崩されてしまうという問題点もあ
る。リン酸カルシウム被膜の中で新生骨と置換する部位
はβ−TCP結晶部位であるので、このようにリン酸カ
ルシウム結晶の構造が崩されると骨置換部位が減少し、
骨中でのインプラントの固定が遅れる要因となる。
【0011】したがって、この発明は、特別な設備を必
要とせず、簡単かつ安価に、生体親和性の優れたリン酸
カルシウム被膜を基材表面に形成することが可能なβ−
TCPを含むリン酸カルシウム被膜の形成方法を提供す
ることを目的とし、特には、塗布被覆法に基づき、大気
中で焼成を行なってもチタンもしくはチタン合金表面の
酸化による脱落などがなく、かつ被膜の十分な焼付き強
度を得ることが可能な方法を提供することを目的とす
る。
【0012】また、この発明は、結晶性の優れたリン酸
カルシウム被膜を形成することが可能なβ−TCPを含
むリン酸カルシウム被膜の形成方法を提供することを目
的する。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記事情
に鑑み、鋭意研究の結果、CaO−Na2 O−P25
−Al23 系バインダーガラス粉末とβ−TCP粉末
とを特定の配合比で混合することによってより低い温度
で焼成を行なっても被膜の十分な焼付き強度を得ること
が可能であることを見出し、この発明を完成するに至っ
た。
【0014】すなわち、この発明によるβ−TCPを含
むリン酸カルシウム被膜の形成方法の特徴は、CaO−
Na2 O−P25 −Al23 系バインダーガラス粉
末とβ−TCP粉末とを重量比1:1〜1.3で混合し
た後水もしくは水と解膠剤との混合溶液を加えてスラリ
ーを調製し、該スラリーをインプラント基材に塗布して
700〜780℃で加熱処理することにより焼付けるこ
とを包含することにある。
【0015】この発明によるリン酸カルシウム被膜の形
成方法において、CaO−Na2 O−P25 −Al2
3 系バインダーガラス粉末とβ−TCP粉末との重量
混合比が、β−TCP粉末/バインダーガラス粉末<1
である場合には、β−TCPが全てピロリン酸カルシウ
ムに転移してしまい、逆にβ−TCP粉末/バインダー
ガラス粉末>1.3である場合には、被膜の付着強度が
弱く、被膜が基材表面から剥離し易くなる。
【0016】この発明において用いられるCaO−Na
2 O−P25 −Al23 系バインダーガラス粉末及
びβ−TCP粉末は、いずれも特に制限されるものでは
なくどのようなものを用いることもできるが、β−TC
P粉末については、メカノケミカル法によって調製され
たものであることが特に好ましい。メカノケミカル法に
より調製されたβ−TCP粉末は、微細で、かつ高純度
であって、均質なスラリーを調製することが可能であ
り、ひいてはインプラント基材表面上に薄く均一なリン
酸カルシウム被膜を形成することが可能となる。
【0017】前記スラリーをインプラント基材に塗布し
た後、700〜780℃の温度で加熱処理を行なう。前
述のように、加熱温度が800℃を越えると、特に基材
がチタンもしくはチタン合金製である場合に基材が酸化
し、表面が脱落する恐れがあるため好ましくない。ま
た、加熱温度が700℃未満である場合には、バインダ
ーガラスの付着強度が低下する傾向にある。
【0018】スラリーの加熱処理時間は特に限定される
ものではないが、加熱処理の間にβ−TCPの結晶が徐
々にピロリン酸カルシウムに転移すること、並びに基材
がチタンもしくはチタン合金である場合に酸化が進行す
ることを考慮すると短時間で処理を終えることが好まし
く、特には30秒以内であることが好ましい。
【0019】この発明によるリン酸カルシウム被膜の形
成方法において、スラリーを調製する際には溶媒として
通常水を用いるが、粉末が凝集することを防止するため
に解膠剤を添加することができる。解膠剤は通常この分
野において用いられるいかなる化合物を用いてもよく、
例えば、アクリル酸アンモニウム系の解膠剤であるセル
ナD305(中央油脂製)を用いることができる。
【0020】なお、スラリーを調製する際に、剪断力を
付与することが可能な装置、例えばボールミルのような
混合装置内において各成分を混合することにより、解膠
剤を使用せずに水のみでバインダーガラス粉末とβ−T
CP粉末とを十分均一に混合することができ、表面状態
が滑らかでほぼ均一な膜厚のリン酸カルシウム被膜を形
成することができる。
【0021】この発明によるリン酸カルシウム被膜の形
成方法において、被膜を形成しようとするインプラント
基材としては、チタンもしくはチタン合金製の基材がこ
の発明の効果が十分に発揮されて特に好ましい。しかし
ながら、この発明はこれらの素材に限定されるものでは
なく、医科や歯科等の分野で通常用いられるインプラン
ト基材(ただし、レジンは除く)であればいかなるもの
に対しても適用することができる。
【0022】この発明によるリン酸カルシウム被膜の形
成方法は、インプラント基材表面上へのリン酸カルシウ
ム被膜の焼付けを大気中で行なうことができるが、減圧
条件下や不活性雰囲気下での焼付けを排除するものでは
ない。逆に、大掛かりな設備を必要とせずに実現可能な
程度の簡単な減圧環境であっても、チタンもしくはチタ
ン合金等のインプラント基材の酸化をさらに抑制するこ
とができ好ましい。
【0023】前述のように、従来のバインダーガラスを
用いる塗布被覆法では、スラリー焼成時にリン酸カルシ
ウム結晶とバインダーガラスが反応し、その結果リン酸
カルシウムがピロリン酸カルシウムに転移してリン酸カ
ルシウム結晶の構造が崩され易い。これは、スラリー焼
成時のリン酸カルシウムとバインダーガラスとの反応性
を低下させることにより防ぐことが可能である。本発明
者らは、予めβ−TCPを焼成することにより、バイン
ダーガラスとの反応性が抑制され、リン酸カルシウム被
膜中のβ−TCP結晶の割合を大きくすることができる
ことを見出し、この発明による他のβ−TCPを含むリ
ン酸カルシウム被膜の形成方法を完成した。
【0024】すなわち、この発明による他のβ−TCP
を含むリン酸カルシウム被膜の形成方法は、β−TCP
粉末を1000〜1180℃で予備焼成した後にバイン
ダーガラスと混合し、水もしくは水と解膠剤の混合溶液
を加えてスラリーを調製し、該スラリーをインプラント
基材の表面の一部に塗布して焼付けることを包含する。
【0025】この発明による他のリン酸カルシウム被膜
の形成方法において、β−TCPの予備焼成は1000
〜1180℃で行なわれる。予備焼成温度が1180℃
を越えるとβ−TCPがα−TCPに転移してしまい、
また1000℃未満である場合にはバインダーガラスと
の反応抑制の効果を十分得ることができず好ましくな
い。より好ましくは、予備焼成は1100〜1180℃
で行なわれる。
【0026】β−TCPを予備焼成した後バインダーガ
ラスと混合し、以下、上述の通りにスラリーの調製及び
インプラント基材表面への焼付けを行なえばよい。バイ
ンダーガラス粉末とβ−TCP粉末との配合比、スラリ
ーの加熱処理温度及び加熱処理時間については上述の方
法と同様である。
【0027】
【作用】この発明によるβ−TCPを含むリン酸カルシ
ウム被膜の形成方法では、CaO−Na2 O−P25
−Al23 系バインダーガラス粉末とβ−TCP粉末
とを混合して予めスラリーを調製し、このスラリーを基
材表面に塗布した後1回の焼付け操作で基材上にリン酸
カルシウム被膜を形成する。また、CaO−Na2 O−
25 −Al23 系バインダーガラス粉末とβ−T
CP粉末との重量比を1:1〜1.3とすることによ
り、700〜780℃という低温での焼付けを可能にす
る。この加熱温度は、チタンもしくはチタン合金基材が
酸化して表面の剥離が発生する温度よりも低く、基材表
面の酸化が発生しにくい。
【0028】また、この発明による他のβ−TCPを含
むリン酸カルシウム被膜の形成方法では、β−TCP粉
末をバインダーガラス粉末と混合する前に予備焼成す
る。予備焼成したβ−TCPは結晶安定性が向上してバ
インダーガラスと反応し難くなり、焼付け工程における
加熱処理によっても、バインダーガラスと反応してピロ
リン酸カルシウムに転移することが少ない。その結果、
形成されたリン酸カルシウム被膜中のβ−TCP結晶の
割合が高まる。
【0029】
【実施例】
実施例1 A)バインダーガラス粉末の調製 まず、表1に示すガラス組成となるように、表2に示す
正リン酸を除く原料、すなわち炭酸ナトリウム、炭酸カ
ルシウム及びアルミナを乳鉢で粉砕混合し、その後正リ
ン酸を加えて練和した。次いで、この練和物を200℃
/時で350℃まで昇温して1時間保持し、その後30
0℃/時で1100℃まで昇温した。この温度で30分
間保持した後、カーボン型上に流し出し、冷却後粉砕し
てバインダーガラス粉末を調製した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】 B)β−TCPの調製 β−TCPは、メカノケミカル的な効果を得ることがで
きる、烏山らの湿式粉砕法(窯業協会誌,94[9],
1004−1008頁:以下、メカノケミカル法と称す
る)により合成した。 C)リン酸カルシウム被膜の形成 上記A)において調製したバインダーガラス粉末及び上
記B)において調製したβ−TCP粉末を、重量比でβ
−PCT粉末/バインダーガラス粉末=1〜1.3とな
るように秤量して混合した後、蒸留水と解膠剤を加えて
撹拌し、スラリーを調製した。このスラリーをチタン合
金製インプラント基材に塗布して自然乾燥させ、歯科用
ポーセレン炉を用いて昇温スピード30℃/分で740
℃まで昇温した後5秒間保持し、さらに大気中で冷却す
ることによりリン酸カルシウムの被膜を焼付けた。
【0032】このようにして形成したリン酸カルシウム
被膜のX線回折(XRD)パターンの一例として、バイ
ンダーガラスG1粉末とβ−TCP粉末を重量比で1:
1.3で混合したときのXRDパターンを図1に示す。
このXRDパターンから、被膜中にβ−TCPとピロリ
ン酸カルシウムの結晶が含まれていることがわかる。
【0033】なお、β−TCP粉末/バインダーガラス
粉末<1とした場合にはβ−TCPは全てピロリン酸カ
ルシウムに転移しており、また、β−TCP粉末/バイ
ンダーガラス粉末>1.3とした場合には被膜の付着強
度が弱く基材からぼろぼろ落ちてしまった。 実施例2 この実施例で用いるバインダーガラス粉末は、上記実施
例1と同様の方法で、下記表3に示すガラス組成となる
よう下記表4に示す原料組成比で調製した。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】また、β−TCP粉末としては、メカノケ
ミカル法によって調製したβ−TCP粉末を750℃、
1100℃及び1150℃で各々1時間予備焼成した3
種類の粉末を用いた。
【0037】上記バインダーガラスG3と上記3種類の
β−TCP粉末のうちの1種とを重量比で1:1.1と
なるように秤量して混合した後、更に適量の蒸留水を加
えて撹拌しスラリーを調製した。次いで、このスラリー
をチタン製インプラント基材に塗布し、歯科用ポーセレ
ン炉を用いて昇温スピード30℃/分で750℃、76
0℃及び770℃までそれぞれ昇温した後5秒間保持
し、さらに大気中で冷却することによりリン酸カルシウ
ムの被膜を焼付けた。
【0038】それぞれの試料についてX線回折分析を行
なった結果、β−TCPとピロリン酸カルシウムが共存
する被膜が形成されていた。予備焼成温度の異なる3種
類のβ−TCPの各々について、焼付け温度(スラリー
加熱温度)と、β−TCPの第1ピーク強度とピロリン
酸カルシウムの第1ピーク強度との比(β−TCP/ピ
ロリン酸カルシウム)との関係を図2に示した。このグ
ラフから、スラリー焼成温度が低いほど、またβ−TC
Pの予備焼成温度が高いほどβ−TCPとピロリン酸カ
ルシウムとの比が大きい被膜を形成できることがわか
る。 実施例3 この実施例で用いるバインダーガラス粉末は、上記実施
例1と同様の方法で、下記表5に示すガラス組成となる
よう下記表6に示す原料組成比で調製した。
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】また、β−TCP粉末としては、メカノケ
ミカル法によって調製したβ−TCP粉末を1150℃
で1時間予備焼成したものを用いた。上記バインダーガ
ラスG4と上記β−TCPとを重量比で1:1.1とな
るように秤量し、蒸留水と共にポットミル中で粉砕、撹
拌してスラリーを調製した。このスラリーをチタン基材
に塗布し、歯科用ポーセレン炉を用いて、減圧下におい
て昇温スピード30℃/分で700℃まで昇温した後3
0秒間保持し、さらに大気中で冷却することによりリン
酸カルシウムの被膜を焼付けた。
【0042】それぞれの試料についてX線回折分析を行
なった結果、β−TCPとピロリン酸カルシウムが共存
する被膜が形成されていた。形成された膜の表面状態は
滑らかで、ほぼ均一な膜厚のβ−TCPを含むリン酸カ
ルシウム被膜であった。
【0043】以上、実施例に基づいてこの発明を説明し
たが、この発明は上述の実施例に限定されるものではな
く、この発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能
である。ここで、この発明の要旨を以下に列挙する。
【0044】(1)CaO−Na2 O−P25 −Al
23 系バインダーガラス粉末とβ−TCP粉末とを重
量比1:1〜1.3で混合した後水もしくは水と解膠剤
との混合溶液を加えてスラリーを調製し、該スラリーを
インプラント基材に塗布して700〜780℃で加熱処
理することにより焼付けることを包含するβ−TCPを
含むリン酸カルシウム被膜の形成方法。
【0045】(2)CaO−Na2 O−P25 −Al
23 系バインダーガラス粉末の組成が、 CaO 20〜40モル% Na2 O 10〜20モル% P25 45〜60モル% Al23 0〜10モル% であることを特徴とする上記(1)に記載のβ−TCP
を含むリン酸カルシウム被膜の形成方法。
【0046】(3)β−TCP粉末を1000〜118
0℃で予備焼成した後にバインダーガラスと混合し、水
もしくは水と解膠剤の混合溶液を加えてスラリーを調製
し、該スラリーをインプラント基材の表面の一部に塗布
して焼付けることを包含するβ−TCPを含むリン酸カ
ルシウム被膜の形成方法。
【0047】(4)β−TCP粉末を1000〜118
0℃で予備焼成した後、CaO−Na2 O−P25
Al23 系バインダーガラス粉末と予備焼成した該β
−TCP粉末とを重量比1:1〜1.3で混合し、水も
しくは水と解膠剤との混合溶液を加えてスラリーを調製
した後、該スラリーをインプラント基材に塗布して70
0〜780℃で0〜30秒間加熱処理することにより焼
付けることを包含するβ−TCPを含むリン酸カルシウ
ム被膜の形成方法。
【0048】(5)β−TCP粉末がメカノケミカル法
によって調製されたものであることを特徴とする上記
(1)ないし(4)のいずれか1つに記載のβ−TCP
を含むリン酸カルシウム被膜の形成方法。
【0049】(6)インプラント基材がチタンもしくは
チタン合金であることを特徴とする上記(1)ないし
(4)のいずれか1つに記載のβ−TCPを含むリン酸
カルシウム被膜の形成方法。
【0050】(7)焼付け工程を減圧下で行なうことを
特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれか1つに記
載のβ−TCPを含むリン酸カルシウム被膜の形成方
法。前記(1)及び(2)に記載の方法は実施例1に対
応する。これらの方法では、CaO−Na2 O−P2
5 −Al23 系バインダーガラス粉末とβ−TCP粉
末とを予め混合してスラリーとし、このスラリーをイン
プラント基材表面に塗布することにより、1回の焼付け
操作で基材上にリン酸カルシウム被膜を形成することを
可能にする。また、バインダーガラス粉末とβ−TCP
粉末との重量比を1:1〜1.3とすることにより、7
00〜780℃という低温での加熱処理によるインプラ
ント基材表面へのリン酸カルシウム被膜の形成を可能に
する。この加熱温度は、チタンもしくはチタン合金基材
が酸化して表面の剥離が発生する温度よりも低く、基材
表面の酸化が発生しにくい。
【0051】前記(3)及び(4)に記載の方法は実施
例2に対応する。これらの方法では、β−TCP粉末を
1000〜1180℃で予備焼成した後バインダーガラ
ス粉末と混合してスラリーを調製し、このスラリーを基
材表面に塗布した後焼付ける。予備焼成したβ−TCP
粉末は結晶安定性が向上してバインダーガラスとの反応
性が低下する。その結果、焼付けの際の加熱処理によっ
てもバインダーガラスと反応して結晶構造が崩れること
が少なくなり、β−TCP結晶の割合の高いリン酸カル
シウム被膜を得ることができる。
【0052】前記(5)に記載の方法は実施例1〜3に
対応する。この方法においては、β−TCP粉末として
メカノケミカル法によって調製された粉末を用いる。メ
カノケミカル法によって調製されたβ−TCP粉末は粒
子が細かく、かつ高純度であるため、均質なスラリーを
調製することができ、ひいては薄く均一な被膜を形成す
ることが可能となる。
【0053】前記(6)に記載の方法は実施例1〜3に
対応する。この方法では、リン酸カルシウム被膜を形成
する基材としてチタンもしくはチタン合金製の基材が用
いられる。チタンもしくはチタン合金は、生体に対する
毒性がない上強度が非常に高いので人工骨、人工歯根と
して最適である。しかしながら、リン酸カルシウム被膜
を焼付ける際の加熱温度が800℃を越えると酸化によ
り表面が脱落してしまう。この方法では、リン酸カルシ
ウム被膜の焼付け温度が700〜780℃であるため、
このような酸化が抑制され、表面が脱落することなく被
膜を形成することができる。
【0054】前記(7)に記載の方法は実施例3に対応
する。この方法では、基材表面へのリン酸カルシウム被
膜の焼付けを減圧条件下で行なう。これにより、雰囲気
中に存在して基材と反応する酸素の分圧が減少し、焼付
け工程における基材の酸化をさらに抑制することが可能
となる。
【0055】
【発明の効果】以上のように、この発明のβ−TCPを
含むリン酸カルシウム被膜の形成方法によると、予めバ
インダーガラス粉末とβ−TCP粉末とを混合してスラ
リーを調製し、このスラリーを基材に塗布して焼付ける
ことにより、従来バインダー層を設ける工程とβ−TC
Pを焼付ける工程の2工程で行なっていたリン酸カルシ
ウム被膜の形成を1工程で行なうことができ、基材表面
でのリン酸カルシウム被膜の形成を簡単かつ安価に行な
うことができる。また、CaO−Na2 O−P25
Al23 系バインダーガラス粉末とβ−TCP粉末と
の重量比を1:1〜1.3とすることにより、リン酸カ
ルシウム被膜の焼付けを700〜780℃という低温で
行なうことが可能となり、特に基材がチタンもしくはチ
タン合金製である場合には、基材表面の酸化による脱落
を抑制することが可能となる。
【0056】さらに、この発明による他のβ−TCPを
含むリン酸カルシウム被膜の形成方法によると、β−T
CP粉末を予め1000〜1180℃で予備焼成して結
晶安定性を高めた後、バインダーガラス粉末と混合して
スラリーを調製することにより、スラリー加熱時のβ−
TCP粉末とバインダーガラス粉末との反応を抑制し、
形成後のリン酸カルシウム被膜におけるβ−TCP結晶
の割合を高めることができる。β−TCP結晶部位は新
生骨と置換する部位なので、このようにβ−TCP結晶
の割合が高いリン酸カルシウム被膜を有するインプラン
ト基材は、骨中での固定が早まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1において、バインダーガラ
スG1粉末とβ−TCP粉末とを1:1.3の重量比で
用いて形成したリン酸カルシウム被膜のX線回折パター
ンを示すグラフ。
【図2】スラリー焼成温度と、形成されたリン酸カルシ
ウム被膜のX線回折におけるβ−TCPの第1ピーク強
度とピロリン酸カルシウムの第1ピーク強度との比との
相関を、β−TCP粉末の予備焼成温度ごとに示すグラ
フ。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 CaO−Na2 O−P25 −Al2
    3 系バインダーガラス粉末とβ−TCP粉末とを重量比
    1:1〜1.3で混合した後水もしくは水と解膠剤との
    混合溶液を加えてスラリーを調製し、該スラリーをイン
    プラント基材に塗布して700〜780℃で加熱処理す
    ることにより焼付けることを包含するβ−TCPを含む
    リン酸カルシウム被膜の形成方法。
  2. 【請求項2】 前記CaO−Na2 O−P25 −Al
    23 系バインダーガラス粉末の組成が、 CaO 20〜40モル% Na2 O 10〜20モル% P25 45〜60モル% Al23 0〜10モル% であることを特徴とする請求項1記載のβ−TCPを含
    むリン酸カルシウム被膜の形成方法。
  3. 【請求項3】 β−TCP粉末を1000〜1180℃
    で予備焼成した後にバインダーガラスと混合し、水もし
    くは水と解膠剤の混合溶液を加えてスラリーを調製し、
    該スラリーをインプラント基材の表面の一部に塗布して
    焼付けることを包含するβ−TCPを含むリン酸カルシ
    ウム被膜の形成方法。
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