JPH08173149A - 5−アミノレブリン酸生産微生物 - Google Patents

5−アミノレブリン酸生産微生物

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JPH08173149A
JPH08173149A JP33604694A JP33604694A JPH08173149A JP H08173149 A JPH08173149 A JP H08173149A JP 33604694 A JP33604694 A JP 33604694A JP 33604694 A JP33604694 A JP 33604694A JP H08173149 A JPH08173149 A JP H08173149A
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aminolevulinic acid
acid
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dehydratase
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圭太郎 渡辺
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徹 田中
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 低濃度の5−アミノレブリン酸デヒドラター
ゼ阻害剤を添加するのみで、著量の5−アミノレブリン
酸を生産することのできる微生物を提供する。 【構成】 5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤
に対する阻害物質定数が減少した5−アミノレブリン酸
デヒドラターゼ変異酵素を有する5−アミノレブリン酸
生産微生物、この特徴に加え、5−アミノレブリン酸に
対するミカエリス定数が増加した5−アミノレブリン酸
デヒドラターゼ変異酵素を有する5−アミノレブリン酸
生産微生物。光合成細菌であって、非光照射下で5−ア
ミノレブリン酸を生産することができる5−アミノレブ
リン酸生産微生物。工業技術院生命工学工業技術研究所
にFERM P−14672として寄託されている上記
の5−アミノレブリン酸生産微生物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、5−アミノレブリン酸
を高濃度で蓄積することのできる微生物に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】5−
アミノレブリン酸は、テトラピロール化合物の前駆体と
して広く生物圏に存在し、生体中で重要な役割を果たし
ている化合物である。
【0003】5−アミノレブリン酸は、除草剤、殺虫
剤、植物成長調節剤、植物の光合成増強剤として優れた
効果を示し、しかも人畜に対して毒性を示さず、分解性
が高いため環境への残留性もないなど優れた性質を示す
天然化合物である(特開昭61−502814号、特開
平2−138201号公報など参照)。
【0004】しかし、5−アミノレブリン酸は、生産コ
ストが高く、除草剤、殺虫剤、植物成長調節剤、植物の
光合成増強剤として使用するには実用性に欠ける(Ch
emical Week/October,29,19
84)。
【0005】このような現状において、多くの化学合成
法が検討されている(例えば、特開平2−76841公
報参照)が、未だ十分な方法は開発されていない。
【0006】一方、Rhodobacterium属、
Propionibacterium属、Methan
obacterium属、Methanosarcin
a属などの微生物を用いた5−アミノレブリン酸の製造
方法も検討されている。
【0007】しかし、Propionibacteri
um属、Methanobacterium属、Met
hanosarcina属(特開平5−184376な
ど参照)などを用いる方法では生産量が非常に低く、満
足できるものではない。
【0008】また、Rhodobacterium属、
Propionibacterium属、Methan
obacterium属、Methanosarcin
a属などの微生物により5−アミノレブリン酸を生産さ
せる際に用いられる方法として、(微生物により生産さ
れる5−アミノレブリン酸が生体中において5−アミノ
レブリン酸デヒドラターゼにより代謝されるのを防ぐべ
く、)5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤(例
えば、レブリン酸や4,6−ジオキソヘプタン酸など)
を添加する方法も開発されている(特開平6−2770
81号公報参照)。ただし、この方法では、生産される
5−アミノレブリン酸の3倍、あるいは500倍以上も
の大量の阻害剤の添加が必要な場合がある。
【0009】5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害
剤の大量使用は、微生物の生育や機能を著しく阻害する
他に、生産コストの高騰や精製分離の困難などを招来す
ることが懸念される。
【0010】そこで、5−アミノレブリン酸の生産のた
めに必要な5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤
をできるだけ減少することができる方法の開発が切望さ
れている。
【0011】また、5−アミノレブリン酸を増産するた
めに、5−アミノレブリン酸デヒドラターゼによる5−
アミノレブリン酸の代謝をできるだけ抑制することがで
きる条件下であって、しかも微生物の生育や機能をでき
るだけ阻害しないために、エネルギー獲得に必要なテト
ラピロール化合物の使用量を少量とすることができる条
件下において、十分な生育ができ、かつこのような条件
下において十分な5−アミノレブリン酸合成活性を保つ
ことのできる微生物を見出すことが望まれる。
【0012】特に、上記のような微生物が光合成細菌で
ある場合には、上記のことは、テトラピロール化合物を
原料とするバクテリオクロロフィルなどの集光色素を必
要とする光照射条件下ではなく、光照射を必要としない
(従属栄養)条件下において、十分な生育ができ、かつ
このような条件下で、十分な5−アミノレブリン酸合成
活性を有するということを意味し、工業上有益であるこ
とは言うまでもない。
【0013】本発明は、以上の諸点を考慮し、低濃度の
5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤を添加する
のみで、著量の5−アミノレブリン酸を生産することの
できる微生物を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために研究を重ねた結果、先ず、(1)阻害
物質に対する阻害物質定数が減少した5−アミノレブリ
ン酸デヒドラターゼ変異酵素を有する微生物、更にはこ
の特徴に加え、5−アミノレブリン酸デヒドラターゼの
5−アミノレブリン酸に対するミカエリス定数が増大し
た5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ変異酵素を有す
る微生物を用いる方法が有効であるとの知見を得、この
ような微生物を変異育種により作出することに成功し
た。
【0015】次いで、(2)光合成細菌は、バクテリオ
クロロフィルを多量に有しているため、その前駆物質で
ある5−アミノレブリン酸の合成能が強い。したがっ
て、このような微生物を変異処理して、前記したように
テトラピロール化合物が少量でも生育できる微生物とす
れば、5−アミノレブリン酸を代謝してテトラピロール
化合物とする活性が低下し、その結果として5−アミノ
レブリン酸を多量に生産することができるとの知見を得
た。そして、このような微生物を得るための選抜条件と
して、テトラピロール化合物を少量しか必要としない条
件、すなわち光合成能が低下しても生育できる条件での
変異条件として、非光照射条件が有効であるとの知見を
得、このような微生物を作出することに成功した。
【0016】さらに、(3)上記(1),(2)のよう
な微生物が、非常に低濃度の5−アミノレブリン酸デヒ
ドラターゼ阻害剤の添加のみで、著量の5−アミノレブ
リン酸を蓄積することを確認した。
【0017】本発明は、上記(1)〜(3)に基付くも
ので、5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤に対
する阻害物質定数が減少した5−アミノレブリン酸デヒ
ドラターゼ変異酵素を有することを特徴とする5−アミ
ノレブリン酸生産微生物を要旨とする。
【0018】この5−アミノレブリン酸生産微生物は、
5−アミノレブリン酸に対するミカエリス定数が増加し
た5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ変異酵素を有す
ることも特徴とする。
【0019】また、本発明は、光合成細菌であって、非
光照射下で5−アミノレブリン酸を生産することができ
ることを特徴とする5−アミノレブリン酸生産微生物を
も要旨とする。
【0020】以上の5−アミノレブリン酸生産微生物
は、工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P
−14672として寄託されている。
【0021】以下、本発明の5−アミノレブリン酸生産
微生物の作出方法、ならびにこの微生物を使用した5−
アミノレブリン酸の製造方法の詳細を説明する。
【0022】先ず、本発明の5−アミノレブリン酸生産
微生物は、例えば、Rhodobacterium属、
Rhodopseudomonas属、Propion
ibacterium属、Methanobacter
ium属、Methanosarcina属、Pseu
domonas属、Escherichia属、Sac
caromyces属、あるいはこれらの変異株を親株
として、これらを変異処理して得られるものであって、
5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤に対する阻
害物質定数が減少した5−アミノレブリン酸デヒドラタ
ーゼ変異酵素を有するものである。
【0023】また、この5−アミノレブリン酸生産微生
物は、上記の特徴に加えて、5−アミノレブリン酸に対
するミカエリス定数が増大した5−アミノレブリン酸デ
ヒドラターゼ変異酵素を有するものが好ましい。
【0024】このような性質を有する本発明の5−アミ
ノレブリン酸生産微生物の分離方法の詳細を、以下に例
示する。
【0025】上記の親株が増殖し得る液体培地を試験管
に調製し、滅菌した後、親株を接種し、振とう培養す
る。増殖した菌体を緩衝液で洗浄後、変異操作を行う。
【0026】この変異操作としては、通常の変異手法を
用いることができる。例えば、紫外線、電離放射線など
の物理的変異原を寒天培地上の親株に照射したり、エチ
ルメタンスルフォネート(EMS)、N−メチル−N′
−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)、エチル
ニトロソ尿素(ENU)などのアルキル化剤や、ブロモ
デオキシウリジン(BrdUrd)などの塩基アナログ
などの化学的変異原を添加した緩衝液中で親株を培養す
る方法を用いることができる。
【0027】上記のような変異手法によって処理した菌
を、さらに緩衝液で洗浄し、寒天培地などに撒き、培養
する。
【0028】なお、この培養により生育した変異株の中
から、上記の性質を示す菌株を選択するには、以下のよ
うな工程にて行う。
【0029】ステップ1:これらの変異株を、後述のC
R−520の培養条件に用いるような培地に増殖させ、
菌体を集菌後、適当な緩衝液で洗浄して、緩衝液中で細
胞を破砕し、遠心分離して未破砕の細胞を取り除く。
【0030】ステップ2:ステップ1で得た無細胞抽出
液に対して、5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ反応
液(後述の実施例1参照)を用いて酵素反応を行う。
【0031】ステップ3:ステップ2の酵素反応を、基
質である5−アミノレブリン酸と5−アミノレブリン酸
デヒドラターゼ阻害剤(例えば、レブリン酸)の濃度を
適宜変化させた条件で行い、各条件における反応速度を
求める。
【0032】この反応速度の測定方法は、反応速度が求
められれば、どのような方法でもよいが、例えば、エイ
リッヒの比色定量法(J.Biol,Chem.,21
9,435,(1956)参照)でポルフォビリノーゲ
ン生成量、SATTOの方法(J.Nutr.Sci.
Vitaminol.,27,439,(1981)参
照)で総ポリフィリン量を求め、数1に示す式により反
応速度を算出すればよい。
【0033】
【数1】
【0034】このようにして求められる各条件下での反
応速度と、5−アミノレブリン酸濃度および5−アミノ
レブリン酸デヒドラターゼ阻害剤(例えば、レブリン
酸)濃度とから、ミカエリス定数および阻害物質定数を
求める。
【0035】これらの定数を求める方法は、幾つも知ら
れているが、ミカエリス定数は、例えば、酵素反応速度
の逆数と5−アミノレブリン酸濃度の逆数とをプロット
するいわゆるリンネバー・バークプロット(「酵素反応
機構」:田伏岩夫訳、東京大学出版会、など参照)によ
り求められる回帰直線と基質濃度軸の交点から求める。
【0036】この方法は、リンネバー・バークの方法と
して一般的に用いられるミカエリス定数の算出法であ
り、求められるミカエリス定数(Km値)は、酵素の基
本的性質のうち、酵素と基質(本発明では、5−アミノ
レブリン酸)との親和性を評価するのに使用される場合
がある。この場合、Km値の増加は、親和性の減少とみ
なすことができる。
【0037】阻害物質定数は、例えば、酵素反応速度の
逆数と阻害物質の濃度とをプロットするいわゆるディク
ソンプロット(「酵素反応機構」:田伏岩夫訳、東京大
学出版会、など参照)により求める方法がある。この方
法で各5−アミノレブリン酸濃度について求められる回
帰直線は一点で交わり、交点のレブリン酸濃度軸の読み
に−1を乗じた値が阻害物質定数(Ki値)である。
【0038】Ki値を用いて酵素と阻害剤の親和性を評
価することができ、一般に、Ki値の減少は、阻害剤の
酵素に対する親和性の増大を意味する。
【0039】なお、5−アミノレブリン酸デヒドラター
ゼ阻害剤とは、5−アミノレブリン酸デヒドタターゼが
5−アミノレブリン酸をポルフォビリノーゲンに変換す
る反応を行う際に、それが共存するとき、ポルフォビリ
ノーゲンの生成速度を低下させる作用を持つ化合物を総
称する。該化合物は、5−アミノレブリン酸デヒドタタ
ーゼが本来の基質とする5−アミノレブリン酸中の官能
基の一部が変化したもの、類似の分子の形状、類似のフ
ァンデルワールス半径、またはその他の類似した電子状
態、から選ばれる1つあるいは2つ以上の構造を分子内
に持つことによって、5−アミノレブリン酸デヒドラタ
ーゼの5−アミノレブリン酸認識部位を遮蔽することに
より、5−アミノレブリン酸と5−アミノレブリン酸デ
ヒドラターゼの会合を阻害する化合物を含む。
【0040】このような化合物には、レブリン酸、5−
クロロレブリン酸、5−ブロモレブリン酸、5−ケトヘ
キサン酸、2−メチルコハク酸、2−オキソアジピン
酸、酢酸、スクシンアミド酸、3−オキソアジピン酸、
コハク酸モノメチル、4−ケトピメリン酸などのうち少
なくとも1種が挙げられる。
【0041】上記のように、Km値に対して、Ki値が
小さいほど阻害剤の効果は大きいことになる。
【0042】変異処理に供した親株についても、上記の
ステップ3により、5−アミノレブリン酸デヒドラター
ゼの阻害物質定数とミカエリス定数とを求め、これらの
値を基準にして、Ki値が減少し、Km値が増加してい
る変異株を選ぶ。
【0043】このような変異株を得るために用いる親株
は、上記の微生物から適宜選抜する。例えば、光合成細
菌の野性株あるいはその変異株を用いることができ、ロ
ドバクター・セファロイデスCR−386株(FERM
P−13159)やこれに由来するCR−450株
(FERM P−14085)のように、既に5−アミ
ノレブリン酸に対するKm値が増大した5−アミノレブ
リン酸デヒドラターゼ変異酵素を有する変異株を用いる
ことが好ましい。
【0044】ただし、このようにして、得られる変異株
の5−アミノレブリン酸デヒドラターゼのKm値が余り
に大きくなっている場合、生育に必要な量のポルフォビ
リノーゲンが生成しないため、該変異株の生育が著しく
悪化することがある。したがって、野性株のKm値の1
00倍以下のKm値を有する変異株を用いることが望ま
しい。
【0045】なお、ミカエリス定数が大きくなったため
に生育阻害がかかってしまう場合でも、ポルフォビリノ
ーゲンなどの栄養源を培地中に添加することでその阻害
が解除されるような場合は、この限りではない。
【0046】また、上記のKm、Kiによる選抜に先立
って、例えばエーリッヒ法などによる5−アミノレブリ
ン酸生産性の評価で選抜を行うことによって、より効率
的に選抜を行うこともできる。
【0047】次に、本発明の、光合成細菌であって、非
光照射下で生育でき、5−アミノレブリン酸を生産する
ことができる5−アミノレブリン酸生産微生物(以下、
「5−アミノレブリン酸生産光合成微生物」と記す)
は、Rhodobacter属、あるいはその変異性を
親株として、これを変異処理して得られるものである。
【0048】このような性質を有する本発明の5−アミ
ノレブリン酸生産光合成微生物の分離方法を以下に例示
する。
【0049】上記の親株が増殖し得る液体培地を試験管
に調製し、滅菌した後、親株を接種し、振とう培養す
る。増殖した菌体を緩衝液で洗浄後、変異操作を行う。
この変異操作は、通常の変異手法を用い、前述の5−ア
ミノレブリン酸生産微生物を変異する場合と同様の操作
で行う。
【0050】得られる変異株の中から上記の性質を示す
菌株を選抜するために、これらの菌を非光照射下(暗
所)にて振とう培養する。
【0051】この後、さらにエーリッヒ法などにより5
−アミノレブリン酸生産性の評価を行うことで効率的に
選抜を行うことができる。
【0052】また、前述の5−アミノレブリン酸生産微
生物の選抜法と、上述の5−アミノレブリン酸生産光合
成微生物の選抜法とを組み合わせることにより、一層効
率的な選抜を行うことができることは言うまでもない。
【0053】以上の変異・分離操作によって得られる好
ましい菌株として、Rhodobacter spha
eroides CR−520株を挙げることができ
る。
【0054】本菌株は、後述の実施例1のように、Rh
odobacter sphaeroides CR−
450株(FERM P−14085)に対するNTG
変異処理によって誘導されるものであり、光合成能が低
下している;5−アミノレブリン酸デヒドラターゼの阻
害剤に対するKiが低下し、5−アミノレブリン酸に対
するKmが上昇している;非光照射下でも5−アミノレ
ブリン酸を著量蓄積する;親株のコロニーが赤であるの
に対し、茶である;など以外は、親株とほぼ同じ菌学的
性質を有する。
【0055】このCR−520株は、工業技術院生命工
学工業技術研究所に、FERM P−14672として
寄託されている。
【0056】CR−520を用いた5−アミノレブリン
酸の生産条件については、通常の微生物培養条件が容易
に利用できる。例えば、炭素源として、グルコースなど
の糖類、あるいは酢酸、リンゴ酸、コハク酸などの酸類
を用いることができる。特に、糖類が価格の面で有利で
ある。また、窒素源としては、グリシンを添加すること
が望ましい。グリシンの添加は、5−アミノレブリン酸
の生産を著しく向上させる。通常、5〜100mMのグ
リシン添加が効果的であり、望ましくは10〜60mM
の添加である。補助成分として、硫安、塩安等のアンモ
ニア態窒素化合物、硝酸ナトリウム等の硝酸態窒素化合
物等の無機窒素源、尿素、ポリペプトン、酵母エキス等
の有機窒素化合物などを使用すればよい。さらに、無機
塩類等の微量成分などを適宜添加することが望ましい。
【0057】グリシンの添加とほぼ同時に5−アミノレ
ブリン酸デヒドラターゼ阻害剤(例えば、レブリン酸)
を少量添加することができる。本発明の微生物は、5−
アミノレブリン酸デヒドラターゼの5−アミノレブリン
酸に対するKm値が増大しているため、実施例に示した
ように、レブリン酸の添加無しでも5−アミノレブリン
酸を蓄積し得るが、一般には、レブリン酸を添加するこ
とが5−アミノレブリン酸の生産には効果的である。レ
ブリン酸の添加量は、0.01〜10mM、望ましくは
0.1〜5mMである。
【0058】培養条件としては、CR−520が生育可
能な条件の全てを用いることができるが、一般には、1
0〜40℃、望ましくは20〜35℃で培養すればよ
く、培地のpHは4〜9、望ましくは5〜8が適してい
る。
【0059】5−アミノレブリン酸の生産は、菌体の増
殖と同時に行うことができるが、菌体の増殖と独立して
も行うことができる。使用する微生物は、増殖期菌体、
休止菌体のいずれでもよく、そのまま5−アミノレブリ
ン酸の生産に使用できるが、遠心分離などにより集菌
し、培地やリン酸緩衝液等の適当な溶液に再懸濁させる
などして、菌濃度を高めて用いることもできる。
【0060】なお、培養時や5−アミノレブリン酸の生
産時にpHが変化する場合には、水酸化ナトリウム、ア
ンモニア、水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液や、塩
酸、硫酸、リン酸などの酸でpHを調製することが望ま
しい。
【0061】生産される5−アミノレブリン酸は、イオ
ン交換法、クロマト法、抽出法などの常法によって必要
に応じて分離・精製される。
【0062】
【作用】本発明の5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ
阻害剤に対するKi値が減少した5−アミノレブリン酸
デヒドラターゼ変異酵素を有する微生物、またはこの特
徴に加えて、5−アミノレブリン酸に対するKm値が増
大した5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ変異酵素を
有する微生物は、微量の5−アミノレブリン酸デヒドラ
ターゼ阻害剤を添加するだけで、該微生物が生産する5
−アミノレブリン酸2分子を縮合させてポルフォビリノ
ーゲンに転化する活性が著しく特異的に低下する。
【0063】このため、本発明の微生物を用いる5−ア
ミノレブリン酸の生産は、5−アミノレブリン酸デヒド
ラターゼ阻害剤を、微生物自身の生育、活性を抑制しな
い範囲内で添加する条件で行うことができるため、5−
アミノレブリン酸の生産性は非常に増大する。
【0064】また、本発明の、光合成細菌であって、非
光照射下で、5−アミノレブリン酸を生産することがで
きる微生物においては、光を照射せずとも著量の5−ア
ミノレブリン酸を蓄積することができる。
【0065】
【実施例】
実施例1 表1に示すグルタメート・グルコース培地(培地1)1
0ml(以下、「mL」と記し、リットルを「L」と記
す)を21mmφの試験管に分注して、121℃で15
分間滅菌し、放冷した。
【0066】
【表1】
【0067】これに、CR−450株(FERM P−
14085)の一白金耳を植菌後、30℃、暗所にて2
日間振とう培養した。
【0068】別の21mmφの試験管に培地1を10m
L分注して、上記と同様にして滅菌した。これに、上記
の培養液0.5mLを植え継ぎ、30℃、暗所にて18
時間振とう培養した。
【0069】この培養液を、洗浄のために、10000
rpmにて5分間遠心分離し、その上清を捨て、遠心分
離前と同量のトリス・マレイン酸緩衝液(pH6.0)
に懸濁させた。この洗浄操作を、さらに2度繰り返し
た。
【0070】この後、再び10000rpmにて5分間
遠心分離し、その上清を捨て、100μg/mLのNT
Gを含むトリス・マレイン酸緩衝液(pH6.0)に懸
濁させ、室温にて80分間静置培養した。
【0071】このようにして変異処理した菌を、上記と
同様の方法で3回洗浄した後、滅菌した培地1の試験管
に植え継ぎ、30℃、暗所にて2日間振とう培養した。
【0072】別に、培地1に寒天15g/Lを添加し、
121℃で15分間滅菌して寒天プレートを調製した。
この寒天プレートに、上記の培養液を希釈して塗布し、
30℃、暗所で4日間培養した。これにより、約150
00株のコロニーを得た。
【0073】実施例2 滅菌済みの96穴マイクロプレートに1ウェルあたり
0.2mLの滅菌済みの培地1を分注し、上記の約15
000株の変異株をそれぞれ植菌した。これを、30
℃、暗所にてマイクロプレートシェイカーを用いて振と
う培養し、24時間後、各ウェルにグリシンおよびレブ
リン酸を、それぞれ最終濃度で30mMおよび1mMと
なるように添加した。
【0074】さらに、24時間、上記と同じ条件下で振
とう培養し、各ウェルから培養液を採取し、エイリッヒ
反応により、553nmの吸光度が高い変異株70株を
選抜した。
【0075】実施例3 次に、500mL容の振とうフラスコに200mLの培
地1を調製した。これを121℃で15分間滅菌し、放
冷した。
【0076】実施例2で得られたCR−450株由来の
各変異株を、10mLの培地1を分注して上記と同様に
して滅菌した21mmφの試験管にて48時間、30
℃、暗所にて振とう培養した。
【0077】この培養液を、上記の振とうフラスコに全
量植菌し、48時間、30℃、暗所にて振とう培養した
後、遠心分離により菌体を集めた。
【0078】集めた菌体をトリス−塩酸緩衝液(40m
M、pH8.1)で洗浄後、同じ組成の緩衝液5mLに
再懸濁し、定法により超音波破砕装置にて破砕し、10
000rpmで30分間遠心分離し、得られた上清を5
−アミノレブリン酸デヒドラターゼ粗酵素液とした。
【0079】トリス−塩酸緩衝液(40mM、pH8.
1)1mL中にKClを33mMと、MgClを6.
5mM含み、さらに上記の粗酵素液を蛋白量換算で1.
0mg/mLとなるように加えて、酵素反応液を調製し
た。
【0080】この酵素反応液に、5−アミノレブリン酸
(0.32、0.65、1.3、3.2、6.5mM)
およびレブリン酸(0、0.01、0.05、0.2、
1.0、5.0mM)を各種の濃度で含有するように加
え、37℃でインキュベートした。
【0081】60分後、5vol%トリクロロ酢酸を2
mL加えて反応を停止させた。これを3500rpmで
10分間遠心分離し、上清を1mL採り、エイリッヒの
比色定量法により反応液中のポルフォビリノーゲンの生
成量aを調べた。
【0082】さらに、別の上清1mLを採り、SATT
Oの方法により、反応液中の総ポルフィリン量bを調べ
た。
【0083】これらの量a,bから、前述の数1の式に
よってポルフォビリノーゲン生成速度を求め、これを5
−アミノレブリン酸デヒドラターゼ反応速度とした。
【0084】この反応速度の逆数とレブリン酸濃度とを
プロットし、各5−アミノレブリン酸濃度について回帰
直線を求めた。それぞれの回帰直線は一点で交わり、交
点のレブリン酸濃度軸の値から阻害物質定数(Ki値)
を求めた。
【0085】また、反応速度の逆数と5−アミノレブリ
ン酸濃度の逆数とをプロットして回帰直線を求め、この
回帰直線と5−アミノレブリン酸濃度の逆数軸との交点
からミカエリス定数(Km値)を求めた。
【0086】調査した変異株の中で、本発明の5−アミ
ノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤(レブリン酸)に対
するKi値が減少した5−アミノレブリン酸デヒドラタ
ーゼを有し、5−アミノレブリン酸を生産する菌株CR
−514、5−アミノレブリン酸に対するKm値が増大
し、かつ5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤
(レブリン酸)に対するKi値が減少した5−アミノレ
ブリン酸デヒドラターゼ変異酵素を有し、しかも非光照
射下で生育し、5−アミノレブリン酸を生産する菌株C
R−520、およびKi、Km値に変化はないが、暗所
にても著量の5−アミノレブリン酸を生産する菌株CR
−533を分離することに成功した。CR−514、C
R−520、CR−533株のKi値およびKm値を表
2に示す。
【0087】比較例1 用いる菌株をRhodobacter sphaero
ides IFO12203とした以外は、実施例3と
同様の処理を行い、Ki値およびKm値を求めた。これ
らの値を表2に併せて示す。
【0088】比較例2 用いる菌株をRhodobacter sphaero
ides CR−450株とした以外は、実施例3と同
様の処理を行って、Ki値およびKm値を求めた。これ
らの値を表2に併せて示す。
【0089】
【表2】
【0090】表2から明らかなように、CR−520株
は、明らかに5−アミノレブリン酸に対するKm値が増
大した5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ変異酵素を
有し、しかもこの特徴に加えて、レブリン酸(5−アミ
ノレブリン酸デヒドラターゼ阻害剤)に対するKi値が
減少した5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ変異酵素
を有する菌株であることがわかる。
【0091】実施例4 2L容の振とうフラスコに500mLの培地1を調製し
た。これを121℃で15分間滅菌し、冷却した。
【0092】別に、実施例3で得られたCR−514、
CR−520、CR−533株を、それぞれ10mLの
培地1を分注して上記と同様にして滅菌した21mmφ
の試験管にて48時間、30℃、暗所にて振とう培養し
た。
【0093】この培養液を上記振とうフラスコに全量植
菌し、48時間、30℃、暗所にて振とう培養した後、
遠心分離により菌体を集めた。
【0094】集めた菌体を予め滅菌しておいた培地1の
150mLに湿菌体量約0.3g/10mLとなるよう
に再懸濁し、これにグリシンを30mMとなるように加
え、21mmφ試験管に10mLずつ分注した。それぞ
れの試験管について、レブリン酸添加濃度条件を変え
て、30℃、暗所にて振とう培養した。
【0095】培養15時間後および30時間後の培養液
中の5−アミノレブリン酸を岡山らの方法(CLINI
CAL CHEMISTRY.Vol.36.No.
8.p−1494,1990)により定量した。結果を
表3に示す。
【0096】比較例3 用いる菌株をRhodobacter sphaero
ides IFO12203とし、加えるレブリン酸を
表3に示したようにした以外は、実施例4と同様の処理
を行い、培養15時間後および30時間後の培養液中の
5−アミノレブリン酸を実施例4と同様にして定量し
た。結果を表3に併せて示す。
【0097】比較例4 用いる菌株をRhodobacter sphaero
ides CR−450株とし、加えるレブリン酸を表
3に示したようにした以外は、実施例4と同様の処理を
行い、培養15時間後および30時間後の培養液中の5
−アミノレブリン酸を実施例4と同様にして定量した。
結果を表3に併せて示す。
【0098】
【表3】
【0099】表3から明らかなように本発明の微生物の
例であるCR−520株は、非光照射下で生育でき、し
かも5−アミノレブリン酸に対するKm値が増大し、か
つレブリン酸に対するKi値が減少した5−アミノレブ
リン酸デヒドラターゼ変異酵素を有するため、非光照射
下において、5−アミノレブリン酸の生産性が向上して
おり、かつ生産のために必要なレブリン酸を減少させる
ことができる。
【0100】
【発明の効果】本発明の微生物は、生産する5−アミノ
レブリン酸2分子を縮合させてポルフォビリノーゲンに
転化する活性が著しく低いため、5−アミノレブリン酸
デヒドラターゼ阻害剤を、微生物自身の生育、活性を抑
制しない極く微量添加するだけで、5−アミノレブリン
酸の生産を行うことができる。したがって、5−アミノ
レブリン酸の生産性を非常に増大することができる。
【0101】また、本発明の、光合成細菌であって、非
光照射下で5−アミノレブリン酸を生産することができ
る微生物によれば、光を照射せずとも著量の5−アミノ
レブリン酸を蓄積することができるため、光照射しない
分だけ5−アミノレブリン酸の生産コストを低減させる
ことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 徹 埼玉県幸手市権現堂1134−2 株式会社コ スモ総合研究所研究開発センター内 (72)発明者 堀田 康司 埼玉県幸手市権現堂1134−2 株式会社コ スモ総合研究所研究開発センター内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ阻
    害剤に対する阻害物質定数が減少した5−アミノレブリ
    ン酸デヒドラターゼ変異酵素を有することを特徴とする
    5−アミノレブリン酸生産微生物。
  2. 【請求項2】 5−アミノレブリン酸に対するミカエリ
    ス定数が増加した5−アミノレブリン酸デヒドラターゼ
    変異酵素を有することを特徴とする請求項1記載の5−
    アミノレブリン酸生産微生物。
  3. 【請求項3】 光合成細菌であって、非光照射下で5−
    アミノレブリン酸を生産することができることを特徴と
    する5−アミノレブリン酸生産微生物。
  4. 【請求項4】 工業技術院生命工学工業技術研究所にF
    ERM P−14672として寄託されていることを特
    徴とする請求項1,2,3記載の5−アミノレブリン酸
    生産微生物。
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