JPH08193239A - 高強度・高熱膨張率鋼材とその製造方法 - Google Patents

高強度・高熱膨張率鋼材とその製造方法

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JPH08193239A
JPH08193239A JP429495A JP429495A JPH08193239A JP H08193239 A JPH08193239 A JP H08193239A JP 429495 A JP429495 A JP 429495A JP 429495 A JP429495 A JP 429495A JP H08193239 A JPH08193239 A JP H08193239A
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JP
Japan
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less
steel
thermal expansion
coefficient
austenite
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Application number
JP429495A
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English (en)
Inventor
Kenji Aihara
賢治 相原
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 降伏強度が343 MPa (35kgf/mm2) 以上、か
つ、室温〜373K(100℃) での熱膨張率が13×10-6/K 以
上である高熱膨張率の機械構造用鋼材の開発。 【構成】C:0.4 〜2%、Si:0.5 〜3.0 %、Mn:2.5
%未満、Cr:0.5 %未満、Al:1.5 %未満、Al+Si:0.
6 〜4.5 %、さらに必要により、B:0.0005%以上、N
i:3%以下、Mo:2%以下、Cu:2%以下、N:0.03
%以下の1種もしくは2種以上を含有し、および/また
はS:0.02〜0.2 %、Te:0.001 〜0.1 %、Pb:0.001
〜0.5 %、Ca:0.001 〜0.02%、およびBi:0.001 〜0.
5 %の被快削元素を1種もしくは2種以上 残部Feおよび不可避的不純物元素から成る鋼組成を有
し、体積率で30%以上70%以下のオーステナイトと残部
がベイナイトもしくはベイナイトとマルテンサイトであ
る複合組織から成る。製造に際しては、Ac1 点以上に加
熱した後、パーライトを生成する臨界冷却速度よりも大
きい冷却速度でMs点以上550 ℃以下の温度域に冷却し、
当該温度域で恒温保持した後、室温まで冷却する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、降伏強度が343 MPa (3
5kgf/mm2) 以上で、かつ、室温〜373K(100℃3での熱膨
張率が13×10-6/℃以上である高強度・高熱膨張率鋼材
とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、鋼と非鉄金属材料とが共用される
場合が増加してきている。特に各種機械装置の軽量化が
求められて、鋼の代用としてアルミニウムあるいはアル
ミニウム合金などの非鉄金属材料の使用が増加しつつあ
る。これらの軽量金属材料は強度が比較的低いために高
強度の鋼との併用で機械の強度と軽量化との両立がはか
られている。
【0003】これらの非鉄合金は一般に鋼よりも熱膨張
率が大きいため、熱膨張率の差異に起因する技術トラブ
ルがみられるが、熱膨張率は材料固有の物理的特性であ
るため、それを調整・変更することは不可能とされてい
た。
【0004】しかしながら、鋼に関してはフェライトと
よばれる体心立方の結晶構造をもつものとオーステナイ
トとよばれる面心立方の結晶構造をもつものの2種があ
って、室温では前者が、高温では後者が安定な相になっ
ている。オーステナイトはフェライトよりも熱膨張率が
大きいため、オーステナイト相の鋼 (例:オーステナイ
ト系ステンレス鋼) では熱膨張率が通常のフェライト相
の鋼の約1.5 倍程度の大きな熱膨張率をもっている。フ
ェライト相の鋼にオーステナイト相を混在させることが
できれば熱膨張率は両相の値の間で自由に変化させるこ
とができる。
【0005】そうした考えに基づく新技術の例として、
特開昭61−252912号公報にはクランクシャフトとアルミ
合金製シリンダブロックとの組み合わせにより軸受け部
のメタルクリアランスの温度変化を小さく抑えてメタル
軸受けの焼き付きを防止する技術が開示されており、そ
の実現手段として球状黒鉛鋳鉄製のクランク軸をオース
テンパ処理して残留オーステナイト量が30〜50%となる
ようにする、という提案が開示されている。
【0006】一方、熱膨張率の調整とは目的を異にして
いるが、特公昭58−42246 号公報において、C:0.4 〜
0.85%、Si:1.4 〜2.5 %、Mn:0.3 〜1.0 %の鋼をオ
ーステナイト化後380 〜480 ℃で恒温保持する処理によ
って残留オーステナイト量を30〜60%にした高強度鋼帯
の製造方法が開示されている。
【0007】この特公昭58−42246 号公報に開示される
方法は、精密機械用小物部品に使用される高強度熱処理
鋼帯の延性を向上させるために65〜85%のベイナイト組
織と残留オーステナイトの複合組織にするという製造方
法であり、本発明の対象とする熱膨張率増加のための方
法とは目的が全く異なる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ここに、本発明の一般
的な目的は、降伏強度が343 MPa (35kgf/mm2) 以上の機
械構造用鋼材で、かつ、室温〜373K(100℃) での熱膨張
率が13×10-6/K 以上である高熱膨張率鋼材とその製造
方法を提供することである。
【0009】そこで、本発明者は、かかる目的を達成す
べく種々検討を重ね、まず、従来技術の見直しと、整理
を次のように行った。 オーステナイト系ステンレス鋼(JIS−G4303 など) 特公昭58−42246 号公報 特開平1−108842号公報。
【0010】(1) オーステナイト系ステンレス鋼:鋼に
関してはフェライト相とよばれる体心立方の結晶構造を
もつものとオーステナイト相とよばれる面心立方の結晶
構造をもつものの2種があって、普通の鋼材では、室温
では前者が、高温では後者が安定な相になっている。し
かしながら、Cr、Niの多量適正含有で室温でもオーステ
ナイト相が安定になる合金鋼があり、オーステナイト系
ステンレス鋼として総称されている合金鋼があって、広
く使用されている。
【0011】オーステナイト相はフェライト相よりも熱
膨張率が大きいため、オーステナイト系ステンレス鋼の
熱膨張率はフェライト系の一般鋼材の熱膨張率よりも約
1.5倍大きい。したがって、オーステナイト系ステンレ
ス鋼を用いれば通常の機械構造用鋼よりも大きな熱膨張
率をもたせることができる。しかしながら、オーステナ
イト鋼は次の3つの欠点があるため、高熱膨張率の機械
構造用鋼としては使用できない: 降伏強度が低い:強度を考慮している機械構造用鋼で
は、多くの場合、降伏強度が343 MPa (35kgf/mm2) 以上
必要である [このことは、JIS-G3113(鉄筋コンクリート
用鋼棒) 、G4051(機械構造用炭素鋼鋼材) 、G4102 〜41
09 (各種の合金鋼材) などで示されている] しかしながら、オーステナイト系鋼材では降伏強度 (耐
力) は196 MPa(20kgf/mm2)前後であって、強度を考慮す
る必要のある機械構造用鋼としては強度が不足する。
【0012】高価である:オーステナイト鋼はオース
テナイト相を安定にするために高価なNi、Crを多量に添
加しており非常に高価であるため、機械構造用鋼として
使用困難である。
【0013】低温を経ると熱膨張率が低下する:機械
構造用鋼では、寒冷地でも使用できるように、−213K
(−60℃) まで冷却されたあとでも安定した大きな熱膨
張率の維持が必要であるが、オーステナイトステンレス
鋼のオーステナイト相はこうした実用に耐えない不安定
なものが多く、安定化をはかればNiをさらに多量に含有
させる必要があって極めて高価になる。
【0014】(2) 特公昭58−42246 号公報の方法:C:
0.4 〜0.85%、Si:1.4 〜2.5 %、Mn:0.3 〜1.0 %の
鋼であるため、焼入性が低くて TTT線図の臨界冷却速度
以上の冷却速度Ac3 点以上から380 〜480℃の温度域に
急冷することは、この方法におけるように板厚1mmの鋼
帯板だから可能なのであって、機械部品を対象とした場
合よほどの小物部品でなければならず、一般の機械部品
に対してこのような成分の鋼でそのような熱処理方法で
は、上述の本発明の目的を達成することは困難である。
【0015】(3) 特開平1−108342号公報:C:0.5 〜
2.5 %、Si:1.0 〜4.0 %、Mn:0.6 %以下の鋼である
ため、焼入性が低くて、そのため熱処理を行う機械部品
の場合よほどの小物部品でなければならず、一般の機械
部品を製作してもそのための熱処理方法を実現すること
は困難である。また、この発明は「鉄系鋳物」に関する
提案であるから、これによって熱間圧延鋼材が教えられ
ることはない。
【0016】かくして、本発明のより具体的目的は、安
価であって、機械構造用の熱間圧延材として利用できる
降伏強度が343 MPa (35kgf/mm2) 以上の機械構造用鋼材
で、かつ、室温〜373K(100℃) での熱膨張率が13×10-6
/℃以上である高熱膨張率鋼材とその製造方法を提供す
ることである。
【0017】
【課題を解決するための手段】ここに、本発明の要旨と
するところは、次の通りである。 (1) 質量%で、C:0.40〜2.0 %、Si:0.50〜3.0 %、
Mn:2.50%未満、Cr:0.50%未満、Al:1.5 %未満、Al
+Si:0.6 〜4.5 %、さらに必要により、B:0.01%以
下、Ni:3%以下、Mo:2%以下、Cu:2%以下、およ
びN:0.03%以下の1種もしくは2種以上を含有し、お
よび/またはS:0.02〜0.2 %、Te:0.001 〜0.1 %、
Pb:0.001 〜0.5 %、Ca:0.001 〜0.02%、およびBi:
0.001 〜0.5 %の被削性向上元素を1種もしくは2種以
上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素から成る
鋼組成を有し、体積率で30%以上70%以下のオーステナ
イトと残部がベイナイトもしくはベイナイトとマルテン
サイトである複合組織から成り、降伏強度が343 MPa (3
5kgf/mm2) 以上、かつ、室温〜100 ℃での熱膨張率が13
×10-6/℃以上である高強度・高熱膨張率鋼材である。
【0018】(2) 質量%で、C:0.4 〜2%、Si:0.5
〜3.0 %、Mn:2.5 %未満、Cr:0.5 %未満、Al:1.5
%未満、Al+Si:0.6 〜4.5 %、さらに必要により、
B:0.01%以下、Ni:3%以下、Mo:2%以下、Cu:2
%以下、およびN:0.03%以下の1種もしくは2種以上
を含有し、および/またはS:0.02〜0.2 %、Te:0.00
1 〜0.1 %、Pb:0.001 〜0.5 %、Ca:0.001 〜0.02
%、およびBi:0.001 〜0.5 %の被削性向上元素を1種
もしくは2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純
物元素から成る鋼組成を有する鋼を、Ac1 点以上に加熱
した後、パーライトを生成する臨界冷却速度よりも大き
い冷却速度でMs点以上550 ℃以下の温度域に冷却し、当
該温度域で恒温保持した後、室温まで冷却することを特
徴とする、体積率で30%以上70%以下のオーステナイト
と残部がベイナイトもしくはベイナイトとマルテンサイ
トである複合組織から成り、降伏強度が343 MPa (35kgf
/mm2) 以上、かつ、室温〜100 ℃での熱膨張率が13×10
-6/℃以上である高強度・高熱膨張率鋼材の製造方法で
ある。
【0019】
【作用】次に、本発明の作用について説明する。本発明
においては、特公昭58−42246 号公報に開示されている
ようなオーステンパ処理として知られている高温変態処
理によって、主としてベイナイトとオーステナイトとの
混合組織を得ようとするものであるが、公知の成分系の
鋼では、得られる残留オーステナイトの量が少なく、か
つ不安定で低温 [−213K (−60℃)]になると残留オース
テナイトがマルテンサイトに変態してしまって残留オー
ステナイトの量が一段と減少するため安定した高熱膨張
率の機械構造用鋼としての要求に応えられないことが判
明した。
【0020】そのため、本発明では、オーステンパ処理
による残留オーステンパ量を増加させ、かつ、低温にさ
らされてもマルテンサイト化しにくい安定な残留オース
テナイトを得るためには、SiとAlの複合添加とCr含有量
の低減を行うのである。
【0021】また、オーステンパ処理で安定な残留オー
ステナイトを多量に生成させるためにはオーステンパ処
理での冷却時に、パーライト変態が生起しないことが極
めて重要であるため、機械構造用鋼として充分な焼入性
を確保するために、パーライト変態を遅延する合金元素
であるMn、Ni、Mo、Cu、B、NをAl、Siとともに活用す
るのである。
【0022】一方、焼入性向上手段として最もよく用い
られているCrは含有量が多くなるとオーステンパ処理で
生成する残留オーステナイトが低温で不安定になってマ
ルテンサイト化しやすくなるので、その活用を制限する
のである。
【0023】このように、本発明は上述のような技術課
題に対して機械構造用熱間圧延鋼材の組成を適正に調整
すること、さらにその鋼に適正な熱処理を施すことによ
って、上記の技術課題を解決しようとするのであって、
ここに、本発明において鋼組成および製造条件を上述の
ように制限する理由を説明する。なお、本明細書におい
て特にことわりがない限り、鋼組成を示す「%」は「質
量%」である。
【0024】(1) C:0.40〜2.0 %、好ましくは0.80〜
1.50% C含有量は鋼材の要求される特性に応じて選定される
が、添加量が0.4 %以下では残留オーステナイト量が30
%未満になるため下限値を0.4 %とした。また、C含有
量が2%を越えると熱処理時にCが完全にはオーステナ
イト中に固溶しきれなくなるので、上限を2%とした。
【0025】目標とする残留オーステナイト量30%以上
を安定して実現するにはC量は0.80%以上が好ましく、
また熱間圧延鋼材として製造する際の熱間圧延時に割れ
を発生しないで安定して生産できるためにはC量は1.50
%以下が好ましい。
【0026】(2) Si:0.50〜3.0 %、好ましくは1.0 〜
2.5 % Siは通常の鋼において含有されるように脱酸剤としての
作用および固溶強化と焼入性向上による機械的性質改善
の作用もあるが、本発明ではそれらの作用よりも本発明
にかかる熱処理において生成させる残留オーステナイト
の量と安定性を増加させるうえで極めて重要な作用効果
を有している。
【0027】Si量が0.5 %以下では残留オーステナイト
の量が30%以上にはならない。また、Si量が3%を越え
ると鋼の融点が低下して熱間圧延時に割れ発生が頻発す
る。このためSi量は下限値を0.50%、上限値を3.0 %と
した。
【0028】Siの必要量は後述するAlとの複合作用があ
って、Al含有量との兼ね合いでその必要量が定まるが、
1.0 %以上あればAl量によらず安定した残留オーステナ
イト量が得られ、またSi量が2.5 %以下では高温に加熱
する熱間鍛造加工でも鍛造割れ発生の危険が少なくなる
ので、1.0 〜2.5 %を好ましい範囲とした。
【0029】(3) Mn:2.50%未満、好ましくは1.0 〜2.
0 % Mnは鋼の焼入性を向上させ機械部品を熱処理してベイナ
イトと残留オーステナイト (一部マルテンサイトを含ん
でもよい) の混合組織をつくるうえで不可欠の合金元素
である。CとSiだけでは焼入性が不十分で多くの場合、
熱処理時にパーライト変態をともなってその後のベイナ
イトと残留オーステナイトの生成に支障をきたすので、
一般的用途には1%以上の含有が好ましい。添加量が2.
5 %を越えると熱間圧延時に割れを発生しやすくなり、
2.0 %を越えると残留オーステナイト生成のための所要
熱処理時間が長くなるので1.0 〜2.0 %を好ましい範囲
とした。
【0030】(4) Cr:0.5 %未満、好ましくは0.10%以
下 Crは一般に焼入性向上手段として最もよく用いられてい
る合金元素であるが、本発明の場合、Cr含有量が0.50%
以上含有するとオーステンパ処理で生成する残留オース
テナイトの量が非常に少なくなり、しかも不安定になる
ためベイナイトとマルテンサイトの混合組織になってし
まう。低温ではさらに不安定になってマルテンサイト化
しやすくなるので、残留オーステナイトが−60℃でも安
定であるためには0.10%以下が好ましい。
【0031】(5) Al:1.5 %未満、好ましくは0.05〜1.
0 % Alは残留オーステナイトの量と安定性を向上させるに有
効な元素である。Alは一般に脱酸剤として鋼中に添加さ
れるが、その程度の含有では本発明の目的である30%以
上の安定な残留オーステナイトを生成させるのに有効な
作用効果が少なく、残留オーステナイトの安定化のため
には0.05%以上の含有が望ましい。一方、多量にAlを添
加すると熱間加工性が劣化するのでAl含有は1.5 %未
満、好ましくは1.0 %以下とする。
【0032】(6) Al+Si:0.6 〜4.5 %、好ましくは1.
05〜3.5 % オーステンパ処理後の鋼材もしくは鋼部品が低温にさら
されてもマルテンサイト化しにくい安定な残留オーステ
ナイトであるためには、SiとAlの複合添加が単独添加よ
りも有効であることが判明した。こうした複合添加の効
果はAl+Siが0.6 %以上になると現われるが、特に1.05
〜3.5 %で作用効果が顕著であるので、1.05〜3.5 %を
好ましい範囲とした。また、Al+Siが 4.5%を越えると
極端に熱間加工性が劣化するので、上限を4.5 %とし
た。
【0033】(7) B:0.01%以下、好ましくは0.001 〜
0.005 %、Ni:3.0 %以下、Mo:2.0%以下、Cu:2.0
%以下およびN:0.03%以下の1種もしくは2種以上 これらの合金元素はいずれも焼入性向上のために添加す
る元素である。本発明での熱処理はオーステナイトをMs
点〜550 ℃の温度域で恒温保持して30〜70%の残留オー
ステナイトを含む組織を生成するものであるから、オー
ステナイトが当該温度域にまで冷却される際にパーライ
トを生成するとたちまち残留オーステナイトの量が低下
するので、対象となる鋼材あるいは鋼部品の臨界冷却速
度をパーライトを生成する臨界冷却速度よりも小さくし
ておく必要がある。このためには、従来から適用されて
いる焼入性向上元素を添加含有させれば良いわけである
が、本発明においてはCrのところでみられたような残留
オーステナイトの安定性を損なうものであってはならな
い。同時に、Ms点〜550 ℃の温度域で恒温保持でオース
テナイトからベイナイトに変態しつつ残留オーステナイ
トの安定化が進むわけであるが、恒温保持時間が長くな
ると残留オーステナイトがその温度域でフェライトと炭
化物に熱分解してくるので焼入性向上元素が恒温保持で
オーステナイトからベイナイトに変態する時間をむやみ
に長くするようでは逆効果である。すなわち、本発明で
使用されるべき合金元素は、パーライト変態に対してそ
れを遅延させるという意味での焼入性向上作用が顕著で
あると同時に、恒温保持でオーステナイトからベイナイ
トに変態する際の変態時間が長くならないという、いわ
ばベイナイト焼入性の上昇が少ないとでも言うべき逆作
用をあわせもつものでなければならない。
【0034】こうした目的に合うものとして上記の5元
素が適正であると選択された。ただし、これらの元素と
いえども含有量が多すぎると恒温保持でオーステナイト
からベイナイトに変態する際の変態時間が長くなりすぎ
るので、含有量の上限を各々の数値に限定した。
【0035】(8) S:0.02〜0.2 %、Te:0.001 〜0.1
%、Pb:0.001 〜0.5 %、およびCa:0.001 〜0.02%、
Bi:0.001 〜0.5 %から成る群から選んだ被削性向上元
素を1種もしくは2種以上 機械構造用鋼では部品加工の工程の中でほとんどといっ
ていいほど何らかの機械加工が施される。その場合いつ
も問題になるのが被削性であり、その向上は場合によっ
ては必須課題となることがある。
【0036】したがって、本発明においても既知のよう
な被削性向上が可能か否かは重要である。調査検討の結
果、本発明の鋼においてはこれら既知の被削性向上手段
は本発明の効果に何ら悪影響のないことが判明した。
【0037】(9) Ac1 点以上、好ましくはAc3 点以上も
しくはAcm 点以上に加熱:鋼もしくは鋼部品を熱処理し
て体積率で30〜70%のオーステナイト組織を混在させる
ために、まず最初に必要な熱処理条件は鋼をオーステナ
イト化組織にすることである。
【0038】この場合、Ac3 点以上もしくはAcm 点以上
に加熱して完全に全体をオーステナイト化することが望
ましいが、場合によってはAc1 点〜Ac3 点もしくはAcm
点の中間温度域に加熱することも可能である。
【0039】(10)パーライトを生成する臨界冷却速度よ
りも大きい冷却速度で冷却:オーステナイト化加熱の
後、オーステナイトをベイナイトと残留オーステナイト
との混合組織に変態させるためには、その変態に先立っ
てオーステナイトから冷却する途上でパーライトが生成
しないように臨界冷却速度よりも大きい冷却速度で冷却
する必要がある。なぜなら、パーライトが生成してしま
うと未変態のオーステナイトの量が低下するため、その
後の恒温変態で生成できる残留オーステナイトの量が低
下してしまうからである。
【0040】(11)Ms点以上550 ℃以下の温度域に冷却
し、当該温度域で恒温保持した後、室温まで冷却する:
オーステナイトからの急冷温度をMs点以上550 ℃以下と
したのは、ベイナイト組織を変態生成させるためであ
る。Ms点以上なのは、この冷却過程でマルテンサイト変
態を起こさせないためであり、550 ℃以下なのはベイナ
イト変態を起こさせるためで、これ以上の温度ではパー
ライト変態の起こる温度域に入ってしまうからである。
【0041】当該温度域での恒温保持は、この温度域で
オーステナイトを恒温保持してベイナイトを生成させ、
それによって未変態オーステナイトを安定化して残留オ
ーステナイトにするためである。ベイナイト生成量が少
なすぎると未変態オーステナイトの安定化が不十分にな
り残留オーステナイトとして安定に存在し得なくなるた
め、充分な量のベイナイトの変態生成に必要な時間の恒
温保持が必要であるが、この必要時間は合金成分含有量
によって異なるので鋼種成分によって適正時間を見極め
なければならない。
【0042】(12)体積率で30%以上70%以下のオーステ
ナイトと残部がベイナイトもしくはベイナイトとマルテ
ンサイトである複合組織とする:室温〜100 ℃での熱膨
張率が13×10-6/℃以上にするためには、体積率で30%
以上のオーステナイトが残留存在していなければならな
い。一方、残留オーステナイトの量が70% (体積) を越
えると、機械構造用鋼として必要な343 MPa(35kgf/mm2)
以上の降伏強度をもたせることが困難になる。
【0043】(13)室温〜100 ℃での熱膨張率が13×10-6
/℃以上:各種機械装置の軽量化が求められて鋼とアル
ミニウムあるいはアルミニウム合金などの非鉄金属材料
との共用をはかる場合、これらの軽量金属材料は熱膨張
率が鋼より大きいためその不一致からさまざまな技術的
トラブルが発生するが、非鉄金属材料の熱膨張率の低下
には技術的限界があって今のところ完全には鋼の熱膨張
率と同じにはならない。そこで、鋼の熱膨張率を13×10
-6/℃以上にすることによって、両金属の熱膨張の差異
の解消がはかられる。
【0044】(14)降伏強度が343 MPa(35kgf/mm2)以上:
強度を考慮している機械構造用鋼では、多くの場合、降
伏強度が343 MPa(35kgf/mm2)以上必要である [このこと
は、JIS-G 3113 (鉄筋コンクリート用鋼棒) 、G4051(機
械構造用炭素鋼鋼材) 、G 4102〜4109 (各種の合金鋼鋼
材) 、などで示されている] 。したがって、機械構造用
鋼への用途を想定している本発明では、降伏強度は343
MPa(35kgf/mm2)以上なければならない。次に、実施例に
関連させて本発明の作用効果をさらに具体的に説明す
る。
【0045】
【実施例】
(実施例1)表1に示した各鋼を100 kg誘導加熱溶解炉で
溶製した後、得られたインゴットを充分に均熱処理して
から熱間鍛造で50mm×50mm断面の角材を鍛伸した。
【0046】鋼種番号1、7、11、13、14は、いずれも
本発明鋼の成分範囲からはずれるものである。なお、Ac
1 、Ac3 、Ms点は鋼種番号15のものについて云えば、そ
れぞれ1008K (Ac1点) 、1073K (Ac3点) 、そして553K
(Ms点) であった。
【0047】表2に製造条件の組み合わせを示す。製造
条件1、2、3はいずれも本発明の方法である。製造条
件4、5はオーステンパ処理での塩浴中への急冷温度が
本発明からはずれているものである。
【0048】製造条件6は、寒冷地での使用環境を考慮
して、213K (−60℃) で2時間冷却保持したサブゼロ処
理 (深冷処理) を施し、製造条件1と比較してみたもの
である。
【0049】残留オーステナイト量はフェライト相およ
びオーステナイト相からのX線の回折強度積分値から求
めた。熱膨張率は室温〜373K(100℃) の間の線膨張係数
から求めた。表3に実施例の結果をまとめて示す。
【0050】試験番号1では、C量が不足しているため
残留オーステナイト量が少なく、熱膨張率が小さすぎ
る。試験番号11は、Mn量が多すぎるため、熱間鍛造時に
熱間加工割れを発生し、実用に耐えられなかったもので
ある。試験番号13は、Cr含有量が多すぎたため、残留オ
ーステナイト量が少なく、熱膨張率が小さすぎたもので
ある。試験番号14および試験番号28の鋼14および鋼28で
は、Si+Alの量が少なかったため、残留オーステナイト
量が少なく、熱膨張率が小さすぎたものである。
【0051】試験番号31は、SiとAlの量が多すぎたた
め、鋼塊の熱間鍛造時に激しい割れ発生をおこし、熱間
圧延鋼材を製造することができなかった。試験番号33と
34は、試験番号13、14と同じくCr量の多すぎた鋼13とSi
+Alの量が少なかった鋼14について、オーステンパ処理
後−60℃でサブゼロ処理した場合であるが、いずれの場
合もオーステンパで生成した残留オーステナイトの低温
における安定性は極めて不安定で、サブゼロでほとんど
の残留オーステナイトがマルテンサイトに変態してしま
う。このため、熱膨張率も極めて小さな値に下がってし
まう。
【0052】試験番号40はオーステンパでの恒温保持温
度が低すぎて残留オーステナイトが生成せずにマルテン
サイトになったものである。試験番号41はオーステンパ
での恒温保持温度が高すぎてパーライト変態が進行し残
留オーステナイトが生成しなかったものである。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【発明の効果】以上に説明したごとく、本発明によれば
熱処理で極めて安定な残留オーステナイトを多量に生成
させ、それによって従来の機械構造用鋼では実現し得な
かった大きな熱膨張率と高い降伏強度を実現することが
できる。本発明により、降伏強度が343 MPa(35kgf/mm2)
以上の機械構造用鋼で、かつ、室温〜373K(100℃) での
熱膨張率が13×10-6/K以上である高強度・高熱膨張率
鋼、およびその鋼からなる部品を生産供給することが工
業的に可能になり、産業上極めて有用な効果がもたらさ
れる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/60

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C:0.40〜2.0 %、Si:0.50〜3.0 %、Mn:2.50%未
    満、 Cr:0.50%未満、Al:1.5 %未満、Al+Si:0.6 〜4.5
    %、 残部Feおよび不可避的不純物元素から成る鋼組成を有
    し、体積率で30%以上70%以下のオーステナイトと残部
    がベイナイトもしくはベイナイトとマルテンサイトであ
    る複合組織から成り、降伏強度が343 MPa (35kgf/mm2)
    以上、かつ、室温〜100 ℃での熱膨張率が13×10-6/℃
    以上である高強度・高熱膨張率鋼材。
  2. 【請求項2】 前記鋼組成が、さらに、質量%で、B:
    0.01%以下、Ni:3.0 %以下、Mo:2.0 %以下、Cu:2.
    0 %以下およびN:0.03%以下から成る群から選んだ1
    種もしくは2種以上を含有する請求項1記載の高強度・
    高熱膨張率鋼材。
  3. 【請求項3】 前記鋼組成が、さらに、質量%で、S:
    0.02〜0.2 %、Te:0.001 〜0.1 %、Pb:0.001 〜0.5
    %、Ca:0.001 〜0.02%、およびBi:0.001〜0.5 %か
    ら成る群から選んだ1種もしくは2種以上の被削性向上
    元素を含有する、請求項1または2記載の高強度・高熱
    膨張率鋼材。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかに記載の鋼
    組成を有する鋼を、Ac1 点以上に加熱した後、パーライ
    トを生成する臨界冷却速度よりも大きい冷却速度でMs点
    以上550 ℃以下の温度域に冷却し、当該温度域で恒温保
    持した後、室温まで冷却することを特徴とする、体積率
    で30%以上70%以下のオーステナイトと残部がベイナイ
    トもしくはベイナイトとマルテンサイトである複合組織
    から成り、降伏強度が343 MPa (35kgf/mm2) 以上、か
    つ、室温〜100 ℃での熱膨張率が13×10-6/℃以上であ
    る高強度・高熱膨張率鋼材の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012521488A (ja) * 2009-03-26 2012-09-13 フェデラル−モーグル ブルシェイド ゲーエムベーハー ピストンリングとシリンダーライナの製造用窒化可能な鋼組成物
CN105063468A (zh) * 2015-07-20 2015-11-18 安徽蓝博旺机械集团合诚机械有限公司 一种叉车驱动桥半轴的锻造工艺

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