JPH0822220B2 - 酢酸菌を利用した酒類の不快臭の低減方法 - Google Patents

酢酸菌を利用した酒類の不快臭の低減方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、中鎖アルデヒドを含有する酒類の不快臭の
低減方法に関する。
[従来の技術] 酒類中の中鎖アルデヒドに起因する不快臭について
は、日本農芸化学会誌 第52巻 第9号、1978、P417の
左欄L2〜右欄5に「壜(缶)詰めしたビールを保存する
と新鮮な香りが消失し、しだいに劣化臭が感じられよう
になる。この劣化臭の原因物質として、トランス−2−
ノネナールなど各種のアルデヒドの存在が示され、また
これらの化合物が生成してくる機構についても検討がな
されている。それらの考え方の一つに、ビール製造工程
中の製麦過程あるいは仕込過程で大麦脂質が酵素的な変
化を受け、その生成物の一部が可溶化状態のまま製品ビ
ールにまで移行し、(壜(缶)詰め後の保存中に化学変
化でトランス−2−ノネナールなどのアルデヒドを徐々
に生成してくるという説がある」との記載が認められ、
従来から問題となっている。
一方、本出願人は食品中の中鎖アルデヒドに起因する
不快臭を低減するための方法の1つとして酢酸菌を利用
する方法を開発し、先に出願した(特願昭61−137745
号)。
そこで、本発明者等は、上記した発明を利用して、前
記した酒類の中鎖アルデヒドに起因する不快臭を低減し
ようと試みた。
ところが、該酒類に酢酸菌を利用して処理したとこ
ろ、確かに中鎖アルデヒドに起因する不快臭については
低減されたものの、酒類中のアルコールの含有率が低下
するとの問題点に遭遇した。
[問題点を解決するための手段] 本発明者等は、上記した問題点を解決するために鋭意
研究を行なった。その結果、上記酒類中のアルコール含
有率の低下は、特開昭58−152479号等において知られて
いる、酢酸菌の菌体中に存在する膜結合型アルコール脱
水素酵素の作用に基づいていることを知った。
そこで、本発明者等は、中鎖アルデヒドに起因する不
快臭を低減する作用を保持させたまま、該膜結合型アル
コール脱水素酵素を失活させる方法について研究した。
その結果、該膜結合型アルコール脱水素酵素は60℃以上
において失活するが、酢酸菌による中鎖アルデヒドに起
因する不快臭を低減する作用は、5〜80℃の範囲で効果
を有するとの知見を得た。該知見から、酢酸菌と中鎖ア
ルデヒドを含有する酒類とを接触させるに当って、予め
酢酸菌を60〜90℃の温度条件で加熱処理することによ
り、酒類中のアルコール含有率を低下させることなく酒
類中の中鎖アルデヒドに起因する不快臭を低減すること
ができるとの知見を得たのである。
上記した知見を基に完成された本発明の要旨は、酢酸
菌を60〜90℃の温度条件にて加熱処理して膜結合型アル
コール脱水素酵素を失活させた後、該酢酸菌と中鎖アル
デヒドを含有する酒類とを接触させることを特徴とする
酒類の不快臭の低減方法にある。
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
本発明において、不快臭を低減する対象となる食品
は、中鎖アルデヒドを含有する酒類である。ここで中鎖
アルデヒドを含有する酒類とは、アルコールを含有し、
且つ中鎖アルデヒドを量の多少を問わず含有するもので
あれば特に制限はない。例えば、ビール、日本酒、ワイ
ン、ウイスキー、ウオッカ、焼酎等或いはそれらの製造
過程のものが例示できる。また、これらを素材として使
用する種々の食品にも適用できる。
中鎖アルデヒドとしては、例えばn−ヘキサナール、
n−ヘプタナール、n−オクタナール、n−ノナナー
ル、n−デカナール、トランス−2−ノネナール等が挙
げられる。
本発明においては、中鎖アルデヒドを含有する酒類と
酢酸菌とを接触させるが、該接触を行うに当っては、予
め酢酸菌を60〜90℃好ましくは60〜65℃の温度条件で加
熱処理し、酢酸菌中の膜結合型アルコール脱水素酵素を
失活させることが重要である。
該温度が90℃を超えると中鎖アルデヒドに起因する不
快臭を低減する効果が低下する傾向にあり、一方該温度
が60℃を下回ると酢酸菌中の膜結合型アルコール脱水素
酵素を失活させることができず、その結果酒類中のアル
コール含有率が低下してくる。
この点を明らかにするために以下に比較実験を掲げ
る。
比較実験 <酢酸菌が中鎖アルデヒドを酸化する場合における安定
温度> グルコノバクター サブオキシダンス IFO 12528の
湿菌体4gに水20mlを加え、菌体を均一に分散させ、菌液
を得た。上記菌液1mlをフラレコ用試験官に採取したも
のを用意した。次いで、それらを30℃、40℃、50℃、60
℃、65℃、70℃、80℃、90℃、100℃の各温度に15分間
放置した後、ただちに冷却し、菌液を得た。
一方、脱脂大豆100gに対して6倍加水し、ミキサーで
1分間磨砕して濾過した後、100℃、10分間の条件で加
熱処理し豆乳を得た。
上記豆乳20mlを50ml容バイアルビンに採取したものを
用意した。次いで、それらに菌液0.25mlを添加した後、
30℃で30分間反応させ直ちに80℃、15分間放置した。そ
の後、ヘッドスペースガス5mlを採取し、カラム温度100
℃、検出温度250℃、感度103×16、N2ガス流量40ml/min
の条件で気液クロマトグラフィーを行いn−ヘキサナー
ルを酸化する場合の安定温度を調べた。第1図に30℃に
おける活性を100%として表示した。
<酢酸菌(膜結合型アルコール脱水素酵素)がアルコー
ルを酸化する場合における安定温度> グルコノバクター サブオキシダンス IFO 12528の
湿菌体4gに水20mlを加え、菌体を均一に分散させ、菌液
を得た。上記菌液1mlをフラレコ用試験官に採取したも
のを用意した。次いで、それらを30℃、40℃、50℃、60
℃、70℃、80℃、90℃、100℃の各温度に15分間放置し
た後、ただちに冷却し、菌液を得た。
0.03%のエタノール溶液20mlを50ml容バイアルビンに
採取したものを用意した。次いで、それらに菌液0.25ml
を添加した後、30℃で120分間反応させ直ちに80℃、15
分間放置した。その後、冷却して室温で15分間放置し
た。上記反応液のうち2μlを採取し、カラム温度100
℃、検出温度250℃、感度103×16、N2ガス流量40ml/min
の条件で気液クロマトグラフィーを行いエタノールを酸
化する場合の安定温度を調べた。第2図に30℃における
活性を100%として表示した。
第1図から酢酸菌は30〜90℃の温度領域において、中
鎖アルデヒドを酸化する作用を有することが分る。一
方、第2図から30〜60℃の温度領域において、アルコー
ルを酸化する作用を有することが分る。従って、酢酸菌
により酒類を処理するに当って、予め酢酸菌を60〜90℃
の温度領域で加熱処理することにより、酒類中のアルコ
ール含有率を低下させることなく、該酒類中の中鎖アル
デヒドを分解し得ることが明白となった。
本発明に利用できる酢酸菌の種類は特に制限されな
い。以下に酢酸菌を例示する。
(アセトバクター属) アセトバクター アセチ(Acetobacter aceti)IFO 328
1 アセトバクター アセチ(Acetobacter aceti)IFO 328
3 アセトバクター アセチ(Acetobacter aceti)IFO 328
4 アセトバクター アセチゲネス(Acetobacter acetigen
us)IFO 3279 アセトバクター アセトサス(Acetobacter acetosus)
IFO 3296 アセトバクター アスセンデス(Acetobacter asceden
s)IFO 3188 アセトバクター アスセンデス(Acetobacter asceden
s)IFO 3299 アセトバクター オウランティウス(Acetobacter aura
ntius)IFO 3245 アセトバクター オウランティウス(Acetobacter aura
ntius)IFO 3247 アセトバクター オウランティウス(Acetobacter aura
ntius)IFO 3248 アセトバクター クティンギアナス(Acetobacter kutz
ingianus)IFO 3222 アセトバクター ランセンス(Acetobacter rancens)I
FO 3297 アセトバクター ランセンス(Acetobacter rancens)I
FO 3298 アセトバクター キシリナス(Acetobacter xylinus)I
FO 3288 アセトバクター パスツリアナス(Acetobacter pasteu
rianus)IFO 3223 アセトバクター タービダンス(Acetobacter turbidan
s)IFO 3225 (グルコノバクター属) グルコノバクター メラノゲナス(Gluconobacter mela
nogenus)IFO 3294 グルコノバクター オキシダンス(Gluconobacter oxyd
ans)IFO 3287 グルコノバクター ジオキシアセトニカス(Gluconobac
ter dioxyacetonicus)IFO 3271 グルコノバクター ジオキシアセトニカス(Gluconobac
ter dioxyacetonicus)IFO 3272 グルコノバクター ジオキシアセトニカス(Gluconobac
ter dioxyacetonicus)IFO 3274 グルコノバクター セリナス(Gluconobacter cerinu
s)IFO 3262 グルコノバクター セリナス(Gluconobacter cerinu
s)IFO 3263 グルコノバクター セリナス(Gluconobacter cerinu
s)IFO 3264 グルコノバクター セリナス(Gluconobacter cerinu
s)IFO 3265 グルコノバクター セリナス(Gluconobacter cerinu
s)IFO 3266 グルコノバクター セリナス(Gluconobacter cerinu
s)IFO 3267 グルコノバクター セリナス(Gluconobacter cerinu
s)IFO 3268 グルコノバクター セリナス(Gluconobacter cerinu
s)IFO 3269 グルコノバクター セリナス(Gluconobacter cerinu
s)IFO 3270 グルコノバクター グルコニカス(Gluconobacter gluc
onicus)IFO 3285 グルコノバクター グルコニカス(Gluconobacter gluc
onicus)IFO 3286 グルコノバクター アルビダス(Gluconobacter albidu
s)IFO 3251 グルコノバクター アルビダス(Gluconobacter albidu
s)IFO 3253 グルコノバクター サブオキシダンス(Gluconobacters
uboxydans)IFO 3290 グルコノバクター サブオキシダンス(Gluconobacters
uboxydans)IFO 3291 グルコノバクター サブオキシダンス(Gluconobacters
uboxydans)IFO 12528 本発明における酢酸菌と中鎖アルデヒドを含有する酒
類との接触は、例えば次の2つの方法により行われる。
第一の方法として、酢酸菌を分散させた菌液又は菌体
自体を中鎖アルデヒドを含有する酒類に添加し、均一に
混合することにより酢酸菌と酒類とを接触させる。この
場合、混合した酢酸菌を接触後、酒類中から除去するこ
とは必ずしも必要ではないが、該酒類が透明なものであ
る場合には、酢酸菌を除去することが好ましく、この場
合メンブランフィルター等を用いて濾過する方法等が例
示できる。
第二の方法として、酢酸菌を固定化し、固定化した酢
酸菌と中鎖アルデヒドを含有する酒類とを接触させる。
酢酸菌を固定化する方法は特に制限されず、例えば共
有結合法、イオン結合法、物理的吸着法に代表される担
体結合法、架橋法、格子型、マイクロカプセル型等
の包括法が例示できる。中でも、処理時に目詰りが発生
する虞がない点、固定化収率が高い点等で包括法が最も
好ましい。
尚、上記酢酸菌と酒類との接触に当り、上記した第一
の方法を採用する場合には、約5〜80℃、好ましくは30
〜60℃の温度域、pHが8.5以下好ましくは2.5〜7.5のpH
域で実施することが適当である。一方、第二の方法を採
用する場合には、5〜60℃の温度域、8.0以下のpH域で
実施する。
[実施例] 以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1 アセトバクター アセチIFO 3284の湿菌体1gを試験
管に取り、これに水11mlを加え、均一に分散させて菌液
を得た。その後、該菌液を60℃の温度で30分間加熱処理
し膜結合型アルコール脱水素酵素を失活させた。
次いで、常温で6ケ月間保存した市販のビール(アル
コール含有率4.5%、pH4.3)200mlに上記菌液2.5mlを加
え、30℃、30分間反応させた。得られたビールは、トラ
ンス−2−ノネナールなどの中鎖アルデヒドに起因する
不快臭が感じられないものであった。また、処理後のビ
ールのアルコール含有率は4.5%であり、アルコール含
有率は全く低下していなかった。
比較例1 実施例1と同様な菌液を加熱処理しなかったこと(膜
結合型アルコール脱水素酵素を失活させないこと)の外
は、実施例1と同様な方法でビールの処理を行なった。
得られたビールは、トランス−2−ノネナールなどに
中鎖アルデヒドに起因する不快臭は、感じられなかった
ものの、アルコール含有率は2.0%であり、アルコール
含有率が低下したものであった。
上記したように実施例1により得られたビールのアル
コール含有率が4.5%であるのに対して、比較例1によ
り得られたビールのアルコール含有率が2.0%であっ
た。このことから、本発明によれば、酒類のアルコール
含有率を低下させることなく、酒類の中鎖アルデヒドに
起因する不快臭を低減し得ることが明白となった。
実施例2 酢酸菌の菌体(アセトバクター アセチIFO 3284)2
gに水道水22mlを加え、60℃で30分間加熱処理し、次い
で、均一に懸濁させ菌液を調製する。その後、該菌液を
60℃に温度調節する。次いで、該菌液と1.5重量%のア
ルギン酸塩溶液とを1:1.5の割合いで混合し10mlの注射
器に詰める。次いで、15重量%の塩化カルシウム溶液に
注射器より滴下し、5℃で一昼夜撹拌する。以上によ
り、酢酸菌の菌体を含有する粒状ゲル(固定化した酢酸
菌)約55gを得る。次いで、500ml容ビーカーに粒状ゲル
50gと実施例1と同様なビール200mlとを入れ、30℃、30
分間反応させた。得られたビールは、トランス−2−ノ
ネナールなどの中鎖アルデヒドに起因する不快臭が感じ
られないものであった。また、処理後のビールのアルコ
ール含有率は4.5%であり、アルコール含有率は全く低
下していなかった。
[発明の効果] 以上詳述したように本発明によれば、酢酸菌を60〜90
℃の温度条件にて加熱処理して膜結合型アルコール脱水
素酵素を失活させた後、該酢酸菌と、中鎖アルデヒドを
含有する酒類とを接触させることにより、酒類中のアル
コール含有率を低下させることなく、製造過程或いは保
存時等に生成される中鎖アルデヒドに起因する酒類の不
快臭を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は中鎖アルデヒドを酸化する場合における安定温
度を示すものであり、第2図はアルコールを酸化する場
合における安定温度を示すものである。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酢酸菌を60〜90℃の温度条件にて加熱処理
    して膜結合型アルコール脱水素酵素を失活させた後、該
    酢酸菌と中鎖アルデヒドを含有する酒類とを接触させる
    ことを特徴とする酒類の不快臭の低減方法。
  2. 【請求項2】該酢酸菌と中鎖アルデヒドを含有する酒類
    との接触を、酢酸菌を分散させた菌液又は菌体自体を中
    鎖アルデヒドを含有する酒類に添加することにより行う
    ものであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載
    の酒類の不快臭の低減方法。
  3. 【請求項3】酢酸菌と中鎖アルデヒドを含有する酒類と
    の接触を、5〜80℃で行うことを特徴とする特許請求の
    範囲第2項記載の酒類の不快臭の低減方法。
  4. 【請求項4】酢酸菌と中鎖アルデヒドを含有する酒類と
    の接触を、pH8.5以下で行うことを特徴とする特許請求
    の範囲第2項記載の酒類の不快臭の低減方法。
  5. 【請求項5】酢酸菌が固定化されたものであることを特
    徴とする特許請求の範囲第1項記載の酒類の不快臭の低
    減方法。
  6. 【請求項6】酢酸菌と中鎖アルデヒドを含有する酒類と
    の接触を、5〜60℃で行うことを特徴とする特許請求の
    範囲第5項記載の酒類の不快臭の低減方法。
  7. 【請求項7】酢酸菌と中鎖アルデヒドを含有する酒類と
    の接触を、pH8.0以下で行うことを特徴とする特許請求
    の範囲第5項記載の酒類の不快臭の低減方法。
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