JPH08295653A - シクロヘキサントリカルボン酸誘導体、その製造方法及び選択的金属イオン分離剤 - Google Patents

シクロヘキサントリカルボン酸誘導体、その製造方法及び選択的金属イオン分離剤

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JPH08295653A
JPH08295653A JP2238896A JP2238896A JPH08295653A JP H08295653 A JPH08295653 A JP H08295653A JP 2238896 A JP2238896 A JP 2238896A JP 2238896 A JP2238896 A JP 2238896A JP H08295653 A JPH08295653 A JP H08295653A
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秀樹 杉原
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雄一郎 姫田
Tatsuyoshi Ou
振賀 王
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 種々の金属イオンが存在する水溶液から、特
定の金属イオンを選択的に分離し、かつ高い輸送速度を
もつ新規な化合物、及びこのものから成る選択的金属イ
オン分離剤を提供する。 【解決手段】 一般式 【化1】 (Yは−OR又は−NHR、Rは炭化水素基又は含酸素
炭化水素基)で表わされる化合物、その製造方法並びに
これらから成る選択的金属イオン分離剤とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規なシクロヘキサ
ントリカルボン酸誘導体、その製造方法並びにそれから
成る選択的金属イオン分離剤に関するものである。さら
に詳しくいえば、本発明は、種々の金属イオンが存在す
る水溶液から、特定の金属イオンを選択的かつ連続的に
抽出することができ、効率よく輸送する能力をもつケン
プ酸モノエステル、モノアミド及びその立体異性体、そ
の製造方法並びにこのものを用いた金属イオンを選択的
に抽出し、輸送しうる分離剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】銀、金などの貴金属や、銅、鉛、水銀な
どの有害金属を含む水溶液中からこれらの金属を分離す
る技術は、資源の回収再利用及び環境汚染防止の観点か
ら極めて重要である。これまで、これらの金属の分離方
法としては、金属含有水溶液を陽イオン交換樹脂、活性
炭、金属キレート化剤などに接触させて、金属をこれら
に吸着させ分離する方法が主流をなしていたが、近年、
液膜を通してイオン輸送剤により、金属イオンを選択的
に抽出し、輸送する方法が連続的操作が可能であり、効
率的であることから注目されるようになった。
【0003】これまで、このイオン輸送剤としては、水
銀のみを捕捉するものとしてトロポノイド付加ジチオク
ラウンエーテル類が、鉛のみを捕捉するものとして環状
ポリエーテルジカルボン酸が、水銀のみを捕捉するもの
として8‐キノリル基をもつメチオニン誘導体が知られ
ており、さらに本発明者らによって銅のみを選択的に捕
捉するものとして、α‐アミノ酸ジアミド誘導体が提案
されている(特開平5−163243号公報)。他方、
ケンプ酸は、分子認識、自己集積現象の研究に利用され
ていたが[「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル
・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)」,第
110巻,第5192ページ]、金属イオンとの関係に
ついての研究はほとんど行われていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、複数の金属
イオン、特にアルカリ金属イオン以外の金属イオンに対
し、選択的な優れた分離能を示し、かつ高い輸送速度を
有する新規な化合物を提供することを目的としてなされ
たものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、これまで
分子認識、自己集積現象の研究に用いられていたケンプ
酸が、空間的配置の制御されたカルボキシル基を有する
ことから、種々の金属イオンの認識に応用しうるのでは
ないかと考え、それに特定のエステル又はアミド構造を
導入したもの及びそれらの立体異性体について、各種イ
オンに対する挙動を調べたところ、このものはアルカリ
金属イオンに対しては低い輸送能を示すが、アルカリ土
類金属イオンや重金属イオンに対しては、意外にも非常
に高い輸送能を示すことを見出し、この知見に基づいて
本発明をなすに至った。
【0006】すなわち、本発明は、一般式
【化6】 (式中のYは−OR基又は−NHR基であり、Rは炭化
水素基又は含酸素炭化水素基である)で表わされる化合
物、及びこのものから成る選択的金属イオン分離剤を提
供するものである。この一般式(I)で表わされる化合
物の中で、一般式
【化7】 (式中のYは、前記と同じ意味をもつ)で表わされるc
is,cis‐1,3,5‐トリメチル‐1,3,5‐
シクロヘキサントリカルボン酸誘導体は、いわゆるケン
プ酸の誘導体であり、また一般式
【化8】 (式中のYは、前記と同じ意味をもつ)で表わされる立
体構造を有するものは、ケンプ酸の立体異性体の誘導体
である。
【0007】本発明に従えば、これらの化合物は、それ
ぞれに対応する式
【化9】 で表わされるシクロヘキサントリカルボン酸無水物と、
一般式 Y−H …(V) (式中のYは前記と同じ意味をもつ)で表わされる化合
物とを反応させるか、あるいはそれぞれに対応する一般
【化10】 (式中のXはハロゲン原子である)で表わされるシクロ
ヘキサントリカルボン酸無水物酸ハライドと、一般式 Y−H …(V) (式中のYは前記と同じ意味をもつ)で表わされる化合
物とを、脱ハロゲン化水素剤の存在下で反応させたの
ち、酸無水物基を加水分解することによって製造するこ
とができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の化合物例えば、前記一般
式(II)で表わされるケンプ酸誘導体(モノエステ
ル、モノアミド)及び一般式(III)で表わされるケ
ンプ酸誘導体(モノエステル、モノアミド)の立体異性
体は、それぞれ文献未載の新規化合物である。前記一般
式(I)、(II)及び(III)中のRが炭化水素基
の例としては、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オ
クチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデ
シル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコシル
基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのア
リール基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピ
ル基、フェニルブチル基、フェニルヘキシル基などのア
ラルキル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル
基、ブチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ドデシル
フェニル基などのアルカリール基を挙げることができ
る。また、含酸素炭化水素基の例としては、エーテル結
合を含む炭化水素基例えば3‐オキサヘキシル基、4‐
オキサオクチル基のようなオキサアルキル基、フェノキ
シエチル基、フェノキシプロピル基、フェノキシブチル
基のようなアリールオキシアルキル基、あるいはヒドロ
キシル基で置換されたアルキル基、アリール基、アラル
キル基、アリールオキシアルキル基などを挙げることが
できる。前記一般式(I)の化合物を選択的金属イオン
分離剤として用いる場合には、親水性の低いものが有利
なので、Rとしては炭素数6〜20のものが好ましく、
特に炭素数7〜20のアラルキル基、アリールオキシア
ルキル基及びアルカリール基が好適である。
【0009】前記一般式(I)で表わされる化合物は、
前記一般式(IV)で表わされる酸無水物と一般式
(V)で表わされるアルコール類又はアミン類とを反応
させることにより製造することができるが、この際原料
として用いられる酸無水物は、例えば式
【化11】 で表わされるcis,cis‐1,3,5‐トリメチル
‐1,3,5‐シクロヘキサントリカルボン酸、すなわ
ちケンプ酸に公知の無水物化方法、例えば加熱しなが
ら、減圧下に脱水昇華させる方法を施すことにより得る
ことができる。このケンプ酸無水物とアルコール類又は
アミン類との反応は、適当な溶媒中において、塩基及び
場合により用いられる触媒の存在下に行うのが有利であ
る。溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレ
ンなどの芳香族炭化水素、n‐ヘキサン、シクロヘキサ
ン、n‐ヘプタンなどの脂肪族若しくは脂環式炭化水
素、塩化メチレン、クロロホルム、エチレンクロリドな
どのハロゲン化炭化水素、ジオキサン、テトラヒドロフ
ランなどのエーテル類などを挙げることができるが、特
に塩化メチレンが好適である。塩基としては、例えばト
リエチルアミンなどの有機塩基が好ましく、また必要に
応じて用いられる触媒としては、例えば4‐ジメチルア
ミノピリジンが好適である。
【0010】この反応は、使用するアルコール類やアミ
ン類の種類、触媒の有無などにより異なるが、一般に0
〜100℃、好ましくは10〜60℃の範囲の温度にて
行われる。また、酸無水物とアルコール類又はアミン類
との使用割合については、アルコール類又はアミン類
を、ケンプ酸無水物に対して、化学量論量より若干過剰
量用いるのが有利である。
【0011】反応終了液は十分洗浄したのち、濃縮して
溶媒などを留去させ、次いで残渣を適当な溶媒を用いて
再結晶することにより、所望の化合物が得られる。この
反応において、酸無水物にアルコール類を反応させれば
酸モノエステルが得られ、また、アミン類を反応させれ
ば、酸モノアミドが得られる。
【0012】本発明の化合物は、また前記一般式(V
I)で表わされる酸無水物酸ハライドと一般式(V)で
表わされるアルコール類又はアミン類とを、脱ハロゲン
化水素剤の存在下に反応させることによっても製造する
ことができる。この際、原料として用いられる酸無水物
酸ハライドは、例えば式
【化12】 で表わされる(1α,3α,5β)‐1,3,5‐トリ
メチルシクロヘキサントリカルボン酸、すなわちケンプ
酸の立体異性体に、酸ハロゲン化剤、例えばハロゲン化
チオニルなどを反応させることによって得ることができ
る。
【0013】また、脱ハロゲン化水素剤としては、塩基
性物質、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムな
どの無機塩基や、トリエチルアミン、ピリジンなどの有
機塩基などが用いられる。この反応は、溶媒中で行うの
が好ましく、この溶媒としては、例えばベンゼン、トル
エン、キシレンなどの芳香族炭化水素、n‐ヘキサン、
シクロヘキサン、n‐ヘプタンなどの脂肪族若しくは脂
環式炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、エチレン
クロリドなどのハロゲン化炭化水素、ジオキサン、テト
ラヒドロフランなどのエーテル類などを挙げることがで
きるが、特に塩化メチレンが好適である。
【0014】この反応は、使用するアルコール類やアミ
ン類の種類、脱ハロゲン化水素剤の種類、触媒の有無な
どにより異なるが、一般には0〜100℃、好ましくは
10〜60℃の範囲の温度で行われる。また、ケンプ酸
無水物酸ハライドの立体異性体とアルコール類又はアミ
ン類は、実質上等モルの割合で用いられる。さらに、反
応時間は、反応温度や原料の種類などにより異なり、一
概に定めることはできないが、アミン類を用いる場合
は、通常30分ないし5時間程度であり、アルコール類
を用いる場合は、通常5〜20時間程度である。
【0015】このようにして反応させたのち、反応液を
十分に洗浄後、濃縮して溶媒などを留去させることによ
り、残渣としてケンプ酸無水物エステル又はケンプ酸無
水アミドの立体異性体が得られる。このものは、そのま
ま次工程の加水分解処理に用いてもよいし、適当な溶媒
にて再結晶を行い、精製して加水分解処理に用いてもよ
い。
【0016】次に、このようにして得られた酸無水物エ
ステル又は酸無水物アミドを適当な溶媒に溶解させたの
ち、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウ
ムなどの塩基を含む水溶液を加えて、酸無水物基を加水
分解する。この際用いる溶媒としては、例えばベンゼ
ン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、n‐ヘ
キサン、シクロヘキサン、n‐ヘプタンなどの脂肪族若
しくは脂環式炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、
エチレンクロリドなどのハロゲン化炭化水素、ジオキサ
ン、テトラヒドロフランなどのエーテル類などを挙げる
ことができるが、特にテトラヒドロフランが好適であ
る。この加水分解反応は、通常0〜100℃、好ましく
は10〜60℃の範囲の温度で行われる。反応時間は反
応温度などにより異なり、一概に定めることはできない
が、通常は12時間以内で十分に反応が終了する。
【0017】加水分解終了液は、適当な溶媒、例えば塩
化メチレン、酢酸エチル、クロロホルムなどを用いて抽
出処理を行い、抽出液を濃縮して溶媒を留去させたの
ち、残渣を再結晶法などを用いて精製することにより、
所望の化合物が得られる。この反応において、一般式
(V)で表わされる化合物としてアルコール類を用いれ
ば、酸モノエステルが得られ、またアミン類を用いれ
ば、酸モノアミドが得られる。
【0018】前記一般式(I)で表わされる化合物は、
分子中にカルボキシル基及びヘテロ原子(窒素、酸素原
子)を含有しており、これによって、溶液A−溶液M−
溶液Bから成る液膜系において、一方の溶液A中の金属
イオンを選択的に溶液Bに輸送する作用を有するととも
に水溶液から所定の金属イオンを選択的に抽出する作用
を有する。
【0019】本発明の前記一般式(I)で表わされる化
合物を、イオノフォアとして用い、金属イオンの移行を
行うには、2種の溶液A及びBを、本発明化合物を介し
て間接的に接触させればよい。例えば、(1)本発明化
合物を溶液Aと溶液Bに対して実質上非混和性の有機溶
媒に溶解させ、この本発明化合物の溶液を中間溶液とし
て、溶液A及び溶液Bを間接的に接触させる方法、
(2)隔膜により仕切られた区画内に収容させた本発明
化合物の溶液を介して、溶液A及び溶液Bを間接的に接
触させる方法、(3)高分子膜やろ紙などの支持体に支
持させた本発明化合物を介して、溶液A及び溶液Bを間
接的に接触させる方法などを用いることができる。
【0020】次に、添付図面に従い、溶液Aと溶液Bと
を、本発明化合物の溶液Mを介して接触させることによ
り、金属イオンの移行を行う場合の具体例を示す。図1
は、本発明化合物をイオノフォアとして用い、金属イオ
ンの移送を行う場合の装置の1例の説明図であって、U
字型の装置1は、筒状容器2及び3とそれらの下部を連
結する連結管4と撹拌機5及び6とから構成されてい
る。
【0021】この装置1に対し、まず、本発明化合物の
溶液Mを中間溶液層として入れ、次いで、一方の筒状容
器2に溶液Aを、他方の筒状容器3に溶液Bを入れる。
なお、溶液Mは溶液A及びBと実質上非混和性のもので
ある。
【0022】前記溶液Aは、移送対象となる金属イオン
を含むものであり、通常水溶液が用いられるが、必ずし
も水溶液に限定されるものではなく、有機溶媒と水との
混合溶液や、アルコールなどの有機溶媒溶液も適用され
る。また、この溶液Aは、通常pH3〜9の弱アルカリ
性ないし弱酸性溶液として用いられる。一方、溶液B
は、移送される金属イオンを受け取るためのもので、酸
性溶液が用いられる。この酸性溶液としては、例えば塩
酸、硫酸、リン酸などの無機酸、あるいはギ酸、酢酸、
有機スルホン酸などの有機酸を含むpH3以下の水溶液
が一般に用いられる。この溶液Bは種々の陽イオンを含
むことができ、溶液Aに含まれる移送対象となる金属イ
オンと同種のものを含むことができる。
【0023】また、本発明化合物は、イオン濃度勾配に
逆らって金属イオンを移送させることができるので、溶
液Bに含まれる金属イオン濃度は、溶液Aに含まれる金
属イオン濃度よりも高濃度にすることができる。溶液M
の調製に用いられる溶媒としては、溶液A及び溶液Bと
実質上非混和性のもの、例えば溶液A及び溶液Bが水溶
液である場合には、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロ
ロエタンなどのハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエ
ンなどの炭化水素、ヘキシルアルコール、オクチルアル
コールなどの水難溶性アルコールなどが挙げられる。
【0024】このようにして、溶液A及び溶液Bを間接
的に接触させることにより、弱アルカリ性ないし弱酸性
溶液A中の金属イオンは本発明化合物に捕捉され、この
金属イオンを捕捉したケンプ酸誘導体又はその立体異性
体は、酸性の溶液Bと接触し、その中に捕捉した金属イ
オンを放出する。このようにして、溶液A中の金属イオ
ンが溶液B中に効果的に移行される。
【0025】本発明化合物を含む金属イオン分離剤は、
一価金属イオン例えばアルカリ金属イオンに対する輸送
速度は低いが、多価金属イオン例えば、アルカリ土類金
属イオン、水銀イオン、銅イオン、鉛イオン、亜鉛イオ
ンなどに対しては、著しく高い輸送速度を示す。また、
一価金属イオンでも銀イオンに対しては高い輸送速度を
示す。また、本発明化合物は、金属イオン選択抽出剤と
しても優れた性能を発揮する。
【0026】
【発明の効果】本発明化合物は新規な化合物であって、
金属イオンに対して大きな選択的輸送能を示す。したが
って、本発明化合物をイオノフォアとして用いることに
より、溶液A中に含まれる金属イオンを溶液B中に移行
させることができる。しかも溶液B中の金属イオン濃度
が溶液A中の金属イオン濃度よりも高濃度であっても、
その濃度勾配に逆らって溶液Aから溶液Bへ金属イオン
を移行させることができるので、溶液A中の金属イオン
を溶液B中へ濃縮することも可能である。
【0027】本発明化合物を、金属イオンの選択輸送剤
として用いることにより、各種の金属イオンが存在する
水溶液から、金属イオンを高効率で選択的かつ連続的に
分離することができる。また、本発明化合物は、金属イ
オン選択抽出剤としても有用である。
【0028】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定され
るものではない。
【0029】実施例1 ケンプ酸モノフェネチルエステ
ルの製造 ケンプ酸無水物424mg(1.76ミリモル)とトリ
エチルアミン623mg(6.16ミリモル)とを含有
する塩化メチレン溶液10ml中に、フェネチルアルコ
ール237mg(1.94ミリモル)及び触媒量の4‐
ジメチルアミノピリジンを加えて溶解したのち、これを
室温にて一晩かきまぜて反応させた。次いで、これを
0.1M−クエン酸溶液30mlで3回洗浄したのち、
硫酸マグネシウム上で乾燥後、濃縮し、得られた固体状
の残渣をベンゼンから再結晶することにより、ケンプ酸
モノフェネチルエステルが、無色透明の結晶として36
8.7mg(収率57.9%)得られた。このものの融
点は166.0〜166.7℃であった。
【0030】この化合物は、以下に示す分析結果より同
定された。 (1)赤外吸収スペクトル:IR(cm-1):1738
(エステルのC=O)、1707(酸のC=O)、11
75(エステルのC−O)、748(ベンゼン)、69
8(ベンゼン)
【0031】(2)1H−NMRスペクトル:(CDC
3,δppm):7.25(m,5H)、4.17
(t,J=7.27Hz,2H)、2.95(d,J=
14.3Hz,2H)、2.94(t,J=7.23H
z,2H)、2.59(d,J=14.3Hz,1
H)、1.20(s,6H)、1.15(s,3H)、
0.996(d,J=14.3Hz,1H)、0.90
5(d,J=14.6Hz,2H)
【0032】(3)13C−NMRスペクトル:(CDC
3,δppm):182.4、176.3、138.
4、129.0、128.2、126.2、65.0、
44.3、42.0、41.6、41.1、34.7、
33.1、29.7
【0033】
【0034】実施例2 ケンプ酸モノ(o‐ヒドロキシ
フェノキシプロピル)エステルの製造 ケンプ酸無水物78mg(0.33ミリモル)とトリエ
チルアミン148mg(1.46ミリモル)とを含有す
る塩化メチレン溶液2ml中に、o‐ヒドロキシフェノ
キシプロパノール60.1mg(0.36ミリモル)及
び触媒量の4‐ジメチルアミノピリジンを加えて溶解し
たのち、これを室温にて一晩かきまぜて反応させた。次
いで、これを0.1M−クエン酸溶液6mlで3回洗浄
したのち、硫酸マグネシウム上で乾燥後、濃縮し、得ら
れた白色固体状の残渣をアセトニトリルから再結晶する
ことにより、ケンプ酸モノ(o‐ヒドロキシフェノキシ
プロピル)エステルが、象牙色の結晶として88.4m
g(収率66.6%)得られた。このものの融点は16
3.6〜164.2℃であった。この化合物は、以下に
示す分析結果より同定された。
【0035】(1)赤外吸収スペクトル:IR(c
-1):3370(O−H)、1709(酸のC=
O)、1304(エステルのC−O)、745(ベンゼ
ン)
【0036】(2)1H−NMRスペクトル:(アセト
ン‐D6,δppm):6.80(m,4H)、4.1
6(d,J=6.36Hz,2H)、4.11(d,J
=6.21Hz,2H)、2.72(d,J=14.1
Hz,3H)、2.11(m,2H)、1.26(s,
6H)、1.22(s,3H)、1.19(d,J=1
4.3Hz,3H)
【0037】(3)13C−NMRスペクトル:(アセト
ン‐D6,δppm):179.0、177.3、12
2.0、120.4、116.0、113.6、66.
4、62.0、43.0、42.2、42.1、31.
6、30.6、29.1
【0038】
【0039】実施例3 ケンプ酸モノフェネチルアミド
の製造 ケンプ酸無水物500mg(2.08ミリモル)とトリ
エチルアミン740mg(7.28ミリモル)とを含有
する塩化メチレン溶液10ml中に、フェネチルアミン
277.4mg(2.29ミリモル)及び触媒量の4‐
ジメチルアミノピリジンを加えて溶解したのち、これを
室温にて一晩かきまぜて反応させた。次いで、これを
0.1M−クエン酸溶液30mlで3回洗浄したのち、
硫酸マグネシウム上で乾燥後、濃縮し、得られた白色固
体状の残渣をベンゼンから再結晶することにより、ケン
プ酸モノフェネチルアミドが、白色結晶として616.
5mg(収率82.0%)得られた。このものの融点は
245.2〜246.8℃であった。この化合物は、以
下に示す分析結果より同定された。
【0040】(1)赤外吸収スペクトル:IR(c
-1):3349、1717、1682、1190
【0041】(2)1H−NMRスペクトル:(CDC
3,δppm):8.57(bs,2H)、7.24
(m,5H)、3.35(m,2H)、2.82(m,
4H)、2.54(d,J=12.7Hz,1H)、
1.21(s,6H)、1.19(s,3H)、1.0
6(d,J=14.3Hz,1H)、0.970(d,
J=15.4Hz,2H)
【0042】(3)13C−NMRスペクトル:(CDC
3,δppm):183.8、177.5、139.
6、128.8、128.4、126.2、44.5、
42.7、42.0、41.6、35.4、29.5
【0043】
【0044】実施例4 ケンプ酸モノ(p‐n‐ブチル
アニリド)の立体異性体の製造 ケンプ酸の立体異性体である(1α,3α,5β)‐
1,3,5‐トリメチルシクロヘキサントリカルボン酸
の酸無水物塩化物200mg(0.773ミリモル)を
含有する塩化メチレン溶液10ml中に、トリエチルア
ミン234mg(2.32ミリモル)と、p‐n‐ブチ
ルアニリン126.9mg(0.851ミリモル)を含
む塩化メチレン溶液10mlを加えたのち、これを室温
にて一晩かきまぜて反応させた。次いで、反応液を1N
−塩酸水溶液25mlで3回洗浄したのち、有機相を硫
酸マグネシウム上で乾燥後、濃縮して白色固体を得、次
いで、この残渣をベンゼンから再結晶することにより、
無色結晶としてケンプ酸無水物p‐n‐ブチルアニリド
の立体異性体217.5mg(収率76%)が得られ
た。
【0045】次に、このケンプ酸無水物p‐n‐ブチル
アニリドの立体異性体67.4mg(0.181ミリモ
ル)を含有するテトラヒドロフラン溶液3mlと、水酸
化リチウム水和物16.7mg(0.398ミリモル)
を含有する水溶液2mlとを混合し、室温にて一晩かき
まぜた。この反応液をクロロホルム5mlで3回抽出
し、抽出液を硫酸マグネシウム上で乾燥したのち、濃縮
し、残渣をベンゼンで再結晶することにより、ケンプ酸
モノ(p‐n‐ブチルアニリド)の立体異性体が、無色
結晶として21.1mg(収率30%)得られた。この
ものの融点は177.3〜178.3℃であった。
【0046】この化合物は、以下に示す分析結果より同
定された。 (1)赤外吸収スペクトル:IR(cm-1):328
3、1705、1642
【0047】(2)1H−NMRスペクトル:(CDC
3/アセトン‐D6,δppm):8.30(s,1
H)、7.48(d,J=8.43Hz,2H)、7.
12(d,J=8.52Hz,2H)、2.65(d,
J=14.6Hz,1H)、2.57(t,J=7.6
7Hz,2H)、2.30(d,J=14.5Hz,2
H)、2.04(d,J=14.5Hz,2H)、1.
57(m,2H)、1.38(m,12H)、0.91
4(t,J=7.31Hz,3H)
【0048】(3)13C−NMRスペクトル:(CDC
3/アセトン‐D6,δppm):181.7、17
7.2、139.0、137.2、129.3、12
1.3、43.6、42.1、41.6、40.9、3
5.7、34.5、30.4、27.7、22.9、1
4.5
【0049】
【0050】実施例5 装置として図1に示す装置を、イオノフォアとして実施
例1で得られたケンプ酸モノフェネチルエステルを用い
て陽イオンの輸送試験を行った。まず、溶液Aとして、
10mM−Cu(OAc)2、10mM−Pb(OA
c)2、10mM−Ni(OAc)2、10mM−Co
(OAc)2及び10mM−Zn(OAc)2を含有する
pH6.2の水溶液15mlを、溶液Bとして、0.1
N−硝酸水溶液15mlを、溶液Mとして、実施例1で
得られたケンプ酸モノフェネチルエステル1.5×10
-4molをクロロホルム30mlに溶解した溶液を調製
した。
【0051】次に、図1に示す装置1に、まず前記溶液
Mを中間液層として入れ、次いで一方の筒状容器2に前
記溶液Aを、他方の筒状容器3に前記溶液Bを入れ、輸
送試験を常温(25℃)にて行った。溶液Aから溶液B
へ輸送された2日後の各陽イオン量を原子吸光分析によ
り測定し、この量から溶液A中の初期量のうち、溶液B
へ移行した割合を求めた。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】表1から分かるように、実質上Pb2+、C
2+及びZn2+が選択的に輸送される。
【0054】実施例6 実施例5において、イオノフォアとしてケンプ酸モノフ
ェネチルエステルの代わりに、実施例3で得られたケン
プ酸モノフェネチルアミドを用いた以外は、実施例5と
全く同様にして陽イオンの輸送実験を行った。結果を表
2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】表2から分かるように、実質上Pb2+、C
2+及びZn2+が選択的に輸送される。
【0057】実施例7 実施例5において、溶液Aとして10mM−Cu(OA
c)2と10mM−Pb(OAc)2とを含有するpH
6.2の水溶液15mlを用いた以外は、実施例5と同
様にして陽イオンの輸送実験を行い、溶液Aから溶液B
へ輸送された4時間、8時間、12時間、24時間、3
0時間後の銅イオン及び鉛イオン量を原子吸光分析によ
り測定し、この量から溶液A中の初期量のうち、溶液B
へ移行した割合を求めた。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】実施例8 実施例7において、イオノフォアとしてケンプ酸モノフ
ェネチルエステルの代わりに、実施例3で得られたケン
プ酸モノフェネチルアミドを用いた以外は、実施例7と
全く同様にして陽イオンの輸送実験を行った。結果を表
4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】実施例9〜12 実施例5において、溶液Aとして10mM−MgC
2、10mM−CaCl2、10mM−SrCl2及び
10mM−BaCl2を含有するpH9.0の水溶液1
5mlを用い、かつ溶液Mとして、実施例1で得られた
ケンプ酸モノフェネチルエステル、実施例2で得られた
ケンプ酸モノ(o‐ヒドロキシフェノキシプロピル)エ
ステル、実施例3で得られたケンプ酸モノフェネチルア
ミド及び実施例4で得られたケンプ酸モノ(p‐n‐ブ
チルアニリド)の立体異性体それぞれ1.5×10-4
olをクロロホルム30mlに溶解した溶液をそれぞれ
用いた以外は、実施例5と全く同様にして陽イオンの輸
送実験を行った。結果を表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】(注)イオノフォアの種類 a:実施例1で得られたケンプ酸モノフェネチルエステ
ル b:実施例2で得られたケンプ酸モノ(o‐ヒドロキシ
フェノキシプロピル)エステル c:実施例3で得られたケンプ酸モノフェネチルアミド d:実施例4で得られたケンプ酸モノ(p‐n‐ブチル
アニリド)の立体異性体
【0064】実施例13〜15 実施例5において、溶液Aとして、10mM−Hg(O
Ac)2と10mM−AgOAc(実施例13)、10
mM−Hg(OAc)2と10mM−Cu(OAc)
2(実施例14)及び10mM−Hg(OAc)2と10
mM−Pb(OAc)2(実施例15)を含有するpH
6.2の水溶液15mlをそれぞれ用いた以外は、実施
例5と同様にして陽イオンの輸送実験を行い、溶液Aか
ら溶液Bへ輸送された12時間後及び24時間後の各イ
オン量を原子吸光分析により測定し、この量から溶液A
中の初期量のうち、溶液Bへ移行した割合を求めた。結
果を表6に示す。
【0065】
【表6】
【0066】表6から明らかなように、いずれも水銀イ
オンを選択的に輸送することができ、しかも他の金属イ
オンに対するよりも、効率よく水銀イオンの分離を行い
うることが分った。また、イオノフォアとしてケンプ酸
モノフェネチルエステルの代わりに、実施例3で得られ
たケンプ酸モノフェネチルアミドを用いた場合には、い
ずれも水銀イオンとの錯体が析出し、該ケンプ酸モノフ
ェネチルアミドは水銀イオンの沈殿分離剤として有効で
あることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明化合物をイオノフォアとして用い、金
属イオンの移送を行う場合の装置の1例の説明図
【符号の説明】
1 U字型装置 2,3 筒状容器 4 連結管 5,6 撹拌機 A 溶液A B 溶液B M 溶液M
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07C 233/58 9547−4H C07C 233/58 233/60 9547−4H 233/60 C09K 3/00 108 C09K 3/00 108B 108C (72)発明者 姫田 雄一郎 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術院 物質工学工業技術研究所内 (72)発明者 王 振賀 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術院 物質工学工業技術研究所内 (72)発明者 ブルース ボールドウィン 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術院 物質工学工業技術研究所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式 【化1】 (式中のYは−OR基又は−NHR基であり、Rは炭化
    水素基又は含酸素炭化水素基である)で表わされる化合
    物。
  2. 【請求項2】 一般式 【化2】 (式中のYは−OR基又は−NHR基であり、Rは炭化
    水素基又は含酸素炭化水素基である)で表わされるci
    s,cis‐1,3,5‐トリメチル‐1,3,5‐シ
    クロヘキサントリカルボン酸誘導体。
  3. 【請求項3】 一般式 【化3】 (式中のYは−OR基又は−NHR基であり、Rは炭化
    水素基又は含酸素炭化水素基である)で表わされるケン
    プ酸誘導体の立体異性体。
  4. 【請求項4】 Rが炭素数7〜20のアラルキル基又は
    アリールオキシアルキル基である請求項1、2又は3記
    載の化合物。
  5. 【請求項5】 Rが炭素数7〜20のアルカリール基で
    ある請求項1、2又は3記載の化合物。
  6. 【請求項6】 式 【化4】 で表わされるシクロヘキサントリカルボン酸無水物と、
    一般式 Y−H (式中のYは−OR基又は−NHR基であり、Rは炭化
    水素基又は含酸素炭化水素基である)で表わされる化合
    物とを反応させることを特徴とする請求項1記載の化合
    物の製造方法。
  7. 【請求項7】 一般式 【化5】 (式中のXはハロゲン原子である)で表わされるシクロ
    ヘキサントリカルボン酸無水物酸ハライドと、一般式 Y−H (式中のYは−OR基又は−NHR基であり、Rは炭化
    水素基又は含酸素炭化水素基である)で表わされる化合
    物とを、脱ハロゲン化水素剤の存在下で反応させたの
    ち、酸無水物基を加水分解することを特徴とする請求項
    1記載の化合物の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1記載の化合物から成る選択的金
    属イオン分離剤。
  9. 【請求項9】 アルカリ土類金属イオン、水銀イオン、
    銀イオン、銅イオン、鉛イオン及び亜鉛イオンの中から
    選ばれた金属イオンを分離するための請求項8記載の選
    択的金属イオン分離剤。
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