JPH08313433A - 赤外顕微分光分析方法及び装置 - Google Patents

赤外顕微分光分析方法及び装置

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JPH08313433A
JPH08313433A JP14407895A JP14407895A JPH08313433A JP H08313433 A JPH08313433 A JP H08313433A JP 14407895 A JP14407895 A JP 14407895A JP 14407895 A JP14407895 A JP 14407895A JP H08313433 A JPH08313433 A JP H08313433A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】赤外顕微分光分析では2〜15μm程度の波長
域の光を用いるので、光の回折限界により空間分解能は
高々10μm程度である。この空間分解能を回折限界を
超えるミクロンないしサブミクロンのオーダにできる赤
外顕微分光分析方法及び装置を実現する。 【構成】被検体の表面近傍にエバネッセント波の場を形
成し、このエバネッセント波の場の中に幅が微小なスリ
ット状開口(21)を臨ませ、このスリット状開口を経由す
る光を検出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は赤外顕微分光分析方法及
び装置に関し、詳しくは、ニアフィールド(近接場)でプ
ローブを用いてエバネッセント波を検出し、回折限界を
超える空間分解能を実現できる赤外顕微分光分析方法及
び装置に関する。
【0002】
【背景の技術】近年多くの産業分野で微細加工技術が進
展している。集積回路技術などはまさに、その典型的な
例であり、サブミクロン・オーダの加工が行われてい
る。また、マイクロ・マシンなどに見られる既存の製品
サイズの大幅な縮小化や、コンパクトディスクやビデオ
ディスクなどの情報記憶の高密度化は、より一層の微細
化高技術の進展を要請している。このような微細加工技
術の進展とともに、品質管理の観点から、これら微細加
工される成品に対する微小領域での計測が必要不可欠な
ものとなってきている。微小領域での計測とは、例え
ば、物体の微細加工後の表面形状の観察であるとか、表
面上の局所的な組成分析や不純物の検査などである。加
工技術が生み出す微小構造の縮小化、高密度化が進むに
つれ、計測技術に要求される分解能も必然的に高くな
る。このような微小領域での計測法のひとつである赤外
顕微分光分析法は、成品の検査過程や材料の分析等で広
く普及している。たとえば、磁気ディスクや半導体等の
表面上の付着物や不純物の分析、合成化学分野での生成
物の確認、高分子材料の組成分析や構造の解析、生体試
料の微細構造の解析など、幅広い分野で応用されてい
る。しかし、この赤外顕微分光分析法は、およそ2〜1
5μm程度の波長域の光を用いているので、回折限界に
よりその空間分解能は高々10μm程度である。したが
って、ミクロンオーダさらにはサブミクロンオーダの空
間分解能で物質の分布を測定したいという要求には応え
ることができない。
【0003】最近、光の波長による制限を受けることな
く、高い空間分解能を実現できるニアフィールド走査光
学顕微鏡が研究されている。この顕微鏡では、試料表面
に局在して空間中には伝搬できないエバネッセント波
を、プローブを用いて検出する。プローブには、先端を
とがらせた光ファイバやマイクロピペット、微小開口、
金属針、微小球などが用いられている。これらのプロー
ブの大きさ(ファイバの先端径や開口径の大きさなど)を
波長より小さくすることで、これまで光で観察できなか
った、波長より微細な構造を観測することができる。
【0004】
【従来の技術】従来技術として、特開平4−30751
0号公報の技術「近接場走査光学顕微鏡」が知られてい
る。この技術は、光学探針の先端に形成したピンホール
を通して試料にプローブ光を供給する構成であり、その
プローブ光をパルス状とし、光検出器をこれと同期して
動作させることによって背景光の影響を小さくし、S/
N良くプローブ光を検出することで分解能を向上させる
というものである。
【0005】他方、赤外顕微測定において、エバネッセ
ント波を利用して回折限界を超える空間分解能を実現で
きる装置が、特開平6−94613号公報により知られ
ている。ここに開示の技術は、赤外透明でかつ高屈折率
の半球形状プリズムを被検試料の上面に密着して置き、
集光スポット径をプリズムの高屈折率を利用して絞り込
むと同時に、全反射を利用して低屈折率媒質(被検試料)
中にエバネッセント波を発生させ、物質との相互作用を
経た光を集光しスペクトル分布を求めるものである。
【0006】
【従来技術の問題点】ニアフィールド(近接場)走査光学
顕微鏡は、波長による制限を受けることなく高い分解能
を実現できるとされているものの、プローブの開口径や
先端径は波長より小さくしなければならず、プローブ光
で試料を照明する、あるいはプローブにより試料からの
光をピックアップするいずれの場合においても、信号と
なるべき検出光はきわめて微弱であり、SN比が非常に
小さいという大きな問題を抱えている。他方、上記の赤
外顕微測定装置(特開平6−94613号公報)では、エ
バネッセント波を高屈折率プリズムの全反射を利用して
発生させているため、実現できる空間分解能は、この高
屈折率プリズムの屈折率により制限を受けてしまうとい
う問題、及び、臨界角以上の入射光束を得るために照明
光学系に特段の工夫が必要とされる問題がある。本発明
は、上記の問題点を解決することを目的とする。
【0007】
【問題点を解決するための手段】本発明の要諦は、プロ
ーブとして、幅が微小なスリット状開口を適用するもの
である。
【0008】本発明に係る赤外顕微分光分析方法は、赤
外域の分光光を用いて被検体の表面近傍にエバネッセン
ト波の場を形成し、このエバネッセント波の場の中に幅
が微小なスリット状開口を臨ませ、このスリット状開口
からの伝播光またはスリット状開口に対向する被検体の
微小領域からの伝播光を集光し、集光した光を光電変換
して信号を得、この信号に基づいてスペクトル分布を求
めることを基本的な特徴としている。
【0009】また、本発明に係る赤外顕微分光分析装置
は、被検体を載置するステージと、ステージに載置され
た被検体に向けて赤外分光器からの光を集光して投射す
る手段と、被検体の表面に対向する側に幅が微小なスリ
ット状開口を有する赤外透過プリズムと、赤外透過プリ
ズムのスリット状開口を経由した光を集光する手段と、
集光した光を光電変換して信号とする手段と、前記信号
に基づいてスペクトル分布を演算する手段とを備えるこ
とを基本的な特徴とする。
【0010】
【作用】プローブとして幅が微小なスリット状開口とし
たことにより、スリット状開口の面積に比例した測定光
強度が得られ、SN比が格段に大きくなり、微小な円形
開口では不可能であったスペクトル分布を求めることが
可能となった。スリット状開口の幅方向に幅の大きさで
決まる空間分解能を得ることができ、原理的に、サブミ
クロンオーダの空間分解能の実現が可能となった。
【0011】
【発明に係る原理的な背景】本発明はエバネッセント波
を利用する。そこで、まず、エバネッセント波の生成方
法について説明する。エバネッセント波の生成方法は、
高屈折率結晶を用いる方法、回折格子を用いる方
法、及び微小開口を用いる方法がある。上記は、高
屈折率媒質から低屈折率媒質に、臨界角以上の入射角で
光を入射すると、全反射が起こり、このとき低屈折率媒
質中にエバネッセント波が発生する。の回折格子を用
いる方法は、回折格子に光を入射するだけでよい。光の
入射角や格子間隔などによらず、エバネッセント波が発
生する。回折格子によって生じた回折光(エバネッセン
ト波を含む)の波長の大きさは、伝搬光の波長と同じ大
きさのものから、無限に小さいものまで存在する。ま
た、格子間隔を小さくすると、全次数の回折光のうち、
エバネッセント波となる回折光の占める割合が多くな
る。回折格子を用いる場合には、伝搬光を入射する替わ
りに、エバネッセント波を回折格子に入射した場合に
も、その回折光には伝搬光とともにエバネッセント波が
存在する。
【0012】の微小開口を用いる方法は、回折格子に
還元して考えることができる。すなわち、1次元開口の
構造は、rect関数で表される透過率分布であると考
えられ、このrect関数をフーリエ変換すると、0か
ら無限大までの空間周波数成分をもつ。つまり、1次元
開口の構造は、さまざまな格子間隔をもった回折格子の
重ね合わせとして考えることができる。したがって、開
口からの回折波は、回折格子からの回折波と同様に考え
ることができる。入射光の波長をλとすると、1/λよ
り小さい空間周波数成分は、波長より長い格子間隔をも
つ回折格子の回折波成分を表し、1/λより大きい空間
周波数成分は、波長より短い格子間隔をもつ回折格子か
らの回折波成分を表す。したがって、開口の大きさを波
長よりも十分小さくすると、回折波全体に占める、波長
より短い格子からの回折波成分の割合が多くなり、これ
により、エバネッセント波成分が多く存在することにな
る。つまり、回折波の大部分が、波長を超える分解を与
えるエバネッセント波となるので、波長より十分小さな
開口からの回折波を用いれば、回折限界を超えた空間分
解能を実現できる。ただ、開口の大きさが波長より小さ
い場合でも、開口からの回折波には伝搬光成分が含まれ
ている。また、よく知られているように、エバネッセン
ト波は指数関数的に減衰するので、エバネッセント波が
存在するのは開口直後(ニアフィールド)だけである。
【0013】上記のように、微小開口による回折波には
伝搬光と、非伝搬光であるエバネッセント波が存在す
る。微小開口に限らず、凹凸などの形状や透過率分布な
ど、何らかの構造をもつ物体は、その構造をフーリエ級
数展開したとき、いくつかの回折格子の重ね合わせとし
て記述することができる。回折格子からの回折波には必
ずエバネッセント波成分が含まれるから、どのような構
造からの回折波にもエバネッセント波は存在する。そし
て、その構造の空間周波数成分のうち、高周波成分の割
合が多いほど(フーリエ級数展開したとき、波長より短
い間隔をもつ格子成分が多いほど)、エバネッセント波
が回折波に占める割合も大きい。ニアフィールド光学顕
微鏡は、上記のいずれかの方法で、ニアフィール
ド領域に発生させたエバネッセント波の場に、プローブ
を適用し、ニアフィールド領域に置かれた試料を光によ
って観測する装置である。
【0014】プローブとして微小開口を用いたニアフィ
ールド顕微鏡では、空間分解能を決定するのは開口の大
きさであり、原理的に、実現できる空間分解能に制限は
ない。本発明に係る微小開口を用いた顕微鏡光学系の特
に試料と関連付けた微小開口の作用について、図1、図
2により説明する。
【0015】図1(a)は光学的な微小開口1に入射光2
を入射して、開口1の直後に例えば吸収分布をもつ試料
3を置き、試料2からの透過光4を検出しようとする光
学系である。このとき、開口1は波長以下の微小光源の
役割を果たしている。開口1からの回折光のうち、エバ
ネッセント波Eは開口1の直後に開口の大きさ(例え
ば、開口径)と同程度の領域で存在している。この領域
に、吸収分布などの構造が存在する試料3が置かれてい
るので、エバネッセント波Eは、試料3の構造により回
折し、回折光のうちの伝搬光成分が透過光4として射出
し、これが検出される。開口1の大きさを十分に小さく
することにより、波長を超える空間分解能を実現するこ
とができる。
【0016】これに対し、図1(b)は、試料3に入射光
5を入射し、試料3の構造による回折光を微小開口1に
よって検出する光学系である。試料3の構造によって回
折される光も、微小開口の場合と同様に、伝搬光成分と
エバネッセント波成分とを含む。このうち、エバネッセ
ント波成分Eは、試料3の構造のうち、波長以下の空間
周波数成分によって回折さけた回折光であるので、この
光を検出することにより、回折限界を超える空間分解能
を得ることができる。試料3の直後に微小開口1を置く
ことで、試料3からのエバネッセント波Eが微小開口1
により回折され、回折光のうちの伝搬光成分6が検出さ
れる。図1は、透明な試料3に対する透過型の光学系で
あるが、不透明な試料の測定に対しては適応できない。
不透明な試料に対しては、図2に示すような反射型の光
学系が用いられる。
【0017】図2(a)は、微小開口1に入射光7を入射
し、開口1からの回折光(エバネッセント波を含む)によ
り、試料8をいわば照明し、試料8からの回折光(エバ
ネッセント波を含む)を、同一の微小開口1により伝搬
光としての反射光9として検出する光学系である。試料
8の照明と、反射光9の検出とが1つの開口1により行
えるので、光学系は簡単になる。しかし、波長よりも小
さな開口1を、光波が2回経由することになり、S/N
比が非常に悪くなることは避けられない。これを改善す
るために、図2(b)のように、入射非常に10は開口1
を通さず、試料8に直接入射させるようにする。この場
合、入射光10が試料8の構造によって回折され、回折
光(反射光)のうちのエバネッセント波成分が微小開口1
により回折され、伝搬光としての反射光11となって検
出される。
【0018】上記のように、開口により試料を照明する
場合、開口に光を入射すると、伝搬光より短い波長をも
つエバネッセント波成分は開口直接から指数関数的に減
衰し、また開口を通ってきた伝搬光成分は、開口から離
れるにしたがって強度分布が空間的に広がるため、開口
から試料までの距離が大きくなるほど、実現できる空間
分解能は低下する。試料からの回折光を開口により検出
する光学系についても、同様のことがいえる。したがっ
て、いずれの光学系においても、開口を試料に近づける
ほど高い空間分解能で測定することができる。
【0019】また、透過型の系では、試料中を通ってき
た光が試料表面の構造により散乱され、検出されるた
め、試料表面のみの情報を得ることはできない。他方、
反射型の光学系では、試料表面の開口からの光で照射
し、表面上で散乱された光のみを検出するので、試料の
内部などの情報が信号光に混入することなく、表面上の
情報のみを検出することができる。したがって、このよ
うな目的では、透過型よりも反射型の光学系による測定
がより適している。プローブの開口形状について、微小
開口1としては、従来(広義の意味で)より適用されてき
たのはすべて円形開口である。微小開口プローブを用い
たニアフィールド顕微鏡においては、光源からの光のう
ち開口を通ってきた光のみが検出されるため、光の利用
効率が非常に悪い。また、回折限界を超える空間分解能
を得るためには、開口の大きさを波長よりも小さくする
必要があるので、検出される信号光は非常に微弱であ
り、測定が困難である。
【0020】実際、後で述べる実施例の方法を用いて、
図3の(a)に示すような、直径rが2μmの円形開口を
作製し、これを用いて赤外スペクトル分布の測定を試み
たが、開口からの光の強度が非常に弱く、信号光を明確
には分離しては検出することができなかった。また、本
発明が対象としているような、赤外分光分析では、信号
光そのものというより、目的は赤外スペクトル分布を得
ることにあって、この赤外スペクトル分布にノイズが過
剰に重畳していればそもそも実用に供せられない。した
がって、信号光は、ある程度ノイズ成分より分離した形
で得られることが必要であり、一定以上のS/N比を実
現することが必須である。
【0021】そこで、上記のような問題を解決するため
に、プローブの開口形状に着目し、スリット形状にする
ことを案出した。開口をスリット形状にすると、スリッ
トの面積に比例した測定光強度が得られ、S/Nが大幅
に改善され、スリット幅の方向に、幅の大きさで決まる
空間分解能が得られる。尤も、スリット長の方向には高
い空間分解能は得られない。つまり、波長を超える空間
分解能は1次元方向においてのみ実現できるというもの
である。
【0022】
【実施例】図4に実施例の要部を示し、図5に実施例の
全体を説明的に示している。図4において、20は幅が
微小なスリット状開口21を設けたプリズムであり、赤
外光を透過する。30は主鏡と副鏡とからなるカセグレ
ン対物鏡であり、31は赤外光の光束を示している。プ
リズム20は上面が球面22を形成し、下面は円錐面2
3を形成している。円錐面23には、金属の薄いコーテ
ィング膜24が形成されており、スリット状の微小開口
21は円錐面23の頂部においてコーティング膜24を
切欠する形で開口されている。スリット状微小開口21
を有する赤外透過プリズム20は、微小開口プローブを
構成し、実施例では、光軸を整合させてカセグレン対物
鏡30に固定されている。プリズム20の上面は球面2
2としているので、カセグレン対物鏡30からの集束光
を微小開口21に、或いは、微小開口21からの回折光
をカセグレン対物鏡30に、それぞれ効率よく集光する
ことができる。また、プリズム20の下面の円錐面23
歯、開口21の下方に位置する試料の試料面内での当該
開口の位置を容易に確認できるように、および、開口2
1と試料との間の距離を確認しやすいようにするために
円錐形状としている。
【0023】システム構成を示す図5において、カセグ
レン対物鏡30に固定された微小開口プローブ20は、
中央部に開口を設けたステージ40の上方に位置する。
ステージ40上には被検体年手の試料50が載置され
る。ステージ40は上下に微動可能であると共に、2軸
すなわち顕微鏡光軸に直交する平面XYのXまたはY方
向に走査駆動が可能である。カセグレン対物鏡60は、
試料50が透明な場合に(透過モード)試料50の照明用
に適用されるもので、入射光束を集束して試料50に投
射する。ミラー61はモード選択用であり、上記透過モ
ードのときは光路から退避され、試料50が不透明な反
射物体である場合には(反射モード)、図示の用に光路に
位置し、入射光を上方へ反射する。ミラー62、ミラー
63はいずれも光路変換用のミラーであり、ミラー64
は半透ミラーである。光電検出手段としてのMCT検出
器70は、その検出部が微小開口プローブ20のスリッ
ト状微小開口21がカセグレン対物鏡30によって結像
される位置となるように半透ミラー64の上方に配設さ
れている。MCT検出器70は、水銀,カドミウム,テ
ルルを含む量子型化合物半導体からなる検出器で、赤外
光を広い波長域において高感度で検出することができ
る。
【0024】コンピュータ80は、例えば、パーソナル
コンピュータで構成され、適合するインタ々フェースを
介して、MCT検出器70と結合されると共に、赤外分
光器90と結合されている。赤外分光器90は、この実
施例の場合、赤外光源91とフーリエ変換干渉計92と
から構成されるフーリエ変換赤外分光器であり、コンピ
ュータ80は干渉計92内の移動鏡の走査を制御する。
この場合、MCT検出器70で得られる光電信号は、イ
ンターフェログラムであり、コンピュータ80は赤外分
光器90を動作制御するのに同期して、MCT検出器7
0からのインターフェログラム信号を入力する。コンピ
ュータ80は、また、得られたインターフェログラムか
ら赤外スペクトル分布を演算する手段(多くはプログラ
ムで構成される)を有し、求められた赤外スペクトル分
布を付属するモニタや記録手段によって可視情報として
出力することができる。
【0025】他方、顕微鏡本体に対しては、プローブ・
試料間の観察のための手段100を付帯させており、観
察手段100は、長作動の対物レンズ101、CCDカ
メラ102、モニタ103で構成されている。長作動対
物レンズ101は、倍率が20倍、NAは0.28、作
動距離は30.5mmである。この観察手段により、ス
リット状微小開口21と試料50の表面との間の距離を
拡大して目視観察でき、両者間の距離を微小に制御し設
定することができる。なお、上記のカセグレン対物鏡3
0と60には、それぞれ倍率が25倍、NAは0.62
のものを用いている。また、図5に示した装置システム
は、微小開口プローブ20と観察手段100を除き、既
存の赤外顕微分光システム、例えば、(株)堀場製作所製
・赤外顕微分光システム・品番FT−520などを利用
することが可能である。
【0026】図5のシステムの動作において、このシス
テムでは、前述のように、光を試料50に透過させて測
定を行う透過モードと、試料50からの反射光を測定す
る反射モードの2つのモードを試料50に応じて切り替
えて測定することができる。赤外光源91からの光は、
まず、干渉計92に導かれる。干渉計92を出た分光光
は、ミラー61が光路から退避している場合はミラー6
3へ進みここで反射して、下部のカセグレン対物鏡60
に入射し、このカセグレン対物鏡60は入射光を試料5
0に集光する。分光光を照射された試料50には、エバ
ネッセント波を含む回折光が発生する。微小開口プロー
ブ20のスリット状微小開口21は、試料50表面に形
成されたエバネッセント波の場に位置させており、エバ
ネッセント波はスリット状微小開口21により伝搬光に
変換され、伝搬光は微小開口プローブ20のプリズム中
を上方へ進む。上部のカセグレン対物鏡30は、スリッ
ト状微小開口21から来る伝搬光のすべてを集束しMC
T検出器70上に集光する。
【0027】一方、ミラー61を光路においた場合は、
反射型の測定となる。この場合、干渉計92からの分光
光は、ミラー61、62、64で反射され、上部のカセ
グレン対物鏡30へ入射する。カセグレン対物鏡30
は、入射光を集束し、微小開口プローブ20のスリット
状微小開口21に集光する。このとき、微小開口プロー
ブ20のスリット状微小開口21は、プローブ球面の中
心に位置するので、光は球面で回折することなく直進
し、かつ微小開口プリズム20は比較的高い屈折率の材
料で構成されているので、収差を考慮しても集光光の集
光度は高くなっている。スリット状微小開口21に集光
された分光光は、このスリット状微小開口21によっ
て、エバネッセント波を含む回折光を発生し、試料50
の表面を照射する。試料50で反射した光は、エバネッ
セント波の場を形成するとともに回折光を生じ、スリッ
ト状微小開口21との相互作用によって伝搬光となり、
微小開口プローブ21のプリズム中を上方へ進む。上部
のカセグレン対物鏡30は、スリット状微小開口21を
経由して上方へ進んでくる伝搬光のすべてを集束し、半
透ミラー64を介してMCT検出器70上に集光する。
【0028】コンピュータ80は干渉計92の動作制御
とともに、同期してMCT検出器70からの光電変換信
号を取り込む。分光器90は赤外フーリエ変換分光器で
あるので、この場合は、光電変換信号はインターフェロ
グラムであり、コンピュータ80はこのインターフェロ
グラムを取り込んでデータとして記憶手段に記憶する。
コンピュータ80に内蔵するフーリエ変換手段(例え
ば、プログラムで構成される)を起動してデータ化した
インターフェログラムをフーリエ変換すると、赤外吸収
スペクトル分布あるいは赤外反射スペクトル分布を得る
ことができ、可視化して出力する。
【0029】試料50は、XYの2軸ステージ40に載
置されている。このステージ40を、スリット状微小開
口21のスリット幅の方向に走査する。この走査によ
り、スリット幅に応じた空間分解能で、1次元の、赤外
吸収ないし反射スペクトルの分布を測定することができ
る。なお、波長λの方向も次元に加えれば、(λ,X)ま
たは(λ,Y)の2次元のスペクトル分布ということがで
きる。また、上記の装置、手法は、例えば有機多層膜な
ど、1次元方向にのみ構造をもつような試料に対し(実
際の測定に際しては、膜厚方向の断面、あるいは膜厚方
向に交差する方向の断面とする)、回折限界を超えた空
間分解能で赤外顕微分光分析を行える。したがって、ス
リット状微小開口21のスリット状開口内に対応する試
料0の微小領域に、例えば吸収分布をもつ2次元構造の
一部が存在するような場合には、正しいスペクトル分布
が得られない。尤も、有機多層膜試料などに対し、試料
の1次元方向の物質分布や微細構造の解析等が、ミクロ
ンオーダないしスリット幅のより狭小化によるサブミク
ロンオーダで行えるという点についてはきわめて顕著な
効果を有している。
【0030】試料の観測領域に例えば2次元分布の吸収
物体があるような場合、後述するプロジェクション法に
より、その2次元分布の吸収像を再構成することが可能
である。この再構成された吸収像はミクロンオーダの空
間分解能を有する。プロジェクション法を行えるよう
に、図5に示したステージ40は、また、光軸を中心と
して回転可能に構成されており、あらかじめ定めた所定
角度φだけ割出し制御してスリット幅の方向に走査でき
るようにされている。もちろん、XYの2軸走査制御お
よび角度φの割り出し制御等はコンピュータ80の制御
下に行うことができる。
【0031】次に、本発明の実施例における重要な要素
である微小開口プローブ20につき、より詳しく具体的
に説明する。図6に外形構造を示している。半径Rが
7.5mmの赤外透過結晶の半球体を加工して得られて
いる。下部の円錐面23は半球体の底面に対し15.0
°の母線をなすように加工されている。円錐面23に施
した光学的遮蔽としての金属薄膜24は金のコーティン
グ膜であり、スパツタリングにより形成されている。そ
して、スリット状微小開口21は、この金のコーティン
グ膜を切欠して形成されている。スリット幅は約2μ
m、スリット長さは約70μmである。なお、球面22と
円錐面23との中間の輪帯部25は、加工の際の把持部
であり、また、このプローブ20を光学系に組付ける場
合の固定部ともなっている。この輪帯部25の直径は1
3mmである。
【0032】スリット開口を作製するための基体となる
赤外透過結晶はZnSeとしている。この他にも適用可
能な結晶はあり、特徴とともに表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】実施例のように、結晶をプローブとして用
いるので、幾つかの条件を満たす必要がある。条件とし
て、中赤外域でのスペクトル測定に必要な波長域(約
2〜15μm)で透過率が高いこと、結晶上に作製する
開口の形状やサイズの確認を容易に行えるように可視光
を透過すること、水分を含む試料の測定、長時間の使
用や、取り扱い易さを考慮して、潮解性がないこと、
結晶上での開口作製などにおいては結晶の加工等が必要
になるため、加工、研磨が行いやすいこと、加工時な
どの取り扱いを考慮して、可能な限り毒性が少ないこと、
が挙げられる。
【0035】そこで、各結晶の性質を検討すると、Zn
Seは、可視から赤外間での広い波長域で透過率が高く
潮解性もない。ただし、医薬用外毒物に指定されている
ため、取り扱いに注意を要する。ZnSは、ZnSeと
同様の性質をもつが、透過波長域はZnSeに比べやや
狭い。また医薬用外毒物に指定されているため、取り扱
いに注意を要する。KBrをはじめKCl,NaClな
どのハロゲン化物は、可視領域から赤外領域の広い領域
にわたって透過率が高い。潮解性がある。また、加工が
困難である。MgF2をはじめCaF2,BaF2などの
フッ化物は、潮解性はほとんど無く、可視から赤外まで
透過率はよい。ただし、10μm以上の波長域では透過
率が低くなり、この領域でのスペクトル測定は困難とな
る。Ge,Siの半導体は、潮解性がなく、赤外領域の
長波長側まで透過率が高いが、可視光は透過しないた
め、結晶上に作製するスリットなどを可視光のもとで確
認することができない。Al23,MgOなどの酸化物
は、潮解性はなく、可視光に対する透過率も高い。ただ
し、長波長域での透過率は低く、また結晶が硬いため加
工が困難である。
【0036】したがって、表1に掲げた赤外透過結晶に
はどれも一長一短があり、上記の条件をすべて満足する
結晶はない。ただし、の毒性については、取り扱い時
に十分注意を払えば問題はない。そこで、ZnSeかZ
nSが最もよく条件を満たすと考え、さらに、ZnSe
とZnSとでは、ZnSeの方が透過波長域が広く、毒
性もZnSよりは低いので、実施例ではプローブ材料と
して最適のものとして、ZnSeを選択した。図7にZ
nSe結晶の透過率スペクトルを示す。ZnSe結晶の
円錐面の皮膜用コーティング金属には、金が用いられて
いる。金の可視・赤外域における複素屈折率、および表
皮深さは表2に示す通りである。表皮深さとは、光が金
属中を進行するとき、その強度が1/e(eは自然対数
の底)になる距離で定義されるものである。
【0037】
【表2】
【0038】開口を作製する金属膜は、開口以外の場所
では十分に光を遮断する必要がある。金属の膜厚を十分
厚くすれば光は遮断されるが、その一方で、膜厚が大き
いと、開口を通る光が開口内で散乱され、開口を透過す
る光の量が減少してしまうと考えられる。よって、金の
膜厚は、光を十分に遮断できる厚さで、可能な限り薄い
ものが適当である。
【0039】表2から分かるように、可視域と赤外域で
の金の表皮深さは、若干可視域の方が深い程度である。
したがって、コーティングした金の膜厚で赤外域の光を
遮断できるかどうかは、可視域において、光が漏れ出し
てこないことを確認することで判断できる。金薄膜に可
視光を照射し、透過光を確認したところ、金は約300
nm程度の膜厚で可視光を遮断することができることが
分かった。そこで、結晶表面にねスパッタ装置により金
を約300nmコーティングした。金を結晶にコーティ
ングするには、あらかじめ、結晶表面が十分に滑らかで
ある必要がある。コーティングする膜厚が300nm程
度であるから、局所的にこれより大きな凹凸があると、
そこから光が漏れ出ることがあるからである。したがっ
て、金をコーティングする前に、結晶表面を研磨シート
により十分滑らかになるまで研磨した。研磨シートに
は、粒径0.3μmのラッピング・フィルムシートを用い
た。
【0040】次は、スリット開口の作製である。例え
ば、スリットと同じ形状の遮蔽を結晶上に置いて、金属
コーティングを行う方法が考えられるが、目的とするス
リットは、スリット幅が約1〜2μmであるため、この
ような形状の遮蔽を作製したり、これを結晶上の先端部
に配置したりすることは事実上不可能である。基板上に
金属をコーティングし、スリット形状部分の金属をエッ
チングにより剥離する方法も考えられるが、ZnSeは
酸に溶けるため、ZnSe上でエッチングをおこなうこ
とはできない。
【0041】したがって、スリットの作製には図8に示
すような方法を用いた。すなわち、金属の針26と、金
属コーティングした結晶20'とを衝突させるという方
法である。金属の針26の先端部は、拡大図示のよう
に、開けるスリットと同一の幅をもつクサビ形状をして
いる。そして結晶20'の位置の制御を、3軸ステージ
27およびピエゾ素子28,29により行い、固定した
金属針26に衝突させる。結晶の位置を制御するピエゾ
素子は2方向X,Zに取り付けられている。つまり、結
晶が針先端に近づく方向(図8のZ軸方向)と、結晶と針
とが横にずれる方向(図8のX軸方向)である。実際に金
属針と結晶とを衝突させて開口を開けようとしたとこ
ろ、Z軸方向にのみ結晶を動かして針と衝突させただけ
では、結晶上の金属に傷はつくものの、光を透過するよ
うな開口を作製することは困難であった。そこで、結晶
と金属針26とが接触した時点で結晶をZ軸方向に動か
しながら、ピエゾ素子28により同時にX軸方向にも動
かしたところ、スリット状の開口を作製することができ
た。金属針と結晶との接触の様子、および、微小スリッ
トの結晶表面上における位置を調節するため、金属針の
先端と結晶表面の先端部分の接触箇所を、図8のX軸方
向とY軸方向の2方向から、顕微鏡を用いて観測しなが
ら、スリット作製を行った。また、金属針と結晶とが接
触してからの、結晶のZ軸方向への移動量を調節するに
は、金属針と結晶とが接触する位置を正確に把握する必
要がある。しかし、2方向からの顕微鏡観察のみでは接
触した瞬間を正確に見極めることが難しい。したがっ
て、金属針と結晶表面の金属との間に電流を流し、電流
計で、電流の流れ始める位置を確認することで、金属針
と結晶との接触した厳密な位置を確認した。
【0042】なお、針26の材質としては、結晶20'
との衝突で針先の形状が崩れることのないよう硬度の高
い、ステンレスを用いた。硬度の高い材質として、チタ
ンも用いたが、もろいため、加工が困難であった。直径
約1mmのステンレスの金属棒の先端を、研磨シートを
用いて研磨し、目的とするスリットと同一の幅をもつ、
図8のようなクサビ形の形状に加工した。用いた研磨シ
ートは粒径0.3μmのラッピング・フィルムシートであ
る。針の研磨は、針の先端を顕微鏡により観察しながら
行った。
【0043】以上の方法で作製したスリット状微小開口
21は、プローブ20の球面側から円錐面の裏側を照明
し、円錐面の表面上を顕微鏡により観測して、形状、長
さを確認することができる。一例では、スリット幅2μ
m、スリット長約70μmと確認された。また、数例を作
製し、後述の具体的な実施例で適用した。
【0044】
【より具体的な実施例】図5の装置システムにより、図
9に示すような、基盤51上にコーティングした金属膜
52を、スリット状開口21に直交するように面内で1
次元走査し、金属膜52のエッジ部分での赤外透過スペ
クトルの変化を測定した。試料50の被検体としての金
属膜52は、膜厚が約15nmの金(Au)であり、基盤
51は赤外光に対し透過率の高いBaF2を用い厚さは
約1mmである。スリット状開口21のスリット幅は約
2μm、スリット長さは約50μmである。そして、この
実施例の場合は、各測定位置で、微小開口プローブ20
のスリット状開口21と試料50とを接触させて測定を
行っている。
【0045】図10は、試料50を矢印の方向に走査し
たときに得られた、金属膜52のエッジ付近での透過率
スペクトルの変化を示したものである。図10の(a)、
(b)、(c)、(d)は、それぞれ2.5μm離れた4点で測定
されたスペクトルである。なお、各スペクトル測定の積
算回数は100回であった。図10より、(a)−(b)、
(c)−(d)かんでは測定波数全域にわたって、透過率の低
下は約10%であるが、(b)−(c)間では約50%も低下
しているのが分かる。つまり、(b)−(c)間で金属膜52
のエッジを検出していると考えられる。なお、各スペク
トルの2350cm-1付近で透過率が大きく変動してい
るのはCO2の吸収によるものである。
【0046】次に、(1)4000cm-1(2.5μm)、
(2)2500cm-1(4μm)、(3)1666cm-1(6μ
m)、(4)1250cm-1(8μm)、(5)1000cm
-1(10μm)の各波数(波長)における、透過率の変化を
図11、図12に示す。両図の(n)−aはプローブ20
を用いて測定したとき、(n)−bはこれを用いなかった
ときの結果である。bの測定時の視野絞りは約8μm×
8μmであった。a、bそれぞれの測定における、各波
数ごとの分解能を検討するために、測定された透過率の
うちの最大値と最小値との差Dに対して、0.75Dか
ら0.25Dへ変化するのに要する距離を、この例にお
ける空間分解能Rと規定する。図11、図12それぞれ
の0.75Dと0.25Dとを表す直線を合わせ示してい
る。各グラフから読み取ったRの値を表3にまとめて示
す。
【0047】
【表3】
【0048】表3から、プローブを用いて測定したとき
の分解能Rは、各波長にたいして約2〜3μm前後であ
るのに対して、プローブなしで測定したときのRは、各
波長によって約7μmから約15μmまで大きく異なって
いる。プローブがない場合の空間分解能は、視野絞りの
大きさに加え、波長とカセグレン対物鏡の開口数NAに
よって決まる像の拡がりによって決定されるので、波長
が長くなればなるほどRもそれに応じて大きくなる。一
方、スリット・プローブを用いたニアフィールド測定で
は、(1)から(5)の各波長でRがほぼ一定の値をとり、
空間分解能が波長に依存せず、スリット幅によって決ま
ることが分かる。
【0049】この実施例で用いたカセグレン対物鏡の開
口数NAは0.62である。したがって、レーリーの式
(Δr=0.61λ/NA)より得られる、回折限界は使
用する波長とほぼ同程度である。表3の結果を見ると、
スリットを用いた場合は、いずれの波長においても回折
限界を超えた空間分解能を実現していることが分かる。
【0050】もう一つの実施例は、高分子フィルムの赤
外吸収スペクトルの測定である。図13に示すように、
厚さ約1mmのBaF2基板53上に密着固定したポリ
イミド系耐熱高分子フィルム54をスリット状微小開口
プローブ20のスリット21のスリット幅の方向に1次
元走査して、赤外吸収スペクトルを求めたものである。
走査方向は図中の矢印方向であり、各スペクトルの測定
の積算回数は100回である。なお、適用した微小開口
プローブ20のスリット状開口21のスリット幅は約2
μmで、スリット長は約30μmである。また、ポリイミ
ド系耐熱高分子フィルム54の厚さは約50μmであ
る。この試料54の、通常の赤外分光測定で得られる透
過率スペクトルと吸光度スペクトルをそれぞれ図14
(a),(b)に示す。尚、この実施例では、スリット状開口
21を試料54には接触させることなく、走査してい
る。試料54とスリット状微小開口21間の距離は、図
5に示される、CCDカメラ102を備える観察手段1
00によって観察したところ、約1.5μmであった。
【0051】図15の(a)、(b)、(c)は、試料54のエ
ッジ付近において、2μm間隔で測定した透過率スペク
トルを示している。(a)から(c)の4μm間で、試料54
の吸収ピークが消えるのが確認できる。
【0052】図14(b)に示した試料54の吸収ピーク
のうち、矢印で示した、(1)2964cm-1(3.37μ
m)、(2)1778cm-1(5.62μm)、(3)1722c
-1(5.81μm)、(4)1600cm-1(6.25μm)、
(5)1502cm-1(6.66μm)、(6)1382cm-1
(7.24μm)の6つの波数(波長)における透過率の変化
を図16、図17に示す。図中の(n)−(a)はプローブ
20を用いて測定した場合、(n)−(b)はプローブを用
いずに測定した場合である。なお、(b)においては、約
5μm×5μmの視野絞りを用いて測定されている。
【0053】図16、図17の各グラフにおける縦軸
は、各波数における透過率を、試料54の吸収のない2
160cm-1の透過率で割った値である。割り算を行っ
た理由は次の通りである。すなわち、測定中、試料のエ
ッジ付近では信号全体の強度が減少する現象が見られ
た。これは、スリットの直前に試料が存在するときには
試料からの透過光と試料表面からの散乱光がスリットに
入射していたのに対して、試料のエッジ部分がスリット
の真下を通過し、試料がスリット直前に存在していない
ときは、スリットから約50μm(試料の厚さ)離れた基
板を透過した光だけがスリットに入射し、基板表面から
の散乱光はスリットに到達しないためであると考えら
れ、このため、試料による吸収がない波数での透過率を
参照(割り算)することにより、スペクトル変化のうち試
料の吸収のみの変化をみることができると考えられるか
らである。
【0054】図16、図17により明らかなように、プ
ローブ20を用いて測定した場合、各波数の前記の規定
によるRの値はおよそ3〜4μmで一定であることが分
かる。また、(b)の場合は、Rは大きくなる傾向が現れ
ている。なお、(b)では、S/N比が低く、Rの誤差も
大きいと理解される。この実施例においても、先に示し
たように、プローブなしの計測では、波長が長くなるほ
ど、空間分解能が低下するのに対して、スリット・プロ
ーブを用いた計測では、空間分解能は波長によらず、ス
リット幅で決まることが明白に確証されている。
【0055】なお、プローブを用いた(a)の例で、スリ
ット幅が2μmで、Rが3〜4μm程度であるのに対し
て、先の実施例では、同じ幅のスリットを使っているに
もかかわらず、Rが2.5μm程度戸、値が異なるのは、
前者の場合よりも後者の場合の方が、プローブと試料と
の距離大きかったためであると考えられる。また、後者
の実施例で用いた試料の厚さが約50μmであるため、
前者の実施例に比べ、エッジ部分の形状が鈍っているも
のと考えられる。
【0056】上記の実施例により、測定に用いる光の波
長よりも短い幅を有するスリット状開口のプローブを用
いることによって回折限界を超えた空間分解能で赤外分
光スペクトルを測定できることが分かる。また、通常の
赤外顕微分光測定では、空間分解能は回折限界で制限さ
れ、その制限は波長に依存するため、測定波数が小さい
ほど空間分解能が低下するという現象が現れるが、スリ
ット状開口プローブを用いたニアフィールド顕微分光測
定では空間分解能が波長によって制限されるということ
がなく、基本的には、スリット状開口のスリット幅の大
きさによってのみ決定されるというものである。実施例
によれば、波長域2.5〜10μmにわたって、約2.5
μmの空間分解能が実現されている。
【0057】したがって、実施例のような赤外ニアフィ
ールド顕微分光システムを用いれば、有機多層膜試料な
ど、試料の1次元方向の物質分布や微細構造を、回折限
界を超える空間分解能で分析できる。
【0058】実施例のプローブのスリット幅は約2μm
であったが、このスリット幅をより小さくすることで、
さらに高い空間分解能が実現可能であり、サブミクロン
のオーダも事実上、実現が可能である。尤も、空間分解
能を向上させるためにスリット幅をより狭くすると、信
号光は微弱化するが、スリット長を長くする、光源
強度や検出器感度を向上させる、スペクトル測定時の
測定・積算回数を増やす、さらに高い開口数NAのカ
セグレン対物鏡を用いる、ノイズ光を抑圧する特段の
工夫をする、及びスリット状開口の直線性を厳格にす
るとともに開口エッジの凹凸をなくす、等の単独あるい
は組合わせによる工夫により、解決が可能である。
【0059】また、スリット状微小開口をプローブとし
て用いたとき、回折限界を超える空間分解能が得られる
のは、スリット幅の方向であり、スリットの長さ方向に
高い分解能は得られない。したがって、多層フィルムの
断面などの試料を測定する場合はスリット状微小開口を
幅方向に1次元走査することで試料の分布(組成等に基
づく境界を超えて、A,B,C,D……と識別できる)
を測定できるが、たとえば、試料内に異なる種類の物質
が2次元的に点在しているいるような場合は、スリット
状微小開口を1次元方向に走査するだけでは、その分布
を観測することができない。
【0060】スリット状微小開口を用いながら、試料の
2次元分布を計測する方法として、スリット状微小開口
を一方向にだけでなく、試料面内で様々な方向に走査す
ることが考えられる。図18に図解されるように、試料
中に吸収等の2次元分布をもった物体55が存在する試
料を測定するような場合を考えると、スリット21を1
次元方向にのみ走査しただけでは、スリットの長さ方向
における試料の情報は得られない。そこで、スリット2
1を回転させて同様にスリット幅の方向に走査を行う。
この操作により、回転した後のスリット幅の方向におけ
る試料の情報が得られる。スリットの回転角φを一定で
細かく割り出し、φ1,φ2,φ3,φ4,……の多方向に
おいてスリットの走査を行えば、それだけ試料の2次元
の情報を多く得ることができる。ある波長λ0における
2次元の透過率の分布は、各回転角φnにおける1次元
の透過率分布を再構成することにより求めることができ
る。つまり、2次元CTの原理を用いるもので、1次元
投影データを測定し、そこからもとの物体の2次元断面
像を再構成する方法(ラドン変換とラドン逆変換と呼ば
れる手法)である。このような、試料への多方向からの
観測結果から試料の構造を再構成する計測法として、X
線CTの技術が知られている。X線CTで用いられてい
るバックプロジェクションの手法をそのまま、スリット
状微小開口による赤外透過率分布測定に適用することが
可能である。
【0061】まず、図18に示すように、スリットを
角度φだけ回転させて、Xφ方向に関する吸収強度分布
を得る。これは、投影とも、プロジェクションともいわ
れ、数学的にはラドン変換の操作である。次に、φを
変化させて、多数の方向(φn:n=1,2,3,4,…
…)におけるプロジェクションを得る。各プロジェク
ションにおける、Xφ方向の吸収分布を、Yφ方向に沿
って並べる。これは、バックプロジェクションとよばれ
る操作である。そして、これを各φについて行い、測定
領域全体においてその総和をとる。なお、バックプロジ
ェクションから得られた再構成像(例えば、吸収分布像)
は、試料の構造のうち、空間周波数の低い構造が強調さ
れたものとなるため、一般には、上記のの操作の後、
各プロジェクションに対して、低周波を抑圧するための
フィルタリング処理を施してから、の操作を行う。こ
れをフィルタード・バックプロジェクションと称して、
X線CTでも同様に行われている。
【0062】尚、上述の実施例においては、赤外分光器
90はフーリエ変換型の分光器としたが、もちろん分散
型の赤外分光器を適用することができる。また、試料な
いし被検体50を載置するステージ50は、これに駆動
機構が付帯しステージ50が走査される構成であるが、
ステージは固定でスリット状微小開口21がステージ上
方を走査する構成、すなわち微小開口プローブ20を駆
動し走査する構成とすることも可能である。同様に、ス
テージ50は回転可能で所定角度で割出し制御されるよ
うにも構成されているが、ステージは固定で微小開口プ
ローブ20を所定角度だけ割出しできるようにこの微小
開口プローブを回転可能に支持するような構成としても
よい。
【0063】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、被検体
の表面近傍にエバネッセント波の場を形成し、このエバ
ネッセント波の場の中に幅が微小なスリット状開口を臨
ませ、このスリット状開口を経由する光を検出するよう
にしたので、信号光の強度が増大してSN比が格段に改
善され微小な円形開口では不可能であった有意な信号が
得られて赤外スペクトル分布を求めることが可能となる
とともに、スリット状開口の幅方向に幅の大きさで決ま
る回折限界を超えた空間分解能を実現することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b)のそれぞれは本発明の原理の説明図で
ある。
【図2】(a),(b)のそれぞれはまた別の態様における本
発明の原理の説明図である。
【図3】(a)は微小円形開口を示し、(b)はスリット状開
口を示す本発明に係る具体的な説明図である。
【図4】本発明の一実施例の要部の断面説明図である。
【図5】本発明の一実施例の全体を示す構成図である。
【図6】微小開口プローブの具体的な形状・構造を示す
正面図である。
【図7】ZnSeの透過率スペクトルを示すグラフであ
る。
【図8】スリット状微小開口を作製する装置を示す説明
図である。
【図9】具体的な実施例における試料の走査を説明する
図である。
【図10】(a),(b),(c),(d)は透過率スペクトルの変
化を示すグラフである。
【図11】(1)−a,(1)−b,(2)−a,(2)−b,
(3)−a,(3)−bは各波数における透過率変化を示す
グラフである。
【図12】(4)−a,(4)−b,(5)−a,(5)−bは
は各波数における透過率変化を示すグラフである。
【図13】別の具体的な実施例における試料の走査を説
明する図である。
【図14】(a)はポリイミド系耐熱高分子フィルムの透
過率スペクトル、(b)は同吸収度スペクトルを示すグラ
フである。
【図15】(a),(b),(c)は透過率変化を示すグラフで
ある。
【図16】(1)−(a),(1)−(b),(2)−(a),(2)
−(b),(3)−(a),(3)−(b)は各波数における透過
率変化を示すグラフである。
【図17】(4)−(a),(4)−(b),(5)−(a),(5)
−(b),(6)−(a),(6)−(b)は各波数における透過
率変化を示すグラフである。
【図18】スリット状微小開口を用いる2次元分布の計
測方法の説明図である。
【符号の説明】
1、21 スリット状微小開口 3 透過型試料 8 反射型試料 E エバネッセント波ないしエバネッセント波の場 20 赤外透過プリズム、微小開口プローブ 24 金属コーティング膜 30、60 カセグレン対物鏡 40 ステージ 50 試料ないし被検体 70 MCT検出器 80 コンピュータ 90 赤外フーリエ変換分光器

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】赤外域の分光光を用いて被検体の表面近傍
    にエバネッセント波の場を形成し、このエバネッセント
    波の場の中に幅が微小なスリット状開口を臨ませ、この
    スリット状開口からの伝搬光またはスリット状開口に対
    向する被検体の微小領域からの伝搬光を集光し、集光し
    た光を光電変換して信号を得、この信号に基づいてスペ
    クトル分布を求める、ことを特徴とする赤外顕微分光分
    析方法。
  2. 【請求項2】前記スリット状開口の幅の長さは、用いる
    赤外分光光の最短波長以下である請求項1記載の赤外顕
    微分光分析方法。
  3. 【請求項3】被検体とスリット状開口とを相対的にスリ
    ット状開口の幅方向に走査する請求項1または2記載の
    赤外顕微分光分析方法。
  4. 【請求項4】被検体とスリット状開口とを相対的に所定
    角度回転させ、前記走査を複数回行い、得られた複数の
    情報から被検体の2次元の分布を求める請求項3記載の
    赤外顕微分光分析方法。
  5. 【請求項5】前記信号はインターフェログラムである請
    求項1ないし4のいずれかに記載の赤外顕微分光分析方
    法。
  6. 【請求項6】被検体を載置するステージと、ステージに
    載置された被検体に向けて赤外分光器からの光を集光し
    て投射する手段と、被検体の表面に対向する側に幅が微
    小なスリット状開口を有する赤外透過プリズムと、赤外
    透過プリズムのスリット状開口を経由した光を集光する
    手段と、集光した光を光電変換して信号とする手段と、
    前記信号に基づいてスペクトル分布を演算する手段と、
    を備えることを特徴とする赤外顕微分光分析装置。
  7. 【請求項7】前記赤外透過プリズムのスリット状開口の
    幅の長さは、用いる赤外分光光の最短波長以下である請
    求項6記載の赤外顕微分光分析装置。
  8. 【請求項8】前記ステージと前記赤外透過プリズムとを
    相対的にスリット状開口の幅方向に走査する手段を備え
    る請求項6又は7記載の赤外顕微分光分析装置。
  9. 【請求項9】前記ステージと前記赤外透過プリズムとを
    相対的に所定角度回転させる手段と、それぞれの回転位
    置における前記走査による信号に基づいて被検体の2次
    元の分布を構成する手段とをさらに備える請求項8記載
    の赤外顕微分光分析装置。
  10. 【請求項10】前記赤外透過プリズムは上部が半球形状
    で下部は円錐形状である請求項6ないし9のいずれかに
    記載の赤外顕微分光分析装置。
  11. 【請求項11】前記赤外透過プリズムはZnSe結晶ま
    たはZnS結晶からなるものである請求項6ないし10
    のいずれかに記載の赤外顕微分光分析装置。
  12. 【請求項12】前記スリット状開口は金のコーティング
    皮膜を切欠して形成したものである請求項6ないし11
    のいずれかに記載の赤外顕微分光分析装置。
  13. 【請求項13】前記赤外分光器はフーリエ変換分光器で
    あり、前記信号はインターフェログラムである請求項6
    ないし12のいずれかに記載の赤外顕微分光分析装置。
  14. 【請求項14】前記赤外分光器は分散型の分光器である
    請求項6ないし12のいずれかに記載の赤外顕微分光分
    析装置。
  15. 【請求項15】前記投射手段または前記集光手段の少な
    くともいずれか一方はカセグレン対物鏡である請求項6
    ないし14のいずれかに記載の赤外顕微分光分析装置。
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