JPH0841486A - 熱間圧延用潤滑剤組成物とその使用方法 - Google Patents

熱間圧延用潤滑剤組成物とその使用方法

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JPH0841486A
JPH0841486A JP17559794A JP17559794A JPH0841486A JP H0841486 A JPH0841486 A JP H0841486A JP 17559794 A JP17559794 A JP 17559794A JP 17559794 A JP17559794 A JP 17559794A JP H0841486 A JPH0841486 A JP H0841486A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ハイスロールによる熱間圧延において顕著な
製品スケール疵発生と圧延荷重増大を軽減する。 【構成】 潤滑油に防錆剤として添加される種類の油溶
性のカルボン酸、ポリカルボン酸またはその無水物、部
分エステルもしくは部分アミド、スルホン酸、ならびに
これらの塩の1種もしくは2種以上を0.05〜20重量%の
量で熱間圧延潤滑油に添加した潤滑剤組成物を、水の存
在下で熱間圧延用ロールに供給して、ロール表面の酸化
を防止する。 【効果】 ロール表面の酸化による黒皮の生成が抑制さ
れ、ロール肌荒れが著しく軽減され、この肌荒れに起因
する圧延製品の表面スケール疵の発生が防止される。同
時に圧延荷重上昇も軽減される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼材の板圧延、形鋼圧
延、線材圧延、製管圧延などを包含する熱間圧延におい
て、熱間圧延用ロール表面に形成される黒皮を抑制し、
ロール交換サイクル延長、ロール寿命向上や鋼材製品表
面疵を軽減することのできる、鋼材の熱間圧延用潤滑剤
組成物およびその使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、熱間圧延用ロールとして、特開平
2−240634号、同2−25205 号、同2−88745 号、同3
−126838号、同3−219047号、同5−148584号各公報等
に開示されているような、耐摩耗性に優れた高炭素系高
速度鋼ロール (以下、ハイスロールと称する) が開発さ
れ、実際に使用されている。
【0003】ハイスロールとは、少なくともロール表層
部の材質が高速度鋼 (ハイス) からなるロールのことで
あり、遠心鋳造方法、ESR 鍛造法、連続肉盛り法など各
種製法によって製造される。その多くは、ロール表層部
の材質のみが高速度鋼である、即ち、ハイスの外殻層を
ロール表面に設けた複合ロールであるが、ロール全体が
ハイスからなる一体ロールであってもよい。
【0004】ハイスロールのロール表層部の一般的な化
学組成は、重量%で、 C: 1.0〜3.0 %、 Si: 0.2〜3.5 %、 Mn: 0.3〜1.5 %、 Cr: 3.0〜12.0%、 Mo: 0.5〜8.0 %、 V: 1.0〜8.0 %、 W: 0.5〜8.0 %、 Co: 0.2〜5.0 %、 Nb: 0.2〜3.5 %、 その他残部:実質的にFe である。上記元素に加えて、B、Al、Ti等の特殊元素を
添加した例も見られるが、いずれも基本的には高速度鋼
の化学組成の範疇に入るものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このハイスロールは、
金属組織中に高温硬度の高いMC型 (主としてVC) 炭
化物を含有し、優れた熱間耐摩耗性を発揮する。そのた
め、ロール肌荒れが従来ロールに比べ軽減され、表面粗
さが良好となる。
【0006】この良好な表面粗さにもかかわらず、ハイ
スロールは、圧延後の製品表面にスケール疵 (ロール肌
荒れに起因する表面疵で、ロール表面のスケールが製品
表面に押し込まれて疵になったもの) が発生しやすいと
いう問題があった。そのため、ハイスロールは耐摩耗性
が優れているのに、早期のロール交換を余儀なくされ、
稼動率の低下、ロール原単位の劣化等を招くほか、ロー
ル保有数の削減、省力化も進まないでいた。
【0007】熱間圧延用ロールの耐久性に関して、黒皮
を積極的にロール表面に形成させ、ロールの耐摩耗性や
耐肌荒れ性を改善することにより、その耐久性を高める
ことが、例えば特開昭52−37535 号、同60−24206 号各
公報や、特公平4−50082 号各公報に開示されている。
これは、高温硬度が高く、断熱性の良好な黒皮を安定的
にロール表面に形成させることにより、ロール表面温度
の抑制や耐摩耗性・耐肌荒れ性改善効果を狙ったもので
ある。例えば、特開昭52−37535 号公報に記載の方法で
は、圧延中にロール表面に水酸化鉄を付着させながら圧
延することにより、外的要因により黒皮を積極的にロー
ル表面に生成させる。
【0008】黒皮とは、熱間圧延の過程でロール表面に
発生するFe3O4 を主体とした酸化皮膜のことであり、ミ
ル・スケール、或いは単にスケールとも呼ばれる。しか
し、このような黒皮形成は、アダマイトロールや高Cr鋳
鉄ロールなどのように耐摩耗性の低い従来の熱間圧延用
ロールには効果があっても、熱間耐摩耗性に優れたハイ
スロールでは逆に耐久性を低下させてしまう結果とな
る。
【0009】また、従来の熱間圧延用ロールにあって
も、黒皮が厚くなると剥離し易くなり、そのために表面
凹凸の大きなロール肌荒れを生じ、それが鋼材表面に転
写される結果、製品疵を生じてしまうという問題を生じ
ていた。さらに、ハイスロールによる熱間圧延では、圧
延荷重が高くなり、圧延機の製造能力を低下させるとい
うような問題もあった。
【0010】本発明の目的は、熱間圧延用ロール、特に
ハイスロールによる鋼材の熱間圧延において、ロール肌
荒れを防止し、それによって圧延材の製品表面疵 (スケ
ール疵) の発生を軽減するとともに、圧延荷重の低減、
ロール耐久性の向上が可能な手段を提供することであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために、熱間圧延用ロール、特にハイスロー
ルによる圧延加工におけるスケール疵の発生原因につい
て調査した。
【0012】ハイスロールのスケール疵の発生原因の一
つは、ハイスロールの優れた機械的性質、例えば、ヤン
グ率が高いことや、高温硬度が高いことに起因する。即
ち、これらの性質により、圧延時にロール表面の微小な
肌荒れさえも正確に圧延材に転写され、こうして圧延材
に転写された肌荒れ (凹凸) の凸部が酸化し、この部分
が次圧延時に押し込まれ、表面疵となるものと推測され
る。従って、特にハイスロールにおいては、ロール表面
の微小な肌荒れを防止することが、スケール疵の発生防
止に有効である。
【0013】調査の結果、このハイスロールの微小な肌
荒れは、ロール表面に発生した薄層の酸化スケール皮膜
(黒皮) が部分的に生成・剥離を繰り返し、黒皮の生成
部と剥離部とが混在することにより凹凸を生じてしまっ
た結果生じたものであること、そしてこの凹凸が圧延製
品表面のスケール疵の主要な原因となることを究明し
た。また、ハイスロールは、その化学組成からも予測さ
れるように非常に酸化され易い。酸化により生成する黒
皮は、ロールの自己酸化もしくは腐食生成物が変態して
Fe3O4 化したものであって、黒皮が形成されると、ロー
ル表面に組織の影響を受けたと考えられる微細な突起が
現れ、圧延時にくさび効果として摩擦を高め、圧延荷重
が高くなることも判明した。
【0014】従って、ロール表面の酸化を抑制して黒皮
形成を防止できれば、スケール疵の発生と圧延荷重の増
大の両方の問題を一挙に解決できると考え、ロール表面
の酸化抑制あるいは黒皮形成の防止手段について検討を
重ねた。その結果、防錆剤として機能する特定成分を含
有する潤滑剤組成物が極めて有効なこと、そしてこの潤
滑剤組成物は水の存在下において特に顕著に効果を発揮
することを知見したのである。
【0015】なお、熱間圧延用ロールの黒皮形成を、潤
滑剤の使用により積極的に制御 (増大または抑制)する
という考え自体が従来は全くなかった。冷間圧延では、
圧延時およびその直後の板の防錆や潤滑剤の劣化 (酸
化) 防止を目的として少量 (〜0.1 重量%) の防錆剤を
添加したり、特開平4−314795号公報等に開示されてい
るように表面処理鋼板類の出荷防錆油として使用される
ことはあった。
【0016】しかし、熱間圧延用の潤滑剤に圧延用ロー
ルの黒皮形成を操作することを意図して、特定成分を添
加するということが、従来の技術通念上、全く考えられ
ていなかった。即ち、熱間圧延用潤滑剤としては、例え
ば、潤滑油に極圧剤、油性剤、固体潤滑剤などを配合し
て、摩擦軽減により圧延荷重低減やロール摩耗軽減を狙
ったものは従来もあったが、本来の潤滑性向上目的に加
えて、ロール表面の酸化、つまり黒皮を抑制も同時に達
成することは試みられたことがない。従って、ロール表
面の酸化皮膜 (黒皮) 形成を抑制するために、熱間圧延
用潤滑剤組成物中に酸化防止剤や防錆剤を積極的に高い
割合で添加した例は、これまで知られていない。
【0017】ここに、本発明は、カルボン酸、ポリカル
ボン酸またはその無水物、部分エステルもしくは部分ア
ミド、スルホン酸、ならびにこれらの塩よりなる群から
選ばれた1種もしくは2種以上の油溶性化合物を合計で
0.05重量%以上含有し、残部が潤滑油からなることを特
徴とする、熱間圧延用ロール表面の酸化抑制作用を備え
た鋼材の熱間圧延用潤滑剤組成物を要旨とする。
【0018】本発明によればまた、鋼材の熱間圧延にお
いて、上記の熱間圧延用潤滑剤組成物を、水の存在下で
熱間圧延用ロール表面に供給して、潤滑と同時に該ロー
ル表面の酸化を抑制することを特徴とする熱間圧延用潤
滑剤組成物の使用方法も提供される。この方法の好適態
様にあっては、熱間圧延用ロールはハイスロール、即
ち、少なくともロール表層部の材質が高速度鋼であるロ
ールである。
【0019】本発明の熱間圧延用潤滑剤組成物は、防錆
効果を有する少なくとも1種の油溶性化合物を潤滑油中
に含有させたものである。この油溶性化合物は、カルボ
ン酸、ポリカルボン酸またはその無水物、部分エステル
もしくは部分アミド、スルホン酸、ならびにこれらの塩
よりなる群から選ばれる。
【0020】カルボン酸は、モノカルボン酸と2以上の
カルボキシル基を有するポリカルボン酸のいずれでもよ
いが、好ましいのはポリカルボン酸である。使用できる
モノカルボン酸の例としては、ナフテン酸、アビエチン
酸等が挙げられる。脂肪酸およびその塩は、本発明で使
用する油溶性化合物としては不適当である。
【0021】ポリカルボン酸としては、アルケニルコハ
ク酸、ダイマー酸などのジカルボン酸が好適であるが、
トリカルボン酸もしくはそれ以上のポリカルボン酸も、
油溶性であれば使用できる。ポリカルボン酸は無水物
(例、アルケニルコハク酸無水物) であってもよい。ま
た、ポリカルボン酸の部分エステルもしくは部分アミド
(即ち、少なくとも1個のカルボキシル基が残るように
不完全にエステル化もしくはアミド化したもの) も使用
できる。その例には、アルケニルコハク酸半アルキルエ
ステル、アルケニルコハク酸半アルキルアミド、オレイ
ルザルコシン酸などがある。
【0022】スルホン酸としては、石油スルホン酸、合
成スルホン酸、例えばジノニルナフタリンスルホン酸、
アルキルベンゼンスルホン酸等が使用できる。
【0023】これらのモノカルボン酸、ポリカルボン酸
またはその部分エステルもしくは部分アミド、ならびに
スルホン酸は、いずれもその塩の状態でも使用できる。
但し、塩の状態で油溶性 (水不溶性) を有している必要
があるので、Ba、Ca、Zn等の金属塩が適当である。ま
た、Na、K等のアルカリ金属塩、あるいはアミン塩も、
カルボン酸もしくはスルホン酸に付加しているアルキル
基等の長さによっては水不溶性 (油溶性) となるので、
使用できる。なお、石油スルホン酸については、中和量
より著しく過剰に金属を含有させた高塩基性スルホネー
ト (例、高塩基性Caスルホネート) が知られているが、
あまりに高塩基性のものは好ましくなく、塩基価が10 m
gKOH/g以下のものが適当である。塩として特に好ましい
のは、Baスルホネートである。
【0024】前述した油溶性化合物は防錆効果を有して
おり、その多くは潤滑油に対して防錆剤として添加され
てきた化合物である。しかし、潤滑油に添加される防錆
剤としては、これら以外にも、例えば、アミン、脂肪酸
多価アルコールエステル、酸化パラフィン、脂肪酸、リ
ン酸エステルなど多くの材料が使用されているが、この
ような他の防錆剤では、ハイスロールの黒皮形成の抑制
や圧延荷重軽減に有効ではなく、上記のカルボン酸、ポ
リカルボン酸またはその無水物、部分エステルもしくは
部分アミド、スルホン酸、ならびにそれらの塩だけが本
発明の目的を達成することができる。
【0025】このような油溶性化合物の1種もしくは2
種以上を潤滑油中に添加して溶解させると、本発明の熱
間圧延用潤滑剤組成物が得られる。潤滑油としては、熱
間圧延に従来より使用されている熱間圧延用潤滑油でよ
い。潤滑油は一般に潤滑基油単独、或いはこれに各種の
添加剤を少量配合したものからなる。
【0026】潤滑基油としては、鉱油 (例、パラフィン
系鉱油、ナフテン系鉱油) 、合成潤滑油 (例、合成エス
テル) 、油脂 (例、ナタネ油、ラードオイル) などの1
種もしくは2種以上を使用できる。
【0027】潤滑油中に配合しうる添加剤としては、固
体潤滑剤、極圧添加剤、酸化防止剤(潤滑油の酸化劣化
防止剤) 、流動点降下剤、粘度指数向上剤等がある。固
体潤滑剤の配合は潤滑油の潤滑性を高めることができ
る。固体潤滑剤の例としては、黒鉛、二硫化モリブデ
ン、窒化硼素、雲母、タルク等が挙げられる。
【0028】極圧添加剤は、高温高圧下での局部的な摩
耗や焼付きを防ぐために添加される。その例としては、
硫化油脂、硫化鉱油、ジノニルポリサルファイド等の硫
黄系極圧添加剤、トリクレジルホスフェート、リン酸ジ
オクチル等のリン酸系極圧添加剤が挙げられる。
【0029】潤滑剤の劣化防止のための酸化防止剤の例
としては、メチレン−4−4−ビス(2,6−ジターシャリ
−ブチルフェノール) 等のビスフェノール類、ジタージ
ャリ−ブチルクレゾール等のアルキルフェノール類、ナ
フチルアミン類等が挙げられる。
【0030】流動点降下剤、粘度指数向上剤の例として
は、ポリメタクリレート、ポリオレフィン等が挙げられ
る。これらの添加剤は、いずれも従来の潤滑油に含有さ
せていた範囲内の量で潤滑基油に添加することができ
る。
【0031】
【作用】本発明にかかる熱間圧延用潤滑剤組成物は、前
述のように、潤滑油中にカルボン酸、ポリカルボン酸
(その無水物、部分エステルおよび部分アミドを含む)
、スルホン酸、ならびにこれらの塩 (以下、これらを
カルボン酸またはスルホン酸と総称する) から選んだ1
もしくは2以上の油溶性化合物を含有させたものであ
る。このカルボン酸およびスルホン酸は、油溶性である
から潤滑油中に完全に溶解する。
【0032】熱間圧延用ロールは、圧延中に 900〜1100
℃に加熱された圧延材と接触して高温になるため、通常
は冷却水による冷却を受けている。従って、圧延材と接
触する直前のロール表面温度は50〜70℃程度であるが、
この温度と高湿度 (蒸発した冷却水による高温水蒸気)
のため、非常に酸化性の高い (酸化が起こり易い) 環境
になる。
【0033】少なくとも表層が自己酸化し易い化学組成
を持つハイスロールが、熱間圧延中にこのような環境に
曝されることから、酸化皮膜 (黒皮) が容易に生成す
る。そして、この黒皮が圧延時の荷重により剥離し、こ
の黒皮の形成と剥離が繰り返されることによりロール肌
荒れが発生し、ハイスロールの高温硬度が高いことか
ら、微小な肌荒れでもスケール疵の原因となるのであ
る。
【0034】本発明の熱間圧延用潤滑剤組成物は、上記
の油溶性カルボン酸またはスルホン酸を含有する。この
組成物を水と一緒に熱間圧延用ロール表面に供給する
と、ロール表面の酸化を有効に抑制することができ、そ
の結果、黒皮の形成が著しく低減する。その機構につい
ては次のように考えられる。
【0035】本発明の熱間圧延用潤滑剤組成物に溶解し
ている上記のカルボン酸またはスルホン酸は、水の存在
下では迅速にイオン化する。この酸イオンがロール表面
の鉄と反応して、油にも水にも不溶な鉄塩となり、ロー
ル表面に吸着膜を形成する。そして、この吸着膜がロー
ル表面を周囲の酸化性の高い雰囲気から遮断する結果、
ロール表面の酸化が抑制されるのである。従って、本発
明の熱間圧延用潤滑剤組成物は、従来の熱間圧延用潤滑
油とは異なる、極めて特異な性能を示し、非常に酸化し
やすい圧延状況の中でもロール表面の酸化抑制に効果を
発揮する。
【0036】その結果、黒皮の形成・剥離に起因するハ
イスロールの微小な表面肌荒れが防止され、この肌荒れ
が原因で起こる圧延製品のスケール疵の発生が著しく低
減する。それにより、ロール交換時期を大幅に遅らせる
ことができ、従来のハイスロールで見られた早期のロー
ル交換により稼動率の低下、ロール原単位の劣化等を改
善することができ、ロール保有数の削減や省力化が可能
となる。
【0037】また、このように黒皮の形成が低減する
と、黒皮の形成に伴う摩擦力と圧延荷重の増大が抑えら
れ、圧延機の製造能力の低下も防ぐこともできる。従っ
て、ハイスロールの持つ優れた耐摩耗性を最大限に有効
利用して、非常に長いロール寿命を達成することがで
き、同時に圧延機の製造能力の低下も防止できる。
【0038】この効果を得るには、本発明の熱間圧延用
潤滑剤組成物中に上記の油溶性カルボン酸またはスルホ
ン酸を0.05重量%以上の量で存在している必要がある。
油溶性カルボン酸またはスルホン酸の含有量の上限は特
に限定されないが、潤滑剤組成物の経済性や作業性の点
から通常は70重量%が上限である。潤滑性、黒皮抑制効
果、経済性、作業性等のバランスを考慮して、上記油溶
性化合物の含有量は好ましくは0.05〜20重量%、より好
ましくは1〜15重量%、特に好ましくは3〜10重量%で
ある。
【0039】本発明の熱間圧延用潤滑剤組成物は、水の
存在下で熱間圧延用ロールに供給することにより、ロー
ル表面の酸化を抑制することができる。従って、この組
成物の供給方法としては、水分が共存する供給方法が好
ましい。このような供給方法には、水と混合して供給す
るウォーターインジェクション法、加熱蒸気で噴霧化し
て供給するスチームアトマイズ法、或いはロール冷却水
に混合して供給する方法等がある。
【0040】但し、本発明の潤滑剤組成物の使用方法
は、これに限定されるものでなく、圧縮空気により噴霧
状にして供給するエアーアトマイズ法や、原液のまま供
給する方法など、他の潤滑油の供給方法も採用できる。
水分が共存しなくても、空気中の水分が作用して、ある
程度の効果は期待できるからである。潤滑剤組成物の供
給方法は、要求される粘度や濃度に応じて適当に選択す
ればよい。
【0041】また、上記のような水分が共存しない供給
方法 (例、原液またはエアーアトマイズ法) であって
も、供給地点を圧延ロール出側にすれば、熱間圧延用ロ
ールは出側で一般に冷却水により冷却されているので、
この冷却水と混合し、結果として水分の存在下での供給
となる。本発明の水分の存在下での供給とは、このよう
な場合をも包含する。
【0042】本発明の熱間圧延用潤滑剤組成物は、自己
酸化しやすいハイスロールに対して特に顕著な効果を発
揮するが、高Cr鋳鉄ロール(2.8%C−18%Cr系) 、高合
金グレン鋳鉄(3.3%C−4.4 %Ni−1.5 %Cr系) 、アダ
マイト(1.5%C−1.0 %Ni−1.2 %Cr系) など、一般に
熱間圧延に使用される他のロール材質の黒皮抑制や黒皮
による肌荒れ抑制にも効果があることは言うまでもな
い。
【0043】本発明の熱間圧延用潤滑剤組成物およびそ
の使用方法は、圧延材としてロール表面に黒皮が生成し
やすい普通鋼の熱間圧延時にその効果が顕著である。し
かし、その他の鋼の熱間圧延に利用することも可能であ
る。
【0044】
【実施例】次に具体的な実施例に基づき説明する。薄鋼
板の熱間圧延をシミュレートできる熱間コイル圧延実験
装置 (4段式圧延機) において、ロール全体が表1に示
す化学組成を有するハイスロール (胴部直径100 mm、胴
長300 mm、全長780 mm) を作業ロールとして組み込み、
この圧延装置で板厚1mm、板幅40 mm 、全長約1000 mの
極低炭鋼コイルを熱間圧延 (圧下率35%、圧延温度1000
℃、圧延速度150 m/分) した。この熱間圧延試験におい
て、表2に示す組成を有する本発明例 (No.1〜9) 、比
較例(No.10〜15) 、および従来例(No.16〜17) の潤滑剤
組成物を、ウォーターインジェクション方式 (潤滑剤濃
度1.0 %) で作業ロール (ハイスロール) に直接供給
し、その時の圧延荷重を測定した。
【0045】この潤滑剤組成物に使用した成分のうち、
鉱油とナタネ油は基油であり、ポリα−オレフィンおよ
びポリメタクリレートは粘度指数向上剤兼流動点降下剤
であり、トリクレジルホスフェートは極圧剤である。
【0046】ロール冷却は、圧延出側から冷却水を作業
ロールへ直接供給し、ロールが圧延材と接触する直前の
ロール表面温度が実機並みの50〜70℃になるように調節
した。実験装置の圧延付近の概要を図1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】熱間圧延試験後、作業ロール表面に生成し
た黒皮厚み (ロール表面断面ミクロ観察およびESCA分
析) と作業ロールの肌荒れ状況 (目視) 、コイル表面の
圧延製品表面疵 (スケール疵) の程度 (酸洗後) を調査
した。試験結果を熱間圧延中の圧延荷重の増減率の結果
とともに表2に併せて示す。なお、これらの表におい
て、ロール肌荒れと製品表面疵の評価は、次の基準で行
った (結果はいずれもN数10の測定結果の算術平均値)
。いずれも、評点1〜2が許容範囲である。
【0049】ロール肌荒れ評価 1 肌荒れなし (金属光沢に近い) 2 肌荒れ軽微 (全面に薄い黒皮肌) 3 肌荒れ (バンディング小、局部的) 4 肌荒れ (バンディング中、一部で幅小) 5 肌荒れ (バンディング大、全周で幅大)製品表面疵評価 1 スケール疵なし 2 スケール疵軽微 (面積率5%未満で部分的に発生、
残存スケールなし) 3 スケール疵小 (面積率20%未満、残存スケールあ
り) 4 スケール疵中 (面積率50%未満、残存スケールあ
り) 5 スケール疵大 (全面に発生) また、荷重増減率とは、各熱間圧延試験で測定された圧
延荷重の値 (A) を、高Cr鋳鉄ロールを用いて従来例(N
o.15) の熱間圧延潤滑油を同様に供給して熱間圧延を行
った時の圧延荷重の値 (B) に対する増減率であり、次
式により算出される。
【0050】
【数1】
【0051】
【表2】
【0052】従来の熱間圧延潤滑油を供給した従来例で
は、ハイスロールの表面に黒皮が厚く生成した。その結
果、ロール表面には黒皮生成部と剥離部とからなるバン
ディング状肌荒れが発生し、同時に製品コイル表面にも
ロール肌荒れに対応して中〜大の表面疵 (スケール疵)
が発生した。また、圧延荷重は、従来の高Cr鋳鉄に比べ
て20〜25%上昇した。
【0053】一方、本発明の範囲外の油溶性化合物、即
ち、やはり潤滑油に防錆剤として使用されてきた脂肪酸
塩 (オクチル酸亜鉛) 、アミン (モノオレイルアミン)
、多価アルコール部分エステル(ソルビタンモノオレ
エート)、ラノリンアルコール、またはリン酸エステル
(オレイルアシッドホスフェート) を添加した熱間圧延
潤滑油を供給した比較例では、試験結果が従来例と変わ
りなく、黒皮抑制効果と荷重軽減効果のいずれも全く得
られず、本発明の目的は達成できないことが確認され
た。また、本発明の範囲内の防錆剤でも、その添加量が
0.05重量%を下回ると、黒皮抑制や荷重軽減効果が不足
し、ロール肌荒れ、コイル表面疵を十分に抑制できない
ことがわかる。
【0054】これに対して、本発明例の場合は、ロール
黒皮は極めて薄く(3.5μm以下) 、従ってロール肌荒れ
も軽微ないし全く認められず、製品コイルの表面疵も軽
度ないし全くなしであった。ハイスロールによる圧延荷
重も従来の高Cr鋳鉄製の圧延ロール並みに軽減されるこ
とが確認された。なお、表2からわかるように、防錆剤
の添加量が20重量%を超えても効果が飽和するので、経
済性を考慮すると添加量は20重量%以下が好ましい。な
お、圧延後のロール表面残存元素を分析 (EPMA、ESCA分
析装置等使用) した結果、ロール表面に鉄塩の吸着物質
の生成を確認した。
【0055】
【発明の効果】本発明の熱間圧延用潤滑剤組成物および
その使用方法によれば、熱間圧延用ロール、特にハイス
ロールによる鋼材の板圧延、形鋼圧延、線材圧延、製管
圧延時にロール表面の酸化を有効に防止できる。その結
果、ロール表面の黒皮生成と、これに起因するロール肌
荒れが抑制され、ロール肌荒れが転写されて起こる圧延
製品の表面スケール疵の発生が防止されると同時に、ハ
イスロールに顕著な圧延荷重上昇をも軽減することがで
きる。これにより、ロール原単位低減、稼動率の向上、
ロール保有数の削減、製品表面品質の向上が達成され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる熱間圧延加工用潤滑剤の使用法
の1例を示したものである。
【符号の説明】 11 潤滑剤供給ヘッダー 12 ロール冷却水水切り装置 13 ロール冷却水供給ヘッダー 14 圧延用作業ロール 15 補強ロール 16 圧延材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10M 133:16 135:10) C10N 30:06 30:10 40:24 (72)発明者 森 静男 横浜市金沢区福浦1丁目11番地16 パレス 化学株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルボン酸、ポリカルボン酸またはその
    無水物、部分エステルもしくは部分アミド、スルホン
    酸、ならびにこれらの塩よりなる群から選ばれた1種も
    しくは2種以上の油溶性化合物を合計で0.05重量%以上
    含有し、残部が潤滑油からなることを特徴とする、熱間
    圧延用ロール表面の酸化抑制作用を備えた鋼材の熱間圧
    延用潤滑剤組成物。
  2. 【請求項2】 鋼材の熱間圧延において、請求項1記載
    の熱間圧延用潤滑剤組成物を水の存在下で熱間圧延用ロ
    ール表面に供給して、潤滑と同時に該ロール表面の酸化
    を抑制することを特徴とする熱間圧延用潤滑剤組成物の
    使用方法。
  3. 【請求項3】 前記熱間圧延用ロールの少なくともロー
    ル表層部の材質が高速度鋼である、請求項2記載の方
    法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008274192A (ja) * 2007-05-07 2008-11-13 Daido Chem Ind Co Ltd 熱間圧延油組成物
JP2012206174A (ja) * 2012-07-30 2012-10-25 Jfe Steel Corp 面荒れスケール疵発生の危険性の有無の判定方法および該判定方法を用いる熱間仕上圧延機列、ならびにワークロールの面荒れの程度の判定方法および該判定方法を用いる熱間仕上圧延機列
JP2021169110A (ja) * 2020-04-15 2021-10-28 日立金属株式会社 圧延装置

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