【発明の詳細な説明】
ウイルスタンパク質による免疫応答刺激 発明の背景
1.発明の分野
本発明は免疫学の分野にあり、一つの特定の形態の免疫応答を刺激する、即ち
、抗原特異的細胞障害性リンパ球(CTL)応答を増大させるための、好ましく
はウイルスcDNAから発現した特定のウイルスタンパク質の使用に関する。
2.関連技術の説明
病原性抗原に対する細胞性免疫応答には幾つかの段階がある。最初の段階で、
病原体はマクロファージに取り込まれる。マクロファージは抗原を小さなフラグ
メントに処理してT細胞に提示する。そのようなマクロファージは抗原提示細胞
(APC)として知られている。この段階でT細胞は、該抗原を主要組織適合性
複合体抗原の介在により異物として認識する。リンパ球であるT細胞は、マクロ
ファージが産生したインターロイキン−1に支援されて機能特化性T細胞の産生
を刺激する。これらのT細胞には、CD4+で表される表現型を有するヘルパー
T細胞が含まれる。
ヘルパー細胞は、インターロイキン−2の助けを借りて、細胞障害性Tリンパ球
(CTL)としても知られているキラーT細胞の産生を刺激する。キラーT細胞
はCD8+で表される表現型を有している。CTLは抗原特異的である。CTL
は、外来抗原を認識すると、溶解反応により該抗原を含む細胞を殺す。
人体が有する生得のフィードバック機構により、人体に侵入した特定の外来抗
原との戦いに役立つ機能性CTLの数が増大する。しかし、療法においては特定
抗原に対する細胞性応答を増大させることが望ましい場合がある。
γ−インターフェロン〔M.M.Simonら,J.Immunol.136,2755-2762(1986)
〕又はα/β−インターフェロン(L.K.Chenら,Eur.J.Immunol.16,767-77
0(1986);P.von Hoegenら,Cellular Immunology 126,80-90(1990)〕のよ
うなサイトカイン、又はニワトリのウイルスであるニューカッスル病ウイルス(
NDV)〔P.von Haegen及びV.Schirrmacher,Annals N.Y.Acad.Sci.532,4
68-471(1988);P.von Haegenら,J.Immunol.18,1159-1166(1988)〕に感
染させた抗原含有細胞を用いてマウスを免疫感作して抗原提示細胞(APC)を
修飾することにより、抗
原特異的CTL応答を増大させ得る。直腸結腸ガンにかかっている患者を該患者
から採取してNDVで処理したガン細胞を用いて治療することが、W.Liebrich
ら,Eur.J.Cancer 27,703-710(1991)及びP.Schlagら,Cancer Immunology
and Immunotherapy,35,325-330(1992)により開示されている。
抗原特異的CTL応答を増大させる他の手段を見いだすことが望ましい。サイ
トカインは大量に投与しなければならず、それによって毒性問題が起る。全ND
Vに感染させると、ウイルスがヒヨコ卵内で増殖すること及び異なる成分のタン
パク質が及ぼし得る作用を考慮すれば、安全性及び生殖性について困難が生じる
。本発明の知識を用いればその関連性が明らかになる他の従来技術は、「発明の
要旨」の項に記載する。
3.発明の要旨
本発明により、ヒトの抗原特異的T細胞応答の刺激を増大させるための、いず
れの場合においてもその天然パラミクソウイルスを含まず且つHNタンパク質に
対するいかなる関連特異的抗体をも含まない、パラミクソウイルス、特に、ND
Vの血球凝集素−ノイラミニダーゼ(HN)タン
パク質をコードするDNA又はHNタンパク質自体の新規な医学的な使用が提供
される。HNタンパク質から誘導され得且つ刺激増強作用を有するペプチド及び
該ペプチドをコードするDNAの同様な使用も本発明に含まれる。本発明は、ヨ
ーロッパにおける上記目的用の薬剤を製造するための使用、及び米国における前
記目的に有効な量のDNA又はタンパク質をヒト患者に投与することを含む前記
刺激の増強法を含む、英国特許法要件に従う種々の方法で表現し得る。通常、H
N DNA又はHNタンパク質は、外来抗原に感染しているか又は既に該抗原を
発現しており且つHN DNAによって感染するか又はHNタンパク質と共にイ
ンキュベートされた細胞の形態で投与される。この文脈における「感染」という
用語は、エレクトロポレーション又はしばしば「トランスフェクション」と称さ
れるリン酸カルシウム沈降法のような方法並びに例えばレトロウイルス又はポッ
クスウイルスにおけるようなDNA用のウイルスベクターを用いた感染を含む広
義で用いられる。「その天然パラミクソウイルスを含まない」という用語は、単
にNDV又は他のパラミクソウイルスの全粒子の使用を含まないように意図され
ていることを明確にするものである。
第1の可能性は、罹患している患者から、細胞、例えば腫瘍細胞を取り出す。
これらの細胞を、例えば照射により不活化し、HN DNAにより感染させるか
又はHNタンパク質を担わせ、次いで患者に投与し返す。第2の可能性は、本発
明をより一般的にはワクチンの投与に用いる。マクロファージ又は他のAPC、
例えば任意のHLAクラスI又はII発現細胞を患者から分離するか又は培養中で
増殖させて患者のMHCと適合させ、T細胞エピトープ担持ペプチド又は他の好
適な抗原と共にインキュベートし、HN DNAにより感染させるか又はHNタ
ンパク質を担わせる。従って本発明はさらにヒト患者の疾患との闘いに用いるの
に好適なT細胞性免疫応答を増大させ得るワクチンを提供し、該ワクチンは、疾
患に対して高い特異性を有する抗原を提示し且つパラミクソウイルスのHNタン
パク質、そのT細胞刺激増強ペプチド又は前記タンパク質又はペプチドをコード
するDNAからなるHNタンパク質供給成分を含む患者に寛容な抗原提示細胞(
APC)を含み、それによって、罹患細胞の細胞溶解反応に対して高い特異性を
有する細胞障害性T細胞の生体内刺激がHNタンパク質供
給成分によって増大する。一つの態様において、APCは、治療を受ける患者又
は適合するMHC型を有するドナー患者から既に分離されている不活化罹患細胞
から得られる。従来技術についてのさらなる説明
多くの可能な方法の中で、本発明はNDVをベースとする方法を用いてさらに
研究を進めることを選択した。NDVは、6個の遺伝子(3′−NP−P−M−
F−HN−L−5′)をコードする長さ約15kbの負極性の一本鎖RNAを有する
ニワトリのパラミクソウイルスである。NDVのHNは、ウイルスのエンベロー
プから突出し、血球凝集活性(HA)とノイラミニダーゼ活性(NA)〔N.S.M
illarら,J.Gen.Virol.67,1917-1927(1986)〕とを有する74kD膜糖タンパ
ク質である。HNタンパク質は、ウイルスの宿主細胞受容体への結合の調節に重
要な役割を果たす。しかしHNタンパク質は宿主の細胞性免疫応答のための主要
標的としての役目は果たさず、宿主の細胞性免疫応答は、インフルエンザウイル
スの場合に見られるように、NPに向けられる可能性が最も高い。
ノイラミニダーゼが免疫応答に関係しているという示唆
がなされている。R.L.Simmons及びA.Rios,Cancer,34,1541-1547(1974)は
、同系のマウスにしっかり樹立された腫瘍は、試験管内でVibrio Cho lerae
ノラミニダーゼ(VCN)に暴露された生腫瘍細胞でチャレンジする
と退行すると報告した。ノイラミニダーゼは細胞表面で作用して末端のシアル酸
残基を除去させることが示唆された。しかし同著者らは、VCNの代わりにコン
コナバリンAを用いた場合、腫瘍に同様な作用を及ぼすことについて満足すべき
説明を与えることができなかった。15年後、NDV HN遺伝子を含むレトロウ
イルスを用いてトランスフェクトしたヒヨコ細胞がNDV及びインフルエンザウ
イルスによる感染に対して耐性を有することが見いだされた。これも、ノイラミ
ニダーゼによる細胞受容体の破壊によるものであると推測された〔T.G.Morriso
n及びL.W.McGinnes,Virology 171,10-17(1989)〕。しかし、該著者らは、
免疫応答を高めるためのHN遺伝子のより一般的な作用についてはなんら示唆し
なかった。
米国特許第5,124,148号明細書(United Cancer Research Institute
への権利譲渡人であるCsatary及びMassey)は、AIDSにかかっているヒトに
、NDV(H株)のような
弱毒化ニワトリパラミクソウイルス1000単位を、少なくとも4週間の間一週間に
1回筋肉内注射により投与して、該患者のT−4ヘルパー誘発性T細胞、白血球
及び血小板の数を有意に増大させる方法を権利請求している。T細胞の活性を増
大させることについては何ら言及されていない。該明細書はさらに、病原性リン
パ腫ウイルスをNDVと一緒に接種した場合に、該ウイルスに感染したマウスの
生存を含む、ニワトリのパラミクソウイルスの他の免疫作用についても記載して
いる。該明細書は、「精製されたRNAのようなウイルス成分」に言及しながら
、全弱毒化ウイルス製剤以外の他のウイルス形態も使用し得ると主張しているが
、その詳細については記載していない。従って、NDVのHN遺伝子が免疫応答
を高めることについて何のヒントも与えていないし、ノイラミニダーゼが特定の
細胞受容体を破壊し得るという上記の先の推測だけに基づいてそのように仮定す
るのは自明ではない。
R.E.Randall及びD.F.Young,J.Gen.Virol.69,2505-2516(1988)は、H
Nタンパク質を含むSimian Virus SV5タンパク質に特異的なモ
ノクローナル抗体を合成し、これらの抗体を固形マトリックス(Sta phylococcus
aureus Cowan A株の懸濁液)に複合さ
せて、該複合体をSV5タンパク質の免疫精製に使用する方法を記載している。
得られた固形マトリックス−抗体−SV5HN抗原(SMAA)複合体を用いて
マウスを免疫感作した。該複合体は、体液性応答及び細胞性応答の両方を誘発し
た。細胞性応答を非複合SV5HNから得られうる応答と比較することはしなか
った。該論文は、この結果をSMAA提示法に帰するものと解釈しているが、H
Nタンパク質がそれ自体T細胞の刺激物質であり得ることは全く示唆していない
。SV5HNを該抗原に対して特異的な抗体との複合体として提示することはさ
して実用的ではない。何故ならば、それはそのような抗体の使用の安全性に関し
てさらに問題を提起することになり、従って本発明の範囲から除外する。図面の簡単な説明
図1は、プラスミドpSVL−HN.1(公知のプラスミドから容易に誘導さ
れる)の使用を容易にするために追加のBamHI制限部位を導入し、該プラス
ミドpSVL−HN.1を発現プラスミドp36/7のBamHI部位
に挿入する方法を示している。
図2は、NDV HN cDNAが挿入されたプラスミドであるプラスミドp
36/7−HN.2をより詳細に示している。
図3A〜図3Cは、NDV HN cDNAを用いてトランスフェクトしたマ
ウスのLtk-細胞におけるHN発現及びノイラミニダーゼ活性の発現の測定結
果を示している。
図4は、エフェクター細胞(ペプチドで及びNDV HNでプレインキュベー
トしたマウスのLtk-細胞)及びペプチド細胞と共にプレインキュベートした
標的マウスのLtk-細胞の種々の異なる比率での非特異的細胞障害性作用と比
較したペプチド特異的細胞障害性作用を示している。
図5は、種々の特異的細胞を有するマウスに、NDVを用いてプレトランフフ
ェクトしたか又はしていないこれらの細胞を接種したときの106細胞当たりの溶
菌単位の刺激指数を示している。好ましい実施態様の説明
本発明は一つの態様において、HNタンパク質をコードするウイルスcDNA
の使用を必要とする。これは、単にゲノムRNAをコビーするか、又は遺伝子コ
ードが同一のアミノ酸配列をコードするように遺伝子コードの縮重の範囲内又は
アミノ酸をわずかに改変させる変異内でわずかな変更を加えるだけでよく、それ
によってタンパク質の機能が不利に変ることはない。通常、全長のDNAを用い
る、即ち、全HN遺伝子をコードするように企図されるが、実験によって、より
短くはあっても使用可能な長さの遺伝子を見いだすのが簡単であることは明らか
である。HNタンパク質又はその一部が、例えば選択された細胞、特に十分量の
シアル酸を発現しない細胞に結合する細胞表面結合能を有するタンパク質に融合
した融合タンパク質を合成することも可能である。例えば、HNタンパク質又は
その一部を哺乳類細胞の上皮成長因子(EGF)受容体に結合し得るEGFタン
パク質に融合させることも可能である。
以下に本発明を主としてNDVのHNタンパク質に関して説明するが、NDV
のHNタンパク質と近い相同性HNタンパク質を有する他のパラミクソウイルス
が存在することが理解されよう。本発明は、そのようなタンパク質及び
該タンパク質をコードするDNAの使用を含む。例としては、そのHN cDN
AがN.Miuraら,FEBS188(1),112-116(1985)によりクローン化されたセン
ダイウイルス、及びヒトのパラミクソウイルス又はパラインフルエンザウイルス
がある。
特に本発明は、アミノ酸レベルで、より好ましくはタンパク質をコードするc
DNAレベルで、少なくとも70%のNDV Beaudette C株のHNタ
ンパク質との相同性(恒等性)を有するHNタンパク質の使用を含む。この定義
には、Hitchin、Ulster 2C、Victoria、Italie
nなどのような実質的に全てのNDV株が含まれるのは勿論である。
ウイルスの複製には、生体内でタンパク質の連続的な供給を得ることを確実に
しなければならず、これは単にタンパク質自体を一緒に投与しても達成し得ない
ので、一般にタンパク質自体よりウイルスcDNAを使用するほうが有利である
。
免疫感作は、例えば、移植片/宿主拒絶反応を回避するために、患者自身の細
胞、特に、マクロファージを含む細胞、又は当該抗原及びHN DNAを含む患
者に寛容な他
の細胞を患者に静脈注射して接種することにより行うことが可能である。HN
DNAを含むレトロウイルスベクターによってHN DNAを導入するのが好ま
しい〔J.Priceら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84 156-160(1987)を参照さ
れたい〕。あるいは、細胞を適切なプラスミドからのDNAを用いてトランスフ
ェクトする。このためには、好適なプロモーター、例えばメタロチオネインプロ
モーターの制御下にDNAを真核細胞発現ベクターに挿入する。ベクターはさら
に真核細胞に用いるための少なくとも一つの薬剤耐性標識をも含んでいるのが好
ましい。次いで寛容性細胞をリン酸カルシウム沈降法によりHN DNAを用い
てトランスフェクトする。あるいは、HN DNAを身体の腫瘍又は他の感染領
域に直接注射し得るアデノウイルスベクターに組み込むことが可能である〔B.Q
uantinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,2581-2584(1992)を参照されたい
〕。
本発明のワクチンは、任意の標準的な方法で調剤することが可能であり且つア
ジュバントを含んでいてよい。本発明はさらに、上記及び/又は実施例に記載の
ような、DNAによりAPCを適切に感染させるか又は関連抗原と共に
インキュベートすることによるワクチンの製造をも含む。
HNタンパク質又は該タンパク質を発現するDNAの用量は、10〜100、好ま
しくは20〜60HU/107APCを提案する。この用量は、全NDVのフェースII試行
で用いられた32HU/107細胞の用量と一致する〔上記に引用したP.Schlagらの論
文を参照されたい〕。
本明細書に提示されている結果は、新規な発見、即ち、APC中のHN遺伝子
産物の発現が該産物の抗原提示能を増強させ得ることを示している。これは、ペ
プチド及び腫瘍抗原に対する二次応答のような弱い免疫応答に特に適切である。
本発明は主としてガン抗原に関し、ガン抗原の中のいくつかは、免疫応答の刺
激において抗原として弱い作用しか有していない。その一つの例としては、高転
移性ESbリンパ腫によりマウスに産生するものと類似の腫瘍関連抗原がある。
他の例は、P.Van der Bruggenら,Science 254,1643-1647(1991)により記載
されているヒト黒色腫抗原である。非発ガン性タンパク質の点変異から発生する
抗原の他の例は該論文から明らかであろう。非発ガン性抗原の中では、リステリ
ア抗原及びウイルス抗原、特にHIV−
1のgp120又は160が特に興味深いものである。
本発明の他の使用は、APCにペプチド及びHN DNAを与え、次いで一つ
の特定の関連抗原を認識する免疫細胞を刺激するAPCの能力について試験する
ことにより、ペプチドを抗原として機能するその能力についてスクリーニングす
る場合である。
以下の実施例により本発明を説明する。実施例1
(a)真核細胞プラスミドベクターp36/7−HN.2の構築
E.ColiのプラスミドpUC19上の全長NDV(Beaudette
C.株)HN遺伝子のクローンの構築については既に記載されている〔P.Chamb
ersら,J.Gen.Viro1.69,2115-2122(1988);European Patent EP-B 227 41
4(British Technology GroupLtd.)〕。全長HN NDV DNAを含むプラ
スミド(pUC19)上のE.Coliのこのクローンは、International Reco
gnition of the Deposit of Micro-organisms for the Purposes of Patent Pro
cedureに関するBudapest Treatyの規定の下に、1986年7月1日、受託番号NCIMB
12278の下に、Nationa
l Collections of Industrial and Marine Bacteria(MCIMB),23 St.Machar
Drive,Aberdeen AB2 IRY,Scotlandに寄託された。この寄託物は、EP-B 227 41
4号に関連してEuropean Patent Officeを介して既にアクセスすることが可能で
ある。ウイルスのゲノムRNA由来のクローンは、HN遺伝子の上流にNDVF
遺伝子の3′領域を含んでいる。クローンの5′末端にはSphI部位〔EP-B 2
27 414号に記載の配列中の1610-1615位、又はN.S.Millarら,J.Gen.Virol 67
,1917-1927(1986)では1-6位〕があり、該部位は、HN開始コドンの上流の30
4ヌクレオチドである。該クローンは、HNコード配列の末端から下流の87ヌク
レオチドであるSstI部位〔EP-B 227 414号では3733-3738位又はMillarら(1
986)では2124-2129位〕まで伸びている。このクローンの3′非コード配列及び
Fコード配列は7個の追加潜在開始コドンを含んでいる。HN遺伝子を効率的に
発現させるために、この上流配列をエキソヌクレアーゼ消化により除去した。プ
ラスミドをそのユニークSphI3′クローン化部位でリニアライズし、リニア
ライズされたプラスミド25μlを、0.6MのNaCl、12mMのCaCl2、12mMのM
gCl2、0.2mMのEDTA及び20mMのT
ris−HCl(pH8.0)を含む緩衝液200μl中1単位のBal31と共に37
℃でインキュベ′した。アリコート(20μl)を30秒〜15分で除去し、各アリコ
ートを200mMのEDTA2μlに添加して反応を停止し、次いで65℃で5分間加熱
して不活化した。消化されたDNAの末端に、4種のdNTP(各5μM)全て
の存在下にDNAポリメラーゼ1(1単位)のクレノウフラグメントを加えて修
復した。加熱により不活化した後、切欠プラスミドをSstIで切断した。各時
点由来の欠失フラグメントを別々にM13多重クローン化部位中のSmaI及びSst
I部位でM13mp18に連鎖した。E.Coliに形質転換した後、各
時点由来の個々のプラークを分離し、それらを挿入配列した。3′SphI部位
からHN遺伝子全体の点への一連の欠失を得た。HN翻訳開始部位の上流の101
ヌクレオチド点が欠失し、該点から上流の全ての潜在開始コドンが除去されたM
13組換え体(M13−HN10)を同定した。XbaI(M13多重クローン
化部位中)及びSstI(HN cDNAの5′末端)でM13−HN10から
の挿入体を切り出し、4.9kbプラスミド発現ベクターpSVL(Pharmacia)の多
重クローン化部位中のXbaI及びS ac
I(SstI)部位にサブクローン化して、プラスミドpSVL−HNを得
た。該プラスミドは図1に概略的に示されており、そのサイズは約6.7kbである
。
図1を参照すると、よりよい発現を得るために、HN配列のすぐ上流でプラス
ミドを切断するXbaIでpSVL−HNプラスミドを消化した。XbaI部位
を充填し、BamHI部位に転換させた。次いでHN遺伝子の上流と下流を切断
するBamHIによりプラスミドからHN遺伝子を切り出し、BamHI切断プ
ラスミドp36/7に連鎖し、再環化させて、プラスミドp36/7−HN.2
を合成した。該プラスミドはSV40Eプロモーター、ネオマイシン耐性遺伝子
(pSV−ネオプラスミド由来)、メタロチオネイン(MIII)プロモーター、
HN遺伝子及びポリAシグナルから構成されている。図2はこのプラスミドp3
6/7−HN.2を拡大してより詳細に示している。
(b)NDV HN cDNAでトランスフェクトされたマウスの線維芽細胞が HA及びNAを発現することの証明
S.Kitら,Exp.Cell.Res.37,291-312(1963)により記載されているマウ
スの線維芽細胞系Ltk-は、以下の実験に用いたマウスのT細胞による認識に
適当な主要組織
適合複合体(MHC)を有する抗原提示細胞(APC)として機能する細胞を提
供する。トランスフェクションに使用する24時間前に、Ltk-細胞を1皿当た
り106細胞の密度でまいた。M.Wiglerら,Cell 14,725-731(1978)によって記
載されているように、プラスミドp36/7−HN.2由来のDNA(20μg)
のリン酸カルシウム沈降物を調製した。沈降したDNAにLtk-細胞を6時間
暴露し、次いで15%グリセロールを含むハンクス緩衝溶液(HBS)培地で3分
間衝撃を与えた。24時間後、600μg/mlのG418を用いてトランスフェクトし
た細胞を選択した。2〜3週後、G418耐性コロニーを限界希釈法によりクロ
ーン化した。
NDV HN cDNAを用いてトランスフェクトした細胞をEDTAで処理
して培養プレートから取り出し、2度洗浄し、ND VHNタンパク質に特異的
なモノクローナル抗体(8C11)又は、対照として、NDV Fタンパク質に
特異的なモノクローナル抗体(12C4)若しくはPBSと共に4℃で20分間イ
ンキュベートした。モノクローナル抗体はどちらもD.Meulemans(Brussels)が
親切にも提供してくれたものであった〔L.Longら,J.Virol.5
7
,1198-1202(1986)を参照されたい〕。次いで細胞をPBS/2%ウシ胎児血
清(FCS)で2度洗浄した。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)
とマウスIgに対するヤギの抗体との結合体を50μlのPBS/2%FCS中1
/100に希釈したものを、4℃で30分かけて加えた。
細胞をリン酸緩衝溶液(PBS)で2度洗浄し、FACScan蛍光分析器(
Becton Dickinson)により分析した。この分析においては、LYSIS IIソフ
トウエアを用いて、10,000個の細胞から細胞1個当たりの相対蛍光強度を計算し
た。
ノイラミニダーゼの検定には、新規な蛍光定量法を開発した。ノイラミニダー
ゼ発現Ltk-細胞を成長させた。ノイラミニダーゼ発現細胞をPBS中で1時
間37℃でヒツジの赤血球(SRBC)(0.1%)と共に107細胞/mlでコインキュ
ベートした。ノイラミニダーゼは、SRBCの表層上に存在するピーナッツ凝集
素(PNA)に対する受容体を明らかにした(unmasked)。明らかにされた受容
体を検出するために、細胞を2度洗浄し、FITC標識PNA(3.125mg/ml)と
共に20分間室温でインキュベートした。2度洗浄した後、上記分析器で流動細胞
計測法によりSR
BCを分析した。前方及び側方散乱通門の組み合わせによりLtk-細胞を分析
から除外した。
結果を図3に示す。HN発現(図3A)とノイラミニダーゼ活性(図3B)と
の関係を示すために、図3AのHN発現分析の結果を、実験グループ(抗HN)
の平均蛍光と適切な対照の平均蛍光との比率で表した蛍光として図3Cに再提示
する。対照は、(a)Ltk-NDV(全ウイルス)についてPBS処理したも
の、及び(b)Ltk-NDV HN cDNAトランスフェクトグループに対
する抗Fタンパク質抗体と共にインキュベートしたLtk-細胞であった。両方
のパラメーターの発現を、疑似感染Ltk-細胞(Ltk−ネオA4)及び胚形
式ヒヨコ卵の尿膜腔に増殖した株Ulster2Cの全NDVI00血球凝集素単
位(HU)/107細胞で感染したLtk-細胞(Ltk-NDV)と比較した。血
球計算分析して選択した3種のクローン、即ち、Ltk-−HN.のA2、A3
及びA4は、図3B及び図3Cに示されている相対活性から見られるように、H
NとNAの両方を発現した。クローンLtk-−HN.A2は、HN及びNAの
最高の発現を示し、これは、全NDV感染Ltk-細胞に見られる活性を超える
程でさ
えある。他の2種のクローン(Ltk-−HN.A3及びLtk-−HN.A4)
は、弱くてはあっても有意な発現を示している。
(c)抗原(ペプチド)特異的抗原提示細胞の合成
マウスのLtk−細胞をEDTAで処理して培養液から除去し、10μg/mlのイ
ンフルエンザヌクレオタンパク質ペプチド50−63(NP 50−63)を含
む10%FCS(Gibco BRL)を含む培地RPMI(Gibco BRL)中に107細胞/mlで
懸濁した。37℃で1時間インキュベートした後、細胞を新鮮な培地で2度洗浄し
た。
(d)NDV HN cDNAの発現がCTLの抗原(ペプチド)特異的刺激を 増強することの証明
50μlのフロイント不完全アジュバント(FIA)中100μgのペプチドNP5
0−63を用いてC3Hマウスを尾の基部で免疫感作した。10日後、10μg/mlの
ペプチドNP50−63を含む培地中37℃で1時間プレインキュベートしたLt
k-細胞を用いて脾細胞を生体内で再刺激し、NDV HN cDNAを用いて
トランスフェクトするか又は先に記載のように全NDVに感染させた。再刺激さ
れた脾細胞は、NP50−63ペプチドに特異的となった細胞障害
性T細胞を含むT細胞を含んでいる。これらの細胞は「エフェクター細胞」と称
されている。APCについて上記(c)項に記載したように、51Cr標識し、次
いでプレインキュベートした、ペプチドNP50−63を含むか又は含まないL
tk-「標的細胞」に対する標準4−h51Cr放出検定でエフェクター細胞のペ
プチド特異的細胞障害性を測定した。エフェクター細胞と標的細胞との細胞数比
は、例えば、50:1、25:1、12:1及び6:1といった種々の異なる比率を用
いた。
結果を図4に示す。該図には、種々の異なる実験における細胞溶解反応が示さ
れている。3種のHN発現Ltk-−HNクローン全てがLtk-及びLtk-ネ
オ対照より強力なペプチド特異的CTL活性の活性化を誘発した。Ltk-−H
N.A2では、増強度は全NDV感染Ltk−細胞とは見分けがつかない程であ
り、応答は厳密にペプチド依存性であった。異なるLtk-−HNクローンを比
較することにより、HN発現レベルと特異的CTL活性増強との相互関係が明ら
かになった(図3及び図4)。HNトランスフェクト物質の蛍光強度と増大量の
NDVに感染させた細胞の蛍光強度との定量比較により、2種の弱染色クロー
ンLtk-−HN.A3及びLtk-−HN.A4は、それぞれNDVの90及び10
0血球凝集素単位(HU)/107細胞による感染と同等であり、クローンLtk-
−HN.A2の方は200(HU)/107細胞と同等であることが明らかになった。従
って、Ltk-−HNクローンに発現したHN量の範囲は、腫瘍特異的免疫応答
における全NDV感染の場合に見られる最適濃度の範囲内であった〔P.von Hoe
genら,Invasion and Metastasis 9,117-133(1989)〕。CTL刺激能につい
ての機能性分析により、Ltk-−HN.A2細胞は、より高いHN発現及びN
A活性を示したものの、溶解作用においてはNDV感染Ltk-細胞〔100HU/ml
]と同等でしかないので、発現されたHNは、感染に用いた完全ウイルスより有
効性がわずかに劣ることが明らかになった。HN発現に対して相対蛍光が二倍増
強されているだけの他の2種のクローン(Ltk-−HN.A3及びLtk-−H
N.A4)は、CTL活性の著しい増強を示し、これは、比較的低量の発現HN
でもCTLの抗原特異的活性化を増大させるのに十分であったことを示している
。実施例2 CTL活性の全般的な増強
CTLの活性化に及ぼすNDVの増強作用がインフルエンザNPペプチドの場
合にのみ見られる特異的な現象でないことを証明するために、他の抗原特異的C
TL応答におけるAPCのNDV感染作用を混合白血球細胞培養中で調べた。試
験した異なる応答は、(A)抗ESb腫瘍抗原、(B)抗微量H抗原、(C)抗
アロMHC抗原及び(D)抗インフルエンザNP50−63ペプチドであった。
これらの実験には全ウイルスを用いたが、HN cDNAトランスフェクトL
tk-細胞を用いた実験も含まれており、全ウイルスを用いた場合と同様な結果
を得た。従ってこの実施例は、HN cDNAが上記の他の抗原特異的APCに
関して全NDVと同じように有効であるという可能性を示すと言ってよい。
マウスは生体内で感作し、9日後にその脾細胞又は腫瘍細胞を除去した。以下
の表に従って除去した細胞に5日間試験管内刺激を与えた。刺激を受けた細胞を
そのまま(対照)用いるか、又はNDVの100 HU/107細胞に感染させた後で用い
たが、但し実験D2では、Ltk-細胞を上記のようにHN cDNAを用いて
トランスフェクトした。これらのエフェクター細胞の細胞障害性を4−h51Cr
放出
検定で測定した。該検定において、特異的標的細胞はESb(A、B、C)、E
L−4(C)及びペプチド担持Ltk-細胞(D)であった。ESb細胞は、メ
チルコラントレン誘発リンパ腫細胞系Eb(Professor V.Schirrmacher,DKFZ
,Heidelberg)の自然高転移性変異体である。EL−4細胞はAmerican Type Cu
lture Collection(ATCC)から「TIB 39」として入手し得る。数値は、溶
解単位(LU)/106細胞に基づく「刺激指数」で表されている。1LUは標的細胞(
5×103)の30%溶解を引き起こすエフェクター細胞の数である。NDV修飾を
していない刺激物質細胞のLUを刺激指数1とした。結果を図5に示す。
同系のESb腫瘍(A)に対するDBA/2マウスの免疫応答において、試験
管内で刺激物質細胞としてESbの代わりにNDV感染ESb細胞を用いたとき
に、CTL応答に11倍の増加が見られた。生体内での免疫感作により同様な増大
が見られた(ESbの代わりにNDV感染ESbを用いた感作)。感作及び再刺
激の両方にウイルス感染腫瘍細胞を用いると、2つの増強作用の間に相乗作用が
見られ、それによって刺激指数に100倍を超える増大が観察された。微量H応答
においては、ウイルス感染細胞を用いて感作しても何ら増強作用が見られず、こ
れは、免疫応答が既に最適になっていたという事実による可能性がある。試験管
内での最適CTL応答も刺激物質細胞のNDV感染によって増強され得なかった
(データは示さず)。従って、わずか10%の標準刺激物質細胞を用いるだけで、
微量H(図5B)及びアロ抗原(図5C)に対するさらに強力な免疫応答が得ら
れるように培養条件を制限した。そのよう
な次善条件下において、刺激物質細胞のウイルス感染により、微量H及びアロ抗
原応答におけるCTL応答に6倍の増大が観察された。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
(C12N 15/09
C12R 1:92)
(C12N 5/10
C12R 1:91)
(C12N 9/24
C12R 1:91)
(72)発明者 シールマクセル,ボルカー
ドイツ連邦共和国、デー―69117・ハイデ
ルベルク、ウンタレル・フアウレル・ペル
ツ・6