JPH08509204A - 自己免疫疾患の治療のためのmhcクラス▲ii▼分子のペプチドを用いた予防接種 - Google Patents
自己免疫疾患の治療のためのmhcクラス▲ii▼分子のペプチドを用いた予防接種Info
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Abstract
(57)【要約】
本発明は自己免疫及びアレルギーといった有害性免疫応答の治療、予防及び診断のための組成物及び方法において使用することを目的とする主要組織適合性複合体(MHC)糖タンパク質のタンパク質配列から誘導された免疫原性オリゴペプチドを提供する。これらのペプチドは、標的疾患に結びつけられたMHC対立遺伝子によりコードされた糖タンパク質に対する免疫応答を誘発することができる。好ましい実施態様においては、本発明のペプチドは、有害性免疫応答と結びつけられたMHCクラスIIの分子のβ鎖の超可変領域から誘導される。
Description
【発明の詳細な説明】
自己免疫疾患の治療のためのMHCクラスII分子のペプチドを用いた予防接種
発明の背景
本発明は、自己免疫疾患及びアレルギー応答と結びつけられた免疫応答を阻害
するための新規の組成物及び方法に関する。特に、本発明は、例えば、疾患と結
びつけられる対立遺伝子によりコードされたMHC分子の超可変領域からのペプチ
ドを用いた予防接種に関する。
望ましくない免疫応答が関与する数多くの病的応答が知られている。例えば、
数多くのアレルギー疾患が特定のMHC対立遺伝子と関連づけられたり、或いは又
自己免疫成分を有するのではないかと疑われてきた。その他の有害性T細胞媒介
応答としては、異質遺伝子型宿主からの移植片又は移植体として体内に故意に導
入される外来性細胞の破壊が含まれる。「同種異系移植片拒絶」として知られる
このプロセスには、外来性MHC分子と宿主T細胞の相互作用が関与する。きわめ
て往々にして、同種異系移植片に対する宿主の応答には広範囲にわたるMHC対立
遺伝子が関与している。
自己免疫疾患は、有害性免疫応答の特に重要なクラスである。自己免疫疾患に
おいては、自己免疫寛容が喪失し、免疫系はあたかも外来性標的であるがごとく
に「自己」組織を攻撃する。現在30以上の自己免疫疾患が知られている;これら
の中には、重症筋無力症(MG)及び多発性硬化症(MS)を含め人々の注目の的に
なったものが多く含まれている。
自己免疫疾患及びその他の免疫病理を治療する初期の1つのアプ
ローチは、免疫抑制である。これは、対抗して免疫応答を高める必要のある真の
異物に対し応答する患者の能力を損わせるという明らかな欠点を有する。自己免
疫疾患を治療する最近のアプローチには、T細胞レセプターV遺伝子によりコー
ドされたアミノ酸配列をもつペプチドの使用が関与していた。ペプチドは、免疫
関連疾患を予防、抑制し、治療するためのワクチンとして提案されてきた(国際
出願WO91/01133号参照)。もう1つのアプローチには、MHC遺伝子産物に対する
モノクローナル抗体の使用が関与している。抗体は、特定の疾患に結びつけられ
たMHC分子を支持する標的細胞内で使用する目的で提案されてきた(EP公報68790
号参照)。
これらの先行技術による方法は、さまざまな有害性免疫応答と結びつけられた
MHC対立遺伝子によりコードされた糖タンパク質によって制限された免疫応答を
特異的に削除するための単純な自己媒介方法を提供することができない。このよ
うな方法は、疾病、特に抗原又はアレルゲンが知られていない疾病を予防し及び
/又は抑制するために使用することができる。
発明の要約
本発明は、有害性免疫応答を阻害するための方法及び組成物に関する。本発明
の組成物は、分離された免疫原性MHCポリペプチドを含む。免疫原性MHCポリペプ
チドは通常、クラスIIの分子内の超可変領域からのものである。クラスIIβ鎖か
らの超可変領域が標準的に使用される。ポリペプチドは、MHC分子の標的配列に
対する免疫応答を誘発し、かくしてMHC分子を有害性免疫応答を開始させる上で
無効なものとなるようにするために用いられる。
MHC分子は、多発性硬化症といった自己免疫疾患と結びつけることができる。
代替的には、これは、ブタクサ(ragweed)といった数
多くのアレルゲンに対するアレルギー応答と結びつけることもできる。
本発明は同様に、これらのポリペプチドを含む医薬組成物にも関する。組成物
は、自己免疫疾患又はアレルギー応答の治療のために使用することができる。組
成物は、予防的に投与することもできるし、又状態の診断が下された後に投与す
ることもできる。
定義
「ペプチド」という語は、本明細書においては、標準的にα−アミノ及び隣接
するアミノ酸のカルボニル基の間のペプチド結合によって互いに連結された一連
の残基、標準的にはL−アミノ酸を指すため、「オリゴペプチド」又は「ポリペ
プチド」と互換性ある形で使用されている。
本発明の「免疫原性MHCポリペプチド」は、患者の体内の有害性免疫応答と結
びつけられたMHC分子に対する免疫応答を惹起することのできるポリペプチドで
ある。以下でさらに詳しく記述する通り、ポリペプチド内の残基の配列は、MHC
分子内のポリペプチド配列と同一であるか又は実質的に同一となる。かくして、
「MHC分子内の一領域からの」(例えば超可変領域)配列を有する本発明のポリ
ペプチドは、その領域の天然に発生するMHCアミノ酸配列と同一であるか又は実
質的に同一である配列を有する。標準的には、MHC分子内のポリペプチド配列は
、超可変領域からのものとなる。
本書で使用するようなMHC分子の「超可変領域」というのは、同じ遺伝子座で
異なる対立遺伝子によりコードされたポリペプチドが高い配列可変性又は多型性
を有する分子の領域のことである。この多型性は、標準的には、クラスI分子の
α1及びα2ドメイン内及びクラスII分子のα1及びβ1ドメイン内に集中させ
られている。
対立遺伝子の数及び対立遺伝子間の多型性の度合は、異なる遺伝子座において変
動しうる。例えば、HLA-DR分子内では、全ての多型性はβ鎖のものであるとされ
、α鎖は比較的不変である。HLA-DQについては、α及びβ鎖の両方共が多型性で
ある。
「分離された」又は「生物学的に純粋な」という語は、その未変性状態で発見
された時点で通常付随している成分を実質的に又は基本的に含まない物質のこと
を言う。従って、本発明のMHCポリペプチドは、通常そのインサイチン環境と結
びつけられる物質、例えば抗原提示細胞上のその他の表面タンパク質など、を含
んでいない。タンパク質が相同の又は優性のバンドまで分離されている場合でさ
え、望まれるタンパク質と同時精製する未変性タンパク質の5〜10%の範囲内の
微量の汚染物質が存在する。本発明の分離されたポリペプチドは、このような内
因性の同時精製されたタンパク質を含まない。
「残基」という語は、アミド結合又はアミド結合擬態によりオリゴペプチド内
に取り込まれたアミノ酸又はアミノ酸擬態のことを言う。
図面の簡単な説明
図1は、ヒトのDQ/DRハプロタイプ及び自己免疫疾患とそれらの結びつきの一
覧表を提供している。
図2は、2つのペプチドI-Asβp18mer及びI-Asβp10merの場所及びI-Asのβ鎖
の第3の超可変領域内のそれらの場所を示す。
図3Aは、18merペプチドで免疫化された動物から得られた抗体のELISA結合検
定の結果を示している。
図3Bは、10merペプチドで免疫化された動物から得られた抗体のELISA結合検
定の結果を示している。
図4Aは、可溶性I-Asに対する抗体のELISA結合検定の結果を示す。
図4Bは、可溶性DRに対する抗体のELISA結合検定の結果を示す。
図5A及び5Cは、CFA中の18merペプチドを受けたSJL/Jマウス体内のCR-EA
Eの臨床的経移を示す。
図5B及び図5Dは、CFAを単独で受けたSJL/Jマウス体内のCR-EAEの臨床的
経移を示す。
図6は、抗−I-Asβ18-merペプチド抗血清による抗−I-Asモノクローナル抗体
10-3.6の結合の遮断を示す。この図は、10-3.6-FITCのさまざまな濃度での平均
螢光強度のプロットである。
図7は、mAb10-3.6、抗−I-Asβ18-merペプチド抗血清又はCFA対照抗血清の
いずれかによるMBPp91-103ペプチドに対するSJLリンパ節細胞の増殖の阻害百分
率を示す。
図8A及び図8Bは、当初400μgのCFA中のI-Asβ18-mer又はCFA単独を用い
て予防接種を受け次に4週間後にCFA中のMBPを一匹につき400μg用いて免疫化
されたSJLマウス体内のMBP(図8A)及びPPD(図8B)に対する局所的リンパ
節細胞の増殖性応答を示す。結果は、刺激指数すなわち、抗原無しのウェル内の
平均cpmで除した抗原を伴うウェル内の平均cpm、として表わされている。I-Asβ
18-merを受けたグループ内の抗原無しのウェル中の平均背景cpmは、374cpmであ
り、CFAを単独で受けたものは399cpmであった。
好ましい実施態様の説明
本発明は、有害性免疫応答の治療、予防及び診断のための組成物及び方法にお
いて使用することを目的とする主要組織適合性複合体
(MHC)糖タンパク質配列から誘導された免疫原性ポリペプチドを提供する。こ
のポリペプチドは、標的疾患と結びつけられたMHC対立遺伝子によりコードされ
た糖タンパク質に対して免疫応答を誘発することができる。好ましい実施態様に
おいては、本発明のポリペプチドは、有害性免疫応答と結びつけられたMHCクラ
スII分子のα鎖又はβ鎖の超可変領域から誘導される。このようにして標的抗原
(例えば自己抗原又はアレルゲン)を提示する抗原提示細胞(APC)の能力は阻
害される。
MHCによりコードされた糖タンパク質は、ヒト及びマウスの両方の系において
広範に研究されてきた。組織適合性タンパク質が数多く分離され特徴づけされて
いる。MHC糖タンパク質の構造及び機能の概観についてはFundamental Immunolog
y(基礎免疫学),3d Ed.,W.E.Paul,ed.,(Ravens Press N.Y.1993)を参照
のこと。
MHC分子は、より高等な脊椎動物の細胞上で発現されるヘテロダイマー糖タン
パク質であり、免疫応答における役割を果たしている。人間においてはこれらの
分子は、ヒト白血球抗原(HLA)と呼ばれている。MHC糖タンパク質は2つのグル
ープ、すなわちクラスI及びクラスIIに分割され、これらのグループは互いに構
造的かつ機能的に異なっている。一般に、MHC分子の主要な機能は、抗原ペプチ
ドを結合させてそれらを細胞の表面上に表示することにある。
クラスIのMHC分子は、ほぼ全ての有核細胞上で発現され、細胞毒性Tリンパ
球により認識され、このときこのリンパ球が抗原支持細胞を破壊する。クラスII
のMHC分子はまず第一に、Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージなどといっ
た免疫応答を開始させ持続させることに関与する細胞の上で発現される。クラス
IIのMHC分子は、ヘルパーTリンパ球により認識され、ヘルパーTリンパ球の増
殖及び表示されている特定の抗原ペプチドに対する免疫応答の増幅
を誘発する。
T細胞レセプターの嵌入は、チロシンリン酸化の増大、Ca++の内向きフラック
ス、PI代謝回転、サイトカイン及びサイトカインレセプターの合成及び細胞分裂
といった細胞活性化に特徴的な一連の分子事象を誘発する(Altman et al.,(1
990)Adv.Immunol.48:227-360参照)。T細胞がどのようにして抗原を認識す
るかについての一般的論述に関しては、Grey,H.M et al.,Scientific America
n p56〜64(1989年11月)を参照のこと。
マウスにおいては、クラスIの分子がMHCのK,D及びQの領域によってコー
ドされている。クラスIIの分子は、I−A及びI−Eの下位領域によってコード
される。マウスのI−A及びI−E下位領域によりコードされる分離済み抗原は
、32〜38kdのα鎖及び26〜29kdのβ鎖といった2つの非共有結合形ペプチド鎖か
ら成るということが示されてきた。第3の不変の31kdのペプチドがこれら2つの
ペプチドと非共有的に結びつけられているが、これは多型性ではなく、細胞表面
上の抗原の一成分であるとは思われない。I−A領域の数多くの対立遺伝子変異
体のα及びβ鎖がクローニングされ配列決定されてきた。
ヒトのクラスIタンパク質も又研究されてきた。染色体6上のヒトのMHCクラ
スIは3つの遺伝子座 HLA-,HLA-B及び HLA-Cを有し、そのうちの最初の2つは
アロ抗原をコードする数多くの対立遺伝子を有する。これらは全ての抗原特異性
に共通である12kdのβ2−ミクログロブリンサブユニット及び44kdのサブユニッ
トから成ることがわかっている。さらなる研究作業の結果、クラスIのヒト抗原
であるHLA-A2の3−D構造の詳細な画像が得られた(Bjorkman,P.J.,et al.,
(1987)Nature 329:506-512)。この画像においては、重鎖のβ2−ミクログロ
ブリンタンパク質及びα3ドメインが結
びつけられている。重鎖のα1及びα2ドメインは、ペプチドが結合される抗原結
合部位を形成する超可変領域を含む。
ヒトクラスII(HLA-DR,-DP及びDQ遺伝子座で対立遺伝子によってコードされ
る)糖タンパク質は、クラスIのものに類似した抗原結合部位を含むドメイン構
造をもつ。クラスII分子は2つの鎖つまり、膜2重層から延びるα及びβ鎖を含
んでいる。クラスIの分子と同様、クラスII分子内の各サブユニットは、α1,
α2,β1及びβ2と呼ばれる球状ドメインから成る。α1ドメインを除く全て
が、免疫グロブリン上科内の分子に典型的である鎖内ジスルフィド結合によって
安定化されている。α及びβ鎖のN末端部分つまりα1及びβ1ドメインは、抗
原結合部位の大部分を含むと思われている超可変領域を含んでいる(Brown et a
l.,Nature 364:33-39(1993)を参照のこと)。
上述の通り、各々のMHC対立遺伝子は、抗原ペプチドの特定の組について特異
的な超可変領域及び抗原結合部位を含むタンパク質をコードする。MHC分子によ
り結合されたペプチドが自己抗原、アレルゲン又はその他の有害性免疫応答と結
びつけられたタンパク質からのものである場合、MHC分子の超可変領域を用いて
、MHC分子に対する免疫応答を惹起することになる免疫原性ポリペプチドを産生
することができる。従って、これらのポリペプチドは、MHC分子に対する免疫応
答が有害性免疫応答と結びつけられた抗原提示を阻害することになることから、
有害性免疫応答と結びつけられた特定の遺伝子産物をターゲティングする上で有
用である。
かくして、ポリペプチドを用いた免疫化はハプロタイプ特異的なものとなり、
結果として、他の対立遺伝子に影響を与えない状態で標的分子により媒介された
免疫応答の阻害だけをもたらす。ほとんどの個体は、各々のMHC遺伝子座例えばH
LA-DR遺伝子座においてヘ
テロ接合性をもつ。従って、MHC遺伝子の罹病性遺伝子産物のポリペプチドでの
免疫化による疾患のハプロタイプ特異的療法は、新規の免疫療法手段を提供する
。この療法は、特定の遺伝子座にあるその他の対立遺伝子に影響を及ぼさないこ
とから、包括的な免疫抑制をもたらす可能性は低い。
本発明において使用するのに適したポリペプチドは、さまざまな方法で得るこ
とができる。便利なことに、これらのペプチドは、Beekman,Applied Biosystem
sといった自動合成装置又はその他の周知のプロトコルを用いた一般に入手可能
なペプチド合成装置を利用する従来の技法によって合成できる。同様に、当該技
術分野において周知の技術を用いて手動的に合成することも可能である。例えば
、本書に参考として内含されているStewart及びYoung,Solid Phase Peptide Sy
nthesis(固相ペプチド合成)(Rockford,Ill,Pierce),2d Ed.(1984)を
参照のこと。
代替的には、特定のMHCポリペプチドをコードするDNA配列をクローニングし発
現させてペプチドを提供することが可能である。さまざまなMHC遺伝子を含む細
胞が容易に入手可能である。例えば、これらは、American Type Culture Collec
tion(「細胞系統及びハイブリドーマカタログ」第6版(1988),Rockville,M
aryland,U.S.A)から得ることができる。望ましい配列をコードする配列を同定
するためcDNAライブラリをスクリーニングするのに、標準的技術を用いることが
可能である。(本書に参考として内含されているSambrook et al.,分子クロー
ニング−実験室マニュアル、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Har
bor,New York,1989を参照のこと)。融合タンパク質(2つ以上のタンパク質
のアミノ酸配列の全て又は一部分から成るタンパク質)を組換えにより産生する
ことが可能である。さらに、インビトロ突然変異誘発技術を用いて
、適切な配列を含むべく無関係のタンパク質を突然変異させることも可能である
。
標準的なタンパク質精製技術を用いて、さまざまな天然供給源からのMHC糖タ
ンパク質を適切に分離することも可能である。例えば、逆相高性能液体クロマト
グラフィ(HPLC)、イオン交換又はイムノアフィニティクロマトグラフィ、サイ
ズ毎の分離、又は電気泳動といったものを含むさまざまな既知の技術のいずれか
によってペプチドを精製することが可能である。(一般に、本書に参考として内
含されているScopes,R.,タンパク質精製、Springer-Verlag,N.Y.(1982)を
参照のこと)。
本発明の免疫原性MHCポリペプチドを修正して、未修正のペプチドの生物学的
活性を増大させるか又は少なくともそのほぼ全てを保持しながら、例えば薬学的
特性といったさまざまな望ましい属性を提供することも可能であるということが
わかるだろう。例えば、ペプチドのアミノ酸配列を拡張又は減少させることによ
ってペプチドを修正することができる。異なるアミノ酸又はアミノ酸擬態との置
換も行なうことができる。
免疫原性MHCポリペプチドの個々の残基は、ペプチド結合又はペプチド結合擬
態によりペプチドの中に内含させることができる。本発明のペプチド結合擬態に
は、当業者にとっては周知のものであるペプチドバックボーン修正が含まれる。
かかる修正としては、アミド窒素、α−炭素、アミドカルボニルの修正、アミド
結合の完全な置換、拡張、欠失、又はバックボーン架橋が含まれる。一般に、Sp
atola、アミノ酸、ペプチド及びタンパク質の化学及び生化学、第VII巻(Weinst
ein ed.,1983)を参照のこと。いくつかのペプチドバックボーン修正が知られ
ており、これらにはψ〔CH2S〕,ψ〔CH2NH〕,ψ〔CSNH2〕,ψ〔NHCO〕,ψ〔
COCH2〕及びψ〔(E)又
は(Z),CH=CH〕が含まれる。上述の名称は、前記Spatolaにより提案されて
いるものに追従している。この情況下で、ψはアミド結合の欠如を表わす。アミ
ド基を置換する構造は、カッコ内に規定されている。
ペプチドの中にはアミノ酸擬態を内含させることも可能である。ここで使用す
る「アミノ酸擬態」というのは、コンホメーション上でも機能面でも本発明のポ
リペプチド内のアミノ酸に対する一代替物として役立つ天然に発生するアミノ酸
以外の半分のことである。かかる半分は、適切なMHC分子に対する免疫応答を惹
起するペプチドの能力を妨害しない場合、アミノ酸残基に対する代替物として役
立つ。アミノ酸擬態には、β−γ−δ−アミノ酸、β−γ−δ−イミノ酸(例え
ばピペリジン−4−カルボキシル酸)ならびにL−α−アミノ酸の数多くの誘導
体といった非タンパク質アミノ酸が含まれる可能性がある。当業者には、数多く
の適切なアミノ酸擬態が知られており、その中にはシクロヘキシルアラニン、3
−シクロヘキシルプロピオン酸、L−アダマンチルアラニン、アダマンチル酢酸
などが含まれる。本発明のペプチドに適したペプチド擬態については、Morgan及
びGainor,(1989)Ann.Repts.Med.Chem.24:243-252が論述している。
上述のとおり、本発明で利用されるペプチドは、標的MHC分子の対応する配列
と同一でなくてもよいが、実質的に同一であってもよい。従って、ペプチドは、
それがその使用において何らかの利点を提供する可能性がある場合には、保存的
又は非保存的な挿入、欠失及び置換といったさまざまな変更を受けることができ
る。本発明のポリペプチドは、それがMHC分子の標的領域内の一配列と実質的に
同一の(以下に定義づけする通り)配列を含むかぎりにおいて、数多くのやり方
で修正を受けることができる。
比較的短かいアミノ酸配列(約30未満の残基)の整列及び比較は、標準的に
簡単なことである。より長い配列の比較には、2つの配列の最適な整列を達成す
るのにより精巧な方法が必要とされる。比較ウインドウを整列させるための配列
の最適な整列は、Smith and Watermanの局所的相同性アルゴリズム(1981)Adv.
Appl.Math.2:482,Needleman及びWunschの相同性整列アルゴリズム(1970)
,J.Mol.Biol.48:443,Pearson及びLipmanの類似性探究方法(1988)Proc.Nat
l.Acad.Sci.(USA)85:2444、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実
行(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0中のGAP,BESTFIT,FAS
TA、及びTFASTA,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)
又は点検、によって行なうことができ、さまざまな方法によって生成された最高
の整列(すなわち比較ウインドウ全体にわたり最高の配列類似性百分率を結果と
してもたらすもの)を選択する。
「配列の同一性」という語は、2つのポリヌクレオチド配列が1つの比較ウイ
ンドウ全体にわたり同一である(すなわちヌクレオチド毎のベースで)ことを意
味する。「配列同一性百分率」という語は、比較ウインドウ全体にわたる2つの
最適に整列した配列を比較し、整合する位置の数を生み出すべく両方の配列にお
いて同一の残基が発生する位置の数を決定し、整合した位置の数をその比較ウイ
ンドウ内の合計位置数(すなわちウインドウサイズ)で除し、結果に100を乗じ
て配列同一性の百分率を生み出すことによって計算される。
ポリペプチドに適用される通り、「実質的同一性」という語は、2つの配列が
例えば省略時ギャップ重みを用いたプログラムGAP又はBESTFITなどによって最適
に整列された時点で、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なく
とも90パーセントの配列
同一性、より好ましくは少なくとも95パーセントの配列同一性、或いはそれ以上
(例えば99パーセントの配列同一性)を共有することを意味する。好ましくは、
同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換により異なっている。保存的アミノ
酸置換とは、類似した側鎖をもつ残基の互換性のことを言う。例えば、脂肪族側
鎖をもつアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイ
ソロイシンである;脂肪族ヒドロキシル側鎖をもつアミノ酸のグループはセリン
及びトレオニンである;アミド含有側鎖をもつアミノ酸のグループはアスパラギ
ン及びグルタミンである;芳香族側鎖をもつアミノ酸のグループはフェニルアラ
ニン、チロシン及びトリプトファンである;塩基性側鎖を有するアミノ酸のグル
ープはリジン、アルギニン及びヒスチジンである;硫黄含有側鎖を有するアミノ
酸のグループは、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置
換基は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジ
ン−アルギニン、アラニン−バリン及びアスパラギン−グルタミン、である。
本発明のポリペプチドは、標準的に少なくとも約10個、より好ましくは少なく
とも約18個の残基を含む。いくつかの実施態様においては、ペプチドは約50個の
残基を上回らず、標準的には約20個の残基を上回らない。その他の実施態様にお
いては、全サブユニット(α又はβ鎖)又は分子の大部分が使用される。例えば
、ポリペプチドは、MHCサブユニット(約90〜100残基)からの細胞外ドメインを
含むことができる。標準的には、N−末端ドメイン(β1又はα1)が使用され
る。サブユニットからの全細胞外領域(例えば、クラスIIの分子のβ1及びβ2
又はα1及びα2、又はクラスIの分子のα1,α2及びα3)を使用すること
もできる。かくして、本発明においては、広範囲のポリペプチドサイズを使用す
ることが可
能である。
本発明のポリペプチドは標準的に自己タンパク質すなわち免疫病理と結びづけ
られる抗原を提示することに関与するMHC分子から誘導されたものであることか
ら、本発明のポリペプチドに対する宿主免疫応答は変動しうる。しかしながら、
MHCクラスIの分子の合成ペプチドが特異的細胞毒性T細胞応答を誘発しうるこ
とが示されてきた(Maryanski et al.,Nature 324:578(1986))。
自己ペプチドが、自己−MHC分子の情況下で抗原提示細胞により連続的に処理
され提示されるということが知られている。大部分のケースにおいて、これらの
タンパク質に対する応答は、限定された数のエピトープに制限される。T細胞の
選択は、自己MHCペプチド複合体と胸腺内の発達するT細胞の相互作用の結果で
ある。自己タンパク質と反応性のあるT細胞の欠失が起こるが、これは絶対的な
ものではなく、自己ペプチドに対する幾分かの反応性が残る。自己タンパク質を
認識するT細胞が残るメカニズムは、未だ解明されていない。理論に縛られよう
とは思わずに、考えられる1つの説明は、タンパク質の処理がT細胞の活性化に
とって必須要件であることから、通常の抗原処理中に全てのペプチド組合せが提
示されるわけではないということにある。T細胞に提示されないこれらの決定因
子をここでは「隠性のもの」と呼ぶ。
以下に示す結果は、自己MHC分子から誘導された本発明のポリペプチドがまさ
に自己MHC分子に対する抗体を誘発するということを示している。かくしてこれ
らのポリペプチドがインビボで抗原提示細胞内に天然の相対物をもたないという
のは考えられることである。従って、全分子のかかる隠性決定因子を含む自己MH
C分子から誘導されたポリペプチドは、親分子が免疫系により寛容される可能性
があるのに対して、免疫原性であり続ける確率が高い。
治療用のMHC分子の選択
本発明のペプチドを産生するためのMHC分子を選択する目的で、抗原の提示に
関与する特定のMHC分子が同定される。
アレルギーの場合、特異的アレルギー応答が特異的MHCタイプと相関される。
例えばブタクサに対するアレルギー反応は、DR2対立遺伝子に結びつけられるこ
とがわかっている。本書に参考として内含されているMarsh et al.,(1989)Co
ld Spring Harb.Symp.Quant.Biol.54:459-70参照。
特異的自己免疫機能不全も同様に、特異的MHCタイプに相関させられる。ヒト
におけるDQ/DRハプロタイプ及び自己免疫疾患とのそれらの結びつきの一覧表が
図1に示されている。どの対立遺伝子そしてひいてはMHCでコードされたどのポ
リペプチドが自己免疫疾患と結びつけられるかを識別するための方法は、当該技
術分野において既知のものである。本書に参考として内含されているEP公示番号
286447の中に、適当な方法が記述されている。この方法では、いくつかの段階に
従う。
まず第1に、遺伝的研究に基づいて、MHC抗原と自己免疫疾患の間の結びつき
を決定する。これらの研究の実施方法は当業者にとって既知のものであり、人間
における既知の全てのHLA疾患の結びつきに関する情報は、コペンハーゲンのHLA
及び疾病登録簿の中に維持されている。疾病と結びつけられたポリペプチドをコ
ードする遺伝子座は、その疾病との最も強い結びつきをもつ遺伝子座である。
第2に、MHC抗原と結びつけられた疾病をコードする特異的対立遺伝子を同定
する。対立遺伝子の同定においては、罹病性対立遺伝子が優性であることが仮定
される。対立遺伝子の同定は、疾病との特異的サブタイプの強い陽性の結びつき
を見極めることによって達成される。これは、いくつかの方法で達成できるが、
これらの方法
は全て当業者にとって既知のものである。例えば、サブタイピングは、混合リン
パ球応答(MLR)タイピング及び感作リンパ球試験(PLT)により達成できる。両
方の方法は共に、本書に参考として内含されているWeir及びBlackwell,eds.実
験免疫学便覧の中に記述されている。同様にこれは、検査中のMHC遺伝子座に特
異的であるDNAプローブを用いてDNA制限断片長多型(RFLP)を分析することによ
っても達成できる。MHC遺伝子座についてのプローブを調製するための方法は、
当業者にとって既知のものである。例えば本書に参考として包含されているGreg
ersen et al.(1986),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:5966を参照のこと。
罹病性を付与するサブタイプの最も完全な同定は、遺伝子座のゲノミックDNA
又は遺伝子座内でコードされたmRNAに対するcDNAの配列決定によって達成される
。配列決定されるDNAは、MHCでコードされたポリペプチドの超可変領域をコード
する切片を含んでいる。望まれる領域の増幅のためプローブを用いて特異的に望
まれるDNAを識別するための方法は、当該技術分野において既知のものであり、
例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術などが含まれる。
一例を挙げると、90%以上の慢性関節リウマチ患者がDR4(Dw4),DR4(Dw14
)又はDR1のハプロタイプを有する(図1参照)。
インビボ試験のためのモデル系
以下に記すのは、これらの条件に対する本発明の免疫原性ペプチドの作用を評
価するのに使用することのできる自己免疫疾患のためのモデル系である。
全身性エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)(SLE)
自己免疫性ニュージーランドブラック(NZB)マウス及び表現型が正常なニュ
ージーランドホワイト(NZW)マウス系統のF1ハイブリッドは、親NZB系統に見
られるものに比べてより劇症の重症全身性
自己免疫疾患を発症する。これらのマウスは、核抗原に対する抗体、及びそれに
続いて人間におけるSLEに著しく類似し雌に優勢な致命的免疫複合体媒介糸球体
腎炎の発症を含むいくつかの免疫異常を発現する。本書に参考として内含されて
いるKnight et al.,(1978)J.Exp.Med.147:1653を参照。
疾患のヒト及びマウスの両方の形態において、MHC遺伝子産物との強い結びつ
きが報告されてきた。HLA-DR2及びHLA-DR3の個体は、一般的個体群に比べてSLE
を発症するリスクがさらに高く(Reinertsen,etal.,(1970)N.Engl.J.Med.2
99:515)、一方NZB/WF1マウス(H-2d/u)においては、NZWの親から誘導されたh-
2uハプロタイプに関連する遺伝子は、狼瘡様の腎炎の発症に寄与する。
本発明の免疫原性ペプチドの効果は、生存率によって、及びタンパク尿といっ
た症状の発症進行及び抗DNA抗体の出現によって測定できる。
重症筋無力症(MG)
重症筋無力症は、HLA-Dに関連するいくつかのヒト自己免疫疾患の1つである
。本書に内含されているMcDevitt,et al.,Arth.Rheum.(1977)20:59を参照
のこと。MGにおいては、アセチルコリンレセプタ(AcChoR)に対する抗体が、シ
ナプス後膜内のAcChoRの喪失を媒介することによって神経筋伝達を損なう。
SJL/J雌マウスがヒトMGのためのモデル系である。これらの動物において、
もう1つの種からの可溶性AcChoRタンパク質でマウスを免疫化することにより、
実験的自己免疫性重症筋無力症(EAMG)が誘発される。EAMGに対する罹症性は一
部分MHCに関連づけされ、H−2内の領域まで地図作製されてきた。Christadoss
et al.,(1979)J.Immunol.123:254O。
AcChoRタンパク質をTorpedo Californicaから精製し、参考とし
て内含されているWaldor,et al.,(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.80:2713の方
法に従って検定する。完全フロイントアジュバント中の乳化AcChoR 15μgを、
背中、後脚肉趾、尾のつけ根の6つの部位の中で皮内注射する。これと同じ養生
法を用いて6週間後に動物を再度免疫化する。
評価は、抗−AcChoR抗体の測定により行なうことができ、抗−AcChoR抗体レベ
ルは上述のWaldor et al.,中に記述されている通りにマイクロリットルELISA検
定によって測定される。標準試薬体積は1ウェルあたり50μlである。通常試薬
はRTで2時間ウェル内でインキュベートされる。pH9.6の重炭酸塩緩衝液中で希
釈させた5μgのAcChoRを各々のウェルに付加する。AcChoRでのインキュベーシ
ョンの後、0.05%のTweenと0.05%のNaN3を含むリン酸緩衝溶液から成る洗浄溶
液を用いて平板を4回洗い流す。0.01MのPBS(pH7.2)、1.5mfrのMgCl2、2.0mM
の2−メルカプトエタノール、0.05%のTween-80、0.05%のNaN3(P-Tween緩衝
液)中でマウス血清を希釈し、平板上でインキュベートさせる。平板を洗浄した
後、各ウェルに対して、P-Tween緩衝液中で希釈させたβ−ガラクトシダーゼで
コンジュゲートされたヒツジ抗マウス抗体を付加する。最終的洗浄の後、酵素基
質、p−ニトロフェニル−ガルクトピラノシドを平板に付加し、基質触媒作用の
度合を、1時間後の405nmでの吸収度から決定する。
抗−AcChoR抗体は、免疫化されていないマウスに比べ、AcChoRで免疫化された
マウスの体内に存在するものと予想される。免疫原性ペプチドでの治療は、免疫
化されたマウス内の抗−AcChoR抗体の力価を著しく減少させるものと予想される
。
臨床的EAEMに対する免疫原性ペプチドによる治療の効果も同様に評価すること
ができる。筋無緊張症の症状としては、頭及び首の垂
れ、背中の過度の湾曲、手足の開き、歩行異常、及び直立困難を伴う特徴的な湾
曲姿勢が含まれる。標準応力試験の後も穏やかな症状が存在し、一定の時間後免
疫原性ペプチドを投与しこの時間の後抗体力価が降下することによってこの症状
を改善しなければならない。
慢性関節リウマチ(RA)
人間において、慢性関節リウマチに対する罹病性は、HLA D/DRと結びつけら
れる。未変性のII型コラーゲンに対するマウス体内の免疫応答は、ヒトRAに似た
一定数の組織学的及び病理学的特徴をもつ関節炎のための実験的モデルを作成す
るのに使用された。マウス体内のコラーゲン誘発関節炎(CIA)に対する罹病性
がH−2 I領域、特にI−A下位領域まで地図作製された。Huse,et al.,
(1984)Fed.Proc.43:1820。
罹病性系統DBA-1からのマウスを、本書に参考として内含されているWooley及
びLuthraの(1985)J.Immunol.134:2366を用いて未変性II型コラーゲンで治療
することによって、このマウスがCIAを有するようにする。
もう1つのモデルにおいては、ラット内のアジュバンド関節炎がヒト関節炎の
実験的モデルであり、細菌抗原により誘発された自己免疫関節炎のプロトタイプ
である。Holoschitz,et al.,免疫学の展望(CRCプレス)(1986);Pearson A
rthritis Rheum.(1964)7:80。アジュバント(MT)に対して反応性をもって
いたT細胞のクローンによるその伝染性によって立証されるように、この病気は
、細胞媒介免疫応答の結果である:この病気における標的自己抗原は、同じクロ
ーニングされた細胞での研究に基づくと、軟骨のプロテオグリカンの一部である
と思われる。
ラットにおけるアジュバンド病は、Pearsonによって記述されて
いる通り、つまりいくつかの貯蔵部位内に、好ましくは皮内で又はつめのある足
又は尾のつけ根の中に与えられるフロイントアジュバント(殺菌した結核菌又は
その化学的分画、鉱油及び乳化剤)を一回注入することによって生み出される。
アジュバントは、その他の抗原が存在しない状態で与えられる。
病気の発現に対する免疫原性ペプチド治療の効果を監視する。これらの発現は
、組織病理学的なものであり、滑膜内張り細胞の増殖を伴う急性及び悪急性滑膜
炎、優勢には関節組織及び特定の組織の単核性浸潤、結合組織パンヌスによる骨
及び関節の軟骨の浸入、及び特に罹患関節近くの骨膜新骨形成を含む。これらの
組織病理学的症状は、フロイントアジュバントに対する感作から約12日目に、対
照動物において現われると予想される。
インシュリン依存性糖尿病(IDDM)
IDDMは、すい臓のランゲルハンス島の内部のインシュリン分泌細胞の選択的破
壊の結果として観察される。この病気における免疫系の関与は、単核細胞による
島(Islets)の早期浸潤の形態的証拠、抗−島細胞抗体の検出、IDDM個体群内の
HLA-DR3及び-DR4対立遺伝子の高い頻度及び、IDDMとさまざまな自己免疫疾患の
間の臨床的結びつき、によって示唆されている。特発性IDDM及び甲状腺炎につい
ての動物モデルが、BBラット内で発達させられてきた。人間の場合と同様、ラッ
トの病気は、一部分、MHC抗原をコードする遺伝子によって制御され、島の湿潤
によって特徴づけされ、抗−島抗体の存在と結びつけられる。I−E相当クラス
IIのMHC抗原は、BBラットにおける自己免疫疾患の発現に関与すると思われる。B
iotard,etal.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(1985)82:6627。
形態的評価においては、インスリン炎は、島内部に単核の炎症性細胞が存在す
ることによって特徴づけられる。甲状腺炎は、最小限
の基準として、甲状腺内の限局性間質リンパ球性浸潤巣によって特徴づけられる
。大部分の重症例は、広汎性拡張性リンパ球性浸潤巣、腺房の分断、線維増多及
び限局性ヒュルトレ細胞変化を示す。Biotard et al.を参照。
本発明の免疫原性ペプチドを用いたBBラットの治療は、IDDM及び甲状腺炎に結
びつけられる臨床的及び形態的症状の発現を回復又は防止するものと期待されて
いる。
もう1つの特発性モデルにおいては、NODマウス系統(H-2KdDb)は、自己免疫
IDDMについてのマウスモデルである。これらの動物におけるこの病気は、抗−島
細胞抗体、重症インスリン炎及びβ細胞の自己免疫破壊の証拠、によって特徴づ
けられる。Kanazawa et al.,Diabetologia(1984)27:113。この病気は、リン
パ球によって受身移入され得、シクロスポリン−Aでの治療によって予防できる
(Ikehara et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1985)82:7743;Mori et al.)
,Diabetologia(1986)29:244。治療を受けていない動物は、深遠なグルコー
ス不耐性及びケト−シスを発症し、発病から数週間で死亡する。70〜90%の雌そ
して20〜30%の雄の動物が、生後6カ月以内に糖尿病を発症する。繁殖研究は、
MHCまで地図作成するもの1つを含む、罹病性の原因である少なくとも2つの遺
伝子座を規定した。血清学的レベル及び分子レベルの両方におけるNODクラスII
抗原の特徴づけは、自己免疫疾患に対する罹病性がI−Aβに関連づけられると
いうことを示唆している。Acha-Orbea及びMcDevitt,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
(1970)84:235。
免疫原性ペプチドでの雌NODマウスの治療は、糖尿病の発病前の時間を伸ばし
、及び/又は病気を改善するか防止するものと期待されている。
実験的アレルギー性脳脊髄炎
実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、数多くの点で多発性硬化症(MS)の
ヒト疾患を擬態する中央神経系の誘発性自己免疫疾患である。この病気は、マウ
ス及びラットを含む数多くの種において誘発されうる。
この病気は、麻痺の急性発現により特徴づけられる。マウス及びラットの両方
において、CNS内の単核細胞による脈管周囲浸潤が観察される。この病気の誘発
方法ならびに総体的症状についてはAranson(1985)によりThe Autoimmune Dise
ases(自己免疫疾患)(Rose & Mackay編、Academic Press,Inc.)p399〜427の
中で、又Acha-Orbea et al.(1989)のAnn.Rev.Imm.7:377-405の中で再考さ
れている。
罹病性を媒介する遺伝子1つは、MHCクラスII領域の中に位置確認されている
(Moore et al.(1980),J.Immunol.124:1815〜1820)。最も良く分析され
た脳炎誘発性タンパク質は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)であるが、その
他の脳炎誘発性抗原が脳の中に見られる。免疫原性エピトープが、地図作製され
てきた(Acha-Orbea et al.,前出、を参照)。PLマウス系統(H-2u)において
は、MBP内の2つの脳炎誘発性ペプチドが特徴づけされてきた:すなわちMBPペプ
チドp35〜47(MBP35〜47)及びアセチル化されたもの(MBPI〜9)である。人間
においては、MSの治療にとって好ましい自己抗原性ペプチドには、MBPのアミノ
酸84〜102及び148〜162が含まれる。
EAEが誘発された個体における疾患症状を改善し予防することに対する本発明
の免疫原性ペプチドの効果は、生存率、及び発症の進展によって測ることができ
る。EAEの治療における免疫原性ペプチドの使用の例を、以下で提供する。
製剤形態と投与
本発明に基づくペプチド及びその薬学的組成物は、有害性免疫応答を治療し及
び/又は予防するべく、哺乳動物、特に人間に投与するのに有用である。適切な
製剤形態は、本書に参考として内含されているRemington's Pharmacentical Sci ences
,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA、第17版(1985)の中に見
られる。
本発明の免疫原性ペプチドは予防的にか又はすでにその病気を患っている個体
に対して投与される。組成物は、ペプチドが誘導されたMHC分子に対する有効な
免疫応答を惹起するのに充分な量で患者に投与される。これを達成するのに適正
な量を、「治療的有効用量」又は「免疫原性的有効用量」と定義づけする。この
使用のために有効な量は、例えばペプチド組成物、投与方法、治療対象疾患の段
階及び重症度、患者の体重及び全身健康状態そして処方する医師の判断によって
左右されることになるが、一般に初期免疫(すなわち治療的又は予防的投与)に
ついては、体重70kgの患者1人あたり約0.1mg〜約1.0mg、より一般的には体重70
kgにつき約0.5mg〜約0.75mgである。追加免疫用量は、患者の応答及び状態に応
じて数週間〜数カ月にわたる追加免疫養生法を用いて標準的に約0.1mg〜約0.5mg
のペプチドである。適切な手段においては、0週目、2週目、6週目、10週目及
び14週目の注入とそれに続く24週目及び28週目の追加免疫注入が含まれる。
本発明のペプチド及び組成物が一般に重症の疾病状態つまり生命を脅すか又は
その可能性のある状況において利用されうるものであるということを念頭に置い
ておかなくてはならない。このような症例においては、外来性物質の最小限化及
びペプチドの相対的な非毒性を考慮して、これらのペプチド組成物の実質的余剰
分を投与することが可能であり又、治療医が望ましいことと感じる可能性のある
ことである。
治療目的の使用のためには、投与は自己免疫又はアレルギー疾患の最初の徴候
があった時点で開始すべきである。この後、少なくとも症状が実質的に和らぐま
でそしてその後一定期間中、追加免疫用量が続く。いくつかの状況の下では、負
荷用量とそれに続く追加免疫用量が必要となる可能性もある。結果として得られ
た免疫応答は、症状及び/又は合併症を治ゆするか又は少なくとも部分的に阻止
する助けとなる。ペプチドを含むワクチン組成物は、標的MHC抗原に対する免疫
応答を惹起するため、罹病性のある又はその他の形で病気のリスクのある患者に
対して予防的に投与される。
医薬組成物は、非経口又は経口投与を目的としている。好ましくは、医薬組成
物は非経口投与、たとえば皮下、皮内又は筋内投与される。従って、本発明は、
受容可能な担体好ましくは水性担体の中に溶解又は懸濁した免疫原性ペプチドの
溶液を含む非経口投与向けの組成物を提供する。例えば水、緩衝水、0.4%食塩
水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などといったさまざまな水性担体を使用する
ことができる。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術により滅菌することも
できるし、或いは又無菌ろ過することもできる。結果として得られた水溶液は、
そのままの状態で使用するよう梱包することもできるし、凍結乾燥することもで
き、この場合凍結乾燥された調製物は投与に先立って無菌溶液と組合わされる。
組成物は、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリ
ウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノール
アミンなどの緩衝剤、緊張性調整剤、湿潤剤などといった、薬学的に受容可能な
補助物質を、生理学的条件を近似するのに必要なだけ含むこともできる。
固形組成物のためには、例えば医薬的等級のマンニトール、ラクトース、でん
ぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリ
ウム、滑石粉、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを
含む従来の非毒性固体担体を用いることができる。経口投与のためには、上に列
挙した担体といった通常利用される賦形剤のいずれか、及び一般に10〜95%、よ
り好ましくは25%〜75%の濃度の有効成分すなわち本発明に従ったペプチドを取
込むことによって、医薬的に受容可能な非毒性組成物が形成される。
上述の通り、組成物は、ペプチドに対する免疫応答を誘発するよう意図されて
いる。従って、免疫応答を最大限にするのに適した組成物及び投与方法が好まれ
る。例えば、ペプチドを、担体に結合させた状態で又は活性ペプチドユニットの
ホモポリマー又はヘテロポリマーとして、人間を含む宿主の中に導入することが
できる。代替的には、ポリペプチドの「カクテル」を使用することができる。複
数のポリペプチドの混合物は、免疫学的反応の増加、そして重合体を構成するの
に異なるペプチドが使用される場合には一定数のエピトープに対する抗体を誘発
する付加的な能力、といった利点を有している。例えば、α鎖及びβ鎖の超可変
領域からの配列を含むポリペプチドを組合わせて使用することができる。有用な
担体は当該技術分野において周知のものであり、例えばサイログロブリン、ヒト
血清アルブミンなどのアルブミン、破傷風トキソイド、ポリ(リジン:グルタミ
ン酸)といったポリアミノ酸、インフルエンザ、B型肝炎ウイルスコアタンパク
質、B型肝炎ウイルス組換え体ワクチンなどを含んでいる。
本発明のポリペプチドに対する免疫応答を増強するためには、複数のポリペプ
チドの使用が特に役立つ。以下で実証する通り、ポリペプチドは、患者の体内で
発現された自己MHC分子から誘導されうるものの、免疫応答を誘発することがで
きる。いくつかの例では、自己ポリペプチドに対する免疫応答は充分強いもので
ないかもしれ
ない。このような場合には、ポリペプチドに対する寛容を破ることが必要である
可能性がある。組成物は、外来性及び自己ポリペプチドの両方に対して免疫応答
を誘発するのに充分なほど自己ポリペプチドに類似している外来性ポリペプチド
を単数又は複数含んでいてよい(Mamula et al.J.Immunol.149:789-795(1992
)参照)。適切なタンパク質としては、この目的で設計された合成ポリペプチド
又は、例えば自己ポリペプチドと同じ遺伝子座で異なる対立遺伝子によりコード
されたタンパク質といった、天然供給源からの相同なタンパク質からのポリペプ
チド配列が含まれる。
組成物には同様にアジュバントも含まれている。当業者にとっては、数多くの
アジュバントが周知のものである。適切なアジュバントには、不完全フロインド
アジュバント、ミョウバン、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、N−ア
セチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr-MDP)、N−ア
セチル−ノール−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP 11637,n
or-MDPと呼ばれる)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミ
ニル−L−アラニン−2−(1′−2′−シパルミトイル−sn−グリセロ−3−
ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP 19835A,MTP-PEと呼ばれる
)、及び、2%のスクアレン/Tween 80エマルジョン中のモノホスホリル脂質A
、ジミュール酸トレハロース及び細胞壁骨格という細菌から抽出された3つの成
分(MPL+TDM+CWS)を含むRIBIが含まれる。アジュバントの有効性は、免疫原
性ペプチドに対して向けられた抗体の量を測定することによって決定することが
できる。
特に有用なアジュバント及び免疫化スケジュールは、本書に参考として内含さ
れているKwak et al.,New Eng.J.Med.327-1209〜1215(1992)の中に記されて
いる。そこに記述される免疫学的アジュ
バントは、リン酸緩衝溶液中に5%(重量/体積)のスクアレン、2.5%のPluro
nic L121重合体及び0.2%のポリソルビン酸塩を含んでいる。
薬学製剤中の本発明に基づく免疫原性ペプチドの濃度は、大幅にすなわち約0.
1%未満通常は又は少なくとも約2%から最高で20〜50重量%以上まで変動でき
、まず第一に、選択された特定の投与様式に従って流体体積、粘度などによって
選択される。
本発明のペプチドは同様に、ワクチニア又は鶏痘といった弱毒化ウイルス宿主
内でも発現されうる。このアプローチには、本発明のペプチドをコードするヌク
レオチド配列を発現するべくベクターとしてのワクチニアウイルスの使用も関与
している。宿主内への導入の時点で、組換え型ワクチニアウイルスは、免疫原性
ペプチドを発現し、かくして免疫応答を惹起する。免疫化プロトコルにおいて有
用なワクチニアベクター及び方法は、例えば本書中に参考として内含されている
米国特許第4,722,848号の中で記述されている。もう1つのベクターはBCG(カル
メット・ゲラン桿菌)である。BCGベクターについては、本書に参考として内含
されているStover et al.の中で記述されている(Nature 351:456-460(1991
))。例えばSalmonella typhi(腸チフス菌)ベクターなどといった本発明のペ
プチドの治療的投与又は免疫化のために有用なさまざまなその他のベクターが、
本書の記述から当業者には明らかになっていくことだろう。
ペプチドは、診断を目的として使用することもできる。例えば、予防接種を確
実に有効なものにするため、自己抗体についてスクリーニングするのにこれらの
ペプチドを使用することができる。
以下の例は、制限としてではなく例示として提供されるものである。
例1
この例は、本発明に基づくペプチドでのマウスの免疫化が、標的MHC抗原に対
する免疫応答を惹起するということを示している。
使用されるモデル系は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)であった。上で説
明した通り、EAEは、ヒト多発性硬化症(MS)に似た、T細胞媒介型自己免疫性
脱髄疾患の動物モデルである。この疾病は、急性麻痺発作の発症とそれに続く回
復によって特徴づけられる。3カ月の期間中動物を観察したとき、特発性緩解と
それに続く可変的回復が見られる。これらの特徴を考慮すると、EAEは、慢性免
疫疾患の免疫療法の研究にとって理想的なモデルである。
MSと同様、EAEに対する罹病性は、マウス1a遺伝子のいくつかの対立遺伝子
に関連づけされ、I-As,u&k系統が罹病性を有するのに対してI-Ab&d系統は比較的
耐性がある。モノクローナル抗−I−A抗体10-3.6での治療の後、EAEを予防しC
R-EAEの重症度を軽減することができる(Spiram et al.(1983)J.Exp.Med.,1
58:1362)。モノクローナル抗体10-3.6は、IAs,u,&,γ及びk11の対立遺伝子の
β鎖の残基63−67に結合するI−A分子のβ鎖上で血清学的特異性1a17を認識す
る。
I-Asのβ鎖上のモノクローナル抗体10-3.6結合部位にまたがった合成ペプチド
が生成された。これらのペプチドは、β鎖の第3の超可変領域の残基58〜75にま
たがるI-Asβp18mer及び残基60〜70にまたがるI-Asβp10merであった(図2)。
ペプチドは、(コロラド州立大学、高分子資源(Macromolecular Resources),
Fort Collins CO)から得られた。
18mer及び10merで免疫化された動物から得られた抗体のELISA結合検定の結果
がそれぞれ図3A及び3Bに示されている。生後8週間の5匹の雌のSJLマウス
(NIH,Bethesda,MDから入手)を、50
μgのH37RAを含む完全フロインドアジュバント(CFA)中の350μgmのペプチド
で、背中において免疫化した。7日後に200μgのペプチドで、これらの動物を
再度免疫化し、2回目の免疫化から3週間後に尾の静脈を介して出血させた。対
照動物を、CFAで単独で、又は無関連の20merペプチド(pb57、トロンビンの20me
rペプチド、ベルモント大学、Burlington VTのW.Churchからの贈与物)を用いて
免疫化した。血清を5匹の動物からプールし、標準的な手順を用いて過飽和硫酸
アンモニウムで免疫グロブリンを沈降させた。可溶化した沈降物をさらに、AAE
カラム上でクロマトグラフィにより精製し、分光光度計上で280nmの吸収度読取
りにより数量化した。
一晩100μlの重炭酸イオン緩衝液(pH9.2)中で抗原(2μg/ウェルの10-m
erペプチド又は1μgm/ウェルの18-merペプチド)でELISA平板(Corning,NY)
をコーティングすることによりELISA検定を実施した。ELISA洗浄緩衝液(0.05%
のTween 20を伴うPBS)中でウェルを洗浄し、未占有部位を30分間PBS中の1%の
ウシ血清アルブミン(Sigma,St.Louis,MO)で遮断し、洗浄した。各々のウェ
ルに、ELISA緩衝液中で希釈された2μg、1μg、0.5μg及び0.25μgの抗体
を付加した。45分後、ウェルを洗浄し、1:5000の希釈度でアルカリ性ホスファ
ターゼコンジュゲートされたヤギ抗マウスIgG(Tago,Millbrae,CA)を付加し
た。30分後に、ウェルを洗浄し、100μlの基質(1mg/mの最終濃度になるま
で10%のジエタノールアミン(Sigma)中に溶解されたリン酸p−ニトロフェニ
ル5mg)をウェルに付加した。120分で405nmにおいてBio-TekELISA読取り装置(
Winooski,VT)内で色反応を読み取った。結果は、405nmユニットでのバックグ
ラウンド吸収度(いかなる一次抗体も付加されなかったウェル内の405nm吸収度
)を差し引いた後の405nmで読みとられた3つのウェルの平均吸収度として表現
されている
。
I-Asβp18merペプチドでの免疫化の後、SJLマウスの体内に18mer抗原に対する
抗体が検出された(図3A)。10merペプチドは免疫原性が低く、有意な抗体力
価の発達という結果をもたらさなかった(図3B)。同様に、モノクローナル抗
体10-3.6は予想通り18merペプチドに結合したが、一方対照のイソタイプ整合抗
体MKD6(これはI-Adの多型領域を認識する)はいかなる結合も示さなかった。抗
18mer抗血清のみが10merペプチドに結合し、このことは、抗18mer抗体が抗体10-
3.6により認識されたものとは全く異なる領域を認識したということを示唆して
いる。いずれのペプチドも、繁殖性T細胞応答を発生させなかった。無関連20me
rペプチド(pb57、トロンビンタンパク質の合成ペプチド)での免疫化は、20mer
又は10merペプチドのいずれに対する抗体も惹起しなかった(データ示さず)。
血清抗体がIA分子に特異的であったか否かを見極めるため、リガンドとして可
溶性I−A分子を用いるELISA検定を使用した。
Sharma et al.(1991).Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:11465の中で以前に
記述されたとおりに、可溶性I-Asタンパク質を調製した。HLA-DR2についてホモ
接合であるホモ接合型別細胞系統GMO-3107から可溶性DRを調製した。簡単に言う
と、8リットル入り培養フラスコ内で1×106細胞/mlの細胞密度でDR2型別細胞
系統を成長させ、次に細胞を収穫し、膜調製物の洗浄剤リゼイトを、セファロー
ス4Bにカップリングした抗−DR抗体(L234)を含むカラム上に通過させた。結
合したDR分子をpH11.3で溶出し、タンパク質のピークをプールした。調製物の純
度を設定するため、12%のSDS-PAGEゲルを走行させた。pH9.2の重炭酸イオン緩
衝液中で、可溶性I-As及びDRタンパク質を希釈させた。ウェルに対して100μl
の緩衝液
中の1μlのタンパク質を付加し、上述のとおり、ELISA検定を行なった。
図4Aに示されている通り、I-Asβp18merペプチドで免疫化された動物からの
抗体は、可溶性I-As抗原に結合した。I-Aβp10mer又はCFA単独で免疫化された動
物から得た抗体は、可溶性I-Asに対していかなる結合も示さなかった。対照抗原
として可溶性HLA-DR2を使用した場合(図4B)、抗I-Asp18mer又は10-3.6抗体
の結合は全くなかったが、抗HLA-DR抗体L243の結合は存在した。これらの研究は
、I−Aペプチドでの免疫化の後、I−A遺伝子産物について自己由来の動物の
体内で抗I−A特異的抗体が生成されうるということを立証している。
例2
この例は、抗I-As抗体応答の誘発が急性及びCR-EAEの発症を防ぐのに充分であ
ることを示している。
生後6〜12週の雌のSJL/JマウスをNIH(Bethesda,MD)から得、標準的技術
に従って維持した。マウスを背中で、350μg/mlのH37RAを付加した完全フロイ
ンドアジュバント(CFA)、I-Asβp18-merを400μgm含むCFA,I-Asβp10-merを4
00μgm含むCFA、又は57pb(トロンビンの20merペプチド、無関連ペプチド)を40
0μgm含むCFAのいずれかを含むエマルジョン150μlを用いて免疫化した。
4週間後、全ての動物に、CFA中のマウス脊髄ホモジネート(MSCH)800μgmで
抗原投与を施した。MSCHでの免疫化を7日後にくり返し、10日目〜20日目の間疾
患を監視した。疾患は、以下のとおり格付けした:(1)尾の跛行、(2)1肢
の麻痺、(3)2肢の麻痺、(4)瀕死、(5)死亡。MSCHでの免疫化の後20日
目に、全ての動物を4%のパラホルムアルデヒドで灌流させ、組織学的分析のた
め脳及び脊髄を得た。組織学は以下のとおり格付けした:4+、中程度の出力で
観察した6つ以上の非重複領域内に6つの脈管周囲のカフが存在;3+、中程度
の出力で非重複領域内に3〜6個の脈管周囲カフが存在;2+、中程度の出力で
非重複領域内に1〜3個の脈管周囲カフが存在;1+、髄膜浸潤のみ。小脳及び
脳幹を含む脳の組織学を実験1からの全ての動物において研究した。
これらの実験の結果(表1)は、I-Asβp18merペプチドでの免疫化がEAEの発
症に対し保護を与えることを示している。全部で、ペプチドI-Asβp18merの予防
接種を受けた16匹の動物のうちわずか3匹(23%)しかEAEを発症しなかった。C
FA単独又はp57(無関連20merペプチド)を含むCFAの注入を受けた動物では、16
匹のうち13匹(81%)がEAEを発症した。重症度における差異の組織学的証拠も
確認された。I-Asβp10merは抗I-As抗体を生成するのに成功せず、EAEを防止し
なかった。
立証された疾病に対するI-Asβp18merペプチドでの免疫化の効果を決定するた
め、最初の麻痺発作からの回復の後、I-Asβp18m
erペプチドでの動物の予防接種を開始した(表2)。
50μgm/mlのH37RAを含むCFA中の400μgmsのMBPペプチドp91〜103(Multiple
Peptide System,San Diego CA)を用いて、0日目及び7日目に生後6〜8週
のSJLマウスを免疫化した。14日後、10%のウシ胎児血清(Hyclone Labs,Logan
,UT.)、2mMのL−グルタミン、5×10-5Mの2−メルカプトエタノール、1
%のペニシリン/ストレプトマイシン及び5μgm/mlのペプチド又は10μg/ml
のp91〜103ペプチドを含む1.5mlのRPMI 1640培地中で6×106細胞/ウェルの濃
度で24ウェルの平板(Falcon)の中で、限局的にドレーンしているリンパ節細胞
を収穫し培養した。4日間のインビトロ刺激の後、フィコール−ハイパック比重
差遠心法(Hypaque1077,Sigma,St.Louis,MO)を介して、抗原反応性T細胞芽
球を収穫し、PBS中で2度洗浄し、受容マウスの体内に注入した(500μlのPBS
中、一匹あたり1.5×107細胞、腹腔内)。
EAEの発症について動物を観察し、回復時点で、CFA中の400μgmのI-Asβ18mer
ペプチド(グループ1)又はCFA単独(グループ2)のいずれかで免疫化した。
回復は、48時間以上の間、2という臨床的等級の改善が存在すること、として定
義づけされた。実験1では、17日目までに全ての動物において回復が起こり、18
日目にI-Asβ18merペプチド又はCFAを動物に注射し、第2の実験では、動物を、
24日目にI-Asβ18merペプチドで処置した。75日目まで、動物を毎日追跡調査し
た。
これらの研究は、全体として、対照グループでは13回の再発があったのに対し
、I-Asβp18merで処置されたグループではわずか4回の再発しかなかったという
ことを示している。実験2では、再発はさらに重症で、最初の再発では2匹が死
亡し、残りの3匹の動物
は、残る研究中等級2以上の麻痺を示した(図5)。全体として、I-Asβp20mer
を受けた動物における再発率(動物の数あたりの再発数)は0.27であり、対照グ
ループにおける再発率は1.3(p<0.05)であった。
この研究は、自己免疫疾患の治療における療法戦略としてのI-Asβペプチドで
の予防接種の効率を立証している。ここで観察された臨床的効果は、急性及びCR
-EAEの治療における抗I−A抗体でのインビボ療法で得られた結果と密に近似し
ている。
例3
この例は、本発明のポリペプチドにより誘発された免疫応答の性質を分析する
ためのフロー・サイトメトリー分析、T細胞増殖検定の結果を示す。I-As β18-
merペプチドの予防接種を受けた動物からの自己抗−I−A抗体は、細胞表面上
で発現された未変性I-Asに特異的である。
I-Asβ18-merペプチドの予防接種を受けた動物からの抗血清が細胞表面上の未
変性I-As分子を認識できるか否かを決定するため、脾リンパ球についてフローサ
イトメトリー分析を行なった。T細胞、B細胞及び単球を含む脾リンパ球は、SJ
L/J(I-As)及びBALB/c(I-Ad)マウスから得た。次に、I−Aペプチド又はC
FA単独のいずれかで予防接種した動物からの精製された抗血清を用いて、細胞を
インビトロで染色した。二次抗体としてフルオレセインイソチオシアネート(FI
TC)にコンジュゲートさせたヤギ抗−マウスIgGFcを用いた。FITCにコンジュゲ
ートされたモノクローナル抗体10-3.6を正の対照として用いた。
これらの実験の結果は、36.17%の脾リンパ球が、50μg/mlの濃度でI-Asβ1
8-mer抗血清により染色されることを示していた。これは、モノクローナル抗−
I−A抗体10-3.6で染色された細胞の
40%に匹敵する。これとは対照的に、わずか1.91%の細胞が50μgのCFA抗血清
で染色され、1.5%の細胞が抗−I-AdmAbMKD6で染色された。抗−I-Asβ18-mer抗
血清は、わずか3.78%のBALB/c脾細胞しか認識されなかったことから、SJL/
J脾細胞に特異的であった。
別の実験においては、SJL脾細胞を、抗−I-Asβ18-merペプチド抗血清又はCFA
対照抗血清のいずれかを200μg/ml用いて1時間、予備インキュベートした。
次に細胞を洗浄し、30分間5,2.5,1.25、及び0.625μg/mlの濃度でFITCコン
ジュゲートされた10-3.6を用いてインキュベートした。抗−I-Asβ18-merペプチ
ド抗血清を用いてインキュベートした細胞は、対照抗血清を用いて予めインキュ
ベートした試料に比べ、10-3.6の全ての濃度において平均螢光強度における平均
44.4±11.6%の減少を示した(図6)。
これらの研究は、I-As β18-merペプチドでの予防接種の後、I−A遺伝子産
物について自己由来の動物の体内で抗−I-As特異的抗体が生成されることを立証
している。自己抗−I−A抗体は、クラスII−制限T細胞増殖性応答を阻害する
ことができる。
I−Aペプチドでの予防接種により惹起された抗−I−A−抗体が機能的応答
を阻害できるか否かを見極めるため、T細胞増殖性検定を行なった。CFA中のMBP
p91〜103ペプチドを用いてSJL/Jマウスを免疫化した。9日後にリンパ節を除
去し、p91−103ペプチドの存在下でインビトロで培養した。検定には、I-As β
18-merペプチドが予防接種されたマウスからの精製された抗血清が含まれていた
(100μg/ml)。代替的には、正及び負の対照として、それぞれ別々の組のウ
ェルの中に、mAb10-3.6(50μg/ml)及びCFA抗血清(100μg/ml)を含み入
れた。抗−I-As β18-mer抗血清及び10-3.6mAbのみが増殖を阻害することができ
た(43%対72%の阻害)
。CFA抗血清はほとんど効果がなかった(2.48%)。(図7)。
I-Asβ18-merペプチドでの予防接種を受けた動物は、MBP及びPPDに対する増殖
性応答を発生させることができない。
I-Asβ18-merペプチドに対する抗体応答が可溶性再現(リコール)抗原に対す
る免疫の発達に影響を及ぼすか否かを見極める目的で、CFA中のI-Asβ18-merペ
プチド又はCFA単独を用いて、SJLマウスに予防接種を施した。4週間後、両方の
グループは、CFA中の400μgのMBPを受けた。MBPを受けてから10日後に限局的リ
ンパ節を収穫し、MBP及びPPD(ツベルクリンの精製タンパク質誘導体)に対する
増殖性応答を決定した。I-Asβ18-merペプチドを受けたマウスは、CFA単独を受
けた対照グループと比較した場合、MBP及びPPDの両方に対する増殖性応答が著し
く低下していた。(図8)。
前述の各例は、本発明を例示するために提供されているものであって、本発明
の範囲を制限するものではない。本発明のその他の変形態様は、当業者にとって
直ちに明らかとなるものであり、添付のクレームにより包含されている。本書に
て引用されている全ての刊行物、特許及び特許出願は、ここに参考として内含さ
れるものである。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY,
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U,JP,KP,KR,KZ,LK,LU,LV,MG
,MN,MW,NL,NO,NZ,PL,PT,RO,
RU,SD,SE,SK,UA,US,UZ,VN
(72)発明者 スリラム,サブラマニアム
アメリカ合衆国,バーモント 05401,バ
ーリントン,アップル ツリー ポイント
283
(72)発明者 ナグ,ビシュワジット
アメリカ合衆国,カリフォルニア 94044,
パシフィカ,リンブルック ドライブ
465
(72)発明者 シャーマ,ソメシュ ディー.
アメリカ合衆国,カリフォルニア,ロス
アルトス,ステュアート コート 44
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.分離された免疫原性MHCポリペプチドを含んで成る組成物。 2.免疫原性MHCポリペプチドがMHC分子の超可変領域からの配列を有する、請 求の範囲第1項に記載の組成物。 3.超可変領域がMHCクラスII分子の中にある、請求の範囲第2項に記載の組 成物。 4.超可変領域がHLAクラスIIβ鎖内にある、請求の範囲第3項に記載の組成 物。 5.免疫原性MHCポリペプチドが約15〜約20の残基で構成されている、請求の 範囲第1項に記載の組成物。 6.免疫原性MHCポリペプチドが、自己免疫疾患と結びつけられたMHC分子から の一配列を有している、請求の範囲第1項に記載の組成物。 7.自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求の範囲第6項に記載の組成物。 8.免疫原性MHCポリペプチドが、アレルギー応答と結びつけられるMHC分子か らの一配列を有している、請求の範囲第1項に記載の組成物。 9.アレルギー応答がブタクサに対するものである、請求の範囲第8項に記載 の組成物。 10.医薬的に受容可能な賦形剤、アジュバント及び免疫原性MHCポリペプチド を含んで成る医薬組成物。 11.免疫原性MHCポリペプチドがMHC分子の超可変領域からの一配列を有してい る、請求の範囲第10項に記載の医薬組成物。 12.超可変領域がHLAクラスIIβ鎖である、請求の範囲第11項に記載の医薬組 成物。 13.免疫原性MHCポリペプチドが約15〜約20の残基から成る、請求の範囲第10 項に記載の医薬組成物。 14.アジュバントと免疫原性MHCポリペプチドを含む医薬組成物を免疫学的に 有効な量で患者に対して投与することを含んで成る、患者体内の自己免疫疾患の 治療方法。 15.免疫原性MHCポリペプチドがMHCクラスII分子の超可変領域からの一配列を 有する、請求の範囲第14項に記載の方法。 16.超可変領域がHLAクラスIIβ鎖からのものである、請求の範囲第15項に記 載の方法。 17.患者が多発性硬化症を有する、請求の範囲第14項に記載の方法。 18.免疫原性MHCポリペプチドが予防的に投与される、請求の範囲第14項に記 載の方法。 19.免疫原性MHCポリペプチドが約15〜約20の残基から成る、請求の範囲第14 項に記載の方法。 20.アジュバント及び免疫原性MHCポリペプチドを含む医薬組成物を免疫学的 に有効な量だけ患者に投与することを含む、患者体内のアレルギー応答を治療す る方法。 21.免疫原性MHCポリペプチドがMHCクラスII分子の超可変領域からの一配列を 有している、請求の範囲第20項に記載の方法。 22.超可変領域がHLAクラスIIβ鎖からのものである、請求の範囲第21項に記 載の方法。 23.アレルギー応答がブタクサに対するものである、請求の範囲第20項に記載 の方法。 24.免疫原性MHCポリペプチドが約15〜約20の残基から成る、請求の範囲第20 項に記載の方法。 25.免疫原性MHCポリペプチドが予防的に投与される、請求の範 囲第20項に記載の方法。
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