【発明の詳細な説明】
紙原料懸濁液からの粘着性物質の付着を制御する方法
発明の分野
本発明は、紙の製造の際に、紙原料(材料)懸濁液からの粘着性不純物の沈殿
(析出、sedimentation)を制御(コントロール)する方法に関する。
従来技術
2世紀において紙が発明されたときでさえも、廃棄物質(waste)を使用する
こと、即ち、少なくとも部分的にリサイクルする技術は、ある一定の役割をなし
ていた。今日においては、生態学的認識が増大したため、リサイクル技術がかな
り重要であるとされている。従って、紙の製造が増加しつつある観点から、原料
物質を供給することおよび無駄を避けることが、ますます重要とされるようにな
っている。
故紙(wastepaper)のリサイクルからの二次繊維材料(secondary fiber stoc
k)を使用することによって、原料物質、廃棄−処理空間および製紙に必要とさ
れるエネルギーに関する節約を今日では行うことができる。残念ながら、この技
術は特定の問題を依然として含んでいる。
従って、故紙の処理において、粘着性物質(stickies)として通常知られる粘
着性不純物(sticky impurities)は、製造プロセスに重大な障害をもたらし、
製造される紙の品質に悪影響を与えることがある。使用される故紙が粘着性の接
着剤結合部、接着テープまたは仕上げ加工された製品、例えば、コートまたはラ
ミネートされた紙および板紙などを含む場合、粘着性物質が製紙プロセスの中に
入り込む。更に、木材中の樹脂(resin)によってならびにその樹脂と製紙用助
剤との相互作用によって、粘着性不純物か生成することもある。
粘着性物質が堅く締まった形態(コンパクトな形態)で存在する場合は、それ
らを仕分け装置(sorting machine)によって機械的に、比較的容易に除去する
ことができる。しかしながら、一般に、粘着性物質は堅く締まった形態で存在し
ていないだけでなく、パルプ材料の中に分散された形態で存在しており、粘着性
物質をこの形態で除去することは非常に困難である。そこで、近年、紙の製造の
際における故紙の使用が増大し、水循環(water circuit)の制限が高まった結
果、循環水中の粘着性物質の含有率がますます高くなっている。
粘着性物質は、紙の製造時においてのみでなく、紙の処理時においても種々の
問題および障害を引き起こす。それらの粘着性のために、機械部品、チューブ壁
、篩(sieve)、湿式フェルト(wet felt)、乾式フェルト、乾燥シリンダー、
平滑ローラ、カレンダー・ローラの上、更に、紙自体の上に付着物が生じて、抄
紙機(papermaking machine(Papiermaschine))においてウェブの破断(tear
)が発生したり、孔、しみおよびきずによる紙の品質の低下が生じたりする(ハ
ー・エル・バウムガルテン(H.L. Baumgarten)、ダス・パピエール(Das Papie
r)、1984年、第38巻、第10A号、第V121〜V125頁)。ハー・
エル・バウムガルテンによれば、産業的なおよび公的な文献において、粘着性物
質は何年もの間、故紙をリサイクルする上での最も大きな問題であった。粘着性
物質が極微量であっても、抄紙機および印刷機において破断を生じ得るので、清
掃処理(cleaning process)のために機械を停止させなければならない。バウム
ガルテンは、『抄紙機の肝心の部位に2gの粘着性物質が存在すると、数百kgも
の紙を反故にしてしまうことがある。』(前記文献、第V122頁、右側欄を参
照)と述べている。
粘着性物質は種々の起源を有する。それらは、本質的には、木材中の樹脂から
、紙の製造の際に関連する助剤から、紙および板紙の被覆用のバインダーから、
紙の処理のための接着剤から、印刷インクバインダーから、ならびに紙の処理に
関連する物質から生じる。木材中の樹脂からの、および紙の処理に用いられる接
着剤から生じる粘着性物質は、本発明が解決しようとする課題との関係で、特に
重要である。
ケミカル木材パルプ(chemical wood pulp)および砕木パルプ(mechanical w
ood pulp)は、木材の種類にもよるが、約1〜5重量%のいわゆる有害な樹脂を
含有している。これらの樹脂は、コロイド状の結合していない形態で存在するこ
ともあるし、紙繊維に付着していることもある。ヨット・ヴァイクル(J.Weigl
)らによれば、紙の製造および処理の際に樹脂付着物によって生じる問題は、
種々の理由から、近年着実に増加している(ヨット・ヴァイクルら、ダス・パピ
エール、1986年、第V52〜V62頁、より詳細には第V53頁、左側欄)
。
紙の処理において使用される接着剤は、3つの群、即ち:感圧接着剤(触圧接
着剤)、分散液系接着剤およびホットメルト接着剤に分類することができる。
感圧接着剤は持続的な粘着性を有し、持続的に接着可能な物質である。接着は
、結合すべき部分の表面に圧力を加えることによって達成される。主成分のポリ
マーは、種々の重要な化学物質のいずれかを、対応する添加剤、例えば、粘着性
付与樹脂(tackfying resin)、可塑剤または抗酸化剤などと組み合わせたもの
であってよい。典型的な主成分ポリマーは、中でも、天然ゴム、ブチルゴム、ス
チレン/ブタジエンコポリマー(SBRゴム)、アクリロニトリルコポリマー、
ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、ポリビニルエーテル、アクリレート、ポ
リエステル、ポリウレタン、シリコーンである。
分散液系接着剤において、接着剤層の構成に関連するポリマーは、水性分散媒
体中に固体粒子として存在している。製造方法においては、主成分のモノマーが
最初に水相にて乳化され、続いてその中で重合される(乳化重合として知られる
技術)。すると、ポリマーは、分子レベルの分散物から粗い分散物までにわたり
得る種々の粒子寸法を有する小さな粒子の形態で存在する。一般に、ポリマー粒
子の凝集、従って沈殿は、系に保護コロイドまたは乳化剤を加えることによって
防止することができる。
いわゆるホットメルト接着剤は、ホットメルト(hotmelt)としても知られて
おり、熱可塑性樹脂の群に属する。これらの物質は、加熱により軟化する性質を
有しており、従って流体になる。これらは冷却により、再度固化する。ホットメ
ルト接着剤として使用されるポリマーの例には、ポリアミド、コポリアミド、ポ
リアミノアミン、飽和ポリエステルおよびエチレン/酢酸ビニルコポリマーが含
まれる。
粘着性物質は、一次粘着性物質と二次粘着性物質とに分類される。一次粘着性
物質は、湿式微細化(wet size reduction、湿式粉砕)の際に、耐性が高いため
に分散されない粘着性の不純物である。従って、これらは堅く締まった形態で存
在し、容易に除去することができる。
二次粘着性物質の存在は、故紙のリサイクルの間に、粘着性不純物が、熱的、
化学的および機械的作用によってもたらされる粒子寸法の変化を起こすというこ
とによって発生する。このことは、リサイクルの初めに未だ極度に粗い形態で存
在している不純物であっても、リサイクルプロセスにおいて多かれ少なかれかな
りの寸法減少を起こし得るということを意味する。特に、粘着性物質は、故紙の
リサイクルにおいて使用される加熱混練機(hot kneading machine)において行
われる処理によって分散される。例えば、低い融点を有する粘着性物質は液化さ
れ、続いて非常に微細に分散される。砕け易いまたは脆い粘着性物質も非常に小
さな粒子に分解される。分散された粘着性物質の粒子寸法は、このように、粗い
分散物からコロイド状の分散物を経て分子レベルの分散物にまでわたる。
換言すれば、多くの粘着性物質が容易に分散され得るために、パルプ化工程(
pulping step)の後でそれらは微細に分割された形態で存在しており、仕分け工
程では採取されない。これらの物質は、熱的、機械的または化学的作用下の抄紙
機の中で、二次粘着性物質としても知られている凝集物を形成するおそれがある
。その後の紙の処理において問題を生じるのは、まさにこの二次粘着性物質であ
る。例えば、それらは、紙ウェブによって移送され、抄紙機の中を通って、種々
の部位、特に、プレス・フェルト(press felt)、乾式篩(dry sieve)、乾燥
シリンダー、平滑ローラに到達し、そこで望ましくない付着物を生じる。更に、
それらは、紙自体の中にももちろん存在し、従ってその品質に悪影響を及ぼす。
従って、粒子の凝集を促進するいずれのパラメーターも、基本的に、二次粘着
性物質を生成させるおそれをもたらすということが、以上の概説の状況から明ら
かである。この点に関して、pH値および特定の製紙用助剤の存在が、2つの非
常に重要なパラメーターであると言われている。以下、更に説明する:
互いに接触するかまたは非常に狭い間隙で互いに離れている小さな固体粒子は
、分子間力、いわゆるファンデルワールス力によって互いに引き寄せ合う。しか
しながら、粒子は、同じ電荷を帯びている粒子相互の反発の原因である電気二重
層によって取り囲まれているので、凝集を促進するファンデルワールス力は、ア
ル
カリ性媒体中、即ち、故紙のリサイクルに典型的な媒体中では一般に発現しない
。対照的に、抄紙機は、通常、中性ないし弱酸性の媒体中で操作されるので、反
発する負の力は低下する。
故紙を使用して調製された紙原料懸濁液の水切れ性(drainability)は、一般
に低い。従って、実際には、水切り助剤(drainage aid)または保持助剤(rete
ntion aid)として知られる助剤がしばしば使用される。保持助剤は、微細な繊
維および充填剤を長い紙原料繊維(長繊維、long fibers)に結合させる物質で
あると当業者に理解されている。短繊維および充填剤の長繊維へのこの結合によ
り、紙原料懸濁液の水切りを困難にする1種のフリース(fleece、ふわふわした
もの)を微細な繊維が生成することが防止される。このようにして、保持助剤は
、微細な繊維を長繊維に結合させることによって、水切れ性を向上させる。
保持助剤は、3つの群、即ち:無機物質、例えば、硫酸アルミニウムまたはア
ルミン酸ナトリウムなど;合成物質、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアミン
またはポリアクリルアミドなど;ならびに変性された天然物質、例えばカチオン
デンプン(cationic starch)などに分類される。
保持助剤が作用する方法は、微細繊維および充填剤を紙の繊維に結合させるこ
とに基づいている。この点に関して重要なメカニズムは、適当な鎖長の高分子電
解質が2つの粒子の間隙に橋架けすることができることであって、このようにし
て凝集物の形成が促進される。そこで、ヨット・エル・ヘメス(J.L.Hemmes)
らは、カチオン性高分子電解質、例えばカチオンデンプンなどがアニオン系不純
物の脱除剤(scavenger、掃去剤)として適するということを報告している(ヴ
ォッヘンブラット・フュア・パピエールファブリカツィオーン(Wochenb1att fu
r Papierfabrikation)、1993年、第163〜170頁)。
要約すると、一般的な当業者の知識の現在の状態によれば、一方で中性ないし
酸性媒体が、他方で水切れ性および保持性を改善するためにカチオン性助剤を使
用することが、粒子の凝集を促進する条件を表すと言うことができる。これまで
に述べた粘着性物質の問題に関して、このことは、それらの条件を粘着性物質の
生成に好適であると当業者が論理的に考えるということを意味する。
粘着性物質の制御においてもう1つの重要な役割を果たすのは温度である。そ
の理由は、多くの接着剤が、温度と共に粘着性が増大する熱可塑性樹脂(ホット
メルト)に属するからである。
更に、紙の製造および処理についての粘着性不純物の望ましくない特性の発現
は、いろいろな点でまだよく知られていない種々のパラメーターに依存するとい
うことが指摘されている(ハー・エル・バウムガルテン、前記文献、第V122
頁、左側欄を参照)。通常は害にならない不純物が、製造プロセスの間に機械的
、化学的および熱的影響が協働することによって、粘着性不純物に変化すること
がある(ベー・ブラッツカ(B.Brattka)、ヴォッヘンブラット・フュア・パピ
エールファブリカツィオーン、1990年、第310〜313頁)。
紙を製造するプロセスにとっての粘着性不純物のマイナスの特性の発現を防止
しようとする方法には種々のものが知られている。これに関して、助剤によって
粘着性物質の沈殿(析出)を抑制し、粘着性によって引き起こされる問題を技術
的に許容されるレベルまで低減する処理方法が、当業者の間では特に重要とされ
ている。
米国特許第4,923,566号には、尿素により粘着性物質を制御する方法が
記載されている。米国特許第3,081,219号の教示によれば、木材の亜硫酸
パルプ化における粘着性物質の制御を、N−ビニル−2−ピロリドンによって行
っている。ベントナイト、珪藻土などを添加することによって粘着性物質を制御
することも試みられている。このよく知られている処理方法は、表面に粘着性物
質を結合することができる微粒子を導入するという考えに基づいている(米国特
許第3,081,219号、第1欄、第40〜44行参照)。もう1つの方法は、
金属イオン封鎖剤、例えばポリリン酸塩などを添加することに基づいている(米
国特許第3,081,219号、第1欄、第45〜50行参照)。最後に、種々の
分散剤、例えば、スルホン化ホルムアルデヒド/ナフタレン縮合物のナトリウム
塩などを使用することも試みられているが、これは中性のpH値において問題を
生じ、カチオン性助剤との好ましくない相互作用を生じる(米国特許第3,08
1,219号、第1欄、第51〜58行参照)。米国特許第4,744,865号
には、
メトキシ基を含むポリマーによって粘着性不純物の凝集が減少する方法が記載さ
れている。
最後に、ジー・ガーランド(G.Galland)およびエフ・ジュリエン・セイント
・アマンド(F.Ju1ien Saint Amand)によれば、1次アクリレート粘着性物質
は、石鹸の存在下、アルカリ性媒体中でフローテーション法(浮遊法、flotatio
n)により除去することができる(EUR.Comm.Eur.Communities14011、1
992年、第235〜243頁)。この著者によれば、彼らの方法の有効性には
、パルパー内またはパルパーの直後のいずれかにおいてアルカリ性度(溶液をア
ルカリ性にする化学薬品)および石鹸を導入するということが特に重要である。
彼らは、泡(bubble)の寸法を小さくすることによって1次粘着性物質の除去の
効率が向上するが、ただし繊維の損失が増大することが犠牲になるということも
述べている。しかしながら、ガーランド/セイント・アマンドの方法は、その性
質のために、2次粘着性物質の問題点の解決に対して何も寄与することができな
い。
発明の説明
全体として、この分野における従来技術は極めて雑多であって、粘着性物質を
制御するための十分に満足できる方法を依然として開発する必要がある。このこ
とは、循環水の中における2次粘着性物質の生成の原因である、微細に分散した
粘着性不純物の含有率が着実に増加しているので、上述の2次粘着性物質に特に
最も当てはまる。
ハー・エル・バウムガルテンの所見:
「故紙における“粘着性不純物”の問題を観察すると、・・・故紙リサイクル・
プラントの製造業者のみでなく、特に、−ほとんどがポリマーを含有する−紙精
製および紙処理助剤の製造業者ならびに原料物質の供給者としての化学産業は、
製紙産業に対して密接なサポート(support)を提供する責任を有する。(ダス
・パピエール、1984年、第10A号、第V124頁)」
は、今日でも適切である。従って、紙の製造の際における粘着性物質の制御の問
題に対する新しい代替方法となり得る解決手段が常に求められている。
従って、本発明が解決しようとする課題は、抄紙機内において、2次粘着性物
質としてネガティブに(negatively、好ましくなく)生じる粘着性不純物の沈殿
(析出)を制御する方法を提供することであった。この方法は、いろいろな種類
の粘着性不純物に対して一般的に適用することができ、特に、触圧接着剤、分散
液系接着剤およびホットメルト接着剤(ホットメルト)に適用し得るものである
。更に、繊維および充填剤の損失が増大することを犠牲にして、粘着性物質の制
御を達成するのではない。
本発明によれば、上述の問題点の解決を、紙の製造中における紙原料懸濁液か
らの粘着性物質の沈殿を制御する方法によって行い、その方法では、第1および
/またはそれ以降のフローテーション段階の直前に、絶乾(oven-dry)紙原料基
準で、0.2〜3.0重量%の水ガラスおよび/または0.05〜1.0重量%の1
2〜22個の炭素原子を本質的に有する脂肪酸もしくはそれらの1価〜3価カチ
オンとの塩を紙原料懸濁液に加える。
従って、本発明は、紙の製造の際に紙原料懸濁液からの粘着性不純物(粘着性
物質)の沈殿を制御する方法であって、第1および/またはそれ以降のフローテ
ーション段階の直前に、絶乾紙原料基準で、
i)0.2〜3.0重量%の水ガラスおよび/または
ii)0.05〜1.0重量%の12〜22個の炭素原子を本質的に有する脂肪酸も
しくはそれらの1価〜3価カチオンとの塩
を紙原料懸濁液に加えることを特徴とする方法に関する。
本発明の方法の成功に関しては、成分i)および/またはii)を加える時点(
time)が重要な特徴であるということが特に指摘される。成分i)および/また
はii)を、第1および/またはそれ以降のフローテーション段階の直前に加える
ということは、それらが強い剪断力に前もって曝されることなく、フローテーシ
ョン工程に加えられるということを意味する。このような剪断力は、製紙工程中
の種々の箇所で生じる。その例には、故紙パルパー(wastepaper pulper)およ
びそれに続く仕分け装置(sorting unit)が含まれる。
本発明に特に重要な上述のパラメーターを適用することによって、使用する紙
原料水性懸濁液中において微細に分割された形態で存在し、2次粘着性物質を導
き得る粘着性不純物をかなりの程度まで系から除去することが確実になる。本発
明の方法のもう1つの利点は、繊維および充填剤の損失が増大することを犠牲に
して、粘着性不純物の含有量を減少するのではないということである。反対に、
繊維および充填剤の損失の程度を小さくすることが、本発明の方法によって達成
されるもう1つの利点である。
本発明の1つの好ましい態様では、使用する紙原料懸濁液を、故紙からまたは
故紙成分を含む紙製品から製造する。
使用する水ガラスの種類は基本的にあまり重要ではない。尤も、ソーダ水ガラ
スおよび/またはカリウム水ガラスが好ましい。
本発明のもう1つの好ましい態様では、成分i)およびii)の混合物を使用す
る。基本的に、2つの成分間の重量比はあまり重要ではないが、0.5:1〜1
0:1の重量比を確立することが好ましい。成分ii)に比べて、成分i)を過剰
に使用することが好ましく、成分i)対成分ii)の重量比を3:1〜5:1とす
ることが特に最も好ましい。
本発明のもう1つの好ましい態様では、成分i)およびii)をアルカリ金属水
酸化物と組み合わせて使用する。アルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナト
リウムおよび/または水酸化カリウムは、絶乾紙原料基準で0.05〜2.0重量
%の量で使用することが好ましい。アルカリ金属水酸化物が存在することによっ
て、プロセスの経済性にきわめて重要な、繊維および充填剤の損失の程度を更に
小さくすることができる。
成分ii)の効果に関する限り、特定のフローテーションセルの中において、成
分ii)が溶解性の比較的乏しい石鹸の形態で少なくとも部分的に存在すべきであ
るということが特に重要である。このことは、12〜22個の炭素原子を有する
脂肪酸またはそれらと1価〜3価カチオンとの可溶性塩を用いることによって一
般に達成され、その場合、その脂肪酸または可溶性塩は、系の中に存在する水硬
度(可溶性のカルシウム塩やマグネシウム塩などの水硬度に寄与する物質)によ
って、そのような溶解性の乏しいカルシウム石鹸をその場で(in situ)形成す
る。
しかしながら、水硬度が十分でない場合、12〜22個の炭素原子を有する脂肪
酸のカルシウム石鹸を直接使用することがあってもよい。
追加的なカチオン性凝集剤または保持助剤の存在下でフローテーション工程を
行うことによって、本発明の方法の効果を更に向上させることができる場合があ
ることが判った。そのような凝集剤または保持助剤は、例えばカチオン性ポリマ
ー、例えばポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミンなど、
またはカチオンデンプンならびに無機化合物、例えば硫酸アルミニウムなどであ
る。
本発明の方法は、いろいろな種類の粘着性物質に一般に適用できる。しかしな
がら、触圧接着剤、分散液系接着剤およびホットメルト接着剤(ホットメルト)
によって生じる問題を解決するために最も適している。
原則的に、本発明の方法は、いろいろな種類、即ち化学的性質および物理化学
的性質の異なる粘着性物質の沈殿および付着をコントロールするのに適している
。しかしながら、本発明の方法の利点は、触圧接着剤およびホットメルト接着剤
(ホットメルト)系の粘着性物質に特に当てはまる。
以下の実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものでな
い。
実施例
1.使用した物質および材料
水酸化ナトリウム:NaOH50%水溶液
水ガラス: 「ヴァッサーグラス(Wasserg1as)37/40」(Na2SiO
3)、ヘンケル(Henkel)社/デュッセルドルフの製品
042: オレイン酸混合物「オリノール(Olinor)042」
ヘンケル社/デュッセルドルフの製品
2.ジクロロメタン抽出物の測定
2.1.方法の原理
紙懸濁液中の粘着性不純物の含有率を測定するための間接的手段として、ジク
ロロメタン抽出物を用いた。ジクロロメタン抽出物は、試験すべき紙原料懸濁液
の試料を濾過し、残渣を乾燥し、抽出により、その中に存在するジクロロメタン
可溶性成分一本質的に粘着性不純物−を測定することによって得られる。
2.2.分析器具
a)円形フィルター:使用する円形フィルターを、使用前に、ドイツ工業規格
(DIN)54359の方法に従って、乾燥器内で(103±2)℃の温度にて
恒量になるまで乾燥し、デシケーター内で冷却後、秤量した。
b)平底フラスコ:使用する平底フラスコを、使用前に、ドイツ工業規格54
354の方法に従って、乾燥器内で(105±2)℃の温度にて恒量になるまで
乾燥し、デシケーター内で冷却後、秤量した。
2.3.手順
十分に混合した紙原料懸濁液の試料500mlを取り出し、直径15cmのブ
フナー漏斗、大きな吸引瓶および円形紙フィルターからなる濾過装置に通して濾
過した。濾過後、濾液を濁りについて目視的に検査した。濁りが少しでも認めら
れた場合、その濾液を同じフィルターに通して再濾過した。円形フィルターを濾
取した紙原料ケーキと共に乾燥器内で乾燥した後、秤量した。
続いて、乾燥した紙原料ケーキを円形フィルターと共に、すり合わせ式凝縮器
およびすり合わせ式の接続部により接続された500ml平底フラスコを有する
ソックスレー抽出器に移した。ジクロロメタン400mlを加えた後、加熱しな
がら紙原料ケーキの抽出を6時間行った。抽出後、抽出溶液を、それがどうにか
液状を保つ程度まで蒸留によって濃縮した。続いて、ケーキを乾燥器内で(10
5±2)℃の温度にて恒量になるまで乾燥した後、2.2.の項において記載し
たようにして秤量した。得られた結果から、試料の乾燥重量を基準とするジクロ
ロメタン抽出物の割合(DCM)(%単位)を、以下のように計算した:
[式中、m1=円形フィルターの重量(g)、
m2=紙原料ケーキを有する円形フィルターの重量(g)、
m3=空のフラスコの重量(g)、
m4=残渣を有するフラスコの重量(g)
である。]
3.試験手順
ズルツァー−エッシャー・ヴァイス(Su1zer-Escher Wyss)型CFフローテー
ションセルが一体化された試験装置において、故紙を、1%の水ガラス、0.5
%の水酸化ナトリウム、0.5%の過酸化水素および0.33%のオリノール04
2(すべて絶乾紙原料を基準とする百分率)と共に、12重量%の紙原料濃度(
絶乾)にて、パルパー内で離解(disintegrate)した。粗い仕分けの後、200
kgに相当する体積の絶乾紙原料をバットにポンプ送りし、原料コンシステンシ
ーを測定した後、循環水を用いて1.3%の原料コンシステンシーに希釈した。
次に試験すべき添加剤を加えて、原料の試料を取り出した後、30分間フロー
テーション(浮遊)させ、その間、紙原料懸濁液を、バットからフローテーショ
ンセルを経て隣接するもう1つのバットへ循環させた後、最初のバットに再度戻
した。フローテーション処理を完了すると、すべての原料を最初のバットの中に
ポンプ送りして戻し、もう1つの試料を採取した。フローテーションの前後にお
いて、得られた原料試料のジクロロメタン抽出物を上述のように測定し、それに
加えて、パルプ・コンシステンシーおよびバットのレベルから充填剤および繊維
の全損失を測定した。
ジクロロメタン抽出物(DCM抽出物)の減少ならびに繊維および充填剤の損
失(全損失)を表1に示す。
2.3 結果の考察
表1から、本発明の方法によって、DCM抽出物におけるかなりの減少と同時
に、繊維および充填剤の全損失の顕著な減少が達成されるということが明らかで
ある。パルパー内およびフローテーションの直前の各々における水ガラス1%の
添加を比較すると、フローテーション工程の直前に添加を行う場合(本発明の方
法)にのみ、DCM抽出物において望ましい減少が達成されることが明らかに示
されている。更に、表1は、追加のアルカリ金属水酸化物が存在する場合、DC
M抽出物の値が実質的に同じである場合でも繊維および充填剤の全損失が更に減
少することを示している。
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フロントページの続き
(72)発明者 リュック、ウード
ドイツ連邦共和国 デー―25436 ウータ
ーゼン、エルンスト―ベーレンス―アレー
7番