JPH0931095A - 複合糖質の製法 - Google Patents

複合糖質の製法

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JPH0931095A
JPH0931095A JP7203945A JP20394595A JPH0931095A JP H0931095 A JPH0931095 A JP H0931095A JP 7203945 A JP7203945 A JP 7203945A JP 20394595 A JP20394595 A JP 20394595A JP H0931095 A JPH0931095 A JP H0931095A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 糖鎖の転移反応を利用して複合糖ペプチドの
簡便な製造方法を提供する。 【構成】 エンドグリコシダーゼの存在下、複合糖質
(糖鎖供与体)の糖鎖を下記式(化1) 【化1】 (式中、R1 はH、アミノ保護基、アミノ酸、ペプチド
あるいはN末端アミノ酸のαアミノ基を保護したペプチ
ドを示す。R2 はOH、カルボキシル保護基、アミノ
酸、ペプチドあるいはC末端アミノ酸のカルボキシル基
を保護したペプチドを示す。nは1あるいは2であ
る。)で示されるN−アセチルグルコサミン(GlcN
Ac)残基を有する合成基質(糖鎖受容体)に転移させ
ることにより複合糖ペプチドを製造する方法。 【効果】 望み通りの天然にはない複合糖質を合成で
き、生理活性複合糖ペプチドの製造に有効である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ペプチドの合成反
応と酵素による糖鎖転移反応を組み合わせた生理活性複
合糖ペプチドの製造方法に関する。本発明は医薬分野に
応用される。
【0002】
【従来の技術】糖質および複合糖質は生物の細胞、体液
等に存在し、細胞の基質認識や細胞−細胞間の認識等に
深く関わっている。また糖質は生体内物質の吸収分解等
の代謝の速度に関係している。タンパク質には糖鎖を持
つものが知られ、例えばエリスロポエチンやティシュー
プラスミノーゲンアクチベーターがあり、動物細胞を用
い遺伝子工学的に作られたこれら糖タンパク質が医薬と
して利用されている。またペプチドホルモンの中にも糖
鎖を持つものが知られ、例えばヒト絨毛性性腺刺激ホル
モン(hCG)等がある。これら糖タンパク質あるいは
糖ペプチドでは糖鎖がN結合型糖鎖として、ペプチド鎖
のAsnにGlcNAcを介して結合している。
【0003】タンパク質あるいは生理活性ペプチド等に
糖鎖を付けたり、あるいは今ある糖鎖を別の糖鎖に換え
ることにより、生理機能の強化や生理活性の改変に役立
つことが期待される。糖鎖を酵素的に改変する方法とし
ては、1)転移酵素あるいはエキソグリコシダーゼによ
る方法と、2)エンドグリコシダーゼによる方法が考え
られる。
【0004】1)の方法としては、例えばD.H.ジョ
ジアッセ(D. H. Joziasse)ら[ヨーロピアン ジャー
ナル オブ バイオケミストリー(Eur. J. Bioche
m.)、 第191巻、第75〜83頁(1990)]の報
告があるが、これは糖鎖の非還元末端からの逐次反応で
ある。また、最近、M.シャスター(M. Schuster)ら
[ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエテ
イ(J. Amer. Chem. Soc.)、第116巻、第1135
〜1136頁(1994)]は数種のグリコシルトラン
スフェラーゼを組み合わせた糖鎖の固相合成法を報告し
ている。
【0005】一方、2)のエンドグリコシダーゼを用い
た糖転移反応としては、R.B.トリムブル(R. B. Tr
imble)ら[ジャーナル オブ バイオロジカル ケミ
ストリー(J. Biol. Chem.)、第261巻、第1200
0〜12005頁(1986)]のフラボバクテリウム
メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningoseptic
um)由来のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダー
ゼ(エンド−F)に関するもの、R.M.バーデールス
(R. M. Bardales)ら[ジャーナル オブ バイオロジ
カル ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第264巻、
第19893〜19897頁(1989)]のディプロ
コッカス ニューモニエ(Diprococcuspneumoniae)由
来のエンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼに
関するものがあり、前者はグリセロールが受容体に、ま
た後者はグリセロール、p−ニトロフェノール、セリ
ン、スレオニン等が受容体になるという報告である。そ
の後、竹川ら[特開平5−64594号(1993)]
およびK.タケガワ(K. Takegawa)ら[ジャーナル
オブ バイオロジカル ケミストリー(J. Biol. Che
m.)、第270巻、第3094〜3099頁(199
5)]がアルスロバクタープロトホルミエ(Arthrobact
er protophormiae)由来のエンド−β−N−アセチルグ
ルコサミニダーゼ(エンド−A)による糖質への糖鎖転
移反応を、また、K.ヤマモト(K. Yamamoto)ら[バ
イオケミカル バイオフィジカル リサーチ コミュニ
ケーション(Biochem. Biophys. Res. Commun.)、第2
03巻、第244〜252頁(1994)]はムコール
ヒエマリス(Mucor hiemalis)由来のエンド−Mによ
る糖質への糖鎖転移反応を報告した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】複合糖質は糖鎖部分と
糖鎖が付加する側のタンパク質、ペプチドあるいはセラ
ミド部分等から構成されている。糖質に糖鎖を新たに付
与したりあるいは他の糖鎖と入れ換えたりする、いわゆ
る糖鎖の改変(リモデリング)により複合糖質の生体内
での安定性や生物活性が天然の複合糖質に比べて増強さ
れたり天然にない生物機能が付加されれば医薬品に応用
した場合に有用である。また、複合糖質における糖鎖の
もつ生理的機能は今まで糖鎖改変の有効な手段がなかっ
たために、十分には解明されていないが、その役割の解
析のための重要な手段を提供する。
【0007】糖質あるいは複合糖質に糖鎖を新たに付加
あるいは改変する方法としては、エキソグリコシダーゼ
またはグリコシルトランスフェラーゼを用いた糖残基を
一つ一つ逐次的に付加する酵素法が考えられる。また、
エンド−Aやエンド−M等のエンドグリコシダーゼによ
る方法は複合糖鎖をブロックとして糖質や複合糖質に転
移させる、より効率的な方法を提供する。
【0008】天然の糖タンパク質あるいは糖ペプチドの
糖鎖は、通常N結合型糖鎖として、Asn−X−Ser
(Thr)[Xは任意のアミノ酸、Ser(Thr)は
セリンまたはスレオニンを示す]のアミノ酸配列のペプ
チド鎖のAsnのアミド基に結合したGlcNAcを介
して結合している。即ちこのアミノ酸配列のAsnに、
末端にGlcNAc残基を有する糖鎖が付加され更に修
飾を受けてN結合型複合糖鎖は生合成される。従って、
天然にはこのアミノ酸配列のAsnに結合した糖鎖以外
のN結合型糖鎖は見出されていない。
【0009】上述の酵素による糖鎖の付加あるいは改変
には糖鎖受容体であるタンパク質あるいはペプチドにG
lcNAc残基があることが必要であり、糖鎖の付加あ
るいは改変は、従来、天然の糖タンパク質あるいは糖ペ
プチドの糖鎖をエンドグリコシダーゼあるいはエキソグ
リコシダーゼによりGlcNAc残基を残して切り取っ
た後に別の糖タンパク質から調製した糖鎖を付け換える
ものに限られていた。
【0010】タンパク質やペプチドの中にはAsn−X
−Ser(Thr)の配列があっても糖鎖の付かないも
のも多く、例えばカルシトニンなどはその一例である。
またAsnがあってもこの配列が無ければ生合成段階で
の糖鎖の付加はできない。
【0011】Asn残基にGlcNAcを結合した糖ペ
プチド(GlcNAc−Asn−ペプチド)を化学的に
合成できれば、上述の酵素法によりAsnに結合したG
lcNAc残基に糖鎖を付加した新しい複合糖ペプチド
を合成できる。この場合、ペプチド側にはAsn−X−
Ser(Thr)の配列は必ずしも必要とせずAsnの
みあればよい。また、Asnに類縁のアミノ酸であるグ
ルタミン(Gln)にGlcNAc残基を付けた糖ペプ
チドを合成すれば、同様の複合糖ペプチドの合成が期待
できる。
【0012】ペプチドの合成は固相合成法による残基数
が数十個のものまでの合成が工業的に実用化されてい
る。
【0013】本発明は、糖を結合したアミノ酸を少なく
とも1個含むペプチド即ち合成基質を化学的に合成し、
この足がかりの糖残基へ糖あるいは糖鎖を酵素的に転移
させれば新しい複合糖ペプチドが合成できるとの考えに
基づき開発されたものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明は1)糖鎖受容体となるGlcNAc残基を有する
合成基質の合成と、2)GlcNAc残基を有する合成
基質(糖鎖受容体)への酵素による糖鎖の転移反応の2
つの構成からなる。
【0015】本発明にいうGlcNAc残基を有する合
成基質とは、下記式(化1)
【0016】
【化1】(式中、R1 はH、アミノ保護基、アミノ酸、
ペプチドあるいはN末端アミノ酸のαアミノ基を保護し
たペプチドを示す。R2 はOH、カルボキシル保護基、
アミノ酸、ペプチドあるいはC末端アミノ酸のカルボキ
シル基を保護したペプチドを示す。nは1あるいは2で
ある。)で示される化合物である。
【0017】本発明にいう合成基質とは、人為的に合成
される物質をいい、天然に存在する糖タンパク質あるい
は糖ペプチドのグリコシダーゼおよびプロテアーゼ等の
酵素分解処理により調製されるGlcNAc残基を有す
る遊離のペプチドは(化1)の物質からは除外される。
【0018】(化1)に示すGlcNAc残基を有する
合成基質の合成は如何なる方法によってもよいが、例え
ばT.イナヅ(T. Inazu)ら[ペプチド ケミストリー
1993(Peptide Chemistry 1993 )、第101〜
104頁(1994)]の報告した方法に準じて合成さ
れる。
【0019】例えば、GlcNAc残基を有するヒト絨
毛性性腺刺激ホルモン(hCG)のβサブユニットの部
分ペプチドhCG(β12−16)[H−Ile−As
n−Ala−Thr−Leu−OH](Ileはイソロ
イシン、Alaはアラニン、Thrはスレオニン、Le
uはロイシンを示す。)の合成を例にとると、予め、N
末端を保護(9−フルオレニルメチルオキシカルボニ
ル、Fmoc)したアスパラギンのアミド基にGlcN
Acが結合したFmoc−Asn−GlcNAc誘導体
を合成しておき、ペプチドの固相合成の段階でAsnの
代わりに用いてペプチド合成を行うと、AsnにGlc
NAc残基が結合したhCG(β12−16)ペプチド
[Fmoc−Ile−Asn(GlcNAc)−Ala
−Thr−Leu−OH]が合成される。
【0020】本発明の方法では、Asn−X−Ser
(Thr)のアミノ酸配列がなくても、アミノ酸配列の
中にAsnがあればAsnの代わりにGlcNAcがア
ミド基に結合したAsn(GlcNAc−Asn)を用
いてペプチド合成することにより、任意のGlcNAc
−Asn−ペプチドが合成できる。このAsnに結合し
たGlcNAcに糖鎖を転移させて天然にはない複合糖
ペプチドを合成することが可能となる。
【0021】GlcNAcがアミド基に結合したグルタ
ミン(GlcNAc−Gln)をGlnに代えて用いる
ことによりGlcNAcがGlnに結合したペプチド
(GlcNAc−Gln−ペプチド)が合成される。
(化1)のnが2の化合物がこれに当たる。
【0022】(化1)のR1 にある末端アミノ酸のαア
ミノ基の保護基としては、例えば、9−フルオレニルメ
チルオキシカルボニル(Fmoc)基、第3ブチルオキ
シカルボニル(Boc)基、3−ニトロ−2−ピリジン
スルフェニル(Npys)基、ベンジルオキシカルボニ
ル(Z)基あるいはダンシル(DNS)基等が用いられ
る。
【0023】N末端アミノ酸の保護基は糖鎖転移反応後
に常法により外すか、あるいは予め保護基を外した後に
糖鎖転移反応に供してもよい。
【0024】(化1)のR2 にあるカルボキシル基の保
護基としては、第3ブチル(But)基、ベンジル(B
zl)基あるいはメチル(Me)基等であるが、水への
溶解性を上げるために保護基を外し、遊離型で用いるこ
とが多い。
【0025】本発明の第2の構成は、糖鎖受容体である
合成基質への糖鎖供与体からの糖鎖の転移反応による付
加である。
【0026】エンドグリコシダーゼの存在下、下記式
(式1):X−GlcNAc−Y + Z → X−G
lcNAc−Z + Y (式1)[式中、Xは複合
糖鎖、Yは糖質あるいは複合糖質、Zは(化1)に示し
た合成基質]で表される転移反応を行うことを特徴とす
る。
【0027】本発明に用いるエンドグリコシダーゼとし
ては、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ
(EC3.2.1.96)であり、例えば、エンド−A
やエンド−M等が用いられる。該酵素は下記式(式
2):R−GlcNAc−GlcNAc−Asn−(ペ
プチドまたはタンパク質)(式2)(式中Rは複合糖鎖
を示す)のアスパラギン(Asn)結合型糖鎖のキトビ
オース部分(GlcNAc−GlcNAc)の間を加水
分解するが、この時に適当な糖鎖受容体があると、受容
体に糖鎖(R−GlcNAc)部分が転移する。(式
1)の反応はそれを利用したものである。
【0028】エンドグリコシダーゼによる糖鎖転移反応
の糖鎖受容体となるのは、通常、Asn−X−Ser
(Thr)配列を含むペプチドのAsnに結合したGl
cNAc残基である。
【0029】Asn−X−Ser(Thr)の配列がな
くても、Asnに結合したGlcNAc残基を有するペ
プチド(GlcNAc−Asn−ペプチド)であればエ
ンドグリコシダーゼによる糖鎖転移反応の糖鎖受容体に
なり得ることが分かった。また、ペプチドのN末端αア
ミノ基及びC末端カルボキシル基は遊離型でなく、いず
れかあるいは両末端とも保護されていても反応が進行し
た。
【0030】更に驚くべきことに、天然には存在しない
グルタミン(Gln)に結合したGlcNAc残基を含
むペプチド(GlcNAc−Gln−ペプチド)のGl
cNAc残基にもAsnの場合と同様に糖鎖の転移反応
が起きることが分かった。
【0031】(化1)に示すGlcNAc残基を有する
合成基質はかかる知見に基づき調製されたものであり、
この合成基質への酵素による糖鎖の転移反応を行う本発
明を完成させた。
【0032】酵素の糖鎖供与体の基質特異性について
は、エンド−Aは高マンノース型糖鎖のみに作用する
が、エンド−Mは高マンノース型のみならず複合型糖鎖
や混成型糖鎖にも作用する。
【0033】これらの酵素の本来の機能は加水分解であ
り、(式1)のZの代わりに水が入り加水分解反応が転
移反応とともに副反応として進行する。また、(式1)
で生成した転移反応生成物(X−GlcNAc−Z)は
加水分解反応の基質となり再分解を受ける。
【0034】糖鎖転移反応を効率よく行わせるには加水
分解反応を抑えて(式1)の反応を優先的に行わせるこ
とが必要である。与酵素量を減らし、基質である糖鎖供
与体(X−GlcNAc−Y)と糖鎖受容体(Z)の仕
込濃度を、そのモル比を1近くにしつつ高濃度にするこ
とにより反応の場(酵素の活性中心)における水の影響
を排して転移反応を効率よく進行させることができる。
【0035】反応系で重要な点は、反応を酵素律速条件
下で行うことである。即ち糖鎖供与体から受容体への糖
鎖転移反応の速度が与酵素量に依存し、その速度を最大
にするに必要な最少量の酵素量になるように酵素の添加
量を制限して反応する。例えばエンド−Mの場合、糖鎖
供与体に対して500ユニット(U)/モル(供与体)
以下、望ましくは80〜400U/モル(供与体)程度
の酵素量を加える。なおここで、酵素の1ユニット
(U)は、ヒトトランスフェリン由来のアシアロ複合型
糖鎖のダンシル化(DNS)誘導体を加水分解して、3
7℃、1分間に1マイクロモル(μmol)のN−アセ
チルグルコサミニル−アスパラギンのDNS誘導体(G
lcNAc−Asn−DNS)を生成させるに必要な酵
素量である。
【0036】糖鎖供与体と受容体の仕込濃度を著しく高
めることも重要である。与酵素量を制限しつつ両基質を
高濃度に仕込むことにより、糖鎖転移反応が促進され副
反応が抑えられて反応収率は飛躍的に向上する。その濃
度は、糖鎖供与体が10mM以上、望ましくは15〜7
5mMがよい。また糖鎖受容体は2.5mM以上、望ま
しくは7.5〜35mM程度がよい。糖鎖受容体の濃度
は高い方が望ましいが、合成基質の溶解度が低い場合に
は2.5mM程度の濃度でも用いられる。
【0037】本発明に用いる糖鎖供与体としては、高マ
ンノース型、複合型、混成型いずれの糖鎖も用いられ
る。高マンノース型糖鎖は例えば卵白アルブミン等か
ら、またシアル酸を含有する複合型糖鎖は例えばヒトト
ランスフェリンや牛フェツイン等から調製され、シアリ
ダーゼ処理等によりシアル酸を外せばアシアロ複合型糖
鎖が調製される。酵素的あるいは化学的に修飾された糖
鎖、あるいは化学合成された糖鎖も用いることができ
る。
【0038】本発明の反応は、基質の糖鎖供与体、糖鎖
受容体および酵素のエンドグリコシダーゼを緩衝溶液中
で混合することにより行われる。先述のごとく、糖鎖供
与体の濃度を10mM以上、望ましくは15〜75m
M、糖鎖受容体の濃度を2.5mM以上、望ましくは
7.5〜35mMになるように加える。酵素量は500
U/モル(供与体)以下、望ましくは80〜400U/
モル(供与体)程度に制限し、例えば、エンド−Mの場
合、2〜10mU/ml程度の量で用いる。緩衝液とし
ては、pH5〜8程度、濃度25〜200mM、望まし
くは50〜100mMの適当な緩衝液が用いられる。エ
ンド−Mの場合、通常pH5.5〜6.5、濃度50〜
100mMの酢酸あるいはリン酸緩衝液中で反応が行わ
れる。基本的な反応液組成の一例は、糖鎖供与体25m
M、糖鎖受容体10mM、エンド−M4mU/mlおよ
び60mMリン酸緩衝液(pH6.25)である。
【0039】反応温度は通常、室温〜50℃程度、好ま
しくは30〜40℃で行われ、反応時間は1〜24時間
である。例えば、エンド−M酵素の場合、通常、37℃
で3〜18時間程度反応が行われる。
【0040】生成した複合糖質は公知の手段に従って反
応終了液から容易に分離精製することが出来る。例え
ば、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、イオン交換樹
脂カラムクロマトグラフィー、レクチンカラムクロマト
グラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
等により反応終了液から反応生成物の複合糖質を分離
し、更に濃縮、脱塩、凍結乾燥等を行えばよい。
【0041】
【実施例】以下に実施例をあげて本発明を更に具体的に
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0042】
【実施例1】 高マンノース型糖鎖のGlcNAc−Asn−Fmoc
への糖鎖転移反応:糖鎖供与体として、卵白アルブミン
をプロナーゼ処理、セファデックスG−25ゲルろ過更
にDowex50イオン交換クロマトにより分離精製し
て得た高マンノース型糖鎖(Man)6−(GlcNA
c)2−Asn(分子量1651)を1μmol(終濃
度25mM)、糖鎖受容体としてGlcNAc−Asn
−Fmoc(分子量558)を400nmol(同10
mM)、エンド−Mを160μU(同4mU/ml)加
え、60mMリン酸緩衝液(pH6.25)40μl中
で37℃、18時間反応させた。加熱処理により反応停
止後、反応液を蒸留水で1mlに希釈し反応生成物をH
PLCで分析した。4.0%の反応収率(対糖鎖受容
体、モル比)でGlcNAc−Asn−Fmocへの転
移反応生成物が得られた。反応生成物をHPLC分取
し、質量分析の結果、m/z[M−H]1732にシグ
ナルが観察され、(Man)6−(GlcNAc)2−A
snからGlcNAc−Asn−Fmocへの転移反応
生成物、即ち(Man)6 −(GlcNAc)2 −As
n−Fmoc(分子量1734)であることが確認され
た。
【0043】
【実施例2】 ヒトトランスフェリン由来シアロ糖鎖のGlcNAc−
Asn−Fmocへの転移反応: 糖鎖供与体として、
ヒトトランスフェリン(生化学工業)をプロナーゼ処
理、セファデックスG−25ゲルろ過を繰り返して得た
Asn残基のみを有するシアロ糖ペプチド(TF−SG
P、分子量2338)を1μmol(終濃度25mM)
とGlcNAc−Asn−Fmoc 400nmol
(同10mM)を0.1Mリン酸緩衝液(pH6.2
5)24μlに溶解し、エンド−M 160μUを含む
酵素溶液16μlを加え、37℃で6時間反応した。反
応停止後反応液を蒸留水で1mlに希釈して、反応生成
物をHPLCで分析した。転移反応生成物が反応6時間
で4.5%の収率で得られた。反応生成物をHPLC分
取により単離し、質量分析の結果、m/z[M−H]2
561にシグナルが観測され、ジシアロ2本鎖複合型糖
鎖がGlcNAc−Asn−Fmocに転移した化合物
(分子量2560)であることが確認された。
【0044】
【実施例3】 ヒトトランスフェリン由来アシアロ糖鎖のGlcNAc
−Asn−Fmocへの転移反応: 糖鎖供与体とし
て、ヒトトランスフェリン由来のシアロ糖ペプチド(T
F−SGP)をシアリダーゼ処理してシアル酸を外した
アシアロ糖ペプチド(TF−ASGP、分子量175
6)を1μmol(終濃度25mM)とGlcNAc−
Asn−Fmoc 400nmol(同10mM)を
0.1Mリン酸緩衝液(pH6.25)24μlに溶解
し、エンド−M 160μUを含む酵素溶液16μlを
加え、37℃で6時間反応した。反応停止後反応液を蒸
留水で1mlに希釈して、反応生成物をHPLCで分析
した。転移反応生成物が反応6時間で8.0%の収率で
得られた。反応生成物をHPLC分取により単離し、質
量分析の結果、m/z[M−H]1983にシグナルが
観測され、アシアロ2本鎖複合型糖鎖がGlcNAc−
Asn−Fmocに転移した化合物(分子量1978)
であることが確認された。
【0045】
【実施例4】 ヒトトランスフェリン由来アシアロ糖鎖のGlcNAc
−Asn−Npysへの糖鎖転移反応:糖鎖受容体とし
てのGlcNAc−Asnの3−ニトロ−2−ピリジン
スルフェニル(Npys)誘導体(GlcNAc−As
n−Npys)(分子量489)はAsnのαアミノ保
護基をNpys基にした化合物として合成した。糖鎖供
与体として実施例3と同様に調製したアシアロ糖ペプチ
ド(TF−ASGP)を用いた。アシアロ糖ペプチド
(TF−ASGP)を1μmol(終濃度25mM)と
GlcNAc−Asn−Npys 500nmol(同
12.5mM)を0.1Mリン酸緩衝液(pH6.2
5)24μlに溶解し、エンド−M 160μUを含む
酵素溶液16μlを加え、37℃で3時間反応させた。
反応停止後反応液を蒸留水で1mlに希釈して、反応生
成物をHPLCで分析したところ、転移反応生成物が
7.0%の収率で得られた。反応生成物をHPLC分取
し、質量分析したところ、分子量1910に相当するイ
オンピーク(m/z)観察され、トランスフェリン由来
のアシアロ2本鎖複合型糖鎖がGlcNAc−Asn−
Npysに転移した化合物であることが確認された。
【0046】
【実施例5】 ヒトトランスフェリン由来複合型糖鎖の合成ペプチドへ
の転移反応: 糖鎖受容体として、ヒト絨毛性性腺刺激
ホルモン(hCG)のβ鎖の部分ペプチドhCG(β1
2−16)のAsn残基にGlcNAcを付けたペプチ
ド[Fmoc−Ile−Asn(GlcNAc)−Al
a−Thr−Leu−OH]、[GlcNAc−hCG
(β12−16)−Fmoc](分子量956)(Il
eはイソロイシン、Alaはアラニン、Thrはスレオ
ニン、Leuはロイシンを示す)を先のT.イナヅらの
方法に準じて合成して用いた。糖鎖供与体のシアロ糖ペ
プチド(TF−SGP)を1μmol(終濃度25m
M)、受容体としてGlcNAc−hCG(β12−1
6)−Fmocを400nmol(同10mM)を0.
1Mリン酸緩衝液(pH6.25)24μlに溶解し、
エンド−M 160μUを含む酵素溶液16μlを加
え、37℃で3時間反応させた。反応停止後反応液を蒸
留水で1mlに希釈して、反応生成物をHPLCで分析
したところ、ジシアロ糖鎖がGlcNAc−hCG(β
12−16)−Fmocに転移した化合物(分子量29
59)の生成が認められた。糖鎖供与体としてアシアロ
糖ペプチド(TF−ASGP)を用いると、アシアロ糖
鎖がGlcNAc−hCG(β12−16)−Fmoc
に転移した化合物(分子量2376)が得られた。
【0047】
【実施例6】 高マンノース型糖鎖の合成ペプチドへの転移反応: 糖
鎖供与体として、卵白アルブミン由来の高マンノース型
糖鎖(Man)6−(GlcNAc)2−Asn(分子量
1651)を、糖鎖受容体としてGlcNAc残基を有
するヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)のβ鎖の部
分ペプチドhCG(β12−16)[GlcNAc−h
CG(β12−16)−Fmoc]を用い、実施例5と
同様の反応条件下で3時間反応させたところ、高マンノ
ース型糖鎖がGlcNAc−hCG(β12−16)−
Fmocに転移した化合物(分子量2132)の生成が
認められた。
【0048】
【実施例7】 高マンノース型糖鎖のGlcNAc−Gln−Fmoc
への糖鎖転移反応:糖鎖受容体のGlcNAc−Gln
−Fmoc(分子量572)はAsnの代わりにGln
(グルタミン)が入った化合物としてGlcNAc−A
sn−Fmocの合成法に準じて合成した。酵素反応に
はナトリウム塩にして用いた。糖鎖供与体として高マン
ノース型糖鎖(Man)6−(GlcNAc)2−Asn
(分子量1651)を1μmol(終濃度25mM)、
糖鎖受容体としてGlcNAc−Gln−Fmoc(分
子量572)を200nmol(同5mM)、エンド−
Mを160μU(同4mU/ml)加え、60mMリン
酸緩衝液(pH6.25)40μl中で37℃、3時間
反応させた。反応停止後、反応液を蒸留水で1mlに希
釈し反応生成物をHPLCで分析した。転移反応生成物
が7.5%の収率で得られた。転移反応生成物をHPL
C分取し、質量分析したところ、分子量1748に相当
するイオンピーク(m/z)が認められ、(Man)6
−(GlcNAc)2−AsnからGlcNAc−Gl
n−Fmocへの転移反応生成物、即ち(Man)6
(GlcNAc)2−Gln−Fmocであることが確
認された。
【0049】
【実施例8】 ヒトトランスフェリン由来複合型糖鎖のGlcNAc−
Gln−Fmocへの転移反応: 糖鎖供与体として、
ヒトトランスフェリンから調製したシアロおよびアシア
ロ糖ペプチド(TF−SGPおよびTF−ASGP)を
1μmol(終濃度25mM)とGlcNAc−Gln
−Fmocを200nmol(同5mM)を0.1Mリ
ン酸緩衝液(pH6.25)24μlに溶解し、エンド
−M 160μUを含む酵素溶液16μlを加え、37
℃で3時間反応した。反応停止後反応液を蒸留水で1m
lに希釈して、反応生成物をHPLCで分析した。転移
反応生成物がTF−SGPの場合5.0%、TF−AS
GPの場合13.7%の収率で得られた。転移反応生成
物をHPLC分取により単離し、質量分析の結果、TF
−SGPの転移反応生成物には分子量2574に相当す
るイオンピークが、またTF−ASGPの転移反応生成
物には分子量1992に相当するイオンピーク(m/z
[M−H] 1992)が観測され、各々ジシアロ2本
鎖複合型糖鎖がGlcNAc−Gln−Fmocに転移
した化合物およびアシアロ2本鎖複合型糖鎖がGlcN
Ac−Gln−Fmocに転移した化合物であることが
確認された。
【0050】
【実施例9】 ヒトトランスフェリン由来アシアロ糖鎖のGlcNAc
−Gln−DNSへの糖鎖転移反応:糖鎖受容体として
GlcNAc−Glnのダンシル化(DNS)誘導体
(GlcNAc−Gln−DNS)(分子量585)は
Glnのαアミノ基をDNS基で保護した化合物として
合成した。糖鎖供与体としてアシアロ糖ペプチド(TF
−ASGP)を用い、実施例4と同様の反応条件で3時
間反応させた。反応生成物をHPLC分取し、質量分析
したところ、分子量2004に相当するイオンピーク
(m/z)観察され、アシアロ2本鎖複合型糖鎖がGl
cNAc−Gln−DNSに転移した化合物であること
が確認された。
【0051】
【発明の効果】本発明により、GlcNAc残基を有す
る合成基質に酵素的に糖鎖を付加して新規複合糖ペプチ
ドを容易に合成することが可能となった。糖鎖受容体の
ペプチドはペプチド鎖のアミノ酸配列の中にアスパラギ
ン(Asn)あるいはグルタミン(Gln)があればG
lcNAc残基を介してN結合型糖鎖を付加することが
でき、天然には無い全く新しい複合糖ペプチドを合成で
きる。付加する糖鎖は高マンノース型、シアル酸を含む
複合型糖鎖いずれでもよく、望み通りの複合糖ペプチド
を合成できる。非天然のみならず天然のものも無論合成
可能である。本発明は、医薬への応用とともに複合糖質
の糖鎖の果たしている生理的役割を解明するための研究
手法を提供する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12P 21/02 C12P 21/02 B

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エンドグリコシダーゼの存在下、複合糖質
    (糖鎖供与体)の糖鎖をN−アセチルグルコサミン(G
    lcNAc)残基を有する合成基質(糖鎖受容体)に転
    移させることにより複合糖ペプチドを製造する方法。
  2. 【請求項2】GlcNAc残基を有する合成基質が、下
    記式(化1)で示される化合物である請求項1に記載の
    方法。 【化1】 (式中、R1 はH、アミノ保護基、アミノ酸、ペプチド
    あるいはN末端アミノ酸のαアミノ基を保護したペプチ
    ドを示す。R2 はOH、カルボキシル保護基、アミノ
    酸、ペプチドあるいはC末端アミノ酸のカルボキシル基
    を保護したペプチドを示す。nは1あるいは2であ
    る。)。ただし、天然に存在する複合糖質の酵素分解に
    より調製される物質を除く。
  3. 【請求項3】GlcNAcの結合するアミノ酸がアスパ
    ラギン(Asn)である請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】GlcNAcの結合するアミノ酸がグルタ
    ミン(Gln)である請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】N末端アミノ酸のαアミノ基の保護基が9
    −フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)
    基、第3ブチルオキシカルボニル(Boc)基、3−ニ
    トロ−2−ピリジンスルフェニル(Npys)基、ベン
    ジルオキシカルボニル(Z)基あるいはダンシル(DN
    S)基である請求項2に記載の方法。
  6. 【請求項6】C末端アミノ酸のカルボキシル基の保護基
    が第3ブチル(But )、ベンジル(Bzl)あるいは
    メチル(Me)基である請求項2に記載の方法。
  7. 【請求項7】エンドグリコシダーゼがエンド−β−N−
    アセチルグルコサミニダーゼ(EC3.2.1.96)
    である請求項1に記載の方法。
  8. 【請求項8】酵素律速条件下で反応を行う請求項1に記
    載の方法。
  9. 【請求項9】エンドグリコシダーゼの存在下、複合糖質
    (糖鎖供与体)の糖鎖をN−アセチルグルコサミン(G
    lcNAc)残基を有する合成基質(糖鎖受容体)に転
    移させることにより製造される複合糖ペプチド。
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