【発明の詳細な説明】
新規化合物生成に関するランダム化学関連出願のクロスリファレンス
本出願は、1993年4月19日に出願された、米国特許出願08/049,268号の一部継
続出願であり、その開示を本出願の内容として全て引用する。技術分野
本発明は一般に、所望の構造又は組成を予め定めることのない新規化合物の生
成、並びにこのような化合物の1種以上の所望の特性についてのスクリーニング
に関する。さらに詳細に述べると、本発明は、例えば、通常の方法又はそれ以外
の方法によって、バッチ量で連続生成するために、所望の特性を特徴づける又は
同定することができるような、各種の新規化合物を生成するための、酵素の有無
に係わらない、ランダム化学の使用に関する。発明の背景
新しくかつ有用な化合物を手に入れようとする人類の試みは、より興味深いが
問題の多い努力のひとつであり、特に医薬として有用な化合物において顕著であ
る。一般に、新規化合物を手に入れようとする伝統的な手法は、天然物質の単離
(すなわち自然界で発見された化合物の単離)又は合成による調製のいずれかで
ある。天然物質からの新規かつ有用な化合物の発見は、化合物を単離するための
原料物質の入手の可能性などの、様々な問題によって妨害される。さらに天然物
質由来の化合物の多様性は、植物及び他の生物が全て理論的可能な化合物を生成
するわけではないので、無限である。
別の、新規化合物は合成的に、すなわち天然に生じた化合物を単離するよりも
むしろ実験室で化合物を生成することによって、調製されている。化合物の合成
的な生成は、有機化学の原理及び方法論、特に反応機構を利用している。化合物
は、所望の化合物の構造を最初に決定又は考え、その後合成戦略を開発するよう
な計画的な“論理的な”手法によって生成される。この手法は、コンピューター
を用いた、構造活性研究が、論理的な医薬のデザインをもたらすような、ドラッ
グデザインの分野で全盛である。しかし、一般に、論理的なドラッグデザインは
、最初に描かれた成功に到達するものではない。
一旦所望の化合物の構造が同定されたならば、合成的に調製する戦略が開発さ
れる。有機合成に関する古典的戦略は、連続した合成又は同時のサブユニットの
集成、もしくはそれらの組み合わせである。一連の合成には、別の化合物を生成
するためのある化合物の修飾が関連し、これは所望の化合物が合成されるまで、
順に化学的に転移(など)される。同時のサブユニットの集成とは、個々の部分
の結合の結果得られる所望の化合物の生成を伴う、所望の化合物の“部分”合成
である。
さらに詳細に述べると、触媒反応の連続を通じて所望の化合物を合成する現在
の技術は、特定の所望の最終生成物の合成過程において使用された各中間化合物
の収量を最適にするために、連続した合成の各反応工程が制御されることを基本
としている。この確立された方法の論理は、所望の最終生成分子の構造があらか
じめ公知であり、かつ基質から所望の生成物へと導く熱力学的に効率のよい反応
経路が存在するという事実に基づいている。前述のように、所望の標的化合物を
合成する一般に主に2種の通常の戦略は、当該技術分野においては一般的である
。第一の戦略は、最終標的が、酵素もしくは反応条件の慎重な選択のいずれかに
よって、別の可能な基質と結合するように作用された出発基質の連続修飾によっ
て順次形成される。簡単な例は、活性化したアミノ酸のサブセクションを1種ず
つ添加する事で、伸長しているペプチド鎖の保護及び非保護のサイクルによる、
所望のペプチドの逐次化学合成である。当該技術分野における第二の主要な別の
戦略は、最終的には所望の標的に結合される分子の構成単位の次第に複雑になる
組の逐次合成による、所望の化合物の合成である。簡単な例は、アミノ酸モノマ
ーA,B,C,D,E,F から、まずジペプチドAB,CD,EFを合成し、その後にこれらのジペ
プチドを結合してヘキサペプチドを生成するという、特定のヘキサペプチド(ABC
DEF)の合成である。2種の通常の戦略と同じものが、いろいろな有機化合物の合
成化学の多くの分野で使用されている。両方の戦略は、あらかじめ具体化された
反応経路に関する知識の必要性、及びその使用などの、様々な問題によって妨害
されている。
要約すると、新規かつ有用な化合物を獲得する現在の手法には、様々な制限が
ある。従って、あらかじめ化学構造、組成、又は合成経路を決定する必要のない
新規化合物の生成法が、当該技術分野において必要とされている。本発明は、こ
れらの必要性を満足し、かつさらに他の関連した利点を提供する。発明の要約
新規かつ有用な化合物を獲得するための現在の手法と対照的に、本発明は、所
望の化合物の構造又は化学組成をその合成以前に知る必要がない。本発明の記載
は、未知の化合物の多様性が“ランダム”化学によってもたらされ、かつこのよ
うな多様性が、適した化合物の存在を検出するために、1種以上の所望の特性に
ついてスクリーニングされることを提供する。これが求められた有用な化合物の
構造又は組成をあらかじめ知る必要はないという、この論じられている方法の中
心点である。
簡略に述べると、本発明は、所望の特性を有する有機分子を生成する方法、も
しくは所望の特性を有する有機分子の生成及び特性決定の方法を提供する。
本発明の第一の態様において、本方法は、最初に様々な有機分子の出発グルー
プを提供することを含む。少なくとも1種の化学反応、出発グループ中の少なく
とも幾つかの異なる有機分子で生じ、該出発グループ中の有機分子と異なる1種
以上の有機分子を含有する中間反応混合物を作りだす。この少なくとも1種の化
学反応を起こす工程は、少なくとも1回は繰り返される。各反復は、その前工程
の反応混合物を使用し、最終反復の結果得られる最終反応混合物の生成で終了す
る。この最終反応混合物は、所望の特性を有する有機分子の存在についてスクリ
ーニングされる。
前述の第一の態様の実施例において、前記所望の特性を有する有機分子の生成
法を実施する。この態様におけるスクリーニング工程が、最終反応混合物中の所
望の特性を有する有機分子を検出することに成功する場合には、下記の追加の工
程を行う。様々な有機分子の出発グループは、2群以上のサブグループに分割し
、各々が、該出発グループ中の様々な有機分子全てよりも少なく含むようにする
。この化学反応は、出発グループと同じ方法で、サブグループの各々について行
い、各サブグループに対応しているサブ最終反応混合物を生成する。この工程で
得られるサブ最終反応混合物の各々は、所望の特性を有する有機分子の存在につ
いて、スクリーニングする。好結果のサブグループを、第一の追加の工程のサブ
グルー
プと置き換えることによって、所望の特性を有する有機分子が生成される好結果
のサブグループの各々について、これらの追加の工程を、少なくとも1回は反復
し、これによって、所望の特性を有する化合物を生成できる様々な有機分子の限
定された群を同定する。
ある実施例において、この方法は下記の工程を含む:
(a) 種々の基質のグループ、つまり酸、アミン、アルコール及び不飽和化合物を
含むこのグループを、適当な条件下で、脱水剤と反応させ、第一反応混合物を得
る工程;
(b) 前記第一反応混合物を、適当な条件下で、還元剤と反応させ、第二反応混合
物を得る工程;
(c) 前記第二反応混合物を、適当な条件下で、酸化剤と反応させ、第三反応混合
物を得る工程;
(d) 前記第三反応混合物を、適当な条件下で縮合反応させ、第四反応混合物を得
る工程;
(e) 前記第四反応混合物を、波長約200nm 〜約600nm の光に暴露し、その結果前
述の基質類及び試薬類とは異なる1種以上の有機分子を生成する工程;
(f) 所望の特性を有する有機分子の存在について、暴露された第四反応混合物を
スクリーニングする工程;並びに
(g) 暴露された第四反応混合物から、所望の特性を有する有機分子を単離する工
程である。
別の実施例において、前述の工程a-e のいずれの構成部分も、工程f 及びg 以
前にいずれかの順で行うことができる。さらに、工程a-e 又はこれらのいずれの
構成部分も、工程f 及びg 以前にいずれかの順で繰り返すことができる。同様に
、他の試薬との単独、逐次、又は同時の暴露を、工程e 及びf 以前に、工程a-e
に代えることができる。
前述の第一の態様の別の実施例において、この方法は下記の工程を含む:
(a) 種々の基質のグループ、つまり酸、アミン、アルコール及び不飽和化合物を
含むこのグループを、適当な条件下で、脱水剤と反応させ、第一反応混合物を得
る工程;
(b) 前記第一反応混合物を、適当な条件下で、還元剤と反応させ、第二反応混合
物を得る工程;
(c) 前記第二反応混合物を、適当な条件下で、酸化剤と反応させ、第三反応混合
物を得る工程;
(d) 前記第三反応混合物を、適当な条件下で縮合反応させ、第四反応混合物を得
る工程;
(e) 前記第四反応混合物を、波長約200nm 〜約600nm の光に暴露し、その結果前
述の基質類及び試薬類とは異なる1種以上の有機分子を生成する工程;
(f) 所望の特性を有する有機分子の存在について、暴露された第四反応混合物を
スクリーニングする工程;並びに
(g) 所望の特性を有する有機分子を特徴づける構造及び官能基特性を決定する工
程である。
前述の工程a-e のいずれの構成部分も、工程f 及びg 以前にいずれかの順で行
うことができる。さらに、工程a-e 又はこれらのいずれかの構成部分も、工程f
及びg 以前にいずれかの順で繰り返すことができる。同様に、他の試薬との単独
、逐次、又は同時の暴露を、工程e 及びf 以前に、工程a-e に代えることができ
る。
本発明の第二の態様において、この方法は下記の工程を含む:
(a) 触媒活性の多様性を示している様々な酵素群を、種々の基質群と、適当な条
件下で反応し、その結果該反応混合物中の、酵素類及び基質類と異なる1種以上
の有機分子を生成する工程;
(b) 前記反応混合物を、所望の特性を有する有機分子の存在についてスクリーニ
ングする工程;並びに
(c) 前記反応混合物から、所望の特性を有する有機分子を単離する工程である。
第二の態様の別の実施例において、この方法は下記の工程を含む:
(a) 触媒活性の多様性を示している様々な酵素群を、種々の基質群と、適当な条
件下で反応させ、その結果該反応混合物中の酵素類及び基質類と異なる1種以上
の有機分子を生成する工程;
(b) 前記反応混合物を、所望の特性を有する有機分子の存在についてスクリーニ
ングする工程;並びに
(c) 所望の特性を有する有機分子を特徴づける構造又は官能基特性を決定する工
程である。
本発明の別の態様は、下記の詳細な説明をする上で参照として明らかとなるで
あろう。発明の詳細な説明
本発明の第一の態様において、前述の方法は、種々の有機分子の出発グループ
を最初に提供することを含む。少なくとも1種の化学反応が、出発グループの中
の種々の有機分子の少なくとも幾つかで生じ、該出発グループ中の有機分子とは
異なる1種以上の有機分子を有する中間反応混合物を作りだす。少なくとも1種
の化学反応を生じるこの工程は、少なくとも1回は繰り返される。各繰り返しは
、前工程の反応混合物を使用し、かつ最終反復の結果得られる最終混合物の生成
で終了する。この最終反応混合物は、所望の特性を有する有機分子の存在につい
て、スクリーニングされる。
前述のように、別の態様において、化合物の多様性は、触媒活性の多様性を示
している酵素類のグループの影響を受けるような基質類の群からもたらされる。
本発明のこれ以外の態様において、化合物の多様性は、酵素が存在しない場合は
、条件の多様性の影響を受ける基質類の群からもたらされる。いずれの態様の実
施例も、様々なコア構造を伴う基質のグループを利用している。いずれかの態様
の別の実施例も、類似又は同一のコア構造を伴う基質のグループを利用している
が、置換基としての様々な官能基は利用しない。最後の実施例は、特定の化合物
又は化合物の特定の種類の周囲に集まる化合物の多様性をもたらす。
本発明の方法は、所望の特性を有する新規化合物の生成に使用する。好ましい
所望の特性の例は、医薬、ワクチン、連結剤、触媒、触媒的補因子、有用な構造
、検出用分子、及び他の化合物の構造単位として作用する能力を含む。連結剤は
、例えばタンパク、DNA、RNA、炭水化物、酵素、受容体又は膜と結合するするこ
とができる。連結剤には、酵素やホルモンの競合的阻害剤などの、アゴニスト及
びアンタゴニストが含まれる。有用な構造は、絹のような、低エネルギー構造(
例えば、自己集合可能な構造)及び物質構造を含む。検出用分子は、興味をひく
光放出特性を有する化合物を含む。新規化合物は、物質を模擬、変更、増強、
拮抗、修飾、又は刺激することができる。興味深い具体的分子は、下記の分子を
含む:(1) ヘルパーT細胞の特異的クローンのヘルパーT細胞レセプターと結合
することができる分子(例えば、このような結合は、特異的ヘルパーT細胞クロ
ーンの増幅又は欠失をもたらす);(2) 正常なヌクレオチドの代わりにDNA 又は
RNA に取り込まれることができる分子(例えば、このような取り込みは、生物活
性を変える);並びに(3) 酵素の基質として作用する、もしくは酵素活性を修飾す
ることができる分子(例えば、生物分子の結合能を修飾することができる)であ
る。このような分子は、様々な診断及び治療を目的とした場合に、有用である。
他の興味深い具体的分子は、経口避妊薬及びナプロキセンのような鎮痛に関する
改善された特性を有する分子、又はカプトプリルのようなプロテアーゼ阻害剤、
マイトマイシンのような抗癌剤、バンコマイシンのような抗生物質、並びにアン
ホテリシンのような抗真菌剤である。
本出願に記載された方法に用いる基質は、全て有機物質である。好ましい基質
群は、アルカン、アルケン、アルキン、アレーン、アルコール、エーテル、アミ
ン、アルデヒド、ケトン、酸、エステル、アミド、環式化合物、ヘテロ環式化合
物、有機金属化合物、ヘテロ原子を生じる化合物、アミノ酸及びヌクレオチドを
含む。さらに好ましい基質群は、酸、アミン、アルコール、アミノ酸、ヌクレオ
チド、並びにアルケン及びアルキンのような不飽和化合物を含む。最も好ましい
基質群は、アミノ酸を基本とした化合物(例えば、アミノ酸、ペプチド及びポリ
ペプチド)、ヌクレオチドを基本とした化合物(例えば、ヌクレオチド及びヌク
レオシド)、並びにそれらの組み合わせである。これらの基質は、置換基として
追加の官能基を含むことができ、実在する非環式、環式、ヘテロ環式であること
ができる。前述の酸、アミン及びアルコールは、1級、2級、カルボン酸、リン
酸、硫酸、芳香族、ヘテロ環式、脂肪族などであることができる。1級アミン及
び1級アルコールが、反応性が増強されているので好ましい。
それらの全体の構造の広範な変化を伴う種々の基質の別の選択は、興味深い分
子又は興味深い分子のクラスと、1種以上の共通の構造的特徴を共有するか、個
別である化合物を含む基質類を選択することである。従って、生成される化合物
の多様性は、興味深い分子又は興味深い分子のクラスを中核として作りだされる
であろう。例えば、ステロイドのような環状化合物を選択し、かつ次に多種の誘
導体を得ることができる。誘導体は、官能基の付加及び/又は除去、及び前駆体
環式化合物の一部に類似した環状置換基を伴う非環式化合物を含む。このような
誘導体は、本出願に記載されたランダム化学法に支配され、より多くの多様性を
もたらし、これより所望の特性を有する化合物は、単離するしないにかかわらず
、さらに特性評価するために検出される。例えば、基質群は、関連した化合物類
からなり、これらは本出願に記載された酵素を伴わない方法に支配される。別の
、基質群は、関連した化合物と試薬とからなり、これらは本出願に記載された酵
素を伴う方法に支配される。本発明のこれらの実施例の変法は、本出願に記載さ
れたランダム化学法を用いる誘導体の生成であり、かつこのような誘導体はより
多くの多様性を産みだすためにこれらの方法に支配されていて、これより所望の
特性を有する化合物を、単離するしないにかかわらず、さらに特性評価するため
に検出される。
基質として利用できる誘導体を得るのに好ましい中心的分子の種類は、ヘテロ
環、ステロイド、アルカロイド、及びペプチド/擬態(制約を受けた分子類、例
えばS-S ジスルフィド結合による制約を受けたものを含む)である。ヘテロ環の
例は、プリン、ピリミジン、ベンゾジアゼピン、β-ラクタム、テトラサイクリ
ン、セファロスポリン、及び炭水化物である。ステロイドの例は、エストロゲン
、アンドロゲン、コルチゾン、及びエクジソンである。アルカロイド類の例は、
麦角、ビンカ、クラーレ、ピロリジジン、及びマイトマイシンである。ペプチド
/擬態の例は、インスリン、オキシトシン、ブラジキニン、カプトプリル、エナ
ラプリル、及び神経毒(例えば、カタツムリ及びヘビなど由来の)である。
ある態様において、本発明は、生成分子の多様性を形成するように、基質群が
“酵素”群によって活性化されているような、新規化合物の生成法を提供する。
本出願で使用された用語“酵素”は、酵素(例えば自然に又は非自然に発生又は
産生された)、触媒(例えば、触媒性表面)、候補的触媒及び候補的酵素(例え
ば、抗体、RNA 、DNA 又はランダムペプチド/ポリペプチド)である。ある実施
例において、この方法は下記の工程を含む:(a) 多種の基質群と、適当な条件下
で、触媒活性の多様性を発揮する様々な酵素群が反応し、これにより該反応混合
物中の酵素類及び基質類と異なる1種以上の有機分子を生成する工程;(b) 所望
の特性を有する有機分子の存在について、該反応混合物をスクリーニングする工
程 ;並びに、(c) 該反応混合物から、前記所望の特性を有する該有機化合物を
単離する工程である。
別の実施例において、本方法は下記の工程を含む:(a) 多種の基質群と、適当
な条件下で、触媒活性の多様性を発揮する様々な酵素群が反応し、これにより該
混合物中の酵素類及び基質類と異なる1種以上の有機分子を生成する工程;(b)
所望の特性を有する有機分子の存在について、該反応混合物をスクリーニングす
る工程 ;並びに、(c) 前記所望の特性を有する該有機化合物を特徴づける構造
及び官能基特性を決定する工程である。
本出願で提供された方法によって生成された生成分子ライブラリーから、実用
的関心が、特徴づけられる。前述のように、本発明の方法においては、捜し求め
る有用な分子の構造及び組成に関する知識をあらかじめ有する必要がないことは
主要なことである。本発明のこの態様は、一層の生成物の多様性を形成するよう
な、最初の基質群の間の反応の十分な多様性を示す触媒、ないしは他の理由に基
づいている。本発明の方法によって形成される生成物の多様性をより完全に理解
するために、該分子が、1種以上の反応を触媒する候補的酵素又は触媒の存在下
でインキュベートされた場合に形成されたこれらの分子間の触媒反応の部分グラ
フの平均特性に加え、分子の組間の反応グラフの平均特性の統計解析を考察する
ことは有益である。
反応グラフとは、有機分子の組、並びにそれらの分子が経ることができるすべ
ての反応の妥当な数学的説明である。有機反応は、基質の数及び生成分子の種類
の数でクラスに分類する事ができる。第一のクラスは、1個の基質を1個の生成
物に転換する。異性化酵素に触媒された異性化反応が例である。第二のクラスは
、2個の基質を連結して、1個の生成物を形成する。エステル結合による2個の
ヌクレオチドを連結する脱水反応が例である。このような反応は、リガーゼによ
って通常触媒される。第三の広範なクラスは、1個の基質を切断し2個の生成物
とする。ホスホジエステラーゼによるポリヌクレオチドの切断は、中間代謝の多
くの工程として頻繁に見られる例である。最後に第四のクラスは、2個の基質を
2
個の生成物に転換する。これは2個の最初の基質の一方の反応基を第二の基質へ
転移することによってしばしば生じる。
反応グラフの便利な表現は、各有機分子の種類の三次元空間での位置を意味す
る。基質類の反応に由来した1又は2種の基質分子から、1又は2本の線が出て
いる。基質から出た線上の矢印は、反応を意味している枠を示す。生成物の反応
枠から出た矢印は、生成物を指している。反応は可逆的であるので、この矢印は
、その反応の可能な一方向を単に示している。このシステム内の全ての有機分子
間のあらゆる反応を表している、このような矢印及び枠の全ての組は、反応グラ
フを含む。
反応グラフの重要な特徴は、有機分子のいずれかの最初の組のほとんどについ
て、この組が基質であると見なされる様な反応グラフも、新たな有機分子類(す
なわち、基質の最初の組でない分子)の添加が必要であり、このような新たな有
機分子は、基質の最初の組間で可能な1種以上の反応の生成物である。数学的方
法において、反応グラフは、反復によって“成長”し、これは“反応グラフの成
長”と呼ばれる。第一の段階において、最初の基質分子の組を列挙する。次の段
階では、これらの基質間の反応グラフが、数学的に形成され、かつ該反応グラフ
の2回目の反復は、最初の基質類に加え、可能な反応の新規有機分子生成物のい
ずれかの双方を列挙することによって形成される。第三の段階では、この有機分
子の新たに拡大された組間の可能性のある全ての有機反応を示す。この新規反応
グラフは、さらなる新規の有機分子が、その時点で可能性のある反応の生成物で
あることを示している。この数学的グラフ成長過程の連続した反復を通して、こ
のグラフに含まれた有機分子類の組は、基質の最初の組と比較して非常に増加す
ることができる。この連続した増加は、“臨界超過挙動”と呼ばれている。別の
この反応グラフ成長過程の可能性のある数学的挙動は、新たな生成物分子が生成
されなくなるまで、2、3の新たな生成物が第一のグラフの成長サイクルにおい
て形成され、かつ連続するグラフの成長サイクルにおいて段階的により少なく形
成されることである。グラフの成長が制限される挙動は、“臨界未満”と称され
ている。
本出願に記載された有機分子の組及び“酵素”の組が、この酵素が該有機分子
に反応するような反応条件において存在する場合には、前述の反応グラフに加え
、前記総合システムのありのままの数学的表現が、どの酵素がどの反応を触媒す
るかを説明している。後者の酵素類及び触媒された反応の説明は、該反応グラフ
の触媒された反応の部分グラフを含む。この数学的表現は、各候補的酵素に関し
、もし存在すると仮定し、いずれの反応を触媒するかということに注意すること
によってもたらされる。矢印は、その酵素から、触媒された反応を表現する反応
枠へと引くことができ、基質(類)の生成物(類)への転換を表す枠の内向き及
び外向きの矢印は、便利な方法、例えばこれらの矢印を“赤”で記載することで
、注意を促すことができる。全ての赤い矢印の組は、このシステム内の1種以上
の候補的酵素によって触媒される反応を表す。
この反応グラフそれ自身は、その挙動において臨界未満又は臨界超過であるよ
うな、有機分子類間の触媒された反応の部分グラフである。この場合、最初の“
前駆体”基質類間の触媒された反応のみを考慮する。この触媒された反応は、基
質の前駆体組中には存在しない生成物をもたらす。これらの新規生成物は、基質
の最初の前駆体組と共に利用することができ、より多くの反応をもたらし、その
中のいくつかは、該システム中に存在する候補的酵素の組によって触媒される。
反復の連続を通じ、この触媒された反応成長の過程は、多様性を、臨界超過モー
ドで非常に増加することができる。代わりに、触媒された反応を通じて形成され
た新規分子の組は、触媒された反応グラフの成長の連続反復を通じ、次第に減少
することができる。これは、臨界未満的挙動の形式である。
このシステムの総合的挙動は、反復を通じた、反応グラフと触媒された反応の
部分グラフの挙動によって表される。触媒されていない反応は、自然発生的反応
を意味する。反応グラフが臨界未満又は臨界超過のいずれの挙動をするかは、シ
ステム中に存在する前駆体基質の多様性及び候補的酵素類の多様性によって決ま
る。さらに、この挙動は、全ての試薬の濃度、有機分子の溶解度、及び各反応を
越えた平衡状態の偏位の方向などの因子によって決まる。
一般に、反応システムの臨界未満挙動から臨界超過挙動への遷移相は、システ
ム中の有機分子の多様性及び酵素の多様性に支配される。有機分子及び酵素の両
方の多様性が低いシステムは、典型的には臨界未満である。有機分子単独の高い
多様性、又は酵素の高い多様性を伴う有機化合物の低い多様性、もしくは両方の
高い多様性のいずれかのシステムは、典型的には臨界超過である。外から酵素を
添加しない有機分子単独のシステムは、自発的反応グラフが臨界超過であるか、
もしくはそれらの基質又は生成物のいくつか自身が前述定義の酵素であるために
、臨界超過であることができる。その形態の中のひとつにおいて、本発明は臨界
未満及び臨界超過挙動の間の数学的遷移相の点で優れており、有機分子の前駆体
組から高い多様性の有機分子のライブラリーを生じるような反応条件を選択する
。
臨界未満から臨界超過挙動へのこの遷移相の一般的な特徴は、候補的酵素の組
としての抗体分子のクローン化ライブラリーの好ましい使用、及び一般性を失な
わない、D 及びL アミノ酸並びに非天然アミノ酸の混合物を含有するペプチドと
して利用でき、もしくは小さいポリヌクレオチド、又は他の有機分子類の広範な
変種として利用することができる基質の組を基に、限定しない意図の実施例によ
って詳細に述べることができる。この遷移相の一般的特徴を説明するために、一
定の数の小さい有機分子類の反応グラフにおける反応の数を推測することは有用
である。一般に、反応数は未知である。しかし、最小の現実的な推定値は得られ
る。例えば、D 及びL アミノ酸及び非天然アミノ酸から成る、各々10個のアミノ
酸のペプチドの前駆体組を、基質として使用することができる。可能な基質の数
は、非常に大きく、かつアミノ酸の種類の数の10乗によってもたらされる。ペプ
チド長10のうちのいずれかの2個は、各デカペプチドの内部ペプチド結合のいず
れかの位置で、末端アミノ酸(複数)サブシークエンスの切断及び交換をするペ
プチド転移反応を行うことができる。各々9個の内部結合があるので、デカペプ
チドの対のいずれも、81ものペプチド転移反応を行うことができる。いずれの場
合も、2種の基質から2種の生成物が得られる。いずれのデカペプチド対も81の
ペプチド転移反応を行うことができることから、2種のペプチドはただ1種のペ
プチド転移反応を行うことができると仮定することが過小評価であることは明ら
かである。しかし明らかに過小評価であるにもかかわらず、N種のペプチドの多
様性であるシステム中の反応の数は、可能なペプチド対の数と等しいことから、
N2と等しい。同様の一般的特徴が、2種の基質及び2種の生成物の反応を行う有
機分子の多くのクラスにおいて生じる。有機分子のほとんどの対については、2
種の分子が2種の生成物を形成するために、少なくとも1種の反応を行うという
推測は控えめである。従って一般には、N2というのは、N 種の有機分子の反応グ
ラフにおける反応の多様性の控えめな概算である。
再度、触媒された反応のグラフにおける遷移相の一般的特徴を詳細に述べるた
めに限定を意図しない実施例として、100,000,000 種のクローン化されたヒト抗
体分子の組を、候補的酵素の組として用いる。生成される触媒的抗体(下記に記
す)の統計を基に、無作為に選択された抗体分子が無作為に選択された反応を触
媒する確率は、10-5〜10-8の範囲である(Pollackらの論文、Science,234:1570(1
986);Tramontano らの論文、Science,234:1566(1986):Tramontano らの論文、Pr
oc.Natl.Acad.Sci.USA,83:6736(1986);Jacobs らの論文、J.Am.Chem.Soc.,109:2
174(1987);Pollack 及びSchultz の論文、Cold Spring Harbor Symposium on Qu
antitative Biology,52(1987);Tramontanoらの論文、Cold Spring Harbor Sympo
sium on Quantitative Biology,52(1987))。低いほうの概算値である10-8を、詳
細な説明のために使用することができる。基質分子の多様性が変動するような反
応システムを検討し、かつこの多様性を、デカルト座標系のY軸上に記す。同時
に候補的酵素の組の多様性も変動し、かつX軸上に記す。基質及び候補的酵素の
低い多様性が、臨界未満反応システムを生じることはほとんど確かである。実際
には、2種の基質、つまり1種の反応、及び1種の無作為に選択された抗体分子
を伴うシステムを検討する。この抗体分子が該基質によってもたらされた4種の
単一反応のいずれかに対し触媒として作用する機会は、10-8である。従って、こ
の反応のための触媒は、このシステム中には存在しないこと、並びに新規生成物
の形成は触媒されないことはほとんど明らかである。このシステムは、臨界未満
である。高い多様性の基質及び候補的酵素は、高い確率で臨界超過である。多様
性1,000 の有機分子は、適当な反応器の中で多様性1,000,000 の抗体分子とイン
キュベートする。1,000 の有機分子の間の反応の数は、控えめな概算でも、少な
くとも1,000,000 である。各反応は、1,000,000 の候補的抗体酵素のいずれか1
種によって触媒され、かつ各抗体は、各反応のための触媒として1/100,000,000
の可能性で作用することができる。従って、抗体触媒がそのシステム中に存在す
る反応の期待値は、106×106/108=104である。これより、1,000,000 の可能
性の中の10,000の反応が、存在する1種以上の抗体によって触媒されなければな
らない。その結果、これらの触媒された反応が生じる場合には、10,000の反応の
生成物が形成されるであろう。これらのほとんどは、最初に存在する1,000 の基
質分子とは異なる。従って、有機分子の組の多様性は、増加している。これらの
新規分子濃度が十分に増加するのに十分な時間が経過したのちは、この新規シス
テムは、1,000 よりも10,000台の基質の多様性を有し、その結果、10,0002の反
応の多様性が、増加した基質の組間で可能である。従って、抗体分子間に触媒を
見いだす反応の期待値は、108×106/108、又は1,000,000 である。その結果、1,
000 の有機分子の前駆体組の2種の反応工程における、有機分子の多様性は、約
1,000,000に増加している。逐次反応サイクルを通じて、多様性は増大するであ
ろう。これは臨界超過挙動である。
一般にX-Y 平面において、おおまかな双曲線が、前駆体基質及び酵素の低い多
様性を示す原点付近の臨界未満状況、及び初期基質、酵素又は双方の高い多様性
を示す臨界超過状況を分割している。基質の多様性が低く固定された、このシス
テムでは、酵素の十分に高い多様性が存在する場合には、臨界超過状況に交わる
ことができる。逆に、酵素の多様性がいくぶん低く固定されている場合には、こ
のシステムは、基質の十分に高い多様性が存在すると、臨界超過状況に交わるこ
とができる。このおおまかな双曲線の実際の形は、基質の多様性の増加に応じて
反応数が増加する特定の形式によって決まり、その結果これは前駆体基質として
使用された有機分子の特定の組によって決まる。さらにこの曲線は、抗体分子が
、前駆体基質及びその生成物によってもたらされた様々な反応を触媒する確率の
分布によって決まる。しかし、いずれの場合にも、基質及び酵素双方の十分な多
様性は臨界超過挙動をもたらす。このシステム中の有機分子の多様性は、有機分
子の前駆体組から導かれる反応の連結網の触媒作用を介して劇的に増加し、その
生成物の多様性を増加する。
基質単独のシステムは、その基質が十分な多様性及び十分高い濃度で存在し、
妥当な時間相互に作用するならば、外部から供給された酵素が存在しない場合で
も、生成物の多様性を爆発的に増加することができることを強調しておくことは
重要である。例えば、高い多様性は、自発性反応グラフが臨界超過であっても発
生するであろう。しかし、外部から酵素が添加されたシステムが好ましい。
本出願においては、候補的酵素分子の組の限定を意図しない実施例として、ヒ
ト抗体レパートリーを使用する。当該技術分野において公知であるように、ゲノ
ム転移によるヒト抗体分子の組み合わせの多様性は、100,000,000 台である(可
能性のある多様性をさらに増大するような免疫応答の成熟期間の体細胞突然変異
の発現以前)。さらに当該技術分野において公知であるように、抗体分子は、自
然反応と比較して3〜8倍速度(Vmax)が加速した、広範な反応の種類を触媒する
ように機能することができる。このような触媒的抗体は、通常所望の反応の遷移
状態の安定な類似体である分子を有する、免疫反応性動物の免疫感作によって、
通常産生される。モノクローナル抗体類は、この免疫感作によって産生され、か
つそれぞれは所望の反応を触媒する能力を試験される。安定な類似体はこの反応
の遷移状態と化学的に似ているので、通常試験されたモノクローナル抗体の5〜
10%は、所望の反応を触媒することができる。おそらくこの触媒作用は、遷移状
態に対する高い親和性、及び基質類及び生成物類に対する低い親和性を反映して
いると思われる。
無作為に選択された抗体分子が、所定の、無作為に選択された反応を触媒する
ことができる確率を概算することは可能である。抗体を被覆している任意の抗原
決定基と免疫応答するB細胞分画は、1/100,000 の割合である。抗原に応答する
B細胞は、分割するために惹起された抗原に対し、通常やや高い親和性を保持し
ている。従って、無作為に選択された抗体分子が、任意の抗原に対しわずかな親
和性、104/M で結合することができる確率は、約1/100,000 である。触媒的抗体
を産生したモノクローナル抗体は、さらに該抗体に対する親和性を増大するよう
な体細胞突然変異を受けることができる。無作為に選択された抗体が、任意の抗
体に対し高い親和性を有する可能性が、約10-6〜10-8であると概算することは妥
当である。
さらに、抗体分子のクローン化された多様性の高いライブラリー(108以上)を
、さまざまな方法で作成することができ、かつ作成されていることは、当該技術
分野において周知である。従って、このような抗体ライブラリーは、高い多様性
の候補的酵素の組の限定を意図しない例である。
候補的酵素類の組としてのヒト抗体レパーリーの使用は好ましいが、これは酵
素類の組として都合がよく使用することができる分子の組の限定を意図しない例
である。追加の候補的組は、下記を含む:
(1) 完全に無作為又は、部分的に確率的な、ポリヌクレオチド配列、DNA 又はRN
A のライブラリーで、これらは完全又は部分的に確率的なペプチド、ポリペプチ
ド又はタンパク質のライブラリーを、翻訳によって生成する。これらのライブラ
リーは、原核又は真核ホストにおいてクローン化され、該ポリヌクレオチド配列
を増幅し、かつ候補的酵素ライブラリーを構成するタンパク質生成物を得る。他
に、このポリヌクレオチド配列は、in vitroにおいて増幅され、かつin vitroに
おいて翻訳され、候補的酵素ライブラリーが得られる。必要であるならば、この
候補的タンパク質ライブラリーは、当該技術分野において公知の方法で、他の分
子成分から単離することができる。そのための有利な方法は、例えばユビキチン
などに隣接するように融合した確率的なペプチド、ポリペプチド、又はタンパク
質との、融合タンパク質のライブラリーを使用する。ユビキチンに対する抗体は
、候補的酵素類の組として利用できる融合タンパク質ライブラリーの親和力を用
いて精製することができる。
(2) 抗体分子のライブラリーは、その抗体分子の高頻度可変領域に、部分的に確
率的なDNA 配列をクローン化することによって作成することができる。この精製
は、該抗体分子の1種以上の相補的決定部位(CDR) への、このような確率的配列
をクローン化することを伴う。各CDR は、アミノ酸5〜10を有する。この修飾さ
れたライブラリーは、候補的酵素類の組である。
(3) 部分的に確率的なDNA 配列又はRNA 配列は、いずれかのタンパク質、すなわ
ちヒストン1又は他のタンパク質をコードしている遺伝子にクローン化すること
ができ、ホストタンパク質の配列の一方の端、もしくは中程で、新規DNA 又はRN
A との融合タンパク質を生成する。よく折り重なったホストタンパク質は、枠組
みとして働き、クローン化された配列の折り重なり及び安定性を補助する。
(4) それらのDNA 配列又はそれらのRNA 配列のライブラリーは、候補的酵素のラ
イブラリーを構成している。リボザイム、並びにトロンビンのような任意のリガ
ンドと結合することができるDNA 配列の存在は、両方の種類のポリマーが、遷移
状態で結合し、かつ反応を触媒する強力な候補であることを示している。
(5) 当該技術分野において公知である、直線の配列又は他の組み合わせ分子の多
様性の別のライブラリーを、候補的酵素として使用することができる。公知の酵
素単独、もしくはわずか又は多くの多様性のそれらの酵素の変異体は、候補的酵
素類の組として、有利に働くことができる。さらに詳細に、かつ限定されない実
施例として述べると、分子ライブラリーを作成する点で興味深い基質類は、非天
然のアミノ酸を含む、D 又はL アミノ酸、及びこれらの分子構成単位によって形
成されたいくつかの小さいジペプチド、トリペプチド、及びテトラペプチドであ
る。当該技術分野において、より大きいペプチドを、アミノ酸から合成でき、小
さいペプチドはプロテアーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼ、加水分解酵素、及びエ
ステラーゼを用いて合成されることは公知である(Schellenberger 及びJakubke
の論文、Chem.Int.Ed.Engl.,30:1437(1991))。従って、このような酵素類の組は
、通常の環境で共同で使用され、続いて基質の組に作用する。さらに、基質特異
性を変更することができる、もしくは水分の少ないジメチルホルムアミド溶媒な
どの、一般的でない溶媒中で触媒活性を変えることができるような、プロテアー
ゼの突然変異株を選択することが可能であることは当該技術分野において公知で
ある(Arnoldの論文、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1993年発行)。従って、本発明の
好ましい実施例において、興味深い酵素類の組の各々の変異体のライブラリーが
使用される。長さN の各酵素に関して、1突然変異株は、19N であり、2突然変
異株は平方数(N2)のオーダーである。このことから、当該技術分野において公知
の方法で得られた所定の酵素の数百万の突然変異タンパク質のライブラリーが、
容易に作成される。10種の異なる初期酵素類、リパーゼ、加水分解酵素、エステ
ラーゼ及びプロテアーゼの多様性に関しては、候補的酵素類から得られるライブ
ラリーは、各候補的酵素につき、100,000,000 の異なるタンパク質種のオーダー
である。その後これらを、興味深い前駆体基質とインキュベートする。タンパク
質の最大10mg/ml の溶解度を有す、1,000,000(抗体分子を基にした限定を意図し
ない実施例において下記に記載)から100,000,000 までの候補的タンパク質の多
様性の増加は、生成分子がより緩徐に形成されることを暗示している。このこと
から、体積1,000 μl について、多様性1,000,000 の候補的酵素類を用い、飽和
した酵素類から濃度1 nMの生成分子を生成するためには、約1秒かかり、100,00
0,000 の候補的酵素類のライブラリーを使用すると、約100 倍長い時間が必要で
ある。小さいD 及びL ペプチドの実施例は限定を意図するものではない。他のコ
アとなる分子構成単位、炭水化物、ヘテロ環式化合物、多様な付加物などは、本
発明の全ての方法において、基質の出発ライブラリーとして使用することができ
る。
古典的なタンパク質を基本とした酵素を使用して触媒活性の多様性に作用を及
ぼす場合の酵素類は、酸化還元酵素; 転移酵素; 加水分解酵素; リアーゼ; 異性
化酵素; 及びリガーゼである。酸化還元酵素は、酸化及び還元反応を触媒する。
酸化還元酵素の例は、デヒドロゲナーゼ; レダクターゼ; オキシダーゼ(モノオ
キシゲナーゼ及びジオキシゲナーゼ);及びペルオキシダーゼを含む。転移酵素は
、官能基の転移を触媒する。転移酵素の例は、アミノトランスフェラーゼ(トラ
ンスアミナーゼ);ホスホトランスフェラーゼ; ピロホスホキナーゼ; 及びヌクレ
オチジルトランスフエラーゼ(RNA及びDNAポリメラーゼ)を含む。加水分解酵素は
、エステル、グリコシル、及びペプチド結合などの結合の加水分解的切断を触媒
する。加水分解酵素の例は、ホスホジエステラーゼ; アミラーゼ; プロテアーゼ
(ペプチダーゼ、プロテイナーゼ);ヌクレアーゼ(エキソ-及びエンド-;リボ-及び
デオキシ-リボヌクレアーゼ);及びホスファターゼを含む。リアーゼは、基質か
ら官能基の非加水分解的除去による二重結合の形成を触媒する。リアーゼの例は
、デカルゴキシラーゼ; アンヒドラーゼ; 及びシンターゼを含む。異性化酵素は
、1個の分子内での幾何学的又は構造的変化を触媒する。異性化酵素の例は、ラ
セマーゼ; エピメラーゼ; トートメラーゼ; 及びムターゼを含む。リガーゼは、
ピロリン酸結合の加水分解に際し、組み合わされた2つの分子の結合を触媒する
。リガーゼの例は、シンテターゼを含む。
有用な多様性の高いライブラリーの生成には、基質類が溶媒中に溶解すること
、候補的酵素類が溶媒中に溶解すること、基質類及び酵素類の相互の出会いが迅
速であるために十分な程度体積が小さくかつ濃度が高く、かつ酵素的部位が反応
速度を速くするために十分なフラクションを占領するのに十分高い濃度であるこ
と、並びに多様性が高い生成物ライブラリーの有用な分子が検出できるのに十分
な高
い濃度で存在することが必要である。これらのすべての必要条件は、本発明のた
めに検討されている。例えば、酵素類は通常、水性(水を基剤とする)溶液中の
、ある程度の%のエタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメ
チルホルムアミド(DMF)又はそれらの混合物などの有機溶媒に認容性がある(Gupi
aの論文、Eur.J.Biochem.,205:25,(1991))。従って、全ての基質類が水溶性でな
くとも、水混和性の有機溶媒を含むことが望ましい。
記載された種類の基質類の溶解度は多岐に渡る。一般に、1〜100 μl のオー
ダーの小さい反応体積中では、基質の種類が1,000 のオーダーで、ミリモル濃度
を得ることは妥当である。1,000 基質の多様性が、1,000,000 の因子によって増
加するような反応条件下では、1,000,000,000 、又は109の多様性を有する小さ
い分枝のライブラリーを生じ、平均濃度は10-6の因子によってもたらされ、この
結果ミリモルからナノモル10-9M へと低下する。下記に論じられた興味深い分子
を同定するための検出方法は、ナノモル限界で迅速に検出することができ、かつ
通常はピコモル10-12M限界で検出することができる。従って、多様性が10億であ
るような平均以下のある生成物の濃度が1/1,000 に低下したとしても、この検出
方法は、興味深い分子を検出することができる。他の検出方法も、10-15〜10-20
モルで検出できる。
反応混合物中の候補的酵素の多様性は、該酵素の溶解度によって制限される。
例えば、水性媒質中のタンパク質は、10mg/ml の濃度は通常達成できる。200 残
基のアミノ酸である候補的酵素において、1020のオーダーのタンパク質分子は、
1,000 μl の溶液中に存在することができる。従って、106の多様性の候補的酵
素を使用する場合は、各々は1014のコピーで存在するであろう。触媒的抗体は、
前述のようにわずかな効率のものである。代謝回転数1/秒を用いると、1014の飽
和した酵素類は、1秒間に1014の生成分子を生成する。1,000 μl の体積では、
1014の濃度の生成分子は、0.1 μM のオーダーで存在するであろう。例え酵素の
溶解限度が1mg/mlであったとしても、濃度は倍率で僅かに一桁下がるだけである
。従って、基質類及び候補的酵素類の高い多様性は、実際的なタイムスケールで
の反応の触媒網を介して、生成物の高い多様性を生じるような、反応条件下で混
合される。
本発明のこの態様の実施例において、触媒活性の多様性を示している酵素群は
、互いに一部又は完全に分離され、かつ基質類が逐次接触する。例えば、酵素群
は、透析膜のような膜によって、もしくは樹脂のような固体支持体上での多種の
酵素(多種の触媒活性を示す)の固定化によって、分離される。候補的酵素類は
、当該技術分野において公知であるファージ展示ライブラリー、もしくはビーズ
又は表面上のペプチド又は他の分子、もしくはペプチドライブラリーに捕獲され
たポリソームなどの分子多様性ライブラリーを組み合わせて生じ、展示するよう
な他の方法を用いて、ファージ上に局在することができる。さらに候補的酵素は
、内部に含まれる、もしくは1種以上の原核又は真核細胞の上に展示されること
ができ、この細胞及び基質は接触するようになっている。いずれの場合にも、基
質群は分離された酵素類を通して循環される(例えば蠕動ポンプによって)。例
えば、基質類は、該酵素が流出するのを防ぐ孔径の透析膜の内外に循環される。
基質類は、酵素の第一の組によって結合され、修飾され、放出されかつ酵素の次
の組へ循環される。他に、基質群が限られていて、1種以上の触媒活性を有す酵
素類は、連続して循環される。一般に、この反応は、約37℃又はそれ以下の温度
で、数時間で処理される。ATP 、NADH、O2、CoA などの補因子を、適時加える。
多くの補因子は、直接添加、もしくはin situ で発生させることができる。例え
ば、O2は、この反応混合物中に気体又は空気の直接挿入によるか、又は電極を用
いてO2を発生することによって導入する。電極は、直接反応混合物に接触しない
必要があるが、O2が反応混合物を通過するような隔室に入れることができる。例
えば、順に酵素類の組を含んでいる透析膜によって取り囲まれている透析膜の内
側に電極を配置することができる。基質群が様々なオーダーで、各種に分離され
た酵素類の影響を受けることは、一般の当業者によって容易に理解されるであろ
う。さらに、基質群を各種の分離された酵素類に曝した後に、所望であるならば
1以上の工程を繰り返すことができることは明らかであろう。初期に形成されか
つ添加された基質の順である必要はない、工程の反復は、所望であるならば、い
ずれかの工程時に導入することができる。
本発明の別の実施例において、興味がある最初の分子に類似している、有機分
子又は他の分子の組み合わせライブラリーは、興味ある最初の分子の“局所的”
擬態の高度に多様なライブラリーをもたらす非常に数多い可能な方法による、最
初の分子の誘導体化によって生成される。本発明においては、このようなライブ
ラリーを作成するために2種の方法が提供され、一方は酵素は使用しないが様々
な可能な付加物又は興味深い最初の分子と反応するような他の分子を使用し、か
つさらに最初の該分子の誘導化された生成物のライブラリーの合成を行う様々な
化学試薬及び物理的条件を使用する。もう一方は、コアとなる最初の分子に加え
、候補的付加物及び最初の該分子と反応することができる他の分子の組を使用す
るが、最初の化合物の誘導体の局所的に高度の多様性を有するライブラリーの形
成速度を速めるような酵素類の組も含まれる。本出願で提供されたこの開示を基
に、高度の多様性の生成分子のライブラリーを作成する方法、並びに最初の化合
物の誘導体の局所的に高度の多様性を有するライブラリーの作成の方法を組み合
わせることができることは、一般の当業者に理解されるであろう。例えば、新規
な最初の化合物は、一般的な方法(例えば異なるコア構造の基質類)で生成され
る。このような新規化合物を、誘導体と共に又は単独で用い、この化合物の誘導
体の局所的に高度の多様性を有するライブラリーを作成する。さらに、これらの
ライブラリーは、本出願の酵素を使用しない方法及び酵素を使用する方法を組み
合わせて作成することができることは、一般の当業者にとっては明らかであろう
。
エストロゲンのようなステロイドホルモンコアの誘導体の高い多様性を示すラ
イブラリーの作成を、限定を意図しない実施例として使用する。エストロゲン、
及び該ステロイドコアを部分的又は完全に含む新規生成分子を形成するために、
エストロゲンと反応する、様々な他の小さい分子類を含む候補的反応物の組は、
通常の反応環境で使用される。これらは酵素類の組の存在下で反応し、このシス
テムによってもたらされた反応を触媒する。酵素類は、当該技術分野において公
知であったり、本出願において具体的に述べられたりしている多くの方法によっ
て、選択することができる。これらの反応条件下で誘導された分子のライブラリ
ーの作成は、当該技術分野において公知であるかなりの数の方法によって評価す
ることができる。例えば、このステロイドコアは、様々な位置で放射能標識する
ことができる。その後、この反応混合物を、HPLC分析、質量分析、又は標識され
た分子の多様性を調べるための他の分析方法を行うことができる。放射能標識さ
れた分子は全て、ステロイドコア由来の原子を含み、その結果、新規分子の種類
は、少なくとも部分的に該ステロイドコアで構成されている。該ステロイドコア
の大部分がこの新規な種類に含まれることを確認したい場合には、該コアの中の
別種でかつ個別の原子を標識するために、2種以上の別の放射能標識を用いるこ
とができる。全ての標識が同時に存在することは、このステロイドコアのその部
分が影響を受けていないことを強く示す。放射能標識の代わりに、当該技術分野
において公知である同位体標識及び他の方法がある。高い多様性のライブラリー
を(例えば本出願に記載した方法で)試験し、興味深い分子を含んでいるかどう
かを調べる。このような分子が検出された場合には、本出願に記載された同胞選
択法を含む様々な方法でそれらを単離することができる。
エストロゲンのアンタゴニストとして作用する候補分子の検出は、このエスト
ロゲンの例のライブラリーにおける興味深い1種以上の分子を検出する、限定を
意図しない実施例としてまず論じられている。エストロゲンよりも高いエストロ
ゲン受容体への親和性を有する分子(そのため低濃度でホルモン置換療法におい
て使用することができ、エストロゲン自身よりも副作用が少ない)の検出が、第
二の限定を意図しない実施例として論じられている。反応混合物中の候補的アン
タゴニストの検出は、当該技術分野において公知である方法によって、受容体に
結合した非常に比放射能が高い放射性エストロゲンを使用することによって達成
することができる。このライブラリーの中の標識されていない競合体は、この標
識されたエストロゲンと置換し、かつこの競合的相互作用は、放射能の消失によ
って検出することができる。
置換療法のための親和性が高い候補的アゴニストの検出は、本出願において詳
細に記載されたカエルのメラニン細胞アッセイ又はpH変更の使用に類似の適当な
細胞アッセイを行うことによって行うことができる。この反応混合物中の親和性
の高いアゴニストの存在は、この細胞の反応を惹起するのに十分なエストロゲン
と比較されたアゴニスト濃度が非常に低いことで示される。このようなアッセイ
は、エストロゲンが存在しない場合、又はエストロゲンの濃度が上昇している場
合にも行うことができる。後者の場合には、エストロゲン単独による反応を導く
よりもより低い濃度のエストロゲンでの細胞反応が、高度の多様性のライブラリ
ーの中にアゴニストが存在することを検出する。このアゴニストが細胞反応を惹
起するように単独で作用する場合には、同胞選択法が方法を識別する間に、その
濃度が上昇するので、細胞反応を惹起するのに必要なエストロゲン閾値は次第に
下降する。
前記コア分子、例えばエストロゲンを誘導する反応を触媒することができる候
補的酵素類の組の生成は、酵素類の大きな組(例えば、マウス又はヒトの免疫レ
パートリー)、最初の基質の組と結合する候補の一部、コア分子に加えこのコア
と反応しそれを誘導するような候補的基質から選択することによって行われる。
前記酵素類の組は、都合がよいことに各突然変異株スペクトルの生成によって拡
大することができる。この工程の目的は、下記のことである: 該酵素は、該反応
の遷移状態と選択的に結合するというよりもむしろ、起こりうる反応の基質と結
合するので、これらの酵素が選択される。このような基質(複数)と結合する最
初の酵素の各々の近傍の突然変異スペクトルの発生は、この酵素混合物が該反応
の遷移状態と結合するような候補体を含有する可能性を増大し、その結果、該反
応を触媒する候補体を改善する。
反復方法において、候補的酵素類の連続は、高い多様性のライブラリーを作成
するために、コア分子、例えばステロイドコア、及び最初の付加物からもたらさ
れる逐次反応工程を触媒する候補体として、都合がよいことに選択することがで
きる。所定の分子組を含む各反応サイクルにおいて、分子の拡大された組、該コ
ア分子の多くの誘導体が生成されるであろう。該コアのさらに誘導された分子を
生成する重要性が増した反応システムによってもたらされた、次の反応を触媒す
るための酵素をさらに発見するために、高い多様性の候補的酵素類のライブラリ
ーから、生成分子の新規に形成された種類に作用することができる新規候補体を
選択することは都合がよい。あらかじめ同定された候補体酵素類に加え、これら
の新規候補体酵素とそれらの突然変異スペクトルを、該コア分子の誘導体をより
多く形成するよう触媒するための、逐次反応において使用することができる。酵
素の溶解度に限度がある場合には、できるだけ高い酵素の臨界濃度を保つために
、新規に同定された候補的酵素類に、候補的酵素類の高い多様性のライブラリー
から同定されたそれらの突然変異スペクトルを加え、該コア分子及び最初付加物
か
ら導かれる反応配列の最後のサイクル又はわずかなサイクルからの候補的酵素類
の組を加えて使用する利点がある。対照的に、最初のコア及び最初の付加物から
導かれる候補的酵素類は、都合がよいことに、それらの生成物の形成を触媒する
ようにすでに作用しているので、以後の反復工程から除去することができる。
例えば、各反復工程において、このような候補的酵素をさらに同定する一つの
方法は、該反応混合物中で基質及び生成物分子を、放射性ヨウ素を用い、様々な
位置で標識することを含む。ヨウ素で各化合物の様々な位置を標識する目的は、
その種類の化合物の少なくともいくつかのヨウ素標識が、ヨウ素標識によって妨
害されていないほとんどの化合物部位のいずれかの位置で、候補的酵素分子の結
合を阻害しないことが確実であるからである。これらの標識された分子は、例え
ばヒト抗体分子のような、多様性が高い候補的酵素ライブラリーと反応し、該反
応混合物からいずれの抗体分子が標識された分子と結合したかを検出する。この
組は、該反応システム内で生成された新規生成分子と結合する抗体分子を含む。
該抗体分子は、それらの突然変異株と共に、候補的酵素類の組の拡大に使用され
る。
該反応混合物中でヨウ素標識された分子と結合する抗体分子を同定する様々な
方法が当該技術分野において公知である。これらの中で、ヨウ素標識物質と結合
する溶菌斑又は細胞を検出するためには、プラーク検定又は抗体ライブラリーを
示す細胞アッセイを使用する事がよい。ヨウ素のかわりに蛍光標識を使用する場
合には、不死化されたB細胞の細胞表面の抗体分子の天然の展示を使用すること
ができる利点があり、そこではこのような細胞が産生する各モノクローナル抗体
は、それ独自の抗体を示す。これには、反応混合物中の蛍光標識された分子に対
する細胞数を明らかにし、その後B細胞を区別するという利点がある。これらの
標識された不死化された細胞は、該反応混合物から標識された分子を結合する抗
体分子を産生する。これらの不死化された細胞は、増殖することができ、候補的
酵素類である、モノクローナル抗体ライブラリーを作成する。さらに、アフィニ
ティーカラムを作る生成分子を用いることによって、抗体類、又は前述の各反復
工程において他の酵素類を構成する別の配列を選択することは、可能であり、さ
らにこのカラムを用い抗体分子を示したファージライブラリーのサブセット、抗
体を捕獲したポリソーム、又はDNA 又はRNA のアプトマーのライブラリー、又は
該カラム上で生成物と結合することで候補的酵素類として機能する他の配列を選
択することが可能である。その結果、候補的酵素類を発見するために高度の多様
性の抗体ライブラリーを使用することに加え、他の多様性が高いライブラリー類
を使用することも可能である。これらの中で、多様性が高いRNA ライブラリー、
DNA ライブラリー、及び確率的ペプチド単独、又は様々な関連したタンパク質と
の融合タンパク質としてのライブラリーを使用することが好ましい。
付加物又は他の基質の組と共にコア分子の誘導を補助するような候補的酵素類
の組を生成する別の好ましい方法は、それらの酵素の突然変異株に加え、該コア
へと導かれる正常な生合成経路に関連した公知の酵素類を使用することから成る
。同様に、基質としていずれかの付加物を使用する公知の酵素類も、それらの酵
素の突然変異株と共に、使用することができる。該コア分子及びそれと反応する
ことができる他の新規の基質から逐次反応を触媒するために、該反応サイクルの
各反復で存在する基質及び生成物を使用し、基質類及び/又は生成物類と結合す
る酵素類を同定し、その後該コア分子から次の反応工程を触媒するための候補体
として同定されたこれらの酵素類の突然変異スペクトルを生成することは利点が
ある。基質類及び生成物類と結合する酵素類は、溶菌斑を介し酵素をクローン化
する結合アッセイ又は他のアッセイを含む、当該技術分野において公知の方法で
同定することができる。前述のマウスの抗体レパートリーのような、多様性が高
い候補体ライブラリー由来の候補体の組に加え、記載されたような、公知の酵素
及びそれらの突然変異スペクトルの組の連合によって形成された候補的酵素類の
組を使用することも有利である。
本発明の全ての実施例において、興味深い所望の分子を生成する反応を行うた
めに都合の良い候補体であるような多様性の増幅の各段階で基質を選択する方法
を使用する。このような方法は、所望の標的物の“形”に対し“相補的な形”で
ある組の作成、次に所望の分子の標的となる形に類似した自身の“形”である候
補的基質に結合及び親和的選択する相補的な形の組を使用することからなる。限
定を意図しない実施例において、興味深い標的分子がエストロゲンであるならば
、エストロゲンに対するモノクローナル抗体、もしくはエストロゲンに対するポ
リ
クローナル血清の組を生成するために使用することができる。これらの抗体は、
エストロゲン類似の形状の候補的基質を親和力を用いて精製するために用いるこ
とができる。これらの候補的基質を構成する反応を実施することができ、かつ求
められた生成物はエストロゲン擬態である。
抗体に加え、その他のDNA 、RNA の多様性のライブラリー又は他のものは、標
的となる分子、ここではエストロゲンと形が相補的なものを見いだすために使用
することができる。
この“標的の形”の生成は、都合がよいことに3方法に広げることができる。
第一は、エストロゲンと結合する抗体分子(“ランク1”抗体)の中で、いくつ
かは活性部位又はその活性部位の近傍と結合し、かつ別のものは他の部位に結合
する。これらは該抗体を、モノクローナルとして使用することによって識別する
ことができ、当該技術分野において公知の方法によって、抗イディオタイプ抗体
(“ランク2”抗体)を産生する。前記ランク1抗体の結合部位においてエスト
ロゲンと競合するランク2抗イディオタイプ抗体を産生するような、いずれのラ
ンク1抗体も、おそらくその結合部位が実際にエストロゲンの活性部位と結合す
るようなランク1抗体であろう。このような各ランク1抗体の組は、エストロゲ
ンと類似の形状である候補的基質を親和力によって選択することができる。
第二は、ランク1抗体の結合部位でエストロゲンと競合するランク2抗体の組
を、エストロゲン様の基質上で作用し、エストロゲン擬態を産生する候補的基質
を親和力によって選択することができる。
第三には、このランク2抗体の組は、非常に様々なエストロゲン様の基質を親
和力によって選択することができる、“ランク3”抗体の産生に使用することが
できる。抗体分子及び抗イディオタイプ抗体分子に加え、DNA 、RNA 及び他の複
合体分子を含む、他の形状及び形状相補的分子の組を使用することができる。限
定を意図しない実施例として、これらを分子類の多様性が高い組み合わせのライ
ブラリーから選択することができる。
本発明の別の実施例において、自己触媒の組、例えば触媒性のポリマー類の自
己触媒の組を含む分子群が使用される。反応混合物は、同時に基質かつ触媒であ
るような有機分子を含有する。反応は、恒成分培養槽中、流動下で行われる。例
えば、分子B は基質分子A からのそれ自身の形成を触媒し、かつ分子C が基質分
子A からそれ自身の形成を触媒するように、分子A,B,C が存在する。この反応は
、アセチルコリン受容体のような受容体分子が恒成分培養槽の壁に固定され、か
つアセチルコリンのようないずれかの分子と結合することができるような恒成分
培養槽中で行われる。この実施例において、分子C ではなく分子B が、恒成分培
養槽壁のアセチルコリン受容体と結合するのに十分な程度アセチルコリン類似で
ある。流動下では、分子B はこの恒成分培養槽内に選択的に保持される傾向があ
り、かつ分子C は保持されない。このことは、C の自己触媒組に比べ、B の自己
触媒組を選択的に増幅するようにする選択的条件を提供する。例えば、受容体と
結合した状態であってもB がそれ自身を形成するような触媒として作用するなら
ば、このシステム内におけるB の保持は、選択的に都合が良く、かつB はC に対
して増幅される。より一般的に述べると、分子Bが複合反応混合物からのそれ自
身の形成に触媒として機能するような複合反応混合物において、B の保持は、そ
れがアセチルコリン受容体と結合するので、選択的に好都合である。従って、一
般に分子Xの受容体を有し、Xの類似体の発見を意図するような(このXは例え
ばアセチルコリン)、恒成分培養槽条件下のシステムを採用することによって、
X様の擬態を合成するこれらの組用の自己触媒組の中から選択するという一般的
な方法である。従って、この選択的な方法は、擬態Xである医薬候補体を合成す
るために、ランダム複合反応混合物を使用する可能性を増大する。
本発明の別の態様において、酵素を使用せずに新規化合物を生成する方法を提
供する。ある実施例において、方法は下記の工程を含む:(a)酸、アミン、アルコ
ール及び不飽和化合物を含む、様々な基質グループを、脱水剤と適当な条件下で
反応させ、第一反応混合物を得る工程;(b)前記第一反応混合物を、還元剤と、適
当な条件下で反応させ、第二反応混合物を得る工程;(c)前記第二反応混合物を、
酸化剤と、適当な条件下で反応させ、第三反応混合物を得る工程;(d)前記第三反
応混合物を、適当な条件下で縮合反応反応させ、第四反応混合物を得る工程;(e)
前記第四反応混合物を、波長約220 〜600nm の光に暴露し、その結果前述の基質
類及び試薬類とは異なる1種以上の有機分子を生成する工程;(f)所望の特性を有
する有機分子の存在のために、暴露した第四反応混合物をスクリーニングする工
程; 並びに(g) 暴露した第四反応混合物から、所望の特性を有する有機分子を単
離する工程である。
別の実施例において、方法は下記の工程を含む:(a)酸、アミン、アルコール及
び不飽和化合物を含む、様々な基質グループを、脱水剤と適当な条件下で反応さ
せ、第一反応混合物を得る工程;(b)前記第一反応混合物を、還元剤と、適当な条
件下で反応させ、第二反応混合物を得る工程;(c)前記第二反応混合物を、酸化剤
と、適当な条件下で反応させ、第三反応混合物を得る工程;(d)前記第三反応混合
物を、適当な条件下で縮合反応反応させ、第四反応混合物を得る工程;(e)前記第
四反応混合物を、波長約220 〜600nm の光に暴露し、その結果前述の基質類及び
試薬類とは異なる1種以上の有機分子を生成する工程;(f)所望の特性を有する有
機分子の存在について、暴露した第四反応混合物をスクリーニングする工程; 並
びに(g) 所望の特性を有する有機分子を特徴づける構造又は官能基特性を決定す
る工程である。
本発明のこの態様において、前述のような様々な基質群は、酵素を使用せずに
所望の特性を有する1種以上の化合物が生成されるような、一連の反応条件に支
配される。さらに詳細に述べると、様々な基質群は、脱水剤と適当な条件下で反
応し、第一反応混合物を生じる。適当な脱水剤は、カルボジイミド、カルボニル
ジイミダゾール、スルホニルハライド、ホスゲン相当物及び活性化されたホスホ
ルアミドに加え、固相ペプチド合成及びヌクレオチド合成などにおいて通常使用
される他の試薬である。一般的当業者にとって、最も好ましい溶媒(複数)は、
選択された基質の具体的なグループによって決まることは明らかであろう。例え
ば、これらの基質が全て、自然にはかなり極性がある場合には、メタノールのよ
うな溶媒を使用することができる。個々の基質の濃縮された溶液を調製し、かつ
この基質群は、各濃縮溶液の分割量を混合して調製する。互いに混和性の溶媒混
合物(すなわち2相を形成しない)は、これらの基質が全て1種の溶媒に溶解し
ない場合に適している。溶媒混合物の例は、アセトン及び水、ジメチルホルムア
ミド及び水、又はエタノール及び水である。反応条件は変更することができるが
、一般にこの反応は、およそ室温から該溶媒の沸点の間の温度で、1時間から一
晩行われる。
この第一の反応混合物は、前述のように、適当な条件下で、還元剤と反応し、
第二の反応混合物を生じる。適した還元剤は、溶解性金属、水素化試薬、適当な
金属触媒(例えば、プラチナ、パラジウム、ニッケル又はロジウム)を伴う分子
水素などである。還元金属の例は、ナトリウム、リチウム、カリウム、各種アマ
ルガム、カルシウム、鉄およびスズである。水素化試薬の例は、水素化ホウ素ナ
トリウム、水素化アルミニウムリチウム、及び水素化ホウ素である。反応条件は
変更することができるが、一般にこの反応は、およそ室温又はそれ以下(例えば
氷浴)の温度で、1時間から一晩行われる。ある還元剤は、特定の溶媒中で最も
効果を発揮することは明らかであろう。例えば、水素化試薬(水素化ホウ素ナト
リウムなど)を使用する場合には、水酸基を含まない溶媒(ジメチルホルムアミ
ドなど)が好ましいことは明らかである。
第二反応混合物は、酸化剤と、適当な条件下で反応し、第三反応混合物を生じ
る。適した酸化剤は、オゾン、過酸化物、クロム酸塩、過マンガン酸塩、四酸化
オスミウム、塩素、臭素、及び適当な金属触媒(四酸化ルテニウムなど)の存在
下の空気である。反応条件は変更することができるが、一般にこの反応は、およ
そ室温又はそれ以下(例えば氷浴)の温度で、1〜2時間から一晩行われる。あ
る酸化剤は、特定の溶媒中で最も効果を発揮することは明らかであろう。例えば
、水及びアルコールの混合物は過酸化水素で使用することができるが、水は過マ
ンガン酸塩のみで、ヘキサン(又は石油エーテル)は塩素又は臭素のようなハロ
ゲン類で使用することができる。
第三反応混合物を、適当な条件下で縮合反応反応させ、第四反応混合物を得る
。この第三反応混合物は、脱水剤及び熱によって縮合反応が支配される。適した
脱水剤は、分子ふるい、カルボジイミド、共沸蒸留(水の除去)などである。例
えば、トルエンを添加することができ、その後水を除去するために共沸蒸留を行
う。反応条件が、使用された脱水剤の種類によって変わることは明らかであろう
。
第四反応混合物は、光に暴露される。一般に光は、波長約220 〜600nm の範囲
であり、これは所望であればそれらの一部又は個別の波長を含む。反応条件は変
更することができるが、一般に反応混合物の照射は、およそ室温又はそれ以下(
例えば氷浴)の温度で、約15分から2時間行われる。
前述の反応は全て、通常常圧で行う。分子水素を用いるような例外については
、明らかであろう。基質群は、前述の順とは異なる順の様々な反応工程によって
影響を受けることは、一般の当業者には、容易に理解されるであろう。さらに、
所望であるならば、前述の各種の反応工程のいずれか一つ又は一部に、基質群が
影響を受けた後、該工程の1種以上をいずれかの順で繰り返すことができること
は明らかであろう。さらに、他の試薬を単独、又は混合物として、もしくは順に
、前述の実施例に添加するように、もしくは前述の実際の例と共に、使用できる
ことは明らかである。所望であるならば、最初に定められた順では不要である工
程の反復及び、基質の追加を、いずれかの工程に導入することができる。さらに
、最初に使用された、又は逐次反応工程で導入された1種以上の基質は、本出願
に記載されたいずれかの方法、すなわち酵素を使用する又は使用しないランダム
化学によって、生成することができる。
前述のように、本発明の態様の実施例において、基質群は、最初の分子又は分
子クラスを誘導することによって提供される。このような基質群は、酵素を伴わ
ない前述の反応の支配を受け、最初の分子又は分子クラスを中央に置く、多様性
の高い生成物を生じる。
本出願で提供された方法によって生成された分子混合物中の、低濃度の1種以
上の所望の分子を検出する様々な方法が、利用できる。例えば、低濃度のリガン
ド、例えばホルモン受容体と結合しているリガンドを検出できる各種の細胞シス
テムが、一般の当業者には周知である。この点に関し、例えば、ヒトGペプチド
ホルモン受容体を、カエルのメラニン細胞にクローン化するようなシステムが開
発されている(Lerner らの論文、Proc.Natl.Acad.Sci.USA)。通常は膜表面に存
在するホルモン受容体が、対応するホルモンの結合に反応し、黒色素胞の放出又
は再吸収する細胞の反応を惹起する。40分間の可逆サイクルで、細胞は劇的に暗
色化し、その後再び明色化される。この細胞の反応は、該受容体へのホルモンの
親和性によって決まる。典型的な反応は、ホルモン濃度がナノモル台から100 pM
の範囲で生じる。あるホルモン受容体−ホルモンの対について、親和性が高い場
合には、反応はホルモン濃度がピコモル台で生じる。この細胞システムは、分子
混合物中の、ある受容体に結合することができる1種以上のリガンドの検出に使
用できるアッセイシステムの例である。受容体に結合することができる分子のリ
ガンドの組は、天然のホルモンの作用に拮抗し、作動し、その代わりとなり、も
しくは修飾することによって、医薬品の候補体であるので、興味深いリガンドで
ある。
細胞アッセイの第二の例は、モレキュラーデバイス社(Molecular Device)(パ
ロアルト市、CA)から市販されているものである。これは、局所的なpHの非常に
わずかな変化に反応するケムフェット(chemfets)のアレイから成る。順に、これ
らのわずかなpHの変化は、ある分子シグナル、例えば受容体にホルモンが結合し
たというようなシグナルを受けた細胞集団の変化した代謝活性を反映している。
例えば、ホルモンが受容体に結合するような細胞アッセイは、一般の当業者には
公知であり、検出されるホルモンリガンドの濃度はナノモル又はサブナノモルで
ある。本発明で使用する好ましい方法は、本出願において提供された方法によっ
て生じた分子の多様性の高いライブラリーにこのような細胞を暴露し、この細胞
の反応を惹起することができる1種以上の分子の存在を検出することを含む。各
々ホルモン受容体に非常に良く結合する、この小さい分子の組は、医薬品として
供給できる興味深い分子である。別の実施例は、興味深い分子に対する抗体をそ
の表面に発現しているような芽球化B細胞を用い、多様性の高いライブラリー中
で、B細胞上の抗体と結合することができる対象分子の十分な擬態である分子の
存在を検出する。その結果、動物は対象分子によって免疫感作され、かつ初期B
細胞が分離される。本出願において提供された方法によって生じた分子の多様性
の高いライブラリーは、B細胞集団を用いてスクリーニングされる。例えば、結
合は、最終B細胞の結合によって細胞周期又は細胞分裂を剌激することができる
。細胞周期又は細胞分裂は、当該技術分野において公知の方法で検出することが
できる。
他に興味深いリガンドの存在を検出する様々なアッセイとして、直接の結合ア
ッセイをもとにしたものがある。従って、例えば、ホルモンの受容体を、放射能
標識されたリガンドの結合を検出するために、直接使用することができる。これ
を達成するための当該技術分野で公知である他の方法は、下記を含む:
(i) 限定されない例として、エストロゲン受容体を使用する。このクローン化さ
れた受容体は、平な表面、例えばフィルターに固定される。非常に比活性が高い
エストロゲンを調製し、かつ受容体群に結合する。その後、この結合した受容体
の組を、競合的アッセイに使用する。この結合した受容体を、本発明の方法によ
って生成された化合物のライブラリーに曝す。このライブラリーがエストロゲン
受容体と結合するリガンドも含む場合には、これらのリガンドは受容体に対し、
放射能標識されたエストロゲンと競合する。その結果、放射能標識されたエスト
ロゲンは、受容体で競合的に置き代わり、これを当該技術分野で公知である方法
によって容易に検出することができる。従って、このアッセイは、エストロゲン
受容体に対してエストロゲンと競合するような、混合物中の1種以上のリガンド
を検出することができる。このリガンドの組は、エストロゲンを模倣又は拮抗す
る医薬品の候補として、興味深い。
(ii)再び限定されない例として、エストロゲン受容体を使用する。当該技術分野
で公知である方法によって、受容体がエストロゲンと結合していない場合には受
容体と結合することができるが、エストロゲンによって占領されている場合には
受容体と結合することができないような、抗体分子を生じる。別に、受容体自身
がエストロゲンと結合する場合にのみ、エストロゲン受容体と結合する抗体分子
を生成する。これらの抗体は、当該技術分野で公知である様々な方法によって、
受容体群で装飾され、かつエストロゲン受容体と結合する、多様性が高いライブ
ラリーの1種以上のリガンドの存在を検出するために使用される。受容体自身が
エストロゲンと結合していない場合にのみ受容体と結合する抗体の場合は、化合
物のライブラリーが存在し、かつエストロゲンが同時に存在しない状況における
、抗体結合の喪失を試験する。受容体がエストロゲンと結合している場合にのみ
受容体と結合する抗体の場合は、受容体及び高い多様性のライブラリーが存在す
る状況における抗体結合の増加を試験する。
(iii) 所定のホルモン又は興味深い他の分子の作用を模倣又は拮抗する候補体で
ある多様性の高いライブラリー中のリガンドを検出するために、該ホルモン又は
興味深い他の分子と結合する1種以上のモノクローナル抗体を生成することは好
都合である。標的分子の作用を模倣又は拮抗するための候補体である、反応混合
物中の1種以上のリガンドの存在を検出するための前述の結合アッセイにおいて
、
模倣されるべき標的分子として、受容体よりもむしろ、このモノクローナル抗体
の組を使用することができる。この方法の利点は、標的分子の受容体は、入手す
る必要がないことである。あらかじめ標的分子の分子特性又は抗原決定基のいず
れが、その生物学的活性を仲介するかは確かではないので、モノクローナル抗体
の組の使用は、有利である。それぞれ標的分子の様々な抗原決定基に対応してい
る、モノクローナル抗体の組の使用は、多様性の高いライブラリーにおいて検出
されたリガンドが、該標的の生物学的に重要な抗原決定基を模倣するものを含む
。ある場合においては、標的分子の公知の重要な抗原決定基と結合するモノクロ
ーナル抗体分子のみを選択的に使用することが可能である。
(iv)プラスモン共鳴及び屈折率のシフトの検出を基にしたタンパク質−タンパク
質結合を検出する方法は、当該技術分野において確立されている。ファルマシア
社(ピスケートウェイ市、NJ)の開発した検出システムは、モノクローナル抗体
、又はホルモン受容体が、金のチップ上に重ねられている。受容体へのホルモン
又は他のリガンドの結合は、非常に低濃度でも検出される(例えば、ナノグラム
以下)。従っていずれかの受容体、又は抗体、又は他の興味深い標的分子の“形
状相補的”なものを、該金のチップ上に配置することができ、これを高い多様性
のライブラリーに曝し、かつリガンドとなる種類の存在を検出することができる
。
本出願人はEvotech によって開発されたと考える、リガンド−結合を直接測定
する別の例は、リガンド結合をフェムトモル台で測定することができる。ストッ
クホルムのKarolinska InstituteのRudolph Ringles は、体積約1立方μの液体
にレーザーの照射するというレーザーアッセイを発表しているが、これは蛍光標
識された化合物の存在を、フェムトモル濃度、10-15M、1/10秒で、検出すること
ができる。所望の標的分子の小さい“形状相補的”分子の蛍光標識によって、標
的- 擬態分子の形状相補体への結合は、遊離の形状相補的分子に対する、そのリ
ガンド結合の拡散の変化を通して、検出することができる。従って、エストロゲ
ンが標的分子であり、かつ小さいRNA アプトマーがエストロゲンと結合する形状
相補体である場合には、蛍光標識されたRNA アプトマーは、リグラーのシステム
(Rigler'ssystem)において使用することができる。蛍光標識されたRNA と結合
するエストロゲン−擬態は、このレーザーシステムで検出する場合には、その拡
散は遅い。従って非常に低い濃度、10-15M又はフェムトモル台のエストロゲン−
擬態を、検出することができる。
非常に低濃度で興味深いリガンドを検出するその他の方法は、DNA ポリメラー
ゼを阻害するリガンドを探すことが含まれる。DNA の複製連鎖反応(PCR) 酵素を
阻害することによって、このDNA の増幅を阻害することができる。PCR 増幅は、
最初のDNA 配列の10億以上の複製を生じるので、PCR 増幅の阻害は、ポリメラー
ゼを阻害するリガンドを容易に検出できる信号を生じる。明らかに、この方法は
、連結反応の拡大などの、DNA 、RNA 、DNA-又はRNA-様分子を増幅する他の方法
に統合され、かつ興味深いリガンドで、直接又は間接にポリメラーゼを阻害する
一般的方法に及んでいる。
興味深い分子について試験を行う分子ライブラリーの多様性が濃度に反比例し
、かつ発見されている基質を該反応混合物中に、一緒に溶解しなければならない
という必要性があるならば、検出濃度が非常に低い本発明は、極めて多様性が高
いライブラリーを調べるために使用することができる。1015の多様性を生じるこ
とができ、かつ最初の1,000 〜100 の基質のミリモル混合物から、10-15〜10-16
Mの濃度のリガンドの存在を検出し、かつ生成することができる。さらに、十分
に高い多様性を有する酵素又は反応条件によって、高い多様性のライブラリーが
、10程度の多様性の有機化合物の前駆体の組で生成される。
前述のように、高い多様性のライブラリーにおける興味深い化合物は、所望の
反応の触媒として、もしくは他の分子と活性触媒を形成する補因子として作用す
る。別の分子は、酵素類の阻害剤として作用することができる。酵素類又は触媒
類が、ライブラリーを作成するために使用されている候補的酵素類の組の中で発
見される可能性を除外するために、この酵素類の組を、高度の多様性のライブラ
リーから、いずれかの酵素組の不変部領域を示す分子で覆われているアフィニテ
ィーカラム、及び当該技術分野において公知である他の方法を使用して、定量的
に除去することができる。その後得られる多様性の高いライブラリーを、興味深
い候補体についてアッセイする。
酵素を阻害することができる分子の検出は、前述のように該酵素と結合するこ
とができるリガンドの検出によって行われる。反応を単独で、もしくは補因子と
して触媒する候補体である分子の同定は、高い多様性のライブラリー単独で、も
しくは所望の分子が補因子となるヘルパー分子、つまりたんぱく質の存在の中で
行われる。このシステムで、反応の遷移状態の安定な類似体と結合することがで
きるリガンドの存在が試験される。このような結合分子は、反応それ自身を触媒
するための候補体であるので、求められる候補的触媒又は補因子である。
別に、触媒された反応の生成物を検出する様々な方法が、当該技術分野におい
て公知である。例えば、興味深い各種の反応用の色素原基質及び蛍光基質を使用
することができる。この反応の触媒は、着色した又は蛍光を発する生成物の形成
速度を速める。別の、生成分子が受容体、抗体分子又は他の相補的な形と結合す
る、生成分子の存在を検出するアッセイシステムを利用できる、もしくは容易に
調製できる。その結果、その生成分子の、より速い形成速度が検出されることは
、該反応自身が触媒されたことを示している。
化合物類の高い多様性のライブラリーの作成及び興味深い特性を有する化合物
の存在のスクリーニング後に、単離の有無にかかわらず、このような興味深い化
合物を、特性を評価する。当該技術分野で公知のものを含む各種の方法が、この
ような興味深い化合物の特性評価又は単離に利用できる。
特性評価及び/又は単離は、欲しい情報によって異なり、かつ興味深い標的分
子の様々なモル存在率において行うことができる。従って、最新の質量分析を用
いると、約10-15〜10-18M で、質量及び電荷を分析することができ、次に当該技
術分野で公知である様々な方法で分画し、かつこれらのフラグメントを質量及び
電荷について分析する。この結果を用い、興味深い分子の構造を推測することは
可能である。例えば、関心を呼ぶリガンド類を、所定のホルモン受容体、又は単
クローン抗体と結合させることによって単離し、次にこの結合している分子を当
該技術分野において公知の方法で溶離し、最後に分析して特徴づけることができ
る。ある方法は、保持体に標的受容体又は抗体を付着することを含む。反応混合
物又はその一部を、この保持体に接触させる。非結合分子は即座に該保持体から
分離するのに対し、結合した分子は保持される。その後、保持されている未知の
構造を有する分子を、溶離する。これらの遊離された分子を、例えば質量分析、
NMR 、IR、UVなどで分析し、特性評価し、バッチ量で合成することができる。質
量分析に関連した分析技術の例は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)、
高速液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)、電解脱離質量分析(FD-MS) を含
む。
また、多様性が高いライブラリーの興味深い分子の濃度は、それらの存在は検
出することができるが、さらに単離又は特性評価するには濃度が低すぎることが
ある。“同胞選択法”と呼ばれる好ましい方法は、候補的酵素類の組、前駆体の
基質の組、及び反応条件及び化学試薬の組を容易に選別する。この選別は同時に
、高い多様性で生成される副生成物を減少し、興味深い標的分子の濃度を増加し
、かつ標的分子の合成に至る経路を触媒する候補的酵素の一部を同定し、さらに
所望の標的の合成に必要な前駆体の基質の組を同定する。従って、この同胞選択
法は、興味深い未知の分子を生成することに加え、該分子、並びにこの分子を形
成するために必要な基質及び酵素を同定する方法である。
興味深い標的がエストロゲン受容体に結合する分子であるライブラリーを、限
定を意図しない実施例として用いる。例えば、本出願に記載された方法によって
、非天然アミノ酸を含むD 及びL アミノ酸、及びそれらから構成された小さいペ
プチド由来の多様性が高いライブラリーが提供される。このようなライブラリー
は、直鎖、分枝した、環式及び他のジスルフィド(S-S) 分子内結合の形成のため
の一種又は複数の制約を受けた構造を含んでいるであろう。
基質類及び候補的酵素類を使用した本発明の態様を、まず論じる。その後別の
本発明の態様である、候補的酵素類は使用しないが、1種以上の試薬及び反応条
件を使用した態様を論ずる。
エストロゲン受容体の1種以上のリガンドの存在が、前述のいずれかの方法も
しくは他の方法によって、本実施例の多様性が高いライブラリーにおいて検出さ
れる。候補的酵素類の組及び前駆体の基質の組は、所望のリガンドを生成する反
応を起こすのに十分である。限定されない例として、異なる反応工程で7種の最
初の基質を使用する、4反応工程の組で、所望の標的分子を生じることができる
。必要な7種の最初の基質の組、及び必要な4種の酵素の組を選別することによ
って、標的分子を、高濃度で合成することができる。溶解度に限界がある場合に
は、最初の基質1,000 が使用される場合よりも高い、7種の基質の臨界濃度が達
成さ
れ、かつ4種の重要な酵素が存在するのみであるので、高濃度を達成することが
できる。
同胞選択法は、この選別を行う。これは、候補的酵素類の組で出発し、基質類
の組の選別も同様に容易である。例えば、候補的酵素類の組は、クローン化され
たポリヌクレオチドライブラリーから得る。32のアリコートに等分し、各々は候
補的酵素ライブラリーの初期の多様性の半分を任意に含むようにする。従って、
初期の酵素類のライブラリーの多様性が1,000,000 であるならば、32のアリコー
トを作成し、各々が500,000 の候補的酵素類の多様性を含むようにする。その結
果、いずれかのアリコートが4種の重要な酵素を有する可能性は、1/16である。
つまり、平均32のアリコート中2個が、4種の重要な酵素を有する。全ての最初
の基質の組を、各アリコートに添加し、反応を進行し、その後各アリコートにつ
いて、エストロゲン受容体と結合する所望の標的分子の存在を試験する。これら
のアリコートのうち1又は2個が陽性である。これらのアリコートの各々は、候
補的酵素類の多様性が、2分の1となり、1,000,000 から500,000 まで減少する
。陽性であるアリコートのうちの1個を選択する。他のものは、後日の分析のた
めに保存する。再度32のアリコートに等分し、各々が残った候補的酵素の多様性
の半分を任意に再び含むようにする。つまり、この32のアリコートの各々は、25
0,000 の候補的酵素類の多様性を有する。各々について再び、エストロゲン受容
体と結合する所望の標的分子の生成を試験する。その結果、該標的分子の合成を
触媒する候補的酵素類の組は、対数的反復によって、4まで選別され減少する。
本発明の場合は、約18回の反復が必要である。
従って、この選別方法は、興味深い標的分子の合成に必要な酵素類の組の単離
を可能にする。その後、この酵素類の組について、標的分子の生成の効率及び特
異性を高めるために、突然変異、組換え及び単離を行う。その結果、この方法で
、その元来の基質から標的分子を合成するために、効果的な酵素類の組を生じる
。本発明の別の使用においては、標的分子類の変種をもたらす反応工程の関連系
を触媒するために、これらの酵素類の突然変異形を使用することができる。これ
らの変異株は、最初の分子よりもより有効であることがある。
この実施例において、基質類の組も、必要な7種を選別することができる。こ
の選別は、酵素類の組の選別の前後のいずれにも行うことができる。方法は同じ
である。32のアリコートに等分し、各々が1,000 の最初の基質の80%を任意に含
むようにする。いずれのアリコートも、7種の重要な基質を含有する可能性は、
0.87である。従って、平均1個以上のアリコートが、7種の基質の必須の組を含
んでいる。各アリコートは、エストロゲン受容体と結合する所望の標的分子の存
在を試験する。陽性のアリコートを選びだす。再度32のアリコートに等分し、各
々が残った減少した基質の多様性の80%を任意に再び含むようにする。再び、こ
れらのアリコートについて、興味深い標的分子を含むかどうかを試験する。対数
的反復で、7種の重要な最初の基質を選別することが再び可能である。反復の数
は、少ない。
最初の選別段階、及びその後の各段階の各アリコートで使用された候補的酵素
類又は最初の基質類のフラクションは、所望の分子を生成するアリコートの予想
値が、この選別方法の各段階では1であるのに対し、1以上であるように選択す
ることができることは明らかである。
候補的酵素類を使用しないが、1種以上の反応条件及び試薬を使用して多様性
の高いライブラリーを作成する場合も、最初の基質類は、前述の同胞選別法を用
いて選別することができる。この場合は、分子の多様性が存在し、かつその結果
の副反応が急激に減少するので、標的分子の濃度が上昇する。さらに、より都合
のよい方法では、標的分子の合成には必要でない、これらの試薬又は物理的条件
を選別するも可能である。
前記同胞選別法の目的の一つは、特性評価及び当該技術分野において公知の独
立した方法による合成のために、標的分子を十分大量に得ることである。一般に
は、標準的技術によって分析するためには、マイクログラム又はミリグラムの量
で十分である。注目すべき点は、質量分析又は他の当該技術分野において公知の
方法によって、より少量で、構造及び組成を推測することが可能であることが多
いことである。
反応混合物から均一に、化合物を実際に単離することは必要ではないが、この
状態では化合物又はその官能基特性に関する満足な情報は、精製された状態より
も少ないことは理解されるであろう。例えば、満足できる構造に関する情報を、
化合物の混合物に適した分析技術を用いて得ることができる。別に、反応混合物
中の化合物は、官能基で特徴付けることができる(例えば、相互作用が可能な分
子の組によって、決定される。)。例えば、反応混合物中の化合物は、特定のア
ミノ酸、又はポリペプチドの小さい配列と相互作用することができ、そのポリペ
プチドの機能を増強又は減弱する。例えば、この化合物は、触媒部位近傍でポリ
マーに共有結合するような自殺基質であることができる。このような結合した自
殺基質を、所望の活性を有する触媒を同定し、もしくはこのようなポリマーの活
性部位を特徴づけるために使用することができる。このポリペプチドの相互作用
部位は、個々のアミノ酸又はそのポリペプチドの領域に対する摂動を検出するこ
とができる分析技術によって検出される。このポリペプチドの機能の変化に関す
る位置についての情報(すなわち該標的物に関する情報)は、反応混合物中で、
該ポリペプチドと相互作用する化合物の構造と、同等もしくはそれ以上に重要で
ある。この種の情報を基に、様々な方法で、特定のアミノ酸又はポリペプチドの
領域を修飾することができることは明らかである。
下記の実施例を、詳細に説明するために提供するが、これらは限定を意図する
ものではない。実施例 実施例1
多様性が1 ×107であるユビキチン融合ライブラリーの調製
38、71及び104 残基のアミノ酸ポリペプチドライブラリーに必要な一本鎖DNA
を合成した。全体の多様性は105のオーダーであった。通常の方法で、PRC 増幅
を行った。連結反応及び形質転換の効率は、最適化を試みないでも、プラスミド
にランダム配列を107のオーダーで連結し、形質転換後に約30,000クローンを生
じた。プラスミドDNA 1μgにつき約10,000,000から100,000,000 の形質転換細
胞を生じる効率が達成された(Sambrock らの論文、Molecular Cloning:A Labora
tory Manual,第2 版、Cold Spring Harbor Labolatory Press,1989)。50ng/ 形
質転換を用い、500,000 〜5,000,000 クローン/ 形質転換を達成した。形質転換
は、(i) 挿入DNA の精製、(ii)最適な連結反応条件、又は(iii) 適した形質転換
の技術及び条件によって、最適化された。最適化されていない効率であっても、
30の形質転換によって、ポリペプチドの1,000,000 の多様性は達成された。
平均的に、107の連結中の各配列は、独自のものであった。得られた多様性は
、生成された形質転換細胞を全て数え、ランダムにアンピシリン耐性クローンを
抽出し、プラスミド調製を行い、挿入断片の制限地図を作成し、及びスクリーニ
ングすることによって、試験した。これにより、得られた形質転換されたクロー
ンの総数を計算することができたが、いずれの配列も複数存在するので、総数は
総多様性を特定するわけではない。
このライブラリーにおけるクローン重複性は、5,000 のプラスミドプールのプ
ラスミド調製を行い、試験した。これらの個別のプラスミド間の重複性は、前述
の5,000 のプラスミドの中のいくつかの特定のプラスミドの各々から独自のラン
ダムDNA 領域をハイブリッド形成することによって、試験した。これを実行する
ために、5,000 の形質転換されたコロニーを1 枚のプレート上で増殖させ、ナイ
ロンフィルターに乗せ(GeneScreen Plus,DuPont社)、この細胞を溶解し、DNAを
該フィルターにUV- 架橋させ、洗浄し、そのDNA をNaOHで変性し、その後中和し
た。その後前記5,000 プラスミド中のいくつかについて、各々から精製した放射
能標識した独自のDNA プローブを用い、緊縮条件下でハイブリッド形成した。プ
ローブDNA は、ユビキチン配列近傍で切断し、標識する前にゲルろ過を行った。
プローブは、ランダムプライマーラベリング(Prime-It,Stratagene Cloning Sy
stems 社)によって標識した。得られたフィルターのオートラジオグラフで、プ
レート上の5,000 のコロニーの多様性の中の期待された1種もしくは多種につい
て、いずれかの挿入DNA 配列が生じているかどうかを明らかにした。コロニーの
数の分布が10から20のプローブを挿入したDNA 配列の各々と結びついているなら
ば、該ライブラリーの期待される多様性は、最大の可能性がある方法を基に計算
することができる。実施例2
生成物分子の多様性の作成
実施例1に記載されたライブラリーの組み合わせを、互いに作用するポリマー
類のライブラリーとして触媒反応の開始について試験した。可能な相互作用の数
は、膨大である。例えば、2種のDNA 基質及び1種のポリペプチド触媒による連
結反応については、その組み合わせは、10,000,000の多様性のDNA 及びポリペプ
チドライブラリーの相互作用の可能性は、1021に及ぶ。所定の連結反応を任意の
ポリペプチドが触媒する可能性が10-9であったとしても(触媒的抗体の所見を基
に算定)、非常に多数の個別の反応が触媒される。この組み合わせは触媒された
反応の開始に有利であるが、反応物の多様性は増加し、それに比例していずれか
の配列の濃度は減少する。濃度の低下は、2分子反応では、進行の程度は平方で
減少し、3分子反応では、その程度は立方で低下する。
触媒の可能性の推定値10-9を使用し、かつ連結反応、エステル交換反応又はア
ミノ酸転移反応のような2基質反応の評価のために求める場合は、所望の生成物
の濃度及び触媒された反応類を、DNA 及びポリペプチド双方のライブラリーの多
様性が104で、達成することができる。切断又はリン酸化のような1分子反応に
ついては、基質及び触媒のライブラリーの双方について、105から105の多様性が
必要である。
実験の第一工程は、基質として一本鎖DNA 配列を使用した。それに続く実験は
、基質としてポリペプチドを使用した。この選択には3個の理由がある。第一の
理由は、全て同じ長さの、最初の基質の組と長さが異なる新規DNA 配列の生成は
、配列決定用ゲル上での検出を容易にすることである。第二の理由は、RNA のよ
うな一本鎖DNA は、複合体構造の中で折り返ることができ(Lu らの論文、J.Mol.
Biol.,223:781-789(1991))、このため結合部位が広範に変化し、かつ多様性が等
しい二本鎖DNA 配列よりも触媒となりやすい。第三の理由は、一本鎖DNA は、対
応するRNA よりもライブラリーから入手しやすく、かつ分解に対しいくぶん安定
であることである。しかし、このライブラリーによって特定化された高い多様性
のRNA が、精製されている。別に、DNA 配列を、T7のようなRNA ポリメラーゼの
最初の部位を含むように修飾し、in vitroでRNA 転写させ(Ellington及び Szost
akの論文、Nature,355:850-852(1992))、かつ基質として使用するための多様性
が高いRNA ライブラリーを得ることができる。従って、プロトコールは、一本鎖
DNA 基質類に関して述べているが、一本鎖RNA ライブラリーも使用することがで
きる。
プラステイン反応(Wang の論文、Biochem.Biophys.Res.Commum.,57:865,(197
4); Silver 及びJames の論文、Biochemistry,20:3177(1981))は、この実験のた
めの一般的なモデルである。この反応において、タンパク質基質を、基質をより
小さいペプチドに切断するトリプシンとともにインキュベートする。いずれの酵
素も反応を正方向及び逆方向に触媒するので、トリプシンは、より小さいペプチ
ド断片からより大きいポリペプチドの連結を触媒することが可能である。合成に
有利な方向へ平衡状態を偏らせるために、該反応混合物を脱水することは、トリ
プシンにとって、連結及びアミノ基転移反応を触媒し、ATP 加水分解反応を伴わ
ない高分子のポリペプチド類を生成するのに十分であることが明らかになってい
る(Levinらの論文、Biochem.J.,63:308(1956);Neumaum らの論文、Biochemistry
,73:33(1959))。高分子物質が除去され、その反応物濃度が高くなった場合は、
より高分子のポリペプチドが生成される。アミノ基転移反応は新たなペプチド結
合の正味の生成なしに進行することができるので、ATP-加水分解の必要性がない
ことはそれほど意外ではない。
実験の第一段階で、ある実験組では反応後に末端を標識し、別の実験組では反
応前に均一に標識した、前記ライブラリーから得た一定の長さの一本鎖DNA 配列
を、32P ヌクレオチドと共にインキュベートした。その後この基質を、実施例1
のライブラリーから得た、前記範囲内に多様性を調整した、38,71 及び104 の長
さの、アフィニティークロマトグラフィーで精製されたポリペプチドと共に、イ
ンキュベートした。エネルギー源であるATP に加え、Mg++、Pb++、Mn++などの2
価の陽イオンを添加した。さらに、DNA 基質及びポリペプチドの濃度を、in vit
roにおいて生物のポリヌクレオチドが切断又は連結されるような条件を含むよう
に、十分に広い範囲で調整した。連結反応においては、通常のDNA “末端”濃度
は、ナノモル台である。様々な反応において、通常の酵素濃度は、ミリモルもし
くはそれよりも高い。ナノモル濃度のDNA 基質の範囲は、現在の実験条件では、
用意に作りだされる。71のアミノ酸ライブラリーのポリペプチドについて、1.0m
g/ml濃度で、10,000ポリペプチドの多様性は、各融合タンパク質を約10.0nMの濃
度で生じる。従って、このような新規酵素によって効果的に触媒された反応は、
それらの濃度が高い場合よりも、100 倍遅く生成物を生成する。通常のDNA 切断
又は連結反応において、実際の生成物は、分単位の時間経過後に検出することが
できる。従って一般に、検出できる生成物は、数百分後から数千分後に認められ
る。
例えば、このライブラリーのポリペプチドは、一本鎖DNA 標的分子の間で、切
断、連結又はエステエル交換反応を触媒する。これらの切断は、エネルギー的に
水性媒質を好み、一方プラステイン反応におけるポリペプチド間のアミノ基転移
反応のような、エステル交換反応は、水性媒質中ではほとんどエネエルギーは一
定である。さらに2種の一本鎖基質間の様々な架橋反応が生じることがある。長
さL の2種の基質配列間のエステル交換反応は、2種の生成分子を生じ、その一
方は、これらの2種の基質配列のいずれかよりも長い。DNA 分子の初期のライブ
ラリーは、全て同じ長さである。従って、巨大な38cmのポリアクリルアミドゲル
(BRL Sequencing Apparatus)上を、変性条件で泳動すると、全てのライブラリー
が一本のバンドになって流れる。しかし、このポリペプチドが、DNA 分子基質の
切断、連結、エステル交換又は架橋反応を触媒する場合には、このゲル上に、新
たにより短い又はより長いDNA 配列が現れる。標準的配列決定用の長いゲルを使
用すると、一本鎖ヌクレオチドによって異なる複数のバンドを、約400 の塩基領
域について識別することができる。このゲルは、ゲル上の所望の位置で完全な長
さの一本鎖DNA 配列のランダムライブラリーの位置を調節するために泳動する。
同時にサンプリングされた同じ反応混合物の複数のアリコートを用い、かつ異な
る時間ゲル泳動を行い、新たなバンドについて分子量の広い範囲を調べる。注目
に値するのは、反応前の基質配列の32P による均等な標識が、一本鎖の基質の放
射能切断を引き起こすことがあるので、1実験組では全ての反応生成物は、末端
を標識する。この末端が標識された物質は、安定であるが、ゲル上の標識は少な
く、検出をより困難にし、切断反応のわずかに1種のフラグメントが認められる
。均等な標識は、より比活性を高め、かつこの一本鎖基質よりも長い生成分子を
生じる反応を正しく表示する。
新規分子の大きさが、ポリペプチドライブラリーによるde novo 触媒を表して
いることを確かめるために、ユビキチンのみをコードしている対照ライブラリー
を用いて対照反応を行う。対照ライブラリーの親和力を用いて精製されたユビキ
チン単独が、DNA 基質間の反応を触媒するならば、これは2種の方法で調整する
ことができる。第一は、新規ランダムペプチドは、前述のようにユビキチンから
遊離され、この新規ペプチドフラグメントは、非変性条件下で大きさに基づいて
再び精製され、ユビキチンを含まないこれらのランダムペプチドを用いて触媒を
再度試験する。第二は、下記に記したように、ユビキチン又は細胞の基本となる
物質によって作用を受けた特定の反応基質を、対数的希釈法によって同定し、こ
のDNA 基質ライブラリーから除去する。
このシステムの多くの特徴を評価することができる。第一に、タンパク質が、
DNA 基質の検出反応を触媒する確率を算出することができる。このライブラリー
の多様性が低い場合には、最初のDNA 基質ライブラリーよりも分子量が、少ない
又は多い、いくつかの異なるバンドの出現が認められる。触媒された反応のみの
場合は、インキュベーション時間が延長するにつれて、他のバンドは見られなく
なる。一本鎖DNA 基質に関する各切断反応は、2種の生成物配列を生じる。2種
の基質間のエステル交換反応も、1反応につき2種の生成物配列を生じる。架橋
及び連結反応は、1種の新規生成物配列を生じる。1個の架橋及び末端の連結反
応は、1種の新規生成物配列を生じる。長さL の一本鎖DNA 配列の均一の組間の
1個の架橋及び末端の連結反応は、いずれも全長2Lのヌクレオチドを生じる。従
って、長さが2Lよりも短いものに対応する新たなバンドについて、反応数は、こ
のような新たなバンド数の半分であると推測される。この結果から、任意のポリ
ペプチドが、検出できる反応を触媒する確率を算出することができる。(2Lのヌ
クレオチドの架橋したDNA 配列のいくつかは、異常な泳動特性を示し、おそらく
エステル交換反応の生成物としてのそれらの誤った数を導いている。これは、算
出された確率に2倍の誤差を生じる。)第二に、この算出された確率を、この基
質及びポリペプチドの多様性の増大によって、裏付けることができる。第三に、
一定の多様性でポリマーの長さを調節することによって、基質部位及び触媒部位
の有効な数を、ポリマーの長さの関数として測定することができる。
ポリペプチドの組が反応を触媒するかどうか試験するための他の実験において
、該ライブラリー由来の一定の長さの標識されていない一本又は二本鎖DNA 配列
を、32P 標識ヌクレオチド又は短いオリゴヌクレオチドと共にインキュベートし
、アクリルアミドゲル上を泳動し、この標識物質の分子量が大きいDNA 物質への
組み
込みを試験する。
新たな一般の“対数的希釈”法を行い、いずれか特定の反応を触媒する特定の
ポリペプチド(類)、及び関連した特定の基質の双方を単離する。ここで導入さ
れた方法は、興味深い標的分子の合成をもたらす、特定の基質類の組及び特定の
新規酵素類の組の双方を分離するためにも利用される。
この方法を行うために、最初のクローン化されたポリペプチドライブラリーの
全多様性を、4個の個別のアリコートに分け、それぞれが該ポリペプチドの全多
様性の半分を任意に含むようにする。アリコートは、このライブラリーの多様性
を示すよう、無作為に二分することで全多様性を減少し、かつ当業者には公知の
方法で各配列の複製の数を減少するように作成する。
2種の基質及び1種の酵素の反応に関して、該ポリペプチドライブラリーの多
様性の任意の半分が必須の酵素的ポリペプチドを有する確率は、0.5 である。従
って、4個の任意の半分のライブラリーアリコートの組のうち2個は、必須のポ
リペプチドを含有する。無作為に二分したアリコートが必須のポリペプチドを含
有しない場合は、より多くの二分したアリコートを試験する。各々の新たに減少
されたライブラリーを、一本鎖DNA 基質の完全な組と共にインキュベートし、そ
の生成物は、長い配列決定用ゲル上で分析する。平均的に、このようなゲルの2
本は、該反応の所望の生成物が存在する。従って、対応する半分のポリペプチド
ライブラリーは、該反応を触媒するポリペプチドを含有する。この減少したライ
ブラリーを、再び任意に4等分し、4個のアリコートとする。それぞれをDNA 基
質の完全な組と共にインキュベートし、前記ゲルで泳動し、生成物が4個のアリ
コートの少なくとも1個に形成された場合は、同定を行う。最初のポリペプチド
ライブラリーの対数的二分割によって、特定の反応を触媒する一本鎖ポリペプチ
ドが単離される。同時に、このポリペプチドをコードした融合遺伝子が単離され
る。従って、このポリペプチドの多様性は10,000台であり、約13回の二分割で十
分である。
同じ方法で、問題となっているこの反応に特有の基質類を得る。2種の基質の
反応に関し、DNA 基質ライブラリーの8回の二分割を、漸次行う。いずれかのア
リコートが2種の基質を含む確率は0.25であり、この結果平均的に8個のうちの
2個は、2種の基質を有す。触媒的ポリペプチドを含むことがわかったこれらの
アリコートを、インキュベートし、ゲルで泳動し、いずれのアリコートが所望の
反応生成物を有しているかを確認し、これにより該基質の多様性の対応する半分
が、2種の基質を含んでいると結論付けられる。連続段階の対数で、2種の基質
が単離される。
注目すべきは、この研究方法の主な長所は、分子基質のいずれかの組、さらに
ポリペプチド、RNA 、又は他の可能性のある触媒のいずれかの組について行うこ
とが可能な点である。簡単に述べると、新規生成物の多様性が、3種の実験条件
下で形成され、かつ生成物の1種が興味深く、反応後に生成混合物中に見いださ
れたことが信頼できる場合には、二分割工程を数回行い、該生成物を導く反応の
基質類及び酵素類の双方が単離される。この研究方法は、いくつかの酵素で、基
質の最初の組から逐次反応を行う場合に一般化される。各アリコートの多様性の
無作為なフラクション及び各段階のアリコート数の変化だけが、少なくとも1 個
のアリコートが必須の基質類又は酵素類の組を含むと確証する際に必要である。
いずれの多様性においても、段階の対数が、所望の新規標的化合物の合成をもた
らす基質類の組及び酵素類の組の双方を単離するためには必要である。
調節された多様性のポリペプチドライブラリーは、それら自身で基質として作
用することができるかもしれない。同様の考察が、反応ための基質としてのポリ
ペプチド及びDNA 配列になされている。切断はエネルギー的に水性媒質が好まし
く、一方アミノ基転移反応はエネルギー的に中立である。従って、注意点として
、プラステイン反応において、脱水によるペプチド断片濃度の増加は、このアミ
ノ基転移反応を、分子量が大きいポリペプチドを合成しやすくし、かつこの反応
はATP-加水分解がなくとも進行する(Neumennらの論文、Biochemistry,73:33(195
9))。従って、一定の長さで平均の分子量の標識されたポリペプチドの組をイン
キュベートした後に、新たに分子量がより小さい又は大きい配列の生成が認めら
れることがある。各種のエンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼ及び他の酵素
類が、小さいポプチド基質から、大きいポリペプチドを有効に合成するために使
用される。使用される酵素類は、ズブチリン、パパイン、サーモリシン、キモト
リプシン及びカルボキシペプチダーゼY であり、酵素の濃度はマイクロモルから
ミリモルの範囲で、基質濃度はミリモルからモルの範囲である(Wong 及びWangの
論文、Experientia,47:1123-1129(1991))。
該ポリペプチド融合ライブラリーに対する溶解度1.0mg/mlを基に、100 の多様
性で、各71アミノ酸融合ペプチドが、約0.6 μM の濃度で存在する。1,000,000
の多様性では、それぞれ0.06nMの濃度で存在する。体積10mlでは、1,000,000 の
多様性は、各10ngに相当する。これらの濃度は検出可能である。例えばイモビロ
ン(Immobilon)Pフィルター上での金染色ブロティングは、3.5ng のスポットを検
出することができ、ポリアクリルアミドゲル染色は、2.0ng のバンド又はスポッ
トを検出することができる(Pluskalらの論文、Bio/Techniques,4(3):272-282(19
86);Ausbel らの論文、eds,Current Protpcols in Molecular Biology,GreenPub
lishing and Wiley-Interscience,New York,(1987))。標識は、数倍のオーダー
で検出能を増強する(Garrells、Methods Enzymol.,254:7961-7977(1979))。基質
濃度を最大にし、その結果生成物濃度を最大にするために、ポリペプチドライブ
ラリーの多様性及び濃度を、好ましい新規のバンドが明確に出現するような、最
小の多様性及び最大の濃度になるように調節することができる。反応混合物は、
1次元SDS-ポリアクリルアミドゲルの泳動に加え、2次元ゲルで分析され、まず
等電点電気泳動し、その後SDS-PAGEで分析する(O'Farrel,J.Biol.Chem.,250:400
7-4021(1975);Garrells Methods Enzymol,254:7961-7977(1979);Summers及びKau
ffman,Developmental Biology,113:49-63(1986))。ゲルのデータをデジタル化す
るための自動化された装置を使用することができる。2次元ゲルは、1次元ゲル
上の独自のバンドが、2次元の独自のスポットに相当するかどうかを確認するた
めに使用することができ、これは単一の生成ポリペプチドを意味する。これで、
反応生成物の数を数えることができる。
最小の多様性の臨界未満反応システムでは、わずかな新規生成物のみが生成さ
れ、これらの新規ポリマーのために、他の触媒反応は生じない。従って、インキ
ュベーションが長期化するにつれて、新たなバンド又はスポットは生じないよう
になる。生成された新規ポリペプチドの数から、任意のポリペプチドが反応を触
媒する確率を定量化することができる。前述のように、長さL のポリペプチド基
質間の切断及びアミノ基転移反応は、一般に、2Lよりも短い2種の生成物を生じ
る。連結反応及び架橋反応は、全長2Lのアミノ酸である1個の生成物を生じる。
2次元ゲルを用いて、予想される平均分子量及び算出できる偏差が判るので、全
長2Lのアミノ酸に相当する分子量の個別の生成物の数がわかる。従って、新たな
バンド及びスポットのわずかな数から、触媒された反応の総数を推測することが
できる。このことより、ポリペプチドが反応を触媒する確率が算出できる。この
ポリペプチドの長さが変化するので、基質類及び酵素類のポリマー長の関数とし
ての触媒された反応の種類の数の拡大縮小(the scaling)関係の大きさを得るこ
とができる。
前述のように、遷移相は、可能性のある触媒ポリマー類の十分な多様性によっ
て、作用を受ける有機分子の多様な前駆体の組から、分子の多様性の激増を触媒
する能力をもたらす。興味深い標的の小さい分子が、この触媒反応の生成物間で
検出される場合は、前述の対数的分割方法によって、興味深い分子をもたらす特
定の基質類及び新規酵素類を回収することができる。
臨界超過反応システムにおいて、定義に基づき、新規生成物は、再び候補的基
質類となり他の新規生成物をさらに生じる別の反応の基質となる。臨界超過的挙
動であることを確立するために3種の特徴が追跡される。第一は、時間をかけて
、その基質及び生成物種の多様性が増大することである。これは主要な判定基準
である。第二は、時間をかけて、最大分子量の生成物が増加することである。第
三は、生成物の分子量分布の平均及び偏差が、計算可能な方法で増加することで
ある。
第二及び第三の特徴は、さらに詳しく述べる必要がある。臨界超過システムに
おいて、最初の基質である一本鎖DNA 、ポリマーが全て長さL である場合、1回
の連結反応で生成されるポリマー長の最大は2Lである。それらが基質として作用
する、新たな連結反応において、2種のこのような新しく形成されたポリマー類
によって形成された最大の長さは、4Lであり、次は8Lである。従って、これらの
生成分子の最大分子量の増加の視覚化は、この反応システムの臨界超過的挙動に
有利な証拠である。さらに一般的には、前駆的基質の組が、長さに関し、わずか
にいくつかのモノマー類であるようなモデルとなる反応システムにおいて、生成
ポリマーの分子量の平均及び偏差は、経時的に増大し、かつ特徴的な単峰形の分
布を生じる。このシステム中に存在する所定の長さのポリマー類の多様性を、縦
座標上に、これらのポリマー類の長さを、横座標上に表示する。大小の生成物類
の多様性をもたらす反応の結果に応じ、得られる曲線は、長さが長くなるに連れ
て、頂点へと急勾配で上昇し、その後指数関数的尾部を描きながら下降する。
実験の最初の組では、配列決定ゲル上に出現した新たなバンドの多様性を、時
間の関数、及びこの反応を触媒するポリペプチドライブラリーの多様性の関数と
して分析する。多様性が小さいDNA 基質システムにおいて、わずかな数の新規生
成物が早期に出現し、その後時間をかけても増加しない。実質的に高い多様性の
一本鎖DNA 基質配列のシステムにおいて、時間経過と共に全多様性が持続的に増
加することが検出され(検出に必要な生成物濃度によって制限を受ける)、かつ
認められた最大分子量の種類の持続性の増加が検出され、これらのことは、この
反応システムが臨界超過挙動であることの強力な証拠となる。
実験の第二組では、この組を形成する標識された一本鎖DNA 配列の間欠的又は
連続的添加を通して、一本鎖DNA 配列の前駆的組の濃度を維持することによって
、正反応速度が進行し、かつこの反応システムは非平衡条件に維持される。前駆
的基質分子類の添加によって“反応を進める”間の持続された非平衡条件は、高
濃度の高分子ポリマー類を達成するために、重要である。多様性の激増を触媒す
る能力を有す。この触媒反応は、モノマー類を、特定の巨大なポリマー類にする
ように働く。
前駆的基質DNA ポリマー類の添加は、2種の方法で行われる。第一の方法は、
基質類を別の密閉された攪拌されている反応器に添加することである。第二の方
法は、基質類を流動恒成分培養槽に添加することである。これらの2種の環境は
、非常に異なっている。密閉された攪拌されている反応器において、生成分子は
、逆反応又はそれらが基質となるような別の反応による以外は、このシステムか
ら除去されることはない。流動恒成分培養槽においては、生成分子は除去される
。詳細はEigen 及びSchusterの論文(The Hypercycle,A Principle of Natural S
elf-Organization,Springer-Verlag,New York,(1979))に記載されているよう
に、基質分子の連続添加によって反応が進行する恒成分培養槽システムは、この
反応生成物の選別を行うような環境である。基質ヌクレオチドの総量は、最終的
には
一定になる。異なる大きさの生成分子で分けられたこれらの分画は、変えること
ができる。外部流れによって希釈されるよりも先に生成されるようなこれらの生
成分子は、実際には濃度が蓄積されていき、その残留物は徐々に排泄される。従
って、この密閉された反応システムは、時間をかけた、生成物の多様性の全体の
増加について、試験するものである。流動恒成分培養槽環境は、流動及び作動速
度の関数として、この反応システムが、前駆的ポリマー類及びそれらの直接及び
間接の反応生成物の組の持続をもたらすかどうかを試験するものである。
これらの基質類及び触媒類の双方がポリペプチドであるような平行実験を行う
。そのために、新たな分子の大きさの生成物の触媒開始を調べるのに必要な、71
又は104 残基のアミノ酸のポリペプチドライブラリーの最低の多様性から、再度
開始し、その後数倍のオーダーで多様性が増すように調整する。最小の複合体ポ
リペプチドシステムは、インキュベーションにつれて増加するようなことがない
、少数の新規生成物ポリマーを形成することができる。臨界超過システムは、経
時的に多様性の増加を示す。
1次元及び2次元のゲル電気泳動を、経時的多様性の全体の増加を分析するた
めに使用する。しかしDNA 配列の分析とは異なり、2次元ゲル電気泳動を使用す
ることで、SDS-PAGE分析では同じ分子量のいくつかの新規生成分子を識別するこ
とができるようになる。全多様性の経時的持続性の増加(検出可能な生成物濃度
によって制限を受ける)、及び認められた最大分子量の種類の持続性の増加は、
この反応システムが臨界超過的挙動であることの強力な証拠となる。
実験第二組では、標識されたアミノ酸及び六量体までの短いペプチドを、より
大きいアミノ酸ライブラリーにポリペプチドライブラリーを加えた、多様性が増
加しているライブラリーと共にインキュベートする。1次元及び2次元のゲル電
気泳動分析によって、標識されたアミノ酸及び小さいペプチドが、分子量が大き
い物質に組み込まれていることを試験する。対照実験は、アフィニティークロマ
トグラフィーで精製されたユビキチンのみを、標識されたアミノ酸及び小さいペ
プチドと共に使用し、標識されたアミノ酸及び小さいペプチドを単独でインキュ
ベートする。
臨界超過挙動は、特に明解な方法で証明される: 理論的な研究は、十分に多様
性が低いアミノ酸及び小さいペプチドの前駆的組は臨界未満であることを示して
いる。しかし、その前駆的組の一員の濃度を外から添加することによって維持し
、かつこの組を、実験の冒頭にのみ一度に添加した高い多様性の比較的大きいポ
リペプチド類と共にインキュベートするならば、この比較的大きいポリペプチド
類は、前駆的組から作り出された多くのポリペプチド類の形成を触媒することが
できる。これらの新規ポリペプチド類自体は、それら及びさらに新規ポリペプチ
ドの形成を維持する触媒的な役割を演じるようになる。実際このようなシステム
は、ポリペプチドの一団となった自己触媒を含むことができる。簡単に述べると
、この小さいポプチド単独では、持続された濃度では臨界未満であるが、より大
きい多様性が高いポリペプチド類への過渡的暴露は、それ以降はこのより大きい
ポリペプチド類をさらに添加しなくとも維持される臨界超過挙動を惹起する。
この実験を行うために、前述の流動恒成分培養槽の実験を、標識されたアミノ
酸及び小さいペプチド類を用いて行い、かつ多様な71又は104 残基のアミノ酸の
ポリペプチド類の最初の組と共にインキュベートする。標識されたアミノ酸及び
小さいペプチド類の前駆的組の濃度は維持される。71又は104 残基アミノ酸のポ
リペプチド類の臨界的な多様性で、高分子量物質へのアミノ酸及び小さいポリペ
プチド類の組み込みが認められるだけではなく、最初の71又は104 残基アミノ酸
のポリペプチド類の指数的希釈及び最終の消失をもたらすような恒成分培養槽条
件下での組み込みの継続も認められる。維持された前駆的組由来の大きいポリマ
ー類のこのような持続性の合成は、71又は104 残基アミノ酸の高い多様性ポリペ
プチド類のライブラリーと、一時的にインキュベーションすることで、アミノ酸
及び小さいペプチド類のシステムに、遷移相が惹起されることを明らかにしてい
る。
有機分子類の集合体を、多様性のポリペプチド類に暴露すると、有機分子の多
様性の増加した合成をもたらすこをを確証するために、少量の有機分子を検出及
び識別する信頼できる方法が必要である。HPLC分析は、この必要条件を満たして
いることが明らかである。UV吸収検出を伴うHPLCは、下はナノモル台の濃度を検
出することができる。例えば、トリプトファンは、約10nmまで検出される。UV分
光法よりもIR分光法を用いて検出できるような小さい分子の範囲を増加すること
は、おそらく可能であろう(Kemp 及びVellaccio 、Organic Chemistry,Worth P
ublishers,Inc.,(1980))。五十から数百の有機分子の組を選択すると、新規生
成分子の存在のために加わったいくつかのピークを含むはるかに多い複合体混合
物から区別することができるピークの個別の組を生じる。反応の証拠は、新規ピ
ークの出現及び最初の基質のピークの消失の双方である。
これらの実験において、前駆的有機分子の組は、まずHPLC分析上で良く分離さ
れたピークを組み合わせ、その後前駆的組の前もって認容された構成員を含む溶
液に、試験基質化合物を順に添加する。前駆的組は、新規生成分子類が容易に検
出できるピークを生じるように、前駆的濃度及び多様性の双方を最適化するよう
に作成される。
前述の別の実験のように、前駆的有機分子の一定の導入、並びに正の合成を進
行し、かつ別の攪拌されている密閉された反応システムへ有機分子類の前駆的組
を連続的に添加することによって平衡状態から動かされたシステムを維持するよ
うな条件下で行う。実験の一部において、放射能標識された前駆的分子組は、放
射性原子が新規生成分子中に組み込まれることを確かにするために使用する。生
成分子の濃度は、究極的には、生成物の組に対する前駆的組の多様性の比、前駆
的組から所定の生成分子までの反応工程の数、並びに詳細な生成物の種類に至る
か及びそれからの反応経路(複数)にそった正及び逆の速度論によって決まる。
しかし平均的に、前駆的組の多様性が100 でありかつこの組の構成要員が最初に
ミリモル濃度で存在する場合、もしくは別にこのシステムが別の密閉された状態
で、かつ最終の多様性が約100,000,000 であった場合には、最後の生成物の濃度
は約10nMである。
わずかな反応だけが触媒され、その結果生成物のピークが容易に検出されるよ
うな条件が一旦確立されたならば、同じ前駆的組が暴露されたポリペプチドの多
様性が増加することを試みる。ポリペプチド類の十分な多様性のために、小さい
有機生成分子の多様性、従ってピークの非常な増加がこのシステムにおいて認め
られる。最初の長さが一定のDNA 又はポリペプチドを用いるシステムの分析にお
いて、反応が進行するにつれて、さらに大きい分子量の生成物が形成される。従
って、臨界超過的システムでは、多様性及び最大分子量の両方が、経時的にかつ
ポリペプチドライブラリーの多様性に応じて増加する。
これらの実験は、有機化合物の大きい多様性が、小さい有機分子の持続的前駆
的組から触媒反応によって形成されていることを示している。従って、これらの
実験から、医薬候補としての小さい分子の高い多様性のライブラリーを作成する
ためのこれらの新規技術の出願に至る。
一旦新規生成物の多様性がもたら生成された場合は、前述の対数的反復方法を
、特定の生成分子をもたらす新規酵素類の組、及び該生成物分子をもたらす連鎖
反応にとって必要な最初の基質である、前駆的有機分子の組の両方の単離のため
に使用することができる。この方法は、前述の方法をわずかに変更したものであ
り、かつ幾つかの、例えば4種の酵素が、連鎖反応を触媒するために必要である
という事実、及び幾つかの、例えば7種の最初の基質が、これらの反応には必要
であるという事実を反映している。これらの4種の酵素は、下記のように対数的
に単離することができる。各工程において、その時点の多様なポリペプチドライ
ブラリーは、全多様性の任意の0.7(70%)を各々含むような、10個のアリコートに
任意に分割される。いずれかのアリコートが、4種の必須のポリペプチドを含む
確率は、0.24であり、その結果平均的にこれらのアリコートのうちの2個が4種
の酵素を含有する。完全な多様性を伴う最初の基質と反応を行い、かつ興味深い
標的は1又は2個のアリコートにおいて同定され、その結果ポリペプチドライブ
ラリーの多様性を0.7倍まで低下させる。再び連続的なサイクルの対数的段階を
経て、必要な4種の酵素を単離する。基質の多様性を必要な7種に減らすために
、この基質の多様性を、最初の多様性の任意の0.8 を各々含むような、10個のア
リコートに無作為に割りつける。いずれかのアリコートが7個の重要な基質を有
する確率は、0.21であり、従って、平均的に2個のアリコートがそれにかなって
いる。
この分析は、2つの理由でかなり興味深い。第一に、これは、反応の配列が、
単なる単一反応ではなく、新規酵素類の組によって触媒され、前駆的集合体中の
最初の基質の組から標的分子へと、多くの合成工程を経て導かれることを確立し
ている。第二に、このような方法は、有機合成の問題への、根本的新たな手法を
構成している。ここで多様性及びスクリーニングの方法は、de novo 酵素類だけ
ではなく、触媒反応列を介し標的有機化合物へと至る基質類の組も同時に同定す
ることに使用される。第二の興味は、医薬の発見に関連していることは当然であ
る。
このような医薬の候補を発見するためには、いくつかの選択できる手法がある
。第一に、正常なアゴニストに対する受容体は、すでに手中にあり、かつ該アゴ
ニストの小さい擬態分子をスクリーニングするために使用されている。第二に、
受容体はまだ得られていないが、そのアゴニスト自身は得られている。第三は、
酵素の阻害剤が求められている。第一の手法の例として、特定のクローン化され
た細胞受容体と結合する、ナノモル濃度で存在する、興味深い有機分子の存在の
検出が試みられている。このような検出は、このクローン化された受容体に対す
る正常なリガンドの競合的アッセイによって達成できる。標識された正常なリガ
ンドは、反応混合物中に存在する完全に未知の小さい分子の存在する場合には、
結合しないか、もしくは減弱された結合を示すであろう。下記に論ずるように、
ナノモル濃度は、検出に十分である。未知の生成物がナノモル台である場合に結
合が検出されたならば、細胞受容体と結合することができる新規有機分子の合成
をもたらす、酵素類及び基質類の両方を発見するために、前述の対数的希釈法を
使用することができる。あらかじめ判っていることだが、標的分子だけでなく、
特定の最初の基質も、さらには酵素類も、前駆的基質類の組からの標的の合成に
は必要ないことを特記する。このような分子のいずれも、医薬候補であり、受容
体に結合し、その結果正常なアゴニストの活性を、修飾又は模倣し、もしくは拮
抗する。
第二の手法は、アゴニストに対する受容体は公知ではないが、アゴニストは公
知であるものである。つまりアゴニストと結合する、つまり相補的な形を有した
、ランダムポリペプチドの組が探索中である。このポリペプチドの組は、未知の
受容体の代わりに、形が相補的なポリペプチドの組の構成要員と結合するアゴニ
ストと競合する新規の有機分子のスクリーニングに使用することができる。いず
れのポリペプチドが、アゴニストの機能を示している原子団によってアゴニスト
と結合しているかはいまだ判明していないが、これらのポリペプチド中のあるも
のはおそらく重要なアゴニストの抗原決定基と結合するであろう。従って、ポリ
ペプチド組と結合している有機分子の組は、アゴニストの活性を模倣又は変更す
る。
第三の手法は、ペプチド基質の切断を遅延することによって、HIV プロテアー
ゼのような酵素を阻害する新規の小さい分子を探している。
エストロゲンのアゴニスト擬態を探すために、例えばドットブロットアレーと
してイモビロンP フィルター上に固定化された、クローン化されたエストロゲン
受容体を使用する。放射能標識されたエストロゲン及び該反応混合物から生成さ
れた分子を用いて、競合的アッセイを行う。ドットブロットフィルターは、イン
キュベートし、標識されたエストロゲン濃度は低下し、該有機分子の混合物の濃
度は一定である。対照フィルターには、有機分子を添加しない。エストロゲン濃
度が低下するにつれ、標識されたエストロゲンの競合的置換が生じたかどうかを
調べるために試験した。トリチウムで標識されたエストロゲン及びその類似体は
、150Ci/mMを使った。従って、プローブ1 ピコモルは、0.15μCiであった。125I
で標識したエストロゲン及びその類似体は、2200Ci/mM で標識されたものを使っ
た。1ピコモルは、2.2 μCiであった。その結果、このような結合した標識エス
トロゲンと置換するような、有機分子競合体の量がピコモル以下であっても、検
出することができる。新規生成物は、100 〜1000pMの範囲で生成されるので、該
受容体にわずかな親和性を有するエストロゲン擬態であっても、検出することが
できる。
前述のことから、本発明の具体的な実施例が、詳細に説明することを目的とし
て本出願中に記載されているが、本発明の思想及び範囲から離れることなく様々
な修飾を行うことができることは、理解されるであろう。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CN,CZ,DE,DK,ES,FI,G
B,HU,JP,KP,KR,KZ,LK,LU,LV
,MG,MN,MW,NL,NO,NZ,PL,PT,
RO,RU,SD,SE,SK,UA,US,UZ,V
N