【発明の詳細な説明】
コレステリルエステル運搬蛋白質阻害ペプチドおよびこれを含む
動脈硬化症のための予防および治療剤発明の分野
本発明は、新規なコレステリルエステル運搬蛋白質(Cholesteryl Ester Trans
fer Protein;以下CETPと略称)阻害ペプチドおよびこれを含む動脈硬化症の
ための予防および治療に関する。発明の背景
動脈硬化症は、食生活の変化にしばしば起因する疾病であり、成人の患者数が
増加しているのみでなく、青少年および子供までもがこの疾病にかかっている。
動脈硬化症の発病および進行の原因として多くの遺伝的または環境的な危険因
子(risk factor)が報告されてきたが、最近の研究は血中コレステロールの濃度
の上昇が主な危険因子として選定されている。従って、血中のリポタンパク質(l
ipoproteins)または脂質(lipids)の濃度と冠状動脈疾患の発病との相関関係の確
立に多くの関心が集まっている。よく知られているように、高密度リポタンパク
質(HDL)と低密度リポタンパク質(LDL)は二つとも、ヒトの血中のコレステ
ロールを主にコレステリルエステル(CE)の形態で運搬する。特にHDLは、
末端組織に残留するコレステロールを肝へ逆輸送してコレステロールが肝で分解
、排出されるように作用する。従って、コレステロールはHDLによって輸送さ
れる場合に除かれやすいので、コレステロールがHDLから他のリポタンパク質
に運搬されるのを阻害することによって血中のコレステロールの濃度を効果的に
減少させることができる。
これと関連して、CETPはCEをHDLからLDLに、或いは超低密度リポ
タンパク質(VLDL)に運搬する作用をするので、その機能に関する広範囲な研
究が行われてきた。例えば、ドレーナらは、ヒトCETPのcDNA配列を決定
し、これを成功裏にクローニングし(Drayna et al.,Nature,327,6123(1987))、
ウァンらは、ヒトCETPのcDNAを含むベクターを用いるヒトCETPの生
産を報告した(Wang et al.,DNA,8,753-758(1989))。
クシワハらは、CETPが欠乏した幾つかの動物種は、高濃度のHDL−コレ
ステロールと低濃度のLDL−コレステロールを有し、かつ、動脈硬化症の発病
率が低いと報告した(Kushwaha et al.,J.of Lipid Research,34,1285-1297(1993
))。かかる事実は、CETPとコレステロールの濃度と動脈硬化症の発病との間
に重大な相関関係があることを暗示する。
なお、日本では、CETP欠乏家系の構成員は、大きいHDLの粒子を有し、
心臓疾患を患わずに長寿であるという事実が報告された(Koizumi et al.,Arteri
osclerosis,58,175-186(1986))。最近、マロチらは、CETP欠乏マウス(mouse
)を異種のCETP遺伝子で形質転換した場合、対照マウス群に比べて形質転換
したマウスは深刻な動脈硬化症を起こしたと報告した(Marotti et al.,Nature,3
64、73-75(1986))。
前記の観察は、CETPが欠乏するか、またはその活性が阻害されると、HD
Lによるコレステロールの運搬または排出が促進され、これによって高濃度のコ
レステロールに起因する疾病、例えば、動脈硬化症を予防または治療することが
できるという仮説を支持する。
図1は、コレステロールの逆輸送経路におけるCETPの役割、およびCET
Pとその阻害剤との相関関係を図式的に示す。図1に示したように、コレステロ
ールはHDLによってCEの形態で運搬され、CETPによってLDLへ運搬さ
れる。LDL中のCEは末端領域へ運搬されて細胞内に蓄積され、反面、HDL
中のCEは肝へ輸送されて分解、排出される。
CEの量がHDLの輸送容量を超過する場合は、CEが動脈壁のような特定の
臨界領域の細胞内に蓄積される。かかる蓄積は結局、細胞の機能損傷を起こし、
さらに細胞の壊死を惹起し、次いで、細胞破壊物が血管壁に蓄積されてアテロー
ム性動脈硬化症を誘発する。しかし、この場合、CETPの作用が阻害または遮
断されると、HDL中のCEがLDLへ運搬されず肝へ移送されるので、例えば
血管壁でのCEの蓄積および動脈硬化症の発生を防止または最少化することがで
きる。
これに関連して、血漿中のコレステロールの濃度を低めるために、CETP活
性を阻害または減少させようとする多くの試みがあった。
米国特許第5,279,540号は動脈硬化症を治療するために、動脈硬化症患
者の血液を抗−CETPカラムに通して患者の血中CETPの濃度を減少させる
方法を開示している。
PCT国際公開第WO 93/11782号では、ヒヒ(baboon)の血漿から分
離したCETP阻害活性を有するペプチド;そのアミノ酸配列;および天然ペプ
チドと同一のCETP阻害活性を有し、前記配列に基づいて製造された合成ペプ
チドが開示されている。
しかし、優れたCETP阻害活性を有するCETP阻害ペプチドを追求する必
要性は依然として存在する。発明の概要
従って、本発明の目的は、優秀な阻害活性を有する新規なCETP阻害ペプチ
ドを提供することである。
本発明の他の目的は、前記ペプチドの製造方法を提供することである。
本発明のまた他の目的は、前記ペプチドを含む動脈硬化症の予防および治療剤
を提供することである。
本発明の一つの実施態様によって、下記のアミノ酸の配列を有する新規なCE
TP阻害ペプチド、ペプチドP28が提供される。
図面の簡単な説明
前述した、そしてその他の本発明の目的および特徴は、本願に添付された図面
を参照とした下記の説明から明らかになる。
図1は、コレステロールの逆輸送経路でのCETPの役割、およびコレステロ
ールとその阻害剤との相関関係を図式的に示し;
図2は、ヒト血漿とブタ血漿のHDL分画を用いた電気泳動の結果を示し;
図3は、ブタ血漿から完全に分離した本発明の3kDaのペプチドを用いた電
気泳動の結果を示し;
図4は、本発明の3kDaペプチドのCETP阻害活性を示し;
図5は、ペプチドP28のCETP阻害活性の基質による変化;
図6は、ペプチドP28およびP10がウサギにおけるCETP活性に及ぼす影響
を示し;
図7は、ペプチドP28およびP10がウサギにおける血中の総コレステロール濃
度に及ぼす影響を示し;
図8は、ペプチドP28およびP10がウサギにおける血中のHDLコレステロー
ル濃度に及ぼす影響を示し;
図9は、ペプチドP28またはP10に対して特異性を有する抗体の生産を例示し
;
図10は、ペプチドP10とこれに対しての特異性を有する抗体との結合がペプ
チドP10の変形体によって阻害されることを示す。発明の詳細な説明
本発明のCETP阻害ペプチド、即ち、ペプチドP28は、ポリアクリルアミド
ゲル電気泳動によって確認した結果、約3kDaの分子量を有し、試験管内試験
において高いCETP阻害活性、即ち、純粋なCETPに対しては約90ないし
100%およびヒト血漿に対しては約40ないし50%の阻害活性を示す。
ペプチドP28のアミノ酸配列をアミノ酸データバンク(即ち、大韓民国KIS
TのKRIBB)に寄託された他のペプチドのアミノ酸配列と比べた結果、ペプ
チドP28のアミノ酸配列は、ブタのアポ−CIII蛋白質のN−末端断片、即ち、
ペプチドP28'と相当類似しており、下記の28個のアミノ酸を含む。
ブタのアポ−CIIIは、73個のアミノ酸からなり、主として肝で合成される
が、小腸でも一部合成される。ブタのアポ−CIIIは、その機能に関する報告は
ないが、VLDLおよびHDLを構成する微量の蛋白質の一つとして知られてい
る。
前記で示したように、ペプチドP28およびP28'のアミノ酸配列は、N−末端
から5番目および6番目のアミノ酸が相互異なることを除いては同一である。ペ
プチドP28'も純粋なCETPに対して約90ないし100%、またヒト血漿に
対して約40ないし50%のCETP阻害活性を示す。
ペプチドP28およびP28'は、多様なカラムクロマトグラフィー法を用いてブ
タの血漿から分離すること、または、公知の化学的方法に従って同一なアミノ酸
配列を有するペプチドを合成することによって製造できる。化学的に合成された
ペプチドも天然ペプチドと本質的に同等なCETP阻害活性を示す。
なお、ヒトのアポ−CIIIは、79個のアミノ酸と74番目のアミノ酸に結合
している炭水化物の残基からなる糖蛋白質である。該蛋白質は、8.7kDaの
分子量を有し、リポタンパク質のリパーゼおよび肝のリパーゼの活性を阻害する
。ヒトのアポ−CIII蛋白質のN−末端断片、即ち、下記の13個のアミノ酸を
含むペプチドP13もCETP阻害活性を示す:
ペプチドP28、P28'およびP13の断片もCETPの活性を示す。かかる断片
の例としては、ペプチドP28の1番目ないし10番目(P10)、1番目ないし24
番目(P24)、1番目ないし20番目(P20)、1番目ないし14番目(P14)、また
は1番目ないし8番目(P8)のアミノ酸が各々下記の配列を有するN−末端断片
とペプチドP28'の1番目ないし18番目のアミノ酸がP18の配列を有するN−
末端断片が挙げられる。
CETP阻害活性を維持しながら一つ以上のアミノ酸が公知のアミノ酸変形体
によって置換されて形成されるペプチドP28、P28'、P13、P10、P24、P20
、P14、P8、またはP18の変形体およびCETP阻害活性を有する該変形体の
断片も本発明の範囲に含まれる。アミノ酸置換体は下記からなる群から選ぶこと
ができる:
Gluに対する2−アミノアジピン酸、AspまたはCa−メチルGlu;
Aspに対するGlu、Ca−メチルAspまたはβ−カルボキシAsp;
Thrに対するSerまたはCa−メチルThr;
Serに対するThrまたはCa−メチルSer;
Proに対する3,4−デヒドロProまたはCa−メチルPro;
Lysに対するオルニチン、シトルリン、ArgまたはCa−メチルLys;
Metに対するCa−メチルMet;
Glnに対するAsn、シトルリンまたはCa−メチルGln;
Valに対するイソVal、ノルVal、Ca−メチルValまたはLeu;
Alaに対するGly、β−Ala、Ca−メチルAlaまたは2−アミノ酪
酸;
Argに対するLys、ホモArg、Ca−メチルArgまたはシトルリン;
および
Leuに対するノルLeu、イソLeuまたはCa−メチルLeu。
また、ペプチドP28、P28'およびP13、これらの断片または類似体における
ペプチド結合はチオエーテル結合(−CH2−S−)、アルキル結合(−CH2−C
H2−)およびアミノ結合(−CH2−NH2−)などのような他の結合で置換され得
る。
ペプチドP28、P28'またはP13、またはこれらの断片を含むポリペプチドま
たは蛋白質もCETP阻害活性を示すことができ、これらも本発明の範囲に含ま
れる。
なお、本発明は、ペプチドP28、P28'またはP13、これらの断片、または前
記ペプチドを含むポリペプチドまたは蛋白質に対する特異性を有する抗体を提供
する。本発明の抗体は動脈硬化症の予防および診断試薬の製造に有用である。
本発明のペプチドは、CEのHDLからLDLおよびVLDLへの運搬を遮断
するのでCEがHDLによって肝へ輸送されて末端細胞内のコレステロールを除
く作用を有するCETP阻害剤である。従って、本発明のCETP阻害ペプチド
は動脈硬化症の予防および治療に使用できる。
従って、本発明は、薬剤学的に許容され得る賦形剤、担体または希釈剤ととも
に、血中コレステロール濃度の低下または動脈硬化症の予防または治療に効果的
な量のペプチドP28、P28'またはP13、これらの断片または類似体を活性成分
として含む抗動脈硬化症組成物を提供する。前記組成物は任意の通常の方法によ
って製造できる。
組成物の製造において、活性成分は担体に混合または希釈されるか、または担
体内に封入されるのが好ましい。従って、前記組成物は錠剤、丸剤、粉剤、香粉
(Sachet)、エリキシル(elixir)、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ、エアロゾール
、軟質または硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射剤、滅菌包装粉末製剤などの形態
であり得るが、滅菌注射剤の形態が好ましい。前記組成物を注射剤として調剤す
る場合は、これを凍結乾燥した形態で保管または投与することができる。
適切な担体、賦形剤および希釈剤の例としては、スターチ、ラクトース、デキ
ストロース、スクロース、マンニトール、炭酸カルシウム、リン酸水素二カリウ
ム、塩化ナトリウム、微細結晶性セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリ
ウム、メチルセルロース、カオリン、コロイド状の二酸化硅素、ヒドロキシプロ
ピルスターチ、プロピレングリコール、カゼイン、炭酸水素ナトリウム、乳酸カ
リウム、ラノリン、ゼラチン、グリセリン、ベントナイト、ステアリン酸カルシ
ウム、ポリビニルアルコール、クエン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビ
トール、ラノリンエステルなどがある。
前記組成物は、潤滑剤、湿潤剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、安定化剤、結合剤
、防腐剤などをさらに含むことができる。本発明の組成物は、当分野で広く知ら
れた任意の方法を用いて患者に投与された後活性成分が迅速に、かつ持続的に、
または遅延放出(delayed release)されるように調剤することができる。
前記医薬組成物は、経口、経皮、皮下、静脈内および筋肉内投与をはじめ種々
の経路で毎日または規則的に投与され得る。活性成分の1日投与量は、通常、約
1ないし3000mg、好ましくは20ないし300mgの範囲であり、一度に
、または数回にわけて投与できる。しかし、実際に投与される活性成分の量は、
治療すべき症状、選定される投与経路、患者の体重および年齢、および患者の症
状の重さを含む多様な関連因子を考慮して決定されなければならない。従って、
前述の投与量が本発明の範囲を制限すると解釈してはならない。
下記の参照試験例および実施例は本発明をさらに例示するためのものであり、
本発明の範囲を制限することはなく、特に断らない限り、実施例で用いられた実
験方法は下記参照試験例によって行われた。
また、以下固体中固体混合物、液体中液体混合物および液体中固体混合物に対
しての百分率は、特に断らない限り、各々重量/重量、体積/体積および重量/
体積の基準である。参照試験例1:CETP阻害活性度の決定
モートンらの方法(Morton et al.,J.Biol.Chem.,256、11992-11995(1981))に
よって、LDLおよび[3H]−コレステリルオレイン酸で標識されたHDLを
合成した後、超遠心分離器(Beckman XL 70)を用いてこれらを分離した。製造さ
れたLDLおよび[3H]−HDLを各CE−受容体およびCE−供与体として
用いた。
ヘスラーらの方法(Hesler et al.,J.Biol.Chem.,262,2275-2282(1987))によっ
てヒトの血漿から純粋なCETPを分離してCETP源として用いた。
前記で製造したLDL0.3ml、[3H]−HDL0.05mlおよびCET
P源0.05mlと、CETP阻害剤0.05mlとを1.5ml容量の管に入れ
て37℃で3時間反応させた。
反応が終わった後、モートンらの方法(Morton et al.,Biochim.Biophys.Acta.
,663,350-355(1981))に従ってLDLを沈殿させた。上澄液の一部を取って液体
シンチレーション計数器(Packard Tricarb 1600 TR)を用いてLDLへ運搬され
た同位元素の量を測定し、これからCETPの活性度を算出した。
この際、CETP阻害剤の阻害活性度は、CETP阻害剤の添加されていない
試料を対照群とし、CETP阻害剤の添加された試料を試験群として、下記のよ
うに算出した:
参照試験例2:血中総コレステロール濃度の定量
アラインらの方法(Allain et al.,Clinical Chemistry,20,470-475(1974))に
従って、ウサギの血中総コレステロール濃度の定量を行った。具体的には、ウサ
ギの血漿0.001mlおよびコレステロール測定用の酵素試薬(Sigma 352-50)
0.5mlを1.5ml容量の管に入れ、37℃で5分間撹拌しながら反応させた
。反応物を2ml取って分光計を用いて500nmでの光学密度(O.D.)を測定
した。標準曲線と比べて総コレステロールの濃度を算出した。参照試験例3:血中HDLコレステロール濃度の定量
デキストラン硫酸MnCl2沈殿法(Warnick et al.,Clinical Chemistry,28,1
385-1397(1982))によって、ウサギの血中HDLコレステロール濃度を定量した
。具体的には、ウサギの血漿0.05mlとHDLコレステロール試薬(Sigma 35
2-3)0.01mlとを混合し、反応させ、5分間静置した後、3,000xgで5
分間遠心分離した。上澄液0.005mlをコレステロール測定用酵素試薬(Sigm
a 352-50)0.5mlと混合し、37℃で5分間撹拌しながら反応を行った。反応
液0.2mlを採取後、分光計を用いて500nmでの光学密度を測定した。標
準曲線と比べてHDLコレステロールの濃度を算出した。実施例1:ブタ血漿からCETP阻害ペプチドの同定
ヒトおよびブタの血漿をCETP阻害剤として用いて参照試験例1の手順によ
ってヒトおよびブタ血漿のCETP阻害活性度を測定した。
その結果、ブタの血漿はヒトの血漿に比べ約10%のCETP阻害活性度を示
した。
一方、前記モートンらの方法によって、ヒトおよびブタの血漿を超遠心分離し
てHDL分画を得、次いで、これをポリアクリルアミドゲル電気泳動した。
図2は、ヒトおよびブタの血漿のHDL分画を電気泳動した結果を示し、第1
列および第2列は分子量標準物質(ゲルの上部から67−14kDaおよび20
−3kDa)であり、第3列および第4列は各々ヒトおよびブタの血漿のHDL
分画である。
図2に示したように、約3kDaの蛋白質バンドはブタ血漿にのみ観察された
。実施例2:ブタ血漿からCETP阻害ペプチドの分離
ブタの新鮮な血液から200gの血漿を取って、ここに硫酸アンモニウム10
.5gを添加した。混合物を4,000rpmで3分間遠心分離した。上澄液を、
フェニル−セファロース(Separose)CL−4Bカラム(Pharmacia社製品、スウェ
ーデン)の上で分離し、参照試験例1の方法に従って全ての蛋白質の分画のCE
TP阻害活性度を決定した。
高いCETP阻害活性を有する分画を収集した後、DEAE−セファデクス(S
ephadex)カラム(Pharmacia社製品、スウェーデン)に通して高い阻害活性を有す
る分画を収集した。次いで、前記分画をヒドロキシルアパタイトカラム(Bio−Ra
d社製品、米国)に通して3kDaのペプチドを含有する分画を得た後、参照試験
例1の方法に従ってそのCETP阻害活性度を決定した。実施例3:3kDaペプチドのCETP阻害活性度の測定
実施例1のポリアクリルアミドゲル上での電気泳動の結果分離された3kDa
の蛋白質バンドを手術用メスで切断して別の電気泳動装置のH−型管に入れ、次
いで、電気溶出(参照:Hunkapiller et al.,Meth.Enzymol.,91,227-236(1986))
して純粋な3kDaペプチドを得た。
図3は、ブタの血漿から完全分離した本発明の3kDaペプチドを電気泳動に
よって分析した結果を示し、ここでAおよびB列は分子量標準物質(ゲルの上部
から97−14kDaおよび20−3kDa)であり、第1列は二硫化物結合を
切断するβ−メルカプトエタノールを0.2%添加して電気泳動した3kDaペ
プチドであり、第2列はβ−メルカプトエタノールを添加しないで電気泳動した
3kDaペプチドである。
図3に示したように、ブタの血漿から分離した純粋な3kDaバンドは第1列
および第2列で同一の位置で確認されるが、これは前記ペプチドが単一のペプチ
ドであることを意味する。
前記で分離された純粋な3kDaペプチドまたはヒトのアルブミン(対照実験)
のCETP阻害活性度を前記参照試験例の方法によって決定した。また、ヒトの
血漿をそのままにCETP源として用いることを除けば参照試験例と同一の手順
を経て、純粋な3kDaペプチドのCETP阻害活性度を決定した。
図4は、本発明の3kDaペプチドのCETP阻害活性度を示すものであり、
ここで曲線AおよびBは、CETP阻害剤としてヒトの血漿から分離された純粋
なCETPとヒトの血漿そのものをそれぞれ用いた場合の3kDaペプチドのC
ETP阻害活性度を示し;曲線Cはヒトの血漿から分離された純粋なCETPが
CETP阻害剤として用いられた場合、ヒトのアルブミンのCETP阻害活性度
を示す。図4に示したように、ヒトの血漿から分離された純粋なCETPおよび
ヒト血漿そのものがそれぞれCETP阻害剤として用いられた場合、1nMの3
kDaペプチドが約100%(A)および約50%(B)のCETP阻害活性度を示
す反面、ヒトのアルブミンはCETP阻害活性をほとんど示していなかった。実施例4:CETP阻害ペプチドのアミノ酸配列
ラムリらの方法(Laemmli et al.,Nature,227,680-685(1970))に従って、実施
例2で得た3kDaペプチドを緩衝液(4% SDS,0.25M トリス(Tr
is,10% グリセロール)に溶解させ、37℃で12時間反応させた後、1
5mAで15%ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲルの上で電気泳
動を実施した。
マツダイラの方法(Matsudaira,J.Biol.Chem.,262,10035-10038(1987))によ
って、ゲル上で分離した3kDaのペプチドを二フッ化ポリビニル(PVDF)の
膜へ送り、膜を70%エタノールで洗浄した。自動アミノ酸分析器(Protein Seq
uenator 470A,Applied Biosystem社製品)を用いて、3kDaのペプチドのN−
末端から28個のアミノ酸を確認した結果、アミノ酸配列は次のようであった。
実施例5:CETP阻害ペプチドの合成
実施例4で分析されたアミノ酸配列に基づいて、固相結合法を用いる自動アミ
ノ酸合成器を使用して28個のアミノ酸を有する3kDaペプチド (P28)を大
量合成した。具体的には、t−Boc基によって保護されたC−末端アミノ酸を
ポリスチレン樹脂に結合し、t−Boc基を除いた後、t−Boc基で保護され
た次のアミノ酸を最初のアミノ酸の脱保護アミノ基にペプチド結合させた。成長
するペプチド鎖に28番目のアミノ酸が結合されるまで前記手順を繰り返してペ
プチドP28を合成した。
ポリスチレン樹脂からP28を分離した後、HPLC(GME 712、Gilson社製品)を
用いて精製した。
前記と同一の手順を繰り返して、各々P28'、P13、P10、P18、P24、P20
、
P14、およびP8と命名されたペプチドを合成したが、それらのアミノ酸配列は
下記のように確認された。
実施例6:合成されたペプチドのCETP阻害活性度
純粋CETPまたはヒトの血漿をCETP源として使用して参照試験例1の方
法に従って、P28、P10、P18、P24、P20、およびP14のCETP阻害活性度
を測定した。非特異的な阻害の可能性を排除するために、対照群として任意のア
ミノ酸配列を有する2kDaの水溶性ペプチドを合成した後、類似の方法でその
CETP阻害活性度を決定した。前記試験の結果を表Iに示した。
ペプチドの阻害活性度は、分散分析による平均値±標準偏差として表Iに示し
、大きい誤差を示す結果はダンカンの多重範囲試験(Duncan,D.B.,“Multiple Ra
nge and Multiple F Test,”Biometrics,11,1-12(1955))を行って検討した。
表Iで分かるように、ペプチドP28およびP10'、およびこれらの断片、即ち
、ペプチドP10、P18、P24およびP20は純粋なCETPに対しては約90ない
し100%、ヒトの血漿に対しては約40ないし50%の高いCETP阻害活性
度を示す。
対照群として使用した2kDaペプチドは、HDLからLDLへのCEの運搬
にほとんど影響を及ぼさなかった。実施例7:合成されたペプチドのCETP阻害活性度
通常の遺伝工学技法を用いて、ペプチドP24、P20およびP14を大腸菌(E.col
i)で発現させ、ヒトの血漿をCETP源として用いる参照試験例の方法に従って
、これらのCETP阻害活性度を測定した。その結果を表IIに示すが、ペプチド
P24、P20およびP14が全てCETP阻害活性を示した。
実施例8:CETP阻害活性に影響を及ぼすアミノ酸の確認
実施例6でCETP阻害活性が確認されたペプチドP10において、そのCET
P阻害活性に直接的な影響を及ぼすアミノ酸を調べるために、P10の各々のアミ
ノ酸残基をアラニン残基で次々と置換して10個の変形体を得た。
参照試験例の方法に従って、前記変形体のCETP阻害活性度を測定し、その
結果を表IIIに示す。
表IIIに示したように、P10のN−末端から1ないし5番目のアミノ酸がCE
TP阻害活性に決定的な役割を有し、9番目および10番目のアミノ酸はP10の
活性にほとんど影響を及ぼさないことが明らかにされた。実施例9:基質によるペプチドP28のCETP阻害活性度
ペプチドP28の血中の阻害機構を知るために、参照試験例1の方法に従ってV
LDL、LDL、HDLまたは再合成されたLDL(LDLR)をCE受容体とし
て用いてペプチドP28のCETP阻害活性度を測定した。LDLRは、モートン
らの方法(J.Biol.Chem.,256,11992-11995(1981)参照)によって参照試験例1
で得たLDLから合成した。LDLをクロロホルムで脱脂質し、ゲルクロマトグ
ラフィーを行ってApoB100蛋白質を得た。ホスファチジルコリンおよびオ
レイン酸コレステリルをよく混合し、窒素ガスを用いて乾燥した後、ここに前記
で得たApoB100蛋白質を加えた。混合物を撹拌しながら反応し、トリス緩
衝液で透析し、ゲルクロマトグラフィーを行ってLDLRを得た。
その結果を図5に示したが、ここで、ペプチドP28は最終濃度2μMでCEの
HDLからVLDLへの運搬を約10%、HDLからLDLへの運搬を約50%
、HDLからLDLRへの運搬を約55%の割合で各々阻害することが分かる。
ペプチドP28によるHDLからHDLへのCE運搬の阻害は観察されなかった。実施例10:毒性試験
ヒトの繊維芽細胞株(A431、ATCC CRL 1555)を、10%(wt
/vol)のペプチドP28、P18、P10、P24、P20、またはP14を添加して1
0%牛胎血清(FBS)含有DMEM培地で72時間培養した。培養された細胞は
ペプチドを添加しないで培養した対照群と比べ、成長状態および形態における変
化を示さなかった。実施例11:ペプチドの効果に対する生体内試験
高脂血症が誘発された4グループのニュージランドホワイト(New Zealand Whi
te)種のウサギにペプチドP28およびP10を注射することによって、動物生体内
でのリポタンパク質の代謝に及ぶ前記ペプチドの効果を調べた。実験条件は表IV
に示した。
注射前の3週の間、グループB、CおよびDのウサギに0.3%のコレステロ
ール食餌を与えて高脂血症を誘発した。グループAまたはBのウサギには生理食
塩水1mlずつを耳静脈を通じて注射し、グループCおよびDのウサギには各々
ペプチドP28およびP1020mgを同一な方法で注射した。注射後、1、3また
は6時間ごとに72時間の間、ウサギの耳静脈を通じて2mlずつ採血した。参
照実施例2の方法に従って血液から血漿を分離して使用するまで零下20℃の冷
凍庫に保管した。全ての採血が完了した後、ペプチドP28およびP10の効果を次
のような三つの項目に対して調べ、その結果を下記に示した。
1.CETP活性に及ぶペプチドP28およびP10の影響
静脈注射直前および注射後72時間の間、1時間ごとにウサギから血液試料を
採血し、参照試験例1の方法に従ってそれらのCETPの活性度を決定した。そ
の結果、グループAおよびBの場合、注射後72時間の間、CETPの活性度は
ほとんど変わらなかった。グループCの場合は、対照群のグループBに比べて注
射後30時間まで70%以上の阻害活性を示した。グループDの場合、対照群の
グループBに比べて注射後20時間まで60%以上のCETP阻害活性を示した
。その結果を図6に示す。
2.血中の総コレステロールの濃度に及ぶペプチドP28およびP10の影響
静脈注射直前および注射後72時間の間、1時間ごとにウサギから血液試料を
採血し、参照試験例2の方法に従って血中の総コレステロールの濃度の変化を観
察した。その結果、グループAのウサギでの血中の総コレステロール濃度は、初
期段階では少し減少し、注射後20時間からは徐々に増加し、グループBでは、
注射直後5%減少したが、注射後7時間からは変化がなかった。しかし、グルー
プCおよびDの場合は、注射直後濃度が減少し、グループCの場合は、注射して
9時間後には初期濃度の80%になり、グループDの場合は、注射して12時間
後に初期濃度の70%になった。その結果を図7に示す。
3.血中のHDLコレステロールの濃度に及ぶペプチドP28およびP10の影響
静脈注射直前および注射後72時間の間、規則的にウサギから血液試料を採血
し、参照試験例3の方法に従って血中のHDLコレステロールの濃度の変化を観
察した。その結果、グループAの場合、血中のHDLコレステロールの濃度は注
射直後少し減少し、グループBの場合には一定の濃度を維持し、グループCの場
合には、注射して30時間後から徐々に増加しはじめて36時間後には最初の濃
度の113%まで増加し、グループDの場合には、静脈注射直後から徐々に増加
しはじめて57時間後には最初の濃度の135%まで増加した。その結果を図8
に示す。実施例12:ペプチドP28またはP10に対して特異的な抗体の生産
ペプチドP12またはP10に対して特異的な抗体は次のように生産した。ペプチ
ドの免疫源性を増加させるために、ペプチドを、コンジュゲーションキット(con
jugation kit; Pierce 77101,フランス)を用いてキーホール リンペット(key-
hole limpet)ヘモシアニン(KLH)とコンジュゲートさせた。コンジュゲートさ
れたペプチドを、同一容積のフロイント完全アジュバント(Freund′s complete
adjuvant;FCA、Sigma F5881、米国)とよく混合し、これをウサギに皮下注射した
。フロイント不完全アジュバント(Freund′s incomplete adjuvant;FIA、Sigma F
5506、米国)と前記コンジュゲートされたペプチドとの混合物を用いて2週間隔
で4回の追加注射を行った。最終注射後、ウサギの耳静脈から血液試料を取り、
ペプチドP28およびP10に対する抗体の生産を確認するために、ELISA試験
法によってこれらの抗体の濃度を調査した。その結果を図9に示す。抗体の生産
が確認されたウサギから血液試料30mlを採血してペプチドP28およびP10に
対する抗血清を得、前記抗血清を蛋白質Aカラム(Pierce 22811、フランス)に通
してペプチドP28およびP10に対して特異的な免疫グロブリンG(IgG)を得た
。実施例13:ペプチドP10の類似体
ペプチドP10を炭酸塩緩衝溶液(pH9.5)に1μg/mlの最終濃度で溶か
した。生成された溶液をELISA平板(Nunc社、米国)の各ウェルにウェ
ル当たり100μlずつの量で加えた後、4℃で18時間反応させて、ペプチド
を平板に吸着させた。前記平板をリン酸塩緩衝溶液(pH7.2)で3回洗浄し
、0.2%ゼラチン溶液を各ウェルにウェル当たり200μlずつ添加し、室温
で2時間反応させて残りの蛋白質吸着部位を遮断した。
100,000倍の容積のリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS,pH7.2)で希釈
したペプチドP10に対する抗体含有溶液100μl、または、ペプチドP10の変
形体、即ち、実施例8で得た変形体E(A5)およびJ(A10)、および10番目
のアミノ酸のD−型である変形体D10を各々1μgずつを更に含有する抗体溶
液100μlを、平板の各ウェルに添加した。前記平板を37℃で2時間反応さ
せ、リン酸塩緩衝溶液(pH7.2)で3回洗浄した。
セイヨウワサビ過酸化酵素(horseradish peroxidase;HRP)で標識された抗−マ
ウスIgG抗体を含んだ溶液を10,000倍の容積のPBS(pH7.2)で希釈
して各ウェルにウェル当たり100μlずつ添加した。生成物を37℃で2時間
培養させた後、リン酸塩緩衝液(pH7.2)で3回洗浄した。次いで、各ウェル
にO−フェニレンジアミン(OPD;Sigma社、米国)溶液100μlを添加し、暗所
で室温下30分間恒温処理した。生成物に、2N硫酸を150μl/ウェルの量
で添加して発色を中断させた後、ELISAリーダー(reader)(Dynatech MR 500
0、米国)を用いて492nmでの各ウェルの光学密度を測定した。
図10に示したように、実施例8でCETP阻害活性を有すると記述された3
種の変形体、即ち、A5、A10およびD10は、ペプチドP10がその抗体に結
合するのを阻害している。実施例14:ブタおよびヒトのアポ−CIII断片のCETP阻害活性度の測定
CETP阻害活性を有するペプチドP10と高い相同性を有するアミノ酸配列を
有する2種のブタおよびヒトのアポ−CIIIの二つのN−末端断片、ペプチドP2 8
'およびP13を、遺伝工学技法によって大腸菌(E.coli)を用いて生産した。ペプ
チドP28'およびP13のアミノ酸配列を下記に示す。
ヒトの血漿をCETP源として用いることを除いては参照試験例1と同じ方法
に従ってペプチドP28'およびP13のCETP阻害活性を測定した。その結果を
表Vに示す。
表Vに示したように、ブタおよびヒトのアポ−CIIIのN−末端断片、即ち、
ペプチドP28'およびP13はCETP阻害活性を有する。
本発明を上記の具体的な実施態様と関連させて記述したが、添付した請求の範
囲によって定義される本発明の範囲内で、当該分野の熟練者が本発明を多様に変
形および変化させ得ることは当然である。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
A61K 38/00 ADN 9051−4C A61K 37/02 ABX
39/395 ADN