【発明の詳細な説明】inhA
遺伝子を用いるミコバクテリア感染の検出および処置のための方法および組
成物
政府関係に関する陳述
本発明は、NIH認可番号Al26170およびNational Cooperative Drug Discovery
Group 認可番号UO1A130189の下、政府のの支援によってなされた。そのような資
格において、合衆国政府は本発明において一定の権利を有する。
関連出願の交互参照
これは、1993年5月14日出願の出願番号第08/062,409号、表題「結核の処置お
よび薬剤耐性の評価のためのイソニアジド耐性を与えるM.TUBERCULOSISおよびM .SMEGMATIS
の遺伝子の使用」の一部継続出願である。
発明の分野
本発明は、ミコバクテリア性疾患の診断および処置において使用される物質お
よび方法に関し、より詳細には、イソニアジドおよびそのアナログに対する耐性
に関連するミコバクテリア中のDNA配列、このような配列を単離する方法、およ
びヒトおよび動物の医療用途におけるこのような配列の使用に関する。
発明の背景
M.tuberculosis、M.bovis、およびM.africanumを包含するM.tuberculosis
コンプレックスのメンバーによって引き起こされる結核は、いまだに世界中で単
独の感染性疾患によるヒトの死亡の最大の原因であり、そして発展途上国におけ
る回避し得る4つの成人死亡のうちの1つの原因である。加えて、1990年には、
合衆国において、結核の発生が10%増加した。さらに、M.bovisは広範囲の動物
に結核を引き起こし、そして動物の損害および動物産業における経済的損失の主
要原因である。
薬剤感受性のM.tuberculosisコンプレックスの菌株での感染は、イソニアジ
ド(イソニコチン酸ヒドラジド、INH)、リファンピシン、およびピラジナミド
(pyrazinamide)を包含する抗生物質の組合せによって効果的に治癒され得る。
INHがM.tuberculosisに対して活性であることは1952年にはじめて報告され、そ
して特にM.tuberculosisおよびM.bovisに対して活性である。しかし、それ以
来INHに耐性の変異体が現れ、そして今日では、このような変異体はある合衆国
の都市における臨床的なM.tuberculosisの単離体の26%にものぼる。
INH耐性株のいくつかは、カタラーゼ活性の欠如に関連し、そしてカタラーゼ
ペルオキシダーゼ遺伝子(katG)の欠失は、あるM.tuberculosis単離体におけるI
NH耐性と相関関係がある。さらに、INH耐性であるM.smegmatisおよびM.tuberc ul
osis
への野生型(wt)M.tuberculosis katG遺伝子の転移は、INH感受性を与え、
このことは、INH感受性にはカタラーゼペルオキシダーゼ活性が必要とされるこ
とを示唆している。しかし、ある研究では、INH耐性の単離体のうち10〜25%の
みがカタラーゼ陰性のようであり、このことはINH耐性が他の因子に起因し得る
ことを示している。
薬剤耐性は、薬剤の結合を低減させる薬剤標的における変異、または標的の生
成を増加させる変異を包含する多くの機構によって引き起こされ得る。INHがミ
コバクテリアを阻害する機構、およびその作用の正確な標的は知られていない。
生化学的証拠は、INHおよびエチオナミド(ethionamide)(ETH、INHの構造的アナ
ログ)の両者がミコバクテリアにおけるミコール酸の生合成をブロックすること
を示唆している。INHがミコバクテリアの細胞非含有抽出物中でのミコール酸の
生合成を阻害することが見いだされているが、標的タンパク質は同定されていな
い。加えて、ある場合には、低レベルのINH耐性はカタラーゼ活性の欠如との相
関がなく、ETH耐性の共獲得(Coaquisition)と相関があり、このことはこれらの
2種の薬剤が共通の標的を共有し得ることを示唆している。
このような高い割合のM.tuberculosisコンプレックス株がINHに耐性であるの
で、その作用標的を同定すること、そしてこのことによりINH耐性株を同定する
ための迅速な方法、およびこれらに関連する疾患の予防および/または治療のた
めの個体の処置方法に対する高い要求がある。
発明の要旨
本発明は、酵素(InhA)をコードする遺伝子inhA(ps5ともいう)の発見に基
づく。InhAは、ミコバクテリア中のイソニアジドの作用の標的である。inhA遺伝
子内の変異によりイソニアジド耐性が生じる。従って、本発明は、ミコバクテリ
ア属のメンバー(特に、M.tuberculosis、M.africanum、およびM.bovisを含
むM.tuberculosisコンプレックス;M.avium、M.intracellulare、M.scroful aceum
、およびM.paratuberculosisを含むM.aviumコンプレックス;M.smegmat is
のメンバー)中でINHおよびその構造的アナログへの耐性に関連する、単離さ
れたおよび組換えポリヌクレオチド配列ならびにそれにコードされるポリペプチ
ドを提供する。INH感受性と関連する対立遺伝子部分もまた提供される。本発明
のポリヌクレオチドは多くの用途を有する。例えば、これらは、イソニアジドタ
イプの抗生物質に対するM.tuberculosisコンプレックスの種々の株の感受性を
評価することに、イソニアジド耐性に関連するポリペプチドの発現を抑制するた
めのデコイおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドとして、およびそれらにコー
ドされるポリペプチドの発現について有用である。ポリヌクレオチドでコードさ
れるポリペプチドおよび/またはそれらに対する抗体はまた、INH-耐性株の検出
についてのイムノアッセイに、INH-タイプの抗生物質が結核に対して有効である
かどうかの決定に、およびこれらの株での感染につ
いての個体の処置に使用され得る。
従って、本発明の実施態様は以下を包含する。
イソアニジドに対する作用の標的である酵素をコードする、単離された野生型
遺伝子。
イソニアジド(INH)に対する作用の標的であるポリペプチド(InhA)をコー
ドする、単離された野生型遺伝子。これらの野生型遺伝子はまた、M.tuberculo sis
、M.avium、M.smegmatis、およびM.bovis由来の遺伝子を含む。
上記変異遺伝子がINH-耐性に関連している、InhAをコードする単離された変異
遺伝子。
InhAポリペプチドまたはフラグメントまたはその変異体をコードする単離され
たポリヌクレオチド。これらのポリヌクレオチドは、InhAポリペプチドまたはフ
ラグメントまたはその変異体をコードするセグメントに作動可能に連結される制
御配列を含む組換え発現ベクターを含む。
上記のいずれかのポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
以下の工程を包含する、ミコバクテリアコンプレックスのメンバーにより引き
起こされる感染について個体を処置する方法:
(a)感染している種のinhAオペロン由来のmRNA活性を阻害し得るポリヌクレ
オチドおよび適切な賦形剤を含む組成物を提供する工程;および
(b)該組成物の薬学的有効量を該個体に投与する工程。
上記ポリヌクレオチドの投与様式が、経口、経腸、皮下、
腹腔内、または静脈内である、上記の方法。
以下の工程を包含する、生物学的試料中のミコバクテリア株のINHに対する感
受性を評価する方法:
(a)該生物学的試料由来のミコバクテリアDNAを提供する工程;
(b)inhAオペロンの領域を増幅する工程;および
(c)変異が該生物学的試料由来のinhAオペロン内に存在するかどうかを決定
する工程であって、該変異の存在が、該ミコバクテリア株がINHに耐性であるこ
とを示す、工程。
上記増幅がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による、上記の方法。
さらに、上記ミコバクテリアから野生型INH-感受性inhAオペロンの同等部分を
提供する工程をさらに包含し、そして変異が上記生物学的試料中に存在するかど
うかの決定が該野生型inhAオペロンとの比較による、上記の方法。
変異が存在するかどうかを決定する工程が、一本鎖コンホメーション多形性分
析により行われる、上記の方法。
以下の工程を包含する、薬剤がミコバクテリア感染に対して有効であるかどう
かを決定する方法:
(a)単離されたInhAを提供する工程;
(b)候補の薬剤を提供する工程;
(c)該候補の薬剤の存在下または非存在下でミコール酸生合成の基質とInhA
を混合する工程;および
(d)もしあれば、該薬剤の存在により引き起こされるミ
コール酸の生合成の阻害を測定する工程。
精製されたInhAをミコール酸の生合成に必要な基質に添加する工程を包含する
、結核特異的なミコール酸を製造する方法。
以下の工程を包含する、InhA活性を阻害する化合物を製造する方法:
a.精製されたInhAを提供する工程;
b.該InhAの分子構造を決定する工程;
c.INHと同様の分子構造を有する化合物を生成する工程;
および
d.該化合物がInhAの生化学的活性を阻害することを決定する工程。
単離されたInhAポリペプチドまたはフラグメントまたはその変異体。
BCG、M.tuberculosis、およびM.bovisからなる群から選択される弱毒化変異
体を含む、組換えミコバクテリアワクチンであって、該変異体が変異したinhA遺
伝子を含む宿主細胞である、ワクチン。
図面の簡単な説明
図1は、M.smegmatis mc2 155中のINHおよびETHへの耐性を与える異なるミコ
バクテリア由来のinhA遺伝子を挙げる表である。
図2は、シート2Aから2Fからなり、INHへの耐性を与え
るM.bovis由来とINHへの感受性を与えるM.tuberculosisおよびM.smegmatis由
来とのDNA配列のコーディング鎖の比較を示す。INH耐性を引き起こすmc2651での
変異を、矢印により示す。
図3は、イソニアジド耐性表現型がinhAオープンリーディングフレームにより
与えられることを証明するために用いられるサブクローニング法の線図である。
図4は、シート4Aおよび4Bからなり、M.tuberculosis H37R、M.bovis、M.bovis
NZ、M.smegmatis mc2155、およびM.smegmatis mc2651由来のInhAタ
ンパク質のアミノ酸配列の列を、S.typhimuriumおよびE.coli由来のEnvMタン
パク質とともに示す。
図5は、ミコール酸生合成の無細胞アッセイの結果、およびINHの効果へのinh A
遺伝子の挿入の効果を示す棒グラフである。
図6は、mc2651 inhAポリヌクレオチドでの点変異によりINH耐性が生じること
を証明する対立遺伝子交換実験、およびその実験から得られる結果の線図である
。
図7は、シート7A−1から7A−2、7B−1から7B−3、および7C−
1から7C−2からなり、M.smegmatis inhA遺伝子を含む核酸配列を示す。
図8は、シート8A、8B、および8Cからなり、M.tuberculosis inhA遺伝
子を含む核酸配列を示す。
図9は、シート9A、9B、9C、および9Dからなり、pS5
についての核酸配列およびそれに含まれる2つの大きなオープンリーディン
グフレーム由来のアミノ酸配列を示す。
図10は、pS5オペロンの核酸残基1256〜2062(ORF2)によりコードされるフ
ラグメントのアミノ酸配列を示す。
図11は、pS5オペロンの核酸残基494〜1234(ORF1)によりコードされるアミ
ノ酸配列を示す。
図12は、シート12Aから12Cからなり、M.bovis pS5オペロンのアミノ
酸配列を示す。
図13は、ゲノムのいくつかの顕著な特徴を示すpYUB18の制限酵素マップを示
す。
発明の詳細な説明
本発明は、M.tuberculosisコンプレックスのメンバーにおけるINHおよびETH
の標的であるポリペプチドをコードする遺伝子であるinhAの発見に由来する。こ
の遺伝子の変異によって、ミコバクテリアがINH耐性およびETH耐性になる。この
遺伝子およびこの遺伝子内での変異が、遺伝学的方法を用いて同定された。M.s megmatis
およびM.bovisのINH耐性変異体由来のシャトルコスミドベクター中に
ゲノムライブラリーが構築された。このライブラリーの野生型(すなわち、INH
感受性)M.smegmatis株への転移は、一貫してINH耐性を与えるクローンの同定
を可能とした(図1の表中に示す)。野生型(M.smegmatis、M.tuberculosis
、M.bovis、M.bovis BCG、およびM.aviumのINH-ETH感受性の株)由来のクロ
スハイブリダイ
ズしたDNAフラグメントを含むコスミドの形質転換によって、INH-ETH耐性を与え
るクローンが得られた。これらの結果は、マルチコピープラスミド上における推
定標的遺伝子であるinhAの過剰発現(overexpression)がINH耐性表現型を与える
ことを示唆した。このことによって、inhAの遺伝子産物であるInhAが、M.tuber culosis
コンプレックスのメンバーにおけるINHについての作用の標的であるとい
う結論が導かれる。さらに、この結果は、INH耐性を与えるM.smegmatisコスミ
ド由来の3kb BamHI DNAフラグメントが、テストされた11種のミコバクテリア種
の全てに強くハイブリダイズすることを示し、inhA遺伝子がミコバクテリアにお
いて高度に保存されていることを証明している。
M.smegmatisおよびM.tuberculosisにINH感受性を与えるDNAフラグメント、
ならびに変異体INH耐性M.smegmatisおよびM.bovis株から単離されたDNAフラグ
メントを、DNA配列決定に供した。これらのDNA配列を図2に示す。図2は、M.b ovis
由来のINH耐性ポリヌクレオチド、ならびにM.tuberculosisおよびM.smegm atis
のINH感受性ポリヌクレオチドのDNA配列を示す。配列分析によって、29kDお
よび32kDのタンパク質をコードする2つのORFが明らかになった。M.smegmatis
フラグメントのサブクローニング分析は、29kDタンパク質をコードするORFがINH
耐性表現型の原因となることを示し、これをinhA遺伝子と命名した。M.bovisお
よびM.tuberculosisゲノムにおいて、inhA遺伝子は、ORF1と同じ転写制御エレ
メント
(プロモーターを包含する)の支配を受けるように位置するようであり、他方、M.smegmatis
ゲノムにおいてはinhA遺伝子はそれ自身のプロモーターを有する。
M.tuberculosisおよびM.smegmatis inhA遺伝子産物は、S.typhimuriumのen vM
遺伝子産物に対し38%および40%の相同性を示す。加えて、M.smegmatis、M .tuberculosis
、およびM.bovisゲノムにおいて、inhA ORFの前に他のORFがあ
り、これはアセチルCoAレダクターゼと40%の同一性を共有する。inhA ORFおよ
びORF1の脂質生合成遺伝子との類似性は、INHがミコール酸の生合成に関連する
酵素を阻害するという仮説に一致する。
M.smegmatis(図4参照)およびM.bovisの変異体INH耐性株および野生型INH
感受性株由来のinhAの配列分析および比較によって、単一の塩基対の違いが存在
し、その結果、inhAタンパク質の94位のセリンのアラニンによるアミノ酸置換が
生じることが明らかになった(図4参照)。実施例に示すように、この違いがIn
h耐性表現型を生じさせた。
InhAをコードするM.smegmatis、M.tuberculosis、およびM.bovis由来のポ
リヌクレオチドが同定され、単離され、クローニングされ、配列決定され、そし
て特徴付けられた。これらのポリヌクレオチドの核酸配列を、各々、図7、8、
および9に示す。図9はまた、このポリヌクレオチドにコードされたアミノ酸を
示す。
M.tuberculosis inhAおよびM.bovis inhAについての配列
の比較により、INH感受性M.tuberculosisおよびINH感受性M.bovis由来のinhA
遺伝子が同一であることが示される。INH耐性を与えるSerのAlaへの変異がM.sm egmatis
およびM.bovis表現型において保存されるとすると、他のINH耐性単離体
がinhAオペロンにおける変異に起因することが見いだされると予期され得る。例
えば、INH耐性はまた、inhのコーディング領域におけるミスセンス変異、または
InhAの過剰発現を引き起こす変異(例えば、オペロンの調節領域における変異、
および/または過剰発現を起こし得る重複)に起因し得る。
INH耐性を与えるミコバクテリアコンプレックスのinhA遺伝子およびオペロン
の発見によって、これらの微生物、特にINH耐性株での感染により生じる病原状
態(pathogenic state)の診断および処置に有用な組成物および方法の調製および
使用が可能となる。
本発明の実施には、特に示さない限り、分子生物学、微生物学、組換えDNA、
および免疫学の従来の技術が使用され、これらは当該分野の技術の範囲である。
これらの技術は文献に詳細に説明されている。例えば、以下を参照:
本明細書において、用語「イソニアジドについての作用の標的」とは、ミコバ
クテリア(好ましくはミコバクテリアコンプレックスのメンバーである)のinhA
オペロンにコードされるポリペプチドであるInhAを意味する。
本明細書において、用語「inhA遺伝子」とは、ミコバクテリアに存在するポリ
ペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味し、ここでこのポリペプチドは、M.tuberculosis
、M.bovis、またはM.smegmatisのInhAタンパク質と実質的なア
ミノ酸相同性および等価な機能を有する。これらのInhAタンパク質の変異体(var
iant)のアミノ酸配列を図4に示す。この文脈において、実質的なアミノ酸相同
性とは、任意の所定のポリペプチドに対する、少なくとも約60%の相同性、一般
的には少なくとも約70%の相同性、さらにより一般的には少な
くとも約80%の相同性、そしてときどきは少なくとも約90%の相同性を意味する
。
本明細書において、用語「ポリヌクレオチド」とは、任意の長さのポリマー形
態のヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれ
か)を意味する。この用語は分子の一次構造のみを意味する。従って、この用語
は二本鎖および一本鎖のDNAおよびRNAを包含する。この用語はまた、公知のタイ
プの改変、例えば、当業者に公知の標識(例えば、Sambrookら)、メチル化、「
キャップ」、1つまたはそれより多い天然由来のヌクレオチドのアナログによる
置換、ヌクレオチド間(internucleotide)の改変(例えば、非荷電の結合(例え
ば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメー
トなど)によるもの、ペンダント部分、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレア
ーゼ、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)を含むもの、
インターカレーター(inercalator)(例えば、アクリジン、プソラレンなど)に
よるもの、キレート剤(例えば、金属、放射活性金属、ホウ素、酸化性金属など
)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、改変結合(例えば、α-アノマー性核
酸など)によるもの)を包含し、同様にポリヌクレオチドの非改変形態を包含す
る。
本発明は、実施態様として、ミコバクテリアにおけるイソニアジド(INH)耐
性に関連するポリペプチドをコードする配列を含む、単離されたポリヌクレオチ
ド、またはその活性フ
ラグメントを包含する。これらの単離されたポリヌクレオチドは、約50%未満、
好ましくは約70%未満、およびより好ましくは約90%未満の染色体遺伝物質(こ
れはポリペプチドをコードする配列と、通常、天然において関連する)を含む。
イソニアジド耐性関連ポリペプチドをコードする配列「から本質的になる」単離
されたポリヌクレオチドは、ミコバクテリア染色体由来の他のポリペプチドをコ
ードする他の配列を欠く。
本明細書において、「イソニアジド」(「INH」)とは、イソニアジド、およ
びそのアナログ(これはINHが阻害するのと同じポリペプチドの活性を阻害する
ことによってミコバクテリアの複製を阻害する、例えばエトナミド(ethonamido)
(ETH))を意味する。
本発明はまた、実施態様として、ミコバクテリアについてのinhA遺伝子産物を
コードする領域を含む組換えポリヌクレオチドを包含する。用語「組換えポリヌ
クレオチド」とは、本明細書においては、ゲノム、cDNA、半合成、または合成起
源のポリヌクレオチドを意図する。これは、その起源または操作のために、(1)
天然において関連するポリヌクレオチドの全部または一部と関連しない;または
(2)天然において結合するポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドと結合する
;または(3)天然では生じない。
ミコバクテリアのInhAあるいはその変異体または活性フラグメントをコードす
る配列を含む精製または組換えポリヌク
レオチドは、本明細書において提供されるポリヌクレオチド配列を用いて、当業
者に公知の任意の技術によって調製され得る。例えば、これらは、天然源由来の
ポリヌクレオチドの単離によって、または化学合成によって、または組換えDNA
技術によって調製され得る。
InhAをコードする配列がミコバクテリアにおけるイソニアジド耐性または感受
性に関連するポリペプチドをコードすること、およびこの配列の対立遺伝子変異
(これらのいくつかは図に示されている)が本明細書において予期されることが
意図される。用語「ポリペプチド」は、アミノ酸のポリマーを意味し、そして特
定の長さの産物を意味しない。従って、ペプチド、オリゴペプチド、およびタン
パク質は、ポリペプチドの定義の範囲内に包含される。この用語はまた、ポリペ
プチドの発現後の改変(例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など)を
意味しないが排除しない。この定義内には、例えば、1つまたはそれより多いア
ミノ酸のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などを包含する)を含むポリペプチ
ド、置換された結合を有するポリペプチド、ならびに天然に生じるものおよび非
天然に生じるものの両方の、当業者に公知の改変が包含される。
InhAあるいはその変異体またはフラグメントをコードする配列を含むクローニ
ングベクターおよび発現ベクターもまた、本発明の範囲内であることが意図され
る。適切なクローニングベクターは、標準的技術に従って構築され得、あるいは
当
該分野で入手可能な多くのクローニングベクターから選択され得る。選択される
クローニングベクターは使用しようとする宿主細胞に応じて変化し得るが、有用
なクローニングベクターは一般に、自己複製能力を有し、制限エンドヌクレアー
ゼについて単一の標的を有し得、そして容易に選択可能なマーカー(例えば、抗
生物質耐性または感受性マーカー)のための遺伝子を有し得る。適切な例として
は、プラスミドおよび細菌性ウイルス、例えば、PUC18、mp18、mp19、PBR322、p
MB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、およびシャトルベクター(例えば、pSA3
およびpAT28)が包含される。好ましいベクターとしては、pBluescript IIks (S
tratagene)、およびpYUB18が包含される。
発現ベクターは、一般に、適切な転写および翻訳調節エレメントに作動可能に
連結するポリペプチドをコードする、複製可能なポリヌクレオチド構築物である
。通常、発現ベクターに含まれる調節エレメントの例は、プロモーター、エンハ
ンサー、リボソーム結合部位、および転写および翻訳開始および終止配列である
。InhAまたは活性フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクタ
ーにおいて使用される調節エレメントは、発現に用いられる宿主細胞中で機能性
である。調節配列が、inhAオペロン由来であり得ることもまた意図される。従っ
て、プロモーターまたはターミネーター配列は、コーディング配列に相同(すな
わち、ミコバクテリア由来)であり得る。
本発明はまた、ミコバクテリアのInhAポリペプチドをコードする配列を含む、
上記の任意のポリヌクレオチドを含む、組換え宿主細胞を包含する。ポリヌクレ
オチドは、当該分野で公知の任意の方法によって宿主細胞に挿入され得る。本明
細書において、「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞株」、「
細胞培養物」、および、単細胞の実体(unicelllular entities)として培養され
る微生物またはより高等真核細胞を意味する他のこのような用語は、組換えベク
ターまたは他のトランスファーDNAのための受容体として使用され得、あるいは
使用されている細胞を意味し、そして形質転換された元の細胞の子孫を包含する
。天然、偶然、または意図的なの変異のため、単一の親細胞の子孫が、その形態
において、あるいはゲノムまたは全DNA相補物(complement)において、元の親と
同じである必要はないことが理解される。使用し得る宿主としては、原核細胞(
例えば、E.coli、ミコバクテリアなどの細菌細胞)および真核細胞(例えば、
真菌細胞、昆虫細胞、動物細胞、および植物細胞など)が包含される。原核細胞
が一般に好ましく、そしてE.coliおよびM.smegmatisが特に適切である。後者
においては、mc2155が特に好ましい。
「形質転換」とは、本明細書においては、外因性のポリヌクレオチドを宿主細
胞に挿入することを意味し、挿入のために用いられる方法、例えば、直接取り込
み、トランスダクション、f-交配(mating)、またはエレクトロポレーションは問
わない。外因性ポリヌクレオチドは、非組込み(non-integta
ted) ベクター、例えば、プラスミドとして維持され得、あるいは宿主細胞ゲノ
ム中に組み込まれ得る。
InhAをコードする配列を含むポリヌクレオチドは、生物学的試料中のINH耐性
形態のミコバクテリアの検出において使用される。本明細書において、「生物学
的試料」とは、個体から単離された組織または体液の試料を意味し、例えば、血
漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚、呼吸管、腸管、および尿生殖管からの外部
切片(section)、涙、唾液、乳汁、血液細胞、腫瘍、器官、ならびにインビトロ
の細胞培養構成要素(細胞培養培地中の細胞増殖から得られた馴化培地、推定感
染細胞、組換え細胞、および細胞成分を包含するが、これらに限定されない)が
包含されるが、これらに限定されない。本明細書において、用語「臨床試料」と
は、「生物学的試料」と同義である。
用語「個体」とは、本明細書において、脊椎動物、特に哺乳類または鳥類の種
のメンバーを意味し、そして家畜、競技用動物(sports animal)、およびヒトを
含む霊長類を包含するがこれらに限定されない。
InhAをコードする単離されたポリヌクレオチドの開示された部分の使用を基礎
として、約8またはそれより多いヌクレオチドのオリゴマーを、組換えポリヌク
レオチドからの切り出し、または合成のいずれかによって調製し得、これはプラ
スミド中のミコバクテリア配列とハイブリダイズし、そしてINH耐性およびINH感
受性のミコバクテリアの同定に有用であ
る。このプローブは、ハイブリダイゼーションによって、InhAをコードする配列
を検出することが可能な長さである。6〜8のヌクレオチドは使用可能な長さで
あり得るが、10〜12のヌクレオチドが好ましく、そして約20のヌクレオチドが、
最適と思われる。これらのプローブは、自動オリゴヌクレオチド合成法を包含す
る日常的方法を用いて調製され得る。プローブとして使用するためには、完全な
相補性(complementarity)が所望されるが、フラグメントの長さを増加させるこ
とは不必要であり得る。
従って、inhAオペロンの核酸配列の全体または部分を含むポリヌクレオチド、
特にinhA遺伝子が、INH耐性に関連するポリヌクレオチドをコードする核酸を同
定するためのプローブとして使用され得る。このプローブは、例えば放射活性ア
イソトープによって標識され得る。通常のアイソトープとしては、例えば、32P
および33Pが包含される。このプローブは、INH耐性に関連する遺伝エレメントに
ハイブリダイズ可能である。好ましくは、このプローブは、INH耐性遺伝子をコ
ードする配列に特異的である。例として、このプローブは図12に示される全ヌ
クレオチド配列であり得る。しかし、より短いプローブが好ましい。
このようなプローブを診断に使用するために、分析される生物学的試料(例え
ば、血液または血清)は、所望ならば、処理されて、そこに含まれる核酸を抽出
する。試料から得られた核酸は、ゲル電気泳動または他のサイズ分離技術に供し
得;あるいは、核酸試料は、サイズ分離することなしにドットブロットされ得る
。プローブは、通常、標識化される。適切な標識、およびプローブを標識する方
法は、当該分野で公知であり、そして例えば、ニックトランスレーションまたは
キナーゼ処理(kinasing)により取り込まれる放射性標識、ビオチン、蛍光プロー
ブ、および化学発光プローブを包含する。次いで、試料から抽出された核酸は、
適切な緊縮のハイブリッド形成条件下で、標識プローブで処理される。このプロ
ーブは、標的とされている対立遺伝子形態のポリヌクレオチドに対して、完全に
相補とされ得る。この目的のために、高い緊縮条件が、擬陽性を防ぐために、通
常望ましい。ハイブリッド形成時の緊縮は、ハイブリッド形成の際および洗浄手
順の際の多くの因子(温度、イオン強度、時間の長さ、およびホルムアミドの濃
度)によって決定される。これらの因子は、例えば、Maniatis,T.(1982)に概
説されている。
ハイブリッド形成アッセイにおいて増幅技術を用いることが所望され得る。こ
のような技術は、当該分野において公知であり、そして例えば、Saikiら(1986)
、Mullisの米国特許第4,683,195号、およびMullisらの米国特許第4,683,202号に
よって記載されているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を包含する。この技術は
、例えば、一本鎖コンホメーション多形性分析において他の技術と共に用いられ
得る(下記の実施例参照)。
プローブは、診断キットにパッケージされ得る。診断キットは、プローブDNA
(このプローブDNAは標識化され得る)を
含み;あるいは、このプローブDNAは標識化されてなくてもよく、そして標識化
するための成分がキット中の別の容器に含まれ得る。このキットはまた、他の適
切にパッケージされた特定のハイブリッド形成プロトコルに必要な試薬および材
料(例えば、標準物質、ならびに試験を実施するための指示書)を含み得る。キ
ットがPCR技術を包含するアッセイシステムに用いられる場合には、PCR反応のた
めのプライマーもまた含み得る。
inhA遺伝子配列およびそこにコードされるポリペプチドもまた、ミコバクテリ
ア、特にミコバクテリアコンプレックスのメンバー、そしてより特別にはM.tub erculosis
およびM.bovisに対する薬剤のためのスクリーニングに用いられ得る
。例えば、inhAの対立遺伝子形態でコードされるINH耐性およびINH感受性ポリペ
プチドを発現するために用いられ得る。インビトロアッセイにおいてこれらポリ
ペプチドを利用して、ミコール酸生合成の際の候補薬剤の効果をモニターし得る
。ミコール酸生合成を阻害する薬剤は、ミコバクテリア病の治療の候補である。
このタイプの系における効果について試験され得る薬剤は、INH、ETH、リファン
ピシン、ストレプトマイシン、エタンブトール、シプロフロキサシン、ノボビオ
シン、およびシアン化物を含む。
inhAオペロン配列もまた、ミコバクテリア感染(M.tuberculosis、M.ayium
、M.smegmatis、およびM.bovisによって起こされるものも包含する)の処置に
用いられ得るポリヌク
レオチドを設計するために用いられ得る。InhA遺伝子を利用してミコバクテリア
感染を処置する1つの方法は、inhAオペロンからのMRNAの転写または翻訳を阻害
するのに用いられ得るアンチセンスポリヌクレオチドまたはトリプレックス形成
ポリヌクレオチド(例えば、アンチセンスポリヌクレオチド、トリプレックス形
成ポリヌクレオチド、デコイ(decoy)、およびリボザイム)を提供することによ
るものがある。従って、これらのタイプのポリヌクレオチドもまた、本発明の範
囲内に含まれる。これらのポリヌクレオチドは、当該分野において公知の種々の
技術(化学合成および組換え技術を包含する)によって調製され得る。調製の後
、次いでこれらのポリヌクレオチドは、単独または他の組成物との組合せのいず
れかで、投与され得、結核を包含するミコバクテリア感染を処置し得る。これら
のポリヌクレオチドを含む組成物はまた、適切な賦形剤を含み得る。
inhAの配列もまた、INHについての臨床試料におけるミコバクテリアの種々の
株、そして特にM.tuberculosisまたはM.boyisの感受率評価するのに用いられ
得る。この感受率比較は、INH感受性である野生型inhA対立遺伝子との比較によ
る、変異対立遺伝子の検出に基づいている。このタイプの評価を行う手順は、当
業者にとって容易に明らかである。例えば、この評価を行う1つの手順は、実施
例に記載されており、そして細菌の染色体DNAの単離、inhA領域(本明細書中に示
されているinhA配列に基づく)に特異的なプライマーを用いるPCRによ
るinhA領域の増幅、ならびに一本鎖コンホメーション多形性分析の方法による、
変異が単離DNAに存在するかどうかの決定に基づいている。
さらに、InhAポリペプチド(これは酵素であり得る)の活性をブロックする化
合物は、inhAの配列情報を利用して調製され得る。これは、InhAを過度に発現さ
せ(overexpressing)、ポリペプチドを精製し、次いでその分子構造を得るために
、精製されたInhAポリペプチドのX線結晶解析をすることによって行われる。次
に、該ポリペプチドの全てまたは一部分について同様の分子構造を有する化合物
が、作り出される。次いで、この化合物は、上記ポリペプチドと組み合わされ、
そしてInhAポリペプチドの生化学的活性をブロックするようにポリペプチドに結
合される。
inhAポリヌクレオチドはまた、生弱毒化または死結核ワクチンを生成または改
善するために用いられ得る。例えば、典型的に変異inhAにより与えられるINH耐
性を除去するために、変異inhAを含む結核株が、ワクチン形態で投与され得る。
さらに、変異inhA遺伝子は、BCGまたはM.tuberculosisワクチンに添加され得、
弱毒化された変異結核ワクチンが提供され得る。これらのワクチンは、結核、AI
DS、ハンセン病、ポリオ、マラリア、および破傷風を包含する広範な病気を処置
しそして防止するために用いられ得る。
本発明のポリペプチドは、inhAの対立遺伝子変異体としてコードされるものを
包含し、これらのいくつかは本明細書の
図に示されており、そして精製された形態または組換え形態である。これらのポ
リペプチドは、ORF中にコードされるポリペプチド全体のフラグメント、特に、
ミコール酸生合成において活性を示すフラグメントを含む。さらに、本発明のポ
リペプチドは、1つまたはそれ以上のアミノ酸の挿入、置換、または欠失により
天然のアミノ酸配列と異なるInhAの変異体を包含する。これらの変異体は、化学
的に、またはInhAをコードするポリヌクレオチド配列の改変により当該分野にお
いて公知の技術を用いて、例えば、プライマー使用位置特異的変異誘発(site-sp
ecific primer directed mutagenesis)によって調製され得る。これらのポリペ
プチドは、例えば、凍結融解抽出、塩分別、カラムクロマトグラフィー、アフィ
ニティークロマトグラフィーなどを包含する当該分野において公知の任意の方法
によって精製され得る。
本発明のポリペプチドは、ミコバクテリア感染の処置のための治療剤として使
用を見い出し得ている。本明細書で使用される「処置」は、予防および/または
治療をいう。
InhAポリペプチドは、独立したもの(discrete entity)またはより大きなポリ
ペプチドに取り込まれてものとして調製され得、そして本明細書に記載されてい
るような使用が見いだされ得る。InhAのエピトープの免疫原性もまた、粒子形成
タンパク質(例えば、B型肝炎表面抗原に関連したタンパク質)と融合またはア
センブルされる哺乳類系または酵母系において、InhAポリペプチドを調製するこ
とによって高められ得る。
例えば、米国特許第4,722,840号を参照のこと。ワクチンは、InhA由来の1つま
たはそれ以上の免疫原性ポリペプチドから調製され得る。
活性成分として免疫原ポリペプチドを含有するワクチンの調製は、当業者に公
知である。代表的には、このようなワクチンは、液体状の溶液または懸濁液のい
ずれかのような、注射可能物として調製される;固形態物はまた、注射の前に、
適切な溶液または懸濁液で、液体に調製され得る。調製物はまた、乳化され得る
か、またはリポソームにカプセル化されたタンパク質であり得る。活性免疫原成
分は、通常、薬学的に受容可能であり活性成分と適合する賦形剤と混合される。
適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エ
タノールなど、およびその組合せである。さらに、所望する場合、ワクチンは、
最小量の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤、および/または
ワクチンの効果を促進するアジュバントを含有し得る。効果的であり得るアジュ
バントの例は、水酸化アルミニウム、N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イ
ソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタ
ミン(CGP 11637、nor-MDPと命名された)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-
イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'-2'−ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒド
ロキシホスホリロキシ)-エチルアミン(CGP 19835A、MTP-PEと命名された)、およ
びRIBIを包含するがこれに限定されず、それは、細菌、モノホスホリルリ
ピドA、トレハロースジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)から抽出さ
れた3つの構成成分を2%スクアレン/Tween80乳剤中に含有する。アジュバン
トの効果は、種々のワクチン(これもまたアジュバントを含有する)中の免疫原ポ
リペプチドの投与により生じるInhA抗原配列を含む免疫原ポリペプチドに対する
抗体の量の測定により決定され得る。
ワクチンは、従来のように、注射、例えば、皮下または筋肉内のいずれかによ
り非経口的に投与される。他の様式の投与に適切な特別な処方物は、坐剤を含み
、そしていくつかの場合では、経口処方物またはエアゾールとして噴霧に適切な
処方物を含む。坐剤については、従来のバインダーおよびキャリアは、例えば、
ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含み得る;このような坐剤は
、0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で活性成分を含有する混合物から
形成され得る。経口処方物は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクト
ース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロー
ス、炭酸マグネシウムなどの通常用いられる賦形物を含有し得る。これらの組成
物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性処方物、または粉末の形態
をとり、そして10%〜95%の活性成分、好ましくは25%〜70%の活性成分を含有
する。
タンパク質はまた、中性または塩形態でワクチンに処方され得る。薬学的に受
容可能な塩は、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基で形成される)を含み、そして
それらは例えば、塩酸
またはリン酸のような無機酸、もしくは酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸等
のような有機酸で形成される。遊離カルボキシル基で形成された塩はまた、例え
ば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウ
ム、または水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメ
チルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような
有機塩基由来であり得る。
ワクチンは、投薬処方物と適合する方法、および予防および/または治療に効
果的であり得るような量で投与される。投与されるべき量は、一般に、1投与量
当たり抗原が5マイクログラム〜250マイクログラムの範囲であり、処置される
べき被験者、被験者の免疫系の抗体合成の能力、および所望の防御程度に依存す
る。投与に必要な活性成分の正確な量は、医師の判断に依存し得、そして各被験
者に特有であり得る。
ワクチンは、単一の投与量スケジュールで、または好ましくは複数の投与量の
スケジュールで与えられ得る。複数の投与量のスケジュールは、ワクチン接種の
最初のコースが、1〜10回の別々な投与であり得、次いで、その後、他の投与量
で、免疫応答の維持および/または再強化するのに必要な時間間隔で与えられる
。例えば、第2の投与量での投与は、1〜4カ月間であり、そして必要な場合に
は、数ヶ月後にさらにそれに続く投与量で投与が行なわれる。投与量形態はまた
、少なくとも部分的には、個体の必要性により決定され得、そ
して医師の判断に依存し得る。
さらに、免疫InhA抗原を含有するワクチンは、他の免疫調節剤、例えば、免疫
グロブリン、および抗生物質と組み合わせて投与され得る。
InhA抗原は、抗体の調製に用いられ得る。上記のように調製した免疫原ポリペ
プチドは、ポリクローナルおよびモノクローナルを含む抗体の生産のために用い
られる。ポリクローナル抗体が所望される場合、選択した哺乳動物(例えば、マ
ウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)は、InhAエピトープを有する免疫原ポリペプチ
ドで免疫化される。免疫化した動物由来の血清は、公知の手順により採取および
処理される。InhAエピトープに対するポリクローナル抗体を含む血清が、他の抗
原に対する抗体を含む場合、ポリクローナル抗体は、免疫アフィニティークロマ
トグラフィーにより精製され得る。ポリクローナル抗血清を生産し、そしてプロ
セッシングする技術は、当該分野で公知であり、例えば、MayerおよびWalker(19
87)を参照のこと。
InhAエピトープに対するモノクローナル抗体はまた、当業者により容易に生産
され得る。ハイブリドーマによるモノクローナル抗体の作製に関する一般的な方
法学は、周知である。抗体産生不死化細胞株は、細胞融合により、およびオンコ
ジーンDNAでのBリンパ球の直接的な形質転換、またはエプスタインバーウイル
スでのトランスフェクションのような他の技術でも作製され得る。以下を参照の
こと、M.Schreierら(19
80);Hammerlingら(1981);Kennettら(1980);以下も参照のこと、米国特許第4,
341,761号;第4,399,121号;第4,427,783号;第4,444,887号;第4,466,917号;
第4,472,500号;第4,491,632号;および第4,493,890号。InhAエピトープに対し
て生産したモノクローナル抗体のパネルは、種々のポリペプチド(すなわち、イ
ソタイプ、エピトープ親和性など)についてスクリーニングされ得る。
モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の両方のInhAエピトープに対す
る抗体は、特に診断で有用であり、そして中和性の抗体は受動免疫治療で有用で
あり得る。特に、モノクローナル抗体は、抗イディオタイプ抗体を生じるために
用いられ得る。
抗イディオタイプ抗体は、防御が所望されるものに対する感染性物質の抗原の
「内部イメージ(internal image)」を有する免疫グロブリンである。例えば、Ni
sonoff,A.ら(1981)およびDreesmanら(1985)を参照のこと。抗イディオタイプ抗
体を生じる技術は当該分野で公知である。例えば、Grzych(1985)、MacNamaraら(
1984)、およびUytdehaagら(1985)を参照のこと。これらの抗イディオタイプ抗体
はまた、ミコバクテリア感染の処置、ワクチン接種および/または診断、ならび
にInhA抗原の免疫原領域の解明に有用であり得る。
InhAポリペプチドおよび抗InhA抗体は、生物学的試料中のミコバクテリアに対
する抗体の存在、またはInhA抗原の存在、特にINH耐性InhAの存在を検出するた
めに、イムノアッセイで
有用である。イムノアッセイの設計は、多くのバリエーションで改変され、そし
て多くの形式が公知である。このイムノアッセイは、InhA由来の少なくとも1つ
のエピトープを用い得る。1つの実施態様では、イムノアッセイは、InhA由来の
エピトープの組合せを用いる。これらのエピトープは、同じまたは異なる細菌の
ポリペプチド由来であり得、そして別々の組換えまたは天然ポリペプチドに、ま
たは同じ組換えポリペプチドに一緒に存在し得る。イムノアッセイにおいては、
例えば、InhAエピトープに対するモノクローナル抗体、1つのミコバクテリア抗
原の、エピトープに対するモノクローナル抗体の組合せ、異なるミコバクテリア
抗原のエピトープに対するモノクローナル抗体、同じ抗原に対するポリクローナ
ル抗体、または異なる抗原に対するポリクローナル抗体が用いられ得る。プロト
コルは、例えば、競合、または直接的反応、またはサンドイッチ型アッセイに基
づき得る。プロトコルはまた、例えば、固体支持体を用い得、または免疫沈降に
よるものであり得る。ほとんどのアッセイは、標識した抗体またはポリペプチド
の使用を含み;標識は、酵素、蛍光、化学発光、放射活性、または染色分子を包
含し得る。プローブからのシグナルを増幅するアッセイもまた公知である;この
例は、ビオチンおよびアビジン、ならびにELISAアッセイのような酵素標識およ
び仲介されたイムノアッセイを利用するアッセイである。
代表的には、抗InhA抗体についてのイムノアッセイは、生
物学的試料のような、抗体を含むと疑われるテスト試料を選択し調製する工程、
次いで、抗原-抗体複合体が形成可能な条件下で抗原(すなわち、エピトープ含有
)InhAポリペプチドとともにインキュベートする工程、そして次いで、このよう
な複合体の形成を検出する工程を包含する。適切なインキュベーション条件は当
該分野で周知である。イムノアッセイは、限定されることなく、異種または等質
の形式であり、標準型または競合型であり得る。
異種形式では、ポリペプチドは、代表的には固体支持体に結合し、インキュベ
ート後のポリペプチドから試料の分離を容易にする。使用され得る固体支持体の
例は、ニトロセルロース(例えば、メンブレンまたはマイクロタイターウエル形
態で)、ポリ塩化ビニル(例えば、シートまたはマイクロタイターウエルで)、ポ
リスチレンラテックス(例えば、ビーズまたはマイクロタイタープレート、ポリ
フッ化ビニリジン(Immulonとして公知)、ジアゾ化紙、ナイロンメンブレン、活
性化ビーズ、およびプロテインAビーズである。例えば、DynatechImmulon1また
はImmulon2マイクロタイタープレートまたは0.25インチのポリスチレンビーズ(P
recision Plastic Ball)は、異種形式で使用され得る。抗原ポリペプチドを含む
固体支持体は、代表的には、テスト試料からそれを分離後、および結合抗体の検
出前に洗浄される。標準的および競合的形式の両方は、当該分野で公知である。
抗InhA抗体を含む形成された複合体(または競合アッセイの
場合、競合抗体の量)は、形式に依存して、任意の多くの公知の技術により検出
される。例えば、複合体中の非標識InhA抗体は、標識(例えば、酵素標識)と複合
された抗異種Igの複合体を用いて検出され得る。
InhAポリペプチドが分析物であるイムノアッセイでは、テスト試料、代表的に
は生物学的試料を、抗原-抗体複合体を形成し得る条件下で、抗InhA抗体ととも
にインキュベートする。試験の前に、推定の菌体成分を放出するために、生物学
的試料を処理することが所望され得る。種々の形式が使用され得る。例えば、「
サンドイッチアッセイ」が使用され得、このアッセイでは、固体支持体に結合し
た抗体をテスト試料とともにインキュベートし;洗浄し;被分析物に対する二次
標識抗体とともにインキュベートし、そして支持体を再度洗浄する。被分析物は
、二次抗体が支持体に結合するかどうかを決定することにより検出される。競合
形式では、異種または等質のいずれかであり得、テスト試料は、通常抗体ととも
にインキュベートされ、そして標識された競合抗原もまた、それに引き続いてま
たは同時にのいずれかでインキュベートされる。これらおよび他の形式は、当該
分野で周知である。
以下の実施例は、説明のために提供され、そして本発明の範囲を限定しない。
本開示に照らして、請求の範囲内の多くの実施態様は、当業者に明らかであり得
る。
実施例
実施例1
INH耐性M.bovis菌株の選択
M.bovisのINH耐性菌株を選択するために、M.bovisの病原性野生型ニュージ
ーランド菌株を、液体トゥイーンアルブミンブロス(TAB)および7H10ピルビン
酸塩寒天培養培地の組み合わせを用いて、四連続継代によってクローニングした
。M.bovisの1つのコロニーをTABに接種して、明らかに目視で成長がわかるま
で培養した。TABで適度に希釈した細菌懸濁液を、寒天培地にプレートして別個
のコロニーを得た。培養の後、1つのコロニーを取り出して、TABに接種し、こ
のクローニング手順を繰り返した。4回のクローニングを繰り返して、G4菌株が
得られた。INH耐性菌株は、GI菌株を様々な濃度のINHを含む液体TAB培地で成長
させることによって得られた。培養の後、最も高いINH濃度でよく成長した菌株
を、INH含有固体培地に接種し、培養して成長させた。1つのコロニーを取り出
して、INH含有TABに接種し、成長条件下で培養した。目視で成長が明白になった
時に、この培地をINHを含有する液体TAB培地として用いて接種し、接種された培
地を成長条件下でインキュベートした。この培養物の少量を、さらに高い様々な
濃度のINHを含有する液体TAB培地で再び成長させ、最も高いINH濃度でよく成長
した菌株から得たコロニーのクローニングを繰り返した。この選択手順を繰り返
して、イソニアジドに対する耐性を増加させたM.bovisの一連のクローンを得た
。
最後に選択された菌株であるG4/100は、100μg/mlのINHに耐性を示した。
実施例2
INH耐性菌株から調製したコスミドライブラリーからの
INH耐性クローンの単離
G4/100菌株からのコスミドライブラリーを、シャトルベクターpYUB18で調製し
た。プラスミドpYUB18は、選択可能なカナマイシン遺伝子とcos部位とを含有す
るマルチコピーE.coli−ミコバクテリアのシャトルコスミドである(J.T.Besl
ileら、J.Bacteriol.173,6991 (1991); S.B.Snapperら、Mol.Microbiol.4
:1911 (1990); W.R.Jacobsら、MethodsEnzymol.204:537 (1991))。このゲノ
ムのいくつかの重要な特徴を示すpYUB18の制限酵素地図を図13に示す。
このコスミドライブラリーを標準的な技術を用いて以下のように調製した。染
色体DNAをG4/100から精製し、Sau3A1で部分的に消化し;約30〜50kbの間のフラ
グメントを蔗糖密度勾配精製によって精製し、直鎖状にしたpYUB18に連結した。
こうして得られたコスミドを、市販のキット(Gigapack GoldStratagene)を製
造者の指示通りに用いてλファージにパッケージし、E.coliにトランスフェク
トし;約5000のコロニーを得た。このコロニーをプールし、標準的なプラスミド
調製技術を用いてプラスミドを増幅させた。
このコスミドライブラリーを、エレクトロポレーションによってM.smegmatis
菌株mc2155に形質転換した。形質転換細
胞を、カナマイシン含有培地で成長させることによって選択した。約1200のカナ
マイシン耐性クローンを、INH含有培地に移植した。4つのINH耐性クローンが同
定された。
実施例3
pS5の単離および配列決定
INH耐性を付与されたミコバクテリア遺伝物質を含有するプラスミドを得るた
めに、形質転換細胞からプラスミドを抽出した。M.smegmatisの培養物(5ml)
を、シクロセリン(cycloserine)とアンピシリンとで3時間インキュベートし
て、集菌した。細胞をペレット状にして0.25mlの40mM Tris酢酸、2mM EDTA、pH
7.9に再懸濁した。これに、0.5mlの溶解用溶液(50mM Tris、3%ドデシル硫酸
ナトリウム(SDS))を加え、得られた液を30分間混合した。この試料を20分間6
0℃に加熱し、10分間冷却して、0.8mlのフェノール(50mM NaCl含有)を加えてD
NAを抽出した。これを遠心分離して、DNAを含む上部層を分離した。DNAを沈澱さ
せるために、1/2体積の7.5M酢酸アンモニウムを加え、氷上で30分間インキュベ
ートして、その後30分間遠心分離した。得られたDNAを10 mM Tris、1mMEDTAに再
懸濁した。
こうして得られた、M.smegmatisにInh耐性表現型を与えた最小のプラスミド
は2.3 kbの大きさで、pS5と称された。
pS5の配列は以下のようにして得られた。pS5をベクターpBluescript II KS+(
Stratagene、California)にクローニングした。このベクターは、配列決定に用
いられたT3およびT7
プロモーターを含有している。配列決定は、GIBCO BRL,Life Technologiesのds
DNAサイクル配列決定システムを製造者の指示通りに用いて行った。放射線標識
ヌクレオチドは、Amershamから入手可能な、[γ-32P]ATPまたは[γ−33P]ATPの
いずれかであった。用いられた配列決定プログラムはGCG、配列分析ソフトウェ
アパッケージであった。pS5の核酸配列およびそれに含まれる2つの大きなオー
プンリーディングフレームからのアミノ酸配列を図9に示す。図10は、pS5オペ
ロンの核酸残基1256〜2062(InhA遺伝子)によってコードされたフラグメントの
アミノ酸配列である。図11は、pS5オペロンの核酸残基494〜1234によってコード
されたフラグメントのアミノ酸配列である。図12は、pS5 M.bovis NZオペロン
の核酸配列である。
実施例4
INH耐性菌株におけるカタラーゼ活性の決定
M.bovisのINH感受性菌株のカタラーゼ活性を決定した。まず酵素を菌株から
単離した。単離は、M.bovisの培養物をペレット状にし、50mM リン酸カリウム
緩衝液、pH 7、に再懸濁し、それを0.5gのジルコニウムビーズ(Biospecs produ
cts)を入れた管に加えて、5分間ボルテックスして行った。この試料を短時間
遠心分離し、上清を回収して、50mM リン酸カリウム緩衝液で4mlに希釈し、0.22
μmのフィルターを通してフィルター滅菌した。
カタラーゼは、H2O2のH2O2およびO2への転換を触媒する。カ
タラーゼ活性は、上記のように調製された上清の一部を3μmのH2O2に加えて、合
計体積3mlとして、5分間インキュベートすることによってアッセイした。1.5ml
の四塩化チタン試薬(4.5 M H2SO4中に1.5mg/ml TiCl4)を加えることによって
反応を止めた。410nmでの吸光度を読み取り、カタラーゼ活性を、波長410nmでの
過酸化水素量の標準曲線を用いて計算した。活性は、μmol/分/mgタンパク質で
表した。
G4/100、G4およびその他の病原性M.bovis菌株のカタラーゼ活性も、上記の手
順を使って決定した。G4菌株およびその他の病原性M.bovis菌株は、同程度のカ
タラーゼ活性を有していた。G4/100菌株ではカタラーゼ活性は検出されなかった
。
G4/100におけるINH耐性の向上が、単にカタラーゼ活性を失ったことのみによ
るものではないことを示すために、プラスミドpS5をG5にエレクトロポレーショ
ンしてG4(S5)を得た。G4(S5)を、G4の成長を阻止するレベルのINHを含有する
培地で成長させた。上記の方法を用いて、G4とG4(S5)の両方についてカタラーゼ
活性を調べた。INH耐性であるG4(S5)、およびINH感受性であるG4の両方が、同程
度のカタラーゼ活性を示した。
実施例5
M.smegmatisのInhA遺伝子の同定
M.smegmatisのINH-ETH耐性自然変異体であるmc2651を、10-7の変異頻度の一
ステップで野生型M.smegmatisから単離した。mc2651のゲノムライブラリーをマ
ルチコピー(5〜10コ
ピー)シャトルコスミドベクターで構築した;このベクターはY.Zhangら、Mol
.Microbiol.8,521 (1993)に記載されていた。このライブラリーを野生型M.s megmatitis
菌株に形質転換して、コスミドクローンは一貫してINH-ETH耐性を付
与されていることが確認された。この結果を図1の表に示す。
ここに示したプラスミド(pYUB18への挿入片由来)を有するM.sme matis mc2
155の細胞を、カナマイシン(15μg/ml)を含有する7H9ブロスで成長させ、希釈物
を、カナマイシンのみを含有する、またはカナマイシンと様々な濃度のINHまた
はETHとを含有する、7H10寒天培地で培養した。プラスミドを有さない菌株を7H9
ブロスで成長させ、希釈物を7H10寒天培地および様々な濃度のINHまたはETHを含
有する7H10寒天培地で培養した。
野生型(INH-ETH感受性菌株)のM.smegmatis、M.tuberculosis、M.bovis、M.bovis
BCG、およびM.aviumからのクロスハイブリダイズするDNAフラグメン
トを含有するコスミドの形質転換により、INH-ETH耐性を付与されたクローンが
得られた。野生型DNAフラグメントの形質転換によって付与されたINH-ETH耐性は
、いくつかの抗生物質に見られる耐性表現型の場合と同様、標的の過剰発現によ
るものであり得る。
INH耐性を付与された、M.smegmatisコスミドpYUB286からの3kbのBam HI DNA
フラグメントを、サザン(DNA)分析のプローブとして用いた。このプローブは
、病原性菌株であるM.tuberculosis、M.bovis、M.avium、およびM.lepraeを
含
む、テストした11種の異なるミコバクテリア種のすべてに強くハイブリダイズす
るが、これは、この配列がミコバクテリア中で高度に保存されることを示してい
る。
INHに対する耐性を付与されたものにハイブリダイズ可能なDNAフラグメントを
、M.smegmatis、M.bovis、およびM.tuberculosisの野生型(INH感受性)の菌
株、並びにM.smegmatisとM.bovisとのINH耐性変異体から単離した。配列分析に
よって、各菌株が2つのオープンリーディングフレーム(ORF)、29-kDタンパク
質コード部位を1つとそれに続く32-kDタンパク質コード部位とを有することが
わかった。図2に、M.tuberculosis、M.bovis、およびM.smegmatisからのINH
耐性ポリヌクレオチドのDNA配列を示す。INH耐性M.smegmatis菌株とINH感受性M .smegmatis
菌株との間で異なり、耐性を決定する点変異を同図に示す。
INH耐性を付与する最小のフラグメントを決定するためのサブクローニング研
究を行った;その方法を図3に示す。この図において、パネルAはM.smegmatis
mc2155のサブクローニングのものであり、パネルBはM.tuberculosis H37Rvの
ものである。M.smegmatis mc2155は、E.coli−ミコバクテリアシャトルコスミ
ドのプールで形質転換され、それぞれのクローンについて、INHおよびETHに対し
て耐性(r、+)であるかまたは感受性(-)であるかを調べた。inhAに先行するO
RFはorf1と標識して、介在DNAの配列を示す。リボソーム結合部位は太字で示さ
れている。サブクローニングには以下の酵素を
用いた:B、Bam HI;P、Pst I;S、Spe I、V、Pvu II、N、Nla III;G、Bgl II
、H、Nhe I。すべてのサブクローンを両方向についてテストした。M.bovis DNA
のサブクローニング分析では、M.tuberculosisについて得られたのと同様の結
果が得られた。プラスミドpYUB291もまた、M.bovis BCG宿主においてINHおよび
ETH耐性を付与することが示された。
サブクローニング研究によって、M.smegmatisからの第二ORFがINH耐性表現型
を付与するには十分であることがわかった。この第二のORFは、従ってinhA遺伝
子と名付けられた。M.smegmatis遺伝子と異なり、M.tuberculosisおよびM.bo vis
inhA遺伝子は、29-kD ORFをコードする遺伝子と共にオペロンに存在すると
思われ、サブクローニングによって確認された。M.tuberculosisとM.bovisのD
NAにおいては、2つのORFの間の非コード領域は、M.smegmatisにおけるものよ
り実質的に短く、後者の菌株には存在すると思われるプロモーターを有さないこ
とがある。inhA DNA配列はGenBankに提出されている。受託番号はUO2530(M.sm egmatis
について)およびUO2492(M.tuberculosisについて)である。M.bovis
の配列は、M.tuberculosisのものと同一である。
InhAタンパク質は、ニコチンアミドまたはフラビンヌクレオチドを基質または
補助因子として用い得る。これは、そこにコードされた推定タンパク質の翻訳に
よって、これらの分子に対する推定結合部位を有することが示されているためで
ある。
実施例6
InhAのミコール酸生合成に対する影響
図4に示すように、M.tuberculosis、M.bovis、およびM.smegmatisの予想
されたInhAタンパク質は、S.typhimuriumおよびE.coliのEnvMタンパク質に対
して、非常に強い配列類似性(203のアミノ酸にわたって約40%の同一性)を示
している。この図には、E.coliおよびS.typhimuriumからのEnvMタンパク質に
ついて示された菌株からのInhAタンパク質のアミノ酸配列が示されている。この
アミノ酸配列は、inhAとenvMとのORFの概念的翻訳によって得られたものである
。203のアミノ酸にわたって、InhAとEnvMとは約75%の配列類似性(40%の同一
性)を示している。InhAは、ミコバクテリア菌株間において非常によく保存され
ている。M.tuberculosis H37RvおよびM.bovisのInhAタンパク質は同一のもの
であり、従って、1つの配列によって表される。M.tuberculosisとM.bovisのI
nhAは、M.smegmatis InhAと95%以上の同一性を持っている。様々なenvM遺伝子
生成物もまた非常によく保存される(98%同一性)(F.Turnowskyら、J.Bacte
riol.171,6555 (1989);H.Berglerら、J.Gen.Microbiol.138,2093(1992)
。タンパク質EnvMは、脂肪酸の生合成に関与していると考えられている。比較的
近いホモロジーにあるため、inhAは、脂質の生合成に関与し得ると思われる。
inhAのミコール酸生合成に対する影響を、無細胞アッセイで調べた。M.smegm atis
mc2155遺伝子を、pYUB18ベクターで
(菌株mc2144)、またはM.smegmatisのinhA遺伝子を有するpYUB18で(pYUB291
、pYUB286のサブクローニング生成物、菌株mc2801)、M.aviumのinhA遺伝子を
有するpYUB18で(pYUB317、菌株mc2832)あるいはM.bovis BCGのinhA遺伝子を
有するpYUB18で(pYUB316、菌株mc2799)形質転換した。これら菌株のそれぞれ
から、および、INH耐性自然変異体(M.smegmatisのmc2651から、無細胞抽出物
を調製した。Inhを用いてまたは用いずにプレインキュベートした後、[1-14C]酢
酸塩のミコール酸への取り込みを、L.M.Lopez-Marinら、Biochim.Biophys.Ac
ta 1086,22 (1991)に記載のアッセイを用いて測定した。無細胞抽出物のタンパ
ク質濃度を、0.37〜0.50 mg/mlに調整した結果、無細胞抽出物を放射性酢酸塩で
1時間インキュベートすると、ミコール酸に放射活性が直線的に取り込まれた。
それぞれのアッセイは2度行い、異なる実験の間の実験誤差はわずか15%であっ
た。ミコール酸生合成の無細胞アッセイの結果を図5に示す。感受性菌株の無細
胞抽出物においてミコール酸生合成を強く阻害するのに必要なINH濃度は、MICよ
りも、約20倍高かった。(ここでは、20 x MIC = 100 μg/ml、黒棒グラフ。)
白棒グラフ、0μg/ml;斜線棒グラフ、250μg/ml。20〜50倍のINHの蓄積がミコ
バクテリア内部に起こると報告されている。
図5の結果に示すように、野生型の抽出物に比べて、耐性変異体mc2651からの
、またはinhAのマルチコピーを有する耐性部分二倍体(merodiploid)からの無
細胞抽出物は、ミコー
ル酸生合成のINH介在阻害に対して、著しい耐性を示した。この結果は、ミコー
ル酸生合成にInhAが必要であるという予測を裏付けるものである。
実施例7
Inh耐性を付与するinhA遺伝子と
感受性表現型の対立遺伝子交換
INH耐性変異株(mc2651)からのInhAタンパク質は、94位のSerがAlaに置き換
わっている点で野生型(mc2155) からのものと異なっている。この差異がmc2651
のINH耐性表現型を引き起こすかどうかを調べるために、M.smegmatis染色体で
対立遺伝子交換を行った。mc2651細胞を、kanr マーカー遺伝子に連結された野生
型inhA遺伝子を含む45kbのM.smegmatis DNAフラグメントで形質転換した。
mc2155からのinhA対立遺伝子を含む45kbの長さのDNAフラグメントを、ベクタ
ーの挿入物をフランクするPac I部位にクローニングし、Tn5sequilトランスポゾ
ン(kanr 遺伝子を含有)をinhAの近くに導入した。kanr に連結されたinhAを含む
直鎖Pac Iフラグメントをエレクトロポレーションによってmc2651に形質転換し
た。この形質転換細胞をカナマイシン(15mg/ml)を含む7H10培地で培養した。
そして、カナマイシン耐性形質転換細胞を、カナマイシン(15μg/ml)とINH(1
0μg/ml)とを含む7H10培地で、INH感受性について調べた。テストした形質転換
細胞130のうち93(72%)において、INH感受性はカナマイシン耐性と同時形質転
換(cotransform)された。
残りの形質転換細胞は、mc2651(MIC = 50μg/ml)と同程度にINHに対して耐性
があった。図6に、対立遺伝子交換実験の図を示す。
対立遺伝子交換は、組み換え体から得たinhAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
生成物の制限フラグメント長多形性(polymorphism)分析およびサザンブロット
によって確認した。
この結果により、M.smegmatisのINH耐性表現型に、SerのAla94への変異が介
在することが証明された。
同族の組み換え系が存在しないため、M.bovisにおいては対立遺伝子交換は行
えなかった。しかし、変異株M.bovis遺伝子は、pYUB18コスミドベクターでM.s megmatis
mc2155に形質転換されると、INHに対して(20μg/mlのINHにおいて100
%生存、MIC = 30μg/ml)、野生型M.bovis遺伝子(20μg/mlのINHにおいて0
%の生存、MIC = 15μg/ml)より高い耐性が付与された。図1の表に示すこれら
の結果から、同様のSerのAlaへの変異によってM.bovis NZにINH耐性が生じるこ
とがわかる。
実施例8
臨床試料におけるM.tuberculosisのINHに対する
感受性:
一本鎖多形性コンホメーション分析
InhAをコードするポリヌクレオチドは、臨床試料において、M.tuberculosis
の様々な菌株のINHに対する感受性を調べるのに用い得る。
M.tuberculosisの染色体DNAは、臨床試料から単離する。オリゴヌクレオチド
は、M.tuberculosisの野生型inhA配列を用いて調製する。この配列を図8に示
す。オリゴヌクレオチドを用いて同定された、臨床試料からのM.tuberculosis
のinhA伝子の領域を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて増幅して、二本鎖D
NAを得る。次に、変異inhA遺伝子が存在するかどうかを確かめるために、一本鎖
コンホメーション多形性分析を行う。一本鎖コンホメーション多形性分析の一例
は、Telentiらによって「Detection of Rifampicin-ResistanceMutations in My cobacterium Tuberculosis
」、Vol.341、647〜650ページ(1993年3月)に記載
されている。
一本鎖コンホメーション多形性分析を行うために、反応ごとに、dCTPの半分を32
P-α-dCTPまたは化学発光性基質に置換して、標識された157bpの生成物を生成
した後に、PCRを行う。増幅の後、PCR生成物を希釈緩衝液によって適当な濃度に
希釈する。希釈された生成物の一部を、配列負荷緩衝剤(シークエナーゼ(Seque
nase)キット)の適切な量と混合し、約94℃で10分間加熱し、氷上で冷却して、
非変性配列フォーマット0.5%MDEゲル(Hydrolink、AT Biochem、Malvern、Penn
.)に負荷する。その後、室温で、定電力で一晩、電気泳動を行う。そして、ゲ
ルを乾燥させて、一晩、オートラジオグラフィーにかける。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12N 1/21 9359−4B C12P 7/40
C12P 7/40 9453−4B C12Q 1/68 A
C12Q 1/68 9051−4C A61K 37/02
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CN,CZ,DE,DK,ES,FI,G
B,GE,HU,JP,KG,KP,KR,KZ,LK
,LU,LV,MD,MG,MN,MW,NL,NO,
NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SI,S
K,TJ,TT,UA,US,UZ,VN
(71)出願人 ベイナージィ,アセッシュ
アメリカ合衆国 ニューヨーク 10461,
ブロンクス,イーストチェスター ロード
1935,アパートメント ビー
(71)出願人 デ リッスル,ジェフリー ウィリアム
ニュージーランド国 ウェリントン,アッ
パー ハット,ビスタ クレッセント 41
(71)出願人 ウィルソン,テレサ メアリー
ニュージーランド国 ワイヌイオマタ,カ
ラム クレッセント 32
(72)発明者 ヤコブス,ウィリアム アール.,ジュニ
ア
アメリカ合衆国 ニューヨーク 10464,
シティー アイランド,フォードハム ス
トリート 163
(72)発明者 コリンズ,デズモンド マイケル
ニュージーランド国 ウェリントン,アッ
パー ハット,スチーブンズ ストリート
25
(72)発明者 ベイナージィ,アセッシュ
アメリカ合衆国 ニューヨーク 10461,
ブロンクス,イーストチェスター ロード
1935,アパートメント ビー
(72)発明者 デ リッスル,ジェフリー ウィリアム
ニュージーランド国 ウェリントン,アッ
パー ハット,ビスタ クレッセント 41
(72)発明者 ウィルソン,テレサ メアリー
ニュージーランド国 ワイヌイオマタ,カ
ラム クレッセント 32