JPH0952719A - 合成石英ガラス母材の製造方法 - Google Patents

合成石英ガラス母材の製造方法

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JPH0952719A
JPH0952719A JP21084595A JP21084595A JPH0952719A JP H0952719 A JPH0952719 A JP H0952719A JP 21084595 A JP21084595 A JP 21084595A JP 21084595 A JP21084595 A JP 21084595A JP H0952719 A JPH0952719 A JP H0952719A
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茂利 林
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忠久 荒堀
Tetsuyuki Nakamura
哲之 中村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の光学用合成石英ガラス材の製造におい
ては、透明ガラス化後の徐冷により生じる屈折率分布及
び製造方法に起因する不純物の分布により光学用合成石
英ガラス材に屈折率分布が生じる。 【解決手段】 気相軸付け法により形成された多孔質合
成石英ガラスに、事前仮焼工程として、1.5〜50パ
スカルの圧力下、1300〜1400℃で1〜5時間の
加熱処理を施して密度を均質化し、次に仮焼工程とし
て、同じ圧力下、1200〜1400℃の温度で10〜
40時間加熱して水分等を除去した後、0.5〜5℃/
分の速度で昇温し、さらに透明化工程を行い透明ガラス
化することにより合成石英ガラス母材を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は合成石英ガラス母材
の製造方法に関し、より詳細には紫外領域から赤外領域
にわたる広い波長領域における光を利用した機器のレン
ズ、ミラー、プリズム、窓部材等の光学部品の形成に用
いられる合成石英ガラス材の原料となる合成石英ガラス
母材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】合成石英ガラスは約150nm〜約5μ
mという広い波長範囲で光を透過するため応用範囲が広
いこと、熱膨張係数が小さいために光軸のずれが小さく
高精度の光学系を構成できること、耐熱性が高いために
広い温度範囲で使用できること、高純度な二酸化ケイ素
であるために高エネルギーの光を照射しても損傷を受け
にくいこと等、数々の非常に優れた特性を有している。
【0003】このような優れた特性を生かし、例えば紫
外領域から赤外領域にわたる広い波長領域における光を
利用した機器のレンズ、ミラー、プリズム、窓部材等の
光学部品等に用いられている。
【0004】これらの光学部品の形成に用いられる石英
ガラス材料には、種々の特性が要求されるが、特に屈折
率の均質性、及び使用波長での耐光性が高いこと(光照
射後に透過率が低下しにくいこと)等が要求される。
【0005】このような厳しい条件に適合可能な石英ガ
ラスとして、合成石英ガラスが挙げられる。一般的に合
成石英ガラスという呼び名は、出発原料として天然のシ
リカ原料を用いていない全ての石英ガラスに適用される
が、この合成石英ガラスを製造する方法としては、種々
の方法が存在する。従って、原料の純度や製造方法に起
因して、製造された合成石英ガラスの不純物元素濃度
(金属元素濃度、非金属元素濃度)や欠陥濃度等も様々
なグレードのものが存在し、すべての合成石英ガラスが
理想的な透過光学系用のガラス材料となり得るわけでは
ない。
【0006】合成石英ガラスの製造法には大別して気相
法と液相法があり、光学系に用いられる材料の製造方法
としては気相法が主流であるが、この気相法も直接合成
法、プラズマCVD法、気相軸付け法(VAD法)等の
種類があり、原料や製造方法に起因して合成石英ガラス
中における金属等の不純物、OH基、Cl、H2 、O
2 、酸素過剰欠陥、酸素欠乏欠陥、環構造欠陥等の濃度
が異なる。これらの不純物や欠陥等の濃度は、合成石英
ガラスの光吸収、蛍光、屈折率等の光学特性に大きな影
響を及ぼすことが知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】例えば前記VAD法
は、バーナーからケイ素化合物、水素、酸素などの原料
ガスを鉛直に懸下した種棒に向けて供給し、前記ケイ素
化合物を酸素−水素火炎中で加水分解させて生成させた
石英ガラスの微粒子を石英製等の種棒の下端部に付着、
堆積させて多孔質合成石英ガラスを形成した後、加熱す
ることにより透明ガラス化する合成石英ガラスの製造法
であるが、そのためにケイ素化合物として四塩化ケイ素
を使用した場合には、塩素やOH基等が合成石英ガラス
内に残留し、その濃度が不均一になり易く、これらの不
純物に起因して屈折率等に分布が生じるという問題があ
った。
【0008】また、通常、透明ガラス化は1420〜1
600℃の温度範囲で行うが、その後の徐冷時の合成石
英ガラス体の内部と外部とにおける冷却速度の差に起因
して、屈折率に分布が生じる。そして、通常は、主とし
てOH基の分布によって生じる屈折率の分布と透明ガラ
ス化後の徐冷によって生じる屈折率分布とが重なり合う
ため、より大きな屈折率分布を生じ易いという問題があ
った。
【0009】このような不純物の残留濃度分布に起因す
る屈折率分布と、製造過程の冷却条件等の熱履歴に起因
する屈折率分布とを相反する分布として消去し合うよう
に不純物濃度や加熱後の冷却速度を調整し、実際の屈折
率分布が小さく、良好な品質の光学用石英ガラスを得る
方法が提案されている(特開平2−102139号公
報、特開平2−239127号公報等)。
【0010】前記特開平2−102139号公報に記載
された発明においては、ガラスの中央部分にOH基の極
小濃度域を存在させるとともに、周辺部に近づくにつれ
て徐々に高濃度となるOH基濃度分布を形成する。この
とき、前記OH基濃度分布に起因する屈折率分布は中央
部分で極大値を有し、周辺部に近づくにつれて低下する
分布(以下、凸型分布と記す)をなしている。一方、前
記OH基濃度分布に起因する屈折率分布を打ち消すよう
に、熱処理条件を選択することによる屈折率分布を形成
する。すなわち、800〜1300℃の範囲に所定時間
加熱した後、所定の速度で徐冷する方法により仮想温度
分布をコントロールし、この仮想温度分布に起因する中
央部分に極小値を有し、周辺部に近づくにつれて大きく
なる屈折率分布(以下、凹型分布と記す)を形成する。
このような相反する不純物濃度に起因する屈折率分布と
仮想温度分布に起因する屈折率分布を形成することによ
り、総合的に屈折率分布が小さく、良好な品質を有する
光学用合成石英ガラスを得ることができることが前記公
報に記載されている。
【0011】また、特開平2−239127号公報に記
載された発明においては、OH基濃度と塩素濃度とに起
因した屈折率分布を凸型分布とし、前記凸型の屈折率分
布を打ち消すように仮想温度分布をコントロールするこ
とにより凹型の屈折率分布を形成し、総合的に屈折率分
布を小さく、良好な品質の光学用合成石英ガラスを得る
ことができることが記載されている。
【0012】しかしながら、前記したように、通常の方
法で製造した合成石英ガラス中のOH基濃度と塩素濃度
は、ガラス塊の内部ほど残留し易いため、いずれも中央
部分に極大濃度域があり、その周辺部に近づくにつれて
徐々に低濃度となり、前記OH基濃度分布及び塩素濃度
分布に起因する屈折率分布はいずれも凹型となる。従っ
て、ガラス塊の中央部分に極小値を有するようなOH基
濃度分布及び塩素濃度分布を形成することは難しく、ま
たその濃度分布をコントロールすることは一層難しいた
め、このような合成石英ガラスの製造方法は現実的な方
法ではなく、また仮に製造できたとしても、設備自体が
高価になるため、得られる合成石英ガラスも非常に高価
なものとなるという課題があった。
【0013】本発明はこのような課題に鑑みなされたも
のであり、屈折率が均一で屈折率分布がほとんどない合
成石英ガラスを得ることが可能な合成石英ガラス母材の
製造方法を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係る合成石英ガ
ラス母材の製造方法は、気相軸付け法により形成された
多孔質合成石英ガラスに、事前仮焼工程として、1.5
〜50パスカルの圧力下、1300〜1400℃で1〜
5時間の加熱処理を施して密度を均質化し、次に仮焼工
程として、同じ圧力下、1200〜1300℃の温度で
10〜40時間加熱して水分等を除去した後、0.5〜
5℃/分の速度で昇温し、さらに透明化工程を行い透明
ガラス化することを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】上記したように、原料となる高純
度ケイ素化合物としては、例えば四塩化ケイ素が挙げら
れるが、前記原料中の金属不純物の総含有量が0.05
ppm以下、Alの含有量が0.005ppm以下、N
a、K、及びLiの各含有量が0.008ppm以下、
Ca、Fe、Ti、Cr、Ni、P、B、Mg、Cu、
Zr、及びZnの各含有量が0.003ppm以下であ
るのが好ましい。
【0016】前記原料中の不純物濃度は、原料をCVD
炉中で約1000℃に加熱して基体上に蒸着させ、その
蒸着した金属シリコン中の金属不純物量を放射化分析法
で分析することにより測定することができる。
【0017】多孔質合成石英ガラスの合成では、特別な
条件は必要でなく、気相軸付け法による通常の酸水素火
炎を用いた加水分解を行えばよい。
【0018】次に、前記工程により得られた多孔質合成
石英ガラス(スート体)を真空下で熱処理等を行って合
成石英ガラス材を製造するが、この合成石英ガラス材の
製造工程は、事前仮焼、仮焼、昇温、及び透明化の工程
による合成石英ガラス母材の製造工程、及び前記母材を
使用して加工等を行った後、加熱成形、冷却、均温化、
冷却により合成石英ガラス製品の製造を行う工程とに分
けられる。
【0019】ケイ素化合物の加水分解により得られたス
ート体の空隙は、その分布が不均一で周辺部分に空隙が
多く、中央にいくに従って順次空隙が少なくなってお
り、その密度も周辺部分が小さく、中央に近づくに従っ
て大きくなっている。
【0020】そこで前記事前仮焼工程により、主として
スート体周辺の最も密度の小さい部分を他の部分と比べ
て急激にその密度を高める操作、すなわち焼きしめを行
って、スート体の密度を均一化させる。この事前仮焼に
より、次工程である仮焼工程でのゆっくりとした焼結に
よる脱水効果をスート体全体にわたってほぼ均一に進行
させることができ、透明ガラス化後の合成石英ガラス中
のOH基濃度を所望の分布を有するように設定すること
ができる。
【0021】この際の加熱は、約1.5〜50パスカル
の圧力下、約1300〜1400℃で1〜5時間と、後
で行う仮焼よりも若干高い温度で短時間行うのが好まし
い。前記事前仮焼の温度が約1300℃未満であると、
前記事前仮焼による焼きしめ効果が少なく、他方約13
00℃と低温でも加熱時間が5時間を超えるとスート体
の密度の低い周辺部分のみならず、スート体全体がゆっ
くりと焼きしまり、目的とするスート体密度の均一化が
進みにくい傾向が表われる。前記事前仮焼の温度が約1
400℃を超えると、急激に空隙の収縮が進行し、なか
でもスート体周辺部分の焼きしめが急激に進行するた
め、その表層部分が透明ガラス化し、その後の仮焼、透
明化工程により十分な脱水効果が得られず所望の合成石
英ガラスを得ることができない。他方1400℃と高い
温度でも、加熱時間を1時間未満とすると、焼きしめ効
果が得られず、スート体の密度を均一化することができ
ない。
【0022】前記事前仮焼の際の圧力が約1.5パスカ
ルよりも小さいと、加熱の際に酸素が石英ガラスより抜
け易くなり、これにより酸素欠乏欠陥が生じて紫外及び
真空紫外光の透過率低下の原因となり易く、他方前記事
前仮焼の際の圧力が約50パスカルを超えると、スート
体の焼きしめ効果が少なく、スート体の密度を均一化す
ることが難しい。
【0023】この後、仮焼処理を同じ真空条件下、約1
200〜1300℃で約10〜40時間行い、スート体
中の石英ガラス微粒子中に一部含まれるSi−OHをS
i−O−Siに変化させたり付着水を気化脱気せしめ、
その際に生じる水分を除去脱水する。また、この仮焼処
理によりスート体中のOH基濃度の分布を調整する。前
記仮焼の温度が約1200℃未満であると、水分の除去
がゆっくりとしか進行せず、OH基濃度が十分に低下せ
ず、またその濃度分布の調整もうまく行かない。他方、
前記仮焼の温度が1300℃を超えると、内部から十分
に水分が除去されないうちに緻密化してしまい、やはり
高濃度のOH基が残留することになる。
【0024】この仮焼により、中央部分に近づくに従っ
てOH基濃度が高く、中央部分にOH濃度の極大値とな
る部分が存在し、逆に周辺部分にいくに従ってその濃度
が低下するOH基濃度の分布が形成される。
【0025】次に、同じ真空条件下、仮焼後の石英ガラ
スを加熱して0.5〜5℃/分の条件で昇温させ、通常
行われている条件、すなわち約1420〜1600℃の
温度範囲で3〜8時間透明化処理を行う。前記透明化の
温度が約1420℃未満では、緻密化が進行しにくく生
産性が悪くなり、他方前記透明化の温度が約1600℃
を超えると電力の消費によりコスト増加となる。
【0026】前記工程の後、約0.5〜5℃/分の条件
下で徐冷することにより、透明化された合成石英ガラス
母材が製造される。
【0027】前記方法により製造された合成石英ガラス
母材は、金属不純物等の含有量が極めて少ないため、通
常の石英ガラス材として使用することも可能である。し
かし、前記OH基濃度の分布をコントロールすることに
より、屈折率に分布が形成されているので、光学的な用
途に使用しようとすれば、この合成石英ガラス母材に以
下に説明するような仮想温度分布を形成するのが好まし
く、これにより全体が均一な屈折率を有する合成石英ガ
ラス材を製造することができる。
【0028】この場合、初めに前記合成石英ガラス母材
を下記の条件で加熱成形し徐冷した後、切削加工等を行
って所定の大きさにし、製品を製造する。勿論、得られ
た合成石英ガラス母材を冷却せず、同様の条件で処理を
行うことも可能である。
【0029】成形の際には、前記母材を約1600〜2
000℃の温度まで加熱し、例えば高純度カーボン等か
らなる型を用いてプレスすることにより大型のレンズ、
ミラー、窓部材等の光学部材の形状を有するものに成形
する。この成形された光学用合成石英ガラスを一旦、5
〜30℃/分の条件で約1500〜1600℃まで冷却
し、この温度範囲で0〜10時間保持する均温化処理を
行う。ここで、0時間の場合は厳密には均温化処理を行
っておらず、この温度で冷却速度を切り替えるのみであ
るが、ここでは0時間の場合も含めて均温化処理という
ことにする。
【0030】この均温化処理の温度が約1500℃未満
であると、徐冷する前の温度が低過ぎるため、以下に述
べるような状態の仮想温度分布を形成するのが難しくな
る。
【0031】前記均温化処理の後、少なくとも1500
℃以上の温度から、5℃/分未満、好ましくは0.1〜
4℃/分未満の温度で冷却することにより合成石英ガラ
ス材の仮想温度分布を形成する。
【0032】室温における石英ガラスの密度、屈折率等
の特性は、そのガラスが過去の製造過程における高温度
域及び前記高温度域から室温までの冷却過程での熱履歴
を反映したものであり、仮想温度(Fictive Temperatu
re)とは、そのガラスが過去の熱履歴のなかで、なじま
されたときの温度、すなわち上記特性値が決定されたと
きの温度をいう(R.Bruckner,J.Non-Crystaline Solids,
5,1970, pp.133-134)。この仮想温度の概念は、石英ガ
ラスのみならず、ガラス全般に当てはまる概念であり、
もう少し簡略にいうならば、室温のガラス密度、屈折率
等の特性値がその仮想温度(室温よりも高温度)のガラ
スの平衡状態の特性値になっていることを意味する。
【0033】図1は前記公報に記載された石英ガラスの
温度と密度との関係、及び冷却の際の密度の変化の様子
を示したグラフであり、gs 、gt で示した温度tは、
それぞれゆっくりとした冷却の場合のガラス転移温度及
び早い冷却の場合のガラス転移温度を示している。
【0034】前述のR.Brucknerによると、第1図に示す
ように、石英ガラスは約1500℃において密度が最小
になり、1500℃より高い温度から冷却する場合と、
1500℃より低い温度から冷却する場合とで、石英ガ
ラス中の密度の分布状態が異なることが知られている。
すなわち、1500℃より低い温度から冷却する場合に
は、周囲が早く冷却されるために内部に比べて周囲がよ
り密度が大きくなり、他方1500℃よりも高い温度か
ら冷却する場合には、周囲が内部に比べて早く冷却され
ることは上記の場合と同様であるが、密度は内部に比べ
て周囲の方が小さくなる。密度と相関関係を有する仮想
温度も、前記密度と同様の分布を生じ、仮想温度を測定
することにより前記仮想温度に起因する屈折率分布を特
定することが可能になるが、本発明の場合のように、約
1500℃より高い温度から冷却すると、内部の仮想温
度分布の方が周囲の仮想温度分布より低い状態となり、
内部の密度の方が周囲の密度より大きい状態、すなわち
内部の方が周囲より屈折率の高い分布が生じ、OH基濃
度分布により生じる屈折率分布と逆になるため、お互い
の屈折率の変動を打ち消し合い、極めて均一な屈折率分
布を形成することができる。
【0035】次に、このようにして製造された光学用合
成石英ガラス材を1×103 〜1×106 Paの水素ガ
ス雰囲気下、610〜790℃で加熱することにより水
素をドープする。
【0036】水素ガス雰囲気が1×106 Paを超える
と水素ドープの速度が早過ぎてドープ量の制御が難しく
なり、他方水素ガス雰囲気が1×103 Pa未満では溶
存させる水素ガスの揮発が促進され、ドープが困難とな
る。
【0037】また、加熱温度が790℃を超えるとドー
プした水素のうち、(原子状水素/分子状水素)の比が
大きくなり、レーザー耐光性の向上に効果的な分子状水
素のドープ量が不足し、他方加熱温度が610℃未満で
あるとドープ速度が遅過ぎ、ドープ時間が長くかかりす
ぎる。なお、610〜790℃の温度範囲での加熱は比
較的低温であるため、前工程で生じた石英ガラス中の仮
想温度分布を変えるものではない。
【0038】前記した合成石英ガラス材又は光学用合成
石英ガラス製品(以下、両者を含めて合成石英ガラス材
とも記す)の製造工程により、OH基濃度の分布に基づ
く屈折率分布を打ち消すように、仮想温度分布に起因す
る屈折率分布を形成することができ、屈折率の変動幅が
極めて小さく、かつレーザー照射によっても真空紫外光
〜紫外光の透過率が低下しない合成石英ガラス材を製造
することが可能となる。
【0039】前記工程により製造された合成石英ガラス
材中のOH基濃度の最大値は、約60ppm程度以下で
あることが好ましく、20〜45ppm程度がより好ま
しい。また、OH基濃度の最大値と最小値との差は45
ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であ
ることがより好ましい。
【0040】OH基の濃度の最大値と最小値との差が約
45ppmのとき、屈折率の変動幅(Δn)は約4.5
×10-6となり、これより大きい場合には、前記OH基
濃度の分布に基づく屈折率の変動分布を、仮想温度分布
を調節することにより打ち消すのが困難になる。
【0041】このようにして得られた光学用合成石英ガ
ラス材は、均質性に優れ、屈折率の変動幅(Δn)が極
めて小さい。前記屈折率の変動幅(Δn)は、そのサイ
ズにより異なるが、例えば直径が約200〜300mm
で、長さが約60〜150mmとサイズの大きいものに
おいても、その屈折率の変動幅(Δn)が約1×10-6
未満と小さい。前記サイズよりも小さなものにおいて
は、当然、屈折率の変動幅は約1×10-6未満と小さ
く、その複屈折率も約3nm/cm以下となる。
【0042】また、前記光学用合成石英ガラス材はこの
ような均質性を有することから、少なくとも一方向脈理
フリーであり、製造条件によっては三方向脈理フリーと
極めて均質性に優れたものとなる。
【0043】本発明に係る合成石英ガラス材は、得られ
たスートを、事前仮焼、仮焼、昇温、透明化の工程を経
て透明化しており、このような連続的な処理により前記
OH基濃度の分布は変曲点を有さない。
【0044】塩素の濃度についても、スート体形成後の
加熱処理によってかなりの程度除去することが可能であ
り、最終的な合成石英ガラス材の濃度は10ppm以下
であることが好ましく、1ppm以下であることがより
好ましい。また、塩素濃度の最大値と最小値との差は1
ppm以下であることが好ましい。塩素濃度が10pp
mを超えると、塩素濃度の最大値と最小値との差を1p
pm以下に保つのが難しくなる場合がある。また、塩素
濃度の最大値と最小値との差が1ppmを超えると、前
記塩素濃度の不均一性が屈折率に影響し、屈折率を小さ
く保つことが難しくなる。
【0045】金属不純物については、原料中の金属不純
物の含有量に大きく左右され、製造方法自体には余り左
右されない。従って、いずれの製造方法においても、合
成石英ガラス材中の金属不純物の総含有量が0.15p
pm以下であり、Alの含有量が0.01ppm以下、
Na、K、及びLiの各含有量が0.02ppm以下、
Ca、Fe、Ti、Cr、Ni、P、B、Mg、Cu、
Zr、及びZnの各含有量が0.008ppm以下であ
ることが好ましい。
【0046】また、前記光学用合成石英ガラス材中に
は、後述するようにレーザー光照射時にガラス構造の欠
陥を生じることによる、光吸収、蛍光発光等の問題発生
を防止するために、水素が5×1015〜1×1019mo
l/cm3 含まれている。本願発明者が先に出願した特
願平6−216233号の明細書に記載しているよう
に、高エネルギー密度のレーザー光の照射により合成石
英ガラス中に、≡Si−O°(非結合酸素)欠陥や≡S
i・(E’中心)欠陥等の欠陥が生成され易くなるが、
合成石英ガラス中に水素(H2 分子あるいはH原子)、
特に分子状水素(H2 分子)が適量溶存すると、レーザ
ー光照射時に上記欠陥のうち、特に非酸素結合欠陥を抑
制することができる。その好ましいH2 分子含有量10
15〜1018個/cm3 程度を得るためには、水素の含有
量は5×1015〜1×1019mol/cm3 程度が必要
となる。
【0047】前記水素の含有量が5×1015mol/c
3 未満であると、レーザー光等を照射した際に欠陥等
が生成し易く、透過率の低下が大きくなる傾向が表わ
れ、他方前記水素の含有量が1×1019mol/cm3
を超えると、原子状水素(H原子)の含有量が増加し、
レーザー光照射時に下記の化1式の反応が進行してE’
中心欠陥が生成し易くなる。前記非結合酸素欠陥は、上
記のような条件で合成石英ガラス材を製造することによ
り、最小限の濃度に止めることができる。
【0048】
【化1】≡Si−H → ≡Si・(E’中心)+H・
【0049】
【作用】本発明に係る合成石英ガラス母材の製造方法に
よれば、気相軸付け法により形成された多孔質合成石英
ガラスに、事前仮焼工程として、1.5〜50パスカル
の圧力下、1300〜1400℃で1〜5時間の加熱処
理を施して密度を均質化し、次に仮焼工程として、同じ
圧力下、1200〜1400℃の温度で10〜40時間
加熱して水分等を除去した後、0.5〜5℃/分の速度
で昇温し、さらに透明化工程を行い透明ガラス化するの
で、前記合成石英ガラス母材中に塩素や金属等の不純物
含有量が極めて少なく、中央部分に極大となる領域が存
在し、該領域を中心に周辺部分にいくに従って次第に低
下するOH基濃度の分布が形成される。
【0050】この合成石英ガラス母材を使用して150
0〜2000℃の温度に加熱した後、少なくとも150
0℃以上の温度から室温まで5℃/分以下の速度で徐冷
し、前記OH基濃度の分布に基づく屈折率分布を打ち消
すように、仮想温度分布を形成することにより、極めて
均一な屈折率を有する合成石英ガラス材を製造すること
ができる。
【0051】
【実施例及び比較例】以下、本発明の実施例に係る合成
石英ガラス材及びその製造方法を説明する。
【0052】[実施例1〜13及び比較例1〜14]V
AD法により多孔質合成石英ガラス(スート体)を合成
した。
【0053】高純度ケイ素化合物である四塩化ケイ素
(SiCl4 )を原料とし、酸素−水素火炎中で気相化
学反応により石英ガラス微粒子を合成するとともにこれ
を種棒の周囲に付着、堆積させ、多孔質合成石英ガラス
(スート体)を合成した。
【0054】次に、この合成された多孔質合成石英ガラ
スを下記の表1に示した条件で事前仮焼、仮焼、昇温、
透明化、及び冷却を行い、下記の表3に示した寸法の合
成石英ガラス母材を製造した。この合成石英ガラス母材
の特性を同じく下記の表3に示している。
【0055】次に、前記工程で製造された合成石英ガラ
ス母材の切削、加工等を行い、得られた部材を用いて、
表1に示した加熱成形条件で、加熱、成形、均温化処理
を行った。その後、表1に示した速度で冷却することに
より仮想温度分布を形成した。次に、前記仮想温度分布
が形成された合成石英ガラス材を用い、表1に示した条
件で水素ガス処理を行い、前記合成石英ガラス材に水素
をドープさせた。得られた光学用合成石英ガラス製品の
特性を下記の表5に示している。
【0056】また、屈折率変動幅(Δn)が実施例に係
る合成石英ガラス材に比べて大きい、比較例に係る合成
石英ガラス材についても、合成石英ガラス材の製造条
件、加熱成形条件及び水素ドープ条件を下記の表2に、
合成石英ガラス母材の特性を表4に、合成石英ガラス製
品の特性を下記の表6に示している。
【0057】なお、仮想温度については、K.M.Davis ら
が提案した赤外線分光光度計を用いた方法(K.M.Davis
and M.Tomozawa ニューガラスフォーラム 平成5年度
第4回シリカガラス研究会 215〜255頁 199
4年1月17日)により測定し、屈折率変動幅(Δn)
については、Zygo社製のフィゾー型干渉計(Mar
k−IV)により測定し、複屈折率については、オーク
製作所社製の高感度複屈折率測定装置(ADR−30
0)により測定した。また、水素ガス放出量について
は、森本らが提案した放出ガス量を質量分析する方法
(森本幸裕他 照明学会 東京支部大会誌 16〜25
頁 1989年)及びレーザーラマン散乱測定法により
測定した。
【0058】図2は実施例及び比較例に係る合成石英ガ
ラス母材の製造方法で、所定の工程の終了後における合
成石英ガラスの密度分布を示したグラフである。図2に
おいて、実線は実施例1の場合の密度分布を示したもの
であり、が熱処理前の多孔質合成石英ガラス(スート
体)、が事前仮焼処理後の多孔質合成石英ガラス(事
前仮焼後スート体)、が仮焼処理後の合成石英ガラス
体を示しており、における点線は事前仮焼を行わない
場合(比較例1)の合成石英ガラス体を示している。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
【表6】
【0065】上記の表3及び表5に示した結果より明ら
かなように、実施例に係る光学用合成石英ガラス母材及
び光学用合成石英ガラス製品の中央部分にOH基濃度の
極大となる領域が存在し、該領域を中心に周辺部分にい
くに従ってOH基濃度が次第に低下し、壁面部分で濃度
の最小値となる濃度分布が存在しており、このOH基濃
度分布に基づく屈折率分布を打ち消すように、仮想温度
分布に起因する屈折率分布が形成されているので、前記
合成石英ガラス材内部全体の屈折率が極めて均一(屈折
率変動幅Δn≦0.9×10-6)になる。また、塩素の
濃度は1ppm未満であり、複屈折率も3nm/cm以
下と極めて小さく、脈理も三方向フリーと均質性に優れ
た材料となっている。さらに、表には示していないが実
施例に係る光学用合成石英ガラス製品の金属不純物含有
量はトータル量として、0.15ppm未満であり、各
金属不純物含有量は、Alの含有量が0.01ppm以
下、Na、K、及びLiの各含有量が0.02ppm以
下、Ca、Fe、Ti、Cr、Ni、P、B、Mg、C
u、Zr、及びZnの各含有量が0.008ppm以下
であった。この光学用合成石英ガラス製品中の不純物濃
度はプラズマ発光(ICP)分析法及び放射化分析法に
より測定した。
【0066】図2に示したように、実施例に係る製造方
法においては、事前仮焼工程によりほぼ全体にわたって
嵩密度が均一な多孔質体が得られたおり、仮焼によって
もその密度分布は変化していないため、ゆっくりと脱水
を行うことができ、OH基の濃度を低下させることがで
きるとともに、その濃度分布をコントロールすることが
可能となる。
【0067】また、実施例に係る光学用合成石英ガラス
材は、水素を5×1015〜1×1019mol/cm3
有しているため、対レーザー耐性に優れ、少なくともK
rF光レーザー(波長:248nm)を約400mJ/
cm2 の照射光エネルギー密度で1×106 ショット以
上照射しても248nmも内部透過率が0.5%未満で
あった。
【0068】他方、比較例に係る光学用合成石英ガラス
製品においては、OH基の最大値と最小値との濃度差が
大きすぎるか、又はOH基濃度分布により形成される屈
折率の変動分布と、形成された仮想温度分布による屈折
率変動分布が加算されたかたちになっているため、全体
の屈折率変動幅が実施例に係る光学用合成石英ガラス製
品の3倍を超えた値となっている。また、均温化の後の
冷却で、その速度が早すぎる場合には、複屈折率が10
nm/cm以下と異方性が大きくなっている。さらに、
対レーザー耐性についても、KrFレーザーを約400
mJ/cm2 の照射光エネルギー密度で1×106 ショ
ット照射することにより、内部透過率が0.5%以上低
下してものが存在し、対レーザー耐性に劣る。
【0069】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る合成石
英ガラス材にあっては、気相軸付け法により形成された
多孔質合成石英ガラスに、事前仮焼工程として、1.5
〜50パスカルの圧力下、1300〜1400℃で1〜
5時間の加熱処理を施して密度を均質化し、次に仮焼工
程として、同じ圧力下、1200〜1400℃の温度で
10〜40時間加熱して水分等を除去した後、0.5〜
5℃/分の速度で昇温し、さらに透明化工程を行い透明
ガラス化するので、前記合成石英ガラス母材中に塩素や
金属等の不純物含有量が極めて少なく、中央部分に極大
値となる領域が存在し、該領域を中心に周辺部分にいく
に従って次第に低下するOH基濃度分布を形成すること
ができる。
【0070】従って、この合成石英ガラス母材を使用し
て、1500〜2000℃の温度に加熱した後、前記加
熱温度より室温まで5℃/分以下の速度で徐冷し、前記
OH基濃度の分布に基づく屈折率分布を打ち消すよう
に、仮想温度分布を形成することにより、極めて均一な
屈折率を有する合成石英ガラス材を製造することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】石英ガラスの温度と密度との関係、及び冷却の
際の密度の変化の様子を示したグラフである。
【図2】実施例及び比較例に係る合成石英ガラス母材の
製造方法で、所定の工程の終了後における合成石英ガラ
スの密度分布を示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中村 哲之 兵庫県尼崎市東向島東之町1番地 住金石 英株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気相軸付け法により形成された多孔質合
    成石英ガラスに、事前仮焼工程として、1.5〜50パ
    スカルの圧力下、1300〜1400℃で1〜5時間の
    加熱処理を施して密度を均質化し、次に仮焼工程とし
    て、同じ圧力下、1200〜1300℃の温度で10〜
    40時間加熱して水分等を除去した後、0.5〜5℃/
    分の速度で昇温し、さらに透明化工程を行い透明ガラス
    化することを特徴とする合成石英ガラス母材の製造方
    法。
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