JPH101499A - アミロイド前駆体タンパク - Google Patents

アミロイド前駆体タンパク

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JPH101499A
JPH101499A JP8154498A JP15449896A JPH101499A JP H101499 A JPH101499 A JP H101499A JP 8154498 A JP8154498 A JP 8154498A JP 15449896 A JP15449896 A JP 15449896A JP H101499 A JPH101499 A JP H101499A
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amyloid
amino acid
domain
polypeptide
precursor protein
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JP8154498A
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Toshiji Suzuki
利治 鈴木
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Daiichi Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Daiichi Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 アミノ酸配列:KKKQYTSIHHGVVEVDAAVTPE
EXHLSKMQQNGYENPTYKFFEQMQN (Xはアルギニン以外のアミ
ノ酸残基)で特定されアミロイド前駆体タンパクの細胞
内ドメインであるポリペプチド;並びに(a) 野性型アミ
ロイド前駆体タンパクの細胞外ドメイン又はそのアミノ
酸改変体であるポリペプチド(アミロイドβドメインに
含まれる部分を除く), (b)アミロイドβドメイン, (c)
アミロイドβドメインC末端に結合し細胞膜ドメインを
構成するポリペプチド, 及び(d) 上記アミノ酸配列で特
定され細胞内ドメインであるポリペプチドを含む変異ア
ミロイド前駆体タンパク。 【効果】 アミロイドβの生産性が高められており、こ
の前駆体タンパクを細胞内で発現させることによってア
ミロイドβを大量に生成させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルツハイマー病
に関与すると考えられているアミロイドβの前駆体とし
て作用するタンパクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】アルツハイマー病は進行性の痴呆症状を
呈する疾患であり、病理組織学的には脳内に著しく多数
の老人斑と神経原線維変化が出現することを特徴とする
神経変性疾患である。アルツハイマー病は老齢者に発症
することが多く、加齢とともに罹患者の比率が増大する
ことが知られている。現在のところアルツハイマー病の
根治は不可能であり、将来的な老齢者人口の急増にそな
えてアルツハイマー病に対する治療や予防のための方
法、並びにアルツハイマー病に対して有効な予防・治療
剤の開発が切望されている。
【0003】老人斑は種々の成分を含む神経細胞外の沈
着物であり、その主成分はアミロイドβと呼ばれる38〜
43個のアミノ酸からなる凝集性の強いペプチドである
(Aβ:このペプチドはβタンパク、βペプチド、βア
ミロイド、A4ペプチド、又はβ/A4等と呼ばれるこ
ともある)。老人斑では、アミロイドβがβシート構造
をとった堅固な構造物として沈着している。老人斑はび
慢性老人斑と呼ばれる“しみ”状の沈着から始まるが、
この段階では神経変性は生じておらず、さらにび慢性老
人斑が堅固な沈着物となるとともに、神経変性や神経脱
落が生じることによって痴呆などのアルツハイマー病の
症状が現れるものと考えられている。
【0004】アミロイドβは、1回膜貫通型膜タンパク
であるアミロイド前駆体タンパク (APP, amyloid precu
rsor protein; βPP又はβAPP と呼ばれる場合がある)
から切り出されることにより生合成される (Nature, 32
5, p.733, 1987) 。アミロイド前駆体タンパクは、一個
のアミロイド前駆体タンパク遺伝子から転写されるプレ
mRNA の多様なスプライシング(交替性スプライシン
グ)により生じる種々のmRNA が翻訳されて生成するタ
ンパクの総称であり、主として3種類のサブクラスの存
在が知られている。これら3種のアミロイド前駆体タン
パクは各々の構成アミノ酸数によって区別されており、
それぞれ、APP770 (構成アミノ酸数 770)、APP751 (構
成アミノ酸数 751) 、及びAPP695 (構成アミノ酸数 69
5) と呼ばれている。これらは細胞外領域を構成するア
ミノ酸数が異なっているものの、いずれもアミロイドβ
領域及び細胞内領域は共通しており、アミロイドβの前
駆体タンパクとして機能する性質を有している。
【0005】アミロイドβのアミノ末端はアミロイド前
駆体タンパクの細胞外領域にあり、ここを切断する酵素
はβセクレターゼと仮称されている。また、アミロイド
βのカルボキシル末端はアミロイド前駆体タンパクの細
胞膜内領域に存在しており、ここを切断する酵素はγセ
クレターゼと仮称される。アミロイド前駆体タンパクの
一例として、 APP695 の構造(分子内の領域)及び酵素
切断部位を図1に示す(北口ら, 神経精神薬理, 16(1
2), pp.747-764, 1994)。さらに、アミロイド前駆体タ
ンパクのプロセシングは、細胞内へのカルシウムイオン
の流入やプロテインキナーゼCの活性化等により影響を
受けることが明らかにされている(北口ら、上掲)。
【0006】また、アミロイドβの沈着が神経原線維変
化に先立って起こる病変であること、並びに、アミロイ
ドβ、特に凝集したアミロイドβが培養神経細胞に対し
て毒性を有していることが明らかにされ、さらに、アミ
ロイド前駆体タンパク遺伝子のアミロイドβ内部及びそ
の周辺部分に突然変異をもった家族性アルツハイマー病
の家系の存在が証明されたことから (Hardy, J., et a
l., Nature, 349, p.704, 1991)、アミロイドβがアル
ツハイマー病における病態の発生や進行に重要な意義を
有しているものと考えられている(玉岡, 内科, 77(5),
pp.843-851, 1996)。また、アミロイドβの生成を阻害
する物質がアルツハイマー病の予防や症状の進行阻止に
有用であると考えられるようになり、上記アミロイドβ
の切り出し酵素であるβ及びγセクレターゼの阻害作
用、プロテインキナーゼCの活性化、細胞内小器官のpH
の調整作用などの生理作用をアッセイの指標として、ア
ミロイドβの生成阻害剤の探索が進められている。
【0007】一方、ヒトの疾病の予防・治療剤の開発に
は、モデル動物を用いた実験系の構築が不可欠であり、
特に対象疾患の病理学的特徴や病態を正確に再現したモ
デル動物自体の開発が極めて重要である。アルツハイマ
ー病の予防・治療剤の開発に利用されるモデル動物とし
ては、例えば、717 番目のアミノ酸に突然変異を有する
アミロイド前駆体タンパク (717V→F)の遺伝子を導入し
たトランスジェニックマウスが知られている(Games,
D., Nature, 373, pp.523-527, 1995)。このマウスは、
脳内にアミロイドの沈着や変性した神経突起が認められ
るなど、ある程度アルツハイマー病の病理学的特徴を有
しており、現在のところ最も優れたモデル動物と考えら
れている(平井, 老年期痴呆, 9(2), pp.203-204, 199
5) 。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、生体
内におけるアミロイドβの生産性を高める手段を提供す
ることにある。より具体的にいうと、生体内においてア
ミロイドβの生産性を高めることができるポリペプチ
ド、及び該ポリペプチドを含む改変アミロイド前駆体タ
ンパクを提供するが本発明の課題である。また、上記の
特徴を有するポリペプチド及び改変アミロイド前駆体タ
ンパクをコードするヌクレオチド配列を提供することも
本発明の課題である。さらに、上記のヌクレオチド配列
の好ましい態様であるDNA 配列を導入したベクター及び
該ベクターにより形質転換された形質転換体、並びに、
該DNA が導入されたトランスジェニック動物を提供する
ことも本発明の課題である。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、アミロイ
ド前駆体タンパクの細胞内領域にはリン酸化部位が存在
しており、その部位が cdc2 キナーゼでリン酸化される
とアミロイド前駆体タンパクのプロセシングが変化し、
未成熟型アミロイド前駆体タンパクの質的変化、分泌型
アミロイド前駆体タンパクの減少、及び細胞内アミロイ
ド前駆体タンパクのカルボキシル末端断片の増加が惹起
されることを見い出した (Suzuki, T. et al., EMBO Jo
urnal, 13(5), pp.1114-1122, 1994) 。
【0010】本発明者は、リン酸化によるアミロイド前
駆体タンパクのプロセシング変化についてさらに検討を
加えた結果、アミロイド前駆体タンパク APP695 の672
番目のアルギニン残基を他のアミノ酸残基で置換する
か、アミロイド前駆体タンパクAPP751 の 728番目のア
ルギニン残基をアルギニン以外のアミノ酸残基で置換す
るか、又はアミロイド前駆体タンパク APP770 の 747番
目のアルギニン残基をアルギニン以外のアミノ酸残基で
置換した各々の変異アミロイド前駆体タンパクをコード
するDNA を発現させると、その変異タンパクのカルボキ
シル末端断片の産生が質的に変化して、アミロイドβを
含むポリペプチドが細胞内に大量に蓄積されることを見
い出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたも
のである。
【0011】すなわち本発明は、下記のアミノ酸配列:
H2N-Lys-Lys-Lys-Gln-Tyr-Thr-Ser-Ile-His-His-Gly-Va
l-Val-Glu-Val-Asp-Ala-Ala-Val-Thr-Pro-Glu-Glu-X-Hi
s-Leu-Ser-Lys-Met-Gln-Gln-Asn-Gly-Tyr-Glu-Asn-Pro-
Thr-Tyr-Lys-Phe-Phe-Glu-Gln-Met-Gln-Asn-OH(配列
中、X はアルギニン以外のアミノ酸残基を示す)により
特定されるポリペプチドを提供するものである。また、
本発明により、アミロイド前駆体タンパクの細胞内ドメ
インである上記ポリペプチドが提供される。
【0012】また、上記アミノ酸配列を構成する1又は
2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されて
おり(ただしX がアルギニンとなることはない)、該ア
ミノ酸配列を構成する1又は2以上のアミノ酸残基が欠
失しており、及び/又は該アミノ酸配列に1又は2以上
のアミノ酸残基が挿入されたアミノ酸配列により特定さ
れる、アミロイド前駆体タンパクの細胞内ドメインであ
るポリペプチドも提供される。本発明の別の態様によれ
ば、上記の各ポリペプチドをコードするヌクレオチド配
列が提供される。
【0013】本発明のさらに別の態様によれば、上記ポ
リペプチドを細胞内ドメインとして含むことを特徴とす
る変異アミロイド前駆体タンパクと、その好ましい態様
として、以下のポリペプチド:(a) 野生型アミロイド前
駆体タンパクの細胞外ドメイン(ただしアミロイドβド
メインに含まれる部分を除く)であるポリペプチド、
(b) アミロイドβドメインであるポリペプチド、(c) ア
ミロイドβドメインのC末端に結合し、細胞膜ドメイン
の一部を構成するポリペプチド、及び(d) 細胞内ドメイ
ンである上記ポリペプチド、を含む変異アミロイド前駆
体タンパクが提供される。
【0014】他の好ましい態様として、以下のポリペプ
チド:(e) 野生型アミロイド前駆体タンパクの細胞外ド
メイン(ただしアミロイドβドメインに含まれる部分を
除く)であるアミノ酸配列を構成する1又は2以上のア
ミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されており、該ア
ミノ酸配列を構成する1又は2以上のアミノ酸残基が欠
失しており、及び/又は該アミノ酸配列に1又は2以上
のアミノ酸残基が挿入されたアミノ酸配列により特定さ
れ、アミロイド前駆体タンパクの細胞外ドメインのN末
端側に配置されるポリペプチド、(f) アミロイドβドメ
インであるポリペプチド、(g) アミロイドβドメインの
C末端側に結合し、細胞膜ドメインの一部を構成するポ
リペプチド、及び(h) 細胞内ドメインである上記ポリペ
プチド、を含む変異アミロイド前駆体タンパクが提供さ
れる。
【0015】さらに別の好ましい態様として、以下のポ
リペプチド:(i) アミロイドβドメインであるポリペプ
チド、(j) アミロイドβドメインのC末端に結合し、細
胞膜ドメインの一部を構成するポリペプチド、及び(k)
細胞内ドメインである上記ポリペプチド、を含む変異ア
ミロイド前駆体タンパクも提供される。これらの好まし
い態様において、アミロイドβドメインが野生型ヒトア
ミロイドβのアミノ酸配列により特定されるポリペプチ
ドである変異アミロイド前駆体タンパクは、特に好まし
い態様である。
【0016】また、本発明により、上記変異アミロイド
前駆体タンパクをコードするヌクレオチド配列、及びそ
の好ましい態様としてのDNA 配列、並びに、上記DNA 配
列を含む組み換えベクターと該組換えベクターにより形
質転換された形質転換体が提供される。さらに、上記DN
A 配列が染色体に導入されており、神経組織におけるア
ミロイドβの産生が亢進したことを特徴とするトランス
ジェニック動物;アミロイドβ産生を抑制する作用を有
する物質の評価方法であって、被検物質の存在下で請求
項13に記載の形質転換体を培養し、培養液中のアミロイ
ドβ産生量を測定する工程を含む方法;及び該方法にお
いて神経細胞と該形質転換体とを共培養する工程を含む
方法が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明のポリペプチドは、下記の
アミノ酸配列:H2N-Lys-Lys-Lys-Gln-Tyr-Thr-Ser-Ile-
His-His-Gly-Val-Val-Glu-Val-Asp-Ala-Ala-Val-Thr-Pr
o-Glu-Glu-X-His-Leu-Ser-Lys-Met-Gln-Gln-Asn-Gly-Ty
r-Glu-Asn-Pro-Thr-Tyr-Lys-Phe-Phe-Glu-Gln-Met-Gln-
Asn-OH(配列中、X はアルギニン以外のアミノ酸残基を
示す)で特定されるポリペプチドであり、一文字標記で
は、KKKQYTSIHHGVVEVDAAVTPEE
XHLSKMQQNGYENPTYKFFEQMQNで
表される(同様にX はアルギニン以外のアミノ酸残基を
示す)。
【0018】上記のポリペプチドは、アミロイド前駆体
タンパクの細胞内ドメインとなることができる。Xで表
されるアミノ酸残基は、アルギニン以外のアミノ酸残基
であれば特に限定されないが、例えば、アラニン残基な
どのα−アミノ酸残基が好適である。本明細書において
「アミノ酸」という用語は、L-α−アミノ酸のほか、D-
アミノ酸や非α−アミノ酸(例えば、β−アラニンやε
−アミノカプロン酸など)を含めて最も広義に解釈され
るべきであるが、好ましくはα−L-アミノ酸を意味して
いる。また、「アミノ酸残基」という用語は、ポリペプ
チドを構成するアミノ酸の官能基のうちペプチド結合に
関与するカルボキシル基及びアミノ基からそれぞれ一個
の水酸基と二個の水素原子を除いて生じる当該アミノ酸
の残りの部分構造を意味する。
【0019】本発明のポリペプチドには、上記のアミノ
酸配列を構成する1又は2以上のアミノ酸残基、好まし
くは1個のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換され
ており(ただしX がアルギニンとなることはない)、上
記のアミノ酸配列を構成する1又は2以上、好ましくは
1個のアミノ酸残基が欠失しており、及び/又は上記の
アミノ酸配列に1又は2以上、好ましくは1個のアミノ
酸残基が挿入されたアミノ酸配列により特定され、上記
のポリペプチドと同様にアミロイド前駆体タンパクの細
胞内ドメインであるポリペプチド(本明細書において
「改変体ポリペプチド」という場合がある)も包含され
る。
【0020】本明細書において、「アミロイド前駆体タ
ンパク」という用語には、一個のアミロイド前駆体タン
パク遺伝子から転写されるプレ mRNA の多様なスプライ
シング(交替性スプライシング)により生じる種々の m
RNA が翻訳されて生成する種々のタンパクが包含され
る。また、それらのタンパクのアミノ酸配列を構成する
1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換
されており、1又は2以上のアミノ酸残基が欠失してお
り、及び/又はアミノ酸配列に1又は2以上のアミノ酸
残基が挿入された改変体を含む概念として用いる。アミ
ロイド前駆体タンパクの由来は特に限定されず、ヒトの
ほか、サル、イヌ、ネコなどの哺乳類動物由来のもので
あってもよい。もっとも、アミロイド前駆体タンパク中
に存在するアミロイドβドメインについては、野生型の
ヒト・アミロイドβのアミノ酸配列を有するものが好ま
しい。
【0021】アミロイド前駆体タンパクは、細胞外ドメ
イン(アミロイドβドメインのN末端側の部分配列から
なるか、又は該部分配列のN末端にさらに1個のアミノ
酸若しくは2個以上のアミノ酸を含むペプチドが結合し
てなる);細胞外ドメインに含まれるアミロイドβドメ
インの領域以外のアミロイドβドメインと該ドメインの
C末端側に結合したポリペプチド配列とを含む細胞膜ド
メイン;及び細胞内ドメインにより構成されている。ア
ミロイドβは、アミロイド前駆体タンパクに含まれるア
ミロイドβドメインのN末端及びC末端がそれぞれβセ
クレターゼ及びγセクレターゼにより切断されることに
より生成するか、あるいは、細胞外ドメインがアミロイ
ドβドメインの部分配列により構成されるアミロイド前
駆体タンパクのアミロイドβドメインのC末端がγセク
レターゼにより切断されることにより生成する。
【0022】従って、上記のような構造上の特徴を有
し、かつ、βセクレターゼ及びγセクレターゼの作用、
又はγセクレターゼのみの作用によりアミロイドβを与
えるタンパクは、いずれもアミロイド前駆体タンパクの
概念に包含されることを理解すべきである。なお、アミ
ロイド前駆体タンパクの代表的なものとして、APP770
(構成アミノ酸数 770: Kitaguchi, N. et al., Nuture,
331, pp.530-532, 1988)、APP751 (構成アミノ酸数 75
1: Ponte, P. et al., Nature, 331, pp.525-527,198
8)、及びAPP695 (構成アミノ酸数 695: Kang, J. et a
l., Nature, 325, pp.733-736, 1987) を挙げることが
でき、それらのアミノ酸配列はいずれも公知である。参
考として、 APP695 の構造及び酵素切断部位を図1に示
す。
【0023】本明細書において「変異アミロイド前駆体
タンパク」という用語は、上記の各アミロイド前駆体タ
ンパクの細胞内ドメイン(例えば、 APP695 では 649番
目のリジン残基から 695番目のC末端のアスパラギンま
での47個のアミノ酸により構成されるポリペプチド)
が、本発明の上記ポリペプチド(改変体ポリペプチドを
含む)によって置換されたことを特徴とするタンパクを
意味している。いかなる特定の理論に拘泥するわけでは
ないが、細胞内で発現された APP695 などの天然型アミ
ロイド前駆体タンパクは、βセクレターゼ及びγセクレ
ターゼ、又はγセクレターゼの作用によりアミロイドβ
が生成する過程で、その一部がαセクレターゼによる作
用を受けてアミロイドβが切断されたフラグメントを与
える(図1参照)。一方、本発明の変異アミロイド前駆
体タンパクでは、αセクレターゼによる分解を受けにく
く、アミロイドβの全長を含むポリペプチドが大量に生
成するという特徴がある。
【0024】本発明の変異アミロイド前駆体タンパクと
して、例えば、アミロイド前駆体タンパク APP695 の67
2 番目のアルギニン残基をアルギニン以外のアミノ酸残
基で置換した変異アミロイド前駆体タンパク;アミロイ
ド前駆体タンパク APP751 の728番目のアルギニン残基
をアルギニン以外のアミノ酸残基で置換した変異アミロ
イド前駆体タンパク;及び、アミロイド前駆体タンパク
APP770 の 747番目のアルギニン残基をアルギニン以外
のアミノ酸残基で置換した変異アミロイド前駆体タンパ
ク;並びに、これらの変異アミロイド前駆体タンパクに
おいてアルギニン以外のアミノ酸残基がアラニン残基で
ある変異アミロイド前駆体タンパクを挙げることができ
るが、本発明の変異アミロイド前駆体タンパクはこれら
に限定されることはない。
【0025】特に、変異アミロイド前駆体タンパクの細
胞外ドメインについては、野生型タンパクの細胞外ドメ
イン(ただしアミロイドβドメインに含まれる部分を除
く)のアミノ酸配列に対して相当程度のアミノ酸残基の
置換、挿入、欠失が許容されることを理解すべきであ
る。従って、本発明の好ましい態様によれば、以下の変
異アミロイド前駆体タンパクが提供される。 以下のポリペプチド: (a) 野生型アミロイド前駆体タンパクの細胞外ドメイン
(ただしアミロイドβドメインに含まれる部分を除く)
であるポリペプチド、(b) アミロイドβドメインである
ポリペプチド、(c) アミロイドβドメインのC末端に結
合し、細胞膜ドメインの一部を構成するポリペプチド、
及び(d) 細胞内ドメインである上記ポリペプチド(改変
体ポリペプチドを含む)を含む変異アミロイド前駆体タ
ンパク;
【0026】以下のポリペプチド:(e) 野生型アミロ
イド前駆体タンパクの細胞外ドメイン(ただしアミロイ
ドβドメインに含まれる部分を除く)であるアミノ酸配
列を構成する1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ
酸残基で置換されており、該アミノ酸配列を構成する1
又は2以上のアミノ酸残基が欠失しており、及び/又は
該アミノ酸配列に1又は2以上のアミノ酸残基が挿入さ
れたアミノ酸配列により特定され、アミロイド前駆体タ
ンパクの細胞外ドメインのN末端側に配置されるポリペ
プチド、(f) アミロイドβドメインであるポリペプチ
ド、(g) アミロイドβドメインのC末端側に結合し、細
胞膜ドメインの一部を構成するポリペプチド、及び(h)
細胞内ドメインである上記ポリペプチド(改変体ポリペ
プチドを含む)を含む変異アミロイド前駆体タンパク;
並びに 以下のポリペプチド:(i) アミロイドβドメインであ
るポリペプチド、(j) アミロイドβドメインのC末端に
結合し、細胞膜ドメインの一部を構成するポリペプチ
ド、及び(k) 細胞内ドメインであるポリペプチド(改変
体ポリペプチドを含む)を含む変異アミロイド前駆体タ
ンパク。
【0027】本発明の別の態様によれば、上記本発明の
ポリペプチド(改変体ポリペプチドを含む)をコードす
るヌクレオチド配列が提供される。本明細書において用
いられる「ヌクレオチド配列」という用語には、RNA 配
列及びDNA 配列が包含される。また、本発明のヌクレオ
チド配列には、上記ヌクレオチド配列を構成する1又は
2以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換されて
おり、1又は2以上のヌクレオチドが欠失しており、及
び/又は上記のヌクレオチド配列に1又は2以上のヌク
レオチドが挿入されたヌクレオチド配列、好ましくはDN
A 配列であって、かつ、アミロイド前駆体タンパクの細
胞内ドメインである改変体ポリペプチドをコードするヌ
クレオチド配列も包含される。
【0028】本発明の上記ヌクレオチド配列の好ましい
例として、下記のDNA 配列(配列中、X1X2X3で表される
コドンがCGT, CGC, CGA, CGG, AGA, AGG, TAA, TAG, 又
はTGA であることはない)を挙げることができる。 AAGAAGAAAC AGTACACATC CATTCATCAT 30 GGTGTGGTGG AGGTTGACGC CGCTGTCACC 60 CCAGAGGAGX1 X2X3CACCTGTC CAAGATGCAG 90 CAGAACGGCT ACGAAAATCC AACCTACAAG 120 TTCTTTGAGC AGATGCAGAA C 141
【0029】さらに本発明の別の態様によれば、上記の
各変異アミロイド前駆体タンパクをコードするヌクレオ
チド配列、並びに、上記ヌクレオチド配列を構成する1
又は2以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換さ
れており、1又は2以上のヌクレオチドが欠失してお
り、及び/又は上記のヌクレオチド配列に1又は2以上
のヌクレオチドが挿入されたヌクレオチド配列、好まし
くはDNA 配列であって、かつ、上記の変異アミロイド前
駆体タンパクと実質的に生物学的に等価なタンパクをコ
ードするヌクレオチド配列も提供される。
【0030】これらのヌクレオチド配列のうち、アミロ
イド前駆体タンパク APP695 の672番目のアルギニン残
基をアルギニン以外のアミノ酸残基で置換した変異アミ
ロイド前駆体タンパクをコードするDNA 配列;アミロイ
ド前駆体タンパク APP751 の728番目のアルギニン残基
をアルギニン以外のアミノ酸残基で置換した変異アミロ
イド前駆体タンパクをコードするDNA 配列;及び、アミ
ロイド前駆体タンパクAPP770 の 747番目のアルギニン
残基をアルギニン以外のアミノ酸残基で置換した変異ア
ミロイド前駆体タンパクをコードするDNA 配列などが好
ましい。また、これらの変異アミロイド前駆体タンパク
においてアルギニン以外のアミノ酸残基がアラニン残基
である変異アミロイド前駆体タンパクをコードするDNA
配列も特に好ましいヌクレオチド配列である。なお、こ
れらのヌクレオチド配列を部分配列として含むヌクレオ
チド配列が本発明の範囲に包含されることはいうまでも
ない。
【0031】本発明の上記ポリペプチド、変異アミロイ
ド前駆体タンパク、及びヌクレオチド配列は、化学合成
的手法又は遺伝子工学的手法のいずれで製造してもよ
く、そのような方法は当業者に周知である。ヌクレオチ
ドの改変体は、例えば、改変すべきDNA を保持する大腸
菌などをN-ニトロソ-N'-ニトロ-N- ニトロソグアニジン
(NTG) などの薬剤で処理して突然変異を誘発し、菌体か
ら遺伝子を回収することにより得ることができる。ま
た、改変すべきDNA 配列を亜硝酸ナトリウム等の薬剤で
直接処理してもよい。さらに、改変すべきDNA 配列に、
部位特異的変異法 (Kramer, W., et al., Methods in E
nzymology, 154, p.350, 1987)やリコンビナントPCR 法
(PCR Technology, Stockton press, 1989) 等でヌクレ
オチドの挿入、欠失、又は置換を直接導入することによ
り、所望のアミノ酸残基を挿入、欠失、又は置換するこ
とが可能である。
【0032】本発明の別の態様によれば、上記各ヌクレ
オチド配列、好ましくはDNA 配列を含む組み換えベクタ
ー、及び該組み換えベクターにより形質転換された形質
転換体が提供される。ここで「形質転換体」という用語
は、該組換えベクターにより形質転換された細胞、細
菌、真菌、又は形質転換細胞を導入した動物を含む意味
で用いる。ベクターの種類は特に限定されず、形質転換
すべき宿主細胞との組み合わせなどの条件により当業者
に適宜選択可能である。例えば、ベクターとしてプラス
ミドなどを用いることができる。宿主細胞としては、例
えば、大腸菌などの原核生物細胞、酵母、動物細胞、植
物細胞などの真核生物細胞のいずれを用いてもよい。ベ
クターへのDNA 配列の導入方法、及び組み換えベクター
の宿主細胞内への導入方法としては、当業者に周知の方
法を採用することができる。それらの一例は、本明細書
の実施例に詳細に説明されている。
【0033】本発明の変異アミロイド前駆体タンパクを
発現することが可能な上記形質転換体を用いることによ
り、アミロイドβ産生を抑制する作用を有する物質の評
価を効率的に行うことが可能である。本発明により提供
されるこのような評価方法にはスクリーニング方法など
が含まれ、その好ましい態様では、被検物質の存在下で
上記形質転換体を培養し、アミロイドβの産生量を測定
する工程を含んでいる。アミロイドβの産生量の測定に
は定量的及び定性的ないかなる測定も包含されるが、定
量を行う場合の方法としては、例えば、抗アミロイドβ
抗体などを用いたRIA (radioimunoassay) やEIA (enzym
e immunoassay)などのペプチドの定量に汎用される方法
を用いることができる。被検物質の非存在下又は被検物
質が無効である場合には、該形質転換体から分泌される
アミロイドβの量に変化はない。一方、被検物質がβ又
はγセクレターゼの酵素活性を抑制する作用を有する場
合には、アミロイドβが大量に生産されなくなるので、
該形質転換体から分泌されるアミロイドβの量は減少す
る。なお、該形質転換体と神経細胞を共培養する方法を
採用してもよい。
【0034】さらに、本発明のヌクレオチド配列の好ま
しい態様であるDNA 配列を用いて、トランスジェニック
動物を作製することができる。動物の種類は特に限定さ
れず、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、
ウシ、ウマ、又はサルなどの任意の哺乳類動物を用いる
ことが可能である。これらのうち、マウスを用いること
が好ましい。DNA を例えばマウスなどの胚に導入してト
ランスジェニック動物を作製する方法は当業者に周知で
あり、当業者は適宜の方法を選択して採用することが可
能である。
【0035】一例を挙げると、浅野ら(細胞工学, 13(1
2), pp.1138-1146, 1994) の方法に従ってトランスジェ
ニック・マウスを作製することができる。例えば、マウ
スの受精卵を卵管から取り出し、本発明のDNA を組み込
んだプラスミド等の組み換えベクターをガラス製インジ
ェクションピペットを用いて受精卵の雄性前核に微量注
入した後、この受精卵を予め偽妊娠させたマウスの卵管
に移植する。生まれてきた仔の染色体DNA を適宜の方法
で解析して、本発明のDNA が染色体DNA に挿入された個
体を選別することによりトランスジェニック・マウスを
作製することができる。
【0036】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定される
ことはない。 例1:細胞外領域の一部を欠損させた APP770 cDNAの調
製 APP770cDNA (Kitaguchi, N. et al., Nature, 331, pp.
530-532, 1988) はそのコーディング領域の直前に NruI
部位を有し、コーディング領域終了後 250塩基下流に
XmnI 部位を有している。APP770 cDNA を NruI(東洋紡
績社)及び XmnI(ニューイングランドバイオラブズ社)
で切断した後、プラスミド pUC19(東洋紡績社)のポリ
リンカー中の HincII 部位に、pUC19 のポリリンカー中
にあるHindIII 部位側に上流がくるように挿入し、5'末
端に HindIII部位及び3'末端に XbaI 部位を有するAPP7
70 cDNA を持つプラスミドを調製した(ポリリンカー中
のHincII部位の下流にXbaIを有している)。
【0037】このプラスミドのHindIII 部位及び XbaI
部位をそれぞれ切断して得られた DNA断片をプラスミド
pcDNA1/Neo(インビトロジェン社)に導入してプラスミ
ド pcDNA1/Neo-APP770を得た。このプラスミド pcDNA1/
Neo-APP770をXhoI及び BglIIでそれぞれ切断して DNA断
片を得た。つぎに、APP770 cDNA の XhoI 部位より上
流、及び BglII部位より下流部分を含む DNA断片を、4
種の dNTPs存在下に大腸菌 DNAポリメラーゼI のクレノ
ー・フラグメントで平滑末端化した後、両末端をT4 DNA
リガーゼで結合させてプラスミドを作製した。
【0038】さらにこのプラスミドを用いて大腸菌 Top
10F'株を形質転換し、XhoI部位からBglII部位までを欠
損する APP770 (APP770del) の cDNA を有するプラスミ
ドを大量に調製した。このプラスミドを HindIII及び X
baI でそれぞれ切断した後、1%アガロース電気泳動を行
ない、APP770del を含む DNA断片をアガロースゲルから
回収した。このDNA 断片と HindIII及び XbaI で切断し
たプラスミド pcDNA3(インビトロジェン社)とを T4 D
NA リガーゼで結合させ、得られたプラスミドpcDNA3-AP
P770del を用いて大腸菌 Top10F'株を形質転換した。こ
のプラスミドでは、 APP770del cDNA の5'末端において
cDNA と同方向にT4プロモーターが結合しており、3'末
端側にはcDNAと逆方向に SP6プロモーターが結合してい
る。なお、制限酵素、クレノーフラグメント、及び T4
DNA リガーゼの反応条件は、それぞれの試薬の販売会社
の推薦する条件に従った。以上の工程の概要を図2に示
す。
【0039】例2:672 番目のアルギニンをアラニンで
置換した変異 672A-APP770del の cDNA の調製(アミノ
酸の番号は APP695 のアミノ酸配列に基づいている) (1) プライマーの塩基配列と合成 PCR 法により変異の導入を行うために、表に示す4種の
プライマーを DNA自動合成機 (ABI 社)で合成した。プ
ライマー1中のは、EcoO65認識部位を導入するために
本来の APP770 cDNAの塩基である Tを Gで置換したこと
を示し、は、アルギニンのコドンをアラニンのコドン
に変えるために本来の APP770 cDNAの塩基であるCGをGC
で置換したことを示す。プライマー3中の下線部は、 E
coO65I認識部位を作るために本来の APP770 cDNAの塩基
Aを Cで置換したことを示す。プライマー2は SP6プロ
モーターDNA と相補性を持つ塩基配列であり、プライマ
ー4は T4 プロモーターDNA と相補性を持つ塩基配列で
ある。
【0040】
【表1】
【0041】(2) PCR の実験方法 PCR による DNA断片の増幅反応は 100μl の緩衝液中で
行った。緩衝液の組成は、10 mM トリス塩酸 (pH 8.3)
、50 mM KCl 、1.5 mM MgCl2、Pwo DNA ポリメラーゼ
(ベーリンガーマンハイム社)2.5 U 、dNTPs ミックス
300μm 、プラスミド pcDNA3-APP770del 1 ng、プライ
マー各 100 pmol とした。反応は DNAサーマルサイクラ
ー(パーキン−エルマー社)を用いて行い、94℃で4分
間プレインキュベーションした後、1サイクルを94℃で
1分間、50℃で2分間、72℃で3分間として30回繰り返
した。
【0042】(3) 変異 672A-APP770del の cDNA の作
製: プライマー1とプライマー2で PCRを行い、1%アガロー
スゲルで電気泳動を行い、反応産物である DNA断片(断
片B)をゲルより回収した。この断片Bは EcoO65I部位
と導入された変異を含んでいる。また、プライマー3と
プライマー4を用いて、同様に PCR及びアガロースゲル
電気泳動を行って、下流側に EcoO65I部位を有し、APP7
70del の cDNA の上流側を含む DNA断片(断片A)を得
た。
【0043】断片A及び断片Bを Eco065Iで切断後、両
断片を T4 DNA リガーゼで結合させ、反応物を1%アガロ
ースゲル電気泳動に付して、変異 672A-APP770del の c
DNA全体を含む DNA断片をゲルから回収した。この DNA
断片とプライマー1及びプライマー2を用いて、上記
(2) の方法に従って PCRによる DNA増幅を行った。ただ
し、プラスミド pcDNA3-APP770del は除いた。この PCR
で得られた DNA断片を HindIII及び XbaI で切断し、得
られた断片を予め HindIII及び XbaI で切断したプラス
ミド pcDNA3 と T4 DNA リガーゼで結合させ、Top10F'
株を形質転換してプラスミド pcDNA3-672A-APP770delを
得た。このプラスミド上の672A-APP770delcDNA の塩基
配列をダイターミネイター法で確認した。以上の方法の
概略を図3に示す。
【0044】例3:発現細胞株の取得 (1) 形質転換細胞の調製 4 mlの培地(牛胎仔血清を 10%含有する DMEM, high gl
ucose gibco 12100;ギブコ社)を入れた 6 cm プレート
に 293細胞(ヒト胎児腎由来の形質転換細胞、大日本製
薬、ATCC:CRL-1573)を接種し、セミコンフルエントにな
るまで培養した。 DMEM で2回洗浄した後、2 mlの DME
M を加えた。この細胞に、プラスミド pcDNA3-APP770de
l 又はプラスミド pcDNA3-672A-APP770delの DNA (10μ
g)及び 30% (V/V)リポフェクチン(ギブコ社)溶液 100
μl を滴下して12時間培養した後、20% 牛胎仔血清を含
む DMEM を 2 ml 加え、37℃の炭酸ガス培養器中で 48
時間培養した。培養後細胞をピペッティングにより回収
し、抗生物質 G418 (800μg/ml) を含む 10 mlの培地を
入れた 10 cmのプレートに接種した。3〜4日毎に培地
を交換しながら2週間培養した後、形質転換細胞のコロ
ニーを数個単離し、10 ml の培地を加えた 10 cmプレー
トでそれぞれの細胞をコンフルエントになるまで培養し
て株化した。
【0045】(2) APP770del 及び変異 672A-APP770del
発現細胞株の取得 プラスミド pcDNA3-APP770del 及びプラスミド pcDNA3-
672A-APP770delを用いて得られた複数の形質転換細胞株
について、下記(3) の方法で導入遺伝子産物を検出し、
得られた全長型の産物のバンドの濃さを比較することに
より、各々の高生産株、293-APP770del-A 株及び 293-6
72A-APP770del-B 株を取得した。
【0046】(3) 導入遺伝子産物 (APP770del 及び 672
A-APP770del)の検出法: 形質転換した 293細胞株を 10 mlの培地を入れた 10 cm
プレートに 1×107 個/プレートの割合で接種し、37℃
の炭酸ガス培養器中で4日間培養した後、細胞をトリプ
シン処理により回収した。細胞を DPBS (ダルベッコ−
リン酸緩衝溶液、Dulbecco's phosphate-buffered sali
ne) に懸濁し、 800×g で5分間遠心分離を行い、細胞
を沈殿画分として回収した。細胞に 15 μl の SDS- サ
ンプルバッファーと 15 μl の 8 M尿素を加え、超音波
処理により細胞を破砕した。
【0047】得られた細胞抽出液を5分間煮沸した後、
15% ポリアクリルアミドゲルを用いて SDS- ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動を行った。泳動終了後、ゲル中の
タンパクをセミドライブロッティング装置を用いてニト
ロセルロース膜 (0.2 μm ;S&S 社)に移した。APP695
の 676番目から 695番目に相当する合成ペプチドを抗原
として免疫したウサギから得られた抗血清(UT-421)及び
ECLウエスタンブロッティングアナリシスシステム(ア
マシャム社)を用い、アマシャム社のプロトコールで推
薦されている方法で、ニトロセルロース膜上のAPP770de
l 及び672A-APP770delの全長型及びC末端部分を含むそ
れらの分解産物を検出した。
【0048】例4:293-APP770del-A 株及び 293-672A-
APP770del-B 株で発現された APP770del及び 672A-APP7
70del の分解産物の解析 例3(2) で得られた 293-APP770del-A株及び 293-672A-
APP770del-B 株の各々が産生する遺伝子産物を以下の方
法で解析した。 293-APP770del-A株及び 293-672A-APP7
70del-B 株を 10 mlの培地を入れた 10 cmプレートに 1
×107 個/プレートの割合で接種し、37℃の炭酸ガス培
養器中で4日間培養した後、細胞をトリプシン処理によ
り回収した。細胞を DPBS (Dulbecco's phosphate-buff
ered saline)に懸濁し、 800×g で5分間遠心分離を行
い、細胞を沈殿画分として回収した。
【0049】この画分に 120μl の細胞溶解バッファー
(50 mM トリス塩酸 (pH 8.0) 、0.27 Mシュクロース、
1 mM EDTA 、1 mM EGTA 、1 mM バナジン酸ナトリウ
ム、 1% トリトンX-100 、0.1% 2- メルカプトエタノー
ル、200 μg/mlペプスタチンA、200 μg/mlキモスタチ
ン、200 μg/mlロイペプチン)を添加し、氷中で時々振
蘯しながら 30 分間保持して細胞を溶解させた。この溶
解液を 10,000 ×g で5分間遠心分離し、その上清 120
μl を採取した。この上清に 100μl の 0.1 Mトリス塩
酸液 (pH 7.4、0.2% SDS及び 5.44 M 尿素含有)を加
え、混合後に煮沸し、反応物を10,000×g で5分間遠心
分離した。得られた反応上清 200μl に、60μl の 5 M
NaCl 、40μl の 0.5 M EDTA 、150 μl の 1 Mトリス
(pH 7.4) 、500 μl の NP-40及び 350μl の2回蒸留
水を加え、よく攪拌した後、抗血清 UT-421 を加えて1
時間反応させた。
【0050】抗原抗体複合体をプロテインA−セファロ
ース(ファルマシア社)を加えて回収し、洗浄後、樹脂
に 20 μl の×5 SDS-サンプルバッファーと 20 μl の
8 M尿素を加えて混合した。この混合物を煮沸して10,0
00×g で5分間遠心分離し、得られた上清を 15%ポリア
クリルアミドゲルを用いた SDS- ポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動に付した。泳動終了後、ゲル中の蛋白をセミ
ドライブロッティング装置を用いてニトロセルロース膜
に移した。抗血清 UT-421 及び 125I-プロテインA(ア
マシャム社)を用いたウエスタンブロッティングを行
い、APP770del 及び672A-APP770delの全長型又はそれら
のカルボキシル末端側の分解産物をオートラジオグラフ
ィーにより解析した。結果を図4に示す。 293-APP770d
el株では15kD 付近に一本のバンドが検出されたが、293
-672A-APP770del株では 293-APP770del株に認められた
バンドとほぼ同程度の移動度を持つバンドと、それより
移動度の小さいバンドが認められた。
【0051】これらの遺伝子産物のアミノ末端側を調べ
るために、アミロイドβの 1〜16番目のアミノ酸に相当
する合成ペプチドでマウスを免疫して得られたモノクロ
ーナル抗体 A-11(アミロイドβの 1〜16番目のアミノ酸
に相当する合成ペプチドと結合するが、アミロイドβの
3〜16番目のアミノ酸に相当する合成ペプチドとは結合
しない)とこれらのバンドとの結合性を調べた。その結
果、293-APP770del 株から検出された15 kD のバンド及
び293-672A-APP770del株から検出された移動度の大きい
方のバンドは結合性を示さなかった。一方、293-672A-A
PP770del株から検出された移動度の小さい方のバンドは
モノクローナル抗体 A-11 との結合性を示した。これら
の結果は、293-672A-APP770del株から得られた移動度の
小さい遺伝子産物が、アミロイドβの全長を含むいわゆ
るアミロイドジェニックな断片であることを示してい
る。
【0052】
【発明の効果】本発明のポリペプチドを含む変異アミロ
イド前駆体タンパクは、アミロイドβの生産性が高めら
れており、この前駆体タンパクを細胞内で発現させるこ
とによってアミロイドβを大量に生成することができ
る。従って、本発明の前駆体タンパクをコードするDNA
により形質転換された形質転換体を用いると、アミロイ
ドβの生成を抑制する薬剤を効率的にスクリーニングす
ることができる。また、本発明のDNA を染色体に導入し
たトランスジェニック動物は、神経組織においてアミロ
イドβを大量に発現することができるので、アルツハイ
マー病のモデル動物として有用であることが期待され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 アミロイド前駆体タンパクの一例である APP
695 の分子内の細胞外ドメイン、細胞膜ドメイン、及び
細胞内ドメイン、並びに、細胞外ドメインと細胞膜ドメ
インとにまたがるアミロイドβドメイン及び酵素切断部
位を示す図である。
【図2】 実施例中の例1に従って細胞外領域の一部を
欠損させた APP770 cDNAを調製する方法の概略を示した
図である。
【図3】 実施例中に例2に従って変異 APP770del(672
A)の cDNA を調製する方法の概略を示した図である。
【図4】 実施例の例3により得られた 293-APP770del
株及び293-672A-APP770del株から得られた遺伝子産物を
15% ポリアクリルアミドゲルを用いた SDS- ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動に付し、アミロイドβのカルボキ
シ末端側に反応するUT-421及び 125I-プロテインAで検
出した、電気泳動パターンを示す写真である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年7月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正内容】
【0011】すなわち本発明は、下記のアミノ酸配列:
H-Lys-Lys-Lys-Gln-Tyr-Thr-Ser-Ile-His-His-Gly-Val
-Val-Glu-Val-Asp-Ala-Ala-Val-Thr-Pro-Glu-Glu-X-His
-Leu-Ser-Lys-Met-Gln-Gln-Asn-Gly-Tyr-Glu-Asn-Pro-T
hr-Tyr-Lys-Phe-Phe-Glu-Gln-Met-Gln-Asn-OH (配列
中、X はアルギニン以外のアミノ酸残基を示す)により
特定されるポリペプチドを提供するものである。また、
本発明により、アミロイド前駆体タンパクの細胞内ドメ
インである上記ポリペプチドが提供される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】
【発明の実施の形態】本発明のポリペプチドは、下記の
アミノ酸配列: H-Lys-Lys-Lys-Gln-Tyr-Thr-Ser-Ile-H
is-His-Gly-Val-Val-Glu-Val-Asp-Ala-Ala-Val-Thr-Pro
-Glu-Glu-X-His-Leu-Ser-Lys-Met-Gln-Gln-Asn-Gly-Tyr
-Glu-Asn-Pro-Thr-Tyr-Lys-Phe-Phe-Glu-Gln-Met-Gln-A
sn-OH (配列中、X はアルギニン以外のアミノ酸残基を
し、左末端がN末端である)で特定されるポリペプチ
ドであり、一文字標記では、KKKQYTSIHHGV
VEVDAAVTPEEXHLSKMQQNGYENP
TYKFFEQMQNで表される(同様にX はアルギニ
ン以外のアミノ酸残基を示す)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 5/10 G01N 33/53 D 15/09 ZNA A61K 37/02 AAM C12P 21/02 C12N 5/00 B G01N 33/53 9282−4B 15/00 ZNAA //(C12N 1/21 C12R 1:19) (C12N 5/10 C12R 1:91) (C12P 21/02 C12R 1:19) (C12P 21/02 C12R 1:91)

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記のアミノ酸配列: H2N-Lys-Lys-Lys-Gln-Tyr-Thr-Ser-Ile-His-His- -Gly-Val-Val-Glu-Val-Asp-Ala-Ala-Val-Thr- -Pro-Glu-Glu-X-His-Leu-Ser-Lys-Met-Gln- -Gln-Asn-Gly-Tyr-Glu-Asn-Pro-Thr-Tyr-Lys- -Phe-Phe-Glu-Gln-Met-Gln-Asn-OH (配列中、X はアルギニン以外のアミノ酸残基を示す)
    により特定されるポリペプチド。
  2. 【請求項2】 アミロイド前駆体タンパクの細胞内ドメ
    インである請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載のアミノ酸配列を構成す
    る1又は2以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置
    換されており(ただしX がアルギニンとなることはな
    い)、該アミノ酸配列を構成する1又は2以上のアミノ
    酸残基が欠失しており、及び/又は該アミノ酸配列に1
    又は2以上のアミノ酸残基が挿入されたアミノ酸配列に
    より特定される、アミロイド前駆体タンパクの細胞内ド
    メインであるポリペプチド。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1項に記載
    のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし3のいずれか1項に記載
    のポリペプチドを細胞内ドメインとして含むことを特徴
    とする変異アミロイド前駆体タンパク。
  6. 【請求項6】 以下のポリペプチド: (a) 野生型アミロイド前駆体タンパクの細胞外ドメイン
    (ただしアミロイドβドメインに含まれる部分を除く)
    であるポリペプチド; (b) アミロイドβドメインであるポリペプチド; (c) アミロイドβドメインのC末端に結合し、細胞膜ド
    メインの一部を構成するポリペプチド;及び (d) 請求項1ないし3のいずれか1項に記載された細胞
    内ドメインであるポリペプチド;を含む、請求項5に記
    載の変異アミロイド前駆体タンパク。
  7. 【請求項7】 以下のポリペプチド: (e) 野生型アミロイド前駆体タンパクの細胞外ドメイン
    (ただしアミロイドβドメインに含まれる部分を除く)
    であるアミノ酸配列を構成する1又は2以上のアミノ酸
    残基が他のアミノ酸残基で置換されており、該アミノ酸
    配列を構成する1又は2以上のアミノ酸残基が欠失して
    おり、及び/又は該アミノ酸配列に1又は2以上のアミ
    ノ酸残基が挿入されたアミノ酸配列により特定され、ア
    ミロイド前駆体タンパクの細胞外ドメインのN末端側に
    配置されるポリペプチド; (f) アミロイドβドメインであるポリペプチド; (g) アミロイドβドメインのC末端側に結合し、細胞膜
    ドメインの一部を構成するポリペプチド;及び (h) 請求項1ないし3のいずれか1項に記載された細胞
    内ドメインであるポリペプチド;を含む、請求項5に記
    載の変異アミロイド前駆体タンパク。
  8. 【請求項8】 以下のポリペプチド: (i) アミロイドβドメインであるポリペプチド; (j) アミロイドβドメインのC末端に結合し、細胞膜ド
    メインの一部を構成するポリペプチド;及び (k) 請求項1ないし3のいずれか1項に記載された細胞
    内ドメインであるポリぺプチド;を含む、請求項5に記
    載の変異アミロイド前駆体タンパク。
  9. 【請求項9】 アミロイドβドメインが野生型ヒトアミ
    ロイドβのアミノ酸配列により特定されるポリペプチド
    である請求項6ないし8のいずれか1項に記載の変異ア
    ミロイド前駆体タンパク。
  10. 【請求項10】 請求項5ないし9のいずれか1項に記
    載の変異アミロイド前駆体タンパクをコードするヌクレ
    オチド配列。
  11. 【請求項11】 DNA 配列である請求項10に記載のヌク
    レオチド配列。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載のDNA 配列を含む組み
    換えベクター。
  13. 【請求項13】 請求項12に記載の組み換えベクターに
    より形質転換された形質転換体。
  14. 【請求項14】 請求項11に記載のDNA 配列が染色体に
    導入されており、神経組織におけるアミロイドβの産生
    が亢進したことを特徴とするトランスジェニック動物。
  15. 【請求項15】 アミロイドβ産生を抑制する作用を有
    する物質の評価方法であって、被検物質の存在下で請求
    項13に記載の形質転換体を培養し、培養液中のアミロイ
    ドβ産生量を測定する工程を含む方法。
  16. 【請求項16】 神経細胞と該形質転換体とを共培養す
    る工程を含む請求項15に記載の方法。
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